司法制度改革審議会

司法制度改革審議会 第18回議事概要

1 日時 平成12年4月25日(火) 13:30 ~ 18:40
 
2 場所 司法制度改革審議会審議室
 
3 出席者
(委員、敬称略)
佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、井上正仁、北村敬子、髙木 剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本 勝、吉岡初子
(事務局)
樋渡利秋事務局長
 
4 議題
①「裁判所・法務省の人的体制の充実」について
②「法曹養成制度の在り方」について
③「国民の期待に応える刑事司法の在り方」について
④「法曹一元」について
⑤海外実情調査について

5 会議経過

① 「裁判所・法務省の人的体制の充実」について、これまでの審議の結果、委員の認識が一致したと思われる点を会長及び会長代理においてとりまとめた原案が配付され、これに基づき意見交換がなされた。

○ 司法の人的基盤の充実には、隣接法律専門職種をも含めて考えるべきではないか。国際的な対応を考えると、隣接法律専門職種についても学位を取得することが望まれ、法曹養成をどの範囲を対象に考えるかを検討する必要がある。

○ 隣接法律専門職種と弁護士との関係・協働の在り方について、まだ議論されていない。行政改革に伴う定員削減の関係で、法務省・裁判所からのヒアリングに基づき審議した結果をまとめるのであるから、原案のとおりでよいのではないか。

○ 「法務省職員」について人的体制の充実強化を言うのであれば、行政事件訴訟を支える訟務関係職員なども含め法務省職員全般について充実強化を考えるべきではないか。

以上の意見交換を踏まえ、原案が修正され、別紙1のとおり、意見の一致をみた。

② 「法曹養成制度の在り方」について、これまでの審議を踏まえ、会長、会長代理及び井上委員が協議の上とりまとめた「法曹養成制度の在り方に関する審議の状況と今後の審議の進め方について(案)」(以下「審議の進め方」という。)、「検討依頼先について(案)」(別紙3)、「法科大学院構想に関するこれまでの主な意見(参考)」(別紙4)に基づき、意見交換がなされた。

○ 「審議の進め方」は、当審議会が昨年12月にとりまとめた論点整理の内容が十分踏まえられた内容になっていない。もっとその内容を書き込むべき。

○ 「審議の進め方」の(別紙)(3)③~⑤で、司法修習における実務修習と法科大学院での実務的教育との関係はどのようになるのか。④の「司法修習(少なくとも実務修習)」は単に「少なくとも実務修習」とすべき。「審議の進め方」の3ページ目の「少なくとも実務修習は法科大学院における教育とは別に実施するものとすべきであるという点でも基本的に異論はなかった。」部分を、「大方異論はなかった。」に改めてもらいたい。司法研修所は裁判官のリクルートの場になっており、キャリア裁判官の問題とも関係し、その運営主体の問題も検討する必要がある。

○ これまでの議論の結果、司法試験の後に少なくとも実務修習が必要であるという認識で意見が一致したと思われるので、(3)④のような記載にしている。法科大学院の責任の下に実務修習を行うということは現実的ではない。法科大学院では実務のための基礎教育を行うと考えるべきではないか。

○ 法科大学院と司法修習との関係については、検討依頼先での検討結果を受けて審議会でも検討しなければならない。依頼先では専門的な検討をしていただき、利用者の視点からの検討はこちらで行うべきである。

○ 医師国家試験の条件としてインターシップが要求されていたように、法科大学院のカリキュラムの途中で、実務修習を行うという選択肢もあるのではないか。在学中に裁判官がどのような仕事をしているのかを知ることは将来の職業を選択する上でも有益である。

○ 当審議会が、法科大学院構想を法曹三者、大学関係者の検討に委ねることについては、外部から厳しく批判されている。専門家だけの検討では利用者の意見は反映されない。

○ 「審議の進め方」では、「司法修習」、「実務修習」、「司法修習(少なくとも実務修習)」という言葉が使われており分かりにくい。最も広い意味である司法修習で統一してはどうか。

○ 法科大学院で誰を養成するのか(法曹に限るのか、それ以外も含めるのか)、何を教えるのか、教育期間を何年にするのかなどについて議論が詰められていないし、司法修習との関係も詰める必要がある。このような段階で外部に検討を依頼するのは相当でない。また、検討依頼先の構成メンバーは、原案では、当審議会の構成と比べて文部省が入っているかどうかの点で異なるに過ぎない。法曹養成制度は重要な問題であるから、当審議会の夏の集中審議で検討すればよいのではないか。

○ 教育内容、組織についてこのまま当審議会で議論を続けても、難しいのではないか。これらを詰めていくにはたたき台が必要である。養成の対象は、基本的なものとして法曹をまず考え、隣接法律専門職種等その周辺部分は、その次の段階で考えた方がよい。

○ なぜ法科大学院が必要かという点が明らかにされていない。問題点を詰めて検討を依頼しないと相手方も困る。アメリカのように弁護士養成を目的とするかどうかで司法修習の在り方も変わってくる。「審議の進め方」の基本認識の中で、質の問題は詳細に指摘されているが、法曹人口の問題についての論及が不十分である。大幅増加は具体的にどの程度を言うのか。2、3割では大幅とは言わない。自分は、弁護士数を2、3倍にすることも考えている。法曹人口は、法科大学院の数、司法研修所の在り方などと密接に関係するので、あいまいにすべきではない。また、論点は相互に有機的に関連しているのであり、ペーパーを作成する際には、論点整理やこれまでの審議経過を踏まえる必要があるが、「審議の進め方」ではこれが不十分である。弁護士の公益性など我々の認識がこれまでに一致した点は記載すべきである。公益性の点は法科大学院の教員として弁護士を確保することとも関係する。

○ 設置基準の問題以前に、まず法科大学院の実質をどのようなものにするかを検討する必要がある。

○ 大幅増加でという限度で一致しているという認識の下にそのような記載になっている。

○ 法科大学院の設置基準と法曹資格付与関係の基準とを別個に考えるのか、それとも資格付与の点も併せて法科大学院設置基準一本で考えるのかを明確にする必要があるのではないか。

○ 法曹人口の問題は、法曹養成の面と需要の面とから考える必要がある。法曹人口の数字は今後考えなければならないが、まず法曹の質を確保するという観点から法科大学院においてどのような教育が必要なのかを検討すべきである。

以上の意見交換を踏まえ、井上委員において、「審議の進め方」の原案を修文することとされ、その間、検討依頼先を中心に意見交換を行うこととされた。

○ 審議会委員は複数名必要である。大学関係者が5名もいるのは奇異な感じがする。利用者代表も複数名必要である。

○ 専門技術的な検討を短期間に行っていただくことを考えてこのような構成にした。審議会委員1名を入れ、検討結果をフィードバックしてもらい、利用者の立場の人が委員となっている当審議会で議論を行い、それを検討依頼先に伝えてまた検討してもらうなどすれば、利用者代表が入っていない点はカバーできるのではないか。

○ 依頼先を文部省とするのではなく、この審議会の下部組織とした方がよいのではないか。

○ 文部省に依頼するとなると、既存の大学の枠組みにとらわれた検討になる。もっと自由な発想で検討してもらった方がよいのではないか。司法改革に関して提言を出している経済界の団体や司法制度改革に関する種々のフォーラムなどに意見を聞いてはどうか。

○ 他の機関に検討を依頼するのは初めてなので慎重に判断すべき。構成メンバーとされている大学関係者やユーザーは当審議会のメンバーから選ぶべき。

○ 正規の大学以外でも法科大学院を認める余地はあろうが、法学部教育の充実が問題になっているので、基本的には法科大学院は学校教育法の1条校を前提に考えるべき。そうすると、専門大学院の設置基準を改正する必要があるかどうかを判断するため、文部省が関与することが必要である。メンバーには、大学設置審議会の委員、法律実務家、法学者が入る必要がある。

○ 学位の問題があるにしても、なぜ1条校で考えなければならないのかはっきりしない。

○ 法科大学院を全国にどのように配置するのか、地方の医科大学と同様のことを考えるのか、競争の中で自然淘汰に任せるのか、既存の大学に設置するのかなどといった問題点について議論する必要がある。

○ 利用者が入ってテクニカルな議論が可能なのか。ユーザーを検討メンバーに入れる必要はないのではないか。

○ 利用者が入っていないところでできたものについて、国民の支持を得られないのではないか。

○ 検討依頼先には、当審議会で議論している各論点の関連性、審議の経過などについて理解してもらう必要がある。夏の集中審議で依頼先と議論することも考えられる。相手方との意見交換の機会を確保することを前提にこういう枠組みでよいのではないか。

○ 検討メンバーに入る当審議会委員の人数は2名より多くすべきで、当審議会の審議状況がそちらでの検討に反映されるようにしなければならない。

以上の意見交換の結果、検討体制も含め検討依頼先については、会長において、本日の議論を踏まえて文部省と折衝して進めていくことで、各委員の意見が一致した。

更に、意見交換の結果を踏まえ修正を加えた「審議の進め方」について以下のとおり意見交換がなされた。

○ 法曹人口の大幅増加の表現は変わっていない。5、6万人というのは一致していないかもしれないが、数倍にならなければならないのは一致したのではないか。2、3割の増加というのであれば、法科大学院を作る必要はなく、司法試験制度を改めればすむ。

○ 法科大学院の出発点は法曹の質である。量を決めないと法科大学院の議論ができないというのはおかしい。法科大学院の中身の問題は数とは別個に検討できる。

○ 法曹人口については隣接専門職種との関係も考えなければならない。意見が一致しているのは大幅増加ということであり、この段階で数倍に増加するということで意見の一致はできない。

○ 法科大学院は、法曹人口、法曹一元とも関わってくる問題。数の問題も決めずに法科大学院の検討を外部に依頼するというのであれば反対というしかない。

○ 当審議会の議事録を読めば、検討依頼先も法曹人口の大幅増加という趣旨が、2、3割増という意味ではないことも理解できるので、法科大学院構想の検討に支障はないのではないか。

○ 別紙の留意すべき事項の中では、最初に総枠規制をかけるのがどうかということで法曹人口について指摘していないが、法科大学院の内容の検討に支障はないはずである。

○ 依頼先の検討結果を受け入れるのが前提でないというのなら、中間報告の時期から考えて、9月に意見を返してもらうのでは遅い。夏の集中審議に間に合わせて欲しい。

○ 論点整理でも指摘している、諸外国と比べて日本の法曹人口が総体的に少なく、毎年の新規参入者も少ないにもかかわらず、今後ますます法曹需要が多様化高度化するという記載を法曹人口の大幅増加の前に加えれば、増加の必要性やその程度についての認識も明らかになるのではないか。

以上の意見交換の結果、法曹人口の大幅増加に関する部分について、修正案がさらに修正され、別紙2のとおりの内容で意見の一致をみた。

③ 水原委員から、「国民の期待に応える刑事司法の在り方」について説明がなされ(別紙5参照)、以下のような意見が述べられた。

○ 国家権力が、刑事司法においてどれほど強大な力を持ち、その権力の行使により泣いている人がたくさんいることを認識していただきたい。保釈、証拠開示、国際人権規約等の問題について検討するに当たっては、検察官と弁護人とは平等の立場にないことを理解する必要がある。検察官の養成の問題も検討すべきである。最近無罪論告の事件があったが、これは偶発的なことではない。

○ 少年に限らず、障害者等を含めて弱者に対する手続保障の問題を検討していただきたい。

④ 「法曹一元」については、時間の関係で、各自、海外調査前にペーパー(別紙6)と参考資料をもとに勉強することとした。

⑤ 海外調査について、各国での訪問先は別紙7のとおりである旨報告がなされた。

⑥ 次回会議(第19回)は、5月16日(火)14:00から開催し、「国民がより利用しやすい司法の実現」及び「国民の期待に応える民事司法の在り方」について、髙木委員、山本委員、吉岡委員からのレポートを中心に審議を行う。

以 上
(文責 司法制度改革審議会事務局)

- 速報のため、事後修正の可能性あり -


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