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司法制度改革推進本部顧問会議(第8回)議事概要



1 日 時  平成14年12月9日(月) 16:00〜17:35

2 場 所  総理大臣官邸大会議室

3 出席者

(顧問)
佐藤幸治座長、大宅映子顧問、奥島孝康顧問、小島明顧問、佐々木毅顧問、笹森清顧問、志村尚子顧問

(推進本部)
小泉純一郎本部長(内閣総理大臣)、森山眞弓副本部長(法務大臣)、
上野公成本部長補佐(内閣官房副長官)、古川貞二郎本部長補佐(内閣官房副長官))

(推進本部事務局等)
山崎潮事務局長、長谷部由起子司法アクセス検討会委員、
柏木昇国際化検討会座長、伊藤眞法曹制度検討会座長 他

4 議事次第
(1) 開会
(2) 内閣総理大臣あいさつ
(3) 裁判の迅速化について
(4) 検討会の検討状況等について
(5) 裁判所へのアクセスの拡充について
(6) 外国法事務弁護士制度の改革について
(7) 弁護士制度の改革等について
(8) 閉会

5 配布資料[PDF形式]
  1. 「裁判所における手続の迅速化促進方策」に関する法案のイメージ
  2. 裁判所における手続の迅速化に関する意見聴取関係資料
    (1) 議事概要
    (2) 日本弁護士連合会提出資料
    (3) 最高裁判所提出資料
    (4) 法務省説明要旨
  3. 検討会の検討状況
  4. 裁判所へのアクセスの拡充
  5. 外国法事務弁護士制度の改革関係資料
    (1) 外国法事務弁護士制度の概要
    (2) 弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働の推進に関する議論の整理について
    (3) 外国法事務弁護士の現登録者数等
  6. 弁護士制度の改革等関係資料
    (1) 弁護士法等をめぐる主な検討状況[骨子]
    (2) 参照条文抜粋
    (3) 綱紀・懲戒制度の新旧対照模式図

6 会議経過

(1) 開会の後、小泉本部長から、概要、以下のとおり、挨拶があった。
 先般、法曹養成制度の改革関連法案が国会で成立した。法曹の質と量の拡充とともに、大学改革のさきがけとしての意味も持つことを期待する。関係者の御努力に敬意を表したい。
 司法の体制面の整備を図る一方、裁判の迅速化の問題について、法曹界が一致して積極的なことは、心強く思う。今後も、これまでの慣行にとらわれず、制度の改善に取り組んでいただきたい。
 法律サービスが国民の日常生活の中に行き渡るようにするため、利用者本位の立場に立って抜本的な改革をすすめなくてはいけない。
 これらの課題について着実に解決が図られるよう、顧問の皆様には、忌憚のない御指摘や御意見を賜りたい。

(2)(裁判の迅速化について)

ア 山崎事務局長から、裁判の迅速化に関し、12月2日に行われた法曹三者からのヒアリングの概要について、第一審の裁判の結果が2年以内に出るようにするとの目標に向けて取り組むという点では三者の認識が一致していたこと、日弁連について国等と同様の責務規定を置くことの要否に関する質問があり、これについて必要・不要両様の考え方が示されたことなどの報告がなされるとともに、資料1に基づいて、「裁判所における手続の迅速化促進方策」に関する法案のイメージについて説明がされた。

イ 上記報告・説明に関し、概要、以下のような質問・意見があった。

  • 裁判の迅速化を促進するに当たり、日弁連の責務とは、具体的にはどのようなことが考えられるのか。
    (事務局から、日弁連の司法制度改革推進計画において、「民事裁判の充実・迅速化に関しては、弁護士の執務態勢の充実強化に関し、必要な検討を経たうえ、逐次所要の取組を行う」とされ、刑事裁判の充実・迅速化に関しても、「適正な刑事裁判の充実・迅速化のため、憲法の人権保障の理念に基づき、公的刑事弁護制度の整備を含め、弁護人の体制整備に関し、必要な検討を経たうえ、所要の取組を行う」とされており、日弁連の責務の内容として考えられる事項の主なものは、ここに掲げられているようなものである旨説明がされた。)

  • 迅速化と充実化は、国民の求めているところから見て、相反するものではなく、資料を見ても、ほとんどのところで、「充実・迅速」ということはセットで用いられている。また、精密司法との関係でも、法曹三者に大胆な発想の転換を求めることが必要であるので、法案で、充実化と迅速化の命題がセットになっているのだということを強調するために、「充実・迅速」とすべきである。また、資料1の「4 裁判所・当事者等の責務」において、いたずらに速ければよいということではないことをもっと明確にするため、「濃密に、かつ、無駄なく」という意味合いの表現を入れた方がよいのではないか。

  • 前提として、現在、一応適切に行われているが、時間がかかり過ぎるものがあるから速くするということで、「速く」ということを打ち出したいのであれば、「充実」を入れると、「速く」の方がぼけると思う。そこは、現状認識の違いだと思う。

  • どちらに重点を置くかということであれば、迅速ということだと思う。「精密司法」という言葉は法曹三者が責任感を持ってやっているということだと思うが、それが得てして「美学」に陥っているということがある。ある限度を超えて審理が長引くということは、その間、司法が判断を停止し、仮死状態となり、いわば自殺行為ではないか。司法が自殺行為に陥らないようにしてもらいたい。

  • 迅速が主な目的であることはそのとおりであるが、迅速は中味を犠牲にするのではないということは言っておくべきだと思う。

  • 充実を当然の前提と考えた上で、「迅速化」を打ち出すことにメリットがあるという点について誤解がなければ、それで結構ではないかと思っている。現状認識について、メンバーの間で認識がずれているということであれば、「充実」ということを付け加えなければならないということになるから、その点について、座長からこのような了解でという取りまとめをしていただくことが必要ではないか。

  • 日本語で「迅速」と言ったときに、速ければよいという馬鹿なことを考える人はいないと思う。まともに、今までより速くというのが「迅速」ではないか。
    (佐藤座長から、今回我々が目指しているのは、「充実なくして迅速なし。迅速なくして充実なし。」ということであって、両者は一体と考えており、従来の発想で、充実を犠牲にして迅速化するのではないかと受け止められるおそれがあるということであれば、もう少し表現の仕方を考える必要があるかもしれないけれども、皆さんの発言を伺っても、実質的には同じで、あとは表現ぶりの問題であると思われるので、最終的にどのような表現にするかについては、法案化の段階で更に検討させていただきたい、趣旨は充実・迅速が一体のものだという理解でのぞむこととしたい旨の発言がなされ、日弁連の責務については、2つの考え方があると思うが、弁護士会・日弁連に自治権が与えられていることに伴って相応の責任があると思われるので、そのような観点から、日弁連には引き続きこの問題について積極的に取り組んでもらいたい、最終的にどのような表現ぶりとするのかについては、事務局を中心に法案化の段階で更に検討させていただきたい旨の発言がなされ、いずれも了承された。)

(3) 山崎事務局長から、司法制度改革の進ちょく状況について、11月29日に法曹養成制度改革関連法が成立したことなどが報告され、続いて、検討会の検討状況等について、資料3に基づいて説明がなされるとともに、ADRの拡充・活性化に関する検討の一環として、本年6月に設置された関係省庁等連絡会議において、ADRに関する関係機関等の連携強化を図るために、関係省庁等が横断的・重点的に取り組むべきと考えられる施策を、本年度中を目途に、アクション・プランとして取りまとめることとし、11月に、「アクション・プラン構成案」を取りまとめ、現在、関係各方面からの意見を募集している旨の説明がなされた。

(4) 平成15年通常国会に所要の法案を提出することを予定しているテーマのうち、裁判所へのアクセスの拡充、外国法事務弁護士制度の改革、弁護士制度の改革等について、初めに、司法アクセス検討会の検討状況について、長谷部委員から資料4に基づき説明がなされ、次に、国際化検討会の検討状況について、柏木座長から資料5に基づき説明がなされ、続いて、法曹制度検討会の検討状況について、伊藤座長から資料6に基づき説明がなされた。
 その後、協議が行われ、概要、以下のような質問・意見があった。

  • 法的サービスの自由化の問題では、国際的動向はどのようになっているか。
    (柏木座長から、WTOで協議されており、自由化の方向にあるが、資料5(2)の案のような方向性は見えていないと思う旨説明がされた。)

  • 資料5(2)の整理案1及び整理案2は、それ自体の問題とともに国際的な検討の動向をどのように認識するかということも影響しているのか。
    (柏木座長から、そのような議論もなされたが、検討会においては、日本のクライアントの立場に視点を置くという意見が強く、外国の動向に左右されることなく、国内で、自由化した場合にどういうメリットがあり、どういうデメリットが出てくるのか、デメリットが出てくるのであれば、それに対する対応策を考えておかなければならないという議論が中心であった旨説明がされた。)

  • 司法制度改革審議会の海外視察で、アメリカのクリフォード・チャンスの事務所へ行った際、日本の国民のためいつでもサービスを提供したいと強調していた。
    (柏木座長から、アメリカでは州によって足並みが違うという印象を受けており、ニューヨークやロサンゼルスなどの大都市では、外に出ようとする弁護士が多いが、ノースダコタやアラバマなどでは、我関せずという態度が強いようである旨説明がされた。)

  • 資料6(1)の第1の「4 弁護士報酬の透明化・合理化」において、「弁護士報酬規定を日弁連・弁護士会会則の必要的記載事項から削除」とあるが、それが弁護士報酬の透明化につながるのか。
    (伊藤座長から、弁護士会の会則等に一定規模の事件について目安となる報酬額の定めがあると、目安にすぎないといっても、実際には個別の事件における報酬額の交渉の出発点とならざるを得ず、結局は多くの弁護士がいても、報酬額は大体横並びとなってしまうということで、報酬規定の存在が結果として弁護士間の公正な競争を阻害するおそれがあるのではないかとの指摘がかねてからあったところであり、それを踏まえて、弁護士報酬規定を会則の記載事項から削除することとされたものである旨、また、市民が弁護士事務所に行った際に報酬額が分かる何らかの目安があった方がよいとの議論もあるが、それはあくまでも当該弁護士が自分の報酬基準を示し、それを基に当該事件の個性に応じて交渉するという形が望ましいのであって、およそ弁護士会の会則等で目安となる報酬額を示すことはかえって個々の事件、弁護士、依頼者の特性に即した報酬の定め方を阻害するのではないかと考えられたものである旨説明がされた。)
    (事務局から、弁護士法上報酬規定を会則で定めなければならないとされているので、そこをまず削除するということであり、削除された後どうするかについて、司法制度改革審議会意見書は、「個々の弁護士の報酬情報の開示・提供の強化。報酬契約書の作成の義務化、依頼者に対する報酬説明義務等の徹底を行うべきである。」としているので、これを踏まえ、現在、日弁連において弁護士報酬の透明化・合理化の見地からの検討を精力的に行っているところであり、それを受けて年明けの法曹制度検討会で議論する予定である旨説明がなされた。)

  • 資料6(1)の第1の「1 司法試験合格後に民間等における一定の実務経験を経た者に対する法曹資格の付与」の(1)で、企業法務等の担当者等に対する弁護士資格付与の要件として「事前に所要の研修を受けること」としているが、この点については、どういうことを考えているか。また、(2)で、国会議員の職に在った者に弁護士資格を付与する理由は何か。
    (伊藤座長から、企業法務等の担当者等に対する弁護士資格付与は、一定の法律事務について経験を積んだ者を対象とするものであるが、弁護士登録して仕事をする場合にはゼネラル・サービスが求められ、いろいろな事件を引き受ける責務があるということになるので、そのような研修が必要になるのではないかという考え方に立ち、研修の内容を国が定め、実施主体は日弁連ないし弁護士会の適切な機関とし、研修内容は例えば民事弁護、刑事弁護などの裁判実務を中心とするということで、更に具体的な内容はいろいろな意見を検討した上、事務局から法曹制度検討会に報告してもらい議論することとしている旨、また、国会議員の職に在った者に対する弁護士資格付与は、司法試験の合格を前提として、国権の最高機関であり、かつ、唯一の立法機関である国会において、法律案の立案、審議、審査という法律に関する高度の識見・能力を有する職務を行っているのであるから、弁護士としての職務を行うために必要な能力を獲得するに足りる事務であるという考え方によるものである旨説明がされた。)

  • 弁護士会の綱紀・懲戒制度が従来とどこがどのように変わるのか説明願いたい。
    (伊藤座長から、資料6(3)に基づいて、大きな変更点としては、単位会の綱紀委員会は現在弁護士のみで運営されているが、これに弁護士以外の外部委員が加わること、学識経験者のみによって構成される日弁連綱紀審査会が、日弁連の綱紀委員会で懲戒審査不相当とされたものについて、申出により審査を行い、懲戒審査相当となると、単位会懲戒委員会の審査に付されることの2点がある旨説明がされた。)

  • 法曹資格の付与に関する司法制度改革審議会意見書の88ページは、「民間等における一定の実務経験を経た者に対して」という書き方であり、国会議員は、少し違うのではないか。また、現実に、希望の有無は別として、どれくらい対象者がいるのか。
    (伊藤座長から、司法制度改革審議会において、国会議員を対象とすべきかどうか議論され、その際に、国会議員も「民間等」の「等」に含まれるとして、引き続き検討すべきであるとされた経緯があり、それを踏まえたものである旨説明がされた。)
    (事務局から、全体について司法試験合格の有無を調べようがないが、把握している限りで国会議員は6人である旨説明がなされた。)

  • 国会議員の職に在ったということで弁護士資格を持ったとしても弁護士として働くわけではなく、国民にとっては何のメリットもないのではないか。

  • 外国法事務弁護士の資格を有する日本人は、大体アメリカだろうと思うが、そのほかの国の資格を持っている例としては、どういう例があるか。 (事務局から、アメリカやイギリスの資格を持っている例はあるが、それ以外は把握していない旨説明がされた。)

  • 弁護士から国民を遠ざけている問題として、報酬がいくらになるか分からないということが大きな問題であり、司法制度改革審議会では、事例集のようなものを作ってはどうかという意見もあった。
    (事務局から、その辺りについても、現在日弁連の方で検討中ではないかと思われ、年明けに日弁連から法曹制度検討会に報告していただき、検討する予定である旨説明された。)
    (日弁連から、弁護士報酬の透明化・合理化に関し、弁護士会がどのようなことをするのかについて、個々の弁護士の報酬情報の提供・開示、報酬契約書作成の義務化等の検討につき更に詰めるため、現在具体的な要綱のようなものを作り、何らかの形で年明けの法曹制度検討会で意見表明する予定で準備しているところである等の説明がなされた。)

 また、今井顧問から、次の2点についてコメントが寄せられている旨佐藤座長から紹介された。

  • 弁護士法72条の非弁活動規制の緩和に関連し、「会社形態の多様化などの変化に対応する見地から」、企業法務が関連会社に対し法務サービスを有償提供することを容認する検討が進んでおり、評価する。これのみならず、企業法務の自社訴訟代理権の容認についても配慮して欲しい。
    (事務局から、司法制度改革審議会の審議においても、弁護士資格を有しない者が訴訟代理人となることは、相手方を含め当事者の利益保護に反したり、迅速・的確な訴訟手続の進行の妨げとなる場合があり得る、また、このような制度が創設された場合には、形式的に権限を付与された社員であることを取り繕うなど制度の悪用が心配されるというような反対意見もあったところであり、慎重な対応が必要な状況である旨説明がされた。)

  • 現在の検討状況をみると、司法試験に合格した企業法務担当者並びに公務員に対する要件が、非常に厳しいとの印象を受ける。司法修習期間が1年に短縮される一方で、司法修習を受けなかった者には実務経験を7〜8年程度要求した上で一定期間の研修を課するとの要件は、弁護士法5条に定める既存制度や今回の改正案における他の資格付与条件と著しく不均衡である。企業法務の高度な実務経験に配慮した制度として頂きたい。
    (伊藤座長から、現行の制度においては、裁判所、検察庁など司法事務の根幹である業務等に携わるものが対象とされているのに対し、民間等における実務経験を経た者に対する弁護士資格の付与の制度では、企業法務の担当者や公務員など、それぞれ高度の専門性は有するものの、業務内容は相当程度多様なものが対象とされており、業務に多様性があるということから、実務経験の期間についてもかなり慎重に考えなければならず、また、研修についても一定の研修を要するのではないかという方向性になった旨説明がされた。)

(5) 森山副本部長から、概要、以下のとおり挨拶がなされた。
 昨年12月の本部発足以来丸1年が経過し、顧問会議も本日の会合で第8回を数える。顧問の皆様の御助言を得て、逐次計画が進み、法曹養成制度改革関連法案が成立した。
 来年の通常国会に提出予定の法案としては、裁判の迅速化法案など画期的なものが盛り込まれており、司法制度改革もいよいよ佳境を迎える。いずれの法案も司法制度改革の中で重要な意義を持つものであるから、本部としても、これらの法案の成立に全力を傾ける所存である。
 また、我が国の社会は、現在、不良債権処理、倒産・失業の問題に直面し、消費者などいわゆる社会的弱者が直面する問題も多く、これらの人々が適切な救済を得られるようにしなければならない。本部長挨拶にもあったとおり、こうした問題に直面している国民の日常生活に法律サービスが隅々まで行き渡るようにしたい。誰もが身近に法的な救済手段を活用できるようなきっかけになる場所があるとよいと願っている。このようなことを通じ、利用者本位の抜本的改革を進めなくてはならないと考えているので、今後とも宜しく御指導をお願いしたい。

以 上
文責:司法制度改革推進本部事務局
注)速報のため、事後修正の可能性あり