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司法制度改革推進本部顧問会議(第17回)議事概要



1 日 時  平成16年9月8日(水) 13:00〜14:30

2 場 所  永田町庁舎第1共用会議室

3 出席者

(顧問)
佐藤幸治座長、今井敬顧問、大宅映子顧問、小島明顧問、佐々木毅顧問、志村尚子顧問

(推進本部)
野沢太三副本部長(法務大臣)

(推進本部事務局等)
山崎潮事務局長、山本和彦ADR検討会座長代理ほか

4 議事次第
(1) 開会
(2) 司法制度改革の現状
(3) 次期国会提出予定法案について
(4) 閉会

5 配布資料[PDF形式]
○ 笹森顧問提出意見
○ 事務局資料
 1 平成16年通常国会の概要
 2 法令外国語訳に関するワーキング・グループについて
 3 司法制度改革関係予算 (法務省作成資料)
 4 法科大学院への財政支援について (文部科学省作成資料)
 5 司法制度改革関連予算の概要 (最高裁判所作成資料)
 6 裁判外における法による紛争の解決の促進について(概要)
 7 司法修習生に対する貸与制について(概要)

6 会議経過

 (1) 開会の後、野沢副本部長から、概要、以下のような挨拶がなされた。

 司法制度改革関係の法案については、先の通常国会において、裁判員法、総合法律支援法など主要な法律が成立をみた。まだいくつかの課題は残っているが、司法制度改革の最大の山場を無事に越えることができたと考えている。このような成果は顧問の皆様を始め関係各位の御指導・御協力の賜物であり、この場を借りて厚く御礼申し上げる。
 本日は、次期国会予定法案についても御議論いただく予定であり、司法制度改革の総仕上げの課題として大変重要な意義を有するものであり、忌憚のない御意見をいただけるよう、お願い申し上げる。

 (2) 司法制度改革の現状について

ア 山崎事務局長から、平成16年通常国会の概要、法令外国語訳に関するワーキング・グループについて、資料1及び2に基づいて説明がなされた。
  その後、法務省、文部科学省、最高裁判所から、平成17年度概算要求における司法制度改革関連予算、法科大学院への財政支援の概要について、資料3から5に基づいて、それぞれ説明がなされた。

イ 上記説明に関し、概要、以下のような質問・意見があった。


  •  法令の外国語訳は、司法の国際化の観点から、法令全般の信頼性の高い外国語訳が体系的に整備され、国際社会に発信することが重要であり、ワーキング・グループの設置は経済界としてもありがたいが、この問題は政府全体で取り組むべきであり、検討の期間や成果として何を目指すのか、推進本部解散後の検討体制などについて、国際化検討会でも検討していただき、次回の顧問会議で報告していただきたい。

    (事務局から、概要、次のとおり説明があった。)


    •  ワーキング・グループでは大きな方針を検討して、国際化検討会に報告した後、顧問会議にも御報告したい。

    •  具体的な検討体制は決まっていないが、推進本部の設置期限の後も、検討を継続することを考えている。

  •  弁護士報酬の敗訴者負担制度については、検討会で十分に検討し、総意に基づいて法案が提出されたものであり、次期国会での成立を目指していただきたい。

  •  裁判員制度の広報の内容についてどのように検討しているのか。一般人にうまく伝える方法を、専門家に検討してもらってはどうか。正確性を期すとメリハリがなくなり、細かいことも伝えようとすると、伝えたいことが伝わらなくなる。大事なことが伝わるようにすべきではないか。

    (最高裁判所から、概要、次のとおり説明があった。)


    •  最高裁判所では、裁判員制度の広報に関する有識者の懇談会を立ち上げ、広報の専門家にも御参加いただき、国民の視点からの広報の在り方を議論していただいている。

    (法務省から、概要、次のとおり説明があった。)


    •  法務省でも、最高裁判所、日本弁護士連合会と協力しながら、裁判員制度の広報活動を行っている。なるべく分かりやすい模擬裁判を実施して多くの人に参加してもらったり、タウンミーティングの機会等を利用し国民の声も聞きながら進めていきたいと考えている。

    (座長から、裁判員制度の施行は5年後とされているが、制度の実施に向けて、2、3年後には細部まで内容が固まっている必要があるのではないか、との発言があった。)

  •  父母の葬儀等の場合に裁判員を辞退できるとされているが、裁判員に選任された時に、葬儀等は予測できないのではないか。

    (事務局から、概要、次のとおり説明があった。)


    •  選任手続のため裁判所に呼ばれた際に法廷のある日に葬式が行われることが予定されていることも考えられる。なお、裁判員に選定された後に、このような事態が生じる場合に備えて、補充裁判員を設けている。

  •  国民への広報は、年代により感覚が違うのでアプローチが難しいが、いろいろな場を活用すべきではないか。これからの世代も対象とすべきであり、教育という面で、文科省の協力を得ることも考えてはどうか。
      また、笹森顧問提出の意見書には概ね賛成である。今般の司法制度改革は、専門家に任せすぎたことの問題が発端の一つとなっている。専門家と一般の社会の意見とが切磋琢磨していく仕組みを最後まで設けるべきではないか。

    (座長から、司法制度改革そのものが、国民のための司法を目指し、広く国民が参加する改革ということでスタートしたものであり、そのような基本的な考え方は、今後の実施面でも貫く必要があると思う、との発言があった。)

  •  賛成である。多くの人が期待した以上の制度が生まれており、法務省や最高裁判所等もそれぞれの場で努力されるだろうが、国民が参加して育てるという考えが必要ではないか。国民にも盛り上がりがあり、事件当事者の意識も変わってきており、裁判も速くなってきている。このような空気を大事にすれば、裁判員制度の広報も進むのではないか。より広い分野の人が参加するフォローアップの仕組みを作って、しっかり育てていきたい。

  •  具体的な形態は別として、総合的に見ていくところに、専門家だけでなく、有識者も参加するような仕組みがあればよいと思う。

ウ 以上のような質疑応答、意見交換の結果、次のような取りまとめがされた。


    (推進本部設置期限後の体制について)

  •  司法制度改革に関する法整備は、推進本部の設置期限までに、概ね達成される見込みとなったが、設置期限後においても、司法制度改革を具体的に推進するための課題は残る。例えば、総合法律支援体制の整備、裁判員制度の施行準備など制度の実施に向けた取り組みは非常に重要な課題であり、しかるべき体制をもって、そのフォローアップなどを行う必要がある。そのため、これら制度の実施事務を所管する法務省や、フォローアップ等の総合調整を行っていくべき内閣において、それぞれ所要の体制を整備して、設置期限後においても引き続き司法制度改革の推進のための課題に対応するべきである。その形態は、様々なものが考えられるが、第三者的・国民的な視点をどのように取り込んでいくかについても考慮するべきである。

  •  今般の司法制度改革で、行政訴訟制度の改善に向けて重要な進展を見たが、なお残された大きな課題もあり、これらの課題は司法制度改革の枠をも越えた、行政の在り方、統治の構造・過程の基本に関わる側面も持っており、今後この課題に根本的に取り組む体制が整えられることを期待したい。

    (司法ネットについて)

  •  「正義へのユビキタス・アクセス社会」を実現しようとする司法ネットの構築は、今般の司法制度改革の土台であり、法律専門職との連携協力関係を築くだけではなく、各省庁がそれを具体的に支援する体制を整えることも極めて重要である。例えば、各省庁の相談窓口も司法ネットの一環として有機的に機能できるような体制作りが期待される。また、地方自治体も、「正義へのユビキタス・アクセス社会」の構築が地方自治の重要な内実をなすとの観点から、司法ネットの構築に積極的に関与することが期待され、関係省庁においてもその環境作りに力を貸していただきたい。

エ これに対して、野沢副本部長から、概要、次のとおり発言があった。


  •  今般の改革が実を結ぶには更に行うべきことも多く、今後の体制の整備が重要であると考えている。内閣や法務省で必要な体制を整備し、制度の実現に努めたいと考えており、今後も御指導を賜りたい。

  •  行政訴訟制度に関連した御指摘については、司法制度改革の枠を越える事項であり、行政や国会の御議論もいただきながら検討する必要があると考えている。

 (3) 次期国会提出予定法案について

ア 山崎事務局長から、裁判外における法による紛争の解決の促進、司法修習生に対する貸与制について、資料6及び7に基づいて説明がなされた。

イ 上記説明に関し、概要、以下のような質問・意見があった。


  •  裁判外の紛争解決は、裁判と並ぶ選択肢として国民・企業にとって重要なものであり、それを促進する法案は基本的に理解できるが、裁判外の紛争解決は今までも多くの民間機関で柔軟な形で行われているものである。認証を受けていないものが劣っているものとして、従来の民間のADR活動が阻害されることのないように、国民に分かりやすく説明してもらいたい。

    (事務局から、概要、次のとおり説明があった。)


    •  大変重要な御指摘である。自らの判断で認証の申請をしていただくことになるので、今ADRを行っているものを圧迫しないように、十分に周知してまいりたい。

    (山本座長代理から、概要、次のとおり説明があった。)


    •  今の御指摘の点は、検討会でも中心的に議論された問題であった。認証を任意の選択に委ねている中で、選択しなかったものが二級であるというような誤解が生じないようにすべきであるという意見が検討会の総意であったので、事務局における法案立案等に当たっては、十分に御配慮いただきたいと考えている。

  •  司法修習生に対する貸与制とは直接関連しないが、新旧司法試験の併存期間中における各試験の合格者数の案のようなものはできているのか。人的インフラの整備を同時に行う点が今般の司法制度改革の特色である点を忘れるべきではなく、法科大学院が発足し、批判や意見もあるが、それぞれ取り組んでいる。新しい法曹養成制度が審議会意見の趣旨に沿ったしかるべきものとなるよう、併存期間中の取扱いについて配慮すべきではないか。

  •  司法修習生に対する現在の給与額はいくらか。

    (事務局から、概要、次のとおり説明があった。)


    •  給与の月額は約20万円であり、他に諸手当も支給されており、個々の司法修習生によるが、年収では300万円前後になる。

  •  対象者は相応の収入が見込まれ、貸与制に移行しても全く問題はないと思う。ただ、法曹養成制度全体では、法科大学院の機能が大きいと思う。将来的には司法修習はなくし、法科大学院と実務に就いた後のOJTで養成するというアイデアは議論されなかったのか。また、司法修習生の受入能力が、司法試験合格者数の制約となることはないのか。

    (事務局から、概要、次のとおり説明があった。)


    •  日本の司法の実情を見ると、統一修習の理念による司法修習という共通した研修を受けないと問題が生じやすいように思われる。期間は1年に短縮するが、当面は、司法修習をなくすということにはならないと考える。

    •  司法試験合格者数を3000人に増加することを目指しているが、司法修習生3000人の受入れは、工夫により可能である。

    •  新旧司法試験の併存の問題については、新制度の理念が実現されるようにする必要があることは当然であると考えている。新旧両試験の合格者数については、司法試験委員会で検討されている。

    (座長から、概要、次のとおり発言があった。)


    •  司法修習については審議会でも議論があり、現在は、修習期間を1年に短縮して実施するということが決まっている。遠い将来のことは、法科大学院がどのように成長するかにも関連する。司法試験の合格者数も、3000人は目標であるが、上限ではなく、市場によって決定されるものである。これらの点は、将来、総合的に検討される課題である。


ウ 以上のような質疑応答、意見交換の結果、次のような取りまとめがされた。


  •  質量ともに豊かな法曹の獲得は、今般の司法制度改革の鍵である。法科大学院が基幹的な高度専門教育機関であるとの趣旨に照らし、その成長発展を促すとの国の方針にのっとり、関連諸制度の運用が図られるべきであり、特に、平成18年から始まる新司法試験の実施の在り方もこのような観点から検討されるべきである。法曹養成検討会において、もし可能であれば、このような基本的方向について検討していただきたい。

エ 裁判外における法による紛争の解決の促進、司法修習生に対する貸与制については、本日の議論も踏まえ、事務局から説明のあった方向で法案の立案作業を進めることが了承された。

 (4) 野沢副本部長から、概要、以下のような挨拶がなされた。
 

 顧問の皆様には、大変活発かつ有意義な御議論をいただき、お礼申し上げる。
 司法制度改革も、本年11月末の推進本部の設置期限を前に、いよいよ総仕上げの時期を迎えることとなった。
 今般の改革は、司法の基本的制度を半世紀ぶりに抜本的に見直す大改革であり、このような歴史的な改革に携わることができることを大変光栄に思っている。
 本日御検討いただいた課題については、皆様の御議論を踏まえ、今後の作業を進めさせていただく。皆様には、引き続き御指導、御助言を賜るようお願い申し上げる。

以 上

文責:司法制度改革推進本部事務局
注)速報のため、事後修正の可能性あり