司法制度改革審議会

第13回司法制度改革審議会議事録

日 時:平成12年2月22日(火)14:00 ~ 17:20
 
場 所:司法制度改革審議会審議室
 
出席者
(委員、敬称略)
佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、井上正仁、北村敬子、髙木剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本勝、吉岡初子
(事務局)
樋渡利秋事務局長
 
  1. 開会
  2. 「弁護士の在り方」について
  3. 「裁判所・法務省の人的体制の充実」について
  4. 閉会

【佐藤会長】 それでは、時間もまいりましたので、ただいまより司法制度改革審議会の第13回会合を開催します。

 前回、中坊委員にレポーター役をお願いしまして、「弁護士の在り方」に関し、「弁護士制度改革の課題」と題して、我が国の弁護士制度の現状や問題点などについて、司法制度、あるいは弁護士制度の歴史にさかのぼって御説明いただいたわけであります。

 今回は前回の後を受ける形で中坊委員から「弁護士制度改革の基本論点」を中心に御説明いただくということにしております。

 本日の主な議事としては、この中坊委員からのレポートとして、1時間ほど御説明いただいた上で、休憩をはさんで、御説明を基に1時間ほど意見交換をしたいと思っております。合計2時間取っておりますので、その中で御審議いただきたいと思います。

 中坊委員には前回に引き続きまして、大変御無理をお願いいたしましたけれども、御多忙の中、精力的に御準備いただきました。

 それでは、早速ですけれども、中坊委員の方からよろしくお願いいたします。

【中坊委員】 それでは、前回に引き続きまして、弁護士制度改革の問題その2、いわゆる各論部分を、今日はさせていただきたいと思います。

 皆さんのお手元にレジュメが配付されておるんですが、それを見ていただいておわかりいただきますように、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲという三つから成り立っています。

 Ⅰが「弁護士改革を論じる視点」ということで、「1 はじめに」として「弁護士改革を論じる三つの視点」。それから、「前回の報告のまとめ」。総論に引き続いて各論をやりますので、総論の要約を少しさせていただくということ。同時に、その中で最後になりましたが「戦後50年の経過と最近の動き」をそのところでやらしていただきたいと思います。

 Ⅱがまさに本論でございまして、「弁護士改革の人的側面-司法の担い手としての主体性の拡充-」の問題。これは五つの点からであります。

 一つが「弁護士人口の増加」。
 二つ目が、「公益性に基づく社会的責務の実践」ということ。
 三つ目に、法曹養成の問題。
 四つ目が、活動領域の拡大の問題。
 五つ目が、関連業種との協働の問題。

 この五点にわたりまして、本日の主題であります担い手問題としての問題点に触れていきたいと思います。

 そして、Ⅲといたしまして、6ページのところに「弁護士改革の制度的側面-弁護士の機能拡充のための制度改革-」ということで、今度は人的インフラの方ではなしに、制度インフラに触れまして、これも五点にわたります。

 一つは、公設事務所の設置の問題。
 二つ目には、報酬の問題。
 三つ目には、情報公開の問題。
 四つ目には、職務の質の向上と執務体制の問題。
 五つ目には、弁護士自治の強化と弁護士倫理の問題。

 こういうことから、制度インフラの一つの方のアクセス障碍という部分に関しまして、今、言いました五点にわたりまして述べさせていただき、最後に制度改革ということで、制度改革には実体法上とかいろんな問題点があるということを少し簡単に申し述べさせていただいて、本日の各論の部分の報告にさせていただきたいと考えております。

 それでは、早速、Ⅰの「弁護士改革を論じる視点」ということでありますが、この点に関しましては「弁護士改革を論じる三つの視点」ということを書きました。これは私、ときどき質問のときにも申し上げておりますように、これから司法改革のいろんな問題に我々が取り組むときに、我々としては、12月21日に我々が一応、満場一致で決めた論点整理というものとの関連において、これらの課題を、石井さんのおっしゃるように、そういう目的に対してどうあるべきかということから論じるべきではないかということを、私としては考えております。そういう意味において、論点整理、なかんずく、それをおおむね3つの視点ということから、弁護士改革を論じ、また、ほかのことを論じるに当たっても、この三つの視点が極めて重要なことではないかというふうに考えておるわけであります。

 その一つは、この論点整理の文章のとおり読みますと、「民法典の編さんから100 年、日本国憲法制定から50年の今この時にあたって、司法に豊かな活力を吹き込むための根本的な制度改革が、行政改革等に続く『この国のかたち』の再構築の一つの支柱として課題設定されたのはなぜであろうか。それは、まさに、近代の幕開け以来、130 年にわたってこの国が背負い続けてきた課題、すなわち、一国の法がこの国の血肉と化し、『この国のかたち』となるために一体何をなさなければならないのか、この根本課題を直視し、それに取り組むことなく、21世紀社会の展望を開くことが困難であるということが痛感されているからにほかならない。」

 まさに一国の法がこの国の血肉と化し、「この国のかたち」と成すという根本問題を実現するために司法改革がどのようになされるべきか、ということが我々のあらゆる問題を論じるに当たっての第一の視点ではなかったかということであります。

 第二といたしましては、また論点整理の文章を読みますと、このような危機感に立って、この国が豊かな創造性とエネルギーを取り戻すために、政治改革、行政改革、地方分権推進、規制緩和等の経済構造改革が構想され実施に移されつつある。これらの改革は国民一人ひとりが統治客体意識から脱却し、自律的でかつ社会的責任を負った統治主体として互いに協力しながら、自由で公正な社会の構築に参画していくことは、21世紀のこの国の発展を支える基盤である、という認識を共有するものであって、今般の司法制度改革はその最後のかなめと言うべきものであるという点であります。

 まさに国民が統治主体として自由で公正な社会の構築に参画するためには、司法はどのようにあるべきかということが、二番目の我々の大きな視点になっておったと思っております。

 三つ目には、これを受けまして、国民が自律的存在として多様な生活関係を積極的に形成、維持していくためには、画一的な行政規制に安住することなく、各人の置かれた具体的な生活状況、ないしニーズに即した法的サービスを提供することができる司法(法曹)の協力を得ることが不可欠である。

 国民がその健康を保持する上で医師の存在が不可欠であると同様に、司法(法曹)は、言わば「国民の社会生活上の医師」の役割を果たすべき存在であるとの見地から、法曹が「国民の社会生活上の医師の役割」を果たすために、司法としてどのような改革が必要かという視点、この三つの視点に基づいて、我々は、この弁護士改革に関しても、論じていかなければいけないという点であります。

 この三つの視点をもう一度我々として再確認しつつ、この弁護士改革についても考えていくことが必要であろうということを前回から引き続いて申し上げております。

 更にそれ以外には、論点整理の中で司法制度改革、弁護士改革というものもほかの司法制度改革とすべて一体不可分を成すものであるという点を強調いたしてまいりました。

 すなわち、一つができて、一つができないというものではない、一貫したものであるということであります。特に担い手問題としての制度を生かすもの、それは疑いもなく人である、人的基盤の拡充こそが今大切である、という担い手問題の中に弁護士改革が位置するということ。

 そして、その弁護士改革というものは、担い手問題における登山口であって、そして、法曹養成改革を裾野とし、検察改革、裁判所改革を貫き、法曹一元及び陪・参審制を頂点に位置づけるという担い手問題に位置するということを前回申し上げてまいりました。

 そのために、現状の弁護士制度のどこに原因があるのか。それがまた構造的、歴史的な原因を担っておって、その結果こうなってきたということ。特に戦前の、弁護士を必要としない社会づくりの司法政策の中において、この弁護士制度の発展が阻害されてきたということ。そして、戦後にわたっても、一応憲法が変わり、弁護士法も改正になったけれども、依然として戦前の、このような構造的原因は戦後も数多く残っておったということであります。

 その中においては、官僚による統治の補完物から、民衆の自治への伴侶と転換するための弁護士制度としても、それなりの艱難辛苦の行程を経てきて今日に至っておるということであります。

 最後に、新しい司法制度改革の中における弁護士制度の改革の論点設定ということであれば、まずもって我々の弁護士の任務である法律事務そのものをどのように理解するのか。特に弁護士の公益性という意味を明らかにして、それが3つの責務に分かれていくということを論じてきたというふうに思っておるわけであります。

 それを受けまして、2といたしまして、ここにも書きましたように、戦後50年の経過、先ほど言ったとおりのことでありますが、日弁連を擁護するというわけでもありませんが、日弁連といたしましても、その中においてそれなりに努力をいたしてきたということを2、3最初に申し上げたいと思います。

 第一には、先ほど言いましたように、戦後も残存した構造的原因によって維持されてきた司法界の旧体制と、新しい国民の利益との矛盾・軋轢が顕在化する過程において、弁護士としては、それなりにそれを克服しようとして、個々の事件を始め、いろんなことをやってきたということです。それなりに市民との共同の運動の中において、それを実現させようとしてきたということであります。この点は、できれば皆さん方としても、客観的に見ていただきたいと思います。

 特に最近10年間、別に私のことを言うわけではありませんけれども、1990年に司法改革を私が提案いたしまして以来、何でも反対の日弁連から、もっと具体的に司法改革を市民とともにやろうということになりまして、過去の実績を踏まえまして、新しく司法改革に向かっていったということであります。

 しかしながら、依然として、だれが見ましても、今の弁護士、あるいは弁護士会のあり様ということは、そのような意味からして、必ずしも満足したものとは言えないと私も考えておりまして、まずその意識を含めまして、根本的にメスを入れてこの弁護士制度の改革を図っていかなけれはならない、このように考えておるということであります。

 以上が大体Ⅰに述べましたことであります。いわゆる視点の問題と、前回の総論に引き続いた部分であります。

 Ⅱが今回の核となるところでありまして、先ほど言いました5つの問題点を提示しておるわけであります。

 まず最初が「弁護士人口の増加」問題であります。この問題につきましては、弁護士人口に関する経緯、量的不十分さというのがまず第一に挙げられなければいけないと思っております。

 臨時司法制度調査会が昭和39年発表しました当時から、弁護士人口の漸増が必要であろうということがうたわれておるわけであります。

 それを踏まえますと、弁護士数に関しましては、昭和39年当時と平成11年とを比較いたしますと、弁護士数はそれでも7,134名から142%増えまして、約一万人増えまして、現在においては1万7,283名ということになっております。その間、裁判所の定員は、1,737名から20%増加して2,090名、検察官の定員は1,067名から22%増加して1,304名であります。その法曹三者の中においては、弁護士のパーセンテージが著しく増えておるという現状にはなっておるわけであります。

 しかしながら、それにいたしましても、現在、既に論点整理の中でも出ましたように、日本の弁護士1人当たりの国民人口は7,319名でありまして、その割合はフランスは3.7倍、ドイツは8.7倍、英国は11.3倍、米国は20.4倍というような数になっております。過少であるということに関しましては、事実であろうと認めなければいけない。そういう意味において、これを根本的に直していかなければならないものであろうと、このように考えておるものであります。

 ところで、この弁護士人口に関しましては、確かに先ほども言いましたように臨司以来、この問題は、法曹基本問題懇談会あるいは法曹養成制度改革協議会等でいろいろ審議をされてきております。しかしながら、依然としてこの問題は、過去のいきさつの中での大きな問題点だと思いますのは、弁護士人口の増加問題は、司法試験改革問題の中の司法試験合格者の増加という文脈で論じられてきたということであります。

 注意すべきことは、弁護士人口、法曹人口の増加そのものを目的としたものではなく、基本的に言えば司法試験合格者、わけてもその中の若年化ということが非常に大きな争点となって、現在までやってきたわけでありまして、平成2年、法務省側、最高裁側は一貫して若年受験者の優遇制度案を主張してまいりました。私が日弁連の会長をしておりました平成2年、やっと司法試験に関しまして、基本合意ができ、そして合格者を600名、700名へと増加することになりました。

 しかし、その間には常に司法修習ということが問題になりました。同時に修習期間の大幅な短縮がなければ大幅増員ができないとか、そういうことになってきたような感を受けておるわけであります。しかし、本来はそういう筋合いのものではなしに、まさに人口問題というものは、もっと司法の機能を充実させるという点から論じるべき問題ではなかったかというふうに考えておるものであります。

 さて、そのような視点に立って、もっと広い視点から、先ほど言うような司法研修所の在り方、受け入れ体制、あるいは期間の短縮とかいうことではなしに、司法基盤の拡充という視点において、大胆な発想からこの問題を論じなければならないと思うわけであります。

 しかも、この弁護士人口の問題というのは、先ほど言う司法修習の若年化とか、その他期間の短縮とかいう問題だけではなしに、やはり法曹養成との関連でも問題があったというふうに思っておるわけであります。

 すなわち、大学の教育の問題、特に今問題となっておりますロー・スクールを含む法曹養成制度の抜本的な改革がある中において、弁護士人口も考えなければならない、このように考えておるものであります。これからは、そういうような法曹養成制度も踏まえた上での弁護士人口の増加問題でなければならないというふうに考えております。

 それでは、あるべき弁護士人口の試算というものをここにしてみました。皆様のお手元にもその点が若干出ておりますし、最後に別紙として「弁護士人口算出の方法」というのが付けられておりますので、それを見て御参考にしていただきたいと思います。

 弁護士人口の試算としましては、いろんな方法から試算できるわけでありますけれども、まず最初には、いわゆる外国との比較でありまして、弁護士1人当たりの国民人口の比率でいきますと、ここにも書きましたように、もしフランス並みにするとすれば、今の弁護士人口は6万5,203名にならないといけないし、ドイツ並みであれば15万767名、イギリス並みであれば19万6,419名、アメリカ並みであれば43万8,078名というような数になるということであります。

 これを考えましたときに、後にも言います我が国の関連資格者との関係ということは、この外国との比較において、当然考え併せなければならないことではないかというふうに考えておるわけでありまして、ここにも書きましたように、我が国には、司法書士が約1万7,000名、弁理士が4,000名、税理士が6万3,000名、行政書士が3万5,000名、社会保険労務士が2万5,000名、合計14万4,000名の関連資格者がおるわけであります。外国におきましては、会計士の存在というのはあり得たといたしましても、先に申し上げましたように、弁護士が要らないというよりも、官の統治の補完物としての存在から、むしろ官の管理・監督する制度としてこのような関連資格者が数多く、弁護士以外に生まれてきたというのは我が国独特の性格の一つでもあろうと考えておるわけであります。そういう点も、後にも言いますけれども、関連資格者というものがどのような経過で生まれてき、今生まれてきているものをどのように扱うかということもまた、弁護士人口の問題については是非考えていかなければいけない一つの要素であろうと思っておりまして、このように外国との比較のみにおいて、我々の弁護士の数をどうするのかということは単純には論じられないということを、まずもって我々としては踏まえていく必要があろうかと思っているわけであります。

 続きまして、試算の二つ目といたしまして、いわゆる住民人口と弁護士との関係であります。やはり全国津々浦々における弁護士へのアクセスへの機会均等という視点から申しますと、弁護士と住民人口との関係を考えなければいけません。ということは、やはり東京とか大阪とかの大都市に弁護士が集中しておるわけでありまして、それを平均すればどうなるのか。先ほど言うように、弁護士1名当たりの住民人口を各県とも7,319名にしようと思えば、今の弁護士の数は2万4,291名にならないといけない。また、弁護士1名当たりの住民人口を大阪並みにしていこうと思えば、3万8,355名の弁護士が必要でありますし、もしこれを東京並みということにいたしますと、8万2,564名の数が要るということも、一つの参考資料として供したいと思っております。

 3つ目には、需要から導く方法であります。これにつきましては、法的需要をどのように理解するかという問題があるわけであります。それにつきましては、法的需要というものについては、アンケート調査が改革協と法律扶助研究会との二つで行われております。一方は1994年、一方は1997年に全国3,000名の対象者で面接調査が行われておるわけであります。それによりますと、平均して1年に成人人口の約2%が法律問題を抱えていたことに大体なるわけであります。そして、平成10年10月1日の成人人口は9,961万9,000人でありますから、その2%は199 万2,380人、約200万件が1年間の法律問題として出てくるわけであります。それを弁護士一人が年間に新件として50件受けるといたしますと、弁護士数は4万人必要だということにもなってくるわけであります。これが需要から導き出しました1つの数字であります。

 今度は刑事弁護に限定して考えてみますと、当番弁護士を完全実施するのに必要な弁護士の数はどれだけかということを考えてみますと、平成10年の逮捕者の総数は年間約10万件でございますので、弁護士の半数が年間4件の当番弁護士をやるというふうに勘定しますと、約5万人の弁護士が必要だということになってくるわけであります。

 最後に、いわゆる法曹一元の裁判官の供給母体としての法曹人口はいかがであるのかということになってまいりますと、大体アメリカとイギリスにおきまして、裁判官と弁護士との対比率は、アメリカが1対29、イギリスが1対23ということになっております。もっともイギリスの裁判官というのはパートタイムの裁判官等がおられますので、一概にそのことが正確には言えないというふうに思っておるわけであります。

 我が国において、それではどの程度の裁判官に対してどの程度の弁護士が要るのかということで、日弁連において計算したところによりますと、2010年から法曹一元を実施して、2020年ごろ裁判官の今の数を1.5倍の3,000名にしたと勘定していきますと、1対20といたしまして、裁判官3,000名に対しまして、弁護士は約6万人となってくるわけであります。

 このように考えてまいりまして、私といたしましては、論点整理のための自分の意見を申し上げるときに、暫定的な意見として申し上げましたように、フランス並みの5~6万人の弁護士人口ということが具体的な数字として浮かび上がってくるのではないかと思います。

 担い手問題の弁護士人口についてこのような試算等をいたしましても、おおむねこの程度の数字が出てくるのではないか。

 しかしながら、先ほど言いましたように、関連業種等資格者というよそにはないものを加えますと、一体どうなるのかということは、また、考えなければならないことではないか。このように思うわけであります。

 以上が弁護士人口ということに関したレポートであります。

 続きまして、二番目の「公益性に基づく社会的責務の実践」、その1として「弁護士像をめぐる論点」というのを書きました。

 前回、総論のときに既に申し上げましたように、私は今回の弁護士改革の大きな柱の1つは、やはり弁護士の職業としての性格そのものをどのように考えるのかということについて、根本的なメスを入れる必要があろうと考えておるわけであります。そこをやや詳細に論じていきたいと思います。

 まずもって私は、弁護士には三つの顔があると思っております。その一つというのは、名前の呼び方は問題かもしれませんが、私自身は当事者性と呼んでいるわけでありますけれども、依頼者の権利・利益を擁護する者としての顔であります。代理人として主にこのような顔を弁護士は持っております。

 二つ目は、やっております仕事の内容、法律事務というものの顔であります。そして、前回既に総論のところで申し上げましたように、弁護士としての法律事務というものは、まさに公衆の利益に関する活動をすることであります。だからこそ、憲法にも弁護士というものが登場してくるわけであります。憲法77条、あるいは37条などで出てくるのは、まさに対象としての法律事務からいくと、こういう顔があるべきものであります。これを弁護士の顔の公益性と呼びたいと思うわけであります。

 三つ目の顔といたしましては、これはだれもが持っております顔でありますけれども、普通の市民としての顔、すなわち生活するための弁護士が事業を営んでおる、いわゆる営業の自由としての弁護士というものであります。この弁護士の事業性という顔と、3つの顔を持っておると考えられるわけであります。

 いわゆる古今東西の弁護士論という問題も、言葉の表現はともかく、当事者性と公益性と事業者性と、この三つの要素がどのように関連づけられ、また調和されていくかということが問題となってくるのではないかと思っております。

 そして、戦前の弁護士というもの、あるいは戦後もその陰を引きずっておりますけれども、弁護士を必要としない社会づくりの政策の結果としては、当事者性は弱い。しかも、公益性は歪曲されまして、官に引き寄せられた公益性ということになり、事業者としての立場の経済的な存立基盤自体が稀弱であったわけであります。

 このように過去を踏まえまして、これからの弁護士像の顔はいかにあるべきかということであります。ここには大きく二つのものの考え方が対立しているわけであります。

 一つは、弁護士の当事者性、事業性を中心に置いて、公益性を稀薄化させる考え方であります。その方々の中には公ということを言えばすぐ官の利益が隠されているのではないかという意味から、公益性の強調に反発するものが弁護士会の中においてかなりおられるわけであります。

 一方においては、同じ弁護士の内部におきましても、弁護士業は単なるサービス業の一つであると。ビジネスとしての弁護士でいいんじゃないか。市場原理がそのまま弁護士に適用されればそれでよろしいという見方もまた存在するわけであります。

 この考え方に対しまして、私が強調しておりますように、いや、そうじゃないんだと。公益性というものをもっと重視して考えて、当事者性と公益性というのは別に相矛盾していないんだ。すなわち基本的人権の擁護と社会正義の実現という使命は、公という意味にさえ理解するならば、基本的人権の擁護活動そのものが社会正義の実現であり、2つは決して矛盾しているものではないんだということが前提になっておるわけであります。

 同時に、事業者性ということで言うならば、そこに問題があるし、私はそういうものではない。事業者といえども、その責務の中に公共的な立場というものがあって、弁護士はそれを指導するものでなければならない。そういう意味では、弁護士が公的な責務を帯びておるということになってよいのではないかと考えておるわけであります。

 そういうことで、今のままで弁護士が気楽に当事者性と事業者性だけを中心に置いて考えるという考え方には私は反対であります。当事者性、公益性をともに追求するものとして弁護士の職務そのものを根本的に考えていかなければならない。

 すなわち、この2-2 で書きましたように、「弁護士の公益性」というものは、先ほど言いましたように、公益性と当事者性の2つが矛盾するものではないということです。同時に論点整理で言いましたように、まさに国民が統治客体意識から主体意識に変わり、弁護士が社会生活上の医師になれば、弁護士の公益性を認識する中において、官からの自由な弁護士であってこそ、いかんなく個人の権利自由のために闘い、真の意味の民衆の自治の伴侶となる。そういう意味における社会生活上の医師であろうと、そのように考えるわけでありまして、いわゆる官の補完物としての弁護士から大きく変わることが必要ではないかと基本的には考えるわけであります。

 このような社会的責務を負いましたものと、職務活動との在り方ということから言いますと、確かに表面的には依頼者との軋轢問題もありましょう。あるいは経済的負担の問題もありましょう。しかしながら、そこを超えていかない限り、弁護士というものが新しい司法制度の中の基盤を成すものにはならない。弁護士が変わらなければならないということを私は痛感するものであります。単なる自由業者としての立場から離れるということが、今回の弁護士改革にとっての大きな問題点ではないかと思っております。

 このことは当然に、今までのように弁護士が、法律事務独占あるいは弁護士自治という特権の中におり、そして、弁護士人口が少ないということからいたしますと、大変な痛みを伴うわけであります。弁護士が一番の命みたいにしている自由というものにも、一定の限界があるということを言うことは、弁護士そのものの性格に大きな変革をすると思うわけであります。

 したがいまして、私自身といたしましては、具体的にこのような弁護士の改革をいたします以上、弁護士法そのものを直していく必要があろうかと考えておるわけであります。そのことは、このように弁護士も変わらなければいけないということを法律をもって明記していくことが必要であろう。単に弁護士の意識改革を望むという程度では足りないと私は考えておるわけであります。

 そこで、現在の弁護士法1条1項はそのままでありますけれども、2項といたしまして、「弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。」というふうに規定されておりますものを、これは私案でありまして、文章は必ずしもそのとおりではないですが、あえて私は「その職務の誠実な遂行をとおして社会的責務を履践するとともに、公衆の利益の増進、社会秩序の維持及び法律の改善に努力しなければならない。」と、2項そのものの中に公益的な責務があるということを明記することがこの際必要ではないかと考えて、ここで報告申し上げたいと思うものであります。

 その社会的責務としては、前回既に触れましたように、三つの責務を帯びておる。すなわち公衆への奉仕と公務への就任と後継者の養成であります。公務の就任というのが裁判官として推薦を受ければそれにならないといけない。あるいはロー・スクールにおいて教えなければならない。そういうものとの関係があるということになってくるわけであります。

 そこにおいては、なるとかならないということは、権限でも特権でもないわけでありまして、これを放棄することは許されない。推薦されれば公務に就かなければいけないということを意味するわけであります。

 そういうことから、また、弁護士法に戻りまして、これも私の個人的な案でありますけれども、弁護士法には24条、公務の推薦を受けたときに就任しなければいけないという義務がありますが、24条の2というものを新設をいたしまして、

 「日本弁護士連合会は、裁判所法に定める下級裁判所裁判官の推薦にかかる委員会 が推薦を求める数の裁判官候補者を推薦する義務を負う。

 2 推薦委員会から裁判所法に定める下級裁判所裁判官指名名簿に登載するための推薦を受けた弁護士は、正当な理由なく裁判官に任命されることを拒むことができない。

 3 前項の正当な理由の有無は、当該弁護士の所属する弁護士会がこれを審査する。日本弁護士連合会は、この審査結果を推薦委員会に報告しなければならない」

 というような規定を設けまして、先ほど言う公的責務という中の公務への就任ということを義務づけるということを、弁護士法に入れるべきではないかと思っているわけであります。

 このように弁護士というものの性格が完全な自由業というものから、公益性を帯びているというものに変えていくためには、2-4で書きましたような基盤整備というものも要るわけであります。いわゆる法曹養成制度の中から既に、「これからあなたたちがなる弁護士というものはこのようなものですよ。」ということを決めていかないといけない。単なる営利のサービス業の事業者ではないんだということを、まず法曹養成の中から培っていって、これが大きな意味における社会的合意にならなければいけない。

 二つ目には、公務の兼職制限規定の撤廃をしなければいけないし、同時に、その意味における弁護士法30条も直していかなければいけない。

 さらに、今までは公務というものには弁護士は参加しないとなっていたものを、これからは行政・立法の中において、市民として法の支配の理念を行きわたらせる者として、これをやっていかなければならないと思うわけであります。

 同時に、このようなものを実践するためには、弁護士会自体も変わっていかないといけないと思うわけであります。いわゆる公益活動を積極的に評価し公表するという制度も必要であり、このような弁護士の経済的な負担について軽減する課税上の工夫も必要ではないか。このように考えておるものであります。

 以上が大体弁護士の公益的責務を負う部門としての自由業の制限ということが2番目の大きな柱であります。

 三つ目は、法曹養成制度の改革であります。この点につきましては、後にレポーターとされております井上さんの仕事の範囲に入るようで恐縮ではありますけれども、弁護士改革を以上のように考えてまいりますと、また法曹養成制度も考えていかなければいけない。すなわち弁護士人口の大幅増員ということに伴いまして、あるいは研修所の在り方、合格者のこともさまざま変えていくということにならないといけないということを踏まえますと、我々として、従来の修習制度というものと根本的に変わった意味における良質の弁護士を養成するということに変わっていかなければならないと考えるものであります。

 同時に、資格試験であるはずの司法試験制度が競争試験になって、極端にこれが難問化し、大学教育が法曹養成から切り離されている結果を生じている点も直していかなけばならない。同時に、大学で教えられている教育も、抽象的な法理の解釈論を講義方式で教えるものではなく、事実と現場から出発する弁護士の養成という観点から直していく必要があろうかと考えておるものであります。

 そのようなことから、ロー・スクールという問題に関しましても、ここに言いますような五つの視点というものが必要ではないかと思っておるわけであります。

 いわゆる法曹養成としてのロー・スクールにおきましては、第一に教育の目的は、少なくとも弁護士養成である。質の高い弁護士、法律家を社会の隅々まで配置するための社会的要請に応じるものであるということが第1である。

 第二に、地域社会に奉仕する法律家を輩出するように、全国に適切にロー・スクールが配置されなければならない。その設立運営に関しても、地域社会と密接に結び付くことが必要であろう。

 第三番目に、現場や事実から出発し、解明された事実関係の中にあるべき法、あるいは正義を見つけて問題解決を図る姿勢を身に付けさせていくものでなければいけない。

 第四番目に、当然そういうことから、カリキュラムといたしましては、公衆への奉仕精神や法曹倫理を十分身に付け、高度の学識、分析能力、応用能力、基礎的で実践的な実務的技能を習得させるものでないといけない。また、そのようなことに関しては、できれば適切な市民的な評価制度が生まれてくることが望ましいということであります。

 第五番目といたしまして、入学の門戸は可能な限り開かれたものにしないといけませんから、経済的理由によって法律家の道を断念する事態が生じないよう、奨学金制度の創設、夜学等の方策が必要ではないかと考えておるものであります。

 以上が弁護士改革から伴いました法曹養成の裾野問題についての意見であります。

 第四番目といたしましては、先ほど言う弁護士の業務そのものが公的性格を帯びて変わってくるという中における活動領域の拡大ということであります。先ほども申し上げておりますように、また、我々が論点整理の中で言いましたように、21世紀における法の担い手、その最前線に立つ弁護士としての役割ということから、行政機関や立法機関、あるいは国際機関、民間企業、非営利団体などの活動領域は潜在的に相当なものがあるわけでありまして、それをどうかして顕在化させていくことが必要であろうと考えておるわけであります。

 そういうことから、行政改革や地方分権の推進では、行政に対する監査、あるいは監察の担い手として、あるいは立法の補助者としてやっていかなければいけないというふうに考えられます。また、報酬のある公職を禁止するという弁護士法30条の規定は、後にも言いますように直さなければいけない。そして、大学教育でもそれを教えていかなければいけないと思うわけであります。

 そして、弁護士法30条につきましても、現行法では弁護士は報酬がある公職を兼ねることができないということが書かれておりまして、代議士になること等はできますけれども、それ以外はなれないということになっておるわけであります。我々としては、この30条1項を削除いたしまして、いわゆる公職への就任制限を撤廃する。2項といたしまして、一定の制限は要ると思うので、2項に修正を加えて、1項として、「弁護士は、常時勤務を要する公職を兼ねるときは、その職務に在る間弁護士の職務をおこなってはならない。ただし、その職に関する法令にこれを禁ずる定めがなく、所属弁護士会の承認を受けた事項に関しては、この限りではない。」というように直さなければいけないのではないか。

 このようにして、弁護士としての活動領域を拡大することが必要であろうと考えておるわけでございます。

 最後に「関連資格者との協働」問題につきまして申し上げたいと思います。論点整理におきましても、利用者である国民の立場から見ると現状では弁護士は気楽に相談し、利用できる状態になっていない。そして、多様な法律的サービスのニーズにも十分でない。それには弁護士人口の不足問題や、あるいは地域的偏在や報酬の予測困難性、執務体制の専門性の未発達、広告規制の矛盾等があるということから、このようなものについて、隣接業種との関係が問題になっておるわけであります。

 私自身としては、本日のところは、これとは協働しなければならないということで物事を考えていかなければならないとは考えるわけであります。

 しかし、関連業者というものに対しては、先ほど申し上げましたように、それがどのようにして生まれて、どのような過程をたどってきたかという歴史的な経過の中においてこれを考えなければ、単に現象面においてこうであるからこうだということには必ずしもならない。もっと根本的な問題を含んでおるということをまずもって考えていただきたいと思いますし、それについての弁護士は自治というものが認められておりますが、各関連資格者に対しては、行政機関の監督権限がそれぞれあるわけでありまして、それとの関係がどのようになっておるのか。

 更に総論のときにも、質疑応答の中で出てきましたように、関連資格者の資格試験が、いわゆる天下りという者については事実上免除されておる実態はどうなっておるのか等が参考になってこなければいけないのではないかと考えておりますし、更にこの関連業種の方々は、法律制度全体に対する体系的な知識とリーガル・マインドを持っておられるのかどうか。国民の立場から見て、本当に国民の権利擁護を実現するためとしていいのかどうか。これは今後新しく生まれてくるロー・スクールとの関係においてどう考えるのか等を考えなければいけないのでありまして、安易に簡易裁判所の訴訟代理権であればよいということに必ずしもなるのかという問題があろうかと思っております。

 しかしながら、結果として生まれてきた弁護士をはるかに上回る関連業種の方がいらっしゃるのに、その方々を一体どうするのかという問題は確かに存在するし、また、国民の立場からも考えなければならないと考えるものであります。

 そういうことから、協働ということからいたしますと、どのようになるのかについては、一つの参考として考えなければならないし、恐らくそこを検討しようと思えば、当然に我々としては、過去経験してきたことの中で、外国法事務弁護士というのが問題になってくるわけであります。私自身もアメリカのUSTRとこの点についていろいろ交渉を重ねてきたところでありまして、いわゆる限定されたものではなしに、弁護士資格を有する者が、日本において法律事務をやることについてどうなるのかという問題があります。この点については、法律ができまして、外弁法3条におきましても、日本国内における訴訟代理権や民事執行法上の代理権は認められていないということが重要であろうと思いますし、また、外国法事務弁護士が日本弁護士と共同事業を行うのには、日本弁護士連合会への届出を必要とし、日本弁護士連合会の指導監督、懲戒権に服するということが前提になって認められておるものであります。

 そういうものとの協働というものの性格が既に現実のものとしてあるということも考えていく必要があろうかと考えております。

 Ⅲといたしまして、今度は担い手問題、これが本件の大きな問題点でありますけれども、弁護士改革の制度的インフラ、それは弁護士の機能拡充のための制度改革として考えなければならない。それは基本的にアクセス障碍の解消という形の中で考えていくということが必要であろうと。それが先ほど言うように、五つの点から問題になるということを申し上げてきたわけであります。

 その一番が、いわゆる公設事務所の全国的設置であります。地域偏在の原因というものは、あながち弁護士が好きでこのように集まっているというよりは、他の過疎問題と同様に、一つには、工業化による大都市への産業経済や人口の集中が進み、大都市における法的需要の増加と顕在化が進行し、これと反比例し地方経済、特に農林水産業地域の産業経済の停滞、人口の流出、高齢化により法的需要が停滞したことが大きな原因であります。それに加えて弁護士の抑制政策、あるいは法律扶助の未整備等がございまして、これが直ちにすべて弁護士のエゴのためにこうだということにはならない。

 むしろ弁護士自身といたしましては、平成8年をはじめといたしまして、過疎地問題についての相談体制等を行う中において、裁判所の本庁・支部所在地253のうち、130ヶ所に合計153の法律相談センター等を設けるなど、いろんな対応策は練っており、また、特別会費を徴収して過疎地の問題等はやっております。しかし結論として、決して十分なものにはなっていないというふうに考えており、この点につきましては、一層のこともっと公設事務所というものを全国的に展開する中において、抜本的にこれを解消すべきではないか。

 すなわち、へき地問題としては、へき地保健医療対策事業のようなものがありますから、それを参考としつつ、全国的な公設事務所の展開ということを考えるべきではないか。全国的に支部の所在地等には公設事務所が置かれておるということになりましょうし、また、大都市においても、それは必要ではないか。

 公設事務所といたしましては、まず一番には、行うべき業務といたしまして、どのような業務を公設事務所で行わせるかとなると、できる限り画一化させず、地域の多様なニーズに応えるよう、多様さを目指すべきであろうと思います。過疎地へ設置することによってアクセス障碍を除き、同時に都市にも設置することによりまして、社会的、経済的ハンディキャップにより、弁護士にアクセスしにくい層をも担当していく必要があり、場合によっては、そのような経済的に採算が取れないけれども、公益性が高い事件や専門性が高く、一般弁護士が回避しがちな事件を担当するなど、多方面のニーズに応えることでなければいけない。

 そういうことから、法律相談、事件受任、あるいはその地域における個別的な問題、場合によっては公証業務をそこに入れることも必要ではないか。あるいは法曹教育の問題の一つの拠点にもなるのではないか。

 そして、スタッフ弁護士と補助するスタッフ、あるいは事務職などがおる中において、大体一つの小さな公設事務所であっても、5、6名の者が滞在することによって行われていかなければいけない。

 そして、運営主体と運営方法というものについても、いろんな工夫が必要でありましょう。しかし、官による支配ではなく、自治的なものにならなければいけないし、それについては弁護士会の協力もまた必要であろう。そして、法律扶助との関係も整理していかなければいけない。

 同時に、財政及び監督と自治ということについては、国及び自治体は一種の財政的支援を行い、弁護士会も協力しなければいけない。このように考えるものであります。

 アクセス障碍の二番目として、弁護士報酬の問題があるわけであります。弁護士報酬に対する不安が司法へのアクセスを妨げているということは、そのとおりだろうと思うわけでありまして、すでに法律扶助との関連や訴訟費用との関連等が論点として出ておるわけであります。

 私はまずもって報酬制度の基本的な問題としては、わかりにくさにあろうと。それをどのようにして解消していくのかということについて、諸般の工夫がこらされなければいけない。

 まず第一に、報酬というものが何を基準にして決まっておるのか。今の弁護士の報酬規程は、訴額を基準にしておるわけでありますけれども、訴額そのものが非常にわかりにくいということから、事例集を発行して、技術料が反映してわかるような規定にしてやっていく必要があろうかというふうに考えております。高い安いの問題は、その成果との関係もありますので、全体の中で考えていかなければいけないというふうに思っておるわけであります。

 同時に報酬問題というのは、懲罰賠償制度や保険制度、敗訴者負担、その他のこととも関連を有するわけであります。しかし、今の報酬制度は弁護士会だけが一方的に決めるということは変えていかなければいけない。まさに利用する国民の立場に立って、報酬制度も抜本的に改正していく必要があろうと考えております。

 更に報酬に続きまして「弁護士情報の公開」ということが必要であります。やはり国民にわかりにくい遠い存在になっておるという一つの大きな原因として、弁護士に関する情報不足があると指摘されておるところでありまして、私もまさにそのように思うわけであります。

 そういうことから、改革の方向性といたしましては、三つありまして、一つは、広告を原則として自由とし、広告内容の適正さを確保するように考えていかなければいけない。また、先ほど言いました評価制度等の検討を含めまして、公開を推進する政策が練られていかなければいけない。その中には、先ほど言いました公益への奉仕活動の内容とともに、今度はマイナス情報としての不祥事等の情報も提供していかなければいけない。

 三つ目には、弁護士もいろいろ専門がいるわけでありまして、専門認定の問題と、その公開問題を考えていかなければいけないと考えておるものであります。

 その次に、四番目といたしましては、弁護士の職務の質の向上と執務体制の強化という問題があります。いわゆる弁護士というものは一人で勝手にやっておるというものから、先ほど言うように公益性に変わっていかなければいけない。特にその執務体制や専門性の未発達というところをどう直していくのか。まさに共同化、専門化、総合化ということがこれからの新しい執務体制になっていかないといけないと思いますし、また、国際的な人権擁護の連帯の必要性もあろうと考えておるものであります。

 更に、五番目といたしましては、いわゆる弁護士自治の強化と倫理の確立でありまして、弁護士自治というものが、いわゆる人権擁護、そして社会正義を実現する意味において、いかに官に対抗するという意味において、必要な制度であるかということは、私自身痛感をしておるものであります。これをもっと強化していく必要があり、その意味における弁護士の自治の責任を一層明確に意識してもらう体制にもっていかなければいけない。弁護士倫理の確立はすなわち自治の問題そのものでありまして、いわゆる苦情処理から綱紀懲戒手続の透明化、迅速化、あるいは公益活動への推進といったようなことがすべてこのところに入ってくるのではないかと思っております。

 同時に、その内部的なことといたしましても、会員の弁護士会の調査に対する協力義務を明確化したり、あるいは弁護士会の会員に対する調査権限を強化するといったようなことを弁護士会内部でも直していただく必要があろうかと思っております。

 以上が制度改革の接近障碍解消に関する主な提言であります。

 最後は「関連制度の改革」で、これは前回申し上げておりますように実体法の問題でありまして、今まで言ったものすべて直したからといって、よき弁護士改革にはならない。いわゆる実体法、分けても当事者適格あるいは労働事件、刑事事件、代用監獄等を含みますような問題についても、実体法の改正が行われる中において、弁護士改革もまた可能になってくるのではないか。以上のように考えておるものであります。

 以上です。

【佐藤会長】 どうもありがとうございました。それでは、10分間休憩し、3時18分に再開したいと思います。

(休憩)

【佐藤会長】 それでは、再開させていただきます。先ほど中坊委員の方から弁護士人口の大幅増員、目安として5~6万人ほどというお話もありましたけれども、それと弁護士自身が変わらなければならないということを強調なさったわけであります。どの点からでもよろしゅうございますので、御質問、御意見をちょうだいしたいと思います。

【鳥居委員】 弁護士人口の増加の問題ですが、一つの目安を中坊先生からお示しいただいて大変ありがとうございました。私これを考えていく上で、情報として、今日でなくてもいいんですが、事務局から教えていただきたいんですが、弁護士人口の現在の死亡率というかリタイア率、大体年間何人が自然減なのか。それを補充するというものを差し引くと、ネット増が幾ら必要であるかということを考えないと、仮に今日サジェスチョンのあった数字を維持していく、定常状態にもっていくのを仮に5年、10年後を考えますと、そこから自然減というのは幾らというのが出ると思うので、教えていただきたい。

【中坊委員】 事務局の方で分かりますか。

【事務局(早野主任専門調査員)】 今、弁護士会で議論されておりますのは、大体常識的に弁護士さんはどのくらいの年数働くか。現実的に言うとある一定限度を過ぎますと、資格は持っていても働いていらっしゃらない人が多いんです。それが長いところで見ると40年、常識的には35年くらいではないかと言われております。

 したがって、これは大体30歳近くくらいから65歳くらいまでとなっているようです。ですから、そこを35歳と取るか40歳と取るかで基本的には、今なった人が40年後には全部リタイアですから、40年後には入る人と出ていく人が同じになるという計算です。その40年の間にどれだけの差をつけるかで純増になると。もっと厳密にやろうと思えば会員名簿で亡くなった人を調べていけば厳密には出ますけれども、それはまだ現実にやっておりません。

【鳥居委員】 通常は人間の生理的な年齢階層別の死亡率は大体わかっていますから、それプラスこの職業に固有のリタイア率があり、それを掛け算すれば出てくると思いますので、多分出るだろうと思います。

 もう一つ質問なんですが、弁護士を30年、40年経って大体やめると本人が決意されるとき、医師であれば医師の国家試験の医師開業免許証みたいなものがあるんですけれども、それを返上する方と、返上しないで死ぬまで持っている人といるんですけれども、弁護士の世界ではどうなっているんでしょうか。

【中坊委員】 弁護士会は登録を抹消しますと弁護士でなくなるわけです。強制加入団体ですから、弁護士会の登録をやめますと、自動的に弁護士でなくなるわけです。そういう方がいらっしゃいますが、同時に弁護士会というのは、単位会によってさまざまですけれども、弁護士会費の優遇策というのを講じているんです。だから、70才くらいになりますと、弁護士会費は要らないとしている単位会が多いんです。そうすると、その方は無職よりも弁護士というのがあった方がいい。事実上のお仕事はなさっていないけれども、弁護士の登録を抹消されていないという意味においては弁護士なんです。そういう方もかなりの数いらっしゃいまして、単位会において、いつの年から会費を免除するというのは一概に決まってないし、弁護士も免除規定があるからみんなが免除を受けるというとそうじゃないんです。おれは意地でも最後まで払うというのがいる。その辺の境界線は微妙です。だから、弁護士会費を免除してもらって弁護士会の名簿に残っているという人の方が少なくて、死ぬ日まで会費を払っている方が多いけれども、実際上の仕事はされていないという方が多いんじゃないですか。

【佐藤会長】 要するに、画一的にやりにくいと。

【中坊委員】 御承知のとおり、弁護士のバッジには番号が付いているでしょう。これは死ぬまで同じ番号なんです。弁護士会が始まって以来、私が7,002番で、藤田さんだったら随分後ですね。

【藤田委員】 25,091番です。

【中坊委員】 これは永久欠番になるんです。そこで弁護士さんにプライドを持たしているんです。そういう制度になっていますから、どうしても弁護士会に登録はされていますけれども、実際上はね。私自身も今はほとんど仕事をしていません。

【井上委員】 先生も会費は払っておられるのですか。

【中坊委員】 払っていますよ。

【佐藤会長】 今の鳥居委員の御質問は、一応5万ないし6万を目安としておっしゃったわけですね。それは大体どのくらいの期間に達成すべきものというふうにお考えですか。

【中坊委員】 それもちゃんと計算してもらってあります。

【佐藤会長】 10年から20年ですか。法曹養成とか合格者数などに全部関連してくる問題ですね。

【中坊委員】 これは私に言ってもらってもあきまへんのや、事務局に答えてもらって下さい。

【事務局(早野主任専門調査員)】 いろいろ条件がありまして、今申し上げたように、いつまでに5万名にするかという意味なのか。あるいは、5万名で頭打ちにするという計算なのかということで、年間の合格者数が変わってまいります。ある程度条件を設定していただければ幾らでも計算はできると。例えば1,500とか2,000とかというのでも、むしろどのくらいの人口で頭打ちにさせるのかという差し当たりのめどと、それからどのくらいの期間でそれを達成するかという二つの条件を与えていただければと思います。

【中坊委員】 見たけれども、難しいんです。

【山本委員】 最初の方の弁護士像を巡る論点といい、先生の本当に熱情あふれるお話に感銘いたしました。お聞きしたいのは、先生が強調しておられます弁護士の公益性というのは、官と対峙する概念だということですが、官の側も同じく公益の実現に努めているわけですから、対峙というのはローマの護民官のようなイメージでおっしゃっているんでしょうか。というのは、官というのは基本的に民にとって敵対的な存在であるというようにお考えなのかどうかということなんです。民主主義のルールは、議会とか行政が、与えられた法律に基づいてコミュニティーのため、公益のために奉仕するというのが制度の建前でございます。そういった意味では国家公務員も地方公務員も、先生がおっしゃるような公益という概念は非常に強調されなければいけないと思うんです。仮にこれが不足しているとすれば、弁護士さんが頑張るのは大事ですけれども、本筋の考え方は、当の公務員にそれを求めていかなければいけない。自治体とか議会とかが頑張らなければいけないということだと私は思うんです。

 どうもお話を伺っていて、非常に熱意あるお説はわかるんですが、戦前の天皇に対する官ということをお考えになっておられて、官には任せておけないというふうにちょっと聞こえたんですけれども。

 もう一点ですが、弁護士活動の公益性との関連で弁護士自治が認められ、したがって、弁護士会は懲戒だとか除名だとか、そういう権限をお持ちなんですね。そこで同じ民主主義の政体をとっている諸外国ではどうなっているのか、日本の弁護士さんの自治とどういうふうに違うのか教えていただきたいのですが。

【中坊委員】 多少誤解を招いたかもしれませんので、私が申し上げておりますのは、弁護士になぜ自治権が認められているかと言いますと、それは官とか公とかいう意味ではないんです。むしろ権力という意味で、公権力というのは公であっても、その中には要素として権力的作用というのがあるでしょう。その権力的作用が国家の名において行われたときに対抗するものとして必要であろうという意味です。それは非常によく出てくるのは、検察であるとか警察であるとか、そういう権力行使が非常に多いわけです。あるいは税務行政でもそうですけれども、徴収権とか、公は公であっても、公の中にそういう権力的な行使という側面が内在しておると。それはある意味において官かもしれないけれども、いずれにしても、そういうものに対抗するということは必要であろうと。これは諸外国もみんな同じです。すべての弁護士という職業が、そういう意味における反権力的と言うか、権力のない者がその行使の濫用を防止すると。これはいかなる社会においても、健全に社会がいくためには必要なのであって、そういう職業として弁護士というものが位置づけられておって、その意味において、監督権を与えたら、自分が権力を行使してやる。

 だから、明治時代からの弁護士の歴史というのは、明治の初めは検事さんが弁護士そのものの全部の監督官です。それが検事正になり、昔の司法大臣に替わり、そして、戦後になってやっと弁護士の自治というのが認められた。だから、戦後の弁護士法の一番大きな改革は何かというと、弁護士自治です。

 それでは、日本ほど徹底した弁護士自治は、実は諸外国では余り例を見ない。その意味においては、占領軍がおったせいもありましょうけれども、徹底した弁護士自治というものを昭和24年の法律によって完成させたんです。

 だから、諸外国では例を見ないけれども、しかし、いかなる外国へ行っても、弁護士というものが、そういうものであるということについては、みんな一致しています。現にアメリカでも「アカ」とかいう表現を使われたら大変で、7,000人からのそういう方の弁護士がおるわけです。NDLとか何とか言いまして、アーサー・キノイとか有名な人がいますけれども、そういうのが常に弁護士でやっているでしょう。だから、いかなる社会においても、この司法の社会においてそういうことになっています。

 その意味では私自身は坂本弁護士の例もそのときでしたけれども、世界中で弁護士ほど殺されている職業はないと言われているくらい、日本ではめったなことでは殺されないけれども、殺されているということで言えば、弁護士という職業は圧倒的に多いんです。だから、弁護士というのはそういう意味における権力に対峙するという意味においてのもの。

 私が先ほどから言っているのは、自治との関係においてはその関係です。

【山本委員】 わかりました。

【竹下会長代理】 中坊先生が強調される弁護士の公益性ということについて伺いたいのですが、その前に今のお話で、弁護士は権力に対峙するとおっしゃるのは、権力の行使が誤ってなされたときに、それに対抗できるように弁護士自治が認められていなければいけないということであって、権力そのものが常に悪だという趣旨ではもちろんないわけでございますね。

【中坊委員】 そうですね。

【竹下会長代理】 それはそのとおりだと思います。

【中坊委員】 ただ、権力というものは、常に腐敗するとか言われていますが、極めてそういうものになりやすい。チェックする機能がありませんからね。その意味における国民の側におけるチェック機能というのは予防的なものとしても考えていかなければならない。いつも被害の回復だけではなしに、そういう意味におけるチェック機能と言いましょうか。御承知のように、行政についての見張り番などはほとんど弁護士がやっていますね。だから、行政権の一般の行使についての見張り番であるとか、そういうようなことは絶えず言っている。

 あるいは立法に関しても、人権侵害であるとか、国際的な今の人権擁護委員会というのがありますね。国連へのあれであるとか、例えば日本国政府は常に人権活動に関して国連に、こっちも人権規約を締結していますから、それに報告しなければいけません。カウンター・レポートと言って、それに反する日本国における今の法務省始め、司法だけではなしに、行政機関がどのようにやっているかということで、私もジュネーブまで持って行ったことがあります。そういうものを持っていくことも我々の仕事だと思ってやっているわけです。

【竹下会長代理】 それはわかりました。結構でございます。

 お伺いしたいと思いましたのは、一般的に弁護士の社会的な責務として、公益的な活動もしなければいけない。その点についても私も全くそのとおりだと思うのでございますが、前々から中坊先生がおっしゃることについて、ちょっと私が理解できないでいるのは、公務への就任というのも弁護士の義務だとおっしゃるのですが、それは結局、弁護士たることをやめることになるわけですね。弁護士が裁判官に推薦されたら就任しなければいけないというと、弁護士たることをやめろという、それが弁護士の義務だというのは私はどうも自己矛盾のように思うのですが、その点をどうお考えかということです。

 それから、やはり弁護士といえども職業選択の自由があるはずなので、裁判官になるか、自分は弁護士でいるかということについては、個々の弁護士の自由な意思決定に任されるべきであって、それを義務づけるというのはやはり問題ではないかと思うのですが、その点はどうお考えなのでしょうか。

【中坊委員】 私としては、公益的な責務の中の一つとして、公務への就任義務もあるというふうに私は考えているわけです。それ自体は公益的な仕事をボランティアでやるだけではなしに、それは特権でもなければ権利でもなしに基本的に義務だと。

【竹下会長代理】 弁護士を辞めることが、ですか。

【中坊委員】 そうそう、辞めることがです。

【竹下会長代理】 それがどうして弁護士の義務なのですか。

【中坊委員】 そうですよ。だから、弁護士というのは、そういう意味における公益性を帯びた職業として存在していくべきではないかということを言っているわけです。だから、今までのようになりたい者がなればよいという制度ではなしに、そこから推薦されればならないといけない。これは何も私が突然変異に言うみたいに思われたら困るんだけれども、いわゆる終戦直後に今の憲法の下において弁護士法が審議されたことがありますが、そのときの記録を見てもらえばわかりますけれども、そのときから既に弁護士の裁判官への就任義務ということが論じられているんですよ。だから、私が突然言い出しているわけではなしに、裁判官への就任義務ということは、法曹一元ということにしようと思えば、日本国において一定の位置づけというものをしなければ、やはり無理ではないかということがそこで論じられております。

 だから、ほぼ一貫してそのことは言われておることでして、私が突然ここにきてにわかに言うているというわけじゃない。

【竹下会長代理】 それはわかりました。しかし、結局それは弁護士法の中に入れられずに、弁護士法では、現在の24条のような、裁判所あるいは公的機関から嘱託をされた事務は遂行しなければいけないという限度にとどめられております。これはあくまでも弁護士という身分を持ったままでそういう職務を行わなければいけないということですから、これは私にもよくわかるのですが、弁護士を辞めることが弁護士の義務だというのは、自己矛盾ではないかと思うのです。

【中坊委員】 自己矛盾じゃないと思います。それでは、普通の職業で、民間の会社におって、公務の委嘱があれば受けなければならないという義務は普通ないわけです。それがなぜ弁護士に関してだけ公務から委嘱を受ければやらないといけないかというと、既に弁護士というものが、そういうような公的な性格を帯びるものとして想定されているから、そういうことにもなっておるわけです。だから、弁護士というのは、今言うように、法律事務そのものが単なる依頼者と個人との関係だけではなしに、公益性というものを帯びたものとして、弁護士の仕事の法律事務そのものが、そういう意味における公益性というものを持っておるわけです。国民から信託を受けたようなものになっている。だから、この際、私は弁護士が内在的に負っているものをきちっと明確化していかなければいけないのではないかと言っているわけです。

【竹下会長代理】 内在的にとおっしゃいますけれども、弁護士法で定められているのは、弁護士という立場で公から嘱託された事務を行わなければならないという、そこまでなのであって、弁護士という身分そのものと相容れないような職務まで行うということが現在の弁護士法で書かれているとはどうしても思えません。

【中坊委員】 だから、弁護士法そのものを、先ほど言うようにこの際直していかなければならない。弁護士業務、その対象となる法律事務というものを考えていけば、私が先ほどるる言うたように公益的な国民からの信託に基づいてやっているという仕事なんであるから、それが基本的に内在しておるいうことは事実なんです。だから、公益的要素を持っておるということは、そうでなければ、今言うように、ほかの職業と同じように、修習生になるときから国家の費用で養成されることはない。完全な自由業であれば、例えば東京電力に勤めたからというて国庫補助をやってくれない。にもかかわらず、なぜ弁護士だけをそういうふうになっているのか。

 だから、少なくとも弁護士という仕事の中に、そういう公益的なものを入れないといけないというのは、責務として本来的にあるわけですよ。それが明文ではまだ中途半端になっておって、むしろ今おっしゃるように、自由というものがあるだろうと。だから営業の自由も憲法で保障されているじゃないかと。そうしたら、公務員になるのも一つの制限を受けるわけでしょう。

 むしろ今までは、どちらかと言えば、官と民と分けておったわけです。先ほど山本さんがおっしゃったように、官と民とを峻別して分けておった。それだから、今度は逆に弁護士は公務に就任できないというような義務すら課しておったわけですよ。今、竹下さんのおっしゃるように、むしろ公務にも就任制限があって、内閣総理大臣とか国会議員にはなれるけれども、それ以外はいかんと言っていたわけです。

 そういう問題の中で、公とか官というものと弁護士との間の公的性格については、非常にフレキシブルと言うか、非常にあいまいであったり、境界線がこうだったりいろいろ色彩については、どのように考えるかというのは、いろんな考え方があったわけです。

 その中において、依然としてはっきりしないのは、確かに今、竹下さんの言うように、今の弁護士法はそういう点で一つの接点を設けたわけです。それを今度の司法改革ということになって、本当に法が血肉化していくためには、それこそ縄文時代から、何もこの130 年の間だけではなしに、日本国が持っている法が血肉化しないということについては、やはり社会の中でだれかが、社会生活上の医師として指導しないといけないわけです。その人たちを今だれもお医者さんなしで、みんなが健康体になるとは限らない。そうすると、社会生活上の医師として、まさにやっていく職業として、市民と司法とを結ぶ接点としての弁護士がその中において生まれてくるはずだと。そうしなければ、これこそ今、竹下さんがおっしゃるようなことでいけば、明治維新でも近代化でもだめだった。敗戦国になって、占領になっても依然として法が血肉化していないという社会は継続しているわけですから、それをどうかして直していくためには、まさにその先駆的な役割として、弁護士が社会生活上の医師として、それはもう我々がやるしかない。

 今の竹下さんの御議論、確かにわかりますし、大いにしてもらったらいいけれども、我々としては、論点整理の中において、この意味における社会生活上の医師にならなければいかぬ。法が血肉化しないといけない。そうしないと、司法は根本的に直らないということは、我々として決めてきた。そのために今の弁護士制度はいかにあるべきかという視点から私は見ておるんで、現行法における弁護士がどのように、弁護士法の解釈ではどうであるかこうであるかということを私は言うているんじゃないわけです。

【佐藤会長】 わかりました。吉岡委員どうぞ。

【吉岡委員】 私が言おうと思っていたことを中坊委員がおっしゃったという気もするんですけれども、この会議は、現在ある法律の枠組みの中で考えるのではなくて、その枠組みに問題があれば、それをどう変えていかなければいけないかという、そこに踏み込んで議論しなければいけない。そうでないと改革にはならないなと思います。

 弁護士が裁判官になる場合に弁護士をやめることが前提かどうかということは、例えば、国立大学の教授の方が民間企業の取締役になるというので問題になって、結局、お辞めになったということがありますね。本当にいい制度かどうか、そういうことも今一般には問われているわけです。

 そういうことから言うと、現在の弁護士法でも合わないというところがあれば、それは直していくという視点が必要だと思います。多分、竹下委員もそういう視点でおっしゃったんだと思いますけれども、そこのところをちょっと確認したかったんです。

【竹下会長代理】 私が申し上げたのは、先ほど中坊委員が戦後の改革のときにも議論されましたとおっしゃるから、しかし、結局その考え方は取られないで、現在の弁護士法の中には入っていないではないですかと申し上げたのです。少し舌足らずであったかもしれませんが、その考え方が現在の弁護士法に取り入れられなかったのは、やはり事柄の本質に反するからでしょうという趣旨です。

 もう一つの柱は、憲法上の職業選択の自由というのがあるではないか。これは憲法問題ですから、単に法律レベルの問題ではないわけなんです。

【佐藤会長】 そこはいろいろ議論の余地があると思います。

【竹下会長代理】 今のところは、これ以上言うつもりはありません。

【佐藤会長】 関連するご質問なので、先に井上委員どうぞ。

【井上委員】 おっしゃるとおりだとは思うのですが、竹下先生のお話も、別に現行法がどうだということではなくて、実質的に重要なことではないかと思います。中坊先生が今日プレゼンテーションをして下さって、公益性、公的義務を強調されたのは非常に重要なことですし、敬服をいたすのですけれども、他方、現実を見ますと、弁護士法24条の義務のように既にあるものですから、なかなかそれに応じて公益的なことをやっていただけない。24条を発動する前に事実上いろいろ調整して、例えば国選弁護などもそうですけれども、事前に調整した上でやっていますので、そこは表ざたにはならないのですけれども、それは個々の弁護士さんの勝手ということではなくて、自分の自由な選択でやっておられるという面があるからだと思います。それが現実なので、こういう公的義務を強めていく場合に、どうしてもいやだと言う人が出てくるかもしれないのですけれども、その義務の履行をどうやって制度的に確保していくのか。その点について何かアイデアがあればお聞きしたいと思います。

 要するに、公の嘱託を受けた者は引き受けないといけないと、弁護士法の24条で既に規程されているわけですが、これですら、本当にそのとおり強行したら大変なことになるのじゃないかという感じがあった。それが今までの現実だと思うのですけれども、裁判官にならないといけないというと、それをもうワンステップ上げた、質的に違うことだと思うのです。しかし、事務所を抱え、依頼人をたくさん抱えている弁護士に、お前やりなさいと言うだけで、そのとおりいくのかどうかということなのです。それをどういう制度の枠組みの中で実現していくのかですね。

【中坊委員】 私としては、今の井上さんの問いに対しては二つあるわけです。

 一つは、私の案では正当な理由があれば断れるということにはしてあるわけです。正当な理由の有無は日弁連の自治がありますから、自分で判断しなさいという意味において、絶対的ということではないです。それが一つある。

 もう一つは、今言われるように、もし、そういうものになりたくないと頭から思うんであれば、弁護士になるべきではないと。そういう公的な責務を帯びている仕事をするのはいやだとおっしゃるなら、弁護士にならなくても、別の仕事をお選びになればよいと。そう言えば、おたくだって公務員である大学の先生にどうしてなるんだと言われても、なるときにその自由は放棄しておるわけだから、そういう弁護士という職業を、完全に自由な職業だということにはならないよということがわかってなりなさいと。

【井上委員】 最初から、そこのところは同意しているはずだということですか。

【中坊委員】 そういうふうにこれから解釈しなければいけない。それと正当な理由があると。例えばいろんな理由によってどうしても弁護士を続けていかなければいけないという理由があれば、これは今言うように絶対ではないわけですから、正当な理由があれば断れると。しかし、正当な理由があるかどうかは自分で判断するんじゃなくて、第三者の日弁連が自治の範囲内として判断しますと、第三者が判断しますよということを言っているわけです。そういうことによって担保しているわけです。

【井上委員】 それで、既にいる弁護士さん達が納得すればいいですけれどもね。

【中坊委員】 先ほどから言うておるように、今の弁護士の在り方は非常に得手勝手過ぎると。確かに法律事務は独占、数は少ない。そういうのにならないのも自由だ。養成のときはちゃんと国家の費用で養ってもらえる。そういうことまでして、あとビジネスでお金儲けするのがあんたの自由だと、いやなものにはならなければいいんだと、そういうような職業として残しておいて、本当に日本の司法制度が根底からよくなるだろうかと。

 私はそこが弁護士さんが余りにも権利だけもらっておって、義務というものに関しての感覚が、正直言って薄いのではないか。だから、もっと公益的な責務を果たすべきで、本当を言えば私も、もし責務を理念的に感じてみんながやれば、なるほど義務づけでなくても、私の言うように、弁護士法1条にかえって、何も義務づけているわけじゃないです。責務を行うということをなぜ1条2項に私が明記しないといけないかと言っているのは、そこが弁護士さんが今おっしゃるように、甘いものであったという、得手勝手に自分が気楽に暮らせた職業じゃないかと。それを今更窮屈な服を着せたら、窮屈な服だと文句を言いよると。

 だから、弁護士が自己改革をしてそうなっていくのが一番好ましい思うんです。しかし、今やそれを弁護士会に自己改革、もちろん求めなければいけないけれども、それだけではなしに、まさに審議会の方において国民の声として利用する者の立場から、弁護士さん、もう少し自覚してくださいよと。ちゃんと義務づけますよというところまで国民という立場は、弁護士という職業に踏み込んでもよいと。そうでなければ自治というふうな、お医者さんといえども厚生省の監督があるでしょう。大学だって文部省の監督があるでしょう。それが唯一ないような職業に仕立てておいて、それでお前らは何でも好き放題したらいいんだと。これはちょっと得手勝手過ぎると。

【佐藤会長】 今の議論はこれからまさにやるところです。公益性というものが内在しているということは、皆さん大体賛成なさっていると思います。その公益性の具体的な中身が法制度的にどのように発現するのか、すべきなのか、これはまさにこれから御議論いただく問題であろうと思います。公益性を有するという点については、皆さん大体御承知なんじゃないかと思います。

 それから、山本委員のお話に関連してですけれども、昔は公と私と分けて、公イコール官というように理解されてきたのではないか。しかし公の在り方そのものが揺らいできている。公共性は官の独占物ではなくて、もっと広範なものじゃないか。そこに個人の立場としていろいろな関わり方があるのではないか。そのように考えていきますと、公ないし公共性について、もう少し哲学的に議論する余地があるんじゃないかと思っておりますが、そういう観点で今後議論したいと思います。

 別の論点ということで、吉岡委員どうぞ

【吉岡委員】 済みません。核心に触れているところに全然別の論点で、申し上げていいかどうか迷ったんですけれども、一つは報酬制度の問題で、利用者の立場からですと、前からも出ていますけれども、弁護士報酬がどのくらい払っていいのか、不透明でわかりにくいという問題があります。それについて、先ほど中坊委員の御説明の中で事例集を発行するなどして、一般にわかりやすくするという御説明だったと思いますけれども、具体的にどういうことをイメージしているのかがもう一つわからないので、その点を伺いたいというのが一点です。

 それから、弁護士を利用する立場で見た場合ですけれども、これは依頼人としてお願いする場合ですが、いわゆる企業社会で言うと顧客満足度というんでしょうか、そういうところへの配慮が十分だろうかということが非常に気になる点なんです。

 やはり弁護士さんもエリートでいらっしゃるんで、どうしても依頼者と同じ目線で考えていらっしゃらない。どちらかというと、上から見下していらっしゃる弁護士さんが多いのではないか。

 それから、法律用語等を使って説明なさったりするので、依頼者の方が十分に理解できないという問題があって、信頼関係がなかなか構築できていないのではないか、という感じがいたします。

 裁判は負ける場合も勝つ場合もあるわけです。そういうことから言うと、たとえ負けても、依頼者と弁護士との間の信頼関係、あるいは顧客満足度、それが十分にできていれば、負けても納得できるんじゃないかと思いますが、その辺についてのお考えがどうか伺いたいと思います。

 余り長くなってはいけませんので、あとはカットします。

【佐藤会長】 いいんですか。

【吉岡委員】 それでは、もう一つだけ言わせてください。

 弁護士の人口増、具体的な数字でお話しになったんですけれども、実際にそれだけ2010年なり2020年なりというタイムミリットで考えたときに、法曹養成制度をどうするかということを併せて考えないと、実態的に無理ではないか。その法曹養成制度を考える場合に、一つは司法研修所の問題として、今の司法研修所の器で本当にできるのかというのが一つと。

 では、それを補完するというか、補完と言っては申し訳ないと思いますが、ロー・スクール構想、ロー・スクールの在り方も含めて考える必要があると思います。これはもしかすると次回の井上委員のところで御質問したらいいのかと思いますが、時間がなかったらそれは次回に。

【佐藤会長】 では、最初の二点について。

【中坊委員】 まず事例集ですが、弁護士報酬というものは、基本的に訴額を基準にしているんです。ところが、訴額というのは裁判所の印紙とは違いますので、主観的なもので人によって違うし、また訴額として勘定できないものもあるし、そういうことから非常にわかりにくくなる要素を含んでいるわけです。

 私の言う事例集というのは、以前なんですけれども、ある週刊誌を私が見ましたら、弁護士の報酬がわかりにくいということから、週刊誌がたまたま典型的な事例というのを30例ほど挙げまして、例えば交通事故であれば交通事故、死んだと。どれくらい請求したと。このような事案についてはこうだったと。こういうふうにして約30例ほど載せているんです。

 私はそのときは会長を辞めていまして、業務対策委員会の委員長に、これを参考にして作ったらどうだと言いました。そうすると、弁護士というのは非常に得手勝手、と言うとまた怒られると思うけれども、東京と地方とで格差がものすごくあるんです。それも2割くらい違うというならいいけれども、何倍か違う。そういうのを作ったらどうだと言ったら、どうだとかこうだとか言い出すから、そうしたら地方ごとにやったらよいと。

 だから、私にしたらおおざっぱにして、大体の目安がつけばいいんで、目安がつく程度の範囲内においての事例集を出すべきではないかということを提案したいんですけれども、正直言って弁護士会はそれは現在採用していない。

 私はそういう一つの目安というものをもっと国民にわかりやすくパンフレットを配れば、大体皆さんのおおざっぱな見当がつくと。そういうものを私は想定して言ったんです。

 二つ目には、顧客満足度ということで、これは確かにお恥ずかしき範囲で、弁護士がやっと電通へ頼んでやったのも、「弁護士が身近にいますか」とかいう程度の調査しか実はしていない。どんな企業においても満足度というのは十分考えなければいけないのに、そういう意味での調査というのは全くと言っていいほど弁護士についてはやられていないと思います。

 そういう意味においては、私は弁護士の報酬制度の在り方、前提としての顧客満足度ということに関しての非常に謙虚な、シビアな姿勢が必ずしもない。むしろそれは今言う、数によって保護され、今おっしゃるように、我々の自由だと。その自由の中には断るのも何もみんな私の自由だということになってくるわけです。だから、ちょっとでも割に合う仕事だけを選ぶと。職業選択の自由、私は自由だと。だから受ける受けないは私の自由だと。ちょっと手間が要って、報酬が少ないと思ったらそれは避けるとか、そういう形になっていきやすいものなんです。

 同時に、病気以上に人間の紛争というのは人の主観的な要素が入ってくる。そうすると、弁護士さんと依頼者とが合わなくなるんです。お見合いではないけれども、多少そういう性格があるんですよ。だれでも合うとは限りません。私みたいな者だったらかなり依頼者が特定されないと合わないですよ。

 そういう意味における依頼者との信頼関係というのは非常に難しい。だから、そういう意味における問題もあります。

 だから私はあえて言うならば、弁護士報酬というのはお布施だと思えと。それを言うていると批判の対象になるのですが、私は感謝してもらうという方針というのが、何にも価値判断の基準にならないけれども、感謝したものだけ置いておいてくださいと言ってみなさいと。それでも飯食えると私は思っているんです。そういうことですな。

【藤田委員】 弁護士である中坊委員が、以前から司法改革はまずもって弁護士改革からとおっしゃっていますけれども、それに敬意を表します。私も弁護士ですから、敬意を表するというのはおかしいかもしれないけれども、弁護士の公益性とか、あるいは社会的責務もおっしゃるとおりだと思います。ところで、弁護士人口の問題なんですけれども、どのあたりが適切なレベルかというのがなかなか決め難い。いろんな物差しを出してきておられますけれども、その中で住民人口を基礎にしたモデル値を出しておられますが、これも大阪と東京とで随分違うんです。例えば東京とか大阪とかいうところは、弁護士が集中しているところなんですが、そこはもう適正なレベルに達しているのか、それともまだ足りないのか。なぜそういうことを言うかといいますと、裁判所にいた当時もそうですし、現在、労働委員会で審問をやっていてもそうなんですが、弁護士さんの日程が詰まっていて、なかなか次回期日が入らない。なるべく一ヶ月以内に入れようとしているんですが、なかなか入らないということがあるんで、それはどういうところに原因があるのか。事務所の共同化とか法人化とかいうような形で弁護士の執務の改革ということでカバーできる問題なのか。それとも、東京、大阪でもまだ十分ではないということなのか。そこら辺どうお考えなのかということが一つ。

 もう一つは、先ほど社会的責務の中で本来、裁判官に推薦を受ければ任命されることを拒んじゃいけないんだという、理念としてはわかるんですけれども、これは法曹一元につながってくるんで、その問題のときにお聞きした方がいいのかもしれませんが、転勤という問題があったり、どういう待遇をするのかという問題とも絡みますけれども、顧問会社などを含めてクライアントに対する義務とか、あるいは自分の本拠地から離れて転勤をするという場合の家族のいろんな事情ということを考えると、なかなか推薦委員会の方で正当な理由がないということを判断するのは難しいんじゃないか。仮に正当な理由がないと言われても、どうしてもできませんと言われた場合に、それを強制するというのは、さっきの職業選択の自由との関連もあるんで、なかなかこれは困難な問題になるんじゃないかという気がするんですが、この2点、いかがでしょうか。

【中坊委員】 まず最初の方の大都市の問題、あるいは期日が次に延びていくという関係は、まず大都市は、それでは十分でしょうかと言われたら、私は大阪や東京において十分であるとは思いません。確かに大都市だから、これだけ数がおればよいということにはならないと思います。

 それもまた先ほどと類似してくるんですけれども、自由業であるということに命をかけるというか、いい意味では命をかけるし、悪い意味ではどうでもできるということになるわけです。1人の弁護士事務所というのはかなりの数を今でも占めています。複数の弁護士が一つの場所においてやるというよりも、個人でやっているという弁護士が非常に多いわけです。

 そうすると、段取りの都合がつかないんです。ほかの仕事に替えようがない。だから、私も弁護士というのは、少なくとも複数で事務所を持ちなさい。2人で持てば随分違うよと言うんですけれども、依然として1人事務所というのはかなり数が多くて、そういうことになってきている。

 だから、私は今回の執務体制の中でも、法人化問題というのを言っているわけです。ところが、法人化をしますと、そこの一つの大きな問題点は支店の問題がありまして、東京に事務所があって、支店を大阪に持つということになったら困るということを言ってくるわけです。大阪なら問題ないけれども、新潟に支店を持つとか言われるとですね。

 しかし、そういう意味における法人化すらできていない。公認会計士であれだけできているのになぜ弁護士はできていないのかという問題もあるわけです。

 だから、私はこの際、司法制度改革審議会においては、利用者という立場からもっと弁護士本位に考えるんじゃなしに、利用者から見て、これはしてもらわないといけないというような形で言っていかないといけないのではないかと考えているということです。

 その次の、裁判官にならないといけないということについては、確かにおっしゃるように、法曹一元ということが前提になりますと、これは当然のように地方分権型になってきますから、少なくとも今までみたいに北海道から沖縄へ転勤というのは、まずない。一定の期間内は過疎地がありますから、それは一定の期間内は過疎地へ行きなさいという制度にする必要があると思いますけれども、昔の控訴院時代がそうであった、戦前は逆にそうであったと言われるような控訴院人事というようなもので、例えば東北は東北、近畿は近畿という範囲内での転勤ということは可能であろうと思いますし、そういう形の中でいけば、今おっしゃる正当な理由というのは余りなくなってくる。

 それから、クライアントの問題については、これは確かに一つの大きな問題点ではありますけれども、それが今言うように、その前提としての法人化とか共同化というのが行われる過程の中において、事務所にクライアントがつくのであって、個人にだけではないというものにしていく必要があると思います。

 そういうことになってきたら、個人の絶対ということはあり得ない。例えば私自身にしたって、私も住専社長時代は全く事務所にいませんでした。だけれども、クライアントは別になくなってもいないし、代わりの人がやっているわけです。4、5人でやれるわけです。だから、今おっしゃるようにクライアントとの問題が絶対的な条件にもならない。

 先ほども言いましたように、弁護士のアクセス障碍解消のためには、まず弁護士の執務の在り方、態勢の取り方、そういうことが結構重要なことでして、それもまた何もかも弁護士さんが自分で自分の手足をくくるということは、みんなくくりにくいわけです。

 率直なこと言うて、私がなぜ今日自らレポーター役を引き受けて弁護士改革を言うかというと、弁護士以外の人が言うと弁護士はみんな反発するんです。弁護士やった人が言わないと説得力がないんです。お前ら知らんやないかと。藤田さんは長いこと裁判官をやって、また弁護士はちょっとだけれども、私は40年間やっておるんだからね。その者が言わないと、一つの職業領域というものは自ら言わない限りだめなんです。裏切っているわけでも、弁護士がかわいくないわけでも何でもない。しかし、私が言わないと、これは弁護士会そのものは、お前ら実態知らぬのにと反論しはるから、私が自ら言うているんです。そういうことです。

【佐藤会長】 時間の関係で、最後の御質問、御意見ということにしたいと思います。

【北村委員】 今のに関連しまして、隣接職種、関連資格者との協働の件でお伺いしたいんですが、中坊先生は非常にほかのことについてははっきりとおっしゃっていると思ったんですけれども、この件についてはどうもちょっと中坊先生らしくない歯切れの悪さがあるかなというふうに感じられたんです。

 結局、先生は基本的にこれについては、どうも反対の方向でいらっしゃるのかというように感じてしまうんです。

 というのは、前回の御報告のときもそうだったんですが、今回も歴史的経過というものをいろいろと考えなければならないとか、行政機関の監督の問題があるとかいうことでおっしゃっていらっしゃいまして、なおかつリーガル・マインドの件で限界があるのではないかと、いろいろなことを挙げられたわけなんです。あと資格に天下りの問題もあったりとか。

 ということは、そういうような問題があるから、要するに、過去においてはそういうものがいろいろとあったと思うんですけれども、今後そういうものを、こういうふうに変えていけばそれが可能なのではないかというようなお考えがあるのかどうなのか、そこのところを伺いたいと思うんです。

【中坊委員】 私は考え方があるわけです。私はそれが先ほどから言うている協働化なんです。私自身はワンストップとか言って、一つの場所ですべてのことが役立つというふうに言わないといけないと思っているんです。

 私自身が、現実にうちの事務員が長いこと勤めていて、司法書士の資格を取り、土地家屋調査士の資格を取って、同じ事務所の横において同じように仕事をしているわけです。友達が検事でおったり、あるいは公認会計士の資格を持ってワンストップでやっているわけです。

 だから、そういうふうに私はこれからの法的サービスというものが、これは弁護士さんでも今言うように、専門的と言っても、すべてのことができるわけじゃありませんから、私は協働化というのが一つの生きる道であろうと。ただし、そこまで来ると、別に弁護士の上下とは言いませんけれども、外国法事務弁護士ですらそういうふうに一つの制約を加えているわけですから、司法書士さんが勝手にやって、弁護士と協働することなく法律事務を扱ってよいのか。やはり国民の信託ということから言えば、ある程度責任を持つという立場にもならないといけないから、そういう意味における協働化ということが、これからの関連業種との間の我々の共存していくべきところではないか。

 少なくとも、今言いましたように、弁護士は1万7,000人で、全部合わすと10何万人おるというわけでしょう。現に生きていらはる人をどうするんだと。今度ということになってくると、同時にロー・スクールができてきて、ロー・スクールの人は一体どうなるんだということになってくるでしょう。

 だから、そういういろいろな問題を多種多様な方面から考えなければいけないけれども、私自身はそういう方々を包括してやっていく必要がある。

 私はたまたま司法書士会についても、青年司法書士会というのがありまして、随分その方々と、今おっしゃる協働化についても話し合ったりやってきていますので、私はそういう協働化ということが、双方が成り立っていく道ではないか。

 それでは、協働化ということは、どんどん弁理士さんを逆に増やしなさいということにするのかしないとか、それは裾野問題のロー・スクール問題、資格問題がいろいろ絡んでくるんで、今私としては、すべてがこうだとは言えない。弁護士プロパーのことは言いやすい。よその業種までは言いにくいから、なるべく遠慮して言うているだけで、決してそういう意味ではない。

【佐藤会長】 今の問題ですが、私としては、まず本来の法曹の姿がどうあるべきかという点について我々の議論を深めた上で、隣接の問題について、これも非常に重要な問題ですので、後日まとめて御議論いただくということにしたいと思っております。

 隣接の問題について、中坊委員は前回は少し消極的かなと思ったんですが、今日のお話を伺うとそうでもないという印象を持ちました。北村委員、今の問題は今後議論するということで、今日のところはこの程度でよろしゅうございますか。また、御議論いただく機会が十分ありますので。

 まだいろいろとお尋ねになりたいところがあるかと思いますけれども、既に予定時間を少し回りましたので、この辺でと思います。

 前回と今日の中坊委員のお話は、前に竹下会長代理からお話しいただいたときと同じように、事務局で論点メモとして整理していただいて残したいと思っております。中坊委員の方も、事務局で作成するについて御協力いただきたいと思います。

 竹下会長代理のお話、それから今回の中坊委員のお話、弁護士改革は司法制度改革の基本的な最も大きな問題の一つだという具体的な御指摘で、我々として考えるべき内容、方向などについて、相当具体的なイメージを持つに至ったのではないかと考えております。これに関連して、こういうことが知りたいということがありましたら、どうぞ事務局の方にいろいろ資料など御要望いただければ結構かと思います。

 では、この件はこの程度にさせていただきまして、次に司法の人的基盤の充実について少し御相談申し上げたいと思います。

 前回私から、今回予定される議事の一つとして、司法の人的基盤の充実について、裁判所、法務省の人的体制に関する議論を行いたい旨申し上げておりましたが、この問題に関しまして、事務局の方で基礎的な資料を用意していただきましたので、まずその説明を聞いた上で議論をしたいと思います。

 では、事務局から裁判所、法務省の人的体制に関する基礎資料について御説明いただけますか。

【事務局長】 お手元にお配りしております『「裁判所、法務省の人的体制」について』という参考資料、これは事務局において用意させていただきましたが、これらはいずれも最高裁及び法務省の協力を得て作成したものであります。

 内容につきましては、ごらんになっていただければわかるように作っておりますので、一応どういう資料を用意したかという観点から説明させていただきます。

 まず資料1~9までは裁判所関係でございます。そのうち資料1及び2は、裁判官とそれ以外の裁判所職員の定員の推移に関する表でございます。

 資料1につきましては、地裁の新受件数との対比をしております。

 資料3は、裁判官以外の裁判所職員の定員の推移について、裁判所書記官、家裁調査官、裁判所調査官、裁判所事務官の内訳がわかるようにして表にまとめたものであります。

 資料4、5は、執行官数の推移や、全国分布等を表したものであります。

 資料6は、それらの裁判所職員の主な職務内容をまとめた資料でございます。読んでいただければ大体のところはわかるように出しております。

 資料7は、民事立会部、民事執行部、破産部について、東京地裁や大阪地裁を例にしまして、それぞれの裁判官、裁判所書記官の人数の構成がどのようになっているかということを図表化したものであります。

 これによりますと、例えば民事立会部の場合、従前は3名の裁判官に対し、5名の裁判所書記官という割合が標準的でありましたが、この裁判所書記官の比率は更に高める必要があるのではないかというふうにされております。

 資料8及び9は、裁判所予算の推移を表した資料でございます。

 次に法務省関係が資料10から続きますが、資料10~12は、法務省の全部局の職員の定員の推移、法務省組織の機構図と、その組織の事務の内容をまとめたものでございます。

 なお、省庁再編に伴い、法務省の機構に一部変更があり、平成13年1月6日から実施予定と聞いております。機構図につきましては、現在のものと変更後のもの2枚を添付しておりまして、網掛け部分が変更箇所ということになります。

 資料13は、検察官を含む検察庁職員の定員の推移を表にまとめたものであります。

 資料14は、検察庁職員の果たしている機能をまとめたものでございます。

 資料15は、検察事務官が具体的に行っている職務の内容を表したものであります。

 資料16は、検察庁の捜査公判部門の体制につき、大規模庁を例に取り、わかりやすく資料化したものであります。これによりますと、検察官が補佐役の検察事務官と一体となって捜査処理、及び公判立証活動に従事していることがお分かりになると思います。

 資料17及び18は、法務省予算の推移を表した資料でございます。

 なお、裁判所関係の資料9及び法務省関係の資料18の表では、数字を棒線グラフで表しまして、比率を折れ線グラフで表しております。単位が左と右に分かれております。この折れ線グラフで表しました割合につきましての注が、国の一般歳出に占める予算額の割合となっております。ここに言います一般歳出と言いますのは、皆さん御存じでありましょうけれども、一般会計歳出総額から地方交付税等及び国債費を差し引いたものという意味でございます。

 以上でございます。

【佐藤会長】 どうもありがとうございました。

 今御説明をいただきましたけれども、少し具体的な内容についてはお読みいただかないと、難しいかもしれませんが、この点、前回も申したと思いますが、いずれ具体的な事柄については、ヒアリングした上、問題状況を我々としてより正確に把握したいと思っております。ざっとしたところでも、裁判官、検察官が不足している、相当増員しないといけないということは、私どもの認識として共通しているんじゃないかと思います。そして、今回のこの資料を基に今聞いただけでも、裁判官、検察官を増員すればそれで事が足りるということでは決してなくて、その事務を支えるサポーティング・システムをしっかりと作らなければならない、書記官や事務職員、更に裁判の執行、判決の求めるところを確実に実現する体制、そういった全体のシステムをしっかりと作らないと、我々の考えているような姿にはなかなかなりにくいということは、これによって大体のところはつかめるんじゃないかと思います。予算関係などでも、これを見ると、やはり裁判所はそうだったのか、法務省関係もこういうことだったのかという思いもするわけであります。いきなり私から申し上げて何ですけれど、お尋ねになりたいことがありましたらどうぞお願いします。

【鳥居委員】 24ページの17表ですけれども、法務省の予算が平成11年度予算総額が5,929億4,000万円と、ほかの省庁に比べると余りにも小さいんでびっくりしているわけですが、これ以外にお金の出どころというのは何にもないんですか。

【事務局長】 ございません。

【佐藤会長】 さっきもちょっと話がありましたけれども、事前規制型社会から事後チェック型社会への転換を真正面から受け止めるなら、従来のこのやり方ではとてもという思いがするんですけれどもね。

【鳥居委員】 5,900億のうち4,700億が人件費ですから、差し引きますと、要するに1,200億くらいが諸経費、物件費と。それ以外いろいろ活動がありそうなんですが、建物を建てるとか、補修するとか、そういうものもその物件費の中に入ってこういう予算なんですか。

【事務局長】 そうです。

【鳥居委員】 わかりました。

【中坊委員】 この表をお作りいただいた方にちょっとお尋ねしたいと同時に、問題がありはしないかと思うんです。裁判官の数の資料には、これは簡易裁判所の裁判官も含めた裁判官の数字じゃないですか。

【事務局(古財参事官)】 そうです。

【中坊委員】 資料1だったら、「除く簡易裁判所判事」と書いてあるでしょう。だから、それならば当然のようにこちらの裁判官のことをお書きになるときも、裁判官と簡易裁判所の判事とは法曹資格も違うんだから、当然分けてお書きいただかないといけないような気がする。

 それどころか、もっと大きな問題点として、なぜ定員だけをお書きになるんですか。まさに問題は実数でしょう。実数そのものがまさに問題になってくるんで、定員というのは、決まっているというだけで、定員が満たされているかいないかということが大きな一つの問題であるにもかかわらず、これには定員だけしか書いてなくて、実数が書いていない。

 弁護士の数は、私のところは実数です。何で裁判官とか検察官のところは定員だけであって、実数が書かれないのかというのも疑問だし、この表自体は、今初めて見るんだけれどもね。

【事務局(古財参事官)】 毎年法律が通った、4月の時点で数を実際に充足しておりますので、定員イコール実数になります。

【中坊委員】 今までの過去の経緯が必要なんで、過去のいきさつが必要なんですから、過去のいきさつの中においてどうなってきたかということは歴史的に見ないといけないから、今、満たしているか満たしていないかということが問題ではなしに、だからこそこの表は昔から古いものが全部出ておるわけでしょう。

【事務局(古財参事官)】 毎年4月には定員を充足しています。

【中坊委員】 それならそれでどうなっておるかということを実数で表していただかないと、定員だけの数字というのはわかりにくい。

【井上委員】 それが実数だと言っておられるのですけれども。

【中坊委員】 いやいや、実数じゃないはずです。そんなんだったら、実数は実数として、裁判官が仮に1人辞めたとします、そうしたらどうなったとかこうなったとか、実数というのはデータとしてあるはずなんです。

【事務局(古財参事官)】 4月の時点で定員数を充足した実数なんです。ですから、その時点では定員数と実数とは一致します。それ以後は、例えば定年で退職されたりした方がいて、減っていくと。また、途中から弁護士任官される方もいますので。

【中坊委員】 あなたはそう言うてはるけど、私らは実際上聞いておった範囲は、定員を割っていた時代もあるし、かなりいろいろ問題があって、それでなかったから、定員があるんだったら、1人でも裁判官を採用できません。だから、今おっしゃっているのは強弁過ぎるのと違いますか。そういうのを私はこの審議会において実数を明らかにされないというのは、ちょっと問題だと思うな。定員だけを言うてね。

【井上委員】 その辺は事実かどうかの問題ですので、開きがある年があれば、それを示していただくということでいいのではないですか。全部埋まっているということならそのとおりなので、そこは事実の問題ですから。

【中坊委員】 だから、私の言うのは、実数がどうなっているかということを、定員とお書きになっているから、それでは実数であるというなら実数でお書きになればいいんだし、いつ現在において実数であると。それが定員なら定員とお書きになればいいもので、定員とだけ表示されるということ自体が私はおかしいのではないかということを言っているわけです。定員というのは枠でわかっているんだから。

【佐藤会長】 理論的に定員と実数とは違うはずだと。だから、定員が書いてあって、それがにわかに実数だと言われても、ということですね。

【中坊委員】 それなら実数として書くべきものでありますということを言っているんです。定員というのはあるべき姿を言っているんです。

【佐藤会長】 それは事実の問題ですから、その辺の立ち入った説明は、次回にでも機会があったらしてください。

【竹下会長代理】 定員は幾らかというのは必要ですよ。

【中坊委員】 定員なら定員と、実数とがどう違うというのは、私はさっきから言うように、弁護士だって、こういうふうにきちっとした実数で表しているんでしょう。

【佐藤会長】 今日は一応の説明ということで。

【中坊委員】 あんたらはそう言わはるけれども、私らは弁護士会で再三裁判所に対して今の裁判官の実数は幾らですかということは問い合わせているわけです。ところが、絶対に裁判所は明らかにしないんです。それで足りないとか話しているだけで、それが今言うように、こういう審議会においても定員だけで押し通そうとされているから、私らは日本弁護士連合会として、そのことを裁判所にね。あなたがたはそれで済むかもしれないけれども、私らは、そのときに再三お願いしておるんですよ、この数字を。しかし、明らかにされないまま今日まで来ているんですよ。だから私は言うておるんですよ。何も私らにしたら、その数字はいかがあるんですかということを私たち弁護士会として、司法制度を言うときにも、再三問い合わせている。でも、明らかにされない。だから、今言うておるんですよ、私は。

 実際、過去においてそういう数字を問い合わせて、裁判所に行くと定員を割っているとか、裁判官が足りないということを言う。それで最高裁に聞けば明らかにしない。そのまま今日まできているんです。しかも、これは聞くところでは、国会でも明らかにしていないんです。

 その辺は審議会であれば、そういうような数字は公にすべきことですよ。だから、それほど単純なことではないと思っております。それが裁判所の在り方の一つの問題点なんです。裁判所に限りません。

【藤田委員】 実数というのは日々変わるわけだから、4月に判事補が任官した時点で、実数が決まります。定員を充足しているなら、定員と実数は一致します。判事補の任官の日も4月何日だというのは毎年変わるでしょう。だから、その時点での実数というのを出せばそれでいいわけです、最初の時点での。それ以後は毎日変わっていくということになるわけですね。

【中坊委員】 定員というのはあくまでてっぺんでしょう。だから、実際上てっぺんがこれだというのはわかります。しかし、実数がどうなっておるかということは、ちゃんと数字で出さないと、あるべき姿だけというか、てっぺんだけは書いてあるけれども、実際どれだけでやっているのかというのはわからない。

【井上委員】 藤田委員がおっしゃったのは、それはどの時点を取るかによって変わってくるので、4月に新任の判事補が任官した時点でどのくらいだというのを確認していただければいいことだと思いますが。

【山本委員】 あるいは直前でもいい。

【藤田委員】 簡裁判事の件は、括弧書きの中が簡裁判事を除いた数字です。

【中坊委員】 資料2だ。

【佐藤会長】 資料1の方です。

【中坊委員】 裁判官が両方とも書いてあるから。

【藤田委員】 資料2の方は、簡裁判事を含めた数です。

【中坊委員】 それやったら、簡易裁判所の判事がこのうち幾らだというのを書いておいてもらったいいのと違いますかというんです。

【藤田委員】 資料1を見ると、括弧書きで簡裁判事を除いた数が出ているから、その差が簡裁判事です。

【中坊委員】 計算しないでも、ちゃんと書いておいてもらったらいいんです。量というものは、片一方は除いておいて、片一方は入っているんでは。片一方に裁判官と書いて、除く簡裁判事と書いておいて、職員の定員のときまで来たら、裁判官だけと書いてあるから、そのうち簡裁の判事は幾らだと書いてもろうた方が正確でわかりいいのと違いますかということを言うているわけです。それだけのことです。

【井上委員】 それでいけば、裁判官以外の裁判所職員というところも合計数なのです。だから、前の表と対照すればわかるという考え方でできているのでしょう。むろん、もっと親切に細かく書けということは言えますが。

【中坊委員】 70歳ですから、わかるようにお願いします。

【鳥居委員】 今のお話、席を外していながらこれの関連の質問をして申し訳ないんですが、裁判官の定員や検事の定員に、構造というのがあるんでしょうか。

 例えば、検事正1人に検事何人とか、予算定員の構造というのはあるんでしょうか。

【事務局長】 検事正も検事でございますから、すべて検事は、1人は1人でございます。

【鳥居委員】 例えば国立大学の場合には、講座制を取るか、学科制を取るかという選択を迫られていて、東京大学の場合には講座制を選択している大学なわけです。

【井上委員】 その点は既にかなり崩れていますけれども。

【鳥居委員】 そうすると、1講座というのは予算の単位であるわけで、その1講座につき教授1人、助教授2人、助手何人というのが予算単位になっているわけですね。そういう予算単位と組み合わされた構造というのはあるのかという質問なんです。

【事務局長】 検事はすべて、あとは補職でございますから、検事正になるのも検事でございまして、検事の定員というのは決まっております。検事正も1人ですし、平の検事も1人でございます。同じ数でございます。

【井上委員】 検事正1に対して検事何人という、そういう基準があるわけではない。検事総長と次長検事、検事長の数は定められていますけれど。

【鳥居委員】 日本各地の検察庁ごとに予算の単位があって、そこに人事の構成が決まる。裁判所も同様ですか。

【井上委員】 トータルで決まるのでしょう。

【事務局長】 それは各地の地検に何人を配分するかは法務省で決めていることでございまして、検事の定員はここに書いてある人数、これは検事正も1人ですし、若い検事も1人、同じ数でございます。その定員の中から、例えば大阪に何人の検事を配置するかどうかということは、法務行政の問題でございますから、それは仕事の繁閑に応じて考えております。それは事務官も同じでございます。

【髙木委員】 資料8の「裁判所予算額暦年比較」というのがありますが、三権分立と言われる中で、予算が三権の一つの立法府である国会で決められることとの関連や、行政府である大蔵省の主計局との間にも、いろいろ決める手続やルールがあると思うんですが、どういう決め方になっているのでしょうか。このような質問をするのも、人件費率が85.6%、小規模司法、小さな司法、行政事件に対する裁判所のアプローチの感覚などを見たときに、予算で締め上げられておるんじゃないかというふうに感じたりするものですから。そういう意味では、三権分立と司法予算の決まり方が実態上、三権分立の意味が担保される決まり方になっているのかどうか、その辺ちょっと教えてほしいと思います。

【佐藤会長】 この問題は、ヒアリングのときに、4月にヒアリングを予定しておりますので、その際に御議論いただきたいと思います。北村委員から関連する御質問がありましたね。増員がなぜなかなか実現しなかったのかという御質問があったように思います。裁判所の予算の在り方、仕組みと言いますか、そこにおける問題点などはヒアリングのときにしたいと思いますけれども、それでよろしゅうございますか。何か今日言えることがありますか。

【事務局(古財参事官)】 裁判所予算の仕組みについて簡単に御説明をいたしたいと思います。

 裁判所の予算の成立過程も他の行政省庁も基本的に異なるものではないんですけれども、国会や会計検査院などのように憲法上認められた特別の機関として、行政府に対し独立の地位を有しておりますので、その予算編成手順の一部について、行政省庁と異なる仕組みが設けられております。いわゆる二重予算の制度でありまして、具体的には最高裁は毎年、翌年度予算の概算要求書を作成して8月末日までに内閣に提出することになっております。これは財政法17条の1項に定められております。

 その後、国の予算の作成を所掌する大蔵省に対し概算要求の説明を行い、両者間で調整、いわゆる復活折衝を行い、合意ができると、これは他の省庁の予算とともに閣議を経て、政府原案となり国会で審議されることになります。

 これに対し、両者間の調整がつかない場合には、内閣は裁判所の要求を減額することになりますが、このときには内閣はその詳細を予算に付記するとともに、国会はこれらの特別機関の歳出額を修正する場合における必要な財源についても、明記することとされております。財政法の19条です。

 簡単な御説明としては以上です。

【佐藤会長】 そういう例は何回かありますか。

【事務局(古財参事官)】 昭和27年の予算で、裁判所の営繕費について、最高裁判所と内閣の間の調整がつかずに二重予算権を行使したことがありますけれども、このときにも、後に両者の間で話し合いがついて、裁判所側から撤回をしたというふうに聞いております。それ以外には二重予算権を行使した例はないということでございます。

【竹下会長代理】 ですから仕組みとしては、ほかの省庁とは違うようになっているのですね。

【藤田委員】 一言蛇足を付け加えますと、人件費が85%というところですから、人を増やさなければ予算は増えないんですね。しかし、スモール・ガバメントということで裁判所の方もそれは増やしてもらいたいけれども、野放図な要求はできないということです。それにもかかわらず、これをごらんいただくと、裁判官もそれ以外の職員も増員されております。これは他の省庁では定員削減計画で年々減っていくのに、裁判所の方は特別な配慮をしてもらっているということです。事務総局の方でいろいろ努力した結果だと思います。それが十分かどうかというのは、これは別ですけれども、そういう特殊な事情がございます。法務省も人件費が80%ですから、同じような状況なんだろうと思います。

【中坊委員】 できたら予算の内訳というのがわかるんですか。裁判所予算案、3,184億、予算の人件費はわかるが、人件費の中も裁判官の分は幾らであるとか、もうちょっと予算も、人件費以外に物件費であるとか、鳥居さんからお尋ねあったように、予算の内訳、これも私は言っちゃ悪いけれども、日弁連で再三最高裁にも予算はみんなのことやから言うてくれと言っても、これも明細は教えられていない。だから、私らは日弁連におって、我々も総額はわかっています。しかし、その内訳もないし、実数も明らかでないし、ほとんどそういう実数は裁判所はお教えにならないです。

 それじゃ予算の内訳はどうなっているんですかというのを一番最後の年でも、ここ3年間くらいでいいから、一度、何がいくらと、確かに人件費が一番多いのはわかりますよ、しかし、ほかにどういう予算項目があって、どうなっているかということも教えてもらった方がいいという感じがします。私らはそれをお願いしたことあるけれども、結局、明らかにならなかった。

【事務局(古財参事官)】 資料の方を用意したいと思いますが。人件費以外のものでは、物件費ということですけれども、施設費、裁判費などがありまして、施設費というのは、裁判所庁舎の新営・増築・改修等に当てられる経費でございます。裁判費というのは、国選弁護人報酬だとか、鑑定人・通訳人経費だとか、証人旅費、あるいは裁判庁費等ということになっております。

【中坊委員】 表の中の、今言う人件費の中も裁判官が幾らで書記官がどれくらいでとか、国選弁護が幾らくらいだとか、人件費の内訳が入ります。

 今度、人件費以外にどういう物件費があるのか、3か年間くらいで言うてもらわないと、予算の総額だけでは非常に議論がおおざっぱ過ぎると思います。

 だから、もう少しそういうことも入れたものにしていただいた方が、審議としてはしやすいんじゃないかと思います。

【佐藤会長】 先ほど鳥居委員が提起された問題は、大学の場合も一緒で、教官が増えて、事務職員がだんだん先細りになっていって、全体として仕事がうまくできるかというと、非常にシリアスな問題があるんです。同じような問題は、恐らく裁判所にも、法務省にも、私はあるんじゃないかと思うんですが。

【鳥居委員】 先生おっしゃっているのに関連して言わしていただければ、私はこれからの情報化時代で、例えば膨大な判例を、分厚い判例集で引くのではなくて、情報検索すれば判例が出てくるというのも最初は相当予算が必要です。その予算を突っ込めば、後は非常にいいシステムができるはずなんで、そういうのはこの裁判所予算の柔軟化でやる。特に総理官邸主導のミレニアム予算というのが付いている時期ですから、やりやすいと思うんです。

【佐藤会長】 そうしましたら、これも時間を切ってしまうようで大変恐縮ですけれども、今の問題については、ヒアリングでそれぞれのところから、少し立ち入ったお話を聞きたいと思っております。最初に申し上げたように、裁判官、検察官の仕事は、事後チェック型社会となるというならば、今までとは相当違ったものになるはずのものであり、そのときには裁判官、検察官のサポーティング・システムもしっかりしたものにならなければならないであろう。その辺を今度のヒアリングのときにもう少し実情を詳しく聞きながら確認したいと思っておりますが、いずれにしても、裁判所も検察も含めて、司法の拡充ということが是非必要であるということだろうと思います。

 弁護士の相当大幅な増員を図らなければいけない、6万人という数字も出ましたけれども、相当大幅な拡充を図らなければいけないという点につきましては、大体この審議会としてコンセンサスができてきたのではないかと思います。

 先ほどから申しておりますように、具体的な我々のはっきりした結論は、ヒアリングをした後で、もっと具体的な実情をつかんだ上で、出したいと思いますけれども、今日の段階では裁判所も検察も弁護士も含めて、大幅な法曹人口の増加を図らなければいけないという点については、今日大体合意が得られたのではないかと思います。今日の段階ではこのようなまとめ方でよろしゅうございますか。

【吉岡委員】 質問で、今日すぐお答えになれなければ資料をお出しいただければと思うんですけれども、私が知りたいのは、裁判官の数の中に、裁判実務に関わらない方が入っているのかいないのか。もし裁判実務に関わらない方も数に入っているとすれば、その人数がどのくらいなのかということを知りたいんです。

【佐藤会長】 その点についての資料を用意していただけますか。そういうことでよろしいでしょうか。

【吉岡委員】 はい。

【中坊委員】 検察官も同じことをお願いします。

【佐藤会長】 どうもありがとうございました。では、この件についてはそういう取りまとめ方にさせていただきたいと思います。

 それでは、次に地方における実情視察についてお諮りしたいと思います。事務局から何か。

【事務局長】 今お手元に配られておりますが、そのペーパーに基づいて若干の説明をさせていただきますと、まず実施時期について考えてみますと、審議会が4月以降は月3回のペースで開催されるということ。加えまして、海外実情調査をゴールデンウィーク中にやるということ。それから地方公聴会を6、7月にお取りしておりますことから、これに加えて実情視察の日程というのはなかなか難しい状況になっております。

 ただ、6月16日の福岡での実情視察の日から次の審議会である6月27日までの間、それから7月14日、金曜日の札幌での実情視察の日から次の審議会である7月25日までの間が比較的間隔が開いておりますので、この辺りの平日が候補になろうかと思います。

 そのほかには、8月の盆休みが空いているだけで、あとは9月に入ってしまいますので、実情視察をしていただくにはやや遅い時期になってしまうのではないかというふうに思います。

 次に候補地につきましては、せっかく法曹三者がそれぞれの理由を挙げまして推薦してきておりますことから、やはりこれらの候補地から選ぶのが適当ではないかと考えます。これらの中から実施時期の困難さを考えますと、2か所程度が適当ではないかというふうに今のところは考えております。

 このほかに、前々回の御審議で御意見をいただいておりました沖縄をどうするかという点もございますが、沖縄サミット、これは7月21日から23日でございますが、それまでの間は地元での警備体制に難しい点があるのではないかと思いますので、実施するとすれば6月中下旬ごろに絞られてしまうだろうというふうに考えます。

 事務局からの説明は以上でございますので、よろしく御審議のほどをお願いいたします。

【佐藤会長】 どうもありがとうございました。

 前回、2、3か所がせいぜいではないかということでしたが、その前提で事務局からいろいろ考えていただいたわけですけれども、いかがでしょうか。法曹三者に共通しているのは酒田ですね。酒田は東日本の方で大体いいんじゃないかという感じですけれども、西日本の方は三次ないし益田ですかね。何か御意見ありますか。

【藤田委員】 広島は私在勤していたんですけれども、三次、津山、新見のうち合議事件、少年事件をやる支部はどこですか。

【事務局長】 津山です。

【藤田委員】 少年事件もやりますか。

【事務局(古財参事官)】 やります。

【藤田委員】 弁護士は益田に1人おられるのかな。事件の規模などから言うと、三次か津山がいいんじゃないかと思いますが。日弁連の方で益田を推薦なさっているけれども、法律相談センターや公設事務所は浜田の方じゃなかったですか。

【事務局(丸島主任専門調査員)】 浜田市です。地域的に言えば、益田・浜田を含む地域という意味です。いずれも弁護士過疎地でして、これらの地域に対応する石見法律相談センターを設置するなどして取り組んでいますので、相談センター設置の前後の状況の変化もわかると思います。

【藤田委員】 益田、浜田は裁判官が兼務しているところですが、法律相談センターは石見の方ですね。これはどういう基準で選択するかにもよりますけれども、合議事件をやっているのは津山ですね。

【事務局長】 そうです。

【藤田委員】 合議事件も少年事件もやっているとすれば、津山がいいかなという気がしますが。

【佐藤会長】 いかがしましょうか。中坊委員、御意見ありますか。

【中坊委員】 今度の地方のはなるべく過疎地のところへ行こうというなら、何か焦点を絞って行った方がいいかなという感じはしますが、どうしたらいいのか。おっしゃるように、過疎地も一つの問題点だからということで重点的に行くなら、そういう視点で選んだらこうなったということでないと、たまたまみんなが選んでおるからというわけにも、ちょっと見識がないような気がする。

【水原委員】 それならば、それぞれのところを、法曹三者それぞれが選んだ理由を簡単に御説明いただけばと思います。

【事務局長】 今、資料を出します。

【山本委員】 新見と津山は弁護士がゼロですね。

【佐藤会長】 益田が1人ですか。

【山本委員】 益田は1人です。

【事務局長】 先ほどの津山ですが、少年事件はやっておりますが、合議事件はやってないということだそうでございます。

【藤田委員】 三次はどうですか。

【事務局長】 もう一度説明させていただきますが、最高裁が酒田を選んでおりますのは、管内人口、受件数、職員数から見て、小規模庁であるという理由からです。
 横手も同じでございます。
 三次は、同じ観点から見て、比較的小規模庁です。
 津山は、交通の便がよく、受件数、職員数から見て中規模庁ということです。

 法務省が選んでおります理由は、酒田は東北地方日本海側の小規模支部の例ということです。
 金沢は、北陸地方の中心都市で、高検支部所在地です。
 三次は、内陸部の小規模支部の例です。管内弁護士が1人だということです。
 宇和島は、四国西部の小規模支部の例です。
 いずれも小規模ということで選んでいます。

 日弁連の理由は、酒田は裁判官1人で合議事件は鶴岡支部で行われる裁判官過疎地域だということです。
 宮津は京都市等から補助金合計300万円が京都弁護士会に支給されているところです。新見は、地方自治体が弁護士会の相談券、これを購入しているところです。
 益田は典型的な過疎地域だという理由だそうでございます。

【藤田委員】 三次と津山を比べれば、三次の方が気候条件は厳しいんです。あそこは寒いところですから。

【事務局長】 6月か7月です。

【藤田委員】 やはり酒田なども豪雪の時期に行かないと。

【佐藤会長】 時期的にはしようがないですね。そうしたら、酒田を東日本で選び、過疎地ということで、益田にしますか。藤田委員、よろしいですか。

【藤田委員】 弁護士は1人でしょう。どうせならば浜田へ行って、法律相談センターとか公設事務所を見た方がいいんじゃないですか。

【事務局(丸島主任専門調査員)】 そういう趣旨です。石見の法律相談センターを念頭に置いた趣旨だと思います。

【藤田委員】 それは浜田でしょう。

【事務局(小島参事官)】 酒田にも法律相談センターがございます。

【藤田委員】 公設事務所は浜田じゃなかったですか。

【事務局(丸島主任専門調査員)】 場所で言えば浜田市です。

【藤田委員】 法律相談センターと同じですか。

【事務局(丸島主任専門調査員)】 浜田市に設置された石見法律相談センターが公設事務所に今脱皮しようとしているところです。

【藤田委員】 そうですか。私が広島にいたときに「石見に続け」というスローガンだったから、浜田の方がいいのかなと思ったんですけれども。

【事務局(丸島主任専門調査員)】 それを念頭に置いてのことだと思います。それを含んだこの地域という意味だと思います。

【藤田委員】 別に反対しているわけじゃないですよ。

【佐藤会長】 それでは、酒田と、それから益田ということで今日決めさせていただきたいと思います。

【事務局長】 今の御趣旨を踏まえまして、向こうの受け入れ体制もあるでしょうから、こちらで相談いたしまして、そういう観点から、その辺りということで選ばせてもらってよろしいですか。

【佐藤会長】 そうしてください。どうもありがとうございました。

 次に、大阪における地方公聴会の公述人の選定についてお諮りしたいと思います。大阪における地方公聴会の公述人につきましては、私と会長代理で相談させていただきまして、応募のございました合計99名の方から、お手元にお配りしております一覧表をごらんいただきたいと思いますけれども、それに記載しております6名を選ばせていただきました。既に事務局からそれぞれの方に連絡をして御内諾を得ております。この6名の方を選定させていただいた基本的な考え方を若干お話し申し上げます。

 まず、基準なんですけれども、大阪における地方公聴会ということで、大阪以外にも既に福岡、札幌、東京においてそれぞれ公聴会をするということを御決定いただいておりますこともありまして、基本的に大阪を中心にして、近畿、中国、四国、中部地区から選定するということにさせていただきました。

 更に、私どもの審議会は、国民が利用しやすい司法の実現を目指して、調査審議を行っておりますことから、第1回目の地方公聴会となります今回は、司法制度を利用する立場の方から優先的にお話をお聞きするのが適当ではないかということで、そのような方を優先的に選定させていただきました。

 その上で、それぞれの意見書の内容、年齢、職業、男女のバランスなどを検討しました結果、今、お手元に配られております一覧表の6名の方を公述人として選定させていただいた次第です。

 それから、最初に申しました地域性の点に関しまして、先ほど申し上げた地域以外から応募された方につきましては、他の地方公聴会での公述人選定に当たって、もう一度考慮させていただきたいと考えております。

 この6名を選ばしていただきましたけれども、これでよろしゅうございましょうか。何か代理の方からありますか。

【竹下会長代理】 特にございません。今、会長が説明されたとおりです。

【鳥居委員】 公聴会は1回だけですか。

【佐藤会長】 大阪では1回です。あとは札幌、福岡、東京です。

【鳥居委員】 今回は賛成ですけれども、例えば企業の経営者、中小企業の経営者で今までにいろいろ法律問題でいろんな経験をユーザーとしてされた方ですね。そういう方というのは、今回は入っていませんけれども、必要なのかなと。

 それから、大企業の法務部門の人とかですね。そういう方々も視野に入れられたらどうかなという感じがします。

【佐藤会長】 今回の応募者の中にもそういう関係の方がおられましたが、内容を見て、今回はこの辺かなということになったわけです。おっしゃった点は、後の公聴会のときにそれぞれ考慮する余地があるかと思います。

 更に言いますと、学者の方もおられたんですけれども、いろいろ御発表の機会もおありだろうということで、今回は特に利用者の立場という視点から考えさせていただいたわけです。

 今おっしゃったことは、ほかの3か所について考えたいと思いますが、大体こんなことでよろしゅうございましょうか。

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】 どうもありがとうございました。

 応募していただいた方々の意見書はすべて目を通しましたけれども、いろいろな立場からさまざまな意見が寄せられておりまして、非常に参考になりました。

 また、国民の皆さんが司法制度改革に対してかなり関心をお持ちだということもわかってうれしく思った次第です。

 公述人の方につきましては、今日御了承いただきましたので、事務局から正式に御依頼状を発送するということにいたします。

 なお、応募していただいた方々の意見書は、すべて事務局に保管しておりますので、皆様にもお時間をお作りいただいて、お読みいただければというように思っております。次に、当日の公聴会ですけれども、傍聴の申込とか、その辺の状況はどうなっていますか。

【事務局長】 大阪の地方公聴会の傍聴の応募は、2月15日で締め切らせていただきましたけれども、応募者総数は612名にのぼりました。応募者多数でございますので、2月18日の金曜日に事務局の方において抽選を行わせていただきまして、230 人の方に決定いたしました。

 なお、抽選の方法は、応募葉書に順番にナンバーを振った後にコンピュータで作成した乱数表を用いて抽選いたしました。当選者には2月25日ごろまでに入場整理券を発送するということを予定しております。

 以上でございます。

【佐藤会長】 どうもありがとうございます。非常に御関心の高い状況がおわかりいただけるかと思いますが、あと3か所ありますが、更に御関心が高まっていくことを期待している次第です。

 当日御参加いただく委員の方々には具体的にいろいろご連絡申し上げる訳ですね。

【事務局長】 後ほど御連絡いたします。

【佐藤会長】 では、この件はこの程度にさせていただきます。

 次に海外実情調査、各国別質問事項についてお諮りしたいと思います。

 海外実情調査の実施の詳細については、皆様に御了解いただきまして、私と会長代理と相談しながら、現在、検討を進めているところですが、中でも各国における質問事項について、面談先の便宜なども配慮しまして、アポイントメントを取る際には、先方に送付する必要があるということで、早目に検討を終える必要があります。

 そこで、私と会長代理とで相談して作成した各国別質問事項の案を事前にお配りしておりましたけれども、この案について既に事務局宛てに御意見をいただいております。特に髙木委員、中坊委員から詳細な御意見をいただいておりますけれども、これらの御意見を踏まえて、質問事項を修正したいと思いますけれども、修正の内容については、時間の制約もありまして、今日、特にこの辺という御意見がありましたらちょうだいしたいと思いますが、最終的には私と会長代理に御一任いただければと思っておりますが、よろしゅうございますか。

【髙木委員】 リスト等訪問先を拝見して、時間の制約もあるからだと思いますが、ユーザー的なポジションの方にお話を聞く機会が非常に少ないかなと思います。そんな印象がちょっとありましたので、意見書の中にも書かせていただきましたけれども。

【佐藤会長】 その辺も含めて検討させていただきたいと思います。

 私の立場から言いますと、憲法裁判所関係も入れてほしいという思いもありますが、今回はいろいろな都合でそれをオミットするのはやむを得なかろうと思っておりますが、今、髙木委員がおっしゃった点は検討させていただきたいと思います。

【井上委員】 日程がかなり厳しいですからね。長い時間かけて飛んで行ってですから、余り広範囲に動き回れないのではないかと思うのです。そういうことの範囲で考えざるを得ないと思います。

【佐藤会長】 では、この件はこの程度でよろしゅうございましょうか。

 それでは、最後ですけれども、各テーマごとの審議日程など、海外実情調査後の審議の進め方について、少し御相談したいと思います。

 去る1月18日に開催された第10回会合において、海外実情調査までのおおまかな審議スケジュールとして、人的基盤に係るテーマから先に議論を行うということで1月下旬から、今日ももちろんそうですが、4月上旬に掛けて、ある程度おおくくりにまとめましたテーマごとに竹下会長代理、中坊委員、それから井上委員にレポーター役をお願いしておりまして、制度の現状や問題となる論点などについて御説明いただき、それを基に議論を行うということをお決めいただいたわけであります。

 このスケジュールによりますと、海外調査までに残されているのは、4月の第2回目の会合に当たります17日の第17回会合と、4月25日の第18回会合の2回の会合になります。せっかく海外実情調査に出掛けて、先ほど御審議いただいた質問事項によって調査を行うわけですから、この際出発までに論点整理に挙げられた他の重要項目についても、あらかじめひととおり勉強しておくことが有益ではないかというように考えられます。

 そのような観点から、時間も余りありませんけれども、残されたテーマについて、論点整理の別紙の区分に合わせて、次の三つ、

 一番目は、国民の期待に応える刑事司法の在り方。
 二番目は、国民の司法参加。
 三番目に、法曹一元。この三つの問題にくくりまして、これらのテーマを2回の会合に振り分けて、何が問題点かについて勉強しておくのが必要ではないかと考えている次第です。

 したがって、これらの2回の会合においては、実質的な審議を行うというよりも、問題点を把握するという意味合いでレポーター役をお願いしたいと考えております。

 そのような意味から、各委員の専門的な知見と御経歴を勘案しまして、「国民の期待に応える刑事司法の在り方」については水原委員にレポーター役をお願いしたい。

 それから「国民の司法参加」につきましては、藤田委員にお願いしたい。

 「法曹一元」については、私と会長代理と中坊委員で少し御相談させていただきたいと思います。これはさっき申したように、法曹一元をどうするかという話ではなくて、法曹一元とはどういう仕組みのものなのかという勉強の趣旨で、今までの論点を少し整理するという程度でございますが、この問題については、今申しました3人で少し御相談させていただきたいと思っておりますけれども、そんなことでよろしゅうございますか。

 では、恐縮でございますけれども、水原委員、藤田委員、会長代理、中坊委員、よろしくお願いいたします。

 何か御質問等ございますか、よろしゅうございますか。

 この4月の2回目、3回目にどちらを議論するのかということにつきましては、また、考えさせていただきたいと思います。そして、この2回のいずれかに、さっき申し上げたように、最高裁、法務省から「司法の充実」についてのヒアリングも行いたいと思っております。

 それから、海外実情調査後の審議の進め方になりますけれども、これまで各テーマごとにレポーター役をお願いしております、いわゆる法律専門家である委員に、主としてユーザーの立場の委員の方々も加わっていただいて、例えばユーザーの視点に立ったレポートなどを行っていただくということも考えております。私と会長代理とともに、これらのレポーター役をお願いする委員の方々との間で中間報告を念頭に置いた各テーマごとの議論の進め方などについて、適宜協議をしながら審議を進めてまいりたいと考えております。今の段階では漠然とそういうことしか申し上げられませんけれども、こんなことでよろしゅうございますか。

 その点は、また改めて御相談申し上げたいと思います。そのときレポーター役をお願いする方、お引き受けいただけますように、さっきの中坊委員の就任義務ではないですが、よろしくお願いします。

 では、配付資料について説明をお願いします。

【事務局長】 例によりまして、配付資料一覧に基づいて御説明いたしますが、一覧表の5の『「国民がより使用しやすい司法の実現」及び国民の期待に応える民事司法の在り方」についての論点整理(追加参考資料)』ですが、これは第11回会議の審議において、委員からの御要望のありましたデータにつき、現段階で準備できたものを資料化したものであります。

 御要望のありましたものは、例えば平均審理期間と控訴率の推移を表したという表でございますので、御参考にしてください。

 なお、その過程で大都市簡易裁判所の統合の関係で、受付相談への対応について御質問がございましたので、最高裁に照会いたしました。これによりますと、大都市簡易裁判所を統合した後、東京簡裁等では、新たに専任の職員を配置した受付相談センターを設けて、相談者のプライバシーにも十分配慮した施設で来庁者の相談に応じ、簡裁の事件手続の概要について説明を実施することとし、事件の受付も親しみやすい雰囲気の中で行われるよう、新たなオープン・カウンター方式を採用するなどして、受付窓口体制の充実強化を図ったということであります。

 また、東京簡裁では、令状処理や調停事件処理等のために設けられた分室におきましても、受付相談を行い、地域住民への司法サービスに配慮しているということであります。なお、簡裁民事の各事件手続の案内につきましては、大都市簡易裁判所を含む全国の20の簡易裁判所において、電話やFAXを利用して説明を受けることができる簡易裁判所民事手続案内サービスを行っているということであります。

 配付資料の3、4は、本日の会議用の参考資料でありまして、そのほかの資料は毎回お配りしているものでありまして、特に説明することはございません。

 以上でございます。

【佐藤会長】 どうもありがとうございました。

 最後に次回の会合についてでありますが、3月2日木曜日午前9時半から、この審議室で開催します。議題としては、井上委員にレポーター役をお願いしまして、法曹養成について御審議いただくということにしております。

 なお、法曹養成については、3月2日、14日の2回の会合と、4月11日の会合の全3回にわたって井上委員のレポートなどを基に御審議いただくことになります。吉岡委員の出された法曹養成の問題は、ここで御議論いただくことになります。

 なお、次々回に当たります3月14日の第15回の会合には、法曹養成に関係する適切な方にお越しいただきまして、制度の現状とか問題点などにつきまして、ヒアリングを行いたいというように考えております。

 そのため既に御案内しているとおり、会合の開催時刻を繰り上げまして、午後1時30分からというようにしたいと思っております。また、過重な御負担をおかけすることになりますが、よろしゅうございましょうか。

 どうも申し訳ありませんが、よろしくお願いたします。

 それでは、3月14日は午後1時30分開会ということにさせていただきます。

 最後に本日の記者会見でございますけれども、中坊委員、レポーター役ですので。他の方も御参加いただければ大変よろしいのですが、いかがでしょうか。

 では、中坊委員、お願いします。

 本日はどうもありがとうございました。