首相官邸 首相官邸 トップページ
首相官邸 文字なし
 トップ会議等一覧司法制度改革推進本部顧問会議開催状況

司法制度改革推進本部顧問会議(第15回)議事録



日 時 : 平成16年1月27日(火) 17:45〜18:45

場 所 : 総理大臣官邸小ホール

出席者 :
(顧問)
佐藤幸治座長、大宅映子顧問、奥島孝康顧問、佐々木毅顧問

(推進本部)
小泉純一郎本部長(内閣総理大臣)、福田康夫副本部長(内閣官房長官)、野沢太三副本部長(法務大臣)

(推進本部事務局等)
山崎潮事務局長、高橋宏志司法アクセス検討会座長、伊藤眞知的財産訴訟検討会座長、菅野和夫労働検討会座長他

議事次第 :
1 開会
2 内閣総理大臣あいさつ
3 平成16年通常国会提出予定法案について
4 閉会

【佐藤座長】 それでは、ただいまから司法制度改革推進本部顧問会議第15回会合を開会いたします。
 皆様におかれましては、本当に御多忙のところ御出席を賜りまして、ありがとうございます。
 なお、今日は今井顧問、小島顧問、笹森顧問及び志村顧問はやむを得ない所用のために御欠席でございます。
 それから、本日は労働検討会の菅野座長、司法アクセス検討会の高橋座長、それから、知的財産訴訟検討会の伊藤座長に御出席いただいております。どうもありがとうございます。
 本部員からは、本部長の小泉総理大臣、副本部長の野沢法務大臣及び福田官房長官に御出席いただいております。ありがとうございます。
 開会に当たりまして、小泉総理大臣から御挨拶がございます。

【小泉内閣総理大臣】 今年は司法制度改革の総仕上げの年であります。本日は、司法ネット、知的財産高等裁判所、そして、労働審判制度などについて御議論をいただきます。
 次回の顧問会議で、裁判員制度の導入などについて御議論をいただいた上で、必要な法案を速やかに策定し、国会に提出したいと考えております。
 より身近で、速くて、頼りがいのある司法をつくり上げるため、各顧問の皆様方には今後とも、一層の御支援をお願い申し上げます。

【佐藤座長】 ありがとうございます。それでは、早速ですけれども、議事次第に従いまして、平成16年通常国会提出予定の法案について協議したいと存じます。
 本日は、司法ネット、知的財産訴訟、それから、労働審判制度及び労働組合法の見直しについて御協議願いたいと存じております。
 まず最初に事務局の方から、本日の資料について説明していただきたいと思います。よろしくお願いします。

【山崎事務局長】 それでは、御説明申し上げます。適宜、お手元の資料を御覧になりながら、お聞きをいただきたいと思います。資料番号を付けてございますので、この順番に御説明を申し上げます。
 まず、司法ネットでございます。資料1の1枚目と2枚目を御覧いただきたいと思います。
 司法ネット構想に関しましては、この顧問会議の場における総理大臣からの御指示や、あるいは顧問の皆様方の御議論を受けまして、主として司法アクセス検討会において検討をしてきたところでございます。
 資料1は、これまでの御議論に基づきまして、司法ネット構想の概要という形で立案の骨格となるものをまとめたものでございます。
 司法ネット構想は、司法を国民により身近なものとするため、民事・刑事を問わず、国民が全国どこでも法律上の紛争の解決に必要な情報やサービスの提供が受けられるような、総合的な法律支援の体制を整備しようとするものでございます。
 司法ネット構想におきましては、中核となる運営主体を新たに設けまして、関係機関、関係団体と協働しつつ、資料1の1枚目から2枚目にかけて記載しております相談窓口業務、それから、経済的な困窮者を対象とする民事法律扶助と公的刑事弁護、弁護士等がいない司法過疎地域の対策、犯罪被害者支援の各業務を一体的に行うことを想定しております。
 新たに設ける運営主体の組織につきましては、独立行政法人の枠組みに従いつつ、運営主体の行う業務が司法に密接に関わるものであること等を踏まえた適切な組織形態とすることを考えております。
 また、弁護活動・訴訟活動の独立性を確保することが重要であると考えております。
 なお、この運営主体の名称ですが、司法ネットの目的が総合的な法律支援体制の整備にあるということから、総合法律支援センターとするのが分かりやすくてよいのではないかと考えているところでございます。
 次に、知的財産権の関係に移りたいと思います。
 資料2の3枚目を御覧いただきたいと思います。色が付いている対照表でございます。
 今回の改正では、左側の黄色い部分の三つのテーマについて、立法の検討をしています。これらにつきましては、いずれも知的財産訴訟の利用者であります産業界から喫緊の課題とされていたものでございます。
 まず、一つ目の「裁判所の専門的処理体制の一層の強化」でございます。
 仮称ですけれども、知的財産高等裁判所の創設及び裁判所調査官の権限の拡大・明確化等を行うということを考えております。
 知的財産高等裁判所では、知的財産に関連する事件を専門的に取り扱うということになります。この裁判所は、独立性を確保しつつ、東京高等裁判所内に創設するということにしております。
 裁判所調査官につきましては、当事者に対して直接問を発したり、釈明をしたりすることができるようにするなど、その権限の拡大・明確化をすることを考えております。
 次に「侵害行為の立証の容易化及び営業秘密の保護の強化」でございます。
 仮称ですが、秘密保持命令の導入、それから、インカメラ審理手続の整備及び営業秘密が問題となる訴訟の公開停止の要件・手続の明確化について整備するということにしております。
 特許権等の侵害を立証するための証拠は、通常、権利を侵害したとされる者の手元にあるということになりますが、侵害されたとする者がこれを収集することは困難であるとの問題が指摘されています。
 ここに掲げました3つの改正事項は、いずれも、この問題を解消し、証拠収集手続の機能強化を図る一方で、提出された証拠等に含まれる営業秘密の保護を図ろうとするものでございます。
 最後に「紛争の実効的解決」というところでございます。
 ここでは、第1に、侵害訴訟の場でも特許の有効性も判断できることとし、特許等が特許庁の無効審判により無効とされるべきものと認められる場合には、侵害訴訟における特許権等の行使ができないこととし、
 第2に裁判所で行われる侵害訴訟と、特許庁で行われる無効審判の連携強化を行うということにして、
 裁判所における侵害訴訟と、特許庁における無効審判との間の判断齟齬を極力防止するということを考えているわけでございます。
 それから、最後に、労働審判制度について、申し上げますが、資料3でございます。
 司法制度改革審議会の意見書では、労働関係事件への総合的な対応強化をすべきということにされています。そこで裁判官と労働関係の専門家の双方の関与によって、個別労働関係事件の迅速、適正、かつ実効的な解決を図るため、新たに労働審判制度を創設するということにしているわけでございます。
 労働審判制度のポイントは、5点ほどございます。
 まず第1に、労働審判手続は裁判官1名と、労働関係に関する専門的な知識経験を有する者2名で組織する労働審判委員会で行うものとしております。
 第2に、労働審判手続は当事者からの申立てにより、原則として調停により解決するか、または労働審判として権利義務関係を踏まえて、事件の内容に即した解決案を定めるものとしております。
 それから第3に、労働審判手続においては、原則3回以内の期日で迅速に審議を進めるということにしております。
 第4に、労働審判に不服がある場合には、2週間以内に異議の申立てを行うことにより、労働審判は効力を失うものとしております。また、異議がない場合には、労働審判は裁判所の和解と同一の効力を有するものとしております。
 最後に、訴訟手続との適切な連携を図るため、労働審判に対し、異議の申立てがあった場合には、労働審判手続の申立てのときに訴えの提起があったものとみなすこととしておりまして、訴え提起の手数料についても配慮するということにしております。 司法制度改革審議会の意見書で指摘されました、労働関係事件への総合的な対応強化に関しましては、その他に、労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方についても検討を行いました。この点につきましては、引き続き厚生労働省の方から御説明があります。
 今まで、御説明申し上げましたテーマにつきましては、本日の御議論を踏まえまして、更に関係機関等との調整の上で、この通常国会に所要の法案を提出させていただきたいと考えております。
 なお、御説明申し上げていないテーマに関する検討会の検討状況につきましては、資料5に記載されたとおりでございます。
 これらのうち、裁判員制度、行政訴訟制度の見直し、それから、弁護士費用の敗訴者負担制度につきましては、次回の2月2日の顧問会議で御報告を申し上げるつもりでおります。
 その余のADR及び司法修習生の給費制の問題につきましては、更に検討を継続するということにしております。
 私からの御説明は、以上のとおりでございます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。
 それでは、引き続きまして、厚生労働省から労働組合法の見直しについて、御説明をいただきたいと思います。

【厚生労働省青木政策統括官】 厚生労働省の青木でございます。
 本通常国会に法案提出を予定しております労働組合法の見直しにつきまして、御説明申し上げたいと思います。
 資料4を御覧いただきたいと思います。
 労働委員会における不当労働行為審査制度は、憲法で保障されました労働者の団結権等を実質的に担保する重要な制度ということになっておりますけれども、昭和24年の制度創設以来、見直しが行われておりません。
 近年は審査の長期化が著しく、労働委員会の救済命令に対する不服率・取消率も高いというようなことなどの問題が生じております。
 今般の司法制度改革におきましても、労働関係事件への総合的な対応強化の観点から、この労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方について、司法制度改革推進本部の設置期限までに所要の措置を講ずるということとされているところであります。
 今回の労働組合法の見直しは、労働委員会における不当労働行為事件に関する審査の手続と、審査体制を整備することによりまして、審査の迅速化、的確化を目指すものであります。
 「2 措置事項」ということでありますが、大きく五つございます。
 第1に、この的確化のために計画的な審査を行おうということであります。計画的な審査を促進するため、労働委員会は争点・証拠や審問回数等を記載した審査の計画を作成することとしております。
 第2に、迅速・的確な事実認定を行うということのために、公益委員の合議によりまして、証拠提出等を命ずることができるものとすること。それと同時に、労働委員会段階で、この証拠提出命令を受けても提出されなかった証拠については、取消訴訟段階で、それを提出できないというものとすることとしております。
 第3に「中央労働委員会の審査体制の整備」ということでありますが、中央労働委員会における救済命令の発出は、現在、公益委員全員、15人でございますけれども、これの合議で行っているところでございます。これを複数の公益委員で小委員会を構成しまして、小委員会の合議によることとするということにしております。
 また、中央労働委員会が、47都道府県に設けられております地方労働委員会に対しまして、研修や援助等をすることができるものとすることとしております。
 それから、第4に、不当労働行為事件につきましては、労働委員会の救済命令ということと同時に、一方で和解が重要な解決手段となっております。この法的効果について、所要の整備を行うということとしております。
 それから、第5に、その他地方労働委員会の委員定数を条例により変更することができるものとすることなど、地方労働委員会に関する規定の弾力化を行うということとしております。
 施行期日については、原則として平成17年1月1日を予定しておるところであります。 以上でございます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。
 それでは、ただいまの説明を受けまして、御出席の顧問の皆様から御質問、御意見をちょうだいしたいと思います。
 順番は問いません。どこからでもよろしゅうございますので、どうぞ、率直な御意見、御質問をいただければと思います。いかがでしょうか。
 どうぞ、佐々木顧問。

【佐々木顧問】 まず簡単なところからですが、司法ネットですけれども、どのような規模と広がりでもって、どのぐらいの体制で臨むのかということについて、何か具体的なプランがあれば御提示いただきたいと思っております。ほかの点は、また後で。

【佐藤座長】 その点、いかがですか、考えられるところで。

【山崎事務局長】 まず、規模の問題でございますけれども、地方裁判所本庁所在地には必ず一つは置く必要があると思いますので、少なくとも全国で50は置くということをイメージしていただきたいと思います。
 これ以外に、例えば司法過疎地域に置くか置かないかとか、それから、大きな支部にはどうするかとか、いろいろな問題がございますが、これはまた、需要に合わせながら最終的に決めていきたいと考えており、まだ最終的に全体の数が決まっていませんで、これからいろいろ調査をしていかなければならないということになろうかと思います。

【佐々木顧問】 いつごろの発足を目指していますか。

【山崎事務局長】 平成18年度には立ち上げたいと思っております。新たに組織を作るので、職員を採用したり場所を手配したりという準備作業がありますので、平成18年ぐらいまではかかるだろうと思っています。

【佐藤座長】 奥島顧問、どうぞ。

【奥島顧問】 司法ネットが整備されるということは、司法国家を目指す我が国にとってはインフラに属することですから、大変結構でありますし、また、ここでの首相の発言などが契機になりまして、これが整備されることになったのは、大変よかったと喜んでおります。しかし、問題はこれがどのように整備されていくということになると、多少大げさではありますが、民業圧迫ということも場合によってはあり得るかもしれませんし、それからまた、地方によっては司法ネットといっても非常に事情が違うんだということが、今までのいろんなお話の中に出てきております。そこで、こういうものを全箇所に50か所、余り画一的にそれぞれ同じものを置いていくんだというようなことではないだろうと思っておりますので、その辺りの工夫について、何かお考えがあるのかどうか、お聞かせいただければと思います。

【佐藤座長】 それでは、事務局、お願いします。

【山崎事務局長】 ただ今の、民業圧迫にならないようにという第一の点でございますが、これは大変重要な点でございまして、私ども、そこは十分注意したいと考えております。
 例えば民事法律扶助等で考えますと、これは資力に乏しい方に対する扶助でございますので、やはり民間において、なかなか採算性の観点から十分に対応することが困難であるというものが対象になるわけで、そういう意味では、本来的に補完的、補充的なものとならざるを得ないと考えております。
 また、現実に業務を行う場合に契約をするわけでございますけれども、現実に活動をされている弁護士さん、そういう方に第一次的にもやっていただくということになるわけでございまして、そこでどうしても手の回らないものに関してはこの組織の中に常勤する者がお手伝いをしてやっていくというようなシステムとして考えておりますので、そういう関係から、民業圧迫のおそれはないと考えております。
 それから、例えば、司法過疎地域にも弁護士を派遣してそこに置くことにしますけれども、そこに一般の弁護士が開業するという状況になれば、そこにはもう置いておく必要もございませんので、そこからは撤退することになり、柔軟にそこは対処したいと考えております。
 それから、次に地方の特徴に応じたものをということですが、まさにそのとおりでございます。地域ごとに利用者その他の関係者が参加する協議会等を設けまして、地方における業務運営についていろいろ意見を求めて、その上でやっていきたいと考えております。
 どこの地域に事務所を置くという点も、地方の実情に合わせて行っていきたいということで、画一的な、硬直的な運用にならないように注意したいと思っております。

【佐藤座長】 ただいまのお二人の顧問の御質問に関連してですけれども、民事法律扶助では一部、常勤の弁護士等を活用するとありますね。それから、公的刑事弁護について、契約により弁護士を確保する。それから、司法過疎対策でもお話がありましたけれども、常勤弁護士等による法律サービスをという考え方。
 具体的に大体どのぐらいの規模になるのかということですね。さっきのお答えでは、これから検討するということですけれども、今のところ、どのぐらいの形でスタートしたいというようにお考えになっているのか。もしあればお話を聞きたいということが一つ。
 もう一つは、独立行政法人の枠組みに従いながら、運営主体の業務が司法に密接に関わること等を踏まえて、適切な組織形態を考えたいということがありますが、この適切な組織形態についてもう少し何か、どういうものを考えておられるのか、ちょっと御説明いただくと、全体のイメージがもう少しはっきりするのではないかと思いますが。

【山崎事務局長】 全体の人の規模とか、その辺のところはまだ予算要求もしていない状況にあります。スタートが平成18年度でございますので、まだ詰めるまでには至っていない状況ですので、具体的な数字については御勘弁をいただきたいと思います。その地域に合わせた規模でやるということになろうかと思います。
 それから、もう一つの司法関係にまたがった特徴を持ったということでございますけれども、これについては二つございまして、例えば公的弁護の関係も、確かにここの運営主体を通してやるわけですけれども、裁判所の方の選任という問題が出てまいりますので、司法にも大いに影響があるということになることから、まず法人の設立等の関係でも、司法関係の方にも入ってもらうことが一つの特徴です。
 それから、もう一つは、先ほど御説明しましたように、契約関係を結んで事件を一般の弁護士に依頼しますが、その事件の内容に関して、直接その運営主体が影響力を及ぼすというのは避けなければならないことでございますので、そういうことにならないようにする必要があります。弁護士との関係で懲戒問題ですとか、解任だとか、いろいろな問題が生じてくる可能性がありますが、これは運営主体が直接やるのではなくて、委員会的なものを設けまして、そこに有識者を入れまして、その裁定に従ってやっていくというようなシステムを考えたいということでございます。

【佐藤座長】 訴訟の中に刑事弁護もあるし、それから、行政訴訟も入ってきますから、最後御指摘にあったような点は非常に重要なことかというように思います。
 ほかに、この司法ネットに関連して、何かございませんでしょうか。
 もしございませんでしたら、ほかの論点に移っても結構でございます。

【佐々木顧問】 この知的財産関係事件の件で、新たに高等裁判所を創設するということは、大変、裁判制度にとっては大きな変化だろうと思っておりますけれども、実際、このような制度改正によりまして、どのような効果が、あるいは結果が期待できるという見通しなのでしょうか。
 つまり、こういう点で、こういう見通しの下にこういう制度を作るということについて、非常に国民に対して分かりやすく説明するということを試みたとしたら、どのような説明になるのか。こういう要望が社会的に強いということは、私も知ってはおるんですけれども、また何か、こういう仕切りを作ったというだけの話では必ずしも十分納得の得られるものではないというおそれもありますので、念のため、御見解をお聞きしたいと思います。

【佐藤座長】 それでは、山崎事務局長、お答えいただけますか。

【山崎事務局長】 基本的には、この知的財産権の重視、この国家思想といいますか、それを内外にアピールするということが、一番大きな問題だろうと思います。
 これによりまして、国民の知的財産権を尊重するという意識を高めるということ、あるいは国内における特許権等の侵害行為の防止の効果が期待されるというほかに、海外からの模造品とか、そういうものの流入についての抑止効果も期待されるということになろうかと思います。こういう独立した裁判所をつくって、迅速に裁判をやっていくということを世界にアピールすることによって、国際的な事件に関しても日本の裁判所を使ってもらえるようになるということであります。
 管轄が外国と日本とで競合する場合もございますが、日本の裁判が遅ければ、日本を避けて、外国の裁判所に提起をするということになってしまいますが、これを日本で行って、早く解決をしていこうという効果につながるのではないかということも考えられます。やはり日本は将来的には、この知的財産権、こういう関係を大いに重要視して、世界で活動していくということになるわけでございますので、そういう点ではこの問題は非常に大事な問題であると考えております。

【佐々木顧問】 一般的には、そのとおりだと思います。
 そういう意味でのメッセージ、内外に対するメッセージ性ということについては、今の説明で分かりましたが、実際動かしてみて、それがメッセージではなくて、一つの目に見える効果になるであろうということを説得する材料といいましょうか、ここはこう変わるからこうなるんだというような点が何かあれば、追加的に御説明いただければと思います。

【山崎事務局長】 この点に関しては、昨年の通常国会で法律が改正されまして、この知的財産関係の訴訟については、例えば5人合議制を導入するとか、あるいは専門委員制度を導入するとか、それから、管轄もなるべく集約化するようにし、例えば特許権等に関しまして、東京高等裁判所に控訴事件を全部集めるという改正を行っておりまして、中身は先行してそちらの方で行っています。今回は、それを行う裁判所について東京高裁のの中で、組織的に独立させて、やっていきたいということで、中身と組織を新たなものとして、迅速な裁判をやっていきたいということでございます。
 このように東京高裁の中でありましても、組織的に独立をさせるということになりますので、その中の裁判の運営は、知的財産高等裁判所に委ねられ海外でいろいろな研修をさせたりとか、そういう教育もして専門家を育てていくという意味では大きな効果が生じてくるのではないかと思っております。

【佐藤座長】 今、独立性ということを強調なさったわけですけれども、比喩的に言うと、こういう理解でいいのですか。
 比喩ですから、正確でないということになるかもしれませんけれども、東京高裁という一つの家があって、その家の中で、共通する部分もあるんでしょうけれども、一応、世帯は別になると。それで、表札は2つ出ると。そして、世帯は別と言いますけれども、これがどの程度の規模の世帯になるのか。

【山崎事務局長】 イメージはそのとおりでございます。現在、東京高裁でこの知的財産関係をやっている裁判官が16名おり、それに伴った職員もいるわけでございますけれども、最低限、その人数はそちらに移るということになりますし、今後、事件が増えてくれば、もっと増強しなければならないということになるわけでございます。この16名が多いか少ないかでございますが、例えばこれは、どことは申し上げませんけれども、高等裁判所の中でもこのぐらいの人数のところもないわけではございませんので、そういう意味では、イメージとしてはかなりの大きさをもって独立をするということになろうかと思います。

【佐藤座長】 佐々木顧問、今までの御説明でよろしいでしょうか。

【大宅顧問】 かなりの大きさでは、わからない。私、どうもイメージが湧かないんですね。

【佐藤座長】 どうぞ、大宅顧問。

【大宅顧問】 さっきから佐々木顧問もおっしゃっているのは、お答えは一般論として正しいのでありましょうが、国民の側というか、普通の人からしてイメージが湧かないんですね。だから、知的財産の問題というと、例えば中国みたいな話がありますね。今、例えばホンダにそっくりの車を出していると。これはホンダの本物が行くと、本物の方がにせものだと言われてしまうというような状況があるやに聞いていますけれども、あれはあちらの国でやるんだから、この日本にある知的財産の裁判所と関係ないというふうにはおっしゃられるかもしれない。
 何かそういう具体的なイメージが湧くような、こういうことが今まで時間もかかって、こうだったのがもっとこういうふうになるというのは、何かありませんか。

【山崎事務局長】 これは、今、大宅顧問が言われた逆の場合、にせものが日本に持ち込まれる場合があります。その場合に、そういうもののチェックとその裁判がスピーディーにいくということになれば、これは逆に撤退していくといういことになるのです。そういう大きな効果があるということが言えると思います。
 それから、先ほど申し上げましたように、日本で裁判をやると非常に遅いということになると、日本に裁判を持ち込まないということになります。それで、海外でやるということになるわけでございますが、日本の企業としては海外でやられた場合、非常に不便であり、場合によっては膨大な損害賠償を命じられるという可能性もあるわけでございます。どこかの国によると、3倍ルールとかいろいろあり、3倍の賠償金を支払うことになる危険があるわけでございますが、日本でもスピーディーにやっていけるということになれば、日本の裁判所の方に訴えるようになるという効果もあるということでございます。
 先ほど5人合議制もやるということでございますが、これはたしか4月からですね。

【古口事務局次長】 はい。

【山崎事務局長】 今年の4月から施行になりますので、まだやっておりませんので、どういう効果が現実に表れるかというのは、まだ今の段階では申し上げられませんけれども、相当程度判断の統一がされていくと思います。
 それから、先ほど申し上げましたように、調査官について権限を拡大したり明確化して、より専門性を早くその裁判の場に投影させて、的確に早い成果を得られるようになると思っております。私も、大いに期待しているところでございます。

【佐藤座長】 、迅速化法で第一審判決については2年以内ということですね。そこで、高裁の段階での迅速性ですが、大体、今の大宅顧問の御質問と関連するんだけれども、大体どのぐらいのスピードを目標としているのか、何か考えておられるものはありますか。

【古口事務局次長】 最高裁で、現状でもこの間かなり努力をしてまいりまして、知財訴訟については相当、迅速化されております。
 例えば、地裁レベルで言いますと、過去には3年、4年かかっている事案も多かったのですが、平均1年強というような状況になっております。
 これを更に迅速化していくということが、今後の目標になるということでございますので、勿論、体制を整備しながら、更に迅速化が図れると思いますが、数字で幾らというのは、ちょっと難しいです。

【佐藤座長】 どうぞ。

【近藤参事官】 知財訴訟を担当している参事官の近藤と申します。
 高裁の方でも、かなり迅速にされておりまして、東京高裁の場合には半年ぐらいで結論を出すというような形を目標にして取り組んでいるということを聞いております。
 それから、先ほど大宅顧問からの御質問で、検討会で出された意見としては、今回の知財高等裁判所というのは、アメリカのCAFCということなんかもかなり念頭に置かれて議論をされておりました。それで、独立して、日本においても知財を専門に扱う専門性の高い裁判所が出来て、そこで判決がされると、いろいろ同じものについて、中国とかいろいろなところで日本の判決が持つ事実上の効力というのは非常に大きいのです。
 それで、産業界の人としては、そういう判決を持って現地でネゴができる、交渉ができるということは一番大きいと。アメリカのCAFCで判決が出た場合に、いろんなところで、各地でその判決を前提にしながら交渉せざるを得ないところもあって、日本で知財高裁ができた場合に、その判決を基にしていろいろな交渉ができるというのは、非常に大きなことだというふうに御指摘があったところでございます。

【佐藤座長】 大宅顧問、よろしゅうございますか。
 これに関連してもう一つの問題があります。従来、この知財訴訟に関連して、公開裁判の問題がありました。公開しての裁判になるのと、訴訟を忌避するというか、利用したがらない、利用しにくいというようなことがあったのですけれども、今回、非公開でやるというやり方を導入するということになりますね。これは非常に大きな意味を持っていると思うんですけれども、従来は、憲法第82条との関係でいろいろやかましい議論があったものですから、この辺はどういう御説明ですか。

【山崎事務局長】 これは、伊藤座長の方がお詳しいと思います。

【伊藤知的財産訴訟検討会座長】 佐藤座長の前でこういうことを申し上げるのも恐縮なのでございますけれども、憲法の公開原則との関係で、新しい制度が、合理的なものでなければいけないというのは当然のことでございます。
 そこで、私どもの検討会で進めていく際にも憲法学者の方においでいただいて、憲法学説上、こういった問題について非公開審理の制度を作ることの合理性についての御意見を賜りました。公開原則の例外の公序の意義などについての学説の御紹介や分析もちょうだいして、知的財産権の適切な保護について適正な審理を実現するという目的に照らして、必要な場合に非公開審理の可能性を認めることは、憲法上問題がないという御意見をいただき検討会で検討の結果でも、そのような結論に至りましたので、厳格な要件の下に、こういうような新しい制度を構想するに至った次第でございます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございます。この知財高裁に関連して、何かほかに、御質問いかがでしょうか。
 ちょっと細かな部分ですけれども、裁判所調査官とありますね。一般的に専門委員の拡充というようなことを意見書で言っていますが、この調査官についてをちょっと説明していただけますか。

【山崎事務局長】 これは去年、民事訴訟法の改正で専門委員制度ができたわけでして、これは別に知的財産に限らず、ほかの専門分野にも当然入ってくるものですが、ある事件単位で必要な方を専門委員に任命して行っていくという特徴を持ったものでございます。
 こちらの調査官は、従来も常勤として出向していただいている調査官がいるわけで、現実にも活動していただいているわけですが、その辺の権限が明確でないところもあった点もありますし、また、拡大した方がいいのではないかという御議論もございまして、それを法律上きちんとするということでございまして、こちらは常勤でして、事件ごと選ばれるということではありません。
 それから、専門技術性だけではなくて特許法などの法律の知識も併せて持った方ということで、少し役割が違ってくるということでございます。

【佐藤座長】 これも相当数、置くということになるわけですね。

【山崎事務局長】 これはかなり置いて、スピードアップを図るということでございます。

【佐藤座長】 もしよろしければ、次の労働審判制度などに関連して、何か御質問ないし御意見はございませんでしょうか。
 皮切りに私の方からの質問ですけれども、「不当労働行為審査制度の現状」という資料4のところを見ると、平成12年から14年の再審査は、中労委の1,566日とものすごくかかっているんですね。
 そして、民事訴訟の地裁の方はだんだん短くなってきておりますけれども、これはなぜこんなにかかるのか。労使はこれで仕方がないと思っているわけですか。何か理由があるのでしょうか。

【青木政策統括官】 驚かれたのもよく理解できるのですが、これは一つには、先ほどの措置事項にも関係してまいりますけれども、審査をやっている途中で、これはもっときっちり事実の認定をしなくてはいけないということで、この証拠を出したらどうかとか、この証人申請をしたらどうかとか、それならば、こちらも証人だというようなことで、そういう証拠調べのようなものが長くなったり、もう一つは、これは最近では短くなっていると思いますけれども、和解を何とか、労働関係でありますので、右だ左だ、マルだバツだと言ってぴしゃっと決める不当労働行為審査制度ではありますけれども、なるだけよく話を聞いて、話が相当こんがらがっているものも整理して、そして、この事件以後の労働関係が円滑に進むように、できるだけお互い納得をしてもらう、和解を勧めるというようなこともあって、そういうことで、非常に極めて慎重に、いろいろ話を聞いたりするというようなこともあるだろうと思います。
 それから、もう一つは、実際に、この措置事項にも研修、援助というのがございますが、恐らくそういう面での、事務局も含めたいろいろなノウハウの面でも若干、劣っているのかなというふうに思っております。

【佐藤座長】 いかがでしょうか。
 今の関連で、中央労働委員会の救済命令については、今までは公益委員15人全員でやっていたと。それを小委員会方式を採る。大法廷、小法廷みたいな、そういう感じになるのですか。

【青木政策統括官】 はい、おっしゃるとおりで、15人全員が集まるということで、まず、その会議を開く日程調整も大変ですし、めったに開けないということもありますが、それと同時に、例えば仮に三つに小委員会を分ければ三つ並行して走ることができますので、言わば事件の処理については3倍のスピードでできるというようなこともありますので、それと同時に、15人全員で議論をするよりも、ある程度、少人数の方が議論も深まるのではないかという気持ちもございまして、是非、そういうことでお願いしたいと思います。【佐藤座長】 菅野座長、何かこの機会に。せっかくお出ましになられておるので。

【菅野労働検討会座長】 労働審判制度というのが作られることになったことについて、本当に労使、労使の関係団体、それから労使の弁護士の方々も含めた日弁連の御努力、それから、学者の方々のいろいろな熱意、それがみんな一致して、労働調停制度というのをやることになっていましたけれども、それを包み込んだ新しい制度を作れることになったのは、大変、私たちもありがたく思っております。

【佐藤座長】 これがうまく機能すると、随分、変わってくる局面がありますか。

【菅野座長】 裁判所での普通の訴訟手続は、やはり労働事件では重過ぎるというところもありますし、これがうまく機能すれば、裁判所においても労働関係事件の特徴に即した紛争解決がかなり図られて、促進されるのではないかと思っております。

【佐藤座長】 どうぞ。

【佐々木顧問】 この「労働関係に関する専門的な知識経験を有する労働審判員2名」と書いてありますけれども、これは具体的にどういう人を想定していますか。

【山崎事務局長】 労使双方の有識者ということになります。ただ急にお願いするというのもかなり難しいので、それぞれのところでいろいろなトレーニングをしていただき、また、裁判所の方でも来ていただくためにはいろいろな努力をしなければならないということになろうかと思います。
 具体的にどこというのは、それぞれのところから推薦があった方々で判断をしていくということになると思いますが、なかなか裁判所側から一本釣りということは現実問題としてできません。そういうようなイメージで考えておりますが、菅野座長、何かその点はございますか。

【菅野座長】 やはり、労働関係の現場において御苦労された方々というイメージだと思います。労使それぞれの立場で、しかし、非常に共通の意識がありますので、そういう中で紛争の解決とか、例えばリストラの際に出てくるいろいろな難しい問題について御苦労をされたような方々、そういう方々の知識経験を生かして、迅速、適切な解決を図れるようにできるのではないか、そういう発想です。

【大宅顧問】 その審判員という方はパーマネントな職ですか。それとも、あったときにどこかにプールしてあって、来ていただくんですか。

【古口事務局次長】 ある程度の任期で選任された人の中から、個別の事件で労働審判委員会を構成していただくというような形になるのではないかと思われます。

【山崎事務局長】 家事や民事の調停委員の制度もございますが、これと同様に、一定期間任命して、事件ごとに選出していくということになると思います。

【佐藤座長】 何か関連して、ほかにいかがでしょうか。あるいはまた、司法ネットのことについてもよろしゅうございますし、何でもよろしゅうございます。
 高橋座長、せっかくですので、この司法ネットに関連して、何かお話をいただければ。

【高橋司法アクセス検討会座長】 司法ネットに関しまして、検討会でいろいろ検討いたしましたが、資料1の最後の色刷りの紙がございます。そこで、この下の方に書かれているのですが、いろいろな機関と連携・協力しながら行うのであって、補完的なポジションにあるという方向で考えております。つまり、先ほどの総合法律支援センターは補完的な役割に徹すべきだというのが検討会での大きな議論でした。民業圧迫という言葉が先ほど出ましたが、検討会でもそういう言葉が出まして、それはふさわしくないということは強く主張されております。
 それと気になるのが、個々の弁護士への、業務内容への圧力といいますか、そういうことになってはならないという、この辺を注意せよということも強く検討会では主張が出されまして、そういう方向で考えるべきだということになっております。

【佐藤座長】 まだ、もう少し議論すべき論点があるかと思いますけれども、今日は一応、1時間というように、この会議をセッティングしております。まだ御質問などおありかもしれませんけれども、そろそろ締めくくりたいと思います。
 先ほど、事務局から説明がありました司法ネット、それから、知的財産訴訟及び労働審判制度につきまして、本日の御議論を踏まえて、先ほど説明を受けたような方向で事務局において立案を行うということで、この顧問会議として了承するということでよろしゅうございますか。

(「はい」と声あり)

【佐藤座長】 ありがとうございます。
 それでは、閉会に当たりまして、野沢法務大臣から御挨拶をちょうだいしたいと思います。その前にプレスが入りますので、ちょっとお待ちいただきたいと思います。

(報道関係者入室)

【佐藤座長】 お願いします。

【野沢法務大臣】 法務大臣の野沢でございますが、御出席の皆様におかれましては、大変活発な御議論をいただき、ありがとうございました。
 本日は、この通常国会へ法案の提出を予定しているもののうち、司法ネット、知的財産訴訟への総合的対応強化、労働審判制度及び労働組合法の見直しについて、具体的な構想案をお示しし、御協議をいただきました。
 司法ネットにつきましては、小泉総理大臣からも、この顧問会議の場で検討の御指示をいただいたテーマでありますが、いずれの課題も、現下の日本の社会経済情勢を見ますと、極めて重要なものであると考えます。
 司法制度改革は、我が国司法の在り方を半世紀ぶりに見直す歴史的意義を有する改革であります。私も、大詰めを迎えた司法制度改革の達成に全力を尽くしていくつもりでございます。
 出席の皆様におかれましては、引き続き、司法制度改革に御理解と御支援のほどをよろしくお願いいたします。
 皆様からいただきました御議論は、議事録を含めまして、私、これからしっかり勉強をいたしまして、国会答弁を責任を持ってお引き受けすることになりますので、今後とも御指導、どうぞよろしくお願いします。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。
 最後に、事務局から、何か連絡事項はありますか。

【山崎事務局長】 それでは、次回でございますけれども、既に御連絡申し上げておりますけれども、来週の月曜日、2月2日で、この官邸で開催をするということになっております。よろしくお願い申し上げます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。
 今、お話のように、2月2日にまた顧問会議がございます。たくさんの法案を、この国会に提出するということになります。もう大変な作業で、事務局の方々はじめ関係者の御苦労が思われます。
 それでは、本日はどうもありがとうございました。