司法制度改革審議会

第17回司法制度改革審議会議事録

第17回司法制度改革審議会議事次第

日時:平成12年4月17日(月)9:30~12:47

場所:司法制度改革審議会審議室

出席者(委員)

佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、北村敬子、髙木剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本勝、吉岡初子
(事務局)
樋渡利秋事務局長

1.開会

2.「裁判所・法務省の人的体制」について

(1)但木敬一法務大臣官房長からの説明
(2)中山隆夫最高裁判所事務総局総務局長からの説明

3.「国民の司法参加」について

4.閉会



【佐藤会長】 ただいまより「司法制度改革審議会」第17回会合を開催いたします。

 さて、本日は既に御案内しましたように、一つは「裁判所・法務省の人的体制」について、但木敬一法務大臣官房長、中山隆夫最高裁判所事務総局総務局長のお二人からヒアリングを行いまして、御審議いただきたいと思っております。それから、第2に、海外実情視察前の勉強会として、「国民の司法参加について」、藤田委員からレポートをお聞きするということを考えております。

 但木さん、中山さん、本日はどうも恐縮でございます。

 それでは、まず第1の議題でありますところの裁判所・法務省の人的体制に関する審議を始めたいと思います。

 この問題に関しましては、既に第13回審議会において御審議いただきまして、その結果、とりまとめました文書を第15回会議において御了承いただいておりますけれども、その内容はお手元に配付されていると思いますが、3点ございます。

 第1に、司法制度の担い手として弁護士だけではなく、裁判官及び検察官を大幅に増員する必要があるということであります。

 第2に、裁判官、検察官を支える裁判所、検察庁の職員の充実も視野に入れて検討する必要があるということであります。

 第3に、司法機能の拡充のために、その他にも人的体制の強化、充実を図るべきものがあるかどうかについてさらに審議を行うということであります。

 以上の3点につきまして、認識が一致したということであります。

 さらに、適切な方からヒアリングを行って審議を行うということにさせていただいたわけであります。

 本日は、このような一致した認識を踏まえまして、引き続き裁判所・法務省の人的体制に関する審議を行うということになりますけれども、まず始めに、事務局から、公務員の定員削減に関しまして、資料に基づいて基本的なところを簡単に説明していただきたいと思います。その後で、但木敬一法務大臣官房長、中山最高裁事務総局総務局長から、それぞれ15分から20分程度お話しいただきまして、その後、一括して質疑を20分程度行い、また、意見交換を行いたいというように考えております。

 定員削減につきましては、昨年、太田前総務庁長官から一般的なお話としてお聞きしてはおりますけれども、お見えいただいた但木官房長、中山総務局長からお話をお聞きする前に、定員削減について説明をお聞きした方が審議の実が上がるのではないかと考えました。そこで、事務局にお願いして、総務庁とも連絡を取っていただき、資料を準備していただきました。

 それでは、事務局から説明をお願いします。

【事務局長】 それでは、私の方から説明させていただきます。

 国家公務員の定員管理は総務庁の所管でございますが、総務庁では、現在、国家公務員全体の削減計画の策定に向けまして、準備を進めていることなどの諸般の事情もあり、総務庁と相談した結果、今回は事務局において同庁の御教示を得た上で、国家公務員の定員管理について基本的な説明をさせていただくということとした次第でございます。

 お手元に「国家公務員の定員管理について<参考資料>」というものをお配りしておりますが、これに基づいて説明をいたしますけれども、この資料は総務庁の御協力を得て、事務局において準備したものでございます。

 なお、この説明に関する資料として、もう一つ、第3回会議の際の議事録中の該当発言部分の抜粋もお配りしておりますので、参考としていただければと思います。

 では、「国家公務員の定員管理について<参考資料>」に基づいて説明させていただきますが、まず1ページから見ていただきたいと思います。真中辺りに「総定員法」と書いてございますが、国家公務員の定員は昭和44年4月1日施行の行政機関の職員の定員に関する法律、いわゆる総定員法で決められ、これが国家公務員の定員に関する基本法でございます。この法律は、各省庁の所掌事務を遂行するために、恒常的に置く必要がある職に充てるべき常勤の職員の定員の総数の最高限度を定めております。各省庁等の定員は、総定員法制定前には、それぞれ各省庁の設置法で定められておりましたが、総定員法制定後は、同法に定められた定員の総数の最高限度の範囲内で、内閣の責任において政令で定めることとなっております。

 なお、総定員法につきましては、中央省庁等改革基本法により、府省再編に合わせて改正するための措置を取るとされておりまして、定員の最高限度の水準を平成12年度定員まで引き下げることなどを内容とする改正案が今国会に提出されております。

 この資料1の1ページの上の方に戻っていただきますと、国家公務員の定員管理の主眼は、定員の総数の膨脹を抑制しつつ、政府全体を通じて行政需要の変化に対応した定員の適正な配置を図り、国民から信頼される効率的な業務処理体制を実現することでありまして、行政需要の減少している部門や業務の合理化が可能な部門から定員を削減し、それを原資として行政需要の増加部門に必要最小限の増員を図るというもので、総定員法とその下における定員削減計画の実施及び各年度の増員要求とその審査がそのための基本的な仕組みとされております。

 なお、昭和36年に設置されました第1次臨時行政調査会におきまして、行政の膨脹の抑制と過度の中央集中の排除、行政における合理化、能率化の推進など、各種改革の提言がなされ、昭和40年代からこの提言に基づき各種の改革が行われ、総定員法の制定や、定員削減計画などの現在の定員管理の基本となる、今申し上げたシステムが確立されたということでございます。

 定員管理の目的は、①国全体としての定員を極力縮減し、行政の簡素・効率化に努めること、②各省庁ごとの業務量の消長に応じて、省庁を通じて最適な定員配置を実現すること、③省庁内の業務量の消長に応じて、省庁内における定員配置を改善することにあるとされておりまして、その仕組みにおける基本的な考え方は、削減については、定員削減計画の実施に加え、各種制度・施策の見直しの進展に応じて上乗せを行うことにより、最大限にするとともに、増員については、真に不可欠なところに限定して最小限にすることにより、全体としての定員の縮減を確保するというものでございます。

 次ページ目に入りまして、定員削減計画は、各省庁が、事務・事業の整理、簡素化、効率化等により合理化できる部門や事務・事業の減少していく部門の定員を計画的に削減していくため、閣議決定によりあらかじめ数年間にわたる定員の削減目標を定めておくものであり、これまで昭和43年から9次にわたり策定、実施されてきております。

 なお、国会、裁判所、会計検査院及び人事院の職員につきましては、総定員法の適用はなく、定員削減計画の対象ではございません。しかし、第9次定員削減計画策定時には、これら国会、裁判所等に、内閣官房長官から協力依頼を行っているところでもあります。

 現在、実施されている第9次削減計画の概要は、資料3ページにあります別紙のとおりでありますが、平成9年度から同13年度の5年間で平成8年度末定員の4.11%を削減することとされており、その実績は次の資料2のとおりであります。

 この資料2の最後の第9次、平成9年から13年が現在の削減計画でございます。第8次を見ましても、削減目標数を上回る削減実績を上げているところであります。

 次に、資料3を見ていただきますが、平成12年度定員審査結果について説明いたしますと、新規増員の一層の抑制と再編時における削減など、定員削減の強力な実施を図り、国家公務員数の一層の純減を行うとの方針、これは平成11年12月24日閣議における総務庁長官発言でございますが、その方針により、定員削減については9,185人、府省再編に伴う合理化減を含む、となっております。新規増員は過去最少の4,420人でありまして、純減数は過去最高の4,765人となっております。

 その数字は資料4に載ってございますが、この資料3にあります定員削減の9,185人と言いますのは、資料4の平成12年度の「現行省庁(4~12月)」までというところの削減8,720人、「再編後(1~3月)」以降の465人を足したものでございます。

 増員も同じようにその合計額の4,333人に再編後の87人を足した数字で、純減数はその削減から増員分を引いた数字となっておりまして、この表は足してみないと、資料3の数字にはならないということでございます。

 この資料4を見ていただきますと、ちなみに法務省に関しましては、真中辺りにございますが、全体では削減が390人、これは4月~12月の380人プラス1月~3月の10人、いずれも削減でございますが、それの合計でございます。増員255人で、純減は135人となり、そのうち、この表には出ておりませんけれども、検察庁では検事は41人が増員される一方、検察事務官は50人の純減という結果になっているということでございます。

 次に資料5を見ていただきますが、今後の国家公務員の定員管理等に関する政府の方針についてでありますが、下の枠で囲んだところで、平成10年6月12日に施行されました中央省庁等改革基本法第47条におきまして、国の行政機関の職員の定員について、10年間で少なくとも10分の1の削減を行うための新たな計画を策定することと規定されており、さらに、次ページに載ってございますが、平成11年4月27日に閣議決定された中央省庁等改革の推進に関する方針において、国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本的計画としまして、10年間で少なくとも10分の1の削減の実施や、独立行政法人への移行、並びに新規採用の抑制により10年間で25%削減するという方針が示されております。

 また、平成12年度予算関連閣議の都度、総務庁長官から、各府省の定員につき、10年間25%純減を目指した定員削減に最大限努力するという、25%削減は純減である旨の発言がなされております。

 これまで9次にわたって削減計画が策定・実施されてきましたが、削減を実施する一方で、行政需要が高い部門には増員措置が取られてきました。しかし、新しい定員削減計画は、これが中央省庁等改革基本法に基づき策定されるものであること、削減率が10%と従来の計画と比べ相当高いこと、この計画による削減を含めて25%の純減を目指すとされていることなどの特徴がございます。

 資料6ですが、中央省庁等改革基本法に規定されている10%の削減の対象となりますのは、府省再編の直前、平成13年1月5日の定員の約84万1,000人、これは真中の「(1)現業・非現業の合計」というところの数字に見合うものでございます。これは平成12年の末になっておりますので、1月5日にしますと、定員約84万1,000人ということになるそうでございますが、その対象となるのは、定員約84万1,000人でありまして、25%の定員削減の対象となりますのは、そこから中央省庁等改革基本法に基づき、平成15年に公社化により定員管理の対象から外れることが既に決まっている郵政事業約29万7,000人を差し引いた54万4,000人ということであります。この説明内容が8ページの資料5の真中辺りの※印の上の方で書かれている内容でございます。

 この新たな削減計画につきましては、本年夏ころまでに策定するべく作業を進めることとされております。

 簡単ではございますが、以上が総務庁からお聞きして、まとめました国家公務員定員管理に関する説明でございます。

 なお、この裁判所・法務省の人的体制に関するこの間の審議におきまして、吉岡、中坊両委員から要望のありました資料でございますが、最高裁及び法務省に依頼して作成していただきましたので、それを「『裁判所・法務省の人的体制』について<追加参考資料>」という形で配らさせていただいております。

 以上でございます。

【佐藤会長】 どうもありがとうございました。

 資料について、あるいはお尋ねになりたいところがおありかと思いますけれども、それは後で質疑応答のところで、お二人のお話を伺った上でそこで一括して行いたいというように考えております。

 ただいまの事務局からの定員削減に関する説明を踏まえた上で、但木法務大臣官房長から、法務省の人的体制、今後の人的基盤の拡充の必要性などにつきまして、お話をお伺いしたいと存じます。

 但木官房長、お忙しい中、今日は恐縮でございます。ありがとうございます。それでは、よろしくお願いいたします。

【但木法務大臣官房長】 法務省の官房長の但木と申します。本日は私どもの人的基盤の強化ということで、ヒアリングに参加させていただく機会を与えていただきまして、どうもありがとうございました。

 それでは、私の方から主として法務・検察の人的基盤の強化につきまして、お話を申し上げたいと思います。

 これは皆様方に重ねて申し上げる必要はないかと思うのでありますが、次の21世紀は、自由で活力のある社会を実現するということが我が国の目標であると考えられるわけでございます。これは国際的、あるいは国内的ないろんな要因がございますけれども、我が国は今までの事前調整型の社会から、事後監視、事後救済型社会へ転換していこうとしております。こうした社会におきましては、公正かつ透明なルールの下で紛争が適正・迅速に解決される仕組みの確立が前提となります。

 これは当然のことではありますが、国民一人ひとりが自己責任の原則に従うということは、逆に言えば透明性のある社会、つまり情報が十分に公開されていなければ国民は自己の責任の下において判断できる基盤がないという意味におきまして、透明性というのが強く求められるかと思うのでありますが、そうした透明で、かつ公正な社会ということになりますと、最終的には競争の公正さ、それから違法行為に対するきちっとした処罰ということが非常に重要になってくる。そうした社会的紛争を解決する仕組みがないと、来るべき自由で活力のある社会というのは実現できないということになるわけでございます。

 こうした適正・迅速に解決される仕組みの確立というのは、結局のところ、司法の基盤整備を大前提とせざるを得ないと思っております。結局、社会の紛争のすべてが司法に最終的な解決を求めてくる。その流れは非常に幅広い方面から一本の線に流れてまいるものですから、司法の基盤が整備されていないと、そこがボトルネックになってくるということになろうかと思うわけであります。

 そういう意味で、一方では、民事の裁判における解決というのがございますが、もう一方では、ルールに違反した者に対して適切・厳正に対処できる、そうした刑事司法の役割というのも、次の時代において非常に大きな役割を果たしていかざるを得ないと考えております。

 一つの例を申し上げますと、長銀、日債銀事件というのがあったわけでございますが、これの特徴点は幾つかあろうと思います。正直申しまして、旧来型の社会から申すれば、あの被告人になった方々は決してバブル期において甘い汁を吸った人たちでもない。言わば本当にノーアウト満塁の大ピンチのときに急きょ救援投手に立たされて、最後の処理をせざるを得なかった人たちでございます。そういう意味において、被告人たちに、従来の考え方から申せば、同情を禁じ得ないわけであります。

 しかしながら、新しい社会に向けての陣痛という意味では、これまたやむを得ないものでありました。

 すなわち、両事件を見ますと、まず第1に、日本の護送船団方式が続けられなくなったという非常に大きな特徴点があの事件の背後にあるわけであります。そして、会社は、その会社の役員、従業員のためだけにあるのではないのであって、株主とか一般債権者とか、そうした人々に対する関係でも、経営者責任を問われるんだということが非常にはっきりしたという事件でもありました。

 もう一つの特徴は、そこで起訴されている内容でございますけれども、それは透明性に反するということが究極の起訴している内容でございます。

 先ほど申しましたように、次の社会が自己責任による社会ということになりますと、その前提といたしましては、情報が十分公開されているという必要がございます。その情報の公開を阻害するような行為、虚偽の情報を流布するような行為については、たとえ主観的に会社のためであるとか、あるいは従業員のためであるとか、あるいはさまざまな経済界のためであるとか、いろいろな理由があるにせよ、それは許されない。それは一つには、先ほど言いましたように、対株主、対一般債権者という関係でもそうですが、長いスパンで見た場合に、日本の企業に対する、あるいは日本の金融機関に対する国際的信用を担保するという意味でも、そうした情報の公開を阻害する罪というのは看過することができない、そういう時代に入っているということを、あの事件は象徴しているのではないかと思っております。

 こうした社会の変革を前提といたしまして、行政改革会議の最終報告の中でも、「法の支配こそ、わが国が、規制緩和を推進し、行政の不透明な事前規制を廃して事後監視・救済型社会への転換を図り、国際社会の信頼を得て繁栄を追求していく上でも欠かすことのできない基盤をなすものである。政府においても、司法の人的及び制度的基盤の整備に向けての本格的検討を早急に開始する必要がある」と指摘されているところでございます。

 司法制度改革審議会が発足いたしましたのも、言ってみれば、こうした最終報告の中で示されている方向に従って設置されてきたものと考えております。

 また、当審議会におきましても、既に論点整理の段階で、「司法の運営を組織的に担う裁判所・検察庁について、それを支援する職員の増加等人的体制の充実を図ることが不可欠であり、その拡充の規模・手順等について検討すべきである」という整理をされております。

 その論点整理に基づいて、先ほど会長が述べられたようなまとめがなされているところとお聞きしております。

 そこで、具体的に検察官の人的体制強化の必要性についてお話し申し上げたいと思います。「人的基盤の強化について」という「司法制度改革審議会ヒアリング資料1」というものが配付されていると思います。それに図面が添付されております。

 この表を御覧いただきたいと思います。「規制緩和等に伴う告発事件等の増加と検察のボトルネック化」と書いてございます。

 我が国におきましては、刑事司法はすべて検察に一旦集まりまして、そこから裁判所に出ていくか、出ていかないかという判断が行われます。左側に書きました「警察等」から事件がきます。これは従来どおりでございます。ただし、警察が取り扱う事件も悪徳商法、産業廃棄物事件、あるいは地域住民の生活を脅かすような事件と、いろいろな特徴が最近表れてきております。次に国税、これは少子・高齢化時代を迎えまして、税金の問題というのは非常に深刻な問題になってきます。深刻な問題になってくればくるほど、脱税事件というのは、許されざる犯罪になってくるわけでございます。

 その次に書いてございます「公正取引委員会」、「金融監督庁」、「証券取引等監視委員会」、これらの活動というのも、今後非常に増えてくるだろうと思われます。

 まず公取でありますけれども、旧来は、刑事告発はできるだけやらずに課徴金で対処するというのが、公取の基本方針でございました。これが日米構造協議で非常に強い批判を受けまして、現在では、刑事告発が原則という大転換をしているところであります。

 金融監督庁は、金融機関の経営の健全性を阻害し、預金者や一般債権者の利益を害する犯罪というものを告発していく仕組みになってございます。

 水原委員が委員長をされておりました証券取引等監視委員会におきましては、公正な市場を確保するという観点から、種々の事件が告発されて送られてくるわけでございます。

 アメリカを見ておりますと、日本も将来、恐らくかなり多くの国民が企業に参加すると言いますか、株主になっていくという方向になってゆくのではないかと思います。そういう社会になってまいりますと、この委員会が果たす役割はますます大きくなりますし、その活動に伴う告発というのもますます多くなるであろうと、予測せざるを得ないわけでございます。

 もう一つは、公正の回復という観点から被害者の権利ということが非常に大きく取り上げられるようになりました。そういう世の中の変化に伴いまして、今後は被害者の人たちが直接被害を訴えてくる。告訴・告発をしてくる事件というものも増えてくるだろうということを、予測せざるを得ないわけであります。

 これらすべての機関からの告発は、検察庁に全部集まってまいります。検察庁の人的体制が不備でありますと、これらの機関からの事前の相談、それから捜査、処理、これらがずさんになったり、非常に遅延したり、また、消極的な処理にならざるを得ない状態をつくってしまう。それは次の社会にとってはかなり致命的な欠陥になるということであります。

 水原委員も御承知、あるいは中坊委員も御承知かと思いますけれども、既に検察庁では十分な御相談に乗れない面が出てきておりまして、こうした機関がせっかくいい材料を持っていながら、それが結局のところ事件にならないようなものも表れてきているという点を言わざるを得ない。したがって、今、警察の対応が悪いではないかというかなりの御批判がございますけれども、決して他人事ではなくて、既に検察庁においても、大きな意味ではそういうものが表れている状況にあるということを御理解いただきたい。

 次のページは、「独自捜査等に係る経済関係大規模事件の業務量の急増」でございます。これは一定の算式に基づきまして計算したものでございますけれども、独自捜査に係る業務量を平成元年と比べましても、4倍強になっているという状況にございます。

 下には、大型事件の主な事例を各年度ごとに挙げております。これらの事件につきましては、極めて多くの人員を割いて長期間にわたって捜査が行われております。これらの大きな事件が一旦起こりますと、非常に少ない検察の陣容の中では、いろんなところにしわ寄せが現に行っているということを御理解いただきたいと思います。

 3ページ目は、社会の変化に伴って事件の内容がかなり変わってきておりますということを申し上げております。

 家庭や地域社会の持つ犯罪の抑止力の低下であるとか、あるいは国際化に伴ういろいろな犯罪、蛇頭でありますとか、クレジット・カードの偽造でありますとか、あるいは薬物の密売でありますとか、覚醒剤でありますとか、あるいは不法滞在外国人による殺人、強盗等でありますとか、さまざまな事件が生み出されております。また、インターネットという次の時代を支配するであろう新しい技術が目覚ましい躍進をしている。それが経済的にも非常に重い要素となってきておるわけでありますが、一方では、インターネットにつきましては、ほとんど法的規制がございません。したがいまして、インターネットを利用した犯罪というのは、これからあらゆる種類のあらゆる問題が起きてくるだろうと思っております。

 その次に書きましたのは、今後の我が国としては、被害者の問題も重視をしていかなければ、公正な社会というのは担保できないという意味で、被害者対策をしなければならないということを書いてございます。

 次のページは、何を書いてあるかと申しますと、先ほど申しました大型の経済事犯等が起きることによりまして、少ない人員のかなりの部分を大都市に集中するようになりました。また、ああいう事件が起きますと、全国から応援検事を呼んで捜査をせざるを得ない状況にございます。そのようなことから小規模庁におきまして、非常に大きな問題を生じております。

 例えば、松江等非常に小さい地検におきましては、検事正、次席のほかの検事は3人しかおりません。この3人が松江地検管内、つまり島根県全域の犯罪について責任を持っておるわけでございます。そういうところで応援で一人取られてしまいますと、たった二人の検事がその県内のすべての事件について責任を持つという体制になります。そうしますと、どうしても捜査が不十分になったり、消極的になったりする傾向ということも否めないという問題が出てまいっております。

 以上が検察に何が生じているかということでございます。時間がなくなりましたけれども、ここで定員関係についてお話し申し上げたいと思います。

 検事につきましては、昭和48年から平成7年まで、1,173人ということで全く増減ございませんでした。平成8年から、こんなことでは次の時代を迎えられないということで増員要求に転じまして、平成8年から12年までの間に、それでも172人の増員を認めていただきました。しかしながら、先ほど申し上げたようないろいろな検察が抱えている問題から申しますと、こういう人数で次の時代を乗り切れる自信は全くないわけであります。

 それから、逆に検事以外の検察庁職員は、昭和48年から平成7年までの間に160人増員をいたしましたが、逆に平成8年から12年までの間は96人の減員ということになりました。これは勿論、いろいろな理由でこういうふうにしているわけですけれども、実際の問題としては、検察の増員数というのはそんなに突出して多くなっては困るという問題がございまして、結局、検事を増やすなら事務官を減らして、その増加の数をできるだけ突出しないようにするという配慮をせざるを得ないという定員管理上の問題からこうなっているところなのであります。

 これまで幾つか申し上げたとおり、検察の人員不足というのは、例えば、アメリカでは連邦独禁局だけでも500人の検事を抱えております。ところが、我が国の財政経済を本当に専門にできる検事は全国で50人しかおりません。独禁法だけでも500人の検事がいるのと比較しまして、非常に脆弱な体制にあります。

 それから、大都市部では、先ほど申し上げたような理由から、恒常的に人員が不足しております。地方もまた、都市に集中していく、あるいは応援で取られるというようなことから、その構成が弱体化せざるを得ないという状態にあります。

 それから、検事のパートナーである事務官の数をどんどん減らしてきていることについて申しますと、検事一人がやれることにも限度がございます。その意味で非常に大きな問題となってきているということであります。

 ここで一つ申し上げたいんですが、本当は数だけの問題ではございません。次の時代を迎えて、例えば国際金融における先端的な商品の中身、あるいはインターネットを通じたさまざまな技術の中身、これらについて本当は検事がある程度の知識を持っていなければいけないんだと思います。そうではないと取り調べもできないという状態になるわけでございまして、検事の量的な問題とともに、質的な向上というのも図っていかなければいけない。広い法的な素養というものと、専門的な知識、先端知識というものが必要であります。

 また、国際金融をやっていた専門家の人で、国際金融などでは30代半ばでリタイアする人が大分おられますので、そういう専門家を事務官として迎えて、その人たちの専門的知識も大いに活用するようなことというのも、次の時代の検察としては考えなければならないのではないかと思っております。

 検察がボトルネックとなることによって、経済全体の秩序というものをきちっと守れないという問題を生じてきたり、あるいは告訴・告発事件に対して十分対応できないという人員不足による弊害をどうしても回避しなければならないと考えております。

 国の行政機関職員の定員の削減方針というものにつきましては、先ほど事務局長からいろんな御説明がございました。この中に一旦入ってしまいますと、なかなかその中で相対的優位に扱われても、本当に革命的な人員の整備というのはできないというふうに思っております。これにつきましては、先般、太田元総務庁長官がおいでになられましたときに、全体としての予算の拘束の中でやっているのはいかがかと。そういう意味では、定員についても、予算についても、別に扱った方がいい。裁判所は今でも別ですけれども、準司法機関というのは別に扱うことが必要ではないか。そうしないと、いけないのではないか。同じところにいれば限界がある。こっちが全体として25%減らす中で、ここだけ増やすということは、増える分まで減るところにかぶせられることになるので、そっちの減る方はたまったもんじゃないということになるというような御発言をされております。

 こうした可能性があるのかどうか分かりませんけれども、基本的な指針を当審議会でお示しいただければ大変ありがたいと思っております。

 なお、時間も迫っておりますので、わずかだけ付け足して申し上げたいと思いますが、民事における執行、これは国民の権利の実現という司法の次の時代の役割にとって非常に重要であります。それと同時に刑事の裁判の執行は矯正が行い、また、保護機関がこれをフォローしているという状態にございます。

 また、弁護士の被疑者段階での参加ということが当審議会でも御論議いただくようになっていると聞いておりますが、こうした制度が行われる場合には、拘置所における職員の問題というのは非常に深刻な問題になってまいります。

 また、行政裁判を支え、国民と国家の紛争を法的に適正、公正に解決するためにも、訟務の組織というのも是非御留意いただきたいと思うわけでございます。

 非常に雑駁な御説明で申し訳ございません。また、時間が超過いたしまして、誠に申し訳ございませんが、是非このような状況にあることを御理解いただければありがたいと思います。どうも長時間ありがとうございました。

【佐藤会長】 どうもありがとうございました。

 それでは、引き続きまして、中山総務局長から裁判所の人的態勢、今後の人的基盤の拡充の必要性などについてお話をお伺いしたいと思います。

 お忙しいところ本当にありがとうございます。

【中山最高裁判所事務総局総務局長】 最高裁判所総務局長の中山でございます。本日はこのような機会をお与えいただきまして、ありがとうございました。

 裁判所からは、法務省とは少しく観点を違え、裁判所の定員の仕組み、増員に対する考え方、これまでの増員の状況、今後の方針等について考えているところを御説明することが、全体として、当審議会の御議論に役立つのではないかと思っております。

 まず、裁判所職員の定員の概要とその根拠について御説明申し上げます。

 裁判官を始めとする裁判所職員の定員は、本日お配りしました資料1にございますように「裁判所法」、あるいは「裁判所職員定員法」等の法律で定められております。これによりますと、平成12年度の法律定員は、最高裁判所の裁判官が15人、高等裁判所長官が8人のほか、判事が1,385人、判事補が805人、簡易裁判所判事806人の合計3,019人であり、裁判官以外の裁判所の職員は、2万2,038人となっております。

 先ほど来、御説明があったような総定員法というようなものは、裁判所はその対象となっておりません。したがって、裁判所では法務省とは異なり、増員を行うたびに、これに対応する裁判所職員定員法の改正を毎年行わなければならないということになっております。

 なお、裁判官以外の職員、一般職と言いますけれども、一般職の定員の官職別内訳につきましては、毎年の予算で定められており、平成12年度について言えば、そこにございますように、書記官が7,793人、家庭裁判所調査官が1,528人、事務官1万0,029人等となっております。

 次に、増員についての基本的な考え方を申し上げます。

 裁判は言うまでもなく人による仕事でございます。したがって、裁判所の事件を取り扱う能力というのは、裁判所の人員によって大きく規定されることになります。このことは、ごく単純な図式で言えば、仕事の量、すなわち裁判所に提起される事件数が増えれば増員が必要だということになるわけでありますが、実際にはそれほど単純なものではなく、少しく長いスパンで俯瞰的に見てみると、どのような訴訟制度が取られ、そこでどのような訴訟運用が行われ、あるいはそれらに向けてどのような事務処理態勢が取られるかなど、多くの要因によって、裁判官及び裁判所職員の仕事量は大きく変動するのであります。

 したがって、増員はこのような事件数以外の要因にも十分配慮した上で検討していくことになりますが、それらのうち基本的なものを説明させていただくと、次のようなものになろうかと思います。

 まず第1に、「事件数による裁判所の仕事量の変動」であります。同種の事件を同一の手続で同じ程度の時間と労力を掛けて取り扱うということにすれば、事件数の増加に伴って増員が必要になることは多言を要しないところであります。その意味で、短期的に言えば、事件数の変動は増員を考える上で最も大きな要因と言えようと思います。

 2番目は、「事務処理形態の変化に伴う負担の変化」であります。こういった事件を取り扱う形態の変化も、裁判所の仕事量に大きな変化をもたらすものであります。どのようなものが具体的にあるかとなりますと、例えば訴訟法等の制度的な変革や、裁判所、当事者による運用の変化といったものが挙げられます。

 そのようなものとして、資料3のアラビア数字の2、3というところに書いてあるものがそれでございますが、「2制度上の改編」の(4)にございます新民事訴訟法を例にとってお話し申し上げますと、御承知のように、平成11年から新民事訴訟法が施行されました。その結果、民事裁判の現場でどのような変化が起きてきたかと言いますと、従来は何か月か後にぽつりぽつりと弁論を開き、あるいは証人尋問を行ってまいりました。俗に五月雨式の審理ということで批判されていたところでございます。しかし、こういった審理に代わり、新民事訴訟法の下では、早期に争点を確定し、そこに焦点を当てて集中的な証拠調べが行われることになりました。このような制度、運用の変化は、ただ単に迅速な審理が可能となったということをもたらすものだけではありません。

 例えば、集中的に期日が開かれることになりますから、何度も繰り返し、無駄なまでに記録を読む必要はなくなります。私が民事を担当していた一時期のことを申し上げますと、3か月、4か月ごとに1期日ということになっておりましたので、その度にまた事件を細部まで読みこなさなければならない。書記官も記憶喚起のために読み返さなければならない。こういうことでありました。

 あるいは、従前のやり方ですと、争点と関連しない証人尋問も、はっきりしないまま行っていたというところもあったわけでありますが、これが今回の新民事訴訟法の施行により、争点と関連しない証人尋問等の証拠調べをすることがなくなったということから、平たい言葉で言えば、無駄が大きく省けたということになるわけでございます。いささか表現が激烈かもしれませんけれども、そういう面がございます。

 そうしますと、裁判官、書記官に余力が生ずることになり、その余力を他の事件の審理に向けることが可能になるということになったわけであります。

 その意味では、裁判官、あるいは裁判所書記官の持てる力というものを無駄にすることなく発揮できる体制につながったことになるわけであります。

 そのほかにも、その制度上の改編のところにございますように、例えば民事執行法や民事保全法の制定等、執行手続、保全手続を簡易化し、合理化することによって、相当な余力が生み出されてきているということも御理解いただけようと思います。

 第3点として挙げられるのが、「事務処理態勢の変化に伴う負担の変化」であります。

 例えば、昭和62年から平成2年にかけまして、全国の事件数の著しく少ない支部及び簡裁を統合することにより、多数の裁判官及び裁判所職員を、ほかの庁に配置替えすることが可能になりました。すなわち、支部や簡易裁判所の配置は、この統合以前は戦前の区裁判所等をそのまま引き継いでいた、踏襲していたものであり、その後の人口動態の変化、あるいは交通事情の変化等には全く関連しないものとして存在していたわけであります。

 そのため、支部や簡裁によっては、事件数が著しく少ない。地域住民がそれほどおりませんから、それほど利用されない、国民が余り利用しないといったところが出てきていたわけですが、そのような事態になっても、支部あるいは簡裁として設置されている以上は、そこに相当数の裁判官や書記官等を配置しなければならないわけであります。

 しかし、例えば1の仕事をする裁判官、あるいは裁判所書記官のところに、0.5程度の仕事量しかないということになると、これは人材の有効活用という観点からは問題があるということは御理解いただけようと思います。

 むしろ、これは交通事情等で国民が実質的に利用しにくい、そういった事態になりますと、全く別物でありますけれども、そういった事情が認められないところについては、統合してマンパワーを集中していった方が、全体として裁判官の紛争解決機能が高まる、より迅速な裁判が可能になるというわけであります。

 先の統廃合はこのような見地から行ったものでありますが、その支部、簡裁の、あえて適正配置と申しますけれども、その適正配置によって、そこにいた職員、これを統合庁や繁忙庁に配置換えすることになりますが、その職員は約600人にも達しました。これらの職員の相当部分については、今申し上げたような事情を御勘案いただくと、実質的にはかなりの増員と同じものだったということが言えるのではないかと思っております。

 また、近年は、裁判所職員が行っていた、例えば庁舎の警備、清掃といったところを、民間に委託することによって、庁舎等の維持・管理に従事していた職員を大幅に削減し、これを裁判事務を担当する部門に配置換えしてきているところでもあります。

 さらに、近年、裁判所では全庁的にOA化を推進してきて、裁判官には一人に1台のパソコンを配付し、書記官室、家裁調査官室に対しても、ほぼ同様の整備を行ってきております。

 また、資料3の3(5)にありますように、破産事件処理システムとか、民事執行事件処理システム等の事件処理の効率化に資するシステムを構築してきており、その結果、判決書を始め、書記官の作成する調書、各種の書類の作成等も大幅に効率化されてきております。

 このような事務処理態勢の変化ということも、国家機関である以上、増員に当たって考慮すべき大きな要因となるということは御理解いただけると思います。

 4番目の大きな要素は、「充員の可能性」というものであります。増員に当たって、充員の可能性を考えませんと、ただ単に数を増やしたとしても、画餅に帰す、絵にかいた餅になるということになります。

 すなわち、裁判官、裁判所書記官等は、いずれも相当期間の養成を要する資格職種であり、特に裁判官については、厳格な任命要件が定められているのであって、その充員の見通しは、当然のことながら検証されなければならない要素であります。ここも御理解いただけるものと思います。

 このようにして、実際の増員要求、毎年の増員要求というものも、勿論、年によって重点の置き方に差異はありますけれども、基本的にこれらの諸要素を総合して行われてきているところであります。

 そこで、次にこれまでの増員状況、特に臨司以降の増員状況でございますが、今申し上げたような考え方に基づき、裁判所は人員政策、増員要求を進めてまいりました。その結果は資料4のとおりであります。

 昭和39年の臨司以降の36年間で、そこにございますので、詳しくは申し上げませんが、合計544人の裁判官、内訳を申し上げますと、判事が175人、判事補が278人、簡裁判事が91人、合計544人の裁判官、それから1,514人の書記官等々の増員を行ってまいりました。

 このような増員の結果が十分なものであったかどうかというのが次の問題になるわけでありますが、これは先ほど来の説明のように、種々の要因に関わるものであり、事件数に伴う事務量の変動だけで比較することは、なかなか問題があるというふうにも思っております。仮にこれを割り切って、事件数だけを見て的確に対応したものとなっているかどうかということを見ましても、例えば資料2を御覧いただきたいと思いますが、裁判所はいつもカラフルなんでございますが、今回は法務省に負けまして、資料が非常に淡白なものになって申し訳ありませんけれども、地裁の民事訴訟事件については資料2の1枚目にございますし、簡裁の民事の訴訟事件については2枚目にございますが、あるいは家事事件、とりわけ調停事件のように大幅に増加しているものもございます。

 他方で地裁の刑事事件のように昭和50年後半のピーク時から大きく減少した後、再び増加傾向になってきているもの、あるいは少年事件、簡裁の刑事事件のように、相当程度大きく減少してきているものなど、さまざまであります。

 また、同じ訴訟事件とは言っても、御承知のように、その重みは、具体的な事件の種類、内容によっても異なるところでありまして、例えば、近年、取り扱いの困難な複雑大型事件というものが増加してきている反面、クレジットあるいはサラ金関係の事件、刑事で言えば外国人のオーバーステイ事件のように、類型的で比較的負担の軽い事件というものも増加してきております。

 勿論、こういったことは比較的負担が軽いと言っても、全体的な傾向のことで、中には思いがけず難解なものもあることは論を待たないところでありますけれども、大きな目で見ればそのように言えるかと考えております。

 このようなことを考えますと、事件数の推移だけから、これまでの人員政策の的確性というものを検証することは、率直に言って難しいと言わざるを得ないように思われるわけであります。

 翻って考えますと、裁判所の使命というものは、適正かつ迅速な裁判の実現にあるわけでありますから、増員がある意味で適切な規模で行われたかどうかを実証的に評価する一つの目安としては、審理期間がどうなってきているか。長期化しているのか、それとも短くなってきているのか。こういうところを見ることも参考になるのではないかと思います。

 この点を見てみますと、資料2の1枚目のように、民事訴訟事件の審理期間は昭和39年11.9月であったものが、現在は9.2月、刑事事件については、5.9か月であったものが、3.2か月というふうに短縮されてきております。詳しくは申しませんけれども、争いのある事件だけを取り上げても、かなり審理期間は短くなっているところであります。

 このことは、ある程度増員による手当てというものが、勿論、これは制度面、運用面の変化、あるいは工夫といったものがあったことも確かでありますけれども、増員による手当てというものも有効であったということを示すものではないか。こういうふうに考えているところであります。

 また、いまひとつの評価の視点は、いささか感覚的なものになりますけれども、裁判官の繁忙度がどの程度かということであります。

 この点については、個人差はございますが、一般的にお話しさせていただければ、平成3年以降のバブル経済崩壊後、大都市及びその周辺地域において民事訴訟事件、執行事件、破産事件等が急激に増加し、これに関与する裁判官、裁判所職員の負担は極めて高い状態になりました。平成6年ころから平成9年ころにかけて、マスコミ等でも忙し過ぎる裁判官ということがよく記事になったのはそのためであります。

 そこで、裁判所では、ここ数年公務員全体にわたって厳しい人員抑制、削減政策が採られている中で、このような急激な事件増加と裁判官等の負担の状況を踏まえて、財政当局と折衝を行い、その理解を得て、裁判官、裁判所職員の相当の増員を実現してまいりました。

 最近5年間の実績を見ると、裁判官は155人、裁判所書記官も239人の純増と他の官職からの振り替え702人の、合計941人の増員であります。裁判官の155人というのは、本年度が2期分の修習生が任官するという特殊事情もありますので、いささかこそばゆいところもありますけれども、いずれにしても、この数年平均20人、ないし30人といった増員をしてまいりました。

 裁判官30人と、ちょっと聞くと、それほどのことではないではないかと思われるかもしれませんが、裁判官数の規模で全国7位、あるいは第9位に位置する千葉地裁本庁、浦和地裁本庁というのが大体30人くらいでございますし、また、全国第11位、12位の広島、仙台で約20人でございます。

 したがって、ここ数年、これらの浦和、千葉、広島、仙台といったところの裁判所を増やしてきているといったイメージで受け取っていただいてもよいのではないかと思います。

 裁判所ではこのような増員を受けて、東京地裁を中心とした繁忙庁を中心に、相当の人員配置を行った結果、一時のような厳しい状況というものは、相当程度改善されてきていると認識しております。

 そこで、今後の増員の方針ということになりますが、短期的な展望・方針と、中長期的な方針ということで、お話し申し上げたいと思います。

 今、かなり増員の効果というものは実質的にあがってきている部分もあるというふうにお話し申し上げましたが、なお事件数は民事事件を中心として依然として高い水準にございます。

 また、今、法務省官房長からのプレゼンテーションにもありましたように、検察の人的体制が更に今後充実していく、ボトルネック化というものが解消されるということになりますと、今でも増勢傾向が出てきている刑事事件というものが、今後、更にその傾向を強めてくるのは必至であります。

 また、本審議会の議論、あるいは他の部署でもいろいろ言われているところでありますが、各方面から裁判所に対してより一層スピーディーな裁判をという声が非常に強うございます。

 12月8日の裁判所自身のプレゼンテーションでも御指摘いたしましたが、公害等の大型事件や、医療過誤、建築瑕疵といった専門的事件等の複雑困難な事件、あるいは一部の刑事事件等の審議については、残念ながら、なお相当の長期を要しているという実態にあります。

 他方で、新民事訴訟法の下で、書記官の果たすべき役割というものは、これまでにも増して重要なものになってきているところで、依然として増加傾向にある執行事件、破産事件における書記官の役割というものは決定的に重要であります。

 加えて、裁判所では、近年合議事件のより一層の適正・迅速な裁判を実現するために、合議部の充実という観点から、事案の内容や進行状況に応じて機動的で効率的な訴訟運営を図ることができないかということを実証的に検討するために、大規模庁を中心に、幾つかの合議部の裁判官を3名構成から4名構成にし、あるいは書記官の役割拡充を受けて、裁判官、書記官がこれまで以上に一体となって争点整理などの訴訟運営に当たっていくために、合議部における書記官の人員を増やすなど、組織面における工夫としての試みを現に行っているところであります。

 そこで、裁判所の今後の人員政策でございますが、短期的には今申し上げたような裁判所を巡る状況や期待、これらをきちんと踏まえ、各種事件の動向を見据えるとともに、今、申し上げた組織面における新たな試みの結果と、その効果等を検証し、その成果を反映させるなどして、裁判官、裁判所書記官、あるいは本日は書記官を中心に述べさせていただきましたが、家庭裁判所調査官といった、裁判官を実質的に支えるその他の裁判所の職員の増員について、今後とも現状に甘んじることなく、適切に対処していきたいと考えております。

 また、中長期的にはこの審議会において将来の司法の在り方について、どのような基本的な枠組みが示されるかということが極めて重要であると考えております。例えば、法曹養成の規模によって、当然のことながら弁護士数が増加し、これに伴って、事件数が大きく変化してくることが予想されますし、民事及び刑事の制度的、あるいは手続的変更や、裁判所の事務やその処理態勢に種々の影響を与えることも明らかであります。

 その意味で、中長期の人員政策については、この審議会での審議の結果を踏まえ、これを裁判所として十全に受け止めて、的確に対処してまいりたいと考えているところでございます。

 以上でございます。

【佐藤会長】 どうもありがとうございました。それぞれもう少し訴えたいところがおありだったと思いますけれども、限られた時間で恐縮でございました。

 時間の関係で15分ほど質疑応答にあてたいと思いますが、どちらの方についてもよろしゅうございますので、どうぞ。

【鳥居委員】 大枠のことからお尋ねしたいんですが、国家公務員の数につきましては、3点から検討するのがよいと思います。

 第1点は、国家公務員は約67万人くらい今います。都道府県公務員が約160万人います。そして、市町村公務員が124万人くらいいます。要するに、国家公務員の数を25%減らすという枠組みで、私たちは物を考えているんですが、実は、都道府県公務員、市町村公務員の削減の問題まで視野に入れて考えないといけないのに、国家公務員を減らせばいいという議論をしているのはちょっとおかしいと思います。

 2番目は、その国家公務員にせよ都道府県公務員にせよ市町村公務員にせよ、数としてマジョリティーの職種と、マイノリティーの職種があると思うんです。例えば市町村公務員の約48%が学校の先生です。一方、国家公務員について見ますと、国家公務員の約10%が国立大学の教官です。国立大学の教職員は20%近いんです。それに対して今議論されている裁判官並びに裁判所の一般職員、あるいは検事の数などというのは本当にわずかな数なんで、これを100人増やすとか減らすとかいうのと、今、事例として挙げた非常に大きな割合を占めている職種のところを、ちょっと足したり引いたりするとでは全く違う効果を持っているのに、何でこんなに裁判所や検事のところで、わずかの数のところで増やすこともできない。明らかに今話を聞いてみれば、増やさなければいけない部分が相当あるのに、それができないでいるのはなぜだろうかと思います。

 国家公務員の定員についてもう一つありますのは、3番目には、民営化が絶対不可能なものと、是非民営化すべきものの両極端、その間にさまざまなバラエティーがあると思うんです。その民営化、半民営化、そして民営化を絶対してはならないもの。その位置づけというものを国民がもう一度やり直す必要があるんじゃないかと思います。

 その3つの角度から、私はやはり司法の定員というものも考えるべきだと思っています。

【佐藤会長】 今のはまさに行革の在り方そのものについての御主張だと伺いました。

【鳥居委員】 数は少し間違っているかもしれません。

【佐藤会長】 まさに御指摘の点が大きな問題なのだと思います。考えなければいけない問題だという気がします。

【髙木委員】 今日は2回目のお話を法務省、最高裁からお聞きしたんですが、今回の話というより、前回お尋ねしたんだけれども、最高裁の方からお答えを明確にいただけなかったことについても聞かしていただいていいんだろうと思いますが、裁判官の皆さんの評価の物差しと言いますか、いろいろ配置の問題、昇進・昇格の問題等、いろいろなことが言われたりしておりますが、どういう基準でおやりになっているのかについてお尋ねしたことがあったと思うんです。

 これは、先ほど法務省の官房長さんもおっしゃられたように、これからまさに透明性だとかいうことが大切なときに、個別の、どなたがどうだというのは別にしまして、評価のルール、基準はどうなっているのか。それから評価された中身があるとしたら、本人の方がその評価の内容をどう知り得るのか。あるいは不服だったときに、不服を申し述べたりする仕組み、場所があるのかないのか。このくらいのことは公にされて当たり前のことだと思うんです。その辺のことについて是非お教えをいただきたいと思います。

 もう一つ、これは法務省の方に、ボトルネックになっていることはおっしゃられるとおりで、ボトルネックにならないように、なぜしてこられなかったのかと言われたときに、いろいろ御主張や御感想があるんだろうと思うんですが。

【中山総務局長】 総務局長と言うと何でも知っているかということでの御質問かと思いますが、私自身もどういった形の評価、あるいは基準かということについて詳しいことはよく分かりません。

【髙木委員】 ちょっと待って、あなたは昔人事課長もやっていたんじゃないですか。

【中山総務局長】 人事課長ではありませんで、給与課長でございます。給与課長というのは、裁判官の関係とは全く関係のないことなんでございます。

【髙木委員】 そこまで言うなら私も。

【中山総務局長】 一応全部お答えしておきますが、その後本人に対する告知と言いますか、あるいは本人からそういうときに、不満、あるいは質問する場所というのが制度的にあるかどうかということについては、それはないんではないかと思います。組織的、制度的にはないと思います。

 ただ、本人が直接聞きに来られるということはあるということは承知しています。申し訳ありませんが、私のところで知っているのはその程度のことでございます。

【髙木委員】 それなら、どなたか知っておられる人がおったら、その方に文書でも結構ですから。

【中山総務局長】 分かりました。それは直ちにそういうふうに、この審議会宛てということでよろしゅうございましょうか。

【髙木委員】 結構です。

【但木官房長】 法務・検察がボトルネックになってくるということを気づいたのは10年以上前だと思います。そのころのことを申しますと、検事になり手が非常に少なかった時代で、一番ひどいときには、1年に30数人しか手を上げてこないという時代がございました。

 私どもとしては、検事だけではなくて、よく考えてみると、法曹人口そのものが諸外国に比べて余りに少ないんじゃないかと。それが来るべき社会に向けて、こんなことでは司法に課せられた役割は果たせないということで、日弁連ともずっと協議を重ねながら、法曹人口を増やすということと、それから多数回受験をできるだけ抑制できないかというような施策を取ってまいりました。合格者が増えますと同時に、景気が悪くなったという二つの要因が重なりまして、検事の志望者が急激に増えてまいりました。ここ数年ずっと70人台取れるようになりました。

 昔は幾ら増員要求しても、検事になり手がなくて、逆にどんどん減っていくような状態でしたので、到底このボトルネック化に対応できなかったわけであります。

 ようやくここ何年かで検事の数が少しずつ増えてまいりまして、ボトルネックを何とかしなきゃならないということを公然と言えるようになった。それまでは何とかしなくちゃならないと言っていても、絵空事になってしまうような状況です。このごろになってようやく手掛かりだけはできてきたなと思っておりまして、ここで頑張れば、ボトルネックになって水が流れないところを少し広げて社会に還元できるんじゃないかと思えるように少しなってきたという状態でございます。

【佐藤会長】 髙木委員、よろしゅうございますか。では、水原委員。

【水原委員】 官房長にお尋ねいたしたいんですけれども、今、髙木委員からもボトルネック化にならないようになぜしなかったという御質問があり、検事のなり手が少なかったということも一つの原因でございましょうけれども、それだけではなくて、私の証券取引等監視委員会の経験からするならば、証券取引法というのは、大正時代から制定されておる法律でありながら、事件として上がったことがなかったために、その捜査に関するノウハウというものを、まず捜査機関は勿論のこと、司法関係機関も持っていなかったのではなかろうか。

 そこで新たな社会秩序に挑戦するような、社会秩序を乱すような、証券市場を乱すような犯罪に対して対応する機関ができたために、古くからあった事件が新たに見つけられて検察に送られるときに、それを受け入れる側に十分な準備がなかった。能力もなかった。これも一つあったと思います。

 それだけではなくて、先ほど御紹介ございましたインターネットに関する犯罪、在留外国人による想像もできないようないろんな手口の犯罪、こいうことで数だけで対応できないいろいろな問題がたくさん出てきたのではなかろうか。

 そういうことと人員が足りなかったことが、併せてボトルネック化という問題が出てきているのではなかろうかという気がいたします。

 そういう問題に関して、検察としては、増員だけではなくて例えば教育の問題と言いましょうか、オン・ザ・ジョブ・トレーニングだけではなくて、研修等を通じての体力の養成と言いましょうか。こういうものについてどういうふうなお考えを持っていらっしゃるのか。

【但木官房長】 大変ありがたい御指摘でありまして、先ほど私、付け加えて申しました。次の時代にいろんなことが起きてくるだろう。現在、既に起きていること。今言われましたように、証券関係の知識を持っている検事というのは極少であります。さらに、金融監督庁の金融犯罪、摘発されてくるであろうものを予想しても、これまた極少であります。さらに、インターネット関係になると、恐らく絶無に近い状態。

 公正取引委員会の問題も、実はそれほど専門官がいるわけじゃありません。そういう状態で次の時代を乗り切れるのかというのは非常に大きな問題であります。我々としては、できれば検事を、例えば、アメリカのシカゴの商品取引所に行かせて、先端の金融商品というのはどういうものがあって、どういう仕組みか。本当はそういう研究をさせなきゃいけない。

 深い素養というのと専門的知識というのは、どっちも要求される時代に入ってきて、それを開発するだけの余力は、全くとは言いませんけれども、一生懸命やっていますけれども、ないんです。

 ところが、次の時代はそういうものに全部応えていかないと、的確な判断ができない。検察官が全く視野狭窄になっていて、時代に取り残された判断をするということになると、えらいことになってくる。そういう意味で、どうやって検察官の実力を増加させるか。あるいは検察総体としての知的レベルで言えば、専門的な検察事務官というのをどう育てていくか。これは非常に重要な問題だと思っています。

【水原委員】 もう1点だけ、被害者の立場として申し上げたいんですが、私は監視委員会の委員長をやっておりましたときに、平成8年にある四大証券の1社につきまして、ほぼ十分な証拠を収集いたしまして、東京地検に告発するべく協議を持ち込ませました。ところで、東京地検特捜部ではいろいろな事件を持っておったために、今、とても受け入れられません、こういうことでございました。

 被害者はだれかということを考えてみますと、陣容が足りないために市場を公正にしなければいけないその事件を暴くことができない。検察庁が受け取ってくれなければ事件は裁判所に持ち込むことができない。こういう制度の下において、そのまま言いなりになっておったならば時効に掛かります。そうしますと、被害を受けるのは実際は市場関係者なんです。一般投資者が、こんなに乱れている市場に対して、信用のできない証券会社に対して、それを信用して取引したことによる損害が起きたときにどうするんだということの申し入れをいたしまして、最終的には受け取っていただいたことがございますけれども、ことほどさように、非常に人員が少ないということについては、多くの者が被害者になっている。これは不十分な捜査、消極的な処理になる。それから、一般国民にしわ寄せがくる。まさにそのとおりだと実感を、私自身が被害者の立場から申し上げておきたいと思います。是非その点は検察で御考察いただきましたらと思います。

【但木官房長】 既にボトルネック化が始まっておりますし、このまま推移すれば、次の時代はもっと巨大なボトルネックになっていくであろうと思っております。したがいまして、行政改革で規制緩和をし、自由で闊達な社会というものを目指そうというならば、その行政改革のためにも、やはり刑事司法を担当する部分の人的な、あるいは質的な強化というのを是非やり遂げていかなければいけないと思っております。

【吉岡委員】 但木さんになんですが、おっしゃるように規制緩和に伴う自己責任、その判断は裁判にという時代になってきておりますから、検察、裁判所を含めて人的・質的な強化というのは非常に重要だと私も考えております。

 その中で、5ページの図でもってお示しいただきました検事不足という表でございますが、そこに検事のほかに副検事とか検察事務官などが書かれてございまして、本来は、裁判は検事が担当するべきだと思うんですけれども、それが副検事、あるいは検察事務官によって進められるということで、何とかしのいでいらっしゃるということだと思います。

 一番下の3というところを見ますと、「検事不配置支部の拡大」ということが書かれてございますので、国民が裁判を受ける権利と言いますか、そういう立場から言うと非常に量が足りないという実態だろうと思います。

 そういう中で、検察事務官なり副検事なりで進められた訴訟というのは、公平性という面から見てどうなのか。その辺のところを伺わせていただきたいと思います。

 それから、中山局長にお伺いしたいんですけれども、中山局長のお話では、現状で裁判官が十分とはおっしゃらなかったんですけれども、足りていらっしゃるようにお話しなさったと思うんです。ただ、これから先を見ていくときに、弁護士の数を増やすというのが大前提として合意されているわけですけれども、それだけ弁護士の数が増えて、訴訟が増えてくるということを考えると、とても足りるのかなという不安を感じます。

 足りているということをおっしゃっている中身の問題として、できるだけ入り口のところで仕分けしてしまって、例えば簡易裁判所、あるいは家庭裁判所、あるいは少額裁判所、それからもう少し手前のADRというようなところで処理を進めることによってしのごうというお考えなのかどうか。その辺のところをうかがわせてください。

【但木官房長】 まず私の方ですが、御指摘のとおりでございまして、本来、地方事件は検事が扱わなければならないということになっております。実際問題といたしましては、5ページの左上の表にございますように、昭和43年には、そのうちの60%を検事が扱っておりましたが、現在では25%程度しか検事はやれない。あと75%は副検事に地方事件を委ねているという状態にございます。

 また、副検事が本来扱う区の事件というのは、検察事務官が扱っている。こういうように少しずつずれてやっております。検察が持っているいろいろな機能がございます。例えば捜査のチェック機能、警察の捜査が適正に行われているかどうかというチェック機能というのは非常に大事な機能です。また、被害者の訴えと被疑者の人権、こういういろいろな利益調整というか、それが的確にできないといけないという問題がございます。検事が事件を取り扱った方が事件の処理としては、そういう意味では深い処理ができるという面があろうかと思います。それをどうしても副検事さんに委ねざるを得ない。勿論、皆さん一生懸命やっておられるわけですけれども、捜査の適正の確保とか、あるいは被害者の言い分を十分聞くとか、被疑者の主張を十分聞く、その中で結論を出していくという意味では、これほどの肩代わり現象が起きますと、相当な事件まで検事がやれないということになってきていますので、それはかなり問題だろうと思っております。

【中山総務局長】 私の説明でかなり現状肯定型に聞こえてしまったかなと思っていますけれども、その辺言葉を選んで言っていたつもりですが、例えば繁忙感が非常に強かったという裁判官に対し、ここ数年、従前にはないようなかなりの大幅な増員というものを実行してきまして、それで相当程度改善されたと思っていますが、依然として、それは相当程度のところでございますから、もっともっとやらなければいけないところもあろうと思っています。

 そういうことで、依然として事件数として民事事件を中心に高い水準にあるということも申し上げました。

 それから、刑事事件も今後、検察の体制の充実というものがなってくれば、これまた増勢傾向に出てくることは明らかであります。

 そういった意味で、裁判所としては、今後とも増員の努力をしていかなければいけないというのが一つでありますし、もう一つ、組織面での工夫として、今までの裁判官3人というところがございましたけれども、それを4人というような形にすることにより、例えば、ずっとこの事件に張り付いたままでAという人がおやりになり、Bという人がおやりになるというところで、中で少しBの人がたまってくれば、それをもう少し機動的にAの人の方に動かしていくとか、そういったこともいろいろ工夫できる余地があるのではないかというふうに思っています。

 そういったときに、3人の裁判官のうち1人が動いても、残りの2人が替わりませんので、既に係属している事件についてのかなりの問題意識というものを、そのまま動いた後の新しい構成に引き継げるということになりますし、また、書記官を従前は3人と、大体1箇部に5人くらいでしょうか、それを6~8人と増やしてみて、それが一体争点整理とかいったものにどんなふうに力を発揮するか。そういうことも見なければいけません。それが効果があるということであれば、それを一番基本形に据えていくということも大いに考えられるわけでありまして、そういうことを見ながら短期的にはやっていきたいと思っているわけであります。

 弁護士さんの数が増えれば、これまた2倍になれば事件数が2倍になるというわけではありませんでしょうけれども、増えることは必至でありましょうから、そのための備えというものもしていかなければならないと思っています。

 あと、少額訴訟とADR、ちょっと違うかと思いますけれども、一番典型的なのは、民間の方にADRということで、紛争解決機能としてのものを持たせることにより、裁判所に来るものをボトルネックじゃありませんが、最終的に狭くするとお考えかと思いますが、決して裁判所としてそんなふうに思っているわけではありません。むしろ今一番大事なのは、裁判所だけで紛争解決ができるということではなくて、国全体で、国民がいろいろ知恵を出し合って、紛争解決のメニューというものをたくさんつくる。それを最終的なところで裁判所の方に結び付けていく、こういうことが大事ではないかなと思っています。

 ですから、例えばADRはこの審議会でも御議論いただいているところでありますけれども、ADRというものが民間でできた場合に、裁判所としてどこまでいろんなお手伝いができるかどうかということを真剣に検討しなければいけませんし、また、ADRはADRで終わっていては具合が悪いわけで、ADRで現れた争点というものが裁判所の手続に乗ったときに、そのままの形で速やかに利用させていただける。そういうことになれば、全体としての紛争解決機能というのは高まることになりますし、審理期間全体も短くなると考えておりますので、入り口のところで裁判所の方に来ないで、ということは決してございませんから、御理解いただきたいと思います。

【佐藤会長】 時間の関係でこれを最後にさせていただきます。では、中坊委員どうぞ。

【中坊委員】 中山さんにお尋ねというよりも、お願いを申し上げたいと思うんです。

 ただいま但木さんと中山さんと、それぞれ報告がありました。そして、報告があった中で極めて特徴的なのは、法務省から出ている人的基盤の強化についてというのは、第1として、21世紀における司法の基盤整備の必要性、そして、行政改革と司法改革、そして審議会の論点整理というものがすべて踏まえられた上で、一つの大幅増員の必要性があるという具体的な提示があったわけであります。

 ところが、中山さんの出された方には、一番終わりの中長期的な方針のところに、単に本審議会の重要性とお書きになっているだけです。重要性とお書きになるならば、我々が審議会で今日まで論点整理をやり、社会の法が血肉化し、法の支配を要求されるということは、行政改革の最終報告でも、政府としても国会でも認められてきていることでしょう。そういう中における司法の果たすべき役割、21世紀において我が国が果たすべき役割という大きな視点から物事をお考えにならないで、すべてが過去の数字から見てどうだ、こうだという議論をなさっておるというのは問題ではないでしょうか。

 例えば、審理期間が短くなった、だからこれで合理化すれば我々としても十分に耐えていくんだ、だから、別に大幅増員なんて要らないと言いたいような話ですけれども、私たち自身が見ておっても、短期化したのはいいけれども、そのためにどれだけ口頭弁論の口頭主義が後退をし書面主義になり、どれだけの弊害が見られたかということが顕在化している。だから、もっと根本的に裁判制度そのものを直していかないといけないということも言っているわけです。それをすべて過去の数字だけを援用されて、ここしばらくはこれで大丈夫だというのでは、恐らく裁判所側が審議会の様子というものをどの程度御理解いただいて、重要性があると言われておるのか疑問を抱かざるを得ない。しかも我々としては、今言われるように論点整理で裁判所、法務省の人的体制のことに関してすら、認識が一致とされ、司法制度の直接の担い手として、弁護士だけではなくて、裁判官及び検察官を大幅に増員する必要があると認識が一致し、検察事務官、裁判所書記官等の裁判所職員の充実の必要性に関しても全部意見が一致ということになってきて議論が前へ進んでいる状態ですから、そういう状態を踏まえた裁判所の物の考え方とか提案をしなければならない。大幅増員について、我々は既にここまでタッチしてやっているということを重要だと認識しなければならない。審議会の様子を踏まえて、これから考えますというのでは、少なくとも裁判所の在り方としては私はこの審議会に対する関係において、極めて不十分ではなかろうかと思いますので、私としては、もう一度裁判所側において、この裁判所、あるいは検察庁の大幅増員ということについて、もっと大きな視点からお考えいただいて、今の過去の数字の延長線にあるということだけで御議論なさらないように私としては是非お願いしたいと思います。

 別に答えは要りません。

【中山総務局長】 裁判所としては、むしろ一番最初に申し上げたように、法務省の方がきちんとその辺りところを踏まえられての御発言がありました。裁判所の方としては、増員というものについて、国家機関である以上、どういった視点から考えなければいけないかというところも御理解をいただくことが、今後の審議会の御議論を進めていただく上で有用ではないかなと思いまして、かなり引っ込んだ形になっているかもしれませんけれども、落ち着いたところでと言いますか、御説明をさせていただきました。

【中坊委員】 ひとつよろしくお願いします。

【佐藤会長】 まだお尋ねになりたいことが多々ございましょうけれども、予定の時間よりかなりずれ込んでまいりましたので、この辺でお二人からの御説明を終わることにしたいと思います。

 お忙しいところ恐縮でございました。

【中山総務局長】 今日お配りいただいた事務局からのものを見ますと、平成11年度で数字が止まっております。追加資料ということで出されているものがございますね。例えば裁判実務に携っていない裁判官数というのも、これは平成11年12月1日現在のものと思いますけれども、私どもの方はもっと早く出したつもりであったんですが、お役所仕事の通弊か、どこかでボトルネックを起こしていたようでございまして、早急に新しいところをまた追加させていただきたいと思っております。

【佐藤会長】 ありがとうございます。今後とも引き続きよろしくお願いいたします。今日は本当にありがとうございました。

(但木法務大臣官房長、中山最高裁判所総務局長退室)

【水原委員】 会長、一言だけお願いがあるんですけれども、それはせっかくヒアリングの機会でございます。時間の制限は確かにございましょうけれども、それでは次にまたその機会があるのかと言いますと、そうしょっちゅうあるわけじゃございませんので、こういうときにはほかの方々からも十分意見をいただくように、時間の制限が最初にありきでお進めになられると消化不良を起こすようになるんじゃなかろうかという気がいたします。ほかの委員の方々はどう考えられるか知りませんが、私は率直に申します。

【佐藤会長】 司会者として、その辺が一番悩みの深いところでありまして、御趣旨はよく承知しております。ヒアリングするときにできるだけ時間を取りたいと思いますけれども、何せ2年間でいろんなことをやらないといけないということが頭の中にあるものですから、つい御無理申し上げているところがあって、御不満の点も多々あろうかと思いますが、おっしゃることはよく分かりますから、これからも心掛けます。

【水原委員】 今の点ですけれども、臨時司法制度調査会のときには、法曹一元と裁判官、検察官の給与だとか執務体制とか、そういうものだけに限って、しかも、なおかつ専門家が集まって、そして2年間掛かっているんです。今回は猛烈にたくさん議論すべきものがあり、一つの柱だけでも1年や1年半掛けても足りないような案件を、しかもそれはもう5つも6つも柱がございます。これを2年間でやること自体に非常に問題があるなという気がいたします。

 しかし、やらなければいけないのはよく分かりますけれども、だからと言って、上滑りの、しかも抑えて、抑えて、意見を言わないようなことでやられるとなりますと、私は本当に国民のためになる司法、国民が期待する司法はどうあるべきかという本心を述べるような機会がだんだん少なくなっていくんじゃなかろうかという気がいたしますので、是非その点を御考慮いただきたいと思います。

【佐藤会長】 今のお二人のお話を踏まえまして、少し意見交換をしたいと思います。

 但木官房長も触れられ、それから鳥居委員も言及なさった行政改革との関係なんでありますが、行政改革会議では、行政のスリム化を図らなければいけない、規制緩和を推進しなければいけないということを前提にしながら、いろいろ議論したわけです。そして、それに関連して、事前規制型社会から事後監視型社会に転換しなければならないということが、一つの大きな線として行政改革会議の最終報告の中に流れているわけであります。しかし、事後監視型社会と言いましても、言葉として言うのは簡単ですが、本当にそういうものにしようとするならば、それには相当の基盤の整備が必要だろうと思います。

 実際、その辺は行政改革会議でも十分わきまえておりまして、今日、但木官房長が引用なさったように、本当に事後監視型社会を目指すということであるならば、特に司法の-ほかにもいろいろございまして、例えば純然たる行政機関の中でも、金融監督庁ないし金融庁というような問題もあるわけですが-とりわけ司法の人的、制度的な基盤の整備が重要だということを、平成9年12月3日に出された最終報告、その中の10ページのところで非常に力説しているわけです。この司法の拡充ということは、行政改革の理念と違う方向の話ではなくて、むしろ行政改革の中に既に取り込まれている、つまりビルトインされている考え方ではないかというのが、行政改革に関係した者の一人としての私自身の理解です。そして、その辺は私一人ではなく、行政改革会議の委員の皆さんもそういう御理解ではなかったかと私は思っているわけでありますが、今日お二人のお話を承り、質疑を踏まえて、この問題について、できれば更に明確な考え方を私どもとして示したいと思っておりますが、いかがでしょうか。

【中坊委員】 私も先ほど申し上げましたように、本来、いやなことは余り言いたくないんだけれども、せっかく総務局長というお立場で述べられているので申し上げると、それは二つの報告書を見たら、余りにも第1、1、2、3と書かれていることと、こちらのと出発点が違うんですね。裁判所の報告と法務省の報告とは違っている。このようなことは本来から言えば非常に我々としては困るわけです。しかも私らとしては論点整理の中で確認したことに従って来ているわけでしょう。それを全部1から今までの数字を述べて、こうだというようなことを言う。それこそ、この前のワーク・デザインではないけれども、今までの過去の数字を示していただいても、21世紀の司法はこうあるべきだとちゃんと書いてあるんだから話がかみあわない。だから、私はこの審議会として、最高裁も、もう少し物事を前向きに考えていくというのでないと、ヒアリングをしてみても、余りにも両者に差があるということは問題である。私はこれは今後の審議の上において、先ほど水原さんも言われたけれども、十分審議しようと思っても、出されてくる資料が余りにも双方の見方が違うとスムーズな進行が期待できない。我々は少なくとも今日の話では法務省のおっしゃっていることは我々の論理を踏まえられて1、2、3とちゃんと正確にレジュメの中に書かれておる。

 片方は、一番終わりのところにちょろっと、「審議会の重要性」と書いてあるだけで、重要性というのはどこへどう関係しているかほとんど記載していない。これでは、私は裁判所の審議会に対する対応の仕方というのが、極めて私は異常だなと思いますよ。

 だから、これはやはり会長や会長代理におかれて、最高裁側とも、あるいは事務局と連携しておやりいただかないと、非常に不一致になってきた、我々の審議会がむしろ裁判所との連携が取れないままこの審議が続いていくようになって、我々が逆に遊離しているようなことになりかねないという気はしますね。

 だから、せっかくロースクールができてきて、人数が多くなる、今日の話だって、弁護士の数が多くなるから訴訟事件が増えるでしょうと中山氏は言っている。我々は何も弁護士の数を増やしたくて言っているわけではない。ロースクールの論議にしたって、まさに国民のために質の高い弁護士を増やすということで、大学教育の中で考えようとやっているんだから、そこは今の審議会の審議の状況というものを裁判所側はもっと真剣に受け止めて、物事を根本的、抜本的には21世紀に向けての司法の改革がどうあるべきかということで対応してもらわないと困る。

 しかも、それは世の中で、私らがここで言うだけではなしに、まさに今、会長もおっしゃったように、国全部が決めてきていることなんでしょう。それを、自分だけが唯一出される数字が、この前からこれだけ数が増えましたけれども、裁判官の数はまるで合理化していけば全部満たされるというような裁判所の報告があって、それで我々の意見が食い違ってくるんだったら、裁判所の意見を我々はどう聞いたのかということなってくるでしょう。

 だから、私はこの審議会の在り方そのものと裁判所の対応の仕方というものとに不一致が非常に顕著に見え始めてきたと思うのです。これは憂慮すべきことではないかと思いますので、先ほど、水原さんのおっしゃるように、まさにざっくばらんな、しかも真剣な深い討議をするためには、その意味における裁判所側の御意見を改めてもらわねばならない。もしそれをされないなら、こんな状態では、これはほとんど2年という期間に審議はできませんよ。今おっしゃるように、そんなところを一々議論しなければならないようなことになってきたら。

【藤田委員】 裁判所が司法改革が不要であると考えているかのようにおっしゃるけれども、そういうことは全くないので、昭和60年、61年から。

【中坊委員】 不要であると言ってるんですよ。

【藤田委員】 最後まで聞いてください。60年、61年ぐらいから、民事訴訟の運営改善とか、民事判決書きの簡易・平明化ということで、現に私は所長代行や所長として取り組んできたわけですけれども、そういう司法改革を以前からやっているわけです。

 だから、今回の総務局長のヒアリングは、具体的な定員のところから入っているけれども、それはその前の法務省官房長の基本的な司法改革に関する考え方を受けてのことです。法務省と最高裁との考え方がその点で矛盾しているということはないわけですから、そういう前提で具体的な定員の状況とか増員についての考え方とか、裁判所はどういうような運営改善、改革をやってきたかということを述べているわけであって、しかも今後の増員の方針とか短期的あるいは中長期的な展望という点では、現状で満足しているというようなことは総務局長は一言も言っていない。改革が必要だということを前提として現状を分析し、どういうような方向づけが必要かということを言っているわけですから、単にレジュメの書き方ひとつを取り上げて、司法改革に消極的だとか、これでは司法制度改革審議会に対する態度が不当であるというようなことは、少し短兵急ではないかと思います。

 もう一つ、具体的な話として、時間があれば質問したかったんですが、戦前と違って、現在の事件は複雑化、専門化、大型化していますから、裁判官、検察官だけで処理できるものではない。組織として対応しなければとても対応できないような状況になっています。したがって、裁判所では、裁判官はコートマネージャーとしての書記官と組んで対応していく。そして、検察庁では検事と検察事務官とが組んで、事件を処理せざるを得ないような状況になってきている。そういう点から言うと、裁判所は裁判官、書記官が増員になってきているとは言いながら、裁判官一人に対して書記官3人弱という割合での増員になっている。それなりの努力をしたということかもしれませんけれども、それで果たして今後の改革に対応していけるのかどうか。

 法務検察に至っては、検事は増員されていますけれども、検察事務官は平成8年以降減員されている。そういうような状況で果たして犯罪の複雑化、大型化、専門化、国際化ということに対応できるのか、そういう点については、検察官の増員以上に検察事務官の体制強化ということについても意を用いなければならないのではないかということを質問したかったんですが、その機会を失したので申し上げておきます。

【中坊委員】 そこまで藤田さんがおっしゃるなら、私は具体的な例を1例出させていただきます。これは私の事件なんです。私が原告になっている事件、私と住宅金融債権管理機構が小学館というところを相手取って名誉毀損で裁判を起こしています。そして、ついこの2月の中ごろに、1年余りで結審になりました。

 というのは、我々原告の証人を調べる必要までもないということで、被告の証人だけ調べて、それで結審になったので、我々の方の主張は恐らく認められると思っておるんですけれども、それにしても、問題は、それが2月に結審になって、判決言い渡し日がいつだと思われますか。6月の中ごろなんです。今の東京地裁の裁判官はこの1年余りやって結審した事件の判決言い渡しが4か月先なんですよ。こんなのが、それは裁判官が足りている。合理化して足りているというようなことから、常識的と言えるかどうか。それは余りにも今の裁判所のおっしゃっていることは実際と異なってしまっている。4か月先に判決を言い渡す。しかも民事訴訟法には口頭弁論終結後、2週間以内に判決を言い渡すと書いてあった。それが新民訴になって2か月以内と延ばした。逆に裁判官が自分の労苦するところだけを2か月延ばしちゃったんです。それでまた今度は、そのときから特別何か難しい事件は延期できると書いてある、というのを適用したんでしょうがそんな難しい事件じゃないのですよ。

 しかし、裁判官の数だって、おっしゃるように限界になって、個々の裁判官が本当に御苦労いただいています。私はその裁判官が特に怠けていると思わない。だから、本当に裁判官も不足しているんです、現在の状況では。そうしたら、もっと大幅にということをおっしゃっていただかないと困る。これは、裁判所本人が言ってもいないのに、審議会が抽象的にだけ言っているなんていうことを言われると、非常に私は心外であるし、審議会そのものの答申の信頼性が問われている。ヒアリングされた最高裁は、人員はこういうふうにして効率化して、合理化して統廃合したりして上手にやって、そこそこよくやっているとおっしゃっておられたのでは、私は審議そのものが、我々がそれでは、そこをこれから、そうではないだろうと、今、私が言っているようなことばかりをこれから資料集めてきてどうなりますか。

 だから私は決して、藤田さん、あんたが、さもしていないなんて言っているわけではない。しかし、本当に国民のためにやっているこの審議会が、もっとそういう意味において本当になるように、藤田さんも裁判所とよく話していただいてやらないと、この審議会そのものが私は妙なものになりかねない、これをやはり危惧しますね。

【髙木委員】 今日、来ていただいて、御質問したって答えてもらえません。御存じないということで答えなかったということで受け止めざるを得ないんだろうけれども、そういう答えをなさる人を呼んでも意味がないと思った。今日の話聞いてがっかりした。

 これは失礼になってもいかぬけれども、人事局給与課長というのは、全然そういうことに関わっていない人なのか、職務分掌規定がどういうふうにできているのか、その辺も含めて、お答えは、後で議事録起こしていただければ、私がとんちんかんな受け取り方になっているかどうか知りませんが、これ以上言うと言葉が滑っちゃうのでやめますけれども、平たく言えば失礼ではないかと私は思いました。

【竹下会長代理】 中坊委員のおっしゃった点なのですが、非常に重大な問題で、この審議会が、今後、十分機能していかないのではないかという危惧を表明されたので、これは私の立場上、黙っているわけにはまいりませんので、申し上げたいと思うのです。

 確かに、本日の中山総務局長の御説明は、中坊委員のように受け取られる恐れのあるようなところがあったと私も思いますけれども、全体としては決して、裁判官の人員はこれで十分だということを言っておられるわけではないし、それから、最高裁判所の今回の司法制度改革に対する基本的な考え方は、昨年末の泉事務総長の報告で示されているわけでございまして、本日の中山総務局長の言葉だけでそう判断されるのはやはり早計ではないかと思います。

 裁判所として、全体的なことは前から言われていることでございますから、今、直ちに最高裁判所は司法改革に消極的であるとおっしゃられるのは、適切ではないのではないかと思いますので、それだけ申し上げておきます。

【石井委員】 さっき水原先生からお話がありましたが、私も全く同感です。途中で打ち切るというのはもったいないと思います。ただ、会長が審議の進行に大変苦労していらっしゃるのもよく分かります。これは私の個人的な見解ですが、打ち切っていただくのがおしい場合と、打ち切っていただかないと困る場合の両方のケースがあり、そこが大変辛いところなのです。今日もお昼で終わるということになっておりましたので、それでは人に、午後1時に会いましょうということに決めたわけです。それを、ここでちょっと質問が増えたからといって、どんどん時間が延びていったら他の関係ない人にも大変な迷惑を掛けてしまいます。

 ビジネスに携わっている者として、会社の仕事は、どうしてもビジネス・アワーで考えなくてはなりません。そのような状況を踏まえて、以前にもこの審議会の開催時間のことを申し上げて、その時取り上げていただけなかったことを、またここで蒸し返すのもちょっとどうかと思うのですが、なるべく夕方からやっていただけたらと思います。そうすれば、午前1時になっても午前2時になっても好きなだけ質問して、夜明けまでやっていただくことも可能ですので、予定を気にせずに済むと思います。それはもちろん毎回真夜中までやるという意味ではないんですが、そうしていただけるとこちらも大変助かります。ビジネス・アワーを審議会に大方取られてしまうと、こちらとしては大変困ることになりますので、その辺も少しは御勘案いただければと思います。

【佐藤会長】 いろいろ御意見、御感想を賜りましたが、その中の問題によっては、今後、民事司法の在り方、刑事司法の在り方のところで、さらに立ち入って御議論いただくべき事柄があると思います。そこでまた重ねてヒアリングということもございましょう。それから、審議は今度いよいよ、ほぼ毎週になっていくわけですが、それでも足らないのではないかということで、後で集中審議のことについても御相談申し上げなければならないということでありまして、非常にタイトな中で、できるだけ皆さんの御意見を踏まえていきたいと思っております。それぞれおっしゃっていただいたところのお気持ちはよく分かりますが、今申し上げた趣旨を御理解いただいて、今後とも御協力賜りたいと存じます。

 それで、今日の段階では、既に認識が一致したということを踏まえて、こういうようにまとめさせていただいてよろしゅうございましょうか。先ほどの会長代理のお話にもありますように、最高裁判所も決して大幅増員に消極的なわけではなかろうというように私も受け止めておりまして、そこで、今日はこういうように私どもとして理解するということでいかがでございましょうか。

 まず、司法の制度的基盤について充実強化を図らなければいけない。これは当然のことでありますが、そのためには人的基盤の充実強化が必要だということは、これまでいろいろ私ども議論してきたところであり、委員の皆様も意見が一致していらっしゃる。そして、司法制度の直接の担い手である弁護士、裁判官、検察官の大幅な増員が必要であるということ、これも既に明確な私どもの認識になっていると思います。

 そして、さらに、今日のヒアリングを踏まえますと、裁判所及び検察庁については、裁判官、検察官だけではなくて、先ほどの藤田委員のお話にもありましたように裁判所の職員、それから検察事務官も増加させる必要がある、その体制を強化しなければならないという点についても、今日のヒアリングを踏まえて、私どもとしてはっきり確認できるところではなかろうかというように考える次第でありますが、そういう私どもの認識としてまとめるということでよろしゅうございましょうか。

【鳥居委員】 今、会長がまとめてくださったので私は結構だと思いますが、先ほど官房長が、最後の後半で御発言なさったことは、かなり重視した方がいいのではないか。それは定員の問題だけではないんだと、質の問題であるとおっしゃいまして、その事例として国際金融、インターネット、先端知識ということを言っておられたんです。この質が問われているのは、実は事務官を上質にすればいいというだけのものではなくて、検事自身、それから裁判官自身が国際金融や、それから先端的な知識についてのある種の特別の訓練を受けている状態をこれからつくらないといけない。それこそまさにロースクール問題に戻ってくる問題で、そしてまた一元化の問題にも戻ってくる問題で、それを事務官の先端知識を強化すればいいというふうに読み取られないように、御配慮をいただきたいと思います。

【佐藤会長】 その辺は次にまとめるときに。

【中坊委員】 だから、今、会長がおっしゃっていただいたことの中で、大幅増員だけではなくて、充実強化ということとさえ強調しておけば、おおむね今、鳥居さんがおっしゃったことも入ってくると思うから。

【佐藤会長】 おっしゃることは全く私も同感です。

【中坊委員】 これは全部に接続していますから、私たち弁護士自身の改革もそこで必要なんですよ。

【佐藤会長】 すべてに共通すると思いますね。

【鳥居委員】 そうですね。弁護士も質の水準を上げてもらわないといけませんから。

【水原委員】 御指摘のとおりでございまして、大幅増員だけではなくて、充実強化、質も量もともにということで、是非。

 それから、事務官の問題で、鳥居委員から御発言がございましたが、検察庁としては検察事務官にそういうことを勉強させるのではなくて、これは自ら検事が学ばなければならないということで、あくまでも検察庁の場合は、検察権行使は検事、検察官でございます。事務官はそれの補助機能でございます。それで、ドイツの場合は、検察官が捜査を行う際には、警察官も自由に使うことができますけれども、日本の場合は全く今のところは使えないという状況になりますと、検察庁で行う捜査の補助機関は、検察事務官しかいないわけで、先ほど藤田委員から御発言いただきまして大変ありがたかったんです。私も言いたかったんです。やはり検察事務官のより多くの増員というのは喫緊の課題だろうということを是非お願いしておきます。

【佐藤会長】 それはおよそ日本の仕組みにかかわる問題ですね。大学もそういうところがあるんですけれども、話は広げませんが、何かポストだけ増やせばいいというように考えられがちなんですね。支援体制と一体となってはじめてそれが力を発揮するという、ここも非常に大事な点かと思いますので、その点も含めて、25日御相談申し上げる文章で少し考えたいと思っております。

 それと、但木官房長が最後の方でちょっとおっしゃったことですけれども、それだけではなくて、民事裁判の執行に携わる人たち、あるいは刑事裁判の執行を行う矯正・保護関係の人たちとか、そういう面についても少し目配りする必要がある。今のは直接のものですけれども、それ以外の点についても、司法の強化というのであれば、そこについても目配りが必要だということについても、御異論はないと思いますけれども、そういう認識でよろしゅうございますか。

(「はい」という声あり)

【佐藤会長】 どうもありがとうございました。

 先ほど申し上げたことですけれども、司法改革と行政改革とは、何かちょっと別のベクトルというように受け取られがちではあるんですけれども、私の頭の中では一つの思想としてつながっている話だというように考えております。それは、お前個人の考えだと言われるとちょっとつらいんですけれども、私は行政改革の審議に携ってずっとそういう思いでまいりました。司法の拡充強化、充実強化ということは、行政改革そのものの中に入っているんだと。

 そうだとしますと、最初に事務局長から御説明いただいたように、公務員の定員削減、定員管理の観点でほかのものと同じようにとらえられるということになりますと、審議会として充実強化が必要だと言っても、非常にちぐはぐなことになる、審議会としてはなはだ困る結果になるというように思っておりますので、その辺は今日の我々の認識を踏まえまして、それを文章化して、政府のしかるべきところにお伝えしたい。我々の審議が将来意味を持つということにしようとするならば、さっき私が申し上げたような考え方で受け止めて御理解していただきたいということを、何らかの形で-申し入れると言うと言葉が強いかもしれませんが-お伝えする必要があるかなと思っておりますが。

【中坊委員】 そこまでくると、だからさっきから私の言っているように、審議会が幾ら言っても元のところが、局長がおっしゃるように、こういう人事はこうだから人は絶対要りません。言ってもいないのに、我々の方はこうでありますと言っておっても、向こうは、全体を削減しようといっている最中に、私のとこだけ逆に増やせと言っているんだけれども、元は合理化でそこそこやってまんのやと言っているのでは。

【佐藤会長】 今まで一生懸命やってきたんだ、しかし足らないんだと、むしろそちらの方に。

【中坊委員】 そこをもう少しね。だから、私が言うのは、裁判所自体がもっとその意味において増員とか質の向上、その他のことに関して、あそこだって執行官も全部含んでいるんだから、もっと積極姿勢を出していただかないと。よそもみんな司法は増員してくださいと。待ってくれているのと違うんだから、相当アゲインストの風の中に我々が今いて、それを実現しないといけないということを言っているんだから。相当程度私は一遍審議会の会長や会長代理が裁判所のしかるべき人と、この審議会の今までの在り方についてもっと話をしてもらって、積極性を出してもらえるような話し合いにならないと。このままいくと、我々だけが一人進んでおって、非常に何かちぐはぐのような。

 だけど、最高裁のおっしゃるのも分かるんですよ。最高裁はむしろ最初からおっしゃっているんだけれども、現状を前提としてという発想に非常にお立ちになっているわけですよ。だから、現状を説明しています。現状をこう言っていますと言いはる。

 だから、その視点が、21世紀における我が国司法の果たす役割と、この未来の問題についての視点がやや薄いんですよ。だから、どうしてもすべてが現状、現状ということを前提にした議論になってくる。そういうような状況で我々の審議会が進むのかどうかということについて、もう一度我々は考えないと。私らが全員がということなんだから、一応、会長や会長代理とでもよく話し合っていただいて、やはり打って一丸となって、政府に対しても要求しなければ。一部で言っても、足元が崩れているようでは、これは何を言っても、それは無理に押さえつけて、これはこう解釈しますなんと言ってやっておったものが、そんなもの迫力があるわけないですよ、どこへ行っても。

【佐藤会長】 御趣旨は分かりました。最高裁も決して増員、充実強化をしなくていいと言っているわけではないので、中坊委員の御指摘の趣旨に関し何らかのコミュニケーションを図っていきたいと思います。

【水原委員】 今の関係ですが、やはり事務総長が前にここへ来られて、やはり増員が必要だというふうにおっしゃっておられました。だから、今日のヒアリングの際の内容がずばりと増員についておっしゃっておられなかったんだけれども、今までの全体から見るならば、今、裁判所としても増員がどうしても必要なんだという趣旨ではごさいませんでしょうか。私はそのように理解いたしました。

【佐藤会長】 もう少し迫力が出るようにというのが、中坊委員のおっしゃりたいことなんでしょう。

【水原委員】 それともう一つは定員の問題ですけれども、官公庁の増員要求、査定はほとんど横並びでございます。どこに何が必要なのか、どこに何が必要でなくなったのかということの審査はほとんどやりません。一律に何%。今度も一律に20%か25%切ると、そういう極めて形式的な行政のやり方、これについて相当厳しく御指弾といいましょうか、御要望の際に言っていただきたい。本当に必要なところはどこかと、もう必要でなくなっているところはどこだというきめ細かい視点で御検討いただくようにお願いいたします。

【佐藤会長】 顧問会議では折に触れて、定員削減にはめりはりを付ける必要があると申してきました。定員削減というと、行政の習性なのかどうかよく分かりませんが、すぐ一律何%というようになりがちなんですけれども、めりはりを付ける必要があると繰り返しいろいろな機会に申し上げてきましたけれども、御趣旨は私個人としてもよく分かっているつもりですので、御趣旨を踏まえて、申し入れをどういう形でするのかも含めまして、会長代理と御相談して、25日、次の審議会で、重ねてお諮りしたいというように思っております。

【事務局長】 今の水原委員の御指摘なんですが、総務庁になり代って、若干言っておかなければ、私の務めも果たせないと思うんですが、定員管理の仕組み、ここに書かれてありますとおり、先ほど説明いたしましたとおり、更に詳しくは言いませんけれども、別に各省庁一律25%削減という趣旨ではなしに、めりはりのきいた削減という枠を考えているはずでございます。

【佐藤会長】 事務局長の御説明のとおりなんですけれども、水原委員の御指摘の点は分からないではありませんので、それを踏まえてやらせていただきます。

 この件はこれで終わらせていただきます。どうもありがとうございました。

 それで、時間ですが、これまた水原委員のお怒りを受けるかもしれませんけれども、実は、この件は11時ちょっと過ぎぐらいでと思っておったんですけれども、随分超過してしまいました。休憩を10分はさんで、藤田委員にお願いしようと思っておったんですけれども、どうしましょうか。今日お話しいただかないと次の25日では難しくなりますので、もしお許しいただければ、もう休憩しないで引き続きやらせていただきたいと思います。

【藤田委員】 ごく手短に15分か20分で海外調査の予備知識という点に限定して、4か国の陪審・参審制度についてだけの御紹介をしたいと思いますが。

【佐藤会長】 よろしゅうございますか。せっかく入念に御準備いただいたのに申し訳ありません。

 では、議事の進め方も、休憩しないでやっていくということでよろしゅうございますか。

 それでは、藤田委員、すみませんが、よろしくお願いします。

【藤田委員】 それでは、「『国民の司法参加』についての論点整理(参考資料)」というものをお配りしてございますけれども、国民が積極的に司法に参加していく、他律的事前規制社会から、自律的な事後救済社会へ転換する、主権者としての国民が司法機能の発揮に能動的に参加していくことが求められるということが国民の司法参加の意義付けでございます。

 したがって、現在、国民の司法参加の制度としてあります調停委員、司法委員、参与員、検察審査会、保護司というような制度もございますけれども、それについて充実強化を図るとともに、陪審・参審については、歴史的・文化的な背景事情や制度的・実際的な諸条件に留意しつつ、導入の当否を検討すべきであるとされたわけでございまして、これがマクロ的な視点からの国民の司法参加の司法改革における意義でございます。

 そこで、陪審・参審制度、これが今回の国民の司法参加についての重要な中心的なテーマになろうかと思います。

 陪審制度とは、資料1の1ページにございますが、もう十分に御承知の方も多いと思いますけれども、予備学習という点で申し上げますので、もし正確でない点があれば、御指摘いただければと思います。

 陪審と申しますのは、市民から無作為に選ばれた陪審員が、職業裁判官から独立して-これが参審と違うところでございますが-事実認定を行うもの、刑事事件では、ギルティー・オア・ノット・ギルティーについての判断を行うわけでありまして、小陪審と申します。

 これに対して大陪審というのは、刑事事件で起訴を相当するに足りるだけの証拠があるかどうかを判断するものでございます。小陪審、ぺティ・ジュリーは審理陪審、判決陪審とも申しますが、大陪審、グランド・ジュリーは起訴陪審とも申しまして、起訴するかどうかを決める陪審であります。大と小は陪審員の数によるわけでありまして、小陪審はおおむね12人の陪審員、大陪審は現在アメリカでも行われているわけでありますが、16人ないし23人ぐらいの構成ということでございます。

 そこで、現在各国における陪審・参審制度がどうなっているかというのが資料2の3ページでございますけれども、陪審を採用しているのが10か国、参審が12か国、両制度とも採用している国もスウェーデンなど9か国ございます。両制度とも採用してないのが18か国であります。先進7か国で見ますと、アメリカ、イギリス、カナダの英米法系の3か国は陪審でありますし、ドイツ、フランス、イタリアの大陸法系の3国は参審制度を取っております。

 世界の陪審制度をリードしているのはアメリカでございまして、一説によると世界の陪審の9割はアメリカで行われているというようなことを言う学者もいるようであります。アメリカの陪審制度の概要でありますが、9ページの4を御覧いただきます。沿革は、イギリスの植民地時代に、イギリスから来た施政官の恣意的な裁判に対する反発から陪審制度が起きてきたと言われておりますが、そこら辺は法制史的なことでございます。

 具体的な話に入りまして、陪審員の構成は資料6の15ページであります。一応大陪審は除きまして、小陪審の話を致しますが、市民からランダム・サンプリングで選ばれた陪審員の合議体であります。刑事事件、民事事件のトライアルという正式事実審理において、裁判官から独立して事実認定を担当する機関であります。伝統的には12人の陪審員で構成されております。評決については全員一致が要件とされていますが、刑事の死刑事件等の重大事件については12人が維持されておりますけれども、ある範囲内の事件について、12人では非効率的ということで、人数を減少するとか、あるいは全員一致を要件としない、と申しましても、12人中11人の多数を必要とするという程度の特別多数決のようでありますけれども、そういうような構成及び意思決定の状況になっております。

 対象は、刑事事件については10ページに表がございます。刑事については、「重大な犯罪」については、陪審裁判を受ける権利が連邦憲法上保障されております。しかし、被告人が裁判所の承認と検察官の同意を得て権利を放棄すれば、裁判官による裁判が行われるということであります。民事についても、訴額20ドルを超えるコモンロー上の訴訟について陪審裁判が保障されているというようなことでございます。

 アメリカでは、事件数から言えば、連邦裁判所よりも州裁判所の方がずっと多いわけでありますけれども、陪審裁判を受ける連邦憲法上の権利は、刑事については保障されておりますけれども、民事については各州の憲法によって保障されているということであります。

 実際に陪審裁判が行われている割合は、刑事では5.2%、民事では1.7%とありますけれども、これはアメリカではアレインメイトという制度がございまして、刑事では有罪答弁がされると直ちに量刑審理、判決の言い渡しということになりまして、それが全体の82.3%を占めているということがございますし、民事でもトライアルの前、プリトライアルの前の段階で、82.3%の事件が終結している。多くは和解でありますが、そういうこととの関連でこういう数字になっております。

 陪審員の資格及び選定は16ページにございます。合衆国市民であることとか、年齢の制限等々がございますし、英語が話せること。このころはヒスパニック系でスペイン語しか話せないというような国民も増えてきているということもございますから、十分に審理を理解できなくては困りますので、このような資格要件が定められているわけであります。

 選挙人名簿等からランダム・サンプリングで選出されまして、陪審員候補者名簿がつくられます。これの中から一つの裁判所当たり、1日に何百人かの候補者が呼び出されて待機する。その中から陪審員を選定する。12人の陪審員と予備の陪審員を選定するわけでありますが、検察官、弁護人の双方から、理由付忌避、例えば、被告人と親しいとか親族関係があるとかというようなことでございますが、忌避できます。さらに、アメリカの陪審の特徴として、理由がなくても専断的忌避、理由を言わないで忌避することができるという制度がございまして、これがかなり訴訟の勝敗等に直結しますので、その手続に相当な日時を掛けているのがアメリカの陪審制度の一つの特徴のようであります。

 事実審理は、連日開廷で行われます。拘束するわけでありますし、大きな負担を掛けるので集中してやらなければいけない。書面ではなくて、直接の証人尋問が中心となって行われる。いろいろ不正確な伝聞証拠等を排除するというような必要もありますので、非常に複雑な証拠法が形成されているということのようであります。

 説示と評議は19ページです。説示は事実認定を行う陪審に対して、裁判官が事件に必要とされる法律について説明する手続であります。ただ、イギリスと違う一つの特色は、裁判官が事実認定についての自分の考え、心証を言うと違法となり、上級審で破棄されることになりますので、一般的、抽象的な説明しかしないということであります。陪審員による評議は、密室で外部から遮断されて行われる。大分古い映画ですが、『十二人の怒れる男』という白黒の映画で、評議室に外から鍵を掛けるシーンが出ておりましたけれども、評議では外部の者とは絶対に接触してはならないということであります。

 評決に至るまで、第三者と話してはいけないし、新聞やテレビを見てはいけないということでありますが、アメリカではイギリスのような厳格な報道規制が行われておりませんので、当然犯罪報道は新聞・テレビで盛んに報道されるわけであります。それは見てはいけないという建前になっておりまして、見たということになると、陪審員の資格を失うとか、陪審員の間で議論したりすると、陪審員の選定をやり直すというようなことになるという建前になっているようであります。

 評決は、全員一致でありまして、先ほど申し上げましたが、例外的に特別多数決というケースも認められていないわけではありませんが、原則的に全員一致で、全員一致に至らなければ、もう一度陪審員選定からやり直すということになります。

 評決は、ギルティー・オア・ノット・ギルティーの結論だけでありまして、その理由は示されません。国民の代表者である陪審に裁かれたのだから、その理由は要らないし、後で言いますように、上訴ということを認める必要がないという考え方であります。

 有罪という評決がありますと、裁判官が量刑審理を行って、最終的な刑の宣告を行います。

 例外的に証拠判断が明らかに誤っているとか、あるいは懲罰的損害賠償の制度がございますので、明らかに過大、あるいは過小のときにはニュートライアルで再審理する道もあるようであります。

 上訴は、20ページにございまして、陪審員による事実認定に関して上訴することは許されません。1審判決に対する上訴は法律問題を理由する場合に限られます。なお、刑事事件については、検察官側からの上訴は、全く認められないか、認められるとしても例外的であります。

 大急ぎでありますが、アメリカはこの程度にいたしまして、次は英国の陪審制度、21ページ、資料7であります。これも沿革的には専制君主の言いなりになっている裁判官に対する反発から陪審制度が出てきたと言われています。

 対象は、21~22ページにございますが、刑事法院(クラウン・コート)におきまして、正式の起訴犯罪、殺人、放火、強姦、これは重大犯罪でありますが、中間的犯罪、詐欺、窃盗のうち被告人がノット・ギルティーと無罪答弁をした事件について行われます。

 かつては起訴陪審、大陪審も行われておりましたが、1933年に廃止されました。民事陪審は、カウンティー・コートとハイ・コート・クィーンズ・ベンチ、県裁判所と高等法院女王座部において、名誉棄損、悪意訴追、不法監禁というような限定された事件だけに認められているということでありますけれども、このパーセンテージは高等法院で1%未満、県裁判所においては0.1%未満で、ほとんど民事についてはごくわずか例外的にしか陪審裁判は行われていないというのがイギリスの現状のようであります。

 陪審員の資格選定は26ページにございます。これも年齢とか選挙人として登録されているとか、居住要件等がございますし、前科等があれば欠格ということになります。選定に際しましては、理由付き忌避が認められているだけであって、かつてはアメリカと同様に専断的忌避、無条件忌避が認められていましたが、乱用が著しいということで廃止されました。理由付き忌避もほとんど実際には行われていないというのが現状だそうであります。

 説示及び評議は28ページにございます。これはアメリカの陪審裁判と実質的に違う重要な点でありますけれども、イギリスと申しましても、イングランドとウェールズでありますけれども、アメリカのそれとは異なって、裁判官が検討すべき争点を積極的に指摘し、証拠についても自らの評価を加えながらポイントを要約していく形で行われている。アメリカではそういうことをやると違法として上訴審で破棄されるということを先ほど申し上げましたけれども、イギリスでは裁判官がかなりリードしていくという形で行われている。法律家でない陪審員が適正に判断できるように裁判官がリードするのだという考え方だそうであります。

 評議は、全員一致が原則でありますけれども、現在は例外が認められまして、相当と考える時間をかけて協議しても全員一致に至らなければ、多数決-と申しましても、12人中10人というかなり厳しい多数決でありますが-評決を認めることとされました。

 かつては陪審員は評決に至るまで隔離されていたようでありますが、その後、裁判官の判断によって帰宅が許可できるようになったとのことであります。アメリカでも特別な事件については隔離するようでありまして、O.J.シンプソン事件では、資料の(注)にありますけれども、9か月ぐらい隔離された例がありますが、一般的には隔離する例は少ないようであります。

 上訴は、陪審員による事実認定に対して上訴することは許されない、これはアメリカと同じであります。

 報道規制は、イギリスでは非常に厳しくて、被疑者に対する無令状逮捕、逮捕状の発付、あるいは正式起訴状の送達があると、以後、裁判手続終了まで事件に関する報道は原則として禁止される。公判廷の状況をそのまま客観的に報道することは許されますけれども、推測や有罪、無罪についての意見等については報道することは許されないということであります。

 次に参審制度についてでありますが、ドイツの参審制度は資料10の1、2、3、29ページ以下にございます。

 ドイツでは、当初フランスの影響を受けて、陪審制度が導入されたわけでありますが、その後、参審制度が考案され、両方が併存した後に陪審裁判は実質的に廃止されて、参審裁判所がこれに代わりました。その理由についてはいろいろな見方がありまして、そのようになるまでには非常に激しい論争が行われたようであります。

 参審の対象は29ページ以下でありますが、刑事事件については、区裁判所の軽罪事件、2年、これは1年以下だったのが2年以下になったようでありますが、そういう事件を除いた軽罪、あるいは地方裁判所における区裁判所の裁判に対する控訴事件、重大事件について参審裁判が行われます。

 これはアメリカのように陪審裁判を辞退することはできず、選択権はありませんし、自白した事件についても参審裁判が行われるわけであります。

 民事の通常事件については、原則として職業裁判官のみでありますが、商事事件と農業事件について、職業裁判官の陪席裁判官として、非法律家の名誉職裁判官が関与します。

 それから、労働裁判所ですが、控訴審が高等労働裁判所、上告審が連邦労働裁判所でありますが、これには職業裁判官1人ないし3人に、労使各1人の名誉職裁判官が加わります。

 参審員の資格につきましては、42ページです。国籍、年齢、前科のないこと、居住期間等の要件及び欠格事由が定められております。

 参審員の任期は4年でありまして、市町村が割り当てられた人数の参審員候補者を登載した名簿を作成します。名簿作成に当たっては、議会の3分の2の同意を得る必要があります。各裁判所の参審員選任委員会が参審員を選定して参審員名簿に登載し、年に一度くじによって開廷日が割り当てられる。地方公共団体が関与するわけでありますが、ランダム・サンプリングではありません。フランスと違うところであります。選定をして参審員を選ぶということになっております。

 審理及び評議ですが、ドイツの刑事の公判手続の特色は職権主義でありまして、全ての捜査記録は裁判所に引き継がれて、裁判官は事前に記録を精査するのでありますが、それはあくまで訴訟指揮の参考とするためでありまして、心証は公判での証拠調べによります。参審員は予断を持たないように、事前に捜査記録を見ないということであります。直接主義が徹底しており、書証は原則として証拠になりません。

 参審員はフランスでも同様でありますけれども、職業裁判官と同一の権限を有するわけでありまして、共同で職務を行います。評議に際しても合議体の一員として、陪審と違いまして、事実認定のみならず、量刑にも関与して、職業裁判官と同等の評決権を有します。有罪判決には3分の2の多数が必要でありまして、参審員二人が反対すると、職業裁判官だけでは有罪にできないということになります。

 上訴は46ページに書いてございまして、地方裁判所の1審判決に対しては、職業裁判官のみから成る連邦通常裁判所への上告が認められる。上告理由は法律問題に限られます。

 区裁判所の判決に対する控訴は、職業裁判官と参審員から成る地方裁判所に対して認められ、事実問題、法律問題ともに上訴理由となるということであります。

 なお、念のため申しておきますと、ドイツでは裁判所が5系統に分かれておりまして、通常の司法裁判所のほかに、行政、労働、社会、財政の4系統の裁判所があります。先ほど労働裁判所に名誉職裁判官が入るというお話をいたしましたけれども、日本と違いまして、そういうような構成になっております。日本も戦前は行政裁判所が行政権の中に設けられておりました。

 続いてフランスの参審制度でありますが、47ページ、資料13以下であります。

 フランス革命に起因して、陪審制度が取り入れられたのでありますが、起訴陪審がまず廃止されました。判決陪審も名称は維持されていますが、現在は裁判官と共同して評決を行うことになりましたので、実質は参審ということになります。

 フランスでは、犯罪は重罪、軽罪、違警罪と3つに分けられていますが、重罪を管轄する重罪院においてのみ、3人の職業裁判官と9人の参審員による参審裁判が行われます。

 そのほか、労働事件については、労使各二人以上の非職業裁判官のみによる労働審判所が管轄する。1対1になったらどうなるのだということですが、職業裁判官が一人加わって結論を出すということになっております。2審の控訴院、3審の破棄院はいずれも職業裁判官のみによって構成されています。

 商事裁判所は、これも経済界の人である非職業裁判官のみによって構成されておりますが、現在職業裁判官を関与させようという法律改正の動きがあるとのことであります。

 参審員の資格及び選定は、56ページ以下にございます。やはり国籍、年齢、住所、その他の資格要件や欠格事由が定められておりますが、各市町村において選挙人名簿に基づいて、公開の抽選によって予備名簿を作成する。控訴院長らをメンバーとする年次名簿作成委員会が、これまた公開抽選によって、年次刑事参審名簿を作成している。そして、各開廷期の前に、公開の抽選によって参審員候補者を選出する。ドイツとはやり方が違っております。

 審議及び評議は次の58ページにございますが、重罪事件については、フランスでは戦前の日本と同じで、予審が行われておりました。予審判事が事件を全部調べまして、その資料が公判裁判所に来る。裁判長は公判開廷以前に記録を精査して、審理計画を立てますが、審理それ自体は徹底した直接主義、口頭主義で、供述調書は例外的な場合でなければ朗読することはできないとされているようです。

 評議は3人の裁判官と9人の参審員によって行われ、被告人に不利な評決は少なくとも8票の多数によることが必要とされておりますので、参審員の9人の過半数5人が無罪とすると、裁判官全員が有罪という意見でも被告人は無罪となります。

 重罪院の判決に対する上訴は59ページで、事実問題について控訴することはできず、法律違反の場合に限り、コンセイユ・デタに対して許されるだけであります。

 以上が今後海外調査に出る場合の予備知識として必要な陪審、参審制度でありますが、我が国においても、陪審制度が一時行われていたというのが、その次の我が国の陪審法についての説明であります。

 大正デモクラシーを背景として、政党主導で推進されたということであります。原敬内閣の成立のときに準備が始められまして、高橋是清内閣のときに成立しました。

 法定陪審事件は重罪事件、すなわち法定刑が死刑又は無期の懲役・禁固の事件でありましたけれども、被告人の辞退が認められました。請求陪審事件は、長期3年を超える有期の懲役・禁固の事件でありますが、被告人が請求した場合に陪審裁判が行われる。ただ、請求を撤回することも可能だったということであります。治安維持法事件等の事件については、陪審事件から除外されておりました。

 陪審員の資格及び選定は66ページ以下でありますが、日本臣民で、30歳以上の男子、居住期間、継続して3年間でしたか、国税3円以上を納めていなければいけないという納税要件がありまして、選挙権を持っている者の1割強ぐらいしか陪審員の資格がなかったようであります。読み書きもできなければいけないという要件もございました。

 陪審員の選定は、市町村長が陪審資格者名簿から抽選で選定して、陪審員候補者名簿を送ると。その中から抽選で、1件につき36人の陪審員を選任する。忌避理由を陳述せずに一定人数を忌避することができました。無条件忌避であります。

 事実審理、証拠調べは、原則として直接審理主義で書面に証拠能力が与えられるのは例外的であったとありますが、供述調書については、証人が死亡したとか海外へ行っているとか、あるいは公判廷での供述と供述調書の供述が食い違っているような場合には、例外的に採用できるというような規定が陪審法にあるようであります。

 説示及び評議は67ページでありまして、裁判長は犯罪の構成に関し、留意すべき法律上の論点、問題となるべき事実、証拠の要領について、説示を行うとされましたけれども、証拠の信用性とか罪責の有無に関して意見を表示することはできないものとされた。アメリカ型であります。

 評議は隔離して行われます。私などが駆け出しのときには、地方へ行きますと陪審宿舎がございました。公判が2日以上にわたるときは、宿舎に宿泊しなければならなかったのであります。評決はアメリカ、イギリスとは違い、過半数の多数決によりました。

 犯罪事実ありという答申の場合には、裁判官が量刑を審理して有罪判決を言い渡し、犯罪事実なしとの答申を受けた場合には、無罪判決となります。

 また、日本の陪審制度の特徴でありますが、答申は裁判所を拘束せず、裁判所が陪審の答申を不当と認めたときは、その後の手続を中止して、やり直し、新たに陪審の評議に付することができました。484件のうち、陪審の更新がされたのは24件ではありますけれども、裁判官に対する拘束力がないというのが、かつての日本の陪審制度の特色でありました。

 「上訴」については、68ページであります。判決に対して控訴はできず、適法に陪審を構成しなかった場合など、法令違反を理由とする上告のみが許されたということであります。

 その後、484件が昭和18年までに行われましたけれども、昭和13年以降は年間一桁に減少しました。原因についてはいろいろ論議がありますが、折からの戦時体制もあって、昭和18年に施行停止になりました。

 検討課題がいろいろございますが、これはもう海外調査の予備知識という点では、緊急性がやや落ちると思いますので、ここに書いてあるようないろいろな検討課題、問題点等があるということだけ申し上げておきます。資料と併せて御覧いただきたいと思います。また、この点につきましては、海外調査から帰ってまいりましてから、石井委員、髙木委員、吉岡委員と意見交換をし、検討することになっておりますので、このときにまでに資料もつくり直しますし、皆さんで御議論いただくときには、もうちょっと内容のあるものをお出しする予定でおります。

 いろいろな論点、意見、アンケート等については、参考資料にございますのでお読みいただければ幸いでございます。

 猛烈なスピードで、大変失礼いたしました。

【佐藤会長】 せっかく入念に御準備いただいたのに、私の不手際で大変申し訳ないようなことになってしまいましたけれども、ありがとうございました。

 また、おしかりを受けるかもしれませんけれども、是非ここだけは聞きたいというようなことがございましたら何ですが、いかがでしょうか。

 海外視察のときに、これを踏まえていろいろ向こうで尋ねる、またお話し合いできる機会があり得ると思いますので、よろしゅうございますか。

 ありがとうございました。

 一応、12時半まで予定しておるんでございますけれども、あと5、6分しかございません。御用のある方は、退席されて結構でございます。

 次に、地方公聴会への御参加と実情視察、それから夏の集中審議についてお諮りしたいと思います。事務局から説明いただけますか。

【事務局長】 今、お手元に資料をお配りしておりますが、それを御覧いただきまして修飾を外しまして、要点だけを申し上げます。

 地方公聴会の福岡が3人で、余りにも少な過ぎますので、ひとつ御協力をしていただきまして、審議会で御配慮していただきたいというふうに思っております。東京は、せっかく東京で行いますので、できましたら全員参加という形で、勿論ほかの御都合のあることをとやかく言うものではございませんが、そういう感覚で御参加いただければというふうに思っております。浜田の実情視察、これも3人しか御希望がないんでありますが、是非もう少し御参加いただければというふうにお願いしたいと思っております。

 集中審議の日程でございますが、委員の皆様に事務局を通じて御都合をお伺いいたしましたところ、全員がそろうというのはなかなか難しいようでございます。しかしながら、①②③で掲げました8月の期間辺りでは、お集まりいただけるんではないかというふうに考えておりますので、この辺りでお決めいただければというふうに思っております。

 以上でございます。

【佐藤会長】 どうもありがとうございました。
まず、地方公聴会と実情視察ですが、福岡の方。
【水原委員】 私が参ります。それから、東京は勿論出席したいと思います。
【佐藤会長】 ありがとうございます。
【藤田委員】 私は、福岡の16日は大学の講義でどうしても抜けられないんですが、17日の公聴会だけなら駆け付けられますが。
【佐藤会長】 では、そうしていただけますか。公聴会だけで結構でございます。どうもありがとうございます。福岡は5人になりますね。次に、浜田の方はいかがでしょうか。
【水原委員】 私が行きます。
【佐藤会長】 そうですか、ありがとうございます。そうしたら4人になりますので、結構かと思います。ありがとうございます。
次に集中審議の方でございますけれども、いかがいたしましょうか。

(日程調整)
【鳥居委員】 これはどこでやるんですか。
【佐藤会長】 場所は都内です。
【鳥居委員】 泊まり込みで、朝から晩まで。
【事務局長】 お泊まりいただいてもいいですし、夜お帰りになっていただいても結構だと思うんですが。とにかく午前、午後とぶっ続けでやっていただく時間を取っていただこうと。

(日程調整)
【佐藤会長】 そんなところでよろしゅうございますか。そうしたら、4日は定例で決まった時間でやると。そして、7日の午後。8日は定例なんですけれども1日やると。9日も1日やるということで決めさせていただきたいと思います。御無理ばっかり申しまして、大変心苦しいところでありますけれども。
事務局の方は、これでよろしいですか。
【事務局長】 そうしますと、4日は定例の時間、3時間ということで。
【佐藤会長】 4日の定例は午後にしていますね。2時から5時までですね。
【事務局長】 はい。
【鳥居委員】 私は、これはもっとインフォーマルな合宿勉強という位置づけにした方が、この際よくまとまるんではないかと思うんですけれども。夏休みのお互いの勉強のために集まるということにしていただけるとと思います。
【佐藤会長】 では、その辺は事務局と相談させてください。どうもありがとうございます。
次に、福岡地方公聴会の方を簡単に御説明いただけますか。

【事務局長】 4月17日、本日締切りで意見発表者を募っておりましたところ、この会議の始まる直前までで17名の申し込みがありました。

 第1回の大阪で応募された方のうち、九州、中国地方からの応募者4名がいらっしゃいますので、その方もいっしょに入れて会長と代理に審査していただこうかなと思います。今日が締切りでございますので、多分まだ集まっているんだろうと思いますので、何名かは今ちょっと確定できませんが、結構集まっていただいております。

 傍聴につきましては、5月17日が締切りでございましてまだまだございます。現在のところ、若干少なくて60名程度しか集まっておりませんが、いつも締切り間際に集まってきますので、大勢の方に来ていただけるものと思っております。以上です。

【佐藤会長】 今、事務局長がおっしゃったように、選定については、前と同じように、会長代理と御相談しながら選ばせていただきたいと思っておりますが、そのようにやらせていただいてよろしゅうございますか。

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】 どうもありがとうございました。次に、配付資料について。

【事務局長】 会議資料一覧表7番目の各界要望書等の中に、裁判所速記官制度を守り司法の充実強化を求める会からの要望書が入っておりますが、これと併せまして、ここに置いてございますが、裁判所速記官制度の充実強化を求める3,000通の署名が、届いていることを披露してほしいということでございますので、披露させていただきます。
その他の資料につきましては、いつものとおりでございまして、特に説明することはございません。

【佐藤会長】 ありがとうございました。最後に、次回の日程の確認でございますけれども、4月25日ですが、前回御承認いただいたように1時半からこの審議室で開催したいというように考えております。日程が非常にタイトになってきていまして、大変心苦しいんですけれども、まず法曹養成の在り方に関して具体的な検討依頼先、検討に際しての留意すべき事項について、取りまとめたペーパーを皆様にお諮りしたいと考えております。

 今日御審議いただきました先ほどの話ですが、裁判所、法務省の人的体制について今日お決めいただいたことをペーパーにして、やはり同じようにお諮りしたいというように考えております。

 そして予定では、これも大変申し訳ない限りなんですけれども、時間が非常に詰まって恐縮なんですが、水原委員にお願いしております「国民の期待に応える刑事司法の在り方」、それから、会長代理と中坊委員と私の3人でまとめるということになっております「法曹一元について」、その二つを海外視察前の勉強会という趣旨でやらせていただければと思っております。

 特に水原委員には、大変恐縮でございますけれども、今日も藤田委員に非常に短時間にお願いしましたけれども、同じような形でお話いただければと思っております。そして、資料の整理とか何かにつきましては、余り厳格にお考えにならず、必要があればまたあとで補充するというぐらいのお気持ちでいかがかと思います。本格的な審議は、海外視察後ということになりますので。一応海外視察前の勉強会という趣旨でお考えいただければ、有り難く思います。私の法曹一元についての話もそう十分な準備もできませんので、文字どおり梗概をお話しするということにならざるを得ませんが、そんな形で御説明させていただきたいと思っています。

【水原委員】 意見を述べさせていただきたいんですけれども、この前の審議の際に、法曹養成の問題について、北村委員から出たと思うんですが、次は30分や40分程度ではないでしょうねというお話がございました。やはり法曹養成にしましても、法曹一元の問題にしましても、勿論国民の期待する刑事司法というのは大事ですけれども、この極めて大きい法曹養成、法曹一元の問題をさっと、法曹養成はもう前にも議論しておりますが、法曹一元の問題についてさっといってしまうというのは、いかがなもんだろうかと。

 そういう意味で、国民の期待に応える刑事司法の問題についても、やはり簡単に材料を提供するだけでは参考にならないのではなかろうかという気がいたします。この際、一つぐらいは先送りしてでもという気がするんですけれども、いかがなもんでございますでしょうか。

 審議を急ぐ余りに、何か我々も質問すべき事項について質問できない。これは、もう会長の議事進行に非協力な立場になるなということで、ついつい抑えるような気になります。これでは先ほど来申し上げますように十分な審議は尽くせないんではなかろうかという気がいたしますので、その点はいかがでございますでしょうか。

【吉岡委員】 賛成です。

【山本委員】 賛成です。

【竹下会長代理】 水原委員の御指摘もごもっともで、どの問題を取りましてもある程度の時間は取って議論すべきだということは重々承知しております。

 ただ、ただいまやっておりますのは、海外視察前の勉強会ということで、いずれ本格的な議論をしていただくという前提でございます。どの一つを取りましても、法曹一元の問題は海外視察後で初めて取り上げる、あるいは刑事司法の問題は帰ってきてからというわけにはまいらないのではないかというのが、会長と私とで相談をさせていただいたときの経緯なのでございますので、御理解をたまわりたいと存じます。

【水原委員】 その問題につきましては、法曹養成でこれだけ、今度は3回目になりますね。3回取るような予定ではなかったわけですね、最初の御発想では。

【佐藤会長】 いや最初から、法曹養成は3回予定しておりました。

【水原委員】 最初では、25日は法曹一元と。

【佐藤会長】 ですから、3回プラスになりますね。

【水原委員】 そうですね。ですから、だんだん押せ押せになってきて、なおかつ私としては十分お尋ねすべきことについて尋ねていないような気がいたしておりますので、それでよろしいのならば、それこそ海外に御視察になられる際のレジュメ的なもので、こういうことになっていますという程度のことで御報告できるならば、それはできないわけではございませんけれども、それでよろしいのかという気持ちでありますし、聞かれて、何だこの程度の報告書、資料しか出さないのかと言われても、これは大変私としても心外でございますので、十分考えていただければと思っております。

【佐藤会長】 そうですね。法曹養成の方と弁護士改革の方はかねて申し上げてきましたように、ある種の方向性を見出したいということで、弁護士改革は2回充て、法曹養成については3回充てて、それでもまだ審議が十分でないというので、25日に、ペーパーと協力依頼先を含めて御審議いただくということにしたわけです。時間は少し取っておりまして、30~40分とかとは考えてはおりません。もう少し取っているつもりです。

 今日の藤田委員のお話と、水原委員にお願いしておりますそれと、法曹一元については、かねて申してきましたように、勉強会という趣旨で考えてきたわけです。視察するときにこの辺が問題になりそうだ、あるいは聞いた方がいいということを知る上で役に立てたいといった趣旨のものとして考えてきたわけです。ですから、本格的な審議は、会長代理が言われたように、帰って来てから、海外視察も踏まえてやろうということなんであります。水原委員は、非常に真剣にお考えになるがゆえにおっしゃっているんだろうと思いますけれども、そういう種類のものと御理解いただけませんでしょうか。

【水原委員】 と言いますのも、「国民の期待に応える刑事司法」というのは、今日国民の司法参加もありましたが、それとの関連も出てまいりましょうし、手続について、それぞれの国情によって違った手続を取っておりますので、それがなぜそういうふうな手続になったのかということが分かっていただかないと、出発する前の勉強会にはならないのではないだろうかという気がいたします。それならば、やはり相当な資料を集めなければいけません。

 実は、いろんなところから、いろんな資料要求をされて、事務当局でも大変オーバーフローになっているようでございまして、十分な資料がそろわないという話も聞いておりますので、資料がほとんどない状態で問題点の提起程度のもので御了解いただけるならば、また詳細は帰ってからということならばよろしゅうございますが、それは各委員がそれで御了解いただけるかということでございます。

【佐藤会長】 その点は、いかがでしょうか。簡単でもお話を聞いた方が有益ではないかという気もしますんで、その程度のものとしてお考えいただけたら。

【中坊委員】 だから私も、今おっしゃるようにすべてのことが、弁護士改革から法曹養成から法曹一元から刑事裁判からみんなが、抽象論的に私たちが論点整理のときに全部が有機的に一体不可分のものであるという表現を使っていましたけれども、それがこのように、今日も陪審の話をしていただくのに、みんなが有機的に結合している。しかも、それぞれの国において非常に差がある。歴史がある。そういう中において、我が国における司法としてはどうあるべきかというのが問題になっているという意味では、こういうような勉強会を重ねたり、あるいは担い手問題でまず弁護士改革から入らせていただいて、法曹養成に至って、大体みんなの共通の認識はなってきていると思うんです。

 だから、今、水原さんおっしゃっていただいたこともよく分かるけれども、この際は一応みんながいかに有機的に結合しておるかということが、お互いに理解できるという状況にならないと、本格的に審議しようと思っても、また切り離して審議はできないわけだから、やはり一通りは当たっておいて、あそこと関連しているんだなということが分かって議論できるという意味では、水原さんにとってはちょっと中途半端になってあれかもしれないけれども、一応事前にしていただくということはそれなりに私は意味があるように思うんです。やはり、そういうふうに予定通りやっていただいて、本格審議を外国から帰ってきてからという既定方針は、そのとおりにしていただいた方がいいんではないですか。だけれど、水原さんの言うことはよく分かるけれどもね。

【佐藤会長】 大変申し訳ない限りで、時間的な余裕がなくて恐縮ですが、勉強会、本当にそういう趣旨のものだというように御理解いただいて、予定どおりやらせていただければありがたいと思います。

【水原委員】 もう一つだけ申し上げますと、従前はレポートしますと、そのレポーターに対してあるべき姿という前提でいろいろ質問がどんどんまいります。そういうことではなくて、今日、藤田委員がなさったような趣旨でということでございますね。

【佐藤会長】 はい。だから、法曹養成と趣旨は違います。

【水原委員】 分かりました。

【佐藤会長】 いろいろと御無理申し上げて恐縮でございますけれども、次回はそういうテーマで、慌ただしいんですけれどもやらせていただきたいと思います。

 本日はどうもありがとうございました。予定よりオーバーして申し訳ありません。