5 会議経過
① 北野聖造 日本司法書士会連合会会長から別紙1の資料に基づき説明が行われ、これに関して以下のような質疑応答があった。
○ 司法書士1万7千人のうち、裁判事務にかかわる業務を行っている者の割合はどの程度か。
(回答;これまでに12回開催され、延べ約6,000名が参加した中央新人研修等を始めとして、日本司法書士会連合会等の主催する研修においては、裁判事務に重点を置いた研修を行ってきており、正確な統計はないが、約1万人程度は裁判事務にかかわる業務を行っていると推測される。)
○ 裁判所に提出する書類の作成、依頼者に対する法律関係事項の説明等の業務を通じて得られる知見等にかんがみれば、司法書士に簡易裁判所における民事訴訟の代理権を付与することについては検討の余地があるとしても、家事審判事件・家事調停事件の代理権を付与することについては、これらの事件の処理には高度な法的判断を要する場合も多いことから、問題があるのではないか。また、研修を受けたことのみで、その後に試験を課すことなく代理権を付与することとするのか。
(回答;司法書士は、相続や民事執行関係の裁判事務にかかわる業務を日常的に行っているが、代理権を有しないことから、結局本人が裁判所に出頭せねばならない。もし司法書士に代理権を付与することとすれば、事案の処理が効率的に行われることとなると考えられる。代理については、司法書士にとって未知の世界であるが、研修をクリアーした者に認めることを検討していただきたい。また、研修後にその効果を何らかの方法で判定することにより能力を担保することとしたい。)
○ 司法書士に簡易裁判所における民事訴訟、家事審判事件、民事執行事件等の代理権を付与するに当たって、研修を受けたことをもって能力の担保とするとの説明であるが、その研修は全員に受講を義務付けることとするのか、あるいは、研修を受けた者に代理権を付与することとするのか。
(回答;そこまで詳細に詰めた議論はしていないが、研修を受けたことを前提に代理権を付与することを想定しており、全員が研修を受けねばならないとすることには疑問を持つ。)
② 村木清司 弁理士会会長から別紙2の資料に基づき説明が行われ、これに関して以下のような質疑応答があった。
○ その業務の内容から、弁理士が知的財産権にかかわる専門的な技術や法律に精通していることは分かるが、訴訟の代理には非常に高度で法律的な知見を必要とすることから、その能力をいかに担保するかが問題となる。試験科目には訴訟法関係の科目がないのに、研修の強化のみで適切な者が選抜されるのか。また、理科系の出身者が7・8割であると聞くが、やはり法律の知識や実務に関する適性は、法文系の出身者のほうがより高いのではないか。
(回答;提出資料の「Ⅵ.訴訟代理のための能力担保措置構想」にあるとおり、相当の時間をかけて、かなり密度の高い試験研修を課すことを想定しており、能力の担保に問題はないものと考えている。)
○ 提出された参考資料によれば、今後の知的財産権の侵害訴訟におけるユーザーのニーズは、弁護士及び弁理士の共同代理と弁理士の単独代理とが半々程度とのことである。強化されるという試験研修制度の効果如何にもよるが、弁護士及び弁理士の共同代理を認めることが現実的な方策ではないか。
(回答;理想は、アメリカのパテント・アトーニーのように、弁理士単独で事案の入り口から出口までを処理できることとしたいが、弁護士との共同代理も考えられるかもしれない。しかし、想定している試験研修制度では、司法修習を参考として、法律知識の修得と実務修習を行うこととしており、これにより単独で代理できる能力の担保に問題はないと考えられる。これまで、訴訟実務において、弁理士が半人前とみなされてきた現状を解消したい。中途半端な資格制度をつくることは不適切ではないか。)
○ 利用者からみれば、訴訟では勝たなければ意味がない。アメリカのローファームでは弁護士とパテント・アトーニーが共同して理論武装して対抗してくることを考えれば、弁理士の単独代理よりも弁護士との共同代理のほうが利用者が不利にならなくてよいのではないか。
(回答;もちろん、弁理士の単独代理が認められた場合においても、弁護士と共同して訴訟事務を遂行することとなるのだが、弁理士だけでは訴訟ができないといわれる現状を解消したい。)
③ 森金次郎 日本税理士会連合会会長及び久野峯一 同連合会専務理事から別紙3の資料に基づき説明が行われ、これに関して以下のような質疑応答があった。
○ 現行においても、裁判所の許可を受ければ補佐人として出廷し、陳述することができるのだから、それで十分ではないか。裁判所の許可や依頼者又はその代理人の同意が得られない場合があるというが、その理由は何か。
(回答;承知している例では、裁判所が、税理士の資格も取得することのできる弁護士が代理人となっているのであれば、税理士による出廷・陳述は不要であると判断する場合や、代理人となっている弁護士が、弁護士法上の業務分野であるとして、税理士の出廷・陳述を望まない場合などがあると聞いている。)
○ 弁護士は税理士の資格も取得することができるのに、税理士が出廷・陳述しなければならない理由は何か。
(回答;税務に精通している弁護士は必ずしも多いわけではなく、一方で、納税者が弁護士とともに立ち向かう相手である国側は、国税庁職員が代理人となっており、税務訴訟は不公平な状況になっている。税務訴訟のバランスをとるためにも、税理士の出廷・陳述が必要である。)
○ 税務訴訟の多くは、法制度上、税務行政が税務署の広範な裁量に委ねられていることに起因するものと考えられ、このことのほうが、より大きな問題ではないか。
(回答;税務行政には通達が多く、法律上の問題とならずに処理される場合が多くあり、御指摘のような問題がある。シャウプ勧告にあるように、牽制がないと適正な税務行政とならないと考えられ、税理士に出廷・陳述権を付与すれば、これまでになかった税務訴訟も新たに提起されることとなり、訴訟によるチェックで通達行政も変わってくるのではないか。)
○ 代理人として弁護士が選任されない場合、出廷・陳述権の付与により、税理士が当事者とともに出廷して陳述することとなり、代理権を認めるのと同様の結果となることから、利用者である国民の立場からすると、税理士の訴訟遂行能力の制度的担保が必要となる。そのために研修を強化するというが、具体的にはどのようなことか。また、研修を課して国民の権利の擁護に遺漏なきを期するとともに、例えば裁判所の許可によることとするなど、なんらかの条件にかからしめるべきではないか。
(回答;税理士会への登録時と登録後の統一的な研修や、テレビを通じての研修などを考えており、このほか、随時の研修も行う。出廷・陳述に関する研修については、試算ではあるが約40時間をかけて、ある程度の濃密さで行う必要があると考えている。)
○ 質問ではなく感想として申し述べるが、税理士の資格を付与する大蔵省・国税庁と争うために、その争う相手方に出廷・陳述権を認めてもらいたいというのはいかにもおかしい。例えば「税務弁護士」といったような、大蔵省・国税庁ではない機関から付与される資格を求めることが筋ではないか。
④ 盛武隆 日本行政書士会連合会会長から別紙4の資料に基づき説明が行われ、これに関して以下のような質疑応答があった。
○ 行政書士が、行政の様々な分野で書類を作成する業務を通じて知識を得ていることは理解したが、それが行政事件訴訟でどのように役立つのかが分からない。行政書士には、行政事件訴訟とのかかわりで、補佐人になるなど法廷で陳述するといった経験が蓄積されているのか。また、少額事件訴訟と行政書士の業務との結びつきが分からない。業務として書類を作成していることは分かるが、訴訟を代理することとどう結びつくのか。要望している「代理」とは、裁判所に提出する書類を作成することか。
(回答;行政庁に対する許認可等の申請について、単一の官庁に申請する単独申請と、地方公共団体や国の地方出先機関を経由して最終的に中央官庁による許認可等を求める複合申請の二通りに分けられると考えているが、特に後者については、機関や地域によって同様の申請に対する処分の内容がそれぞれ別になるなどの問題が生じ得る。こうした問題に、全国隅々にまで開業している行政書士の広域的なネットワークを通じて対処していくことができる。要望している「代理」とは、裁判所に提出する書類を作成することを指している。)
○ 家事審判事件について行政書士に代理権等を付与することを求めているが、行政書士の業務と、家事審判事件との関係は何か。家事審判事件の手続に則って訴訟を遂行するたるには、身分法や家事審判法に通暁していることが必要となる。
(回答;行政書士法を改正して、試験科目に訴訟法等の関係科目を入れることを検討している。また、試験センターという指定試験機関が設置されたことから、これらの取組を通じて、行政書士の資質の向上に努めていきたい。)
○ 司法書士、弁理士及び税理士は、いずれも専門分野を有しており、専門的な知識や経験の蓄積により訴訟に関しても能力とノウハウを有している可能性を秘めているようにみられるが、行政書士には、こうした専門分野がないのではないか。法律等の知識について40問、一般教養について20問、全体で2時間30分の行政書士の資格試験に合格しただけの者に訴訟代理を認めることが、果たして国民のためになるのか大変疑問である。
(回答;行政書士の資格試験の科目については、今後の課題として法改正を検討している。)
⑤ 大和田潔 全国社会保険労務士会連合会会長及び増田雅一 同連合会専務理事から別紙5の資料に基づき説明が行われ、これに関して以下のような質疑応答があった。
○ 社会保険労務士は、申請書類の作成等の業務により労働関係事件に通じているというが、代理や仲裁を行う主体というよりは、それはむしろ当事者としての経験に近いのではないか。訴訟実務に通暁していることとは違うのではないか。どの程度の数の社会保険労務士に、補佐人として訴訟遂行を補助した経験があるのか。また、大学や司法修習をモデルにして研修を強化するというが、大学で4年、司法修習で2年という期間と同等の期間をかけて行われる研修とするのか。
(回答;補佐人となることは、これまで社会保険労務士の業務とは考えられてこなかったので統計はないが、補佐人となっている社会保険労務士はいると思われる。また、強化した研修では、民事法、訴訟法などをある程度濃密な内容で受講させることとしたい。期間については、1ヶ月程度を考えている。)
⑥ 今回の会議で行われた隣接法律専門職種の関係団体からの説明と質疑応答の結果を踏まえ、今後、「弁護士の在り方」について審議を行う際に、この隣接法律専門職種の業務の範囲等の問題についても審議を行うこととされた。
⑦ 井上委員から、法科大学院(仮称)構想に関する検討会議における審議状況等の説明が行われ、その中で、同検討会議においては、別紙6のとおり設定された検討事項に沿って審議が進められており、当審議会の夏の集中審議に間に合うように、これらの検討事項等について大きな方向性を見極めた上で、当審議会に対して所要の報告が行われる見通しである旨の報告がなされた。
⑧ 佐藤会長から、7月24日に開催が予定されている東京公聴会の公述人について、別紙7のとおり選定したこと等について報告がなされ、了承された。
⑨ 次回会議の日程について、7月11日(火)14:00~17:00の予定で、「国民の期待に応える刑事司法の在り方」について、高木委員及び山本委員からのレポートと意見交換を行うこととする旨確認がなされた。
以上
(文責 司法制度改革審議会事務局)
速報のため、事後修正の可能性あり