司法制度改革審議会

司法制度改革審議会 第17回議事概要


1 日時 平成12年4月17日(月) 9:30~12:47
 
2 場所 司法制度改革審議会審議室
 
3 出席者
(委員、敬称略)
佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、北村敬子、髙木 剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本 勝、吉岡初子
(事務局)
樋渡利秋事務局長
 
4 議題
①「裁判所・法務省の人的体制」について
・但木敬一法務大臣官房長からの説明
・中山隆夫最高裁判所事務総局総務局長からの説明
②「国民の司法参加」について

5 会議経過

① 事務局から国家公務員の定員管理についての基本的な説明が行われた後、但木敬一官房長及び中山隆夫総務局長の各々から、「裁判所・法務省の人的体制」についての説明が行われ(別添1・2参照)、これらを踏まえ、以下のような質疑応答及び意見交換が行われた。

○ 裁判官の配置、昇進などを行うための人事上の評価の基準はどのようなものか。また、評価の内容を本人が知ることはできるのか。さらに、評価に対する不服を申し立てる仕組みはあるのか。 (回答;評価の基準については承知していない。また、本人が個人的に評価の内容について問い合わせる場合はあろうかと思われるが、制度的には人事上の評価について問い質したり、不服を申し立てたりする仕組みはない。)

○ 検察の人員不足による弊害として、経済事件捜査における検察のボトルネック化が挙げられているが、なぜボトルネック化しないように対応してこなかったのか。 (回答;ボトルネック化が議論され出したのは10年以上前であるが、当時は検察官のなり手が少なく、対応するのが困難であったが、ここ数年、司法試験合格者の増加や景気の低迷などに伴い検察官志望者が増加しており、今この機を捉えて努力して対応することで、これまでの問題を解消する手がかりが得られるのではないかと考えている。)

○ 経済事件捜査における検察のボトルネック化に対応できなかったことの原因には、検察官のなり手が少なかったことも一因であろうが、証券取引、インターネットによる商取引にかかわる犯罪や外国人による予想外の手口の犯罪の増加など、人員数だけでは対応できない問題もあったのではないか。したがって、人員の増大だけではなく、研修等による検察官の実力の充実も必要なのではないか。 (回答;現在、証券取引、金融、インターネットによる商取引などにかかわる犯罪についての専門的知識を持っている検察官はごく少数である。21世紀における司法の役割の増大に向けて、経済事件等の捜査において専門的知識を踏まえて的確な判断を行い得る検察官をどのように育成していくのかが重要な課題である。)

○ 現状で裁判官数は足りているかのような説明に聞こえたが、弁護士人口を増加させることが大前提として合意されていることから、それにより訴訟が増大すると、果たして現状の裁判官数で足りるのか。紛争の入り口の段階で、簡裁、家裁、裁判外紛争処理制度(ADR)などに振り分けることで処理し得るとの考えか。 (回答;裁判官数は足りているとして現状肯定するものではない。これまでにも裁判官を大幅に増員してきており、相当程度改善してきているが、民事・刑事ともに依然として改善すべき点はある。各部の裁判官の配置数を増やすことにより、各裁判官の仕事量の変動に応じて手持ち事件の分担を行うなど、未だ工夫すべき余地はある。また、弁護士人口増加後の訴訟事件数の増大にも備えているが、ADRなどの民間の紛争処理機関にすべての処理を委ねることを考えているのではなく、ADRの審理における争点を、訴訟となった場合には裁判所が速やかに引き継ぎ得るようにすることなど、最終的には裁判所に結びつくような制度とすべきものと考えている。)

○ 最高裁判所による説明は、平均審理期間の推移など過去の統計を挙げて裁判官の増員は不要としているかのようであり、事前規制型の社会から事後監視・救済型社会への転換が図られつつある中で、その前提となる司法の機能を充実強化するため、弁護士のみならず裁判官及び検察官を大幅に増員することで認識が一致している当審議会の議論の状況から著しく乖離しており問題である。会長及び会長代理において、裁判官の大幅な増員について当審議会と最高裁判所の間で連携が図られるよう、連絡調整を行うべきである。

○ 最高裁判所は、法務省による「21世紀における司法の基盤整備の必要性」との説明を受けて、改革を行うことを前提に、現状を分析した上で基盤整備の必要性について説明したものであり、決して現状の裁判官数で満足しているとするものではないのではないか。また、第8回会議において行われた最高裁判所事務総長による説明と併せて考えれば、全体として裁判官の増員が必要としているものと考えられる。

② ①の質疑応答及び意見交換の結果を踏まえ、

○ 既に第13回の会議において委員全員の一致するところとなっていた司法制度の直接の担い手である弁護士・裁判官・検察官の大幅な増員が必要であるとの認識に加えて、裁判所及び検察庁については、裁判官・検察官だけではなく、裁判所の書記官等裁判所職員及び検察事務官も増加させ、その体制を質・量ともに充実強化しなければならないとの認識で、意見の一致が見られたこと

○ また、同時に、この充実強化に当たっては、国際金融取引など先端的な分野の知識を有した人材を育成することにも配慮すべきであること

○ 民事裁判の執行に携わる裁判所関係職員、刑事裁判の執行に携わる矯正・保護関係の法務省職員等について、その体制の充実強化にも司法の基盤整備の観点から目を配る必要があること

○ 司法制度改革は、行政改革の理念の中に既に包含されており、両者は矛盾するものではなく、司法の人的基盤については、政府全体の人員削減が進められる中においても他の行政分野と同様に取り扱われるべきものではなく、司法制度改革という観点はもちろん、行政改革の観点からも、その充実強化を図っていくべきものであることについて、各委員の共通の認識が得られたことについての確認がなされた。

③ ②の確認を踏まえ、会長及び会長代理において相談の上これを文書としてとりまとめ、当審議会の基本的な認識として、何らかの形で政府のしかるべき部署に対して伝達することとされ、具体的な文書の内容、伝達の在り方等については、次回会議(第18回会議(4月25日開催予定))において改めて審議することとされた。

④ 藤田委員から、「国民の司法参加について」と題する資料(別添3参照)に基づき、陪審・参審制度についての説明が行われた。

⑤ 集中審議の日程について、各委員の予定等を勘案して、本年8月7日(月)午後から同月9日(水)にかけて開催することとされた。

以 上
(文責 司法制度改革審議会事務局)

- 速報のため、事後修正の可能性あり -


別添資料