司法制度改革推進本部顧問会議(第3回)議事録
- 1 日 時
- 平成14年3月7日(木)18時00分〜19時30分
- 2 場 所
- 総理大臣官邸大食堂
- 3 出席者
- (顧問)
佐藤幸治座長、今井敬顧問、大宅映子顧問、奥島孝康顧問、小島明顧問、佐々木毅顧問、笹森清顧問、志村尚子顧問
(推進本部)
小泉純一郎本部長(内閣総理大臣)、福田康夫副本部長(内閣官房長官)、森山眞弓副本部長(法務大臣)、安倍晋三本部長補佐(内閣官房副長官)、上野公成本部長補佐(内閣官房副長官)
(推進本部事務局)
山崎潮事務局長 他
- 4 議事次第
- (1) 開 会
(2) 内閣総理大臣あいさつ
(3) 司法制度改革推進計画(案)について
(4) 閉 会
【佐藤座長】 それでは、ただいまから「司法制度改革推進本部顧問会議」第3回会合を開催いたします。
顧問の皆様には、本日、何かと御多用のところ御出席賜りまして厚く御礼申し上げます。
本日の議題は「司法制度改革推進計画(案)について」でございます。
本日は総理に御出席いただいておりますが、総理は公務のため6時30分ごろ、途中で退席される御予定と承っております。
事務局から資料の説明をしていただく前に、御出席の顧問の皆様から推進計画、あるいは司法制度改革一般について、順に一言ずつ御意見をちょうだいできれば幸いに存じます。時間の関係で手短にお話しいただくことをお願いいたしたいと思いますが、それでは最初に今井顧問からお願いします。
【今井顧問】 今日はせっかく総理がお見えなんで、小泉改革と司法改革の位置付けということで申し上げたいと思うんです。
総理がお考えになっているのは、結局経済、あるいは民間の活力を増すということで、2つあると思うんですけれども、1つは非常に経済資源を効率の悪いところから効率のいいところへ資源を移す。例えば、官で言えば、郵便三事業とか、その出口である特殊法人をできるだけ民営化しようということです。
それから、民の問題であれば、経済政策の第1に不良債権の問題をあげられて、そして不稼働資産に張り付いている、効率の悪い銀行のお金を効率のいいところへ流そうということです。
結局、それは経済の活性化ということを、小泉改革の一番柱に据えておられると思うのですが、それを進めていくと、やはりその次に大事なことは規制改革であります。今までの事前規制というものをできるだけ外して、自由に活動するということになります。そうすると、やはり事後チェック体制が必要になる。その事後チェック体制というのを強化するのが、私はこの司法改革ではないか、小泉改革の仕上げというのが司法改革ではないかと思っております。非常に地味な問題ですけれども、これは総理が折に触れて口にしていただきたいと思っているんでございますが、その辺について総理の御見解をお伺いできればと思うわけです。
【佐藤座長】 ありがとうございます。それでは大宅顧問お願いします。
【大宅顧問】 私も同じようなことをいつもずっと考えているんですが、構造改革は項目はいっぱいありますけれども、結局のところは、官が分配を全部決定して、配給してくれて、言ってみれば押し着せですね。押し付けられていた。でも、こちら側も、向こうが決めたんだから、何か失敗があったらお前らの責任だと言えば済む。自己責任は問われないで済む。実にうまい利害関係でもってがんじがらめの国ができてしまっている。私は構造改革の実行というのは、官の決定権から全部個人、または企業でもいいんですけれども、個に決定権を取り戻すことだと。そうすると、当然今までみたいに事前に危ないから、こうしてはいけません、こんなのしてはいけませんというのではなくなるわけですから、紛争も出てくるだろう。すると、司法の出てくる場が大きくなるだろうということはそこでわかるんですが、問題は今まで日本人が法律というものがちゃんとあるのにもかかわらず、執行されていないものとかいっぱいありますよね。土地収用法にしたって。この間もちょっと言いましたけれども、駐車違反をして、張られても、大抵の人は悪かったと思わないわけです。運が悪かったと思うだけである。
だって、駐車違反を全部徹底的に取り締まるだけの人もいなければ、置いておく駐車場もなければ、どう考えてもほとんどあれは無理なんです。
もっと言えば、私はあの憲法で自衛隊があるのはどう考えてもおかしい。それをずっと温存してきた。何とか全部ごまかしながら来たという、その根っこの部分を変えない限りだめなんじゃないかなというふうに思っています。私は法律は全く苦手で、ただ、皮膚感覚で、常識で考えているだけなんですけれども、その部分をやらないと、今これを見ていると、ちょっと細かくて、技術的な部分に走っているような気がして、その根っこの部分、国民に対してこういうことですよというのをもっと大きく訴えないと、なかなかうまく動かないんじゃないかということをちょっと心配しています。
【佐藤座長】 ありがとうございます。それでは奥島顧問お願いします。
【奥島顧問】 私は司法制度の改革ということでありますが、構造改革とかいろいろ言いましても、司法制度で一番大事なのは人の養成でありまして、それをプロセスという形でもってしっかりした立派な法曹を育てようというわけでありますが、しかし、それが育ったところで、裁判官であるとか、検察官であるとかの人数が少なくては、とても機能しません。つまり、司法改革の一番のポイントはいかに優秀な法曹を育て、そして、いかにたくさんの裁判官や検察官を配置することができるかというところにすべてが掛かっているというふうに私は思っております。
幸いこの計画で見ますと、10ページにその点が、大幅な増員という表現で、非常に期待の持てる書き方がされておりますけれども、しかし、実際はここは総理大臣の強力なるリーダーシップの下に、この辺りについての明確な方向性というものをいただかないことには、私ども安心しておれないというところがございます。
そういうことで、是非とも裁判所制度、それから検察官制度ということについて、制度をいじるだけではなくて、優秀な裁判官、優秀な警察官を多数採用するという点において、特に総理の御発言を賜りたいなということをかねて考えております。
以上です。
【佐藤座長】 どうもありがとうございます。それでは小島顧問お願いします。
【小島顧問】 先ほど今井顧問がおっしゃられたことと原点は同じなんです。やはり、何のための改革かというと、日本の社会、経済、競争力。今、世界的に制度の改革競争をやっておりまして、キャッチフレーズは競争力なんです。競争力、活力なんです。ですから、これからいろいろ細かな制度改革の中でいろんな当事者の対立とかあるでしょう。しかし、対立は何のための対立かと。法曹三者間の対立というのは矮小化され過ぎますから、対立が何のために重要か。経済社会の活力、競争力につながるためにはどちらが必要なのかというところが一番のポイントではないかと思うんです。
ですから、これからいろいろ各論に入ると、対立する意見が出てくると思いますが、その対立を裁く基準というものが競争力という原点、座標軸で見るということが大事だと思うんです。
その観点で今、奥島顧問がおっしゃられた法曹人口の質と量ですが、特に質の問題ですが、何を基準にして質を考えるか。それはやはり競争力で考えると、司法を使う人々、一人ひとり、及び企業にとって、役に立つ。そういう企業や社会のニーズに応じているかどうかということが最大のポイントであって、ペーパーテスト秀才を大量生産するんではなくて、今、ニーズがどんどん変わっていますから、それに対応するということだと思うんです。
たまたまハーバード・ロースクールの科目を調べてみたんですが、例えば金融取引関連の法律とか、証券取引等の仕組みとか、特許法ですとか、知的所有権の問題とか、あるいは国際租税法、所得移転の問題、独禁法とか、そういう非常に各論。具体的に経済、企業がグローバルな競争をやっているときに、絶対に必要な情報、あるいはルール、そういうことを基本的に非常に重要な科目として教えているんです。
ですから、ニーズが何であるか。実際競争力につながるニーズというものをちゃんと押さえた上で、法科大学院についても検討していかなくちゃいけないと思います。
【佐藤座長】 ありがとうございます。それでは佐々木顧問お願いします。
【佐々木顧問】 私はこの改革は透明な形での、社会及び個人の問題解決能力を後押しするものであると考えております。
つまり、我々はこの領域というものを、問題解決能力としてこれまで十分利用してこなかったということであります。それはいろいろ今、皆さん別な角度からおっしゃられたことだと思います。
そして、この改革を私は国民意識の変化を追い風にしているというふうに思っております。大変手前味噌なことを申して恐縮ですけれども、大学という中でも、学生との紛争は法律によって解決する。ですから、学寮の問題を強制執行で我が大学はやりましたが、これは昔の教育的配慮とか何とかという、非常に混み入ったような形で物事を扱ってきた今までの社会関係の扱いとは違う。若い世代にとっては、むしろ法律を使った問題解決というのは説得性があるんじゃないか。だから、司法改革は国民の意識の変化というものを追い風にしているということを是非総理を初め皆さんにも御理解をいただきたい。
そういう意味で、いわゆる関係当事者のいろんな利害の問題にくれぐれも迷い込まないような形で、是非推進をしていただきたいという希望を持っております。
【佐藤座長】 ありがとうございます。それでは笹森顧問お願いします。
【笹森顧問】 いろんな審議会があるんですけれども、改革という名前の付いた審議会というのは2つでした。司法制度改革審議会と臨時教育改革審議会。この改革と付けるのは絶対に後退は許されないよという意味で改革と付けた審議会だったと思うので、そこの中から出されてきた意見書の内容については、是非尊重していただきたい。
その上で、なぜ改革をしなければいけなかったのか。今、各先生方も言われましたけれども、司法が国民から遠かったということだと思うんです。法はおかみの命令で国民は受ける立場よと。したがって、おかみ依存型でいればいいんだということで、国民のための司法をどうつくるのかということに切り替えたわけだから、少なくとも国民や市民から縁遠い存在ではいけないし、その上で表現的には法曹界の方もこういう言葉を使われたんだけれども、今の法曹三者、裁判官、検察官、弁護士、これは国民からちょっとあいそをつかされているんじゃないのというような存在ではいけない。このことをどうなおすのか。入ってみると、利用しやすい法曹の内容にしていく。
それから、今まで余りにも小さな司法にこだわり過ぎたのではないか。そういう意味では、大きくて、かつ、有効な司法にどうするか。これは今、意見書の問題を申し上げましたけれども、そういうことになれば、意見書の中に言われている改革の3つの柱、何人かの先生も触れられたけれども、国民の期待に応えられる司法制度の構築の問題と、人的基盤の充実の問題と、それから国民が司法に参加をするという問題、これについては是非早急に総理の指示で具現化をするということをお願いをしたい。
それから、ちょっとセクト的な、自分たちの立場の問題になって恐縮なんですが、今、雇用問題が非常に容易でない事態に追い込まれておりまして、労使紛争、個別紛争が非常に増えているという状況です。
これは論議の中でも大分出されたんですが、この個別の労使紛争に関しては、今の司法は全く無力だと私は思っています。したがって、労使代表が参加をする労働参審制について、是非総理の指示をお願いをしたい。
それから、もう一つは、これは総理に感じだけ伺っておきたいんですが、前回のこの会議の中で、最高裁の裁判官の選任の問題について、次にお答えをいただきたいと申し上げたんですが、最高責任者である総理が任命権者ですから、これについては意見書の中では、透明性・客観性を確保するということになっております。今年の場合に任期切れで退官をされる方が5人おりますので、この5名の方に対するその選任の問題について、透明性・客観性について、是非事務方の方に総理が適切な指示をお願いをできればと、この3つお願いをしておきます。
【佐藤座長】 ありがとうございます。最後になりましたけれども、志村顧問お願いします。
【志村顧問】 私は司法は行政、立法に比べましても、社会のあるべき姿を守り、他方では国民、市民の人権を守るという特別に重要な役割を担っているというふうに理解しております。
その司法制度をより強化し、よりオープンなものにするために、この推進計画案は多岐にわたる、さまざまな具体的な提案を述べておりまして、そのほとんどすべて、私も拝見しまして、非常に適切だと思いますが、余りにも多様なものですから、ちょっと焦点が見失われるのではないか。少なくとも私にとってはそういう危惧がありまして、特に2つの点を申し述べさせていただきたいと思います。
1つは、先ほど奥島顧問もおっしゃいましたが、司法は制度、法はもとよりですけれども、やはり人がその真髄であると思いまして、最も大切なことは司法に関わるすべての方々が公正・中立の立場で、また、高い倫理感を持ってその職に当たるということではないかと思います。
近年幾つかの問題がありまして、それは勿論、ごく少数の例外だとは思いますけれども、たとえ1つの例外であっても、あるべきでない姿が、国民、市民に与える影響は絶大なものがあると思いますので、この計画案にもありますように、広い視野、豊かな人間性、そして多様な経験を経て、法曹の人材育成が行われるということは非常に重要であると考えます。
2点目は、この中には法曹の量も絶対に足りないので、急速に増やす。それに当たって質も確保するというふうに述べてございますけれども、急速に数を増やすと、どうしても質の方が多少おろそかになることもあるかもしれません。その場合は、先ほど述べさせていただきました1点目の続きとしまして、量よりは質ということが正道ではないかと思います。 また、この量を増やすということもですが、最近、米国と日本の法曹人口の人口比にしましても、20対1であるということを伺って、それほどであったかと思ったんでございますが、アメリカ社会というのは余りにも訴訟に訴え過ぎる社会ではないかと私は素人なりに思っておりまして、そこまでいくのが目的ではない。何か非常に東洋的ですが極端を排して、あるべき中庸の司法、法曹の在り方と市民の関わり方を求めたいと思っております。
以上でございます。
【佐藤座長】 ありがとうございました。
最後に、皆様のお話に尽きておりまして、付け加えることはないんですけれども、私の方から一言だけ申し上げたいと思います。
司法改革の意義として、私は2つの点を特に強調しておきたいと思います。
1つは、司法改革は構造改革を可能とし、支える最もベーシックな社会的インフラの整備だということでございます。事前規制・調整型社会から、事後監視・救済型社会への転換と言うわけですけれども、これは言ってみれば、透明なルールに基づいた社会を築こうということであります。前回、小島顧問の方から世界の識者のアンケート調査では、インドネシアと同じように最下位に日本の社会の透明度が位置付けられているということだそうでありまして、非常にショックでありましたが、そういう状況から脱皮しなければいけないということが第1点。
第2点は、司法改革は教育改革の成否を握る鍵の1つだということでございます。今日も中央教育審議会で教育基本法の改正問題を議論したわけですけれども、特に文系についてなんですが、大学、大学院における高度専門職業人教育に決定的に日本は遅れを取ったというように私は認識しております。
全体社会についての批判的かつクリエイティブな発想をする人材を多く輩出し得なかったということが、今抱えている困難の根源にあるのではないか。
教育改革は勿論、初等・中等教育から考えるべきことがありますけれども、もう一つ大事な点は、上の方からと言ったら何ですけれども、大学の在り型を相当根本的に変えないと、日本の教育改革は実現できないだろうと思っております。今度の司法改革の重要な柱は、人材の養成ということでございます。それを可能とするための方策として、法科大学院構想というものを打ち出しているわけですけれども、これを教育改革の中核に据えて、1つの突破口としてやらないと、日本の教育改革は十分にはできないだろうと考えております。
そういう観点からこの司法制度改革が実現するならば、日本の社会はまさに根底から構造改革ができていくんではないか。逆に言えば、これをやらなければ構造改革につながらないんじゃないかと思っております。やや口幅ったい申し方ですけれども、それが私の感じているところでございます。
ここで本部長であられます小泉内閣総理大臣からごあいさつをちょうだいしたいと思いますが、カメラが入りますので、しばらくお待ちいただきたいと思います。
(報道関係者入室)
【内閣総理大臣】 お忙しいところありがとうございます。私は、構造改革の目指す社会というのは、努力する者が報われる社会。この司法改革というのは、正しい者が救われる社会の根幹を成すものだと思っています。
そういう点から、国民に頼りがいのある、身近な、そして正義が行き渡るというような点において、最も大事な改革の1つだと思っております。
この前「思い出の 事件を裁く 最高裁」という川柳がありまして、これは面白いなと思った。何とか裁判をもっと早くしてくれないかというのは、これは本当に国民の気持ちを表しているいい川柳だと思った。「思い出の 事件を裁く 最高裁」。やはりもっと早く執行してもらわないとね、こういう点もよく考えて、この司法改革に取り組んでいただきたいし、また皆さん方の意見を尊重していきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
どうもありがとうございました。
【佐藤座長】 総理大臣、どうもありがとうございました。
ここで総理大臣は御退室になられます。
(小泉内閣総理大臣退室)
(報道関係者退室)
【佐藤座長】 それでは、司法制度改革推進計画(案)につきまして、お諮りしたいと思います。
まず、事務局から資料の説明をお願いします。先ほどの顧問の皆様の御発言に対して、事務局の方からお答えすべきことがあれば、併せてお願いしたいと思います。
【事務局長】 それでは、私の方から御説明をさせていただきたいと思います。
この計画(案)をごらんになりながらお聞き願いたいと思います。
この計画(案)でございますが、前回の顧問会議にお諮りをしました司法制度改革推進計画(骨子)(案)を基に、各顧問からの御意見も踏まえまして、作成いたしました。
初めに、総論の部分でございますが、1ページから2ページに掛けて、「はじめに」として、本計画の趣旨、司法制度改革推進に当たっての基本的な考え方を示すとともに、最高裁判所、日本弁護士連合会における取組に対する期待を述べております。
この計画の位置付けにつきましては、前回の顧問会議でも説明させていただいておりますけれども、本計画の趣旨の部分に記載されておりますとおり、司法制度改革に関し、政府が講ずべき措置につきまして、その全体像を明らかにするとともに、本部設置期限までの間に行うことを予定するものについて、その内容、時期、法案の立案等を担当する府省などを明らかにするものでございます。
一方、最高裁、日弁連において取り組まれる事項につきましては、それぞれの立場で政府と同様の計画を作成する予定とのことでございます。前回も御説明いたしましたとおり、これらの計画と政府の計画が併せて公表されることによりまして、このたびの司法制度改革の全体像が示されることになると考えております。
次に計画で取り上げている内容でございますが、司法制度改革審議会意見において、具体的な措置や検討を行うべきとされた項目の中で、政府としてこれを行うべきものにつきましては、すべてこの計画(案)の内容に盛り込んでございます。
また、措置の内容につきましては、所要の法案、所要の措置というやや抽象的な記載になっておりますけれども、これらの内容につきましては、今後検討会等における検討を経まして、より具体的なものになっていくという趣旨でございます。
なお、前回お示しした(骨子)(案)では、法案提出以外の措置についての時期、あるいは法案の立案等を担当する府省などが記載されてございませんでしたが、この計画(案)では、これらの点も明記させていただいております。
それでは、具体的な内容につきまして、説明させていただきたいと思います。
まず2ページから7ページに掛けまして、民事司法制度の改革に関する記述がございます。例えば2ページの下の方に「民事訴訟の充実・迅速化」と題する項目がございますが、ここでは審議会意見に沿って民事訴訟事件の審理期間をおおむね半減することを目標として、以下の方策等を実施するといたしまして、更に、いわゆる計画審理を一層推進するため、審理計画を定めるための協議をすることを義務付けることとした上で、講ずべき措置として、所要の法案を提出するといたしております。
以下の項目におきましても、基本的にはこれと同様の記述がされております。
民事事件を中心とした法案、具体的には民事訴訟の充実・迅速化や知的財産関係事件を始めとする専門的知見を要する事件への対応強化などの観点からの民事訴訟法の改正案などの提出につまきしては、前回も御説明させていただきましたけれども、基本的に平成15年の通常国会に提出することを予定しています。
次に7ページから8ページに掛けてでございます。
「刑事司法制度の改革」に間する記述がここにございます。ここに書かれております「刑事裁判の充実・迅速化」「被疑者・被告人の公的弁護制度の整備」などのほか、ちょっと飛びますが、17ページ以下に、国民的基盤の確立のところに記載されております、いわゆる裁判員制度の導入、これも含めまして、刑事関係を中心とした法案につきまして、平成16年の通常国会に提出することを予定しております。
8ページから9ページに掛けましては、国際化への対応に関する記述がございます。この中では、弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働の推進の見地から、いわゆる外弁法、外国弁護士による法律事務の取り扱いに関する特別措置法でございますけれども、この改正案を平成15年の通常国会に提出する予定としております。
また、9ページの下の方から12ページに掛けてでございます。
ここは法曹人口の拡大と法曹養成制度について記載をしております。
まず法曹人口の大幅な増加につきましては、司法制度改革審議会意見の趣旨に沿って、司法試験の合格者の増加に直ちに着手することとし、法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況を見定めながら、平成22年ころには司法試験の合格者を年間3,000 人程度とすること目指すこととしております。
また、裁判所、検察庁等の人的体制の充実につきましても、全体としての法曹人口の増加を図る中で、裁判官、検察官の大幅な増員や、裁判所書記官等の裁判所職員、検察事務官等の検察庁職員の適正な増加を含む司法を支える人的基盤の充実を図ることとし、審議会意見書の趣旨に沿った充実・強化に取り組んでいくことを明らかにしておるところでございます。
更に法科大学院制度の導入に関連いたしましては、前回も御説明いたしましたとおり、司法試験法の改正案を本年中に提出する予定とさせていただいております。この秋に臨時国会が開かれるということになれば、そこに提出をしたいという意味でございます。
それから、12ページから17ページに掛けましては、弁護士、検察官、裁判官、それぞれの制度改革について記載しております。
まず弁護士制度の改革に関しましては、前回も御説明いたしましたように、司法書士、弁理士への訴訟代理権等の付与に関しまして、今通常国会に経済産業省から弁理士法の改正案が提出されているほか、司法書士法の改正案につきましても、法務省から提出される予定でございます。
また、弁護士の活動領域の拡大等に関する弁護士法の改正法案につきましても、平成15年通常国会に提出する予定でございます。
次に、検察官制度の改革に関しましては、検察審査会の建議・勧告の制度の充実・実質化に関する検察審査会法の改正法案につきまして、平成16年の通常国会に提出することを予定しております。
更に裁判官制度の改革につきましても、政府としてさまざまな事項につき、必要な対応を行っていくということが記載されております。特に裁判官制度の改革、弁護士制度の改革につきましては、前回も御説明いたしましたが、最高裁、日弁連、自らの取り組みが重要であると考えられる一方、必要な場合には、政府としても所要の対応を行うべきであると考えられますことから、それぞれの検討状況を踏まえた上で、政府としてまた検討いたしまして、なお必要な場合には、所要の措置を講ずるというような記載をさせていただいているところでございます。そのような趣旨で御理解をいただきたいと思います。
以上が司法制度改革推進計画の概要でございます。今後本部会合を経まして、3月中旬を目途に閣議決定をお願いしたいと考えておりますので、御検討の程よろしくお願いを申し上げます。
先ほど笹森顧問の方から、最高裁の裁判官の選任の透明化に関する件が言われておりましたが、この点につきましては、前回も御質問がございました。この問題につきましては、その職責が大変重大であるということ、あるいはその任命が憲法上の内閣の権限とされているということにかんがみまして、人格、識見、能力がすぐれた人物を閣議決定により選任するとともに、国民審査を受けることとされてきたところでございますが、更にその任命の透明性、客観性を確保するための方策につきましては、過去の経緯や、諸外国の例を調査する一方、運用面での対応について、どのようなやり方があるのか、私ども本部事務局におきまして、内閣官房とも協議しながら検討していくということにしたいと考えております。
以上でございます。
【佐藤座長】 どうもありがとうございました。
御質問などは後でまとめてお願いしたいと思いますが、本日、先ほども触れられたように、最高裁判所、日本弁護士連合会からの資料が提出されておりますので、こちらについても最高裁、日弁連から御説明をお願いしたいと思います。まず最高裁の方からお願いします。
【最高裁小池審議官】 それでは、最高裁から裁判所の司法制度改革推進計画要綱(案)について御説明を申し上げたいと存じます。
お手元に配布させていただきました計画要綱案でございますが、これは政府と同じく国の機関として責務を有します裁判所が、今後進めていくべき司法制度改革の推進計画の内容と、その実施時期等を明らかにしたものでございます。
この計画要綱案にお示ししましたとおり、それぞれの課題につきまして、最高裁判所規則の整備、あるいは運用上の措置等の所要の措置を今後講じていく予定でございます。
内容は多岐にわたりますが、かいつまんで御説明申し上げます。
まず、国民の期待に答える司法制度の構築という2ページ以下の項目でございますが、そのうち「民事司法制度の改革」につきましては、3ページをごらんいただきますと「民事裁判の充実・迅速化」ということが大きな課題になっておりますが、裁判所としては、計画審理の一層の推進を図ってまいりたいと。そのための措置を講じていきたいと考えております。
また、「専門的知見を要する事件」、例えば4ページになりますが、知的財産権関係事件への対応を強化するために、ここにございますような、人材を集中的に投入して、専門的処理体制を一層強化する等の方策を講じてまいりたいと考えております。
更に6ページにございますが、「裁判所の利便性を向上」させるために、法廷での人的、あるいは手続的整備のほかに、ホームページ等を活用したネットワーク化の促進、あるいはITの積極的導入といったものを講じてまいりたいと考えております。
7ページになりますが、トータルに見て紛争解決というものをより効率的、利用しやすくしていくという意味で、裁判所としても、ADRの拡充・活性化に向けたさまざまな方策について、積極的に協力をしてまいりたいと考えているところでございます。
刑事司法につきまして、8ページ以下に記載がございますが、これも多岐にわたりますけれども、1つ挙げさせていただきますと、刑事裁判の充実、あるいは迅速化のためにできるだけ連日的開廷ができるように諸制度の整備が進められていくと存じますが、運用面での必要な措置等を講じてまいりたいと考えております。
更に人的体制の関係でございますが、11ページをごらんいただきますと、法曹人口の拡大という点につきましては、11ページの下にございますが、裁判官の増員を始めとする裁判所の人的体制の充実について、所要の措置を講じてまいりたいと考えておりますし、更に法曹養成制度の改革につきましては、法科大学院の教育内容などを踏まえたものになりますように、裁判所が所管しております司法修習の内容の工夫、あるいは体制の整備について検討し、必要な措置を講じてまいりたいと考えております。
裁判所の礎というのは裁判官制度にございますが、この点につきましては、13ページから14ページにございますように、裁判所がこの問題につきましては、積極的に改革のための施策を検討し、実行していく責務を有し、また、そういったしっかりとした覚悟を持って進めてまいりたいと考えておるところでございます。
ここにるる方策が掲げてございますが、高い質の裁判官を安定的に確保していくことを目指し、ここに掲げられました方策を計画的に推し進めていく所存でございます。
16ページ以下に、司法と国民との距離感を縮めると言いますか、司法制度の国民的基盤を確立するという観点から、刑事訴訟手続への新たな国民参加の制度の導入が検討されますが、その運用上の必要な措置は裁判所として考えてまいりたいと存じますし、既にございます調停委員等の参加制度につきまして、人材の確保等の面につきまして、更に拡充を図ってまいりたいと考えております。
裁判所といたしましても、この計画案につきまして、今後政府の推進計画の公表の時期に合わせまして、今月中下旬までにその内容を確定し、公表していく所存でございます。
以上でございます。
【佐藤座長】 どうもありがとうございました。続いて、日弁連からお願いします。
【日弁連丹羽副会長】 日本弁護士連合会副会長の丹羽健介でございます。
それでは、日弁連の推進計画について御説明をさせていただきます。着席をさせていただきます。
お手元に「日本弁護士連合会司法制度改革推進計画(案)」というのを配布させていただきました。これは審議会の意見にのっとりまして、日弁連が取り組むべき課題について記載したものでございます。
以下、記載に従いまして、制度的基盤の整備、人的基盤の整備、国民参加という順序で簡単に御説明をさせていただきます。
まず、制度的基盤の整備のうち、民事司法制度改革でございます。これは2ページ以下に書かせていただきました。何よりも弁護士会といたしましては、知的財産権、あるいは労働事件、行政事件等その他の専門事件を含め一般的に弁護士の専門性の向上を、今次の司法制度改革と時期を合わせまして、取り組んでいきたいと考えている次第でございます。
なお、民事訴訟手続に関する立法におきましては、適正手続という観点からより適切な立法が行われるよう期待するとともに、そのような制度改革に伴ない、十分な対応を行っていく所存でございます。
次に刑事司法制度改革でございます。これは5ページ以下に書かせていただいております。これまで我が国にはなかった被疑者に対する公的弁護制度が導入されることになっております。弁護士会の果たすべき役割は重要であると理解しておりますので、現在ある被告人段階を含め、平成16年に所要の取り組みを行う所存でございます。
特に刑事につきましては、憲法上の人権保障の理念を踏まえ、適切な制度改革が行われますよう、必要な対応を行ってまいりたいと思っております。
それから、人的基盤の整備、つまり法曹人口の問題でございます。これは7ページに書かせていただいております。
前回の顧問会議でも御指摘があったようでございます。日弁連といたしましては、平成12年11月1日の臨時総会で、社会のさまざまな分野、地域における法的需要を満たすために、国民が必要とする数を、質を維持しながら確保するように努める旨、決議をいたしております。つまり、人口問題に積極的な方針に転換したわけでございます。
弁護士人口は、弁護士制度改革の前提であると考えております。
そのページの下の方に法曹養成の問題が書かれております。弁護士会は法曹の一翼を担うものといたしまして、法科大学院での実務家教員の派遣、司法修習、とりわけ実務修習、あるいは継続教育へ今後十分取り組んでまいりたいと考えております。
それから、私たち自身の弁護士制度の改革でございますが、これは9ページ以下に記載をさせていただいております。
記載させていただいたとおり、弁護士の社会的責任の実践、活動領域の拡大、弁護士へのアクセスの拡充、そのための法律相談センター、あるいは弁護士会が過疎地域、都市部に設立いたしましたいわゆる公設事務所実現など、更に一層推進していくことを考えております。
また、綱紀懲戒制度の整備に関しましては、去る2月28日の日弁連の臨時総会で、手続に国民が参加し、透明化を図るため、綱紀審査会という制度を導入する制度改革を決議いたしました。今後はその具体化に向けた取り組みを推進してまいります。
また、弁護士倫理につきましては、弁護士以外の委員の参加をした弁護士倫理委員会で既に昨年から改定に向けた議論を重ねております。そのほか、弁護士会運営の透明化、あるいは弁護士会の態勢の整備についても十分推進してまいりたいと考えているわけでございます。
それから、裁判官制度、検察官制度につきましては、12ページ以下に書かせていただいております。
審議会の意見によりますと、裁判官や検察官が多様な経験を積むということで、法律事務所で執務を行うという制度が提言されております。このための体制を弁護士会として整備していきたいと考えております。
なお、日弁連は裁判官、検察官への任官の推進に関し、特に裁判官に対する任官の推進に関し、既に積極的な取り組みを開始しておりますが、この関係からも裁判官の任命過程、あるいは人事制度、あるいは最高裁裁判官の選任過程等につきまして、よりよい制度改革がなされるよう期待しているところでございます。
最後に国民の司法参加の点でございますけれども、これは14ページ以下に書かれております。
国民の司法参加の具体的制度であります裁判員制度は、広く一般の国民が裁判官と責任を分担しつつ、裁判内容の決定に主体的、実質的に関与し、司法に国民的基盤を確立するという制度でございます。この制度の導入、その順調な実施のためにも、日弁連は制度改革に積極的に参画をしてまいりたいと考えております。
なお、この日弁連の計画案は審議会意見の全般にわたっておりますが、これは日弁連の今次の改革についての姿勢を御理解いただきたく考えたものによるわけでございます。
以上、簡単ではございますけれども、日弁連の司法制度改革推進計画につき、説明をさせていただきました。
【佐藤座長】 どうもありがとうございました。
それでは、先ほどの事務局からの計画案の説明につきまして、御意見・御質問をいただきたと思います。
また、ただいまの最高裁、日弁連の説明につきましても、併せて御意見、御質問があればちょうだいしたいと思います。どなたからでも結構です。
【笹森顧問】 ちょっとこだわるようで申し訳ないんですが、最高裁の裁判官の選任の問題ですが、説明された資料の17ページに載っていますね。ここには意見書と同じことが書いてあるんですが、「選任過程について透明性・客観性を確保するための適切な措置を検討する。(本部)」となっております。今の説明でもそのことを言われているんですけれども、何回も申し上げるように、5名の方が今年中に定年退官をされる。この検討している間に全部5人終わってしまって、この趣旨が生かされない。この間もなし崩しにされたんじゃ、全くおかしくなるんじゃないですかと。
要は改革をするんだと時期的なものがかなり切迫しているものについて、少しシンボリックにきちっと扱った方がいいんじゃないかというのがあるんで、検討するという部分については、実行の方になるだけいけるように、早い検討をお願いしたい。これが1つです。
それから、全体的な部分としては、一番問題になる法曹人口の拡大の問題なんですが、これは10ページでした。ここの中で第1のところの法曹人口の拡大のリードの部分の真ん中の文節のところでは、大幅な増員やというふうに確かに書いてあります。しかし、これが2の裁判所、検察庁等の人的体制の充実のところにいきますと、このリードのところに書いてある大幅な増員というのは全部にかぶるんだよという解釈すればそう読めるんですが、ここの2の(3)のところに入っていくと、「審議会意見が提言しているところを踏まえた所要の措置を講ずる」となってしまいまして、要は増員という表現が入らない。何かこれは後退するよう受け止められます。ここのところについてきちっとリードのところに書いてある大幅な増員という言葉を入れた方がいいのではないかというのが意見として1つ。
それから、全体的な定員の数から言うと、総定員法との関係についてはどうなるのかという部分で、私自身は別枠の扱いをした方がいいのではないかと思っております。
それから、もう一つは、16ページのところになりますが、「給源の多様化・多元化」の問題で、1の(2)のところですが、これは意見書と照らし合わせますと、かなり後退をした表現になっているのではないか。(2)の「特例判事補制度の計画的かつ段階的な解消の条件整備に資する方策について」、かなりもって回った言い方になっているんですけれども、意見書の中は、ここは計画的、かつ段階的に解消すべきであるというふうに断定をしているんです。
そういう表現からいくと、ちょっと趣旨が違って少し後退という表現になるんで、きちっとここは書き加えた方がいいのではないかというのが2つ目の意見です。
もう一つ、実施に当たっての責任の所在について説明がありましたけれども、8ページの「4(2)被疑者・被告人の身柄拘束に関連する問題」の中のイのところなんですが、ここの部分で扱う担当省庁が出ております。警察庁以下書いてあるんですが、これは本部が入っていないというのは何か理由があるんでしようか。これは私自身は各省庁担当任せというより、やはりコントロールするとか、全体的なものを見るということで、本部も加わるべきではないかというふうに思っております。
【佐藤座長】 以上でよろしいでしょうか。
ただいまの笹森顧問の御質問に対して、局長の方からお願いします。
【事務局長】 まず、最高裁判所判事の選任の透明性の確保という点でございます。この点につきまして、運用と法制度という2つ方法がございますけれども、法制度ということになると、これは各国の法制等をいろいろ調べる必要があるので、そう速やかにできるわけではないということは御理解をいただきたいと思います。
運用面に関しましては、私どもと内閣官房とが相談・協議をしながら検討を進めてまいりたいと思います。
ただ、いつの時点までに結論が出るかということは、今の段階では見通しはつきませんけれども、なるべく早く検討を開始したいと考えております。
それから、法曹人口の関係の10ページの件でございます。
この読み方でございますが、第1の法曹人口の拡大のところの柱書きの部分は、これは本部が設置されております3年間だけではなくて、将来にわたることを書いているわけでございますので、そういう意味で将来にわたって大幅増員をするとしているわけでございます。
その下の2のところは、この本部が設置されている期間についてどうするかということを書いているわけでございます。ですから、そういう意味では、この3年間で大幅に増員するというわけではなくて、将来にわたって大幅増員ということでございます。いずれにしても、大幅増員の趣旨は全部2のところにかぶっておりますので、決して2の趣旨が後退したわけではございません。そこを御理解をいただきたいと思います。
それから、総定員法との関係で、司法関係の定員は別枠にすべきではないかという御指摘でございます。確かにそういう問題点もないわけではございませんが、私どもは総務省の方といろいろ協議をさせていただいて、現在の公務員の数と総定員の枠との間がかなり空いているということが分かり、別枠にする必要はないとの結論に達しました。具体的には、数字はおおざっぱに申し上げますけれども、2万5,000人を超える余裕があるという状況でございまして、そういう現在の状況を踏まえますと、総定員法を改正したり、別枠とするまでもなく、現在の総定員の中の運用で十分に対応が可能ということでございます。
そういうことから、あえてここにはこの関係の記載はしていないということでございます。
ただ、ここの記載は、「審議会意見が提言しているところを踏まえた所要の措置」となっており、意見書の中には法的措置という文言がございますので、形式的には総定員法のことを受けますけれども、現状においては、その改正あるいは別枠の措置は現実には必要ないということでございます。
16ページの(2)の特例判事補制度の問題ですが、計画的かつ段階的な解消に努めるということを表わす意味で書いているわけでございますけれども、そういうふうには理解はしていただけないでしょうか。
【笹森顧問】 ちょっと読めない。
【事務局長】 私どもはその趣旨を込めて書いたつもりではございますけれども、御意見として承っておきます。
それから、8ページの被疑者・被告人の身柄拘束に関連する問題でございますが、ここの4の(2)のイのところだろうと思いますが、これにつきましては、まずそれぞれが実務をやっている担当の省庁がございますので、そこで具体的にその方策を練っていただくということでございまして、最終的にはそちらの方から、どういう結論になったかということを私どもに報告してもらいまして、必要があれば再検討を依頼するということを含んでいるわけでございますが、第1次的にはその運用に委ねるのでそれぞれの省庁でお願いをするということでございます。
そういう関係でここには特に本部ということは記載しておりませんけれども、必要があれば本部の調整という意味でこちらで再検討を依頼するというふうに考えております。
【笹森顧問】 だったら入れておいても別に差し障りはないということですね。
【事務局長】 私ども本部では運用を全く持っておりませんので、そういう意味では、事項としてかなり遠いんです。この部分については法制度を設けることは予定していませんで、まさに運用上の措置になるわけでございまして、私ども本部としては法制度にしか関与できず、運用上の問題には全くタッチできないわけでございます。そういう関係から本部を除いているということでございます。
【今井顧問】 前回欠席したんですが、私のコメントを読み上げていただいて、それが今日お出しいただいた推進計画の中で取り上げていただきまして、誠にありがとうございました。
それから、前回最高裁と日弁連の計画が出てまいりまして、それに対して前回意見を申し上げる機会がなかったので、ちょっと申しあげたいと思うんですが、弁護士というのは、我々経済界、あるいは国民との一番接点でございますから、この弁護士制度の改革というのは非常に重要だと私ども認識しております。今日、日弁連のを拝見いたしますと、さっき御説明いただいたように、10ページに弁護士報酬の透明化・合理化のことがうたわれております。
それから、11ページに「弁護士倫理等に関する弁護士会の体制の整備」ということがうたわれておりまして、これは大変期待を寄せているところでございます。弁護士報酬の問題につきましては、透明化、合理化の中で、できるだけ競争を通じたサービスの向上ということをお考えいただきたいと思っております。
それから、11ページの倫理の問題につきましては、先ほどちょっとお話がございましたけれども、日弁連の総会で綱紀懲戒制度に国民が参加する手続をお決めになったという御説明がございました。これは大変に結構なことだと思います。こういうのをこの計画の中に取り込まれたらいかがかと思うわけでございます。
もう一つは、大分先のことになるんですが、裁判員制度というのは非常に重要な問題だと思います。これに関しまして、私が伺ったところで、3月2日に東京第一弁護士会が模擬裁判を行われた。そして4つの裁判員のユニットをつくって、量刑まで検討したら、ほとんど結論が同じだったというようなことを伺っているんですけれども、非常にこの制度に関心の高い方が集まってやったんで4つとも同じになったんじゃないかと思うんです。バックグラウンドが違う人が集まったら、結論が大分違ったのではないか。この制度は非常に大事なものですから、今後それを最終的に決めるまでに、こういった試行錯誤を繰り返して、できるだけいい制度にするということは非常に大事なのではないかと思います。
その点、申し上げておきます。
【佐藤座長】 日弁連の方から、ただいまの今井顧問のお話に対して何か。
【日弁連丹羽副会長】 報酬につきましては、今、会内でできるだけ透明化、合理化を図るよう検討中でございますので、ただ今の御意見を検討させていただきたいと思っております。第2点の綱紀懲戒につきましては、大変御丁重な御質問と考えさせていただきます。是非2月28日の臨時総会の問題についても、今日は案でございましたけれども、計画に記入するよう検討させていただきます。
それから、3月2日の模擬裁判、大変ありがとうございました。実は私は第一東京弁護士会の会長をいたしております。模擬裁判は、第一東京弁護士会で主催をさせていただいたものですが、新聞に前日に載ったのと、テレビで取材があったものですから、テレビに出ただけでして、特にこのグループとか何かということで、動員をしたことは全くありません。
裁判員の人も壇上に上っていただいた方は、あらかじめいろんなグループにお願いいたしました。正直申し上げまして、経団連さんにもお願いしましたし、消費者の団体とか、その他いろんな団体がありました。あとの裁判員はその日来た方を抽選でお願いしたわけです。
ところが、どういうわけかああいうことになったわけです。私も実はあの辺はびっくりしたという感じですが、最初から最後まで見ておりましたので、そういう経過でございます。
私どもで会場アンケートを取りましたところ、400 人近い方からアンケートをいただいたと思いますので、その辺を含め今後分析いたしまして、この制度が我が国にとってどういうことなのかということを検討していきたいと考えております。
【佐藤座長】 最後の点ですけれども、裁判員制度は国民に義務をお願いする話でありますので、審議会の意見書も制度設計の段階から国民に対し十分な情報を提供し、その意見に十分耳を傾ける必要があるということを指摘しております。この裁判員制度は16年提出ですか。
【事務局長】 16年です。
【佐藤座長】 そこに至るまででも、国民のいろんな声を吸い上げると言いますか、意見を汲み上げる工夫が必要なんじゃないか。また、つくった後も実際に実施する段階まで更に周知徹底させるとか、いろんな工夫が必要な事柄じゃないかと考えております。
【今井顧問】 いろんな試みをやって、間違いのないようにして下さい。
【佐藤座長】 ほかにいかがでしょうか。
【笹森顧問】 2ページのところで民事司法制度の改革の問題を説明されたんですが、法制審でやられている部分と、検討会でこれは扱うんでしたか。
【事務局長】 法制審と、こちらの検討会の関係でございますか。法制審で今お願いしているのは、法務省としても独自に関心があったから取り上げているわけでございますが、この関係ではかなり法技術的なところがいろいろございまして、そういう点を詰めてもらうために、本部としても法制審にお願いしているわけでございます。そこで本部及び法務省と記載しているのですが、法務省で提出するのか、本部で提出するのか、まだ最終的に決まっておりません。いずれ法制審の方である程度まとまったら本部の方でも検討し、必要な意見は法制審の方に申し上げることにする、こういうふうに考えております。
【佐藤座長】 さっきの笹森さんのお話の中の1つに、特例判事補のことがありました。段階的、計画的に解消するという趣旨は全く変わりはないということですね。
【事務局長】 そういう趣旨を表すように書いておりますが、物足りないという御指摘でございますけれども。
【佐藤座長】 少なくともそのことは今日ここで確認しておくということにしたいと思います。
【小島顧問】 審理期間をおおむね半減すると。いつまでにというイメージが付いてこないんですが、知的財産権関係についてもおおむね半減とありますが、特にビジネス関係はすごく世の中の変化が激しいですから、スピードが生命なんです。そこをどうやって確保するかというのは決定的に重要だと思いますし、先ほど総理が痛烈な意味のある川柳をおっしゃいましたね。
「思い出の、事件を裁く、最高裁」。最高裁の方がいらっしゃいますが、例えばオウム真理教の話でも、どこで法の解釈が行われるかわからない。5年、6年、10年という期間を空にするということは、法律があっても法の判断、解釈が停止しているということですから、法律及び司法制度が仮死状態にあるということです。そういうものが多いというのは、法治国家として恥ずべきことだと思うんです。そういう事態について、痛烈な川柳を紹介されたと思いますが、その辺の問題意識というか、どういうふうに受け止めていらっしゃるのか。
あるいはこの改革については、おおむね半減というより、何かもっと、いつまでにということも含めて、法制度が仮死状態から救出されるような工夫をすることが必要ではないかと感じもするんですが、いかがでしょうか。
【佐藤座長】 意見書では、民事司法についてはおおむね半減、刑事司法についは充実・迅速化という書き方になっているんですけれども、今の点について。
【事務局長】 たしか民事の方はおおむね半減ということで書かれています。
もう一つ迅速化の方策は、審理計画を立てて、それを守らせるという形でスピードアップを図るということでこの中に書かれているわけでございます。この点を是非実現したいと思います。
刑事の方も、これから裁判員制度を入れていくわけでございますので、それに伴いまして、手続を迅速化できるようにしなければ協力を得られないということになりますから、ここでも迅速化するような手続を導入するということが前提になっております。ただ、刑事の場合は、いろいろ人権問題も絡みますので、期間を半減とか書けませんけれども、制度の中でなるべく迅速にできるように担保するようなものを考えていきたいと思っております。
また、これからの具体的な検討でございますので、その点を十分頭に入れながら、分析していきたいと思っております。
【佐藤座長】 刑事司法そのものの在り方として、連日的開廷ということを言い、そして裁判員制度が導入されることによって、そのことの現実化の可能性というものが視野に入ってくるという構造に、意見書はなっている。
【事務局長】 連日的開廷は当然検討の対象です。
【佐藤座長】 そのためには、弁護体制とか全体のシステムを整えないと。精神論だけでできることではないので、いろんなことを考える必要があるということだろうと思います。
【佐々木顧問】 今の民事裁判の迅速化の件についての小島顧問の御指摘は大変重要だと思います。私が知っている関係で言いますと、例の選挙違反の裁判ですね。あれが昔は随分時間が掛かったんです。これを極めて迅速化するということが、腐敗の問題から連座制の問題など、明らかに制度運用の実効性に重大な影響を及ぼしているという実例がありますので、半減というのは、いわゆる最低目標というか、できるだけ早くするというような形で考える方が私は大事じゃないだろうか。勿論、早いばかりがというわけじゃないですが、不確定な時間を長い間放置しておくということ自体が、特に経済的な案件について、言わば時間がクリティカルなものだという意味では、私も小島さんの意見に非常に賛成で、この辺については今後一層の努力をしていただくべきではないかと思います。
【佐藤座長】 確かにそうですね。
【大宅顧問】 全然違う話ですけれども、いいですか。
ADRというのが出てきて、一生懸命意見をひっくり返したら基の言葉がわかったので意味はよくわかったんですけれども、このままいくと、このままADRでいってしまいそうな気がするんです。説明を読んでも、イメージがよくわからないんです。裁判所以外の行政機関、民間団体、弁護士会などによって仲裁とか調停とかあっせんとかされる。例えばどんなことがあったのか教えていただきたいという気がするんですよ。
国民にわかりやすい、親しみやすいと言っているのに、このADRがこのまま進んでしまうと、もう全然。
【佐藤座長】 局長、何か。
【事務局長】 ADRと使うのがいいのかわかりませんが、裁判外の紛争処理という意味です。
【大宅顧問】 例えばどんなことですか。
【事務局長】 典型的なのが、建築紛争で、雨漏りがあったり、ドアが開かないとか、そういう関係の建築紛争については、事前に契約がありまして、その解決は裁判で行わずに各都道府県にございます建築紛争審査会で仲裁で行うということを約束しております。そういう契約をしておりますと、その審査会で解決することとし、裁判所には行かないということになります。
弁護士会でも、仲裁センターを設け、あっせんだとか、話し合いによる解決を図っております。仲裁というのは両者が合意をして、仲裁人の決定に従うというものでして、裁判所には行かないということになります。裁判所に行かないで紛争が終わるということでかなり紛争解決機能を果たしております。それ以外にもいろいろな機関がございます。
要するに、訴訟社会になっては困るわけでございまして、そうならないように、裁判所に行かないで解決できるものはADRで解決しようという考え方によるものでして、そこの機能を充実化しようという考えでございます。
【佐藤座長】 ぴたっとした訳があれば一番いいんですけれども。
【事務局長】 オールターナティブ・ディスピュート・レゾリューション、日本語で考えますと何か余りぴんと来ないんですが。
【佐藤座長】 確かにさっき佐々木顧問が指摘されたようなこともあって、日本の場合時間が掛かったり、いろいろ証拠収集などの問題があるものだから、日本の企業が外国の司法を使う。そういうこともよく指摘されます。大変ですけれども、これに取り組まないと実際に実現しない。
ほかにいかがでしょぅか。
【小島顧問】 前にもちょっと言いましたが、検討会での議論がそれぞれどういうところで意見が行われているのか。だれが、どういう趣旨で言われているのか。そういうものがこちらに伝わってこないと議論ができないですね。
もう一つ、検討会の半分は実名を入れて情報公開すると。半分はそうでないと。どうして分かれてしまうのか、やはり透明な司法制度をつくるというときに、不透明な議論をしているんではおかしいんではないかと思うんです。
中には、実名を出すと違うことを言うという人がいるのかもしれませんが、こんな人はメンバーから外していただいた方がいいんじゃないですか。どうなんですか。非公開を求める人は、何か職業的な特性があるんですか。
【事務局長】 検討会の議論でございますが、いずれある程度まとまった段階で顧問会議にお諮りをいたします。そのときにはきちっとまとまった資料をお出ししたいと思いますが、私どものホームページがございまして、そこに検討会で行われた資料、議事録は全部登載されておりますので、もし急いでごらんになりたければ、そちらを見ていただければと思いますし、また、御用命いただければお届けをするということにしたいと思います。そういうことでよろしゅうございましょうか。
それから、検討会の議事録の関係でございます。現在、10の検討会のうち5つが発言者の氏名を出し、5つが氏名を出さないで議事録をつくるということになっておりまして、取扱いが分かれております。
私ども事務局といたしましては、最終的には法案をつくっていくという使命を抱えておりまして、検討会は事務局と一体となって法案立案作業をやっていただくという性質のものでございます。ですから、かなり細かい点、あるいは技術的な面を詰め、議論もあっちへ行ったりこっちへ行ったり、試行錯誤しながら、最終的に成案ができていくという性格を持っておりまして、そういう場合に、どうしてもあっちへ行ったりこっちへ行ったりで、前にこう言ったじゃないか、今度はこう言っている、何だ矛盾しているなどといろいろ言われる場合もあり得るということを大変気にする方もおられます。
それから、プライバシー、場合によっては秘密にわたる事項もあるとか、各人にいろいろな御意見がございましたので、そのところは全部その検討会のメンバーにお任せしましてメンバーの方々で決めていただきますということで、事務局としては一切その点には関与しないという形でやらしていただきました。それがたまたま5対5に分かれたということでございまして、特定のところがどうのこうのという傾向ではございません。同じような、類似した検討会でも、片方はオープン、片方はオープンにしないというふうに分かれました。私はそれは逆に民主的なやり方であると理解をしております。
【佐藤座長】 検討会での議論状況の顧問会議への反映の仕方ですけれども、やはり節目節目にきちっと報告していただかないといけないと思うんです。事柄によっては早く決めて進んでいかなければいけないものもあります。例えば法科大学院ですけれども、2004年に立ち上げるとすると、早目に制度的仕組みを明らかにする必要があります。大学側として、人事などの手当てをし始めないと、2004年に立ち上がれません。中教審では、できたら6月くらいに、設置基準について最終報告を出したいと思っています。出さなければ間に合いませんので、そういう段取りです。法曹養成検討会で検討が進められておりますが、その検討状況などもここに報告していただいて、4月、あるいは5月になるかもしれませんけれどけも、そう遠くない時期に、ここにお諮りして御相談したいと考えております。これはたまたま法科大学院ですけれども、ほかのテーマにいても、そういうことがあるかと思います。顧問の皆様には十分検討状況が反映されるように心掛けたいと考えております。
【奥島顧問】 15ページの上の方の(2)に「いわゆる特任検事、副検事、簡易裁判所判事の経験者の活用等を検討し、少なくとも、いわゆる特任検事経験者に対して法曹資格を付与するための所要の法案を提出する」。この特任検事が難しいということについては、司法試験の比ではないということについて、知れわたっておりますから、これについてはまるっきり問題はないんだろうと思っておりますけれども、問題は副検事だとか簡易裁判所の判事が、これからの法曹人口の増加によって、こういう人たちの採用が少なくなっていくというか、ほとんどいなくなってくるというか、それはどういうことになるんでしょうか。その辺りとの関係で私も意見を申し上げたいと思いますが、お聞きしたいと思います。
【事務局長】 副検事、簡易裁判所の判事は、それぞれの役割がございますので、それ自体がなくなっていくということではないと私は理解をしております。ただ、現在、検事が非常に足りなくて、足りないところを副検事が補っているという実態が一部にございますが、そういうものは解消していかざるを得ないと思っております。
それから、簡易裁判所の判事でございますけれども、いわゆる法曹資格のない方もなっておりますけれども、そういう方々が必要なくなるということではございません。今後もこの制度は続くだろうと思います。
【奥島顧問】 そういうことであると考えてみますと、この人たちが今まで扱われたより不当に法曹資格の上で差別を受けるというのは、余り適当ではないという意見を私は持っておりますので、一言申し添えておきます。
【佐藤座長】 その点は審議会でも認識されておりました。簡易裁判所判事とか、副検事についても、理論上は将来の課題としてある。けれども、まずは特任検事経験者について考えようということで、意見書の書き方もそういうふうになっているものですから、局長が聞かれても答えにくいところがあるかもしれません。
【奥島顧問】 恐らく特任検事についてはだれ一人文句はないと私は理解しておりますけれども、しかし、副検事であるとか、簡易裁判所判事につきまして、従来の扱いからいくと、ここでこの人たちが不利益を受けるということにはならないように考える必要があるんじゃないかということは、私もそう思っておりますので、申し上げました。
【事務局長】 御意見を踏まえまして、検討会の方でいろいろ検討させていただくということにいたします。
【佐藤座長】 まだ御意見がいろいろおありかもしれませんけれども、時間の関係もありますので、本日の御議論はこの程度にさせていただきたいと思います。
推進計画については、本部会合を経て、3月中旬の閣議決定を予定されているということであります。
推進本部においては、今日の会議で出ました意見を推進計画に適切に反映していただきたいと考えております。
本日予定しておりました議事は以上のとおりでございますけれども、閉会に当たりまして、副本部長の方から何かございましたらどうぞ。
【法務大臣】 大変お忙しいところ、遅くまで、大変御熱心に、具体的な御意見をたくさん出していただきまして、本当にありがとうございました。
今日はまた総理とも直接話し合っていただく時間が、短くはございましたが、ございまして、よかったと思います。御指摘のいろんな点を踏まえまして、速くて、近くて、便利な司法制度をつくっていくように、今後も頑張っていきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。
ありがとうございました。
【佐藤座長】 どうもありがとうございました。
最後に事務局から何か連絡事項がありますか。
【事務局長】 次回以降は未定でございますが、一番トップを走ります法科大学院関係、司法試験関係をそう遠くない時期に、お諮りをしたいと思っております。一度ではなかなか全部議論し尽くせないと思いますので、何回かになるとは思いますが、日程等はまた御案内申し上げますので、よろしくお願い申し上げます。
【佐藤座長】 それでは、本日はこれで終了させていただきます。御多忙の中、本当にありがとうございました。
−以上−
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