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内閣総理大臣挨拶要旨


平成14年7月5日(金)
司法制度改革推進本部顧問会議第5回会合


 以前この場で「思い出の事件を裁く最高裁」という川柳に触れた。これは、裁判に時間がかかり、この国の司法制度が国民の思いから遠くかけ離れている現状を皮肉ったものと見るべきである。
 
 改革でまず必要なのは、司法を国民の手の届くところに置くことである。全国に3,300余りある市区町村の85%には、弁護士が1人もいないという説明を聞いた。例えば、私の地元で言えば、横須賀市には23名の弁護士がいる一方で、三浦市には1人もいないとのことである。
 司法改革は、人材を育成し、法曹人口を増やすことを柱の一つとしている。その意味するところは、全国どのまちに住む人にも法律サービスを活用できる社会を実現することであるから、その具体的な方策を講じていく必要がある。
 
 次に、司法を国民にとって頼りがいのあるものにするためには、迅速な判決、迅速な権利の実現を期待できる制度にしなければならない。
 具体的な目標として、裁判の結果が必ず2年以内に出るように改革していきたい。刑事・民事とも、地裁の判決が出るまで5年、10年という時間が費やされる場合がある現状はひどすぎる。めまぐるしい時代の変化や人の寿命の長さから見て、我が国の司法は世の中の期待に応えているとは言えない。現状の司法手続や司法現場における運用において、2年以内という目標の達成が困難であると言うなら、これを可能にする仕組みを考えなければならない。
 また、裁判が下っても、その執行によって、権利の実現が速やかに図られなければ、国民の信頼を勝ち得ることはできない。「事後チェック・救済型社会」が求める、迅速で力強い司法へと着実に改革を進める必要がある。
 
 私は、司法改革こそ構造改革の根底をなすと信じている。司法に必要とされる知識が専門化している現代社会においては、一層多種多様な人材に門戸を開くことで、我が国の法曹界も競争による活性化の道を選択すべき時に来ている。司法改革を決して「絵に描いた餅」に終わらせてはならない。
 改革を進めようとすれば、すべての関係者にとって快適なものにはなりえない。現状に安住するあまり、改革に躊躇を示したり、抵抗する向きが現れることは、どの分野でも同じことである。国民に身近で頼りがいのある司法の実現に私は全力を挙げる決意である。
 本日、顧問会議から、国民に向けた明快なアピールを受け取り、私自身、改革への意を強くしたところである。このアピールの趣旨に沿った司法改革を確実に実現できるよう、引き続き皆様方のお力添えをお願いしたい。