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司法制度改革推進本部顧問会議(第9回)議事録



日 時 : 平成15年2月6日(月)18時〜19時40分

場 所 : 総理大臣官邸4階大会議室

出席者 :
(顧 問)
佐藤幸治座長、今井敬顧問、大宅映子顧問、奥島孝康顧問、小島明顧問、笹森清顧問、志村尚子顧問

(推進本部)
小泉純一郎本部長(内閣総理大臣)、福田康夫副本部長(内閣官房長官)、
森山眞弓副本部長(法務大臣)、上野公成本部長補佐(内閣官房副長官)、
古川貞二郎本部長補佐(内閣官房副長官)

(事務局)
山崎潮事務局長、高橋宏志司法アクセス検討会座長、青山善充仲裁検討会座長、柏木昇国際化検討会座長、伊藤眞法曹制度検討会座長 他

議事次第 :
1 開 会
2 内閣総理大臣あいさつ
3 平成15年通常国会提出予定法案について
4 検討会の検討状況等について
5 閉 会

(報道陣カメラ入室)

【事務局長】 それでは佐藤座長お願いいたします。

【佐藤座長】 それでは、ただいまから司法制度改革推進本部顧問会議第9回会合を開会いたします。顧問の皆様におかれましては、大変御多忙のところ御出席賜りましてありがとうございます。
 佐々木顧問は、本日所用のため御欠席でございます。それから、志村顧問は遅れてお見えになるというように承っております。
 また、本日は司法アクセス検討会の高橋座長、仲裁検討会の青山座長、国際化検討会の柏木座長、法曹制度検討会の伊藤座長に御出席いただいております。ありがとうございます。
 初めに本部長である小泉内閣総理大臣からごあいさつをちょうだいしたいと存じます。総理大臣お願いいたします。

【小泉総理大臣】 お忙しいところ、また、夕方のお忙しいところをありがとうございます。
 今国会では第一審の訴訟が2年以内に終わることを目指した裁判の迅速化に関する法案を提出します。
 併せて、司法制度改革に関する一連の法案を提出しますが、その中には、民事執行制度を強化する法案も含まれています。一旦、判決が下っても、それを実行するための競売手続が迅速かつ円滑に行われなければ、迅速な不良債権の処理もおぼつきません。これまで、多くの競売物件に「占有屋」が居座り、手続の円滑な執行を妨げていることが大きな問題とされてきました。今回の法案は、頼りがいのある司法の実現に寄与するものであり、我が国の経済再生にも不可欠であると考えます。
 更に、司法は「高嶺の花」にとどまらないで、「手を伸ばせば届く」という、だれにとってもそういう存在にならなければならないと思います。そこで、法的紛争を抱えた市民が、気軽に相談できる窓口を広く開設し、きめ細やかな情報や総合的な法律サービスを提供することにより、全国どの街でも、市民が法的な救済を受けられるよう、司法ネットの整備を進める必要があると思います。
 顧問の皆様におかれましては、司法制度改革の推進のために、一層の御支援をお願いいたします。

【佐藤座長】 ありがとうございました。報道のカメラは退室願います。

(報道陣カメラ退室)

【佐藤座長】 それでは、議事次第に従いまして、平成15年通常国会に提出予定の法案につきまして、御審議賜りたいと思います。
 まず最初に、裁判の迅速化について、事務局から資料の説明をお願いします。

【事務局長】 それでは、御説明申し上げます。資料は1と2をごらんになりながらお聞きをいただきたいと思います。
 資料1は、意見募集の結果の概要を記載したものでございます。詳細は省略させていただきますが、迅速化を積極的に推進すべきであるという意見がある一方、裁判が拙速になることを懸念する意見も寄せられております。
 2年以内という目標につきましても、これに賛成する意見がある一方、これでも長過ぎるという意見、数値目標を設定することは審理の拙速化につながるとする意見もございました。事務局におきましては、これらの意見も十分に参考にさせていただいた上で、法案の立案作業を進めているところでございます。
 それでは、法案の内容について御説明いたします。資料2でございます。図と詳しくは2枚目以降に文章で記載してございます。これをごらんになりながらお聞きをいただきたいと思います。
 まず、この法案によって実現しようとする裁判の迅速化の趣旨を明らかにすることといたしております。これが裁判の迅速化という枠の中に書かれている内容でございます。
 そこでまず1つ目の柱として、第一審の訴訟手続を2年以内のできるだけ短い期間内に終局させることなどを目標に掲げました上、充実した手続と、これを支える制度・体制の整備により迅速化を実現するということにしているわけでございます。
 前回の顧問会議におきまして、充実と迅速は表裏一体のものであるとの御指摘もいただいたところでございますが、このことも踏まえまして、運用面と制度、体制面の総合的な施策を実施することにより、第一審の訴訟手続を2年以内に終局させるという目標に向けて迅速化を進めていくという基本的な考え方を明らかにしようとするものでございます。
 次に、これを受けまして、迅速化の実現にとって重要となります制度、体制の整備につきまして、その基本的内容を示したのが2つ目の柱でございます。
 更に、裁判の迅速化を進めていくに当たりまして、これが拙速な裁判につながってはならないということは当然でございますが、国民からの意見募集の結果を見ましても、この点についての懸念が生じないようにするということが不可欠であると考えられます。
 そこで、迅速化の趣旨の3つ目の柱といたしまして、当事者の正当な権利利益が害されないように、手続の公正・適正な実施を確保すること、これが必要であるということを明らかにしているわけでございます。
 以上が裁判の迅速化の趣旨ということになります。これを受けまして、裁判の迅速化の担い手の責務、これを規定することとしているわけでございます。
 ここでまず、裁判の迅速化の促進に必要な施策の策定・実施に関する国の責務と政府の法制上・財政上の措置等を掲げております。
 次に、前回の顧問会議で御議論のございました日本弁護士連合会の責務につきましても、裁判の迅速化に関する弁護士の体制の整備に努める責務として規定しています。
 例えば、国民による弁護士の利用を容易にするための弁護士の体制の整備を図るということは、裁判の迅速化に大いに関係することになると考えられるわけでございます。日弁連にも、このような意味での弁護士の体制の整備に積極的に取り組んでいただく必要があります。
 更に、運用面における取り組みといたしまして、まず、手続の実施の主体である裁判所について先ほど申し上げました趣旨に従いまして、充実した手続を実施することにより、迅速化に関する目標を可能な限り実現するようその実施に努める責務を規定しております。
 また、当事者等につきましても、その手続上の権利の行使を誠実を行うことにより迅速化に関する目標が可能な限り実現できるよう努める責務を規定することとしております。
 以上が迅速化の担い手の責務ですが、更に、目標の達成をより確実に担保するため、最高裁において迅速化の推進に必要な事項を明らかにするための検証を行い、その結果を2年ごとに公表して国民に明らかにした上でこれを適切に活用して、更に総合的方策を推進していくという仕組みについても規定することとしております。
 以上が概要でございます。

【佐藤座長】 ありがとうございました。
 昨年、総理がこの迅速化についての強い御意向を表明され、それを受けていろいろなところで検討し、また、この顧問会議でもいろいろ御議論いただきまして、法律案の段階に到達したということでございます。この点につきまして、先ほど事務局の説明に関連して、御意見、御質問いただきたいと思います。更に、先ほどの総理のごあいさつにもございましたけれども、法律サービスの全国的な拡充、この点について総理は先ほど「司法ネット」というお言葉で表現されましたが、これは司法教育とかあるいはリーガル・インフォメーションの国民の広い共有とか、いろいろなものに関連している問題、カバーしている問題だというように思います。「司法ネット」という言葉は我々が目指そうとしている事柄を非常に的確に表現しているのではないかというように承った次第ですが、その点につきましても、御意見をちょうだいできればというように思います。どの点からでもよろしゅうございますが、どうぞ。

【笹森顧問】 迅速化の問題について今の提案と総理のお話の中にあったことも理解し、そういう方向でというふうに思っておりますが、前回も迅速化について少しこだわった発言をさせていただきました。これは、言葉の使い方がどうこうというのではなくて、充実という問題がどうなのかということをもう少し明確にしなければいけない。言ってみれば、一般の国民の側からすると、本当に自分の言い分にきちんと耳を傾けてくれるのであろうか、納得のいくような審理をちゃんとやってくれるのかという期待が多いと思うんです。これが先ほど説明された意見募集の概要の中でも、賛意を示しつつ充実や当事者の納得が重要だとか、拙速化を招くものということになりそうなので反対をするとかというところに表れていると思う。
 比率がどうだというのはよくわからないんですが、多分、この意見は相当数あったのではないかと思うんです。そうなってくると、充実した審理なしに迅速化はあり得ないと。これは前回も申し上げたんですが、これは単なる促進ではなくて、何となくイメージからするとせかせるのではないかという取られ方にもなりかねないし、そういうような対応ですと、とんでもない方向になりそうなので、法曹三者に対して十分に認識をいただくということを含めて充実ということにかなりこだわってやらせてきたわけですが、中身的にはそのような表現も入っているんですが、そこのところを明確に迅速化というのは丁寧に密度を濃く効率よく、そして迅速にやらなきゃいけないということを強く打ち出していただきたい、タイトルに入れるかどうかというのはいろいろな問題があるかと思いますが、その上でこれをやるとなれば、大変関係者が大きな努力を要するということにもなると思うんですけれども、相当な覚悟を持ってやっていただきたい。法曹三者に特に申し上げておきたいと思います。
 その上で、2つ目の迅速化の検証の問題なんですが、最高裁が行うということになっていますけれども、検証という作業には当然評価という問題も入ってくるというふうに思っています。となると、自己評価になってしまわないかなという懸念があります。したがって、この仕組みの中ではユーザー側の視点が全く入らないのではないかというふうにも思いますので、どこかにユーザー側というものを設置していくという構成の問題、テクニカルな問題は別にして、何か参加をして、第三者的な評価機関というのも必要ではないかということについて、意見を申し上げておきます。
 それから、最後に、今の司法ネットの問題も含めて、どういうような国民に対して裁判が変わるのかということを、少しビジュアル的にわかるようなメッセージに出していく必要があるのではないかというふうに思っていますので、これは是非座長の方で工夫をいただければと思います。
 以上です。

【佐藤座長】 ありがとうございます。今の件につきまず事務局の方からお答えいただけますか。

【事務局長】 まず第1の御指摘の点でございます。充実ということですが、これは前回も御指摘がございまして、前回の案文よりはるかにこの点について手を加えています。資料2の2枚目をごらんいただきたいのですが、2の(1)、そこの下から2行目に、「充実した手続を実施することにより」ということで、まずここにきちっとうたっております。やるべきことはやる、やった上で早くという趣旨でございます。
 それから(3)のところに、裁判の迅速化に当たっては、当事者の正当な権利利益が害されないように云々とございます。これも注意点としてきちっと掲げているわけでございます。
 更に、もう一枚めくっていただきまして、6の「裁判所の責務」というところに、やはり充実した手続を実施することにより、その目標を実現するように努めるということが規定されておりまして、これは充実した手続をちゃんとやった上でやりなさいということをうたっており、前回の御指摘を踏まえまして、きちっと加えている点を御理解たまわりたいと思います。
 なお、法律名の中に、入れるかどうかという問題も御指摘がございましたけれども、2の裁判の迅速化にございますように、この法律の目的は、裁判を2年以内に終わらせるという目標を掲げまして、充実した手続を実施することと、それからこれを支える制度、あるいは体制の整備を図るということによって実現しようという、いわゆる迅速化のシステムをうたう法律でございます。
 したがいまして、焦点は迅速化に当たっているということですので、その内容を直截に表現をするということで、このような法律名にしているわけでございます。
 それから、2番目の御指摘の点でございます。前回もたしかユーザー側の意見を取り入れる制度をという御指摘があったかと思いますが、この検証に関しましては、具体的な事件の進行状況も把握した上で、それも、まだ終わっていない進行中の事件でも、検証していくということになります。
 そういうことになりますと、場合によっては、裁判の独立に影響を与えるという恐れもございます。ですから、この検証は最高裁にやっていただかないと、大きな問題が生じる恐れがございますので、最高裁に委ねるということにしています。
 この検証に当たりまして、裁判所以外の法曹二者ございます、検察、弁護にも協力していただくことが必要となると考えられます。
 それから、検証を実効的なものにするというために、調査結果に基づく分析に当たりまして、他の法曹二者の意見を反映できるような工夫を検討する必要があると思われ、この工夫については今後最高裁判所の方にお願いしたいと考えております。

【佐藤座長】 関連して何か。

【小島顧問】 先週ダボスの会議に行ってきまして、日本の改革についてカルロス・ゴーンさんが演壇で話しまして、日本の改革を真面目に議論している、かなり進み出していると、日本は変わるだろうと、期待しているという話なんですが、改革に当たって、要するに、それが本当に具体的に実現できて機能するために何をしたらいいかと、改革の案とか、スローガンというのは問題解決の10%であって、8割、9割は、彼が言ったエグゼキューション、いかに実行するかと、その仕掛け、これが大事だということを盛んに強調していまして、ここでも、充実かつ迅速な裁判を実現するための仕掛けが、それぞれ当事者の努力を訴えるだけではだめで、何か制度的な具体的な知恵が加わった方がいいのではないか。 例えば、弁護士の方からよく聞くのは、裁判をやって、情報が彼らの強制捜査の力はないですから、証拠が十分集まらない。しかし、捜査当局は十分情報を持っているというような場合に、裁判が始まってようやくそれがちょろちょろ出るのであれば、時間がかかってしまうわけです。なるべく客観的な証拠があって、それをどう判断するかというのが裁判のそれぞれの立場からの役割でありますから、そういう情報の提供というか、開示、当事者の間、それは主に恐らく政府の仕事、捜査関係の当局の問題だと思いますが、大体がそういうものも加わると、初めから共有した証拠で、それぞれの立場からの判断を加えられる、それこそが裁判の在り方ではないかという感じがするんです。
 それからもう一点、総理が言われた司法ネットの件ですが、大変重要なことで、ちょっと今思いましたのは、IT戦略本部ではいろいろな議論をしていますが、司法について具体的なIT戦略にリンクさせていく、ITはこれからますますもって非常に重要なツールといいますか、武器になります。国民にそれが情報にアクセスできるための手段でありますし、そこを少し具体的にどうやってつなげるか、利用するかを制度的にも工夫していただきたいという感じがします。

【奥島顧問】 関連して。今、小島さんがおっしゃったことに関連させていただきますと、幾ら緊急医療体制を整えても無医村があってはどうにもならないみたいなことでありまして、現在、そういうところが1つ問題になっているということも、司法ネットの御提唱の中に入っているんだというふうに思います。今までも、弁護士会等が努力して、いろいろ無料相談に応じたり、出張相談に応じたりということがありましたし、また、ITを利用するとそういうことについてさらに容易に対応できるわけでありますけれども、それと同時に、行政の方でその辺りについて少しネットを拡充することについて、特に法務省なんでしょうか、そういうことについてご配慮くださり、さらに地方自治体等の協力を要請するというようなこともお考えになる必要があるのではないかというふうに思っております。

【佐藤座長】 ありがとうございます。事務局の方で何か言及すべきこと。

【事務局長】 小島顧問の最初の証拠の問題でございますが、これは刑事関係に関しましては、私ども現在検討会で検討しておりまして、来年には裁判員制度の改正をまたお願いをするわけですけれども、その中で、いろいろな手続について検討していくということになりますが、今回はございません。
 民事関係につきましては、後ほど法務省民事局の方から説明があるかと思いますけれども、その各論的なものは、民事局の方から出していただくということになっております。

【佐藤座長】 この議題についてもっと御意見を承りたいんですけれども、ほかの議題もあります。今の顧問の御意見を伺いながら思ったことは、充実、迅速化を目指すべきだが、その前提にある充実というのは、具体的にどういう内容、どういうものなのかということをもう少しわかりやすく示す必要があるのではないかということでした。これは各検討会でいろいろ御議論なさることでありますけれども、あるいはこの顧問会議として、2年以内ということを打ち出したわけですから、その内容というのはこういうことなんですという具体的なイメージみたいなものを何らかの形で示すということも考えていいのではないかと思いました。
 それから、検証の問題については、先ほど事務局からお話がありましたけれども、最高裁にやっていただくということでありますが、この司法制度改革は、5年、10年、堅実に進めていこうとしますともっとかかるものかもしれません。顧問会議は3年ということになっておりますけれども、その後、ユーザー、国民の立場から、どういうように具体的に改革が進んでいくかについて見守る仕組みといったものを更に考える必要があるのかもしれない、その中の1つとして、今のような問題もとらえられるのではないかというような感じを持ちました。具体的にどうだということではありませんけれども、顧問会議の後どうするかということとも関連していることを指摘しておきたいと思います。
 それから、司法ネットの話でありますが、先ほども顧問の方から言及されましたけれども、IT戦略の問題、どうやって密度の高い、質の高いリーガル・インフォメーションを国民が全国において共有できるのかという問題でもある。あるいは、先ほどもちょっと申しましたけれども、司法教育、これもいずれこの顧問会議で御議論いただきたい重要なテーマでありますけれども、司法教育とも関連しています。あるいは、先ほど奥島顧問の方からお触れになりましたが、弁護士会は法律相談センターとか、公設事務所増設に向けていろいろ努力なさっておられますけれども、国としてもなお取り組むべき課題というのがいろいろあるのではないかと思います。その辺の問題も今後顧問会議でも御議論いただくべき重要な事柄ではないかというように受けとめた次第でございます。
 具体的な進め方については、また、事務局とも相談しながら考えさせていただきたいと思います。今日のこの段階では、そんなところで一応締め括らせていただきたいと思いますが、よろしゅうございますか。抽象的なことしか言っていないとお叱りを受けるかもしれませんけれども、具体的になお考えていきたいと思っております。司法ネットあるいは迅速化の中身についてのビジュアル化という点につきましても、この顧問会議としてどういうようにしたらいいのか具体的に考えさせていただきたいと思っております。
 総理は、公務のため非常に御多忙でございますので、ここで退席されます。どうもありがとうございました。

(小泉内閣総理大臣退室)

【佐藤座長】 それでは、次の議題に移りたいと思います。
 平成15年通常国会提出予定法案についてでございますが、今年の通常国会に所要の法案を提出することを予定しておりますテーマにつきましては、前々回、それから前回の2回の顧問会議において、検討会の検討状況とか、法務省の法制審議会の検討状況について説明を受けたわけでございます。そして、意見の交換も若干行い、それを受けて立案作業が進められてきたわけですけれども、本日は、その点について事務局、それから法務省の方から説明を受けて、御協議をお願いしたいと思います。
 最初に、事務局の方から。

【事務局長】 それでは、資料3以降8までについて御説明させていただきたいと思います。若干時間を要しますけれども、我慢してお聞きをいただきたいと思います。何せ事項が大変多いものでございますので。
 まず、資料3、仲裁法案についてでございます。仲裁は、紛争の解決を仲裁人という第三者に委ね、その判断に服するという合意に基づいて解決する制度でございます。現在、法律はございますけれども、明治23年にできたもので、全く改正をしていないという大変古いものでございます。国際的な潮流にも合わなくなっておりますので、それに合わせて改正をするということでございます。
 この基本となるものは、国連の国際商取引法委員会が1985年に作成いたしました模範法がございますが、これに沿った内容とするということにしているわけでございます。この模範法は、国際商事仲裁のモデルですけれども、一般的に国内仲裁、あるいは商事仲裁以外にも適用ができる合理的なものですので、国内、それから国外、商事・非商事、この全部に共通したものを設けるということでございます。
 まず、主要な点ですけれども、国際的なスタンダードに合わせるという点では、全般的にもその模範法を参考にしているのですが、これ以外に若干の特徴を加味しています。
 第1が、外国の仲裁判断を日本において承認あるいは執行するというような場合の要件、あるいは仲裁判断を取り消すという手続がありますが、こういう取り消しの事由につきまして国際的な水準に合わせたということでございます。これによりまして、外国の企業にも安んじて日本の仲裁を利用してもらえるということになる、ということを期待しているわけでございます。東京仲裁が大いに活性化するということを望んでいるわけでございます。
 第2は、仲裁契約につきまして、国際的な標準に合わせまして、要式契約に改めます。要するに書面で合意しなければならないということでございますけれども、これにつきましても、現在国連におきまして、電子メール等で仲裁契約をした場合であっても、契約の効力を有するという方向で改正ができないかという議論が始まっているところでございますが、これを先取りいたしまして、電子メール等であっても、効力を有するということを定めているわけでございます。
 それから、この仲裁手続につきましては、仲裁廷の方では自ら行えないことについて、裁判所が援助をするという手続がございます。
 例えば、仲裁判断の取消しの裁判の手続、あるいは執行してもらう手続とかで、仲裁判断が公序良俗に違反していないかというような点も裁判所でチェックをするということになるわけでございますけれども、こういうような手続につきまして、現在は厳格な判決手続ということによっていますが、これを柔軟な決定手続に改めるというような改正をしております。
 また、特則を設けております。これは国内の問題ですが、消費者及び労働者の保護の観点から、暫定的な措置として将来の紛争に備えて締結した仲裁契約のうち、消費者と事業者間のものや、労働者と使用者の間のものについては、特別な規定を設けることとしているわけでございます。紛争発生前に契約を結ぶ場合には、消費者や労働者は仲裁契約の存在に気付かなかったり、あるいは気付いていても、仲裁契約の排除を求めることは難しいという事態もあるということに鑑みまして、消費者及び労働者を保護するための特則を設けることにしているわけでございます。
 次に、法科大学院の裁判官及び検察官その他の一般職の国家公務員の派遣制度でございます。資料4になります。
 昨年の秋の臨時国会におきまして成立をいたしました法科大学院の教育と司法試験等との連携等に関する法律、連携法と言っておりますけれども、その3条におきまして、法科大学院における教育の充実を図ることなどが国の責務と規定されているわけでございまして、この責務を果たすためには裁判官や検察官等を法科大学院の教員として安定的かつ継続的に派遣するということが必要となります。
 現行の制度では、国家公務員法の兼職制限規定等との関係から、現職の裁判官や検察官等を法科大学院の教員として安定的、継続的に派遣することは困難でございます。そこで、この教員派遣の制度を整備するための新たな立法措置が必要となるということでございます。この点につきましては、衆議院及び参議院の法務委員会におきます附帯決議でも、現職の裁判官、検察官を含む法曹が法科大学院の教員として参画できるような措置を講ずるようにという趣旨の附帯決議がされているわけでございます。
 それから、私どもの法曹養成検討会でもこのような措置が必要であるということで、事務局の方で立案を検討しています。
 まず、その最初の趣旨は省略をいたしまして、制度の概要でございますけれども、派遣される職員の勤務形態につきましては、いわゆるパートタイム型とフルタイム型、この2つを考えているわけでございます。それから、派遣する者の対象者でございますけれども、裁判官、検察官のみならず、一般の国家公務員の派遣も対象とするということで検討をしております。この一般の国家公務員を派遣をするというのは、御案内のとおり、法科大学院では基本法のほかいろいろな広い範囲について教育をするわけでございます。例えば、知的財産法、それから租税法、独禁法とかさまざまなものがございますけれども、こういうものにつきまして、国家公務員で豊富な経験と知識を持っている者がおりますので、そういうものを派遣するということでございます。
 それから、派遣は、法科大学院の要請に応じて派遣される者の同意を得て行われるということでございます。ともすると、どうもこちらの方から押しかけるのではないかという誤解があるようでございますが、これは要請されて行くということを御理解いただきたいと思います。
 それから、派遣される者は、その身分を保有したまま法科大学院の教員として業務を行います。また、法科大学院は、派遣された者の報酬等について相応の負担をしていただくということでございます。それと、派遣された者が給与その他の処遇面において、不利益を受けることのないようにするため、必要な措置を講ずるという点がポイントでございます。これは法科大学院からの要請に応じて教員を派遣することといたしますが、派遣された者に対する報酬等について、法科大学院に相応の負担をしていただくということとともに、法科大学院へ教員として派遣される者を十分に確保するため、派遣された者が処遇面において不利益を受けないようにするという趣旨でございます。 この法案に関しましては、本年の6月には法科大学院の設置認可申請手続が始まるという予定でございますので、その関係から、法科大学院側の準備期間等を考慮すれば、できるだけ早い時期に法律案を御承認いただくということが必要かと考えております。
 次に資料5でございます。裁判所法、民事訴訟法及び民事訴訟費用等に関する法律の一部改正でございます。
 これは3つポイントがございます。第1に簡易裁判所の管轄の拡大でございます。これは国民により身近な簡易裁判所の特質を十分に生かして裁判所へのアクセスを容易にするため、簡易裁判所が管轄する民事訴訟の訴訟物の目的の価額の上限を、現在の90万円から引き上げるということでございます。管轄の引き上げにつきましては、簡易な手続で迅速に紛争を解決するという簡易裁判所の特色を失わせず、その特色が生かされる形で機能の充実を図るということから、経済指標の変化に表れております経済社会や国民生活の変化に対応する観点で行うこととしておりまして、具体的な引き上げ額につきましては、現在鋭意与党調整を進めている段階でございますので、具体的な数字については申し訳ございませんが、御勘弁をいただきたいと思います。
 それから第2に、訴え提起の手数料の低額化につきましては、民事訴訟の利用者の費用負担を軽減するために、必要な範囲で訴えの提起の手数料を引き下げることを考えております。具体的には、訴訟の目的の価格が200 万円以上の訴訟について手数料の引き下げを検討しております。訴えの提起の手数料の総額の1割を超える規模の引き下げを見込んでいます。
 これにならいまして、民事調停の申立て等の手数料につきまして、同様の引き下げを行うということになります。これ以外に、過去に手数料が定められた後の経済的な変動を考慮いたしまして、手数料体系の簡素化と額が一定とされています手数料がありますが、その手数料についても改定を行いたいと考えております。
 第3に訴訟費用額確定手続を簡素化するために、交通費などの訴訟費用の償還を請求するに当たって、なるべく費用の疎明資料を提出する必要がないようにする方策を講ずるということでございます。
 次に資料6をごらんいただきまたいと思います。民事調停法・家事審判法の一部改正でございます。これは民事調停官・家事調停官制度、いわゆる非常勤裁判官制度を創設するというものでございます。
 具体的には、弁護士が非常勤の形態で民事調停事件、あるいは家事調停事件に関しまして、裁判官の権限と同等の権限をもって調停手続を主宰することができる、こういう制度を創設するものでございます。
 ここにいくつか要件が書いてありますが、5年以上の経験を要する弁護士から登用するということであります。それから、職務は、調停に関しては裁判官の権限と同等の権限をもって行う、任期は2年、再任することもできると、勤務形態は非常勤というような特徴をもっているわけでございます。
 そのほか、解任事由とかここに書れておりますけれども、こういうのも規定いたします。この民事調停官、家事調停官は独立してその職務を行うということにしておりまして、裁判官と同様に職権行使の独立性が保障されるということにしております。
 それ以外に、いろいろな権限がありますが、資料に記載されたとおりでございます。
 それから弁護士法の一部改正でございます。資料7になります。この中には、いくつか項目が入っておりますので、若干ここは長くなりますが、お許しをいただきたいと思います。5点ほど改正の項目がございます。
 まず資料7の3枚目です。
 弁護士となる資格付与の特例について、現行の法制局参事官などに加えまして、企業法務担当者や公務員、国会議員、いわゆる特任検事を対象にいたしまして、この特例を活用するということを考えているわけでございます。今回、特例を設ける基本的な考え方を申し上げたいと思います。
 弁護士の果たすべき役割が増大していく中で、社会の様々な分野における法律に関する実務経験を経て、高度の専門的能力を備えた方について、その経験や専門性を活用できる道を開いておくことが多様なバックグラウンドを有する法曹の確保という今般の司法制度改革の趣旨にかなうものでありまして、これによりまして、多様な法的サービスの提供を求める国民の要請に応えることになるという点がバックにございます。
 それから、今後の司法試験合格者の増大に伴いまして、司法試験合格後に、多様な経験を積んでから弁護士を志すという方も相当増えてまいりまして、将来展望も踏まえるというものでございます。
 弁護士の資格は、原則としては、司法試験合格後に、司法修習を終えた者に付与されるということになりますけれども、社会に生起するさまざまな事象につき、法的な解決方法を見出していくという弁護士としての実践能力は司法修習以外にも今回の拡充の対象としているような、実社会における法律に関する専門的、実務的経験を通じても習得し得るというふうに理解をしているわけでございます。
 このうち、企業法務担当者やあるいは公務員等の実務経験年数でございますけれども、私どもの検討会の議論を踏まえまして、既存の制度との比較における対象者の業務内容の多様性や、ただいま申し上げましたような特例を拡充する趣旨等を総合的に勘案したわけでございますけれども、7年ということにいたしております。
 また、研修につきましては、民事、刑事の実務の講義、演習等の集合研修と、弁護士事務所における個別修習、研修、これを組み合せたものといたしまして、その実施主体につきましては、日本弁護士連合会とすることを想定しているわけでございます。
 これらの実務経験や研修終了という要件につきましては、法務大臣が認定するということを予定しているわけでございます。
 第2は、元のところに戻っていただきますが、弁護士法上の公務就任制限の撤廃と弁護士の営利業務従事の制限の緩和でございます。
 弁護士の活動領域を拡大させるというために、ここに掲げましたように、公務就任の制限を撤廃をいたします。それから、弁護士が営利業務に従事する場合につきましては、現在許可制でございますけれども、これから届出制に移行するということでございます。また、弁護士会は、営利業務に従事する弁護士の名簿を作成いたしまして、これを公衆の縦覧に供するということを設ける予定でございます。
 第3でございますけれども、弁護士の報酬規定の会則記載事項からの削除でございます。これは具体的には弁護士の報酬規定を日弁連、弁護士会会則の必要的記載事項から削除をするということでございます。これも従来からほかの士族につきましても、このような措置がされてきており、その一環であります。
 第4に弁護士の綱紀・懲戒手続の整備でございます。これは資料7の4枚目の表を見ていただきたいと思います。これは大変恐縮でございますが、決してわかりやすいとは思えないのですけれども、それだけ手続が複雑になっております。左が現行法、右が改正法ということです。
 まず、綱紀委員会の委員構成を改正いたします。弁護士会の綱紀委員会は懲戒請求があった場合に、懲戒委員会の審査に付するか否かを調査する機関でございますけれども、現在は弁護士のみで構成されております。資料のAにございますように、一層適正な調査を確保するために、この委員会に弁護士以外の裁判官、検察官及び学識経験者である委員を加えるということにしております。
 次に日弁連の綱紀委員会の関係の改正でございます。これにつきましては、資料のB部分でございますが、日弁連に法律上の機関として、綱紀委員会を設置するということにしております。この委員会は、弁護士、裁判官、検察官、学識経験者である委員で組織をするということでございます。
 それから、日弁連の綱紀委員会の機能でございますけれども、まず、弁護士会の綱紀委員会、これは単位弁護士会でございますが、そこの綱紀委員会が懲戒委員会に審査を求めないことを相当とする決議をいたしまして、懲戒請求者が異議の申出をした場合等に異議の審査を行うことにするわけでございます。
 また、日弁連が、弁護士または弁護士法人に懲戒事由があると考えるときは、日弁連の求めによりまして事案の調査を行いまして、日弁連の懲戒委員会に審査を求めることが相当か否かの決議を行うということになるわけでございます。
 綱紀審査会の関係でございます。これがCに記載されております。この制度を新たに創設をするということでございます。この構成は、学識経験者11人で組織するということにしておりまして、弁護士、裁判官、検察官は委員となることができない。外部委員だけということでございます。
 これまでは、弁護士会の綱紀委員会が、懲戒委員会に審査を求めないことを相当とするという決議をしまして、懲戒請求者が異議の申出をしたところ、日弁連により、これを棄却されたという場合には、懲戒請求者はさらなる審査の申出をすることができなかったわけでございますが、今回、この改正によりまして、さらなる審査の申出をすることができるようにいたしまして、綱紀審査会が再審査をするということにしたわけでございます。
 綱紀審査会は、出席した委員の3分の2以上の多数で弁護士会の懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当とする決議を行うことができるということにしているわけでございます。
 この決議がされた場合には、日弁連から単位弁護士会に事案が送られまして、単位弁護士会は懲戒委員会に事案の審査を求めるということになるわけでございます。そのほか所要の措置を加えるということでございます。
 第5は、弁護士法72条の明確化という問題でございます。弁護士法72条は、弁護士以外の者の法律業務の取扱い等を禁止している条文でございます。このただし書に、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでないという例外を設けていますが、最近、様々な法律ができておりまして、この例外として、例えば、司法書士法等がございまして、この法律だけではなく、他の法律にも例外があるということを明らかにするということから、ここに改正を加えるということでございます。
 それから、外弁法について申し上げます。前回の会議におきまして私どもの国際化検討会における議論状況を御報告申し上げました。
 昨年11月の検討会におきまして、それまでの議論を積み重ねた結果と法制的な観点を踏まえて整理した案について更に議論が行われたところまで御報告をしたわけでございます。事務局といたしましては、国際化検討会の議論としては、資料8のように、外国法事務弁護士による弁護士の雇用を禁止する規定を削除するとともに、外国法事務弁護士と弁護士または弁護士法人との共同事業及び収益分配を禁止する規定を削除いたしまして、特定共同事業制度を廃止するとの方向をお示しいただいたものと受け止めているところでございます。
 平たく言えば、すべての規制を緩和をして、事後チェックで行うというシステムに変えるということでございます。
 事務局といたしましては、このような検討会の議論の方向性を十分に踏まえまして、立案ができるように努力したいと考えておりますが、現在、与党調整が行われているところでございまして、外国法事務弁護士による弁護士の雇用禁止の見直しについて、さまざまな議論が出されている段階でございまして、現在調整中ということでお許しを賜りたいと思います。
 この議論の方向性に沿って立案するといたしますと、注に書かれておりますけれども、外弁が権限逸脱行為を行うことの防止措置等が検討事項になろうと考えております。具体的には、弁護士を雇用する外国法事務弁護士に対する行為規制、あるいは弁護士等と共同事業を営む外国法事務弁護士に対する行為規制に関する規定というものを置くほか、届出や事務所の名称等についても規定を置くということを考えているわけでございます。事務局といたしまして、引き続き作業を続けるとともに、与党調整を進めてまいりたいと考えております。
 以上が法案の概要でございますが、3月の上旬には閣議決定をすることを目標に立案作業を進めてまいりたいと考えております。
 なお、資料5から8の4点につきましては、提出する法律案としてこれを1つにまとめたものとして提出をするということを考えております。
 大分長く説明がかかりまして恐縮でございますけれども、以上でございます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。それでは、引き続きまして法務省から提出を予定している民事司法制度改革関連法案について法務省から御説明をお願いします。

【房村法務省民事局長】 それでは、お手元の資料10に今国会に法務省が司法制度改革関連で提出を予定しております法案の概要が書いてあります。この資料に基づきまして御説明いたします。
 まず最初に、民事訴訟法、それから人事訴訟手続法関係でございます。これは、先ほど御説明がありました裁判の迅速化に関する法律の趣旨に基づきまして、裁判の審理を充実し、迅速な判決が得られるという具体的な制度を構築するものでございます。
 まず、民事訴訟法関係では、計画審理の推進でございますが、複雑な事件についてあらかじめ審理計画を策定いたしまして、その計画に従って審理を実行してできるだけ早く判決ができるようにする。また、当事者の準備として、先ほども証拠収集が重要だという御指摘がございましたが、この訴え提起前に証拠収集をする手段を拡充するということによりまして、当事者の事前準備を十分して、より円滑な審理が実現できるようにする。この2点が出されております。
 それから、事件の中には、医療過誤あるいは建築紛争など、専門的知見を要する事件が増えておりますが、こういう専門的知見を要する事件の審理に当たりまして、裁判所が、専門家の説明を聴くことができることとするために、専門委員制度を置きます。これによりまして、専門的事件について裁判所が適切、迅速に裁判ができるようにすることを目指しております。特に、専門的事件の中でも、専門性が高い特許等の事件につきましては、現在、東京地裁と大阪地裁に専門部を置きまして、専門的知識を有する裁判官あるいは調査官を配置しております。今回、この東京地裁と大阪地裁に、特許等の事件については、専属管轄にする。そして、更に控訴審につきましては、東京高等裁判所に専属化するということで、実質的な特許裁判所を実現する。これによりまして、特許権についての裁判の迅速化を図ることができると考えております。
 もう一つ、簡易裁判所の機能の充実でございますが、簡易裁判所における事件のうち、特に少額の30万円以下の事件につきましては、1日で審理を終えるという少額訴訟という手続が現在設けられております。非常に多く利用されておりますが、更にもう少し上の、額の多いものについても、この少額訴訟を利用したいという要望が強いことから、今回、上限額を30万円から60万円に引き上げるということとしております。
 それから次は人事訴訟関係でございます。人事訴訟と申しますのは、離婚であるとかあるいは認知、こういった人事に関する訴訟でございます。これにつきましては、今、例えば、離婚で申し上げますと、まず家庭裁判所に調停を起こして、そこで話をしていただく、話がどうしてもつかないと訴訟になりますが、この訴訟は家庭裁判所でなくて地方裁判所に起こさなければいけない。こうなっておりまして、当事者にとって別の裁判所に訴えを提起しなければならないということで、非常に負担となっておりますので、この人事訴訟を地方裁判所から家庭裁判所に移しまして、人事に関する事件は調停から裁判まですべて家庭裁判所で行うということにいたします。
 また、併せて、離婚訴訟の場合、例えば、子どもの親権者の指定とか養育費、あるいは財産分与の申立てというものがなされますが、これについて家庭裁判所で訴訟を行う場合に、家庭裁判所調査官の調査を、そういったものについて活用できるようにしております。
 また、人事訴訟について、一般国民の常識を反映させるという観点から、訴訟に当たりまして、参与員の意見を聴くという制度を新たにつくるということにしております。
 以上が民事訴訟及び人事訴訟関係でございます。
 次に、民事執行関係で、先ほどの総理のお話にもありましたように、まさに判決を終えた後、それを具体的に実現する過程が非常に重要でございますので、今回、この民事執行関係についても見直しを行いました。
 まず、債務者の履行促進のため、間接強制という言わば一種の罰金ですが、履行しない場合に、金銭の負担をかけるという制度がございます。これを直接強制や代替執行が可能である場合にも使えるということといたしまして、履行促進を図ることを考えています。
 それから、債務者の財産がどこにあるかわからないということになりますと、強制執行ができません。そこで、裁判所が債務者に財産開示を命ずるという財産開示の制度を新たに設けております。これによりまして、判決を取得した債権者がその適切な執行をできるようになるということを目指しております。
 占有屋による不動産執行妨害の対策、これは総理のお話にもありましたように、特に不動産関係で暴力団等が占有することによって執行妨害をするという事案が非常に多く発生しておりますので、この占有者の特定が困難である場合にも保全処分を発令できるようにする。これは暴力団等がやりますと、現実に占有している人がくるくる変わってしまって、なかなか特定ができないという非常に大きな問題があったんですが、これを思い切って特定できなくても発令できるという具合にしております。
 そのほか、執行妨害への刑罰を強化するといった対策を講ずることによりまして、不動産執行妨害を根絶したいと考えております。
 最後に、この養育費の権利実現を容易にするための措置、これは月何万円という養育費ですと、その都度強制執行の申立てをするというのは、当事者にとっても負担が余りにも大きいという御指摘がありましたので、養育費につきましては、将来分も含めて一括して、例えば給料を差し押える。そういたしますと、月給日が来ると、その養育費分を天引きして支払いを受けられることができる、こういうことによりまして、養育費の取り立てが非常に容易になるということであります。
 以上が、現在法務省で考えております民事訴訟、人事訴訟、民事執行関係の概要でございます。

【佐藤座長】 ありがとうございました。御意見、御質問いただきたいところですが、その前に、今日御出席いただいております検討会の座長から何か補足すべきことがあればお伺いしたいんですけれども、いかがでございましょうか。

【青山仲裁検討会座長】 仲裁法案は先ほど御説明がありましたように、11回の検討会を経て、ようやく法案の前の形になりましたので、国会でこれをあげて、決定させていただければありがたいというふうに思っています。以上でございます。

【佐藤座長】 ありがとうございました。中身は盛りだくさんで、どこから議論したらいいのかということもあるかもしれませんけれども、顧問の方々から御意見、御質問賜りたいと思います。どこからでもよろしゅうございますので。

【小島顧問】 1点は、総理も強調していらっしゃった占有屋の話ですが、これは極めて深刻です。これがあるために、金融機関の不良債権処理が進まないというのが多分にあります。外国のいわゆるハゲタカ・ファンドという、それも流動化しているものを買おうとしても、買ったものの裏にそういうものが入っているというので、結局ハゲタカも食べなくなっちゃったということで、これは極めて深刻です。そして、外国の論文とかいろいろな報道とかを見ていると、最近日本は安全な国というけれどもそうではないんだと、ヤクザ・キャピタリズム、ヤクザ資本主義だというようなことで、これは非常に重大な問題ですね。一刻も早く法律を通して施行していただきたいというところがあるので、これは痛感することです。
 もう一点は、法科大学院に関することで、国家公務員の派遣の問題ですが、まず大変結構なことです。ただ、フルタイムとパートタイムがありますが、フルタイムで派遣された場合、法科大学の方々、みんなまじめであり、時にまじめ過ぎるので、本省の哲学をいかにして徹底させるかということに教育の重点を置かれると、学問をしながら創造的にいろいろ考えるべきそういう法科大学院の趣旨とは違って、意図せざる結果として研修所の出張所みたいなことになる。研修所は学問ではないですね。要するに、技術を教えるところなので、決まった技術の制度、解釈、それを教えるところですから、画一的であり、新しい発想はむしろ困るわけで、それをどうやって防ぐかというのは、どこか何か知らないけれども、その心配ですね。そうすると、法科大学院全部が研修所になってしまうと、こちらで言う当事者からしますと、ちょっと奥島さんの意見も聞いてみたいですね。
 自信のある優良な実力のある法科大学院、大学であれば、自主性を維持するでしょうけれども、やはり当局の意向を聞かないとと、びくびくしている限界大学があるかもしれませんから、その場合が一番心配ですね。

【佐藤座長】 事務局、答えられますか。

【事務局長】 これは、法科大学院を設けるときに議論をしましたが、現在研修所でやっているような実務の、最初の端緒になるような基本的な内容、これについては法科大学院の方に持っていって、そこで教育をするという理念でできておりまして、そういうことから、そこを全くゼロにするわけにはいかないという性質のものでございます。ただ、研修所で教えるような内容だけかというとそうではありません。もう少し広い範囲について、教えをいただくということになりますので、そこは御理解を賜りたいと思います。

【小島顧問】 例えば、フルタイムの先生が、長時間どうやって関わるかと、一般の運営プラス教材のつくり方とかということで積極的に頑張りすぎますと、みんな教材が画一的な国定教材になってしまうということがないわけではないでしょうし、そこはちょっと知恵が必要だと思うんですが。

【事務局長】 私は大学のことはわかりませんが、大学がそんなに自主性がないというふうに私は思えないわけでございまして、実務家が1人2人入ったから、全部そっちへ雪崩込むということにはならないだろうと思いますし、もしそういう御懸念があるなら、呼んでいただかなくても結構でございます。先ほど申し上げましたように、押しかけるわけではなくて、要請があれば行くということでございますので、そこは適宜に判断をお願いしたいということです。

【佐藤座長】 占有屋のことについて何かもしあったら後であれですけれども。

【民事局長】 本当に御指摘のとおり非常に深刻な問題だと思っております。今回、そういう意味では保全処分とか、さまざまな点を改善いたしましたので、これを活用すれば相当改善はできるだろうと思っています。また、刑事罰の強化も併せて行っておりますので、こういうものを活用して、何とか円滑な執行が可能になるように、できるだけ早期に法律を整備したいと思います。

【小島顧問】 裁判所が関与した競売でも実際に買ってみたら裏にそういうものがあって使えないと、これは深刻な問題ですね。司法に対する信頼感も脅かされますからね。

【民事局長】 そういう意味では、執行官による現況調査なり、権利関係の調査、今回立入り等についても罰則を強化して調査が十分行えるように配慮しておりますので、そういったものを総合的にとりまとめたいと思います。

【小島顧問】 罰則も、そういう商売が割に合わないという形の厳しいものでないとインセンティブになって、ここだけ罰金払えばいくらでもできるという話になるので、これはやはり刑罰の程度を考えていただきたいと思いますね。

【佐藤座長】 ハゲタカ・ファンドも食べなくなったということですが。日本の社会というのは何か善意に成り立っているところがありますね。善意のみに成り立っていると本当に悪いやつほどよく眠るというか、そういうところがありますね。

【小島顧問】 ですから、完全に質のいいコミュニティー社会であったから、要するに、死刑よりも村八分になる方が重罪であった、そういうカルチャーがずっと生きているわけですね。しかし、村八分になっても儲かるならいいという人が出てきているわけですよ。これはいくらやっても割に合わないという刑罰を用意しないと、この世界は難しいですね。

【佐藤座長】 司法制度改革審議会でもそういう議論がありましたけれども、実効性というのが最も重要な課題の1つであるということですね。今回の法改正でそれが具体化するということですが、そこは是非。

【青山座長】 小島顧問が先程言われた法科大学院の自主性の問題で、事務局がもう答えられたことなんですが、私も大学人ですので、大学人から何も発言がないというのもどうかと思いまして、本当は、奥島先生が言っていただくのが一番いいと思いますが、私から申します。
 研修所の教育は、やはり実務のトレーニングをするところでございます。大学は大学院であろうと法科大学院はやはり理論教育の場でございますので、そこははっきり区別されると思います。
 法科大学院は、今、全国どこでもそうですが、どういうカリキュラムで2年間なり3年間なり学生が法曹実務家になれるための基礎的な教育はどうあるべきかということを真剣に検討しております。そして、たくさんのカリキュラムを用意しておりまして、そこに仮に2人とか3人とかいう実務の方に来ていただくということになりますから、それは全体のカリキュラム、体系の中にはめ込まれて、その役目をやっていただくということで、実務家として来た人が自分たちの好きなようにやるという仕組みにはならないということで、お考えいただきたいというふうに思っています。

【奥島顧問】 関連して申し上げますと、実は、私たちはこれができないと非常に困ると思っておりましたのは、御存知のように、大学の先生よりも、それははるかに裁判官とか検察官の方が給料が上でありますので、普通では来てもらえない、その辺りをどうするかというのが私たち大変頭の痛いところです。

【小島顧問】 どのぐらい差があるんですか。

【奥島顧問】 とにかく、私の同級生が、一緒に飲んでおりますと、お前かわいそうだなと言ってくれるぐらいの差がありますので、そういうことでなかなか来てもらえない。それをこういう形でもって手当てしていただけるということで、大変私ども安心いたしました。
 ただ、私もう一つ思うのは、これはこれで私ども大変満足しておりますけれども、今回の法科大学院については、みんな新たに一斉につくろうとしておりますけれども、相当格差があります。30人規模でも、何とかともかく名前だけても取ろうということでみんな必死になって設立しようとしているわけでありますけれども、ところが、やはりこういう形でもって、現役の優秀な裁判官とか検察官とかという人たちに来てほしいというふうに言ったときに、先ほど同意と言いましたけれども、当事者の同意でもって、行ってもいいよという同意をもらわなければいけないということになると、地方の法科大学院などはますますかわいそうだなという気もいたしまして。そこまで余計なことを考えなくてもいいのかなと思ったりもしていますけれども。ただ、格差が相当つくのではないかなということをちょっと私は懸念はしておりますが、基本的にはこれをつくってもらわないことには私ども非常に困るということであります。

【事務局長】 これは学校と当の裁判官、検察官と1対1で契約するというシステムではございません。各法科大学院からいろいろ要請が出てまいりますが、どの程度のランクの人とか、ランクというのは経験年数ですけれども、それからどういう科目を希望するのか、こういうものを一括して人事当局で受けまして、それに合わせた人材を派遣していくということでございますので、小さいところについて、直接交渉して、来てもらえるかという心配はないということです。

【奥島顧問】 地方でもないですか。

【事務局長】 これは工夫して、なるべく多くを出したいと、ただ、限度はございます。人には限りがございますので、いろいろな工夫をせざるを得ないということだろうと思います。

【佐藤座長】 この2月1日に、実務基本教育科目についてのシンポジウムが京大でございました。これは法科大学院協会設立準備会の後援ということで行われましたけれども、この派遣の問題について担当していらっしゃる法務省の太田さんがお見えになり、この点につきまして、公平性、それから行く以上は教員に徹してもらうということを非常に強調なさっておられました。
 小島顧問が御心配のところも、外から見るとわからないではないですけれども、大学は様々な学生がおるところです。先生にも実に様々な立場の人がおります。そういう中でそれぞれの大学の学風というものが作られているわけでして、今のような御懸念の点は・・・。私から言うのも何か変なことかもしれないのですけれども。

【大宅顧問】 今の話だと、このぐらいの人と言ったら来ちゃうわけ。面接とかないんですか。万一合わなかった場合はどうするんですか。

【事務局長】 条件がですか。

【大宅顧問】 返品は不可能でしょう。

【事務局長】 一定年数で、行くということになったら。

【大宅顧問】 だけれども、経験のあることと、教える技術というのは全く別だと思うんですよね。

【事務局長】 やはり出る方も、教育のやり方はわかりませんので、ロースクールの設立準備会等が設けられておりまして、そこで研修とか、そういう訓練を経ていくというようなことも考えなければならないということで、検討しております。
 それから、逆に、大学の先生方も、実務を少し知っていただくとかをしなければならないと思います。

【佐藤座長】 教えるということですが、大学の先生も、今までの法学部での教え方と違う、相当根本的に違う教え方をしてもらわなければならないと考えています。大学の先生の方にも心配なところがいろいろあるんですが、そこはやりながらいいものを作っていくということしか方法はないと思いますね。
 先ほど自己評価、第三者評価の話がありましたけれども、法科大学院については第三者評価が入ります。ですから、大学でどういう教育をやっているのかということが第三者的に監視されることになります。もう一つ強調したいんですけれども、今のところまだ大学院の教材が具体的に出ていませんから、一体何をどう教えるのかということが見えにくいところがあるんです。早晩具体的に法科大学院が使う教材が複数いろいろ出てくると思います。それを使いこなせるかどうかという問題もあるわけですけれども、そういうことが具体的に進んでいるということは私も聞いておりますので、理想を目指してやっていくしかしようがないのかなと思っていますけれども。

【大宅顧問】 一番最後の○、これは主語は何ですか。「派遣された者が給与その他の処遇面において不利益を受けることのないようにするため、必要な措置を講ずる」のはだれですか。

【事務局長】 政府です。法律で決めるということです。

【大宅顧問】 そういうことなんですか、これじゃわからない。それなら意味がわかるんですけれども、何で奥島先生が喜ぶのかなと思って。これだけ見たら、大学院が相応の負担と書いてあって、政府が負担するとは書いていない、字面だけ見たら。わからないようにするんだな、というふうに思っただけなんです。

【志村顧問】 もう既にたくさんの顧問の先生方が御発言になってまた付け加えるのは恐縮でございますけれども、私も大学関係者の一人でございますので、確かに、法科大学院のためにはこういう方々が実務に通暁した方として、教員として来てくださることは非常に有益であると思うんでございますけれども、今、ほかの方々があげられたような問題は大学側にとってはやはりちょっと懸念がある点ではないかと思うんでございます。
 例えば、2の4つ目の○の「派遣される者は、その身分を保有したまま」というのは、恐らくこの派遣はかなり期限を限って行われるんだと思いますから、その間は、例えば、フルタイムであれば、派遣先の大学の教員に徹すると先ほどおっしゃいましたが、そして、任期が終わったらまた元の身分に戻れるという意味なのか、それとも、それ以上の意味なのか。そして、それに関わって、ただいまの最後の処遇面において不利益、これは確かに実際上の問題としては考慮しなくてはならない問題ですけれども、特に財政難の私学などにとりましては、一般の教員と違うそういう処遇をした方が、フルタイムの教員として参加するということはかなり混乱を生じかねないことではないかと思います。
 そういったいろいろな問題をかなり軽減させることができる方策としては、このパートタイムとフルタイムというのはどのぐらいの比率になるのか、そして、フルタイムというのが望ましいというのは特定の理由があるのか、それもちょっとお伺いしたいんですが、パートタイムに徹すれば、今のような問題はかなりなくなるのではないかと思いますが、我々は法科大学院の構想は全くありませんので、第三者としてお伺いいたしたいと思います。

【事務局長】 最初の点ですが、任期は当然一定の任期で帰ってもらい、また別の人が行くということを考えておるわけでございまして、行ききりということ、相当長期間に行くというわけではございません。
 それから、フルタイムとパートタイムの比率でございますけれども、これは各法科大学院の要望にもよるわけでございますので、一律には定まらないということでございます。また、派遣する側の都合もございますので、そんなにたくさんフルタイムの者を言われても出せないという場合もございます。その場合にはパートでお願いするということもありますし、まだ、そこのところは具体的には現在申し上げられないということでございます。
 それから、フルタイムでなければならない理由ですが、これにつきましては、法科大学院の対応にもよるわけですけれども、割合小規模で、週1コマぐらい教えるというのであれば、それはパートタイムで足りるかもしれませんけれども、相当大きなところになりますと、クラスがいっぱいありますので、それを順次教えていくというようなことになりますと、行ききりでないと対応はできないわけでございますので、その対応によってもかなり変わってくるだろうと思います。まだその辺のところは現実に要請があってみないとちょっとわからないというところでございます。

【佐藤座長】 伊藤座長、法曹養成制度に関連して今の問題について何か。

【伊藤法曹制度検討会座長】 私は法曹制度の方でありまして、直接はあれですけれども、一般的なことでございましたら、今、顧問がおっしゃられましたパートタイム、確かに当該科目の講義をするというだけから言えば、それで十分かと思いますが、やはりそれだけではなくて、実務関連科目の教育全体についてカリキュラムを組んだり、あるいは教材をつくったりというふうに、言わば教育全体について責任を持って関与していただくということになりますと、どうしても人数はどの程度のものかは別といたしまして、フルタイムで来ていただく方が必要になるのではないかというふうに、これは法科大学院に多少関係しております者の一般論としてそのように考えている次第でございます。

【佐藤座長】 ありがとうございました。中教審で、法科大学院の設置基準というのをつくりまして、その中で、実務家を2割確保しなさいということになったんです。法科大学院の場合最小限12人の教員が必要だということなんですけれども、そうなりますと3人必要だということになる。そして、その3人の中の1人は常勤にしなさい、あとの2人は常勤でなくていいですよと。ただ、3人合わせて専任教員でなければならないと言っているんです。つまり、専任教員の中で1人は常勤にして、あと2人は常勤でなくていいが、6単位ぐらいは持っていただいて、カリキュラムの編成等についても発言していただく、そういう仕組みをつくっているんですね。その他に、純然たる非常勤というものがありえます。そういう辺りのかねあいで、常勤、あるいはパートタイムでというようなことが出てくると思うんです。
 このぐらいにしておきます。法科大学院も専門職大学院ですので、実務家が入っていただくべきだという前提になっています。

【大宅顧問】 その割合はずっと2割でいいんですか。というのは、これに興味があってうちの娘の同級生が随分若く日本で司法試験通って、女性ですけれども、今ハーバードのロースクールに行っていて、聞いてみたら、先生のほとんどが実務者だというんですね。だから、説得力があって面白いというんです。彼女はケンブリッジも行って、ケンブリッジはつまらなかったという話なんですけれども。いずれはそうなのか、それとも今の2割がずっと続くのか。

【佐藤座長】 ずっと2割の実務家でいいのかということですが、実務家とは何かという問題もあります。例えば、法科大学院を卒業して、そして実務経験を数年やるとか、司法試験通ってですね。そういう人たちの中では自分はやはり教えたいという人がこのロースクールの先生になることも考えられる。その人たちは法曹資格を持ち、ある種の実務経験を持っていますから、実務家と言えば実務家的な要素を持つわけです。ですから、実務家が実務家でないかは将来的にはかなり相対的なものかもしれません。
 ただ、さっき奥島顧問がおっしゃったように、やはり立ち上がりの問題があります。いろいろまだ不足のところで立ち上がらないといけない。国が全面的に応援するという姿勢がありませんと、法科大学院としても立ち上がりが難しいということがある。その辺の国の教育戦略というか、そういう観点から、この問題も御理解いただくとありがたいなと思っているところです。

【小島顧問】 国際化検討会のテーマを超えるのかもしれませんが、ちょっと日ごろ感じているのは、日本の六法、これは英語訳とか外国語訳というのはないでしょう、全部は。あるんですか。

【事務局長】 それは六法では、一部分はあるかと思います。

【小島顧問】 あるいは、一部の人はそれで飯の種にしている。

【事務局長】 民事訴訟法は最高裁判所から出されているものはたしかあると思いますけれども、公的なものはありません。

【小島顧問】 それは国際化のインフラとして非常に重要ではないかと思いますね。それは外の人が利用するだけではなくて、翻訳できない文書がいっぱいあると思うんですよ。最後まで何十行もマルがないとか。

【大宅顧問】 さっきのだってできないでしょう。

【小島顧問】 そうすると、翻訳のプロセスで、いろいろ法律の中身がすっきりするし、それは一般の人が利用しやすい、親しみやすい、活用しやすい法律になると思うんですね。あるいは外国の法律を日本語に訳す、基本的なインフラだと思うんですね。

【柏木国際化検討会座長】 これは国際化検討会の一番最初のときに論点整理のときに出ました問題で、やはり日本の法律の信頼できる英訳がないというのは1つの問題だろうと、国際化検討会でも多分これから検討することになるだろうと思うんです。といいますのは、今までは外国法事務弁護士の問題に集中して議論してきましたので、これからその他の国際化の問題、それから法整備支援の問題も議論します、その中の一環として議論することになるだろうと思います。

【佐藤座長】 ありがとうございます。この問題についてはなおいろいろ御議論の余地があるかと思いますけれども、時間の関係もございますので、裁判の迅速化に関する法律案も含めて、平成15年通常国会に提出予定の法案につきましては、本日の御議論を踏まえながら、本日説明を受けたような内容で立案をしていただくということで、そういうまとめでよろしゅうございましょうか。

(異議なし)

 時間がオーバーして申し訳ないんですが、もう一つございます。検討会の検討状況などにつきまして、事務局から説明いただきたいと思います。

【事務局長】 資料の9でございます。これをごらんいただきたいと思います。簡単にしたいと思います。
 まず、1つだけ御報告がございますが、これは検討会の議事録における発言者名の記載についてでございますが、その後、各検討会において協議をいただきまして、現在では、すべての検討会が発言者名を記載するという扱いになりました。御報告を申し上げます。
 検討会の検討状況でございますが、その中で申し上げたいのは、法曹制度検討会でございますけれども、ここで下級裁判所の裁判官の任命手続を見直すために、最高裁にその諮問を受け、裁判官として指名されるべき適任者を選考いたしまして、その結果を意見として述べる機関を設置することについて検討いたしました。
 具体的には、最高裁の一般規則制定諮問委員会における検討を受けまして検討を進めてまいりましたが、私どもの検討会におきましても、最高裁規則で最高裁に下級裁判所裁判官指名諮問委員会を設けることが適当ではないかという意見でございました。
 時間もございますので、とりあえずそれだけを御説明申し上げます。

【佐藤座長】 ただいまの諮問委員会の件につきまして、法曹制度検討会の伊藤座長、何かございましょうか。

【伊藤法曹制度検討会座長】 それでは、当検討会におきます検討状況を簡単に御説明申し上げます。
 この下級裁判所の裁判官の指名諮問委員会につきましては、司法制度改革推進計画におきまして、最高裁における検討状況を踏まえた上で検討するということとされておるわけでございます。そこで、法曹制度検討会では、この問題について検討を進めておりました最高裁の一般規則制定諮問委員会の検討状況について随時最高裁から御報告いただき、合計3回の検討会で検討を進めてまいりましたが、同委員会の検討結果について、特段の異論なく了承した次第でございます。
 その後、法曹制度検討会の検討結果を受けた一般規則制定諮問委員会が、規則要綱を最高裁に答申したと聞いております。以上でございます。

【佐藤座長】 ありがとうございました。この件につきまして、最高裁判所から説明をお願いしたいと思います。

【最高裁判所小池審議官】 ごく簡単に御説明申し上げます。今、御紹介がありましたように、最高裁では、下級裁判所裁判官指名諮問委員会を設置する検討を進めてまいりました。お手元の資料11というのがございますが、それの2枚目に色刷りの紙がございますので、それをごらんいただきたいと思います。審議会意見で、最高裁の任命手続を透明化し、充実するようにという御提言がございました。それを受けて、このイメージ図にあるような委員会をつくるということを考えたわけでございます。
 概要を申し上げますと、そこにありますように、中央の最高裁には、学識経験者6人、法曹5人から構成されます委員会を設置いたしまして、更に全国8か所、8高裁ブロックごとに学識経験者2人、法曹3人から構成される地域委員会を設置することにしております。
 最高裁の裁判官会議は、中央の委員会に対しまして、任官希望者全員の名簿や資料を示して、指名の適否について諮問する。そして、中央の委員会は審議の上で、最高裁に意見を述べるわけでございますが、的確な情報に基づいて実質的な審議をするために、地域委員会がその任官希望者に関する情報収集を行い、これを中央の委員会に提供するということで実質化を図っていくということでございます。
 今、御紹介がありましたように、この検討状況は随時法曹制度検討会に御説明申し上げまして、この内容について御了解をいただいているわけでございます。
 最高裁といたしましては、この規則要綱、イメージに沿いまして、早急に最高裁規則を制定いたしまして、できれば、本年6月ごろまでには委員会を発足させ、裁判官の任命手続の透明化と充実化を図りたいと考えております。
 もう一点だけ補足させていただきますと、この資料の4枚目、最後の紙でございますが、この検討につきましては、最高裁が内部だけで検討したものではございませんで、この一般規則制定諮問委員会というところで検討いたしました。ここにありますように、非常にオープンな形で法曹以外の数多くの委員に参加していただきまして、また、議事の公開を含め議事に関する情報も広くオープンにしたわけでございます。非常に活発な御議論をいただきまして、充実した内容の答申をいただけたと考えているわけでございます。
 以上でございます。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。司法制度改革審議会の意見書の趣旨を踏まえて、これは非常に重要な課題の1つであるんですけれども、このようにおまとめいただいたということでございます。時間も過ぎてしまいましたけれども、何か御意見、御質問がございませんでしょうか。
 本当はもっと御議論いただきたいんですけれども、10分オーバーしてしまいました。申し訳ないと思っておりますが、よろしゅうございますか。
 どうもありがとうございます。本日予定しておりましたのは以上のとおりでありますが、閉会に当たり、副本部長の方から何かお言葉を。

【法務大臣】 大変先生方お忙しいところ、今日は大変盛りだくさんな内容でありがとうございました。
 お話を伺えば伺うほど今度の国会は大変だなというので、押しつぶされそうな気分でございますが、先生方の御熱意が少しでも実現するように、精一杯頑張りたいと思います。どうもありがとうございました。

【佐藤座長】 どうもありがとうございました。
 それでは最後に事務局から何か。

【事務局長】 次回以降、また別途御案内申し上げます。今日はどうもありがとうございました。

【佐藤座長】 顧問の先生方、何か御注意いただくべき点ございますか。よろしゅうございますか。それでは、本日はどうもありがとうございました。

(以上)