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司法制度改革推進本部顧問会議(第5回)議事概要



1 日 時  平成14年7月5日(金) 18:00〜19:30

2 場 所  総理大臣官邸大会議室

3 出席者

(顧問)
佐藤幸治座長、大宅映子顧問、奥島孝康顧問、小島明顧問、
佐々木毅顧問、笹森清顧問、志村尚子顧問

(推進本部)
小泉純一郎本部長(内閣総理大臣)、福田康夫副本部長(内閣官房長官)、
森山眞弓副本部長(法務大臣)、上野公成本部長補佐(内閣官房副長官)、
古川貞二郎本部長補佐(内閣官房副長官)

(推進本部事務局)
山崎潮事務局長、田中成明法曹養成検討会座長 他

4 議事次第
(1) 開会
(2) 司法制度改革について
(3) 検討会の検討状況等について
(4) 法曹養成制度について
(5) 閉会

5 配布資料[PDF形式]
  1. 「国民一人ひとりが輝く透明で開かれた社会を目指して」(案)

  2. 検討会の検討状況

  3. 「ADRの拡充・活性化関係省庁等連絡会議」の設置について

  4. 最高裁裁判官の任命について

  5. 第三者評価と司法試験の受験資格との関係(案)

  6. 新司法試験の在り方について(意見の整理)(概要)

  7. 司法修習の在り方に関する検討の概要

6 会議経過

(1) 開会の後、佐藤座長から、司法制度改革に関する顧問アピールについて、資料1に基づいて説明がなされ、概要以下のような質問・意見があった。

  • このアピールの内容については評価したい。これを単なる顧問会議のアピールとして発表するのか。意見書のコアの内容を簡潔にまとめた内容になっているので、総理宛てに顧問会議の意見書として提出するものとして、その位置付けを明確にしてはどうか。
     内容的には、特に、2年以内に判決がなされるようにすること、労働関係事件への総合的な対応強化についてアピールで明確に打ち出していただいたことを評価したい。
    (佐藤座長より、内容的には顧問の了解を得たということとしたい。また、このペーパーの趣旨は、顧問会議としての考え方を総理にお伝えするものであり、さらに、国民に司法制度改革の重要性を訴えるものとしたい旨を発言。)

(2) 小泉本部長から、概要以下のとおりあいさつがなされた。
 前に、この場で「思い出の事件を裁く最高裁」という川柳を披露したことがある。これは、あまりにも裁判に時間がかかりすぎ、この国の司法制度が国民の思いからかなりかけ離れている状態を皮肉ったものであり、国民の率直な感情だと思っている。
 改革でまず必要なのは、司法を国民の手の届くところに置くこと。司法改革は、人材を育成し、法曹人口を増やすことを柱の一つとしており、その具体的な方策を講じていく必要がある。
 次に、司法を国民にとって頼りがいのあるものにするためには、迅速な判決、迅速な権利の実現を期待できる制度にしなければならない。具体的な目標として、裁判の結果が必ず2年以内に出るように改革していきたい。
 司法改革こそ構造改革の根底をなすと信じている。司法改革を決して「絵に描いた餅」に終わらせてはならない。
 本日、顧問会議から、国民に向けた明確なアピールを受け取り、改革への意を強くしたところである。このアピールの趣旨に沿った司法改革を確実に実現できるよう、引き続き皆様方のご尽力・お力添えをお願いしたい。

(3) 山崎事務局長から、検討会の検討状況、ADRの拡充・活性化関係省庁等連絡会議の設置等について、資料2及び資料3に基づいて説明がなされた。

(4) 内閣官房から、最高裁裁判官の任命について、資料4に基づいて説明がなされ、概要以下のような質問・意見があった。

  •  最高裁裁判官の出身分野については、固定してはいないとの説明だったが、ここ数年、同じような状況なのか  
    (内閣官房より、ここ数年というより、もう少し長い間、ほとんど変わっていない旨を説明。)

  • 新民事訴訟法により上告を厳しくすることになったが、新規受理件数は減ってきているのか。  
    (内閣官房より、件数は、ここ数年はそれほど変化はない旨を説明。)

  • 最高裁長官の意見を聞くことを慣例として行っているとあるが、これはこのようにすると決めたことなのか。それとも慣例として行っていたことを、単にペーパーに記載したということなのか。  
    (内閣官房より、最高裁長官の意見を聞くことは以前から行っている旨、これまで任命の際に裁判官の経歴の発表は十分に行われてこなかったが、今回からは、選考過程や選考理由について積極的に説明することとした旨を説明。)

  • 男女共同参画の時代だが、女性を入れようという積極的な考えはあるのか。  
    (内閣官房より、昨年2人目の女性判事を任命したところであり、そうした考えで対処している旨を説明。)
    (事務局より、現在、外国の制度の調査中であり、その結果を分析した上、検討会において制度論の在り方を検討していく旨を説明。)  
    (座長より、制度論については、事務局から何らかの考え方が出てきた段階で議論したい旨を発言。)
 

(5) 田中法曹養成検討会座長から、法曹養成制度について、資料5ないし資料7に基づいて説明がなされ、概要以下のような質問・意見があった。

  •  第三者評価の関係について、検討会では第3案を基本として検討することに異論はなかったとの説明だったが、第3案でいくと受け止めてよいのか。  
    (田中座長より、第3案をベースに、第三者評価機関の仕組みを意見書の趣旨に沿った形にしていきたい旨を説明。)

  •   第3案が意見書の趣旨に沿っていると考えており、そういう方向の取り組みには歓迎をしたい。新司法試験で口述試験を実施しないことについて、どういう論議の中でこういうことになっているのか。  
    (田中座長より、それぞれの法曹養成を担う機関の役割分担を考えると、司法試験で全ての能力を試験するというのではなく、法科大学院や司法修習で教育できることについて試験をしなくとも、十分に能力担保ができるのではないか。できるだけ試験期間を短くしたいという考慮もある旨を説明。)

  •  予備試験も同じ扱いになるのか。
    (田中座長より、予備試験については現在検討中である旨を説明。)

  •   これまでの司法試験では21世紀に相応しい幅のある人物が受からないから法科大学院をとのことだが、法科大学院の設置に認可があったり、第三者評価機関にも認証があったりすると、屋上屋を架し妙に規制がある気がする。法科大学院では双方向的な授業が行われるから口述試験は要らないというのならば、認可の際に授業の中身について何も言わないのか。時間の短縮よりも質の方が大事で、一般教養や面接の試験があって初めて私達が望んでいる人間味のある法曹が生まれるのではないか。  
    (田中座長より、検討会でも口述試験を残すべきとの意見があったが、全てを司法試験で判定するとすると、司法試験を「点」とする発想につながっていく。法曹養成を担う機関の役割分担を考えていくと、口述試験が担っていたものは他の機関に任せるという形でまとまった旨を説明。)

  •   口述試験をやらないというのは分かったが、その人がどのような人なのかを見る面接もやらないのか。  
    (田中座長より、それは今回の司法試験では行わない。法科大学院で3年もあるので、そこできちんと教育して修了認定をしてもらいたい旨を説明。)

  •   法科大学院の教官が司法試験の試験官になるわけではない。司法試験の試験官が法曹に相応しいのかどうかを判断しないと、弊害が出てくるのではないか。  

  •   法科大学院では、人との応対振りなどをクリアしないと卒業できないのか。  
    (田中座長より、従来のように期末試験を一回行って評価するのではなく、定期的にオーラルな能力を養いながらやっていく。そうした点について教育方法を変えるというが大きな目標である。口述試験を実施しないならば、それに合わせた法科大学院の修了認定の仕方について、今後検討していくことになる。例えば、小さな演習方式で授業を行ってレポートを書かせ、そのレポートについて面接をしてはじめて単位を認定するという形で、口頭的表現能力を組み込んだ教育を行うのは、法科大学院の必須の要件である。そのような教育を3年間も行うのだから、法科大学院を信用していただきたい旨を説明。)  
    (佐藤座長より、様々な科目について様々な先生が少人数教育を行う。そこで厳格な成績評価を行い、それが実際に行われているのかを第三者評価機関で評価していく。そのような全体の仕組みの中で、こうした能力が確保されることになる旨の発言。)  

  •   法科大学院の入学試験では、面接をするのか。  
    (田中座長より、色々なバックグラウンドをもった人を選抜することになるので、恐らく面接をしないと判定できないであろう旨を説明。)

  •   入学試験で最低限の条件を見て、そして勉強してもらうということになるのか。全く資質の無い、ただ点取るだけが上手な人が上がってくると困る。

  •   法科大学院に入れるプロセスから、様々な教養にも配慮して、人材のセレクションをすべきである。察するに、学部段階で様々な専門を勉強してきた人達が入学するから、全ての人が法科大学院を修了できるかどうか、かなりリスクはあると見ておいた方が良いだろう。だからと言って、法律ばかりを勉強した人ばかりとった方が安心だという話になると趣旨が生きてこないので、入学から卒業までの過程で利益相反があるということを想定して法科大学院を作っていただきたい。

  •   第三者評価機関の認証については、文部科学大臣と法務大臣の両方が関わるということになるのか。  
    (事務局より、第3案の前提は、学校教育法上に第三者評価機関についての規定が新しく置かれるということで、所管は文部科学省であり、法務大臣の意見も聞いて決めるという形で双方が関与する旨を説明。)

  •   法科大学院の設置と第三者評価機関による評価のタイミングについて、時系列的にどのようなイメージを持って議論したのか。また、新聞報道では、評価が芳しくない法科大学院については、法務大臣が是正措置を求めるようにするとあったと記憶しているが、それはこの仕組みの中に入る話なのか、それとも単なる誤報なのかを確認したい。  
    (田中座長より、1点目について、第三者評価機関の仕組みは中教審で検討中であり、この仕組みが決まらないと第三者評価機関の評価と設置認可とをどのようにリンクさせるのかについては検討できない旨を説明。)  
    (佐藤座長より、設置基準は広く参入を認めるものとし、第三者評価機関で質を厳しく評価するというのが意見書の趣旨であり、第三者評価は重要な要素として位置付けられている旨を発言。)  
    (事務局より、2点目について、新聞報道のものは、自由民主党司法制度調査会法曹養成小委員会で行われた議論の中で、自由民主党側の案として提示されたものである。これは、第3案を前提にした話であり、仮に非常に評価の悪い法科大学院が設置認可の基準を満たさないおそれのある場合に、最終的には文部科学省が設置の認可を取り消すかどうかの判断をするが、その点に関して法務大臣の方で知り得た事情や見解があれば、必要な措置をとるべき旨の意見を述べることができる、そのような形で法務大臣が関与できるというシステムを構築すべきであるという提案である。これは、まだ決まったわけではなく、提案がされて議論が継続中である旨を説明。)

  •   新司法試験の短答式試験については、今のものと同じイメージなのか。  
    (田中座長より、短答式という言葉は一緒だが、今の短答式に関して弊害や問題があることを十分踏まえた上、論文とは違う能力を判定できるということで論文式と組み合わせて使うということになったので、今の短答式試験をそのまま引き継ぐという意味ではない旨を説明。)

  •   短答式試験は、段階的選抜には使わないということなのか。  
    (田中座長より、両方の試験がいずれも合格点に達している必要があるとした上で、それらを総合評価するというような方法を考えている旨を説明。)

  •   一般の大学の設置認可に関わった経験では、一旦設置認可をしてしまうと、後で第三者評価をきちんとして、改善を求めたり認可の取消しをしようとしても、なかなか思ったようにいかない。法科大学院は非常に大事な役割を果たすので、特にこの点を配慮して欲しい。  
    (田中座長より、設置認可と何らかの形で連動させていかざるを得ないわけだが、第三者評価だけでもきちっと評価した結果を公表していく。情報化の時代であるので、公表することの意味は大きく、大きな効果が期待できる。法科大学院の中で入学者選抜のポリシーをどうするのか、成績評価をどうするのか、カリキュラムの中身などの相当部分については、自主的にホームページなどで情報提供した上で、透明性を確保しながらクオリティーを確保していく。このような形で情報公開していくのが一番賢明ではないか。第三者評価の結果から設置認可の取消しまで連動していくプロセスの中で、情報公開のところで相当程度クオリティーが維持できる仕組みが出来上がるのではないかと考える旨を説明。)

  •  医学部について何度事件を起こしても、潰されたという話は聞いたことがない。そう考えると、どうして個人の能力を評価するだけではいけないのか。第三者評価については、卒業生が出て国家試験に何人受かったというのなら分かるが、まずスタートで、何もない時にどこをどう見て評価するのか。  
    (田中座長より、設置認可した段階から、カリキュラムの中身や、入学者選抜のポリシーなどを情報開示することにより、受験生の方で選択していく形で評価が行われることは、非常に有効だと思われる旨を説明。)  
    (佐藤座長より、今まで、大学は設置認可が重要であった。いわば事前規制だが、それだけではだめだということで自己点検、自己評価をやり、そしてそれだけでもだめだということで外部評価を入れ、さらに今度は、役所そのものではない第三者評価機関でクオリティーを担保する仕組みを作ろうとしている。もっとも、第三者評価機関そのものが日本にはないから、その仕組みが理解しにくいところがある。しかし、これが情報公開と結びついてうまく展開して行けば、かなり違った大学の環境が出来てくると思う旨を発言。)

  •  第三者評価機関はいつ出来て、法科大学院が出来てから何年経ったら評価を始めることになるのか。  
    (田中座長より、第三者評価機関の仕組みは今、中教審で検討しているところであるが、項目によって、入学選抜の結果などは毎年データでチェックでき、大掛かりな調査は例えば5年に一回ということになろうが、その組み合わせで行えば、相当実効性があるものになるのではないかと考える旨を説明。)

  •  設置認可にも影響するような決定は、5年に一回という理解で良いのか。  
    (田中座長より、クオリティーの話になると5年ごとにしっかりと精査しないと厳密な評価はできないし、問題があれば随時調査することもできる旨を説明。)

  •  毎年、各法科大学院から第三者評価機関へ報告があるのか。  
    (田中座長より、各法科大学院が自主的に情報開示する形や、然るべき機関に一定の期間毎にある項目についての情報を送るとか、色々な形があると思う。自主的に情報開示を行ってもらい、行わないところはそれなりの理由があるということでサンクションを受けて行く仕組みを考えていくことになる旨を説明。)

  •  司法修習の給費制の在り方について、検討の内容を教えて欲しい。  
    (田中座長より、給費制だけを議論するのではなく、法科大学院に対するサポートシステムを含めた法曹養成制度全体の中で給費制を維持するのがリーズナブルなのかどうかを見直す必要があり、選択肢としては貸与制等も視野に入れて検討する旨を説明。)

  •  法科大学院のサポートシステムについては、具体的にどどのようなことが念頭にあるのか。  
    (田中座長より、法曹養成期間が相当長くなるので、全体として1人の法曹を育てるのにどれだけの負担がかかるかをみた上、個人が負担するものと公的な制度で支援するものとを分けて考えていく。そして、社会的に納得のいくシステムを考えて行く旨を説明。)  
    (事務局より、給費制の問題については、法科大学院を修了した者が司法修習を受けるのは平成18年以降になり、この秋の臨時国会に法案を提出することにはならないので、まだ十分に検討が深まっていないという状況を理解いただきたい旨を説明。)

  •  一般的な話だが、実効性を確保する仕掛けを制度の中に組み込んで欲しい。数値目標など、具体的に行動を直接規制する仕掛けが必要だと思う。そういう意味で、2年以内の判決という目標は、非常に重要である。公的な機関が成果を挙げないための方法は、あいまいな目標をつくることだと言われている。「国民の健康のために」とか「できるだけ速やかに」とかは、あいまいで何も言わないことであり、日々の行政には役に立たない。せっかく良い制度を作るのだから、制度を動かす仕掛けを工夫して入れて欲しい  
    (田中座長より、具体的な目標を掲げていくことは大事だと思う。ただ、大学の仕組みや教育の仕組みとも関連し、様々な役所にまたがる仕組みをどのように連動させるのかが、一番頭の痛い話である。それぞれは制度としてきちんと設計されているが、全体を動かしてみるとあちこちにネックが出て来ることのないような形にしないといけない旨を発言。)
 

(6) 森山副本部長から概要以下のとおりあいさつがなされた。

  •  顧問の皆様にはたいへん御熱心に御議論いただき感謝する。皆様の御議論を聞き、大変心強く、是非とも成功させなればいけないという気持ちを更に強くした次第である。総理にも、裁判所で2年以内に判決がなされるようにするという大変具体的な目標を示していただき、また、法曹人口を増やして国民の司法へのアクセスを拡充するという具体的なことをおっしゃっていただいたのは、本当にありがたいと思う。身近で、速くて、分かりやすい司法制度をつくるために、これからも顧問の皆様のご協力をいただきたい。

以 上

文責:司法制度改革推進本部事務局
注)速報のため、事後修正の可能性あり