司法制度改革推進本部顧問と検討会座長との懇談会 議事概要
1 日 時 平成14年6月19日(水) 16:00〜18:00
2 場 所 永田町合同庁舎第1共用会議室
- 3 出席者
-
(顧問)
佐藤幸治座長,奥島孝康顧問,小島明顧問
(推進本部)
森山眞弓副本部長(法務大臣)
(検討会)
山川隆一委員(労働検討会),長谷部由起子委員(司法アクセス検討会),
青山善充座長(ADR検討会,仲裁検討会),塩野宏座長(行政訴訟検討会),
井上正仁座長(裁判員制度・刑事検討会,公的弁護制度検討会),
久保利英明委員(国際化検討会),田中成明座長(法曹養成検討会),
伊藤眞座長(法曹制度検討会)
(推進本部事務局)
山崎潮事務局長 他
- 4 議事次第
-
(1) 開 会
(2) 検討会の検討状況等について
(3) 司法制度改革について
(4) 閉 会
- 5 配布資料
-
(1) 顧問会議名簿
(2) 検討会名簿
(3) 検討会の検討状況
- 6 会議経過
-
(1) 開会の後,各検討会の代表から,検討会の検討状況について説明があった。
(2) 出席者から概要以下のとおり発言があった。
- 法律の専門家ではない国民の,司法制度改革に対するニーズが非常に強まっている。グローバルな大競争時代にあっては,迅速性及び透明性を備え,わかりやすく,アクセスしやすい司法制度の構築は,ビジネスの将来を左右する死活問題であり,日本経済の活性化にとって不可欠である。我が国の将来に影響する種々の改革の中でも,司法改革は根本となるものであり,21世紀の日本のあるべき姿を決めているという視点で議論を進めて欲しい。
- 検討会での議論は,法律の専門家ではない国民にもわかりやすくなければならないが,司法制度改革の議論の内容が外部から良く見えないという指摘がある。低調な一般の関心を喚起するためにも,議論の結果だけでなく,議論の過程も分かりやすいものとなるよう工夫してもらいたい。
- 既存の制度との整合性も重要だが,縦割の検討の中で既存の制度にばかり目を奪われて,新しい制度の全体像を見失ってはならない。そのためには,各検討会同士が横の連絡を密にして自由に議論することも必要であり,絶えず意見交換できるような経路を制度的に設けてもらいたい。
- 各検討会の議論が縦割の陥穽にはまっているのではないかと懸念している。各検討会は,発足後はそれぞれの議論に力を傾注してきたが,その一方で,座長同士が横の連絡を取るための話し合いを行う余裕がなかった。しかし,意見書が「一体的」な検討を求めていることを踏まえれば,各検討会で情報を共有化することも必要であろう。また,法律の専門家でない委員は少数だが,彼らの声をどう汲み上げていくのか,検討会の運営方法を定期的に考えていく必要があるだろう。
- 多くの日本人が米国のロースクールに留学しているが,外国人は日本のロースクールに入学できるのか気懸かりである。現行制度下では,外国人学生が日本で法律を学ぶことは困難であるが,ロースクールはもっと開かれたものとして,日本語を日本人並に完璧に操ることができない者にも入学を認めるべきだろう。アジア諸国,又は旧社会主義国からの留学生が,自国の司法制度の基盤整備のため,あるいは日本国内で活躍できるように,彼らを受け入れていく必要がある。その結果として,日本のロースクールで学ぶ学生の国際的な視野が広がることも期待できるので,そうした環境を是非とも整備して欲しい。試験ばかり難しくして,現状と変わらない法曹養成制度となっては問題だ。
- 既存の制度との整合性が常に問題となるが,現行制度の検討を詳細に行えば行うほど,既存の制度に目が奪われ,その結果として,議論が矮小化され,国内的には精緻であっても国際的には異常な制度が出来上がるおそれがある。全体のスキームを考えるときに,長期的なヴィジョンで,国際的にも通用するものとしなければならない。
- 一国の法律を前提として教育をする場合,言葉の問題は軽視できない。米国のロースクールでも,通常の課程に留学する者は稀である。ほとんどの者は修士課程に留学しており,そこでも入学時には相当高度な英語力が要求される。日本に留学生を受け入れる際も,正規のコースとするのか,それとも別のコースを設けるのか,検討の余地がある。一方,社会がグローバル化する中で,法律学も,外国と共通の土台,及び内容が増加していくことから,ロースクールでは日本人による日本語の授業にこだわる必要はなく,外国語による授業が増えていくだろう。ただし,この点も,全国統一基準を作るのではなく,各ロースクールが競争して個性を発揮すればよいのではないか。
- 是非とも,各ロースクールが個性を発揮できる制度にしていただきたい。全国同じ基準で固めてしまうことは問題だ。
- その際,日本人の横並び意識が障害となる可能性があるのではないか。
- 基準の設定は最小限のものとして,できるだけ自由な設計が可能となる制度にしたいと考えているが,一たび基準を設定すると,「この基準に従いさえすれば良い」と受け取られてしまう。自由で多様な制度設計ができるようインセンティヴを設けるなどの支援態勢を整備することも必要ではないか。
- これまでの我が国は,科学技術立国として,技術系の人材の養成を重視する一方で,社会運営のソフトの面をなおざりにしてきたのではないか。今後,文系の人材の位置づけをどうするのか,今後の教育計画の中で考えていく必要がある。法科大学院構想が,国家戦略として文系の人材育成を重視するきっかけとなって欲しい。
- 例えば,ビジネスの世界で英語に長けた弁護士が必要ということになれば,そうした人材を必要とする分野からの寄附講座を設けることを認められないのか。人材の需要が有る分野に声をかけて,寄附講座のスポンサーになってもらい,卒業後はその分野で働いてもらう。知的財産の分野でも人材が必要と聞いており,同様の試みができるのではないか。
- 税制上の問題があるが,優遇措置を設けてもらえれば,ロースクールに米国並に多数の寄附講座が設置されるのではないか。
- そのような点は,是非とも提言としてまとめていただきたい。また,一般に弁護士が少ないことが問
題と言われているが,現代社会ではどの地方にも数人以上の弁護士がいることが望ましいだろう。弁護士過疎を解消するため,ロースクールの奨学金の議論との絡みで,例えば自治医大のような制度を設けることはできないのか。
- 医師の養成に関しては,一府県に一医大というキャンペーンの結果として各地に医大が設立された。医師と比較して,法律家が必要というイメージが浸透していないのではないか。法曹のサービスに対するニーズを実感してもらう必要がある。
- 国民の意識は確実に変化している。例えば,弁護士会が倉吉市に公設事務所を設置する際,鳥取県知事が資金を援助すると申し出てきた。これは,今までは考えられなかったことであり,住民サービスとして弁護士が必要という認識が出てきた現れだろう。他にも,北九州市では,市長が音頭をとり,市立大学としてロースクールを設立しようという動きがある。国よりも地方自治体の方が理解がある面もあるので,ロースクールは,国立大学にこだわらずに,県立大学や市立大学と協力することも有効かもしれない。
- ニューヨークでの大和銀行の巨額損失事件の際には,犯行した個人の責任が問われただけでなく,大和銀行自体の米国国内での営業が禁じられたほか,すべての邦銀の海外での資金調達にも困難が生じた。これは,金融当局の裁量の余地が余りにも大きい我が国の制度が,米国の法制度と互換性を失ったことの現れである。他方,近年は外国人犯罪が増加しているが,我が国での犯罪に対する刑罰が外国と比べて寛大であることがその一因であり,結果として,外国の組織犯罪に徹底的に狙われている。現行の刑罰体系の下では,犯罪を犯すことが採算に合うために,刑罰というよりもむしろ犯罪を誘うインセンティヴとなっている。刑罰のあり方を抜本的に見直す必要があると考えるが,専門家にこれを指摘すると,刑罰の体系上難しいと言われてしまう。
- 日本に限らず,伝統的な刑罰体系は,個人の責任を中心に組み立てられており,組織,団体,あるいは法人に対して,刑事の世界でどのように責任を問うのかということも,個人責任の延長として考えられてきた。したがって,強力な刑罰を科すことができず,社会の現状に合わなくなってきた面がある。そうした問題意識は学者及び実務家の間でも共有されている。しかし,これを改正しようとすれば,そのハードルは非常に高いものになると思われる。
- それぞれの検討会における検討が,非常に精密である一方でお互いの連絡に欠けているのではないかと懸念していた。複数の検討会にまたがる検討事項もあるのだから,最終的には横の連絡が非常に重要である。今後もこのような懇談会,あるいは座長同士の話し合いを開催していただきたい。
(3) 閉 会
以 上
文責:司法制度改革推進本部事務局 注)速報のため、事後修正の可能性あり
|