【佐藤会長】ただいまより「司法制度改革審議会」第11回会合を開催いたします。
今回から、またこの審議室で審議を行うということになります。なお、報道関係者の傍聴につきましては、機器の準備が整いましたので、本日から実施するということになりました。本日は隣の部屋で行われておりますけれども、次回からは10階の別室で傍聴をしていただくということにしております。
本日の議事としましては、竹下会長代理にレポーター役をお願いいたしまして、「国民がより利用しやすい司法の実現」、それから「国民の期待に応える民事司法の在り方」につきまして、現行の制度の現状や問題点を中心に1時間ほど御説明いただき、休憩をはさんで1時間半ほどとっておりますが、その御説明を基に意見の交換を行いたいと考えております。
早速、竹下会長代理にお話しいただきたいと思いますが、短期間に大変御無理を申しまして失礼いたしました。精力的に御準備いただきまして、また事務局の方もそれに応えて資料を整えていただきまして、本当にありがとうございました。
それでは、竹下会長代理お願いいたします。
【竹下会長代理】前回お引き受けしたとおり、今、会長からも御紹介がございましたが、年末にこの審議会でまとめました論点整理の別紙、論点項目に沿って申しますと、制度的基盤の中の「(1)国民がより利用しやすい司法の実現」の中で、次回に中坊委員が御報告をなさる予定の「弁護士の在り方」を除く残りの項目、それと「(2)国民の期待に応える民事司法の在り方」に掲げられている項目を、一つのブロックといたしまして、国民のための司法機能の拡充、あるいは国民がより利用しやすい民事司法の実現という観点から、各現行制度とそれに関して検討するべき問題点を、場合によりまして諸外国の対応する制度を参照しながら、報告をさせていただきます。
その際、取り上げる順序といたしましては、むしろ「(2)国民の期待に応える民事司法の在り方」の項に挙げられている方の項目を軸にして、その中に他の項目を適宜織り込んでいくということにいたしたいと思います。
また、時間の関係上、本日の報告では焦点を「裁判所へのアクセスの拡充」と「民事裁判の充実・迅速化」、3番目に「専門的知見を要する事件への対応」、さらに4番目といたしまして「裁判手続外の紛争解決手段の在り方」、この4点を中心に、ほかの項目は現状と問題の所在に触れるにとどめるような形で、話をさせていただきたいと思っております。
そこでまず、「裁判所へのアクセスの拡充」でございますが、これにつきましてはお手元のレジュメにございますように、5点ばかりのことが問題になるかと思います。
第1は、訴訟費用の負担の軽減。第2に、法律扶助制度の拡充。第3に、裁判利用相談窓口(アクセス・ポイント)の設置ないし拡充。第4に、裁判所の管轄・配置。第5に、開廷日・時間の柔軟化ということでございます。
まず、「訴訟費用の負担の軽減」でございますが、裁判に掛かる費用の問題が、国民の裁判所へのアクセスを妨げる最大の要因ないしは少なくともその一つだということは、今更申すまでもないことでございます。
先ごろの民事訴訟法の改正におきましても、費用の問題は、言わば積み残しの問題としてめぼしい手当てをすることができなかったものでございます。その費用の負担軽減のために、検討すべき問題が幾つかございますが、ここでは訴えを提起するときの「提訴手数料」と言いますが、それと「弁護士費用の訴訟費用化」、第3に「訴訟費用保険」、この三つの問題を取り上げたいと思います。
「提訴手数料」でございますが、これは御承知のように現在の制度では、事件の経済的価値、-これを訴訟の目的の価額と申しますが、-それに応じて所定の額を順次加算して算出する「スライド制」というものを採用しております。資料1を御覧いただきますと、そこに表が出ておりますが、このような仕組みになっているわけでございます。ちなみに申しますと、訴額が30万円ですと3,000 円、100 万円ですと8,600 円、300 万円ですと22,600円、1000万円だと57,600円になるわけでございます。こういう仕組みになっているのでございますが、こういう提訴手数料というものを支払うことにしている趣旨は、通常二つあると言われております。
一つは、濫訴の防止。みだりに根拠のない訴えを提起して、相手方とされた当事者の迷惑になる、あるいは税金で賄われている司法制度の無駄遣いと言いますか、そういうことになる。その濫訴を防止するということ。
今一つは、広い意味で受益者負担と申しますか、同じ国民の中でも国の運営する司法制度を利用する者と、利用しない者とがあるから、そこで利用する者に応分の負担をしてもらう。そういう考え方ででき上がっております。
諸外国ではどうなっているかと申しますと、資料1の裏側に諸外国のものが出ておりますが、いろいろでございまして、ドイツは基本的には我が国と同じような「スライド制」でございます。
それに対してフランスでは、手数料というものは原則として取らないという考え方です。ただし、濫用的な訴えに対しては、罰金を課せるという形で濫訴を防止するという目的を実現しようとしているわけでございます。
イギリスは、やや特殊な考え方で、手続の段階が進むごとに一定額の手数料を払っていくという考え方です。
アメリカは、御承知のように「定額制」でございまして、訴訟の経済的価値いかんにかかわらず、一律に手数料を決めており、連邦裁判所では一律に120 ドルということになっております。
そこで、こういう諸外国の事情等を考えまして、我が国でこれからこの審議会で検討すべき論点といたしまして、差し当たり二つばかりのことがあるのではないかと思います。
それは第1に、一体現在のスライド制による裁判手数料の納付という制度を維持するのかどうか、維持するとしても、それをもう少し低額化する、安くするというようなことを考えるかどうかという点でございます。
第2は、この手数料は、勝った当事者は法律の規定の上では、負けた方の当事者から取れる、つまり原告が一応払うけれども、訴訟に勝てば被告からこの分を訴訟費用として返還をしてもらえると、こういう仕組みになっておりますが、その訴訟費用の取立てをする手続に時間がかかりますために、実際にこれが利用されることは非常にまれであると言われております。結局、各自、訴訟費用は自己負担という結果になっておりますので、その訴訟費用額を取り立てる手続をもっと簡便にすべきではないかという問題点がございます。
第2は「弁護士費用の訴訟費用化」という問題でございます。
御承知のように、弁護士費用は、ただいま申しましたような意味の訴訟費用には原則として含まれないということになっておりますので、弁護士に払った報酬は、勝っても負けても各自負担ということになるわけでございます。
この点につきまして、外国ではどうかと申しますと、資料2の裏側に、諸外国の法制が出てまいりますが、ドイツとイギリスは原則として敗訴者負担、つまり負けた方の当事者が相手方の弁護士報酬を支払うという仕組みでございます。
それに対して、アメリカは各自負担が原則ということになっております。
フランスも各自負担が原則ということになっておりましたけれども、1976年の改正によりまして、裁判所の裁量によって負けた方の当事者に、勝った当事者の弁護士報酬の全部または一部を負担させることができるようになったと言われているところでございます。
おおざっぱには、このとおりなのでございますけれども、実はそれぞれの国でかなりきめ細かな配慮をしておりまして、例えばドイツの場合に労働裁判所の訴訟では、相手方の弁護士費用の負担という制度が採られておりません。労働者側が負けた場合でも使用者側の弁護士の費用まで負担させられることがないようにというのが、恐らくその趣旨であろうと思われます。
また、イギリスでは、原則として敗訴者負担だと言われておりますけれども、少額請求事件では別であるというような配慮がされておりますし、またアメリカでは、各自負担が原則だということでございますけれども、合意によって別の定めをすることができますし、また制定法で100 近い例外が認められていると言われております。例えば、人種差別を規制する法律に基づく訴えであるとか、あるいは独禁法、証券取引法等に基づく訴えなどについては、そうではないということになっているわけでございます。
これについて、検討すべき論点といたしましては、二つのことがあるかと思います。
一つは、そもそも弁護士費用の支払、それ自体の合理化、透明化と言いますか、弁護士報酬というものが現在の在り方のままでよいのかどうかということでございます。しかし、これは次回の中坊委員の弁護士制度の方の問題になるかと思います。
2番目は、文字どおり弁護士費用の敗訴者負担制度を導入するかどうかという問題でございます。この2番目の問題につきましては、ただいま申し上げました諸外国の例に照らして考えてみましても、単に弁護士費用の敗訴者負担制度を入れるか入れないかという議論だけでは、いささか荒っぽい議論になるわけでございまして、やはりきめ細かい配慮が必要になる。敗訴者負担制度を導入することになると、負けた場合には、相手側の弁護士費用まで負担しなければならないことになりますので、訴えを起こすことを躊躇するという効果を持つわけでございますから、全面的に負担をさせるのがよいのかどうかということになりますし、先ほどのドイツの労働裁判所の例のように、特別な事件についてはまた別な配慮をするというようなことが、必要になるのではないかと思われます。
訴訟費用の負担の軽減として取り上げるべき第3の問題は、訴訟費用保険でございます。これは、それ自体は実は保険会社の方の問題でございまして、どういう保険を開発して売り出すかということは、司法制度の問題とは直接関係ございませんが、むしろ法律扶助との関係がございまして、つまり低所得者層に対しては、法律扶助で国が訴訟費用の負担ないしは立替えをするが、それに対して中間所得層に対しては、保険で賄うという考え方を採るかどうかということとの関係で、司法制度の問題と絡んでくるわけでございます。
現在の我が国では、資料3を御覧いただきますと「我が国の実情」が出ておりまして、自動車保険とか労災保険とかPL保険というような、いわゆる責任保険の中に加害者側が損害賠償義務を負うことになった場合に、弁護士費用あるいは相手方と交渉をする費用をも保険で支払われるという、そういう仕組みが幾つかの種類の保険で採られているということでございます。
なお、知的財産権訴訟費用保険は、加害者側になる場合ばかりではなく、自分の方から訴えを起こす場合についても、保険で訴訟費用を賄うような仕組みになっていると言われておりますが、私自身は確認はしておりません。
諸外国の実情は、その裏にございまして、ドイツ、スイスでは単体保険、つまり訴訟費用それ自体を保険給付の対象とするという保険が商品化されていると言われておりますが、ほかのスウェーデン等では、我が国と同じような各種の総合保険の中に、訴訟費用給付が盛り込まれているという形態のものが普及しているということでございます。
これとの関係で、検討するべき論点は、冒頭に申しましたように、司法制度それ自体としては、そういった訴訟費用保険による訴訟費用の負担の軽減を、取り分け法律扶助制度との関係でどのように位置付けるかが、問題になるところかと思います。
裁判所へのアクセスに関連する問題の第2は、「法律扶助制度の拡充」ということでございます。これ自体大変大きな問題でございまして、本来は十分な検討を要するところでございますけれども、既に昨年秋に当審議会におきましても、この問題を一度取り上げたことがあり、現在法務省の方で民事法律扶助法案を、今国会に提出する予定にしているということでもあり、また既にこの審議会では会長談話として一定の、それをサポートする方向を打ち出しておりますので、本日はこれに触れる程度にさせていただきたいと思います。いずれ、本格的に制度的基盤の問題を議論するときに、また改めて取り上げるということにさせていただきたいと思います。
裁判所へのアクセスの第3は、「裁判利用相談窓口の設置」ということでございます。
我が国の裁判所の中で、現在家庭裁判所が最も国民に親しまれて、アクセスしやすい裁判所と評価されていると言ってよろしいかと思います。
そのような評価が出てくる一つの重要な理由といたしまして、家庭裁判所では家事相談窓口というものが設けられて、だれでもそこへ行けば自分の抱えている問題について、どういう解決方法があるかということを教えてもらえる、つまり調停の申立てをするのがいいのか、審判の申立てをするべきなのか、あるいは何か別の方法を取るべきなのかというような、いろいろな総合的な情報を与えてもらえるということが大きいと思われるわけでございます。
簡易裁判所についても同じように、そういう相談窓口が設けられているのでございますけれども、こちらの方は必ずしも十分に一般の国民に知られていないように思います。家庭裁判所ほど利用されていないのではないかと思います。
この相談窓口でどのような事務をしているかということにつきましては、資料4と5に出ておりまして、資料4の方が「家庭裁判所の家事相談について」、5の方が「簡易裁判所の受付相談」ということになっております。
外国の事情でございますが、まだ私自身正確に把握しておりません。あるいはこう申し上げるとミスリーディングになるかもしれませんが、資料6に、イギリスで昨年成立いたしました「司法へのアクセスに関する法律(The Access to Justice Act 1999)」という法律の中で「コミュニティー・リーガル・サービス」という制度を導入することが定められております。ただいま申しましたように、正確な内容を把握しておりませんので、余り立ち入ったことは申し上げられませんが、あるいはこれも何か一般の国民が身近なアクセス・ポイントへアクセスをすれば、総合的な情報が得られるというような仕組みなのかと思います。
これに関連して、検討すべき論点といたしましては、一体この相談機能をどのように充実させていくべきかということになるわけでございまして、国民がトラブルに巻き込まれたときに、最もアクセスしやすい機関を中心とするネットワークを形成するということが必要なのではないかと思われます。先ほど申しましたように、家庭裁判所、簡易裁判所という裁判所の窓口でいろいろ相談に応じていただくということは、非常に重要なことで、それは一層充実していくべきだと思いますけれども、それ以外にも例えば消費生活センターというような、一般の市民の身近にある相談窓口で、司法に関する総合的な情報提供をすることができるような仕組みを考えてもよいのではないかと思うところでございます。
4番目が「裁判所の管轄・配置」でございますが、この点では三つばかりの問題があるかと思います。
一つは「家庭関係事件の家庭裁判所への集中」ということでございまして、当審議会で前に各委員から個別に取り上げる問題の提示がございました時に、何人かの方からも指摘されたところでございます。
この問題は一見いたしますと、家庭裁判所に関する局限された問題のように見えるかもしれませんけれども、一般国民にとっての家庭関係事件というものの法律問題としての意義は、大変大きいものがあると思います。諸外国でも、法律扶助対象事件の大きな割合を、家庭関係事件が占めていると言われております。
現在は、御承知のように、同じ家庭関係紛争でも、調停はすべて家庭裁判所が扱いますけれども、一旦訴訟ということになりますと、人事訴訟事件として、これは地方裁判所で扱うということになっております。そこで、家庭関係事件をすべて家庭裁判所に集中して、調停でまず話合いで解決がつくものは解決をし、解決がつかないで訴訟に持ち込むという場合も同じ家庭裁判所で扱えるようにすることが、国民の司法へのアクセスを容易にするという観点から見て、重要なのではないかと前から言われているわけでございまして、これが検討すべき論点の一つであろうと思います。
次は、「簡易裁判所の事物管轄・少額訴訟の範囲の拡大」ということでございまして、簡易裁判所は御承知のように、現在、事件の経済的な価値が90万円以下の事件を扱うということになっており、さらに、その中の30万円以下の金銭の支払を請求する事件が少額訴訟手続という特別に簡易な手続の対象とされております。
少額訴訟手続は、平成10年から施行されました新しい民事訴訟法で、初めて導入されたものでございますけれども、現在までのところは大変大きな成果を上げていると評価されております。東京簡易裁判所の例しか、現在までのところ統計としては公表されていないようでございますけれども、それによりますと、97%の事件は1回の期日で、法律の期待するとおり事件が終わっているということでございまして、最近最高裁判所が少額訴訟手続を利用した当事者を対象として行った調査の結果から見ましても、当事者からも高い評価を受けているようでございます。そこで、この少額訴訟の額を30万円以下に制限するのではなくて、もっと高い金額まで引き上げたらどうかという問題が論点として上がってくるわけでございます。
簡易裁判所の管轄自体も現在の物価水準等から考えますと、90万円を超えるものについても、少なくとも金銭請求のような事件は、簡易裁判所の管轄とすることが考えられるのではないかと思われます。
次は、裁判所の配置でございますが、これは資料の後の方になりますが、資料43、ページ数で申しますと105 ページの「裁判所の設置状況」というところを御覧いただきたいと思います。
高等裁判所は全国で8つ、地方裁判所、家庭裁判所は50庁、簡易裁判所は438 庁ということになっているわけでございますが、その前の資料42を御覧いただきますと、簡易裁判所につきましては、実は以前は全国に575 庁あったのですけれども、昭和63年5月1日にそのうちの122 庁が隣接庁に統廃合され、別に幾つかの場所に新しく簡易裁判所が設置されて、現在は438 庁になっているわけでございます。
地方裁判所、家庭裁判所の支部につきましても、平成2年に41庁が統廃合されるということがございました。このように、簡易裁判所及び地方裁判所、家庭裁判所の支部が統廃合されましたのは、その当時の現状における事件数、隣接庁までの公共交通機関を利用する所要時間、将来の人口動態の予測などを勘案いたしまして、余りに事件数の少ないところは統廃合をするということで、こういう結果になったわけでございます。
私の個人的な意見としましては、そういう経過で統廃合をしたものでございますので、現在の在り方を変える必要はないのではないかと思いますけれども、しかしこの点も見直しが必要だという御意見がございますので、論点として取り上げた次第でございます。
最後に「開廷日、時間の柔軟化」という問題がございます。これは当審議会でも吉岡委員から前に御指摘があったところでございまして、現在はどの裁判所も原則として平日の日中のみ開廷をいたしておりますけれども、夜間開廷あるいは休日の開廷ということを考えてもよろしいのではないかと、そういう御指摘がほかからもあるところでございます。
なお、現在いわゆる訴訟事件につきましては、確かに平日の日中のみの開廷でございますが、調停あるいは相談窓口につきましては、家庭裁判所で言いますと五つの家庭裁判所、東京、大阪、京都、名古屋、札幌の各家庭裁判所でおおむね午後5時から午後7時まで、庁によって頻度は違いますけれども、事件の受付とか家事相談、あるいは家事調停を行っているということでございます。また簡易裁判所につきましても、東京、大阪両簡易裁判所では午後5時30分から午後7時30分まで調停、あるいは相談を行っていると聴いております。
以上が裁判所へのアクセスを容易化するという観点から見た問題点でございます。
次は、「民事裁判の充実・迅速化」という点でございます。
訴訟が遅い、訴訟に時間が掛かるということが、我が国において国民の司法の利用を妨げている重大な理由の一つとして常に挙げられているところでございます。
我が国の現状でございますが、新しい民事訴訟法が御承知のように平成10年1月1日から施行になりました。新民事訴訟法ではこのように前々から指摘されている問題点を解決すべく審理方式を改めまして、訴訟を迅速でかつ内容の充実したものにしようというので、そのための方策が一般的に採られたわけでございます。その基本的な考え方は、事件の真の争点、当事者にとって本当に争いのあるところはどこなのかということを十分突き詰める、いわゆる争点整理というものをまず徹底して行いまして、その整理された争点について集中的に人証の取調べ、つまり証人尋問とか当事者尋問とかいうものを行う、それによって審理の充実と促進とを同時に図るという方策でございます。
新法の成果は、まだ今のところ統計的な数字としては明らかにされていないところでございまして、その評価をいたすのには時期尚早ということになります。
そこで、旧法時代からの全体の傾向を見てみますと、お手元の17ページの資料8を御覧いただきたいと思います。上の表で「全体」という項を御覧いただきますと、平均審理期間が平成元年には12.4か月であったものが、だんだん短縮されてまいりまして、平成10年には9.3 か月までに至っておりますので、全体としては迅速化の傾向にあると申し上げることができると思います。
それに対しまして「人証調べ」、つまり当事者間に争いがあって、証人尋問や当事者尋問をした事件ということになりますと、かなり審理期間が延びてまいりまして、平成10年でも20.8か月かかるという状況でございます。さらに、専門的な知識を要する事件、そこにございますのは「知的財産権関係事件」、「医療関係損害賠償事件」、「労働関係事件」でございますが、御覧のように、更に時間がかかっており、労働関係事件はかなり迅速化されておりますけれども、それでも13か月かかっていることになるわけでございます。
これを諸外国の状況と比べてみますと、諸外国の方の状況は27ページの資料12にございますが、平均的に言えば日本の訴訟が遅いというわけではございません。ドイツの場合も第一審の平均審理期間は6.6 か月ということでありますし、フランスは9.1 か月ということでございます。イギリスの高等法院の場合には41か月というようなことになっておりますので、必ずしも日本だけが遅いというわけではございませんが、ただいまも申しましたように、争いのある事件とか特別な専門的知識を要する事件ということになると、かなり遅いと言わざるを得ないことになるわけでございます。
この解決のための方策として検討すべき論点ということになりますと、従来言われておりますことの一つは、時間がかかるのは先ほど申しました争点整理が迅速に行えないことが、重要な原因の、少なくとも一つであるということであり、その争点整理を迅速に行うためには、両当事者が必要な証拠を集める手段を一層充実させる必要があると指摘されております。
しばしば言われますように、アメリカのディスカバリーのような制度があって、相手方あるいは第三者の手持ち証拠を、各当事者が利用できるようになれば、どこを争うべきか、どこが争いになるべきかということを迅速に判断することができ、争点整理が進むということになる。したがって、そういった証拠の収集手続、あるいは証拠調べ手続等の見直しが、一つの論点になるかと思います。
なお、一部の団体からの提言の中には、審理期間とか期日数を制限することを考えるべきだという指摘がございます。例えば、一審判決は1年以内に出して、最高裁まで入れても3年で審理を終えるように法律で定めるべきだというような御意見もございます。外国にもそういう例がないわけではございませんで、韓国の民事訴訟法では、第一審は原則として5か月以内に終えるということが定められていると言われておりますし、またドイツでは主たる審理期日は1回に限る、十分に準備をした上でという前提でございますけれども、十分に準備をした上で主たる審理期日、証人尋問等を行うそういう期日は1回で終えるべきだと定められております。
ただ、こういう審理期間とか期日数の制限を事件の種類、あるいは個別の事情を抜きにして定めることが、適当かどうかということが問題になると思います。
結局、一般事件について申しますと、事件の迅速化を図るということは、結局裁判所の執務体制の充実及び弁護士の数、業務体制の充実という人的基盤の問題に帰することになるのではないかと思われます。裁判所は、裁判官並びに裁判所書記官、あるいはそれを支えるその他の人的基盤というものが充実しませんと、なかなか審理は進まないということになるわけでございます。配付されている資料の中にはございませんが、その意味で非公式のと言いますか、そう正確なものではないという前提で知らせていただいた、東京地方裁判所本庁の民事通常部の裁判官1人当たりの手持ち事件数の推移というものがございますが、これで見ますと平成2年当時は大体1人190 件程度、それが最も多かった平成6年には280 件程度にまでなり、その後、順次漸減してまいりまして、平成11年は200 件程度であるということが言われております。こういう状況でありますと、どうしてもやはり1件当たりにかける審理の密度、集中度には限界があって、訴訟の促進が難しくなるのではないかと思います。
これもしばしば言われていることでございますけれども、事件の期日を裁判所が入れようと思っても、代理人である弁護士の方が受けられない、そのために事件が遅れるということも訴訟の迅速化を妨げる重要な要因といわなければなりません。一つの事件を集中的に審理することになりますと、弁護士としては、その事件に掛かりきりにならなければならないわけでございますけれども、現在の業務体制ではそういうことは難しいと言われているわけでございます。
ちょっと予定より時間がかかってしまいましたので、少し急がせていただきたいと思います。
取り分け問題になりますのは「専門的知見を要する事件」への対応でございまして、ここでは12月の論点整理に従いまして、一応、専門的知見を要する事件を、知的財産権関係、医療過誤関係、建築瑕疵紛争関係、労働関係の事件に絞らせていただきます。
我が国の現状は、先ほど一般の事件のところで御覧いただいたとおりでございます。この種の事件につきましては、特に審理期間が長期化していると言わざるを得ないと思います。裁判所としては、これに対していろいろの取り組みをされているようでございまして、裁判所の取り組みは資料16から17、ページ数では35ページから37ページに出ております。「裁判所処理体制の充実強化」ということも、35ページの下の段の方に出ております。「専門部の増強等」として、特に知的財産権関係訴訟につきましては、特別の調査官が、高等裁判所、地方裁判所にも配置されておりますし、専門部が設けられたりしているところでございます。
また、医療関係訴訟あるいは建築工事紛争関係訴訟につきましても「鑑定人等協議会」というようなものを開いて、鑑定人との意思の疎通を図るという努力がなされているようでございます。
これに対して、諸外国ではどのような対応がなされているかということが、資料18から20、ページ数では39ページから45ページに出ております。この詳細な資料を後で御覧いただきたいと思いますが、簡単に申しますと、知的財産権関係の事件では、例えば、イギリスでは特許専門弁護士から裁判官を選任するというようなことが行われているということでございます。
アメリカでは裁判所側について特別の制度はないようでございますが、御承知のように弁護士が大変に専門化しているということで、昨日の日本経済新聞にも弁理士の方が書いておられましたけれども、特許弁護士と言われるものがアメリカでは1万6,000 人いる。日本ではそれに対して30人程度だということが指摘されておりました。
ドイツでは、御承知のように連邦特許裁判所という特別裁判所を設けております。
フランスでは、特別な裁判所はないようでございますけれども、一般的に鑑定という証拠調べの方法について、かなり特色のある制度を導入いたしまして、専門家に鑑定を早期に命じて、迅速な手続で損害額の算定などをやらせるという制度を設けております。鑑定レフェレというのがそれであります。また、高等裁判所単位で、フランスの場合ですと控訴院と申しましょうか、そういう単位で司法鑑定人の名簿がつくられていて、それによって裁判所は鑑定人を選任できるという仕組みになっているようでございます。
医療過誤、建築瑕疵紛争につきましては、イギリス、アメリカはいずれも弁護士が非常に専門化しているというところで対応しているようでございます。
ドイツについても、同様に弁護士の専門化が進んでいると言われておりますが、そのほか先ほどのフランスの鑑定レフェレを参考にしたものではないかと思われますけれども、最近の改正で独立証拠調べという手続を設けまして、必要な鑑定を訴え提起前にもすることができるという体制を取っているところでございます。
労働関係事件につきましては、御承知の方が多いと思いますけれども、ドイツ、フランスでは、労働裁判所あるいは労働審判所という特別の裁判機関が設けられておりまして、いずれも参審制を採用しております。
これらを総合して考えますと、結局専門性の高い、専門的な知識を必要とする事件への対応の仕方としては、各国の状況を見ますと三つぐらいの対応の仕方があるように思えます。
一つは、専門家を裁判体ないし裁判機関の中に取り込んでくるという考え方でございまして、その中を更に細かく分けますと、一方に、裁判所の構成員にしてしまうという参審制、専門参審制があり、更にそれが進むと、特別裁判所をつくるという対応になる。多分、専門家を裁判体に取り込むのだけれども、裁判所の構成員にしてしまうのではなくて、補助機関として使うというのが、もう一つの対応で、我が国の専門調査官は、こういう考え方だと言えるのではないかと思います。
第2は、専門家を利用する特別の手続を設けるというやり方でありまして、先ほど申しましたフランスの鑑定レフェレとか、ドイツの独立証拠調べという手続がこれに当たります。
第3は、弁護士の専門化による対応でございまして、これも申すまでもなく結局弁護士層の質量ともの充実が前提になるわけでございます。
以上のような三つの方策があるかと思います。
どれを採るかということは、恐らくその専門性の種類によって違ってくるだろうと思われます。例えば医療過誤の場合には、とてもお医者さんを専門参審員にして拘束しておくというようなことは考えられませんから、どうしても鑑定という制度を使いやすくするという方策を採るほかない。弁護士の方は専門化することが望ましいという組み合わせになるでしょうし、知的財産権訴訟であれば、裁判体に専門家を取り込むのが適当であり、労働事件についてもそのような方策が考えられるということになるのではないかと思います。その辺りが当審議会で検討すべき論点になるのではないかと思われます。
次の項目といたしまして、「民事執行制度の在り方」を挙げてございますが、民事執行制度の在り方につきましては、現状は住専問題をきっかけとして、ここにおいでの中坊委員が御苦労なさって、いろいろ不良債権の取立てをするという、その過程で執行妨害というものが社会的な注目を浴びるようになりまして、その後金融機関の不良債権の回収等でも同じような問題が出てまいって、執行制度の効率化ということが言われるようになりました。
他方、少額訴訟ができたことは、先ほど申し上げたとおりでございますが、そういう金額の小さい債権の強制的な実現、また家事調停などで認められた家庭関係事件での扶養料の請求というような、そういう権利の強制的な実現が、十分に行われていないという問題が指摘されているところでございます。具体的な提言が各方面からなされておりまして、これは51ページの資料22に事務局の方で大変要領よくまとめてくださっておりますので、それを御覧いただきたいと思います。
民事執行制度の在り方については、その程度にさせていただきたいと思います。
その次の「司法の行政に対するチェック機能の在り方」、これも大変大きな問題であることは、今更申すまでもないことでございます。いずれ本格的に取り上げるべきものでございまして、ここで簡単に論点だけを触れるというには、余りにも大き過ぎる問題だと思いますので、これも資料23にいろいろな提言によって、指摘されている問題点が挙げられておりますので、それをリファーするにとどめたいと思います。
次は、「6 裁判手続外の紛争解決手段の在り方」という、いわゆるADRの問題でございます。
いわゆるADRとしてどういうものがあるかということは、お手元の資料の77ページ、資料31に大変詳細に挙げられております。「司法型」と言いますのは、裁判所の関与するADR。「行政型」というのは、行政機関が関与する、あるいは行政機関に設置されている、ないしは行政委員会というべきものでございますけれども、そういうものがございます。それから、「弁護士会型」、「民間団体型」というのがございます。
このうち、主要なものについてどのような実績が挙げられているかは、資料32、79ページに一覧表としてまとめられております。大変御苦労いただいてよく作っていただいた資料でございます。これを御覧いただきますと、受理件数という欄が真ん中辺りにございますが、平成10年または10年度において、民事調停が24万8,833 件。
それに比べますと、ほかの機関の受理件数はかなり少ないということになります。公害等調整委員会は2件、それから中央建設工事紛争審査会は55件。もっとも建設工事紛争審査会にしても公害等調整委員会にしても、都道府県レベルのものがございますので、それを合わせればもっと大きな数字になるかもしれません。それから、弁護士会の仲裁センターは全部で528 件、等々でございます。これが現在の状況で、平均審理期間というのがその下の欄にあるとおりでございます。
ADRに関する基本的な論点としましては、このような我が国の現状を踏まえ、また、我が国の司法の現段階というものを考えてみたときに、ADR拡充ということが各方面から言われているのではございますけれども、そちらの方向へ行くべきなのか、それともまず本来の司法の充実に力を入れるべきなのかという問題点があるように思います。ADRはアメリカで大変盛んで1998年に連邦ADR法が成立したという状況があり、また、ドイツでもADRの研究が盛んでございます。しかし、アメリカやドイツではいずれも訴訟が多過ぎるというので、言わば裁判所の負担軽減、訴訟負担の軽減というところからADRが発想されてきたという面があることは否定できないところでありまして、そういう外国の事情を考えてみたときに、今、我々としてADRを拡充する方向を考えるのか、まず司法の方の拡充を考えるのかは、十分に検討すべき問題であるように思います。勿論、司法の拡充とADRの拡充は矛盾抵触するわけではないから、両方とも拡充すべきだという御意見もあるかもしれません。
それから、もし拡充をするとした場合には、一体、どの分野のADRをどう拡充していくか、あるいは裁判手続との連携関係をどうするか、それからADRの問題点の一つは、果たして正義が実現できるような手続上の保障があるかという点でございますから、どう手続を整備していかなければいけないか、また、それを担う人をどのように確保するかというところが問題になるかと思います。
もうほとんど時間がなくなってまいりましたので、7番目「司法に関する情報公開・提供の在り方」につきましては、資料を指摘するにとどめさせていただきたいと思います。特に資料36以下でございますが、87ページ以下。資料36のところは最高裁のホームページで、どういうものが収められているかということが出ております。資料37は「法務・検察の広報活動・情報提供の概要」。資料38は「弁護士会の広報の現状等」が詳しく出されているところでございます。
以上、国民のための司法機能の拡充あるいは国民がより利用しやすい民事司法の実現という観点から、司法の制度的基盤にかかわる論点項目の現状と検討すべき問題点等を駆け足で見てまいりましたが、その過程においても、何回か御指摘申し上げましたように、国民がより利用しやすい民事司法を実現するには、制度それ自体の改革ということが直接必要であることは当然でございますけれども、それと併せて、裁判所の人的体制のより一層の充実、それから、弁護士の質的及び量的拡充等の司法の人的基盤の拡充を図ることが不可欠であるということが明らかになったと思います。
そこで最後に、人的基盤の現状を概観いたしまして、その拡充の必要性を改めて確認することで私の報告を終わらせていただきたいと思いますが、まず、資料39に裁判所の裁判官その他の職員の定員の推移が、地方裁判所の事件数の推移と並列して記載されております。事件数の方は、地方裁判所のしかも民事、刑事の訴訟事件のみでございますから、統計としては、これと裁判官数、その他の職員数の定員と比較するということに、厳密な意味でどれだけの意味があるかは分かりませんけれども、一応の傾向は分かっていただけるのではないかと思います。
それから、資料41に、これは本日の報告とは直接関係はないわけでございますけれども、「検察庁職員の定員の推移」が参考資料として挙げられてございます。これも御覧いただければと思います。
弁護士につきましても、資料45以下に詳細な資料が用意されてございます。全体の会員数の推移が資料45、ページ数では121 ページでございます。それから、地域分布を示します「地域別会員数」というのが資料46、それからその推移が資料47、非常に詳細なものが資料48に用意されております。さらに、法律相談センターの設置状況が133 ページの資料49に示されております。
なお、そのほかに席上、日本弁護士連合会の方から提供していただいたものでございますけれども、弁護士の分布状況を示す色分けの地図、「弁護士0~4マップ」がございますので、これを御覧いただきますと、分布状況が大変分かりやすいと思います。
以上、駆け足でしかも多少時間をオーバーいたしましたけれども、制度的基盤の充実に関連し、更に制度的基盤の改革を図るためには人的基盤の拡充も必要であるということについて確認をしたことで、私の報告を終えさせていただきたいと思います。
【佐藤会長】本当にポイントを押さえて簡潔かつ明快なお話で、大変参考になりました。どうもありがとうございました。
それでは、先ほど申しましたように、10分休憩して15分に再開したいと思います。それで、質疑など意見交換をしたいと思います。
では、休憩にしたいと思います。
(休 憩)
【佐藤会長】時間も参りましたので、審議を再開したいと思います。
先ほどの竹下会長代理の方からのレポートを踏まえまして、「国民がより利用しやすい司法の実現」、それから「国民の期待に応える民事司法の在り方」について意見交換をしたいと思います。御質問でもよろしゅうございますし、あるいは御意見などでもよろしゅうございますが、どなたからでもどうぞ。
【山本委員】さっきのところで話が出ていたんですけれども、司法制度の勉強を初めて網羅的にしたという思いでございまして、非常に興味のある話をありがとうございました。
前々回の審議のときにも私申し上げたんですが、今回の問題は、国民の目線から見ますと、根っこが深くて、より多面的な議論をしなければいけない。法曹一元など、理念的な問題と呼んだんですけれども、そういった問題がある一方で、今日の竹下先生のお話にありますような具体的で、比較的関係者の合意も得られやすくて、かつ使いやすい司法という観点から有益な項目というのはたくさんあるということだと思うんです。
したがって、くどいようでございますが、理念的な問題を議論しつつ、こういった具体的な問題についてもある程度の方向性とか項目を打ち出して、国民にアピールしていくということを是非やっていただけたらいいなというふうに、今日のお話を伺いながら思いました。
経済界といたしまして、いろいろ議論がありますが、非常に変化が目まぐるしい中で、国際的な競争にもさらされているわけでございまして、そういった状況の中から、例えば一つの要望として情報公開の問題があるんですね。部分的に判例などの公開がいろいろ行われてきておりますけれども、これをもっともっと充実したものにしていただきまして、企業サイドから予防法務という観点でいろんな検索ができるようにしていただく、そういう要望も強いわけでございます。こうした問題などは割合と異論のないところだと思いますので、取り上げていただければいいなと思いながら、お話を伺わさせていただきました。
以上でございます。
【佐藤会長】ただいまのお話、いずれもごもっともだと思いますけれども、会長代理の方で何かコメントがありますか。
【竹下会長代理】私も全く同意見で、山本委員のおっしゃるとおりだと思います。情報公開の関係では、御承知のことと思いますけれども、事務局から聞いていただいたところでは、知財関係の東京、大阪の裁判所の判例は、全部今、インターネットで公開されているということです。その資料はどこにありましたかね。
【事務局長】資料の34でございます。
【竹下会長代理】83ページ、最高裁のホームページに、最近の最高裁判決と知的財産権判決速報コーナーというのがあって、東京高等裁判所、地方裁判所、大阪高地裁の知的財産権訴訟の判決を中心に、できるだけ言渡し翌日までに全文掲載ということだそうでございます。ただ、これは特定の分野に限られております。
【佐藤会長】山本委員、経済界の立場から予防的な機能とか情報提供について具体的に特にこの点はというものがあれば。
【山本委員】一番は知財関係なんですけれども、全般的にそういう問題が企業と司法、あるいは国民と司法の間の距離をせばめる大きな要因にもなると思います。
【髙木委員】資料7の15ページの「平均審理期間の推移」という表で、こんなにはっきり出ていると思わなかったんですが、件数増と審理期間というのは、件数が増えると審理期間は下がるということがはっきり出ていますね。
【竹下会長代理】これは、事件数が増えたにもかかわらずということです。
【髙木委員】裁判官がそれだけ努力されたという一面もあるんでしょうが、このグラフとどういうかかわりがあるのか私もよく分からない面もあるんですが、先ほど口頭で手持ち事件のことを会長代理に触れていただきましたが、全国というと難しいかもしれませんが、東京地裁なり大阪地裁の手持ち事件の推移みたいなものがおありでしたら、お示しいただければと思います。
それから、もう一つは、これも素人でよく分かりませんが、最高裁として裁判官の方々の裁判所への配置に関してのガイドラインとかルールみたいなものを、必ず私はお持ちじゃないかと思うんですが、そういうのがあったら一度お教えいただければと思います。
それから、こうやって期間は大分短くなったんですが、人証事件なり少し短くなっているというんですが、逆に証人調べの回数などはどういうことになっているのか。証人調べの回数が減って短くなっているということはないのでしょうか。
鑑定というのはどれくらいあるのか知りませんが、鑑定の件数など、こういう7ページの表の審理期間の短縮とどうかかわっているのか、そういった回数等の推移等の統計等がありましたら教えてください。
もう一つは、期間が短くなったことと、例えば控訴に及ぶ比率がどういうことになっているのか、短くなって控訴件数が増えたのかどうか、そういう意味で審理期間の短縮と随伴して、証人尋問やら現場検証の数も減っているということもお聞きしたりするものですから、かえって審理を稀薄化させて短くしているんじゃないかということを言われる方々がおられるようにお聞きしたりします。証人尋問の回数が減ったことなどが理由で控訴に及んでいるというような、控訴理由と審理期間の短縮に随伴して起こっていることが、何かかかわっているとしたら、短縮はみんなの求めることであるんですけれども、一方でいろいろな対策を講じつつ短縮をしていくという両面の議論をしないといけないのではないかなと思います。
そういう意味で今申し上げましたようなデータ等についても、大変かもしれませんが、お教えいただけたらと思います。
それから、これはお願いなんですが、表をお作りになるときに、33ページの表を見ていただくと、一番下の数字は500 になっているんですが、これはゼロからあるグラフを描いていただくのと、こういうグラフを描いていただくのと、立ち方の印象がえらい違うんです。何か意図的にやられたとは思いませんが、その辺、前の特殊損害のものはゼロから出ていて、その前の知的財産のものは200 からなんです。これは特に意図的な話では勿論ないんだろうと思いますけれども、その辺、ちょっと感じましたものですから言わしていただきました。
【竹下会長代理】一番初めの手持ち事件数の推移でございますが、これは実は私からもお願いしましたし、事務局の方でも随分検討してくださったのですが、なかなか難しいのです。というのは、同じ東京地裁でも、まず専門部と普通の部とでは一緒にならないということがございますし、それから、同じ普通部と申しましても、大きな事件が係属しているような部では、ほかの事件の数は少なくなるというようなことがございまして、なかなか平均して一人の裁判官が幾つ事件を持っているのかというのを出すのが難しいようなのです。
それで、この中に綴じこまない、言わば非公式の資料としていただいたのも、おおまかな何件程度というくらいのもので、しかも、地裁本庁の民事通常部、つまり労働部とか知的財産権部とかいうものでないところで、おおまかに恐らく審理件数を普通部に所属している裁判官の数で割ったという程度のものなのです。
大分事務局の方でも努力してくださったのですけれとも、裁判所の方もそういう統計は取っておられないようなのです。それでお配りすると、かえってミスリーディングになるということでお配りする資料に入れなかったということでございます。
それから、最高裁判所の人事配置のガイドラインというのは、これは全然私には分かりませんが、あるいは藤田委員でも御存じないのではないかと思いますけれども。
【藤田委員】事件の数に応じて裁判官を配置するというのは常識的に言えることなんですけれども、いろんな事件がありまして、例えば民事事件でも、訴訟もあれば、仮差押え、仮処分もあり、執行、破産もありですし、簡易裁判所でも督促手続がありますから、そういうように質的に違うものの件数を、訴訟に換算したら何件になるかというようなことをはじき出して、この裁判所の民事事件についてはこのくらいの事務量、刑事事件についてはこのくらいの事務量と計算するわけです。そうして、一人当たりの担当事件数がそんなにアンバランスにならないように配置しているのでありまして、機械的に何件で何人という基準はないと思います。しかし、計算どおりいかない面がありまして、例えば、刑事事件が少ないからと言って、裁判官の数を減らして合議体が構成できないようになっては困りますので、本庁の刑事部には最低限度3人配置しなきゃいけないということもありますし、それから、支部の場合にも、なかなか計算どおりにはいかない。例えば、私は鹿児島の裁判所に勤務した経験がございますけれども、奄美大島の名瀬には支部がありますし、管内にそのほかにも支部がありますが、仮に事件数が少なくとも、事件処理に手間がかかるということがあります。例えばほかの支部も兼務しておりますと、そこへ出掛けて行って、事件を処理し、泊まって帰ってくるということになりますし、離島の場合には船でまいりますので、一旦台風が来ますとうねりが残って4日間は船が来ませんから、いらいらしながら島で船が来るのを待っているという僧俊寛みたいなことになります。そういうようなことがありますから、計算どおりにはなかなかいかないんですけれども、基本的にはやはり事件数に応じた人員を配置するということでやっています。最高裁の方に説明してもらった方がいいのかもしれませんが、大体そんなところです。
【竹下会長代理】髙木委員の指摘されたもう一つの問題は、要するに簡単に言ってしまうと、審理期間の短縮が、ラフジャスティスになってはしないかということですね。これは非常に重要な点で、よく考えなければいけない問題点を御指摘いただいたのだと思います。人証取調べの数とか、鑑定の件数というのは、司法統計で出てくると思います。
それから、控訴率でございますが、これも事務局に伺った方が間違いないと思いますけれども、私の記憶では、必ずしも控訴率が上がっているということはなかったと思うのですが、何か手元に資料がございますか。
【事務局(古財参事官)】民事事件では、最近10年間における控訴率は通常訴訟事件でほぼ20%台前半で推移しており、上告率の方も最近10年間を見ますと、ほぼ30%台で推移しています。
【竹下会長代理】その面では、審理期間の短縮がラフジャスティスにつながっているという徴候はないように思います。これは恐らく裁判所としても、非常に気をつけておられるところだと思います。
【藤田委員】先ほど新受が増えているというのに手持ち件数が減ってきている、あるいは審理期間が短くなってきているという御指摘がありましたけれども、昭和61、62年ごろから東京、大阪両地裁で民事訴訟の運営改善で何とか適正さを失わないで迅速に処理しようということでいろいろ研究をやりました。その成果が新民事訴訟法に結実したということになるわけですが、そういう運営の改善の成果と言えると思いますが、それが一つあります。もう一つは、裁判官にパソコンが配布されておりますが、これがかなり能率の向上に寄与していると思います。
協議会などで弁護士会辺りから証人を調べる数が減っているという指摘がされることがあります。確かに証人の採用は以前に比べれば厳しくなっているかなという気はいたしますけれども、裁判官の心理といたしましては、事実認定に必要な証人を調べるということなんですけれども、敗訴させるつもりの心証の当事者から、証人の申請があった場合に、その証人を聞いても勝敗が逆転するようなことはないというはっきりした心証を持っているときでも、やはり当事者を納得させるという意味で、その証人を調べるということがあります。調べてもらいたい証人を調べてもらった上で敗訴したんだからしようがないという意味での納得を得る方がベターであるという考えで、本来不要な証人を採用するわけです。そういう意味での納得を得るための証人は、あるいは採用が厳しくなっているということが一部にあるかもしれません。そのために審理がずさんになるということはないんですけれども、あの証人を調べてくれなかったという意味での当事者の不満が残るということはあるかもしれません。
【竹下会長代理】最後にグラフの作り方ですが、ある程度私もこの資料を作っていただく過程で事務局側と打合せなどをして、ちょっとミスリーディングなものはやめておこうということにしたりもしたのですけれども、御指摘の点はちょっと気づきませんでした。これは恐らく表を作る技術的な理由で他意はないと思います。
【事務局長】このグラフにつきましては、要は1ページにきれいに収まるようにということと、そのためにグラフの棒線の伸びによりまして、100 単位でやる方がいいのか、500 単位でやる方がいいのかということも考えながら、100 単位のものも200 単位のものも500 単位のものも出てきたと。それで500 以下が資料15にはないと言いますのは、500 以下の数字が出てこないものですから、500 以上にした方がグラフは見やすい。2,100 まであるわけですから、これをゼロにしますと、幅が狭くなるということでございますので、無駄のないように作ったんでございますが、みんな100 単位でやればいいんですけれども、100 単位でやっていくと、何か非常に見にくい表になって、かえって推移が分かりにくくなるだろうという配慮でやったものでございます。
【石井委員】私も今のままのグラフの方がずっと分かりいいと思います。ただ、今みたいな御質問が出ることを考えますと、一番下の単位をゼロにして、単位の省略箇所に、2本の平行な波形記号を入れて不連続であることを示しておけば、そこから単位が変わることが、一目瞭然に分かるようになります。今後そういうふうにしていただいたらいいのではないでしょうか。
【竹下会長代理】ありがとうございました。
【吉岡委員】ゼロから始まっていないというのがミスリードになると思います。今、石井委員がおっしゃったとおりだと思います。
控訴率との関係もありますが、髙木委員がおっしゃった資料7の新受件数と平均審理期間に、控訴率をもう一本重ねるというような工夫ができると分かりやすいグラフになるんじゃないかと思いますので、工夫していただければと思います。
それから、民訴法改正後、裁判所等も随分変わり、相談をしやすくなったとか、少額訴訟もアクセスしやすくなったということは伺っておりますが、東京の場合には簡易裁判所がすごく立派で、きれいで、アクセスしやすくなっているんですけれども、それによって東京の中の地域の小さい簡易裁判所とか、そういうのが統合されていないか。霞ヶ関に行かなければいけないということになりますと、一般の人たちには逆にアクセスがしにくくなるというような面もあると思いますが、そういう意味で相談機関がどういうふうになっているのか気になります。
もう一つは、民訴法改正によって実際にどういうふうに変わったのかというのがもう一つ目に見えませんし、証拠開示の問題とか、そういうことがあるわけですし、裁判官の証拠提出命令というんですか、そういうのが実際にどういうふうに変わって、どれだけ活用しているのか。その辺のところを次の機会にでも教えていただきたいと思います。
それから、この中に訴訟保険の話が出ておりまして、ドイツでは単独になっていまして、後のはみんな目的別になっていますね。ドイツの場合の訴訟保険がどのように、実態として特に家庭というか、一般の市民に活用されているのか。それは日本の場合にも非常に参考になると思いますので、その辺についてももしお分かりでしたら教えていただきたいと思います。
【竹下会長代理】第1点でございますが、東京の場合には、先ほど申しました昭和61年、施行になったのは62年からですが、その改正によりまして、23区内の簡易裁判所を全部霞ヶ関の東京簡裁に統合したわけでございます。それも相当大きな問題ではあったのですが、先ほどは、地方の事件数が少ない簡裁の統合の話しか致しませんでしたけれども、同時に東京、大阪、名古屋、北九州という四大都市の簡易裁判所の統合ということもやったわけです。東京の場合は23区内の簡裁を一つに集めることにしました。
おっしゃられたのは、そのこと自体よりも、そうすると、相談窓口も23区内で一つになってしまうのではないかという御趣旨ですね。これはそうなっているのだと思います。ただ、東京簡裁について言いますと、電話案内というのでしょうか、そういう業務をやっておられるはずだと思います。それ以外に何か受付相談的なものだけをどこか別の場所でやっているかどうかということはつまびらかでないのですが。
【事務局長】確認しないと分かりませんので、次回にでもお答えいたします。
【竹下会長代理】それから、新しい民事訴訟法によって、例えば文書提出命令などの実態がどう変わったかということでございますけれども、これはなかなか統計からは分からないと思うのです。
おっしゃる御趣旨は何も文書提出命令だけではないと思いますけれども、文書提出命令について申しますと、普通は裁判所から提出命令を出すまでもなく、文書の送付嘱託など任意に出してもらうというのが多いものですから、文書提出命令の数というので実態がどう変わったかということはなかなか分からないと思うのです。
話が横へ行って恐縮なのですが、実はそれで、そういうなかなか統計から分からない実態というものを、私ども研究者のグループで実態調査で明らかにしようという大きなプロジェクトをやっているところなのです。
一つは、法律改正前の平成5年の新しく受け付けた事件を、全国の高裁所在地の地裁で、東京の場合には500 件、仙台だったら100 件というように取りまして、手分けをして訴訟記録の調査をやりまして、新法施行後5年くらい経ったところでもう一度同じことをやって、それを比較しようというプロジェクトです。平成5年分がこの2月末までに活字になる予定です。そこで、旧法時代のものは出てくるのですけれども、新法の方は、またそういう調査をやらないと、なかなか本当の実態がどう変わってきたかということは分からないのではないかと思います。
統計上分かる範囲のものは調べられると思いますけれども、まだ、施行になってちょうど丸2年経ったところですので、なかなか分からないのではないかと思います。
それから、3番目の訴訟費用保険なのですが、これは実は私も内心じくじたるところがありまして、法律扶助の関係でドイツに調査に参りましたときに、ゲーリングという大きい保険会社で話を聞いたのですけれども、その時の私の記憶では、ドイツでも訴訟費用保険は単体のものは少なくて、ほかのものとセットになったものが多いということであったように思います。ただ別の資料もありまして、事務局で作ってくださるときに根拠にした資料ではこういうふうになっているのです。
したがって、単体の保険がドイツでどの程度普及しておって、どう使われているのか、日本に導入する可能性があるのかということについては、私は今の段階では申し上げられません。
【吉岡委員】私が興味を持ちましたのは、ちょうど製造物責任法ができるころに、ドイツへ調査に行ったのですが、そのときに通訳してくださった女性の方が、ドイツには訴訟保険というのがあって、それに自分も入っているとおっしゃったんです。それで訴えられる場合と訴える場合とあるけれども、保険に入っているので、非常に安心なんだという話を伺いました。ちょうど資料が出ていましたので、その後どのように活用されているのか知りたいと思ったものですから。
【竹下会長代理】どうも申し訳ございません。
【佐藤会長】この問題、いずれ本格的に議論しますので、もし事務局の方で何か方法があれば調査していただきます。
【水原委員】本日の御説明、本当に地に足を付けた御議論をしていただきまして、大変力強く、そしてありがたく思っております。
論点整理について現状がどうなっているのか、それについて諸外国制度はどうか。それについて検討すべき課題は何かということを、はっきりといろいろ御説明いただきまして、本当によく分かったような気がいたします。
ところで、先ほど来言われております民事裁判の充実と迅速化の問題ですけれども、審理方式が改められて、内容が充実し、かつ迅速化も図られておるという御説明をいただきました。このためには真の争点整理が徹底されておるということ。それから集中的に人証等の調べをやれるようになったということでございます。
これは非常にいい方向に動いているような気がいたしますけれども、これは次回の中坊委員からの御説明を相待たなければ、いろいろな論点がはっきり出てこないとは思いますが、当事者、あるいは弁護士から、争点整理を徹底する裁判所の訴訟指揮が強くなってきた、また集中的に人証の調べをやるようになってきたことについて、反論とか御意見というものがあるのかどうかということが第一点。
もう一つは、一審はこれで充実強化、迅速化が図られてきますので問題はなくなるとは思いますが、かつて某高等裁判所管内の司法協議会に出席いたしましたときに、本来民訴は続審ですけれども、一審の裁判の充実が必ずしも行われていないので、控訴審において、覆審の調べをやってもらっております。一審で調べた証人をもう一度やってもらっております。それが長期化の原因になっているんだという発言を弁護士がなさって議論になったことを覚えております。
現状では、控訴審で覆審は原則としてやっておられない、続審でやっているんだというものなのか、現状はどうなのかということも併せて御説明いただければと思います。
【竹下会長代理】これはあるいは中坊委員から御説明をいただいた方がよいのかもしれませんが、先ほど申しましたように争点整理を徹底してやって、集中証拠調べをするというのが新法のねらいであり、そのような枠組みが作られたということはそのとおりと申し上げてよいと思うのですが、実態が既にそうなっているかということになると、これはかなり評価が分かれるというか、要するに、地域差もございましょうし、裁判所と代理人との関係もございましょうし、そうたくさん聞いているわけではございませんけれども、私が伺っている限り、例えば東京などでは比較的法の意図するように行われているけれども、地方の方では必ずしもそうではないというようでございます。
それから、控訴審の点でございますが、この点についても、私は、実務のことは全く存じませんけれども、先ほどの髙木委員の御質問とも関係するのですが、むしろ控訴審では最近は証人調べが少なくなってきたというように伺っております。ですから、水原委員の御質問について言えば、覆審的な審理のやり方ではなくなってきたということになると思いますけれども、逆に髙木委員の御指摘のような問題が出てきたということになるのかもしれません。
もしあれでしたら中坊委員からおっしゃっていただければと思います。
【中坊委員】その点だけに関して言えば、私も最近それほど日常法廷に出ている弁護士ではないんですけれども、私、平成2年に日弁連の会長を辞めまして、初めて大阪へ帰って、大阪高裁の事件に出たんです。そして、我が方が一審が負けている事件でありまして、かなり問題点もあって、控訴審で準備書面を出して、証人申請をしたんです。
しかし、裁判所の実際の訴訟指揮はどうであったかというと、これで結審しますと。証人を申請し、準備書面を書いて争点ありと言っておるにもかかわらず、何の審理もせず、1回限り。それで結審しますと。それで私は弁論再開の申立書を書いて、相当裁判所の在り方というものについて問題ありと。そして、この事件はそれでもう一度やり直すべきだと言って、裁判所の扱い方も、1回で、しかも何も出していない。争点があって、しかも準備書面を出して言っておるものを、何の審理をすることなく1回で結審するんですよ。これが今の高等裁判所の在り方です。
私はそれを非常に問題化して、最高裁にも申し上げて、その事件も調べて、結局、全然違う判断になって、違う和解の方向性を付けた。とにかく再開されて、証拠調べをしたら、全然違う事実が出てくるんです。しかし、今の実際の裁判は、少なくとも、私みたいにそういうことをいろいろ言える人はいいですよ。恐らく言えない人は、それで一審だけで高裁では何の証拠も調べることなく終わったということになるんです。
それのみならず、私はかつてある公の団体が裁判を提起して、それでその事件は家屋明渡しの事件で、それも賃料を増額をして、それについて向こうが払えないというよりも、それは公団の事件でして、入るときは所得制限があるわけですね。一定の所得があるからということで入居した。ところがその人はそこにずっと長い間住んでいる間に定年が来て失職した。その後、値上げになったから値上げをするという裁判がやられたわけです。
それについて一審で非常に長期間掛かったけれども、それは2年くらい掛かっています。控訴審になって、それもまた一回で結審されているんです。そして、結局、強制執行に及ぶんで、その執行の前の日に奥さんと本人が自殺しているんです。それで遺書を書きまして、それを新聞社に送り届けまして、なぜ我々の言い分を全く聞いてくれないのかといって、憤死するといって、妻と一緒に自殺している事件があるんですよ。
だから、今おっしゃるように、私は今日も聞いていましたけれども、今そういう裁判所の実際の在り方というものを、費用からだけだとおっしゃるけれども、実際に裁判の中でどのようなことが行われておるのかということをね。これは全部事実ですからね。それでは、どうお答えになるんでしょうか。
私は先ほどからの話を承っていまして、竹下先生も大変御苦労いただいて、大変よくまとめていただいて、私も非常に参考になったと思うんです。しかし、非常に大切な視点として、我々は何のために論点整理をしてきたんでしょうか。そして、総論で何を言ってきたんでしょうか。我々は法がこの社会の血肉化していないということが問題であるという総論を踏まえて、本日の各論に入ってきたと思うんです。
そうすれば、今の裁判というものがなぜ利用しにくい、あるいは期待に応えていないかどうかということについては、やはり裁判ざたという言葉があるように、どこにあったか。少なくともその一つとしては、弁護士会というものが、問題は官僚制にあったということは指摘しているわけです。
それに対する今日の竹下先生のこのお話を承る範囲で、全くその視点が抜けて、国民を納得させるために何をしてきたか。何が今必要なのか。なぜ国民が、それでは裁判ざたと言うのか。裁判ざたというのは、裁判内の常識と裁判外の常識が余りにも乖離があり過ぎる。今、裁判でも起立、礼と言うんでしょう。あれは私はよく分からぬけれども、天皇主権の当時から、菊の御紋があったときに敬礼をしたといういきさつがそのまま残っている。そして、おはようもおっしゃらず入ってくる。裁判所はこわいところだ。この前から言われているように、証人尋問にしても、横から聞くから正面向いて答えろ。手が震えているのが証人の実態なんです。
そういう実態の中でどうしても裁判というものが国民から遠い、利用しにくいということになっているという争点を言っておるし、少なくとも論点整理の総論としては、そういう視点を我々は持ったと思うんです。
だから、そういうことであれば法が本当にどうしたら血肉化するのかという意味において、裁判所の在り方というのも、費用とか何とかより、もっと根本的に裁判所の常識というものと一般の常識がどう乖離しているのかということについて、少なくとも裁判所側が何らかの意味の反省をしていただいて。私も言いました。現に、最近では私がうるさく言うと、起立、礼とかおっしゃっている人も増えてきているし、法廷に一輪の花をと言えば、多少は増えているところもあるらしいんですよ。
だから、我々の審議会というのは、この審議をしている間じゅうも、裁判所の方も直すべきところは直していただいて、その結果、どうであるか、こうであるかということを言われないといけないと思うんです。
だから、まずもって私は裁判所というものの、その点から来る問題性はどこにあるのか。あるいはないとおっしゃるのか。あるとすればどこにあるのか。その点を私はまずもってやられないといけないと思うのです。
例えば、つまらぬことですけれども、1、2挙げさせさせていただくとすれば、今日の相談の窓口のところがありましたね。裁判利用の窓口の状況で簡易裁判所の相談窓口、9ページにあったでしょう。それを御覧になるとお分かりになるように、「裁判所の公平性を保つため一方当事者のみに便宜を供与することはできない。相談内容については限界があり、一般的な手続教示に止まる」とお書きになっていますね。このことが実際どうなっているかということです。
実際にサラ金の事件が簡裁の事件で圧倒的に数多いんです。私も実際に見に行った。それで余りにも被告の人がほとんど全く答弁しないまま、認めますかなどとやられているんです。私は弁護士会として裁判所の方に対して、せめて廊下にでも、それでは出ていって、弁護士をここへ置かして、机を持ってきてもいいと。せめてこの被告になっている人たちに、利息制限法の違反の抗弁を出そうと思ったら出せる事件なんです。だから、どうしても裁判所が教えられないなら、廊下に出て弁護士が行きますから、これを許可して相談に応じさせるような体制は取ってくれませんかということを言いに行ったこともあるんです。
しかし、それは裁判所が、ここに書いてあるとおりです。公平性。それだったら、廊下みたいなものは、多少弁護士さんに使わせてもいいんじゃないかと言ったけれども、それをキャンセルですよ。
そういうふうにして、いろいろ官僚制ということがどれほどか親しみにくい、利用しにくい。相談なら相談ということについても、それは一方においては分かりますよ。しかし、もっと国民の利用する立場に立って考えれば、いろいろ観点が変わってくると思うんです。そういう意味における視点も、できれば竹下さんの方でよくお調べいただいて、先ほどから言うてるような官僚制ということから問題はあるのかないのかという点についての視点を込めた御報告があればいいと、私はそう思います。
【佐藤会長】中坊委員、今の問題は、これからいろいろな議論をしていく中で、当然論ずべきところがあると思います。今日、竹下会長代理にお願いしたのは、まずもって全体の制度的フレームについてなんです。これから我々は何を問題にしていくのかという最初のイントロダクションをお話しいただいたんであって、今おっしゃったのは今日の段階ではやや過剰な要求のように思います。
【中坊委員】私が申し上げるのは、イントロダクションであればあるだけに、論点整理において我々がまとめてきた視点を持って今度から各論に当たると言ったわけでしょう。そうしたら、訴訟費用がどうだとか、そういう現象面だけではなしに、そういう視点もあって、これから報告していただくということにならないと、その論点の整理で我々がやってきたことと、これから各論に入ってやる時に、今おっしゃったように、これだったら費用とか訴訟保険とか、そこらまでは細かいところが入っているけれども、そういう意味における、官僚制から来ることの問題点というのは、全く今日のペーパーから、項目の中にも入らないまま、この審議が続いていくことについて私は問題があると考える。
だから、私が申し上げているのは、まさに今おっしゃる各論の個々を言うんじゃなしに、少なくともそういう視点も持って、これから論議を始めていかなければ、利用する国民の立場に立って、何が問題なのかという視点の、これからの審議の在り方がないと言っているんです。
【佐藤会長】おっしゃることはよく分かります。次回、中坊委員から弁護士の在り方について御説明いただきますが、そのときに弁護士から見たお話をなさってください。
【鳥居委員】今、中坊先生のお話を伺って、さっきから意見を言おうと思ってメモしておいたのと重なりますので、ちょっと発言させていただきます。
例えば、1番目の「裁判所へのアクセス」という問題を取り上げるとき、アクセスの容易さというのは、私は四つくらいの観点から論点を立ててはどうかと思うんです。その第1は、ここに挙げられたようにいろいろな費用が挙げられています。
2番目は、時間距離、心理距離だと思うんです。ここで今裁判手数料が幾らというのが出ていますけれども、これよりも交通費の方がずっと高い場合があるわけです。ですから、私は時間距離というのが非常に重要なファクターだと。ということは、2番目の時間距離ということは裁判所の配置ですね。
それから、3番目は、施設の明るさ。それから、施設のプライバシーのプロテクション。そういう問題じゃないかと思うんです。人によっては、みんなの見ているところで裁判してもらいたいという人もいますけれども、だれも見ていないところで裁判所に入りたい人だっているわけです。そういう施設というものが明るい環境で存在するということを考えると、やはり日本は後進国だと思うんです。
4番目が、中坊先生が言っておられることで、言葉がよく分からないんですけれども、広義の応接だと思うんです。広い意味での応接ですね。人に対する応接辞令ですね。それは法律の言葉に落としにくいところなので、つい我々こういう論点整理で落としてしまうけれども、とても大事なことだと。
医者であれば、昔は、どうなさいましたと言って、帰りには、お大事にと言って送り帰せと教えました。しかし、今はそういう教育をする医学部はほとんど壊滅的な状態で、どうしたのとか、黙っていきなり診察を始めるとか、はい、検査しましょうという者もいると。こういう時代になっているわけです。まず真っ先に医者に教えなければならないことは、どうなさいました、どこが苦しいんですかというところから始まるわけで、それと同じことをどうやって実現していくかということを、私が今、中坊先生の話を聞いてみると、同じ問題があるように思いますので、このような論点を立てるというのは一つじゃないかと思うんです。
【中坊委員】今、鳥居さんのおっしゃったように、例えば裁判所の配置だけではないんです。御承知のように、今度の新民訴の改正のときも、合意管轄が問題になったんです。最近の事件に限らず、クレジットの事件というのは、みんなほとんど白紙でサインしておって、その合意管轄というのは、全部債権者側が自分のところに書くんです。そうすると、北海道の事件が京都で行われる。私自身、一遍京都の簡易裁判所にアトランダムに出して、30件出して、どこが管轄がありますかということを調べに行ったことがあるんです。
率直な話、最高裁から非常に嫌われました。しかし、行ったら私はびっくりしたんだけれども、簡裁の書記官は、中坊さん、よく来ましたと、どうぞ見てくださいと、コーヒーまで出してくれるんですよ。
アトランダムに本当に調べないと意味がないでしょう。調べると言ったら、あなた下手だからこちらが調べてあげますと調べて、30件出して、そのうち1割も京都の簡易裁判所に管轄がないんです。
私はそういうことを調べたり、いろいろしてきた中において、今おっしゃるように、裁判所の親しみやすいとか言うなら、今まさに鳥居さんのおっしゃったように、配置だけの問題じゃないんです。だから、制度と言えば、管轄の合意の問題がどうなっているか。
それは確かに今度の新民訴で我々は言いました。しかし、それは御承知のように、それは結局ならなかった。しかし、ならなかったことが一体どういうことになっているか。簡易裁判所の主な事件というのは、クレジットとかいう事件が圧倒的に多いわけです。そういう事件の大半が今どうなっているか。私は今、佐藤会長におっしゃっていただくように、だけれども、そういう視点も持って、我々の審議会が審議を進めなければ、これは多くの国民が見ている中でやっているんですよ。
だから、そういう視点も込めて、これから御報告をするということにしないと、何もかもが今おっしゃるように、まず費用のところからいって、これで問題ないですわということになってしまう。
【佐藤会長】それは否定しているわけじゃないんです。
【中坊委員】そうですか。それでは結構です。
【髙木委員】これからどういう議論の仕方になるのかお伺いしたいと思います。私、冒頭質問をしたんですが、今、こういうふうにレポートというか、問題提起をしていただきました。いろいろ論点がそれぞれについていろいろあるんですが、例えば民事の裁判の充実、迅速化等について、今日例えば皆さん方が少しずつ言って、もうおしまいになってしまうのでしょうか。
【佐藤会長】私の方から申し上げますけれども、前回18日の審議会で申しましたように、人的インフラから議論を始めるということを私ども決めたわけです。ただ、その前段として、最初に司法の制度的状況について論点としてどういうものがあるか、全体的にまず認識しましょうということになり、それで竹下会長代理にお願いしたわけです。今日の最後の方の時間の都合で、十分お話しできなかったかと思いますが、こういうことを制度的にきちっとやろうとすると、結局は人的な基盤を整備しないといけないというところが今日のお話のポイントなんです。
だから、今日、竹下会長代理が挙げられたいろいろな論点というのは、まさに制度の問題を議論するときに十分やっていただくつもりです。時間の関係でどこまで十分かということはあるかもしれませんけれども、それはそれとして十分やっていただくというつもりでおります。今日の話は、はい、これで終わり、では、先に進みますという趣旨ではないということは、くれぐれも御理解いただきたいと思います。
【髙木委員】別途時間があるから、今日は言いたいことも余り言わなくてもいいということですか。
【佐藤会長】いろんな機会がありますから。
【鳥居委員】あとどういう論点があるかという観点で、まず人的な問題という観点に絞ってしまうと。先ほどは応接辞令という言葉で漠然と表現しましたが、それをどう教育するか。それから、それを制度にどう落とすかということを私は申し上げたかったわけです。
もう一つ申し上げたいのは、司法と行政の境界領域、これは私素人でよく分からないんですが、例えば検死の仕事をする医者、検死官。これは行政なのか司法なのか私は知りませんが、例えば本当にだれが見てもよく分かるような死に方をして死んだ人が、たまたま夜死んだ。そうすると、普通だったら12時間くらい警察で家族まで待たなきゃいけない。
あるいは司法解剖が必要だと判断されると、不幸にして夕方死んだから、次の朝までみんなで泣いて待っていなければならないというのが現実です。こういう境界領域。
それから、知的財産の領域で言えば、金融商品の、本当にちょっとひねっただけのようなものが外国ではどんどん特許化されていっている。それに対する対策を講じようというときに、今までの日本の法制度で言うところの法曹三者だけでできるのかということを考えると、境界領域というのは非常に重要になってくると思いますので、論点整理の中で、もう整理は終わりつつあるわけですが、している最中ですが、その論点の中に入れていただいて、それを結局、教育の面ではどう扱うかという観点からも扱っていただけると非常にありがたい。それはADRなのかどうなのか分かませんが。
最後に私もう一つだけ、これは今度は違う観点から、素人としてお願いでありますが、今の中坊先生の長年の、本当に情熱ほとばしるお話を伺っていても、依然として素人の私に分からないのは、こういう話は一体どの法律を改正することによって実現するのかという対応関係は、素人には全く分からない。その対応関係というのは、時々でいいですから、事務局から付けてもらえるとありがたいと思います。
【竹下会長代理】中坊先生がいろいろおっしゃられましたが、その問題は、私の考え方によるとまさしく法曹一元の問題なのですね。今日は、法曹一元の問題に立ち入って論点整理をするということは、私の役目だとは思っておりませんでしたから当然触れないわけです。
それから、中坊委員のお考えとしては、官僚司法というものを直さなければという、その視点から論点整理もやるべきだとおっしゃいますけれども、それは人によっていろいろ考え方が分かれるところですから、いずれその問題を正面から取り上げるときに議論をしていただきたいと思います。そういう視点が入っていないから論点整理としては不十分だとおっしゃられると、私としては、それはいささか筋違いではないかと申し上げざるを得ないと思います。
それから、鳥居委員がおっしゃられたアクセスの問題についての論点はこういうところにあるのではないかという御指摘は、私とそう基本的には違わない。応接の問題とおっしゃられたのは、私は相談窓口の拡充なり設置なりという中に含めていたつもりなのです。どこへ行ったら一番よくその人が必要としている司法に関する情報を提供してもらえるだろうかというときに、中身さえそろっていれば、応対の仕方はどうでもいいという問題ではございませんから、その中に含めたつもりでございました。あるいは言葉が足りなかったかもしれません。
それから、時間距離の問題は、結局、裁判所の配置の問題になると思います。
中坊先生がおっしゃいましたけれども、新民訴では専属的合意管轄に縛りを掛けましたので、旧法のようなことはありません。幾ら当事者間の合意でこの裁判所でやるのだと合意しても、裁判所の方で当事者間の公平上問題があると思えば、ほかの裁判所に移送できるようにしてございますので、今言われた点については手当てができていると申し上げられると思います。
【中坊委員】あえて御異論を申し上げるわけじゃないけれども、先ほど私の言うた問題が、全部法曹一元だけの問題ではないと思うんです。この前から言うているように、すべてが有機的に結合して、例えば今の管轄の、いわゆる裁判所に来られない、遠いところになれば、管轄という制度上の問題になってくるわけでしょう。
だから、すべてが法曹一元の問題に帰着するんじゃなしに、利用しやすいという立場からそれぞれが人的も制度も、皆が有機的に結合しているわけですから、我々としてこれから審議をしていくけれども、確かに担い手問題からやっていこうと。それが根幹だから、それをやるのはいいけれども、今、必要なことは、それを担い手、人的インフラ問題だけとして、法曹一元の問題だと、こういうふうには特定しないで、みんなが大きな視野の中に、ここに位置しているんだという位置づけを常に忘れないように審議しましょうやと言っているだけです。
【藤田委員】余計なことかもしれませんが、官僚司法を排さなければならぬとか、国民に対して血肉の通った応対をしなければならぬという点は、全く私も同意見でありますけれども、先ほど中坊先生のおっしゃることを聞いていると、簡裁の実態としてサラ金業者の言いなりになって借りた人をいじめているように聞こえたものですから、簡裁の現場で苦闘している人たちのために一言代弁いたしますと、法律に反する制限超過利息を元本に充当して計算し直させるということは日常簡裁の現場でやっていることでして、債務者が出頭しない支払命令の手続でも同じです。また、民事調停でも御指摘のとおり、サラ金とかクレジットの関係の事件が大部分を占めている。しかし、それについても、超過利息を元本に充当するとどういうことになるかという計算をするソフトをつくって、現場に配付しているわけであります。
それから、合意管轄の問題につきましても、業者は専属的合意管轄の規定を契約の中に設けてくるわけでありますけれども、どうやったらそれを裁量移送して、債務者に手続上の不利益を被らないような形で処理することができるかということを、簡易裁判所判事の研究会とか、あるいは現場で手続を担っている書記官たちの研究会とか、そういうような席上でいろいろと議論をして、どういうふうにやったならば適正な処理ができるかということを考えているということを、一言代弁させていただきたいということであります。
それから、竹下会長代理に対する質問ですが、ADRの重要性というのは、非常に大きなウェートを持っている問題です。21世紀政策研究所でも市民コートということをおっしゃっています。そのADRの実態というのを先ほど御紹介いただいたんですが、ADRとしての民事調停、家事調停、これは確かに質量ともに大きな機能を営んでいると思うんですが、それ以外のいろんな民間、あるいは行政でのADRがそれに比肩するところまでいっていない。私も第一東京弁護士会と第二東京弁護士会の仲裁センターで仲裁をやっておりますし、建設省の中央建設工事紛争審査会で建設工事に関する仲裁・和解をやっておりますが、いかにも件数が少ない。これが単なるPR不足なのか、それともやはり陪審法の関係で施行停止に至った原因、いろいろな見方はありますけれども、一つには官尊民卑の遺風だという見方もあるわけです。そういうことが民間のADRに影響しているのかということが問題と思います。今後ADRを活用して、司法と並存していくことが、紛争の適正な解決のために重要だと思うんですが、この問題の解決がADRの機能を更に発揮させていくための改善策の基礎となると考えますので、その点のお考えを伺いたいと思います。
【竹下会長代理】先ほど申し上げたように、ADRの重要性が各方面から指摘されていることは私も重々承知しているのでございますけれども、実態として、結局裁判所の調停は非常によく利用され、社会的にも大きな役割を果たしている。ほかのADRが重要な役割を果たしていないと申し上げるつもりは毛頭ないのですが、期待されたほどではないのではないか。
私は実を言うと、第二東京弁護士会が最初に作られて、各地の弁護士会で同じように仲裁センターをおつくりになったときには、恐らく最初の意気込みは、官の裁判所に対して民の裁判所とするくらいのおつもりだったのではないか。私も大いに期待をしたのですけれども、結果から見ると、原因はどこにあるのか存じませんけれども、そんなに事件は増えていない。とても調停に匹敵する、あるいは訴訟に匹敵するような数にはならない。
そういう点で、我が国ではADRの利用というのは、確かに観念的には必要性はよく分かるのだけれども、果たして実際に言われているほど国民が必要としているのかどうかという点でちょっと疑問を持っているのです。しかし、これは前によく井上委員が言っておられたように、現在の段階の私の考え方ですので、皆さんの御意見を伺って、考え方を変えるということは十分あり得るところです。
【北村委員】これからだんだん法律専門用語と言いますか難しい言葉が、非常に出てくるんじゃないかと思うんです。専門家の方は非常によくお分かりかもしれませんが、私などは今日伺っておりまして、議論の過程を伺っておりまして、何か難しい言葉が、しかも文字に書いてあれば何とか分かるんですけれども、出てきてしまいますと、どういう意味なのかということを考えているうちに次に進んでいくという形になりまして、そういうことを配慮して発言していただけると非常にありがたいなというのが1点あります。
それから、先ほどから司法の、国民にとって血となり肉となるというようなことでおっしゃられている部分についてですが、それはよく分かるんですけれども、それだったら、法というものは全部横書きにするというのが一番血となり肉となりやすい方策なんじゃないかなと。特に裁判の迅速化などというのでワープロが使われて云々というお話がありまして、確かに、今日の資料なども全部横で出してきていただいていますね。数字が入りますと、縦だったら恐ろしいことになるなと思いながら見ていたんですけれども。そういうことというのは、こんなのは素人しか言わないだろうなと思うものですから、発言させていただくんですけれとも、判決の文章というのは縦ですね。それはなぜ横にならないのかというのが私は不思議でしようがないんですけれども、横にするともっと速くなるんじゃないかなというふうに思うんですけれども。
以上です。
【藤田委員】今、縦横の話が出ましたが、知的財産権事件などでは、化学式、構造式などが出てきますので、横書きになっているものがあります。それから、手形・小切手判決も定型的に横書きになっています。法律、規則などで、例えば書式などが決まっている。それを全部変えなきゃならないということで、大勢としては横書きの方向に向かっていると思いますけれども、いろんな手当てをしなければならないということがあります。これは笑い話ですけれども、法律を横書きにすると、憲法を改正しなければならないという話があります。というのは、天皇は左の国事行為を行うとか、内閣は左の事務を行うとかいう規定がありますね。横書きにすると、左でなくて、下になりますので。これは笑い話ですけれども、そういう話もありますが、全体としてはおっしゃるような方向に向いているんだろうと思います。
【事務局長】事務局の方から補足いたしますと、裁判所の判決書は来年からすべて横書きになるそうでございます。平成13年1月からです。
【佐藤会長】北村委員の御要望は、第1点の方は、私どもそれぞれ気を付けるべきところだろうと思います。ごもっともだと思います。
【井上委員】我々も不注意なところがありますので、適宜御質問していただければと存じます。十分説明できるかどうか分かりませんが。
それと、私もレポーター役を仰せつかっているのですが、このレポートでは、一応、制度の現状はどうであって、そこにどういう問題点があるのか、それについてどういうことが議論されているのかを整理するというのがベーシックなことだと思うのです。その上で、どういう色を付けていくのかは、レポーターによって随分差があり得るので、その点は、ある程度のバリエーションをお許し願いたいと思います。
今日いろいろおっしゃられたように、国民に利用しやすい制度に改めるべきだということ、それは確かに論点整理の総論に出ているのですけれども、現在はなぜそうなっていないかの原因がどこにあるのかということについては、我々の受け止め方にも差があるのではないか。その点は、報告を聞いた上で、今日まさに中坊先生がなさったように、いろんな見方があるのを示してぶつけ合っていき、それでまた、議論を進めていくというのが、あるべき姿じゃないかと思うのです。先に弁解するようで心苦しいのですけれども。
【中坊委員】言わなければいけない意見もあるだろうし、私のように現実に見てきてこうだと言っている話もあるわけですから、そこら辺りをみんなが出し合って、そして有機的なものとしてできるだけ話しして、今の北村さんのような話、私だって正直言って知らなかった。そういう話もみんな出てくるこの審議会であってほしいなということを言っているわけです。
【竹下会長代理】全く異論ありません。
【佐藤会長】去年でしたか、髙木委員がタブーをつくらないでほしいというお話しもありまして、そんなことしませんと申し上げたことがありますけれども、率直に意見の交換ができるよう意を注ぎたいと思います。ただ、最終的にはまとめていただかないといけませんけれども。我々としては結論を出さないといけないわけですから、そこはいろいろ議論する過程で収斂ということもお考えいただかないといけませんが、それぞれの立場で率直に意見をおっしゃっていただきたいと思います。
時間も若干ありますので、特に何かおっしゃりたいことがあれば。
【髙木委員】先ほどいろいろお答えいただいたけれども、データがあるものは出してください、お願いします。
それから、さっき新民訴の話が出まして、竹下先生のお話の中でもディスカバリーのお話などもありましたが、新民訴法の中に、証拠の関係で、ディスカバリーに近い制度があると聞いています。その制度の実際の使われ方の実態がどうなっているのか、もう2年経ちましたので、分かったら教えていただきたいと思います。
【竹下会長代理】当事者照会という、相手方に質問書をぶつけて答えをしてもらうという制度ですね。
【中坊委員】まあ提出命令の範囲というのもまだ拡張されているから、だから両極端あるんじゃないでしょうか。ちょっとよく分かりませんけれども。
【竹下会長代理】統計的な数字として出てくるかどうか分かりませんけれども、もともと裁判所が関与しないで当事者間でやるという制度なものですから、かなり難しいように思います。
【井上委員】その点はまた視察等も計画されているようですので、その機会にそれぞれの関係者にお伺いすればよろしいのではないですか。数字で出すというのは難しいのではないでしょうか。
【竹下会長代理】何かプライベートな関係ででも分かったことがあればまたお知らせします。
【髙木委員】実態をよく知らないものですから。と申しますのは、例えば、労働事件などの関係で言えば、いわゆる証拠収集なんてまともにできずに、裁判所になかなか行けないんですね。使用者がいっぱい持っておるとか、それぞれの消費者裁判などででも企業が持っているとか。そういう意味では、証拠を、とかく訴訟提起するのに前提になる要件を整えられないから泣き寝入りというケースが圧倒的に多いと思うんです。そういう意味で、ディスカバリーみたいなところまで行けるのかどうかよく分かりませんけれども。だから、アクセスしやすいということでいろいろ吟味していったら、今言うまさにこれがアクセスの障害だと思うんです。アクセスというよりアプライできない障害になるという意味で、是非論議しなければと思います。
【佐藤会長】今後の議論で、今の問題も当然出てくることだろうと思います。
【石井委員】次回の審議会で「弁護士の在り方」について議論するということで、先ほど提示されました弁護士地図の件で中坊先生にちょっと教えていただきたいと思います。私みたいな技術屋から見ますと、この地図の作り方について、色分けの方法とか、説明とか、大変分かりにくいと感ぜられます。恐らく、こういうものを作られたということは、弁護士さんの発想法からすると、これでいいのだと思って作られたとは思います。
例えば、白の箇所の説明がなくてもお分かりになるような方々の集まりかもしれませんが、私などが、今後、議論に入れていただく場合に、弁護士さんの一般的な発想法というものをある程度理解してからでないと、いろいろなことを申し上げられないと考えまして、ちょうど一つのいい例になると思って、先生から、これでいいのだということを、あるいは、弁護士さんの一般的な考え方はこういうものなのだということを、解説をしていただければと思ったからであります。技術屋の発想とは違うのだよとか、そういうことでも結構ですので、教えていただけたら、ありがたいと思います。
【中坊委員】これは正直言って、私が会長の当時にできた地図でして、その後これは書き直っていない、恐らく平成3年か、それぐらいで、私が会長のときに出来上がったので、しかもこれは正直言って弁護士の自己反省のもので、要するに、裁判所の管轄がありまして、その管轄を一つの基準に置いているわけです。管轄があってそこになぜ我々の弁護士が一人もいないのかと、支部なら支部があるのにかかわらずどうであるということの視点に立ってこれはつくられておるので、ある意味において確かにおっしゃるように府県の単位とか、勿論府県が大体裁判所の単位になっていますからおおむね一致していますけれども、やはりそういう視点も入ってこの文書はでき上がっていると思うんですね。
ただ、私たちがこの文書を作ったときは、弁護士が本当に都市にばかり集中しちゃって過疎地が抜けているじゃないか、そういう言葉はよく出るんです。しかし、それを実際地図に落としてみたらどうなるのかという発想が正直言って我々になかった。だから、それを我々が一応業務対策委員会というところでこういう文書を作ってくれたといういきさつなんですね。だから、あくまでも裁判所の管轄というものを前提にしてこの地図は基本的にでき上がっているんです。
だから、確かに今おっしゃるように、私たち皆さんに見せるというのであえて提出したもので、これは基本的に弁護士内部で業務対策委員会の業務シンポのときにこれを弁護士に自己反省のために配った文書なんです。そういう文書でありまして、今、おっしゃるように、よそ様に何かのときにPRするというよりも、内部の自己反省の文書なんです。
【石井委員】内部の方が御覧になるものだからこれでいいと思われているのもよく分かります。そこが我々の考え方と些か違いますので、一寸と気になって申し上げてみました。そういう方々のことを議論する上において、弁護士さんの一般的なものの考え方をお教えいただけたらと思います。
【中坊委員】石井さんのおっしゃるのはどういうことですか。
【石井委員】例えば、白のところは何人以上になっているという説明がございませんね。それから、色分けについても、普通だと危険区域、例えば、弁護士ゼロの所は赤にするとか、我々の考え方と些か違うものですから。
【中坊委員】申し訳ありません。
【石井委員】先生からそう仰られると困ってしまいます。ただ、発想プロセスの違いを教えておいていただいた上で議論した方がいいかと思ったものですから。
【中坊委員】これはまさに弁護士内部において啓蒙するために我々が過疎地という問題について関心がもっと薄いのではないかと、この赤に書いているというのは目立つように、これだけあるんだよと、これは弁護士会が自分たちでどう思うのかということの反省の意味でこれはつくった基本的な文書なんです。勿論、その業務対策のシンポのときには、一般の市民の方もいらっしゃいましたけれども。
【石井委員】分かりました。でも、くどくて恐縮ですが、例えば、ゼロを赤にするのが一般的な考えのような気はしますが・・・。
【井上委員】ちょっと確認なのですけれども、このマップのベースになった数字は平成3年度のものですか。
【中坊委員】平成3年ぐらいだったと思う。どこかに書いていませんか。
【事務局長】1995年の数字ですね。4年前ですか。
【中坊委員】そうすると、そのほかにもう一度出ているんですね。
【事務局長】多分そうでしょう。つくり直したんでしょう。
【事務局(丸島主任専門調査員)】中坊委員の言われたのは「0~1マップ」でして、これは「0~4マップ」になっています。何度か作り直されているようです。
【中坊委員】ちょっと私の勘違いです。そのときのこれでも改訂版だそうで、すみません。
【井上委員】色分けは地裁の支部管轄を単位にしたものですね。
【事務局(丸島主任専門調査員)】支部管轄です。
【石井委員】一般的なことでもう一つ。
いつもお配りいただくいろいろな方からの意見書というのがありますね。この間も大量に会社の方に送っていただきましたが、それを拝見していましたら、案外外国からのも来ておりますね。それで、また、今日配られた意見書を拝見すると、ちゃんとインターネットを使ったものもかなり混じっておりまして、この間送っていただいたのはインターネットより郵送された書類が中心で、やはり、インターネットの番号の周知徹底が足りないのではないかという感じがいたしました。
新聞社の方にお願いして、徹底されていないようであれば記事の最後のところに「お問い合せ先」とか、「何か御意見は」というのをちょっと入れていただけるようにすると、今後よくなるのではないかと思ったものですから、一言だけ申し上げます。
【佐藤会長】それは考える余地がありますね。
【事務局長】インターネットをお使いにならない方が文書で送ってこられるんです。
【佐藤会長】それはしようがないですね。
【事務局長】手書きの方とか、いろいろいらっしゃいます。
【石井委員】それはそれでいいと思います。ただ、外国の方々にどうやって番号を知らせたらいいのかよく分かりませんので。この中に、英字新聞の記者の方もおられるんですか。
【事務局長】傍聴のときに。
【石井委員】そうだったら、そういう方にもお願いして、番号を御案内いただき、海外からも意見が届くようにしておいた方がいいのではないでしょうか。
【事務局長】いろいろ考えてみます。
【佐藤会長】まだ、いろいろ御議論がございましょうけれども、時間もまいりましたので、そろそろこの問題については締めさせていただきたいと思います。
先ほど申し上げましたように、今日は制度全体にわたる論点を竹下会長代理に無理申し上げて整理していただいたわけで、中坊委員のお話もありますけれども、会長代理が触れられた検討すべき論点というのはいずれ私どもが議論しないといけない事柄です。それぞれが重要な事柄であることは言うまでもありません。そこで、今日お出しいただいた検討すべき論点、そしてそれをもとに今日御議論いただいた結果を項目的に要約して文書として残してはどうかと思います。今後の議論のベースとして有益かと思います。次回までに事務局の方でちょっと整理してくれませんか。
【事務局長】分かりました。
【佐藤会長】中坊委員がおっしゃったような更に深い問題は、これから議論することでございまして、ともあれ、その時々の会議で、以後の議論のベースになると思われるものは文書としてできるだけ残していきたいというように思っておりますので、今回のものから、そういう形を取らせていただきたいと思います。
今回の文書はできれば次回の会議でお示ししたいというように思っております。その点はよろしゅうございますか。
先ほどもちょっと申しましたけれども、今日の会長代理のお話は、全体の制度上の諸問題についてでありまして、そうした諸問題をつきつめていきますと、要するに、人的なインフラをきちんと整備しないといけない、いかに制度をきれいにデザインしても人的インフラが伴わないとなかなか動かない、やはり人的インフラが非常に重要なんだということのお話ではなかったかと思います。
それで、次回は中坊委員に弁護士の在り方についてお話しいただくということになっているわけです。ただ、弁護士の在り方についての話が1回で済むのかどうかは問題で、場合によっては22日にも一部更に議論する必要が出てくるかもしれません。
そして、そこで議論した上で、やはり司法の拡充ということが我々の審議会に課せられた極めてベーシックな根本的な問題だということを確認したい。司法の拡充には検察もそれから裁判所も含まれておりますが、とりわけその中で重要なのが今日の竹下会長代理のお話にもありましたように、弁護士の在り方なわけで、だからこそ、2月8日にまずそこから入ろうということであります。そうして、2月中に司法の拡充の必要性をもう少し具体的にイメージとして確認した上で、3月に法曹養成の問題に入りたいというように考えております。法曹養成の問題についてのレポーター役は既に井上委員にお願いしておりますが、そんな段取りでよろしゅうございますか。
【中坊委員】この次は、私はやはり今日の竹下さんと同じように一旦1時間ぐらいお話しすればよいと。それでそこでまた皆さんの御意見を受けて、この次どうするかと、そういうことですね。
【佐藤会長】はい。それで、もし必要がありましたら、どうぞ事務局の方に資料とか整理をお願いになってください。
【井上委員】私の方は3月ということで。
【佐藤会長】はい。3月、それから4月。
【井上委員】それを目標にして準備をすればよく、繰り上がることはないですね。
【佐藤会長】それは不意打ちにならないように配慮したいと思います。
【中坊委員】先ほど会長のお話ですと、私としても、一種の遠近法ではないけれども、一番近いところはやはり担い手問題、いわゆる人的インフラとして書いて、いわゆる制度インフラもいっぱいあるわけですね。だから、どちらか濃淡を付けないと、私もおっしゃるように何もかも全部というわけにいかないと思いますので、だから、次回は、今までからもそういうお話でしたし、人的インフラという立場、そこはいわゆる近の方でして、遠の方はまた遠の方でそれはまたこれからのいろいろな問題でやっていくと。だから、差し当たって私が今頭に思っていますのは弁護士の在り方、あるいは人口の問題、それからまた接近障害の問題、ここまではやはりまず近の範囲ではないかと思うんですね。あと、いろいろ制度も直してくる中において出し、また、井上さんが担当していただく、どうして弁護士が生まれてくるかというところは必然的に私としてはのけたいところになりますし、だから、そういうふうに大体範囲を絞って、人的インフラという立場から、そこは近というところで書いて、あとは遠というふうにしてお願いしたいと思います。
【佐藤会長】では、この問題はこの程度でよろしゅうございますでしょうか。
どうも会長代理、今日はありがとうございました。
それでは、あと15分ぐらいで終わりたいと思っておりますけれども、まず2番目のアンケート調査についてです。
実施の目的や時期、調査の内容などについて、この場でなかなか細部まで詰め切れないところもございますので、事務局でもう少し検討してから時期を見て、たたき台のようなものを皆様にお示しして御審議いただければと思っておりますが、今日、この段階で何か特にここを注意してほしいとか御意見ございましょうか。よろしゅうございますか。
そうしたら、事務局の方で、すみませんけれども、たたき台のようなものをつくっていただきたいと思います。
それから、次に地方公聴会の実施についてであります。前回、大阪のほかに札幌、東京、福岡で公聴会を実施し、その他の場所でも適宜実情視察を行っていくということをお決めいただきました。4か所の公聴会の日程について事前に資料で御覧いただいておりますけれども、確認のため、同じものがお手元に配付されていると思います。御参加いただく委員の調整については後日事務局から御都合を伺わせますので、そこで調整したいと思いますが、そんな形でよろしゅうございましょうか。
【井上委員】順序は、この順序ですか。
【事務局長】この日程で決めさせていただきました。
【中坊委員】ちょっと聞きたいんですけれども、余り応募者というのが多くないと。
【事務局長】今のお話ですが、大阪の地方公聴会の応募状況について御報告いたします。
公述人の意見発表者の応募は1月25日で締め切らさせていただきましたけれども、応募者数は98名に上りました。若干の内訳を申しますと、男性が74名、女性が24名、年齢別でいきますと最年長が84歳で最年少が22歳、多い順で言いますと40代が25名、50代19名、60代19名ということになっております。
それから職業でいきますと、自由・自営業、会社員等という方が25名、あと主婦、学生、無職という方で分類いたしますと、17名です。
その次が隣接職種が14名、弁護士さんが12名、公務員が12名、大学の先生が6名というような割合になっております。
それから住所地でいきますと、大阪が圧倒的で65名でございますが、札幌から福岡まで応募はされております。以上が公述人の応募状況であります。
次に傍聴者の希望でございますが、これは2月15日を一応の締切予定とさせていただいておりますが、昨日の段階で217 名の応募がございました。
以上でございます。
【佐藤会長】まあまあですね。
【山本委員】98名の方全員が話すんですか。
【事務局長】いえ。会長と会長代理に6名を選んでいただければということで、1,000 字程度の小論文を出していただいております。
【佐藤会長】選定につきましては、今の話のように、私と会長代理が御一任いただいていますので、恐縮ですけれども、お任せいただければと思います。選考の上で2月22日の会議で結果を御報告できるようにしておきたいと思います。
次に、海外実情調査の実施についてでございます。訪問先などの詳細の詰めは、私と会長代理、それから井上委員にお任せいただいておりましたけれども、相談の結果、委員の皆様の御都合も勘案しまして、実施計画案を作成しました。事前に御覧いただきましたけれども、これも確認のため同じものを席上に配付しております。
何か事務局から説明ありますか。
【事務局長】本日配付いたしました計画案は、これまでの案に加えまして、参加委員の各班の割当てを行ったものであります。この点につきましては、前回審議会終了後、各委員の御希望をお伺いし、会長、会長代理とも相談の上決めさせていただきました。各班のバランス等から委員の中には御希望に添えないケースもございましたけれども、御了承いただきました。どうもありがとうございました。
また、韓国につきましては、これまでの案では、アメリカの調査スケジュールが過密であったこと、韓国への調査を別途企画することはそれほど難しいものではないということなどから、会長、会長代理とも相談の上、今回の調査から外させていただきました。韓国の調査を取りやめた分につきましては、アメリカの調査に振り替えましたので、アメリカ班の全体スケジュールは期間としては従前どおりで、より充実したものになろうかというふうに思います。
なお、訪問都市、訪問先の選定につきましては、事務局において在外公館との連絡を取るなどしまして、情報収集を行っており、会長、会長代理とも相談の上、早急に確定していきたいというふうに考えております。
以上であります。
【佐藤会長】どうもありがとうございました。ということでございますが、この点はよろしゅうございましょうか。
次に、1月25日に司法研修所を見学してまいりました。参加された委員の皆様どうもお疲れ様でございました。修習の実際の様子を見学して、教官の方々からも直接お話を伺うことができまして、大変貴重な機会であったというように思います。御都合で参加されなかった委員の皆様にも、事務局から資料をお届けしますし、御希望に応じて御説明もさせていただきたいと思っております。
それから配付資料の確認をお願いします。
【事務局長】今回の配付資料には、本日の会長代理の説明資料を入れておりますほかは、毎回お配りしておりますとおりでございまして、特に説明はございません。
【佐藤会長】それでは、以上でございます。先ほどからも申しておりますように、次回は2月8日午後2時から、この審議室で開催したいと思います。議題としては、中坊委員にレポーターをお願いしておりまして、弁護士の在り方について御審議いただくことにしております。
それから、本日の記者会見はいかがいたしましょうか。モニターが入りましたから、今回からは細かな議事内容の説明はよろしいのではないかと思っておりまして、比較的短時間に済むかもしれません。いらっしゃいませんでしょうか。
では、どうもありがとうございました。御苦労様でございました。