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司法制度改革推進本部顧問会議(第6回)議事録



日 時 : 平成14年10月2日(水)18時15分〜19時40分

場 所 : 総理大臣官邸大会議室

出席者 :
(顧 問)
佐藤幸治座長、今井敬顧問、大宅映子顧問、奥島孝康顧問、小島明顧問、佐々木毅顧問、志村尚子顧問

(推進本部)
小泉純一郎本部長(内閣総理大臣)、森山眞弓副本部長(法務大臣)、遠山敦子本部員(文部科学大臣)、古川貞二郎本部長補佐(内閣官房副長官)

(事務局)
山崎潮事務局長、田中成明法曹養成検討会座長 他

議事次第 :
1 開 会
2 検討会の検討状況等について
3 法曹養成制度改革関連法案について
4 顧問アピールについて
5 閉 会

【佐藤座長】 それでは、ただいまから「司法制度改革推進本部顧問会議」第6回会合を開会したいと思います。顧問の皆様には、何かと御多用の中、御出席賜わりましてありがとうございます。
 笹森顧問は、本日やむを得ない所用のために御欠席でございます。
 また、前回に引き続きまして、本日も法曹養成検討会の田中座長に御出席いただいております。どうもありがとうございます。
 御承知のように、推進本部におきましては、法曹養成制度改革関連法案を策定するということを目指しまして、作業を進めておりまして、現在大詰めの段階を迎えております。本日は主としてこの法曹養成制度改革関連法案について説明を受け、御審議賜わりたいというように存じております。
 本日は、遠山文部科学大臣に御出席いただいております。ありがとうございます。
 後ほど本部長の小泉総理にも御出席いただけるというように承っております。
 それでは、議事次第に従いまして、まず最初に検討会の検討状況等について、事務局から資料の説明をお願いします。

【事務局長】 それでは、私の方から御説明をさせていただきます。
 前回以降の司法制度改革の進捗状況について簡単に申し上げたいと思います。
 まず、新たな検討会の立ち上げについて御報告を申し上げます。
 本年7月3日に総理大臣の下に置かれおります知的財産戦略会議において、知的財産戦略大綱が決定されました。
 その中には、特許紛争の合理的な解決、実質的な特許裁判所の機能の創出など、司法制度改革審議会意見に言う、知的財産権関係訴訟のさらなる充実・迅速化に関する内容も含まれております。
 そこで、これを受けまして、積極的にこれらの点の改革に取り組んでいくため、事務局の体制を更に拡充するとともに、新たに知的財産訴訟検討会を設けて検討を進めていくということにいたしております。
 私どもにとりまして、11番目の検討会の立ち上げということになるわけであります。
 資料2をごらんいただきたいと思いますけれども、このようなメンバーの方々に御参加をいただきまして、今月中にも検討を開始したいと考えております。よろしくお願いを申し上げます。
 次に資料1でございますけれども、検討会における検討状況は、ここに記載したとおりでございます。後ほど御議論をいただく法曹養成関係のほかに、特に平成15年通常国会への法案提出を予定している事項についての検討が、引き続き急ピッチに進められているところであります。
 例えば、法曹制度検討会におきましては、弁護士の活動領域の拡大、弁護士会の綱紀・懲戒手続の透明化等、報酬規定の削除、更にはいわゆる非常勤裁判官制度として、民事調停事件及び家事調停事件に弁護士が裁判官と同じ立場で関与する制度を導入することなどにつきまして、既に法改正の方向性について整理がされているところでございます。
 また、仲裁検討会におきましても、国内仲裁に関しましては、検討すべき課題が残っておりますけれども、国際商事取引に関する仲裁につきましては、基本的な方向性についておおむね合意が得られているところでございます。
 更に、司法アクセス検討会、国際化検討会におきましても、基本的方向を出す上での大詰めの議論が行われているところでございます。
 そのほかの検討会につきましても、主要論点についての検討が順次進められつつあります。
 また、この間に仲裁検討会、行政訴訟検討会、裁判員制度・刑事検討会において、国民からの意見募集を行っております。その結果も、今後の検討に十分活かしてまいりたいと考えております。
 なお、平成15年通常国会提出予定法案に関する事項につきましては、次回以降の顧問会議で御議論をいただく予定にしておりますので、よろしくお願いを申し上げます。
 以上でございます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。それぞれの検討会は順調に進んでいるようでありますが、検討会が、10もあって多いということでしたけれども、もう一つ知的財産訴訟検討会が発足するということでございます。
 ただいまの事務局の説明につきまして、何か御質問ございませんでしょうか。いかがでしょうか。状況はこういう状況だということで、よろしゅうございますか。

(「はい」と声あり)

【佐藤座長】 それでは、続きまして2番目でございますけれども、法曹養成制度改革関連法案に関しまして、御審議いただきたいと思います。
 まず、法曹養成検討会の田中座長から御説明いただければと思いますが、よろしくお願いします。

【田中法曹養成検討会座長】 法曹養成検討会は、今年の1月11日から9月30日までの間に合計13回の検討会を開催いたしました。
 そして一昨日の検討会におきまして、この秋の臨時国会に向けて、法曹養成制度改革に関連する法案についての立案の基本方針を最終的に確認するに至りました。
 法曹養成検討会において検討した主な点は3つございまして、1つ目は法科大学院の第三者評価、適格認定の在り方でございます。2つ目は、新しい司法試験の在り方でございます。3つ目は、新しい司法修習の在り方でございます。
 この新しい法曹養成制度におきましては、法科大学院における教育と司法試験及び司法修習との有機的な連携を確保することが求められておりまして、こういったテーマをそれぞれ別々に検討するのではなく、それらの有機的な連携をいかにして確保するかということを常に念頭に置いて議論する必要があったわけでございます。
 また、法科大学院は学校教育法上の大学院として設置されますことから、文部科学省の中央教育審議会等における法科大学院に関する検討状況を考慮する必要もございました。
 一昨日の検討会で、最終的に立案方針を確認するに至りました法案は、司法試験法及び裁判所法の一部改正案のほかに、法科大学院の教育と司法試験等との有機的連携の確保に関して定める法律案でございます。
 その具体的な内容については、事務局から後ほど説明があるものと承知しておりますけれども、特に有機的連携の確保に関する法律は、法務省や文部科学省などのそれぞれの所掌事務を前提としながら、それらをこの法律によって、言わばブリッジして、その有機的な連携の確保を図るというものでございまして、こういった連携が必要であることを明らかにするために、新たな法曹養成の基本理念を定めることにいたしております。
 そして、意見書とか推進計画に基づいて、高らかな基本理念を掲げた法律を制定することになりましたのは、新しい法曹養成制度に大きな期待を寄せられる皆様方の熱意の賜物でございまして、この制度の構築に関係する者の一人として、重い責任を感じている次第でございます。
 一昨日の検討会では、この法律についての事務局の立案方針を確認するとともに、それに加えて、政府において法曹養成の基本理念にのっとった施策を実施するために必要な財政上の措置を講じるべきであるという趣旨を、この法律に規定することを要望することになりました。
 この顧問会議におきましても、この検討会の要望の趣旨について御理解を賜わりまして、事務局において所要の立案作業を進めることにしていただきたいと考える次第でありますので、何とぞよろしくお願いいたします。
 以上でございます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。それでは、続きまして事務局から法案の概要について御説明願えればと思います。

【事務局長】 私ども事務局におきましては、この秋の臨時国会に向けまして、司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律案と法曹養成の基本理念等を定める法律案について立案作業を進めているところでございます。
 また、文部科学省からは学校教育法の一部を改正する法律案が提出される予定というふうに承っております。
 まず、司法試験法及び裁判所法の一部改正について御説明申し上げます。
 これに関しては、資料3と4がございますが、資料3の概要の方で御説明をさせていただきたいと思います。
 まず「第1 司法試験法の一部改正」です。
 「1 法科大学院及び司法修習との連携」についてでございますけれども、これはここに記載されましたとおり、プロセスとしての法曹養成制度を整備するということから、新司法試験につきましては、このような趣旨の規定を置くということでございます。
 次に「2 司法試験の方法・試験科目等」です。
 短答式試験及び論文式試験を同時期に実施をするということにしているわけでございます。
 この短答式の試験科目につきましては、公法系科目、民事系科目、刑事系科目といたしまして、論文式試験の試験科目につきましては、選択科目を1科目これに加えることとしているわけでございます。
 続きまして「3 司法試験の受験資格」についてです。
 新司法試験の受験資格につきましては、法科大学院を修了した者又は予備試験に合格した者に認めるということにしておりまして、5年の間に3回という受験回数制限を設けるということにしております。
 この5年に3回という制限に該当した場合には、後に受験資格を再取得したとしても再受験を一切認めないということにするのは、やはり相当ではないというふうに考えられることから、注に記載されておりますように、再受験の制度を設けるということにしているわけでございます。再度受験資格を得た者については、同じように5年の間に3回の試験を受けることができるということになるわけでございます。
 次に「4 予備試験」です。
 予備試験につきましては、法科大学院修了者と同等の学識、能力及び法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定することを目的とするものとすると記載されております。この点については、さまざまな議論がございましたけれども、このような趣旨で予備試験を設けるということになります。
 短答式試験と論文式試験、それから口述試験を行うということにしております。その短答式の試験科目は、ここに掲げてございますように8科目ございます。論文式の試験科目につきましては、今の8科目に加えまして、法律実務基礎科目というものが加わるわけでございます。また、口述試験の科目につきましては、法律実務基礎科目の1科目のみということにしております。
 このように論文式試験と口述試験では、法律実務基礎科目を設けているわけでございますけれども、この具体的なイメージについては、要件事実を前提にいたしまして、一定の書式に沿った書面を作成させるということ、あるいは、受験者の論理的思考力を試す問題を出すというようなことによりまして、法律の実務に関する基礎的素養を判定するものと、こういうことを目的とするものでございます。
 要件事実は、なかなか分かりにくいのですが、お金を貸した場合に、貸したというのはどちらが主張するのかと、それからお金を返したというのはどちらの方が主張するのかと、そういう割り振りのことを要件事実と言っているわけですけれども、そういうものを意識しながら書面を作成していくと、こういうことをやるわけでございます。これは裁判にとって非常に重要なポイントになるわけでございます。こういうイメージで御理解をいただければと思います。
 口述試験につきましては、この法律実務基礎科目のみを試験科目としているわけでございますけれども、これは法律的な知識を確認することを主たる目的とするのではなく、試験官とのやりとりの中で、受験者の論理的思考力や、あるいは口頭表現能力等の基礎的素養を確認しようと、こういう趣旨で行うのであります。
 続いて「5 司法試験委員会」についてでございますけれども、司法試験管理委員会を改組いたしまして、司法試験委員会を設置するということにしております。新たに設置されます司法試験委員会は、委員として法曹三者のほか、法科大学院関係者等の学識経験者を加えることとしております。
 委員会が司法試験の実施主体となるほか、司法試験等の実施に関する重要事項を調査審議して法務大臣に意見を述べると、こういう審議会の機能をも持たせるということにしているわけでございます。
 最後に、今般の司法試験法改正の附則で規定をいたします、施行期日や経過措置等との関係について御説明を申し上げます。
 まず、実施時期についてでございますけれども、新司法試験は、平成18年から実施をいたします。
 法科大学院は、平成16年に学生が入学をいたしまして、早い者は2年で卒業いたしますので、平成18年から実施をするということになります。
 予備試験は、平成23年から実施をします。
 現行司法試験は、平成22年まで実施をいたします。
 現行司法試験が、平成22年まで実施されますので、平成23年から予備試験を実施するということになるわけでございます。
 受験者は、同一年においては、あらかじめ選択するところによって、新司法試験あるいは現行司法試験のいずれかのみを受けることができるということで、同一年に両方受けることはできないということでございます。
 法科大学院の在学生または修了者が現行司法試験を受けた場合に、これを受験回数制限の対象として算入をするということとしております。
 次に「第2 裁判所法の一部改正」についてでございます。
 「司法修習生の修習期間を、少なくとも1年に短縮するものとする」ということとしております。
 これは法科大学院において実務の基礎的な教育が実施されるなど、法科大学院における教育と司法修習との役割分担等を考慮いたしまして、現在「少なくとも1年6か月間」とされている修習期間を「少なくとも1年間」に短縮するものでございます。
 以上が、司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律案の概要でございます。
 次に、資料5と6を御覧いただきたいと思います。法曹養成に関する法律について御説明を申し上げます。
 資料の5の方に基づきまして御説明をさせていただきます。
 先ほど御説明を申し上げましたけれども、今回の法曹養成制度改革の関係では、司法試験法及び裁判所法の一部改正、学校教育法の一部改正を予定しておりますが、新たな法曹養成制度においては、法務省や文部科学省などのそれぞれの所掌事務を前提としつつも、それらを言わばブリッジして有機的連携を確保することが必要でございます。そのためにこの法律を制定するということにしたものでございます。
 この法律名についてでございますけれども、この法律を制定する意義を端的に示すため、現在のところ資料の表題に仮称として記載しているようなものを予定しているということでございます。
 以下、1〜7までに記載がございますので、御説明いたします。
 1は、法律の目的ですので、これは省略をさせていただきます。
 次に「2 基本理念」についてですが、基本理念につきましては、法曹養成の基本理念として求められている法曹像、それから、法曹養成のための中核的な教育機関としての法科大学院における教育、それから、法科大学院における教育と司法試験及び司法修習との有機的連携の確保について規定をするということでございます。
 これは我が国の社会において求められている法曹を養成するためには、法科大学院において充実した教育が行われるとともに、法科大学院における教育との有機的連携を確保した司法試験及び司法修習を実施することが必要であるとの基本理念を規定するものでございます。
 次に「3 国の責務」です。ここに記載されておりますように、国が法曹養成の基本理念にのっとって、所要の措置を講ずる責務を有するとの趣旨を規定するものでございます。
 また、先ほど田中座長のお話にもございましたけれども、政府におきまして、法曹養成の基本理念にのっとった施策の実施に必要な法制上、財政上の措置を講ずるべきことについて規定をする方向で現在検討をしているところでございます。これも検討会の方でいろいろ御指摘がございましたが、それを踏まえまして、これを規定する方向で検討しているということでございます。
 「4 大学の責務」ですけれども、法科大学院における教育の充実についての大学の責務について規定することとしているわけでございます。
 次に「5 法科大学院の適格認定等」について規定をすることとしております。
 これにつきましては、今回改正が予定されております学校教育法におきまして、いわゆる第三者評価の制度が創設されるということを踏まえまして、法科大学院の関係では、この法律で適格認定について規定をするということにしたものです。
 2つ目の○にございますように、文部科学大臣は、法科大学院が適格認定を受けられなかったときは、大学に対し報告または資料の提出を求めることについて規定をするということにしているわけでございます。
 次に「6 法務大臣と文部科学大臣との関係」についてです。
 ここの最初の○に記載されておりますように、黒ポツで3つの場面が書かれておりますけれども
 「・法科大学院に係る設置基準の制定・改廃」
 「・法科大学院についての評価を行う者に係る認証基準の制定・改廃」
 「・法科大学院についての評価を行う者の認証・認証の取り消し」
 この場合につきまして、法務大臣が文部科学大臣に必要な意見を述べることができるということにしているわけでございます。
 その下に2つ○がございますけれども、法務大臣は、特に必要があると認めるときは、文部科学大臣に対し、法科大学院について必要な措置を講ずることを求めることができるということについて規定をするということにしております。
 文部科学大臣は、必要があると認めるときは、法務大臣に対し、協議を求めることができるということについて規定をするということでございます。
 この点につきましては、法科大学院の修了者に司法試験の受験資格を与えるということなど、法科大学院における教育の充実が、法曹養成の在り方と密接な関係にあるということなどを考慮いたしまして、法務大臣と文部科学大臣との連携関係を規定したものでございまして、この法律を制定する具体的必要性を端的に示すものであるというふうに考えられます。
 最後に「7 いわゆる見直し条項(附則関係)」ですが、施行後十年を経過した場合において、法曹養成制度について検討を加え、必要があると認めるときは、所要の措置を講ずるということを規定しているわけでございます。
 施行後十年といたしましたのは、この法律が平成15年に仮に施行されても、司法試験の予備試験が実施されるのは平成23年でありまして、それまでは、いわゆる移行期間でございますので、法曹養成制度についての更なる見直しは、その移行期間経過後とすべきであると考えたことから、十年という単位を取らせていただいたわけでございます。
 以上が、事務局において立案作業を進めております法案の概要でございます。よろしくお願いを申し上げます。
 以上でございます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。それでは、引き続きまして、文部科学省から資料の御説明をお願いします。

【工藤文部科学省高等教育局長】 文部科学省でございますが、資料の7を御覧いただきたいと思います。
 私どもの方で、予定されている国会に学校教育法の一部改正を予定してございますが、これは中央教育審議会の方で御熱心な御審議をいただいてまとめた方向についての制度改正でございますけれども、この資料の点線を後ほど御覧いただきますように、法科大学院に関連した部分に言及しながら資料を整理してございます。
 右肩にございますように、制度改正そのものは大学全体についての改正でございますけれども、法科大学院は密接に関連してございますので、その分を注記したものでございます。
 大きく2つの要素からの改正を予定してございます。
 「第一」にございますように、専門職大学院制度の創設でございます。御承知のように、大学院につきまして、戦前からの経緯も受けながら、日本の学校教育制度上は、ややもすれば研究者養成という色彩が強い規定振りになってございますけれども、その中で近年需要が高まっております、高度専門職業人養成のための、いわゆるプロフェッショナル・スクールを学校教育法の上で正式に位置づけようというものでございます。
 既に、修士課程レベルでビジネス・スクールと言いますか、経営学関係あるいは公衆衛生関係の専門大学院というのは発足しているのでございますが、立ち上がったばかりでございますので、今回の法科大学院を包括して、しっかりした制度化を図りたいというものでございます。
 それに伴って「第二」にありますように、専門職学位を授与する規定を設けようというものでございます。これまで大学院の修了者は、修士又は博士という学位でございますけれども、専門職大学院につきましては、それぞれの分野に応じて必要な学位を差し上げられるようにしようではないかということでございます。
 法科大学院につきましては、言わばグローバル・スタンダードが必要でございますので、J.D.に相当するような学位が差し上げられるようなことを想定しているものでございます。
 大きく2番目の改正は、大学の設置認可に絡みまして、国の事前の関与をできるだけ緩和いたしまして、事後的なチェック体制を整備しようというものでございます。兼ねて総合規制改革会議の方からも御答申をいただいているところでございますが、そのため「第二」「第三」「第四」とございますけれども「第二」では、事前の国の関与としての大学の設置認可につきまして、一定の場合、つまり学位の種類等が変更を来さない場合については、学部、学科であろうが何であろうが、自由化をしようということでございまして、認可事項ではなくて、届出で足りることとするものでございます。
 なお、ちなみに囲みにございますように、法科大学院につきましては、新しい学位を授与する課程でございますので、事前の認可に係らしめ、かつその関係の審議会には法曹関係者からも御参画いただこうというものでございます。
 「第三」は、事後的なチェック体制の充実の一環でございますけれども、第三者評価機関による大学評価制度の導入ということでございます。
 残念ながら日本の場合に、戦後志してきたのでございますけれども、この評価システムがまだ未成熟でございまして、欧米諸国のみならず、中国、韓国に比べてもまだ立ち後れている部分がございますので、大学の質を確保し、その向上を図るために大学関係者等によります自主的な評価制度を制度化していこうというものでございます。
 「第三」の一.にございますように、A、Bとございますが、機関別の全学的な評価、特に分野別の中でも専門職大学院については特記しながら、一定の期間ごとに評価を受けていただくようにしようというものでございます。
 その場合に、評価機関について文部科学大臣の認証を受けた評価機関ということでございますが、手前みそで身勝手な評価というよりは、ユーザーの方々も含めて、一定の要件、合致している評価機関ですというのを認知するために、こういう認証制度を設けてございます。
 二にございますように、評価結果につきましては、当該大学に御通知するのは当然でございますけれども、世に公表し、世の批判を仰ぐという仕組みにしてございまして、併せて文部科学大臣への報告を規定しようとしてございます。
 その場合に、囲みにございますように、法科大学院につきましては、司法制度改革審議会の御答申にならったわけでございますけれども、評価の在り方について法科大学院についての基準に合致するかどうか、適格かどうかということを認定するなどの特例を、先ほど山崎局長から御説明がございました法律で規定させていただくということが予定されてございます。
 それとともに、文部科学大臣が結果の通知を受けましたら、法務大臣の方にお知らせ申し上げるということでございます。
 更に1枚めくっていただきますと、「認証評価機関の認証」でございますけれども、これは評価そのものは国が行うものではございませんけれども、先ほど申したような趣旨の認証ということでございますので、一定の要件を具備すれば、当然認証される仕組みということでございまして、今、いろんな団体、関係者等が準備中でございますけれども、いくつに限るということはございませんので、いろんな組み合わせでの評価機関が育っていくことを私も期待しているところでございます。
 なお、四にございますように、残念ながら公正あるいは適格な評価が確保できないということになると困ることになりますので、若干歯止め的な規定を設けざるを得ないかなということと併せて、そういう行政行為を行うに当たっては、デュープロセスが必要でございますので、あらかじめ審議会の意見を聴いて行うという仕組みにしてございます。
 「第四」は残念ながら違法な状態にある大学に対する是正措置の関係でございます。
 先ほどの「第三」は大学関係者等が自主的に行っていただく強化でございますけれども、行政行為として、違法状態にある大学に対する国の関与をどうするかということでございまして、現在は、設置認可後は、大学の自主的な努力の後、ぎりぎりの場合の閉鎖命令という措置しかないわけでございますけれども、不透明な行政指導ということではなくて、しっかり審議会等にお諮りしながら、改善勧告、あるいは変更命令、更には大学の閉鎖に至る前に、一部の少し腐りかけている組織の閉鎖、学部等の組織の廃止などを命ずる、そういう段階的な措置を講ずるようにさせていただいてはどうかということでございます。
 併せて二にございますように、あらかじめ審議会等に意見を聴きながら、こういうことを行うことにしてございます。
 なお、経過措置でございますが、この国会で通りますと、平成15年4月からの施行を予定してございますけれども、評価関係につきましては、若干経過期間を置きまして、平成16年4月からの施行を予定しているものでございます。
 以上でございます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。この法曹養成制度というのは、申すまでもなく、今般の司法制度改革の最もベースを成すものでございまして、司法制度改革審議会の意見書を踏まえて、検討会を始め、関係者の間で非常に精力的な検討を進められて、今日、御説明いただいたような形にたどり着いたということにつきましては、審議会から関係してきた者として、私は非常に深い感慨を覚える次第でございます。ただいまの御説明に関しまして、御意見、御質問を賜わりたいと思います。どうぞ御遠慮なしに御発言いただければと思います。いかがでしょうか。

【今井顧問】 本当に非常に短時間で、臨時国会に法律案が出せるように御努力なさった事務局や検討会、それから法務省と文部科学省に対して敬意を表したいと思いますが、いくつか質問させていただきます。
 以前に、法科大学院にできるだけ幅広い人材が入れるようにということで、社会人を含めて、3割ぐらいを法学部卒業生以外から採用するという話があったのですけれども、これは先ほどの基本理念のところに「入学者の適性、適確な評価及び多様性の確保を配慮した公平な入学者選抜を行い」というところで担保されていると考えてよろしいでしょうか。

【佐藤座長】 2つ御質問ということですが、まず、今の点についてどうぞ。

【事務局長】 ただいまの御指摘のとおり、この基本的な理念を定めた法律の中にその趣旨が書き込まれておりまして、これが出発点になっているということでございます。
 これは、理念を書いておりまして、では具体的にどのぐらいの割合なのかという問題は、これはここには書き込まれておりません。
 前に御説明したのは、私どもの設けております田中座長に御検討いただいております法曹養成検討会で、そういう意見が出てまいりまして、それを御紹介したということでございます。そこでの議論では大体3割ぐらいという意見が多かったということでございます。
 この点につきましては、今後法科大学院に関します第三者評価基準、これを策定する中で具体的な目標を定めていくというようなことを予定しておりまして、関係の機関と、そこの点は調整してまいりたいと思います。
 また、文部科学省の方とよく御相談をしたいと思います。

【今井顧問】 もう一つは、我々実業界の立場から言うと、できるだけ多様な専門家を養成してもらいたい。そうしますと司法試験で選択科目が1科目との説明がありましたが、この司法試験の選択科目をできるだけ多くの科目、例えば税法とか知的財産に関する法律とかを用意する必要があるのではないか。大学のカリキュラムの中に組み込まれたものを選択科目にするのではなくて、逆に試験制度の選択科目の範囲をうんと広げて、それを見ながら各大学が選択科目を決められるようにした方がいいのではないかと思います。大学が、カリキュラムの中で取り上げた科目だけが選択科目にならないようにということは御配慮できないでしょうか。

【事務局長】 ただいまの御指摘の点は、社会のニーズ等に対応するという関係から、なるべく多くの科目を取り入れていくという方向で考えております。それを想定しているということでございます。
 ただ、現在の考え方として、法科大学院側で何を教えるかに関わらず、司法試験の科目を決めるという形を想定はしていないわけでございます。法科大学院の方では、社会でどういうようなニーズがあるかをきちんと把握しながら、いろいろ講座を設けていくということになりますので、講座をかなり多くのところで設けているもの、そういうものは希望が多いということから、そういうことを反映しながら、司法試験委員会の方で決めていくと、こういう発想でございます。
 ただ、司法試験委員会の方でも、いろいろな情報を取り入れて検討をしていくということになろうかと思います。

【今井顧問】 なるべく幅広くということですね。
 それから、最後に司法試験は資格試験であるので、いわゆる合格枠を設けないと、何人しか合格させないということはないというのはどこで担保されているのでしょうか。

【事務局長】 これは、資格試験であるということは、この法文の内容を見ていただければ能力を試すテストでございますので、それで表されているということになります。最終的に人員をどのぐらいにするかとか、そういうことは結局試験をやってみないとレベルがどの辺に落ち着くかということがわかりませんので、そういう人数的な担保とか、そういうことはこの中に書かれておりません。それは試験を行った結果を踏まえて考査委員の方で判断をするということになろうかと思います。

【佐藤座長】 田中座長の方で何かございますか。恐れ入ります。

【田中座長】 先ほど事務局長がおっしゃったとおりですけれども、法学部以外の者をできるだけ多く入学させるということについては、検討会で検討いたしまして、第三者評価の具体的な基準の中に何らかの形で取り入れられるべきだとして、差し当たりは3割以上という基準を示し、将来的にはまたいろいろと考えていくことになっております。
 2つ目についても、やはり法科大学院自体が社会のニーズに応じた多様な科目を開講すると思いますので、今井顧問が挙げられたような科目は当然ほとんどの法科大学院で開講されると思いますし、多分御心配されているようなことは生じないと思います。
 それから司法試験の合格者のことについては、差し当たりの目標は意見書に書かれておりますけれども、将来的にはそこに書かれているように、基本的に市場原理で決まっていくものだろうと大学側としては期待しています。

【佐藤座長】 意見書では7〜8割ということが書いてありましたけれども、何と言いますか、相当の合格率を出さないと、法科大学院としてはなかなかしんどいことになるのではないかと思いますね。

【大宅顧問】 ものすごく合格率が低かった場合に、せっかくつくった大学院が結果的にいい教育をしていないということになりますね。そのときにどうやってごまかすのですか、人数を増やさなければいけないというのがあるのに、今までより減ったと。しかも、資格試験だと言っているんだから、線を超えたならば全部入れると言っているのに、その線を超えられない人ばかりだったといったときはどうするのですか。

【事務局長】 これも試験委員会の判断かと思いますけれども、やはり法曹として最低限備わっていなければならない能力、そこのラインというのは、試験委員会で長年やっていると大体わかりますので、それをクリアーしなければ、幾ら増やせ増やせと言ってもそれは増やすことにはならないだろうと思います。

【大宅顧問】 かなりその可能性も大ということですね。

【事務局長】 ですから、そうならないように教育を徹底するために法科大学院をつくるということでございますけれども。

【佐藤座長】 従来の法学部におけるような教え方を変えるんです。発想を本当に変えて。

【大宅顧問】 今まで法学部でもみんな通っていないでしょう。

【佐藤座長】 いや、今の法学部というのは、法曹養成のためのものではありませんから。法曹に進むのは一部だけです。

【大宅顧問】 みんな予備校へ行っているわけですね。

【佐藤座長】 それを議論しますと。田中座長どうぞ。

【田中座長】 今おっしゃったことは、どちらが鶏か卵かみたいな話になってくるのですけれども、やはり質を伴う量の増大となると、試験だけではなくて、教育システムの転換そのものが大事だということでして、従来の法学部教育は、やはりマスプロ教育の典型でして。

【大宅顧問】 いや、そこまではわかったのです。でも、新しくつくった法科大学院もワークしませんでしたと言ったらどうするのですかということです。

【田中座長】 それは、今回は設置基準とか、第三者評価の基準からきちんとチェックしてそういうふうにならないような仕組みになっており、少人数教育とか、双方向教育を中心にすることになっておりますから。

【大宅顧問】 少人数でやったからと言ってできるようになるという保証はどこにもないでしょう。

【田中座長】 そういうことではないと思います。

【事務局長】 先ほど私は御説明をいたしましたし、また、文部科学省からも御説明があったかと思いますが、第三者評価で適格認定が行われまして、極端に長年の間合格率が悪いとか、ゼロだということになりますと、やはり何か教え方に問題があるのではないかということで、文部科学大臣から報告、資料の提出等の調査をお願いするということになります。
 その結果に基づきまして、やはり何か指導する必要がある、あるいは改善をする必要があるということになりますと、今度学校教育法で新しいルールができるようでございますけれども、改善勧告をしたり、それでも従わない場合には、変更命令を出してもらい、そういう形で法科大学院自体の質を是正していくという仕組みになっております。それでもどうしようもなかったら御退場を願うということ、すなわち、最後は閉鎖命令ということになるのかもしれませんけれども、そういう仕組みで担保をするというふうに考えているわけであります。

【佐々木顧問】 今の第三者評価ですが、これはどのぐらいの頻度で、いつから始めるというふうにとらえたらいいのか。つまり、あるいはしょっちゅうやらないとだめだというイメージなのか、その辺のことについて検討会ではどのような議論が行われたのかということが1つ目の質問であります。
 もう一つは、国の責務のところの○の2つ目に、政府において云々ということが書いてありまして、法制上・財政上の措置を講ずるべきということが書いてありますが、この財政上の措置ということについては、具体的にどのようなことが含意されているのかということについて御質問したいと思います。

(内閣総理大臣入室)

【佐藤座長】 ただいま総理がお見えになりました。ありがとうございます。法曹養成の問題につきまして、引き続き今の佐々木顧問の質問に関連して、審議を進めたいと思います。今の点は、田中座長いかがでしょうか。

【田中座長】 第三者評価の仕組みにつきましては、この法科大学院に関しては、少し特例的な扱いもしていただいているわけですけれども、これは事後チェックですので、修了者が出始めて、初めて評価するということになると思いますので、最初は設置認可のフォローという形でやっていって、ある段階から第三者評価になると思います。全般的な第三者評価の仕組みは、数年に1回というふうに考えられているようですけれども、それは訪問調査をやったり、かなり重いものでして、定量的にデータが出せるもの、例えば先ほど問題になりました入学者の多様性を確保しているかどうかとか、あるいは教員の基準を満たしているかどうかというようなことについては、毎年、設置した後は当分の間そのフォローとしてチェックし、ある段階から第三者評価に移っていくというふうに了解しております。
 財政上の措置については、いろいろお願いしたいと思っていますが、具体的には事務局から説明していただきます。

【事務局長】 財政上の措置として典型的に考えられるのは、法科大学院制度の整備に係るもの、それから奨学金等の学生支援のためのものと、大きく言ってこの2つが考えられるということでございます。

【佐々木顧問】 今の2つ目の点について、司法修習生の方の経済的なサポートというのは、この前も私は質問したような記憶があるのですが、何かその後議論の進展はありましたでしょうか。

【事務局長】 今回の法案では、司法修習生に対する給与を支給するかどうかという問題は、一応切り離しております。これはもう少し検討会で議論を経まして、別途またお諮りをするということでございまして、まだ給費制を存続させるか、給費制を廃止するか、その辺のところの最終的な方向が決まっていません。
 ただ、検討会では給費制を廃止する方向で意見が整理されているということですけれども、いずれにしましても今後の問題であるということでございます。

【佐藤座長】 なお、今の佐々木顧問の御質問の2番目に関連するのですけれども、今日は笹森顧問が最初に御紹介したように御欠席でございますけれども、意見メモが寄せられておりまして、こういうことです。
 法曹養成に関する法律における「法科大学院」の部分について、国の責務を規定する部分については、制度の確実かつ有効な実施のため、国が法科大学院に関する十分な財政措置を講じる責務について、その趣旨を明記すべきではないか、という指摘でございます。
 先ほど山崎局長の方からもお話がありましたように、明記するという方向で進んでいるということでございまして、私としても非常にうれしく思っている次第です。
 具体的な中身については、今後なお検討していくということになるのではないかと思います。

【法務大臣】 私から質問というか、意見を申し上げるのもどうかと思いますが、法曹養成のための法科大学院の教育と司法試験等との有機的連携の確保等に関する法律という名前が長過ぎると思います。
 中を拝見してみると、基本理念とか、国の責務とか、大学の責務とか、その他かなり基本的なことが書いてありますので、例えば法曹養成の基本理念等に関する法律とか、何が書いてあるか漠然とながら分かるように、もう一度よく読んでみようという気持ちになるような法律の名前がいいと思うんですが、この案ですと、非常にテクニカルな感じがいたしまして、基本理念とあまり関係ないような感じですので、そこら辺は少し工夫していただいたらよろしいんではないでしょう。
 あるいは、そうではないとおっしゃるなら、例えば法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律というふうにしてしまうとか、何かもう少し単純化した方が世間には分かりやすいと思います。
 私の感想です。

【佐藤座長】 大宅顧問どうぞ。

【大宅顧問】 全く同感で私もそう思っております。何だかわからないなと。
 基本理念なのですけれども、この資料では16行にわたって基本理念なのですね。これを一気に読めといったら息がとまってしまうと思うのですけれども、基本理念というのは、こういう長いものなのですか。基本理念というのは、2行とか3行であるものではないでしょうか。
 私が思うに、3行目からの多様かつ広範な豊かな人間性のある法曹が求められている。これが基本理念。それに合わせるために法科大学院をつくって、その大学院の入学の仕方とか、授業の在り方とか、全部込みで基本理念というのは、少しおかしいというふうに思います。本当に国民にとって身近でわかりやすいというのが、我々のあれで、その視点から見ても、この長さの基本理念というのは、ここで挫折すると思います。

【奥島顧問】 申し上げたいのは、先ほど今井先生がおっしゃったことに関連しており、それからずっと考えていることなのですけれども、法律というものをつくるときには、確かに単純化していけば分かりやすいような気もしますけれども、しかし逆に中身がないわけです。今後の長い間の蓄積の間にガイドラインみたいなものが次第にできていって、文部科学省の設置基準でも何でもそうですけれども、そういうものがたくさんできていって、やっと中身が分かってくるわけです。
 そういうふうなものを最初からつくるのは無理だということは、私もよく分かっておりますけれども、それにしても逆にここに書いてあるのは、読んだ人がイメージが湧きにくいのではないかと感じておりまして、もう少し中身の濃いイメージが湧くようなやり方はないかなということを先ほどから考えて、何か申し上げたいというふうに思っていたのですけれども、なかなか私も適切な例が思いつきません。
 ただ、先ほど問題になりましたように、例えば法学部出身者ではない人が少なくとも3割というのは、やはりどこかにないと、今のままでいくと1割かゼロの学校もあるのかもしれない、そのときには、適格認定でもって排除するのかということになるわけですけれども、私は本当だったら少なくとも5割ぐらいというふうに思っていたものですから、少なくとも3割みたいな歯止めはなければいけないでしょう。
 それから適格認定の際において、司法試験の合格者の数と、今度の法科大学院の入学者の数との相関関係をどういうふうに考えるかということはいまのうちにはっきりさせておかないと、3,000 人が差し当たりの目標であれば、7〜8割を入学させるためにはどれぐらいになるかということを先に考えなければいけないのか、あるいは最初は自由につくらせるが、しかし3,000 人しか通さないんだから、少なくとも3割しか通らないようなところは、御遠慮願いますということを最初から明らかにしておくのか、何かその辺りについてのガイドラインとまで言わなくても、少し全体のイメージが湧くようなことを考えておかないと、後々難しい問題が生ずるのではないかなということを私は非常に恐れております。とはいえ私も文章化をどうすればいいかという名案を持っておりませんので、ただそういう危惧を持っているということだけを申し上げておきます。
 ですから、私は逆に今、大宅顧問は短い方がいいと言われましたけれども、これは私は逆に基本理念というのはもっと詳細に、この倍ぐらいに書かれた方がいいのではないかと思います。

【大宅顧問】 詳細はいいのですよ。ワンセンテンスというのは、文章としては許しがたい長さだということです。

【奥島顧問】 そのことですか、わかりました。

【佐藤座長】 小島顧問、関連してでございますね。

【小島顧問】 法改正のことなんですが、司法制度が国民に支持されて、十分活用されて、有効に機能するためにも、1つの基本的な要素は公開性・透明性ということだと思うのですが、その点で、例えば適格認定、第三者評価をする。その評価のプロセスとか、そういうものの透明性とか公開性というのは、ちゃんと担保されるものですか。是非ともそれは期待したいのですが。

【佐藤座長】 今のお三人の御質問は併せて、田中座長と事務局の方でお願いします。

【事務局長】 法務大臣からのただ今の御指摘は、昨日も御指摘をいただきまして、私どもとしましても、その辺を踏まえまして、どういう法律名になるか、この辺のところをもう一度考えてみたいと思います。法制局ともよく相談をしまして、考えてみたいと思います。
 それから、文章が長いというのはそのとおりでして、大変恐縮でございます。検討の途中でも切ろうかという考えもあったのですが、切りますと、全体の理念がややつながりにくくなってしまいまして、かえって全体がつながらないおそれもあるということもございまして、一文としました。確かに主語から最後まで大変長いということではございますけれども、そういうおもんぱかりをした上で書いたということでございます。お許しをいただければと思います。

【高等教育局長】 小島顧問からのお話でございますけれども、法科大学院については、いろいろ準備中のところもありまして、別の観点が予定されていると承知してございますが、ほかの大学なども含めた全般的な評価の透明性、公平性というのは、評価機関独自の見識の問題でございまして、勿論、公開はしていただくわけでございますけれども、どういう公開の仕方がいいかというのは、その評価機関独自の評価基準、あるいはその取り扱いの仕組みなどについて、それぞれごとに若干のニュアンスの違いは出てこようかと思います。つまり、ランキングをするというところもあるかもしれませんけれども、いろんな評価項目の中で、これはいいけれども、ここはもう少し気を付けたらどうかというような評価をするとか、いろんな評価の仕組みが違いますし、しかも、やったところをあえてオープンにしないという評価機関もないでもないかもしれません。それを並べてみて、世の中で評価できるようにしようじゃないかということでございます。

【佐藤座長】 小島顧問の御質問の中身の問題ですが、田中座長はいかがでしょうか。

【田中座長】 基本理念のことに関しては、検討会でも何かいい工夫はないかと考えてみたのですけれども、やはりどういうふうに書いてもなかなか難しいというところです。

【大宅顧問】 せめて、「求められている」で切れませんか。その後、かんがみはいいのだけれども、やはり理念と言ったらここまでだと思うんです。

【事務局長】 法制上の問題もございますので、私どもで考えたいと思います。

【田中座長】 技術的に詰めてください。

【大宅顧問】 法律でそうなんだと言われたら。

【田中座長】 第三者評価につきましては、第三者評価の結果からいきなり何らかのサンクションに結び付くということだけではなくて、第三者評価をして、データを何からの仕方でオープンにしていくと、これは社会一般に対しても受験生に対しても、法曹関係者に対してもやっていくということの意味は大きいと思いますので、それに関しては、第三者評価の問題だけではなくて、法科大学院に関する運営、教育内容、全体の透明性の確保との関係でも検討していきたいと考えております。

【今井顧問】 第三者評価機関は、結局、複数ではなくて一つになったんですか。

【事務局長】 いえ、複数あり得るということです。

【佐々木顧問】 第三者評価につきましては、いろいろ御心配の向きもあろうかと思いますが、たまたま今、国立大学で評価をやっておりまして、これには異論・反論もいろいろ、評価された方からも出ている。それらも公にして、いろんな形で透明性をつくろうというプロセスが進みつつありますので、あとは複数の評価機関がしかるべき形で早く手を挙げてもらうということが恐らく私の感じでは一番問題を処理する大事なステップだと思います。それではどこから出てくるかと言われると、それをまただれかが指導するというものでもないだろうと思いますが、その辺が1つポイントで、そこが動き出すと仕組み自体に対するいろんな心配というものは、除去はされませんけれども、1つ乗り越えられるような社会的環境はできつつあるのではないかと、そんな感じを持っております。これは感想でございます。

【佐藤座長】 私も同感でありまして、アメリカの場合は自然に発達してきたわけですけれども、日本の場合は一気にやろうとしなきゃならないという状況でしんどいところがあるのですけれども、佐々木顧問がおっしゃったような感じを私も持っております。
 まだ議論は尽きないかと思いますけれども、大体こんな形で法案がつくられて、次の臨時国会に提出されて、御審議いただけるという形に進んでいくことについて、御了承いただけますでしょうか。法曹養成の基幹的な教育機関として法科大学院を設け、それとの密接な関連で司法試験の在り方を考え、更に司法修習制度もそれとの連関で考えるということは従来にない全く新しい発想だと思いますし、この問題は、今、文部科学省で検討が進んでおります教育改革、大学改革とも非常に深い関わりを持っていることであります。今日、文部科学大臣にも御出席いただきましたけれども、こういう形で教育の問題、それから法曹の在り方の問題が一体となって審議されて進んでいくということは、従来の日本から見て、画期的なことではないかと私自身は思っておりまして、是非次の臨時国会でこれが成立することを切望している次第であります。
 では、この問題は御了承いただいたこととして、事務局の方も、これからはいろいろ大変でございましょうけれども、引き続き精力的に取り組んでいただきたいと思います。
 それでは、第3の議題の方に移らせていただきたいと思います。先ほど総理にもおいでいただきましたけれども、前回、7月5日の顧問会議において、会議としてのアピールをお決めいただき、総理にお渡ししたわけでございます。
 アピールの中では、2年以内の判決ということをうたいまして、総理からも裁判の結果が必ず2年以内に出るように改革したいという強い御意向、お言葉をちょうだいしました。これについて、その後、事務局でどういう取り組みになっているか、御報告いただけますか。

【事務局長】 前回の顧問会議におきまして、顧問の皆様方のアピールと、これを受けました総理大臣のごあいさつの中で、迅速な判決、迅速な権利の実現を図る、司法を国民にとって頼りがいがあるものにしていくため、裁判の結果が必ず2年以内に出るように改革することが必要であると明確な御指摘をいただいたわけであります。
 これを受けまして、現在、事務局におきましては、鋭意検討を進めているところでございますが、第一審の判決の結果が2年以内に出るようにするとの内容を実現するための方策といたしまして、その出発点となる法的措置について具体的な検討をしてまいりたいと考えているところでございます。
 この点につきましては、平成15年の通常国会に所要の法案を提出することを目指しまして、早急に検討を進めてまいりたいと考えております。
 また、その過程で顧問会議の皆様方の御意見も伺ってまいりたいと考えておりますので、よろしくお願い申し上げます。
 以上でございます。

【佐藤座長】 ありがとうございました。ということでありますが、この点に関しまして、御意見をちょうだいしたいと思います。

【小島顧問】 非常に一般の人も関心を持っているところで、単なるスローガンに終わらないように、数字を明記するとか、それを実現するために条件を整えないといけないわけです。物理的にだめなものはだめだということになっては困りますから、どういう状況が必要なのかということもちゃんと検討する必要があると思います。
 エピソードですが、最近、テレビのあるドキュメンタリーを見ていましたら、アメリカのデラウェア、小さな州ですが、企業の関係の訴訟だけを扱う特別法廷というのが建国以来ずっとある。そこは24時間、365 日営業しているのです。企業だけ。優秀な判事が弁護士出身で選任されて、極めて短期間で結論を出すのです。白か黒かちゃんと出すのです。そのために、そこのデラウェア州に本社を移そうという企業がどんどん増えて、アメリカの上場企業の半分以上が今デラウェア州に法的な本部を設けていると。外国の企業も、そのデラウェア州の裁判に依存するというような傾向が増えているらしいのです。

【大宅委員】 それは形の上で、本体が行っているわけではないですね。

【小島顧問】 ペーパー・カンパニーですけれども、税金もそこで納めるという話になるでしょう。それは世界でも特異な例ですが、しかし、今や経済、社会は、非常に動きが早く、企業にとっては本当にスピードが勝負なのです。特に知的財産の問題とか、そういうものは本当に早く決めてもらわないと動きが取れないわけです。会社の寿命は平均して15年くらいしかないと最近言われています。それが5年もかかったら、企業は初めから死ねという話です。
 たまたま今日は中国の非常に注目されている若い経営者に会ったわけです。中国はどうかと聞いたら、日本の人は中国の人件費が安いことだけが中国が強いと思っているが、違う。人件費が高くなっても日本に唯一勝てることはある。それはスピードだというのです。恐らくスピードというのは、世界の経営者とか政策においても、一番重要な要素です。スピードというのは、法律の信頼を勝ち得るためにも絶対に必要であって、総理が前から紹介されている川柳というのは非常に重たい川柳だと痛感しています。

【大宅顧問】 この間の中国の判決はやたら早くて、半日もやらなかったらしい。

【小島顧問】 それは拙速です。

【佐藤座長】 笹森顧問が、この点についても御意見を寄せておられます。御紹介させていただきます。  2年以内に判決を出すための人的・制度的基盤の整備については、顧問会議が果たした主導性を再確認し、今後、その具体的な進捗状況を確認しつつ、促進させていくことが必要ではないか、という御意見でございます。関連して、ほかの顧問の方どうぞ。

【今井顧問】 私は2年以内に結果を出すということは大変歓迎なのですけれども、民事訴訟法部会で、提訴前の証拠収集の手続を議論されているそうですが、提訴前というので、訴える気もないのにいやがらせでどんどん証拠を出させるなど、濫用される恐れがあり得ると思うのです。そういった濫用に対しては、やはり裁判所の適正な関与が必要だと思うのですけれども、その辺りを御考慮していただければ内容的には大賛成だということです。

【事務局長】 法制審議会の方で、今その検討をしているところでございます。この問題に関しましては、濫用防止のための措置はどうあるべきかということもテーマになっておりますので、今、御指摘がありましたことを、法制審議会の方にもお伝えして、その点を具体的に検討していただくということを考えております。

【今井顧問】 是非お願いいたします。

【奥島顧問】 先ほど私か言ったことに関連するんですが、「国の責務」の財政上の措置を講ずべきことについては、機関補助と奨学金のことについて、事務局長が先ほど触れられましたけれども、是非ともそのことを立法の趣旨説明の中で明確にしていただけるとありがたいということを特に申し上げたいと思います。

【志村顧問】 2年以内にという目標は私も大賛成でございますけれども、どんな予測しない事情が起こって、2年以内を無理にやろうとすると正しい結論が出せないという、先ほど拙速というのがございましたが、そういうこともあり得ると思うわけでございます。ですから、どういう場合には例外が可能であるかということも多少決めておかないと、それこそ真の目標が達成されないということもあり得るのでないかと思います。

【佐藤座長】 そういう問題も勿論、あろうかと思いますけれども、大事なのは、発想の転換ではないかという気がするんです。長くかかるものだと考えてしまうか、充実すれば、当然それは迅速な裁判につながっていくのだと考えるか。本当に言葉どおり迅速な裁判というのは充実した裁判のことである、と。迅速と充実とは同じことを言っているのじゃないかと思うのですけれども、そういう前提でこれから検討していただく。物事には必ず例外というのはあり得るかもしれません。その辺のこともこれからの検討の中で詰めていかれることだろうと思いますけれども、まず発想を転換しようじゃないかということではないかという気がするのです。その点はどうでしょうか。先ほどの小島顧問のお話も聞きながら、つくづくその辺のことを思ったんですけれども。

【小島顧問】 まさに社会全体がそういう発想になっているという価値観の転換、発想の転換、それは極めて重要ですね。そういう中で、何も2年以内が目一杯2年かけるのじゃなくて、何か月でもいいわけですし、どんどん早く、質もともかく、同時に迅速であるということはあり得ると思います。トリカブトの話も、比較的早く出た話であって、早く出たために社会的な関心も高かったと思います。

【奥島顧問】 もともとデラウェアは州の人口より会社の人口の方が多いというところで、会社法が非常にアバウトにできているが、判例の巨大な集積があるから、どんなケースでも具体的な問いを裁判所の窓口にぽっと入れればぽっと回答が出てくる州なのです。しかし、そこまで行き着くまでにはものすごい時間がかかるわけです。その辺りをどうするかということが1つ問題だろうと思います。

【小島顧問】 見ていると、200 年間の判例が全部公開されているのです。だれでもが使えるのです。文章は非常に短い判例です。

【佐藤座長】 この2年以内というのは、何も数字だけがあるのではなくて、2年を実現するために、人的な基盤の整備も必要なことですし、また制度的、手続的にどうするかということも総合的に詰めていかなければならない課題であるかと思います。
 先ほど事務局長の方から御紹介された通常国会に法律を考えたいということですが、具体的にどういう中身にするかはまさにこれから考えるということですね。その前提として人的、制度的な基盤の総合的な整備、推進を図るという趣旨の法律じゃないかと私は理解しております。

【小島顧問】 審議に長くかかり過ぎるというのは、法律がその間仮死状態なわけですね。限度以上に長く結論が出ないということは、基本的に司法制度の自殺行為だと思うのです。

【佐藤座長】 ありがとうございます。何か事務局の方からコメントありますか。

【事務局長】 ありません。

【佐藤座長】 よろしいですか。大体御趣旨は今までの顧問の皆様の御意見に尽きているかと思います。時間の関係で議論の方はこの程度にしたいと思いますが、本部長であられます小泉総理から、一言ちょうだいできればと思いますけれども、その前に報道関係者の入室がございます。

【内閣総理大臣】 国民に頼りがいのある司法を実現することは、現在、内閣が総力をあげて取り組んでいる構造改革の基盤をなすものであります。
 迅速な判決、迅速な権利の実現を期待できる裁判にしなければならない。先般、裁判の結果が出るまでの期間を2年以内に、という具体的な目標をお示ししましたが、これを実現するために、新たな枠組みを法律で定めることが必要であります。
 一方、制度を動かすのは人でありますから、裁判の迅速化のためにも、法曹の質と量の拡充が必要であります。本日御議論いただいた法曹養成制度改革に関する一連の法案を秋の臨時国会に速やかに提出し、その成立を期したいと思います。
 司法を国民の手の届くところに置かなければなりません。そのために、人材を育成し、法曹人口を増やすとともに、全国どの町に住む人にも法律サービスを活用できる制度を構築する必要があります。
 こうした改革自体にも延々と時間がかかるようでは、司法改革に対する国民の期待を裏切ることになります。司法改革を確実に、かつ、速やかに進めていくため、引き続き皆様方のお力添えをお願いしたいと思います。

【佐藤座長】 ありがとうございます。森山法務大臣、それから遠山文部科学大臣からもお言葉をちょうだいできればと思います。

【法務大臣】 いろいろお忙しいところありがとうございました。今の2年以内の結果という、この前のアピールでございますけれども、それを少しでもやってみようという気持で、昨日さいたま地方裁判所で判決言渡しのあったトリカブトの事件は、今までにないような体制で取りかかったそうでして、普通は月に一遍くらいしか審議しないのが、毎日やったようでございます。それで今まででは考えられなかったようなスピードで一応第一審は終わったんでございますが、やはりやり方の体制と考え方、気持ちを切り替えるということが非常に重要だと思いました。
 総理、あるいは顧問会議の先生方の御意向を体しまして、今後もできるだけやっていきたいと思いますし、また、身近な司法という意味では、各市町村に住んでいる一般の住民が少しでも気軽に相談できるようなところがもう少しあるといいなと思っておりますので、そういう努力もこれからしてみたいと思っております。
 御議論いただいた法曹養成制度の関連の法律につきましては、推進本部といたしまして、最初にこの司法制度改革に関して提出する法案でございますので、今日の御議論を十分踏まえまして、臨時国会に速やかに提出して成立を期したいというふうに思っております。 どうもありがとうございました。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。

【文部科学大臣】 私も今日の御議論を聞いておりまして、今や大きな司法制度の改革、大変なターニング・ポイントだなと。その中に我が省も大変重要な部分を分担しているということをしっかり認識いたしました。
 座長からもお話ございましたように、今、大きな大学改革が進んでおりますが、その中でも専門職大学院、これは国際的にも通用するプロフェッショナルを大学でしっかり育てていただくということは、改革の中でも大きな柱の1つでございます。その中で法科大学院は、突破口ともなるわけでございまして、司法制度改革という観点のみならず、今後の大学改革の先行的な指標ともなると考えておりまして、今その成功に向けて、私どもも全力を挙げてやってまいりたいと思います。
 もとより法科大学院の構築の仕方は、それぞれの大学が工夫されることでございますけれども、我々といたしましても、いろんな基準を考えたり、いろんなサポートをしたりするときに、できるだけ迅速に、かつ透明性を高めながらこの問題について対処してまいりたいと思いますので、今後とも是非御指導及び御協力をよろしくお願いいたします。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。
 それでは、最後に事務局の方から何か連絡事項がございますか。

【事務局長】 先ほど申し上げましたけれども、次回については別途日程を調整させていただきます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。
 予定しておりましたのは以上でございます。何か御注意いただくべきこと、よろしゅうございますか。
 それでは、本日は以上にて終了させていただきたいと思います。御多忙の中、本当にありがとうございました。

(以上)