司法制度改革審議会

第23回司法制度改革審議会議事録

第23回司法制度改革審議会議事次第

日時:平成12年6月27日(火)13:30~17:07

場所:司法制度改革審議会審議室

出席者(委員、敬称略)

佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、井上正仁、北村敬子、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、吉岡初子
(事務局)
樋渡利秋事務局長
1.開会
2.「国民が利用しやすい司法の実現」及び「国民の期待に応える民事司法の在り方」について
3.閉会

【佐藤会長】それでは、定刻がまいりましたので、「司法制度改革審議会」第23回会合を開催させていただきます。

 今日の議題は、2つ主なものがございまして、1つは「国民がより利用しやすい司法の実現」及び「国民の期待に応える民事司法の在り方」に関する意見交換、そして取りまとめについて御審議いただきたいと思います。

 もう一つは、夏の集中審議、それから公聴会等に関しまして、御相談したいと考えております。

 それでは、第1番目の議題に早速入りたいと思います。

 これまでいろいろ御審議いただきましたけれども、それを踏まえまして、意見の取りまとめを行うことにしたいと考えております。

 お手元に、これまでの審議を踏まえ、会長代理が中心となられて、レポートをしていただいたユーザー側の委員と一緒に取りまとめていただきました「『国民がより利用しやす司法の実現』及び『国民の期待に応える民事司法の在り方』に関する審議結果の取りまとめ(案)」をお配りしております。既に事務局から皆様にお送りしているのと同じものでございます。

 この取りまとめ案に従いまして、順次項目ごとに意見の取りまとめを行うことにしたいと思います。勿論、これまでの意見交換に加えまして、今日いただいた御意見を踏まえて取りまとめを行いたいというように考えておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、案をごらんいただきたいと思いますが、代理、この順番でやってまいりますか。

【竹下会長代理】その順番で結構です。この資料の「対応の方向」というところに記載してあるとおりで差し支えなければ、そういうことで進めさせていただきますし、なお、検討する必要があるというのであれば、御意見を承って、その上で更に最終的な取りまとめにしたいと考えております。

【吉岡委員】各項目に入る前に、前回、お休みしてしまいましたものですから、もしかしたら前回御議論があったのかもしれませんが、このまとめ案をお送りいただいて拝見したんですけれども、前段の、全体の考え方がちょっと軽過ぎるというか、4行で終わっておりまして、勿論、各項目については十分な議論が必要には違いないんですけれども、それぞれの項目が、それぞれ独立した問題ではなくて、項目と項目と、あるいは今回入っていないものと有機的につながっている部分もありますので、そういう意味では前段階で、全体としての大きな視点と言いますか、そういうものを入れた方がいいと思います。

 その上で個別に見ていくという、そういうまとめ方の方が、勿論、これは中間報告に向けてということですから、これで終わりというものではないとは思いますけれど、ちょっとその辺を御配慮いただければと思います。

【竹下会長代理】これをこのままそっくり中間報告にするという趣旨ではなくて、中間報告にするときには、おっしゃるように、このブロックについての前書きと言いますか、そういうものを別途付けるという前提でございます。

【吉岡委員】そこの部分だけ確認したかったのは、「国民の利用しやすい司法」という大きなタイトルが頭に付いておりまして、それはこの審議会の立ち上がりのときからの問題なものですから、これだけが先にペーパーとして出ていくということになると、何か非常にちまちまとした形でまとめようとしているのかという誤解を与えてはいけないということです。

【佐藤会長】それは、前回も何人かの委員から御指摘のあったところです。この段階ではじめて少し具体的に各論点の項目が入ってきたのですけれども、ほかにも問題がいろいろあるかもしれない。その全体が明らかになった上でもう一遍この辺を考えないといけないわけで、ここだけ余り詳しくなり過ぎるのはいかがなものかと考えたのです。ただ、御懸念のようなことがあると思いますので、この冒頭の文章なども、最終的に中間報告を取りまとめる段階で、代理が今おっしゃったように、工夫する必要があると思います。

 そもそも全体の提言がどういうボリュームで、どういう構成になるのかということについて、これからいろいろ御議論いただかなければなりません。そして、今日取りまとめますのは、中間報告の文章そのものではなくて、我々としてこの問題についてどう議論し、どこに問題があると考えたかをできるだけ詳しく会議のこの段階での取りまとめとして確認しておくという趣旨ですので、これがそのまますっと中間報告になっていくわけではありません。その点は御理解いただければありがたく思います。

【吉岡委員】すみません。多分、前回御議論があったのではと思ったんですけれども、欠席したものですから。

【竹下会長代理】御指摘は誠にごもっともで、私どももそういうつもりではございません。ちまちまとまとめてしまうということではございません。

【吉岡委員】そういう誤解を外からされると非常に困るという印象を持ちましたものですから。

【竹下会長代理】どういたしましょうか。もし、何かそういう前書き的なものを付けた方がよいということであればそういたしますが、今会長がおっしゃったように、全体の構成から決まってくることなので、この段階でそこを書き込んでも、結局、もう一度考え直さざるを得ないのかなと思っていたところです。もし書いた方がよいというのが皆さんの御意見ならそういたしますが。

【吉岡委員】後のボリュームに比べて4行というのがいかにも、という印象を持ったんです。

【佐藤会長】今の段階でこれだけ出るとすると4行だけというのはちょっと何ですね。

【吉岡委員】ちょっとそんな印象を持ったんですけれども、そうかといって、対案の文章を書いてきたわけじゃないんですが。

【佐藤会長】そこは少し工夫していただくことにしましょう。余り重い意味を持って受け止められますと困りますが。

【吉岡委員】余りがちがちに固めてしまうのもどうかとは思いますけれども。

【鳥居委員】私もこの最初の4行を読んで、後ろとの関係が余りはっきりしない4行だと思います。むしろ、ここで述べていることは、「以下に述べる制度的基盤の整備と並行して、人的基盤の充実が必須であり」というようなことが書かれているのでありまして、どういうふうに取られるのか。前書きという意味には理解されないで、また、全体のフレームワークという意味にも理解されないで、後で別途に人的基盤のことはやりますという断りを行っているととれます。

【竹下会長代理】そうです。

【鳥居委員】そうだとすると、全体のフレームつまり、どれとどれを扱うということが、下敷きとして書いたもので用意されていて、その中のどこであるということがはっきりしているようなやり方の方がいいんじゃないかと思うんです。

【佐藤会長】今回、御指摘のように、かなり詳細な取りまとめのペーパーとして最初に出るものですから、その辺も考慮したら、我々が全体として頭に描いているのはこういうことですよ、こういう前提で今回の取りまとめをしたのですよということをもう少し明らかにした方がよいのかもしれませんね。

【竹下会長代理】ちょっと工夫してみましょう。

【佐藤会長】では、そこはそういうようにさせていただきます。

 その前提でございますけれども、まず最初に「Ⅰ裁判所へのアクセスの拡充」であります。その中の小項目に沿って議論していきますか。

【竹下会長代理】特に御異論がなければ小項目に入っていただいて結構です。

【佐藤会長】「問題の所在」はそこに書いてあるようなところかと思いますが、まず「1訴訟費用の負担の軽減」のところですけれども、そこはいかがでしょうか。「(1)提訴手数料」「(2)訴訟費用額確定手続の簡素化」「(3)弁護士の報酬の敗訴者負担制度」「(4)訴訟費用保険」、この辺を含めて、1つの固まりとしてやりますか。

(「はい」という声あり)

【佐藤会長】それでは、御意見ちょうだいしたいと思いますが、いかがでしょうか。特に「対応の方向」のところが、一応我々としての認識の一致点と言いますか、大事な点かと思います。

【竹下会長代理】提訴手数料について、山本委員の方から、スライド制それ自体は結構だけれども、特に提訴手数料が高額になるような場合については、低額化を図るべきであるということをもう少しはっきりさせた方がいいのではないかという御意見が寄せられておりますが、その点はいかがでしょうか。ここでも「かなり高額になることもあり、訴えの提起を抑制する弊を生じているケースもあると思われる。」ということを言いまして、したがって、必要な範囲で低額化を行うという趣旨は出ていると思うのですが。

【鳥居委員】この「テイ」は「定める」の方ですか。それとも「低い」の方ですか。

【竹下会長代理】「低い」の方です。

【吉岡委員】2ページの上から4行目のところなんですけれども、「ケースもあると思われる」となっていまして、少しここのところはトーンダウンしたのかという感じがするんです。例えば「生じていると思われる」とか、「生じているケースもある」とか、それだけでいいのかなという感じがします。細かなことですけれども。

【竹下会長代理】これは皆さんからいろいろ御意見を寄せられたので、なるべくそういう御意見を取り込む形で直しましたので、もし「と思われる」というのが少し弱過ぎるというのであれば、「ケースもある」にいたしましょうか。それとも「生じていると思われる」で「ケースもある」というのを取りましょうか。

【吉岡委員】これは取っていいような気がします。

【竹下会長代理】それでは、そういたしましょう。

【井上委員】「弊も」なら結構なんですけれども、「を」ですとちょっと強すぎませんか。

【吉岡委員】そうですね。

【竹下会長代理】そういたしましょう。

【吉岡委員】それから、その次の○のところで、「スライド制を維持しつつ」ということを決めているんですけれども、大方の意見の一致を見たというのは、スライド制を維持することを一致したということではなくて、こういう書き方があちこちあるんですけれども、大方はそうだけれども、そうじゃない意見もあるよという、そのくらいに見ておけばいいんですね。

【竹下会長代理】いや、全員一致と確認をしているわけではないので、皆さんのここでの御議論の傾向としては、大体こういうことで意見が一致したのではないかという趣旨で、私としてはこういう表現を使ったのです。ですから、特にどなたか反対だと言われたときには、むしろ多数・少数という書き方ではなくて、今の段階では意見が割れているというような書き方にしたのです。もし、スライド制それ自体を見直すべきだという御意見だとすれば、こういう書き方では少し具合が悪いかなと思います。

【吉岡委員】「定める」方の定額を考えてもいいのではないかという気もするんですけれども、スライド制を維持しつつという、それが全部スライドにするのではなくて、定額制も考える余地はあると見ておいていいですね。

【佐藤会長】その次の○のところが簡裁の話ですね。

【竹下会長代理】少額事件については定額制にしたらどうだということを申し上げたのですが、そうでないと、事件によって定額制ということでは、どういう事件を定額制にして、どういうのはスライド制でいいのかということを決めなければならないことになりますね。

【吉岡委員】ちょっと確認したかっただけですから。

【藤田委員】「大方の意見の一致を見た」と、「おおむね意見の一致を見た」とはどういう語感の違いになるんですかね。

【竹下会長代理】おおむねというのもありましたかね。

【佐藤会長】大体「大方」というのを使っていたんじゃないですか。

【藤田委員】「大方」と言うと大部分の人という意味になるんですかね。

【佐藤会長】そうでしょうね。

【井上委員】おおむねというのは、語感として内容の方じゃないですか。

【佐藤会長】お気づきになったら今日御指摘いただいたらいいと思うんですけれども、言葉の微妙な問題は、最終的な中間報告のところで、厳密にやっていただくことにして、この段階では大体の理解として、この辺でということでいかがでしょうかね。

【吉岡委員】結構です。

【佐藤会長】文章がこのまますっとスライドするわけではありませんので。

【井上委員】2ページの下から7行目「「権利の内容が訴訟を通じて減殺・希釈される」というのは凝った表現なのですが、一般の人にはわかりにくい。もう少し直截に言った方がいいような感じもします。

【竹下会長代理】これはまさに民事訴訟法学の方で、この議論をするときによく使う言葉なのです。それをそのまま使ったということです。

【井上委員】それはそのとおりだと思うのですけれども。

【竹下会長代理】わかりました。

【佐藤会長】今はもう(3)のところに行きましたが、(2)のところはよろしゅうございますね。では、(3)の今の表現を。

【吉岡委員】1回休むとこういうことになるので、もしかするとダブるかもしれませんがお許しいただきたいんですけれども、3ページに入ったところの「対応の方向」での全体の書きぶりと言いますか、敗訴者負担が原則で、例外を絞っていくというふうに読めるんですが、私の弁護士費用の敗訴者負担についての基本的な考え方というのは、むしろ訴訟提起を促進する目的でこの制度を導入した方がいいということで、どちらかというと片面的敗訴者負担という言葉にした方がいいと思いますが、そういうふうに敗訴者負担について考えたらどうかということで、前前回辺りまで発言したつもりでいるんです。

 ここのところで、私の意図するところよりは非常に狭くなっているなという感じがします。要するに例外という考え方が。ちょっとその辺のところがどうなんだろうなというふうに思うんです。

 これは、私のところへ直接一般の方から、敗訴者負担が新聞記事になったものですから、なぜそんなの決めたんだという文句の電話が大分入りまして、その中で私が気になっていたのは、本人訴訟ができなくなるのではないか、本人訴訟の場合には自分の方が弁護士費用が掛からないのに、負けたら相手の費用を持たなければいけないということがあるので、その辺は配慮が足りないというお叱りを受けたんですけれども、例えば弁護士を必ず両方付けるとか、そういうようなこともこの間までは御意見としてあったと思うのですが、そういうことを含めると、ちょっとこの辺のニュアンスが逆と言いますか、例外を余り狭めないという考え方を入れておいた方がいいという気がします。

 それで、「対応の方向」の2つ目の○の下から2行目のところに、「および労働訴訟・少額訴訟など」となっていますが、ここに例えば消費者訴訟を文言として入れていただくという御配慮をいただけないかなと思います。

【竹下会長代理】それは皆さんの御意見ですが、原案の考え方は、最初の○で原則的に導入する方向、これは総理大臣官邸での第20回会義でしょうか、そのときに議論をしまして、議事録でも会長の最終的なまとめの発言として、それでは原則的に導入しましょうという方向でまとまったという経緯がございますので、それを取り入れたものです。

 吉岡委員が片面的敗訴者負担ということを考えてよいという御意見であったことは確かなのですけれども、これは必ずしも意見が一致しなくて、片面的というのは日本の訴訟の場合には難しいのではないか。むしろ一方の当事者が社会的、経済的に実力的に劣っているという場合については、もっとほかの方法で、費用の問題なら法律扶助とか、あるいは訴訟の中身の問題ならば証明責任の転換とか、そういうことで対応をする方がよいのではないかという意見もありました。

 したがって、片面的敗訴者負担にするかどうかというのは、検討すべき問題という取り扱いにしたわけです。

 それから、2つ目の○のところで消費者訴訟というのが入っていないという御指摘は、これまで労働訴訟と少額訴訟については、ここで実際に具体的な議論が出まして、皆さん大体そういうものは例外でよいのではないかというお考えだったように受け取れたものですから、この2つを入れたわけです。

 消費者訴訟というのは、それが何を指すのかということ自体が非常にわからないのです。今度できた消費者契約法上の訴訟というようなことであれば非常に内容が限定されているのですけれども、割賦販売契約上の訴訟、いわゆるクレ・サラ事件は全て消費者訴訟なのかということになるとはっきりしない。

【吉岡委員】あのときに社会的な正義とか公益とか、そういうことを申し上げたと思うんですけれども。そのときに異論があったことも確かです。

【井上委員】これは例示だと思うのです。敗訴者負担制度が、不当に訴えの提起を萎縮させる恐れがある一定の訴訟というところが本体であり、その範囲はどこまでかというのは要検討事項の2番目で、これから更に検討しましょうということになっていますので、吉岡委員のおっしゃっていることとも矛盾はないと思うのです。ただ、明示されていない、明示するにはまだ固まっていないと、恐らくそういうことじゃないかなと思います。

【吉岡委員】そうすると、無視されたということではないと考えていいですか。

【佐藤会長】要検討事項のところに挙げてあります

【鳥居委員】一人歩きを必ずしますので、例示とは言いながら、やはり一般的にはここに例示された2つだけが一人歩きをする可能性が非常に強いと思うんです。同じような趣旨で前に申し上げたことを繰り返すようですが、かなりの範囲の行政訴訟関係のことについては、ここに書いておかないと、やはりまずいんじゃないかと私は思います。私は再三、違法建築の撤去という事例を申し上げているんですが、住民が地域全体を考えて、公益の観点から地方公共団体に対して訴えを起こしたとしても、今の制度の枠組みですと、訴訟自体が認められないケースが多いと思うんです。そうすると、結果としては、裁判までいったとしても、住民敗訴ということになって、東京都とか区役所の方で雇った弁護士さんの費用まで住民がかぶってしまうということになりますから、今、吉岡委員がおっしゃっているのと同じようなことが起こる可能性があると思うんです。それはやはりかなり大きな例示項目としての性格を持っていると思うんです。

【竹下会長代理】今、鳥居委員のおっしゃった点ですが、これはもしここでの議論の枠組みが、原案で言っているように、例外としてあと何をここに掲げるべきかという議論であるとすると、私自身も鳥居先生のおっしゃるように、国とか行政庁を相手にする訴訟で、国や行政庁あるいは地方自治体の違法行為を、国民の側から是正する、ないしはその違法行為によって生じた損害の賠償請求をするという性格の訴訟については、そういう訴訟を提起することを萎縮させるようなことにはすべきではないという趣旨で、例外として挙げてよいと思うのです。もし皆さんがそれも変えた方がいいとおっしゃるのであれば、明示的に、例えば行政訴訟とか、あるいは国、地方公共団体を相手にする訴訟というのを挙げるということは十分考えられると思っております。

【藤田委員】地方公共団体を相手方とする国賠訴訟などでも、何というか、いちゃもんを付けるようなものもないわけじゃありませんから、地方公共団体を相手にする訴訟という表現にすると、ちょっと問題なんです。ですから、公益に関連する訴訟みたいなくくり方はできませんかね。

 消費者訴訟とおっしゃるのは、多分ジュース訴訟とか独禁法関連の訴訟のことをお考えになっていると思うんですけれども、これらの訴訟は純粋の私益に関する訴訟じゃないんです。だから、そういう意味で何か例示でうまい表現があればいいんですが。

【佐藤会長】公益という区切り方でいいですか。

【井上委員】要検討事項のところに「行政の違法を是正することを目的とする訴訟など公益的機能を有する訴訟」となっていますね。これで区切りとして明確と言えればいいのでしょうが。

【竹下会長代理】そうなのですね。こういう表現でよろしいという御意見ならば、勿論そういうふうに変えてよいわけです。

【藤田委員】これはぴしゃっと概念規定をしないと、法律を適用するときに非常に困ることなんですね。そういう意味では、正確な表現をしないといけませんから、まだいろんな法技術的な問題も検討する必要があります。現時点では、そこまで行かない段階だという意味で、今、井上先生が言われたような表現でどうでしょうか。

【竹下会長代理】それでも結構です。

【井上委員】労働訴訟と言ったって、法文にするときにはそれでは明確にならない。

【藤田委員】労働訴訟という概念ではちょっとだめですね。

【吉岡委員】労働訴訟、少額訴訟というと、何かかちっと決まったものみたいな感じがしますから、今、井上先生がおっしゃった公益的機能を有する訴訟という、その言葉をもう一つプラスしたらどうですか。

【井上委員】下の方に書いてあるものをそのまま読んだだけですが。

【北村委員】「など」とかと書いてあるということは、割とこの中に多いと思うんです。一人歩きするというのもよくわかるんですけれども、今のこの段階でそれを全部詰めていくというのは難しいんじゃないかなと思います。今まで詰めていませんでしたので。これはまとめですので、したがって、その辺のところはこのままにしておいて、そういうものがあるということでいいんじゃないかなと思うんです。

【水原委員】私も北村先生の意見に全く同感です。これはあくまで例示で、労働訴訟、少額訴訟などということで、要検討の中には、例外とすべき訴訟の範囲を検討項目として入れているわけですから、ここで十分検討いたしますよということになっているわけですから、この2例だけに限るものではありませんよということは、それとの関連でよくわかるんじゃないでしょうか。

【佐藤会長】中間報告を書くときに、要検討事項に関する意見だけをずらずらと並べられるかという問題になってくるわけです。そうすると、これを取るときには本文のところでどういう表現をするかということをかなり厳密に考えないといけません。だから、今の段階では、こういう書き方になっているんですが、そういうものとして受け取っていただいて、余りかちかちとここでやり出すと。今日は実はこれ全部お決めいただかないといかんのです。

【鳥居委員】これ全体を読んで、要するに細か過ぎるんです。書いてくださった先生方には申し訳ないんですが、私たちが今議論すべきことは、改革の大きな方向を決めることなんじゃないかと思うんです。例示が挙がってきたりして、かなり個別的なことが書いてある。そこに踏み込んでしまうと全体に影響する。先ほどどなたかがおっしゃった、「公益に関わるようなものは」という表現くらいでとどめておくという書き方で、全体を大くくりにしないと。

【井上委員】労働訴訟、少額訴訟などを取ってしまうと。

【竹下会長代理】少額訴訟などを公益的機能を有するというのは、ちょっと無理だと思うのです。

【鳥居委員】だとすれば、例えばおっしゃったような文言をここに入れても、要検討事項の方にわざわざ下ろさなくてもいいんじゃないかと思うんです。

【井上委員】「不当に訴えの萎縮させるおそれのある一定種類の訴訟や、公益的機能を有する訴訟」ということですかね。

【鳥居委員】そうですね。

【井上委員】それと「および」の後に「例えば」というのを入れる。

【竹下会長代理】そういたしますか。

【吉岡委員】北村委員、鳥居委員がおっしゃったのを、私も確かにそうだと思うんです。細かく書いてあると、細かい文言が全部気になってきてしまうんです。そうすると、何か全体が見えなくなってしまう。

【中坊委員】今皆さんのおっしゃっている議論、もっともだと思うんだけれども、かねて言っていますように、この審議会が、全体として司法制度全部のしかも抜本的な改革を論じているときに、訴訟費用のことの、言葉の意味まで言うていたら、それこそきりがない議論になると思うんですよ。だから、我々としては、今言うように、中間答申をする前に、先ほどから会長がおっしゃっているように、ひととおりの勉強をして、まとまっているものは一応まとまったものとしてここに書いておいて、それを中間答申の際に内容に入れようという、1つのメモみたいなものですから、余り一人歩きすると言われると、何もかも一人歩きし始めるんです。余りこれを細かく議論し始めたら、かんかんがくがく、おっしゃるように乱暴かどうか知らぬけれども、削ろうかみたいな意見まで出てきて、収拾がつかないようになると思います。

 私たちとしては、ロースクールのことですら検討委員会に詳細の検討を依頼した。弁護士改革では法曹一元、そんなばかでかいことがまだみんな未定のままで来ているのです。私が言ったように「法曹人口の大幅増員」ですら数がまだはっきりしていないと言われて、あれほど頑張らなければならないのに、一方でここの言葉がどうやこうやと言うているのは、私は次元が違うと思うんです。

 我々は、本当のことを言えば、期限の制約がなければ、この審議会の在り方は、別にこれはこれでもいいとは思うんですよ。だから、今度こうなると戻るのはいいけれども、我々としては、日程に基づいて2年という期間が決められておって、しかも、この8月には合宿して9月には出すというんだから、しかもその内容は抜本的な司法制度の改革ということで決まっているんだから、それを頭に入れてやらないと、言葉使いでいろいろ言い出したら、私もまた言いたくなってくるから、何とか交通整理していただければと思います。

【佐藤会長】吉岡さん、よろしいですか。そういうことなんで、一人歩きと言われると本当に難しいんで。ここはむしろ取ってもいいくらいなんですけれども。労働訴訟だけかということになってきますからね。取ってしまうのもいいかもしれない。

【竹下会長代理】中坊委員がおっしゃったことに別に異論はないのですが、私の方で原案をつくりましたとき、確かに細か過ぎるというのはおっしゃるとおりだと思うのですけれども、おおざっぱに敗訴者負担の原則を取って、公益に関するものについて例外にするのだと、それだけでよいかというと、それでは具体的に立法する人に全部任せるということになると思うのです。

【佐藤会長】中間報告で文章化するときに、さっき申し上げたように「要検討事項に関する意見」というのをある程度整理しないといけないわけです。そのときでいいんじゃないかと思うんですが。

【竹下会長代理】皆さんがそうおっしゃるのであれば、私の方は全くそれで結構です。

【藤田委員】中坊さんの言われるように、メモ程度のもので、これで書いたことはもう動かせないということではなく、また議論するときに幾らでも修正できる、新しい問題を入れることも、削ることも可能だという前提で考えてどうでしょうか。

【佐藤会長】中身は別として、大きな考え方としては異論はなかったとか、認識が一致したというのは押さえておかないといかんのですけれども。もし労働訴訟で、何でこれだけかとなると困るんで、ここを取ってしまうということでもいいんです。

【鳥居委員】あえて異論を唱えるわけじゃありませんが、そうだとすると、異論を唱えるチャンスはいつあるんですか。今日は異論を唱えるタイミングではないというのであれば、いつ唱えることができるのですか。

【佐藤会長】これから出てくるところですが、大きく意見が分かれたところがあります。それはもう真正面から御議論いただかないといけません。ここのところは、中間報告の文章を取りまとめるときに、こういう表現では困るというような機会は出てきます。

【鳥居委員】今の論理は、大方の異論はなかったとか、大方の賛同を得たというのでパスしていこうという論理でしょう。だから、大方と言っても、少数意見かもしれないけれども、2、3人は異論を唱えている人がいますよというのはどこで忖度されるのかということです。

【佐藤会長】ここで異論というのは、具体的にこの訴訟、こういう類型の訴訟をどうするかということについては意見が分かれてくるということでして、原則だけではだめですよ、別のカテゴリーというものを考える必要がありますよというところは異論がなかったということなんです。だから、原則だけではだめだ、いろんな手当を考えなければいけませんよというところは異論がなかったわけです。

【水原委員】一定の種類の訴訟の中に何を入れるかということはこれからの議論だということなんです。鳥居先生のおっしゃる建築訴訟の問題も含まれ、消費者訴訟の問題も含まれるのではなかろうかと思います。これは後の議論で、例外とすべき訴訟の範囲をもう一回検討しなきゃいけない、こういうことだと思うんです。

【佐藤会長】では、ここのところはよろしゅうございますか。

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】あと訴訟費用保険ですか。

【竹下会長代理】訴訟費用保険の問題は、前回日弁連の方から資料をいただき、副会長から御説明していただいて、大変結構な方向に行っていると思うのです。ですから、この審議会としても、そういう方向に進むことについて、皆さん御異論なくてサポートされると思うのですが、ただ、この審議会の性格から政府に提言をするという場合に、訴訟費用保険について何が言えるのかというのがよくわからないものですから、最後にワンセンテンス、ここでは議論されていなかったようなことを仮に付け加えたのです。こんなことは議論していないんだから削れということであれば、勿論削っていいのですが、そうすると、この審議会としては、何を言うのかがよくわからない。保険会社にしっかりやってくれというだけになってしまうので、どうしたものかと考えているのですけれども、どうでしょうか。

【井上委員】期待するというのは、その意味では何か弱い感じがしますね。

【竹下会長代理】ところが、国において余りするべきことはないみたいなのです。

【鳥居委員】どなたに質問したらいいかわからないんですが、こういう新しい保険商品が開発されたときには、発売認可が必要なんでしょうか。

【竹下会長代理】前は保険約款の認可という制度があったようなのですが、最近の保険業法の改正で、認可という形ではなくて、免許を受けるときに保険約款を添付するらしいのですが、これは事務局のどなたかにお答えいただいた方がよいのかもしれません。私もそういうふうなことがあり得るのではないかということでこういうことを書いてみたのですが、実際のところはよくわかりません。

【北村委員】訴訟費用保険を国がやるならともかくとして、民間がやるんでしたら、余計なことですね。利益になるんだったらやるでしょうし、それを審議会がある一つの業種に対してやってほしいと言うということは、何かちょっとそぐわないような感じがします。訴訟費用保険が非常に必要であるという主張はわかりますけれども、そう言っても、ああ、そうですか、ということで終わりそうな感じがするんですけれども、どうなんでしょうかね。

【竹下会長代理】そういうものかもしれないですね。

【井上委員】そこで竹下先生としては、国に対してものを申すという形にされたのでは。

【北村委員】国に対して、この訴訟費用保険をということですか。

【竹下会長代理】そうしないと、この審議会として取り上げる問題ではなくなってしまう。

【鳥居委員】私は、税法上どういう扱いを受けるのかという問題と、それから保険新商品をどう認可するという2つの点で、国との関わりはあると思うんです。それで新商品の方は自動的に認可なのであればそれで結構なことですが、それでもなおかつ、過去10年くらい振り返ってみれば、生命保険等で、有利な商品を外国の生命保険会社が日本に持ち込もうとするときには、かつては問題があった。今はかなり自由に入れるようになった。外国の保険会社がその種の保険を日本にどんどん持ち込もうとしたときには、日本ではどれだけのフリーダムがあるのかということはやはり問題だと思うんです。

 もう一つは、我々がこの保険に掛金を掛けた金は、年末の税金の申告のときに損害保険や生命保険の掛金と同じように控除が認められるかどうかは決まっていないわけですから、国がこれを開発普及するのを支援するという言葉に該当するように思うんです。

【竹下会長代理】そういっていただければ。

【佐藤会長】妨げるなと。そういう理解で。

【水原委員】また蒸し返すようなんですけれども、3ページに戻って、要検討事項というのはよくわかりました。この方向で結構だと思うんですけれども、検討事項に関する意見ということで幾つか出ております。敗訴者負担の例外とすべき訴訟の範囲、及び例外的取扱いの在り方について、いろんな観点から議論しなければいけないという御意見が出ておりますが、これは極めて重要なので、私は先ほど原案どおり賛成しましたが、「敗訴者負担の例外とすべき訴訟の範囲および例外的取扱いの在り方」、こういう書き方でいいのですけれども、その内容については、いつ、どういう形で審議するのかということをはっきりさせないといけないと思います。そうでなければ、鳥居先生、吉岡先生の疑問は当然だという気がするんです。

【佐藤会長】ここは中間報告でどの程度書き込むか、中間報告をどのように位置づけて細かく書き込むかという辺りの問題と関連してくると思います。中間報告では、細部にわたってすべて書き込まないといかんと考えるのか、中間報告の段階でもまだそこまで細かいところに入らなくてもいいじゃないか、基本的な考え方を示しておけば十分ではないかと考えるのか、そこの問題だと思います。

【水原委員】中間提言までに議論をするのか、なかったとしたら、あとで最終結論を出すまでの間に、もう一遍この件について十分議論すると、こういうことでございますか。

 わかりました。

【井上委員】今のところの項目ですが、「要検討事項に関する意見」というのは、外に出るとすると誰の意見か分からず誤解を招きかねません。「要検討事項に関する各委員の意見」という言い回しにしていただければと思います。

【佐藤会長】それは、この文書全般にわたってあてはまることですね。

【井上委員】はい。

【佐藤会長】次は、大きな「2民事法律扶助の充実」です。「対応の方向」ですが、刑事のことも併せて議論しないといけない問題もあるので、この段階ではこんなところかなと思いますけれども、いかがですかね。よろしいですか。

【竹下会長代理】前から、国民の司法へのアクセスの問題として法律扶助の問題は非常に重要だということを御議論いただいていたのですが、どうも今回はユーザー側のレポーターの方からも、この点について、余り具体的な御意見がなかったものですから、ここでの議論も、ここに書いてある以上に立ち入ったことにならなかったので、こういう取りまとめになっているわけです。とりわけ運営主体の在り方の問題が重要だと思いますけれども、これは恐らく刑事の方と関連いたしますので、今、会長が言われたように、そちらで運営主体と絡めて、民事の法律扶助の問題も必要な限度で議論していただくということであればそれで結構かと思います。

【佐藤会長】では、よろしいでしょうか。

 次の「3裁判利用相談窓口(アクセス・ポイント)の拡充」ですけれども、これも、こういうところではないでしょうかね。

【吉岡委員】細かいことを言うのが具合が悪くなってしまったんですけれども、文言みたいなところで申し訳ないんですけれども、6ページの「対応の方向」2つ目の○の4行目の真ん中辺りのところですけれども、「消費生活センターなどの相談窓口において」何とかすることは考えられるとなっているんですけれども、これは「相談窓口を通して」とか、「通じて」とかにしていただいた方がいいと思います。同じ趣旨だと思うんですけれども。

【竹下会長代理】消費センターに行ったときに、そこで各種ADRとか弁護士会の方の紹介についての情報を提供してほしいと、そういう趣旨なのですが、「通じて」の方がいいですか。「通じて」と言うと、そこへ行った人に言うというよりも、仲介機関の感じになってしまうから。

【吉岡委員】私はこの読み方を逆に読んだものですから。そうであれば結構です。

【竹下会長代理】「相談窓口において・・・総合的な情報を提供し、」というふうに続くつもりなのですが。

【井上委員】「おいて」が2つ続くのはどうでしょうか。細かなことですけれども。

【吉岡委員】地方公共団体においては、相談窓口においてですから。

【竹下会長代理】いろいろ文章を直しているうちにつながりが分かりにくくなっているかもしれません。では、ここは修文をしましょうか。

【吉岡委員】細かなことですから結構です。

【竹下会長代理】法律の仕組みとして、消費生活センターというのは、消費者保護基本法に基づいているわけです。各自治体がいろんな苦情とかへの対処に努めなければならないという規定があって、それを受けて市町村で消費生活センターというものをつくっているのだと私は理解したのですが、そういうことでよろしいでしょうか。

【吉岡委員】消費保護基本法に基づいてつくられている、15条、16条ですかね。消費者保護の一環として都道府県及び市区町村の役割としてつくられている、そういうことで消費者一般の相談に応じるということです。

【竹下会長代理】そうだとすると、何か制度的な問題として考えるとすれば、その中に単に苦情のあっせんということだけではなくて、こういう司法に関する総合的な情報提供みたいなこともやるように、消費者保護基本法の方に書き込んでもらうということも考えられるかなと思ったのです。そうしないと、運用でそれぞれやってくださいという話になってしまうので。制度的な点を考えるならば、そういうことかなと思います。

【吉岡委員】消費生活センターの位置づけをしっかりしておくという意味では、こういうことをやってよ、ということはとてもいいことだと思っています。

【竹下会長代理】多少そういうニュアンスが出るような書き方をします。

【佐藤会長】次の「4裁判所の管轄・配置等」ですけれども、まず「人事訴訟の家庭裁判所への移管」。これについてはいろいろ議論があったんですけれども、「対応の方向」はいかがですかね。

【竹下会長代理】大体御意見がまとまったのではないかと思います。

【鳥居委員】質問したいんですが、1つは、簡易裁判所の裁判に当たる方は正規の判事なんですか。

【佐藤会長】今の御質問は(2)の方に関連しますが、もし(1)について特に御意見がなければ、(2)の方にいきますけれども。

【竹下会長代理】地方裁判所以上の裁判官とは、任命資格が違っております。

【鳥居委員】それで私の疑問は、要するに、大事な裁判案件でも額で切りますから、本来地裁で裁くべきものが、額で切られて簡裁に下りてきてしまう、言葉は変ですが、そういう可能性が残るんじゃないかと思うんです。

 ということは、全体として議論しないといけないことを金額だけで議論している可能性がある。つまり、簡易裁判所というのは、だれが担当すべきなのかということについての議論はまだ十分していないんじゃないかということが1つです。

 もう一つの点は、昭和57年に裁判所法が改正されたというのはわかるんですけれども、私、経済学者として考えますと、だからと言って、昭和57年を起点にして物価上昇率で90万円を伸ばすということをここで書いてしまうと、自ら手足を縛って、ある種の金額が自動的にはじき出されてしまう可能性があるんです。むしろ今回はそれを取って、7ページの「対応の方向」の1行目、「簡易裁判所の事物管轄については、経済指標の動向などを考慮して」と、つまり、昭和57年以後のというので、物価指数の起点を決めてしまわないで置いた方がいいんじゃないかと思います。

【竹下会長代理】前者の点でございますけれども、確かに簡易裁判所の問題、簡易裁判所でどれだけの範囲の事件を扱うかということを考える場合に、簡易裁判所の裁判官の性格と、それから簡易裁判所が日本の裁判組織全体の中で持っている地位というものを考えなければいけないというのはおっしゃるとおりだと思います。前に藤田委員も地方裁判所で現在訴額の少ない事件というものにどういう事件があるのかということを考慮する必要があるのではないかという指摘をされたと思うのですけれども、同じ御趣旨だと思います。ですから、考え方としては、訴額だけではなくて、金銭請求事件というのは比較的簡易な事件が多いですから、事件の種類による簡易裁判所と地方裁判所の権限分配、そういうことも考慮に入れてもいいかもしれない。

【吉岡委員】質問なんですけれども、簡易裁判所とか少額裁判所、一応金額が幾ら以下となっていますけれども、その幾ら以下という金額の場合には、例えば30万円以下だったら、少額裁判所に持っていかなければいけないという、そういうことではないですね。

【竹下会長代理】少額訴訟については、少額訴訟でもいけるということです。

【吉岡委員】選択肢の1つとしてこちらもあるけれども、別にもあるよという、そういうことですか。

【竹下会長代理】おっしゃるとおりです。少額訴訟ではなくて、一般の訴訟でもよいわけです。

 それから、簡易裁判所と地方裁判所の関係でも、現在でも不動産に関する訴訟は、訴額としては90万円以下でも、簡易裁判所に持っていってもいいし、地方裁判所でもいいということになっております。

 それ以外のものについては、不動産以外のものについては、一応訴額で簡易裁判所と地方裁判所に分かれるのですけれども、前の資料に出てまいりましたように、当事者が合意で30万円の事件だけれども、地方裁判所でやりたいということであれば、地方裁判所に行ってもよいわけです。事実、そういう例があったと思うのです。統計に出てきていたと思います。90万円を超える事件なのに簡易裁判所でやっているというのもあれば、逆に90万円以下なのだけれども、地方裁判所でやっていると。そう数は多くないと思いますけれども、あることはある。

【藤田委員】訴額に関係なしに行政訴訟は全部地方裁判所に行くという振り分けになっておりますし、民事訴訟法の18条ですけれども、簡易裁判所の管轄事件であっても、内容が複雑で地方裁判所で裁判した方がいいという場合には、裁量移送ができるということになっております。この裁量移送は、実際にもかなり行われているんです。

 逆に、竹下会長代理がおっしゃった合意管轄で何百万円という事件を簡裁に持ってくるということも結構ありまして、公庫が、弁護士を使わないで職員を代理人にするためということもあるんですけれども、相当多額なものを合意管轄で簡易裁判所に持っていくという事例もありましたので、杓子定規でびしっと決められているというわけじゃなくて、相互間の融通ということはあります。

【吉岡委員】利用する立場から見た場合には、地裁に持っていくよりは、簡易裁判所の方が何となく持っていきやすいとか、額が小さい場合には、割合早く決着がつく少額裁判所に持っていった方がいいかなという、そういう考え方というのはあると思いますから、そういう意味では少額裁判所、簡易裁判所が使いやすいということはとても大切なことだと思います。

 そういう視点でみたときに、確かに少額事件が30万円でいいのかというと、実際の日常生活のトラブルから見て、もう少し金額が上がってもよいかなと思います。簡易裁判の場合でも、90万円で一応の線を引いておくということは少し時代に合わないという気もいたしますので、そういう意味では少し上げるということも考えてもいいと思います。

 ただ、少額裁判、簡易裁判の場合に、つい私たちは自分が訴える側になることばかり考えがちですが、特に簡易裁判所の場合には、サラ金だとか、クレジット会社から逆に訴えられるというケースもありますので、その辺も配慮しながら、額を決めていく必要があると思います。

【竹下会長代理】おっしゃるとおりだと思います。そうすると「対応の方向」としては、一応先ほど鳥居委員から御指摘の、「昭和57年以後の」というのは削除するとして、ここに書いてあるようなことでよろしいでしょうか。

【水原委員】鳥居先生のおっしゃった簡裁の判事でございますけれども、これは司法試験を合格していない者ばかりではありません。65歳の定年で判事を退職した方が簡裁の判事になっています。それから、判事補、検事、弁護士等の方々からも、何年以上経験した者はなれるということになっています。

 それから、簡裁の判事の選任任命というのがございまして、これは選考委員会の選考を経た方がなる、司法試験を合格していない方が選考試験を受けた上でなるという場合でございます。だから、いろいろ混在しているというふうにお考えいただければと思います。

【藤田委員】外部の方が試験を受けてなられるというケースも結構ございまして、元行政庁幹部をしていた方などの例があります。行政官を卒業して、捨て扶持に甘んじるのは潔よしとせずというので、自分で勉強して、非常に難しい簡易裁判所判事の任用試験を突破しまして、定年までやられたという元恩給局長もおられます。

【佐藤会長】(2)はそういうことでよろしゅうございますか。

 では(3)。ここも書き方とすれば、こういうことかなと思いますけれども、いかがでしょう。あるいは(4)も、この段階で余り細かな書き方でもね。よろしゅうございますか。

 次に「5開廷日・開廷時間の柔軟化」。もうちょっと積極的に書き込むか、今の段階ではこの程度とするか。

【竹下会長代理】この問題も先ほど吉岡委員がおっしゃった利用する側から言うと、夜間や休日も開廷する方がよいと言っても、相手が夜間、休日に引き出されるのは困るという面もありますので、そこらはちょっと微妙だと思うのです。

【吉岡委員】ただ、東京の場合ですが、簡裁が5時以降でもやっていますね。それがほかの地域ではどうであるか私は知らないんですけれども、やはり柔軟性を持たせる必要があると思います。今、日本の人口の中のどのくらいの割合が給与生活者かは、はっきりした数字を把握していませんが、かなりの部分が給与生活者です。そういう人が訴訟を起こしたいというときに、休みを取らなければだめだということになると、利用しにくいということにつながるんです。ですから、すべての日曜・祭日、夜間を開廷しろということではなくて、そういう道もつくっておくという、そういうことを考えておりまして、必ず全ての日曜日に開廷しなければいけないというのは無理だと思います。

【竹下会長代理】前に事務局でつくっていただいたこのブロックの追加資料の3の中の

 21ページ以下の資料9ですが、これを見ると、かなりばらつきがあるのです。現在、実際に夜間執務をしている裁判所を見ましても、例えば京都家裁などは、過去3年間で毎年1件くらいずつしかないというようなことがありましたり、大阪簡裁は調停がある程度行われている。しかし、東京簡裁は90件台というと、利用されている方なのでしょうかね。私などもアメリカの少額裁判所が夜間にやっているのを見てきまして、あれは非常に利用者のためによいのではないかと思っていたですけれども、この数字から見ると、それほどは使われていないという感じなのです。東京家庭裁判所、それから大阪家庭裁判所の家事相談、家事審判はかなりの件数になっていますね。

【吉岡委員】今までの実績がそうだから利用がないだろうというふうに考えてしまっていいのかという問題が1つあると思うんです。十分に周知されているどうか。大体の国民は平日の昼間しかやっていないという思い込みがありますから、それがそうではなくて、夜間でも受け付けできる。あるいは、夜間の開廷もあるということが周知されるということがまず第一だと思います。

 それから、これを拝見しますと、終わりの時間が早過ぎますね。せめて8時くらい、そういうことも配慮する必要があると思います。ですから、道を開くということが必要だと思いますので、この程度の利用しかないから要らないだろうとは思いません。

【竹下会長代理】私も要らないと申しているわけではなく、周知方が必要であると思うのですけれども、これだけの数字だと、直ちにそれを制度化するということはちょっと難しい。だから運用として、裁判所職員の労働条件等のことも考えて、国民が利用しやすいように努めるべきだというくらいのところかという趣旨です。

【吉岡委員】私も労働条件も配慮してと申し上げたと思いますけれども、そういうことを配慮しながらも、やはり道筋はあるということが利用者である国民にとっては必要なことではないかと思いますので、そう急にすべての裁判所がとか、そこまで期待しているわけではありませんけれども、道筋だけはつける必要があると思います。

【竹下会長代理】そうすると、ここでの「対応の方向」としては、吉岡委員の御意見だとどうなりますか。

【藤田委員】夜もやっていますよというPRも必要なことはそうなんですけれども、夜にばかりやる事件というだけではなくて、既に係属している事件について、次回期日を入れるというときに、夜も入れられますよということもありますから、幾らでもPRの機会はあるんです。

 もう一つは、夜の手続もいいんですけれども、場所との関係があるんです。東京簡易裁判所で夜間調停をやろうかということで三弁護士会と協議したことがあるんですが、夜やってもらうのは結構だけれども、夜の霞が関というのは、余り心安く出て来られるところではないから、少なくとも霞が関でやっても仕方がないというような議論がありました。そういう地域的な要素と、時間的な要素と、PRと、いろんなことを考えなきゃいけないと思うんです。

【吉岡委員】私も霞が関に集中することが必ずしもいいことかどうか、検討しなければいけないと思いますが、今、簡易裁判所を霞が関に集中させていますね。確かに見学してみますと、建物も立派ですし、受付も広々していますし、余り圧迫する感じがありませんし、そういう意味では非常にいい設備ができたと思っておりますが、ただ、げた履きで行けるような場所かなという問題があります。

 そういう意味では、1か所に集中するメリットと同時に、それによるデメリットというのもありますから、例えば夜間の開廷だけは新宿にするとか、あるいは新宿とどこかにするかという工夫も考える必要はあると思うんです。

 ただ、時間的な制約というのはできるだけ、すべてをというのではなくても、制約されない方法が取られてもいいんじゃないか。そういうことが利用しやすいというところにつながる1つの方法ではないかと考えます。

 特にアメリカのスモール・コートなども結構利用されていますし、一般の国民にもよく知られている。もう10年も前ですけれども、私が見てきたときにそんなふうに感じまして、ああいう制度というのは日本にも欲しいなと思いましたので、あえてこの問題を提起したわけです。

【水原委員】これは休日・夜間の開廷はいたしませんということの結論を出しているわけじゃございませんで、まさに吉岡委員のおっしゃるように、今までの実績だけでは判断できないということは当然なんですけれども、ここにも対応の方向としては、国民のニーズの程度などを把握して、その上で更に検討すべきであるというのが大方の意見でございましたので、そういう方向で検討していくということで意見の一致を見たということにはならないんでございましょうか。

【中坊委員】私は吉岡さんのおっしゃっていることに近いんですけれど、私自身も大阪の例ですが、夜間開廷をされている場所の見学には行ったことがあるんです。確かにおっしゃるように、現実にはほとんど利用されていない。されていないのは、あんな大きな大阪のような裁判所の合同庁舎の入り口に、夜間用の調停がぽつんと電気がついていまして、あそこへ行っても、雰囲気が全然違います。だから、おっしゃるように、現在の利用状況を見ながら国民のニーズの把握などというけれども、その前にあのようなことでいいんだろうかという反省が私は要ると思う。我々はこの司法制度をどのような方向でこれから改革していくかということについては、国民一般が利用しやすいようにという方向で直していこうとしているわけだから、現状がどうだと言うことに拘泥しすぎてはならない。私も夜間で調停手続の場所ができましたからということで一応見に行きました。しかし、見に行っている時間は昼間であるわけです。夜行っているわけじゃない。ただ、夜は、私は率直なところ行ったことがないから何とも言えませんけれども、合同庁舎の1か所だけを区切って、あの場所で本当に人が行くかということなんです。しかも、1つしかないですよ。あってもそれを2つに分けられるかどうかだけなんです。おっしゃるように、そのために書記官を一人配置してあるとおっしゃるけれども、今のところは、形だけ利用できるような施設にされておるんです。我々審議会としては、大まかな方向づけをするとして、時間の制約をできるだけ柔軟に使って、もっと利用しやすいようにしてもらいたいんだということまでを言う方が正しいんじゃないかと思います。

 だから、今までの利用状況を見て、国民のニーズをとらえてなどと言うと、非常にお役所的な話になるんで、私はむしろ開廷日とか開廷時間というものは、もっと積極的に考え、我々審議会としては柔軟に対応して、より国民が利用しやすいような方向で考えるべきだというのが結論じゃないかという気がするんです。現実に私自身も見学に行っただけですから、使ったことがありませんので、実際の体験は申し上げられませんけれども、しかし、見た範囲においては、私はあれで利用できるのかなという疑問を持ったわけですから、余り現状が少ないからその利用状況を見てというと、あんな状況ではだれも使いませんということになってしまうので、先ほどから言っているように、この審議会というのは、おおまかな方向で、一体どのようにして司法を利用しやすいものにしようか、アクセスのしやすいものにしようかということを考えるのであれば、日とか時間であるというものは、やはり柔軟に対応してやってもらわなければいかんということが、この審議会の結論になるべきものじゃないかと思うんです。

 私らは実際弁護士をやっていますから、裁判へ行くために休みますという依頼者はたくさん見ているわけですから、夜間があった方がいいに決まっているんです。だから、アメリカでも、おっしゃるように、それを大々的にやれば、たくさん利用しているわけです。それは当たり前のことなんです。何でウィークデーの、しかも昼間だけしか裁判所は開かないんだというのは、私も実際弁護士として事件の依頼者と接していまして、そういう感覚は持っていますからね。そこに書いてあるように、現在の利用状況を見ながらとか、国民のニーズを把握してその上に検討すべきだろうという、若干消極的な姿勢よりも、もっと前向きに考えるんだという方向を、少なくとも審議会としては出す方が私はよいのではないかという気がします。そうではないと日とか時間については、労働条件とか何とか言って非常に消極的になりがちになり、反対の意見が出やすくなりますからね。我々審議会としては、さっきから言うように、大義名分として「国民が利用しやすい司法」と言うているんだから、そして日とか時間という点は必ず頭にあるわけですから、それについては私は、「現状の利用状況を把握し」というんじゃなしに、もっと積極的な姿勢を出す方が正しいんじゃないかという気がします。

【佐藤会長】ここのところは表現を工夫してください。

【竹下会長代理】表現については結構だと思います。それから、基本的な御指摘はそのとおりだと思いますけれども、これはやはり費用も掛かれば、職員の労働条件もある問題ですから、実際にニーズがあるかどうかわからぬけれども、何でもやりなさいというわけにはなかなかいかないと思うのです。

 それがここに出ているのでありまして、これでは少し消極的過ぎるというのであれば、もう少し積極的なニュアンスに書くことについてはやぶさかではありません。ただ全くそういうことを抜きにして、審議会が、幾ら国民の利用を促進するためと言っても、費用対効果を考えずに何でもやれというわけにはいかないだろうということです。

【佐藤会長】吉岡委員も、全部やれとか、そういうことではないということでしたよね。

【吉岡委員】すべての法廷を開廷しろとか、そういうことではなくて、初めは小さいところからでもやらなければということだと思うんです。ただ、考える1つの方向として国民の側から見ると、そういう選択肢が欲しいということです。

【竹下会長代理】それはよくわかります。

【吉岡委員】竹下代理がおっしゃるように、現実の問題としては、予算も掛かるし、人的な問題もという、その辺のところはわかるんですけれども、それを配慮していきますと、これから検討しなければいけない大きな問題ができなくなると思います。

【竹下会長代理】それは問題によって違うと思います。しかし、この問題については、このあたりで結構です。

【藤田委員】開廷の日時についての法律的な制限はないと思います。夜やっても、日曜、祝日に開廷しても、いかんという規定はない。しかし開廷の場所は法廷でやれということが規定されています。本当は庶民が一番行きやすいところは、町役場、市役所、区役所なんですけれども、区役所で開廷すれば利用価値があるかも知れませんが、裁判所法では法廷で開くことになっていますから、そう簡単にはいかないし、また、裁判所外で開廷することがいいか悪いかという問題も出てきます。夜間や休日などに開廷することには法律上の支障はないんですが、こういうことを言っていいのかどうかわかりませんけれども、裁判所職員の労働環境、労働条件ということも考えなければなりません。

 ですから、勿論、国民のために裁判するんだから、越えるべきところは越えなきゃいかんのですけれども、そのためには、是非とも必要だという事情がなければいけないということです。

【中坊委員】同じことを繰り返して言うようですが、この審議会は今、どういう役割を果たすべきなのかが重要なんです。そういう今おっしゃるようなこと、労働組合がどうだということは、もう裁判所がいつもおっしゃることなんです。あるいは弁護士だってそうでしょうと、すぐ理解する。だけれど、我々審議会は、利用する立場からの司法とうたわれて議論しているのに、「そうでしょう。休日は大変でしょう。だから、そこはどうも・・・」ということにしてしまったら、利用する立場からの国民の声というのは、そういう労働組合とか時間とかいう問題を超える声は、一体どこから出てくるのか。この審議会から発信をしなければ、やはり現実には発信するところがないですよ。弁護士だって自分もなるべくなら夜は家に帰りたいから、という面がある。みんなが同じことを言ってしまうので、この審議会は、本当にそのためにこそ設置されているんだから、そこが時間であるとか日であるとか、そういう問題は超えてくださいよという発信をしなければ、ほかにこれを発信する審議会とか、そういう意見を言うところがないじゃないですか、ということなんです。

 竹下さんのおっしゃることは、もちろん私だってわかっています。しかし、我々が今これを発信しなければ、よそのところにはこれを発信するところがない。我々としては利用する立場からこの司法を見ているというんだから、休日とか時間というのはわかっているけれども、超えてくださいよという発信を、私はすべきじゃないかと思うわけです。

【佐藤会長】代理の方も、積極的な趣旨で書かれたんだろうと思いますけれども。御議論を踏まえ、表現を少しお考えいただくことにしたいと思います。

 次に「6裁判所へのアクセスを拡充する新たな制度の導入」ですが、ここは、前に「その他」にあったのを、ここに移したわけですね。

【竹下会長代理】そうです。この前の「まとめ」案では、「その他」として挙げられていた問題です。これはかなり大きな問題です。

【佐藤会長】ここでは懲罰的損害賠償制度、クラスアクション、団体訴権制度が取り上げられております。この辺については2つの立場の意見がありましたので、「対応の方向」には意見が分かれたというように書いてあるわけです。

 これはある意味では大きな問題ですので、少し立ち入って議論する必要があるところかと思います。

【竹下会長代理】たしかまた詳細な資料が最高裁、法務省、弁護士会から提供されていると思います。

【佐藤会長】ディスカバリーの問題は後の問題ですけれども、この問題を含めてですね。今日ここで余り立ち入った議論をされても。

【吉岡委員】「意見が分かれた」と書いてあるので。別のところで、これはクラスアクション、団体訴権はそれだけでというのではなくて、懲罰賠償、団体訴権、ディスカバリー、そういうもの全体を含めて議論しないといけないのではないかと思いますので、今日のところは意見が分かれたという表現で結構です。

【竹下会長代理】そうですか。何か御意見があれば言っておいていただいて結構なのですが。

【中坊委員】私がちょっと聞いている範囲では、アメリカの方から、今度、司法制度改革審議会宛てに要望書というのが来ているようですね。ちょっと見たんだけれども、明確な形でどの程度書いていると理解するかは別問題として、いわゆるアメリカとしては、国際的な水準の裁判のやり方としては、やはり当然そういう開かれた懲罰賠償とか、そういうものを認めた筋合いのものになるべきではないかというような意見のように私は読んだので、単に国内的な見解だけではなしに、我々の今置かれている司法制度の改革問題については、世界各国とのグローバル化という1つの要請があるわけですから、その意味ではそれが現実のものとして、この司法制度改革審議会にアメリカ政府から要請があるということは、我々としては踏まえておく必要があるだろうと。そのとおり聞けというんじゃないですよ。しかし、そういうものがあるということは我々としても十二分に留意しておく必要はあるんじゃないかと私は思っています。

【竹下会長代理】懲罰的損害賠償について言うと、アメリカのスタンダードがグローバル・スタンダードだという誤解がぴったり当てはまるのですね。懲罰的損害賠償を認めて、積極的に使っているのはアメリカだけなのです。イギリスでも懲罰的損害賠償は非常に限定した範囲でしか認めておりません。ヨーロッパ大陸諸国には勿論ありません。ドイツの連邦最高裁判所の判例では、アメリカで懲罰的損害賠償を認めた判決は、ドイツの法秩序の基本に反するからドイツでは執行できないという判断を下しています。日本の最高裁判所の判例も同じです。

 ですから、今、先生がおっしゃられたとおりで、グローバルな視点から考えよというのであれば、少なくとも懲罰的損害賠償については、グローバル・スタンダードはこれを認めないという方向なのです。そういう事実もしっかり押さえていただきたいと私は思います。

【中坊委員】今少なくともアメリカ政府が我々の審議会宛ての文書としてそういうものが出されておるということは、我々としては、留意はしておく必要があるでしょうねということを私は言っているんです。

【竹下会長代理】それはどういう御趣旨でしょうか。アメリカの政府が、日本の審議会でどういう議論をするかということについていちいち要望を出してきて、事実上出されるのは勝手ですけれども、それを我々が尊重しなければならないということには全然ならないのではないでしょうか。

【中坊委員】尊重しろと言っているわけじゃなしに、アメリカの政府がそのようにして要求してきているということは、1つの点として留意すべきことではありませんかということを言っているだけです。

【竹下会長代理】そうでしょうか。

【中坊委員】そりゃそうでしょう。

【藤田委員】テイクノートしろというだけでしょう。

【中坊委員】それは重要な1つの点でしょう。

【佐藤会長】事務局長、今の文書は、最後の配付資料の説明のところで触れる予定ですか。

【事務局長】資料説明のところで申し上げようと思っておったんですが、今おっしゃいましたように、アメリカ政府、在日のアメリカ大使館からなんですが、そういう要望書が来ておりますので、各界要望書の袋の中に入れております。英文と翻訳文と両方を入れております。

【藤田委員】大使館の要望ですからね。

【竹下会長代理】例えば、その中にあります、外国法事務弁護士の問題をどうとかしてくれというのは、これはよくわかります。しかし、これは国内の問題ですね。

【中坊委員】余分なことを言うようですが、私以前に、訴訟費用の手数料のことについて、貼用印紙の問題について、裁判所にも問い合わせたでしょう。どこからか要求があったんじゃありませんかということを言ったでしょう。私はあの問題の時の日弁連の会長なんです。あれもまさにUSTRが、我が国における貼用印紙が高過ぎる、高額の部分では高過ぎるという具体的な要求をしてきて、それを日本の法務省が取り上げて、それで私ら日弁連にも話があって、この間の訴訟費用の改正ということが行われておるんです。

【竹下会長代理】それは存じております。

【中坊委員】いや、存じておられないはずです。私、そんなこと具体的に言うてませんがな。ここではそんなこと具体的に言っていません。

 だから私の言うのは、外国といえども、そういうアメリカの要求があって、USTRの要求があって、現に日本の法務省が動き、それによって法律が改正されたという事実を前回私も経験したから、今度もそういうようなことを言っているということは、我々としては留意をする必要があるでしょうねということを言っているんです。

【佐藤会長】尊重するとかしないとかではなくて、そういうことが来ているということも、1つの考えるときの材料として検討しましょうと、そういうことなんですね。

【竹下会長代理】それは結構です。

【佐藤会長】中坊委員も決して尊重すべきだということをおっしゃっているんじゃないと思うんです。

【竹下会長代理】先ほど懲罰的損害賠償がグローバル・スタンダードだとおっしゃるから、それはそうではございませんということを申し上げたのです。

【佐藤会長】グローバル・スタンダードとは何ぞやと議論し出すとまた大変ですから。この問題は、今の程度でよろしいんじゃないでしょうか。

【竹下会長代理】懲罰的損害賠償ではございませんが、その次のクラスアクション、団体訴権については、従来一緒に議論してきたのですが、本来、性格的には違う問題ですので、まとめるときには分けたのです。私の感じでは、ここでも団体訴権の方につきましては、それぞれの個別の法律で、その法律が実現しようと思っている目的に沿うような形のというか、同じ目的を追及する団体があった場合、例えば不正競争防止法とか独禁法という場合に、その団体に独立の訴権を認めるということについては、それほど反対意見はなかったのではないかと思います。私自身も個人的にはそういうことは結構ではないかと思っております。今日は山本委員、髙木委員、石井委員がおいでにならないので、今日、結論を出すことはできないと思うのですけれども、できれば少し積極的に、意見がまとめられれば結構だと考えています。

【吉岡委員】確かにクラスアクションと団体訴権とは異質なものですし、そういう意味では日本の社会ではクラスアクションよりは団体訴権の方が多分受け入れられやすいと私も思っております。ただ、議論としては、少なくとも司法制度をどうするかという議論の中では、クラスアクションについても検討する必要がありますので、検討してその結論はどうなるかというのはまた別の問題だと思いますけれども、やはり訴える権利とか、そういうこと考えた場合には、団体訴権だけではなくて、クラスアクションについても考えておかなければいけない。そのように考えています。

【佐藤会長】今日の段階ではこういう書き方で吉岡委員もよろしいわけですね。

【吉岡委員】はい。

【藤田委員】前回申し上げましたけれども、公害紛争処理法にクラスアクションを入れてあるんです。代表当事者という制度をさんざん苦労して入れたものですから、一言宣伝させていただきます。ただ、一度も使われていないというのは、ああいう公害訴訟では、名前を連ねるということに意味があるという意識なのでしょうか。だから不要だという趣旨で申し上げているわけではありませんけれども。

【佐藤会長】では、この「4裁判所へのアクセスを拡充する新たな制度の導入」のところは、ひととおり当たったということになりますが、その先に進ませていただいてよろしゅうございますか。

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】では、次に「Ⅱ民事訴訟の充実・迅速化-一般民事訴訟」でございます。問題の前書きがありまして、「計画審理」「訴訟手続の多様化」「証拠収集手続の拡充」という3つの課題があるわけですが、まず「計画審理」についてはいかがでしょうか。ここもいろいろ御議論があったところですが、「対応の方向」としては、この段階ではこの程度のまとめ方でいかがかというのが、代理にまとめていただいた案であります。

【竹下会長代理】私としましては、この「計画審理」というものが、専門訴訟以外の一般訴訟の充実・迅速化を図るための、今考えられる非常に有力な手段だと思いますので、「対応の方向」の中の要検討事項と書いてあることについて、若干御意見を伺えればと思うのです。例えば、標準的事件についても、計画審理を定めるための協議を義務づけるということはどうでしょうか。協議の義務づけというと非常に強い印象ですけれども、現在の大規模訴訟についての審理計画に係る民事訴訟規則の定め方は、協議をするものとするというような一種の訓示規定として、両方の当事者と裁判所が協議をして、審理計画をつくるように努めなさいと定めているわけです。そのくらいのことはほかの事件についても定めてもよいのではないかと思っております。それから、そういう計画審理を実効性のあるものとするためには、早期の証拠収集ができなければならないだろうと思われますので、例えば鑑定とか、当事者照会というようなものをなるべく早い段階、場合によれば訴え提起前の段階でもできるようなことを考える。計画審理について実際に実現しやすいような制度的な裏付けをつくるという辺りについては、もし御意見がまとまれば、そういうことで大方の意見の一致を見たとしたいと思っているのですが、いかがでしょうか。その後の協力義務を裏付けるための制裁となると、これはかなり御異論があってどうかなという気がするのですけれども、その辺りのことについてはどうでしょうか。

【吉岡委員】訴訟期間が長過ぎるということは、一般の国民の中からも言われておりますし、私自身も14年も掛かった裁判に関わっておりますので、特別な例は別としましても、ある程度先が見えるようになれば、非常に使いやすくなるということにはなると思いますけれども、余りきちんきちんと、この範囲も時間帯・期間の中で結論を出さなければいけないということだけにとらわれてしまって、丁寧な審理ができなくなる、あるいは不満を残したまま結論を導いてしまう、そういう恐れがあってはいけない。やはり丁寧な審理をした上で結論を出すという、そういうことが大前提だということを申し上げておきたいということが1つ。

 もう1つは、早期の証拠収集とおっしゃいましたけれども、私もそれは大変重要だと思います。その早期の証拠収集というのは、この後に出てくる3のところにも勿論関わるんですが、そういう意味ではやはりディスカバリーの導入を含めて考えないといけない。特に裁判前での証拠ということを考えたときに、ディスカバリーによって訴訟期間は非常に短縮される可能性はあるわけですから、その辺のところも3のところで検討することになると思いますけれども、その辺も含めての計画審理ということかなと思っております。

【竹下会長代理】ディスカバリーの方は意見が割れていますが、それが決まらないと何も決まらないということにはならないと思います。つまり、現在の法律で認められているような証拠調べの方法を時期的にもっと早い段階からできるようにするということについては、比較的意見の一致が得られるのではないかと思いますので、その範囲でとりあえず決めたらどうだろうかということです。それは決してディスカバリーを入れないという意味ではないですよ。だけれども、ディスカバリーが入らないんじゃ、それもやめだというふうに議論をしなくてもいいのではないかということです。

 おっしゃるように、計画を立ててやらないと、いつまでたって終わるかわからない。勿論、審理計画は両方の当事者と裁判所で決めることですから、なるべくそのとおり実行すべきですけれども、一旦決めた以上はあくまでもそれで突っ走るということではなくて、先ほど申しましたように、あくまでも訓示規定で、その範囲でお互いに努力しましょうというようなものとしては、それを決めてやる方がよいのではないでしょうか。

【吉岡委員】審理期間を計画するためには、証拠がどうなっているか、実態がどうかということがわからないとできないわけですね。現在の証拠収集のやり方では、そこまで至らないというふうに私は思っているんです。証拠が出てこない。ですから、それはここで言う早期証拠収集ということで、本当に十分に出るのかどうかについては、私は確信が持てていないということです。

【竹下会長代理】むしろ現在は大規模訴訟についてこういうことを言われているわけですね。審理計画を立ててやりなさいと。やるように努めましょう、努めないといけませんということになっているわけですね。それが一般事件では別なのだという理由がちょっとよくわからないのですが。

【吉岡委員】私が関わった灯油裁判の場合などは、出すと言ってもなかなか証拠が出なかったんです。勿論それだけではありませんが、非常に時間が取られてしまった。それから、大きな事件ではなくても、証拠を出してほしいということを法廷で裁判官が相手方に言いますね。そうすると、相手方の弁護士は、それは原告側が出すものだからこちらは出す必要はないとおっしゃるんです。けれども、証拠を持っているのは相手方で、消費者は持っていないんです。それでもそういうふうに言う。そのためにどうしても訴訟期間が長くなる、あるいは敗訴になってしまう。そういうことが少なくとも私が消費者団体の立場で関わったものの場合には、多いということがありまして、今の裁判制度の中で、期待できるような証拠が出てきていないというところに問題があると思います。

【藤田委員】証拠収集手続の拡充強化が必要だということは、これはそのとおりだと思うんですが、昭和61、62年ごろから東京と大阪の両地裁で始まり、現に行われていますけれども、民事訴訟の運営をどうやって改善していくかという方策の3本柱というのは、早期に徹底した争点整理、証拠整理をすることと、それから集中審理、それから簡潔平明な判決の三つなんです。納期を意識した審理をしろというような観点からいっても、この争点整理、証拠整理、集中証拠調べも、全部計画審理なんです。

 そういう意味でこの間から大阪地裁の民訴学会での発表なども御紹介しているんですが、大規模訴訟だけではなくて、一般的な事件についても、やはり計画審理ということが非常に重要であろうと思います。法律で計画的な審理をしなさいということは、別に大規模訴訟や環境訴訟、消費者訴訟に限らないわけですから、そういう規定を法律に設けるということの重みはかなりあると思うので、そういう方向でやっていただいたらどうかなと思います。

【佐藤会長】ディスカバリーの話は後で出てくるわけですから、この段階では「対応の方向」の○のところ、そして、要検討事項のところの、さっき代理が言われた協議を義務づけるという訓示規定、及びそのためには早期の証拠収集を可能とする制度が必要だということ、この辺りは理論的には余り御異論のないところかと思います。ただ、具体的制度の中身は何かということになると、いろいろ議論が出てくるでしょう。この程度まではよろしいですか。

【藤田委員】中身は全く異議はありません。

【佐藤会長】では、この「対応の方向」の○については御異論ないということにさせていただきます。要検討事項の2つについては、具体的な中身としていろいろ詰めの必要はあるんですけれども、これも含めたまとめ方をしていただくということでよろしゅうございますか。

 どうもありがとうございました。

 一応3時20分に休憩と思っておりまして、「2訴訟手続の多様化」までやっていきたいと思います。

 ここのところは山本委員から意見が出ておったところですが、私も個人的にはこのくらいのまとめ方かなと思うんですけれども、何か御意見ございますでしょうか。

【竹下会長代理】前にも申し上げたことですけれども、審理計画を立てて計画的にやるというのであれば、それぞれの事件に応じて、この事件についてはこういう計画、例えば6か月でやりましょう、こっちは1年でやりましょう、ということを決めていけば、一律に訴額300万円以下の事件は1年でとか、そういう決め方でなくてよいのではないかと思うのですがね。

【佐藤会長】よろしゅうございますか。山本委員がいらっしゃらないんですが。

【竹下会長代理】イギリスで新しい改革ができたばかりなものですから、非常に注目されているのですけれども、その点について海外調査の折に聞いたときは、イギリスでもまだ実績は出ていないということでした。少額訴訟の方は非常に評価が高いということだったので、今の段階ですぐ日本で同じようなことを考えるというのはどうかなという感じです。

【佐藤会長】よろしゅうございますか。

【藤田委員】個人的に論文でいろいろ提案したことがありまして、「裁判官による仲裁」というのはどうかとか、口頭弁論に代わって審尋手続を使うのはどうかという提案を論文に書きましたけれども、一顧だにされませんでした。いろいろな工夫は必要ではないでしょうか。

 大分以前のことですけれども、第一東京弁護士会が民事訴訟の運営改善策の提案として、「迅速訴訟手続」という提案をされたことがあるんです。少額訴訟の地方裁判所版みたいな手続、これは一考の余地はあると思うんです。

【竹下会長代理】前回最高裁の意見陳述のときに、ミシガン州の裁判所で新しい試みをやっておられるということで、今回資料を出していただきましたけれども、あれも拝見すると、結局ABA、アメリカン・バー・アソシエーションの審理準則で、幾つかのタイプの事件処理の仕方を定めておいて、それを裁判所が事件ごとに当事者と協議をして、この事件はどのパターンでやるかということを決めるというもののようです。それならば、法律で。

【佐藤会長】かちかち書かなくても、運用でやれるのではないかと。

【中坊委員】一番最初に断ってあるように、裁判所とか弁護士の在り方とか、そういうことが非常に密接に関係してきて、審理の仕方にもすべて影響してきますから、ここだけを切り離してこうだということは非常に言いにくい状況にあると思うんです。

 だから、今日の段階では少なくとも要検討事項に入っておって、将来全部決まってくる過程の中において、理想的な形の中においては、こうだ、ああだと言って決められてくる問題だから、今日の段階においては要検討事項ということで終わっていることが多くても、これは何も決めないという意味ではなしに、これから将来全部が決まってきたら、こういう問題も決めるということだと理解すれば、山本さんはいらっしゃらないけれども、ここは決して山本さんの意見を取っていないということでも何でもないんで、今日現在ではこれは要検討事項だということでいいんじゃないでしょうかね。

【佐藤会長】そういう趣旨で。それでは、10分間休憩したいと思います。35分に再開させていただきます。

(休憩)

【佐藤会長】それでは、35分ちょっと過ぎましたけれども、再開させていただきます。

 15ページの「3証拠収集手続の拡充」というところから、入らせていただきます。ここは、既に先ほどから関連して出てきているところですけれども、いかがでしょうか。「対応の方向」のところでは、早期の証拠収集の手段を拡充するというところは意見が一致しましたが、それ以外については、なお検討しなければならないというまとめ方になっているわけです。いわゆるディスカバリーの話であります。

【竹下会長代理】この点について、「取りまとめ」の原案の中に入ってないのですけれども、山本委員の方からは、この15ページの下から2行ですが、「対応の方向」というところで、「訴え提起前の時期を含めて、早期の証拠を収集するための手段を拡充するべきだということについては、大方の意見の一致を見た。」ということに対して、先ほど言ったように、現行法上認められている証拠調べの方法を早期に行うこと、というように明示をすることはどうだろうかという御意見をいただいています。しかし、これについては反対の御意見もおありになるでしょうから、御議論いただきたいと思います。

【藤田委員】短期的対策という意味ですか。とりあえず、早期に手を付けられる方法としてという意味なんですか。

【竹下会長代理】ちょっとそこまでは詳しく書いてないので、いただいた御意見を申し上げると、「現在ある証拠収集制度を訴え提起前の時期を含めて、活用できるような方向で検討するということについては、意見の一致を見た。」というように改めるということです。

【藤田委員】それは「要検討事項に関する意見」のところに入れたらどうでしょうか。

【佐藤会長】私も、15ページの「対応の方向」、この書き方でこれはいいんであって、中身の問題についてはいろいろ議論はあるけれども、書き方自体はこれでいいんではないかと思うんですけれどもね。

【竹下会長代理】ここでの御意見としては、これが一番正確ではないかと私も考えています。

【吉岡委員】そうですね、山本委員のを入れるとしたらば、私も一言じゃなくて、何言か言いたいという感じがします。

【竹下会長代理】それでは、これが大方の意見であったということで、御了解いただきましょう。

【藤田委員】どうしてもということであれば、要検討事項に関する意見の中に書いたらどうでしょうか。

【竹下会長代理】そうですね。

【佐藤会長】今の趣旨を入れると。

【藤田委員】はい。

【吉岡委員】ここも、「要検討事項に関する各委員の意見」という、そこの中ですね。

【竹下会長代理】そうですね。この「要検討事項に関する意見」というところは全部、「要検討事項に関する各委員の意見」というように改めます。さっき井上委員から御指摘いただいたように。

【佐藤会長】ディスカバリーについては、資料として配付していただいた中にいろいろ論文が入っています。前回、ディスカバリーとディスクロージャーの話もあって、両者はどこがどう違うのかとか、いろいろあるかと思うので、議論するときに、一遍どなたかに説明していただく必要があるんじゃないかと思いますけれども。今日この段階で議論すべきだという御意見ございますか。

【藤田委員】いろいろ議論しましたから、この段階はこの程度でどうでしょうか。

【佐藤会長】よろしいでしょうか。この点は本当に大事な問題ですから、いずれ大きな議論の対象にします。どの段階かということは、今ちょっと確定的に申し上げられませんけれども、中間報告の前の段階でとは今のところ考えておりますけれども。そういうことで、今回はこの程度でというように思います。よろしゅうございますか。

【吉岡委員】はい。

【井上委員】中間報告前にですか。

【佐藤会長】中間報告前になるか、その後になるか、それはまだ確定的に申し上げられません。さっきから言っていますように、中間報告にどの程度まで網羅的に書き込むか、中間報告の段階ではまだ両論併記とせざるを得ない課題もあり得るのではないか、といったことが関係してきます。行革会議のときもそうでしたけれども、その点は、これからの全体の議論の進み具合を見て判断させていただきたいと思います。

 それでは、「Ⅲ専門的知見を要する事件への対応」の方に移らせていただきます。ここもいろいろと御議論いただいたところでありますが、「問題の所在」、前文がありまして、鑑定制度、専門委員、専門参審制、専門家の活用へと展開しますが、これらは一つの固まりで御議論いただければと思うんですけれども、代理の方で何か付け加えられることがありますか。

【竹下会長代理】この専門委員、専門参審については、いろいろ御議論があるので、ちょっとそれは後にして、その前の「鑑定制度の改善」の具体策というところですが、1つはそこの「対応の方向」にございますように、「鑑定人推薦のためのシステムを強化する方策を取ること」ということで、この点は御異論がないと思います。

 もう一つの改善方法としましては、現在の民事訴訟規則では、鑑定人が鑑定をするに必要な場合には、証人尋問に立ち会えるという規定があるのでございますけれども、これはむしろ鑑定人の方の都合で、鑑定をするについて証人の証言も聞く必要があるという場合に立ち会えるということなのですけれども、そうではなくて、むしろ裁判所の方から、鑑定人に専門的なことを証人に対して聞いてもらう。証人も専門家であるという場合に、鑑定人に証人尋問に立ち会ってもらって、裁判所から言わば鑑定人を通じて証人にいろいろ尋問をしてもらうということを考えてもよいのではないか。正面からそういう制度を認めてもよいのではないかと思うのですが、もしそういうことで御賛同いただければ、鑑定制度の改善の具体策として挙げさせていただきたいと思うのです。これはドイツの刑事裁判でやっておりましたね。

【水原委員】以前に確か申し上げたと思いましたけれども。

【吉岡委員】私ドイツに行かなかったんで、ちょっとよくわからないんですけれども、鑑定人が裁判官に代わって質問をするわけですね。

【竹下会長代理】それは勿論裁判官がそういうようにしてほしいと言った場合です。

【吉岡委員】その鑑定人の立場というのは、どういう立場になるんですか。

【竹下会長代理】言わば、裁判官の補助者みたいなものになるわけですね。

【吉岡委員】補佐人みたいな。

【井上委員】裁判所を補助するという立場ですね。

【吉岡委員】裁判所補助者ですか。

【竹下会長代理】専門委員みたいなのは、今までのイメージですと、証人尋問のときだけではないので、もう少し裁判体の方に近いですね。ある程度継続的に審理に関与するわけですね。今申しているのは、そうではなくて、専門的なことを証言する証人が尋問されるという場合に、裁判官は勿論いろいろ当事者から尋問事項等をいただいて、それなりに勉強してこられるんでしょうけれども、やはり専門家同士で聞いてもらった方が、的確な尋問ができるという場合もあるのではないかと思われますから、そういう場合に裁判所が鑑定人に立ち会ってもらって聞いてもらう。そういうことを考えてもよいのではないかと、そういう趣旨です。

【吉岡委員】そうすると、その鑑定人が何を質問するかということは、裁判官がわからないし、理解もしていないということもあり得るということですか。

【竹下会長代理】全体的には理解しているのだと思いますけれども、具体的には、証人尋問の際にこういう答えが返ってきたときには、この点も聞いておくべきだとか、そういうことが部分的に出てくると思うのですよ。一般的には何を聞くかは当事者から証人尋問事項書というものが出ていますから、何を聞くかということはそれで決まるわけですけれども、実際に聞いたときに証人が証言として回答する。それについて、また何かを聞くという場合に必要があるのではないかということなのです。これですと、この前から問題になっているような、専門家が当事者の見えないところで裁判官に何かを言うという、そういう問題は余り起こってこないのではないかということなのですね。

【水原委員】ドイツの法廷で見聞したところによりますと、これは殺人未遂の事件でしたけれども、2組の鑑定人が法廷の後の方に着席しておりまして、鑑定事項が2つあったと思われます。1つは、被告人が酩酊の抗弁、酔っぱらっておって犯行当時の記憶が全くないという主張をしておる。本当にその主張が認められるのか否かという点に関する、精神鑑定的な鑑定人だったと思うんです。もう一方は、現場の状況と言いましょうか、被害者の傷口、これを診断した証人の証人尋問の際に、その証言を通じて法医学的観点からの鑑定をするグループでして、裁判官がどんどん、どんどん質問していきます。それについて何か聞くことがないかと鑑定人に言いましたところ、鑑定人がまた補充的に質問する。そこで、傷害の部位、程度から法医学的な鑑定をする。そういう裁判の実情でございました。

【井上委員】そうすると、結局鑑定のために必要だから立ち会って、質問するというところに本体があって、裁判所が何か証人尋問をするところを補助するというものではないですね。

【水原委員】ないです。

【井上委員】副次的にはそういう機能があるとしても、鑑定が必要だから鑑定を命じるのであり、その鑑定人が法廷での証言も立ち会って聞いて、補充的に尋問する。そちらに本体があるわけですね。

【水原委員】そういう感じだったと思います。

【竹下会長代理】私の言ったことは思い付きみたいなことですから、余りそういう必要はない。現在も民事訴訟規則に鑑定のために必要な場合には、証人尋問に立ち会えるということになっていますから、それを利用すれば十分足りるのだということであれば、それでよろしいと思います。ただ、あの規定は実務上、余り利用されている様子がないものですから、別に提案しただけです。

【藤田委員】専門的な事項についての判断を補助するということになると、むしろ専門委員の方になるんではないでしょうか。

【竹下会長代理】専門委員の制度が一般的に採用できれば、あるいはそれでもよいのかもしれませんが、もう一つそういう別のルートも考えられるのではないかということです。

【佐藤会長】では、先を急ぐようですけれども、今の点、要検討事項の中に、改善の方策として入れるということでよろしいですか。

【竹下会長代理】そうしましょう。

【藤田委員】私は、建設省の中央建設工事紛争審査会で建築紛争の事件を扱っておるんですが、3人構成の1人に建築学の教授の方が入るので、言わば専門参審制なんですね。この方は専門家ですから、争点整理するについても証拠調べするについても、大変助かっているんです。裁判所の場合には、参審員については、憲法上の問題も出てきますが、専門委員制度は、やはり非常にいいことだと思いますので、是非積極的な方向で検討していただきたいと思います。

【佐藤会長】「(2)専門委員、専門参審制など専門家の取込み」のところはいかがでしょうか。

【水原委員】なお、先ほど私が申し上げたのは、決して竹下代理の御主張に反論するわけじゃなくて、そういう方法もありました、ということを言いたかったということでございます。

【井上委員】この(2)の一番最後のところに、「裁判の公開の原則」云々というところがありますが、これは確かに吉岡委員がこういう言葉を使われたのですが、一般的に使われている「裁判の公開の原則」とはニュアンスがちょっと違うと思います。要するに、裁判の形成過程が明確ではなくなってしまう、そこに不当な影響が及ぶかもしれないというのが、吉岡委員の御意見の趣旨であったと思うのですが、一般には「裁判の公開の原則」というのは、それとはちょっと意味が違うものですから、表現を少し工夫していただければと思います。

【佐藤会長】それはちょっと工夫していただけますか。

【吉岡委員】それはどうぞ。私は専門用語がわからず、お話ししていますので。

【井上委員】御趣旨はよくわかっております。

【吉岡委員】趣旨が変わらなければ結構です。

【竹下会長代理】後ろの方にあるような表現ではまずいですか。当事者が裁判官の判断資料を知り、意見を述べる機会を不当に侵害することになるという表現ですが。

【井上委員】その形成過程が明確でないということもおっしゃっていましたね。

【吉岡委員】井上委員のおっしゃるような意味です。

【竹下会長代理】心証形成の過程の透明性ということですかね。

【井上委員】そうですね。

【佐藤会長】では、そこについてはそういうことにいたしましょう。

【吉岡委員】専門参審制については、私も意見を書いているんですけれども。専門委員というのは、私の出席したときには、検討されていなかったと思うんですね。前回出たのだと思いますが、専門参審と専門委員と分けて、専門委員だったらいいという、そこのところが私には理解できないんです。結局のところ同じじゃないかと思うんです。

【藤田委員】憲法上の問題があるかないかです。

【吉岡委員】要するに、判断するところに入るか入らないかということですか。

【藤田委員】はい。判断権の有無ですね。

【吉岡委員】そういうところは、勿論大きな違いだと思うんですけれども、ただ専門家の意見を聞くことにより、裁判官の心証というか意思決定というか、それに影響を与えるということにおいては、同じだと思うんですね。

 どっちかというと、簡易裁判所の司法委員ですか、それに近いんでしょうか。

【竹下会長代理】そうです。それの専門家版ですね。司法委員というのは、和解を斡旋するということと、それから審理に立ち会って、事件について意見を述べることができるということになっているのですね。そういうものとして、専門家を地方裁判所でも使えるようにしたらどうかというのが、この専門委員という制度の基本的な発想です。

【井上委員】述べられた意見については、当事者は知ることができるんですね。

【佐藤会長】合議の中に入ったり、そういうことは一切ないわけですか。

【竹下会長代理】司法委員は必ずしもそうではないですね。公開の法廷でだけ意見を言うわけではないですね。

【吉岡委員】司法委員の場合には、少なくとも両当事者が同じテーブルにいるという、それが大前提だと思うんですね。この専門委員の場合に、両当事者が、少なくとも代理人も含めてですけれども、いるというその前提は同じなんですか。

【竹下会長代理】それは変わりません。

【吉岡委員】ただ、公判の場ではなくなる可能性があるということですか。

【竹下会長代理】それはまた別の問題でして、争点整理をするときに、今の弁論準備手続というのは、一応傍聴希望者がいれば傍聴させますけれども、当然に公開ではないということになっていますから、その限度では公開というわけではありません。しかし弁論準備手続についても対審の原則は保証されていますから、相手方がいない場で専門委員が審理に関与することはありません。双方が立ち会っているところで争点整理をやるわけですから、司法委員の場合と同じことです。

【吉岡委員】立場として同じで、ただ専門性のある人がそこに参加するということですね。ですから、不透明というか見えないところで裁判官と専門委員が判断するというのとは、基本的に違いますね。

【竹下会長代理】もし今の簡易裁判所の司法委員の制度に何も制約を加えなければ、それは裁判について意見を述べることができるわけですから、意見を述べる場は、法廷とは限らないということにはなりますね。

【藤田委員】ただ、専門委員の意見が証拠になるわけじゃないので、それによって事実を認定するというようなことはできないわけですね。ですから、あくまで専門的な事項についての鑑定なり何なりの証拠による判断をするんであって、それについては、裁判官がすべての事項について専門的な判断を十分にできるわけじゃありませんから、その点についての補助をするのが専門委員です。

 前回お話ししたんですけれども、公害紛争処理法で、公害等調整委員会に専門委員という制度がありまして、そういうような機能を果たして、大変うまくいっています。ですから、この「対応の方向」でも、「裁判官の中立公平等に疑義の生じない場合については」というような限定が付いていますから、勿論そういうようなことを考えつつ運用すれば、密室裁判ということにはならないんじゃないかと思います。

【吉岡委員】それと鑑定人とどこが違うんですか。

【藤田委員】鑑定人の鑑定結果は証拠資料ですから、それによって認定することになります。

【吉岡委員】証拠になるかならないかという違いですか。

【藤田委員】はい。専門委員は、専門的な判断についての補助機関ということですから。例えば知財事件なんかで、特許庁からの調査官が裁判所に来ていますけれども、当事者の訴訟代理人や弁理士なども含めての検討会みたいなことをやって、争点整理を確定するというようなこともやっていますし、それから鑑定結果が出てきたときに、それをどう評価するかというような討論みたいなものもやっているんですけれども、そういう意味での補助機関なんですね。

 だから、調査官が何かある意見を言ったとしても、それが証拠資料になって、それによって専門的な事項を認定するということではないんです。

【吉岡委員】調査官とも違うんですね。

【竹下会長代理】調査官は、言わば裏方みたいなもので、法廷に出てくるわけではなくて、必要な点につき調査をして、裁判所に専門的な助言をするという役目です。

【吉岡委員】調査官は、もともと裁判所にお勤めになっている方ですね。

【藤田委員】そうです。

【竹下会長代理】この関係の調査官は、具体的にはどうなのでしょう。勿論、形の上では裁判所の職員でしょうけれども。

【藤田委員】それは裁判所調査官です。

【吉岡委員】裁判所の職員というか、そういうお立場ですね。

【藤田委員】そうです。特許庁から出向してきますけれどもね。

【吉岡委員】出身はどこであるにしても、裁判所職員ということですね。

【藤田委員】はい。

【吉岡委員】ここで言う専門委員というのは、そういう立場ではないんですか。

【藤田委員】専門委員は組織上はどうなるんでしょうか、非常勤の国家法務員か何かになるんでしょうか。

【竹下会長代理】そうでしょうね。

【藤田委員】調停委員と同じですか。

【古財参事官】そうだと思います。

【藤田委員】やはり国家公務員ではあるんですね。

【鳥居委員】だれが選ぶんですか。

【藤田委員】それは、やはり裁判所でしょう。

【竹下会長代理】最終的には裁判所が選ぶことになると思いますけれども。

【鳥居委員】裁判官が選ぶということですか。

【竹下会長代理】はい、裁判官というか、裁判所でしょうね。

【鳥居委員】形式は裁判所でしょうが、でも実態は裁判官が選ぶわけですか。

【竹下会長代理】そういうことですね。

【鳥居委員】そうすると、私、決してネガティブな意味で言っているわけじゃないんですが、いい方に転べば非常にいい作用をしますけれども、いずれにしても、いい方にしても悪い方にしても、裁判官の心証というものには、やはり影響しますね。

【竹下会長代理】それは、そういうことはないわけではないと思いますね。参考意見だと思いますがね。

【藤田委員】それは調査官も同じことでしょう。

【鳥居委員】そうですね。

【中坊委員】だけど、参考意見と証拠との区別と言われたら、なかなか難しいね。

【藤田委員】だけど、専門委員の意見がこうだからという認定はできない。だから、何らかの専門的事項について認定するについても、それは証拠資料による認定でなきゃいけない。その判断過程についていろいろ意見を言ったり、これはどういうことなのかということを質問したりすることはあるかもしれないから、それらが全く判断に影響を与えないということはないかもしれませんけれども、少なくともそれによって認定するということにはならないんですね。

【中坊委員】だけど、今、言うように、専門的な意見を言うということが裁判官の判断にはやはり影響を与えるわけだから、証拠としてという問題と、参考として言ったということが、まさに事実認定の意味において、補助的というかそういう意味で影響してくるわけだから、非常に難しいことは難しいですね。

【藤田委員】ただ、裁判官が、すべての専門的な事項について、十全の知識、経験を持っているわけじゃないから、やはり補助機関がなければ適切な判断ができないということから、専門的な補助機関あるいは専門参審制を入れようという議論が出てきているわけですから、影響があるのは当然で、逆に、なければ意味がない。困るともいえるのではないですか。

【井上委員】最終的には、いずれにしても評価の部分も判決理由としては書かれるわけですか。それは上訴によってチェックされるという構造にはなるわけですね。

【中坊委員】だけど、評価として書かれるといったって、だぁっと証拠を並べておいて、「これらの証拠から、これこれの事実が認定できる」としか書かないわけだから、この証拠をどのように利用したかとかいうことは普通はわからないですね。

 だけど、私はこのような問題も、要するに裁判官が、今言うように、当事者や代理人から非常に切り離されており、常に疑いの目で見られているという場合があるから、これは一つの要検討事項としてはいいけれども、裁判官がそもそもどのようにして決まってくるのか、現行の裁判官というものを前提とするのかしないのかという点が、根本的には影響を与えるような気がするんですよ。だから今おっしゃるように、これは要検討事項の中の一つの意見、問題点としてあるのはいいけれども、今日でこっちに決まった、あっちに決まった、採用するとかしないとかということにはならないのではないか。前提としての裁判官が当事者とどのような関係に立つかというところが、まだ議論されてないんだから、現時点では一つの問題点として書いておくのに止めるということが正確ではないでしょうかということを言っているだけです。

【藤田委員】ただ、陪審制を採用するかとか、法曹一元がどうかということがあったとしても、しょせんはみんな素人が専門的事項を判断するということになるわけだから、専門的な事項を判断するのについての、何らかの補助機関というのは、裁判機関が何であろうが必要なんですね。今、日本の裁判でそういうところが足りないという批判が、特に知財事件などに対して言われているわけだから、裁判機関がどうなるのかという問題が決まらなければ、判断できないということではないと思いますけれどもね。

【吉岡委員】確かに、おっしゃることはわかるんですけれども、それだったら鑑定人なり証人なりという、そういうことで事足りるのではないかなという気がするのが一つ。

 もう一つは、専門委員を認めた場合の、専門委員の所属といいますか位置付けが、裁判所の中の非常勤職員という、そういう位置付けでいいのかという、その辺が気になるところなんですね。やはり、この辺のところをもうちょっと検討する必要があるので、大方の了解であったというのはちょっと私は納得できないんです。

【竹下会長代理】前回、吉岡委員はおいでにならなかったから、ごもっともです。前回は大方の意見が一致したのでこう書いたのです。

【吉岡委員】欠席した責任はあるんですけれども。

【竹下会長代理】それはやむを得ない事情であって、今日また改めて御意見をおっしゃることは一向に差し支えがないわけですから、もし、「大方」という表現に差し支えがあるというのであれば改めます。

【藤田委員】もう一つは、さっき申し上げたように「裁判官の中立公平等に疑義の生じない場合については」という限定が付いていますから、これで不十分と言うんだったら、「疑義は生じないという前提で」とか、そういう表現であればどうでしょうか。

【吉岡委員】私は、裁判所に所属しているということが、例えば原告なり被告なりの立場で見たときに、公平だと思うかどうかというのがすごく心配なんです。

【藤田委員】むしろ裁判所に所属しているから公平だと思うわけなんですが。ほかのところに所属しているとかえってそうでないかもしれない。

【吉岡委員】要するに非常勤職員として、もう固定しているわけですね。ですから、それでいいのかなと思います。やはり事件のたびに、その都度人選していくというのと違いますでしょう。

【藤田委員】そうじゃなくて、その都度その事件について専門委員を選任するというつもりで申し上げているんですが。

【竹下会長代理】これは現行の司法委員もそうですから。

【吉岡委員】それで非常勤職員なんですか。

【藤田委員】任命されればですね。公害紛争処理法の専門委員もそうなんですが、ある事件について土壌力学の権威を専門委員に選任したんですが、その事件について、その事件をやっている間だけ、内閣総理大臣任命なんですけれども、専門委員としてやっていただいて、事件が終わればもうそれで終わりということです。

【吉岡委員】そこはわかりましたけれども、そうすると先ほど鳥居委員がだれが選ぶのかという、そこの問題なんですね。

【藤田委員】それは、実際を申しますと、誰がその事項についての権威かということは、裁判所も、公害紛争処理法で言えば公害等調整委員会もわからないわけですから、誰がこの件についての専門家として一番信頼できるのかということを、いろんなルートで情報収集しまして、それでこの方だということが見当付いたときに、なっていただけませんかという交渉をして、承諾を得て任命するという形でやりましたけれどもね。多分、裁判所に入れても同じことだと思いますが。

【吉岡委員】例えば、公害訴訟の場合に、この人は専門家だという専門家の考え方というのは、かなり分かれることがあると思うんですけれども、その場合にはどうするんですか。

【藤田委員】当事者が、あの人は偏頗な人だからと反対するような人は、選ばれない。

【竹下会長代理】恐らく専門委員についても、除斥とか忌避とかいう制度も当然取り入れるべきだと思うのですね。やはり利害関係がある人はなれないという仕組みですね。当事者が偏頗な助言をする恐れがあるから忌避するとか、そういうことは入れていいと思うのですね。

【中坊委員】だから、実際の問題としては、私も現実に当事者として経験したんですけれども、確かに藤田さんのおっしゃるように専門委員でないとわかりませんから、専門委員が選ばれるんです。具体的に言うと豊島の事件なんですけれども、あれで廃棄物がどうなのかこうなのかとか、あるいはどうやって溶融して処理するかというようなこととか、そういうようなことについて、確かにおっしゃるようにこれ全くの専門知識ですからね。そういう場合には、私の実際体験した例で言えば、あらかじめこういう人を考えていますということが、双方に委員の名前が、出てくるんですよ。その名前に基づいて我々なりに判断する。だから当事者の方にそういう専門家がいるわけですよ。私たち弁護士が裁判所に専門家が要ると同じように、当事者にとっても実はそういう専門家が要るわけです。そういう事件になってくると必要なんですね。だから、私たち住民の側においても、現実にそういう専門の方をお願いしているわけですね。それでその方が、この人なら公平だとか、この人はちょっとおかしいよとかいろいろ言うわけですね。それでこちらの方は、出された名簿について、正直言って異議を言った場合はありますよ。これはちょっと問題じゃないかということで。それは専門家というよりも、私の場合でしたら、相手方が県でしょう。そうすると県立の大学の先生であると、そういう場合にはちょっとおかしいんじゃないかというような程度の意味なんですけれども。だからそういうふうに当事者に専門委員としてあらかじめ名前を出させて、それで納得すればいいけれども、それが何も納得ないままに、裁判所が選んだんだから、あるいは公害等調整委員会が決めたんだからということで従いなさいというと、やはり当事者にとっては不満が残るような気がしますね。

 だから、私たちの場合は、現実に私が経験した範囲で言えば、あらかじめこういう人をこちらは考えていますがということを受けて、それで我々なりに、いずれの場合も、その人はちょっとと言えば、公害等調整委員会の方もそうですかと、それじゃあなた方が納得しないのだから、他の人に変えますというようなことで、両方が納得した人が専門委員になるという手続だったですね。

【佐藤会長】今のおっしゃるようなことであれば、19ページの上から4行目から5行目、少なくともこれは取ってもいいと思いますけれども、「当事者もその専門的意見を知り、これに対して自己の意見を述べうる状況にあるから、少なくとも、裁判官の中立公平等に疑義の生じない場合については」、このように条件付けておいてはいかがですか。今のような趣旨を込めて理解できませんか。

【竹下会長代理】つまり当事者の意見を聞いた上ででもよいのですよ。

【藤田委員】鑑定人も同じなんですね、裁判所が選任するんだけれども、この人を鑑定人にしたいと思うけれども、どうですかということを双方に提示して、結構ですと言われて、その人を裁判所が選任するという形で運用していますからね。

【中坊委員】だから、私の思うのは、何もかも根本的な問題になるんだけれども、裁判手続、司法手続というものが、ADRを含めて、やはり当事者主義的に行われていると、それじゃ当事者が納得するということが前提なんだと、だからそういう手続が履践されておるんであれば、おっしゃるように、裁判官はすべてわかるわけじゃないんだから、当事者の納得した専門委員なりが来るというのがいいんじゃないか。要するに、当事者が同意するかどうかというところがポイントのような気がするんですけれども。

【井上委員】そこは、さっき竹下代理がおっしゃたように、選任の中立性について、当事者が異議を挟めるというか、チェックできるような制度、手続を前提にして、ということではないでしょうか。

【中坊委員】そういうことだと思います。

【井上委員】そういう枠をはめればいいんじゃないでしょうか。

【佐藤会長】個々の部分は、そのような前提の下に理解してはいかがですか。

【吉岡委員】それともう一つ確認ですけれども、それはその事件ごとに任命する、そういうことですね。

【佐藤会長】藤田委員のおっしゃたのはそうですね。

【藤田委員】そうだと思います。

【竹下会長代理】実際には、やはり事件ごとにといっても、事件が出てきてからというよりは、鑑定人名簿みたいなものを用意しておいて、その中から必要に応じて鑑定人を選ぶこともあるだろうし、専門委員をその中から選ぶこともあるというような運用になるのではないかと思うのですがね。

 それは、非常に特殊の事件で、全く鑑定人候補者のリストの中にないような人に委任しなければならない場合も出てくるかもしれませんけれども、普通の運用としてはそういうようなことになるのではないかと思いますね。

【吉岡委員】名簿としてというか、そういうことでそれぞれの専門家名簿のような形でプールしておいて、それで両当事者が納得する相手を、その事件に限って選任するという、そういうことですか。

【井上委員】プールしておくというのは事実上の問題としてですね。

【佐藤会長】拘束されることはないんですね。

【中坊委員】それだったら、選ばれた人が全部、何もかも納得するかというと、必ずしも私の場合も現実的にはそうではなかったですよ。その専門委員が選ばれても、実際私の場合で具体的に言えば、豊島の問題で、香川県が一応これは無害だと自分のところの報告を出しているわけですね。そうすると、香川県の方に、しかもそこが問題だったんだけれども、ある特定の旅館で、香川県側から一番最初に事情を聞くということにされたわけです。それで、私はそれにものすごい疑問を感じましたね。我々としては一旦は納得したけれども、その人がまずもって、何も他意はなかったのかもしれません。それはほとんどなかったのかもしれませんけれども、そういうことに当事者は非常な疑いを持つんですね。香川県はこれもう無害だと公表しているのです。これは、とんでもない間違いだったんですけれども、一応ちゃんと公表しているわけですね。公の機関がこうして発表している。そして、自分のところの専門家が見た結果、これは無害だと、害はないと、こういうことを言っていると、そうすると本当は専門委員は、香川県側の言っていることについて、その根拠をただそうとされたらしいんですよ。ところが我々側にすると、また公害等調整委員会の決めた専門委員が、また香川県側とだけやっているということに対して、非常に私は疑問を感じて、ぶっちゃけた話、私は強く、今日みたいな調子で抗議しました。すると調停委員は、「全部疑われるのでは、もう不愉快だ。」と申されたわけです。現場へ委員も行っているんですよ、専門委員も行っているわけです。そこがどういうわけか知らないけれども、旅館でそういう一方的なことがあって、私は「もう絶対にそれは中止すべきだ。そうでなきゃあなたたちがした鑑定そのものが、我々住民側としては信頼できない。」と申し上げた。だからどうせ調べるんなら、公害等調整委員会で双方が同席しているんならいいよと、しかし向こう側とだけと言われたんでは、どういうことをされているかわからないじゃないかと、そこで県のやっている検査は正しかったということになってしまえば、我々としてもう反論のしようがないですからね。

 だから、そういうふうに絶えず当事者というのは、非常に疑問を持って掛かっていますから、今、吉岡さんの言われるように、私自身の経験からしても、それはあるいは向こう側にとっては非常に不愉快なことかもしれません。現に私がそれを言ったら「非常に不愉快だ。中坊さんそんな、我々公害調整委員と専門委員が同席しているんだから、そこで尋ねているものを、いきなりそういう手続そのものがけしからんと言うのは、もう非常に困る。」というようなことを言われましたけれども、私たちは「やはりそれは困る。実力で阻止する。」なんて言っちゃってやったことありますよ。

 だから、おっしゃるように、当事者というのは、そういう専門家というものに対して疑いも持つし、裁判官やそういう公害調停委員が本当に公平に見てもらっているのかどうか、特に相手方が県という場合になってくると、住民側というものは公平さを非常に重視します。それが本当に正しかったかどうかは知りませんよ、だけど現実にそういうもんですよ。それで、私自身は非常にその調停委員から怒られまして、「弁護士ともあろう者がそういう公の制度を疑って、そんなことまで言って。専門委員だけじゃない、私たちが立ち会っているんだ。それがいけないというのか。」と言うから、「そうだ。」と言ってね。だけど、それがよかったかどうかはわかりませんよ。

【佐藤会長】わかりました。では、ここのところは、当事者のさっきの異議の余地なども十分認めて、手続を尽くして、そうした前提で、「裁判官の中立公平等に疑義の生じない場合については」という文言を理解するということにしてはいかがですか。まだそれでもまずいですか。

【吉岡委員】まだ疑いがあるというわけじゃないんですけれども。

【竹下会長代理】これをどういう類型の訴訟で使うかというのは、また別の問題です。恐らく医療訴訟などでは、やはりこういう形ではなかなか使えないと思うのです。

【中坊委員】だから吉岡さん、今日はメモなんだから、余り字句にこだわらずに。まだ最終的に決まってはいないんだからね。

【藤田委員】迫力ある説得ですね。

【竹下会長代理】たまにはまとめ役でやっていただけるのはありがたいですね。

【中坊委員】そういう形容詞を付けるからいけないんだ。

【佐藤会長】では、この「少なくとも」というのは取ってください。では、今のような趣旨で。どうもありがとうございました。 (3)の方は、もうよろしいですね。

 次に「2専門訴訟に向けた体制整備」ですが、ここもまたいろいろ御議論のあるところかもしれませんが、まず知財関係。今日は髙木委員が御欠席なんですけれども、労働関係。それから(3)の医療過誤の事件。これらはいろいろ御議論のあるところです。順番に審議していきたいと思いますけれども、まず知財関係のところはいかがでしょうかね。

【竹下会長代理】ここにも専門委員と専門参審が出ているわけですが、専門参審に評決権を認めたものにするかどうかは、将来、陪審制、参審制の問題を審議するときに決めるということですから、ここではまだ、評決権があるかないかということは決められない。そこはペンディングにしたままの議論ですが、知財訴訟などについては、専門参審というものも考えてよいのではないかと思うのですけれども、吉岡委員は、やはりこういう知財訴訟などでも、専門参審というのは疑問だという御意見ですか。

【吉岡委員】知財の場合には、ちょっとそれ自体が特殊かなと思っているんですけれども、ただここで専門参審を認めて、それがほかにも波及するということになると、ちょっと困ります。

【竹下会長代理】それは、また別の問題です。

【佐藤会長】医療過誤は後で御議論いただきますから、そこは非常に難しいだろうということです。

【吉岡委員】そこのところだけは、かなり特殊のことだと思いますので。

【竹下会長代理】それはおっしゃるとおりです。およそ専門参審というものは、どんな種類の専門訴訟についても全て反対だと言われてしまうと、専門家に参審員として参加してもらうスキームが全く使えないことになってしまうわけです。やはりそれぞれの訴訟の性格によって違ってよいのではないかという趣旨なのです。

 例えば、専門参審と言うかどうかわからないけれども、髙木委員からは労働事件でも、労使双方が入った三者構成の参審を考えるべきだという御意見も出ていますし、あるいは鳥居委員や北村委員がおっしゃる、国際金融というような分野については、やはり専門参審的なものを考えてもよいのではないかと思います。医療訴訟について専門参審というのは、これは御疑問を持たれてもやむをえないかもしれません。

【吉岡委員】医療訴訟だけではなくて、ほかの専門の分野についても当然あるわけですけれども、知的財産権の問題という、そこに限って言えば、かなり専門的な知識が必要だと思いますから。ただ配慮しなければいけないのは、知的財産権の争いでも、企業対企業とは限らないわけですね。ですからその辺のところへの配慮というのは、別途しなければいけないと思いますけれども。その辺だけです。

【井上委員】そこも、人選のときに中立性をどう保つかということでしょうね。ですから、専門的知識の必要性が非常に高いという場合には、中立性を担保できるような手続を組み合わせることによって、入れることも考えると。それは事件の種類によって特定して、そういうことを検討するということじゃないかなという感じがするんですけれども。

【吉岡委員】限定的であれば。

【中坊委員】専門委員と専門参審がどこが違うかと言えば、参審の方は評決に加わるという点ですか。

【佐藤会長】そういうことでしょうか。

【竹下会長代理】しかしそこはペンディングになっているのです。ただ、ドイツ、フランス流の参審では、評決権もあります。

【中坊委員】だから、確かに吉岡さんのおっしゃるように、専門委員と専門参審制と入ってくると、参審という1つの制度そのものを導入したことになるのではないかという意味では、とにかく専門的な知見が必要であるから、それを持つ人に来てもらうというのは、さっきから言っているように、いろいろわかるんだけれども、その人が参審員として評決に加わるということまでくると、この参審という問題点が全体に影響することがあるんで。吉岡さんがおっしゃっているのは、恐らく、ほかへ蔓延と言うとおかしいけれども、また入れるなら入れるにしたとしても、今この時点でそういうものについて意見の対応の方向としては一致したというのは、ちょっとまだおかしいんじゃなかろうか、参審という問題点はまだ十分解明されてないから、我々として同意しているわけではないから、ひとつそれはちょっと待ってくれという意味なんじゃないんですか。

【吉岡委員】解説していただいてありがとうございます。

【佐藤会長】さっきの御意見だと、専門参審の方は評決に入り、専門委員の方はそうではないんだということになりますか。しかし吉岡さんはそれはそのように割り切れますかという観点から、御疑問を出されたのではないですか。専門委員の方は、さっきのようなやり方であれば、場合によってはよろしいのでは。

【中坊委員】だから、私もさっきから言っているように、今日の審議そのものがメモ程度であって、「対応の方向」としては、もう意見の一致をおおむね見たんだということになってくると、参審という言葉を使われることについては、まだ参審制度そのものが今のところ我々としてまだ一致してないんだから、それをここだけで専門参審という言葉が入ってくると、少しおかしくなるんじゃなかろうかということを言っているんです。それだけのことなんですよ。だから、それがいいとか、悪いとか言っているわけじゃないんです。

【北村委員】私は、参審と専門参審とを分けて考えていいんじゃないかなというふうに思っているんですね。だから、まだ参審という言葉については議論していませんけれども、今このような一応限定された状況下で、知的財産権のようなものについては専門参審をというようなことを言っているわけですから、これはこれで了解できるんじゃないかなと思います。それによって参審はどうのこうのということにはならない、ということでいいんじゃないかと思うんですけれども。

【鳥居委員】今日は余り字句のことを言うべき場ではないのは十分承知なんですが、今の御議論全体をのみ込むのには、今の20ページの「対応の方向」の2行目ですね、右の方へずっと読んでいくと、「知的財産の専門部を一層拡充し、・・・専門委員、専門参審制など」と書いてあるでしょう、そこを「専門委員または専門参審」として、「あるいは」という3文字を入れると、どっちかのチョイスもあり得るということで先に延ばせるんじゃないでしょうか。

【竹下会長代理】本来はその趣旨です。両方ということはあり得ないわけですから。

【佐藤会長】だから参審制はまだ確定的ではないという趣旨をはっきりとさせればよいということですね。それで結構でございます。

 では、ここはそのようにさせていただいて、次に「(2)労働関係事件の対応強化」なんですが、今日実は髙木委員が御欠席なもんですから、ちょっとこれで決めてしまうのもなんですけれども、私、1か所、この「対応の方向」の2番目の○なんですけれども、「『事実上の五審制』の解消につき意見の一致を見るに至らず」とあるんですけれども、この五審制はやはりちょっとどうかなという感じがします。ただ問題はどうやってそれを解消するかという、そこで意見がなかなか一致しないということであり、五審制それ自体については、何かちょっと重過ぎるんじゃないかという、その辺はむしろ共通の理解があったような気もするんですけれども、これは私の読み過ぎでしょうか。

【竹下会長代理】五審制をやめると言いますと、労働委員会の中で再審査の申し立ては、当然中労委に対してできるということになるでしょうから、その中労委の処分に対しては、高等裁判所に対して取消訴訟を提起できるということにしないと五審制は解消できません。ところが、第一審地方裁判所のレベルを飛ばしてよいかということについては、やはり異論があったのではないかと思うのです。

【佐藤会長】そこは議論が詰まっていないんです。けれども、五審制では時間が掛かり過ぎる。であれば、それは何とかいじらないといけないのではないかというところは、何か共通の理解があったんじゃないかと思うんですけれども。

【藤田委員】五審制として立法したときは、労働委員会の審理がこんなに時間が掛かるということは考えていなかったんだと思うんです。議事録に載るところで言ってはいけないかもしれないけれども、2、3年前の団体交渉拒否について、今判断したってあまり意味はないんです。だから、これについては労働委員会の中で手続改革の問題に取り組んでいます。少なくとも団体交渉について、私は半年以内にやらなきゃ意味がないと思うんです。もし、そうだとすれば、半年以内で地労委・中労委が済むんなら五審制で構わないんです。現在のように裁判所みたいな手続になって2年、3年掛かって、それから一審に行くからまずいんです。

 一方、一審を飛ばして高裁に持っていくということがいいかというと、労働事件の性格とか高裁の在りようから考えて問題がある。実質的証拠の原則も私はだめだと思うんです。公取や電波監理審議会や土地調整委員会とは違う、専門的、技術的判断ではなくて、普通の事実認定ですからね。そういう意味では、いろいろなやり方があるけれども、まずは、労働委員会の手続の改革が第一の問題だと思う。現にいろいろ議論しているところですから、そういう意味で事実上の五審制を解消すべしというと、すぐ一審省略とか、そういうことに直結してしまうものですから、そこまではまだコンセンサスはできていなんじゃないかなという感じがします。

【井上委員】「『事実上の五審制』の解消につき」という部分を削ってはいけないんですか。何も言っていないことになってしまうんですけれども、在り方については意見の一致を見るに至らず、なお検討するということでは。

【竹下会長代理】これは髙木委員からの発言で、事実上の五審制が問題だということで、問題提起がされているものですからね。

【井上委員】五審制というよりは、そこに時間が掛かり過ぎるとか、そういう問題を解決する方策については意見の一致を見なかったということだと思うんですが。

【藤田委員】髙木委員は一審省略の御意見でしたね。

【竹下会長代理】そうです。

【佐藤会長】そうですね。でも、別の方法があるかもしれない。

【竹下会長代理】井上委員がおっしゃったような形にしても構わないのですけれども、髙木委員がおいでにならないところで削ってしまうのはどうかということです。

【井上委員】ここだけ次回ということに。

【佐藤会長】そうしましょうか。

【井上委員】やはりフェアじゃないですね。

【佐藤会長】そうしましょう。これは今日はペンディングにします。問題は、(3)医療過誤訴訟などですけれども、建築瑕疵、こちらは比較的コンセンサスがあったようですね。問題は医療過誤でしたね。

【竹下会長代理】これを一緒にしたのは適当ではないのかもしれないのですね。「要検討事項に関する意見」の黒ポツの2つ目、「建築瑕疵訴訟のように専門家と当事者の利害対立が少ない場合には、専門参審制、専門委員を考慮すべきではないか。」というところについては余り御異論がないのかなと思うのです。先ほどの知財訴訟などと同じように考えてよいでしょうか。もしそうならば、少なくともその限度ではもうちょっと積極的な提言ができる。

【佐藤会長】分けて書くということになりますね。

【竹下会長代理】建築瑕疵は別にして書くということです。この間のヒアリングのときも裁判所が、専門訴訟の例として建築瑕疵事件を挙げておられましたからね。実際の必要性も強いのだろうと思うのです。

【吉岡委員】先ほどの知財の問題だということで、幾つか出てくることになると、やはり専門参審あるいは、専門委員、専門参審と書いてしまうこと自体が、だんだん複数で、どうも何か結局見えないところに行ってしまうということになりかねないと思いますので。

【竹下会長代理】それでは、このままにしておきますか。

【吉岡委員】もう少し煮詰める必要があると思います。

【井上委員】要検討事項でよろしいのではないですか。

【北村委員】全体を通してなんですが、18ページに、「(2)専門委員、専門参審制など専門家の取込み」と書いてあるんですけれども、素人から見ると、専門家の取込みという言葉は、これがあるから専門参審とか専門委員とかを裁判所が取り込むのかと思える。こういう言葉というのは一般的に使われているんですか。

【井上委員】「参加」にしましょう。

【北村委員】その方がいい。

【竹下会長代理】「参加」とか「関与」とか。

【北村委員】その方がいいですね。

【竹下会長代理】「関与」にしましょう。これはもともと裁判体の方に入ってもらうという意味だったので、取込みというようなことを言ったのですが、確かに余り適切な言葉ではないですね。

【佐藤会長】22ページですけれども、先ほどのような話ですと、医療過誤のところの表現ぶりは、このままよろしいですか。

【竹下会長代理】これも(3)になっていますけれども、(3)と(4)に分けて、医療過誤訴訟と建築瑕疵事件に分けましょうか。

【佐藤会長】その方がいいかもしれないですね。

【中坊委員】専門家が一方に、建築の事件であっても、建築を請負う人と、それを鑑定する人は専門家同士で一緒だと思います。医療事件も医療をやる当事者と専門鑑定する人が一緒だという意味では、おっしゃるように、建築とこれとは並列的に扱っても、そこが問題点だという意味ですから、私はわざわざ2つに分ける必要はないんじゃないかという気もします。専門家が一方の方に加担している、加担しているというよりも、一方に寄っているという意味ではね。

 だから、建築瑕疵の問題も医療過誤の問題も、そういう意味では2つを並列して並べるのも意味があるように思う。ただ、その専門性が非常に極端に違うという意味では、量的な差はあるでしょうけれども、質的には同じじゃないですか。

【佐藤会長】医療過誤の場合はそこがなかなか。

【藤田委員】建築瑕疵の場合は双方に専門家が付いているんです。医療過誤の場合は、病院側だけなんで、そういう特殊性はあるんです。

【北村委員】そうすると、「その他の」というのがどこへ入ってしまうのかというのが、非常に今度は難しくなるんですね。ですから、ここは違うものが入っているということでいいんじゃないかなと思います。

【佐藤会長】医療過誤については、別途いろいろ検討すべきことが多いということで。

【井上委員】「要検討事項に関する意見」のところの最初の「医療過誤訴訟では専門参審制の導入を考慮すべきである。」という意見を、次の建築瑕疵訴訟に関する意見の後に持ってくれば、その後に否定的な意見が並べてありますので、そこは意見が分かれているということが分かりやすいのではないですか。

【竹下会長代理】そうしましよう。

【佐藤会長】この件はこのくらいにさせていただいきます。どうもありがとうございました。

 「Ⅳ民事執行制度の在り方-権利実現の実効性確保」。これもいろいろ議論すればあるんでしょうけれども、どうですかね。このようなところじゃなかったかと思うんですけれどもね。

【竹下会長代理】ただ、これは各方面からの提言にほとんど入っているのですね。民事執行は実効性が乏しいから改革すべきであるということ。私自身もここで余り積極的な発言をしてこなかったのですが、これだけ各方面から要望が強いということになると、要検討事項に関する意見」の中に、家庭裁判所の履行確保を除くと3つのことが挙げられていますね。債務者の履行促進のための、「間接強制の適用範囲の拡大等」、それから、「債権者が債務者の財産を把握するための方策」、「占有屋等による不動産執行妨害への対策等」、この辺りは積極的な方向で考えるということで、もし今日、御意見の一致が得られれば「対応の方向」の方にそれらを入れるということでどうだろうかと思うのですが。ただ1つ、「債務者の財産を把握するための方策」というのは、前に中坊委員も御指摘になりましたけれども、これを一方的に強化しますと、それこそクレ・サラ事件などで、一般消費者がこれでクレジット業者やサラ金業者にやられてしまうということになりかねませんので、恐らくこれを考えるとすると、弁護士会の御指摘にもあったように、ちょっとテクニカルな問題になりますが、債権者が差し押さえてはいけないという財産の範囲の見直しが必要になるのではないかと思うのです。

 現在の日本の差押えの範囲というのは、ほかの国に比べて少し狭いのではないかと言われていますので、それをある程度広げて、債務者の生活の最後のとりでとして残しておく部分を広げるということも同時に考えないと、一方的に債権者だけに有利になり、債務者の生活が脅かされるということになる、そういう危険があるように思います。

【中坊委員】個々の具体的なことについては、まだ意見がいろいろあるんだから、まさにここに意見として、「対応の方向」として、方策を特定すべきであるとする。内容については意見がまとまっていないということですから、このとおりで一応通過したらどうですか。

【竹下会長代理】ではそうしましょうか。余りに要望が強いものですからね。

【中坊委員】一応外部の意見としてと。

【竹下会長代理】では、その具体例としてはこの3つくらいは挙げておくと、そういうことにしましょうか。

【佐藤会長】それでは、次に「Ⅴ.司法の行政に対するチェック機能の在り方」です。ここは「別途検討」となっていますけれども、行政訴訟制度の改革は避けて通れないということは認識が一致しているんじゃないでしょうか。ただ、改革の具体的な方策は、別途検討ということではないでしょうか。

【竹下会長代理】機能を強化する方向ですね。

【佐藤会長】そうです。

【鳥居委員】これは結構議論しましたからね。

【佐藤会長】そうなんです。塩野先生のお話を受けてですね。その文章は入れておきましょう。

 先を急ぎまして、次に「Ⅵ.裁判手続外の紛争解決手段の在り方」です。これもアイデアとしてはいろいろあるんですけれども、何となく焦点がはっきりしないという感もしないではない。でも、今の段階ではこの程度でしょうか。いかがですか。

【吉岡委員】この程度かなと思いますが、1つ入れていただきたいのは、どこに入れていいかというのはちょっとわからないんですが、消費生活センターが書かれていますが、国民生活センターが抜けているんです。消費生活センターは地方公共団体の中に入るんですけれども、国民生活センターは違うので。これは意見のところに入れるんですね。最初の「○拡充・活性化すべきADR」の黒ポツの3つ目のところに、「地方公共団体等による相談・あっせん型ADR(消費生活センターを含む)」その括弧の外側に「国民生活センターなど」という文言をいれる。これは地方公共団体ではありませんので、その辺に入れてはどうでしょうか。

【竹下会長代理】わかりました。いずれにせよ、国民生活センターも入れるということで考えます。

【鳥居委員】これはどういう違いがあるんですか。

【吉岡委員】特殊法人です。もともと経済企画庁の所管で、国民生活センター法で位置づけられているものです。あれも消費者保護基本法ができて、その後で設立した法人です。

【竹下会長代理】ここ自体も直接に消費者相談だとか、苦情処理などもやっているのですね。

【吉岡委員】商品テストについても、かなり大きなテスト機関を持っております。

【鳥居委員】消費生活センターよりこっちの方が先にできたんでしょう。

【吉岡委員】消費生活センターの一部、多分、兵庫県と東京都が、ちょっと早いかもという程度です。

【佐藤会長】ではそれを入れましょう。

【竹下会長代理】先ほど会長がおっしゃいましたように、ADRの関係は、どうも私自身も余り十分に検討していないものですから、少し時間をいただいて、勉強いたします。次の検討の機会までに勉強しておきます。

【佐藤会長】今日の段階はこのくらいにさせていただいて。

 次に「Ⅶ.司法に関する情報公開の在り方」です。情報公開法による情報公開の実施は来年の4月からですが、行政改革委員会の情報公開部会での議論では、国会と裁判所はそれぞれ別だから、独自にお考えいただこうということであったのですけれども、裁判所は、公開法みたいなものを考えておられるのか。あるいは情報提供というようなことで対応しようということでしょうか。裁判所の情報公開について何かお聞きになっていますか。

【竹下会長代理】直接は聞いていませんが、裁判所も、行政庁の方で行政情報の公開の方針が出たものですから、それに準ずるような形で検討されるとは聞いているのです。

【佐藤会長】開示請求権も付与するとか、そういうことまで含めてでしょうか。

【竹下会長代理】恐らくそういう法律をつくるかという話ではないのではないでしょうか。

【佐藤会長】いわゆる情報提供でということですかね。

【竹下会長代理】ちょっとよくわかりません。

【佐藤会長】今日御議論いただく必要はないんですが、その辺の問題もあるということを踏まえておくということで。

【中坊委員】基本的に言えば、情報公開法に基づく、本来言えば実施機関になるべき筋合いが1つの公の機関なんだから、この間から問題になっているように、単に判例がどうのこうのというよりも、裁判官の待遇とか俸給とかいろいろありましたね。髙木さんが質問されて、今初めて出るとか出ないとかという問題があったでしょう。だから、基本的には情報公開に応じるべき筋合いのものだということは、できれば。

【佐藤会長】理論的には国会もそうですしね。

【中坊委員】理論的に言えば、そこで一致していてもしかるべきだと思いますけれども、御異論があるようだったら、そこも決まらないということになると思います。本来的には、裁判が公開になるだけじゃなしに、そういう裁判官のあらゆることが、裁判所のあらゆることが、公開されるというのが本来の筋合いであろうと私は思います。

【佐藤会長】この問題、更に議論するときに、その辺も念頭に置いて議論していただきたいと思います。今日の段階ではこのくらいで。

【鳥居委員】27ページから28ページに掛けては、今まで出てこなかった表現である「異論がなかった」というのに変わりましたね。

【竹下会長代理】「異論がなかった」というのは、前からありました。

【鳥居委員】ありますね。

【佐藤会長】では、一応最後まで御議論いただいたということで。言葉遣いについては注意をしますけれども、最初に申し上げたように、決め打ちというか、これでもうすべて決まったんだというように、厳密にお受け取りにならないようにしていただければ。そういう趣旨のものとして、基本的に御理解賜ればと思います。大きな議論として残っているのは、先ほど来申してきたことですが、決して議論しないとかいうことではありませんので、御理解いただきたいと思います。

 では、この件は以上で終わらせていただきます。

 次の議題に移らせていただきまして、夏の集中審議についてお諮りしたいと思います。8月7日から9日まで、夏の集中審議における審議事項及び進め方についてでありますが、会長代理とも相談の上で、お手元に配付しているペーパーのように審議を行いたいというように考えております。

 まず、8月7日の午後についてでありますけれども、お配りいたしましたペーパーに記載しておりますとおり、既にレポーターをお願いしております石井、吉岡委員から、弁護士の在り方に関して、それぞれ20分程度レポートしていただく。

 更に、これも既にお願いしております北村委員から、隣接士業に関するレポートを20分程度していただいて、これらのレポートを受けて、弁護士の在り方について意見交換を行いたいと考えております。弁護士の在り方につきましては、夏の集中審議以降、日弁連等からのヒアリングを行い、審議することも考えておりまして、そのヒアリング項目などをどのようにするかを踏まえて、意見交換をしていただければと考えております。

 それから、8月7日には、更に引き続きまして、そのペーパーにありますように、現在、文部省にお願いして検討していただいております法科大学院の教育内容等に関しまして、文部省の検討会において前回の審議会で井上委員から御報告のありましたとおり、このときまでに中間的な意見の取りまとめを行うということでしたので、検討会の方からしかるべき方に来ていただきまして、取りまとめた中間的な意見を含めて、審議状況などの御報告をしていただいて、その上で法科大学院構想を含めた法曹養成制度について意見交換をしたいと考えております。

 それから、更にこの8月7日に、もし時間的な余裕がありましたら、法曹人口の検討に当たって考慮すべき事柄についても、整理を行い意見交換をしたいというふうに考えております。この審議会では、法曹人口の大幅な増加、それも決して2割、3割というものではないということについては、既に意見が一致しておるわけですけれども、今後、この法曹人口に関して審議を行うに当たって考慮しなければならない事項としてどんなものがあるのか。それから、大幅な増加を行うとして、考慮しなければならない事項との関係なども視野に入れながら、どういう方法があるのかということについて、ここで少し整理をしておく必要があるのではないかというように考えております。

 勿論、この法曹人口の問題は、法曹養成、あるいは法曹一元の問題とも関連しておりますので、この夏の集中審議の際に議論しておかなければならない問題だと考えてこういうことにさせていただいたわけであります。ただ、時間の関係で7日に行うことが難しいということでありましたら、8日の午前中に法曹人口の問題を御議論いただくということも可能性として考えております。この法曹人口に関しましては、事務局にお願いして参考資料を用意してもらうことを考えております。

 その後、8日、9日を使いまして、法曹一元を中心に、これに関連する問題について御自由に御議論いただきたいと考えております。ただし、御自由にということですけれども、法曹一元についてばらばらな意見交換になってもいかがかということもありますので、会長代理などとも相談した上で、簡単なレジュメを用意させていただいて、そのレジュメに従って、御議論いただくということを、現在考えております。委員の皆様からも活発な御意見をちょうだいしたいと思っておりますが、各委員にペーパーを準備していただくということまでは考えておりません。各委員のそれぞれのお考えで、勿論出していただいても結構でございますけれども、出さなければいけないというところまでは考えておりませんので、そこは御自由に御判断いただいて結構であります。

 できれば今お話ししたようなことで、この8月の集中審議を行いたいと思っておりますけれども、こんなことでよろしいでしょうか。

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】ありがとうございます。なかなか大変でございますけれども、委員の皆様にはよろしくお願い申し上げます。これは2日半で、2日間は朝から晩までということになりまして、大変でございますけれども、よろしくお願いいたします。

 それまでに7月25日、8月4日なんですけれども、できれば1時半から開催すると。それ以外の日は予定どおり2時からですけれども、7月25日、8月4日はよろしゅうございますか。

 それでは、次に公聴会関係、及び実情視察について御報告申し上げます。福岡における公聴会、それから浜田の実情視察についてでございます。

 福岡における地方公聴会につきましては、私のほか北村委員、髙木委員、藤田委員、水原委員の5名で6月16日から17日に掛けて行いました。16日には法曹三者との昼食懇談会の後、拘置所、検察庁、弁護士会、弁護士会法律相談センターにおいて概況の説明を受けたり、施設の見学をさせていただきました。福岡では、以前から民事裁判に関して裁判所と弁護士会との話し合いの結果、適正・迅速な裁判を実現するために独自の、いわゆる福岡方式というものを実施されてきたことなど、法曹三者間における相互の信頼関係が確立しているという印象を受けたところであります。また、拘置所を見学したのは、福岡が初めてでしたけれども、少ない人数で大変苦労され、適正な留置業務の執行をなさっているということを知ることができました。それから、翌17日には地方公聴会を行いましたが、その概要はお手元にお配りしておりますとおりであります。雨という悪天候にもかかわらず、約400名ほどの方が傍聴人としてお見えになりました。あらかじめお願いしておりました6名の公述人から陪審制度、法曹一元、医療過誤訴訟等に関して御意見をちょうだいし、我々委員との間で質疑応答を行ったところであります。それぞれ貴重な御意見でございましたけれど、特に裁判官35年、弁護士15年という経験の80才の方から、法曹三者、特に最高裁判所と日弁連が大局的な見地に立って良き司法制度の確立を訴えられたのが強く印象に残り、また、17歳の高校生でしたけれども、陪審制を中心に話されたんですが、若い層が司法に関心を持っているということは非常に歓迎すべきことであり、心強く思った次第であります。

 それから、浜田における実情視察につきましては、私のほか井上委員、中坊委員の3名で6月20日から21日に掛けて行いました。その概要もお手元にお配りしてあるとおりであります。浜田市長、地元の関係団体の方々との意見交換会に引き続き、浜田における法曹三者の施設の見学や概況の説明、法曹三者との昼食懇談会などを行いまして、言わば過疎地と言うべき地域においても、法的サービスに対する潜在的需要が非常に高いということを知りました。浜田市長が、日本型社会からの脱皮の必要性ということを説いておられたのが印象的でありました。いろいろ制約のある中で、法曹三者の方々ができるだけ地域の要望に応えるべく、精一杯御努力なされているということを知ることができました。このような地域の方にとっても、本当に利用しやすい司法の実現を目指さなくてはならないということを痛感した次第であります。

 いずれの日程とも少々ハードでありまして、御参加いただいた委員の皆様には、本当に御苦労様でございましたが、やはり各地に実際に赴いて、それぞれの地域の実情を知るということは非常に参考になることだと、私個人としてもしみじみ思ったところであります。

 今後は札幌の地方公聴会、酒田の実情視察が予定されております。参加される委員の方々には御苦労をお掛けしますけれども、よろしくお願いいたします。

 次に札幌における公聴会の公述人についてでございますけれども、第21回会議において御了解いただきましたので、会長代理と相談の上で公述人を選定させていただきました。そこにございますような6名の方々を選ばせていただきました。

 この6名の方々には事務局から既に連絡していただいておりまして、御内諾を得ております。30名の中から選ばせていただいたわけであります。

 今回の公述人の選定に当たりましても、これまでの公聴会のときと同様に、地域性を考慮しまして、北海道にお住まいの方から意見書の内容、年齢、職業、住居地、男女のバランスなどを検討いたしまして、そういう6名の方を選ばせていただいたわけでありますが、御承認いただけますでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

【佐藤会長】ありがとうございます。いろいろな方々から御意見をちょうだいしたわけですけれども、事務局において保管しておりますので、興味のある方はごらんいただければと考えております。

 札幌の公聴会における傍聴関係、及び東京の公聴会における公述人及び傍聴希望者の応募状況につきまして、事務局の方からお願いします。

【事務局長】札幌における地方公聴会の傍聴希望者につきましては、既に締め切っておりますが、310名の応募がございました。傍聴者の数としまして、250名程度を考えておりましたが、借りる予定にしております会場に問い合わせをいたしましたところ、多少席を詰めて椅子を並べれば応募いただいた方全員に入っていいただくことができるということでしたので、応募いただいた方全員に傍聴券を送ることとしたいと考えております。

 次に東京における地方公聴会の公述人の募集状況につきましては、既に第21回の審議会の際に御報告をしましたとおり、新たに70名の方からの応募がございました。この70名に、大阪の公聴会の際に関東・東北にお住まいの方で御応募をいただいた23名を加え、合計93名の中から既に御了解をいただいておりますように会長と会長代理で御相談いただき、公述人8名を選定していただこうと考えております。

 また、傍聴人につきましては、これも既に締め切っておりますが、640名の応募がございました。東京の公聴会の会場は日比谷公会堂を予定しておりまして、応募をいただいた方全員に入っていただくことができますので、東京につきましても、応募いただいた方全員に傍聴券を送ることとしたいと考えております。

 以上でございます。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。今の説明にありましたように、東京における公聴会の公述人につきましても、私と会長代理で相談の上で選ばせていただくことにさせていただきたいと思いますけれども、よろしゅうございましょうか。

 事務局の方でもその他必要な準備を進めさせていただくことにしたいと存じます。事務局の方もよろしくお願いします。

 次に配付資料の確認をお願いします。

【事務局長】一覧表4番目の各界要望書の中に、先ほど御説明申し上げました、当審議会に対するアメリカ合衆国政府からの意見書が入っております。後ろに日本語訳も付けてありますので、併せて御参照いただければと思います。ちなみに、この意見書の中には、先ほど少し話題になりました懲罰的賠償という用語は一切出てきておりませんので、御了承いただきたいと思います。

 その他の資料につきましては、特に説明することはございません。

 以上でございます。

【佐藤会長】ありがとうございました。
 何か御質問ございませんか。

【吉岡委員】札幌の場合、女性が2名しか入っていないんですけれども、これは応募者そのものの中に女性が少なかったということですか。

【佐藤会長】必ずしも理想どおりにいかないところがあるんです。その辺1つの重要な要素として考えながら選択させていただきました。

【竹下会長代理】同じような立場の方が2人並んで応募するなどの事情です。

【事務局長】ちなみに30名中11名が女性でございました。

【吉岡委員】わかりました。

【佐藤会長】次回の審議会でございますけれども、7月7日金曜日、2時から5時まで、この審議室で行うことを予定しております。隣接士業、つまり司法書士、弁理士、税理士、行政書士、社会保険労務士の関係者からのヒアリングを行いたいと考えております。
 以上でございますが、本日の記者会見はいかがしましょうか。では、私と会長代理でやらせていただきます。今日は5時を少し過ぎたところで終わることができました。いろいろ強引なこともやったのかもしれませんが、どうもありがとうございました。