ア 山崎事務局長から,裁判の迅速化に関する法的措置として,平成15年の通常国会に所要の法案を提出することをめざして検討している旨の報告がされ,資料1に基づいて,裁判所における手続の迅速化促進方策のイメージについて説明がされた。
イ 上記説明に関し,概要,以下のような質問・意見があった。
○ 裁判の迅速化は,極めて重要な問題である。大競争の時代にある今日,特許等の知的財産に関する問題もそうであるように,スピードを欠けば,閉塞状況にある日本の活力回復の機会が失われる。裁判の迅速と質の確保は,二律背反するものではない。法曹等の当事者が使命感や情熱をもって改革に当たって欲しい。
○ 裁判の迅速化については,質の充実が重要であり,裁判官,検事及び弁護士のほか,関係職員の配置等を含めてインフラ整備を考える必要がある。また,責務を負う者について,資料1には「当事者等」とあるが,その人的範囲及び具体的な責務の内容を明確にする必要がある。
裁判の長期化についても,実態を数量的に示すべきである。検証については,評価の担い手に法曹関係者からの独立性を持たせ,検証の頻度や国民への開示の方法についても明らかにする必要がある。
ヒアリングも,法曹三者以外の者やユーザーからも行うべきである。
(佐藤座長から,実態関係の資料については,別途検討し,今後整理したものを諮りたい旨の発言があった。)
(事務局から,迅速化の責務を負う「当事者等」とは,代理人,弁護人等を含むものと認識しているとの説明がされた。また,実態把握については早急に作業し,顧問会議に諮りたい旨,第三者による評価については,裁判の独立との関係で微妙な問題もある旨,検証結果の公表については検討中である旨及び法曹三者以外の意見を聞くことは重要であり,考えてまいりたい旨がそれぞれ述べられた。)
○ 裁判の迅速化を実現するスケジュール又は実現の目途はどうか。
(事務局から,迅速化には事件の検証・分析が必要であり,これを2年に一度程度行い,10年を目途に施策を講じるようなことも考えているとの説明がされた。)
○ 目に見える形で着実にステップを踏むことが必要であり,資料1記載の施策を具体化する案を示していただきたい。
○ 懸念される拙速を避けるためにも,手続の迅速化を図る具体的内容を盛り込むべきではないか。
(事務局から,裁判の個々の手続,体制面や運用面については,例えば,刑事手続については検討会で検討し,民事手続は法制審議会で検討がされているように,別途検討される旨及び検証を経て必要な事項を具体的に実現していくという構図である旨の説明がされた。)
(佐藤座長から,裁判の迅速化の方策のイメージは,今後司法改革を経て,司法が主役の一人になるという時代の要請を踏まえて,発想の転換を図ろうとするものと考えられ,その場合の充実・迅速化とはどのようなものか,どの点を具体的に詰めていくかを考えていくというものではないかとの発言があった。また,裁判の迅速化については,裁判の長期化の有無,長期化している事件の類型等検討のための材料を次回までに準備してもらいたい旨,今後も,顧問会議として引き続きこの問題に関わり,議論いただきたい旨の発言があった。)
ア まず,房村法務省民事局長から,法制審議会で検討されている民事訴訟法,人事訴訟手続法及び民事執行法の見直しについて,資料3及び4に基づいて説明がされた。
イ また,仲裁検討会で検討されている仲裁法制の整備について,青山座長から,資料5から資料7までに基づいて説明がされ,立案の基本的方針として,国際連合国際商取引法委員会(UNCITRAL)が策定した仲裁法制のモデルとなる法律案(以下「モデル法」と呼称する。)にできるだけ準拠したものとすることが検討されていることなどが報告された。
ウ その後,概要,以下のような質問・意見があった。
(仲裁法制関係)
○ 「古色蒼然」たる現行仲裁法が現在まで残っているのはなぜか。
(青山座長から,解釈で補い,仲裁機関等が実務上の工夫をし,時代の潮流に合わせてきたことによるものである旨,ただし,それも限界に達したと認識している旨の発言があった。)
○ 国内の仲裁の件数はどの程度か。
(青山座長から,国際商事仲裁は年間10件から20件程度ではないかと認識している旨,他国で仲裁が行われてしまうことが多い旨の発言があった。)
○ 法的整備によって仲裁の利用が増えるか。仲裁のプレゼンスを高める手段は何か。
(青山座長から,制度整備は最初の一歩にすぎず,仲裁機関の充実や熟練した仲裁人の増加等人的強化が必要である旨の発言があった。)
○ 消費者や労働者が関与する仲裁について,いわゆる弱者への配慮が必要である。事業者や企業側に情報が偏在しており,その開示の問題がある。また,労働債権の取扱いの問題もある。
(青山座長から,消費者と事業者又は労働者と使用者との間には情報や交渉力の格差があり,配慮が必要であることは認識しており,更に検討してまいりたいとの発言があった。)
(房村法務省民事局長から,労働債権については,使用者の倒産時点における優先度が問題であり,現在,全面的見直しを行っている破産法改正作業において,労働債権についても検討しているとの報告があった。)
○ 国際間の仲裁について,ITを利用したものがあるか。そのようなITを活用できる途を開いておく必要があるのではないか。
(青山座長から,モデル法においても,仲裁契約は,当事者の意思を確認し,証拠を残すため書面によることが必要であるが,書面性の要件が緩和され,電子メールによる場合も含まれるとされている旨,新仲裁法でも,同様の規律とし,世界的な潮流に則ったものとすることが検討されている旨の発言があった。)
(事務局から,手続を電子メール等を利用して行う仲裁機関も現れており,新仲裁法でも,そのような形態を阻害することがないようなものにしたいとの報告がされた。)
○ モデル法の採用国はどこか。
(事務局から,青山座長の説明にあったモデル法の採用国とは,UNCITRALで認定している国であり,その中には,ドイツ,韓国,シンガポール等があるほか,カナダなどでは,モデル法の条文を別紙として引用する立法としている旨,イギリス,フランス等でもモデル法の影響を受けている旨の説明がされた。)。
○ これまで仲裁が利用されてこなかったのは,仲裁によると裁判は提起できなくなることと関係があるのではないか,あるいは,仲裁の公正さに対する不安感があるのではないか。
(青山座長から,日本では裁判で争い,一審で負けても上訴で争える方が安全であるという意識が強いが,欧米では,例えば,商事取引であれば専門家に委ねた方が迅速であり,実情にかなった判断が得られるとされており,英国,フランス,米国などには専門の仲裁機関があり,利用率が高い旨,ただし,これらは歴史と実績とが積み重なったことによるものである旨の説明がされた。さらに,仲裁法の整備面では,裁判所においては判決手続よりも簡易な決定手続によって仲裁判断の迅速な執行を可能にすることなどが挙げられるが,仲裁の利用を増やすためには,法律の整備だけではなく,仲裁のよさをピー・アールすること,仲裁機関を国としてサポートし,仲裁人を育てること,及び企業や労働の専門家が積極的に仲裁人として参加することが必要であるとの発言があった。)
○ 仲裁の特徴が分かる具体的イメージを教えて欲しい。
(青山座長から,専門性の高い建設紛争,商慣習が重視される国際的な貿易取引や船舶取引に関する紛争等については,裁判によるとすると,裁判官には専門性は備わっていないために専門家を鑑定人として鑑定を行う必要があるのに対し,専門家や長年実務に携わっていた企業人等であれば問題の所在等が容易に理解することができる例もある旨,したがって,専門性が必要な分野では,専門家が仲裁人となることにより,第三者を介することなく判断ができるというメリットがある旨の説明があった。)
○ 仲裁法制の整備は,裁判の迅速化に寄与するものとして理解してよいか。
(青山座長から,仲裁は,紛争を効率的かつ迅速に解決するという点では,裁判と軌を一にするが,仲裁自体が裁判の迅速化に直接寄与するという関係にはないものと考えられるとの発言があった。)
○ ADRとの関係は,どうか。
(青山座長から,ADRとは,裁判外の紛争処理手続をいい,仲裁もその一種であるが,仲裁判断には法的拘束力があるのに対し,調停,あっせん等では,その案・内容について当事者間に合意が成立しなければ裁判の途が残る点で違いがある旨,ADRは諸外国でも活発に利用されており,21世紀には紛争件数が増え,裁判以外にADRによる紛争解決が必要となると認識している旨の発言があった。)
(民事訴訟法改正関係)
○ 計画審理を確実に行う担保の仕組みとして,どのようなものが考えられるか。
(房村法務省民事局長から,計画審理は,当事者と裁判所が協議をして審理の計画を定めるものであるが,例えば,主張の提出期限を定めたが,これが遵守されない場合に一定の要件のもとにサンクションを課するかどうかも含め検討しているところであるとの説明があった。)。