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司法制度改革推進本部顧問会議(第16回)議事概要



1 日 時  平成16年2月2日(月) 17:00〜18:30

2 場 所  総理大臣官邸大会議室

3 出席者

(顧問)
佐藤幸治座長、大宅映子顧問、奥島孝康顧問、小島明顧問、佐々木毅顧問、笹森清顧問

(推進本部)
小泉純一郎本部長、福田康夫副本部長、野沢太三副本部長(法務大臣)

(推進本部事務局等)
山崎潮事務局長、塩野宏行政訴訟検討会座長、井上正仁裁判員制度・刑事検討会及び公的弁護制度検討会座長、長谷部由起子司法アクセス検討会委員他

4 議事次第
(1) 開会
(2) 内閣総理大臣挨拶
(3) 平成16年通常国会提出予定法案について
(4) 閉会

5 配布資料[PDF形式]
○ 今井顧問提出意見
○ 事務局資料
 1 裁判員制度について(概要)
 2 刑事訴訟法及び検察審査会法の改正について(概要)
 3 行政訴訟制度の見直しについて(概要)
 4 弁護士報酬の敗訴者負担について(概要)

6 会議経過

(1) 開会の後、野沢副本部長から、概要、以下のような挨拶がなされた。

 本日は、先週に引き続き、この通常国会へ法案の提出を予定しているもののうち、裁判員制度、刑事訴訟法等の改正、行政事件訴訟法の改正及び弁護士報酬の敗訴者負担制度について、具体的な構想をお示しし、御協議をいただくことにしている。
 裁判員制度は国民の司法参加の制度として極めて高い関心を呼んでいるが、その他の課題も国民生活に大きな影響を及ぼすこととなるものである。前回御議論いただいた課題とともに、21世紀の我が国の社会を支える新たな司法制度を構築するために、是非、実現されるべきであると考えている。
 顧問の皆様には、大所高所に立った忌憚のない御意見をいただきたい。

(2) 小泉本部長から、概要、以下のような挨拶がなされた。

 顧問の皆様には、熱心な御審議をいただき、お礼申し上げる。  今年は、司法制度改革の総仕上げの年である。裁判員制度の導入を始めとする様々な改革を成し遂げ、「身近で、速くて、頼りがいのある司法」を実現する必要がある。  本国会には、司法制度改革のための多数の法案を提出することとしており、その成立に向け、全力で取り組んでいく。顧問の皆様にも、一層の御支援をお願いしたい。

(3) 平成16年通常国会提出予定法案について

ア 山崎事務局長から、裁判員制度、刑事訴訟法及び検察審査会法の改正、行政訴訟制度の見直し、弁護士報酬の敗訴者負担について、資料1から4までに基づいて説明がなされた。

イ 上記説明に関し、概要、以下のような質問・意見があった。


  • 裁判官が1名、裁判員が4名となる一定の場合とは具体的にはどのような場合かについて確認したい。
    (事務局から、第一回公判期日前に被告人が公訴事実を認め、検察官、被告人及び弁護人の間に異議がなく、事案の性質等を勘案して裁判所が相当と認めた場合である旨の説明がされた。)

  • 裁判官1名、裁判員4名というオプションを併用することは合理的である。裁判官3名は多すぎるのではないか。運用をして、しっかり検証をしてもらいたい。裁判官1名、裁判員4名というオプションが十分に活用される必要がある。
     守秘義務の内容が厳しすぎる。何をしたらいけないのかを明確にしないと、裁判員になることを萎縮してしまう。違反した場合に懲役刑もあり得るというのは厳しすぎる。検察審査員にも守秘義務が課されているが、違反した場合の刑は罰金だと聞いた。検察審査員について今までに守秘義務に違反して不都合な結果になったことはあるのか。
     裁判員制度の対象となる事件は重い罪の事件なので、全員一致とか、3分の2以上の賛成など、議決要件を重くすべきではないか。
     国民が参加しやすい制度にするために、裁判員になったことによって雇用上の不利益等を受けないようにしてもらいたい。法制度上の手当てが必要だろう。
     裁判員の辞退が許される場合のガイドラインを示す必要がある。
     国民への広報は重要なので、工夫してもらいたい。
     国民の側に裁判を引き寄せるという発想が必要である。法曹三者に努力をお願いしたい。

  • 国民が裁判員として参加しやすい環境を作ることは大きな課題である。守秘義務の問題、辞退の問題などがある。

  • 裁判員が全員一致で一定の結論を出しても、裁判官が全員反対すれば議決できないということだが、それでは裁判員の意見を聞き置くだけということにならないか。
    (事務局から、概要、次のとおり説明があった)

  • 裁判員制度については検証を行い、その結果は国民にお伝えしたい。

  • 守秘義務については内容を明確化し、国民によく説明をして、混乱のないようにしたいと考えている。

  • 検察審査員が検察審査会議の模様などを漏らした場合の刑は罰金である。違反をして問題になったという例は聞いていない。裁判員については、評議の秘密を守り、かつ、個人のプライバシーを守る必要があるので、懲役と罰金の選択刑とすることを考えている。運用で適切な対応をしていきたい。

  • 評決のルールについて、控訴審、上告審を通じて現在は過半数となっている。裁判員制度が適用される事件だけ特別な評決ルールを作ることは難しいと考えている。評決ルールは裁判員の意見を軽視するものではない。裁判官が全員一致で一定の結論を出しても、裁判員が全員それに反対すれば評決はできない。裁判官と裁判員双方の意見を投影するという趣旨で提案申し上げている。

  • 裁判員になったことによって不利益を受けないよう配慮したいと考えている。

  • 広報については様々な御指摘をいただいている。適切に対応したいと考えている。

  • 法曹関係者の努力が重要であるという点は御指摘のとおりである。法曹三者の意識改革が必要であると考えている。

  • 裁判員となることは義務という前提にせざるを得ないが、国民に過度の負担とならないよう、裁判所がやむを得ない事由があると認めるときは辞退できることとしている。辞退が許される事由に該当しない場合でも裁判員になることを強く拒んでおり、誠実に職務を行うことが期待できないような場合には、裁判員から除外されることになると考えている。

  • 裁判員全員の意見が一致しても、裁判官が1人でも反対すると評議が成立しないこととしたのは、裁判官と裁判員が協働するという制度趣旨が生きるようにするためである。

  • 裁判官は3人、裁判員は6人なので、1票の重みに違いがあるのではないか。
    (井上座長から、憲法にも関係する問題であるため、憲法に抵触しない形での国民参加という観点から考えて、今の案になっている。裁判官1名、裁判員4名というオプションについては、被告人、被害者双方の立場も勘案して、当事者に異議がなく、かつ、裁判所が相当と認めることを要件としたものと思う。広報については、陪審法の際には5年を費やしていたが、それくらいの努力をしていく必要があろうとの発言があった。)

  • 施行までどのくらいの期間を考えているのか。また、守秘義務違反に懲役刑を定めている例はあるのか。
    (事務局から、施行までの期間は5年くらいは必要なのではないかと考えている、諸外国でも守秘義務違反に罰則を設けており、体刑が定められている例がある旨の説明があった。)

  • 理念を確立し、その理念に照らしてどうかという視点で考える必要がある。現在の案での裁判員の人数は最低限の人数だと思う。陪審法のときのように広報活動をしっかりやってもらい、立派な制度にしてほしい。

  •  施行までの期間が長すぎるのはいかがなものかと思う。5年がいいのかどうか、議論の必要があろう。制度運用開始から一定期間後に見直しをすることも必要で、そういう機会を設けるべきである。

  •  裁判員は無作為抽出で選ぶということだが、それでは辞退が続出することにならないか。
    (事務局より、裁判員選出の際は、補充員も含めて選任が必要な数の数倍程度の候補者の中から選出することになるので、辞退が続出して制度が機能しないという心配はないものと考えている旨の説明があった。)
    (井上座長より、辞退がどの程度認められるかにも関わる問題であり、国民が参加しやすい環境を整える必要があると考えている、短期間なら参加できるという国民に、争いのない事件に裁判員として参加してもらうことも考えられるとの発言があった。)

  • 労働訴訟には弁護士報酬の敗訴者負担を導入しないでもらいたい。消費者訴訟も同様に考えてもらいたい。
    (事務局より、司法アクセス検討会で、敗訴者負担制度を導入すべきでない訴訟の範囲について、訴訟類型の観点からの検討が行われたが、それが難しかったために、各自負担を原則とし、当事者双方の共同の申立てがあった場合にのみ敗訴者負担を適用するという現在の案に至ったという経緯があり、訴訟の種類によって扱いを変えるのは難しい。実体法上の損害賠償の予定については、労働基準法、消費者契約法が規制をしており、これらの規制で対応できるのではないかと思われる。訴訟外で、この共同申立てをするとの契約をしても、それは無効とすることを考えている旨の説明があった。)
    (長谷部委員より、司法アクセス検討会では、当事者の双方が弁護士等の訴訟代理人を選任していることを要件としており、弁護士等による適切な助言により適切な判断を期待することができるので、労働者、消費者に不利益になることはない、実体法上の損害賠償の予定については、労働基準法や消費者契約法による規制で対応できるのではないか等の議論がされた旨の発言があった。)
    (塩野座長より、行政訴訟については、実効的権利救済という理念から一歩進んだと思っている旨の発言があった。)
    (佐藤座長より、塩野座長の御発言を聞いて、司法改革だけでなく行政改革も重要であると感じた旨の発言があった。)

  • 刑事裁判の迅速化のためには、準備手続をしっかりやる必要がある。証拠開示は重要である。証拠開示の基準をどうするのかが大切である。 (事務局より、開示による弊害を考慮しつつ、必要な証拠は開示される旨の説明があった。)
    (井上座長より、刑事事件記録の中には、個人のプライバシーに関わるもの、他の刑事事件に関係するものなどがあり、全てを開示するというわけにはいかないし、この問題点は司法制度改革審議会で議論した際にも指摘されていた、今回の改革は、従来に比べて大きな変革になると思っている旨の発言があった。)

  • 裁判員制度の見直しについて、検討会ではどのような議論がされたのか。
    (井上座長より、検討会では司法制度改革審議会意見を具体化するための議論をしており、制度の見直しまでの議論はなかったが、司法制度改革審議会では導入後も制度の見直しが必要であるという指摘がされていた旨の発言があった。)

(4) 裁判員制度、刑事訴訟法及び検察審査会法の改正、行政訴訟制度の見直し、弁護士報酬の敗訴者負担については、本日の議論も踏まえながら、事務局から説明のあった方向で立案作業を進めることが了承された。

(5) 野沢副本部長から、概要、以下のような挨拶がなされた。

 御出席の皆様には、大変活発な御議論をいただき、お礼申し上げる。
 司法制度改革は、いよいよ最大の山場を迎えている。裁判員制度をはじめ、この大改革を実現するためには、幾多の困難があろうかと思っているが、全力でこれに取り組む所存である。
 まずは、前回及び今回の顧問会議での御議論を踏まえつつ、鋭意、法案作成のために必要な作業を進め、速やかに法案を国会に提出することができるよう、最大限の努力をする。顧問の皆様をはじめとして、御出席の皆様には、今後とも司法制度改革の実現に御支援いただくよう、お願い申し上げる。

以 上
文責:司法制度改革推進本部事務局
注)速報のため、事後修正の可能性あり