司法制度改革推進本部顧問会議(第4回)議事録
- 日 時
- 平成14年5月16日(木)18時〜19時40分
- 場 所
- 総理大臣官邸大会議室
- 出席者
- (顧問)
佐藤幸治座長、今井敬顧問、大宅映子顧問、奥島孝康顧問、小島明顧問、佐々木毅顧問、笹森清顧問、志村尚子顧問
(推進本部)
森山眞弓副本部長(法務大臣)、古川貞二郎本部長補佐(内閣官房副長官)
(事務局)
山崎潮事務局長 他
- 議事次第
- 1 開 会
2 検討会の検討状況等について
3 法曹養成制度について
4 その他
5 閉 会
【事務局長】 それでは、佐藤座長、お願いいたします。
【佐藤座長】 それでは、ただいまから「司法制度改革推進本部顧問会議」第4回会合を開会いたします。顧問の皆様には、お忙しいところをおでましいただきまして、本当にありがとうございます。
大宅顧問がちょっと遅れられるということでございます。
それでは、議事次第に従いまして、まず「検討会の検討状況等について」事務局から御報告をお願いしたいと思います。
よろしくお願いいたします。
【事務局長】 それでは、私の方から、現在までの司法制度改革の進捗状況につきまして、簡単に御説明を申し上げます。
まず、法案の関係でございますけれども、司法制度改革関連法のトップを切りまして、この通常国会に弁理士法の一部を改正する法律案が、経済産業省から提出されました。
また、司法書士法及び土地家屋調査士法の一部を改正する法律案が、法務省から提出されました。
弁理士法の改正法案は、弁理士に特許権等の侵害訴訟の代理権を付与することなどを内容とするものでございまして、4月11日に成立し、17日に公布されております。公布の日から1年以内の政令で定める日から施行される予定となっております。
また、司法書士法等の改正法案は、司法書士に簡易裁判所での訴訟代理権を付与することなどを内容とするものでございますが、4月24日に成立し、5月7日に公布されております。こちらは、平成15年4月1日に施行される予定でございます。
これが法案の関係でございます。
次に検討会を中心としました検討状況について御説明をいたします。
お手元の資料1をご覧いただきたいと思います。事務局におきまして、現在10の検討会を開催するなどいたしまして、検討作業を継続中でございますけれども、この資料はその状況を簡潔に整理したものでございます。
この中でも、下から2番目の「法曹養成検討会」につきましては、本年秋にも法案を提出すべく、急ピッチで検討を進めているところでございます。既に法科大学院の第三者評価の在り方、第三者評価基準の在り方、新司法試験の在り方につきまして、本年3月末の段階で意見を整理し、司法修習につきましても検討を開始したところでございます。
この意見の整理の内容につきましては、後ほど御説明を申し上げます。
これ以外の検討会におきましては、基本的には全体的な検討の進め方についての議論を行った後、主として制度の概要説明、関係者からのヒアリング等を行っているところでございます。今後、論点整理、論点に関する検討などが進められていくことになると思われます。
特に、平成15年の通常国会への法案提出を予定している事項につきましては、早急に検討を進めてまいりたいと考えております。
このほかに、今日はここにペーパーはございませんけれども、他の審議会等で検討されているものについて、若干御紹介を申し上げます。
民事裁判の充実・迅速化、専門的知見を要する事件への対応強化、家庭裁判所・簡易裁判所の機能の充実、民事執行制度の強化などの民事司法制度の改革につきましては、法務省の法制審議会において検討が進められております。
法制審議会に民事・人事訴訟法部会がございますが、そこで計画審理・証拠収集手続の拡充、専門委員制度の導入、簡易裁判所の機能の充実、人事訴訟手続の家庭裁判所への移管の在り方等についての議論が行われております。
また、担保・執行法制部会がございますが、そこでは債務者の履行促進のための方策、債務者の財産を把握する ための方策、いわゆる占有屋等による不動産執行妨害への対策、少額定期給付債務の履行確保等についての議論が行われているところでございます。
今後、本年末から来年始めにかけまして、要綱が取りまとめられる予定と伺っております。
更に法曹養成に関しましては、文部科学省の中央教育審議会においても検討が進められておりまして、4月18日には法科大学院の設置基準等について中間報告をとりまとめております。この内容については、後ほど若干触れたいと思っております。
今後、6月末を目途に答申をとりまとめる予定であるというふうに伺っております。
以上が、現在までの司法制度改革全体の進捗状況でございますけれども、検討会を中心といたします進捗状況につきましては、今後逐次御報告をさせていただきたいというふうに考えております。
具体的には、状況が変わっていけば一覧表を更新をして、その内容について御説明をするというようなことを考えております。
以上でございます。
【佐藤座長】 ありがとうございました。10の検討会があって、全体がわかりにくいというお声も聞いておりまして、事務局の方でただいま説明していただいたような形で整理していただきました。
今の説明について、何かお尋ねになりたいようなところございませんでしょうか。
どうぞ。
【笹森顧問】 1回目でしたか2回目でしたか、検討会とこの顧問会議との関わりの問題については、報告を聞いてああそうですかということになりかねないんじゃないかというふうに思ったんですけれども、今日コンパクトにまとめていただいたのは、これはこれなりに評価できるんですけれども、例えば法曹養成制度の問題も法曹養成検討会の中でやられていて、まとまっていくところにどこにどう意見を言うかということなんです。今、伺った中でも検討の進捗状況の関係から言うと、書いてある数字で言うと2回〜7回まで、検討されている内容に非常に差異がありますね。一番進んでいるから法曹養成の問題が出てくるのかなと思うんだけれども、ここから今度具体的な立案作業に入ってくる段階になりますね。そうすると、それはどうしても中身的に言えば、専門的・技術的になってくると、そして扱い方としてはもっともっと縦割りになって、狭い範囲の中でということになりかねないというふうに危惧されます。
私は、この顧問会議が単なる御目付けだとかではなくて、中身的にもどうするかということを全体的にコントロールしないといけないと思っているんです。そうなってくると、専門的・技術的になって、佐々木先生だとか、その他の先生もみんな専門家だからいいんだけれども、私だけがそうかもしれませんが、素人の付焼刃で幾ら勉強していったって、この論議に入れなくなっていくという危険性があると思うんです。
今もちょっとそういうことが外から指摘され始めているんだけれども、事務局主導型になってはいけないと言いながらなっていくんじゃないか。これをまずどういうふうに、この顧問会議と検討会の問題をどう整理するか。
もともとの司法制度改革というのが、国民のための、利用する人のための司法にどう変えるかというところが基本的な問題であったわけで、それが司法制度改革審議会の意見書の趣旨になっていたというふうに思うです。そうなると、その趣旨が十分にいかせる運営ということを、特に考えなければいけない。
その場合に、今やられているのが、議事録の公開はしますと、マスコミに対しても限定的な公開はやりますと言われているんだけれども、では関連する検討会とこの顧問会議とのやり取り中で、具体的にもう少し専門的・技術的に意見交換をするということが必要だとするならば、ほかの委員会でも若干あるんですが、合同の検討会なり合同の運営委員会というものを一つ考えていく必要があるのかなと思います。
その上で、何が検討されているのかということについて、国民や利用者に向けてどう発信するのか、この発信手法についても、後でフリーの意見交換の場というのが設定されているというふうに事前に聞いていますので、その中の意見交換の素材になるかと思いますが、これをこの顧問会議の中で明確に出していかなければいけないんじゃないかというふうに思っていますので、このコンパクトにまとめた報告については評価するけれども、ここから先が非常に大切ですということを申し上げておきたいと思います。
【佐藤座長】 ありがとうございます。御趣旨はよくわかります。かねて顧問の皆様から御意見をいただいているところですが、我々の顧問会議が単なる追認機関になってはいけないということについては、顧問の皆様方共通の御認識かと思います。
専門的な検討はそれぞれの検討会で行われるわけですけれども、その中でこの問題はという非常に大事なものがあるはずなんですね。だから、その問題については、必要な時点でここに出していただいて、御議論をいただくという方針は、これからも貫いていきたいと思います。
今日は、法曹養成検討会の方での検討が詰まってきておりますので、次にこの問題について少し詳しく御報告をいただいて、御議論賜りたいと思っております。
検討会は、この顧問会議の単なる下部機構ではないということは御承知のとおりでありますけれども、さはさりながら検討会と我々との意思の疎通ということも考える必要があるんじゃないかと考えます。それで、どういう方法があるかということについては、事務局とも今後相談させていただいて、何か適当なものがないかどうか考えたいと思っております。
それから、最後にお触れになった点については、今日時間は必ずしも十分ではないかもしれませんけれども、自由討議の時間を取っておりまして、この顧問会議として国民に発信することも少し念頭に置いて御議論いただいた方がいいんではないかと思っておりますので、それは後の方で御相談申し上げたいというように思っております。
事務局長の方から、何か付け加えることありますか。
【事務局長】 ただいま御指摘の点も踏まえまして、座長とよく相談をさせていただきまして、どういう方法があるか具体的に検討したいと思いますので、若干お時間をいただきたいと思います。
【佐藤座長】 今の点は、この辺でよろしいでしょうか。
【笹森顧問】 はい。
【佐藤座長】 今の検討会の状況について、ほかにいかがでしょうか。
では、この表をできるだけリフレッシュして、検討状況が一覧的によくわかるように、これからもやっていただきたいと思います。また、先ほどの御希望の点についてもこれから工夫していく必要があると思いますので、その辺またよろしくお願いいたします。
それでは、次の議題であります「法曹養成制度について」に入りたいと思います。まず最初に、事務局から資料の説明をお願いします。
【事務局長】 この議事次第に書かれておりますけれども、資料が1〜10ございます。私の御説明申し上げる順番に大体並んでいると思いますで、これを見ながらお聞きをいただきたいと思います。
それでは、御説明申し上げます。
まず、資料2でございます。これは、法曹養成制度の改革に関する司法制度改革審議会の基本的な考え方を1枚にまとめたものでございます。ここに示されておりますように、今般の司法制度改革では、司法試験という点のみによる選抜から、法科大学院を中核とするプロセスとしての法曹養成の仕組みに改めていくとされているわけでございます。
法科大学院では、司法試験及び司法修習との有機的な連携を持ちつつ、少人数で密度の濃い教育を行うこととされております。
また、実務家教員を確保すること、厳格な成績評価を行うこと、第三者評価を実施することも求められているわけでございます。これが前提になるわけでございます。
次に、資料3をご覧いただきたいと思います。これは、新しい法曹養成制度に関する全体的な検討状況をとりまとめたものでございます。
法科大学院の在り方を検討する際には、司法制度改革としての検討だけではなく、大学教育改革全体の流れをも踏まえる必要がございますが、その両方の観点からの検討が、それぞれ行われているわけでございます。
まず、設置認可につきましては、大学改革全体の中で、必要最小限のチェックに限定する方向となっており、そうした流れをも踏まえつつ、文部科学省の中央教育審議会において検討が行われております。
その一方で、第三者による事後的、あるいは継続的な評価を新たに整備をいたしまして、教育の質を確保することとされております。
大学全体の第三者評価の在り方につきましては、中央教育審議会で検討がされておりますが、法科大学院の場合には評価の結果が新司法試験の受験資格とも結び付くという特別な事情がありまして、法科大学院の第三者評価基準の在り方につきましては、この当本部事務局の法曹養成検討会で検討をしているところでございます。また、法科大学院の教育内容を踏まえた、新しい司法試験の実施等についても、法曹養成検討会において検討をしております。
なお、司法修習につきましては、法曹養成検討会におきまして、これから具体的に検討を行うという状況でございます。本日は、そういう関係から、この点についての御報告はございません。
続きまして、具体的な検討状況についての説明に移らせていただきます。これは、資料4〜6まででございます。この資料4〜6は、本年3月末の段階で、法曹養成検討会における意見を整理したものでございます。資料4は、第三者評価、すなわち適格認定でございますけれども、その在り方についての意見の整理でございます。ここでは、大学の質の保証に係る新たなシステムとしての第三者評価との関係が問題となるわけでございますが、
法科大学院に対する第三者評価を、大学制度全般の第三者評価のスキームの一環として位置付けるのかどうかという問題。
評価基準について、第三者評価機関の自主性をどの程度尊重するのかという問題。
法令、行政による規律を、どのようにするかという問題。
第三者評価機関は、複数あり得るものとするかどうかといった問題。
これらの点が論点となると考えられるわけでございます。
これらにつきまして、まず「1」に記載してございますように、第三者評価につきましては、法科大学院における教育の質の維持・向上を図る観点から、文部科学省で検討中の大学制度全般、とりわけ専門職大学院の第三者評価のスキーム全体の一環として位置付けることが適切であると考えられるわけでございますが、その一方で法科大学院の適格認定の結果は、新司法試験の受験資格と結び付くものであることから、その法制的整備に当たっては、ミニマム・スタンダードに適合しているかどうかの認定を行うスキームを構築することが、不可欠であるとされているわけでございます。
そして「2」に記載してありますとおり、第三者評価の基準については、法科大学院の教育の質の維持・向上を図る観点からのものは、最終的には第三者評価機関が定めるものとするなどとされるとともに、2ページの「3」のところに記載してございますけれども、第三者評価基準のうち、新司法試験の受験資格と結び付くミニマム・スタンダードの部分につきましては、全国統一的な内容となることが担保されるよう、法令上の位置付けを考慮するものとされているわけでございます。
次に資料5でございます。第三者評価基準の在り方についての意見の整理でございます。評価基準においては、この資料5の1〜10までに記載されました事項を定めることを検討するものとされておりまして、2ページにありますとおり、入学者選抜につきましては、公平性、開放性、多様性の確保という観点から、特定の大学の出身者とその他の者を区別することなく、公平に選抜すること、非法学部出身者や社会人の合計が、3割以上となるように努めることなどとされているわけでございます。
4ページ以下にありますとおり、教育方法につきましては、少人数教育を基本に、双方向的・多方向的で密度の濃い授業を実施することとして、基本法科目について各授業の学生数は50人を標準とし、80人を超えないものとすることなどとされております。
更に6ページ以下にありますとおり、成績評価につきましては、客観的かつ厳格に実施すること、修了要件につきましては、必須科目等の単位数を定めるということなどとされているわけでございます。
資料6は、新司法試験の在り方についての意見の整理でございます。試験科目につきましては、
公法系、具体的に言えば憲法と行政法の関係。
民事系、民法・商法・民事訴訟法。
刑事系、刑法・刑事訴訟法。
こういうような、公法系・民事系・刑事系科目を必須とするとともに、選択科目を設けるということとされております。
試験の方法につきましては、論文式試験を中心とするということとされております。
また、新司法試験の受験資格につきましては、法科大学院修了者と予備試験合格者に受験資格を与えるということとしております。
司法試験の受験については、5年以内に3回程度の受験制限を行うとされております。
なお、この意見の整理が行われました後に、また検討会が開かれておりまして、5月10日に開催されました検討会では、新司法試験においては口述試験は実施しない方向で検討すると意見が整理されております。これは、口頭表現能力等については、法科大学院における日々の教育の中で養われると考えられるということと、多数の受験生に口述試験を実施する場合には、司法試験の最終合格発表や司法修習の開始時期が遅れることになるということなどが考慮されたものでございます。
また、短答式試験の在り方については、更に検討することとされております。短答式の試験を、どのように行うかということは、もう少し検討を要するという意味でございます。 資料の2ページ以下にございますように、予備試験につきましては、経済的事情等により、法科大学院を経由しない者にも、法曹資格取得のための適切な途を確保するべきであるという観点から、具体的な制度設計を行うこととされているわけでございます。
意見の整理は、今申し上げたとおりでございますけれども、資料7、8につきましては、7は法科大学院制度と新司法試験導入などについてのスケジュールを図にまとめたものでございます。
資料8は、司法試験の仕組みにつきまして、現行法のものと新制度のものを対照できるように比較して整理したものでございます。適宜御参考にしていただければと思います。 次に資料9、10についてでございます。これは文部科学省の中央教育審議会から出されました法科大学院に関係する中間報告等でございます。
まず資料9でございます。これは、昨年の12月に公表されました法科大学院の設置基準等の骨子でございます。具体的な基準の内容といたしましては、課程の修了要件は3年以上在学し、93単位以上修得すること、専任教員数は最低12人とし、専任教員1人当たりの学生の収容定員は15人以下とすること。専任教員のおおむね2割程度以上は、実務家教員とすることなどとされております。
資料10は、その後更に検討が進められまして、4月18日にとりまとめられました法科大学院に関連する諸制度についての中間報告の概要でございます。
1枚目にございますとおり、設置基準の内容としては、昨年12月の骨子の段階とそれほど大きくは変わっておりませんが、法科大学院の大学院制度上の位置付けにつきまして、新たに制度化されることとされている専門職大学院、仮称でございますけれども、その一つとして位置付けることとされております。
専門職大学院につきましては、3枚目にございますけれども、従来の研究者養成中心の大学院ではなく、国際的・社会的に通用する高度専門職業人を養成する、新たな形態の大学院として創設されるものでございます。専門職大学院の修了者の学位につきましても、修士、博士とは別の新たな専門職学位、これも仮称でございますけれども、これを授与することとされております。
また、2枚目にございますように、大学全般につきまして、国による設置認可の弾力化とともに、第三者による継続的な評価体制を整備するということが、併せて提言されております。
中間報告の全体につきまして、別途席上に厚い冊子を配布させていただいておりますので、適宜ご覧いただければと存じます。
以上で説明を終わらせていただきます。
【佐藤座長】 どうもありがとうございました。内容がいろんな面にわたっていて、今の説明でなかなか理解するのは難しいところがあるんじゃないかと思いますけれども、御質問・御意見をちょうだいしたいと思います。よろしくお願いいたします。
どうぞ。
【笹森顧問】 何かいつも口切り役であれなんですが、だんだん専門的になってきたんで、少し事前に勉強させてもらって文章整理してきたので、コンパクトに言わせていただきます。
4つあります。まず1つが、法科大学院と司法試験など、法曹養成制度の基本的な理念の問題なんですが、これについて再確認させてもらうというのが1番目です。
どういうことかというと、私は意見書を忠実に尊重していきたいということにこだわっているものですから、基本的な理念は、まず1番目が法曹のあるべき質と量を決定するのは国民であり、法曹を育てるのも国民であると。
2番目に、法曹づくりは教育からの観点で、教育改革の全体構想に立ってと。
3つ目が、法曹養成制度は法科大学院の観点から構想する等々が、意見書の中の基本的に理念になっていたと思うんですが、この基本理念を再確認させてもらって、この観点から、法科大学院と司法試験の在り方を検討するべきだと。特に、法曹のための法曹養成制度にしないために、プロセスとしての法曹養成の理念を貫徹して、法曹の都合で法科大学院や司法試験の合格者数を規定する制度にしないことが必要なんではないか、まず1番目がこのことです。
2番目が、法科大学院の適格認定のための第三者評価の在り方の問題なんですけれども、今、申し上げたように法曹を育てるのは国民であるとの観点から言うと、法曹の量と質のコントロールを、国民参加の下に行う制度に改革すべきではないか。
1つ目は、その趣旨から言うと意見書の中では、法科大学院の第三者評価は、法曹関係者が大学関係者等のほかに、外部有識者の参加による客観的公平性・透明性を確保するべきだとされていまして、その趣旨が十分に生かされるような、第三者評価機関の設置構成メンバーに是非していただきたいということです。
意見書の中では、第三者評価の問題は、法科大学院の設置認可、これは文部科学省、司法試験の受験資格と密接に関係しつつも、独立した意義と機能を有するというふうにされていると思います。
しかし、検討会の案でいきますと、新司法試験の受験資格と結び付く、ミニマム・スタンダード、この部分は意見書の中に入っていたかどうかというのはあるんですが、このミニマム・スタンダードの部分は、全国統一的な内容となるとしてありまして、第三者評価機関は全国に複数、ミニマム・スタンダードの認定機関は全国に一つに限るという部分が今ありました。このミニマム・スタンダードの認定機関は、受験資格とは独立した意義と機能、また質の維持・向上を図る第三者評価と適格認定は一体という意見書の趣旨を、この内容で言うと逸脱してしまうのではないかというふうに私は受けとめていますので、これらの点について、ここは検討会でどんな議論があったのか、もう少し詳しくお話をしていただきたいと思います。
3つ目なんですが、新司法試験のための予備試験の基本的な位置付けの問題です。検討会の案では、予備試験は受験資格の制限でなくて、試験の内容・方法の工夫だということになっておりますが、これで法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度の趣旨を損なわない配慮ということをかなり強めに言ってあった意見書の趣旨に反しないのかどうか、そして例外的であるべき予備試験、言ってみればバイパス、抜け道の方法が、実質的には新司法試験を受ける1つのコースになってしまうんではないかという疑念も持っているので、この部分について少し説明をいただきたいと思います。
最後に4つ目は、これは私ども労働側の意見ということで受けとめていただきたいんですけれども、労働法分野の充実の問題です。司法試験の中から労働法が選択科目からも消えて、全く扱われないと、制度の中には入らない。これを補完するためには、最初の養成講座の中でどう入れるかということの中で、少し含みは持たされているんですが、現実には今、労働に関係をする部分から言うと、リストラ、企業再編、企業の海外移転だとか、いろんな労使の紛争の問題が、個別も含めてかなり多くなってきておりまして、そうなると法科大学院、司法研修での労働法の必修化なども含めて、労働法の問題についての教育の充実が必要なんではないかというふうに思っておりますので、これは各論の部分に入るかもしれませんが、今の社会情勢から見て、社会的要請の大きな項目の1つではないかという受けとめ方を是非していただきたいというふうに思っております。
以上、4つです。
【佐藤座長】 多面にわたっていますけれども、山崎事務局長、ただいまの4つの御質問にお答えいただけますか。
【事務局長】 最初の御質問でございますが、いわゆる第三者評価等につきましても、国民の側から参加して意見を言えるような、そういうような配慮という指摘がございました。これにつきましては、第三者評価について具体的にどのように行っていくかということがまだはっきりしてない状況でございますが、ただいまのような御指摘がありましたことを、頭に入れながら具体的に検討を進めてまいりたいと思っております。御指摘のような視点は、十分我々としても理解しているつもりでございます。ちょっと抽象的で恐縮でございますけれども、とりあえずそういうお答えにさせていただきたいと思います。
法科大学院の関係の、第三者評価のミニマム・スタンダードの関係でございますけれども、これは先ほど御説明申し上げましたけれども、教育の維持・向上、この関係では第三者評価機関は複数あってももちろん構わないわけで、その評価をもっていろいろ切磋琢磨をしていただくということでございます。その観点では評価機関は複数あって結構なんですが、他方、司法試験の受験資格に結び付くところがございますので、これにつきましては、全国でばらつきがあってはまずいということから、受験資格の付与に係る最低限のミニマムの基準をクリアーしているかどうかは、一つの機関に限って全国統一的に評価をしようという形で考えているわけでございます。
例えば、複数の機関がございまして、その1つの機関、どこかの機関にミニマム・スタンダードの評価を行っていただくというようなイメージでございまして、一般的な評価とミニマムの評価を別々にやるということではないということでございます。
そういうことから、このようなとりまとめになったということでございまして、検討会におきましても、大体このような意見が大勢を占めたということでございます。
予備試験の問題でございますけれども、確かに意見書では経済的事情等により、法科大学院に行かれなかった者に関して受験資格を与えるというような位置付けで書かれているわけでございます。私どももその精神は十分承知しておるつもりでございますけれども、受験資格を、経済的な事情、その他の事情によって、法科大学院に行けなかったということにしますと、そういう事情をどういう資料に基づいて、だれがどのように判断するのかということになってしまいますので、受験資格で絞り込んでいくというのは、非常に法制上も難しいという点が指摘されたわけでございます。かと言ってこちらのルートが太い本道になって、こちらからもいっぱい試験に受かっていくということになってしまっては、法科大学院を設置していく意味がないではないかという御議論がございました。そういう二つの流れから、ここにとりまとめられておりますように、予備ルートにつきましては、受験資格で絞るのではなく、法科大学院を出たと同等な能力があるかどうかのテストをまず予備試験で行いまして、それに合格するならば法科大学院を出たと同じような形になるわけでございまして、その上で司法試験を受けてもらうという形にすべきではないかとの方法が検討されました。予備試験の内容をかなり濃密なものにして、それに受かるような方については司法試験を受けていただいても結構だという形で、こちらが必ずしも本道ではないという形で意見が整理されたということでございます。
労働法の重要性については、これは当然皆様方も意識していると思います。法科大学院でこれを取り入れるかどうかは、基本的には資料4の中で整理しておりますように、選択科目というものが34単位ぐらいございますけれども、その中でどういうものを導入するかについては、各法科大学院の選択に委ね、その個性に合わせるという形で考えており、必ず入れろという形にはできないシステムになっておりまして、重要なものであればほとんどの大学で導入されていくだろうというふうに認識しているところでございます。選択科目の中で、取り入れていくという考え方でございます。
以上でございます。
【佐藤座長】 笹森顧問、更に御質問なさりたいところがおありかもしれませんけれども、関連してほかの顧問の方は何かございますか。
今井顧問、どうぞ。
【今井顧問】 この法科大学院の入学試験の問題なんですけれども、難しくするのか易しくするのかという、つまり3,000 人の人を合格させようと、そしてこの法科大学院から大体卒業者の7割ぐらいということになると、ある程度狭き門になってしまうんではないか。非常に難しい試験になってしまうんではないか。そのために、この3,000 人という増員幅が制限されないように、やはり法曹の増員を確保するという観点から、余り難しくしてしまうとよくないという問題があります。
もう一つは、大学院ですから、学部がその下に併設されていると思いますけれども、併設されている学部以外の大学から受けても同等に扱われるような大学院であるべきだというふうに思います。
さっき3割ぐらいが法学部以外というお話がありました。これは今後多様な人を育てなければいけませんから、是非そういう工夫をしていただきたいと思います。
あと期間の問題なんですけれども、2年もしくは3年ということになっていますが、卒業しても一発で合格できないということになると、少し期間がかかり過ぎないか、そこに何か工夫ができないだろうかと思います。例えば司法修習との関連を含めて、余り時間がかからないような工夫ができないかということをお願いしたいと思います。
企業の立場から言いますと、法曹資格者が今後企業に入ってきて、予防法務、戦略法務を担う法曹として活動することになると思うんですけれども、企業は非常に専門的な、例えば倒産法、知的財産法、独占禁止法、金融関連法、税法、さきほどの労働法とか、あるいは契約実務、特に国際取引といった、多様な知識を持った人材を必要としておりますので、選択科目にそういうものを取り入れた、幅広いカリキュラムを準備してもらいたいというふうに思っているわけです。
特に重要なのは、知的財産の技術と法律が両方わかるような、そしてまた国際感覚が非常に備わったような人を育てるということに留意していただきたいというふうに思います。
実務家教員が2割というお話がございましたが、これは確保の目途が付いているんでしょうか。例えば、弁護士会、裁判所とか、そういうところから協力が得られないとなかなか確保ができないと思うんですけれども、そこのところをお願いしたいと思います。
第三者評価基準なんですけれども、このミニマム・スタンダードのために認定機関を1つにするということは理解できますけれども、ほかに法科大学院の競争を促進するという観点から、民間の複数の評価機関もつくってもいいんではないかと思います。したがいまして、法科大学院は、情報公開を積極的にやっていただきたいということです。
司法試験関連で申し上げますと、さきほど申し上げた選択科目を、司法試験の選択科目にも是非取り入れてもらいたいと思います。例えば、知的財産法、独占禁止法、金融関連法、税法とか、そういったものを選択科目として取り入れていただきたいと思います。
また、司法試験というのは、一つの資格試験だというふうに割り切って考えて、一定のレベルにあれば、これはもう合格させるということにしていただき、そしてその後、これは専門的な法曹やあるいは企業に入ったりするわけですが、そういう中で競争による淘汰があってもいいわけで、できるだけ資格試験だということをはっきりさせていただきたいというふうに思います。
予備試験制度というのは、今後とも必ずずっと続けられるようにお願いしたいと思います。
以上でございます。
【佐藤座長】 どうもありがとうございました。今井顧問の御指摘も幾つかの面にわたっておりますけれども。
【事務局長】 お答えできる範囲で答えさせていただきたいと思います。まず、この法科大学院に入学するときの適性試験でございますけれども、これをあまり難しいものにしないようにということでよろしいでしょうか。
【今井顧問】 要するに、あまり狭き門にして、法曹人口増員ができなくなっては困るということです。
【事務局長】 先ほどおっしゃられました7〜8割受かるというのは、受かるように教育をすると、あるいは厳しく途中で審査をする結果としてそのようになっていくということで、決して担保ではないということだけ前提で御理解いただきたいと思いますが、基本的には入るときはそれほど難しくなくても、中で淘汰して厳しい成績評価をして、それをくぐり抜けられる人は大体司法試験に受かっていくよというようなイメージでございます。この適性試験は法律の試験ではなく、それ以外の試験でございまして、ものすごいハードルの高い難しいものにはしないという方向で考えております。
大学の出身別で差別をしないということで、これも評価基準の中に入っております。ただ、どのぐらいの程度というところまでは定められない状況でございますけれども、ほとんど自分の大学の出身者ばっかりだということになれば、やはり第三者評価の対象になるだろうということでございます。
この法学部出身者以外の者3割というのも、いろいろ意見がございますけれども、当分の間法学部はなくなることはなく、その後どうするかという問題も残るわけでございますので、かなりの間は法学部出身者も出てくるということから、一遍には割合を増やせられない、当面のものとして3割という考え方です。また、将来状況が変わってくれば、この基準は変わっていくということでございます。
時間が掛かり過ぎないようにということで、確かにその辺のところは、私どももいろいろな御指摘をいただいております。先ほど申し上げましたように口述試験をやらないというのも、時間を少し短縮しなければならないということの一つの表われでございます。
それ以外に、大学3年から飛び級で行けるということ、これは現在もございますけれども、そういうルートを使っていただくということもございます。
【佐藤座長】 その試験の時期は、さっきの説明では法科大学院修了後ということですが、大体どのぐらいの時期という議論になっているんですか。
【事務局長】 そこまで具体的にはまだ議論はされておりませんが、現在の試験で言えば、論文の採点をするのが、大学の先生、それから実務家がやっているわけですが、7月、8月の休みを使わないと、ほかの仕事と兼務しておりますので、それでできない状況でございますので、そこのところをまずどういうふうにクリアーするかという問題があり、これはまだ十分に議論されておりません。
【佐藤座長】 標準の修業年限が3年ですから、3年が終わって、その後ということになりますね。法学既修者で2年ということになれば、2年後ということですね。
【事務局長】 卒業後に試験を行うということで考えています。今の試験ですと、短答式が5月に行われておりまして、論文試験は7月です。大体今のところそういうイメージですが、そこをどういうふうに縮めていけるかというのは、これからの工夫の問題ということです。
【佐藤座長】 途中で口を挟んで済みません。
【事務局長】 それから、議論の中には、法科大学院は2年コース、3年コースあるわけですが、この中で飛び級ができないかという議論もございました。2年コースを考えますと、このコースで飛び級をやりますと1年しかないということになるわけでございまして、いろいろな角度から教育をしていこうということになり、これは落ち付くまで大分時間が掛かると思いますけれども、そういう中で1年で教育が十分に行われるというのは、かなり難しいだろうということから、法科大学院の中の飛び級は取り入れない方向で考えているところでございます。
選択科目の中に、社会のニーズに合わせるものを取り入れてほしいということであります。これも、選択科目の数が34単位ぐらいございますので、その中で法科大学院で御工夫をいただいて、例えば知的財産権を主にやる法科大学院とか、ビジネスローを主にやる法科大学院とか、そういう特徴を出していただいて結構だと、それでできるというふうに我々は考えております。
実務家の目途でございますが、これは大変大きな問題でございまして、実はいろんなところで最近議論されておりますけれども、これからは本腰を入れて、やはり派遣する側がOKかどうかということを検討する必要があります。
実務家は、例えば裁判所、検察庁、弁護士会、それぞれ人を出していただかなければなりませんので、そういうところの実務的な詰めは、これから多いにやっていきたいと考えております。
第三者評価の問題でございますが、先ほども御説明いたしましたけれども、ミニマム・スタンダードは全国で統一に行うということでございますが、それ以外に教育を向上させる観点から、複数の評価を行って、競争させて、あるいは情報公開させて、いいものにしていくことを当然の前提として考えております。
選択科目につきまして、法科大学院で選択科目にしたものについて、司法試験の選択科目にということでございますが、これは現在検討会での仕切りでは、法科大学院がどういうような科目を主に取り入れているか、その状況を見ながら、最終的には司法試験管理委員会の意見を聞いて、法務省の省令でどの分野を試験科目とするかを定めるというシステムで考えているところであります。
重要なもので、ほとんどの法科大学院で科目として設定されるようなものであれば、試験として取り入れざるを得ないということになってくるだろうと思っております。
あとは、資格試験であるということは、これは私どももその前提で考えております。
それから、予備試験も先ほど申し上げましたような内容として、今後も続けていかざるを得ないと考えております。
以上でございます。
【佐藤座長】 志村顧問、どうぞ。
【志村顧問】 2点お伺いさせていただきたいのでございますが、先ほど今井顧問も国際性を確保することが必要だということをおっしゃいましたけれども、そしてここにも国際化検討会というのがありますが、拝見しましても何か非常に技術的なことが書いてあるようで、私はこれからの法曹というのは、国際的な教養とか視野とか、そういうものも非常に求められるんではないかと思います。特に国際的な性格のケースに関わる方以外でも、そういう点で法科大学院の教育とか、司法試験の在り方とかに、何か特別の配慮がされるのかどうか。または、どのような議論がこれまでされてきたかというのが一つです。
2つ目は、第三者評価についてでございますけれども、法科大学院の第三者評価は、特別のいろいろなニーズがあるということは理解しておりますけれども、現在既に存在する第三者評価機関、例えば大学基準協会という、五十何年の歴史を持つ、国公私立の壁を越えた機関、あるいは大学評価・学位授与機構とここに言う第三者評価機関との関連は、どのようになっているのか、私にはちょっと見えてこないのでございますが。
【事務局長】 国際性を身につけるということは、大変重要なことでございまして、私どもにも国際化検討会がございます。今、中心的なところは、外国法事務弁護士をどのような形態で日本に受け入れるかということを中心に議論しておりますけれども、今後は国際的に対応できる法曹をどうやって育てるかということも議論の対象になってきます。まだ議論は始まっておりませんけれども、その辺を踏まえまして、どういう方法があるか、今後検討してまいりたいと思っております。
各法科大学院で、このようなものを取り入れるかどうかという問題は、まさに法科大学院の自主性に関わるわけでございますけれども、やはり世の中のニーズが強ければ、法科大学院は当然科目として取り入れていくことになるだろうと思っております。
第三者評価の問題について、具体的に現在存在する機関との関係でございますが、現在ある機関をも視野に入れておりますけれども、最終的にそことの関係でやっていただくか、そうではなく別の形を取るか、まだ決まっておりませんので、もう少しお時間をいただきたいというのが、正直なところでございます。
【佐藤座長】 では、奥島顧問、それから小島顧問の順でお願いします。
【奥島顧問】 2点ばかり、1点は予備試験がいつもバイパス扱いされる議論になるので、これは大学の入学試験における大験みたいなものだというふうに言うと、今度は大験だったら予備校ですぐに対応可能ではないかというような議論も出てきそうなので、何かその辺りのイメージをもう少し詰めるようなことができないかということを、いつも私は思っておりまして、そうじゃないと痛くもない腹を探られるということになるのか、本当は痛い腹を探っているのか、そういう議論になりはしないかというふうに思って、その点についてのイメージをされないと、これをずっと引きずってまた議論が続くのではないか。
やはり特別例外の制度であるということなんだろうと思いますが、大験のイメージが私にもあるもんですから、それでいいのかなと、それでみんなが納得するのかなというふうに思うわけであります。
私は大験は必要だと思っているわけです。
2点目は、何か司法制度改革推進が本格的に始まってから、マスコミが全然冷えてしまっていますね。小島さんその辺り、どうなんですか。その前はわんわん議論されていたのに、何かもういかにも決まったというか、あるいはもう先が見えたというふうに思われているのか、とにかく国民的な議論が全く影をひそめてきてしまって、国民参加というのはまさにそういうところで行われなければいけないというふうに思うわけですけれども、どうもそういう点では寂しい。ここへ出ていても寂しいという感じがいたしますので、何かもう一回火を着ける必要があるのではないか、大臣お考えください。
【佐藤座長】 後者の方は、まさにこれから自由討議のところで御相談いたします。
第1点の方は、何か事務局でお答えになりますか。
【事務局長】 イメージをしっかり固めるようにということでございまして、先ほど法科大学院を出たと同等な力を持っているかどうかという内容を考えているというふうに申し上げましたけれども、まさにそのイメージでございます。それが大験のイメージと一緒なのかどうか、ちょっと私にはわかりませんが、大験よりはるかに内容の濃いものです。
【奥島顧問】 これだというイメージをはっきりさせていただきたいということです。
【事務局長】 それは、工夫をしたいと思います。
【佐藤座長】 時間の関係もあり、自由討議も予定してございますので、小島顧問で、この問題については一応の区切りにしたいと思います。
【小島顧問】 これは質問というより要望というか、強調したいところです。法科大学院について意見書に沿っての重要なチェックポイントというのは、要するに、社会のニーズが非常に多様化しているということを踏まえて、多様性と質をどうやって確保するかということです。
多様性は、事務局長もおっしゃられたように、例えばそれぞれの個々の大学院のカリキュラム、あるいは教育の特性、個性。むしろ差別化があって、違いで競争する、個性で競争するという競争が重要だと思うんです。その競争をさせるためには、余り評価基準の共通部分を高くする、ミニマムを高くすると自動的にそれがなくなってしまうわけですし、その評価基準が重要です。
それから、最終的な新司法試験もそうです。その多様性を吸収できるような工夫が必要です。
どこで評価するかというと、基本的にはユーザーである国民というか、企業であり、個人であり、ユーザーが評価する要素が決定的で、軸足はそこになければいけないと思います。新しい商品がどんどん生まれて、新しいハイテク商品が生まれ、質の高い、技術的にレベルの高い、効用の高いものが生まれるのは、やはり競争があって、そこで切磋琢磨しているからです。
使っている人たちが厳しい評価をする形で、商品が選別されているわけですし、しばらくすると卒業生が出て、いきなりなかなか評価は難しいかもしれませんが、5〜6年したらユーザーは明らかに評価するようになると思うんです。
例えば、アメリカのロースクールというのは、ロースクールだけではなくて大学のすべてを、いろんな種類の独立した民間の組織が格付けをしているんです。その格付けは、しょっちゅう変わります。これは自主的な評価ですね。すごく競争があって、それが教育レベル全体を高めているということで、多様性の確保、質の確保、その評価基準の軸足はユーザーサイドであるという点が決定的に重要だと思います。
その点だけ強調したいと思います。
【佐藤座長】 ありがとうございます。笹森顧問を始め各顧問がおっしゃったことに共通していると思うんですけれども、法科大学院の在り方、法曹養成の在り方というのは、あくまでもユーザーである国民の視点で考えるということが一番の基本的なポイントで、絶えずその原点に立ち返って見ていく必要があるというように思います。
それから、法科大学院には競争が必要だということも、全くそのとおりでありまして、金太郎飴みたいに、同じような大学がずらずらとできてきても、何の面白味もないわけで、例えば知財に重点を置くとか、税法に重点を置くとか、いろんなものが出てきて競争していく、そういう中で、あそこの法科大学院の卒業生はこういう特徴と資質を持っているとか、そういう評価を国民ができるようなシステムになっていくということが重要だろうと思うんです。
例えば知財はいま国家戦略として重要であると認識されていますが、そういうことであるとか、労働法の話もありますけれども、そうした分野については国として助成するというような、別の仕組みも考え得るのかもしれません。基本は競争であり、各大学がそれぞれの個性に応じてやっていくべきなんですけれども、場合によってはそういうことも別の次元から考えてしかるべきところがあるんじゃないかと、私は思っておりますが、その辺のことも今後の議論の中で考えていただければというように思っております。
それから、資格試験という点ですけれども、それは全くそのとおりです。実は、従来の司法試験も資格試験なんですね。資格試験なんですけれども、現実は御承知のとおりでありまして、結局その運用がおかしかったということなんです。今度の改革は、そうならないよう、おかしなことにならないようにということでいろいろな仕掛けと言いますか、具体策を提言しているわけです。趣旨が確実に実現されるようにすること、それがこれからの大事な点かというように思っております。
時間に限りがあると言いながら、私がしゃべってはいかんのですけれども、最後に第三者評価について一言触れておきたいと思います。これも今度の法科大学院を考えるときの、最も重要なポイントの1つだというように思っております。今まで大学は自分の壁をつくり、大学の自治と称してやってきたわけですけれども、しばらく前から自己点検、自己評価ということを言い出し、それに加えて、外部評価に言及するようになりました。自己評価だけではだめで、外部の評価も入れなければいけないというわけです。しかし、それでも十分ではなくて、いよいよ第三者評価、客観的に定評のある第三者による評価というものがなければならないということになってきました。この第三者評価ということが、専門職大学院の1つの基本なんですね。
設置の方は、できるだけ自由に参入は認めるけれども、第三者評価によって質的にきちっと担保するというわけです。これは規制改革等に関連している話でございますが、そこをきちっとやるということが大事なんですね。
この設置基準と第三者評価と司法試験の受験の資格のところは、分けると3つになるんですけれども、意見書の精神は、その三者が有機的に関連していると捉えているところに示されています。それが重要なポイントでして、3つの事柄は違うところがあるんですけれども、それがばらばらに切り離されますと、趣旨が生きてこない。三者は有機的に連関しているということを、今後の検討でも十分注意してやっていただきたいと思います。
この問題は、時間の関係でこの程度にさせていただきまして、自由討議の方に移りたいと思います。今日は一応7時半ということにしておりますけれども、10分、15分ぐらい延びてもやむを得ないというように考えております。と言っても、時間は十分ではありませんけれども、前回総理の前でそれぞれの顧問から2〜3分ずつと、短い時間で限られておりましたので、今日もっとこういう点を強調しておきたいという点は、是非伺っておきたと思います。どなたからでもよろしゅうございますので、よろしくお願いいたします。
大宅顧問、どうぞ。
【大宅顧問】 今の続きでもあるんですが、マスコミが引いているというのは、やはり問題がすごく小さくなってきて、法科大学院の話だとかということになって、何か私たちに関係ないみたいということだと私は思います。
いつもいろんな改革の審議会に出たりして思うんですけれども、日本人というのは先に考え過ぎで、先回りするんですね。こうだというのと、こういうときどうするのとか、そんな先の方の例外みたいなことを言ってどうするとか言って、それを込みでやっていくから本筋の改革のところがだんだん見えなくなってしまう。大体改革するといったら、あちら立てればこちら立たないと決まっているわけです。百点満点で全部いいなんていうことはあり得ないわけです。絶対文句言うところが出たり、困るところが出たりするに決まっているんです。
例えば、法曹人口を増やすと言ったら、レベルは下がるに決まっているわけですね。そうでしょう。それをしないために、法科大学院というのでレベルを下げないと言っていて、増やすのが本筋なのか、それは下がりますとは口が裂けても言えないのはわかっています。 法科大学院のレベルを確保するということですが、例えば今でも学卒で司法試験通る人いるわけですね。そのレベルの人からすると、3年間足踏みしなければいけないという話で、そうすると増やすというのを時間的に言ったらマイナスになるわけです。いろんな例がありますね。
もう一つ、例えば予備試験の話ですか、多様性は確保したい、でもそれが1つのルートになってしまったら困ると。
どっちなのと、だから基本的にはこっちというのがわからないと、それはいろいろ例外はありますけれども、基本的にはこっちと。
あと資格試験だというのであれば、実は合格者の数はわからないはずで、5,000 人かもしれないし、100人かもしれないと思うんです。
さっきから一番気になっていたのは、口述テストをやると時間が掛かるからやめる。採点は、7月、8月の大学の先生が休みのときに、兼務でやるんだからその時間でしかできないと。口述テストが必要なら、時間が掛かろうとやるべきであって、要らないなら要らないでいいです。時間が掛かるからやめるというのは、理由にはならない。
もし民間で、例えば今井さんのところで、ある技術者が大量に必要になったとする。この技術にはすごくチェックがいろいろあるけれども、時間が掛かるから適当にやりましょうかとか、採点する側の会社の体制ができないからやめておきましょうかとか、そんなばかなことはないと私は思います。
根本的に見れば、国民の側の立場からすると、全然そうではないと思います。
【佐藤座長】 私から答えていいのかどうか。ほかの顧問の方からお答えいただければ・・・。佐々木顧問お願いします。
【佐々木顧問】 私が答える資格もないんだけれども、大宅さんが言われたのは、要するに、こういうふうな軸でいくならこうやりなさいよと。すぐまた何か別の視点を持ち出してきて、だけどもこうだという話をやっているうちに、結局何が何だかわからなくなり、そもそもどう理解していいのかが非常にわかりにくいというのは、大変私は重要な点だと思います。
その意味で、例えば審議会の報告書の基本的な態度、あるいは基本原則というものが、いつの間にかどこかへ行ってしまうようなことをやられたら、顧問としては誠に責任を果たしたことにはならないという意味で、私としては例えば今日出たいろいろな問題について、法律を実際につくったり、国会に出す前には必ずここに出していただきたい。そうしないと、通りましたという話を後で聞かされても、これは責任を果たしたとは言えないということがあるわけで、これは基本が何かということについて、私たちはきちっと責任を負うということで、何か隙間みたいなところに本筋があるというような話を余りこの場ではやりたくないなということは私も一緒です。
その意味で、結局一般論をやらなければいけないんですけれども、先ほどの話で言いますと、手続的にここはきっちり本筋を抑える十分な機会を与えてもらいということは一つございます。
先ほど、奥島顧問が言われたこととも関係するんだけれども、もし法曹養成制度を本当に日本で初めて正面からやるというなら、それをきちっとやるべきなんで、ほかのことについて、これもあるあれもあるというような話に全体の軸がぶれるようであったら、顧問会議としてはそれはおかしいということを、やはり言うべきだろうと思います。
それから、大学関係者として言いますと、先ほど事務局長が言われたことで、大学の先生が夏休みじゃないと採点できないからすべて遅れるというは、大学の立場としてもそういうことは言えないんじゃないだろうかと。特に法科大学院を抱えているような大学は、むしろそういう先生は司法試験の採点に専念してもらって、これは個人的な意見だけれども、できるかどうかわからないけれども、3月にもし卒業したとしたら、少なくとも秋には研修に入るような体制をつくるべきでしょう。それが長い空白期間があるようでは、非常におかしな話にまたなるわけです。だから、そういう意味で間髪を入れずにシステムをきちっきちっとつくっていくような、リズム感のあるシステムづくりというものをやるべきで、そのためには大学の方も、やはり応分の協力をして、座長が言われた有機的連関なるものを担保するためには、それぞれの今まで払ってこない犠牲を払わないといけないのではないか。特にこの試験の問題なんかがあるもんですから、痛感をしているところでございます。
いろんな意味で、こうは言うけれども、またこうがあってというようなタイプの話に左右されず、顧問会議としては、むしろはっきりしたものの言い方をしていって、それこそ骨太なところはきっちり押えていくという態度で、手続についても是非その点はお願いを申し上げたいというふうに私自身は思ってございます。
1つだけ細かな点として、実は私は是非また機会を見てお願いしたいのは、この評価、適格認定の問題がまだもやもやしている。骨太のところがよくわからないというか、はっきり伝わってこないという感じがいたしますので、この点についてはまた是非事務局及び文部科学省含めて、問題をなお一層詰めて我々の前に示していただきたいということをお願いしたいと思います。
以上です。
【佐藤座長】 おっしゃるとおりで、本当に共感します。
前に総務庁事務次官を勤められた増島さんという方がおられますけれども、増島さんは行政改革に関する著書の中で、「完全主義は不完全である」と言っておられます。これはすばらしい名言だと思います。大宅顧問もおっしゃったように、日本人はすぐあそこはどうここはどうと言って、そのうちに話がわけがわからなくなってしまう。
【大宅顧問】 アクセル踏む前にブレーキ踏んでしまうんですよ、だからどこにも行かないんです。
【佐藤座長】 今、佐々木顧問もおっしゃったように、そうはならないように我々として注意していくということだと思います。
そして、一言だけ大宅顧問の御質問にお答えしたいんですけれども、法曹養成のシステムを変えるということなんです。今までは一発試験でした。教育の過程はどうでもいい、試験さえ通ればいいということだったのです。それでは問題ではないか。時間を掛けて一生懸命教える、ものの見方・考え方を鍛える過程が必要ではないか。自分は法曹になるんだ、法曹として生きるんだという自覚を持った人に対して、それにふさわしい教育システムをつくりましょうと。それを通じて量的にもしかるべき法曹を輩出できるようにしましょうということなんで、システムを変えるということなんです。そこだけはちょっと強調しておきたいと思います。
【佐々木顧問】 この小島顧問のお書きになった文章、まだちょっと読む時間がないので恐縮なんですが、私もこの副題に書いておられることに、この司法改革の目的は尽きると言ってもいいぐらいに考えるべきだというふうに思っております。
よく法律の方で法の支配ということを申しますが、法の支配というのはやはり明確なルールというものに従って物事が処理されるということを言い換えたものだろうと私は思っているわけです。
ただし、そうは言いましても、それが絵に描いた餅とでも言うべきような状態に置かれていては、これは御題目になるわけでありまして、それをどのような形で実感できるかということが、先ほど国民との関係でも非常に重要な点であります。
法曹の数を増やすということは、これを実感させるための一つの手段を国民に対して提供するという意味があるということなんですが、もう一つはこの前総理がここでおっしゃられたように「思い出の 事件を裁く 最高裁」ということをどうするか、まさにあそこの問題が解決しないと、法律家が目の前にたくさんいるようになった、しかしまだ思い出を裁いているというような話であれば、これはどこか全体がつながっていないですね。ミッシング・リンクというものがあるわけであります。
ですから、特に国民の関心をかき立てるためにという言い方が適切かどうかわかりませんけれども、例えばこの前も小島顧問がおっしゃられたことなんですけれども、特に民事関係の裁判についてはどのぐらいの時間で、例えば一審が出るようにシステムをつくるかというような、何かそういうわかりやすいメッセージが必要があるんではないだろうか。
そうすると、時間抜きの経済活動がないし、時間抜きの社会活動はないわけですから、その意味で言うと、いろんなところを見て日本で今非常に欠落しているのは、時間の感覚がないままに制度が動いているというのが非常に問題で、特にこの場合も問題だと思うので、従って透明性と、それを実現するための人的な装置と、それに応えることができるシステムの合理的な時間内でシステムが動くというようなこと、これらのこと辺りを何かもう少し明快な形で伝えていくということが、我々の任務の別の面としてあるのではないか。
だから、法曹養成ついて、ここが基本だというような議論をしつつ、何かもう一つわかりやすいメッセージを、それぞれの顧問のお話を通して、もっとアピールしていくということができないもんだろうか。あるいは、それをもっと内閣の側からもアピールしていただくということはできないもんだろうか。そんなことをちょっと考えております。
【佐藤座長】 ありがとうございます。貴重な御指摘をいただきましたが、関連して是非御意見をお願いしたいと思います。
【笹森顧問】 今のメッセージの出し方、全く賛成で、また3顧問の方から言われたことと同じなんですが、タイトル的に司法が変わる日本が変わると、司法制度改革審議会のときに大々的にその部分を打ち出したんですね。それで今、各論に入ったわけです。
昭和45年、1970年の論議に戻してはいけないと思うんだけれども、あのときも、さっき大宅さんが言われたけれども、マスコミの取り上げ方はすごかったんです。もう1面トップぐらいで、べたべたほとんど連日出ていたわけです。今度の改革審議会のときにもかなり取り上げられました。だけど、こっちに移ったらどこ行ってしまったのというぐらい、何も載らないと。やっていることすらほとんど載らないということなんで、ここのところを、本当にルールとシステムを変えるんですと、明確なメッセージの出し方。
ここは、大きく言えば3つ。1つは、国民の意識改革、今まで日本の司法というのは、どちらかというとお上が命令をして、支配をするためのものですよと、だから国民はそれを受ける立場なんだということに慣らされてきてしまったと、だから法を使うなんていう意識は全くないんです。
現実に今の司法制度の場合でも、使っているのはほんの2割程度で、あとはほとんどそんなもの使ったことがない。その使っている人の中でも、8割は弱い者は負けてしまうというようなやり方の中で抑え込まれてしまうという中だから、法を使うという意識がない、全部お上依存型できたんです。これを初めて、司法は国民のものなんだというふうに日本を変えようということなんだから、それをどういうふうにつなげていくかということで、1つは国民の意識改革、利用しやすいとか、国民の関与の仕方だとか言っても、それはこういうことを変えれば、あなたたちはこうなるんですと、これをもっとこの顧問会議が発信をしていくべきではないかと。
2つ目は、立法・司法・行政の関係から言えば、司法は別なんですけれども、立法と行政は国会論議を含めながら、国民に対してどういうメッセージを発していくかが全然ないです。今までの1年間の中のメッセージの出し方は、民間がやっているんです。これは、何人かの顧問もお関わり合いになられていますが、民間司法臨調、亀井正夫先生がやっておられますが、あそこの中ではいろんなレベル、ジャンルの人たちを含めて討論して、そしてシンポジウムまで設けて、何とか意識喚起しようとしている。弁護士さんの方は、日弁連主催の中でのシンポジウムをやられたりしている。我々も、経済界、労働界、両方ともそういうシンポジウムをやっている。全部民間ベースです。官のベースで何をやっているかと言ったら、何もないということなんで、国民意識を喚起するためのやり方として、私はこの顧問会議はものすごく重要な役割を担わなければいけないんではないか。
その上でもう一つ言うと、法曹三者をどう改革するか、ここに最後に各論として行くわけですから、これは言ってみれば、しゃばの空気、しゃばのことがわかっている法曹三者がいるかねと、ここが一番問題でしょうと。だから、本当は違う意味なんだけれども、塀の中の懲りない面々の中でずっと置いておいてはいけませんと、だからこういうことをするんですというふうにしていかないといけない。そうなるとメッセージの発信の仕方をどうするか、この3つに対して。それから、3つそれぞれがというやり方を、どう顧問会議としてやっていくか。
私は、顧問会議としての発信の仕方、佐藤座長のメッセージも最初に1つ必要かなと思うし、今の3つの層に対して、どういうふうにこういう関わり合いをもって、こういう喚起をしてくださいということを求めるか、これを是非やっていただきたいなと思います。【佐藤座長】 ありがとうございます。では、小島顧問どうぞ。
【小島顧問】 一番重要なのは、意見書の冒頭に書いてある基本理念の方向です。この国に豊かな創造性とエネルギーを取り戻す、取り戻さないといけないという方向です。そういう役割を持っている改革なんだという、その原点が絶えず点検されなければいけないと思うのです。
そこで、この意見書作成から議論の過程を一番御存知なのは、佐藤座長なんですね。是非とももっと発言してほしいわけです。座長って英語で「スピーカー」と言うわけで、話さなければいけないと思うんです。だから、たまには我々が佐藤座長に、この意見書の精神に照して、議論に対してどうなのかと、逸脱しているのかどうかということを伺わせていただきたいと思います。
その関連で、ここに雑文を皆さんに配っていただいたのは、ショッキングなデータが最後の14ページにあったからです。日本は法治国家だと我々は思っていたんだけれども、法治国家というのは、要するに、やっていいことと悪いことがはっきり文書に書いてあって、内部からも外部からもみんなわかる、透明であるはずです。ところが、日本の国の運営の仕方というのが、透明度でどうかというと、このスイスのIMDというビジネススクールがまとめているのですが、比較対照国49か国の中で、どん尻なんです。しかもこの横の棒を見てください。インドネシアの何分の一かですね。極めて不透明な国であるとみられている。日本に海外の企業が入ってこない。なぜ入ってこないかというと、見えない規制がある、透明性がなければ経営の予見可能性が確保できない、これは基本的にルールが明確でないということなんです。
ルールも、公式のルールとしての明文化された法律があります。それ以外に、一般ルールがあります。法律、政令、省令、通達、規制、内規、行政指導がある。この中で、行政指導というのが圧倒的に多いわけです。これは文章には残さないし、全く不透明な政策です。不透明だから影響力があると思ってやっているのが行政の世界なんですね。
ここは、ある意味では行政、法律の執行部なんだけれども、法律を解釈する司法を行政が余りにも抱え込んでいるというところが、日本的法治制度の根本的な問題であり、それが今、問われているんではないかと思います。そこをもう少し透明性が確保できる格好にしないと、新しいエネルギーと創造性というのは生まれないんではないかということで、この資料を見ていただきたいと思ったわけです。
同じIMDが一昨年に出した年報では、それぞれの国の司法制度が、その国のバイタリティー、活力にとってプラスかマイナスが順位を付けています。この場合は、47か国を比較していましたが、たしか32番目なんです。司法は、むしろ阻害要因となっているという評価です。
更に、1枚紙の資料を配っていただきましたが、これも同じ機関が、この4月30日の公表した、最も新しい時点での各国の競争力比較なんです。その国の社会、経済がどのぐらいバイタリティー、競争力を持っているかと。日本はご覧のように、中間グループの下の方、中国のすぐ上で、49か国のうち30位です。ハンガリー、チェコ、マレーシア、台湾、スペイン、フランス、エストニア、チリ、そういうところがはるかに競争力があるということになっているわけです。
一時期、バブルのさなか、80年代末〜91年、その辺りまでは日本は圧倒的にトップだったんです。そのときの認識が残像として、93〜94年まで続いたんですけれども、その後も実は日本は競争力がないんだという格好で、このラインまでずっと落ちてきたわけです。 最近は国債の格付けが問題になっていますが、格付け機関の在り方というのも勿論議論の対象になっていいんでしょうけれども、明らかに方向としてはだんだん下げられて仕方がないような方向になっているわけです。
昨日の発表ですと、G7の国の中で、イタリアと日本が一番どん尻で並んでいたんですが、イタリアはちょっと改革したんで上に上がったんです。そうしたら日本がどん尻で、単独びりになったんですね。そのびりになった日本が、月末にもう一回格付けを下げられるかもしれない、そうしたら発展途上国の扱いになるんです。日本の国債を買うと、20%リスクがあるからといって外国資金が入らない、そういう経済になりつつあるんです。そこは、極めて重要であって、恐らく国の仕立て方としての司法、あるいはルールのつくり方、透明性、それをしっかり改革していかないと、日本は少なくともこのイメージのレベルで、それで現実においても、日本の活力というのはどんどん、それは中国が強くなったから驚異ではなくて、日本自体の制度が勝手に劣化しているというところが問題ではないかというふうに思うわけです。
マスメディアの話がありましたが、座長が言うとおりこれは制度が変わるんだということが確信できれば、みんな注目するわけです。マスメディアはあきっぽいという面が一方でありますけれども、どうも周りの声を聞いてみますと、議論している検討会の話も法曹三者中心にすぎる。現在のシステムを法曹三者が支えているわけです。その当事者なわけです。それにメスを入れなければいけない。自分でメスを入れる。まな板の上のコイに包丁を入れるのに、コイがみんな包丁を持ってしまった、これでは制度は変わらないという印象になりつつある。これは包丁の持ち方が違うんじゃないかということを、ちゃんとここで監視していかなければいけないし、もしその包丁の持ち方が変われば、メディアも期待と関心を持つ。期待がなければ関心が生まれないわけです。ということがあるんじゃないかと思いますので、是非とも座長はこれまでの意見書の議論も、みんな一貫してわかってらっしゃる唯一の人ですから、スピーカーとして随時、これは意見書の精神に反するとかいうことも含めて、発言していただきたいし、質問をこちらからもさせていただきたいと思います。
【佐藤座長】 非常に厳しい御指摘、そして御注文を受けました。ほかの顧問の方、いかがでしょうか。こういうことを是非強調しておきたいということですね。
これまでのお話で大体共通していることかと感じたわけですけれども、第1点はPR不足というか、やはり訴え方が足りないのではないかということですね。多くの顧問がおっしゃったように、司法改革のアピール度が落ちてきている。原因は何かはともかくとして、落ちてきているということは否めないという感じがいたします。ですから、国民にわかりやすく、この司法制度改革というのはこういう趣旨なんだということを、まず我々顧問あるいは顧問会議として訴える必要があるんではないかと、改めて今日のお話を伺って思いました。この辺は皆さん大体共通の認識であると理解してよろしゅうございますか。
【今井顧問】 結局、今、私たちが感じるのは、まず裁判が遅いということですね。これは、やはり法曹人口を増やさないと解決できないと思います。裁判員制度は、裁判がもっと早くならなければ絶対に導入できませんから、絵に描いた餅になってしまいます。裁判を早くするということが一番大事だと思います。制度の問題もありますけれども。
もう一つは、非常に国際的な社会の変化に法曹がついていかないといけない。だからもっと専門性を高めた、そして国際感覚を持った法曹を増やさないといけない。これを今度の教育でやるわけで、ちょっと時間が掛かると思いますけれども、これは是非早急にやらなければいけない問題だと思います。
それから、立法の問題もあります。最近は法務省の法制審議会の審議も早くなったんですけれども、立法も司法制度と同時に多様性と迅速さを持つことが必要だと思います。ですから、法務省あるいは内閣や両議院にある法制局の強化ということが、併せて必要ではないでしょうか。大体そんなことを今思います。とにかく実行段階に移っているのだから、そういうことをきちっと我々が実行していくということが、国民にわかって貰う上で一番大事なことだと思っております。
【小島顧問】 今、言われた裁判が遅いということ、ある限度を超えて裁判の時間が掛かるということは、法の判断を停止しているわけですから、法制度、司法が仮死状態になるわけです。オウム真理教の話も、だんだん思い出になりつつある。その間にアメリカの例のテロがあって、戦争までしてそれを決着したというスピードからすると、全く世界の流れの中でずれていますね。司法が、自らの司法を否定するという側面が、裁判が長くなることによって生まれてしまう。これは国民の期待もつぶしてしまうことだと思います。
【佐藤座長】 一般の事件は、国際比較でみると、そう遅いわけではないと実務の方は言われるんですけれども、今、御指摘のように、難しい事件ということになると、ある意味ではエンドレスに続くようなところがある。そこが問題なんだと思うんです。
【大宅顧問】 それは、人手の問題ですか。
【佐藤座長】 そうですね。法曹人口の量の面でも質的の面でも、やはり不足しているということがあります。そして制度、仕組みですね。
だから、今度の改革は、部分部分をいじってももうだめだという認識なんです。もう人も制度も、全体のシステムをいじらなければということなんです。さらに言えば、司法改革だけではなくて、まさに行政改革、政治改革等の一環であると。司法改革だけぽつんとあるんじゃなくて、日本がこの10年間取り組んできた改革の仕上げと言ってもいいかもしれない、そういう改革だということが一つ。
そして、司法の様々な問題の一つ一つをいじってももうだめなんだ、司法のシステムについて、人の面、制度の面、両面にわたって根本的に見直さなければだめんなんだ、そういう認識がこの意見書なんです。それをこれから本当に実現しようと。しかも時間的な余裕がない。さっき小島顧問がおっしゃったように、20年掛け、30年掛けてやっていきましょうというような余裕がないと思うんです。
今日は本当に貴重な御意見をいただきました。我々として、司法改革とは何なのかということを、もう一遍国民の皆さんに訴える必要があるんじゃないか。これが、今日一致した御意見かと思います。
では司法制度改革が目指すべきものは何かということは、意見書に書いてはあるんですけれども、分厚い報告ということもあって、国民にはまだぴんと来ないところもあるかもしれませんので、もっと簡潔にわかりやすく、こう変わるんだということを、メッセージとしてももう一遍出す必要があるかもしれない。そして、その内容として何かということにつきましては、先ほど佐々木顧問もおっしゃいましたけれども、キャッチフレーズ的には透明性の問題だというように思っているんです。透明性というのはルールに従っての社会にしようということですから、そういう観点から目指すべき社会は何かということをもう一遍簡潔にわかりやすく訴えることができないかということを考えてみたいと思います。
そして、具体的な方法として、先ほどから伺っていますように、何としても身近な司法を確立するということですね。今、3,300 ぐらいの市町村がありますけれども、弁護士がいない市町村は、2,800 ぐらいあるんです。それから、ゼロフォー地域とよく言われますけれども、地方裁判所の本庁・支部の管轄地域で、弁護士がゼロか、いても4人以下という地域が半分近くあります。
そういう中で、透明性だ、ルールの社会だと言っても、やや現実離れしているんですね。ルールの社会にするために、やはり法曹が身近にいてもらうようにしなければいけないということで、まず身近な司法。それからスピード、はやい司法ということも非常に重要なポイントではないかというような気がいたします。
それから、頼りがいのある司法。裁判に勝ったけれども、なかなか実現できないとか、そういうことでは困るわけで、やはり正義が勝ち、正義が実現するという社会にするんだと、そういうようなことをもう少し簡潔に訴えられるようにしたい。そうしたことをこの顧問会議として考えてみたいと思います。
私は、文才も広報的なセンスもないもんですから、心もとないんですけれども、事務局などとも相談しまして、簡潔なペーパー、本当に簡単なペーパーで、しかし今日御議論いただいたものを盛り込んだ、そういうものを工夫させていただいて、そして次回の会議でお諮りして、この顧問会議として訴えるべきものがまとまれば、それを公にして、国民の皆さんに訴えたいというように思います。
では、副長官、どうぞお願いします。
【内閣官房副長官】 私は、こういうオブザーバーのような形でおりますので、発言はつねづね遠慮しておりましたが、司法制度改革の審議会を設けようというときからずっと副長官をやっておりましたので、この機会に一言率直に気持ちを申し上げさせていただきます。例えばスピードという話で、私も本当にそう思ったのは、裁判が長い時間かかって思い出ではだめだと。例えば「原則2年間ですべて結審する」というぐらいの議論をして、それに対してそれではどうすればいいのかと。法曹の人口が少ないなら増やせばいい、また法律だけの専門家ではなくて、これだけ複雑になっているんだから、科学技術とかそういった方々を法曹に巻き込んでいくと、そしてそういう人たちの、それはプロパーである場合もあるだろうし、いろんな委託ということもあるかもしれないけれども、法律を知っている人だけが裁判をやる時代ではないんじゃないかと。
そうすると、例えば2年間というような議論を一方ですれば、それを1つのテーマにしたらどうすればいいかというように、具体策の検討が展開されていくと思います。人とか仕組みもあると思います。いろんな手続なんかも変えなければいけない。そういうふうな、新しい司法制度というものができるだろうと。
私ども率直に言って、この司法制度をどうするかというときに、いろんな先生などと話し合ったときに、私は事務方だから余り言えないんですが、是非これは内閣に審議会を置こうと、それで佐藤先生にいろいろな御意見を言っていただくと。だから、今の我々の考え方としては、審議会で御意見を賜った方向を、是が非でも実現したいと。ただし、行政改革の場合と違いまして、司法制度改革は白地と言いましょうか、かなり詰めなければいけない部分があることも事実です。私は行政改革の方の事務方もしまして、これはできるだけ行政改革の精神を、とにかく実現すると。司法制度も気持ちはそういうことですが、白地というか、そういう決まっていない部分も確かにあるので、そこは見ていただかないといけないと思います。
顧問会議の先生方には、是非そういった審議会が答申された意見を実現できるように、そのための御目付役というふうな気持ちであります。
したがって、繰り返して言いますが、例えば2年間で原則やるんだということを置いたら、どうすればいいかというような議論をすれば、相当インパクトのある議論ができるんじゃないかというふうに思います。決して政府のサイドとして、司法制度改革の意欲が落ちたとか、そうではないので、もっと盛り上げて、これは時は待たないと思うんです。ですから、そういう状況の中で早く実現したいという気持ちがあることを、ちょっと申し上げさせていただきたいと思います。
【佐藤座長】 ありがとうございました。大変勇気付けられました。
今の古川副長官のお言葉にも励まされて、先ほど申し上げたように少し工夫して、訴えるべきアピールのようなものを考えさせていただいて、次回にお諮りして御了承が得られればというように思っております。
できれば、事前にペーパーをお配りして、皆様の御意見を承りながら、調整した上で次回に御審議いただければというように考えています。今の古川副長官の御提言も含めまして考えたいと思いますが、そういう段取りでよろしゅうございましょうか。
(「異議なし」と声あり)
【佐藤座長】 ありがとうございます。今日はまことに貴重な御意見を賜りまして、本当にうれしく思います。ありがとうございました。
では、事務局の方、次回の日程はどうなりますか。
【事務局長】 次回の日程は、今のアピールの取りまとめということもございますので、別途御相談させていただくこととし、具体的には今日は申し上げられないということでございます。
【佐藤座長】 そう遠くない時期にやる必要がありますね。
【事務局長】 はい。また、御相談させていただきます。
【佐藤座長】 以上で終わりたいと思いますけれども、最後に法務大臣の方から何か御発言がございましたら頂戴したいと思います。
【法務大臣】 大変皆さんに御熱心なお話をいただきまして、ありがとうございました。私も同じ立場であれば、申したいと思うようなことを、皆さんが言ってくださいまして、非常に共感したわけでございます。
PRの話でございますが、顧問会議としてアピールしてくださるということは、非常に結構なことで、是非やっていただきたいんですが、政府広報もいろいろやっておりまして、お目に止まったかもしれませんが、3月でしたか私とこぶ平さんが対談したのを全紙に広告しましたり、最近号の「キャビネット」という内閣の雑誌がありますが、それは司法制度改革の特集でございます。そういうのをお配りすればよろしいんじゃないですか。
【佐藤座長】 そうですね。是非そうしたいと思います。
【法務大臣】 そういうのもございますし、それからテレビやラジオにも時々呼ばれて、私だけでも随分何度か出ております。先生方は、お忙しくてご覧になったり読んでいただいたりする暇はないのかもしれませんけれども、最大限の努力をしておりまして、そのときの、例えばこぶ平さんと私が対談したときのタイトルは、「速くて、身近で、頼りになる司法制度」というので、こんなに大きな字が書いてあったんでございますけれども、これも予算の都合で1日しかやらなかったので、そのときを見逃すともうそれっ切りになってしまうわけなんですが、そういう今までやったものもお配りした方がよろしいんじゃないですか。
そして、今度はそれを参考にしていただいて、顧問の先生方のアピールというのを出していただくと、なおよろしいかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。本当に、ありがとうございました。
【佐藤座長】 引き続きよろしくお願いいたします。
【法務大臣】 こちらこそよろしくお願いいたします。
【佐藤座長】 本日は、どうもありがとうございました。
(以上)
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