司法制度改革審議会

(別紙 1)

司法の行政に対するチェック機能の在り方について(レジュメ)

東亜大学通信制大学院教授  塩野 宏



はじめに

Ⅰ 日本の行政訴訟制度の現状

1 日本の行政訴訟制度の特色
  ① 日本の行政訴訟制度の歴史的変遷
    明治憲法 →司法裁判所と行政裁判所の並立(フランス、ドイツ)
          行政裁判所による活動行政のコントロール
          国家賠償制度の不存在
    日本国憲法→行政裁判所の廃止
          司法裁判所(行政裁判所の完全廃止、民事裁判官)による行政のコントロール
          (アメリカ、イギリス)
          行政事件訴訟の観念(ドイツ的)の存置→行政事件訴訟法の制定
          (ドイツ的)
          国家賠償制度の創設→民事の損害賠償の一部(非行政事件)
  ② 制度設計及び運用上の基本的視点
    国民(個人)の権利・利益の法的救済制度への純化(主観訴訟と客観訴訟の峻別)
    司法権の限界の重視→行政庁の第一次判断権の尊重→取消訴訟中心主義
  ③ 行政訴訟の基盤
    高裁・地裁→通常民事部(東京地裁・大阪地裁のみ特別の部)
    最高裁判所行政局・最高裁判所行政調査官
    法務省訟務局行政訟務一課・二課・租税訟務課、法務局訟務部
    地方公共団体→地方自治法上に特別の定めなし
    弁護士→行政訴訟専門はごく少数
2 行政訴訟の現状
  ① 行政訴訟(取消訴訟)の利用条件
   原告適格・処分性・訴えの利益(狭義の)
  ② 裁判所の審査密度
   手続的コントロールの未成熟
   実体的コントロールの逡巡
  ③ 個別法の未発達
  ④ 訴訟件数、却下数、棄却数
  ⑤ 国民の権利利益の法的救済度(国家賠償制度を含めて)

Ⅱ 日本の行政訴訟の問題点と改革の手順

1 問題点
  ① 通常行政事件訴訟上の問題点
   使い勝手、行政訴訟の環境整備の検討
  ② 現代型行政訴訟の問題点
  ③ 行政事件訴訟の基本的構造の検討
  ④ 国家賠償との役割分担
  ⑤ 司法裁判所による行政のコントロール(行政の司法的チェック)の含意

2 改革の手順
  ① 行政手続法・情報公開法・行政不服審査法関係法制(改正)との関係
  ② 行政事件訴訟法と環境整備との関係
  ③ 運用と制度改革の関係
  ④ 個別法と一般法の関係
  ⑤ 段階的改革

おわりに