司法制度改革審議会

司法制度改革審議会 第4回議事概要


1 日時 平成11年10月 5日(火) 13:00 ~ 17:00

2 場所 司法制度改革審議会審議室

3 出席者

(委員、敬称略)
佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、井上正仁、北村敬子、髙木剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本勝、吉岡初子
(説明者) 佐々木毅東京大学法学政治学研究科長・法学部長、松尾龍彦氏(司法評論家・元NHK解説委員)
(事務局)
樋渡利秋事務局長

4 議題
①佐々木氏からの説明
「21世紀型ガバナンスと法曹の役割」
②松尾氏からの説明
「動脈硬化の危機・停滞許されぬ司法改革」
③平成12・13年度の審議会開催日程の検討
④21世紀の我が国社会において司法が果たすべき役割等についての意見交換

5 会議経過

① 佐々木氏から「21世紀型ガバナンスと法曹の役割」についての説明が行われた。(別紙1参照)
 佐々木氏の説明に関して、以下のような質疑応答があった。

○ 権力との関係で、法曹における自治についてどのように考えるか。
(回答:自治は権力との関係で論じられるものであり、プロフェッションにはある程度の独立性と自治が必要とされるが、その自治が社会全体としてどう評価されているかという点も考えなければならない。)

○ 21世紀型ガバナンスにおいては、治安秩序確保をどう考えるべきか。
(回答:国際化と伝統的社会の脆弱化の二点がポイントである。21世紀型ガバナンスでは国家の役割が弱くなっていくと言われており、小さな政府が主張されているが、だからといって弱い政府とは限らない。小さくするのと弱体化するのとは別であって、国家としては危機管理型の機能が必要なところもあり、どの部分を強化するかの仕分けが重要である。政府を小さくして強くするということではないか。)

○ 民主主義のありようが、自己主張がきちんとできる米国のそれと異なる日本の現状において、早い時点で、米国のように、法曹が民主政治を秩序付ける存在として機能するようになるのか。
(回答:確かに今までは「参加」の過剰と過少があり、このような国民の「参加」のあり方等を見ると、簡単にいくというのは難しいし、時間がかかるかもしれない。)

○ 日本の法曹が、米国のように立法、行政等広い分野で活躍するlegitimacy(正統性)、市民的な支持を持ちえていく条件は何か。
(回答:米国においては政治哲学が不毛で、手続による解決が重視されたので、法曹が活躍する場が多くなった。日本においても根源的なイデオロギー対立がなくなり、ポスト・アイデオロジカルな時代が始まっているのではないか。加えて日本においては相対的に法曹に対する信頼感が高いと思う。)

② 松尾氏から「動脈硬化の危機・停滞許されぬ司法改革」についての説明が行われた。(別紙2参照)
松尾氏の説明に関して、以下のような質疑応答があった。

○ 国民の意識の高まりが必要ということだが、それを待っていてはなかなか改革はできないのではないか。 まず制度を変えるのが先なのではないか。
(回答:改革は司法サイドのみで解決できる問題ではない。国民の意識改革は重要であり、司法教育を中等教育の段階から行うべきである。)

○ 法曹人口はどの程度増加すべきと考えるか。
(回答:司法試験合格者数を1,500~2,000人にする必要がある。)

○ 法曹一元を実現するためのネックはどこにあるのか。
(回答:実現するためには何を議論し検証しなければならないのか、市民の認識がどうなのかをきちんと把握する必要がある。)

○ 司法試験を資格試験として純化するというのはどういう趣旨か。
(回答:広く法律家としての資格を得る試験にして、法曹を目指す人に限らず、幅広い分野で活躍するもっと多くの人が合格できるようなものにしたいということである。)

③ 前回の曜日による開催日の固定という討論を踏まえて、平成12年度以降の開催日を以下のような日程とすることが合意された。ただし、審議状況に応じて、これらの開催予定日を変更、もしくは追加することがあることも合意された。

(平成12年)
4月:11日(火)、25日(火) 予備日として17日(月)
5月:16日(火)、30日(火) 予備日として15日(月)
6月: 2日(金)、13日(火)、27日(火) 予備日として19日(月)
7月: 7日(金)、11日(火)、25日(火) 予備日として17日(月)
8月: 4日(金)、 8日(火)、29日(火) 予備日として21日(月)
9月: 1日(金)、12日(火)、26日(火) 予備日として18日(月)
10月: 6日(金)、24日(火)、31日(火) 予備日として16日(月)
11月:14日(火)、28日(火) 予備日として20日(月)
12月: 1日(金)、12日(火)、26日(火) 予備日として18日(月)

(平成13年)
1月: 9日(火)、23日(火)、30日(火) 
2月: 2日(金)、13日(火)、27日(火) 予備日として19日(月)
3月: 2日(金)、13日(火)、27日(火) 予備日として19日(月)
4月: 6日(金)、10日(火)、24日(火) 予備日として16日(月)
5月: 8日(火)、22日(火)、29日(火) 予備日として21日(月)
6月: 1日(金)、12日(火)、26日(火) 予備日として18日(月)
7月: 6日(金)、10日(火)、24日(火) 予備日として16日(月)

④ 21世紀のわが国社会において司法が果たすべき役割等についての意見交換に移り、まず、中坊委員から今後の議論の参考にしたいという趣旨で、同委員作成のペーパー(別紙3)に沿って、意見表明があった。

 その後、次のような意見が出された。
○ 開かれた司法と本来的な司法機能(適正・公平・迅速)の間のバランスを取ることが重要。
○ 21世紀は社会構造やニーズが多様化するので、解決の仕方も多様なものにする必要がある。
○ 社会の変化は激しく、単発の改革ではすぐ対応できなくなる。不断の自己改革のしくみを制度化するため、常設のチェック機構を創設するのも一つの考えではないか。
○ 分権型で町に根ざした裁判所との指摘だが、それで全国的均質性がうまくはかれるのか。
○ ペーパーの中の、現在の裁判所は官僚的色彩が強いという指摘については認識が異なり、他からの掣肘を受けずに仕事をしたい人が裁判官になっていると思う。
○ 審議会で議論しているテーマについて、国民に広く周知した上で、様々な意見を汲み取っていくことが重要。
○ 司法改革に関する議論は大都市の現状を踏まえたものが多いが、地方において司法を国民に近づける視点も重要。
○ 改革案を示すだけでなく、具体的な改革プロセスをどうするかまで考える必要がある。
○ 法曹三者それぞれの自己反省に立った議論が必要。
○ 既存のシステムを温存するという前提で議論することは許されない。タブーなく議論したい。
○ 最終答申の中に、改革が着実に実現できるような方策を盛り込むべきである。
○ 法曹人口について、総数のみを議論するのは意味がないのではないか。

 なお、審議のための論点整理について、前回提示した以下のような方針について、改めて確認された。
○ 年内に論点整理を行い公表する。そのために委員各自が、現状認識や改革の方向性、議論すべき論点等を記したペーパーを、11月中旬を目途に提出する。
 なお、このペーパーは、あくまで作成時の意見であり、その後の各委員の議論をしばるものではない。

以 上
(文責 司法制度改革審議会事務局)
- 速報のため、事後修正の可能性あり -


(別紙1)

21世紀型ガバナンスと法曹の役割

東京大学大学院法学政治学研究科教授
東 京 大 学 法 学 部 教 授

佐々木 毅

はじめに

1,20世紀型統治システム
(1)新しい政治概念の登場
(2)国家の時代と官僚制システムの確立

2,民主政論の中の法曹
(1)三権分立論と司法部の重要性
(2)「機能的な貴族政」の担い手としての法曹

3,21世紀型ガバナンスと「法の支配」
(1)日本における国家機能の見直しと再整理
(2)丸抱え・もたれ合いシステムから機能分担型システムへ
(3)危機管理型と日常型とへの分岐
(4)日常型システムにおける多元的主体の登場(「官治」から「自治」へ、ポスト・コンセンサス時代の到来)
(5)「参加」とそのルール化

4,人材強化を伴う司法改革の意義 ~日本の民主政治のために~

(別紙2)

「動脈硬化の危機・停滞許されぬ司法改革」

松尾 龍彦

第1:司法の現状と司法改革の認識

第2:司法改革の方向性 ~「現実論としての司法改革」
「市民のための司法」が司法改革の原点  利用する側の視点で改革すべき利用する側は「具体的に何を求め、急がれる改革は何か」の視点

(1) 司法容量の拡大強化
法曹人口の大幅増員  余裕持ちたい裁判官  裁判所施設の拡充
司法予算の増額  裁判所予算は国家予算の0.39%  国の政策意思の問題

(2) 法律扶助制度の拡充
欧米先進国に比較し、低レベルの現行制度  立法化と国庫補助増額の見通し
被疑者弁護制度は条件付で検討の余地あり

(3) 司法へのアクセス確保
弁護士過疎の解消  「弁護士はどこに」  広告規制の緩和
弁護士・司法書士・税理士等の「法律総合事務所」構想
弁護士法72条の緩和  弾力的運用  英国のCAB制度を参考に

(4) 裁判外の紛争処理(ADR)の拡充整備
調停、仲裁による非訟事件の早期、廉価な解決  市民のニーズ高まる
法的解決の選択  訴訟とADR  家庭裁判所の改革

(5) 法曹養成制度の改革
法曹人口増と資格試験としての司法試験  法学教育のロースクール構想

第3:司法改革の方向性 ~「理想論としての司法改革」
(1) 法曹一元制度の検討
キャリアシステムの見直し  社会経験、市民感覚のある裁判官
法曹一元は「理想的な、あるべき司法制度」として基本的に理解
制度実現は可能か、簡単ではない  基盤となる諸条件は整備されているか
市民の理解と意識はどうか  多角的論議、具体的な検証、意識調査の必要性

法曹一元の実現前に「弁護士任官制度」の拡充に期待
日弁連の「研修弁護士」構想に魅力
中堅裁判官の部外研修の効果  裁判官の意見表明と市民との交流

(2) 陪審制、参審制の検討
市民の司法参加の重要性  市民主体の司法の抜本改革、将来の理想像
実現に向けての諸条件整備の検証  法曹三者の意識改革
市民の理解と協力、意識調査の必要性
民事調停、家事調停、参与員、司法委員等の役割は事実上の参審制

法曹一元制度や陪審、参審制は司法改革の根源であり、理想である
多角的論議と総合的検証、市民意識が重要

最後に、司法改革の理念を掲げ、大胆な発想で改革の指針を望むこの改革の機会を逃せば「日本の司法改革は絶望」と言いたい。

以 上


(別紙3)

1999年10月05日

第4回司法改革審議会へのメモ

中 坊 公 平

第1 司法改革の基本的視点 ―21世紀社会を展望して―

1 21世紀の日本社会 ― 自立と参加を基調とする分権型社会

 日本は、21世紀にむけて、官僚主導の中央集権型社会から市民主体の分権型社会へと大転換が求められている。
 分権型の社会は、自立した市民が、その創意と責任のもとに、主体的に地域社会をはじめとするコミュニテイを担い、法の支配を貫徹しつつその個性的で豊かな発展を目指すものである。

2 21世紀の日本の司法 ― 市民の司法
 21世紀に向け、わが国の司法の根本的な変革の方向を一言でいえば「官の司法」から「民の司法」への転換である。
 現在の裁判所は中央集権型の官僚組織となっており、地域社会に基盤を持っていない。官僚組織の中で育てられ、官僚組織に身を置く国家公務員たる裁判官が数年ごとに各地域を移動して裁判を行う仕組みである。それは、裁判官が、現実のユーザーたる地域住民に顔を向けてその地域社会のために裁判をするには不似合いな制度である。現に裁判は利用者である市民にとって縁遠く利用しにくいものになっている。
 日本社会の分権型への転換に対応して、司法も地域指向型にその構造が変革されなければならない。
 裁判所は地域社会にしっかりと根をおろし、地域社会もこれを支える関係が形成される必要がある。裁判官の官僚性と裁判官に対する官僚的な統制の余地はできる限りなくさなければならない。裁判官が地域社会から遊離し、官僚組織中央の意向と自らの昇進・昇給に気を使うようでは、裁判の独立は覚束ず、住民の権利の保障も危うくなる。
 市民は、わが町の、わが裁判所を作る権限と責任がある。地域志向型の裁判所は与えられるものではなく、市民が主体的に作るものである。市民は、その社会の中でわが裁判官を育て・選び・見守り・支えなければならない。法曹一元制度や陪審・参審制度の思想もここにある。

第2 審議項目の骨格についての提案

 「司法の担い手に関する改革」と「司法の利用・運営に関する改革」の二つに分けて考える。ただし、アクセスを容易にし権利実現の方策を充実させることが法曹人口をさらに必要とさせるなど、両者は密接に関係している。

1 司法の担い手に関する改革
(1) 法曹養成

(2) 法曹人口

(3) 弁護士のあり方の改革(弁護士の市民社会への責任と主体的改革)

① 弁護士人口の増加
② 弁護士のアクセス障碍の解消
 弁護士過疎解消(公設事務所・法律相談所の全国展開)、法律事務所の法人化、共同化および総合事務所化、弁護士報酬制度等の改革。
 広告規制の見直し。広告内容の適正性を確保する施策と、弁護士情報(評価制度等の検討を含む)の公開(広報)を推進する。
③ 弁護士の業務範囲の拡大(弁護士法30条改正を含む)
④ 公益への奉仕義務の強化
 イ) 公益的職務(裁判官候補への指名を含む)就任要請の尊重義務
 ロ) 当番弁護士、法律相談、法律扶助やプロ・ボノに従事する義務
⑤ 弁護士倫理の確立
⑥ 関連資格者との協働と調整

(4) 裁判官制度の改革
① 法曹一元制度
② 陪・参審制度
③ 裁判官の身分保障と市民的自由の確保
④ 裁判所の人的・物的設備の充実

(5) 検察官制度の改革
① 検察のあり方について
② 起訴独占・起訴便宜主義のあり方
③ 新しい犯罪等への対応

2. 司法の利用・運営に関する制度改革

(1) 法律扶助の抜本的拡充

(2) 刑事被疑者弁護制度等の実現

(3) 公設事務所と法律相談所の設置策

(4) 行政に対する司法のチェック機能の充実

(5) 代替的紛争解決制度(A.D.R.)の構築

(6) 市民の権利を実現するための法律改正・制定

(7) 司法予算の増額

第3 実現へのタイムスケジュール

1.法律の改正に関しては、本審議会終了後2年以内に成立を目指す。

2.予算措置および法曹人口の増加を必要とする課題に関しては、2~3年度毎の制度の達成目標を設定して、2010年までにすべての制度の実現をはかる。

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