第18回司法制度改革審議会議事次第
- 日時:平成12年4月25日(火)13:30~18:40
場所:司法制度改革審議会審議室
出席者(委員、敬称略)
- 佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、井上正仁、北村敬子、髙木剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本勝、吉岡初子
- (事務局)
- 樋渡利秋事務局長
1.開会
2.「裁判所・法務省の人的体制」について
3.「法曹養成制度の在り方」について
4.「国民の期待に応える刑事司法の在り方」について
5.「法曹一元」について
6.閉会
【佐藤会長】それでは、定刻が参りましたので「司法制度改革審議会」の第18回会合を開催したいと思います。
本日は御案内のように、既に御審議いただきました「裁判所・法務省の人的体制」、それから「法曹養成制度の在り方」に関しまして、審議結果を踏まえて取りまとめたペーパーについて御審議いただきたいと思っております。その後で「国民の期待にこたえる刑事司法の在り方」について、水原委員からレポートしていただく。さらに、「法曹一元」につきましては、私の方からレポートさせていただきたいと存じております。
それでは、まず最初に裁判所・法務省の人的体制に関しまして、既に御審議いただきました結果を踏まえて、とりまとめたペーパーについて御審議いただきたいと思います。
この裁判所・法務省の人的体制につきましては、これまでの審議を踏まえ、前回の第17回審議会において、委員全員がほぼ一致した認識を持つことができたと思います。会長代理と御相談の上、原案を作成し、既に事務局の方から委員の皆様にお届けをしていると思いますけれども、お手元に同じものをお配りしておりますので、その内容などについて御審議いただければと考えております。
この書面の表題は、「司法の人的基盤の充実・強化の必要性について」となっておりまして、裁判所・法務省の人的体制の充実・強化だけでなく、弁護士を含めた司法全体の人的体制の充実・強化の必要性について、我々審議会の認識を記載しております。弁護士につきましても、既に中坊委員のレポートを踏まえ、審議を行った結果、質・量ともに、その充実・強化が必要だということで、委員皆様の認識が一致しておりましたし、当審議会は、司法制度全体を取り扱っておりますので、司法全体の人的基盤の充実・強化という形でとりまとめるのが適当ではないかと考えまして、このような形にさせていただいた次第であります。
それでは、どなたからでも結構でございますので、御意見がございましたら、よろしくお願いいたします。
【山本委員】このペーパーは主として公務員の定数との関係が重点になっていると思うんですけれども、全般的に人的基盤の充実・強化ということからいたしますと、隣接専門職種への法律事務の許容とかいった要望がかなり出ておりますし、私もそういった点については積極的に考えるべきだという気持ちがありますので、できれば2①の問題認識のところに、そういった表現を入れるというのはいかがかと思うんですが。
【竹下会長代理】隣接専門職種ですか。
【山本委員】はい。人的基盤の充実・強化の一つとして、狭い範囲の法曹だけの充実・強化だけではなくて、というような認識でございます。要望の強いところでもあると思います。
【鳥居委員】今、山本さんのおっしゃったことに賛成です。それは法曹養成というのをどういう範囲でとらえるかという考え方に関わってくると思いますが、これからロースクールの問題を考えていくときには、今おっしゃった隣接領域についても、早晩、外国との関係で、ある種のしっかりした学位なり何なりを持っている人たちが要請される。分かりやすく言うと、外国の法律家と仕事をするときに名刺交換をしたときに、相手には学位が付いている、こっちには学位が付いていないというのはこっちが弱い立場になる可能性がありますので、今までいろんな資格を取られた方々にも、何かの簡便法を講じて、ある種の学位を差し上げることも含めて、私は隣接職種の方々の立場の向上を図るべきだと思っています。
【佐藤会長】ただいまのお二人の意見に関しまして、何か御意見ありますか。
【中坊委員】私は今の意見に少し異論があるんです。私の報告の中でかなり詳細に触れさせていただきましたように、関連業種というものは、歴史的にどのような経過で生まれてきて、また、どのような役割を果たすべきものになっておるのかというと大変問題がある。いわゆる法曹という字句の中に含まれるものとされてきたのか。歴史的な、我が国独自の司法制度体系の中におけるそれぞれ大変な位置付けがあるわけです。それを突如、今おっしゃるように、質的強化という中だけで扱うのはいかがなものでしょうか。
だから、その前に隣接業種と弁護士との関係というものが、協働関係に立たないといけない。しかし、現に社会保険労務士を入れれば弁護士の数の約10倍になるわけですから、そういう人たちがいらっしゃるという現実的な事実も踏まえなければいけないので、それをどのように持っていくかということが、それこそ全く議論の対象になっていない。外国はそういう職種がないわけですから、全部が弁護士という名前で総括されておる。他方、法曹人口が2万1,000人という数を言うときには、その数は入っていない。現に14万人からの人がいらっしゃる。こういう事実関係に立っているわけですから、今、少なくとも行政改革の関係において、公務員の一律削減という要請がある中において、司法を強化してもらいたいというときには、その隣接業種まで含めると、ほとんど無限大に近いようになって、また、監督官庁もそれぞれが違いますので、統一がつかないようなことになってきてしまう。
だから、そういうものを今、我々の、少なくともこれまでの人的資源の強化ということを議論してきた中には、これは入っていなかった。
しかし、山本先生や鳥居先生のおっしゃるように、無関係のものじゃない。これから密接なものとして考えていかないといけないものであると。私は私なりに一つの考え方を出していますが、それが唯一のもんじゃないと思います。
しかし、少なくとも私はこの間の法務省と最高裁から来ていただいて、レポートを受けた上でのまとめなわけですから、隣接業種の方に来ていただいて、ここで意見をまとめているわけじゃないんです。あくまで前回の報告を踏まえて、また、我々の論点整理からずっと一貫してやってきたものとの整合性の中で議論しているのですから、私は今回の増員についてのまとめは、一応この程度で終わって、まさに隣接業種との関係は関係として、今、山本さんが御指摘の点は、今後踏まえて我々が議論していくのがよいと思います。まさに重要な点をおっしゃっていただいているんで、それはそれとして踏まえていくけれども、一応このレポートはレポートとして、このとおりでやっていただいて、それでその関係も当然論じていくというふうにしていただいたらいかがでしょうか。
【山本委員】結構でございます。中坊先生がおっしゃるとおりな意識でございまして、決して隣接職種を増やすべきだとか、あるいは隣接職種に法律事務を認めるとかいうことを今、はっきりさせるべきだということを申しているのではなくて、そういうことを頭に入れつつ、法曹人口の増加というのは考えるべきだという趣旨でございますので、全く異論はございません。
【佐藤会長】鳥居委員もよろしゅうございますか。
【鳥居委員】はい。
【佐藤会長】中坊委員がおっしゃったような趣旨で、このペーパーは、ヒアリングの関係もありますので、この段階ではこういうことにさせていただきます。
ほかの点につきましては、いかがでしょうか。
【藤田委員】私は、法務省の委員会でも仕事をしているものですから申し上げますが、法務関係の人的基盤の強化については全くここに書いてあるとおりだと思います。検察事務官が非常に重要な機能を営んでいて、検事と検察事務官とがコンビになって、実際の事件処理に当たっているんですが、この間のプレゼンテーションにありましたように、平成8年以降、検察事務官の方は減員になっております。現場の検察事務官を抜くわけにいかないものですから、法務行政の方の関係からいわば引っこ抜いて充てているという状況がありまして、かなり法務行政の関係が影響を受けているということがあります。
団体規制法の事件がありましたときに、とても人手が足りないものですから、各部局から応援をいただきました。また、特別な意見聴取手続のときには220人を各部局から応援をいただいた。苦しい中で大変協力していただいたわけです。そういう意味で検察事務官と併せて刑事裁判の執行に携わる矯正・保護関係の法務省職員について十分な配慮が必要であるという御趣旨はそのとおりだと思います。さらにそういう意味からいきますと、入管も以前のプレゼンテーションで問題があると伺っておりますし、訟務も行政庁の中でルール・オブ・ローを担当しているわけですから、全般的に法務行政に携わる人について配慮をするということがいいのではないかなと思うんですが、いかがでしょうか。
【佐藤会長】表現上、今、訟務関係という。
【藤田委員】全般的というだけではなくて、刑事裁判の執行について、矯正・保護関係の法務省職員と挙げてあるものですから、具体的に挙げるのであれば、そういう人権とか訟務とかも一緒に挙げていただいた方がいいかなと思います。一生懸命頑張っているというところが分かるものですから、そういう感じがいたしますので。
【佐藤会長】分かりました。前の但木官房長の御説明の中にも、訟務関係がメンションされておったように思いますので、その辺の文章を、ここに少し付け加えるというようなことでよろしいですか。
【藤田委員】お任せいたします。
【佐藤会長】では、今の趣旨を入れた文章を考えたいと思います。あとでまた正式にそれを入れた文章をお諮りしたいと思います。
この件につきましては、そんなところでよろしゅうございましょうか。
どうもありがとうございました。
今申したように、形式的にはあとでお諮りしますが、この内容で私ども審議会の認識が一致したということでございまして、今後、この文書をどのように取り扱うのかということにつきましては、制度についてのいろいろな検討とかも関連づけながら、しかるべく取り扱わさせていただきたいと思いますが、そういう扱いでよろしゅうございましょうか。どうもありがとうございました。では、この件はひとまずここで終わらせていただきます。
続きまして、法曹養成制度の在り方について、とりわけ法科大学院構想につきまして、これまでの御審議に引き続き御審議いただきたいと思います。この法曹養成制度の在り方につきましては、前々回の第16回審議会において、現在の法曹養成制度は、21世紀の司法を支えるにふさわしい法曹を養成するという点で抜本的な改革が必要ではないか、法科大学院構想は、なお検討すべき点が多々あるものの、新しい法曹養成制度として有力な方策の一つであるということで、委員の皆様の認識が一致するとともに、法科大学院構想の具体的な内容につきまして、専門的、技術的な検討が必要であるということから、例えば文部省、大学関係者、法曹三者が加わった然るべきところに対して、法科大学院構想に関する検討を依頼し、その検討結果を受けて、審議会において更に審議するということとして、検討依頼に際しての留意すべき事項についてペーパーを取りまとめ、また具体的な検討依頼先などについて、本日の審議会において委員の皆様にお諮りすることとされております。
そこで、会長代理、井上委員とも御相談の上で、本日の審議のたたき台としての原案を作成しました。それは既に事務局から委員の皆様にお届けしていただきましたが、本日、委員の皆様からいただいた意見も踏まえて一部修正したものをお手元にお配りしておりますので、この書面を基に御審議いただければと考えております。
お手元に配付しております書面は幾つかございますので、まず、その御説明をしたいと思います。一つは、「法科大学院構想に関するこれまでの主な意見(参考)」と題する書面です。これは、これまでの審議の中で、法科大学院構想に関して、委員の皆様から出された意見を本日の御審議の参考としてお使いいただこうという趣旨で、事務局でとりまとめてもらったものであります。
それから、2番目ですが、「法曹養成制度の在り方に関する審議の状況と今後の審議の進め方について(案)」と題する書面です。これは、これまでの審議の結果を踏まえながら、委員の皆様の共通理解として合意できればと考えられるところを、とりまとめたものであります。
なお、別紙の「法科大学院(仮称)に関する検討に当たっての基本的考え方」と題する書面は、前回の御審議の際にお話しいたしました法科大学院構想の検討に際して留意すべき事項などを、これまでの審議を基にとりまとめたものであります。
3番目に、「検討依頼先について(案)」というものがございますが、この書面は、前回の御審議の際にお話の出ておりました具体的な検討依頼先について、その依頼先や依頼事項、実際に検討していただく方々の構成などを記載した書面でございます。
検討依頼先としましては、文部省において、大学関係者及び法曹三者の参画を得て、適切な場を設けていただければと考えておりますが、当審議会で改めて審議を行うまで検討を任せ切るというのではなくて、その検討の過程においても、当審議会での議論の状況を反映しながら検討を進めていただきたいと思っていますことから、検討依頼先と密接に連絡を取り、随時当審議会にその検討状況を報告していただくために、当審議会の委員にも参加していただければと考えている次第でございます。
あらかじめお配りしたものに一部修正した部分は、下線を引いておりますので、そこがあらかじめお配りしたものと変わっているということであります。
お手元にお配りしております書面の説明は以上のとおりでありますが、本日、審議会の考え方を、お示しした原案を踏まえてまとめることができればというように考えている次第であります。
それでは、どなたからでも結構でございますので、御意見をちょうだいできればと思います。
【髙木委員】「審議の経過」の冒頭のところに3行ほど付け加わっていますが、論点整理で書かれた内容というのは、当然のごとく法曹養成の議論の中でも下敷きにしていただかなければならないということだと思います。このペーパーには司法制度改革に向けての論点整理という言葉が入っているから、これから御検討いただくところでもちゃんと踏まえていただけるという理解をしたいと思います。
最初に原案を見たときに、何か井上先生からお話があって、お話を聞いてこうこうこうでということだけでいいのかと思いました。今回の司法制度改革というのは、21世紀に向けて現在の司法制度全般を、ともかくそれぞれの時代の要請に応えられるように、それから今まで日本の司法制度が持ってきた欠陥とか遅れているところを直すということに意を用いた議論をしているわけですから、現在の法学部の教育があり、司法試験があり、研修所がある、その間を単につないでいただくだけの議論じゃない改革が、養成についても求められているわけであり、もう少し本質的な、論点整理を全部引用して長々と書くまでには至らないかもしれませんが、その辺のことが書かれていないままでいいのかなと思います。若干くどいくらいに、別の場に検討をお願いするのなら、この審議会で議論をしていることの意味をお伝えしていただく必要があるんじゃないかと思います。この3行で足りているということなんでしょうかというのが1点でございます。
もう1点は、法科大学院における実務修習と、その後研修所で行われる、あれは何と言うんですか、司法修習というのが正しい言葉ですか。司法修習と言ったり、研修と言ったり。
【井上委員】「司法修習」というのは、現在、司法研修所で行っているのを「司法修習」と言うのですけれども。
【髙木委員】前期を含まないということですか。
【井上委員】前期も後期も全部含んで「司法修習」と呼んでいます。そして、そのうち弁護士会とか実務庁に行ってやるのを「実務修習」と普通は呼んでいます。ただ、この文章での用語は必ずしも現行のそれをそのまま維持するということまで意味するものではなく、実質として、現場でやるのを「実務修習」、座学的なものをも含めて全体を「司法修習」という言葉で呼んでいるのです。
【髙木委員】2枚目の下から6行目「少なくとも実務修習は法科大学院における教育とは別に実施するものとすべきであるという点でも基本的に異論はなかった」ということでございますが、ここで書かれている実務修習というのはどういうものですか。
【井上委員】要するに、弁護士会とか裁判所、検察庁の現場に行って、そこで一定期間、修習をするということです。
【髙木委員】今、和光市でやっている座学みたいなものは、これには入っていないんですか。
【井上委員】「少なくとも」というのは、その座学の部分をどうするかというのは別にしてという趣旨です。
【髙木委員】そのこととの関連で、一番最後のページで③④⑤というところで、「実務との融合をも図る教育内容」、「司法修習(少なくとも実務修習)を別に実施することを前提としつつ」云々、それから「教員につき実務法曹や実務経験者等の適切な参加を得るなど、実務との」。これを読んでいると、法科大学院では実務ということをかませる教育内容を、どういうふうに、どの程度までやるのか、その辺も検討してもらうことの中身に入っているのかもしれませんが、これをぱっと読んで、三つに書き分けてあるのはどういう意味なのか、御説明いただけたらいいと思うんです。
いずれにしても、昨年12月21日にまとめられた論点整理で、大方の哲学については整理をされているものであり、その哲学を踏まえた上で、この研修所まで含めてどうするのかを検討していただくということだと理解してよいのですか。また、依頼する紙を見ると「意見があれば、付言して提出すること」、意見がなければ何も触れなくてもいいのかと読めます。
それから「検討体制」で文部省、法曹三者、大学の先生が5名、審議会委員から1名と。つい最近私どものところに送られてきました司法改革フォーラムの提言などを見ましたときに、この審議会のこういう対応がぼろくそに批判されているわけです。その司法改革フォーラムで出された第1次提言というのに、「法曹、法学関係者のみにロースクールに関する立案や審査を委ねるな」という項がありましたりして、こういうことを司法制度改革審議会で決めたことは驚くべきことだと言っています。そして、利害当事者、こともあろうにギルドの支配者のみを専門家と位置付け、その見解を素案とするのでは、消費者の利益は守れない、審議会の自滅宣言と言うべきであり、このような流れを放置することのないよう、立法府は直ちに適切な措置を取るべきである、ギルド関係者を外した場、例えば消費者、企業の代弁者、ギルドに関わらない有識者などによる検討の場が必要だと批判されている。こういう批判、もちろん、こんなにまで言われるのかという気はしないでもありませんけれども、ともかく強い批判があることは事実です。
それから、事前に配付いただいて、意見を申し上げるということの意味はどういうことなのか。司法修習の関係については、率直に申し上げれば、現在の研修所はそれぞれ法曹三者、どの道に行くかというある種のリクルートの場でもあり、司法試験に受かった人たちが自らの将来の職域を探す場でもある。特にリクルートの場ということが、いろんな意味で、先週の最高裁の総務局長さんがいろいろお話しされた、現在のキャリア裁判官の問題にもつながっている、つながっていない、いろいろな見方があります。そういう意味で研修所の運営の主体論だとかいろんな議論も当然あるわけです。そういったことも含めまして、私は意見としては、少なくとも云々のところの、「基本的に異論はなかった」という表現は、今、井上先生がおっしゃったような意味だということならば理解できないことはないんですが、しかし、前に基本的にと入っているから、1人、2人の反対はあってもということかもしれないなと思いますが、もし入れるなら、「基本的に異論はなかった」という表現を、「大方は異論がなかった」という書き方にしていただいたらと思います。そういうことも含めまして、なかなか意を伝えるのが難しいところだなということでございます。
【佐藤会長】どうもありがとうございます。何点かにわたっているわけでありますが、最初の論点整理との関係については、私の頭の中では、それは当然論点整理を土台に据えてこれまで議論してきたというように考えておりまして、あらかじめお配りした中で、これが明示されていなかったとすれば、今にして考えますと、不十分であったと思います。
【井上委員】私の頭の中でも当然、論点整理を基にしてという趣旨だったのですけれども、御注意がありましたので、もうちょっと分かりやすく書いた方が良いのかもしれませんね。
【佐藤会長】その点は、書きようをもう少し工夫すべきであったであろうと思います。その点は今日御審議いただいて、表現振りなどについては更に考えさせていただきたいと思いますが、ほかの幾つかの点について、井上委員の方で何か。
【井上委員】まず初めに、この前、中坊委員はじめ何人かの方から御注意いただいたことをも考慮しまして、2枚目の「これらの問題点を克服し」、「法曹人口の大幅な増加や弁護士改革など」、「基本的な問題との関連に十分留意しつつ」と書き記すことにより、その論点整理に盛り込まれ、そこで確認されたこと、そして、その後竹下先生がレポートされて議論をし、また、中坊先生がレポートされて議論をした。そこで皆さんの共通の理解となったと思われることを入れたということで、全体としては御趣旨に沿ったような形にまとめたつもりなのです。
修習との関係については、先ほど申し上げたとおり、「少なくとも実務修習」と言いましたのは、現場に行ってやることまで法科大学院でやれという御意見はなかったものですから、それは少なくとも切り離して、司法試験の後でやるべきことということで、ほぼ意見の一致があったと考えまして、逆の方から書いてみたということです。
今の髙木委員の御意見でも、それを法科大学院の方に取り込んでやれという御趣旨ではなく、むしろ広い意味での司法修習をどうするかということは検討しなければならないのではないかという御趣旨かと思いますが、この文章でも表現が適切であったかどうかは別として、趣旨としては、その点は今後、この場で議論していくべきことだろうととらえたのです。
その点まで、これから検討を依頼するところに付託するのが適切かどうか、そこまで皆さんの御意見は一致していなかったと思います。むしろ、教育ということに的を絞って、その組織体制ですとか、そこで何を教えるのかを中心として検討してもらう。そこでは当然、修習との振り分けの問題というのは出てくるわけですので、それももちろん検討していただくのですが、全体としてどうするかというのは、やはりここで検討すべきではないか。そういう法科大学院の中身の像が出てきた上でですね。そういう振り分けになっているのです。表現としては、意見があれば出してもいいみたいな書き方になっているのですが、教育内容に対応して修習との関係とか司法試験との関係は当然考えないといけないものですから、アイデアをどんどん出してくださいということでありまして、制限したのではなくて、意見を是非出してくださいという趣旨です。
ただ、例えば文部省にお願いするときに、司法試験というのは形式的にはその所管じゃないものですから、そこに司法試験のことも考えて下さいというのは必ずしも適切ではないということから、こういう表現振りにしたわけです。
あと、検討を委ねるというのも、この前皆さんの間で議論が出たところですけれども、あくまで責任はこちらにある。その我々の審議をさらに進めていく上で、関係者が法科大学院なるものを考えるとすれば、どういう内容になるのか。これまではばらばらに考えていたものを、法曹三者と大学人が集まってすり合わせをしてもらいたい。そうでないとここの審議も進まないのではないかということから、検討をお願いするということでありまして、全くそっちに丸投げしてしまう、我々の責任を放ってしまうというものではない。したがって、自己破壊だとか無責任だという批判はちょっと当たっていないと私は考えます。また、利用者の視点からの検討というものは、まさにここでやるべきことだと思うのです。
【佐藤会長】髙木委員、どうでしょうか。議論の進展の中でおっしゃっていただいても結構でございますが。
【髙木委員】「少なくとも実務修習」というのは分かりましたが、もしそうなら、「基本的な考え方」の④も、司法修習という言葉を取って、いきなり「少なくとも実務修習を別に」と、同じ表現にしておいていただいた方がいいんじゃないかと思います。
【井上委員】ここのところは、正直、どういう書き振りがいいのか迷ったのです。集合教育だとか座学だと言われている部分が、仮に法科大学院ができた場合に、そっちで本当に担えるのかどうか。これは実際に両方からすり合わせてみないと分からない問題ですので、そこのところを含めて検討してくださいということで、ちょっと中間的な表現になっているのですが、皆さんが表書きのところを取った方がいいということでしたら、そういうふうにいたします。
【藤田委員】井上先生おっしゃったことに全く異論はないんですけれども、表現として、司法修習と実務修習と、司法修習(実務修習)というようなことでちょっと分かりにくい。座学などを全部含めて司法修習だと思うんです。
それと、青山先生は要件事実教育はロースクールでできると言われましたけれども、仮にロースクール構想を取るということになっても、司法修習との役割分担をどうするかというのはいろいろ問題があるところですので、そこら辺は誤解を避けるという意味で、司法修習なら司法修習に統一するということでもいいんじゃないかと思いますが、一番広い範囲で。これは表現だけのことですけれども。
【佐藤会長】(1)目的の個所の2行目に司法修習が出てくるんです。そして(3)の④の最初のところに司法修習(少なくとも実務修習)とあり、それに続いてまた司法修習となっていますね。
【井上委員】端的に「実務修習」というふうに書いてしまいますと、それに限定するともう決めてしまったような印象を与えてしまうものですから、表現が非常に難しいのです。正確に言いますと、「司法修習ないし実務修習」ということなのです。
【藤田委員】「司法修習」が一番広いんじゃないですか。だから、例えば研修所で模擬裁判をやったり、法廷傍聴で裁判所に行ったりという、これがどっちに入るかというと、ちょっとボーダーラインですね。そういう意味では、実務修習と非実務修習とに分けるのもなかなか難しいので、統一的に「司法修習」を使ったら一番難がないんじゃないかという気がしたものですから。
【井上委員】ロースクールとは別に実施するということで皆さんの意見が一致したと言えるのは、少なくとも実務修習なのです。座学の部分をどこまでどうするかという点では、様々な意見があるようでしたので、「司法修習を別に」というふうには書きにくかったのです。ただ、皆さん、そういう御了解の下に「司法修習」という言葉を使った方がいいということでしたら、それでもよろしいんじゃないかと思います。
【鳥居委員】私はもうちょっと幅のある発言をどこかでしているはずなんですけれども、議事録を自分で調べてみないと自信はないんですが、私の頭の中ではこういう発言をした記憶があるんです。我々がこれから構想するロースクールの教育課程の中で、一度実務を修習するという時期があって、また、元の座学的なところに戻ってくるということも含めてロースクール教育が行われて、それを終えた人が更に司法修習を受けるということもあり得ると。そんなことを申し上げたはずなんですけれども。
【井上委員】それは承知しております。だた、それが皆さんの共通の理解にまでなったかといいますと・・・。
【鳥居委員】少なくとも一人は憶えていてくれた。
【井上委員】このペーパー自身は、皆さんの御意見の中でほぼ共通していると思われる最大公約数的なものを書き出させていただいたものでして、検討の依頼にあたっては、これだけを示すのではなくて、これまでの議事録やさっき参考に配っていただいた皆さんの御意見の要約も当然付ける。そういう形で、委員の中にはこういうアイデアもあった、こういう意見もあった、これも十分尊重していただきたい、というふうに依頼することになるのではないかと思うのです。
【髙木委員】もし「少なくとも実務修習」というところを司法修習に変えるなら、本質的な中身の議論は大分違うんだろうと思います。もし、そういうふうに文章整理されるならば、文章の全体的な問題になってくると思いますので、現在の司法修習制度も含めて見直そうということになるのですね。
【佐藤会長】そうです。
【井上委員】基本的論点の④の2行目の「司法試験及び司法修習との有機的な連携を図る」という点は、おっしゃった御趣旨でいいと思うのです。司法修習とどっちに振り分けるかという問題も含めてということですので。④の1行目の表現をどうするかということでして、これまで確認された我々の基本的認識の最大公約数は何なのか。そこになりますと、「少なくとも」くらいな感じがするのですが、藤田委員、どうでしょうか。皆さんが一致したというのはそのあたりではないでしょうか。
【藤田委員】中身は別にして表現だけではですね。
【井上委員】第三の表現で、より適切なのがあればいいのですけれども。誤解を招かないような。
【髙木委員】前の方のものが少なくとも実務修習という表現なら同じ表現にしておいた方が。
【井上委員】前提としつつというのは、既にここで決めてしまっているように見えるものですから、ちょっとそこはズレがあるのです。まだこれから検討するのですよというニュアンスを含ませるという意味でですね。
【鳥居委員】「別に」という言葉もちょっと引っ掛かりますね。
【井上委員】法科大学院とは別にという意味なのですが。
【鳥居委員】法科大学院の教育課程の中にも、と。
【井上委員】その点は、法科大学院の中でやるのは「実務修習」と呼ばなければいいのですよ。「実地研修」とか何か別の言葉で表現すればいいと思うのです。もっとも、何かこの「別に」に代わる適切な表現があれば、お教えいただければと思いますが。
【吉岡委員】伺っていると、だんだん分からなくなってきますね。法科大学院における教育というのが何を目指しているのかというのが、この文章と今の議論を聞いているとちょっと分からなくなってくるんですね。ここで言いたいのは、法科大学院教育というのは、実務修習をやらないということが言いたいのか。そうじゃなくて、実務修習も含めてやると言っているのか。ここの2行のところは飲み込めないのですが。
【井上委員】この文書を書いた趣旨としては、狭義の実務修習というものは司法試験の後でやるということです。それとは別の事柄として、法科大学院で何をやるかというのは、基本的にはこの教育理念のところに書いてあるようなことで、従来の法学部でやってきたような法学教育だけではなくて、やはり実務との融合、実務志向といいますか、実際に法曹になろうとしている人たちのための教育、実務家になるための法学教育であるべきだ、という意味なのです。
内容的に言えば、中坊委員がおっしゃっているような実際からの発想ということもあるでしょうし、人的にも、⑤に書かれているような実務家、あるいは更に広く実社会の経験を積んだ人たちに入ってもらって、教育を担っていただく。あるいは、相互交流を頻繁にすることによって、純粋大学人でもなく、純粋実務家でもない教員というものをつくっていければと、そういう御議論だったかなと思ったものですから、交流が広く行われるようにと書かせていただいたということなのです。
【吉岡委員】法学部の方の教育というのは浅いかもしれませんけれども、幅広くやることによって、いろいろな方向に行くことができる。深めたい人は深めることができる。大学院の中でも、例えば研究者を目指すような、それは今までどおりの大学院の中で教育を受けて研究していく。
一方、法曹を目指す人たちは別にロースクールという道がありますよという、そういう位置付けで考えると、法曹を目的としているのであれば、むしろ実務教育は非常に重要じゃないかと思います。
【井上委員】実務教育はいいのですけれども、実務修習をどこでやるかというのはちょっと違う問題だと思います。また、実務教育だけで十分かと言いますとそうではない。法学教育というものも学部だけで十分ではなく、やはり高度の専門職業人になるためには、高度の学識が必要であり、そこのところを学部の4年では賄いきれないので、そこのところの教育をロースクールで基本的にやる。ただ、その内容は、従来のような法律学の延長で果たしていいのかという点で、実務との融合ということが求められる。そういうことだと思うのです。
【吉岡委員】幅を広げるとか深めるという、そういう意味で今の法曹関係者がどうこうと言うつもりは全然ないんですけれども、どうしても司法試験に受かるということを主目的とした勉強の仕方というのがかなり強くなってしまっている。それを是正して、もう少し人間的な幅も持たせる、深さも持たせる。そういう意味でロースクールというのは必要なわけです。
ただ、それだけではいけないんで、法曹三者を養成するという目的も、それはすべてではないけれども、目的に一つあるということであるとすれば、実務修習も含めた形での教育というのが重要ではないかなと思っていたんですけれども、これでは別にするということだったので。
【井上委員】現実に、実務の現場に一定期間学生を置いて、訓練なり修習を行う責任をどこに負わせるのが適切かということなのです。それを法科大学院ないしロースクールの責任の下に行わせるのが適切かといいますと、どうも適切ではないのではないかというのが大体の御意見かなと思ったものですから、それは司法試験を通ってから、現場でやってもらう。そういう意味で、別に行うという書き方にしたのです。
ただ、法科大学院ないしロースクールでやることは、そのような現場での修習との架け橋になるものでないといけない。そういう意味での実務のための基礎教育というのは当然あるべきだろう。それが、ちょっと分かりにくいのですが、「実務との融合」とか「有機的な連携」とか、そういった言葉に含まれた意味なのです。
【鳥居委員】整理のために勝手なことを言っていいですか。
医者の国家試験は、昔はインターンシップが国家試験を受ける義務条項だったわけです。
インターンシップというのは、在学中につまり国家試験を受ける前に、実務を一回経験するということが義務として課せられていて、その義務を果たした者が国家試験を受験する資格があったわけです。ところがそれを廃止したわけです。今の話は全く同じことで、司法試験を受ける前に、インターンシップを課すか課さないかなんです。
要するに、在学中にインターンシップとして実務をいろいろやるということを課すか課さないかという議論はこれからやるべきことであって、まだ片づいていないと思うんです。
【井上委員】先生のお考えも、司法試験に受かった後すぐに職に就かせるということではなく、そこにもまだ訓練の期間を置くということですね。
【鳥居委員】司法試験が終わってからです。私の言っているのは司法試験の前です。
【井上委員】そこのところは、ロースクールなるものの中でどういう教育をするのかという問題だと思うのです。
【鳥居委員】その問題をここで何という言葉で呼ぶか。インターンシップ問題はこれから議論するというふうにして残す表現にしたらどうかと思うんです。
【井上委員】その点は「実務との融合」とか、「有機的な連携」ということの中身として、これから検討するということではないでしょうか。
【竹下会長代理】要するに法科大学院の中でやる実務的要素のある教育として、先生の言われるような医学部の場合のインターンシップと同じようなものも考えられるのではないかと、そういう御意見ですね。
【鳥居委員】入れるべき入れざるべきかは、どこかで議論をすると。
【佐藤会長】アメリカでは、いわゆる司法修習というものはないんですけれども、ロースクールの3年の間に、例えば夏休みの2か月ほどは弁護士事務所に行って実務に触れます。インフォーマルなものですけれども。インターンシップというか、そういうやり方もあり、法科大学院の中でのやり方もいろいろありうるし、司法修習のところでのやり方もいろいろ考えられるということなんじゃないかという感じがするんです。
【井上委員】既にいろんな案の中にも、リーガル・クリニックという実際の弁護実務をプロの弁護士さんの指導の下に担当させて経験させるとか、夏休みに弁護士事務所に手伝いに行かせて、そこでいろいろ覚えさせるといったカリキュラムを組み込もうというアイデアも出ております。そこのところは、要するにロースクールで実務家となるための基礎教育としてどういうことをやるべきなのか、その中身の問題ではないかと思うのです。
【鳥居委員】インターンシップを組み込んで、在学中にいろんなものを見させることによって、将来、裁判官というのはこういう仕事なんだ。検事はこういう仕事だということがあらかじめ分かって、一度は裁判官もやってみたいなと思わせる時期をつくっておかないと、全部終わってから、三つのうちのどこに行くという話じゃ遅いと思いますので、私はインターンというのは非常に重要だと思うんです。
【佐藤会長】その御趣旨はよく分かりますので、まさにそれはこれから具体的な法科大学院と修習との関連付けの中で、具体的に考えていただきたいと思っています。私どもとしても、今、鳥居先生がおっしゃったような趣旨を踏まえて、更に議論するということではないかと思います。
表現振りですけれども、どうしましょうか。「前提としつつ」というのはどうしますかね。ちょっと考えさせていただけますか。先ほどの髙木委員が御指摘のところもありますし、表現振りについては、今日、案ができれば後でお諮りしたいと思いますけれども、今直ちには。
【鳥居委員】私は単純に、こういう趣旨で直していただいたら、簡単ではないかと思います。「法科大学院における教育は、在学中の実務修習を実施するか否かを検討することを前提としつつ」とか、その程度までならみんな合意したんじゃないでしょうか。
【井上委員】狭義の実務修習を別に実施するということは、言っておかないと、ロースクールの教育内容もなかなか考えにくいと思うのです。
【鳥居委員】それはこっちの司法試験と司法修習との有機的な連携を図るものとするという言葉が出ているんだから、こっちはもうちゃんと存在している。
【井上委員】実務修習は司法試験の後でやるということは、それだけでは読み取れないのではないでしょうか。
【鳥居委員】先生、それは司法修習という言葉の一部でしょう。
【井上委員】ところが、そこになってきますと、先ほどの髙木委員のような問題意識もあるものですから。
【髙木委員】今の座学も何もかも含めた、今の司法修習というか、司法研修所でいろいろやっておられる活動が、ある意味で見直される部分が当然出てくるはずだと。だから、司法研修というのが今のままで変わらない言葉として使われるとしたら、それはいかがなものかと思います。
【井上委員】鳥居先生のおっしゃる点を入れるとすれば③「実務との融合をも図る」という中、あるいは④の「有機的な連携」のところにそれが入ってくるということだと思うのです。在学中の一種の実務修習と言いますか、インターンシップみたいなものはですね。
【吉岡委員】今、井上委員のおっしゃった司法修習を別という中で、私分からなくなってきたんですけれども、司法研修所というのがありますね。その司法研修所でやるのが司法修習という考え方で、試験の後ということですか。
【井上委員】そこはまだここで議論していないのです。司法修習をどういう形でやるのか。現在のままでいいのかどうか。その主体はどうなのかということは、まだ議論していないわけです。
【吉岡委員】そうすると、司法試験の後もロースクールをやるということですか。
【井上委員】ロースクールというよりも、少なくとも現場に行って研修を受けるということは司法試験の後で行う。論理的には後でなくてもロースクールとは別に司法試験の前にということもあり得るかもしれません。しかし、法曹となる資格試験を通っていない人に本格的な実務修習をやるというのも制度として変なものですから、後というのが自然の考え方でしょう。
【吉岡委員】そうすると、司法試験に合格した人が実務修習を一定期間どこかでやると。
【井上委員】その限度では皆さん一致していたと思うのです。それまでもロースクールで全部やれということではなかったのではないでしょうか。
【北村委員】今までずっとお話を伺ってまして、まだここで議論していない点が非常に多いんじゃないかというふうに、井上先生のお答えの中にも、それまだ議論していなかったというお答えが出てきますし、多いんじゃないかと思うんです。
例えば、法科大学院で一体誰を養成するのか。法曹三者ですよというのか、あるいは法曹三者以外も含めて、法科大学院で養成するというふうにするのかとか、そこにおいて何を教えていくのかということも細かく詰めていないわけです。詰めるのをほかの機関にというような形になっていると思うんですけれども、この審議会というのは、そういうことをある程度詰めておきませんと、そこをあやふやなままでほかの機関と、機関と言えばいいのか団体と言えばいいのか分かりませんが、ほかのところに委ねるというのは私はすごく無理があると思うんです。それでは委ねられた方も、一体どういうふうな形で持っていけばいいのか、自分たちの意見を言えばいいんだと言えばそうなんですけれども、もうちょっとはっきりしたところで委ねる。もうちょっと骨格を明確にしておいて委ねるというのが必要なんじゃないかなと思っているんです。
そうしますと、今の司法修習だとか、実務の問題にしましても、もう少し明確になるでしょうし、それから法曹三者だけを養成するのか、それも隣接のものを多少含めてですね、あるいはさっきの議論とひっ付けて考えると、隣接のものは除きますよということになるのか、そこのところを明確にしていただきたいというのが一点です。
もう一点は、これは話が飛んでしまうから後で言っていいのかもしれませんけれども、現在、委ねるところとして、文部省、法曹三者、大学関係者5名程度という形で入っているんですが、5名というと、この審議会の中にも大学関係者は5名おりまして、法曹三者が3人おりまして、いないのが文部省ということで、この委託先の中には利用者がだれも入っていないということになりますと、ちょっと問題があるのかというふうに私には思われるわけなんです。
そうであるならば、例えばみんな忙しいですからあれですけれども、夏休みに集中的に法科大学院をぱっとやるとか、そういう形の議論を行って、それでもう少しほかのところに詰めていただくとか、そういうような形のものが考えられないのかどうなのか。
常に審議会の方が1人入って、間を取り持って、議論の方でやっていくというような形をおっしゃっているわけなんですけれども、そういうふうな形でやるんだったら、これはずっと法科大学院を続けてこちら側はやっていかなければならないということになるんじゃないかと思うんです。
だから、いろいろと時間のことも考えて、それから法曹養成制度というのは、司法制度の改革において重要な事柄なんですから、そこのところをもうちょっと考えていただきたいなと思います。
【井上委員】この前から、その中身について御意見を出していただきたいということでやってきたわけです。ですから、御意見があれば出していただいて、それを反映した方がいいと思うのですが、私だけの感じかもしれませんけれど、ここから一歩、我々の審議を進める、あるいは深めるためには、教育内容とか方法ですとか、それを支える組織というものにはどういうものがあり得るのかという具体的なたたき台みたいなものがないと、抽象的に議論していても多分煮詰まっていかないんじゃないかと思うのです。
その意味で、案が複数でもいいのですけれども、もうちょっと絞った案を出してもらう。それを委託するだけで、全部投げて、決めてくださいという趣旨ではないと思うのです。
【北村委員】だけれども、この検討項目を見ていますと、すごく幅広く入っているんです。これというのは、法科大学院をどのような形でつくっていきますかということと等しいというふうに読んだんです。この①からずっと挙がっていっている。
【井上委員】実質的には枠がはまっているのですよ。
【北村委員】ただ、司法修習はやりますよということは読み取れるんですけれども、それで委託するときにもうちょっと、内容のことについておっしゃってくださいという話があったというふうにおっしゃられますけれども、やはりこの審議会の中での議論というのは、今まで十分にできない部分があるんじゃないか。ですから、今日もいろいろな意見が、それは確か言ったはずだとか、ここのところはどうなのかというところが、まだまだあると思うんです。
私は、こういう消化不良のままで委ねるというのは、ちょっと時期的に早いんじゃないかなと思っているんです。井上先生がおっしゃっている何かがないと、もう少し煮詰まらないじゃないかとおっしゃるのもすごくよく分かるんですが、何かがないと言う前に素材としてあった方がいいんじゃないかと。
【井上委員】例えば、どういう点で、どういうお考えでしょう。
【北村委員】法科大学院の中で法曹三者を養成するのか、あるいはもうちょっと広げたところで、国家公務員など、そういうものを含めたものを養成するのか、あるいは中坊委員が前におっしゃっていたのは、隣接のものも少し含めて考えていったらどうかということもおっしゃっていたと思うんですけれども、そこは非常に重要な部分じゃないかと思うんです。
法科大学院といっても、何年でやるのかということも、まだまとまっていません。2年なのか3年なのか、その辺のところも。間口は広くして、ほかの学部の人たちも入るようにしましょうという点は、一応まとまっていたかと思うんです。
ですから、今まで議論の中で分かれているところを、もう少し詰めたらどうですかということなんです。
【井上委員】前者については、この前も含め、ある程度議論をしました。そして、私の了解では、狭い意味での法曹の養成というのが最低限の要素であるということは、これは一致している。それなしにロースクールというのはあり得ない。それにプラスして、鳥居先生がおっしゃったような国際的な人材とか、公務員とか、そういう幅広い活動ができる人材を育成していく。あるいは隣接職種の人を育成していく。そういうのが加わっていく。これはあり得ることとして、しかし、隣接職種の方は、先ほど中坊先生がおっしゃったように、そちらの方の仕組みをどうするのかということが議論の前提としてあるべきで、そちらが固まってくれば、ロースクールの方でもプラスして拡げていくという性質の問題であろう。この前の議論のときには、そういうことを申し上げたのです。
要するに、今の段階で何をやらないといけないかというと、少なくとも、根本というとおかしいのですが、一番狭いところを前提にした場合どういうことが考えられるのか。それと隣接職種とか鳥居先生がおっしゃっているような人材教育というのは必ずしも矛盾しないと思うんです。
【鳥居委員】矛盾はしないけれども書いていない。
【井上委員】それはまだ意見が一致していないからなんです。そこを決めなければ話が進まないかというと、必ずしもそうではないのではないかと思うのです。
また、2年か3年かという問題は、まさに教育内容に応じて決まってくるもので、最初にこちらから3年でやれというわけにはいかない。やはり中身としてどれだけ必要なのかという問題だと思うんです。
【北村委員】教育内容ということが余り詰めていないんです。
【井上委員】まさにその点で案を出してくださいということなのです。
【北村委員】では、教育内容については、ここでやらないままに、では、そちらの方で案を出してくださいと。案は案としてこちらでまた検討しましょうと、こういう方針であると。
【井上委員】しかし、教育理念のところで、こういう条件を満たすようなカリキュラムにしてくださいということは言っているわけです。
【北村委員】でも、非常に抽象的ですね。
【井上委員】でも、これ以上には書けないでしょう。例えば、民法を幾つ教えなさいというわけにはいかないのです。
【北村委員】それはそうです。
【井上委員】この理念をブレイク・ダウンしていった場合に、具体的にそれではどういう教科内容が考えられるかというのを一遍出してください。それを見た上で、そんなものなら採用できませんということになるかもしれない。そういう話だと思うのです。
【鳥居委員】私は北村先生の意見に全く同感です。北村先生の意見に沿って、この留意すべき事項をどこかに頼むとして、それをマンデートとして読んでいくとしますと、①は何が書いてあるかというと、①は、適正な教育水準を確保してくれと。関係者の自発的創意を基本にしてくれ。ということは、国が設置者になる場合、あるいは学校法人である私学が設置者になる場合、独創的な案を出してくれと。それから、全国に適正に配置してくれと。これがまず1番目に書いてあって、これはいいんです。
2番目に何が書いてあるかというと、法科大学院の教育内容の中で、真っ先に留意してほしいのは、既存の学部の法学部との関係をはっきりしてくれと。これもよく分かる。
3番目が分からない。3番目に、法曹三者の教育と、それ以外の教育とモザイク状に混じっていてもかまわないけれども、うまく整理してくれということが書いてあると。
その次の4番は、法科大学院における教育ではなくて、法科大学院における上記のうちの法曹教育は、法曹教育コースはどうあるべきかということが④には書いてあるんですよ。
だから、③には私の頭の中では、法曹コース以外のものが書いてあって、そのうちの法曹養成コースについては、私の言葉で言えば、法曹教育は在学中の各種法務実務実習を実施する新たな専門大学院を構想しつつ、司法試験及び司法修習の在り方、及びそれらの有機的な連携を検討してくださいと。そういうマンデートなら分かるわけです。
【井上委員】そこは鳥居先生の御意見としてはよく分かるのですけれども、みんなの意見がそういうことで一致しているかといいますと、そこまでではないということなのです。その意味で、ここに言う法科大学院というのは、とりあえずは法曹を念頭にしたものなのです。
【竹下会長代理】③は法曹を念頭に置いたものなのですね。
【鳥居委員】③は法曹を念頭に置くだけじゃ狭いんです。③は法曹プラスいろんなものがあるのが法科大学院ですよと書いてあって、④はそのうちの法曹教育については重要だから、こういうことを考えてくださいと。
【竹下会長代理】鳥居先生のお考えは分かるのですけれども、ここでの大方の御意見では、やはりこの③は狭義の法曹を念頭に置いたものということになるのではないでしょうか。
【鳥居委員】そうすると、①からどこを見ても、全部法曹教育だけというマンデートになってしまいませんか。
【井上委員】いいえ。とりあえずは、そこに焦点を置いて考えてくださいということです。
【鳥居委員】それがすごく危険だと思うのは、そうすると野放しになるんですよ。大学院を設置するのは大学設置審議会に申請すればいいわけです。大学設置審議会の中身は、皆さん余り御存じないかもしれませんが、国立大学は文部省が構想して、東大なら東大の構想を出してきますね。これはほとんどフリーパスです。私学の場合どうなっているかというと、私学も非常に規制緩和が行われて、出してきたアイデアの90%は通りますよ。そうしたらどういうことが起こるかというと、法曹養成コース以外のいろんなコースを申請してきますよ。それを、これは法曹養成コース以外だから駄目というわけには絶対にいかない。
【井上委員】おっしゃることは分かるのですけれども。
【鳥居委員】労務関係の法務実務コースとか、あるいは国際ビジネスの法務コースとか、みんな申請してきますよ。それを当審議会で議論せずに、野放しで認めるのは危険だから、私は最初から入れなさいと言っているわけです。
【井上委員】一つは、1枚目のページの理念のところに、これはあくまでも法科大学院における新たな法曹養成教育の在り方について語っているのですよという、一応押さえをしてあります。
もう一つ、かなり乱暴な議論かもしれませんが、文部省あるいは大学設置審のレベルで、いろんなものが出てきて認めたとしても、法曹養成制度の一貫としての機関としての位置付けが与えられるどうかはまた別だと思います。それは、ここでの議論で、こういう条件が満たされている場合に、初めてそういう地位を与えられる。仮に司法試験制度と結び付けるとしますと、司法試験制度の受験資格を法科大学院なるものに与えるとすれば、その資格を満たすのはこういう条件でないといけませんよということは、設置審で決めることではなくて、司法制度全体の再整備に関わることですから、ここで決めていく問題だと思うのです。
【鳥居委員】それは司法試験法という法律の方を何かいじらなきゃいけないわけですね。
【井上委員】そうです。それはここでやることです。
ですから、それを満たしているもの以外にいろんなものが文部省の方に申請してくる。それをお認めになるのは、文部省の方の論理としてよければ、それはそれでいいのですけれども、その認められたものの中に、司法制度の側あるいは法曹養成制度の側から見て適格でないものがあれば、そういう特別の資格は与えられないことになる。そういうことだと思うのです。
ですから、こちらの条件をいかに設定するかというのはここでの話であろう。私自身はそういうふうにとらえているのです。
【鳥居委員】それは一つの大事な仕事で、要するに司法試験法、司法修習についても法律があるんですが、その法律の側から見て、どんな適格条件を満たした者が新しい法科大学院の法曹三者コースであるかと。それは我々が議論しなきゃいかぬ。
同時に、この司法制度改革審議会では、その他の関連領域についても、こういう望ましい法科大学院の一部があったらどうかということを考えるのか、考えないのかというのと。
【佐藤会長】それは将来あり得る。
【鳥居委員】さっきの北村先生の御意見と同じなんですけれども、ある程度のイメージを構想しておいて、何々委員会なり、何々会議なりに預けないと、そっちの議論はかなり暴走しませんか。
【井上委員】暴走させるかどうかは、こちらの問題だと思うのです。当面、狭い意味のところでまず考えてみてください。そういう前提で、どういうことが考えられるのですか、本当にできるのですか、ということで具体案を出してもらって、これをベースにする。そこに隣接職種の問題を加えていくことはできる。加えればこうだなというふうに考えていく。
【鳥居委員】そうじゃないんです。それは国立大学的発想でして、私立大学は競争ですから、企業秘密なんです。だから、設置審議会にどんな構想を出すかというのは、本当に出すときまで企業秘密です。これを出しますと、みんながあっと驚いて、ええ、こんなのをつくるのか、となるわけです。
【井上委員】制度として、そういうものにも伸びていく可能性のある組織にするかどうかということは、一般論として議論できますし、すべき問題です。
それは、例えば、隣接職種との関係で言えば、隣接職種の養成というもの、その権限ですとか地位ですとかに絡めて、その養成はどうあるべきか。そこに法科大学院なるものがどう関与していくのか。関与していくべきだということになれば、法科大学院のところに、そういう役割も付け加わっていいんじゃないか、といったことを、ここで一般論と考える。その上で、個々の中身はまさに企業秘密で、うちはこうやりますよというのは設置申請のときに出てくるものだということではないでしょうか。
【中坊委員】法科大学院の構想についていろんな話が出てくること自体は大変いいことだと思うんですけれども、肝心要の法曹教育というのに限定してみたとして、先ほど北村さんのおっしゃったことに多少関連もするんですけれども、我々が今どこまで到達してきたのか、そして、なぜ法科大学院というものが必要なのかというところが、今日のこのまとめでは全くと言っていいほど明らかになっていないというところが問題です。ロースクールというのは、鳥居さんなどがおっしゃっているものより、もっと小さな、まさに狭い意味における法曹を養成するにしても、私はロースクールというものが必要であると思います。絶対に必要でありますということは私も認めています。
問題は、ロースクールというものがなぜ必要なのか。いわんや、これを法務省所管で考えるのか、あるいは文部省所管で考えるのかということから、文部省の所管の方にこれを委ねようということになれば、この司法制度改革審議会としてはちゃんと特定していますかということを、まさに北村さんがおっしゃるように、もう少し明確になっていないと、これをもらった方も困るし、今度は所管で法務省でない文部省の方へ持っていこうとするのに、大変御苦労いただいて、こうして文章をまとめていただいたにしては、私は余りにもお粗末ではないかと思います。このまとめのままではもらった者も困るだろうし、私の方も安心して渡せません。
それでは、どこが一番欠けているかと言いますと、まず、お考えいただいて分かるように、まず我々は、論点整理の中において、先ほど言うような三つの視点から相当程度法曹の数とか、質とかいうものについてかなり突っ込んで我々は論議をしているんです。それを踏まえて、私ではありましたけれども、その登山口ともなるべき弁護士改革について具体的な数字まで示し、そして、公益性というものがあって、それはロースクールの先生になることも含むということを言っています。
また、すべての行き着く先が最終的にはまさに司法の中核たるべき裁判官をどう選ぶかというところまで全部縦糸の背骨で、すぱっとつながっている。その一番裾野のところをやっていただくんですということを、私たちとしては、論点整理の中から、あるいは弁護士改革の中から、また、裁判所改革、職員の人員増加の審議の中から、今まで順番に階段を上がってきているんですよ。その階段を上がってきているというところが今後の、大変失礼な言い方ではありますけれども、「審議の経過」の欄に、今日見ると、突然、私が言うことまで、今日配付の取りまとめ文書ににわかに、竹下さんと中坊さんの各レポートが行われたということだけが、口で言えばそれだけがちょこっと入っている。何を言おうとしておったのかということの何も位置付けもないまま、ただ文章として入っている。大変恐縮ではありますけれども、私は竹下さんが説明されたのと、私が弁護士改革を論じたのは立場が違うんです。少なくとも会長もここで皆さんに諮られた。だから、私の報告については、ここまでは認識が一致したと取りまとめがなされた。竹下さんのときには何も我々としてはそういうところまで書かないとされた。そうでないと水原さんも今日も刑事のことをやられます。この前陪審があったでしょう。今日も法曹一元があるでしょう。そういう勉強でやることと、本論としてやることとは別個ですというちゃんと断られて、我々もその意思を持ってやってきたんですよ。少なくとも私自身は。
にもかかわらず、今回のこれには全くそういう問題には触れられていない。それでは、今おっしゃるように、法科大学院と言ったって、大体なんぼくらいの人数でやるんですか。それさえも明らかでない。それでは、1年間にどの程度の合格者数を具体的に考えているのか。5万とか6万という数になればどうなるか。それは少なくとも今言うように、実務を習うというよりも、裁かれる立場を全部経験したものをアメリカと同じように弁護士さんとして教育していくんですと。その意味の実務修習ですというのと、研修所で裁判官になる人が一本釣りで出ていくんですよという制度とでは、研修所の在り方も違う。先ほどから髙木さんの言われるように、修習の内容から何もかもがごちゃまぜになったまま、しかも、修習の在り方と司法試験の在り方とみんな一緒に考えろと言われたって、そもそもどういうことをあんたたちは司法制度改革審議会としては考えているんですかと問われると、それが明らかでない。
こんなような文章をまとめて、しかも所管外の文部省の方へ持っていくということ自体が、私は極めて問題ではないかと思います。だから、この文章を見ても一見して分かるんですよ。ここには基本的認識の中に、以上のようなこれまでの審議の結果、司法制度の基盤の強化が実を結び成果を上げるためには、その制度の運営を委ねるに足る質・量ともに豊かな人材を法曹は得なければならないと記載されている。
そこに書かれていることは、量に関しては1字もないんです。
【井上委員】あります。
【中坊委員】いやいや、ないですよ。
【井上委員】さっき御説明したように、2枚目の3段落目で、先生が今おっしゃっているようなことは、短い言葉ですけれども含ませているつもりです。
【中坊委員】含んでいるとかね。
【井上委員】ちゃんと「法曹人口の大幅増加」と書いているじゃないですか。
【中坊委員】増加というんじゃなしに、ここに書いてあるあれですか、今日にわかに加えられたんでしょう。
【井上委員】いや、にわかに、ではないですよ。
【中坊委員】にわかにか何かはいいですよ。私が非常に問題にするのが、それが今にわかにですよ。私が一昨日見た文章の中にはそこが入ってなかった。
【井上委員】いや・・・。
【中坊委員】ちょっと待って下さい。だから、そういう人口という問題については、相当程度問題なんですよ。まず法科大学院をつくると言ったって、どの程度の大学をつくるんですかとか、どれだけの卒業生を持つんですかとか、そして、それがどのように司法試験でやっていくんですかとか、どうして研修でいくんですかというのが、全部具体的な構想に当てはまってこないで、そういうものが途端にぽんと、法科大学院構想、何もかも任せますというんではならない。
現に、あんたの言うてはるとおりならば、少なくとも、今日あなたが1字か4、5字加えられたというのを別にしたら、内容としては、その制度の運用たる質・量とも豊かな人材について、どれだけ書かれていますか。抽象的な字句だけが21世紀に司法に必要な資質として、豊かな人間性や感受性や、幅広い教養と専門的知識、柔軟な思考、これは何ぼ書いてあるんですか。5、6行も書いてあるんです。
資質に関しては5、6行も書いてあって、そして、人員のことに関しては、今、あんたがにわかに今日言われても、法曹人口の大幅な増加ということだけで、大幅とは一体2割が大幅なのか、何倍にも該当することなのか。そして、それを具体的にどうして養成しようとしているのか、していないのか、それをまたなぜしなければならないのかということが書かれていない。論点整理から、私たちの弁護士改革の中で、そしてまた、これをだれが教えるんですかということについて書かれてこないと、弁護士として単に教えに行くわけがないですよ。
だから、私の言う公益的な責務。公益的な責務についてはみんなが持っておるということについては、認識が一致し明らかになって、一歩ずつそれが前進して、ロースクールという問題に立ち入るまでの我々の論議が進んできて、認識の一致したものまでが来ているわけです。
ところが、今まで決まってきたことの大筋のことも全く書かれずに、だから研修所もどうなるのかということも書かれずにですね。
それなら仮に、この前から私の言うているように、司法試験合格者が1,000名にされただけで、もう既に研修所は2年の修習はやれなくて、1年半に短縮したんですよ。これを仮に3,000名ということに仮定したら、もう1か所ではできないということは目に見えているわけです。
そういう意味における司法修習とはいかにあるのか。あるいは実務修習とはいかにあるのか、そんないろんな問題が関わってくるのに、人数の問題についてほとんど論及されていない。この問題をこのままの状態で他の機関に移管させるということについては、私は極めて問題があると思う。それこそ先ほどから北村さんやみんながおっしゃるように、このままでどうして人に委任できるんですかということが、私も極めて疑問に思うんです。
しかも、今までやってきたことを、私にしてみたら、何と私らが言うてきたことを、これほど聞いていただいていなかったのかと思います。全く意に解されずに中坊が勝手に言っているとして、それだったらわざわざこの間、我々の書いたことを文章の中で、私のレポートのときに関しても、ここまでは認識が一致した、ここまではまだ論議の対象だと、わざわざ区別して書いていただいたんじゃないですか。そうしたら、それを当然にして、認識の一致したものは書くべきです。ところが、それを全く書かないでおいて、私はこのものが一体どこへ赴くのかと言えば、法曹一元という中から、その中から裁判官が更に選ばれていくんです。このような構想を描いて研修はいかにあるべきかということも触れて、私はロースクールについても5項目を書いているわけです。
そういう今までの論議でやってきたことを、少しは踏まえて、具体的にまとめて書いていただかないと。今日の字句を見れば、私は竹下レポートと私のとは質が違うと思っています。だから、同じように並列的に書かれても納得できないのです。
それなら、私が言うに、竹下さんのときにはわざわざ断って、竹下さんがここでも言われた。何故私の文章には認識が一致したのがないんだと。中坊さんのやつはなぜ認識が一致したのがあるんだ。そのときにも佐藤会長は、みんなで合意して、これが一歩一歩前に進んでいくんだから、この意味では認識が一致したことにしておきますとおっしゃっていた。そうしたら、それが当然生きて、詰めの論議の前提となった事実となって決まっていかなければ、私はこの審議会の在り方自体が迷走を始めていると思うんです。今回のこれによって。
それでは、論点整理でみてみましょう。論点整理まで言えば、例えば今の髙木さんが最初におっしゃったことに近いことですけど、まず法曹一元ということも論点整理の中で我々は触れておるわけです。そして、法の支配の理念を共有する法曹は厚い層をなして存在し、相互の信頼と一体感を基礎としつつ、国家社会の様々な分野でそれぞれの固有の役割を自覚しながら幅広く活躍することが、司法を支える基盤となる。そして、弁護士制度の在り方が深く、あるいは法曹養成制度の在り方が深く関わっているとまで、全部ここに書かれておるわけです。
そうしたら、先ほど髙木さんの言うように、このような字句がもっと先生の意見の中に入ってこなければ、何も今までのことを全く関係なくお書きになっているというのは、私としては、今まで進めてきた論議というものを、どこかでウサギのフンみたいにぷつんと切っちゃって、はい、これだけ、と言っているように見えるのです。だから、余計にみんなが迷走し始めて、それこそ焦点の定まらない自由な論議になっている。私は大変恐縮ではありますけれども、このようなものをまとめていただいたことについては、いわんや今おっしゃるように、そこの字句を今日加えられたんでしょう。そこまでがっと大きな声で言わはるなら、大幅な人口増加ということを具体的に書いてもらわないと困りますよ。
【井上委員】大声はお互い様だと思いますけれども。
【中坊委員】あんたね、なぜ今日これをにわかに加えたんですか。だれかがこの字句を入れろと言うたんですか。
【井上委員】それはよくよく考えて、先生が前回おっしゃったように、これまでの議論では、数は別として、先生がおっしゃっているような6万というところまで皆さん一致したかどうかは別として、大幅に増加させるということは前提にしているだろうと思われたので、最終的にそのような文言を加えたのです。
【中坊委員】そこが違うんですよ。あんたそう言わはるけど、そのことに関しては、法曹人口の問題についても、論点整理では、合格者数が最初500人だった、今は1,000人だ、イギリスはどうだ、アメリカはどうだ、日本の弁護士はどうだ。だから、何も私のやつが、そりゃ5、6万と言うてるけど、その数字の問題は既に出されておって、今の我々の法曹人口の数が2割増えたらいいのじゃない。弁護士人口も私のだったら3倍に増える。それが大幅なんですよ。だから、大幅と言っても意味がいろいろあるんですよ。
【井上委員】分かりますけれども、3倍というところまでは、皆さんまだ一致してないということは事実でしょう。
【中坊委員】違いますな。
【井上委員】「大幅」ということならばいいんですよ。
【中坊委員】違う。私の言うのは、20%、30%増えても大幅増と言うときもあります。あるいは2倍に増えてもそれが大してないというときもあります。だから、我々としては、今言うように、私も同じ弁護士でありながら、弁護士の人口が2倍とか3倍になりますということを同じ弁護士自身が覚悟して、そこまで書いておる。それは何も私に言わしたら、それを突如書いたんじゃなしに、論点整理の中でここまで踏まえて書かれたから、我々としての、登山口としての弁護士人口はどうあらねばならないかということを書いてある。
それでは、その弁護士をどのような過程の中で、修習の中でまず養成をし、司法試験をどうし、ロースクールまでつくってこないと、今のままでは司法試験のところで首を締めてしまうから、余計にいびつなものになってくるという病的現象が出てきて、それを根本的に治療するためにロースクールというものが必要ですということになって我々の審議は進んでいると思う。
そうしたら、当然に今までの審議経過というものが、しかもすべてが有機的に結合していると言うているんだから、今までのように基本的な認識とかいうところで書いていただかないと、基本的認識の中にはそのところがなくて、量と質まで言ったら、質のところばかり書いてあって、量は全然書いていない。
【井上委員】おっしゃることは分かりました。これは、当然、中坊先生のレポートに基づき議論して、みんなで確認したことを踏まえている。それをここに書き入れるかどうかということだと思うのです。この文章は、それを当然踏まえた上で、法曹養成制度の在り方について皆さんが議論して、ほぼ一致したというところを整理して書いたというものでして、具体的に数が何千というところまで一致しているわけではなく、先生のレポートに基づいて議論をして、大幅に拡大していかないといけないということになった。
そして、それを前提にした場合に、質の問題が当然出てくるだろうということで、法曹養成制度の見直しということにつながった。不十分かもしれませんけれども、それは踏まえているつもりなのです。
【佐藤会長】時間も大分経ち、議論も大分白熱してきましたんですけれども、ちょっとコーヒーブレイクで15分ばかり。
中坊委員のおっしゃる趣旨は、私もそれなりに分からぬわけではありませんので、表現の仕方など今日考えさせていただきます。
【中坊委員】表現のあれだけよりも、この審議会の審議の在り方が、積み重ねていかないと、いつまでたっても、また1みたいな議論ばかりしていたらおかしいから、一つひとつ、筋はこのような進行していますよというところを明らかにした上で議論を進めていかないと、この審議自体が私は迷走してしまいますということを言っているんです。恐らく北村さんが先ほどおっしゃった、まだ詰まっていませんよという感覚は、みんな同じようにしていると思う。いわんや、これは文部省に投げるということについてはそうです。
【佐藤会長】「投げる」というのはちょっと。
【中坊委員】そういう格好になってくると、ますますみんなが何を委ねたか分からなくなって、だから、この審議会の審議の在り方そのものをもう一度まとめのところで、中坊さんの言うことなら当然入っているんだなんて言わないで、もっと謙虚に私たちの言ったことをよく書いてもらってね。こんなでやってはったら、それこそおかしくなると思います。
【佐藤会長】そうしたら、25分に再開させていただきます。いつもよりは5分ばかり多いんですけれども、15分ばかり休憩にさせていただきます。
(休憩)
【佐藤会長】それでは、25分になりましたので再開させていただきたいと思います。石井委員、どうぞ。
【石井委員】よろしいですか、それでは一つだけ。
さっきからお話を伺っていまして、何かロースクールという言葉自体に、全体の意見が引っぱられ過ぎているような感じがしています。その挙げ句、皆の認識が一致しているとか、していないとか、そのようなことにまでなってしまって・・・。認識がここでみんな一致しているという点は何かと考えてみますと、やはり共通の認識としては、21世紀の日本の法曹を担うような、今までにない新しいタイプの人材をつくらなければいけないということだと思います。
ここで、どうしてこのように話があっちへ飛んだりこっちへ行ったりするかということを考えてみますと、21世紀の、今申し上げたようなことについては、どういう人材をつくったらいいかという目標について、共通の認識がないからではないかと思うのであります。
そういう意味で、目標を先によく討議して、こういう人材をつくらなければいけないということをよく結論づけておけば、そういう人材をつくるためにはこういう方針があるではないかとか、こういうシステムをつくっていったらいいのではないかとかいう話になっていって、自然に一つのところへ収れんしていくと思われます。どうもそこいら辺のものがはっきりしないので、議論がダイバージしてしまうという感じがいたします。今申し上げた話は、一見何か遠回りに見えるかもしれません。ただ、そういう目標みたいなものを、これはまたワーク・デザインと少し違うかもしれませんが、目標をきちんと決めて、それからそれに対する道筋を考えるという方式を取っていただかないと、今後、他の内容についても皆さんでいろいろ議論するケースが増えてくると思いますが、その場合について、同じ問題が起こってくるのではないかと危惧いたしておりますので、一言だけ申し上げてさせていただきます。
【佐藤会長】ありがとうございます。
【中坊委員】石井さんのおっしゃるように、数が大変問題なんですね。現状の司法は法曹の数が圧倒的に少なくて、そして小さな司法となっている。小さな司法をどうして大きくするかという、それも少々大きくするのならともかく、まさに量と質が、私はその質というのは、裁判官も質ならば検察官も質、もちろん、法曹全部大いに質なんですけれども、とりあえず一体だれをつくろうとするのかというところがはっきりしていないというところに、このようないろいろな混乱が起きてくる原因になっていると思うんです。
【佐藤会長】いろいろ御議論ちょうだいしました。北村委員、鳥居委員から隣接の方に目を向けてというお話もございましたが、隣接のことは別に御議論いただく機会をもう既にセッティングしておりまして、そこで更に御議論を深めていただきたいと思いますが、従来、議論してきましたのは、法曹養成、狭義といいますか、本体の法曹養成をどうするかというところにやはりフォーカスを当てながらではなかったかと思います。中坊委員が先ほどおっしゃったこともそういう趣旨ではないかという気がいたします。
その本体といいますか、法曹養成の核を成すものをどうするかということについて、今、石井委員のお話にもありましたけれども、必ずしもはっきりしていないのではないかという印象もあるかもしれません。しかし、論点整理を行い、弁護士の在り方について2回にわたって御議論いただき、そして法曹養成について既に3回、今日で4回目になりますけれども、井上委員から相当詳細なレポートをしていただいて、いろいろ議論してきたことも否定できないところかと思います。
中坊委員が先ほどおっしゃった趣旨は、これまでの議論が今日のペーパーの中に十分出ていないのではないか、あるいは、前提にしておったんだろうけれども、その前提はやはりこのペーパーに明確に書き込むべきではないかということではないかと理解しました。それから、「認識が一致した」と理解してきた点についてですが、確かにさっき中坊委員がおっしゃったように、竹下代理から、民事中心でございましたけれども、私どもが取り組むべき課題の全体にわたってどういう問題があるか、どこをどう議論しなければいけないかということをプレゼンテーションしていただいて、そして、それを受けて、弁護士の在り方と法曹養成の在り方については、具体的に我々の議論を積み重ねる必要があるということで、まとめのところで「認識は一致した」ということをわざわざ書いてきたわけであります。
以上のことを踏まえて、今日のペーパーの「基本認識」のところの文章を、もう少し工夫させていただいて、そして、お諮りしたいというように思いますけれども、そういうまとめ方でいかがでしょうか。
【中坊委員】私は、要するに、会長や井上さんや竹下さんのということで、私たちの弁護士改革として認識の一致した点をきちっと文章で書かれていますから、それを踏まえて、ロースクールのところに必要なことが書かれておるというふうに認識が一致しているので、それを踏まえていただければおのずからロースクールというものはいかにあるべきかということについて、少なくとも弁護士の関与の仕方、あるいは前提としての問題点が全部出ていますから、それはそのようにしていただいて、私の方はそれだけ認識をしていただければそれで結構だということです。
ただ、もう一つは、先ほどおっしゃっているように、これはちょっと先走って申し訳ないけれども、先ほどから出ている問題としては、私は、受け皿としての文部省の構成の問題について、吉岡さんもおっしゃっていましたけれども、もう少し構成については考える必要があるのではないかと思います。そうしないと、このままではちょっと難しいのではないかという気がしておりまして、私はやはり利用する立場という方がいないと、先ほど髙木委員が少しフォーラムのことをおっしゃっていたけれども、やはりだれが見ても奇異に感じますので、そこはまた別個に、頼む先のことはもう少し検討していただく必要があるのではないかと思います。私の基本的認識は、今までのものを論点整理を踏まえて、この中で必要なものをちゃんとしていただければ、ロースクールもおのずからどんなものでないといけないかということは決まってきていると私は思っています。また現実的可能性もあるように、私たちはそれを踏まえて議論してきたと思っていますので、それを一つお任せしますので、よくおつくりいただいたら結構だと思います。
【佐藤会長】「認識が一致した」として、私どもが確認してきたまとめのペーパーがありますね。それも基にして、ちょっと井上委員、これから受け皿の方を御議論したいと思いますので、その間に適宜おまとめいただけますか。
【井上委員】わかりました。(井上委員はここで中座。)
【佐藤会長】恐縮ですが、よろしくお願いいたします。それでは、井上委員を中心に事務局でまとめていただいて、後でお諮り申し上げたいと思います。
それを御承認いただくという前提の話で、少し話が前後してそういう議論の進め方はおかしいとおっしゃると非常に困るのでありますけれども、なぜ会長、そう先を急ぐのかという御不満、御懸念もあろうかと思いますけれども、何せ議論すべき論点が多く、しかもその一つひとつ取り出しても、この間水原委員がおっしゃったように2年、3年掛かるようなテーマを抱えているわけであります。それを2年間でやりなさいというのが法律によって私どもの課された仕事であります。しかも、この秋、10月をめどに中間報告をとりまとめなければいけないということであります。これができなければ、それこそ先ほどの中坊委員の御指摘ですけれども、審議会は迷走していると言われかねないことであります。秋、10月と申してきましたけれども、その辺で中間答申をする、そのために集中審議もしなければいけないということで、この間その日程について御承認いただいたわけであります。いろいろな課題をそれぞれ十分立ち入って議論できないという御不満がおありかもしれませんけれども、私どもの置かれた客観情勢を見ますと、いささか御無理をお願いしなければならないというのが実際のところではないかと思われるわけでありまして、この法曹養成制度、法科大学院構想についても、基本的なところを、今日のペーパーについて評価はいろいろございましょうけれども、井上委員に非常に御苦労いただいて書かせていただいたわけであります。ご意見を踏まえ少し工夫した文章を、今申しましたようにまた後でお諮りいたしますけれども、御承認いただければ、その文章を基にして詰めの作業を検討依頼先にやっていただく。これは、決してみんなお任せするということではありません。ここにもありますように、私どもの審議会からもメンバーに入っていただいて、そして節々といいますか、問題があれば必ずこちらにその方からインフォームしていただく。そして、これからは制度に入りますけれども、その途中でも時間を取りながら、大事な点については御議論いただいて、そして検討依頼先に、こういう観点から議論していただきたいという趣旨を伝え、注文を付けていくということを考えております。ですから、決して皆依頼してしまって、結果だけを受け取るということは毛頭思っておりませんので、その辺も是非とも了としていただければと願っております。さっきから申していますけれども、いろいろな課題を処理しなければならない前提で考えますと、その点は是非とも御理解いただきたいというように思うのでありますけれども、その辺はお許しいただけますでしょうか。
【水原委員】いいと思います。
【中坊委員】構成メンバーというのはこれから。
【佐藤会長】これから。それと、もし今のことで、よろしい、やむを得ないじゃないかということでありましたら、構成メンバーについて少し御議論をいただければと考えるんですけれども。
【竹下会長代理】ちょっと早過ぎるのではないですか。修文されたものをもう一度見ていただいて。
【佐藤会長】さっき申し上げたように話が前後して、それはいかぬということであれば、もうそこには入りませんが。
【山本委員】ちょっとこのペーパーのことで一つだけお聞きしたいことがあるんですが。最後のページなんですけれども、留意すべき事項のところなんですが、この①のところに「全国的に適正な配置となるように配慮すること」、これは何となく分かるんですけれども、⑦のところに「法科大学院が設立される地域以外の地域の居住者等にも法曹となる機会を実効的に保障」すべきだと書いてあります。
これは両方読みますと、何となくこれは小学区制を考えているのかという感じがするんですね。全国一律1学区ではなくて。そういうことなんでしょうか。あえて⑦を置いておく、「資力のない人や社会人」は分かるんですが、後段のところは何か意味があるんでしょうかと思いまして。
【竹下会長代理】特におっしゃるような含意はないと思うのでございますが。「法科大学院が設置される地域以外の居住者等にも法曹となる機会を実効的に保障できるよう配慮すること」というだけです。
【佐藤会長】地域的にも配慮してロースクールを設置するということですが、にもかかわらず遠い人たちもあり得るわけですね。そういう人たちがロースクールに行けないから、実際にそこへ行けないから、どうだという問題は出てくるわけです。だから、それに対しては何か考えようがあり得るかという話です。それについてはいろいろな方法が考えられるかもしれません。例えば通信教育的なものも考えられるかもしれません。そういう配慮もする余地があるのではないか、必要があるんじゃないかという趣旨です。小学区制のようなことを考えたのではありません。
【竹下会長代理】それは地域的な配置は考えますけれども、例えば、九州の人が、東京のロースクールで勉強したいというのであれば、それはそれでもちろん結構なわけです。九州にも配置を考えるべきだと思いますけれども、別に、その地域の人はそこのロースクールに行かなければいけないというようなことを考えているわけではありません。
【山本委員】そうですね。普通はそんなこと考えませんよね。どこでもいいわけですから。分かりました。
【北村委員】ロースクールについては、こういうふうに考えていてよろしいんですか。
設置基準が一応できると思うんですが、今一応できていますけれども、あれがどういうふうになるのかというのは置いておきまして、その設置基準というのが文部省の管轄で、文部省の中でできている。それに対して、そのロースクールを認めるかどうかということを、また別の機関でもう一つそこで司法試験の受験資格を認めるかどうかとか、そういうようなものがまた別に存在するという形で考えておけばよろしいわけですか。
【佐藤会長】そうですね。設置の基準については、文部省だけではなくて法曹三者も入ったところに。
【北村委員】もちろんそうですけれども、最終的には文部省の設置基準みたいな形でできてくるというふうに考える。それとも、それが文部省とは離れて法科大学院の設置基準というのがどこにでもできるんですか。よく分かりません。離れたらどこにできるかよく分からないですけれども。
【佐藤会長】大学院ですから、一応所管は文部省ということに、多分そういうことになるんだろう思いますけれども、実質はどこでどういう基準を定め、設置するにつけてどういう基準を求めていくかという問題ですね。
【北村委員】それも設置基準の中に入れるということですか。例えば、設置基準としては、こういうものを認めて、それが適格性があるかどうかというのはまた別な基準で見るのか、できてもいないのに適格性があるかどうか、よく分からないんですけれども、こういう条件の下に。そこも含めて設置基準になるんですか。
【鳥居委員】一番分かりやすい比較例は、看護婦とそれから医師なんです。看護婦については、文部省の大学設置基準、この設置基準どおりつくっただけでは看護婦になれないんです。実は、厚生省の方で決めている科目指定がありまして、その科目をちゃんと学校が用意していて、それを履修しないと看護婦試験をそもそも受けられないんです。それで、今は文部省の大学設置審議会の方もいろいろ工夫して、柔軟にそれに合わせるようにいろいろ読替えも可能なようにして、工夫をして歩み寄っているわけです。
それに対して、医師はほとんど大学設置基準ですべてをカバーしています。つまり、大学設置基準に書いてあるとおりの医師のちゃんとした教育を行えば、もうそれで医師の国家試験は受けられます。
ですから、北村先生の御質問はどっちを取るんだと、設置基準にすべて書いてある状態をつくっておいて、それであなたは司法試験を受けられますよとするのか、法務省側である種の基準は別途用意しておいて、大学設置基準の条件と、その条件の両方を満たさないと司法試験を受けられないようにするのか、どっちなんだという御質問だと思います。これは難しい問題ですね。
【佐藤会長】制度設計で、今ここでどちらということはちょっと何ですが、実質が問題でして、いわゆるロースクールというのはどういう教育水準、どういう教育内容でなければならないのか、実質が問題だろうと思うんです。だから、それをどこでどういう形でつくり、表現するのかというのは、これから別途考える必要があるということではないかと思います。
【竹下会長代理】今のお話でちょっと伺いたいのですが、医師の場合は、これは文部省の基準で全部書ききっているというお話でしたが、その中身を決めるときには、やはり厚生省の意見を聞くとか、何かそういうことがあったのでしょうか。
【鳥居委員】私は歴史だと思います。明治6年に、まだ東京大学が成立する以前に慶應に医学部が実質的にできた。それで、明治13年までは英米医学だった。ところが、明治10年に東大医学部が正式にスタートして、そこからはドイツ医学と英米医学が並行していったんですね。それで13年に英米医学の方が死に絶えちゃって、それでドイツ医学がずっと発展してきた。だから、ドイツ医学即帝国大学医学部だったわけです。そこで発達してきたカリキュラムをみんなそのとおりやっていますから、今更別に厚生省の方でつべこべ言わなくてもちゃんとできているわけです。
ところが、看護学というのは後から入ってきていますから、まともに看護学が4年制の大学になり始めたのがこの10年ほど、看護短大という制度が導入されたのが15年ぐらい前ですから、それ以前は要するにお医者さんの家に住み込んで適当に勉強して、それで国家試験を受けていたわけだから、それこそ厳重な科目指定をしておかないといけなかった。その歴史の違いだったんです。
【竹下会長代理】そうですか、なるほど。
【佐藤会長】だから、今度は新しく立ち上げるわけですから、そこはある意味では自由にと言っては何ですけれども、実質に即して考えたらいいということになりますね。
【中坊委員】私は繰り返すようですけれども、質もさることながら、数の問題が大変今度のロースクールを考えるときの大きな要素だろうと思うんです。それによって修習の在り方から司法試験の在り方からみんな変わってきますから、大体数をどれぐらいのことを想定するのかというのを決める必要があります。中坊さんの5、6万人の提案を一つの考え方と言うことだけで済まされるのかどうかという問題があります。それが当然数が決まってきますと、そこで弁護士の数も自動的に決まってきます。そうすると、裁判官の数というのも、この前、弁護士20人に1人というのが裁判官の割合とも言われている。やはり全体の数というものを想定しないと、具体的な話が頭に具体的に浮かばない。そのまま論議が進んできて、質や何やと言って、本当にどのぐらいの数がいいんだという議論になる。そうしたら恐らく修習、研修所みたいなところが一つでは無理になりますよ。
だから、そういうのをどうなってくるのかということを論じていかないといけないから、あくまで数の問題が今のところ非常に大きな要素になってくると、私はそう思っているんですよ。
【井上委員】中座していた間の御議論をフォローしていないで発言しますので、とんちんかんなことを言うかもしれませんけれども、今の点は両方から攻めていかないといけない。養成の方からみて、質を保ちながらやれるのはどの程度かというのと、他方、需要がどの程度あるのか、そして、目標値をどの程度の期間掛けて実現していくのか、それによって全体の構図が決まってくると思うのです。
ですから、数の問題は、恐らくそういう意味では、また最後というと叱られるかもしれませんけれども、両方から攻めていった上で出てくる事柄だろう。もちろん、具体的に数というものを考えないといけないのですけれども、ロースクールの問題について言えば、意味のある授業をするためには、どの程度の人数が適正規模なのかということが一つある。最低限もあれば最大限もある。それを基準にして、それでは一つのロースクールというか教育機関の規模というのはどの程度であり、しかし、そうは言っても、それでは教える人をいきなりそろえられるのかということからまた制約がかかる。そういうのを基準にして積み上げていくと大体この程度かということになる。そういう問題かなと思っているのですけれども。
【中坊委員】だから、まさに石井委員のおっしゃるように、ワーク・デザインのあるべき姿というのは論点整理で我々としては明らかにしているわけですから、鶏と卵みたいなことなんで、両方とも要るわけですから。
私はまず論議というものはある程度の数を頭に入れて論議をしませんと、そこが抽象的なことになってしまうと、すべてが抽象論にしてしまう。ある程度の数を仮に当てずっぽうにせよ一応置いて、それが現実的にはどのような経過の中でどのように可能なのかどうかという論議がされていく必要があるし、実現をしていく必要があると思うんです。そういうことを言っているんです。
【佐藤会長】中坊委員、弁護士の在り方について御報告いただいて、それについての審議会のまとめなんですけれども、こういうまとめになっています。
「・法曹(弁護士)人口の大幅増員の必要性について認識が一致した。・望ましい法曹(弁護士)の人口に関しては、様々な考え方がありうるが、一つの目安として、本審議会において、中坊委員から、『隣接法律専門職種等との関係を検討することを留保しつつ、5~6万人程度の弁護士人口を目指す』との考え方が提示されており、今後更に議論されることとなる。」
そういうことになっていますから、これは恐らく、中坊委員がさっきおっしゃった2割とか3割とか、そういう数字ではもはやないということははっきりしているんだろうと思います。ただ、具体的な数字としては我々としてまだ正面から議論していないわけです。
それで、どういう数字を目指すにせよ、さっき井上委員がおっしゃったように、そのためにいわゆるロースクールをということなんですけれども、質を維持しつつやっていくとなりますと、どのくらいの時間が必要かとかそういう問題も出てくるだろうと思います。目指すものは何かということと、どういう時間を掛けながらやっていかざるを得ないかというような問題もあり得るだろうと思うんですけれども、これはまさに法科大学院にはどういう水準・内容の教育を期待するか、例えば、少人数教育とかという話がありますけれども、そういうことをこれから御議論いただくことになってくるのではないかと思っておりますが。
検討依頼先の在り方についてに入っていいですか。
【鳥居委員】これはいつやるんですか、丸印が付いている紙は。
【竹下会長代理】これは主な意見。
【佐藤会長】そうでございます。今までの議論でございまして、今日出た御議論もこの中に入れて、依頼先に、実は私どもはこういう議論をしていますということを知っていただいた上で御検討いただきたいと思っております。今日の御議論も含めてまたペーパーをつくりたいと思います。
では、依頼先の方に入りましてもよろしゅうございますか。
依頼先について、先ほどから既に御議論が出ておりますけれども、今日お配りした案には文部省1名、法曹三者各1名、大学関係者5名程度、それから、当審議会との円滑な連携のため審議会委員1名が参加というようになっているわけですけれども、この点について御意見賜りたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
【吉岡委員】一つは、この審議会から1名ということで、この今のハードスケジュールから言うと、その1名になった方は随分大変だなと思いますけれども、複数名にしておく必要があるのではないか。生身の人間ですから、いつどういう都合が出るかも分かりませんし、1人だとちょっと困ると。
それから、あと構成ですけれども、文部省1名、法曹三者各1名というのはこの程度かなと思うんですけれども、大学関係者が5名入っていらっしゃるのに利用者がゼロ。これはやはり外から見ると非常に奇異な構成だと思います。このメンバーの中からとは申しませんけれども、やはり利用者を代表するような方が複数名入らないと、ちょっと公正とは言いにくいんじゃないかと思いますけれども。
【佐藤会長】御趣旨は分かりました。この案に固執するわけではありませんが、こういう案を考えましたのは、技術的な面について御検討いただくということが一点と、それから、非常に短期間に審議していただかなければならない、数か月で議論を煮詰めていただかなければならないということで、人数が多いといかがかなというように考えたことがもう一つあります。
さらに、審議会から1名入っていただいて、その議論の状況など、絶えずフィードバックしながらやっていくというようなことを考えたのですが、この審議会にはユーザーの方々も入っていらっしゃるわけですから、我々の議論でそこはカバーできるのではないかというような思いで、こういう案にしたわけですけれども、そこは今日御議論いただいて、変えることはやぶさかではありません。考え方はそういうものとして御理解いただきたいというように思うわけです。
【北村委員】依頼先が文部省ということになっているんですけれども、それで、検討体制が文部省の1人であと文部省に関係がない人たちということで、やはりこの司法制度改革審議会というのはどこの省庁にも、法務省寄りでもないし、文部省寄りでもないというような形を取った方が私はいいと思うんですね。
したがいまして、依頼先が文部省なのではちょっとまずいかなと。別にお一人の方にどうのこうの言うわけではないんですけれとも、そういうスタンスを取っておいた方がいいんじゃないかというふうに思いますので、そうするとどこでということになると、司法制度改革審議会の中に何かつくるのかなというような感じもあるんですが、ただ、この第6条の中では、関係行政機関というふうなものに対して、資料の提出は幾らでも求められるわけですよね。
したがいまして、そちらの方がどこの省庁に偏ったという形にならなくていいのではないかなというふうに思っているんですが、ただ、5名とか法曹関係者3名とかというふうに入ってきますと、何かこの審議会の下にまた同じような構成、利用者ということで、また同じような審議会をつくるという、これも忙しいからきっとほかの人を入れましょうということなのかと、その辺はよく分かっていないんですけれども、吉岡委員の意見などを入れますと、そういう形の方がいいかなというふうに思うんです。
【髙木委員】先ほど井上さん、こっちに振り戻してくるんだから、ここは利用者代表とかそういうのはいなくていいんだと、私はそれはちょっと違うと思うんです。こういうものというのは、そういうところで議論が始まって、それが一つの意思を持っちゃうと、それに対するある種の執着が生まれたり、またこちらからも物が言いにくくなったり、そういう意味では先ほどの井上さんのお答えは、そうかというわけに何となくいかないのかなという感じがしております。
それで、これは確かに大学という既存の教育の仕組みがあり、当然関わっていただかなければならぬという意味で、文部省との関係はあるんだろうと思います。私も以前にも申し上げたことがあると思うんですが、例えば、アメリカ型のロースクールが本当に日本に合うのかどうか分かりませんが、180校ぐらいあるようですけれども、もっと自由に、それぞれ大学の意思で、あるいはそれぞれの機関の意思でロースクールが設立されてきたといわれています。大学設置基準などのルールから少し離れた、もう少し自由な体系みたいなものも想定できる日本型ロースクール議論は、少なくとも一度やってみる価値があるのではないかと、かねてから思っておりまして、このような議論の仕方が日本の社会の実情を考えて可能なのか、そういう意味で、文部省のあるいは大学の先生が5名もお見えになるという中では、法学教育ありき、ロースクール、付加すべき研修の問題は先ほど議論ありましたけれども、まさにここにも架け橋という言葉が使ってありましたけれども、橋の議論だけで終わっちゃうのではないかなと思ったりもします。これは検討をお願いする方々に失礼になってもいけませんけれども、そんなことも含めて、もう少し違った議論の預けていただき先がないのかと思ったりするんですが。
【佐藤会長】何か今のに。
【竹下会長代理】例えば、どのような主体にロースクールの設置を認めるというようなことを考えておられるのでしょうか。何かお考えがあればお聞かせいただきたいと思うのですが。
【髙木委員】ここには石井さん、山本さんもお見えであったり、いろいろなお立場でそれぞれ、今の司法をどう直そうと思っておられるか、例えば、経営者団体の皆さん等は、今の日本の司法制度を改革しろということで、いろいろな提言もなされてきた経過もあるわけですし、それから、先ほどちょっと御紹介した司法制度改革フォーラム、あの人たちもいろいろなことを言っておられます。自由設立主義でやるべしだとか、そういう意味でいろいろな御意見を持っておられる。そういう人たちにもいろいろ物をおっしゃっていただいたらいいんだろうし、もちろん、何かまとめなければいかぬわけですから、収拾のつかぬようなということになってもいかぬという面もあるかもしれませんが、私自身がロースクールは確かに有力な、法曹人口を増やしていくための方策たり得ると思いますが、法曹人口増やさぬでいいというなら、今の司法試験を続けていかれたらいいという水原さんが前言っておられたような御意見はあるわけですし、そういう意味で、いろいろな方々に議論していただいたものをこちら側で受け取って、それを実際に具体的な制度として担保としていくのは、この審議会の役割だろうと思うんです。そういう、何となくの印象論なのですが。
【中坊委員】私、思いつきなんですけれども、先ほどから少し私も言葉が過ぎて、投げる、投げるという言葉を使いましたけれども、やはりこの審議会が初めて他のところへそれを委託するかどうかというのが結構問題になって、しかしこれは何のかんの言っても法務省所管で法曹養成はなっておるところで、そういうことでやっておる状況の下において、やはり大学ということに関連して文部省の所管になっているから、非常に現実的だし、そこのお役所の方との関係の下にやっていくというのも私は一つの実際的なことではないかと思う。私はそれはそれでいいと思うんですけれども、そこが我々の大学関係者5名という方が、全くだれが選任するのかとか、そういう関係になってくるので、私は実態としては、今度お願いする設置のところは、我々の中の小委員会というか、小専門委員会みたいになって、私は別に差し支えないし、また、所管が文部省になっているから文部省の所管に移すだけだということになってくる。大学者関係者5名と書いてある5名が、必ずしも全部これから選ぶ方ではなしに、できることならば、こちらの審議委員から選ぶことも考えるべきです。例えば、我々のこの委員の中であっても、公立と私立とは違うわけですよ。
だから、井上先生に連携役を務めていただければ、我々とどうなっているか、我々は、去年から論点整理とかいろいろ積み重ねで、先ほどから言うように、階段を上ってきているのをおわかりいただいていますよね。それと今度全然異質の大学関係者が突然出てきてわっとなっても何だから、私は実態としては、この審議会の小委員会みたいになって、文部省の所管の中でできていくという形のものにすれば、我々も安心感がありますから、ここで言うように、声が大きかったり小さかったりする人だと分かった上で、ああ、あの人が言っているのかとなる訳です。なるべくなら私は、実際上の問題として、大学関係者とおっしゃっても、それを全然文部省がまた別の方を選任したりするのではなしに、できる限りこの委員の中から選ぶべきだと思います。だから、その中には先ほど言うように、利用者という立場もここにいらっしゃるんだから、確かにこの委員の中で会社も忙しいのに、また小委員を兼ねるのは嫌だということにはなるかもしれないけれども、できることならやはりこれはクリアしていかなければ仕方がないんだから、大学の先生方を中心に、むしろ率直に言って、法曹三者の我々とはちょっと別の方を選んでもらうことにして、あとの利用者とか大学関係者はできる限り我々の委員の中から、大変御苦労ではありますけれども、小委員会だと思ってなっていただいてやっていただけると、私は一番安心してお願いできます。そうすると私がさっき言ったように投げるとか、そういう言葉は出てこないわけですよ。我々の身内が、子供がやっていることになりますから。そういうようにした方が感じとしてはいい。いろいろ声が大きかったり小さかったり、問題が起きますけれども、言おうとする趣旨はそういうことです。
【佐藤会長】いろいろ御意見出ましたけれども、ほかにいかがでしょうか。
【中坊委員】文部省とよく相談してもらったらどうですか。私のことだけ言っても相手方がある話だから、今言ったような趣旨をできるだけ生かしてもらえるような方向で、これまで私らは文部省に1回も会っていないから分からない。だから、一遍窓口になっていただける方が、今のような意図を踏まえて、子供だから安心できるというわけにはいかないけれども、一応そういう形で、できる限り我々の委員の中の小委員会的なものだというふうに理解できるようにしてやっていただけると、私たちは非常に安心してやっていけます。そう言うと、ほかの大学の先生たちは何だということを言わはるかもしれぬ。そこはちょっと私たちは今のところ何とも言えない。私の個人的な気持ちとしては、そういうふうにしていただけると、我々は安心して任せられますということです。
【鳥居委員】これも話の整理のためなんですけれども、今、髙木さんが提起された問題、要するに、正規の大学以外のところもやったらどうかという考えもあるという御趣旨があったんですけれども、そこのところをまず最初に我々決めないと、これは文部省に預けるにしても、しにくいんですね。
学校教育法という法律がありまして、その第1条に、学校の定義が書いてあるんです。その定義は、大学院から幼稚園までに至る定義なんですけれども、その定義に合致する学校だけが実は文部省傘下の学校なんですね。それを通称1条校と言うんです。ロースクールを1条校とするのかどうかというのは、決めておかないといけないわけです。
ちなみに、1条校でない典型的な公的な大学校を例として挙げますと、防衛医科大学校というのは1条校ではなくて、防衛庁所管の医科大学専門学校です。あそこを卒業した人はもう1回学位授与機構から別途学位をもらわないと学位が取れないんです。そういう学校も幾つかあるんです。今回、そういう教育のルートから言うと、1条校以外に格付けられてしまったら、かえっていけないという問題が一つあります。
もう一つは、これは井上先生の報告に何度か出てきていることなんですけれども、正規の学校ではないルート、つまり予備校等で司法試験の勉強をしている人たちがどんどん増えている状態を是正しようと今しているわけだから、1条校でちゃんと教育しようという趣旨が我々にはあるんじゃないかと思う。そういう意味では、これは1条校所管の文部省もかんでくれないとできない。
2番目に大きな問題は、その1条校の一部である大学院というものについては、大体昔から決まっている設置基準があったわけです。それが一部改正されて、専門大学院という特別の存在が認められるようになって、今月、4月1日から2校スタートしたばかりなんです。
ところが、その専門大学院の新ルールにロースクールがうまく合うかどうかを検討しなければいけない。実は、専門大学院は2年制ということになっていますから、ちょっと無理かもしれない。3年制かもしれない。そうすると、実は、専門大学院のルールを文部省側に改正してもらわないといけないかもしれないということがあって、これも文部省がかんでいないとできないという問題があるわけです。
そういう意味で、私は文部省に何かの形で関与していただくことは、どうしても必要だと思います。同時に、大学関係者と書いてある方々の中に、今申し上げたようなもろもろのことをつかさどっている大学設置審議会の造けいの深い人が少なくとも1~2名入っていないと、これは多分できない。
それと同時に、数名の大学関係者の中には、法務実務について非常に詳しい人が入っていないと、これまた議論できない。
それから、一番最後で大変失礼ですが、純粋法学者も入っていないと議論できない。そういう配慮をしていただけるのであれば、私はこれでもいいんじゃないかという感じがします。
【髙木委員】まさに実態は、今、鳥居先生がおっしゃったとおりで、そんなに詳しいわけでもないんですけれども、ヨーロッパやアメリカの歴史を見るときに、ユニバーシティーとインスティチュートとの違いを、哲学はユニバーシティーの一部になり得るけれども、化学だとか、ああいう実学はインスティチュートと言う。なぜMITがあり、なぜハーバード・ユニバーシティーがあるのかと。法学というのはユニバーシティーの領域の中にずっとあったようですけれども。そういう1条校だから、あるいは防衛医大だからという仕切りが、何かの整理の基準が要るからということかもしれませんけれども、それがあるからこうだという理論はどうなのでしょうか。私、非常に非現実的なことを申し上げているような気がしますけれども、各大学の協力というか、かなりアグレッシブな大学の行動がないとできないんでしょうし、それから、お金の問題あるいは施設の問題やらいろいろ考えても文部省の行動がないととてもできない話でしょうし、現実的にはそういうことかもしれませんが。感じだけなのできちんとしたものを申し上げられませんけれども、今のお話を聞いておって、ユニバーシティーとインスティチュートの話を思い出しました。
【佐藤会長】鳥居委員がおっしゃるように、学位の問題もグローバル化のことを考えると、ある意味で重要な要素ではないかと思うんですね。
【鳥居委員】資料集のどこかにJDの話が出ていますけれども、この資料集ではJDは法学修士と訳しています。本当に修士なのか、それとも我が国ではJDを法学博士あるいは法務博士と呼ぶのかということは、こちらの委員会で議論しないとちょっと預けにくいですね。預けられた方も困ると思うんです。
【井上委員】それはちょっと後の問題ですね。資料集のほうもあくまで仮訳ですし。
【佐藤会長】髙木委員がおっしゃるように、理論的に考えるともっと自由に考えたらいいじゃないかという問題は確かにあると思うんですけれども、現実的にどうやって早く、スムーズに立ち上げるかと考えたときに、今、鳥居委員がおっしゃったようなことなのかなと思うんですけれども。ただ、JDの話が出ましたけれども、既存の枠と違った発想を取らなければならないところもいろいろ出てくるかもしれない。既に今年二つスタートしたということですが、それと同じような性質のものなのか、ロースクールは別に考えていただかなければいけないところがいろいろあるのか。その辺は髙木委員のおっしゃる理想を制度の中にいかに盛り込むかということも、我々として議論すべき場が出てくるのではないかと思います。既存の制度にすっぽりはめ込むのではなくて、新しいものをつくるわけですから。このロースクールは素でのスタートしたものと同じかどうかということ自体非常に問題でして、私どもが考えているロースクールであれば、ちょっと違うかもしれない。ですから、その辺の議論はこれから残っているんじゃないかという感じがするんです。
【鳥居委員】ですから、このどこかに仮に預けるとしまして、一番先にやはり決めておかないと預けられた方が困ることというのが幾つかありまして、一つは、学校の運営形態側からいくと、今のどういう学位かとか、大ざっぱに言って何と何をさせるのかということだと思いますが、むしろ司法制度の側から言いますと、司法研修と司法試験は法律で定められていることですから、そちらの法律改正に関わるようなところは、我々の方で基本的な考え方をある程度出しておいて預けるか、あるいは1回議論してもらった上でこちらに引き取るか、どちらか決めておかないと出せないと思うんですよ。これは多分司法試験法に引っ掛かってくると思います。
【佐藤会長】それは出口のところでは避けられない問題ですね。
【鳥居委員】そういうことを話していると、先ほどのユーザーをどう入れるかということも含めて、何のことはない、この委員が全部入ったらまた、自分でものすごく忙しい思いしていますから、ちょっと困ったなというふうに思いますし、私自身はとても不可能なんですね。
【井上委員】鳥居先生のおっしゃった後者の方の問題から申しますと、おそらく後の方のような進め方になるのかなと思います。ただ、これが有力な案で、それを一つの起点にして全体を見直していくというところは合意をしているわけですので、それがある形を取ってくれば、それに連動して司法試験も、司法修習あるいは実務修習というものも、自ずと変わってこざるを得ない。そういう構造になっていることは間違いないと思うのですね。
しかし、それは、ロースクールでどういうことを教えるのかということを前提にしないと判断できないことですので、その意味では、鳥居先生がおっしゃった後者のような進み方にすべきではないかという感じがします。
最初におっしゃった点は、私の報告の中では、ちょっと自分の意見を出させていただいておりまして、既存の設置基準なり専門大学院の設置基準というものを前提にして、そこにいかにうまくはめ込もうかという発想ではなくて、むしろあるべき法曹養成制度の一コマとしての法科大学院というものはどうあるべきなのか、そのためにはどういう教員の体制を取り、どういう教科内容にしないといけないのか、また、入学者はどの程度でどのくらいの就業年限が要るのか。そこから最適の条件というのを導き出し、それと既存のものとを照らし合わせて、もし既存のものに合わせなければ、それを改めてもらうとか、つくってもらう。そういう発想で行くべきではないかということを申し上げたつもりなのですけれども。
【佐藤会長】ここで議論をまとめようとしますと、またお叱りを受けるかもしれませんけれども、時間も既に相当経ってしまいました。あれしてきましたので、文章は今やっていると思いますので、でき次第おかけしたいと思いますが、この受け皿の問題について、メンバーのところはどういうようにいたしましょうか。これまで吉岡委員などからも御指摘いただきましたが、審議会の委員複数名はいかがという考え方と、ユーザーといいますか、有識者といいますか、そういう方にも入っていただくべきではないかという御意見が出ておりますけれども。
【山本委員】現実問題として9月までに仕上げるわけでしょう。我々は夏期の審議がありますね。10月には大きな問題も含めて中間答申をするわけですね。それとこういうテクニカルな問題を我々が詰めるわけにいかないから、アウトソーシングして、テクニカルな部分のサービスを受けようということですよね。確かに、吉岡さんがおっしゃるように、あるいは髙木さんがおっしゃるように、言ってみればでき上がっちゃうとそれに執着が生まれるという面もあるし、できるならばユーザーにも入ってもらう方がいいに決まっていますね。しかし、そういう人たちが入ってくると、また、ここの議論みたいになって、それでは、9月までのテクニカルなペーパーができるかどうかということもよく考えなければいけないような気がするんです。ですから、我々が受け取ったときにきちんとした議論をここでするというのは担保をして。
【佐藤会長】途中もね。
【山本委員】もちろん、そういうふうに割り切るしかないんじゃないかというのが私の考えでございますけれども、考え出すときりがないと思う。そして、その提案は一つだけでいいのかと、おっしゃるようにいろいろな審議会はありますし、そうやっていくと結局、我々がここでやった方がいいんじゃないかという話に戻ってきちゃうんですけれども。
【中坊委員】私は、山本さんと違う説で、我々も大変だけれども、なるべく我々の方も多数入って、純然たるアウトソーシングでなしに、我々の小委員会的なものとして考えてやってもらう方が、安心感、安心感と言っては悪いけれども、これは初めてのことですから、安心できます。しかしこの調子で先ほども意見が出たみたいに、余りアウトソーシングが好きなことになっていくと、あちこち皆アウトソーシングするのかということになってきたりします。これは弁護士会に頼みますとか、これは法務省に頼みますとかと言い出したら、我々は何をするんだということになりかねないし、私は、せっかく初めてのことですから、小委員会的な形でやるのがよいと思います。
ということは、我々の法律的にどうかということもさることながら、先ほど司法改革フォーラムで言われたように、我々は常に国民の目にさらされているわけですよ。そうすると、それがまた今度も受験予備校がはやって、こんなになってゆがんだ格好になったとされている。それには大学の先生も責任があるし、司法試験の担当をしてきた法務省もあるし、弁護士も関係あるし、要するにみんな責任者であるのに、その責任者だけが寄って利用する立場からの改革と言っているのに、それをまた隠れみのにしてアウトソーシングという形を使って、結局、専門家の手に委ねてしまっているじゃないかということが問題になる。この審議会そのものの在り方が国民の目から見たときに、どう写るのかという視点も要るわけです。
だから、今の山本さんのおっしゃるのも十分分かる。我々は、日程の中でただでさえも大変だというのも確かに分かるんですけれども、しかし、そこはやはりそういう国民側から見て我々のこの審議会の答申がやはり国民から信頼されるようにしないと、利用者は全然入っていないじゃないか、そこでお前らは答申をつくったじゃないかということになってきて、そのこと自体によって我々の意見そのものが国民から支持を受けない恐れがないわけじゃない。だから、そういう点も踏まえてもらわないといけないのです。しかも、これは文部省とも話をしなければいけないでしょう。だから、私は別に何も政治家的な発言をするわけではないけれども、やはり担当者が今日の議論を踏まえて、さっきから言うように、よく文部省側とも話をしてもらってやらないと困る。今ここで議論してこうだああだとは決めにくい。だから、今の議論を踏まえて、また会長さんや会長代理に任せて、あるいは井上さんに任せて具合が悪いということになるのか、どういうことになるのか知らぬけれども、とにかく誰かに任さないとこんなのはやれないと思いますよ。
だから、今日の議論をよく踏まえて、それは相手もある話だし、いわんや今回文部省という、鳥居先生なら非常に詳しいけれども、私らは今言った大学設置基準といってもぴんとこない。そんなものが行くんだから、やはりそこは十二分に話し合ってもらって、しかし、我々としてロースクールというものを積極的にとらまえようという意味では一致したんだし、それも司法の在り方を直していくための一つの大きな要素だというところまで位置付けしたんだから、あとはどのように生み出すかということを既存の制度との中で調整をしつつ考えていただかないといけない。やむを得ないと思うので、ある程度、ここは3人にお任せするのか、あるいはそれ以外にだれかもう1人入っていただくか、そこは適当に考えてもらって、何らかの意味で折衝をする人に任さないとしょうがないんじゃないでしょうか。今日の議論を踏まえてやらないとしようがないんじゃないですか。
【鳥居委員】こういうことですか、今の中坊先生のお話や皆さんのお話を伺っていると、法科大学院(仮称)の基本構想をつくるための共同作業委員会みたいなものをつくると、その共同作業委員会はだれが共同するのかというと、まず真っ先に当審議会と文部省と法務省と法曹三者とユーザー、それから学者たちと、この人たちが共同するんですかね、結局。
【井上委員】審議会とこの会議体が同じ立場で共同していくということにしますと、そこで決めてしまうということにもなってしまいかねません。あくまで、最終的にはこの審議会の責任で決めるという形を維持すべきでしょう。
【鳥居委員】さっき私が言った名前はそうだから、「法科大学院(仮称)基本構想を検討するための共同作業」。
【井上委員】あくまで、たたき台をつくるための作業です。
【佐藤会長】基本構想は私どもがやはりやるべきでしょうが。
【井上委員】中坊先生がさっきおっしゃったように、検討体制の具体的中身は、相手のあることですから、今日の議論を踏まえて交渉し、できるだけ望ましい形にするということで、そこのところは会長に委任させていただくのがよろしいのではないでしょうか。
【北村委員】さっき鳥居先生がおっしゃったことと、髙木委員がおっしゃったことに関連するんですけれども、法科大学院を学校教育法の1条の中で考えるのか、あるいは外にあってもいいのか、これは非常に私は大きな問題だと思うんです。それはそのままにして、相手方にまたそれも委ねるという。それはどういうふうに考えればよろしいんですか。
【佐藤会長】やはり基本的には1条の中で考えるということでしょうね。
【北村委員】それはどうしてそういうふうに考えるんですか。どうしてそういうふうに考えるということになったのかということが、まだはっきりしていなかった。確かに法科大学院という言葉は使っていましたけれども、それが何で大学がつくったもの、例えば、ほかの方がつくったものでも、条件さえ整えば認めるというような方向、これはおっしゃったことですね。だから、そういうようなことはなぜ認めなくなるのかというのは、そこのところなんです。
だから、さっき私が申し上げましたように、この設置基準なら設置基準というものがあって、あとそれについて資格付けを行うのがまた別な何かがあるとか、そういうような形で考えるのか、あるいはもう文部省の中での設置基準の中で資格も全部やってしまうのか、だから、広くやるときに何で依頼先が文部省なのかということになってしまいますよね。
これは皆さん方が学校教育法の中で考えるというんでしたら、私はそれで別にかまわないんですけれども、何か私はちょっと競争させた方がいいかなというような意識も片一方であるものですから、あるいは、こういうような条件さえ整えば、大学がなくても法科大学院というものを学校教育法で認めましょうとか。
そのために、文部省が依頼先、依頼先文部省というのは私は気に入らないんですが、文部省が入るというのは別にいいんですよ。だけど何で依頼先が文部省なのかというのが、そこでもう締まりがあるような気がして仕方がないんですけれども。
【井上委員】さっきから鳥居先生も皆さんもおっしゃっているように、必ずしも既存の枠にとらわれずに発想するという前提でお願いすればよろしいのではないでしょうか。
【北村委員】それならそのような形のものを入れておかないと。そうならないですよね。
【佐藤会長】必ずしもそうではなくて、既存の制度の中で、さっきも言ったように、今年スタートした二つとは違う性質のものですから、違う性質のものとして文部省からもちゃんと考えてもらう、そこはこちらから言えばいいわけです。
【北村委員】だから、言わないと駄目ですよね。
【佐藤会長】やはり言わないといかんです。
【北村委員】それとも、この議事録を見ろということになるんですか。
【井上委員】そういうのを含めて1条校にしてもらうということだってあり得るわけですね。
【北村委員】そうですね。だから、それは。
【鳥居委員】先生の議論を極端に推し進めていきますと、今、予備校の一部にあるんですが、株式会社の予備校があるんですよ。非常にいい予備校らしいんですよ。それを認めるのかという話に行き着いちゃうんです。そうでないとすると、つまり、株式会社は冗談じゃないとすると、あとは財団法人でも認めるのかということになるわけですね。財団法人は、全部学校の場合には学校法人という法人格を持ちなさいというのが昭和24年に決まっていますから、これは学校法人でないとまずいわけです。学校法人を新設して競争してくださいとなると、やはり学校法人の新設は大学設置審議会に持ち込まれるわけです。やはり文部省所管なんですね。ですから、株式会社以外は考えられないんです。
【北村委員】全部文部省の所管になってしまうと。
【鳥居委員】学校法人の設立をしていただいて、そして専門大学院をつくる、さもなければ、株式会社等々の運営形態で予備校をやってくださいという、どちらかの選択になっちゃうんですね。と思いますけれども、もしかして間違っているかもしれませんけれども。
【佐藤会長】今のような話でして、一応今までの学校制度の中で考えるが、しかし、この法科大学院にふさわしい形のものを追求する、そこにはいろいろな可能性があると私は思うんです。新しいものをつくるわけですから、既存のものと違った。さっきから言っているように、今年スタートした2種類とも性質はかなり違うと思います。我々が描いているロースクールは。
【鳥居委員】私ちょっと不正確なことを言いました。学校法人以外にも学校を設立していいのがあります。それは国と地方公共団体なんですね。
【北村委員】だから、私が考えているのは、地方公共団体などでつくるということがあっていいんじゃないかなというふうに思っているんです。専門学校のことを言っているわけではないんです。
【佐藤会長】それはまた将来考えなければいけない問題ですけれども。
【北村委員】そういうようなものを含めたような形で考えてくださいというのと、あるいは現行の枠の中で考えてくださいというのとは、ちょっと違うかなというふうに思ったんですね。
ですから、そこの方針ははっきりしていないんじゃないかなと。いや、はっきりしているとおっしゃれば、はっきりしているでいいのかなというふうに思いますけれども。
【佐藤会長】少なくとも、それは将来において排除するものではない。地方公共団体はいろいろな形態を考えるかもしれませんが、まず、本体というと何ですが、まず今スタートさせようという主なものは何かということを、今考えているものですから、ついそうなるんですけれども。
【北村委員】だから、私は、そこで枠がはまらなければいいんです。何というか、検討のときに。
【佐藤会長】それは、枠がはまるというようなものではないと思います。
【竹下会長代理】地方公共団体がつくるものもやはり1条校なのですね。ですから、そういう意味ではやはり文部省所管になってしまうのではないでしょうか。設立主体は地方公共団体であるということを全く排除するわけではないわけですね。
【鳥居委員】現に今年も地方公共団体が設立した新しい大学がこの4月から数校誕生しているんです。ですから、更に充実しています。
【中坊委員】北村さん、我々はこの中で、地方分権という発想もあって、大学、ロースクールそのものは全国的に配置するように心掛けるというのが我々の条件の中の一つに入っているんだから、我々としては、今、どこかに、東京にだけ大学ができるということを想定しているんではなしに、全国に適正に配置されるということを望んでやっているわけです。だから、私はやはりそういうふうに当然のように全国的に大学院というものができるということを想定して我々は出発している、という枠はつくっているような気がするんですけれども。
【吉岡委員】預けるにしても、どういう質を求めるのか、量を求めるのか、そういうことをやはりこの審議会としてはっきりした意向を示す必要があると思うんですね。
それから、ロースクールの在り方自体は、もう一つはっきりしていなくて当たり前かもしれませんけれども、地域を分けるにしても分けないにしても、ある規模の地域ごとに一つあるという形には限らない。おそらく、都市集中型で、かなりの数ができてしまうということも起こり得ると思いますし、競争社会で少子化ですから、これからの大学生というのは数が少なくなってきます。そうすると、その中で競争がでてくる。その競争の中で自然淘汰されていくという考え方を取らざるを得ないと思うんですけれども、その場合、学生の立場になったときに、新しくできたロースクールを選ぶのが非常に分かりにくいですね。そうすると、既存の大学で有名校、そこにつながっているロースクールが魅力のあるロースクールだというふうになってしまうと、ちょっと問題だという気がするんですが、やはりその辺のところをいかに公平にやっていくかということも検討しなければいけないんじゃないかと思います。
【山本委員】それは既存の大学に必ず付くとは限らないわけでしょう。そこもまだ議論していないんですね。
【鳥居委員】一番分かりやすい例が、やはり医科大学なんですよ。医科大学は全然足りなかったわけです。それで増やそうという話になって、国立大学を各都道府県に置いていったんです。だから、現在国立医科大学は42校あるんです。都道府県立医科大学が8校あるんです。私立の医科大学が29校あるんです。そのほかに防衛医科大学が1校あって合計80校。だから、まさにおっしゃるとおり、医科大学の場合はそうやって各県に置いて、あと主要都市に置いたわけです。
同じことをやるんかいなという話なんですね。やった方がいいのか、それは効果的でないのか、そこは我々はまだ議論していない。
【中坊委員】だけど、私は鳥居さんのおっしゃるように全く議論していない訳ではなく、我々としては既に、基本的には社会生活上の医師にならなければならない、おっしゃるように、お医者さんと同じような、国民にもっと普遍化した存在になっていかないといけない、というワーク・デザインのあれは一応つくっているわけです。
だから、法の支配のためには、やはり法律そのものが国民の中にどうしても浸透していかなければならない。だから浸透させないといけないという基本の上に立っているんだから、そういう形として、お医者さんみたいに必要性があるのかどうか、これはまたちょっと別問題にして、また、吉岡さんのおっしゃったように、これからいろいろな競争、だから、今日一挙に完成した姿が突然生まれてくるというのではなしに、まずもって出発して今後どうなっていくかということだろうけれども、我々として具体的にどの程度のものを想定してそれを最初にやってもらうということだと思うんです。
だから、今、我々としてはまさに司法制度を抜本的に改正しなければならないんだから、その一つとして、新しい試みとしてロースクールをつくるんだから、いろいろ危惧とか心配とかあります。それを今おっしゃるように討議しておかないと、当てが外れたらいかぬから、十分討議はしなければいかぬけれども、同時にどこかで踏み切って前へ進まないと、この話は抜本的な改正にはつながらないというような気もするんです。だから、どうしても前向きには処理しないといけないし、そこには今、吉岡さんも御指摘いただいたようないろいろな問題点があるということを、我々も同時に踏まえていかなければいけない。
【佐藤会長】そういう問題はまさにこれから御議論いただく機会が出てくると思います。また、いただかなければいけない問題だろうと思いますので、その前提で、時間ばかり気にして申し訳ありませんけれども、水原委員も、そして私も報告しなければいけない勉強会がありまして、この問題についてそろそろ結論を出させていただきたいと思うんですけれども。
【藤田委員】以前に法曹養成制度とかロースクールが問題になったときに、法曹人口の問題と一体不可分ではないかということを申し上げました。どの程度法曹を増やしていくのが適正かということもありますけれども、質を落とさずにという考慮も落とすわけにいかない。それと、隣接職種との関係をどう見るかというのは、これはかなり法曹人口の問題に影響してくることなんですね。
ロースクールについて議論してもらうにしても、法曹一元や陪審・参審の問題などもみんなこの問題につながっているわけですから、こういう問題を抜きにしてロースクールの将来的な構想はどうかという問題を投げ掛けても、果たしてこちらが意図しているような答えが返ってくるかどうかという不安があるわけです。そういう意味では、やはり今までの議論の積み重ねですね、司法全体の改革をどうするか、さっき申し上げたような問題との絡みがどうかということを受け皿の方たちに理解してもらった上で議論していただかないといけないと思います。それを抜きにして、ロースクール、言うなれば今、百花繚乱、同床異夢ですけれども、そういう構想のぶつけ合いだけで終わってしまっては困るということがございます。そういう意味では、この夏、相当な密度で集中審議をやる。その中で、1回でも2回でも、受け皿の方たちと一緒に議論をするとか、あるいは我々の議論を聞いていただくとか、そういうことを何遍かやれば、結構、こちらで今まで考えてきた議論の積み重ねも理解してもらえるでしょうし、そういうものを踏まえた上でのロースクール構想というものを考えていただければ、それが返ってきたときに、我々が考えているようなものとして採用できるかどうかということを判断できると思うんですね。
そういう点から言うと、先ほどのタイムリミットのことも考えますと、一応、利用者代表や何か入るのが望ましいということは分かりますけれども、ある程度我々との意見交換というか、共通の目標を持つというような機会が確保できれば、限られた期間内で考えを返していただくという意味では、一応こういう検討体制というものを基本にして、そして、あとは我々との間の接触というもののやり方というものを考えていただくということの方がよいのではないでしょうか。
【佐藤会長】分かりました。そうしたら、基本はこういうことにして、審議会の委員1名というように必ずしもこだわらなくて、こちらから複数名入っていただくということも含めて文部省と少し交渉をさせていただくということで、この問題についてまとめるということでいかがでしょうか。
【鳥居委員】会長一任。
【佐藤会長】一任と言われると責任が重い。
【鳥居委員】会長一任するんだったら、今、会長がおっしゃったことを一任したいと私は個人的には思います。同時に、文部省の方で、こういう分野の人の意見を聴取したいと言ったら、その方式については、委員として入れられるか、あるいはヒアリングの形で入れられるか分かりませんが、もう一つは法務省との関係をどうするかも文部省に御意見がおありでしょうから、それも御相談していただくということで一任したらどうかと、私は個人的には思うんです。
【佐藤会長】ありがとうございます。ちょっと荷が重うございますけれども、そういう形でこの問題について、今日お決めさせていただくということでよろしいでしょうか。
【中坊委員】だから、複数というのが二人ということではなく、先ほどから申し上げているように、全部の問題が有機的に結合しているでしょう。今、藤田さんのおっしゃるように座談会だけしたら、それですぐそちらの方にできるのかどうかも分からない。だから、今言うように、我々は徐々にどんどん審議が具体的に非常にワーク・デザインのところから具体的になりつつあるという状況です。その状況が、そこと的確に反映しないと、先ほども藤田さんのおっしゃったように、まさにこの問題は法曹一元と全部密接に関係しているんです。こっちが変わってくると、研修所の在り方も変わってくる、何もかも変わってくるんですから、そうすると、法曹一元とまた絡んでくる。みんなが有機的に結合している問題ですから、その一部をお願いするわけだから、確かに文部省はどうあるべきか、複数というのは1人ではなしに2人だと限定しないで、そこはしかし、また同時に、先ほどみんなもただでさえも大変なんだから、私は堪忍やという人もあるだろうし、だから、その辺はよく考えて。
【佐藤会長】荷が重いというのは、お願いして、いやと言われると。
【中坊委員】そこはよく会長が言っていたけれども、会長が言ってみんな断ったら、この記者会見みたいに、いつも帰りしなになったらまた会長代理になってしまうでしょう。あれもやはりいかんから、多少は皆さん、覚悟もしていただいて、さっきから言うように推薦委員会ではないけれども、受託の義務みたいにして、指名されたらなることにしてやらないと、これはみんな嫌と言いますよ。だから、そこをひとつ会長に御一任して、言われたときには、受けますというふうにしてやっていくことにしたらどうですか。
【佐藤会長】ありがとうございます。
【中坊委員】指名されれば仕方がないとして受け止めていただくということで会長一任ということにしたらどうですか。
【佐藤会長】藤田委員がおっしゃったようなことも、将来集中審議のときに考えたいと思います。では、この件はそういうように処理させていただきたいと思います。どうもありがとうございました。
【井上委員】今、最初にお配りしたまとめの文章に修正を加えたものをコピーしてもらっていますので、もうしばらくお待ちください。
【佐藤会長】そうしたら、恐縮ですけれども、水原委員、大変お待たせしました。しかもいろいろ日程など御無理申し上げて本当に恐縮でしたけれども、それでは、お願いいたします。
【水原委員】それでは、「『国民の期待にこたえる刑事司法』について(論点整理)」、検討すべき論点を可能な限り整理いたしまして、御報告させていただきます。お手元にレジュメをお配りしておりますけれども、これは全部で14ページでございます。時間の制約もございますので、基本的にレジュメの順序に従いまして、その内容を適宜かいつまんで御報告させていただきます。
国民の期待にこたえる刑事司法についての論点整理ということでございますので、まず、国民が刑事司法に期待するもの、すなわち、刑事司法の使命や役割とは何なのかということから話を始めさせていただきたいと思います。
レジュメの1ページ、1(1)の冒頭に、①から⑤として掲げましたように、私なりに考えてみますと、刑事司法の使命、役割は大きく分けて5つあると思います。
①に記載いたしましたことですが、「実体的真実の発見による適正かつ迅速な犯罪者の処分」。すなわち、捜査・公判を通じて事案の真相を解明して、真に罪を問うべきものを迅速、かつ適切に処罰するとともに、無実の者を罰するという過ちを犯さないことが刑事司法に課せられた重要な使命であると思います。このことはまずもって争いのないところでございましょう。
ところが、他方これに勝るとも劣らぬ重要な使命というのは、②に掲げましたとおり、「適正手続の保障」が挙げられます。真相解明という名の下に、被疑者や国民の人権が侵害されることは断じてあってはなりません。真相解明も適正な手続によって行われて、刑事手続における人権保障が全うされなければならないことは、言うまでもございません。
ところが、このような実体的真実の発見ということと、適正手続の保障という、時には相対立する関係にあります要請を調和させて、刑罰権を適正かつ迅速に実現することによって、社会の秩序が維持されて、国民の安全な生活が確保されるものと考えますので、これを③、すなわち「両者の調和による国民の安全な生活の確保」といたしました。
さらに、④の「犯罪者の改善更生」を図っていくことも重要な役割でございます。
また、最近、被害者の権利保護という観点が乏しかった面があるように思われます。これまでややもすれば、被疑者、被告人の人権の擁護ばかりに目が向いた傾向がなしとしません。
ところが、近時、地下鉄サリン事件や片山隼君事件などを契機に、刑事手続における被害者等の保護や救済の必要性が改めて認識されるようになっているのは、御承知のとおりでございます。
こうした刑事司法の使命・役割は、それぞれいずれも重要でございまして、真に国民の期待と信頼に応える刑事司法を実現していくためには、その間の適正なバランスを追求していくことが本当に必要にして不可欠ではないかと思っております。
例えば、被疑者の取調べを取ってみましても、真実の解明と真犯人の適正、迅速な処罰を求める国民の期待に応えるべく、捜査機関が十分かつ慎重な捜査を遂げること。その中で、当の犯罪事実の存否ないしは内容について、最もよく知る立場にある被疑者の取調べを重視することは当然でございましょうし、改悛の情に基づく心からなる自白なくして犯人の更生・改善はあり得ないということも一面の真理でございましょう。
しかし、他方において、真実の究明等に熱心な余り、取調べでの適正さを欠いて、被疑者の人権を不当に侵害するようなことがあってもならないことは言うまでもありません。
逆に、弁護人による援助を受けることが被疑者・被告人の防御権を実効あらしめるために重要でありまして、そのために充実した弁護活動が期待されることは言うまでもありませんけれども、他方、弁護活動として行われるからと言って、いかなる活動も容認されることにはならないと思います。
今後の我が国の刑事司法、刑事手続に関する各種制度の在り方を考えていくに当たりましては、当審議会が論点整理において指摘しましたように、制度を生かすもの、それは疑いもなく人でありますので、刑事司法を担う裁判官、検察官、弁護人が、刑事司法に課せられるそれぞれの使命・役割、相互のバランスのありようを深く見詰め直して、法曹三者が互いに信頼、協力し合い、それぞれの立場に応じて刑事司法が国民の期待に応えるべく、全体として真にバランスの取れたものとなるように不断の努力を続けていかなければならないことを、検討の視点として最初に申し上げたいと存じます。
さらに、これから諸外国の制度視察に行かれるわけですが、諸外国の制度の導入を検討するに当たりましては、各国が刑事司法のいかなる使命や役割に力点を置くかは、それぞれの国情に応じて異なることに配慮すべきことも、指摘しておきたいと思います。
論点は、大きく分けて三つの柱に分かれると思います。その1は、3ページ以下に記述いたしました「刑事裁判の充実・迅速化」でございます。その2は、6ページ以下に記載いたしました「新たな時代に対応し得る捜査・公判手続」でございます。その3は、10ページ以下に記載いたしました「被疑者・被告人の公的弁護制度の在り方」でございます。順を追って報告させていきます。
その1は、「刑事裁判の充実・迅速化」の問題でありますが、これまでもいろいろ御報告をいただきましたところでお分かりのとおり、我が国の刑事裁判は、おおむね通常事件は迅速に処理されておると言えます。地裁レベルで言いますならば、全事件で約3か月、否認事件だけ取ってみましても10か月くらいで処理されておりますが、しばしば報道等で紹介されますとおり、国民の耳目を集める特異重大事件にあっては第一審の審理だけでも5年以上の長期間を要する事件が珍しくございません。当審議会の論点整理の中でも指摘されておりますように、この点が国民の刑事司法全体に対する信頼を傷つける一因となっておりまして、重大な問題でございましょう。
こうした刑事裁判長期化の最も大きな原因を考えてみますと、集中審理が実現されていないことにあると思われますが、十分な捜査が尽くされないまま起訴がなされたために審理が長期化された事例や、どこが争われているのか、争点が明確にされないまま、漫然と審理が行われている事例も見られることなど、これは実務家として謙虚に反省しなければならない問題だと思います。
集中審理を実現するためには、4ページの(2)アに方策を記述いたしましたけれども、弁護士が一つの刑事事件に専従できて、公判期日の集中連続化に対応し得る執務体制の実現を図ることが必須の課題であると思われます。この点につきましては、アメリカのような公設弁護人事務所制度の導入や、後で申します公的刑事弁護の運営主体に雇用される常勤弁護士制度の導入等が具体的な検討課題でございましょう。
また、法律事務所の法人化を進めること。これは中坊委員が既にお述べになられたところでございますけれども、ドイツ、フランスで見られますような第一審の審理期間や公判期日の開廷間隔の上限を法律で示すことの是非などについても、検討すべき論点の一つということができましょう。
4ページの(2)イに「証拠開示」の問題を取り上げました。現行刑事訴訟法においては、検察官、弁護人が公判に請求する予定のあるものについては、事前に開示しなければいけないという規定がございますけれども、検察官の手持ち証拠のうち、証拠調べを請求する予定のないものにつきましては、被告人、弁護人への開示の必要性は明示されておりません。しかしながら、これに対しましては、被告人や弁護人の訴訟準備を充実させて、これによって争点を早期に明確化することが可能になり、ひいては、裁判の充実、迅速化に資するという理由に基づいて、検察官による証拠開示の範囲の拡充を求める意見もございます。
この点につきましては、反面、検察官手持ち証拠には種々多様な資料が含まれておりまして、事件の争点と関連のないものや、証拠開示の結果、ほかの捜査に重大な支障を来したり、あるいは関係者のプライバシー、名誉等に深刻な悪影響を与えるもの、犯人やその仲間による報復の恐れが生じるものなどから、証拠開示の拡充に反対する意見も主張されているところでございます。
5ページのウに争点を早期に明確化することを記述いたしましたけれども、審理の充実・迅速化の観点から極めてこれは重要でございます。我が国の場合、刑事訴訟規則により、第一回公判期日前において、検察官と弁護人の間で争点整理のための打合せをしなければならないとされておりますけれども、現状では必ずしも十分に機能しているとは言えません。諸外国の争点整理手続を参考にする必要もあろうと思います。5ページにイギリスの例を引いておきましたが、起訴されたならば、一定期間内に、被告人が答弁を行わなければならない。また、検察官、弁護人双方が争点を特定することが義務付けられているところでございます。
また、エに「争いのある事件と争いのない事件の区別」ということで記述いたしましたが、メリハリを付けて刑事裁判の充実・迅速化を図るという観点から、被告人が有罪を認めたならば、その後は証拠収集や立証をしないで、有罪として量刑だけを行うという、いわゆるアレインメント(有罪答弁制度)の導入の当否についても検討課題として考えられます。
さらに、オで「裁判所の訴訟指揮権の在り方」で、迅速な裁判の実現のためには、裁判所が期日指定、争点整理、証拠調べ等の各場面において、適切かつ有効な訴訟指揮権を行使することが不可欠であると思います。訴訟指揮に従わない場合の制裁措置を設けることの是非をも含めて、裁判所の訴訟指揮権の在り方についても議論を深める必要があろうと思います。例えば、アメリカにおきましては、当事者が裁判所の訴訟指揮に従わない場合は、裁判所侮辱罪として制裁を課するということもあるようでございます。
論点の二つ目の柱は、6ページの3以下に記述いたしましたとおり、「新たな時代に対応し得る捜査・公判手続」でございます。
これまで法務省の但木官房長からもプレゼンテーションがございましたけれども、社会構造の変化や国民の価値観の多様化に伴って、従来型の犯罪についても凶悪化、悪質化、巧妙化が進んでおります。それと同時に、事後規制型社会への移行に伴う経済犯罪、コンピュータ・ネットワーク上の犯罪、環境犯罪、児童虐待など、新しい形の犯罪も発生していることを指摘しなければなりません。
その一方で、7ページのイで「捜査・公判の困難化」と題して記述いたしましたが、社会構造や国民の意識の変化に伴って、組織犯罪や、いわゆるハイテク犯罪などにおいて捜査・公判における事案の真相の解明は困難の度を深めております。
一方、捜査・公判に対する一般国民の協力は得にくくなっているのが現状でございます。また、国際社会に視線を転じますと、今後、従来とは比較にならないほど犯罪防止や捜査のための国際的な協力が重要になってまいります。
また、人権保障に関する国際的動向にも留意する必要があると思います。
このような新たな時代に対応し得る捜査・公判手続の検討が論点の二つ目の大きな柱であると考えております。
具体的論点として考えられるものとして、8ページの(2)以下に記述いたしましたが、このような現状に照らし、既存の捜査手法による対応には限界がございまして、「刑事免責制度等の新たな捜査手法の導入」も検討課題になるものと思われます。これは御案内のとおり、例えば、組織犯罪におきまして、末端の関与者、すなわち実行行為を行った者、これの刑事責任を免除する代わりに、組織の実態や首謀者の関与等を明らかにする証言をさせて、首謀者の起訴や処罰を可能とし、ひいては犯罪組織の壊滅を図ることも可能とするなど、有効な捜査手法と考えられますけれども、その導入の是非につきましては、国民の法感情、意識等を踏まえて十分に検討する必要があろうと思います。
そのほか、8ページ以下に記述いたしましたが、アメリカやドイツに見られますように、参考人の出頭強制制度、現行法上の起訴前証人尋問の拡充、これは捜査をしておりまして、検察官、警察官の調べに対し、出頭しません、あるいは、供述は拒否していますということを言われたときに、あらかじめ検察官の請求によって、裁判官の前で宣誓の上で証言をしてもらう制度がございます。これを起訴前証人尋問と言っておりますけれども、これを拡充する。
あるいは、おとり捜査の拡充等も検討課題として考えられましょう。
さらに、犯罪の国際化等を踏まえて、捜査・司法共助制度の一層の充実強化も必要でございましょう。
ところで、9ページのウ以下に「検察官の起訴独占主義・訴追裁量権の在り方」と題して述べておきましたが、これは起訴独占主義と言いますのは、我が国におきましては、起訴をする権限は検察官だけに限られております。これを起訴独占主義と言っています。また、訴追裁量権主義と言いますのは、起訴便宜主義とも呼ばれておるもので、犯罪人として、これは犯罪を犯した証拠が十分であると認められる場合でありましても、検察官がいろいろ調べた結果、その性格、年齢、境遇、犯罪の重い軽い、それから情状、犯罪後の状況等を勘案して、起訴せずに社会で更生させるという起訴を猶予するという制度がございます。これは法律家であります検察官の起訴による安定的、統一的な事件処理を実現して、犯罪者個々の事情に応じた改善・更生の道を与える機能を果たしてきたものでございまして、このような機能を今後も一層適切に果たしていくべきものではなかろうかと考えております。
しかしながら、近時、犯罪被害者保護の要請が強まる中で、本当は証拠があって起訴してもらわなければいけないんだという案件について、起訴をしてもらえないということから、私人に起訴権限を認める私人訴追主義の採用とか、検察審査会におきます起訴相当の議決につきまして、法的拘束力を付与するなど、検察官の起訴独占、起訴便宜主義にも一定の制約を加えるべきだとの主張がなされております。
このことは、検察官の起訴独占主義、訴追裁量権の実際の在り方が必ずしも十分に国民の期待に応えるものとなっていないとの表れではなかろうかという見方も可能でありましょう。
先ほども申しましたとおりに、当然起訴してくれるものと思っていたところが起訴されなかったということでございますが、こうした課題につきましては、前回、藤田委員が報告されました国民の司法参加という観点からの検討も必要でございましょう。
さらに、9ページのエに「被疑者の身柄拘束に関連する問題」と掲げておきました種々の問題がございます。
例えば、市民的及び政治的権利に関する国際規約、いわゆる人権B規約でございますけれども、これに基づく規約人権委員会が我が国の刑事司法に対して、警察の留置場を代用監獄としていること。これは本来勾留場所は刑事訴訟法では監獄となっております。ところが、監獄法の1条3項で、警察に付属する留置場はこれを監獄に代用することができるという規定がございますので、警察が逮捕し、その事件について検察官が勾留した場合には、代用監獄として警察の留置場に勾留しているのが現状でございます。この代用監獄としていること。
それから、起訴前保釈制度がないこと。すなわち逮捕されて勾留されている間には、被疑者には保釈制度がないということでございます。
弁護人の接見交通権が制約されていること。捜査に支障がある場合には接見を断ることができるということになっておりますけれども、それを随分制限しているじゃないかという問題もございます。
身柄拘束中の被疑者の取調べが厳格に監視されたり、あるいは録音、テープレコーダーなどによって収録されていないことなどについて懸念を示されておりますので、このことにかんがみまして、適正手続の保障と併せて実体的真実の発見の要請との調和を図る観点から、身柄拘束に関するこれらの問題を検討する必要も感じられます。
制度の問題で、外国には無令状逮捕というのが原則のように言われております。日本の場合には、厳格な令状審査の下で逮捕・勾留されておるということをも前提として、いろいろ検討しなければいけない課題ではなかろうかと思います。
レジュメの10ページの4以下に、もう一つの論点として掲げております「被疑者・被告人の公的弁護制度の在り方」について述べます。現行制度の下では、起訴されて被告人となった以降に国選弁護人を付することが認められるにとどまっておりまして、捜査段階の被疑者につきましては、国選弁護制度を始めとする公的刑事弁護制度は設けられておらないのは、御案内のとおりでございます。この点に関しましては、現在、当番弁護士制度や、刑事被疑者弁護援助制度など、まさに弁護士会や良心的な弁護士の先生方の献身的とも言えます努力によって補われている状況にございまして、改めてその努力に敬意を表するものでございますが、しかし、近時この問題に関する法曹三者の意見交換会におきまして、10ページのウ以下に記述いたしておきましたけれども、公的被疑者弁護制度の確立を主張されております日弁連に対しまして、法務省、最高裁判所がそろって前向きな姿勢を示しておりまして、このことは注目されるところでございます。また、自民党の司法制度調査会におきましても、公的被疑者弁護制度の在り方が検討されて、被疑者・被告人を通じて、公正中立な認可法人が統一的な公的刑事弁護制度の運営に当たること等を内容とする案が採択されたことは、新聞報道で御承知のところでございます。
11ページにも記載いたしましたけれども、当審議会の論点整理におきましても、既に刑事司法の公正さを確保し、被疑者・被告人の権利を適切に保護し、更に適正迅速な刑事裁判の実現を可能にする観点から、刑事弁護体制の整備が重要とされる旨を指摘しており、弁護活動が人権保障のみならず、事案の適切妥当な解決に貢献する面もあることを考慮し、先ほど申し上げました公的被疑者弁護制度を巡る動きをも踏まえれば、その導入は現実的な検討が必要な段階に至っていると考えております。
導入方式につきましては、12ページから13ページにかけて記載いたしておきましたけれども、国選弁護制度、法律扶助制度、公設弁護人事務所制度のいずれによるかなどの導入の方式とともに、制度の運営主体についても慎重に検討する必要があろうと思います。
公的被疑者弁護制度の導入には、一定の要件を満たすすべての国民が等しく利用できる制度でなければなりませんし、また、逮捕・勾留の期間内に弁護人が選任されないと実効性を確保できないということなどから、弁護士偏在の問題、集中審理に対応し得る弁護体制の問題、弁護士の公的活動への参加確保など、導入に伴う問題ないし条件が検討される必要がございましょう。
こうした弁護士偏在問題の解消と、集中審理の要請に同時に対応していくためには、弁護士過疎地域はもちろんのこと、弁護士が多い大都市圏におきましても、アメリカのような公設弁護人事務所制度や、公的弁護の運営主体に雇われる弁護士のように、一つの刑事事件に専従できる常勤弁護士を置く制度の導入の是非を検討していく必要があろうと思います。
さらに、もし弁護活動が期待される水準に達していなかったり、あるいはその内容がもし国民の正義感情に反するようなものであれば、これに税金を投入することについて国民の理解を得ることは容易ではないでございましょう。
そのために、公的資金の導入に見合うだけの弁護活動の水準及び適正さが確保されることが必要でありまして、弁護士倫理の確立や、問題のある弁護活動に対する適切な是正措置の在り方が検討課題であろうと考えております。
被疑者段階を含む公的弁護制度の在り方には、それだけを単独に取り出して議論するのではなくて、適正かつ迅速な裁判の実現や、捜査手続への影響など、刑事司法全体の中にこれを適切に位置付けた議論が必要であろうと考えております。
この制度の導入に伴う問題の検討に当たっても、最初に申しましたように、適正手続の保障と実体的真実の発見という、刑事司法の二つの使命のバランスに十分配慮されなければならないと思っております。
また、公的被疑者弁護制度の導入を検討するに当たりましては、少年保護事件をも視野に入れて議論を深めていく必要がございましょう。
14ページの5以下に「刑事司法を担う『人』に求められる資質・能力」ということを記述いたしました。これも当審議会で先ほど来いろいろ御議論がございましたところでございますが、21世紀の我が国における国民の期待に応える刑事司法を実現するためには、制度の面のみならず、それを支える人的体制、すなわち裁判官、検察官、弁護士といった法曹三者のほかに、裁判所、検察庁の職員、刑事裁判の執行を担う矯正・保護の職員の整備を図る必要がございました。このような人的体制の整備は単なる量的増大のみではなく、質的な充実を伴ったものでなければなりません。
以上のことは、先ほど来、当審議会において司法の人的基盤の充実・強化の必要性について意見の一致を見たところでございますけれども、特にここで申し上げたいことは、刑事司法の重大な使命にかんがみれば、その運営に携わる者は人権感覚に富んだ豊かな人間性と、人間関係の機微や情に対する深い理解、洞察力をかね備えて、事案の適正・公平な解決に真摯かつ積極的に取り組む姿勢を常に保持する必要があろうと思います。さらには、新たな社会構造の変化に対応するための、いろいろな社会の動きや政治、経済の動向にも精通する必要もございましょう。
ここで、後輩諸君のお叱りを受けるのを覚悟で申し上げますが、率直に言いますならば、私は現在の検察官の捜査・公判を遂行する能力が、時代の変化と国民の期待に合わせて向上していないばかりか、むしろその能力が低下しているのではないかという危惧を抱いております。もしかすると、これは刑事司法の運営に携わる方々すべてに共通して当てはまることであるかも分かりません。
刑事司法の運営に携わる者それぞれが、自己の能力向上に不断の努力を続けていくとともに、一層の研さん、研修を積むことのできるよう、環境を整備することが重要な課題であることを今一度強調させていただきまして、報告を終わらせていただきます。
長い時間、御清聴ありがとうございました。
【佐藤会長】どうもありがとうございました。非常に限られた時間の中で、我が国の刑事司法全体の姿をビビッドに描いていただきまして、誠にありがとうございました。
最後におっしゃったところも、非常に重大な問題提起というように受け止めた次第です。
水原委員のお話については、いろいろお尋ねになりたいところがおありかと思いますけれども、時間も大変窮屈になっておりまして、是非ここだけは今日聞いておきたいということがございましたら。いかがでしょうか。
【中坊委員】意見ということとして、お聞きいただきたいんですけれども、非常に抽象的なことではありますけれども、検察、刑事司法における国家権力をお持ちの方々の権力行使ということが、どれほどかすごい力があって、そのために泣いておる人たちというのは実は数多いということを、もう一度相当程度念頭に入れませんと、先ほどから盛んに公正、適正、中立とかいう言葉がたくさん出てきますけれども、これは私は弁護士をいたしている立場といたしまして、公正、中立の名の下に、どれほどひどいことが行われておるかということについて、我々の認識が新たになってないと困ります。
例えば、今おっしゃるように、ここには触れられていませんけれども、起訴後の保釈というような問題についても、現実には、ほとんど自白しない限り保釈はされないというのが今の実情なんです。だから、ことほどさように実際はどのような下に行われておるかを知る必要がある。あるいは証拠開示の問題にいたしましても、検察がどの程度その証拠というものを隠蔽されておって、そのために捜査の密行性の名の下にほとんど真実が知り得ないというのも事実であるということも、一つ是非お考えいただきたいと思います。何にもましてこの問題、国家権力による刑事司法に関する問題については、この内容にも盛られておりますけれども、国際人権規約に基づいて相当のレベルが設定されておって、日本国はそれに及んでませんよということを、さんざん勧告を受けながら、なおかつ例えば、B規約の選択議定書にしてもいまだに批准もしないということだし、代用監獄についても諸外国に例がないのになお我が国では行われておるという、具体的な現象もあるわけであります。そのようなことは是非我々として検討すべきです。それが確かに新たなる犯罪が起こりつつあるとか、いろんな問題が確かに起こるのはよく分かるんですけれども、同時に我が国の刑事司法の水準というのが一体どの程度で、国際的な基準に照らしてどの程度の状況にあるのかという点についても認識を新たにしないといけない。その点においても我が国の司法の在り方というのが、実際的に問題になっておるという事実も、我々としてはわきまえていかないといけない。
そして、何にもまして担い手の問題が先ほど最後に出ましたけれども、まさに検察官というものがどのようにして法曹養成の中で出てくるのか、本来を言えば検察官も私個人的には裁判官と同様、まず弁護士の立場を理解した上で、検察官になっていただくのがやはり一番いいと思います。裁判官ほど必須のものでなかったとしても、やはり基本的には必要な、だからその意味における法曹養成との結び付きも極めて重要な視点を持っておるということも、考え合わせていただかないといけない。この問題は大変重要な問題を含んでいるのです。
私としては、くどいようですが、いわゆる国家権力をお持ちの方々が刑事司法においてどれほど大きな力を持ち、それが今、言うように、例えばこの中に触れられておりますけれども、起訴便宜主義の名の下に、本来犯罪人として起訴されなければいかんものが、すべて検察官の思いのままに起訴と不起訴が分けられるというようなことになっている。それを国民が広い意味において、この中でも触れられておりますけれども、国民が統治客体意識から統治主体意識に変わっていくということは、この検察審査会の在り方についても、陪審もやはり基本は同じものの考え方なんです。だから、そういう考え方に立って我が国の刑事司法も根本的に考え直していただかないといけない。あえて水原さんが検察官だったからというわけではありませんが、そういう他方の側面もよくお考え合わせつつ、公正中立とか調和とかいうことが盛んに出ていましたけれども、平等の立場における手続きではないんですね。圧倒的に力の差のある中における問題点であるということを、よく御承知いただきたいと思うわけです。
【佐藤会長】御意見としてということですけれども、何か。
【水原委員】御意見として承りますというよりも、そういう御意見があることはよく承知いたしております。私は、決して公正中立ということをしばしば使っておるつもりはございませんが、仰せのとおり国家権力を持つ者にとっては、これがいかに強大なものであるかということを常に自覚し、そしてその権限行使については極めて慎重であり、人権感覚を十分持ったことを考えなければいけないと、当然のことでございます。そういう意味で、私は後輩に怒られるかも分からんけれどもということで、率直な意見を申し上げたところでございますが。
ただ、証拠開示の問題につきまして、隠蔽されているというようなお言葉もございますけれども、私の承知しているところは隠蔽したということはございませんので、ただ経験不足だと言われればそれまででございます。
しかしながら、私は取り上げたことは、今、私の意見として申し上げたことではなくて、こうあるべきだということではなくて、各委員がお出しになられました意見書、それを踏まえてこれまでの審議がありましたこの過程から、こういう点、こういう点を今後検討していただくべきではなかろうかということで申し上げたわけでございます。私は、検察の代弁では何でもございませんので、ひとつその点は御理解いただければと思います。
【中坊委員】私も別に弁護人を代表しているわけでもありません。
【吉岡委員】水原委員がおっしゃるように、私が問題だなと思っていることもかなり書き込んでくださっていますので、そういう問題意識というのは十分お持ちだろうと思います。
そういう中であえて申し上げたいのは、被疑者の身柄拘束です。この拘束期間がかなり長くなるということと自白との関係が非常に問題だという認識を持っておりまして、そういう意味でここにもお書きいただいたんだと思いますけれども、その辺のところが一つ。
それから、特に社会的弱者といいますか、そういう意味で少年審判等の公的付添人制度にも触れていただいたということを評価したいと思うのですけれども、ついでにといいますか、もう少し社会的弱者の幅をお考えいただきたいと思います。障害を持っていらっしゃる方が、障害を持たない人と同じように自分の権利を主張できるような環境整備をもう少し充実させなければいけないのではないか。例えば耳の聞こえない方も然りですし、それから精神障害はある程度できておりますけれども、知的障害については不十分だと伺っております。そういう面で、やはり弱い立場の人をどうやってカバーしていくか。その辺も議論の対象になるかと思います。
【水原委員】ありがとうございました。身柄拘束、自白の問題、これは私の意見として申し上げたわけではございませんで、私もこれからここで一委員として一緒に勉強させていただきたいということでございます。したがって、ここで身柄拘束と自白はどういう関係にあるかということについては申し上げる立場ではございません。
【佐藤会長】今日のお話は、海外視察前の勉強会という趣旨ですから。
【中坊委員】水原さんも御承知のように、別に真犯人が見つかって検察官自らが無罪の論告をするような事件が報道されて、私たちも同じ現場にいてああいう事件も起きているわけですから、あれは何もたまたま偶然に発生したとはちょっと考えられない。私たちが見ていても別に隠蔽とか隠滅とか言わないまでも、かなり相当問題があることも事実だろうと思います。だから、そういう点もよく考え合わせてお考えいただきたいと思います。
【水原委員】十分この審議会でその辺も御議論いただければと思っております。
【佐藤会長】制度に入ったときに今のような御議論をいただくということになります。
【水原委員】なお、今までのレポーターの方は全部資料を整理されました。ちょっと時間的な関係で資料の整理が間に合いませんでしたので、次回の5月16日に配付させていただきますように鋭意努力をさせていただきますことを、お許しいただきたいと思います。
【佐藤会長】その点は、私の方が大変御無理を申し上げて今日にしていただいたので、どうも申し訳ありません。よろしくお願いします。
では、この議題はここで終わりにさせていただきまして、数分休憩させていただきます。
(休憩)
【佐藤会長】時間をオーバーして申し訳ありませんけれども、ロースクールの検討に関するペーパーについてまとめていただきましたので、井上委員の方からお願いします。
【井上委員】今日たくさんの御意見が出まして、すべてを網羅するということはとてもできませんが、最低限皆さんの間で共通の認識があったかと思われるところだけ盛り込ませていただき、あとは今日御意見が出た点も、「要旨」という形で参考にお配りしてある文書の方をリバイズしてもらいますし、議事録も当然付けて、検討するにあたって十分考えていただくということにする。そういうことを前提にしまして、急いで最低限の修文をさせていただきました。
最初に髙木委員、中坊委員から、これまでの論点整理の認識というものを踏まえているのかどうか、そこのところをもう一度確認しろということと、これまでの我々の審議で確認された事項も当然踏まえるべきだという御意見がありましたので、「審議の経過」というところの冒頭に、論点整理の中で法曹養成制度の抜本的な検討が必要だとしていた部分を、ここに再度書き出して確認をさせていただいた。その上で、これまでの審議で民事司法の問題と弁護士の在り方に関する審議を行った。その中で、中坊先生御指摘のように、竹下先生のレポートに基づく審議では確認まではなされていないけれど、人的基盤の大幅な拡充が必要であるということが指摘されたということは記録上明らかですので、そのことと、中坊先生のレポートに基づいて審議をした結果、確認された事項ですね。我々の間で確認した点をまとめたペーパーを今、配らせていただいておりますが、それを念のため読みまして、そこで確認がなされた点で、この法曹養成制度の在り方に結び付いてくる点をここに抜き出して書かせていただいた。それが一番大きな修正点です。
もう一点は、この基本的考え方の(3)の一番最後のページの、先ほどちょっと「司法修習」という言葉と「実務修習」という言葉の区別がはっきりしないという御指摘がありましたので、最小限、④の「司法修習(少なくとも実務修習)」というところの括弧の中を表に出しました。「少なくとも」ですから、それがふくらんでいくということもあり得るという趣旨を含んで、こういう形に直させていただきました。
修正をしたのはわずかその2点でございまして、あと、鳥居先生の御指摘の、法科大学院でインターンシップあるいは実務修習的なものをやるということはどうかという点につきましては、少なくとも全員がそれをやるべきだというところまでは、まだいっていないものですから、ここには入れなかったのですけれども、今日の御発言とそれに基づく我々の議論というのが、当然検討する際の重要な参考というか、あるいは示唆ということになると思いますので、その点についても検討していただくということで御勘弁いただければと思います。
他の委員の方々からも多々御意見がありましたが、それもそちらの議論に有効に反映するような形で連携が図れればということで、ここでのまとめとしては、これくらいで何とか御了承が得られないものか。短時間でぱぱっとやったものですから、御不満は重々承知しておりますが、よろしく御検討いただければと思います。
【佐藤会長】井上委員、御無理を申し上げまして、どうもすみませんでした。そういうことでございますが、いかがでございましょうか。
【中坊委員】先ほどからも申し上げていますように、この基本認識の問題としては質以上に量の問題が極めて大きなわけですね。それで、この極めて大きい数の質、この言葉で言えば量の問題ですね。量の問題については、単にそれが法曹人口の大幅な増加というような抽象的な言葉で終わっているところの問題点が、この司法試験の在り方等についてはいろいろ言われ、また質の問題についてはいろいろ言われていながら、単に量の問題についてはほとんど法曹人口の大幅な増加ということにしかなっていない。先ほどから私は縷縷申し上げていますように、今回のロースクール問題というのは、やはり社会生活上の医師という存在として国民に身近なものとして存在するための数の確保、量の確保というのが大変重大な問題で、それが原因となって今回のロースクールが生まれてきているというふうに私は理解しています。先ほどから私は縷縷申し上げているとおりなんですが、これですと、この前の言葉どおり、その問題点は法曹人口の大幅な増加ということが基本認識としては書かれておるだけなので、私はこの点が更にもう少し問題ではなかろうかという気がいたします。
それからさらに、具体的な法曹養成ということから言えば、私は法曹三者は、分けても弁護士の公益的な責務というものが、大学の先生にもなっていくという関係において、公益的な責務というのは一体どこへつながるのかという問題で、一方においては裁判官になる義務もあるかもしれないけれども、片方では大学の先生にもなるということも言っているわけだし、その点に関しては別に誰も異論のなかったことなのです。いわゆる実務教育というか、そういう事実に基づいてものを発想するという意味が非常に必要なわけですね。ロースクールのまず第一歩が、法律からこちらに学ぶのではなしに事実から法律を学ぶというところが大変大事だということだと思うので、そういう点をもう少し基本認識として我々は認識しているはずだと思うので、その点、ひとつお考えいただけないかということを第二点としては考えます。
それから最後に先ほどから、これは言葉のことだろうとは思いますけれども、これだけ今度の新しい文部省にお任せするときに会長も我々の中から複数者が参画すると、審議委員が複数参画するということをおっしゃっていただいたのに、この文章では文部省において大学院関係者、法曹三者の参画の下、我々の審議会の委員が参加するというところが抜けておるようにも思うわけであります。率直に言って今日言ったものを今日直して今日それを審議したという形が本当によいのかどうかも含めまして、先ほどから私が指摘しているように、この問題が付け焼き刃的にぱっと1行、条文に線を引っ張ったところで入ってみたり、非常にせかれる立場からこのようになっておられる点について、私は審議会の在り方として、もうほとんど我々の意見が全く一致していてあとは字句だけ直せばいいならばともかく、我々が審議している間に、これは井上さんもここにおられたんだから、だれか事務局が今までの言う意思を伝えてつくった。そして、それが直ちにここで今、我々が見て、はいということで意見を言って、それでそのまますぐ成果になっていくというのは、この審議会が迷走し始めていますよということは私も言っているわけです。やはりそこら辺は余り結論を急がれると、これは将来に向けて、我々の審議の在り方が、到達点に向けて、しゃにむにこの意見を持っていくという例をつくることになって、問題ではないでしょうか。やはり問題点があればちゃんとそれに基づいて議論すべきです。また考えてまた出てくるのであって、これほど根本的な問題が全部提起されているものが、この1時間ほどの間で、しかも委員がいらっしゃらない中で修文される。委員はここにいらっしゃるのに、誰かがつくって持ってくるという形の中でまとめられる。
【井上委員】それは違いますよ。
【中坊委員】席を外されたけど、とにかくそういう形の中でできていくということについては、いささか疑問に私は思います。
【井上委員】御意見はよく分かりました。しかし、まずこの文書の責任主体ですけれども、これはあくまで私の責任で修正したものです。その上で、ワープロで修正するという機械的作業を事務局の方にお願いし、プリントアウトしていただくのに時間を取ったということです。現に私は、皆さんが見ておられたように、そのために何十分かの間退席しております。
内容的には、1点目と2点目なのですけれども、我々がこれまで何を確認してきたかという点について記憶の齟齬があるかもしれませんので、第15回審議会において確認された文書をもう一度読みまして、確認があったとされているところを踏まえて修正をさせていただいたのです。その確認の文書を見てみますと、数の問題については中坊先生からお考え方が提示されたということはそのとおりなのですが、しかし、その具体的な数については今後議論されることとなるという確認の仕方なのです。お手元の文書にありますように、大幅な増員の必要性について認識が一致したと書いてあって、そこから先は、今後更に議論するということになっているわけですから、例えば6万を前提にした場合にどうなるかということを検討すべきだ、とまでは、この段階では書けないと思うのです。
また、公益的な面につきましては、「基本認識」というところだけ御覧になって言われたと思うのですけれども、同じ第15回会議で確認されたことの中に、公益的側面が重視されないといけないということで意見が一致したという確認があったものですから、2枚目の冒頭で、法曹養成制度の在り方を検討する当然の前提としてそれを確認するという形で書かせていただいているのです。その場所が不適切だという御指摘かもしれませんが、書いていることは書いています。弁明に聞こえるかもしれませんが、そういうことです。
そして、最後の依頼をするときに我々の何人かが入るということは、私の理解では、別の文章の方の中に明示されるべき問題であり、それについては、先ほどまとめられたように、会長に委任をして、具体的には文部省との間で折衝をした上で決めるということになったものですから、あえてこちらの進め方という方には書かなかったということなのです。こちらの方にも書いた方がいいというのが皆さんの御意向でしたら、表現は今にわかには思いつかないんですが、そういうこともあり得るとは思います。
【中坊委員】私が先ほど言った法曹人口の量の問題ですね。今、形式的という言葉は悪いかもしれないけれども、井上さんがこの前の私の報告したときにはそういう結末ではなかったとおっしゃいますが、私はその言葉の意味はどういうものを意味しているかということはこの前も言ったように論点整理の中において、数は、臨時司法制度調査会の意見書は法曹人口が相当不足しておるということで、漸増を図るということで、司法試験合格者を1,000人まで増加して、わざわざおよその数まで、我々は論点整理の中で、日本はこれだけであるということは書かれているわけです。だから、我々としては先ほどから言うように、私の弁護士改革論というのは論点整理を踏まえた上でやっているので、それが抽象的な言葉として三つの言葉だけによって代用されているけれども、その実質論は今言うように、大幅と言っても何割が大幅だか分からない。そのことについては薄くしておって、そのときの言葉は正直言って私がこれを書いたというよりも事務局でまとめられて、私も確かにその程度だろうということになっていますけれども、既に我々は社会生活上の医師となる数のところまで、非常に国民に身近なところまで法曹の数が増えないといけないということを前提としているわけです。そのことが今おっしゃるように、それは私の議事録の中の認めた部分と認めていないところがあるから、これは採用されていないという論理は私は余りにも形式論的過ぎて、しかも現実の我々の審議会の実際の模様とも違う。
しかも、そのことが決定的にロースクールをつくる上において必要なメルクマールなんです。大学院なんて、今のままの合格者が1,000名でよいと言うのならば、殊更つくる必要もないわけです。あと受験校に対する問題点だけの問題を考えていればよいとかということになってくるわけで、その法曹人口を2割とか3割ではなしに3倍ぐらいに増加しなければいかぬということが、社会生活上の医師となるということが前提となって、今回の我々の論議はロースクールに来るわけで、私もそういう意味においてロースクールは必要だと言っておるわけです。
それが今おっしゃるように、そんな法曹人口はちょっとだけ増えたらいいんだ、合格者が1,000名と言うのでは困るから言っているのです。全部5万、6万のところは論議の対象だけになっている。それは、なるほど5万人とか6万人とかという数字そのものは、確かに今後の論議の対象でしょうけれども、数倍にならなければならないと思います。社会生活上の医師となるところまで身近なものにならなければならないという意味では、私は我々の認識は一致して我々の議論は進んでいると思います。そういう事実を踏まえた議論にならないと、ロースクールについても、今、言われてもどのぐらいの規模をつくるんですかと言われても、最初から相当大幅ですというだけで、それだったら2割ぐらいですから、1,000人が1,200人になったらいいんですかというようなことになってしまうと全然実態が違うわけです。
【井上委員】御趣旨は分かりました。
【髙木委員】確かに今、中坊さんが言われるように、1割、2割という感じでは全然ないんだと。だから、法曹人口の大幅な増加というところを少し、例えば法曹人口の飛躍的な増加が求められており、加えて改革などとか、そういう数倍だという感覚を。
【井上委員】それは分かるのですけれども、ここのこの文章の中でそれを明示しないといけないのか、またそうすべきなのか、ということなのです。
【髙木委員】だけど、これは審議の経過でしょう。
【井上委員】中坊先生がおっしゃったような意味で我々は合意しているとするならば、先ほどの文書でも「大幅な増員」と書いてある、その「大幅な増員」自体にそういう意味が盛り込まれているというはずでしょう。それを踏まえてここに同じ言葉を使っただけなのです。ですから、こちらのところで、その文書の趣旨はこうだったんだというふうに書くのがいいのかどうか、そういう問題だと思うのです。
【中坊委員】違うんです。今おっしゃるように、この基本的認識をなぜこの文章に書くかというと、これはアウトソーシングというか、外部の人に我々の基本的認識はこの状態ですよということを言うためにやるんでしょう。だから今、言葉の端々でここだけしか同意していないからここはあれだとかというのではなしに、審議会で、今言うように、もう数倍ということぐらいはみんなの共通の認識になって我々は議論しているんじゃないかと思うんです。
【竹下会長代理】途中で遮るみたいですけれども、それは御無理ではないでしょうか。
【山本委員】まだ数の議論はしていないですからね。
【竹下会長代理】中坊先生御自身も第15回会議のこのペーパーについては十分手を入れられて、どこまでが一致して、どこまでが一致しないのかということを検討されたはずなのです。ですから、人数については一致していないのですよ。
【中坊委員】だから、人数はおっしゃるように、今の仮に弁護士の数が1万7,000人で、全部で2万1,000人で2割増えたらよいとか言っている問題ではないという意味では一致しているんです。
【竹下会長代理】それは、大幅増員ですから。
【中坊委員】だから、今、言うように5万だか6万というのは一致していない。だから、私も先ほどから言っているように、人口問題については、そういう状態のものとして、この問題について我々は論点整理でもわざわざ数まで出しているのです。だから、私にしてみたら、今おっしゃるように5万、6万という、これで中坊さんあなたOKしたではないかとおっしゃるけれども、OKするのについては論点整理のところでもう既にそれが入っているからです。なるほど5万、6万とか、4万5,000とか、6万5,000とか、そういうところは確かにまだ論議は残っているから、そういう意味で私も言っただけのことであって、今おっしゃるように、その程度の数まで増やさないといけないということについては、おおむね我々は一致しているというつもりだから、私は言っているんです。
【竹下会長代理】それは無理ですよ。文章で「大幅増員」という表現で皆さんの認識が一致したのですから。
【中坊委員】そうしたら大幅とはどれだけなんですか。
【竹下会長代理】それは分かりません。これから議論するのですから。
【中坊委員】それだったら、今度ロースクールでいくときに、何人の規模の大学院の学生ができてくるのか、全然見当もつかないではないですか。
【竹下会長代理】それは、これで推察していただくほかないです。
【中坊委員】推察ってあんた、これから、外部にものを発表するというときに、今おっしゃるようにこの数が何人か全く分からない、それはすべて何も決まってません、大幅だけですということでいいと。私は、もしそれがどうしても、大幅という意味が2割、3割から非常に広範囲に、何もかもを含んでいるんだと言われるんであれば、先ほどからもこの主な意見という中に、ロースクールをわざわざつくらずに、今の試験のままで何とかならないかとか、いろんな意見も出ているわけです。だから、それに従って論議すべきであって、数が今の倍とか3倍とかいうものになってくるということを前提にして、我々の議論をしておったから、そういう形として今、外部にものを言うんですから。そこが今、言うように数というのは大幅であって、大幅以上の説明はあり得ないということなら、私は少なくともロースクールというものをつくる必要性は、現在としてはないと私は思います。
【竹下会長代理】それは極端なので、そんなに飛躍をしなくても、現在2万人であるものが2万5千人になれば大幅かと言えば、それは一般に言葉の意味としてそのようには理解しないわけです。
【水原委員】ロースクール構想を議論するようになったのは、合格者の数が少ないからそうなった、それも一つの要因ではありましょうけれども、合格者の質が余りにも低過ぎて、これで次の法曹を担う者の選抜試験としてこれでいいのかなということが出発点だったと思うんです。量もさることながら質の問題が極めて重要な問題だと思うんです。
そういう意味で私は数の議論が決着しなければロースクール問題は議論する必要はないというお考えは、いささかいかがなものだろうかなと気がいたします。
中坊委員のおっしゃる気持ちはよく分かりますけれども、法曹人口がどれだけ必要なのかということにつきましては、中坊委員は中坊委員の試算をお示しになられた。しかし、今、我々が議論しているのは、国民が利用しやすい司法というのはどうあるべきかということで、民事司法の問題もあり刑事司法の問題もあり、そこでいろいろな問題があって、そういうものを一つひとつ検討した上で、そういう事柄について国民の期待に応えるには、どの程度の法曹人口が必要なのかというところの詰めが、やはり最後にはあってしかるべきではなかろうかなという気がいたします。
大幅な増員、これは非常に必要でございますが、ここで数を出すというのはいかがであろうかと私は思います。
【中坊委員】私は数を出せということを言っているのではなくて、今、言うように2割、3割の問題ではない、抜本的に改正をしようと思えば、法曹人口の数が今の倍とか3倍とか、そういうものにならなければならない。そういう人口にしようと思えば、今、言うように在り方も基本的に変わってくるという構想の下に、法曹人口の問題が出ているので、確かに水原さん言われるように質の問題もあるけれども、一番基本的には、規模の問題があります。小さな司法でよいのか、大きな司法になる必要があるかという問題から生まれてきているわけですから、一番根本的にはそこの議論がはっきりしていないとおかしいと思います。
だから、私はこの文書のままでロースクールをもし言われるというんであれば、多数決でお決めいただくのは結構だと思いますけれども、私はそういうことではいけないと思います。
【井上委員】今の御議論は、ロースクールの必要性についての御議論だと思うのです。その問題とは別に、数がこのぐらいだと言わないとロースクールの中身について技術的・専門的な検討ができないかといいますと、それはまたちょっと別だと思うのです。そのような検討を踏まえて、採用するかどうかを決めるときに、数がこれだけにならないと、そういうことと結び付いてないと必要ではないと判断されるということはあり得る。そういう御議論ではないでしょうか。
ここに言っている大幅な増員が必要であるということについては、今の段階で3倍とか書くのは到底難しいと思います。したがって、ここに「大幅な」と書いてあることの心といいますか、趣旨はどういうことなのだということは、これをまとめたときの我々の議論を、議事録を付けて読んでいただくということしかないのではないかと思うのですが。
【中坊委員】だから、私の言うのは、こだわるわけではないけれども、資質の点については4行もここで書かれているわけでしょう。
そこに書かれているんであれば、この程度一致するもんであれば、数についても大幅とは一体どういうことかということを、意味するように文章を入れられても私は構わないと思います。そういうふうにする必要性が私はあると思うんです。そうでないと、もらった者の方も困るから、もう少し言葉を加えて、例えば今の数、論点整理をそのまま使うとすれば、外国はこうなったけれども、ここに長い文章を入れるかは別問題にして、そういう問題を入れてでも人口の数という問題についての、我々の大幅という概念の意味が分かるように、外部に分かるように私はすべきであろうと私は思います。
それが、もう不必要だと言うんだったら、私はそもそもロースクールというものをつくる必要性がないことになってくるんだし、今、おそらくみんなはそうだと思うんです。
【竹下会長代理】それは極端ですよ。
【中坊委員】そうでしょう。だから。
【佐藤会長】吉岡委員、どうぞ。
【吉岡委員】15回の審議会のコピーをいただきましたけれども、それの2ページの3行目のところで、中坊委員からで、かぎ括弧で入っていますね。これをこのまま全部入れるとちょっと長くなるかもしれないんですけれども、今、配られた分の1ページの最後の「さらに『弁護士の在り方』に関するレポートと審議では」という、その後に中坊委員からというここのところを入れて、それで法曹人口の大幅な増員が必要であるという、そういうふうにすると規模が分かるんではないですか。
【井上委員】今、私も同じようことを考えて、この2枚目の「必要である」という部分の後に、括弧書きか何かで入れるというのはどうかと。
【吉岡委員】5、6万程度の弁護士人口を目指すとの考え方がある。そこのところを入れて。
【井上委員】中坊委員ということまで書くかどうかは別として、そういう考え方も提示されており、この点については更に議論されると。
【藤田委員】ただ、提示されたというのと、それを文書に書くのとは意味が違うと思うんです。それを書くということはある程度そういう価値判断があったということになるわけですから。 さっきも申し上げたんですけれども、法曹養成制度とかロースクールという問題は、法曹人口問題と一体不可分だと思います。中坊さんも隣接職種との関係を留保しつつとされているけれども、司法書士が弁護士とほぼ同数の1万7,000人いるし、ほかも含めると10万人以上の隣接職種があるわけですね。それをどう扱うかということは、数の問題にかなり大きな影響があります。そう申し上げたら、ロースクールを検討するにしても法曹人口の問題にまた立ち返ってどのぐらいのレベルが適当で、どういうふうな形で増やしていくのがいいかということをもう一遍検討するんですからというふうにおっしゃられたんで、それではロースクールを検討することは結構ですと申し上げたんです。そういう点から言えば、コンセンサスとしてはやはり大幅な増員というところにとどまるんではないでしょうか。
【水原委員】私もそのとおりだと思います。
【髙木委員】数については、これから検討していただく皆さんに、この審議会の議論の実態をきちんと伝えるというのが目的なんで、だから過去にどういう発言があって、どういう表現でしたかということにこだわる議論があることは分からぬではないですけれども、要は中坊さんが言っておられるのは、大幅な増加が1、2割と受け取られたら困ると。だから、大幅だというところを、私はさっき勝手に申し上げたんですが、例えば飛躍的な増加、その語感が必要ではないかと思います。
【中坊委員】例えば、今、言うように、露骨に書いたっていいんです。数割程度のものではなく、数を出さなければいいんでしょう。だから、そういうこともあり得るし。
それから、今の藤田さんの言われるように、もし隣接業種との関係があるというんならば、我々が本当にロースクールというものまでつくらないといけない必然性が、先ほどからも意見の出ていたように、まだ我々の議論がそこまで成熟しているんでしょうか、という問題にも突き当たるわけです。だから、我々の審理というのはそれなりに一歩ずつ前進して、私も留保しつつと言いつつ、協働化してやっていかなければいけないということは、先ほどから言っているわけでしょう。だから、何もそれは、確認したか確認してないかは別にして、一応のものとしては、前向きに法曹人口をやはり大幅な、それでその中にまた隣接業種までを含むのか、隣接業種になるような人までそこに入れるのかどうかということが、更に今後また検討されていかないといけない議題として入れているわけだから。
今、言うように、数の問題ということが極めてこの議論の中において、小さな司法か大きな司法かという、それはまた先ほどからも言うように、非常に我々のこの審議そのものが、先ほど藤田さんが言われたように、これは法曹一元の問題とも関連性がある。キャリアシステムの維持とも関係がある。このままの司法でいいのかどうかということにも、数においても関係があるということになっているわけでしょう。だから、そういう非常に重要なことを、それはまだ決まっていないんだということの形のままで、このまま審議をして向こうへ渡すとすれば、まだ我々議論が成熟していない状態として、まだ外部に出すにしては時期尚早であろうと、私はそう思います。
【竹下会長代理】しかし、この大幅増加の意味について、これが2、3割を指すものではない、もっと大きな数を考えているのだということは、今、皆さんここで意見が一致しているわけです。
【中坊委員】そうしたら、どうしてそれを文章に出せないんですか。
【竹下会長代理】それは、ちゃんと議事録にとどまって、それも向こうの文部省に検討依頼をするときには付いていくわけです。ですから、大幅な増員というものの内容について、この審議会がどう考えているかということは分かるではないですか。
【中坊委員】私は、そうは思いません。
【藤田委員】率直に申し上げて、私は成熟度というものに多少疑問があったからさっきのようなことを申し上げたので、それを百家争鳴でいろいろなロースクール構想が出ているから具体的な内容を盛り込んだものを考えなければロースクールを取るべきかどうかという判断もできない。だから、それを受け皿の方で考えてもらって、具体性が出てきた上でロースクールを取るかどうかを判断するんだと、こういうことがあったので、それならばということで受け皿の方で考えてもらうことを賛成したわけです。
だから、仮に数倍とか何とかというんだったら、それは皆さんそれぞれこの時点で判断できるかどうか分からないけれども、いろいろなお考えがあると思うんです。9万という話もこの間、新聞に出ていました。ですから、それはこの段階でおよその規模まで決めてしまうというのはやはり議論がそこまで成熟していないんじゃないでしょうか。
【佐藤会長】ただ、さっきから出ていますように、2割だとか3割だとか、そういうレベルでは全くない、その点は皆さん、よろしゅうございますね。そんな数字ではないんだと、そこははっきりと。
【鳥居委員】それは分かるんですが、どういう規模なのかということがしかるべき統計等を引用して、我々が引用するのではありません、付託した委員会がしかるべき統計を引用してなるほどと思うようなキーワードが入っている方がいいというのが、おそらく中坊先生の御主張だと思います。
そうすると、私はさっきからこれを見ているんですけれども、そもそも我々が12月に合意した論点整理では1,000人では足りないと。それで、諸外国ではこうだと。アメリカでは94万人、イギリスでは何万人と書いてあるわけですね。日本は2万人しかいない。これは考えてみると、要するに現状でも先進諸外国に比べて法曹人口トータルでもはるかに劣る。それから、毎年新しく生まれる司法試験の合格者数1,000人も諸外国に比べればはるかに足りない数である。その上に、今後法的需要はますます多様化、高度化、これはここに書いてあることなんですが、ますます多様化することが予想されるから、これはただ今、後れを取っているのを埋めるだけではなくて抜本的な改革が必要であるということを言ったら、多分中坊先生のおっしゃっていることが表現できるんじゃないか。
それを受けて、我々が付託した審議会は、なるほどこの11ページを見ればいいんだなと。それで、11ページを見てみると、なるほどアメリカは94万人で日本は2万人しかいない。アメリカは年間3万人新しく司法試験合格者が生まれているのに日本は1,000人しか生まれていないということが読み取れますから、そこで分かる。そういう仕掛けにした方がいいんじゃないですか。
【井上委員】分かりました。この文書の性格ですが、第一次的には、我々の間で、審議をここまでやってきた、その結果を確認して前へ進むための文書である。それに加えて、他に検討を依頼するにあたってこれをベースにやってくださいということを示す文書でもある。そういう二重の性格を持っているわけですね。ですから、今おっしゃってくださった点は論点整理に含まれていますので、その論点整理をこれに付けるということでもよろしいのではないか。それでは不十分だということでしょうか。あくまで、ここに入れろということですか。
【鳥居委員】この論点整理の文章を後で見たら、なるほどこういう数字かということが分かるようなキーワードだけ今日の文章には入っていない。それは何が入ればいいかというと、現状で諸外国に比べて法曹人口総数がはるかに足りない。それから、司法試験の合格によって新規に法曹人口に参入する人口も全く1桁足りないということをまず言って、それに加えて今後、法的需要はますます多様化、高度化するから、なお一層法曹人口の抜本的な数の増加は急務である。そういうことを言っておけば、これは後で読めば。
【井上委員】御趣旨は分かるんですけれども、論点整理自体はもう少し抑えた表現になっていまして、「適正な増加」になっているのです。
【鳥居委員】適正な増加という言葉の後ろに付いている数字が、一体適正とは幾らぐらいのものかを言っているわけです。
【井上委員】ですから、そこのところをどうここに盛り込むかという問題だと思います。
【鳥居委員】今、私が言ったようなやり方はどうですか。
【井上委員】具体的に文章の形で書いていただけますか。
【北村委員】「検討依頼先について」というところの依頼事項の中には、数に関することがあえて入っていないのかなと。ここの読み方はどうなんでしょう。それに対して、こちらの方では専門的、技術的見地から具体的に検討してほしいということが一応書いてあるんです。
ところが、こちらの方には教育内容だとか選抜方法だとかというようなことで書いてあるんです。これはわざと抜かしていらっしゃるんですか。その辺はいかがですか。
【井上委員】法曹養成というか、法科大学院との関係で、数の議論も審議の中で出ましたが、最初に総量規制をして、そこから逆算して全国に20校程度といった議論はやはり不健全じゃないかという意見も出まして、私もそのようなことを申したのですけれども、それでそこのところは合意はしていないということで、書かなかったわけです。むしろ質の議論をしてほしいということです。
【北村委員】だから、中坊委員がおっしゃったことは、この依頼事項の中からあえて抜いてあるのかなと。ただ、それがないと、質だけで議論できるかというのは確かに私も難しいんじゃないかと思っています。
【井上委員】我々の間でロースクールというものを設ける必要性があるかどうかという判断をするにあたって、中坊先生はそれが前提になるというご意見なのです。その意味では、我々の判断の一つの要因というか、重要なポイントであることは間違いないのです。しかし今、技術的検討を依頼するときに、育成すべき法曹が何千人だ、あるいは何倍くらいを目標にして考えるということでないと制度設計できない、具体案はつくれないかどうかといいますと、私はそうではないんじゃないかというふうに思っているのです。
【北村委員】ですから、その数が4万になろうと、6万になろうと、議論というか、審議はできるんでしょうか。
【井上委員】可能だと私は思います。
【北村委員】そうですね。それから、もう一つついでなんですけれども、ここに9月ごろまでに資料として提出するということを依頼してあるんですね。中間報告というのは一応、今、考えられているのが10月ですよね。私がスケジュールで見たのは10月というのが出ていたんですけれども、そうすると私は9月では遅いんじゃないかというふうに思うんです。これを受けて、それから当審議会としてやはり判断を下すこととしたいとなっているわけですから、そうするともう少し早い時期にいただきませんと。というのは、途中で審議するというのは分かりますよ。でも、それは部分部分のことなのであって、全体としての審議ということになると、もう少し時間が掛かってくるのではないかというふうに思うんですが。
【井上委員】こちらの都合だけで相手のことを考えなければそうだとは思うのですけれども、しかし相手に2か月でやってくださいと言えるかといいますと・・・。
【北村委員】2か月とは言っていませんけれども、5、6、7、8の中旬だったら3か月半とか。
【佐藤会長】夏休みも相当おやりになることだろうと思います。
【北村委員】でも、そうでないと、今と同じようなことが、また中間報告の前にもここで繰り返されることになると思うんです。9月ごろと言っても、これは9月の何日かというのはちゃんと空いていて、はっきり書いていないわけです。相手のあることだから空いているんだと思うんですけれども、本当にこちらで議論する回数が少なくなってしまうという部分があると思います。
【井上委員】御趣旨は、夏の集中審議でやろうということですか。
【北村委員】そうです。私の希望は夏の集中審議でこれをやっていただく。だから、集中審議にもう一回入れていただいてもいいんですけれども、やっていただくといいなというふうに思っています。そのくらいの問題なんじゃないかなと思っているんです。
【佐藤会長】検討依頼先には審議会の委員が入られるわけですし、趣旨を受けておやりいただけるというように期待し、やっていただくということで、そこはよろしいんじゃないでしょうか。
【北村委員】そうすると、もうこれはそのまま受け入れるということがほぼ前提になっているということですか。
【佐藤会長】いえいえ、そうじゃないですね。
【井上委員】相手のあることですから、本当にそれでできるのかどうかということがありますので、夏の集中審議でもし我々が議論するとすれば、その段階でまとまっている部分というか、その段階までに骨格だけはまとめてくださいという希望を言って、それを出してもらう。そして、それにつき我々で議論し、それをまた向こうに反映してもらうということはあり得るのではないでしょうか。もっとも、抽象論で、相手のあることですから、それでも過酷だということになるのかもしれませんけれども。
【佐藤会長】検討依頼先の方も、おそらく、審議会はどういう考えかということはやはり気になさると思うんです。だから、基本に関わるようなことであればこちらに投げ返して、この辺はどうでしょうかというようなことの段階も必ずあると思うんです。
【中坊委員】私は別にあれですけれども、日弁連は、少なくとも皆さんのお手元にこの間お配りしてあるように、一応我々のロースクール論が法曹一元制度というものを実現させることで必要があるということを現在わざわざ言っているわけです。そういう状況の下において、司法というものはもっと大きくなるんだ、そういう中においてキャリアシステムは、小さな司法から遠ざかるんだということが我々の前提となります。今おっしゃるようにその数が明記できないとおっしゃるならば、この審議会の議論というものが少なくとも私としてはついていけないということになると思います。
だから、皆さん、それでは日弁連が今おっしゃるように、そして一委員がそう言ってもこれで押し通すんですということでおやりになって、果たして本当にいいのかなという気もします。現実性が帯びてくるのかということも問題になってくる。別に私は日弁連が言っているから聞きなさいと言っているんじゃないんです。
しかし、大幅なという人口増のことですら、今おっしゃるようにはっきり言えないんだということであり、いろいろな議論が出ても、それがこのままで押し通すということをおっしゃるならば、私としてはこの意見についていけないということを言っているんです。だから、私はその意味においてこの審議会の今おっしゃるこの時点でこの程度の議論のままでロースクール論を発足させるということについては私は反対します。それでお決めになるならば随時お決めになったらいいじゃないですか。しかし、私は反対します。それはそんなものではないはずです。
だから、弁護士人口が大幅に増加ということも、皆さんもさることながら私自身だって同じ弁護士として仲間が増えるということは、本当を言えばものすごい問題なんです。それをみんな踏み越えて大きな司法にすることだからということでやってきているにもかかわらず、その議論の片一方で、私にとってはここの審議で委員として言う前に私もそういう立場もあるんです。そういう者が今ここで言っても、それでも、いや数の問題はそういう程度の問題だと言われるなら、それはここでそういうふうにお決めになったらいいでしょう。
しかし、そうなってきたら弁護士改革で私の言ったことも崩れてくるかもしれないし、どうなってくるのか、保証の限りではないから、私は少なくとも態度としては明確に今おっしゃるようにこの状態のままでロースクールを発足させるということについては私は反対しておきますということを言っているわけです。
【鳥居委員】中坊先生に反対されてしまうと全部動かなくなってしまうから、ジャイアンツが抜けたら困るんです。私はこういう議論が抜けていると思うんです。要するに、我々は去年の12月21日に論点整理を出した。その論点整理に明らかに数字が書いてあって各国比較が書いてあるのに、それに我々は言及していないわけです。だから、それに言及したらいいじゃないですか。こういう言及の仕方はどうですか。
「我が国の法曹人口は、当審議会『論点整理』(平成11年12月21日)に述べたごとく、先進諸外国に比べてその総数においても、司法試験を通じて誕生する新たな法曹人口、参入者数においても極めて少ない。加えて、21世紀の国際社会においては、法的需要は従来の趨勢をはるかに超える増加が予想される。これに応えるべく、法曹人口の抜本的な増加を目指した改革が必要である。」。こう書いたら、この平成11年12月21日の当審議会の論点整理を必ずリファーしなきゃいけない。
【中坊委員】私は今の鳥居さんのおっしゃるものならば結構です。私は別に自分が固執して言っているのではなくて、論点整理の中で既にそういうことは明らかになっていると言っているんだから。
【竹下会長代理】論点整理の中では、ロースクールの問題は今、鳥居委員がおっしゃられたところの後に、「問題は21世紀の司法を支えるにふさわしい資質と能力を備えた法曹をどのように養成するかである。」と述べ、「この課題は、大学(大学院を含む)における法学教育の役割」云々と続いて、ロースクールの問題が出てきているのです。ですから、「論点整理」とおっしゃるけれども、ここでは、ロースクール問題は法曹の質との関係で触れられているのですね。
しかし、鳥居委員がおっしゃるように、ここで数の問題に触れていることも間違いないですから、「論点整理」を何らかの形で引用するというのは確かに一つのやり方だと思いますね。
【藤田委員】鳥居先生のおっしゃることはコンセンサスの範囲内じゃないですか。
【佐藤会長】私もそうだと思うんです。質を問題にして書いてあって、中坊委員がおっしゃるのは量の問題の書き方は不十分だということですから、今の鳥居委員のような取りまとめの形で入れさせていただければ。
【井上委員】それをどこに入れるかですね。
【中坊委員】十分なという括弧がまずあるでしょう。基本認識のところです。基本認識のところでの問題です。量と質と書いてあるでしょう。だから、質、量ともにと書いてあって、その問題が次についてくるから量について触れていただければと思います。
【井上委員】「豊かな人材を得なければならない」という部分の後に、この点で当審議会の論点整理ではこうなっているとする。そして、その次に「資質としては」以下をもってくるということでいいですか。
【佐藤会長】では、今の趣旨で書いてもらって、出てきたものをまた出てきた段階で正式にお掛けして御承認いただきたいと思います。
それで、議事があっちにいったりこっちにいったりなんですけれども、もう6時25分になってきましたので、法曹一元の私の報告は残っているんですが、どうしましょうか。
【山本委員】持ち帰って読むということにしませんか。多分、質疑は認めてもらえないでしょうから。
【中坊委員】法曹一元の問題が落ちちゃっていて、この審議会がこの議論でもこういうような数字の問題でわっとなるというのは、やはりその根本問題が片付いていないからなんです。だから、ことほどさように法曹一元を採用するか、いわゆるキャリアシステムを維持していくかどうかということは、この委員会の一番根本問題であるのに、それがずっとそのまま審議されないまま事実上いくからこういう問題で噴出してくるんです。
【藤田委員】それはそうだけれどもあくまで論点整理であって、方向性は海外から帰ってきてからという話だったんです。
【中坊委員】いえいえ、違います。論点整理というものが私たちはあるべき姿というのをまず想定しようじゃないかということで、21世紀の我が国の司法の果たすべき役割を決めたんでしょう。だから、それに向かってどう進むかということです。
【藤田委員】だけど、方向性を出すのは海外から帰ってからですねと、水原委員がこの間確認されて、そうですということになったじゃないですか。
【中坊委員】法曹一元を説明しようと思ったらなかなか難しいということを私は言っているわけです。
【佐藤会長】そうしたら、今日はもう、それぞれ海外に視察に行ってそれぞれ見ていただくということでよろしいですか。
それでは、それはそれぞれ海外視察で勉強していただくということにしましょう。
それで、ペーパーが出てくる前にもう一つ、実はお諮りしておきたいことがございます。最初にお掛けした司法の人的基盤の充実・強化の必要性についてなんですが、事務局、藤田委員の方からお話があった点で修文したものを配付していただけますか。
これで変わったのは、1ページの下から2行目ですね。
【事務局長】そうですね。下から2行目の「並びに」からです。
【佐藤会長】訟務関係を加えました。藤田委員は人権のこともおっしゃったんですけれども、そこまで司法に含めるのは難しいものですから、この程度で御承認いただければと思いますが、よろしゅうございますか。
どうもありがとうございます。これは御承認いただいたこととさせていただきます。それで、修文が出てくる前に、海外視察の件はどうしましょうか。
【事務局長】海外実情調査では特に御質問がなければ、今まで事務局員が御説明しているとおりで御集合いただいて行っていただければいいと思いますが、もう今度の土曜、日曜でございますが、何かまだ御不明な点はございますか。あとは向こうでつくらせていただいた資料に基づいて御質問をしていただければというふうに思っております。
【佐藤会長】では、配付資料も合わせてやってください。
【事務局長】では、配付資料について若干の説明をさせていただきます。この大きな袋に入ったものがございます。一覧表の6番目の「嘱託調査報告書」というものでございますが、これは司法書士、弁理士、行政書士及び社会保険労務士に関する嘱託調査報告書及びその要約でございます。これらは、第2回会議における会長の隣接法律専門職種の団体などに調査を嘱託するなどの資料収集を事務局にお願いするとの御発言を踏まえまして、昨年9月以降、事務局から適切な者に、それぞれの資格制度と我が国の司法制度との関係や今後改革すべき点等について調査を委嘱していたものです。
なお、弁護士と隣接法律専門職種等との関係につきましては、今後の各論の審議の中で御検討いただく予定ですが、その際の参考にしていただくよう、事前に配付させていただいたものです。なお、税理士に関しましては5月以後、提出され次第お手元に配付する予定です。
資料の中に「第17回配付資料更新版」というものがございますが、これは前回の裁判所の人的基盤に関するところの資料を裁判所の方で現在の数字にバージョンアップしたものだということでございます。
【佐藤会長】法曹一元に関する私の話は省略させていただきましたけれども、事務局の方で参考資料、参考説明を作成していただきましたので、御参考にしていただければと思います。
まだ文章はまいっておりませんが、先を急ぎまして最後の方にいきますけれども、海外視察後の会議は5月16日火曜日午後2時から、この審議室で開催したいと考えております。
【鳥居委員】もう予備日はなしですね。
【佐藤会長】はい。そして、議題は既に委員の皆様でお決めいただきましたとおり、「国民がより利用しやすい司法の実現」、「国民の期待に応える民事司法の在り方」について、既にレポーターをお願いいたしました髙木委員、吉岡委員、山本委員の皆様からのレポートをお聞きした上で審議を行うことといたしたいと考えております。海外実情視察後の審議ということで大変だろうとは思いますけれども、レポーターをお願いしました委員の皆様には何とぞよろしくお願いいたします。
【鳥居委員】時間の確認ですが、14時ですか。
【佐藤会長】はい、5月16日火曜日14時です。
【井上委員】先ほど鳥居先生が示された文章を多少簡略化し、論点整理の文章とも整合性を合わせて修文してみました。そこの部分だけですが、すぐコピーできますので。
【佐藤会長】では、していただけますか。
(コピー後、配付)
【佐藤会長】よろしゅうございますか。来ましたでしょうか。井上委員、何か説明はございますか。
【井上委員】論点整理の文章と照らし合わせて整合させた他は、先ほどまとめられた趣旨のとおりに修文しました。
【鳥居委員】「この点についても」から始まる4行を足してくださったんですね。
【井上委員】そうです。それで、その後に「また」を入れて、「資質」についての文章につなげたわけです。
【鳥居委員】本当はできれば論点整理のこれを渡すときに言っていただけばいいんですけれども、論点整理の11ページを読んでくださいということですね。
【佐藤会長】よろしゅうございましょうか。
私の不手際で遅くなりまして大変申し訳ないことでございました。それぞれ御予定がおありだったと思いますけれども、本当に失礼いたしました。
どうもありがとうございました。