司法制度改革審議会

(当日配布版)

司法の人的基盤の充実・強化の必要性について



  1.  我が国が、今後、社会の複雑・多様化、国際化等の様々な変化に加え、事前規制型社会から事後監視・救済型社会への転換を図っていくことに伴い、社会に生起する様々な紛争は量的に増加していくだけでなく、質的にも複雑多様化していくことが予想される。そうした紛争を公正かつ透明な法的ルールにより解決するとともに国民の基本的人権を擁護するために、法の支配の理念を貫徹させることは極めて重要である。そして、司法が、法の支配の理念に基づき、その役割を十分に果たし、今後、変革していく社会のニーズに的確に応え国民の信頼を確保していくためには、その人的・制度的基盤を充実・強化することが不可欠である。
     とりわけ、制度的基盤の強化が結実し所期の成果を上げるためにはその制度の運営を委ねるに足る人材を得ることがなによりも必要であり、そのような観点から、人材の質・能力の向上を図ることが重要であり、また十分な量の人員を確保していかなければならない。こうした意味で、司法制度を担う人的基盤の充実・強化は喫緊の課題というべきである。

  2.  司法の人的基盤の充実・強化については、
    ① まず、変革していく社会のニーズに的確に対応できるように、制度の直接の担い手となる法曹(裁判官、検察官、弁護士)とそれを支える裁判所書記官等の裁判所職員、検察事務官等の検察庁職員の質・能力の向上を一層押し進めていく必要がある。殊に、先端的かつ専門的分野に精通した人材を育成するなどの方策も積極的に進めなければならない。また、こうした質、能力の向上とともに、制度の直接の担い手である法曹についてはその大幅な増員を実現することが必要であり、さらに、これら法曹が社会のニーズに的確に対応することの実効性を確保するためには、上記の関係職員についても適正な増加を図っていかなければならない。
    ② また、全体としての司法機能の拡充のためには、裁判結果の実現、すなわち民事裁判の執行に携わる裁判所関係職員及び刑事裁判の執行に携わる矯正・保護関係の法務省職員について、その人的体制の充実・強化にも十分な配慮を払うことが必要である。

  3.  国家公務員の総数についてはこれを削減することが行政改革の重要な課題であることは承知しているが、司法制度改革は、行政改革の基本理念にも沿うものであり(行政改革会議最終報告・Ⅱ-1-(3)「内閣機能強化に当たっての留意事項」、別紙参照)、司法を支える人的基盤については、行政改革を円滑に実施する観点からも、その充実・強化を図っていくべきであって、上記2.に掲げた点を実現するために、他の行政分野とは異なる取扱いをする必要があると考えられる。

(別紙)

行政改革会議最終報告(平成9年12月3日)(抜粋)

Ⅱ-1-(3)「内閣機能強化に当たっての留意事項」

「さらに、司法との関係では、『法の支配』の拡充発展を図るための積極的措置を講ずる必要がある。そしてこの『法の支配』こそ、わが国が、規制緩和を推進し、行政の不透明な事前規制を排して事後監視・救済型社会への転換を図り、国際社会の信頼を得て繁栄を追求していく上で、欠かすことのできない基盤をなすものである。政府においても、司法の人的及び制度的基盤の整備に向けての本格的検討を早急に開始する必要がある。」