首相官邸 首相官邸 トップページ
首相官邸 文字なし
 トップ会議等一覧司法制度改革推進本部顧問会議開催状況

司法制度改革推進本部顧問会議(第6回)議事概要



1 日 時  平成14年10月2日(水) 18:15〜19:40

2 場 所  総理大臣官邸大会議室

3 出席者

(顧問)
佐藤幸治座長、今井敬顧問、大宅映子顧問、奥島孝康顧問、小島明顧問、佐々木毅顧問、志村尚子顧問

(推進本部)
小泉純一郎本部長(内閣総理大臣)、森山眞弓副本部長(法務大臣)、遠山敦子本部員(文部科学大臣)、古川貞二郎本部長補佐(内閣官房副長官)

(推進本部事務局)
山崎潮事務局長、田中成明法曹養成検討会座長 他

4 議事次第
(1) 開会
(2) 検討会の検討状況等について
(3) 法曹養成制度改革関連法案について
(4) 顧問アピールについて
(5) 閉会

5 配布資料[PDF形式]
  1. 検討会の検討状況

  2. 知的財産訴訟検討会メンバー

  3. 司法試験法及び裁判所法の一部改正について(概要)

  4. 司法試験法及び裁判所法の一部改正について(骨子)(案)

  5. 法曹養成のための法科大学院の教育と司法試験等との有機的連携の確保等に関する法律(仮称)について(概要)

  6. 法曹養成のための法科大学院の教育と司法試験等との有機的連携の確保等に関する法律(仮称)について(骨子)(案)

  7. 学校教育法の改正について(要旨)

6 会議経過

(1) 開会の後、山崎事務局長から、新たな検討会(知的財産訴訟検討会)の設置、各検討会の検討状況等について、資料1及び資料2に基づいて説明がなされた。

(2) 田中法曹養成検討会座長から、法曹養成検討会における法曹養成制度関連法案の検討状況について説明があった後、山崎事務局長から資料3から6に基づき法曹養成制度関連法案について、工藤文部科学省高等教育局長から資料7に基づき学校教育法の改正についてそれぞれ説明がなされ、概要以下のような質問・意見があった。

  • 法科大学院にできるだけ幅広い人が入学できるようにするため、社会人を含め法学部以外から3割ぐらいを採用するという話が前にあったが、これは資料6の法律案の基本理念の「入学者の適性の適確な評価及び多様性の確保に配慮した公平な入学者選抜を行い」というところで担保されているのか。
    (事務局より、御指摘の部分にその趣旨が含まれているが、具体的な内容については、今後第三者評価基準が策定される中で定められることになる旨を説明。)

  • 実業界からすれば、できるだけ専門家を養成してもらいたい。司法試験の選択科目は、例えば税法や知的財産に関する法律など、大学のカリキュラムに組み込まれた科目のみを選択科目とするのではなく、司法試験の選択科目の範囲を先に広げ、その中から大学が選択科目を決めるようにした方がよいのではないか。
     (事務局より、社会のニーズに対応するという関係からできるだけ多くの科目を選択科目として取り入れていくことを想定しており、法科大学院で社会のニーズをきちんと把握しながら様々な講座を設けていくことになるので、その状況を考慮して、司法試験委員会で選択科目を決めていくことになる旨を説明。)
     (田中座長より、法科大学院でも社会的にニーズのある多様な科目を開講するので、大きな齟齬は生じないと思われる旨を発言。)

  • 資格試験であるので合格者数の枠を設けないということは、どこで担保されているのか。
     (事務局より、司法試験で判定される能力が規定されていることから、資格試験であることは表わされているが、具体的な合格者数については実際に試験を実施した結果に基づいて司法試験委員会が判断することになる旨を説明。)
     (田中座長より、さしあたりの合格者数の目標は意見書に定められており、将来的には基本的に市場原理で決まっていくものであると考えられる旨を説明。)

  • 非常に合格率が低い場合、せっかくつくった法科大学院がいい教育をしていないということになる。もしそうなった場合、資格試験と言っている以上、合格ラインを超えられない人ばかりになり、法曹人口を増やさなければならないのに今までより減ったということにもなりかねない。
     (田中座長より、質を伴う量の増大のためには、試験だけでなく教育姿勢も転換することが重要である。御指摘のようなことにならないように、設置基準・第三者評価で少人数教育・双方向的教育などの仕組みが確保されるようになっている旨を説明。)
     (事務局より、最終的には司法試験委員会の判断になるが、法曹として最低限備わっていなければならない能力のラインをクリアしなければ合格することができないことになる。そこで、より教育を徹底し、質を落とさないために法科大学院をつくることとされている。第三者評価で適格認定が行われるが、長年の間極端に合格率が低ければ、何か教え方に問題があるかもしれないとして文部科学大臣による調査・報告が行われることになり、その結果に基づいて必要がある場合には、改善勧告、変更命令によって法科大学院の教育を是正していき、それでも改善されない場合には、閉鎖命令等が出されるという仕組みで質を担保することになる旨を説明。)

  • 第三者評価はどれくらいの頻度で、いつから始まるのか。検討会でどのような議論がなされたのか伺いたい。
     (田中座長より、第三者評価は事後チェックであり、当初は設置認可のフォローという形になるだろう。全般的な第三者評価の仕組みは、数年に一回、訪問調査を行うようなことが考えられているようであるが、定量的にデータが出せるもの、例えば入学者の多様性を確保しているか、教員の基準を満たしているかといったものは、毎年フォローしていくことになると思われる旨を説明。)

  • 国の責務に「法制上、財政上の措置を講ずるべき」との規定あるが、「財政上の措置」とは具体的にどのようなものが含意されているのか。
     (事務局より、財政上の措置として典型的に考えられるのは、法科大学院制度の整備に係るもの、奨学金など学生支援のためのものなどが考えられる旨を説明。)
     (田中座長より、財政上の措置について規定するよう要望する旨を発言。)

  • 国の責務を規定する部分については、制度の確実かつ有効な実施のため、国が法科大学院に関する十分な財政措置を講じる責務について、その趣旨を明記すべきではないか。
     (佐藤座長より、財政措置の具体的内容については今後更に検討していくことになる旨を発言。)

  • 「法曹養成のための法科大学院の教育と司法試験等との有機的連携の確保等に関する法律」という名前が長すぎる。例えば、「法科大学院の教育と司法試験等との連携に関する法律」などと単純化した方が世間には分かりやすいのではないか。
     (事務局長より、名称についてもう一度考えてみたい旨を説明。)

  • 基本理念が一文で長すぎる。国民にとって身近でわかりやすいという視点から見ても、一つのセンテンスでは長すぎる。規定を分けてはどうか。
     (事務局より、法制上の問題もあるので更に検討を加える旨を説明。)

  • 条文を短くするとわかりやすいが、逆に中身がなくなってしまい、長い間の蓄積の中でガイドラインがたくさんできていって初めて中身が分かるようなことになる。最初からガイドラインのようなものを作るのは無理だというのは分かるが、ここに書いている内容では読んだ人にイメージが湧きにくく、もうちょっとイメージが湧くようなやり方はないだろうかと考えている。例えば、法学部出身者以外が少なくとも3割というような歯止めや、適格認定において司法試験合格者数と法科大学院入学者数との相関関係をどのように考えるかといった全体のイメージが湧くようなことを考えておかなければ、後々難しくなるという危惧を持っている。基本理念について、もっと詳細に、倍くらい書いてもらいたい。

  • 司法制度が国民に支持され、十分に活用されて有効に機能するためにも、基本的な要素は公開性・透明性である。適格認定、第三者評価のプロセスの公開性・透明性は担保されているのか。
     (文部科学省より、全般的な評価の公開性・透明性については評価機関独自の見識の問題であり、具体的な公開方法は評価機関独自の評価基準・取扱いの仕組みでニュアンスが違ってくるだろう。それらを並べてみて世の中で評価しようではないか、というものである旨を説明。)
     (田中座長より、第三者評価のデータをオープンにしていくことは、社会一般、学生、法曹関係者にとって意味は大きいと思うので、法科大学院の運営・教育内容全体の透明性の確保について検討すべきである旨を説明。)

  • 第三者評価機関は、複数ではなく、一つということになったのか。
     (事務局より、複数あり得る旨を説明。)

  • 第三者評価について現在国立大学で実施しているが、評価された側の異論や反論も含めて公開するなど、色々な形で透明性を確保しようとするプロセスが進みつつある。複数の評価機関がしかるべき形で早く手を挙げていただくことが公開性を確保するためにも大事なステップである。

  • 以上の質疑応答、意見交換の後、法案の概要について顧問会議として了承された。
     また、佐藤座長より、法曹養成のための教育機関として法科大学院を設け、それとの密接な関連で司法試験と司法修習の在り方を考えるということは、従来にない新しい発想であり、文部科学省で検討を進めている教育改革とも深い関わりを有し、教育の在り方の問題と法曹の在り方の問題について一体になって議論されていくことは従来の日本にとって画期的なものであると思われるので、法律の成立を切望している旨の発言がなされた。

(3) 佐藤座長より、第5回顧問会議において取りまとめられた顧問アピールを受けての政府の取組について質問がなされ、山崎事務局長より、第一審の裁判の結果が2年以内に出るようにするとの内容を実現するための方策として、その出発点となる法的措置を具体的に検討し、平成15年通常国会に所要の法案を提出することを目指し、早急に検討を進めていく旨の説明がなされ、概要以下のような質問・意見があった。

  • 非常に一般の人も関心を持っていることなので、単なるスローガンで終わらないように数字を明記するなど、実現のための条件整備が必要である。どういう条件が必要なのかも検討する必要がある。米国のデラウエア州には企業関係の裁判だけを扱う特別法廷があり、365日24時間営業し、弁護士出身の優秀な裁判官が集められ、きわめて短期間で結論を出しており、その州に国内の上場企業の半分以上が本社を置いているという話である。企業にとってはスピードが勝負であり、知的財産の問題などは早く解決してもらわないと大きな損害になる。企業の寿命は平均して15年と言われている時代に訴訟が5年もかかるというのであれば、企業にとって致命的である。スピードは、経済社会において最も重要な要素であり、法律に対する信頼を得るためにも絶対に必要である。

  • 裁判は、拙速ではいけないが、迅速でなければならない。

  • 2年以内に判決を出すための人的・制度的基盤の整備については、顧問会議の主導性を再確認し、今後その具体的な進捗状況を確認しつつ、促進させていくことが必要ではないか。

  • 2年以内に判決を出すことは歓迎だが、法制審議会民事訴訟法部会で議論されている提訴前の証拠収集手続などを考えれば、濫用されるおそれもあると思われる。訴える気もないのに嫌がらせで証拠を出させることなどに対して、裁判所の適正な関与が必要ではないか。
     (事務局より、法制審議会での検討では、濫用防止の措置もテーマになっており、今の御指摘を法制審議会に伝える旨を説明。)

  • 2年以内という目標は賛成だが、予測しない事情が起こった場合などには、2年以内を無理にやろうとすると正しい結論が出せないということもあり得ると思われるので、どういう場合に例外が認められるかということも決めておかなければならないのではないか。
     (佐藤座長より、そのような問題はあるものの、長くかかるものであるという認識から、充実すれば当然迅速な裁判に繋がると思うことへの発想の転換が、まず重要である。迅速な裁判と充実した裁判とは同じものであると考えられるので、そういう前提で検討すべきではないか、という旨を発言。)

  • 社会全体が発想の転換、価値観の転換の流れにある。質を上げつつ同時に迅速であるということもあり得ると思う。

  • デラウエア州では、判例の長年の集積があるので、どんなケースでも判例に当てはめれば具体的な回答がすぐに出てくる。我が国が、どのようにしたら、そこまで行き着くかという問題もある。
     (佐藤座長より、2年以内ということを考えるに当たっては、その実現のために人的基盤の整備、制度的・手続的な手当てをどうするかということも総合的に詰めていかなければならない課題である旨を説明。)

  • 法律の適用に時間がかかりすぎることは、その間法律が仮死状態にあることを意味し、司法制度の自殺行為とも言える。

(4) 小泉本部長から概要以下のとおり挨拶がなされた。
 国民に頼りがいのある司法を実現することは、現在内閣が総力をあげて取り組んでいる構造改革の基盤をなすものである。
 迅速な判決、迅速な権利の実現を期待できる裁判にしなければならない。先般お示しした裁判の結果が出るまでの期間を二年以内にという具体的な目標を実現するために、新たな枠組みを法律で定めることが必要である。
 一方、制度を動かすのは人であるから、裁判の迅速化のためにも、法曹の質と量の拡充が必要である。本日御議論いただいた法曹養成制度改革に関する一連の法案を秋の臨時国会に速やかに提出し、その成立を期したい。
 司法を国民の手の届くところに置かなければならない。そのために、人材を育成し、法曹人口を増やすとともに、全国どの町に住む人にも法律サービスを活用できる制度を構築する必要がある。
 こうした改革自体にも延々と時間がかかるようでは、司法改革に対する国民の期待を裏切ることになる。司法改革を確実に、かつ、速やかに進めていくため、引き続き皆様方のお力添えをお願いしたい。

(5) 森山副本部長から概要以下のとおり挨拶がなされた。
 2年以内に裁判の結果が出るようにするためには、やり方や体制に加え、考え方を切り替えることが大変重要である。
 身近な司法という意味では、各市町村に住んでいる一般の住民が少しでも気軽に相談できるようなところがもう少しあるとよいと思っているので、そういう努力もこれからしてまいりたい。
 法曹養成関連法案は、推進本部として司法制度改革に関して最初に提出する法案であるので、今日の議論を十分踏まえて秋の臨時国会に速やかに提出して成立を期したい。

(6) 遠山文部科学大臣から概要以下のとおり挨拶がなされた。
 今は、大きな司法制度改革のターニングポイントにあり、その中で文部科学省も大変重要な部分を分担しているということをしっかり認識した。
 国際的にも通用する高度の専門職業人の養成を行う専門職大学院は、文部科学省が総力を挙げて取り組んでいる大学改革の大きな柱の一つである。法科大学院は、その突破口となるものであり、司法制度改革という観点にも加え、今後の大学改革の先行指標という観点からも、その成功に向けて、全力を傾注してまいりたい。
 また、できる限り迅速にかつ透明性を高め、問題に対処してまいりたい。


以 上
文責:司法制度改革推進本部事務局
注)速報のため、事後修正の可能性あり