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司法制度改革推進本部顧問会議(第7回)議事録



日 時 : 平成14年11月11日(月)16時30分〜18時

場 所 : 総理大臣官邸2階小ホール

出席者 :
(顧 問)
佐藤幸治座長、今井敬顧問、大宅映子顧問、小島明顧問、佐々木毅顧問、
笹森清顧問、志村尚子顧問

(推進本部)
小泉純一郎本部長(内閣総理大臣)、森山眞弓副本部長(法務大臣)、
上野公成本部長補佐(内閣官房副長官)、古川貞二郎本部長補佐(内閣官房副長官)

(事務局)
山崎潮事務局長、青山善充仲裁検討会座長 他

議事次第 :
1 開 会
2 裁判の迅速化について
3 検討会の検討状況等について
4 民事司法制度の改革について
5 閉 会

【事務局長】 それでは、佐藤座長お願いいたします。

【佐藤座長】 それでは、ただいまから司法制度改革推進本部顧問会議第7回会合を開会いたします。顧問の皆様には、何かと御多用のところ御出席賜りまして、ありがとうございます。
 奥島顧問は、本日は所用のための御欠席でございます。
 また、本日は仲裁検討会の青山座長にも御出席いただいております。ありがとうございます。
 それから、今日は総理にもお忙しいところ御出席いただいておりますが、総理は公務のために4時55分ごろ途中で御退席になるというように承っております。
 まず、裁判の迅速化の問題について御協議いただきたいと思います。始めに事務局から法曹養成制度改革関連法案について報告していただき、その後にこの迅速化の問題についての資料の御説明をしていただきたいと思います。
 では、よろしくお願いします。

【事務局長】 まず、法曹養成制度改革関連法案についてでございます。前回の顧問会議で御議論をいただいたところでございますが、事務局におきましては、その際の御意見を踏まえまして、最終的な案を作成し、本部会合を経まして、10月18日に閣議決定をし、国会に提出するに至りました。その後、10月29日に衆議院本会議において趣旨説明が行われ、現在は衆議院法務委員会において慎重に御審議をいただいているところでございます。顧問の皆様のこれまでの御尽力に感謝申し上げます。
 続きまして、裁判の迅速化について御説明申し上げます。前回の顧問会議でも御報告申し上げましたとおり、第一審の裁判の結果が2年以内に出るようにするための法的措置につきまして、平成15年通常国会に所要の法案を提出することを目指して、鋭意検討を進めているところでございます。
 本日は、この法案の前提として検討しております、裁判の迅速化を促進するための方策の全体構造につきまして御説明をさせていただきます。
 お手元の資料1をご覧いただきたいと思います。迅速化促進方策のイメージでございます。まず、迅速化推進方策におきましては、審理期間の目標を掲げることとしております。この目標といたしましては、顧問の皆様方のアピールや総理のごあいさつにもありましたように、民事・刑事の訴訟手続について、2年以内に第一審における訴訟手続を終局させることを第一に掲げさせていただいております。また、これ以外の手続も含めまして、裁判所における手続全体について期間の短縮を図ることも併せて目標として掲げております。
 次に、この目標を達成するために、その迅速化の担い手となるべき関係機関等に一定の責務を課し、それに基づいて迅速化実現のための総合的方策を実施していただくことを考えております。
 司法制度改革推進法におきましては、司法制度改革全般についての国の責務等を規定しておりますが、裁判の迅速化につきましても、このような責務に基づいて、訴訟手続の整備などの制度面の方策や、人的体制の充実などの体制面の方策を総合的に実施していくことが必要とされるところでございます。
 顧問アピールにも触れられておりますように、このような制度面、体制面の整備、充実が迅速化実現の基盤として極めて重要であることは言うまでもないところでございます。これらの方策につきましては、現在既に司法制度改革推進計画に基づいて、検討会等により検討されているところでございますが、今後迅速化の目標等を踏まえまして、更に具体的な検討が進められていくことになると考えております。
 他方、裁判の迅速化を実現するためには、個別の事件における裁判所や当事者、代理人、弁護人等の努力も不可欠でございます。このような観点から、裁判所、当事者等にも民事・刑事の訴訟事件の第一審手続をできる限り2年以内に終局させることに向けて努力する旨の責務を負っていただき、運用面についての取組みを行っていただきたいと考えているところでございます。
 なお、この裁判の迅速化を進めるに当たりましては、手続を公正・適正で充実したものとするとともに、当事者の権利利益が不当に侵害されないようにすること、これが極めて重要でございます。
 そこで、この点につきましても、常に留意しなければならない旨を明記させていただいております。
 このように、関係者の協力により、制度面、体制面、運用面の方策を総合的に講じていくことにより、第一審の裁判の結果が2年以内に出るようにすることなどの目標を実現させていただきたいと考えております。
 以上に加えまして、迅速化促進方策におきましては、目標の達成をより確実に担保するため、一定期間ごとに手続の迅速化に関する状況を検証し、その結果を更に具体的方策に反映させる仕組みを設けることとしております。
 この検証の内容といたしましては、審理期間が2年を超える事件の状況を調査いたしまして、その原因の分析を行うことなどを想定しておりますが、その対象は個別の裁判における審理の運営そのものに深く関わるものでございますので、裁判官の独立との関係等を考慮いたしまして、最高裁判所が主体となって行うものとしております。
 その一方で、このような最高裁が行う検証につきましては、国民に対する透明性を確保することが不可欠でございます。このような見地から、検証の結果につきましては、これを国民に明らかにしていく必要があると考えているところでございます。
 その上で、この検証結果を適切に活用して、更に総合的方策を推進していくというのが、この検証のスキームでございます。このような過程を繰り返すことによりまして、迅速化方策がより実効性のあるものとして機能することになると考えているところでございます。
 以上のようなトータルな迅速化促進方策の枠組みを前提といたしまして、所要の法案の提出に向けて、更に検討を進めてまいりたいと考えておりますので、よろしくお願いを申し上げます。以上でございます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。前回の会議を踏まえまして、検討していただいて、今、御説明いただいたようなことになったということでございます。
 総理に一言ちょうだいしたいと思っており、時間は非常に限られておりますが、この場で是非ただしておきたい、意見を述べておきたいという点をおっしゃっていただければと思います。どうぞ。

【小島顧問】 座長と目が合ってしまったものですから。迅速化というのは、極めて重要な問題だと前から思っていまして、迅速化というと最高裁自身も前から自らの課題として強調していたことですが、なぜ今日迅速化かということなんですが、ひとつは時代認識だと思うんです。いわゆる大競争という時代で、世界が改革のレースをしていると、スピードこそが重要であるという状況です。今、北京で共産党大会をやっています。共産党大会で、要するに資本主義経営者を共産党のメンバーにするということですね。これはもう時代の大変化ですね。それは昔のシステム、観念にとらわれていたら、自分たちの正当性は維持できないと、時代の要請に応じた正当性というのは、国民を豊かにしていかなければいけない。競争力を持たなければいけない。したがって、その手段として資本家も入れるというんで、基本的なところを触って対応しようとしている。非常に必死の努力だと思うんです。そういう時代にあって、ともかくスピードが必要だと、とりわけ日本の経済は閉塞状況にありますが、民事関係で特許とか知的財産問題、これはともかくスピードがないと日本の新しい活性化とか活力回復、そういう機会を失うんではないかということで、そういう問題意識で法曹に携わる担い手の方々がやっていただきたいと。
 よく速さと質は二律背反、矛盾するというんですが、そうではないと思います。時間をかければいい結果が出るという話ではなくて、日本に今必要なのはそれぞれの当事者が時代感を持って、使命感、ミッション、それを現実する情熱、パッションというものを是非とも持っていただきたいと。まして一番制度の中の基本である司法制度ですから、当事者は誇りを持って更にやっていただきたいという感じがします。

【佐藤座長】 ありがとうございました。私も全く同感です。笹森顧問、どうぞ。

【笹森顧問】 総理がお座りになっているんで、最初に評価しておきますが、前々回でしたか、川柳を引用しながら迅速化の問題について触れられまして、あれが大きなリードになったと思うし、その後この顧問会議がかなりメッセージを発信して、果たした役割は大きかったと思います。
 そういう意味では、これからもこの内容、あるいは法制全般に係る問題について、この顧問会議の役割とリード役は非常に大きいんではないかと。我々も一生懸命やりたいし、そういう役割を回していただきたいと思います。
 その上で、裁判の質を落とさない迅速性とインフラ整備の問題について特に申し上げたいんですが、2年でやること自体は必要だし、今小島顧問の方からもおっしゃられたように、中身の問題、迅速化と質の問題は非常に相矛盾するところもあるんですが、その質をどういうふうに充実させるかということを言ったときに、時間軸だけにとらわれてはならないから、その質の部分どう補強するかということを、かなり入れていただきたい。そのことがインフラ整備につながると思います。
 今の段階でいくと、裁判官、弁護士、検事、それぞれの中に、そのほかに関係職員の対応の配置の問題ですとか、それが全部含めてどういうインフラ整備をするかということをやっていかなければいけない。これが伴わないと、裁判官だけ増やせばいいと、あるいは弁護士だけが増えてしまったとか、こういう形の中で迅速性というのは求められませんので、インフラ整備については是非きちっと対応していただきたいと思います。
 その上で、この文章の中で入っております、今説明があった迅速化の担い手の責務の問題について「裁判所・当事者等は」と書いてあるんだけれども、この「当事者等は」というのは言葉ではあったんだけれども、具体的にその責務はどうなっているのか、どの範囲の人たちがやるのか、これも明確にしないと責任の明確性が出ないんではないかと思います。
 中身の問題としては、確かに今2年以上かかっている、非常に長期化だというふうなイメージ、確かにオウムなんかもそうですし、ところが審理の内容によっては極めて短時間で終わっているものも中にはあって、これも数多いわけです。そういうのが全部あって、一般的イメージで長いんだけれども、現実に今の状況の中で裁判実態と最後の結審に至るまでが、どういう状況になっているのか、これは数値的にもはっきり示していただいて、その中で長期化している部分についてはこういう手立てをしなければいけない。このことをもう少しはっきりさせていく必要があるんではないかと。
 それから、最高裁による検証の問題なんですけれども、どうも最終的に当事者が評価するというのはどうなのかと。第三者評価を全部置けばいいということではないんだけれども、法曹関係者から若干独立性の性格を持たせておいて、その上でそういう評価についてどうするのかというのを少しミックスしないと、内々だけの評価の内容になり過ぎないかと。
 それから、検証結果のチェックの頻度とか、結果をどういうふうに国民に知らせるのかということについても、明らかにしておく必要があるんではないか。
 最後に、法曹三者からのヒアリングということを触れられておりますが、法曹三者以外からのヒアリングも必要ではないかと、今日はこの顧問席に座っている方は全部司法制度の国民会議の顧問も兼ねておりまして、これは民間の中でいろんな論議をしながら提言も出していく、多分今日こちらの方に寄せられているんではないかと思いますが、そういうユーザー側を代表するような方々の意見もこの中に入れていただければと思います。

【佐藤座長】 ありがとうございます。数値的な面の資料などにつきましては、また検討させていただいて、整理したものをお諮りしたいと思っておりますが、ただ今のお二人の発言に関連して、何か事務局の方からございますか。

【事務局長】 ただいま御指摘の範囲の問題ですが、「当事者等」と書かれておりますけれども、当事者以外に先ほどの私の説明の中で、代理人、弁護人も入ると申し上げましたし、それから鑑定人とか、手続に関係する者全部を対象とし、みんなに協力してもらうということも検討しております。
 現状の実態につきましては、なるべく早急に調査をいたしまして、顧問会議にもその点はまた御説明を申し上げたいと思っております。
 評価制度の関係でございますけれども、第三者の意見を取り入れるという側面は重要かと思いますけれども、ただ主体をどうするかということは裁判の独立との関係もございますので、そこのところはかなり微妙な問題があるということでございまして、もう少しその点は検討させていただきたいと思います。
 公表の点等につきましても、現在詰めている段階ですので、この次までにはもう少し内容的なものも御報告できると思います。
 法曹三者以外の声を聞くという点、大変重要でございますので、私どもとしても考えたいと思っております。

【佐藤座長】 ほかにも是非発言したいということがおありかもしれませんけれども、最初に申しましたように、総理の時間の関係もあり、またこの問題は引き続き12月上旬に会議を開いて御審議いただきたいと思っておりますので、今日のところはこの辺でお許しいただきたく存じます。お二人の御意見の中にも非常に貴重な御示唆がございましたので、それも踏まえて次回に更にお諮りしたいと存じます。
 それでは、総理から一言お言葉をちょうだいしたいと思いますが、その前に報道関係者の方々に入っていただきます。

(報道陣カメラ入室)

【佐藤座長】 それでは、総理お願いいたします。

【内閣総理大臣】 どうもお忙しいところありがとうございます。前と同じことなんですが、裁判が遅過ぎるということで、迅速化というのが国民が一番求めている制度改革ではないかと思っています。本日その方向が具体的に示されましたけれども、皆様方が精力的に取り組んでいることに心から敬意を表したいと思います。
 また、司法制度も独立ということをよく言われますけれども、司法権もやはり国民の支持と理解に立脚しなければならないと思っております。今回、そういう意味におきましても、司法部門におきまして、法制化と並行して訴訟の進め方について具体的な改善を図るよう是非ともお願いしたいと思います。
 また、迅速化に対して法曹界にはやはり慎重意見と言いますか、抵抗している方々もあると承っております。どこにも抵抗勢力はあるんでして、そういう意見には耳を傾けながらも、迅速化と審理の充実の両立は可能だと思っています。これについても、是非とも皆様方の一層の御協力・御指導をお願いしたいと思います。
 具体的な運用の仕組みについては、法曹の各分野において今後もまた徹底的に議論をしていただきたいと思います。国民の視点に立った改革が実現するように顧問の皆様には、更に一層の御意見を賜りまして、よりいい改革ができるような御指導を賜りたいと思います。ありがとうございました。

【佐藤座長】 総理、どうもありがとうございました。ただいま、非常に心強いお言葉をちょうだいしましたけれども、次回また引き続き私どもで審議してまいりたいと思います。
 では、報道関係者の方々御退室願います。

(報道陣カメラ退室)

【佐藤座長】 総理、今日はどうもありがとうございました。それでは、ここで御退室されます。

【内閣総理大臣】 どうも済みません。よろしくお願いいたします。

(内閣総理大臣退室)

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。まだお話になりたいことがいろいろあったんではないかと思いますけれども、さきほどから申し上げておりますように、次回引き続き御議論いただきますので、御容赦賜りたいと存じます。
 それでは、議事次第に従いまして、まず検討会の検討状況について事務局から御説明をお願いします。

【事務局長】 それでは、資料2をご覧いただきたいと思います。簡単に御説明を申し上げます。
 まず、前回御紹介いたしましたけれども、知的財産訴訟検討会が10月23日に第1回会議を開催いたしました。座長には、東京大学の伊藤眞教授が選任されまして、もう実際に検討が開始されたところでございます。
 その他の検討会の検討状況でございますけれども、資料2に記載したとおりですが、後ほど御議論いただく仲裁法制の整備や、法務省の法制審議会において検討されております民事訴訟法、人事訴訟手続法、民事執行法の改正のほか、平成15年通常国会への法案提出を予定している事項についての検討が大詰めに近づいております。
 例えば、司法アクセス検討会におきましては、訴え提起の手数料、訴訟費用額確定手続、簡易裁判所の事物管轄の拡大について、見直しに関する方向性が示されております。
 また、国際化検討会におきましても、基本的方向性を出すための議論が行われております。
 また、法曹制度検討会におきましては、弁護士法の改正問題、民事調停・家事調停の分野にいわゆる非常勤裁判官制度を導入するための法改正の方向性についての議論に続きまして、裁判官制度の問題についても検討が開始されているところでございます。
 このほか、労働検討会、ADR検討会、行政訴訟検討会、裁判員制度・刑事検討会、公的弁護制度検討会などにおきましても、論点についての具体的な検討が進められております。
 15年通常国会提出予定法案に関する事項につきましては、次回以降の顧問会議においても引き続き御議論いただく予定にしておりますので、よろしくお願いをしたいと思います。
 なお、若干触れさせていただきますが、仲裁検討会、青山座長の検討会でございますけれども、11月7日に開催されました検討会において、議事録の顕名、非顕名の取扱いに関しまして再度協議がされまして、今後は議事録を顕名とすることとされたということでございます。
 他の検討会におきましても、これまで数回にわたり開催されました会合の結果、各検討会における対象テーマの検討の進捗等を踏まえまして、適当な時期に、改めて顕名、非顕名の問題について協議される予定であります。
 以上でございます。

【佐藤座長】 ありがとうございました。ただいまの検討会での検討状況についての説明に関して、何か御質問ございませんでしょうか。どうぞ。

【笹森顧問】 では一言だけ、今日、青山座長がお見えになっていますが、労働検討会と仲裁検討会は関連する項目が非常に大きいと思うので、連携を十分に取っていただきたいと思います。

【佐藤座長】 青山座長、いかがでしょうか。

【青山仲裁検討会座長】 では、私どもから。おっしゃるとおりに、仲裁と労働検討会は関係いたしますので、次回に労働検討会の座長の菅野座長に、仲裁検討会の方にお越しいただきまして、御議論をお聞きしたいと思っております。その際に、労働側の代表の方、使用者側の代表の方にも、それぞれ一緒に御議論をさせていただきたいというふうに思っております。

【笹森顧問】 わかりました。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。では、時間の関係で次の議題に移らせていただきたいと思います。
 そこで、民事司法制度の改革についてでございます。本日は、法務省の法制審議会における検討状況並びに推進本部の仲裁検討会における検討状況について説明を受けた後、御協議いただきたいというように思います。
 では、まず法制審議会における検討状況です。法務省から房村民事局長におでましいただいておりますので、御説明いただければと思います。よろしくお願いいたします。

【房村法務省民事局長】 それでは、私の方から、現在法務省で進めております民事訴訟法の検討状況について御説明いたします。
 お手元に、資料3と4がございます。3が検討項目の概要、もう少し詳しい骨子が資料4でございます。その概要の3に基づいて御説明をいたします。
 現在民事訴訟に関しましては、審理の迅速化・充実化という観点から、幾つかの項目を触れられておりますが、まず第一に迅速化の観点から非常に重要な、計画審理の推進を進めております。複雑な事件等について、審理計画をあらかじめ策定して、それに沿って手続を進める。計画を立てますと、終了する時期も目途が立ちますので、迅速化に大いに資するのではないかと考えているところでございます。
 また、当事者が迅速に審理を進めるためにも、提訴前の証拠収集手段を拡充することが必要ではないかということで、その点も併せて検討しているところでございます。
 次に、専門的な事件、特許等もそうですし、あるいは医療過誤、その他そういった事件が増えておりますが、こういう専門的知見を要する事件の審理に当たりましても、裁判所が専門家の意見を聴くという手続として、専門委員制度を設けるということを検討しているところでございます。
 更にその専門的事件の中でも、最も専門性の高い特許等の事件につきましては、専門部が整備されております東京地裁及び大阪地裁に管轄を専属化することによりまして、非常にスピードが要求されている特許等事件の審理の迅速化を図りたいという具合に考えております。また、専門部でありますので、当然審理の充実ということも考えているところでございます。
 次に「簡易裁判所の機能の充実」でございますが、現在簡易裁判所におきましては、30万以下の事件については原則として1日で審理を終結する。本人が1人でできるような少額訴訟というものが設けられて、非常に利用されておりますが、この上限を引き上げる、もう少し上の事件でも簡易な手続で迅速に処理することを可能にしたいと考えているところでございます。
 民事訴訟関係、大体以上のような点を中心に検討を進めております。
 次に「人事訴訟手続法関係」でございますが、これは離婚等の夫婦関係、あるいは認知などの親子関係、こういった人事に関する訴訟手続について、人事訴訟手続法で特則を定めているところでございますが、これにつきまして現在地方裁判所で扱っておりますものを家庭裁判所に移管するということを考えております。
 例えば、離婚で申しますと、現在離婚を起こすにはまず家庭裁判所に調停を申し立てまして、そこで話し合いをする。そこでどうしても解決できない場合に訴訟に移行するわけですが、家庭裁判所で話し合ったものが訴訟になると地方裁判所に起こさなければいけない。こういう非常に当事者にとって負担になっておりますので、これを引き続き家庭裁判所で扱えるようにしようということがこの眼目でございます。
 また、更にそういうことで人事訴訟を家庭裁判所に移管いたしますと、次にあります家庭裁判所調査官、こういう家事に関する専門的知識を持っている調査官をその訴訟に伴う親権者の指定であるとか、養育費、財産分与等の申し立てについて活用することができるであろうということから、その活用方策についても併せて検討しているところでございます。
 また、人事訴訟につきまして、国民の意見を反映するという観点から、参与員の意見を聴くことができるようにするという制度も、新たに設けることを検討しております。
 次に「民事執行法関係」でございます。これも判決をもらってもその執行が的確に、迅速にできないと実効性が上がりませんので、そういう観点からまず債務者の履行促進のための方策として、直接強制、あるいは代替執行という直接執行官等が執行する場合ですが、それが可能である場合にも間接強制を選択できるようにする。当事者が任意の履行をしない場合に、賠償を強制して間接的にその執行を強制するという仕組みでございますが、これを新たに考えているところでございます。
 次に「債務者の財産を把握するための方策」、執行する場合には、債務者がどういう財産を持っているかということがわからないと執行のしようがありませんので、これを一定の場合に債務者に財産開示を命ずることができるという制度を設けることを考えております。
 次に執行の場合には、占有屋等による執行妨害がかなり広く見られております。これに対抗するために、保全処分の発令要件を緩和するとともに、占有者の特定が困難である場合にも保全処分を発令できるようにするというような対策を講ずることを考えております。
 次に「少額定期給付債務の履行確保」でございますが、これは子の養育費などが典型でございます。毎月一定額を給付するわけですが、額が比較的少額でありますので、その履行を怠られた場合に、その都度強制執行を申し立てるということでは、当事者の負担が重過ぎるということから、将来の分も含めて一括して差し押さえできるような、新しい制度を考えております。
 以上のような点を民事訴訟、人事訴訟、民事執行について検討しているところでございますが、ただいまのところの予定といたしましては、今年度中に改正要綱の答申を得て、来年の通常国会には法案として提出したいと考えているところでございます。
 以上、簡単に御説明申し上げました。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。
 それでは、仲裁の方も御報告いただいて、後で併せて御協議いただきましょうか。青山座長、済みませんが。

【青山座長】 それでは、私の方から、仲裁検討会における検討状況等につきまして、御説明申し上げます。
 仲裁は、紛争の解決をアービトレーターという第三者の判断に委ねまして、その判断に服する旨の合意に基づいて紛争を解決する制度でありまして、これは欧米諸国を含め外国では盛んに利用されております。大まかな手続の流れは、お配りしております資料5の流れ図を御参照いただきたいと思います。
 日本の現行仲裁法は、公示催告手続及び仲裁手続に関する法律という法律でございますが、これは明治23年、1890年つまり明治憲法制定の翌年に旧々民事訴訟法の一部として制定されました、大変古い、形容詞としては常に古色蒼然たる法律という形容詞が付く法律に規定されておりまして、かねて改正の必要が強く指摘されてきたところでございます。
 翻って世界の潮流に目を転じますならば、国連総会の直属機関であります、国際商取引法委員会、これはUNCITRALと言っておりますが、そのUNCITRALが1985年に仲裁法のモデルとなる法律案を策定いたしまして、各国にこのモデル法を採用するように強く推奨しております。そして、そのモデル法の採用国は、現在既に三十数か国に上っております。
 そして、昨年の司法制度改革審議会の意見におきましては、御存じのように国際的動向を見つつ、仲裁法制(国際商事仲裁を含む)を早期に整備すべきであるというふうに提案をいただきました。この提案を受けまして、先般ようやく具体的な検討が開始されたものでございます。
 次に、検討会の状況について御説明申し上げます。これまで仲裁検討会は10回開催いたしました。7月までの7回の検討の結果を踏まえまして、ちょっとお見せいたしますけれども、こういう仲裁法制に関する中間とりまとめというものを作成し、『NBL』という雑誌に公表いたしました。関係諸機関に対する意見照会とパブリックコメントの募集を行いました。この募集に対しましては、これまでに400 件を上回る多数の御意見を寄せていただきました。
 その後検討会は、9月に消費者と事業者との間の仲裁につきましてヒアリングを行った上、10月からは具体的立案を念頭に置きまして議論を行っております。今後更に数回開催することが予定されておりますが、司法制度改革推進計画によりますと、来年の通常国会に法案を提出するということが計画されているようでございますので、この点を踏まえ鋭意精力的に検討を続けてまいりたいと思っております。
 続きまして、立案の内容等につきまして御説明申し上げます。現時点でのあらましはお配りしております、資料6と資料7を御参照いただければと思います。資料6には、検討中の項目について、資料7は骨子について記載しております。
 まず、基本的な方針といたしまして、モデル法にできるだけ準拠し、世界標準、いわゆるグローバル・スタンダードを採用した上、これに必要な修正を加えていくということで、大方の賛成を得ております。
 モデル法を採用することによりまして、日本の仲裁制度の内容が諸外国にも理解され、国際的な紛争の解決に日本の仲裁が用いられるケースも増えるようになるのではないかと期待されます。そうなれば、日本の国際商取引にも資するところが少なくないと考えられます。
 と申しますのは、世界のどの国も仲裁を見えない貿易ととらえまして、仲裁を自国に誘致するということにしのぎを削っております。日本の仲裁法は、さっきの古色蒼然たる仲裁法でございましたから、日本に仲裁を誘致するということが今までなかなかできませんでしたけれども、この新しい仲裁法ができますならば、日本も世界各国と並んでスタートラインにつくことになるのではないかと思っております。
 次に、現在の仲裁法との比較で立案の内容を申し上げますと、新たな仲裁法におきましても、仲裁契約に基づいて紛争を解決し、必要に応じて裁判所が援助や監督を行うという根本は変わりませんけれども、より利用しやすい制度とするために、現行法のさまざまな不備を改めるとともに、例えば裁判所が関与する局面におきましても、多くが厳格な判決手続によるとされている現行の制度を改めまして、より機動性のある決定手続に一本化する方向で議論が進んでおります。
 更に、インターネットの発達に象徴される通信手段の変容等にかんがみまして、例えばオンラインでのやり取りや、電子メールで仲裁契約を締結するようにするということが考えられます。また、モデル法に規定はないものの、実務上極めて重要な仲裁の費用、あるいは3人以上の者が関与する多数当事者仲裁というような問題につきましても、規定を設けることを検討中でございます。
 最後に、消費者と事業者との間の仲裁及び労働者と使用者との間の仲裁についてでございますけれども、パブリックコメントでも多くの御意見をいただきました。そこで、消費者契約や労働契約に関する仲裁につきましては、その特質等に十分に配慮して検討すべきであるという指摘がございます。今後、関係各方面からの御意見を踏まえつつ、検討してまいりたいと考えております。
 簡単ではございますけれども、以上で仲裁検討会の現状を御説明させていただきました。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。意見書を踏まえて精力的に検討され、今日御報告いただいたような結果を得ているということでございますが、どの点でもよろしゅうございますので、御質問・御意見ございましたらお願いします。
 私の方から何ですけれども、仲裁法制は古色蒼然たるものであったということですが、今までそれでやってきたというのは、どういうこととして理解したらよろしいんでしょうか。

【青山座長】 先ほど申しましたように、仲裁法は1890年にできまして、3世紀にわたって生き延びている法律でございます。古色蒼然としているんですが、日本の法律解釈学者は非常に優秀でございまして、解釈で補っている面がある程度あると。
 また、実務の工夫というのもございまして、日本の仲裁機関はそれぞれ工夫を施しまして、その古色蒼然たる仲裁を何とか新しい時代の潮流に合わせようと努力している。しかし、もう限界だというのが私の感想でございます。

【佐藤座長】 小島顧問、どうぞ。

【小島顧問】 御質問なんですが、ほかの国と比べて、それでできているものは何件ぐらいあるのか、何かのヒントになりますが、一説にはシンガポール辺りの方がよほどいっぱい処理しているということで、日本の相対的劣化が近年非常に進んでいるような話も聞きいていますが。

【青山座長】 国際商事関係の仲裁を日本でどのぐらい処理しているかというのは、正確な数字は次回にでも事務局から出ると思いますが、私の把握している限りでは、年間10件から20件ぐらいの範囲だと。しかし今おっしゃったようなシンガポールとかタイとかクアラルンプールだとか、この間、韓国のソウルに行きましたけれども、ソウルは70〜80回やっているというようなこともありますので、日本の企業と外国の企業との間のトラブルを仲裁で解決する場合には、日本ではなくてよその国に引っ張られてしまうことが多いというのが、私の認識でございます。

【佐藤座長】 変なことを聞くことかもしれませんが、この法的整備は非常に重要な作業だと思うんですけれども、この整備がされることによって、おのずから使われるようになると言いますか、この分野における貿易に日本がもっとプレゼンスを高めることができる、そういうように考えていいのでしょうか。

【青山座長】 法律を整備したから一挙に仲裁が日本で活発に行われるようになるとはとても考えられません。法律はただ制度を整備したというだけですので、それは乗り越えるべき最初の一歩を踏み出したということでございまして、そのほかに日本の仲裁機関がもっともっと強力に成長する必要があると思います。
 それから、実際に仲裁をやるアービトレーターと言いますが、その仲裁人が訓練を経て、熟練した仲裁人がどんどん出てくるということが必要だと思います。
 それは、法曹人口が増えるということもかなり関係していると思います。外国にはアービトレーターだけを職業として生活している人がたくさんおりますけれども、日本には仲裁人でございますと言って、それがなりわいになっている人はほとんど聞きませんので、そういう体制面での整備、それから人的な強化ということを併せてやっていかなければ、今、座長のおっしゃるように日本で仲裁が盛んになるということはないのではないかというふうに思っております。

【佐藤座長】 国際仲裁の方はそうであるとして、国内仲裁の方ですが、先ほど消費者契約、労働契約の分野では、なお考えるべきいろんな検討項目があるんだということでした。この点に関連して、笹森顧問の方から何か御意見等いかがでしょうか。

【笹森顧問】 労働の関係から言いますと、ほかの項目でも関係するんですが、1つは弱い者の方の立場にどう配慮するかという中で、これが労働もそうですし、消費者もそうなんだけれども、情報開示の問題を含めてどちらがそういうものを持ち合わせているかどうか、ディスカバリーの制度と関係しますね。どちらかと言えば、事業者や企業の方にそのことは偏在をしていると。それを対等な関係でもって突き合わせていくときに、どうしても証拠開示の問題として弱過ぎるんではないかと、それに対してどう配慮してくれるのかという部分、ここが少し検討してもらわないといけないかなという問題。
 それから、労働の関係とすり合わせをした場合に、労働債権の問題だとか占有権の問題だとか、こういう問題についてこの仲裁の中ではどういう考え方になるかどうか、これは民事訴訟法の関係と非常に大きくなってくるんですけれども、仲裁と労働の関係から言うとその辺は論議になったのか、ならないのか。

【青山座長】 最初の方の御質問でございますけれども、おっしゃるとおり労働者とか消費者は、情報の格差とか交渉力の格差というものがございますので、そういう弱者に対する配慮をしなければいけないということは私ども十分認識して議論は進めております。
 ただ、方向性と言いますか、結論はまだ今検討中でございますので、ここでは何とも申せませんけれども、御指摘いただいた点は十分に押さえまして、更に検討を続けたいということでございます。
 第2点は、民事訴訟法の関係かもしれないと思っているんですが。

【笹森顧問】 どちらかというと民事執行法の関係が強いですね。

【民事局長】 労働債権の扱いということで言いますと、通常の民事訴訟で言いますと金銭債権ですので、特に手続上特別な扱いをするということは、現実にもされてないと思いますし、理論的にもその必要性はないと思っております。
 ただ、最も労働債権の扱いで厳しくなってまいりますのは、倒産時でございます。この場合にはどの債権を優先的に満足させるかということが、非常にシビアな問題になってきておりますので、これは執行関係、あるいは破産法との関係で大きく問題になるわけでございますが、今法務省で先ほど申し上げませんでしたが、破産法の見直しも全面的な改正を考えて検討作業を進めているところでございます。これについては、できれば平成15年の臨時国会に出したいと思って作業を進めているところでございますが、その中では労働債権の在り方について相当踏み込んだ検討を現在しているところでございます。
 多分労働債権で一番大きな問題はその点だろうと思っておりますので、また改めて御意見等伺わせていただければと思っております。

【佐藤座長】 小島顧問、どうぞ。

【小島顧問】 これは国際的な仲裁の話なんですが、紛争の当事者が住んでいるところが違うわけですね、非常にやりにくい問題で、時間もかかりやすい。そういうときに、最近はやりの21世紀型技術、ITですね。そういうものを使っている国というのは結構あるんですか。あるいは、もしそういう国があるとすれば、次の制度をつくるときにそういうものをフルに活用できるような道、可能性を開いておかなければいけないと思うんですが。

【青山座長】 仲裁契約というものをやりまして、そして仲裁契約のある当事者同士で紛争を解決するというのが仲裁のシステムでございます。最初の仲裁契約は、モデル法でも書面でなくてはいけないと、当事者の意思をきちんと確認して証拠を残すために書面でなければいけないというふうに言っていますが、その書面性の要件を今UNCITRALのモデル法は随分緩和していまして、電子メールでのやり取りとか、それもみんな書面だということにしておりますので、日本も同じく電子メールのやり取りなども仲裁契約として認めるという、同じスタンダードに立とうとしております。
 更に申しますと、今UNCITRALの作業部会では、もうちょっと先に行きまして、書面がなくても引用される文章が書面になっていて、それを引用するというふうに口頭で言えばよい、例えばサルベージ契約などで、遭難した船舶を救済に行って、助けてくれるかどうかと。助ける、しかし海難救助料については仲裁だよということを電話でやり取りをするというようなことでも、もうそれは仲裁契約になるというところまで緩和しようとしています。この最後の点は、まだUNCITRALで結論が出ておりませんので、そこまでいくかどうかはまだわかりませんけれども、日本は、現在のところはUNCITRALのモデル法と同じスタンダードを採用するということで、世界の潮流に負けないというふうに思っております。

【事務局近藤参事官】 仲裁の手続において、当事者が集まってきているんではなくて、電子メール等でやるというような手続も、実際にちらほら出てきておりまして、今、現在検討している仲裁法においても、仲裁機関がそういうようなことをやろうとした場合に、足を引っ張ることがないようにということは考えております。

【佐藤座長】 よろしゅうございますか。それでは、今井顧問。

【今井顧問】 三十数か国がモデル法を採用しているということですけれども、主な国はどこですか。

【近藤参事官】 三十数か国というのは、国連のUNCITRALの方で採用しているというふうに認定している国でございまして、ドイツ、韓国、シンガポール、香港等が主な国として挙がっているところです。それから、カナダ等では、そのままUNCITRALの条文を別紙のとおりという形で引用して法律をつくっているいうようなところもございます。
 ただ、三十数か国以外でイギリスなんかでも、非常に影響を受けておりまして、今、UNCITRALのモデル法の影響を受けていない国はないというふうに言われています。

【佐藤座長】 アメリカは入っているんですか。

【近藤参事官】 アメリカは、いろいろな各法律の構成が違っておりまして、連邦法と各州法とがあるわけですが、例えばカリフォルニア仲裁法等数州の法律では非常に影響を受けております。

【佐藤座長】 これも初歩的な質問ですけれども、仲裁ということになると裁判はもう提起できなくなるわけですね。

【青山座長】 はい。

【佐藤座長】 そうすると、余り利用されてこなかったというのは、裁判に行けなくなる、仲裁手続の方がどれだけきちっとしたものになっているか、といったことに関係しているのかどうか。さっき笹森顧問でしたか、小島顧問でしたか、情報開示についてのお話がありましたけれども、手続的に何か不安感というか、そういうものがあるんでしょうか。
 今回の検討の中で、手続としてこの辺が非常に重要なポイントとして検討したというようなことがありましたら、ちょっとお話いただければありがたいと思います。

【青山座長】 仲裁は一審限りで仲裁判断が確定しますので、一般に裁判より早い、それから必ずしも弁護士さんを代理人に頼まなくてもいいという意味では、費用も安いというようなことが一般に言われておりますが、しかし日本人の意識というものもありまして、やはり裁判所でやった方がいいと。一審で負けたらまた上に行って争う余地もあった方が安全だというような意識が日本人は非常に強うございます。
 一方、諸外国は商事取引ならば、それは裁判所に持っていくよりも専門的な、アメリカだったらAAAという組織があるんですが、そこに持って行った方が早いし、実情にかなった仲裁判断がなされるということで、好んでAAAに持って行くとか、イギリスでもロンドン・コート・オブ・アービトレーションというのがありますし、フランスにもICCという仲裁専門の機関がありまして、そういう利用率は非常に高いんです。それは歴史と実績が積み重なってそういうことになると思うんです。
 私どもは、その仲裁法の改正で、先ほどちょっと説明しましたけれども、判決手続ではなくて決定手続にして、しかも仲裁判断が出たらもうなるべく迅速に執行ができるように、その点を留意したわけでございますが、最初の座長の質問と同じでございますけれども、やはり法律を整備するだけではなくて、もっと仲裁制度のよさというものをPRしていく、そのためには仲裁機関を国としてサポートしていく、そして立派な仲裁人がどんどん出てくる。そのためには、きっと企業の中にいらっしゃる専門家がそういう仲裁機関に積極的にアービトレーターとして参加していただくと、あるいは労働なら労働の関係の専門家が参加していただくということが、これからますます必要になってくるのではないかというふうに考えます。

【佐藤座長】 ありがとうございました。大宅顧問、どうぞ。

【大宅顧問】 今のに近いんですけれども、さっきからずっと裁判よりいいというイメージが湧かないんです。例えば、どういうことだということを言っていただくと、少しイメージが湧くんですが。

【青山座長】 例えば、建設紛争は国土交通省の中に建設工事紛争審査会というのがあります。建設会社に家を建ててもらったと、工務店に建ててもらったけれども、半年経ったらどうもひび割れがしたとか、あるいは家が少し傾いてきたというようなことが仮にあったとしますと、こういう建設紛争というのは非常に専門性が高いわけでございます。土台がいけないのか、それとも建築の過程がいけないのか、素材がいけないのか、電気関係がいけないのか、いろいろな原因がある。それは、建築なら建築、土木なら土木の専門家が一目見ればわかるということが非常にあります。
 裁判官は、勿論そういう場合に鑑定人を頼んで鑑定してもらいますけれども、裁判官は法律の専門家ではあっても、土木の専門家ではありませんし、電気関係の専門家ではありませんので、そういう事件はどうしても専門家を鑑定人として鑑定してもらって、そして判決をすることになります。
 ところが、仲裁の場合には、そういう鑑定能力のある専門家がアービトレーターになっておりますので、そこで3人なら3人のうちの1人は弁護士さんであっても、あとの2人は土木の専門家と電気工事の専門家というような組み合わせになって事件を聞き、現場に行けば、それで別の人に鑑定をしてもらうという必要がなく、すぐにわかる、ですから、早くて安いということになる、そういうメリットがあると思います。
 ですから、今は建築の例で申しましたけれども、国際貿易取引、あるいは船舶の取引などといいますと、これは非常に商慣習を重視する世界でございますので、そうするとやはり長年船舶の取引をやっていた企業の職員などがアービトレーターになりますと、その契約書を見れば内容がわかるというようなことがありまして、裁判官は裁判官として非常に優秀なんですが、そういう専門性が必ずしもないと。その専門的な事項については、仲裁が非常に役に立つということが言えるのではないかというふうに思います。

【佐藤座長】 佐々木顧問、どうぞ。

【佐々木顧問】 ただいまのお話に関わることですけれども、今の仲裁法制の整備というお話は、勿論古い法律を改正されるということでありますが、今日の最初のテーマの迅速化という問題に、やはり究極のところ寄与するという一連の流れの中で、今日、青山先生からお話いただいたことは理解してよろしいのかなというふうに思ったんですけれども、この点についてお教えいただければありがたいと思います。

【青山座長】 裁判は裁判として2年以内に迅速化するということと、仲裁について、仲裁もそれに直接寄与するかというとそうではないと思います。仲裁は仲裁として、仲裁にふさわしい紛争を日本で適切に処理する。もちろん紛争解決を効率的に能率よく迅速化するという意味では共通します。同じ紛争解決という意味では共通しますけれども、裁判の迅速化ということと関係するかというと、それはちょっと違うという理解でございます。

【佐藤座長】 先ほど御説明のADR検討会の検討事項と相当関係していると思うんです。青山先生は両方の座長をしてらっしゃいますが、その辺何かもう少しお気付きのところをお聞かせいただければと思います。

【青山座長】 お時間いただいて大変恐縮でございます。ADRについては、前にもこの顧問会議でお話をさせていただいたことがあると思いますが、裁判外の紛争処理ということを検討会の1つの課題としておりまして、それは仲裁も広い意味でのADRでございますけれども、それ以外に裁判所以外の調停とかあっせんとか、そういうものもADRの一種でございます。
 そのADRは、諸外国でもかなり活発に行われております。日本でも裁判所での紛争解決、特に判決手続による紛争解決よりももう少し手軽で、最後には裁判に行く道は認められておりますけれども、当事者が納得がいけば判決という正邪黒白を付ける厳格な手続ではなくて、もう少し当事者の合意を取り付けた手続で紛争を解決するものとして、今、座長が御指摘になりましたADRというものがあります。仲裁もADRの一種なんですが、しかし仲裁は初めに当事者同士が仲裁で解決しましょうという約束をしますから、仲裁人の判断が出れば、それが法的拘束力を持つのに対しまして、調停とかあっせんというのは、初めから調停で調停委員の意見が出たら我々は従いましょうという合意がありませんので、調停を始めて調停の案を出して、これでどうですかということで、両当事者がそれでいいですよと言えば、始めてそれは拘束力を持ちますが、一方が嫌だと言えば裁判の道が保障されているという仕組みでございます。
 いずれも裁判外の紛争の処理という意味では、ADRも仲裁も関係いたしますので、恐らく21世紀の紛争解決は、大きなことを言うと裁判による紛争解決というのはあくまでも重要でございますけれども、それ以外にもこれからますます増えてくる紛争の解決にとっては、あるいはADRという形での紛争解決、あるいは仲裁という紛争解決が必要になるという認識を私は持っております。

【佐藤座長】 民事の方ですが、司法制度改革審議会意見書は、裁判の充実・迅速化ということとの関連で、計画審理を非常に重要なポイントとして指摘したわけですけれども、計画審理の担保と言いますか、それがきちっと行われるようにするために、どういうことが考えられているのか。今日お示しの骨子の(3)の攻撃防御方法の却下というところで、一定の要件の下でという御指摘がございますけれども、担保の仕組みと言いますか、その辺もうちょっと御説明いただけますか。

【民事局長】 基本的に複雑な事件について計画を立てる。その当事者双方と裁判所が協議をいたしまして、大体主張の整理はこのぐらいをかけて、その後証拠調べとしては大体このぐらいの内容の証拠をこのぐらいの期間で、判決はこのぐらいと、こういう計画をあらかじめ立てていただいて、進行の状況によってそれは中身を詳しくしたり、場合によれば変更ということもあるかもしれませんが、そういう絶えず計画を立てながら、先の見通しを付けて審理をしていく。
 そういうことで、具体的にここまでにこういう主張をしなさいというようなことがはっきり決まった後で、後になってその主張をするんだということを自由に言わせるということでは、おっしゃるように計画を出す意味がありませんので、そういう場合には一定のサンクションを課して、そういう主張を許さないということも含めて、まさに今検討を進めているところでございます。

【佐藤座長】 一定の要件の下でということですが、この辺も議論はある程度詰まっているんですか。

【民事局長】 その辺りが一番の問題で、かなりいろいろな議論がございます。

【佐藤座長】 そうですか。何かほかの点につきまして、いかがでございましょうか。佐々木顧問、どうぞ。

【佐々木顧問】 最初のテーマに戻るんですけれども、「民事・刑事の訴訟手続について2年以内に第一審における手続を終局させる」というのがあるんですが、これは何か時間的スケジュールというものを想定した上での、つまり裁判のスケジュールはあるんでしょうけれども、計画を実現するスケジュールというのは、どういうような理解の下にこれを考えられているのか、いつごろを目途にこういうことが実現するというふうに国民には伝わるのかという辺りについて話がなかったものですから、ちょっと伺えればと思います。

【事務局長】 私の方から申し上げますけれども、まず事件の検証をすることになりますが、そのときどきの事件数とか事件の内容というのは、いろいろ変化をしてまいりますので、かなりの期間検証して分析をしていかなければならないということになります。余り短期間でやるということもいかがなものかと思いますので、まず2年に1回ぐらい最高裁の方で検証していただくということを今、考えております。そして、これを繰り返して、全体のスパンとしては、大体10年ぐらいを目途に考えています。いろんな施策を順次やって、安定的になるように検証していくというようなことを頭に置いております。今後もう少し検討いたしますけれども、大体10年が1つの目安かなということでございます。

【佐藤座長】 佐々木顧問、更に何か。

【佐々木顧問】 つまりこれ自体がまた思い出になるようなことにならないようにということで、小島さんがいろいろ言われているにもかかわらず、さっぱり実現しませんでしたねという話にならないようにステップを具体的に、今事務局長が言われるように、いろんな条件が整備されなければそれにいけないということは、だれも否定するものではないんですが、目に見える形で着実なステップが踏まれていくということを示すこと、これ自体が思い出にならないようにしてもらうために、是非その点が必要ですね。
 そうなりますと、例えば体制面で法曹人口の件については、既に議論をしたところでありますが、裁判所、検察庁の人的体制の整備というのは、一体いつからどのようなステップで進めるとか、例えばそういうようなこと一つ取りましても、もう少しこの資料1をブレイクダウンしたようなお話をまたしかるべきときにしていただかないと、約十年というのは、そうかなとも思うし、そうでもないかもしれないという気もするし、その辺のつなぎ具合が正直言って心もとない感じがするものですから、また座長には機会を改めてこの点について更に精査をする機会を我々に与えてくださるように、御尽力賜りたいと思います。

【大宅顧問】 蹴り馬に乗るみたいであれなんですけれども、ずっと私も同じことを考えていまして、手続の迅速化、これはいかにも時間のレベルだけですね。例えば簡素化、手続でこんなことをいっぱいやっていて、これとこれは省いて絶対時間的に短かくなりますみたいなことがあれば、そうかなと納得されるんだけれども、ただ迅速化という言葉だと、やらなければいけないことを外して、いわゆる拙速になってしまうやもしれないと。つまり手続の整備とか、言葉は実に見事なんだけれども、具体的にどうやって本当に時間が短くなりますというのが見えてこないと難しい。
 それに、私がこれを見たときに、裁判所、当事者等の責務と書いていて、ここに書いてある2行はこの目標と同じことなんですね。できる限り2年以内に終局させるように努力って、そうすると今までは努力というのはしてないのかと、早く何かやらなければいけないというインセンティブは今は存在していない、これから努力する話が始まるのかしらというふうに、私は読んだんです。
 何かもっと具体的な、確かにそうやれば時間は短くなるだろうというものが欲しいです。

【佐藤座長】 御指摘の点は私も全くごもっともだと思います。先程から申し上げていますように、次回に引き続きこの問題を御議論いただきたいと思っておりますが、今の段階で事務局の方で触れるべきことがあれば。

【事務局長】 確かに御指摘のとおりでございまして、では個々の手続とか体制面・運用面でどういうことをすべきかということは、この図の下の方に掲げてございますけれども、これはまた別途、例えば刑事関係に関しては私ども検討会でもそういう個別の手続をどうすべきかということを検討せざるを得ないということで、現に検討をしているわけでございます。
 先ほど法務省の民事局からもございましたように、個々の民事手続はどうすべきかということは、今検討して結果を出してきているわけでございます。
 このスキームは出発点になるものでございまして、その検証の結果によって何の手続を改正しなければいけない、こういう運用面を改めなければならないということが出てきたら、それを具体的に実現していくというような構図でございまして、最初からまず何をやらなければならないという形ではなくて、これを出発点にして検証して、必ずその結果を出して、必要な手当てはしていくという流れのスキームでございます。
 そういう意味で、具体的な方策が何も出てきてないではないかと言われれば、そのとおりでして、今後やっていくということでございます。先ほどの2年に1回の検証ということをこれから裁判所の方とも折衝しなければなりませんけれども、そのぐらいの期間で分析をして、必要な方策は何かという形を具体的に出して施策に反映させる、それを循環させるということでございます。

【佐藤座長】 要するに、今日ここに出ているのは発想の転換を図ろうということなんじゃないでしょうか。さっき小島顧問からも御指摘があったように、何が充実、何が迅速かというのは、時代によってさまざまな考え方があったかもしれません。従来の日本では、何と言いますか司法というのは一種の脇役みたいなものであったと思うんです。今度の司法改革によって司法は主役の1人になっていただかなければいけないということなんですね。そのときに、では充実・迅速というのは、どういう内容のものでなければならないんでしょうかと。そっちの方から時代の要請を踏まえて発想の転換を図る。そして、それを図るためには具体的に、例えば法曹人口の増員も勿論大前提になりますし、裁判官、検察官の増員も避けて通れない重要な課題ですし、あるいは手続についても情報・証拠収集の手続とか、あるいは証拠開示とかの問題もある。もろもろの問題があろうと思いますけれども、そういう各論から考えるんではなくて、発想の転換を図って、そういう観点から各論的課題・問題を詰めていきましょう、そういう考え方なんではないかというように思っているわけですけれども。
 この法案というのは、次の通常国会に予定しているということですね。

【事務局長】 ここへ具体的な手続を加えてということになりますと、とても時間がなくて、来年の通常国会に提出はできないということになりますので、それは別途切り離しながらやるということでして、今回のスキームはまず理念をきちっと法律で定めて、これに従ってやっていくというイメージでございます。この限度であるならば、来年の通常国会に間に合わせることができるかなと思っております。

【佐藤座長】 ここで検討していただく材料と言いますか、今まではどうで、裁判は本当に長期化しているのか、あるいは長期化している裁判というのはどういう類型のものなのか、その辺の材料を次までに整えていただきたい。そして、この法案とともに我々の任務が終わるわけではなくて、まだ実質2年私どもは引き続きずっとこの問題に関わっていく、その都度必要に応じて検討するという形になります。最終的には10年になるかわかりませんけれども、その辺の方針・見通しについても、この顧問会議で是非御議論いただきたいというように考えているところです。
 今日は、最初のところは少し腹ふくるる思いで、大分御不満な点があったんではないかと思いますけれども、何回も申しておりますように、次回も引き続きこの問題について御審議賜りたいと思いますので、今日のところはこの辺で終わらせていただきたいと思います。
 最後に、法務大臣の方からお言葉がございます。

【法務大臣】 本日は本当に、また御熱心な御論議をいただきまして、誠にありがとうございました。今の臨時国会に提出しております、法科大学院等の法曹養成制度の法案につきましては、先ほどもちょっとお話がございましたけれども、衆議院で今鋭意検討、審議していただいておりまして、ほどなく衆議院は通過するという見込みが立っております。できるだけ早く参議院でも御審議をいただきまして、まず司法制度改革の一番のスタートであります法曹養成の改革ということを緒に就けたいというふうに思っております。
 今のお話にも折々出てまいりましたけれども、法曹の養成というのがすべての基本のように思いますので、これは最も大事だというふうに考えまして、今日まで大分いろいろと質問もございまして、商売大繁盛で忙しゅうございましたが、一生懸命やっていきたいというふうに考えております。裁判の迅速化、その他もうすべてこれにかかっているように思います。
 それから、司法制度改革のテーマはほかにもたくさんあるわけでございまして、今日御論議いただきました幾つかのテーマは勿論でございますが、この間の顧問会議におきまして小泉総理から御指示がございました、全国どこでもすべての国民が法律サービスを受けることができるような社会の構築という大きなテーマもございますし、改革はまさに本格的な段階に入ってまいったというふうに思っております。どうぞ今後とも引き続き顧問の先生方の御支援・御指導をお願いいたします。
 ありがとうございました。

【佐藤座長】 ありがとうございました。実際の本当の大きな一歩を踏み出すわけですね。 では、ほかに事務局の方から何かありましたら。

【事務局長】 次回の顧問会議は、既に御連絡申し上げていると思いますけれども、12月9日の予定でございます。15年の通常国会に提出する法案で、今日触れられなかったものの第一読会という形でやりたいと思いますので、御予定をお願いできればと思います。
 それから、裁判の迅速化についてでございますけれども、これは次回の顧問会議までの間に、まず法曹三者から意見を伺うという機会を設けたいと思っております。現在、12月2日の午後4時からを予定しております。これは、私どもの事務局の方で行いたいと思っておりますけれども、顧問の皆様方、あるいは検討会の座長の皆様方にも御都合の付く限り御出席をいただいた上で、顧問会議と同じような公開の方法で討議をするということを考えております。是非御参加をいただければと思っております。
 以上でございます。

【佐藤座長】 ありがとうございました。ということでございますので、できるだけ御出席賜ればありがたく思います。
 何かこの件、あるいはその他について、御注意いただくべきところがございませんでしょうか。よろしゅうございますか。
 では、本日は本当にどうもありがとうございました。次回も引き続きよろしくお願いいたします。

(以上)