5 会議経過
① 第12・13回会議において行われた「弁護士の在り方」(中坊委員レポート)に関する意見交換及び第13回会議において行われた「裁判所・法務省の人的体制の充実」に関する意見交換を踏まえてまとめられた、それぞれのテーマに関して今後重点的に検討すべき論点についてのメモが配付され(別紙1及び2)、内容の確認・了承がなされた。
② 小津人事課長から「司法試験の実状と運用改善」について(別紙3参照)、加藤判事から「司法修習について」(別紙4参照)、小島教授から「法科大学院構想について」(別紙5参照)、それぞれ説明がなされた。
③ 上記3名からの説明に関して、以下のような質疑応答が行われた。
○ 現在の司法修習制度のカリキュラムは、最も志望者の多い弁護士ではなく裁判官の養成を中心に考えているように思えるがどうか。(応答:弁護修習については、前期・後期各修習の5科目のうちの2科目(民事弁護・刑事弁護)、実務修習12か月中の3か月間が割り当てられている。また、弁護士になる上で、法曹三者それぞれの視点・役割を学ぶ必要があり、弁護士養成のためには裁判所での実務修習、民事・刑事裁判科目の講義も有益である。)
○ 「大学における法学教育の在り方等に関する調査研究協力者会議」に法曹三者が入っていないのはなぜか。実務家の教員を確保できる見通しをもって検討しているのか。(応答:実務家の教員を確保することが難しいことは理解しているが、現段階ではまず大学側で法科大学院の理想の姿を描かなければならないと考えている。今後法科大学院の詳細を検討していく上で法曹三者を加えないままでよいかは検討すべきであると思う。なお、法曹三者の各大学のシンポジウムにおける意見は参考にしている。)
○ 法曹になる者の基礎的教養不足が問題点として指摘されているが、この問題は大学に至るまでの教育プロセスの問題ではないか。また、現在ほとんどの大学で教養課程を廃止しつつあり、この点に問題があるのではないか。(応答:基礎的教養不足の根底には中等教育からの問題があるのはそのとおりであり、同時に大学にも責任があると考えている。一種の突破口として法科大学院を導入し上から変えていくという選択肢もあるのではないか。)
○ 最近、倫理観の欠如している弁護士が多いと聞くが、倫理に関する教育はどのようになっているのか。(応答:問題状況は異なるがアメリカでも倫理の欠如は問題になっている。全ての科目を通じて各論の中で倫理を取り上げていく必要があるのではないか。)
○ 司法試験制度のいわゆる丙案(合格枠制)の実施により受験手控えなどの問題が生まれていることや、昭和50年代、合格者を500名以下に減少させていたことについて政策の誤りがあったのでないか。(応答:合格枠制の評価は積極・消極の両面があるが、それにより試験制度の現在の問題が生じた訳ではないと認識している。合格者数については、この間、各方面から声が出され、500名から1000名まで増加してきたが、それ以前は、そのような状況には至っていなかったと考えている。)
○ 実務修習の意義が強調されたが、裁かれる立場としては3か月の弁護修習だけであり、それだけを経て裁判官になることについてはどう考えるか。(応答:弁護修習の期間が十分かどうかはどのような法曹が必要かということにも関わってくる。現状を変えていく必要があるというのであれば当然検討されることになろう。なお、裁判官の継続教育の中でこの点については配慮している。)
④ 「法曹養成制度の在り方」について以下のような意見交換が行われた。
○ 法科大学院で何を教えるのかについて具体的に検証する必要があるのではないか。大学の延長線上の問題として法科大学院の構想が出されているが、大学とは全く別の新しい機関(例えば法曹三者)が運営する同種のスクールということも考えられるのではないか。
○ 今の学生は法律についての素養・理解が欠けており、法科大学院はこれを補った上で更にプラスアルファを考えようというものである。法科大学院で全てができる訳ではなく、法科大学院という形以外にも方法はあろうが、法学部教育や司法試験など現行制度上の問題を解決するためには、法曹の入り口である大学の問題から議論する必要があり、これらの問題を総合的に解決する法科大学院の構想につながっていくと思う。
○ 現在の法曹養成の問題は、司法試験が難しくなりすぎていること、大学教育が司法試験に対応してこなかったことにあるが、法科大学院構想が出てきたのは、現在の司法試験制度及び法学部教育を変えても、質の高い法曹を養成するには不十分であるという認識がある。
○ 法科大学院を作るとするなら、地域性にも配慮し、各地にバランスよく設置する必要があるのではないか。
○ 各地域の人々の創意により設置されるというのは望ましいことであろうが、地域性に配慮して政策的に各地に設置するというやり方では、教員側に熱意のある人が集まりにくいなど、うまくいかないのではないか。
○ 法科大学院の設置数を限定するのは困難であろう。小規模なものであっても、法科大学院設置の一定の基準を充たす限り設置を認めるほかない。場合によっては複数の大学が連合して大学院を設置することもあり得よう。もっとも、私立国立を問わず、経営問題があり、実際に大学院を設置できるところは限られてくるのではないか。
○ 法科大学院の修了を司法試験の受験資格とすることは、経済的に余裕がない人が受験できなくなるなど機会の均等を奪うことになるのではないか。
○ 現行制度の下でも機会均等が保障されているのか疑問である。奨学金、法科大学院の夜間開講、法科大学院に行く余裕のない人について受験資格付与の特別検定試験などの整備を検討する必要があろう。
○ 犯罪者を含めその人の立場に立ち、相手の気持ちを理解できるような法曹を育てる必要があるが、現在の法学部教育ではそのような教育をする余裕がない。
以上のような意見交換の結果、
・現在の法学部教育は、基礎的教養の教育の場面でも、法律専門知識の教育の場面でも不十分であること、
・法科大学院構想は、法学部教育との関係、教育内容等につき検討すべき課題はあるが、これらの問題を解決する一つの有力な方策であること
について認識の一致をみた。
⑤ 今後の審議の進め方に関し意見交換が行われ、以下の点について合意した。
○第17・18回会議の審議テーマについて
第17回会議において、「裁判所・法務省の人的体制の充実」に関するヒアリングを中心とする審議及び「国民の司法参加」についての審議を行い(午前9時30分の開会とする。)、第18回会議において、「国民の期待に応える刑事司法の在り方」及び「法曹一元」についての審議を行う。
○海外実情調査後の審議について
これまで各テーマ毎に法律専門家のレポーター役が決められていたが、別紙6のとおり、ユーザーの立場の委員が加わることとされた。なお、「法曹人口と法曹養成制度」及び「法曹一元」については今後の審議の推移を見て改めて決定することとされた。
○ 第19回会議(5月16日)の審議について
「国民がより利用しやすい司法の実現・国民の期待に応える民事司法の在り方」について、竹下代理のレポートに基づき整理された論点を踏まえ、上記ユーザーの立場の委員がレポートを行い、それを前提に議論を行うこととされた。
⑥ 福岡、札幌及び東京における地方公聴会の開催要項が以下のとおり事務局から報告され、了承された(事務局注:募集要項はインターネットに掲載するほか、関係機関等において掲示・配付する。)。
⑦ 次回会議(第16回)は、4月11日14:00から開催し、引き続き「法曹養成制度の在り方」について審議を行う。
以 上
(文責 司法制度改革審議会事務局)
- 速報のため、事後修正の可能性あり -