配付資料

(別紙1)

「弁護士の在り方」に関し今後重点的に検討すべき論点について

第1.弁護士改革総論

1.弁護士改革の位置付け

 弁護士の在り方は司法制度について決定的な意味をもつものであること、司法制度改革の諸課題は相互に有機的に関連したものとして論じられなければならないことについて認識が一致した。

2.弁護士改革を論じる視点

 弁護士改革を論じるに当たって、先の論点整理に基づいて次の三点を踏まえるべきことについて認識が一致した。

 第1は、「近代の幕開け以来、130年にわたってこの国が背負い続けてきた課題、すなわち、一国の法がこの国の血肉と化し、『この国のかたち』となるために一体何をなさなければならないのか」との問題意識に立って、司法制度改革に臨むこと。

 第2は、「国民一人ひとりが、統治客体意識から脱却し、自律的でかつ社会的責任を負った統治主体として、互いに協力しながら自由で公正な社会の構築に参画していく」ために、司法制度においてどのような改革が必要かということ。

 第3は、「司法(法曹)はいわば“国民の社会生活上の医師”の役割を果たすべき存在である」とすれば、法曹が「“国民の社会生活上の医師”の役割」を果たすためには、司法制度においてどのような改革が必要かということ。

 上記三点を踏まえ、弁護士制度の在り方の検討に当たっては、近代日本において弁護士制度が全体社会の在り方との関係でどのように位置づけられ、どのように機能してきたのか、今後どのように位置づけ、どのような機能を期待すべきなのかといったマクロ的視点と、個別的なもろもろの制度、固有の問題をどのようにとらえて、どのように改善するかといったミクロ的視点を、適切に交差させながら考えていくことが重要であることについて認識が一致した。

第2.弁護士改革各論

Ⅰ 弁護士改革の人的側面

 中坊委員から、弁護士制度の現状をもたらした歴史的・構造的な原因を分析する必要があり、それは明治時代以来のいわば「弁護士を必要としない社会づくり」政策であり、この克服のために抜本的な改革に踏み出す必要があるとの指摘があった。今後この点も含め更に議論されることとなる。

1.弁護士人口の増加

○法曹(弁護士)人口の規模
・法曹(弁護士)人口の大幅増員の必要性について認識が一致した。
・望ましい法曹(弁護士)人口に関しては、様々な考え方がありうるが、一つの目安として、本審議会において、中坊委員から、「隣接法律専門職種等との関係を検討することを留保しつつ、5~6万人程度の弁護士人口を目指す」との考え方が提示されており、今後更に議論されることとなる。

○法曹(弁護士)人口増加の具体的在り方

 法曹(弁護士)人口増加の具体的在り方について、その方法、法曹養成制度との関係、隣接法律専門職種等との関係を含め、今後更に議論されることとなる。

2.公益性に基づく社会的責務の実践

○弁護士の公益性

 中坊委員から、「法律事務」の意義を踏まえ、弁護士業務が「当事者性」、「公益性」及び「事業者性」の「3つの顔」を持つとの考え方が提示され、弁護士業務が公益的側面を有し、かつこれを重視すべきことについては認識が一致した。今後、公益性の具体的中身や、その法制度的な発露がどのようなものであるべきか等については、以下の点を含め更に議論されることとなる。
・弁護士業務の公益的側面の具体的内容
・弁護士の公益的活動の意義とその適正確保のための方策の要否
・弁護士法1条2項(弁護士の使命)の見直しの要否
・弁護士法72条(いわゆる弁護士の法律事務独占)の捉え方及び見直しの要否
・公益的側面の発露として、弁護士の社会的責務を法制度上どのように規定するか。
・例えば、弁護士の裁判官への就任に関して、日弁連の推薦義務、推薦を受けた弁護士の就任義務等を弁護士法に新たに規定することの当否

○社会的責務の実践のための基盤整備

 中坊委員から、「弁護士の社会的責務として、公衆への奉仕、公務への就任、法曹(弁護士)養成への主体的関与がある」との考え方が提示されており、今後以下の点を含め更に議論されることとなる。
・弁護士法30条(兼職及び営業等の制限)の見直しの要否
・公益性に基づく社会的責務の実践の支援方策の要否

3.法曹養成制度の改革(別途検討)

 法曹(弁護士)の量・質ともに充実させる見地から、法曹養成制度の抜本的な検討が必要であることについて認識が一致し、次の点を含め更に議論されることとなる。
・法曹養成制度の改革に向けた弁護士会の積極的参画

4.弁護士の活動領域の拡大

 公的機関、国際機関、民間企業、非営利団体(NPO)など、弁護士の進出が求められている領域は広いことについて認識が一致し、次の点を含め更に議論を行うこととなる。
・弁護士法30条の見直しの要否(再掲)

5.弁護士と隣接法律専門職種等との関係

 隣接法律専門職種等について、制度の経緯と現状に留意し、次の点を含め更に議論を行うこととなる。

○「法曹」の定義と隣接法律専門職種等の位置づけ

○隣接法律専門職種等に訴訟代理権の付与など一定の法律事務の取扱いを認めることの当否及び認める場合の要件(必要な場合)

○隣接法律専門職種等との協働化の在り方

○弁護士法72条(いわゆる弁護士の法律事務独占)の捉え方及び見直しの要否(再掲)

Ⅱ 弁護士改革の制度的側面

1.弁護士へのアクセスの拡充(弁護士過疎や経済的理由等によるアクセス障害の解消)

 アクセス障害の解消は、市民に身近で、親しみやすく、頼りがいがあって信頼できる弁護士となるための喫緊の課題であり、弁護士・弁護士会の社会的責務であることについて認識が一致し、弁護士人口の増加や法律扶助制度の拡充などの関連諸制度の改革と関連させながら、次の点を含め更に議論を行うこととなる。

○法律相談活動の充実
・法律相談センター、公設(公益)事務所の在り方(目的、運営主体、運営方法、弁護士の関与の在り方、費用負担の在り方等)

○弁護士費用(報酬)
・弁護士費用の合理化・透明化
・弁護士費用の敗訴者負担制度導入の可否
・訴訟費用保険
・法律扶助の充実

○弁護士情報の公開
・弁護士広告の解禁の当否及びその在り方
・弁護士の情報公開・提供の在り方(弁護士評価制度とその公表方法を含む。)

○職務の質の向上・弁護士執務態勢の強化
・法律事務所の共同化・法人化・専門化・国際化・総合化等
・その他職務の質の向上に必要な施策の要否

○弁護士自治と弁護士倫理
・弁護士自治の在り方と弁護士会の運営に第三者の意見を反映させる方策 
・法曹養成及び継続教育における倫理教育の在り方
・苦情処理の適正化
・綱紀・懲戒手続の透明化・迅速化
・弁護士の公益的活動の意義とその適正確保のための方策と要否(再掲)

2.関連制度の改革

 中坊委員から、弁護士が「国民の社会生活上の医師」としての役割を十全に果たすためには、その武器たる法律が役に立つものでなければならず、民事・行政・刑事司法制度等の改革や労働者・消費者の視点も踏まえた改革が必要との考えが示された。これを踏まえ、証拠収集手続・証拠開示・証拠方法を含む手続法等の見直しの要否について更に議論を行うこととなる。

以上