司法制度改革審議会

第24回司法制度改革審議会議事録

第24回司法制度改革審議会議事次第



日時:平成12年7月7日(金)14:00~17:50

場所:司法制度改革審議会審議室

出席者:

(委員)
佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、井上正仁、北村敬子、曽野綾子、髙木剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本勝、吉岡初子
(説明者)
北野聖造日本司法書士会連合会会長、
村木清司弁理士会会長、
森金次郎日本税理士会連合会会長、久野峯一同連合会専務理事、
盛武隆日本行政書士会連合会会長、
大和田潔全国社会保険労務士会連合会会長、増田雅一同連合会専務理事
(事務局)
樋渡利秋事務局長
  1. 開会
  2. 隣接法律専門職種(日本司法書士会連合会・弁理士会・日本税理士会連合会・日本行政書士会連合会・全国社会保険労務士会連合会)からの説明
  3. 閉会

【佐藤会長】それでは、定刻がまいりましたので、第24回会合を開催させていただきます。

 本日の議題は、一つは、隣接法律専門職種の方々からのヒアリングでございます。2番目に、文部省における法科大学院構想に関する検討会の審議状況についての報告、3番目が、東京公聴会等の関係についてでございます。

 それでは、早速ですけれども、隣接法律専門職種の方々からのヒアリングに入りたいと思います。

 隣接法律専門職種の方々は、いわゆる狭義の法曹ではないんですけれども、それぞれ司法に密接に関連した業務を行っておられる。その在り方や業務の範囲などという問題は、これまでに審議を行ってまいりました「国民がより利用しやすい司法の実現」や、「国民の期待に応える民事司法の在り方」にも深い関係があるということでございまして、今後、当審議会において審議を行うことを予定しております「弁護士の在り方」などとも密接に関連している問題でございます。

 この隣接法律専門職種の問題に関しましては、既に事務局から各隣接法律専門職種の方々に、この審議会でも御了承をいただきましたけれども、調査嘱託を行っておりまして、提出を受けた調査結果を委員の皆様にお配りしているところであります。

 今、お話ししたような当審議会の審議状況を踏まえて、本日、改めて各隣接法律専門職種の団体の方々に来ていただき、それぞれの方々からヒアリングを行うということにさせていただいた次第でございます。

 ヒアリングの順番としましては、最初に日本司法書士会連合会、2番目に弁理士会、3番目に日本税理士会連合会、休憩をはさみまして、4番目に日本行政書士会連合会、5番目に全国社会保険労務士会連合会の順番で行いたいと思います。時間が非常に限られておりますが、それぞれ30分程度ずつで行いたいと思っております。最初の15分ないし20分程度、お見えいただいた方々からお話を聞きまして、その後、質疑応答を行うことを考えております。

 まず最初に、日本司法書士会連合会の北野聖造会長からお話をお聞きすることにしたいと思います。北野会長には、本日は大変お忙しいところお見えいただきまして、本当にありがとうございます。それでは、先ほど申し上げたんですけれども、最初15分ないし20分、質疑応答を含めて30分程度、限られた時間で恐縮ですけれども、よろしくお願いします。

【日本司法書士会連合会北野会長】日本司法書士会連合会会長の北野でございます。本日は司法書士会としての意見を述べる機会を与えていただき、心から感謝いたします。

 私ども司法書士は、全国各地にくまなく存在し、国民に身近な法律実務家として、国民と同じ目線で職務を遂行してまいりました。そのような立場にある実務家として、意見を申し述べさせていただきます。

 今日の資料でありますが、黄色い表紙のものが二つございますので、それに基づき意見を述べさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 まず、このたびの司法制度改革にあたり、国民が身近なものとして最も関心を寄せる基本的な論点につき、申し上げたいと存じます。

 それは、国民が日常生活の中で法的問題に遭遇した場合に、いつでも気軽に相談できる環境と、それが現実に紛争に発展した場合には、その内容、程度、段階に応じた利用しやすい多様な解決方法が選択できる環境、つまり、司法へのアクセスポイントの質・量ともの充実を図るということであります。

 この点につきましては、本審議会が昨年末の論点整理の中で、「国民が利用しやすい司法の実現」を目標として、「国民が利用者として容易に司法へアクセスすることができるようにする」との御見解を既に示されている点であり、深く敬意を表するところでございます。

 申し上げるまでもなく、国民から見れば、司法と国民をつなぐための法律実務家制度の在り方は、「司法制度」そのものと言っても過言ではありません。その意味で、法律実務家制度全体の整備・拡充をどのように図っていこうとするのかは、このたびの司法制度改革を真に国民のためのものとする必須の要件であり、最も重視されるべき論点であります。国民が容易に司法へアクセスし得る方策が適切に示され、その実現の道筋が明確にされることが必要であり、この点をないがしろにして国民の司法参加や、国民に身近な司法制度の実現は到底かなえられないと思われるのであります。

 それでは、現在の法律実務家制度の実情はどのようなものなのでしょうか。

 国民と司法をつなぐ中心的役割は、申し上げるまでもなく、弁護士職が担うことが期待されています。したがいまして、国民が利用者として容易に司法へアクセスすることができるようにするには、まず何よりも、国民と司法をつなぐ役割を担う弁護士職の在り方が問われるものとなります。その意味で、弁護士人口の適正な増加や、法律事務所の在り方、弁護士業務の改善等の諸課題は、いずれも国民生活にとり優先度が高いものと言わなければなりません。

 お手元の資料の3並びに4-1と4-2を御覧いただきたいと思います。これらは、弁護士と司法書士双方の地域分布状況を比較するため、表と日本地図でそれを表したものでございます。4-1が司法書士、4-2が弁護士の分布状況を示した地図であります。

 様々な改革が論じられ、また実施されながらも、御覧のとおり弁護士は、いわゆる「弁護士過疎」という言葉に示されるように、大多数が大都市に集中しており、しかも、少額な事件を敬遠する傾向が見受けられます。これに弁護士報酬の予測困難性や敷居の高さが加わって、国民が弁護士にアクセスしづらい状況が長い間続いているわけでございます。この点を端的に示すのは、第一審裁判所における弁護士関与率です。地方裁判所管轄でさえ、半数以上の事件が原・被告双方に、弁護士が就かない中で行われており、また資料6で明らかなように、簡易裁判所管轄では、実に98%がそのような状況下にあります。これは、国民が期待したとしても、専門家を介した裁判制度の利用が事実上困難なものになっていることを示しているものと考えております。

 これらの状況を改善するため、現在、弁護士会により、法律相談センターや公設事務所の設置などが進められ、あるいは法律事務所の法人化が試みられようとしております。

 これらの取り組みには、最大限の敬意を表するものではございますが、しかし、国民が気軽にいつでも司法にアクセスできる体制を地域を問わずに保障すべきことを適えるには、残念ながら質・量ともに、なお不足するものと言うべきでありましょう。

 また、増加が図られつつある弁護士人口が、その地域的偏在の解消に直接結び付いていない現状からも、このままでは国民が地域を問わずに、弁護士に気軽にアクセスできる状況が近い将来に実現するかは、極めて懐疑的に受け止めざるを得ません。

 したがいまして、冒頭申し上げました国民の要求に応じるために、国民の理解が得られる範囲で、現に地域社会に存在する司法書士などの隣接法律職種を活用すべきことが求められるものと考えます。とりわけ、司法書士については、国民の期待は相当程度高いものと自覚いたしております。

 ここで、私ども司法書士制度につき、若干お話し申し上げたいと存じます。

 司法書士制度は、明治5年公布の「司法職務定制」より、130年の歴史を有しております。その制度の歴史的変遷については、資料1を御参照いただきたいと思います。長い歴史の当初より、司法書士は裁判所に提出する書類作成の担い手として位置づけられてまいりましたが、ここでは近年の制度的変化に焦点を絞って申し上げてまいります。

 昭和31年の全国統一認可選考試験制の採用は、司法書士の質的転換をもたらし、その後の国家試験制採用とともに、職責、業務規定などの整備に結び付いてまいりました。さらに、昭和60年には司法書士の登録事務が日本司法書士会連合会に委譲されたことにより、現在の団体自治の基盤を確保するに至っております。

 平成12年6月1日現在の司法書士会員数は、全国で1万7,112名であり、その職務が国民生活と強く結び付いた登記制度にも関わるものであることから、地域的偏在はなく、全国にくまなく活動基盤を有しています。

 司法書士試験は、年1回国家試験として実施され、試験科目は民法、刑法、商法、民事訴訟法、民事保全法、民事執行法、不動産登記法、商業登記法などであり、事実に基づいた総合的な深い法的思考力が問われております。昨年の申込者は2万1,839人、合格者は577名で、合格率は2.6%であり、かなり高いハードルをクリアーすることになります。

 また、日本司法書士会連合会では、「中央研修所」を組織し、国家試験合格者ばかりではなく、法務大臣認定による資格取得者を含めた、すべての司法書士を対象とする自主的な組織研修体制の強化を図ってきております。これは団体自治の一環として、自らの費用で、自らの後継者を養成することを目的とするものでございまして、裁判所、法務省、弁護士会など、関係諸団体の御協力を得て、現状一定の司法書士の養成過程としての機能を果たすに至っております。なお、資料7と8では、最近の研修プログラムなどをお示しいたしておりますので、御参照いただきたいと存じます。

 次に、司法書士の職務の実際を申し上げたいと存じますが、お手元の資料2を御参照ください。

 司法書士職務は、登記事務と裁判事務とに大別されます。登記事務には不動産の登記と会社の登記とがあります。このうち不動産登記は、土地・建物の売買代金や、融資金の支払いなどと引き換えになされることが多く、手続が取引と不可分の関係に置かれております。このことは、土地や建物の取引を巡る最終の決済場面には、必ずと言ってよいほど司法書士を同席させる今日の取引慣行が、最もよく表しております。したがいまして、司法書士は、国民の権利の保全はもとより、不動産取引の安全についても重要な役割を果たしております。また、会社登記に関しましては、手続に至る様々な法律相談にも応じており、中小事業者にとっての法務部的役割を果たしております。

 一方、裁判事務については、依頼者の困り事の相談に始まり、事情の聴取を通じて紛争の争点を抽出し、法律要件、事案の整理を証拠の点検とともに行い、訴状などの書類を作成いたします。依頼者に作成した書面の趣旨、内容、手続上の位置づけなどの説明をし、理解を得る、いわゆるインフォームド・コンセントは、司法書士の裁判事務では必須の作業でございまして、事案の解明のためには、現場を見ることも多く、必要に応じて法廷へ傍聴にも出向いております。

 司法書士の職務は、その外形からは最終的に各種手続に必要な書類の作成に収斂されるため、表面的にはそれのみが業務のすべてであると考えられがちです。しかし、実際には、依頼者からの相談を端緒として開始される様々な法律事務の積み重ねの上に、それが成立しているのでございまして、その内実は、国民の日常生活に起因する法律問題を中心とした広い範囲に及んでおります。

 一方、司法書士は、今日に至るまで、そのときどきの国民の求めに応じ、社会的な問題にも取り組んでまいりました。未曾有の被害に見舞われました阪神・淡路大震災時には、被災地域住民の抱える切実な問題に対処するため、自らも被災者であった地元司法書士会員ばかりではなく、全国会員の有志が被災地域に入り、約2年間で2万5,000件余りの法律相談活動に当たりました。一方、今日的なものでは、少額事件裁判手続の普及活動、クレジット・サラ金被害者救済活動、消費者教育の実践活動などへの取り組みをいたしております。また、このたびの成年後見制度に関する法律制定に合わせ、後見人・後見監督人の供給や高齢者などの権利を擁護するため、司法書士を正会員とする社団法人成年後見センター・リーガルサポートを設立し、全国的な活動を開始いたしました。さらに、消費者契約法の実効性を確保するための活動にも取り組んでいるところでございます。また、司法委員・調停委員の就任など、司法分野における地域社会への貢献も相当数に上ります。これらの取り組みに関しましては、資料9から11までの記事を後ほどにでも御覧いただければと存じます。

 次に、司法書士に対して求められる改革点につき、申し上げたいと存じます。

 国民がこの司法制度改革に第一に求めているものは、少額な事件についての権利の実現や救済、日常家庭生活から生じる法律問題についての適切・迅速な処理の担い手としての法律実務家が、国民の身近に存在することであると考えます。司法書士は裁判所に提出する書類の作成事務を通じ、本人訴訟を支援してまいりました。全国市区町村の約65%、簡易裁判所所在地の98.9%に存在しております。

 このように、弁護士へのアクセスの障害を緩和し、さらには取り除くことができる立場にある司法書士を活用すべきことは、国民的な要求と言えると思いますし、司法書士職務の実情からは、その国民の要求を満たすべき資格者として、現に位置づけられているものと自覚いたしております。

 したがいまして、司法書士を今以上に活用すべきことが真剣に検討される必要があります。「法律相談に応じることのできる制度的保障」、「簡易裁判所における民事訴訟、調停・和解事件の代理」、「家事審判事件・家事調停事件の代理」、「民事執行事件の代理」、これらが司法書士の職務に付加されることにより、司法書士はその職責を十分に全うし、国民のため、きめ細かな法的支援をすることができるようになるものと考えます。国民的視点から司法書士の活用を考えるべきであるとする、元最高裁判事でいらっしゃいます大野正男弁護士の御論稿を資料12でお付けいたしております。是非、後ほどにでも御参照いただきたいと存じます。

 最後に、このような司法書士に対する改革を実現するためには、試験制度の改善、司法書士の養成制度の整備や、自治機能の強化などの制度的な手当が必然的に図られなければなりません。

 同時に、団体として研修の更なる充実を図り、個々の司法書士の実質的な資質・能力の向上とともに、倫理の高揚、団体の自律性などを不断に強化してまいります。

 司法書士が国民に身近な法律実務家として、全国各地で地域に根差し、国民の権利の保護と、救済の担い手として研鑽努力をなし、その責務を全うすることを強く決意しているものでございます。

 よろしく御検討くださいますようお願い申し上げ、私どもの意見といたします。ありがとうございました。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。それでは、ただいまの北野会長の御説明について御質問があれば、どなたからでも結構でございますので、よろしくお願いします。

【髙木委員】司法書士さんのお仕事で登記業務と裁判業務という二つ、その裁判に関わるお仕事をやっておられる方の割合は、司法書士会員数が1万7,000人くらいとおっしゃいましたが、どれくらいの方が裁判を実際にやっておられるんですか。

【北野会長】司法書士の職務は、最初は裁判事務から始まったわけなんです。裁判所に提出する書類をつくることを前提にです。したがいまして、職務の上でそれは当然全員できなくちゃいけないんですけれども、まだ、私の方が全員できるということを確認しておりませんが、裁判書類の作成はやっております。

 司法書士の研修でありますけれども、中央研修所を中心にして、新入会、あるいは新しく資格を取った方に対して、今、研修をしていますが、それについては裁判事務を中心にして、研修を重点的にやっているところであります。それが12回になりまして、その研修を受講いたしました者が、既に6,000人を超えておるところであります。

 したがいまして、従来からやっております司法書士を含めますと、私は、1万人は裁判事務をやっていると思っているところであります。

【髙木委員】今の御主張だと、例えば、代理権が認められた場合、どの程度の方々がそういう仕事に就いていかれるだろうか、あるいはどの程度の方々が代理権の行使を含む仕事がおできになると思っておられるのか。

【北野会長】法律事務は、登記につきましても、必ず法律的な事務、判断というのはあるわけでありますので、法律事務は全員がやっていると思っているところであります。裁判手続に関して、訴状等をつくったり、今度は代理をすることになります。私たちは裁判所に対する書類を作成したりして、裁判事務能力はあると思いますけれども、今度要求いたしております代理ということは、未知のところであります。この法廷内の技術や技能を全会員を対象にして、研修をきちっとしてまいりたいと思うところであります。研修等を含めて、その技術、技能を習得した上で裁判事務を遂行したいと思っているところです。

【吉岡委員】先ほどこの御説明の中で、司法書士の試験が大変難しいという、合格率が2.5%とおっしゃいましたか。それは今、新しく司法書士の資格をお持ちになる方が対象なんでしょうか。

 司法書士になるのに試験がとても難しいということですね。それだけ勉強していらっしゃるということだと思うんですけれども、その試験を受ける方というのは、比較的新しい方たちなんでしょうか。

【北野会長】はい。まさにきちっとした記録はとっていないんですけれども、大体、大学の法学部を卒業いたしまして、一番合格が高いのは、2から4年くらいの間に取る方が非常に多いと思います。したがって、大学生のときから司法書士を目指している方がほとんどの受験者だと思うんです。

【吉岡委員】難しいという面では弁護士さんになるのも同じくらいというか、もっとかもしれませんけれども、合格率から言っても難しいと思うんですけれども、それで司法書士の方を目指すというのは目的がちょっと分からないんですけれども。

【北野会長】私はよく若い仲間と話をするんですけれども、やはり弁護士職には多くの意識があるわけですが、我々がなぜ司法書士を選んだかと言いますと、依頼者の方とか、事務所に来られる方と同じ目線で、同じ立場でお話ができて、それで本当に心を通わせて事務を処理する、この形が好きだということがありますし、その中で二人三脚でやりますけれども、責任を持ちながら相手の意思を聞きながらという、意思の統一を図りながらやっている職業ということに案外魅力を感じていると思うんです。それによって、地域に対していろいろな個人的なつながりというものが増えてくるといううれしさはあるわけだと思います。

【山本委員】資料の4-1を拝見させていただきますと、お仕事は登記の実務でございますとか、あるいは裁判の補助でございますとか、かなり過疎地域というか、表現は悪いんですけれども、そういう地域にまんべんなくおられるわけですが、1万7,000名おられる方々が現実に司法書士という職業のみで経済的に成り立っておられる方々ばかりではないような気がするんですけれども、資格はお持ちになっているけれども、実際にはほかの仕事をも兼任したり、事実上資格だけお持ちになっていて余り活動されていないとか、そういう実体もかなりあるんじゃないかなという気がするんですけれども、そこらの状況はいかがですか。

【北野会長】司法書士単独の資格かどうかということなんですけれど、司法書士に関係する、例えば、土地家屋調査士であるとか、行政書士であるとか、そういう資格を持っておる者はかなりおりますけれども、ほかの会社に勤めて司法書士というのはできないわけでありまして、ですから、生活が苦しいか楽かどうかというのは、楽な方は少ないんですけれども、それでも皆それぞれの事務所を持ちながらやっている者がほとんどということになります。これは地方においても同じことになります。

【山本委員】それから、500人か600人、毎年着実に増えているわけでございますか。

【北野会長】それは増えていないんです。司法書士の増加が、案外、隣接職能の中では低いと思います。亡くなられたり、高齢で辞められる方がいらっしゃいますので、その相殺勘定になってまいります。

【山本委員】1万7,000名くらいいるだろうと。

【北野会長】少しずつ増えていっている状態です。

【水原委員】先ほど髙木委員からお尋ねがありました1万7,000人のうち、裁判事務に携っておる者はどれくらいかとお尋ねしましたら、約1万人だとおっしゃいました。私が伺ったところでは、やはり司法書士さんというのは、感覚的に登記事務、不動産登記が専門で、約9割が不動産登記の事務に専従しているのではないか、残り1割程度が裁判事務専門と言いましょうか、裁判事務に関与していらっしゃるというふうに聞いたことがあるんですが、私の理解は間違っておりましょうか。

【北野会長】決してそんなことはないと思います。さばく量の多少はあると思いますけれども、必ずと言っていいくらい裁判事務は司法書士はやっておるということです。

【水原委員】それに関連してもう少し、確かに本人訴訟が相当増えまして、先ほど会長から御説明があったとおり、弁護士選任率は非常に低いことはよく分かっております。その部分、本人訴訟を助ける意味で司法書士の先生方が書類の作成、相談等々、裁判所から説明を求められたときには、その説明にも応じていらっしゃるということは非常によく分かるんですけれども、これは簡易裁判所における民事訴訟についてはよく分かりますが、例えば、家事審判とか家事調停事件の代理まで認めろという御主張でございますが、この家事調停、それから家事審判の内容は非常に専門的な高度な法律判断を必要とするような案件も相当あるやに思われるんです。それに対しての実力担保と言いましょうか、そういうものは今後どういうふうにお考えになられるんでしょうか。

 もう一つそれに関連して、司法書士の先生方には全員にこれらの代理権を認めろという御主張なんですか。例えば、もう一遍司法試験のような厳しい選考を経ることが必要だとお考えか、司法書士試験に受かった者は全員こういう資格を与えることが前提とお考えなのか、その点をお尋ねしたいと思います。

【北野会長】家事、民事執行もということになると思いますけれども、一つ例を取りますと、相続の問題が発生しますと、そこでいろんな案件が出てくるわけであります。そうすると、家庭裁判所において、特別代理人の選任であるとか、遺言でも検認もありますし、いろいろな作業が家庭裁判所にお願いする部分が出てくるわけです。日常の事務としてそれを行っているわけでありますけれども、それには代理が伴いませんので、そこに関しては、我々に任されたと思いながらも本人が行かなくちゃいけないということでありますので、そこを依頼者の要請どおりに私たちが職務としてきちっと遂行されるような制度の中に家庭裁判所における代理をお願いしたいということでありますし、民事執行も同じことであります。本人の名前を借りて民事執行の手続をいたしますけれども、それがどうしても本人が出てこなければ駄目な場合が出てくるわけです。これについても実質的に今手続をやっておりますので、それを代理という形で全部お任せいただいたら、債権回収も早いのではないかという前提で、このお願いを今しているところです。

 それから、確かに今代理をお願いいたしておりますけれども、これについては、我々は未知の世界でありますし、経験のないところであります。これについては、研修をきちっとやった上で、研修をクリアーした人に対して、代理権を与えていただきたいと思っているところです。

【水原委員】それは研修だけでよろしいとお考えですか。それとも、研修が終わった後にもう一度試験をして、そして合格した者に与えられるとお考えでしょうか。

【北野会長】研修効果というものをどのように見ていただくか、また御判断いただきたいと思いますけれども、これは司法書士職が代理するということでありますので、試験よりは効果の方で十分検討していただければありがたいと思っています。

【北村委員】今のに関連しまして、研修についてお伺いしたいんですが、研修はどなたがおやりになるというふうにお考えなんでしょうか。

【北野会長】代理が我々の権限になるということが、もしそうなりましたときでよろしいんでしょうか。 そういたしますと、やはり私たちはきちっと評価を得られる形の研修というものを相談しながらやらなくてはいけないと思います。私たちは、どんな研修でも自らやる予定でおりますけれども、果たしてそれで認められる研修になるのかどうかということは、やはり御意見をいただきながら、きちっと対応してまいりたいと思います。

【北村委員】今行っていらっしゃる研修は、例えば、訴訟実務の練習というのは、どなたがやっていらっしゃるんですか。

【北野会長】先ほど申し上げましたように、いろいろな講師の方をお呼びいたしております。最高裁判所、法務省、弁護士会からも来ていただいて、いろいろなノウハウを教えていただいております。実務に役立つものを中心にやらしていただいているところです。さらには、倫理研修もそこに組んでおるところです。

【髙木委員】先ほど水原さんがお尋ねになられたこととも関係するのかもしれませんが、試験を受けなくてなっておられる人が3分の1か4分の1かおられるということなんですが、そういった方の間に、能力差という言い方がいいのかどうか分かりませんが、その辺がどんな御認識なのか。

 それから、代理人にとおっしゃられるわけですから、依頼者の利益というか、実務家としての法律的知識やら実務能力から、依頼者の利益に応えるという意味で、職業倫理みたいなものも問われるんだろうと思いますが、とりわけ依頼者との利益相反などの問題はどのようにお考えなのか。

【北野会長】利益相反の関係は、登記事務と裁判の代理との関係だろうと思いますので、その方から申し上げさせていただきます。

 登記申請の代理と言いますのは、準司法手続だと思いますが、これは登記をすることによって、いろいろな権利が確定するわけではないわけであります。一旦権利が確定したものを公示する役割が登記申請ということでありますので、これは双方代理は認められるという前提であります。現に今、弁護士さんでも登記をするときは片方の代理はしないで、双方の代理でやっておるところであります。

 それから、裁判事務の代理でありますけれども、そごはいたしません。今、私たちが裁判書類を作成するだけの範囲においても、依頼者の反対の側のことについては一切やりません。依頼者に対しての支援をするだけであります。したがって、これは代理を得たからと言っても、同じスタンスで動くことに当然ならなくてはいけないということです。

 倫理の問題でありますけれども、専門家としては倫理が必要だと思います。司法書士は法的にきちっとしたものがない部分だけ、自治として倫理については神経を使い、個人の義務を課しているところであります。司法書士倫理とか、執務規範基準を制定して、自らがそれを守り、自ら律する姿勢を今とっているところであります。

 それから、大臣認可の方がいらっしゃるということで、その能力差のことでありますけれども、これは法律上は、その大臣認可をされる時点では、行政官、大臣認可を受けられる方は法務事務官に限らず、裁判所事務官、それから検察事務官の職にあった方もその前提になるわけであります。そして、大臣がこれは司法書士試験と同じレベルがあるんだということを認定されて認可されているところであります。聞くところによりますと、内部の試験も行われているということも聞いておるわけでありますので、我々は試験合格者と同じ位置づけを持って対応いたします。そして、先ほど申しました、新人研修など、同じ状態で試験合格者と同じ形で進んでいただくということにいたしております。能力差というのは、研修のところで、あったとしてもクリアーできるような体制を組んでいきたいと思っているところです。

【水原委員】訴訟代理権が付与されるということは、国民の権利義務の保全のためには極めて重要な権限が付与されるということになろうと思います。司法試験を合格した者というのは、実体法は勿論のこと、手続法もちゃんと試験科目で選考された上で、なおかつ今は1年6か月、今までは2年間の裁判所、弁護士会、検察庁等々の実務を経験した上で、二次試験を受けて、そして資格が与えられると。初めて弁護士になることが与えられる。

 ところが、今お考えのように、司法書士試験に合格した者は連合会の主催される研修を受けただけで、なるほど簡裁の事件の代理しか認められないということではございますけれども、それで本当に全員に認めていいものでしょうかという疑問を率直に持つんですけれども、その点は相当絞ることをお考えになっていらっしゃらないんでしょうか。

【北野会長】確かにそれは考えておるんですが、私どもは研修を中心にして、その能力がない部分というか、経験のない部分は絶対にカバーしなくちゃいけないと思っているところです。それにもしそぐわない司法書士であれば、また、別の方法を考えなくちゃいけないのでありますけれども。

【竹下会長代理】改革の要点というところで、御提言というか、言っておられる①から④のところについて、ちょっとその趣旨を確認させていただきたいのです。

 ①の「法律相談に応じることができる制度的保障」、これは恐らく登記事務でも実際には法律的な問題について相談的なことをやりながらでなければ遂行できないので、これは恐らく司法書士の皆さん全員に認める必要があるという御趣旨でしょうね。そのために司法書士法なり弁護士法なりの改正が必要だということになりますね。

 ②から④までは、今のお話ですと、研修を受けて訴訟追行能力の担保と言いますか、裏付けを得ることによって認めてもらうというわけですけれども、その研修は先ほど水原委員がおっしゃったことと同じことになるのかもしれせんが、全員に受けさせて、全員にこういう資格を認めるという方針でおられるのか。それとも、研修を受ければこういう資格もプラスアルファとして認めて欲しいというお考えなのか。どちらなのでしょうか。

【北野会長】まだそこまできちっとは議論をしていないんですけれども、いずれにしましても、能力がなければできないわけです。それと、司法書士という資格は今でも厳然とあるわけでありますので、そこの兼ね合いからいきますと、受けたことを前提にして代理を取得するということでありまして、全員どうしてもということが言えるのかどうか、疑問には思っているところです。

【佐藤会長】まだいろいろございましょうけれども、時間が予定より少しオーバーしてしまいましたので、この辺で終わりにしたいと思います。せっかくの機会で、もうちょっと聞きたいということがおありかと思いますけれども、この辺で打ち切らせていただきます。

 本日はどうもありがとうございました。

【北野会長】どうもありがとうございました。

(日本司法書士会連合会関係者退室、弁理士会関係者入室)

【佐藤会長】それでは、次に弁理士会の村木清司会長からお話をお聞きすることにしたいと思います。村木会長、今日は本当にどうもありがとうございました。15分ないし20分でお話しいただき、あと質疑、全体で30分でと考えておりますので、よろしくお願いいたします。

【弁理士会村木会長】弁理士会の会長の村木でございます。この司法制度改革審議会で話す機会を与えられましたこと、大変感謝しております。

 今日はお手元にお配りした資料二つでお話をしたいと思います。一つは、「第24回司法制度改革審議会提出資料」と書いたもの。それから、その補充で4枚くらい「『Ⅴ.提言の理由③』の補足説明」というのがございます。この二つの資料で説明させていただきます。

 私ども弁理士という職業を通しまして、産業の発展、あるいは日本の発展、繁栄ということをいろいろ考え、そういう意味で、職業としましての自負を持っております。

 最近では、知恵の時代、あるいはインターネット等、産業技術立国、あるいはIT革命、中小企業、ベンチャー、PL法支援、そういうことがいろいろ言われております。その中で科学技術が、日本、あるいは世界の繁栄の一つの鍵と申し上げてよいのではないかと思っております。

 私ども弁理士に関しましては、4月18日に新しい弁理士法が成立し、来年の1月6日からこれが施行されるようになっております。この新しい法律によりまして、一応、弁理士制度もヨーロッパ並みということは言えると思いますけれども、まだ米国並みというふうには言えないと考えております。

 弁理士法は改正されたのでございますけれども、知的財産の紛争解決に関しましては、この司法制度改革審議会の審議経過を見守るということで、これを見守ることになっております。実際には、平成11年12月22日の工業所有権審議会法制部会の中山信弘部会長から佐藤会長あてに、「我が国司法制度改革への要請」という文書が手渡されたことは記憶に新しいことではないかと思います。

 このような状況の下で、私ども弁理士会は、次のような提言を当審議会にしたいと考えております。お手元の資料の5ページです。

 ここに、私どもが司法制度改革審議会に是非提言させていただきたいということが4つ書いてございます。1番目と2番目が全体的な話、3番目と4番目が私どもの具体的な提言でございます。

 第1の提言は、「知的財産に関わる紛争を、高い信頼性をもって迅速に解決でき、かつ、利用し易い司法制度の速やかな整備がなされるべきである」ということでございます。この提言は、国民が利用しやすい司法の実現及び国民の期待に応える民事司法の在り方という審議を、単に弁護士の隣接法律専門職種という面からだけではなく、知的財産の紛争解決という側面から全体的に見直していただき、見ていただきたいという提言でございます。

 2番目が、「知的財産に関わる訴訟に関し、専門分野に精通した裁判官の配備、専門参審制の採用について十分に検討されるべきであるとともに、専門分野に精通した訴訟代理人を容易に選任できる制度を導入すべきある」という提言でございます。第2の提言では、知的財産の紛争解決の中でも、裁判制度に関して、裁判官、あるいは専門参審制、訴訟代理人、それぞれについての専門分野に精通した人を採用ないし選任することが、先ほど申し上げた目的を達成するために必要であるという提案でございます。

 第3番目が、これは具体的な提案でございますが、「知的財産に関する権利の取得からその活用にまで精通した弁理士を、適切な能力担保措置が講じられることを条件にして、知的財産に関わる訴訟における訴訟代理人に組み入れるべきである」、こういう提言をさせていただきました。この第3の提言は、知的財産に関する訴訟、権利侵害訴訟と言っておりますが、技術と法律に精通し、かつ権利の創出、権利の取得、活用までに精通した弁理士を、侵害訴訟の代理人として組み入れることが、先ほど申し上げた制度の目的にかなうのではないかという提案でございます。

 4番目の提言でございますが、「知的財産に関わる紛争についての裁判外紛争処理(ADR)に関して、弁理士を有効に活用する環境を整えるべきである」という提言でございます。この提言は、紛争解決は裁判と裁判外紛争処理とに分けられますけれども、裁判外でも、技術と法律に精通した弁理士を、和解や仲裁による紛争解決に組み入れることが、先ほど申し上げました国民が利用しやすい、あるいは国民の期待に沿う司法という目的を達成するために必要であるという提言でございます。

 この中で特に3と4が私ども弁理士会の具体的な提案でございます。

 提言の理由は、5ページから9ページに書いてございます。後ほどまた言及させていただきます。

 次に、なぜこのような提言をするかという説明をさせていただきたいと思います。弁理士の業務は国内だけではなく、国際的なものであるという、非常に大きな特徴がございます。これから御説明する中には、外国が含まれているということで御理解をいただきたいと思います。

 お配りした資料の2ページ目をお開きいただきたいと思います。

 ここでは弁理士の主たる業務が書いてございます。一番下のチャートで簡単に御説明させていただきます。弁理士の業務というものは、知的財産の創出。それから、創出された知的財産というものを権利化する、知的財産権の取得。それから、権利化されたものについて利用、活用し、また、紛争解決をするというような形で、一番下に書いてございますように、知的財産創造サイクル、そういうような言い方をしております。

 知的財産の創出というのは、そこに書いてございますように、発明、デザイン、ネーミング等を開発、創作し、それらの支援をする、あるいは鑑定をする、評価をするということで権利を創出してまいります。創出させた権利を日本の特許庁、あるいは外国の特許庁等に提出をいたしまして、この権利化の手続をいたします。この権利化の手続までが今までの弁理士の大きな業務でございましたが、このたびの新しい弁理士法では、権利の利用、活用というところが強化されております。

 弁理士会と日弁連で共催しています工業所有権仲裁センターというのがあるわけでございますが、そこでの仲裁、和解の手続でありますとか、水際における不正商品の差し止め請求、あるいは利用活動に関しましては、契約の代理であるとか、そういうことが今回できるようになりまして、知的財産権の利用・活用及び紛争解決について、新しい法律の改正により一歩前進をしております。

 ただ、法律の改正の際に、侵害訴訟代理、あるいは一般的な紛争解決につきましては、当審議会、司法制度改革審議会の審議結果を待って、それによって今後を決めていこうということで、先ほど申し上げましたような要請書がこの審議会に提出されております。

 以上のような業務を行うのに、一体弁理士はどんな構成になっているかというのを、次の3ページでちょっと御覧ください。3ページに記載してございますように、6月終わりの弁理士総数は4,327名でございます。下に書いてございますが、そのうち試験合格者が75%、弁護士資格に基づく者が6.2%、特許庁審査官の経験を有するという方で、そういう特許庁有資格者が16.1%、そのような構成になっております。

 それから、試験については書いてございませんが、一言付言いたしますと、一昨年、平成10年度は146人が合格をしております。昨年、平成11年度は211人、約5割増しの211人の弁理士が合格をしております。そのうち理工系出身者が84%、法文系出身者が15%という形になっております。

 続きまして、知的財産に関する紛争解決について御説明したいと思います。

 知的財産の重要性が増していること、それに伴ない紛争が増えており、それを迅速、かつ適正に解決する必要があることについては、皆様特に御異論はないと思います。

 9ページをお開きください。一番下にチャートが書いてございます。知的財産の紛争に関しまして、裁判所による解決、それから広い意味でのADRによる解決、この二つがございます。裁判所による解決は訴訟即ち裁判による解決と調停、それから裁判外の紛争解決ということでは、工業所有権仲裁センター等の団体による調停、仲裁、和解というのと、そういう機関を通さない当事者間の解決、あるいは代理人を通しての当事者間の解決というものがございます。

 4枚組の追加資料がございますけれども、4ページをお開きください。これは特許庁が平成8年に国内企業200社に対して行いました警告、あるいは訴訟件数についてのアンケートのデータでございます。細かい点は余り触れませんけれども、簡単にお話をいたします。

 上は自社が訴える場合、下が自社が訴えられる場合ということで、左側が国内権利に基づく場合で上下に書いてございます。どのように読むかと申し上げますと、上の表で全体と書いてございますが、紛争があって警告をしたというのが1,847件、その中で訴訟までになったというのが63件、実際に紛争、要するに警告を紛争と考えますと、実際に訴訟になるのは大体3.4%くらい。それから、自社が訴えられる場合も、下の表でございますが、訴訟になるのは大体3.6%くらいだと。それから、同じ表で外国の場合は、警告をした場合が8.9%、警告を受けた場合が14.4%ということで、外国の方が警告を受けると、あるいは警告をすると訴訟になる割合がかなり高いということでございます。

 この表で何を申し上げたいかと言えば、紛争があって、その中で裁判になるのは大体3%か4%くらいである。ほかの96~97%というのは、当事者間、あるいは代理人間で解決されているということでございます。

 それから、1枚前をめくっていただきまして、これは何度か出てきているようでございますので、御存じかと思いますが、知的財産権侵害訴訟件数です。地裁のケースでございますけれども、平成1年から平成9年、裁判になったケースというのを見ますと、いろいろ曲折ございますが、331から590、563、要するに1.8倍から2倍に近いくらいにこの10年間で伸びを示しています。非常に知的財産に関する訴訟が増えています。

 何を申し上げたいかと言えば、訴訟件数が増えておりますが、紛争それ自体、先ほど申しました30倍に近い裁判に至らない紛争も、同じように増えているということを申し上げたいわけでございます。

 このように増加する知的財産の紛争をどうやって解決するかということが、現在問われている問題であると思います。これも毎日のように新聞やテレビで、知的財産の裁判や、あるいは日米間の紛争が報道されております。これを解決する制度としては、先ほどお話ししましたように、裁判での解決、あるいは裁判外での紛争処理、あるいは当事者間での和解というような方法がございます。

 そのために裁判所、法務省、あるいは代理人の団体であります日弁連等によっていろんな努力がなされております。しかし、代理に関しましては、構造的に大きな問題があって、単なる努力だけではうまくいかぬのではないかと考えております。これは提出資料の参考の4というところがございます。ちょっと御覧ください。

 これは知的財産に関しまして、紛争解決をする代理人としての資格者が極端に少ないことを示した表でございます。弁護士さんの中で、知的財産に関する紛争に関わっておられる方は、侵害訴訟その他の紛争解決に携わっておられる弁護士さんは大抵弁理士登録をされておられますが、これは平成10年の統計でございますが、弁護士で弁理士登録されておられる方は258人おられます。その中で技術的な背景、要するに工学部出身等の理系の出身者はわずか1割、約30人弱でございます。全体でも約260人で、技術的背景を持たれた方がその中の30人くらいですが、この方々が知的財産に関する紛争解決をやっておられます。

 これを米国と比較をしてみたいと思います。その下の表がございます。一番左の端にパテント・アトーニーと書いてございます。これは知的財産に関する米国の資格で、これはパテント・エージェント、要するに技術的背景を持って特許庁に対する手続を行う資格と、アトーニー・アト・ロー即ち弁護士資格との両方を合わせ持った方が1万5,829人、約1万6,000人おられます。この方々が知的財産の創出、権利取得、それから紛争解決をやっております。それを日本で比較しますと、弁護士さんが、これも平成10年ですから多少数字が違いますが、約1万7,000人おられます。その中で弁理士登録された方が258人、約300人弱でございます。その中で技術的な背景をお持ちの方が約30人。これがあと10年経つとどういうふうになるであろうか。倍になったとしても、技術的なバックグラウンドをお持ちになられた方は、せいぜい60人くらいにしかならないんではないかというふうな危惧を持っております。

 これを構造的にどういうふうに解決したら良いのかということが、現在の日本、知的財産権の紛争において問われていることだと、私は理解をしております。この問題に対しまして、弁理士会では、先ほど述べましたように3と4の提言をしております。提出しました資料の8ページをお開きください。

 これは先ほど申し上げた提言3の内容とその理由が書いてございます。私どもは技術と法律に精通しております弁理士を、侵害訴訟代理、あるいは紛争解決の中で活用していただきたいという提案をしておるわけでございますけれども、それは単にそのままということではなくて、必要な試験と研修、それから確認試験というような形で今の紛争解決に耐える形にした資格で紛争解決の場に加わってまいりたいと考え、提案しております。

 次の次のページの10ページをちょっとお開きください。私どもの現在検討しております方法は、弁理士登録をした者の中で所定の年数と言いましょうか、実務能力のある者について、紛争解決、あるいは訴訟代理を行うのに必要な基礎的な知識、それから研修を行う。研修を行った上でその成果の確認試験を行う。その上での実際の紛争解決という形で、訴訟代理人として実際に活動していくということを提案しております。そのために、カリキュラムはどうするか、場所はどうするか、お金はどうするか、いろんなことを現在検討しておりまして、当審議会の方向が決まれば、それなりの方向でそれを具現化、実現化していきたいと考えているところです。

 それから、同じく4、5枚先の参考5というのがございます。今申し上げたのは、弁理士会としての意見でございますけれども、これは特許庁が平成11年度、昨年度に行いました企業に対するアンケート結果でございます。その中の企業からの結果によれば、弁護士と弁理士が共同して代理を可能にするのがいいのではないかというのが41%、弁理士単独でも訴訟代理を可能にするのがいいんじゃないかというのが43%、いずれにいたしましても、弁理士が訴訟において代理権を持つということに賛成されておられる方、期待されておられる方が83%もおられるわけでございます。ですから、これは単に私が申し上げているということではなくて、社会的なニーズとしてこういうことが具体的に表されていることであると思います。

 それから、後ほど質問が出るかと思いますので、前もってお話を申し上げますが、侵害訴訟代理という形におきまして、現在、弁理士は補佐人として携っております。約7割の弁理士が補佐人として携っています。なぜ補佐人では不十分なのかというのが多分問われようかと思いますが、まず一つ、事実的に申し上げますと、昭和13年から60年間、この補佐人という制度がありますが60年間やってきて依然として問題があるというように理解をしております。

 それから、当審議会の中でも、法曹以外の専門家をどういうふうに活用するかということが随分審議されておりますが、法曹以外の専門家の活用として、私ども60年の経験を持っておりまして、単なる法曹以外ということでの参加では不十分ではないかというふうに考え、訴訟代理人という形で直接的に加わっていくことが知的財産に関する紛争解決という面で最善の方法であろうと考えております。

 それでは、補佐人ではどうして駄目なんだろうかという、もう少し具体的な内容が問われようかと思います。

 まず最初は、先ほど申し上げましたように、弁理士登録されておられる弁護士さん、258人おられます。その中で、技術的なバックグラウンドを持っておられる方が30人くらい。まず、訴訟になったときあるいは紛争解決をしようとしたときに、ユーザーはどうやって代理人を選ぶのか、そのアクセスが非常に問題でございます。なかなかアクセスがうまくできません。

 それから、現実問題として、私ども権利の取得から活用、ずっと携わっておりますけれども、紛争解決になると弁護士さんにバトンタッチをいたします。そのときにまず弁護士さんに事件を理解してもらう必要がございます。技術を理解してもらい、事件の背景を知ってもらい、依頼者との関係、その他いろいろ説明をして、その上で事件を引き受けていただきます。ですから、かなりのケースでは、訴訟を実際に起こすのはもっと早いタイミングがいいのではないかとか、時間の関係とかいろいろございますけれども、訴訟を起こすタイミングが随分遅れてしまうということが現実でございます。

 それから、また費用はその後、弁護士さん、あるいは補佐人として私どもが関連すれば、弁護士、弁理士、両方の費用が掛かるという問題があります。

 あるいは、訴訟に入りましても、どうしてもイニシアチブを弁護士さんがお取りになりますので、技術的な理解の問題、法廷技術と実際の技術的な側面、特許の側面、そういうのはなかなかマッチングしませんで、訴訟指揮、あるいは訴訟の進行に多少問題が起こっています。

 これが侵害訴訟におきます弁理士会の基本的な主張でございます。

 さらに、もう一つ申し上げたいのは、訴訟になるのはほんの一部で、実際には訴訟の30倍もの紛争があるわけですけれども、この裁判外の紛争解決に当たる人材として弁理士を活用していただきたい。これは先ほどのような訴訟代理ということの試験・研修ではなくて、自主的な研修によって、我々が身近に起こる紛争の解決者として知的財産の解決に当たるということを実現したい。これはADRという側面でやっていきたいと考えております。現在、工業所有権仲裁センターというものを持っておりますけれども、いかにこれを活性化していくかということが、これから日本にとっても重要なことではないかというふうに思います。

 駆け足でお話をいたしましたけれども、今申し上げたように、訴訟代理に関わっていきたい。あるいはADRに関わっていきたい。それによって日本の知的財産権もうまく育って、国際的にも日本が十分に対抗し得る制度にしていきたいと考えております。

 私の説明は以上でございます。どうも大変ありがとうございました。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。それでは、ただいまの村木会長の御説明について、何か御質問があればどうぞ。

【山本委員】紛争から訴訟に発展するケースというのは3%ということでございますが、紛争の際の代理とか和解とかありますね。このほとんどは弁理士さんがおやりになっているわけですか。

【村木会長】実質的に相談を受けて、相談をしますけれども、最終的な和解の問題であるとか、最終的な解決のときは、弁護士の問題であるということで、そこは黒子に徹するという感じになっています。

【山本委員】入り口はとにかく弁理士さんですね。

【村木会長】はい。これもほかの資料に出ておりますけれども、紛争解決が起きたときに最初にだれに相談するかというデータがございますが、大体7割は最初に弁理士、特許事務所に相談する。その後でその紛争をどうやって解決するかということになってきます。

【山本委員】もう一つ、侵害訴訟について、弁理士さんがもっとコミットすべきだという御議論ですが、今度の弁理士法の改正で、例えば、その辺を意識したような改正、あるいは試験科目の変更とか、そういう措置は取られたんでしょうか。

【村木会長】直接的には入っておりません。民事訴訟法、民法を入れて間口を狭めると弁理士になろうとする人口が減るのではないか。多少そこは緩和しておいて、後の研修で十分にやってはどうかということです。弁理士会としては、義務とか奨励研修という形でやっていこうということで、そこに民法であるとか、不競法であるとか、不法行為法であるとか、そういうものを強化していく方向で考えております。

【水原委員】今の質問に関連してですけれども、確かに弁理士の先生方は知財に関する法律、知識、それから技術に精通していらっしゃることは間違いございません。ところが、訴訟代理権が付与されるとなりますと、審決取消の場合と違いまして、やはり訴訟手続というのは極めて技術的な問題になるわけでございます。それの実力担保というものについて研修だとか試験だとかいろいろ書いていらっしゃいますけれども、試験科目に民事訴訟法を入れない等々の問題を考えてみますと、それで十分に訴訟活動ができる力を持った方が選ばれるだろうかという疑問を持ちますが、いかがでございましょう。

 もう一つ、それに関連して、理工系の方が合格者の84%、その方々が訴訟手続を全く知らないとは申しませんけれども、やはり法律というのは法文系の者が相当強いんじゃなかろうかという点で疑念を感じますので、お尋ねするわけです。

【村木会長】ごもっともで、そういう指摘はたくさんなされています。今日お手元にお配りした10ページの研修、それから研修成果確認試験というのがございます。これは弁理士試験とは別の試験で、弁理士登録された者に対して、基本的な知識と、実務研修をし、その後は一応試験をして、これならいけるという段階で出していきたいという特別の研修をやっていくことを考えています。

【水原委員】今の関係でもう1点だけ。その試験、研修を所管なされるところは、どういうところをお考えでございましょうか。

【村木会長】申し上げるのは非常に難しいんですけれども、いずれにしても、国家的な資格で考えるということで、私どもとしては、それは通産省であったり、今の所管が通産省ですから、通産省、あるいは法務省に管轄していただければというふうに考えております。

【曽野委員】この中でたった一人、法的に無知な分野におります曽野綾子と申します。小説を書いております。

 数日前に私は、私のようなおばさん数人に会いました。ところが、弁理士さんというのはだれも分からない。これには驚きました。つまり、弁理士さんというものに、普通の生活をしておりますと、何の関係もない。みんな「ベンリ」というと便利という字を当てる。けれども、彼女らはみんな英語ができるんです。あとでパテント・アトーニーと言うとみんな分かる。これは本当に悪い訳ですね。ですから、特許保護士とおっしゃればみんな分かる。何をなさるお仕事の方か分からないという名前というのは、御一考いただければと思います。

【村木会長】その議論が何度もございました。この話、ここでするのは恐縮ですが、私も見合いをしたときに、自分の職業を説明するのに困りました。延々と説明しても分かってもらえなかった経験がございました。

 最初は特許代理業者とか、特許弁理士であった時代がございます。ただ、この数十年間弁理士で来たものですから、我々の会の中でもそれを特許弁理士と書くか、弁理士とするかという議論があります。歴史的に何十年も来たんだから、例えば、農協が外国に行って日本語になるという形で、弁理士という言葉を英語にしてしまえというような意見もございまして、今、弁理士の日を7月1日に定めまして、できるだけ全国に知っていただくような方法を取っておりまして、特に変えようという声が大きければ、今後変えることも考えますけれども、当面、弁理士を周知させる方が先かなと考えております。鋭意PRしてまいります。

【鳥居委員】二つお尋ねしたいんですが、別添資料の4ページに表がございますが、下の方に自社が訴えられる場合の、右側は外国権利にも基づくものですね。ですから、これは想像するに、訴えている方の原告は、外国のパテントを持っている人で、外国籍の人が多いと思うんです。これは法廷はどこなんでしょうか。

【村木会長】法廷は外国ですから、大体アメリカだとお考えていただいて良いと思います。

【鳥居委員】その外国の法廷に出ていっているのは日本の弁理士さんなんでしょうか。

【村木会長】我々も行きますし、弁護士さんも行きますけれども、実際に法廷に立つのは現地の外国の弁護士。パテント・アトーニーが立ちます。

【鳥居委員】現在、おおざっぱに言って、そういう案件を外国の法廷にまで出ばっていって扱える能力を持っている方は、日本で何人くらいおられるんでしょうか。

【村木会長】弁理士という意味ですか。

【鳥居委員】弁理士プラス弁護士の資格を持っておられる方です。

【村木会長】非常に少なく、せいぜい200の台じゃないでしょうか。

【鳥居委員】分かりました。それから元の資料の参考4というページに、今、お話しになられましたパテント・アトーニーというのがあるんですけれども、アメリカのパテント・アトーニーというのは、要するにバテントを扱うときにはこの資格を持っていないといけないんですか。

【村木会長】アトーニー・アト・ロー、いわゆる日本の弁護士さんは、例えば、特許庁に関する事件とかはできません。日本は弁護士であれば当然に弁理士はできる、税理士はできるとなっておりますけれども、アメリカの場合には逆で、逆と言うと語弊がありますけれども、特許を扱うのはパテント・アトーニーかパテント・エージェントでなければできません。

【鳥居委員】普通のサイズのローファームには両者がいるわけですね。

【村木会長】両者がおります。

【鳥居委員】どうもありがとうございました。

【髙木委員】先ほど御説明いただいた参考5の資料ですが、これを見ますと、共同代理、訴訟代理半々くらいになっております。また弁理士の方々が試験を受けられた実態、これは法務省などで教えていただいた資料によりますと、法文系の科目を一切選択しなくて合格された人の割合が約75%ということです。そこで10ページの研修確認試験、これがどの程度のレベルを考えられるかにもよると思いますけれども、その程度によっては共同代理というか、この辺が非常に現実的な選択じゃないかなという感じがしないでもないんですが。今日配っていただいたペーパーには訴訟代理人とだけしか書いていないんですが、共同代理等についてはどんな感じで受け止められるのでしょうか。

【村木会長】理想的な形としては、アメリカのパテント・アトーニーのように、知的財産の処理が最終的には単独でもできるという形が、理想的な形態だと考えております。

 その途中で、先生が今おっしゃられましたように、今までだと余りにも法律の知識が欠けるじゃないかとか、そういう問題が出てきますので、途中の方法としてはそういうことも考えられるかもしれません。今、私どもが提案しておりますものは、そういうのも考えられるんですけれども、一応司法研修というのを参考にしながらやっておりますが、その中で知的財産に必要と思われる基礎的な知識、実際の演習、これをやって単独でもできる形にしていきたいと考えております。

 それは一つは、ユーザーから見たときに、今まで補佐人しかできないというのは、紛争解決に関しては半人前でというふうに見られてしまって、紛争解決のときに全部を依頼する形になりません。すると、我々の方はどの段階かで弁護士さんに渡さなければいけない。そして、費用の面もあるし、いろんな過去の経緯とかもいろいろあるわけですけれども、そこは知的財産に関しては、最初の権利を取るところから最終的な紛争解決はできるという形にしておくことが一番望ましい。中途半端な資格はつくっておかない方がいいんじゃないかなと考えています。

【吉岡委員】利用者サイドから言った場合、とにかく訴訟というのはけんかですから、けんかをやったからには勝たないと駄目ですね。それで勝てるかどうかとなると、弁理士さんだけの訴訟代理で闘った場合と、弁護士さんと弁理士さんとが共同で闘った場合とではどうでしょうか。アメリカが中心ということですが、国際紛争になったときに、アメリカのローファームでは、両方の専門家が一緒になって一つの事務所をつくっているわけですから、当然に二人以上の有資格者が共同で理論武装なさるわけですね。そうすると、弁理士さんだけが訴訟代理人となったときに、利用者から見ると不利にならないかと思うんですけれども。

【村木会長】ごもっともで、勿論一緒にやるつもりです。ただ、弁理士は単独ではできないのは問題ですが、実際には一緒に行うことになると思います。ワン・ストップ・サービスですので、それはアメリカと同じようにいろんな専門家が集まって処理をしていくということは当然考えて、その法廷の中で、一人でやる場合も考えてくださいねということをちょっと申し上げているんで、勿論、そういうことも考えております。

【石井委員】参考の4のところで、弁理士を登録している弁護士の話が出ましたが、弁護士さんというのは、誰でも弁理士ができると今まで教わってきましたので、特に登録しないと弁理士業務ができないというふうになっているんでしょうか。

【村木会長】そうではございません。登録をしなくても、弁護士は弁理士業務ができるという規定になっております。

【石井委員】登録してなくてもできるというのは、どういうことでしょうか。

【村木会長】登録というのは、実際にはいろんな情報が弁理士会から来ますので、特許の情報、広報とか、アクセスその他について情報をもらっていないと、その事件だけの情報で十分かというと、私どもは、例えば、特許庁にどんな情報があって、どういう動きになって、国際的にはどうかという情報のアクセスになっているのかは、弁理士登録されているのが必要ではないかと、そんなふうに考えております。

【石井委員】これは今の話とは全然違う話ですが、最近、ヒトゲノムの問題が話題となっていますね。あれはアメリカのパテントになったということで、私は幾ら説明を聞いても、意味がよく分からないので、それについてごく簡単に教えていただきたいと思います。弁理士さんの一番偉い方に教えていただく方が理解できるのではないかと、常々考えておりましたので宜しくお願いします。

 もう一つ、ヒトゲノムは必ずこれから紛争の種になってくると思うのですが、これこそいわゆる普通の法科系の弁護士さんでは手に負えないタイプの問題になると思います。その場合、弁理士から弁護士になられたというか、弁理士会が今考えていらっしゃるようなタイプの弁護士さんでしたら、今までの弁護士さんと、そういうものに対するアプローチの差がどういうところに一番大きく出てくるか、その辺をちょっと教えていただきたいと思います。

【村木会長】ヒトゲノムの問題は非常に難しいんですが、倫理の問題を含んでいるということが一つ。

 もう一つ、もともと人体その他に関するものについては、そういうものは特許にしないという考えで何十年も来たわけです。あるいは法律上の特許になるかもしれないけれども、先々それを独占することは非常に問題が起こるんじゃないかという側面でものを考えなければいけない。今、アメリカなどでも、有用性とか、使えるとか、新規性だとかいろいろあるわけですけれども、ただ、そこの面からだけで特許を認めていいのかという問題が非常にあると思います。

 今、倫理の問題があり、こっちへ行くか、そっちへ行くかということは慎重に決めてくださいというのが結論です。単なる情報の開示というものは、特許を与えるべきではないと。解明競争で解明されたものについて、うかつに特許を与えるべきじゃないんじゃないかと考えます。

 新しい発明・情報がどんどん出ていますから、今の法制から見て、これは特許に値するかどうか、そこは非常に慎重に検討する必要があるというふうに考えます。

【石井委員】今のアメリカのケースについては、ニュートンの万有引力だって特許が取れたという結論になるわけですね。それは私にとっては非常に理解しがたいことなのですが・・・。

【村木会長】そこは多分政策的な話で、先般ヨーロッパと日本とアメリカで長官同士の会合がありました。そこでどこまで特許にすべきかという問題を話し合われたが各国のスタンスはかなり違うと聞いております。アメリカは積極的で、ヨーロッパはむしろネガティブでそこまで行くべきじゃないと。日本はどちらかというと、余り先走って権利を与えるべきじゃないというふうな感じだと理解しておりまして、私どもそれを今、後を追っているような感じでございます。

 後半の質問に関しましては、先ほど申し上げましたように、弁理士は開発からずっと携わっておりますから、その中で見ていって、どのタイミングで訴訟を起こしたらいいか、どのタイミングで交渉したらいいか、どのタイミングで和解したらいいかというのは弁理士として良く分かっています。今までの形ですと、裁判に行かざるを得ないじゃないかということで弁護士にバトンタッチしましたので、裁判の提起が遅れたりしましたが、より技術が分かった形でのアプローチが、新しいタイプの訴訟担当ができるのではないかと、そんなふうに考えております。

【石井委員】ありがとうございました。

【水原委員】おおまかに言って、アメリカ、ドイツ、イギリスは権利侵害訴訟の代理権が認められておると承知いたしております。しかし、フランスは審決取消訴訟の代理権は認められておるけれども、侵害訴訟の代理権は認められていないと理解しておりますが、それでよろしゅうございますか。

【村木会長】私の理解が違っていたら訂正させていただきますが、一昨年フランスに参りました。フランスはかなり変わった国で、ほかのところが弁理士制度、あるいはパテント・アトーニー制度を持っておるのに、そういう制度をつくったのはせいぜいこの30年くらいです。逆行をしておりまして、弁護士の中で特許庁に対する手続をする人と法律をする人を分けてしまいました。ですから、当時の弁護士の中でこっちへ行った人とそっちへ行った人が分かれていて、それが一応分けてあるという形だけで、基本的にはもともとは弁護士という資格から発展してきたんだと理解しております。

【水原委員】いただきました資料によりますと、フランスではそれができない。侵害訴訟代理はできないと書かれておったものですから、理解が。

【村木会長】確認をいたします。

【水原委員】なぜそうなったのかと伺おうと思いましたけれども、今の御説明で大体いいです。ありがとうございました。

【藤田委員】皆さんがおっしゃったことで重複するかもしれないんですけれども、最後まで一本立ちで面倒を見られるステータスがほしいという気持ちは分かるんですが、アメリカのパテント・アトーニーは、パテントのエキスパートであると同時に、アトーニー・アト・ローでもあるわけで、両方の資格を兼ね備えているということです。弁理士に訴訟代理権をということになると、訴訟事務を単独で処理できるということになります。そういうことになりますと、試験科目の点でも、工業所有権法はありますけれども、一般民事実体法とか民事訴訟法とかが必須科目になっていないということを考えると、果たして研修でカバーできるのかどうか。裁判所の現場でも、裁判官の負担が増えはしないかという危惧があって、慎重論になっているんだろうと思うんですけれども、そこは大丈夫なのかという気がまだします。

 それから、弁護士に知財事件についてのエキスパートが足りない。それはおっしゃるとおりなんですが、これから弁護士としては、そういう現状ではいけない、専門化に努力しなければいけないということになっていますし、裁判所の方としても、専門参審制とか専門委員ということを考えているわけです。ですから、専門参審制なり専門委員というところで、弁理士の方たちの活躍の場もあるんだし、知的財産権の維持管理という弁理士固有の業務がございますね。そういうことを考えると、やはり法制的に訴訟代理権を認める必要があるのか、また、訴訟代理を単独でやるという前提で考えると、果たして大丈夫かなという気もしますが。

【村木会長】大丈夫であるように試験と研修をしたいと考えております。社会的、あるいは実際に法曹から見てどのくらいならいいかということで、我々なりの計画なり、案なり、カリキュラムがあるわけですけれども、それを現実に問うて、それがどの程度受け入れられるかという問題だと思います。ただ、その問題はそれ以上に弁護士会の方でも何ら具体的な案が出てきませんし、この紛争解決はどんどん増えて、毎日、新聞で上がっているものについて、どうするのかというのに対して、私どもがまず答えを出して、こういう方法がありますよということで申し上げておるんで、そこが世間が納得いく形、なおかつそこに穴ができないような形で解決できればなと考えております。

 それから、維持管理とか、テリトリーも広うございます。アメリカはさっき御質問の、適切な答えになるかどうか分かりませんが、アメリカのパテント・アトーニー、大体1万6,000人おりまして、その中で権利取得に専心している人、それから訴訟をしている人、みんなパテント・アトーニーなんです。だけれども、パテント・アトーニーだから全部訴訟をやっているわけではない。ただし、知的財産に関する紛争処理まで含めてやるには、一応そういう完成した形にしておくのが必要なんじゃないかなと。ですから、20年、30年で考えれば、やはりアメリカのように、そのアトーニー・アト・ローとパテント・エージェントを足した形の資格に変えていく必要があるんじゃないなと私は思っております。

【藤田委員】専門参審制、あるいは専門委員制などに貢献していこうというお気持ちはありますか。

【村木会長】勿論、貢献はしてまいりますけれども、それはどういうふうにするかというのは、ここの意見書を待たしていただきながら、また提言させていただきたいと思います。

【佐藤会長】まだいろいろお尋ねになりたいところ、また、御説明になりたいところもおありでしょうけれども、時間も大分オーバーしてしまいましたので、この辺で打ち切らせていただきます。どうも今日はありがとうございました。

(弁理士会関係者退室、日本税理士会連合会関係者入室)

【佐藤会長】それでは、次に日本税理士会連合会の森金次郎会長、それから久野峯一専務理事からお話をお聞きしたいと思います。まず、森会長からお話をお聞きしまして、その後、久野専務理事から御説明いただくということにしたいと思います。

 本日は、どうもありがとうございます。

【日本税理士会連合会森会長】まず、私の方からごあいさつをさせていただきまして、後、具体的なことについて専務理事の久野の方から説明をさせていただきたいと思います。

 本日は、「国民がより利用しやすい司法の実現」及び「国民の期待に応える民事司法の在り方」についての御審議に当たりまして、私ども日本税理士会連合会に発言の機会を与えていただきましたこと、まずもって厚く御礼を申し上げます。

 つきましては、日本税理士会連合会が現在お願いをしております、本人又は訴訟代理人と同行して法廷に出廷し、陳述できる制度については、自民党の司法制度調査会において、隣接法律専門職の活用を、早期に、具体的かつ前向きに結論が示されることを期待するというふうな提言をされているところであります。

 現在、日本税理士会連合会といたしましては、税理士法改正を平成13年の通常国会を目途として上程することが行政側、いわゆる大蔵省、国税庁、それから自民党の中にあります税理士制度改革推進議員連盟と、日本税理士会連合会、この3者が同意をいたしております。その改正検討項目の中に、税務訴訟における弁理士法第5条の補佐人と同趣旨の裁判所の許可を受けることを要しないで、補佐人となれる出廷手続の項目もあり、当審議会の審議については、大変注目をしておるところであります。

 税理士が税務訴訟において、国民、納税者の補佐人を務めることにより、複雑、かつ難解と言われる税務問題がより整理されまして、明確となり、国民の納得も容易となり、裁判の迅速化に役立ち、国民の利便に資するものと思っておるところであります。

 よろしくお聞き届けいただきますよう、心からお願い申し上げまして、私のあいさつとさせていただきます。

 それでは、久野専務、よろしくお願いします。

【佐藤会長】それでは、早速御説明いただきたいと思いますが、15分、長くても20分くらいにしていただきまして、その後、質疑ということにさせていただきたいと思います。

【日本税理士会連合会久野専務理事】日本税理士会連合会の専務理事をしております久野でございます。

 私ども全国で現在6万4,500名ほど活動しております。その制度、沿革、使命、業務など、概要につきましては、また、私どもの提言につきましては、先に提出をいたしました報告書を目通しをいただいておると思いますので、本席では省略をさせていただきたいと思います。

 ここでは、私ども税理士に直面している問題に絞り、発言をさせていただきたいと思っております。ちょうど時間も余りないというお話ですので、レジュメもその点だけに絞り作成をさせていただきましたので、よろしくお願いをいたします。

 さて、税理士が司法制度の中で役立つことができると思いますのは、複雑で難解である税務訴訟において、税理士が国民の補佐人として陳述し支援することにより、納税義務の適正な実現ができると考えております。

 私どもが主張しております出廷陳述権は、法律用語としては成熟した用語ではございません。レジュメの冒頭のところでも申しておりますが、訴訟が提起された税務に関する処分につき、裁判所の許可を得ずして当事者又は訴訟代理人とともに裁判所に出頭して、陳述する権利を言っております。昨年発表されました規制改革委員会の第2次見解と同じ趣旨でございます。その点、前に発言をされました司法書士会、そして弁理士会の代理権の主張とは根本的にその点では異なっております。

 この出廷陳述権と申しますのは、現行弁理士制度における補佐人、弁理士法第5条で、弁理士は特許・実用新案などに云々とございます。これに対する事項について、裁判所において補佐人として当事者又は訴訟代理人とともに出頭し、陳述又は尋問をすることができると、同趣旨のものでございます。弁理士法では、4月に改正をされたわけでございますが、もともとの規定の中にも同趣旨の規定がございました。

 もともと補佐人は、私が申すまでもなく皆様御存じかと思いますが、民事訴訟法の60条に定めがございます。これを前提としているものと解釈をしておりますが、民事訴訟法での補佐人は、裁判所の許可を得て出頭できるものでございます。税理士の主張する出廷陳述権は、税務訴訟において、裁判所の許可を受けることを要せず出頭して陳述できる制度であり、また、税務の専門家たる補佐人であるというところが、一般の補佐人とは異なるところだと考えております。

 税務訴訟では、一般に、行政上の救済であります原処分庁に対する異議申立と、国税不服審判所に申し立てる審査請求がございます。その上のランクに司法上の裁判所での税務訴訟というのがあるわけでございます。

 税理士は、行政上の訴訟であります原処分庁に対する異議申立、そして国税不服審判所に対する審査請求については、納税者の代理人としてその使命を積極的に達成をしております。税理士が関与した訴訟の救済率は、関与しなかったものに比べると高く、現在でも、この段階では相当の効果を上げていると自負をしております。

 しかしながら、司法上の租税救済制度である裁判になりますと、税理士は納税者のサポーターとして法廷での活動はできず、その時点から弁護士さんに依頼することになります。間接的にしか関与ができなくなります。効果的な支援に支障を来しているということになるかと思います。

 事実、平成9年度の異議申立は年間に約6,000件ございます。約1割がこの段階で救済をされております。そして、国税不服審判所の審査請求には3,100件くらいの申し立てがございます。ここでも1割強が救済をされております。しかしながら、ここで2,700余の件数が残っておりますが、本来、この数のうち多くのものがこれまでの審査を通じて、争点整理が行われ、更なる救済を求めて裁判所へ訴訟が提起されるというふうに予想されるわけでございますが、実際に訴訟が裁判所に持ち出されましたのは300余件くらい、平成10年ですと200幾つという数に減ってしまいます。85%から90%くらいがここの段階で司法上の救済を断念をしておる状況でございます。

 また、救済率におきましても、先ほど申しましたが、異議申立、審査請求では、ある程度の救済率は上げておりますが、司法上の裁判での救済率は大変低くなっております。現在、国側の勝訴率が95%ぐらいになっております。大変国民にとっては敷居の高い訴訟ということになっております。

 それでも、現在、税理士は、司法上の税務訴訟において、当事者及び訴訟代理人と密接な意思疎通を図りつつ、できる限り効果的な支援を行うべく、民訴法で認められております補佐人又は証人として、可能な限り職務の遂行に努めております。

 しかしながら、この民訴法における補佐人の規定でございますが、その性格や要件について具体的に明らかにされていないため、選任の可否が法の解釈により左右され、補佐人の許可申請がされても許可がされなかった例もございます。

 また、裁判所の許可申請以前の問題として、弁護士と税理士との間での微妙な職域的意識の相違などがあり、弁護士さんが税理士を補佐人に申請することに消極的というようなことになったりし、現行、国民にとっては安定したものとは言い難い状況となっております。

 本来、税理士は、争いの対象となった申告書自体が関与している税理士によって作成されたものであることから、その関与税理士自身が争点を最もよく理解しているものというふうに解釈しております。今日持ってきましたレジュメの後ろの下の方に書いておるイでございます。

 また、税理士は、日ごろからその依頼者と密接に関与しているので、その依頼者の実態を最もよく熟知していると思っております。また、さらに税理士は、税務の専門家であって、その依頼者の申告等に関係する税法については、特に調べ、勉強して、精通をしているものであります。

 最後に、税理士は、異議申立とか、審査請求を行う際に、過去から蓄積した経験則や専門的知識を最大限に活用しながら、税務行政庁と対応しております。

 このような状況でありますので、税務訴訟において、税理士が補佐人として納税者に代わって陳述を行うことは、複雑、難解と言われております税務問題が整理され、明確となり、納税者に安心感をもたらし、納税者の納得も容易となって裁判の迅速化に役立ち、そして、国民の利便に資するものであるというふうに考えております。

 また、日本税理士会連合会では、現在、この出廷陳述権が認められたときのために、研修科目で民訴法を加えて、研修を始めておりますし、これから更に積極的に関連法規などを研修に入れて勉強していきたいというふうに思っておる次第でございます。

 大変雑駁な話となってしまいましたが、以上で発言とさせていただきます。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明につきまして、何か御質問のある方、どなたからでもよろしゅうございます。

【水原委員】今年の4月28日に連合会から報告書を提出いただきまして、これを拝見いたしておきました。

 そこで、先ほど専務理事から御説明があったところなんですけれども、現行でも、裁判所の許可があれば補佐人になれるのだから、それでいいではないかという疑問が一つ出ます。

 それからもう一つは、許可が与えられなかった事例がございますという説明をいただきました。これはこの資料の10ページと20ページに書かれておると思いますけれども、許可が与えられなかったのには、裁判所の許可が得られなかった、それから、代理人である弁護士が関与税理士を補佐人として申請することに消極的な事例が少なくなかった。それぞれの理由があると思うんですけれども、その理由をお聞かせいただければと思います。

【久野専務理事】多々あると思いますが、私の知っているのでは、裁判所で税理士に認めなかったと申しますのは、弁護士さんが付いておられるなら、弁護士さんは税理士の資格も取得できる資格者でございます。当然に、弁護士さんが付いておられるならば、そこに更に税理士が付く必要はないでしょうという理屈がございます。

 もう一つ、弁護士さんの方も、はっきり弁護士さんにお聞きをしたわけではございませんが、これは私どものアンケート等で調査したものによると、弁護士法の法廷に出る権利というのは、やはり弁護士さんの持ち場であり、税理士の出る持ち場ではないのではないか。そのようなこともあり、余り税理士を法廷に出すのは好まないという方もお見えになるということでございます。

【井上委員】今の質問に関連するのですけれども、現行の民訴法での補佐人として許可された例も当然あるわけでしょう。

【久野専務理事】あります。

【井上委員】そうしますと、弁護士さんが付いているからというよりは、事件の内容によって必要性がどの程度あるかということによる判断ではないかというふうにも、素人考えですけれども、思うのですね。ですから、いま申されたことが許可されないことの理由なのかなと、ちょっと疑問に思うのですが。

【久野専務理事】確かに、簡単な法律解釈とか、事実認定とか、事案によっては税理士を補佐人と認めて出廷させて陳述させるまでのことはないということで拒否されたものもあるというふうにも聞いております。

【北村委員】補佐人として税理士が必要であるといったときに、税理士さんはなぜ法廷で補佐人として必要なのか。今のは、弁護士さんの方は税理士さんなくしてできる部分があると、ところが、税理士がそこに出ていかなければならない、どうしても出ていかなければならないという、そこの税理士の役割は何かについてお伺いしたいと思います。

【久野専務理事】現在の税務訴訟は官民裁判でございます。国側は指定代理人等、大変手厚くフォローをしております。納税者側は当人、そして弁護士さんが出るという格好になるわけですけれども、状況は大変不公平の感を否めないということですね。弁護士さんも実際には、税務に精通をしておられる弁護士さん、正直な話、たくさんはお見えになりませんので、税務訴訟をお願いするのに、弁護士さんを探すのに苦労するというような話もときどき聞いております。ですから、税理士が、納税者を支援して陳述することによって、税務訴訟のバランスというのが取れていくのではないかというふうに考えます。

【吉岡委員】税理士の出廷陳述権を裁判所の許可なしに認めるということをおっしゃっているんですけれども、裁判所の許可なしに認めても、出廷陳述権というのは補佐人と同じですね。

【久野専務理事】はい、あくまでも補佐人です。

【吉岡委員】そうしますと、それは当事者の代理人である弁護士がいいと言わなければ、裁判所の許可を得ても得なくても結果は同じような気がするんですけれども、どこが違うんですか。

【久野専務理事】やはり、出廷陳述権が認められれば、当然、税務の専門家としてということで、義務、責任を負って、それなりの仕事をするというふうになると考えています。

【吉岡委員】もう一つ、私素人で分からないものですから伺うんですけれども、税理士の資格はどこが出すんですか。

【久野専務理事】国の方でございます。

【吉岡委員】国というのはどこですか。

【久野専務理事】国税庁で出しております。

【吉岡委員】そうすると、実際には、訴訟をする相手から資格をもらっているというお立場になるわけですか。

【久野専務理事】そうですね。指導監督権のある国側が被告となって、それを訴えていく原告側の納税者に税理士が付くということになりますので、指導監督権のある国税庁から資格をもらった者が、その訴訟をすることはおかしいのではないかということでございますが、それはやはり独立した公正な立場ということで、租税法律主義の下で税理士はその使命を果たしていくものだというふうに考えています。

【鳥居委員】質問が四つあるんですけれども、第1に、税理士の資格の取り方を教えていただきたい。

 2番目ですが、税務署にお勤めになった方のOBはどのぐらいいらっしゃるのか。私は随分多くしておるような気がするんです。

 3番目ですが、そういう税務案件というのは、私の経験では、多くは、法律制度として所轄税務署の判断で決めるとなっていることが余りにも日本では多いために、こういうことが起こるのではないか。だから、税理士さんが出廷の資格を取る取らない以前の問題として、一体、日本という国は、法に定めていないことを所轄税務署の判断に委ねるということを、こんなに多く残していいのかということが問題ではないかと思うんです。それについて御意見をお伺いしたい。

 4番目は、これからどんどん外国人が日本に住み、日本人が外国からも課税される、そういうことが多くなってきますね。それに対する対応をどうするのかという問題があるんですが、私、この間、ちょっと外国から配当をもらいまして、その配当を受け取るためには、二重課税防止協定に基づいて、税務署に、私が納税者であることを認める判こを押してもらうために行ったら、その書類を1週間置いておけと言うから、分かりました、預り証をくださいと言ったら、お前の名刺を置いていけというんですよ。私の名刺を置いても預かった証拠にはならないんですよね。制度がおかしいのではないでしょうか。

【久野専務理事】3点目でございます。実際には、今、税務行政で通達で行われる場合がたくさんございます。法律の爼上に上がらず処理されるという案件が大変多うございます。私ども出廷陳述権を認めていただいて、国民の利便にかなう制度となれば、やはり訴訟案件は増えてくるのではないかと、税理士法ができましたときに、シャウプ勧告でシャウプが理想として申し上げておったのが、税務行政に対する牽制作用がなければ適正な税務行政を行っていけないのではないかというふうに言われておるわけですが、やはり、裁判の場で税務というものもチェックを受けて、そしてしっかりしたものにしていきたいというふうに考えるわけです。

 ですから、税務訴訟がある程度行われ、そのような作用が発生してくれば、現在の通達行政というものも、少し変わってくるのではないかというふうに期待をしております。

 資格の取り方でございますが、現在四つの資格の取り方がございます。一つは、御存じのように、税理士試験を受けていただく方法でございます。二つ目が、試験免除の方法でございます。そして三つ目が、弁護士さんの資格を取られて登録されるという方法。そして四つ目が、公認会計士さんの資格を取られて、登録されて税理士になられるという方法がございます。

 現在、試験で受かられた方が年間1,000名くらい、去年1,052名でございました。実際に登録されたのは、免除といろいろ含めまして2,000名弱ぐらいの登録者があるということでございます。

 現状、報告書の中にも記載をさせていただきましたが、税理士試験で通った方は約40%強ぐらいでございます。ですから、その点から言えば、制度的に少し変形しておるのではないかというふうに考えるわけでございますが、税務署から退官されておいでになった方、私もしっかりした数字をつかんでおりませんが、やはり4割弱ぐらいの方はお見えになるのではないかというふうに思っております。

 ただ、資格取得の方法も、何回かの税理士法で変わってきております。現在、6万4,000名の中には、旧来の特別試験という制度がございましたが、これで合格をしてきた方、税務署の方ですが、約2万人ぐらいお見えになりますので、全体の30%ぐらいがこの試験で通った方でございます。

 全体の数字からいきますと、現在、微増ぐらいの数字でございますが、かつては随分急速に人数が増えた時代もございますし、税務署を退官される方も、ある時期大変多かった時期がございます。戦後急に税務職員等をお増やしになり、この方が辞められる時期には大変増えておりますが、現在は、それがある程度安定した数字になってきておるというふうに考えております。

 あと、国際法の問題ですが、税理士は国際法、正直な話、弱うございます。横文字がやはり弱い方も多く、逆に大学院のマスターを終えられて出てこられた方等で横文字に強い方もおられますが、全体的には、やはり少し弱いのではないかと。

 先ほどちょっと苦言がございました税務署の対応等につきましても、税務署等でも最近語学、外国語等に強い方を配置したり、外国の法令に強い方を配置をしてきておりますが、まだまだの感がございます。税理士会も国際化に合わせて、これから勉強を強化していかなければいかぬなというようなところでございます。

【山本委員】不勉強で分からないんですけれども、6,000件とおっしゃられましたが、これは個人と法人の比率がもし分かったら教えてもらいたいのと、それからもう一点、異議申立てとか審査請求というのは、全部税理士さんを通さなければいけないんですか。それとも、本人でも直接できるわけですか。

【久野専務理事】本人もできます。しかし、行政上の訴訟では、税理士が関与して起こした場合の方がどちらかというと勝訴率が高くなっております。訴訟が、全国で1年6,000件ぐらいというのは多いのか少ないのかという議論もあります。

 それで、法人税、所得税、消費税、資産税もございますし、相当な申告数のうちの6,000件であるわけですが、もともと日本の税制は自主申告の申告納税制度でございます。まずスタートは正しいということで出すわけでございます。そのうちの調査があるのが現在10%切っているかと思いますが、実調率です。それぐらいの調査が行われます。

 そこで、適正ですから結構ですよというのと、それから、ちょっとここが間違っていますから直してくださいということで、御本人が、ああ、そうです、間違いましたということで修正申告を出せばそれで事は決着です。

 そうではなくて、いや、これは見解の相違で、税務署さんのおっしゃっていることが違うんじゃないですかと言った場合に、更正なり決定というようなことになります。その時点で訴訟になるかならないかという問題になるので、実際には相当な申告数ですが、ずっと絞り込まれての件数です。

【山本委員】あきらめてしまうことが多いと。

【久野専務理事】いえ、そんなこともございません。ただ、裁判上に出てくるのは、どちらかというと、ある程度金額が高額でないと、費用等の面から言って、もう納得してしまうということになりますし、もしくは、ある種の団体がバックアップしたりして、出てくるというのもあるわけです。

【竹下会長代理】税理士の皆さんに、税務訴訟について出廷陳述権ということで、裁判所の許可なしに法廷に出頭して陳述できる資格を認めるべきだという御提言を承りましたが、出廷陳述権があるということになりますと、訴訟代理人がいない場合には、当事者と税理士さんとで裁判所に出ていくということになるので、訴訟代理権ではないといっても、実際にはかなり訴訟代理権に近いような使われ方をするかもしれないと思うのですね。特に一般の国民が個人で訴えを起こすというような場合には、弁護士に頼むよりは割合簡単にお願いできる。そうなると、国民の立場から言うと、訴訟遂行能力の制度的な担保が必要ではないかと思うのです。先ほど、研修などを強化するとおっしゃられたのですが、もうちょっと具体的に説明していただけませんか。何か現在は新人の登録のときは3日ぐらい研修をするというお話でしたけれども、それではいかにも少ないので、具体的にはどのような内容の研修を考えておられるのか、もう少し詳しく説明してくださるようお願いします。

【久野専務理事】現在、税理士会で行っております研修は、登録してからの研修になります。登録前の修習だとか研修は、ございません。実務として会計事務所に何年以上勤めたとか、そういうのは必要ですけれども。

 登録時の研修と、それから統一研修というのを年に2回ほど行います。それから、最新のIT革命ではないんですが、CSを利用しての研修等もございます。必要に応じて、随時の研修を行っておるわけですが、当然に出廷陳述権については、特別に研修制度を設けてある程度やらなければ、とても対応ができないというふうに考えております。

 現段階では、大体40時間ぐらいはやらなくてはというような話が出ているんですが、必要時間を積んでいった場合に、それぐらいの時間になるかなということですが、人数も多うございますので、どのような形態を考えていったらいいのか、まだでき上がっていません。

【髙木委員】私のは、感想みたいなことなのでお答えは要りませんが、先ほど吉岡さんがちょっと言われたように、資格をもらうところと争いが起きたときは、日本の行政事件とよく似たバックグラウンドがある訳で、その税理士さんが出廷陳述権をくださいというのはどう考えてもおかしいと思います。現実は、確かに税務裁判はいっぱいあるわけですから、税理士会としての御主張として、これは私の感じでしかありませんが、大蔵省なり国税庁からもらわない資格を税務の争い事のために設けるべきだと言われるべきだと思います。例えば、税務弁護士とか、そういう御主張がまずあるべきです。税理士の使命という1条があるんですが、これもよく分からない条文ですね。「独立した公正な立場において」云々があったり、「納税義務の適正な実現を図ることを使命とする」とも書かれております。国税庁、税務署のまさにサポートをやる仕事ですと書いてある。そういう面が一つ。お答えは要りませんから。

 もう一つは、先ほど会長さん、あちらにお見えですが、陳述権の問題で、大蔵・国税庁と自民党の税理士制度改革推進議員連盟ですか、と税理士と三者が合意をしている話ですという御説明があったんですが、それはどういうことですかとお尋ねしたくなりました。本音を非常に正直におっしゃっていただいたということだろうと思いますので、これ以上申し上げませんが、世の中の仕組みの在り方について、実態的な構図はいろいろあるということは承知をしているつもりですけれども、その辺のことはちょっとお考えいただいて、場所をわきまえて発言内容も考えていただかないといかぬのじゃないかと思います。失礼かもしれませんが。

【水原委員】竹下代理からの御質問と同趣旨のことをもう一度伺わせていただきます。

 争点を最もよく理解しておるし、依頼者の実態をよく知っているのは確かに税理士さんだと思います。ところが、訴訟における出廷陳述権となりますと、弁護士が付いていないときに、単独で陳述できること、これは訴訟代理権を認めるようなことに非常に近くなってくるという、極めて問題が大きい事柄であろうと私は理解いたしております。

 そういう意味で、単独でやるとき、弁護士さんと一緒に共同で法廷で陳述するという場合はともかくとして、それでもやはり相当な研修を必要としますが、単独ということになりますと、何らかの条件に関わらさなければ、例えば、裁判所の許可とか、そういうことに関わらさせないと非常に問題があると思うんですが、その点について御見識を伺いたいんです。

【久野専務理事】当事者訴訟になりますと、おっしゃっていただきましたように、それこそ代理権に近い状況が発生するのではないか、との見方もありますが、税理士は勿論、税務訴訟手続等もできないわけですので、弁護士さんなり司法書士さんなりと御相談を申し上げ手続を取っていくということになると思いますが、法廷での陳述の段階で、代理権に近いような状況が発生しないようにしていきたいと思っております。

【水原委員】その辺についてはきちっとした何か制度的な担保のようなものをお考えいただくとか、それから、相当の高度の研修をしていただいて、訴訟が円滑に進むこと、それから、当事者の権利の擁護に遺漏のないような能力の養成が前提ではなかろうかと思うので、御考慮いただきたいと思います。

【久野専務理事】分かりました。努力をさせていただきたいと思います。

【佐藤会長】よろしゅうございましょうか。まだ御質問がおありかもしれませんが、時間もまたオーバーしてしまいましたので、この辺でと思います。今日は本当にどうもありがとうございました。

(日本税理士会連合会関係者退室)

【佐藤会長】時間が大分おせおせになってまいりましたが、10分休憩させていただきたいと思います。27分に再開させていただきます。

(休憩)
(日本行政書士会連合会関係者入室)

【佐藤会長】それでは、時間もまいりましたので、再開させていただきます。

 休憩前にお話ししましたとおり、今度は日本行政書士会連合会の盛武隆会長からお話をお伺いしたいと思います。

 会長、どうもお忙しいところ、ありがとうございます。お待たせして大変恐縮でございました。では、早速お願いいたします。15分ないし20分ぐらいお話しいただいて、あと10分あるいは15分ぐらい質疑という形でと考えております。よろしくお願いいたします。

【日本行政書士会連合会盛武会長】お手元に資料がまいっておりますので、それをベースにお話をさせていただきたいと思いますが、私ども、事前に専門調査員が御報告させていただきました報告書がございまして、基本的にはそれがベースになっておりますし、詳細についてはそこに書いてあるということを前提として、この図柄で御説明を申し上げたいと思っております。

 まず、今までのやり取りをずっと聞かせていただいておりまして、私どもと基本的に少し違うのかなというところがございますので、お手元の資料の7ページを見ていただきたいと思いますが、後でいろいろ御説明申し上げますけれども、現在の弁護士法の72条の範囲のうち、いわゆる争訟全体のうち訴訟に関する部分の法廷内の訴訟でございますね。ここについて、他の資格の方々が訴訟代理権ということを御主張なさっているというか、希望されている部分がございます。行政書士に関しては、簡易裁判所における少額事件訴訟、あるいは民事訴訟法の部分もございますけれども、行政書士会としては主として法廷外における争訟事件に関する聴問代理であるとか陳述代理であるとかといった、法廷内に立つことを前提とした訴訟代理というのは限定しているというところを、まず冒頭に申し上げたいと思っております。

 お手元の資料の2ページから御説明を申し上げたいと思いますが、行政書士という仕事が分からない、先ほどいろいろそういう御質問もあったようでございますので、行政書士の業務の中身あるいはその依頼を受ける相手先、そういった問題について御説明をさせていただきます。

 2ページにございますように、司法における行政書士の果たすべき役割として、そこに三つ掲げてございまして、右側が業務の中身でございますが、許認可申請業務、権利義務事実証明業務、相談業務と、三つ私どもの業務とされております。いずれも書類作成、手続代行を伴うものでございますが、そういったものを通じて、先ほど来申し上げておりますように、紛争が生じた後の問題より先に、まず法的ミスを未然に防止する予防法的な業務に携っている、その分野での資質の向上を図りたい。

 それから、そういった仕事を通じまして、2番目として、行政・民事手続業務を担っているわけでございますが、そこに五つ掲げてございますが、行政手続法、行政不服審査法、行政事件訴訟法、民事訴訟法、家事審判法等に関する手続、あるいは一部訴訟代理が入っておりますけれども、争訟事件における聴問代理、陳述代理、不服申立といった分野に参入してまいりたいということでございます。

 また、先ほど来申し上げておりますように、裁判外の紛争の問題に関しまして、紛争処理機関がございますが、そういったところへのいろいろな手続に関して、行政書士の活用を図られるようお願いを申し上げたいと思っております。

 次に、3ページでございますが、行政書士の業務内容について御説明申し上げますと、書類作成業務が行政書士の独占業務となっておりまして、これはお手元の資料の6ページをお開けいただきたいと思います。

 基本的に行政書士は、官公署に提出する書類の作成、それから、一般国民におきます権利義務事実証明に関する書類の作成、そして実地調査に関する図面の作成の三つを、行政書士の業務としておりますが、その官公署というものが、私ども所管は自治省でございますけれども、中央省庁、地方公共団体も含めまして、あらゆるお役所に提出する書類の作成となっておりまして、他の資格制度がそれぞれ所管する官庁の所管する業務に限定をされている部分を除きますと、その他すべてが行政書士の書類作成業務になるというところで、大変幅広いところがありまして、御理解が得られないところがあるかもしれませんが、この官公署に提出する書類というのは、そういう範囲を示しているものでございます。

 3ページに戻りますが、書類作成業務の委託先といいますか、その分類をいたしますと、私どもは公共嘱託という分野からいけば行政庁、それから国民一般の皆様ないし企業、それから3番目としましては、我が国において外国企業が新たに事業を活動しようとする場合の外国企業、それから入国しようとする外国人、これは難民認定法の関係でございますが、既に日本に入国して在留している外国人、この四つぐらいが行政書士に対して業務を委託する相手先でございまして、このことから言えることは、行政書士の取り扱う業務というものが現状では国境を越えた取引手続になっているという部分がございます。

 したがいまして、適用法令、紛争処理、これは家事審判事件、特に在留外国人の身分の問題につきましては、適用法令、紛争処理、戸籍の問題等がございまして、いろいろな問題が生じているところでございまして、婚姻関係もそうでございますが、その観点から、行政書士と司法との関わりがいろいろと求められているというところでございます。

 行政書士は、先ほど来申し上げておりますように、他の法律関連職がいずれも縦割行政の下で別々の官庁を上位に持っているということで、最初の御質問もありましたが、訴訟に関して、私どもですと行政訴訟ということになるのかもしれませんが、その管轄相手に訴訟ができるのかというお考えがあるかと思いますけれども、先ほど来申し上げましたように、自治省所管ではございますが、その許認可と書類作成、提出手続についてはすべての役所に及んでいるということから、すべての役所が対象となるというところが他の資格制度とは違っているのではないかと思います。その監督官庁の下で、その官庁に関わる業務をされている他の資格制度というのは、その活動領域というものが、その官庁の管轄地域といいますか、地域性があるかと思います。

 私どもは、いろいろな官公署を相手に仕事をしているということからすれば、非常に広域性を持っておりまして、地域的には個々の行政書士事務所が業務をこなしておりますが、この広域性という観点からいけば、現在いろいろな、インターネットもそうですけれども、人的ネットワークを国内中張り巡らせて業務を行っているという部分もございます。

 行政書士に関して言えば、先ほど来申し上げていますように、監督官庁による業務の囲い込みという言い方が適切かどうか分かりませんが、その範囲の外に置かれておりまして、役所との関係を申し上げれば以上のような関係でございます。

 さらに、官公署に提出する書類以外の業務として、そこに書いております権利義務事実証明業務というのがございますが、これは国民生活においてのあらゆる権利義務事実証明等の国民生活全般に広く関わりを持っている分野について、書類作成を行っているということでございます。

 それから、3番目の相談業務と書いてございますが、これも現実には行政書士が作成する書類の延長線上で相談業務というものを限定して行われているわけで、自らが関与しない事件について法律相談を業としているという実態ではございません。

 2番目の提出手続につきましては、そこに書いております許認可申請業務というのが総務庁の調べでは1万2,000件ぐらいの許認可届出等があるというふうに言われておりまして、代表的なものをここに書いてございます。先ほど説明の中で、家事審判の関係についても申し上げました在留外国人のいろいろな身分関係の問題につきましては、ここに書いてございませんが、別途あります。

 それと同時に、3番目の電子申請業務というのがございまして、これが近年の政府における高度情報通信社会対策本部、電子政府ということからして、新たに加わっているものでございまして、これはフロッピーディスクによって申請をしたり、あるいはインターネットを活用しまして、一括申請といいますか、一元登録と申しますが、ワンストップ・サービスの例にありますように、建設省における公共工事の競争入札の業者登録がございますが、これはインターネットを通じまして1回データ入力をいたしますと、大体最終的には70近い部署に申請書が同時に到達するということで、これは国民負担の軽減の分野で大いに利用されている部分でございます。

 ただ、ここのところは、民法の隔地契約の関係で言いますと、両者間には発信主義が採用されているようでございますが、行政手続法は到達主義でございますけれども、いわゆる発信主義といいますか、この問題との関係が現在生じておりまして、そこの新たな問題解決が今私どもの当面している問題でございます。この電子申請というのが到達主義でございますが、そのことを今ちょっと御説明を申し上げました。

 それから次に4ページでございますが、これが行政の紛争と行政書士の役割ということで書いてございまして、先ほど来申し上げておりますように、行政上の争訟の問題で、先ほど業務を申し上げましたが、許認可等の申請をいたしまして、これに関して行政処分がなされる。特に不利益処分を行われたときの申請者に代わってのいろいろな申立てがございますし、聴問等が開かれますと、そこで陳述の代理等を行いたい、あるいは聴問の代理を行いたい。

 次の5ページをお開けいただきたいと思いますが、これ全部を行政書士が関わりを持つということではございませんで、特に行政事件の分野で、真ん中の事前の問題として行政手続法がございます。それによりまして、処分を受けた後の事後の問題として行政不服審査に関わり合いを持つ。

 さらに、ここでいろいろ陳述代理、不服申立等をいたしますが、更に依頼人が納得しない場合、行政事件訴訟というふうになるかと思いますが、その分野につきましては、我々、現在弁護士さんにお願いをしているというところでございます。

 もとの4ページに戻りまして、私どもが主張しておりますのは、弁護士試験におきまして、行政法が試験科目から外れているというところがございます。それから、行政訴訟に関しては敗訴率が90%近いとかということも聞いておりまして、そういった現状から見れば、私ども許認可申請手続を通じて、行政と相対している行政書士にとっての役割というのは、ますます今後重要性を帯びてくるであろう。そういったことから、争訟に関する弁護士法72条の問題を資質の向上を条件として行政書士が取り扱えるようにお願いをしたいと思っているところでございますし、それが最終的には、いわゆる国民の皆様が一番身近に相談相手としている行政書士を通じて、問題の最終的な解決まで図られる、いわゆる司法へのアクセスが身近になるのではないか、かように思っております。

 6番目の図でございますが、先ほど申し上げましたように、書類の作成というものについて、他資格で制限のあるものを除いて、すべての分野に業務が及んでいるわけでございます。そこに、税理士さんや弁理士さんのところに特許庁であるとか、社会保険事務所等と書いてございますが、これが先ほど御説明申し上げましたいわゆる監督官庁と、監督官庁の所管する地域行政機関に対する申請とは異なりまして、行政書士はすべての役所に申請をする。そういうものをこの図で表わしております。

 7ページですが、この図で御説明申し上げたいことは、法廷外の争訟事件に関しまして、特にADRの裁判外紛争処理の問題がございます。

 私ども行政書士は、交通事故の問題を取り扱っておりますけれども、この交通事故がいわゆる訴訟に至る率が、98%ぐらい訴訟されていないというふうに聞いておるわけです。さらに、それはどこで処理されているかといいますと、このADRで処理されているのではないかとされておりますが、実は、このADRに持ち込んでも、交通事故の算定協会といったところで、ある程度身体障害の程度とかが決められておりまして、これが裁判所においても参考にされているということから、もともとADR自体が裁判の判断的行為といったら適切かどうか分かりませんけれどもやっておって、それを裁判所が採用すること自体がもう裁判を受ける機能を失っているのではないかという指摘もあります。

 そういったことを前提といたしますと、行政書士の場合は、ADRに持ち込むまでの交通事故の被害者に対しまして、いろいろな適切なアドバイスをしている。例えば、交通事故に遭いますと、まず入院するわけですけれども、そこで、加害者側は、今、弁護士さんと保険会社との間で示談代行付保険というのが売り出されておりまして、保険会社がこの示談代行の代理を、保険会社が依頼する者と言いますか、アジャスターとか言っているんですけれども、そういった人に任せてしまっておる。そして、被害者側は、支払者側の保険会社の代理人と交渉するということで、専門的知識を相手は持っているわけですし、非常に弱い立場にある。

 そのときに、被害者側に立って代理する機能が現在のところ失われておるということが大きな問題になっております。そこのところは、入院した場合に、まず示談の話を先にしましたら、その次に、補償をどうするかというときに、現実にはまず自賠責保険で払うわけですけれども、その後の任意保険になると、当然補償額の問題が生じますが、私の経験した例では、金額が高くなってもめてきますと、加害者側の弁護士さんによって債務不存在の申立てがなされて、いきなり裁判に持ち込まれてしまう。一方の被害者側は、まさに自らがどこかの弁護士さんを探して頼まないと、自分が救済されないという事態になるわけです。

 それ以前として、保険による補償は解決しないと支払われないために生活が困る訳でございまして、その場合には、労災保険の適用とか、生活維持のために地方行政が行っております高齢者の国民保険とかがございますが、そちらの方に生活保障を求めてしまいますと、それは行政側の大きな負担になってしまっていて、保険制度そのものが機能していないため途端に支払いが打ち切られる。こういうようなものがある。非常に事故に遭って生活が困窮し、当面のお金に苦労している人たちが、ADRに行くまでに、実は救われていないというところがございます。

 その仕切りを実は私どもが担っているわけでございまして、是非、裁判に至るまで、あるいはその手前のADR、更にその手前の行政書士の役割というものについて必要な資質向上を図っていきたい、これが国民の皆様の司法へのアクセスの最短距離になるのではないかと、このように考えておりまして、調査員が報告いたしました調査報告書を全面的に私どもの主張とさせていただきたいと思っております。

 以上、説明を終わらせていただきます。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。それでは、ただいまの会長の御説明について、御質問をどうぞ。

【井上委員】行政のいろいろな分野にわたって書類の作成等の業務を行っておられるという御説明はよく分かったのですけれども、そういう業務を通じて得られる知識や経験というものが、国、いわば行政のプロを相手にする行政訴訟に、どういうふうに役立つのかというところが、今一つよく分からないんですね。弁理士さんの場合には、民訴の補佐人として法廷に立たれて陳述されるということがあるというふうに伺ったのですが、行政書士さんは、そういう実績がこれまでおありなのかどうなのか。訴訟の補助をするという必要が本当にあるのかが、私にはちょっとまだ分からないところがあります。

 もう一点は、少額訴訟の代理権を与えてほしいと主張されているのですが、行政書士さんの業務を通じて得られる専門的知識と少額訴訟の代理ということとがどう結び付くのかという点が、御説明の中にもなかったですし、提出していただいた文書を読んでも分からないものですから、そこを御説明いただきたいと思うのですけれども。

【盛武会長】分かりました。行政訴訟の関わりの問題でございますが、行政手続法が三十数年かかって制定されたというふうに聞いておるんですけれども、私どもの申請手続を分けますと、ちょっと図柄を用意してきませんでしたけれども、単独申請と複合申請というのがございます。単独申請というのは、役所を相手にして考えた場合には、一つの官公署に許認可申請を行う単独申請がございます。もう一つは、複合申請という考え方を持っておりますが、縦割りでいきますと、地方の行政機関から中央省庁まで、一つひとつの許可や届出をしながら、それを総合的に積み上げて国で許可を取る。例えば、産業廃棄物の最終処分場であるとか、こういったような広域行政にわたる部分についてございますし、例えば、運輸省等で、運輸局、地方支局等がございますが、国全体が地方に分局支局を持っている行政手続に関して言えば、この複合申請という見方からすると、役所ごとに行政手続法でもありましたが、公正・公平・透明というところから見れば、その中で通達であるとか、取り扱えることであるとかが異なっている。この部分で、実は、Aの地域において許認可申請をし、不利益処分を受けたけれども、それは極端に言えば、Bの地域では受理されているというような事例もありまして、そういったところにまさに行政書士の、先ほど広域性と申し上げましたが、全体的、専門的な知識の中から役立つ部分があるというふうに認識をしています。

【井上委員】訴訟にどう役立つのかということなのですけれども、質問の趣旨はですね。

【盛武会長】ですから、そこは私どもの持っている許認可の中身ごとに、その違いを指摘しながら、その専門性を発揮していきたいと思っております。

 先ほどの少額訴訟の問題につきましては、私どもの行政書士の試験の中にも、民事訴訟法等がございますが、現実には、関わりが分からないというふうにおっしゃいましたけれども、権利義務事実証明関係で契約書の作成であるとか、あるいは債権債務の取り立てに関しまして、内容証明等を作成しており、これは公証人役場における、契約なんかは公証人役場において公正証書をつくっておるわけですけれども、そういった延長線上で少額訴訟の請求。それから先ほど申し上げました交通事故等の関係で、いろいろと請求をすると、そういう分野で少額訴訟。今30万ですけれども、拡大されるようですし、その訴訟の範囲も広がるようでございますから、私どもの業務に関わりある分野はかなり入ってくるという認識をしております。

【井上委員】書類をいろいろ作られるということは分かるのです。それと、訴訟になるような事件の内容にも絡むということは分かるのですけれども、そういうことで得られた知識とか経験とかが、訴訟を代理するということにどう役立つのかというところが、まだちょっと御説明を伺っても分からないのですけれども。

【盛武会長】簡易裁判所における訴訟の代理といいますか、むしろ少額訴訟でございますから、その手続を行うというふうに考えておりまして、その中で、先ほど来申し上げておりますように、行政書士がいろいろと申し述べるというところまでは考えておりません。

【井上委員】訴訟代理というのは、そういう意味ではないのですか。ただ裁判所に提出する書類を作成して手続を取るということだけなのですか。

【盛武会長】はい。

【藤田委員】井上委員の質問と重なるかもしれませんけれども、官公署に提出する書類といっても、裁判所、検察庁、法務局に提出するものは除かれるわけですね。

【盛武会長】除かれますね。

【藤田委員】そうすると、今、言われた行政訴訟の出廷陳述権とか、少額訴訟とか、あるいは今日の追加意見によると、家事審判法9条1項甲類審判についての代理権もというふうな御意見のようなんですが、そこら辺は本来の守備範囲からいってどうなんでしょうか。

【盛武会長】現実には、そこに書いてありますけれども、婚姻であるとか、離婚であるとか、いろんな問題を通じまして、関わりを持っておりまして、そこもその法律に関して言えば裁判所が、先ほども出ていましたけれども、認めた者ということになっているようでございまして、ここが外れないと、私どもも実はその分野に入れないわけでございますから、そこもお認めをいただきたいということで、その紙を出したということでございます。

【藤田委員】行政訴訟の関係だと、それは相手が行政庁だということもあるのかもしれませんが、訴訟手続あるいは家事審判の手続ということになると、家事審判法9条1項甲類といっても39もあって、特別養子とか身分法、あるいは家事審判法に通暁してないと、カバーできないような事件がたくさんある。行政書士として実際に処理しておられる手続の関係で、甲類審判事件の必要が出てくるものもあるということは分かるんですが、全般的にこれについての代理権の付与をというと、ちょっとどうかなという気もするんですが。試験課目の中に民事訴訟法が入っているんですか。

【盛武会長】はい、入っております。

【髙木委員】民事訴訟法は入っているんですか。

【盛武会長】失礼しました、入っておりません。

【藤田委員】そういう意味では、ちょっと訴訟に関してということになると、どうかなという気がするんですが、どうなんでしょうか。

【盛武会長】先ほど来、弁理士さんのお話も出ておりまして、選択科目で入っている部分もあるかと思いますが、私どもの方は、今、法律改正を考えてはいるんですが、その中に試験課目を、今、御指摘の訴訟関係に関して増やしていきたいと思っております。

 これは、できれば来年度中に何とかしたいと思っているんですが、と同時に行政書士の試験について、今度試験センターという指定試験機関の制度ができました。これで、行政書士に対する研修制度を設けたいと思っておりまして、そこで今後そういった御指摘のものについては、資質の向上を図っていきたいと思っているということでございます。

【水原委員】今までお聞きになられていたようですけれども、司法書士にしろ税理士にしろ、それから弁理士にしろ、それぞれ専門分野を持ってらっしゃるんですね。したがって、事項について専門知識は勿論のこと、訴訟に至っても相当程度の、今までの蓄積したノウハウを十分に発揮できるんじゃなかろうかという可能性を秘めていらっしゃる部分があったんです。

 ところが、今お伺いしますと、それらを含めたすべての分野にわたって、いろいろな申請書類に関与していらっしゃると、専門分野がないというように思われる。

 もう一つは、ここの行政書士の試験を拝見しますと、もろもろの行政書士の業務に必要な法令について、択一式及び記述式の40題しか出ません。一般教養につきましては、数学、国語、政治、経済等々について、択一で20題しか出ておりません。合計して2時間30分の試験と承知しておりますが、それで合格した者について、簡裁の訴訟代理権、そのほかの陳述権ということを認めて、国民のためになるんでしょうか。大変疑問に思うんですが、その点についてお考えを伺いたいと思います。

【盛武会長】私どもの試験科目には、行政不服審査法も入っておりますし、行政手続法関係も入っておりますが、そういったものを通じて、勿論行政書士会の団体といたしましては、当然研修制度を設けてそういったものにいろいろと教育をしている部分もございますけれども、それは今、御指摘のとおり、今後の課題ということになるかと思います。それは、先ほども申し上げましたように、試験課目の中身、あるいは今、時間の御指摘もございましたけれども、そういった試験制度の在り方については、今後の問題で、次の法改正の中で、今、検討しているところということで、お答えさせていただきます。

【水原委員】そうしますと、そういうふうな制度改革をして、実績をお積みになって、そして認められるか認められないかということの議論の順番では駄目なんですか。

【盛武会長】そういうお考え方もあるかと思いますけれども、私どもが申し上げていますように、近々の課題としては、訴訟の代理そのものというのは、少額訴訟に限っておりますけれども、むしろ法廷外における問題に絞っておりますから、全般的なという話では少し違うかと思いますけれども。

【佐藤会長】よろしいですか。山本委員どうぞ。

【山本委員】書類の作成ですとか、提出の代行手続とか、これは何か独占的に、行政書士の皆さん方の手を通さなきゃいけないという理由があるんでしょうか。それぞれの国民なりが、自らやるよということはできるわけですか。

【盛武会長】基本的に、行政書士は官公署に提出する書類の作成となっておりますが、当然にして自らおやりになるものについてまで、制限を課してはおりません。

【山本委員】自分でできる人は、自分でやっていいわけですね。

【盛武会長】やっていいということです。

【山本委員】そうしますと、例えば、この「電子申請業務」とありますけれども、これがIT革命などと言っていますね。にもかからわらず、まだこういった行政書士という仕事が残って、住民なり国民の間に、こういった機能を持った人の集団がないと、やはりうまく動かないんでしょうか。そこに何か問題があるような気が、ちょっと今お話を聞いていてしたんですけれども。

【盛武会長】電子申請の話になると、今、電子署名法がありますけれども、本人確認の問題が一番重要で、果たして本人が申請したかどうかという、その真正性、真に正しいかどうかという確認が実は大変なものになっていまして、そこに実は本人確認をするために、認証局がございます。この認証局で、本人であることを証明すると同時に、また、例えば、登記申請であれば、データが届きます。その間にインターネットを通じておりますと、追い越しとか行方不明というのがあって、どこで申請がされたかという確定日付けの打ち方とか、あるいは実際に届いたかどうかの確認であるとか、中身が現実に相手に届いたかということについて、やはり専門的な私ども行政書士が、自ら認証局をつくっておりまして、行政書士の資格を保証すると同時に、そういった分野へも実は関与しているということで、本人が電子申請ができるからということで、すべてがやれるかというと、実は電子申請においても、申請様式というのはフォーマット化されていて、そこに単にデータ入力すればいいということだけではないわけでして、どうしても専門的なものが必要になってくると、これは弁理士さんと絡むんですけれども、著作権法、いわゆるデジタル・データ・ベースという世界での行政書士の役割というのが、当然今、問題になっているところで、その価値は行政側にも認めていただいている部分がございます。

【佐藤会長】よろしいでしょうか。ほかにございましょうか。時間もほぼ予定のところにきましたので、もしなければこれで終わりたいと思いますけれども。

 どうもありがとうございました。

【盛武会長】ありがとうございました。

(日本行政書士会連合会関係者退室、全国社会保険労務士会連合会関係者入室)

【佐藤会長】それでは、次に全国社会保険労務士会連合会の大和田潔会長、それから増田雅一専務理事からお話をお聞きすることにしたいと思います。本日はどうもありがとうございます。まず大和田会長からお話を聞いて、その後専務理事から御説明いただくということになりましょうか。

【全国社会保険労務士会連合会大和田会長】今日のような機会を設けていただきまして、ありがとうございました。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、私の方で資料として用意してございます、2部ございますけれども、1部の「弁護士隣接法律専門職種としての社会保険労務士について(梗概)」という、薄い方でございますが、これに沿いまして、御説明を申し上げてまいりたいと思います。

 まず、「社会保険労務士の現状」ということでございますけれども、社会保険労務士は、昭和43年に社会保険労務士法ができまして、それに基づきまして創設された制度でございまして、それ以来、労働社会保険に関する事務手続、相談、指導、労務管理等のサービスを行っております。そして、ここにございますように、平成12年3月31日現在の会員数は、2万5,066人になっております。

 この社会保険労務士の資格を取るには、国家試験であります社会保険労務士試験に合格しなければならないと、受験のためには短大卒業程度の学歴又は公務員歴、民間歴、あるいは労働組合歴等における、労働社会保険歴、これが原則として5年以上と、こういう受験資格が必要とされています。

 そこで、受験科目は何かと申しますと、労働基準法を始めとする労働法4科目、健康保険法を始めとする社会保険法3科目、労務管理その他の労働及び社会保険に関する一般常識、計8科目でございます。

 試験の内容は、労働社会保険の専門家としての能力を判定するにふさわしい、法律実務が主体となっております。最近、受験者が大変増えておりまして、今年は5万人に達しておりますし、毎年の合格者は大体2,000人程度と、合格率は7%というようなことになっております。

 さらに、この社会保険労務士となる資格を有する者が社会保険労務士になるには、社会保険労務士名簿に登録されるということが必要であります。それには、実務経験2年以上又は主務大臣がこれと同等以上の経験を有すると認めるものであることが必要でございます。後者につきましては、個別の審査を行われておりませんで、厚生・労働両大臣の委託を受けて、全国社会保険労務士会連合会が行う事務指定講習を終了した者が、その対象になるということでございます。

 社会保険労務士の業務の内容は非常に専門的なものでございます。これは事務手続のうち、ルーチンのものは所定の様式の書類の作成でありますけれども、それでもこの括弧の中にありますように、細心の判断が必要なものであることが少なくないのでございます。

 それから、第2の書類の作成事務の中には、ここにあります就業規則を始めとする、企業の諸規程の作成などがございまして、これは労働基準法とか雇用機会均等法とか育児休業法とか、あるいは介護休業法。その他の関係法規を十分理解してかかりませんと、これはできません。これは、違法な規定を置かないように、のみならず、企業の労務の実態に適合したものとする必要がございます。

 その他、労務管理がこの業務内容に入っておりまして、現在のような情勢でありますので、非常にニーズが高くなっておるところでございます。

 その他、労働社会保険に関する法律相談というのがございます。これは既に社会保険労務士の業務範囲に入っておりますが、大変これは複雑多岐な関係法令の適用解釈にわたり、特に年金につきましては、毎年のように変わってまいりますし、またそれぞれの人のこれからの老後というものに関連いたしますので、大変皆さん関心があるわけでございますが、間違ったことを教えてはいけない、この点はきちっとした勉強した専門家でなければいけないということが問われておるのでございます。そういったような専門性というものを確保しなければなりませんので、社会保険労務士の倫理綱領5項目というのがありまして、知識の涵養ということを掲げております。そして、社会保険労務士の資質向上のために、研修を主たる事業として毎年強力に実施しておるわけでありますが、平成12年度におきましては、ここにございますように6,920万円の予算を計上しておりますし、前年の11年度には約400回研修を開催して、受講人員は約三万人に達しております。これは一生懸命勉強してもらいませんと仕事ができないということでやっておるところでございます。

 さて、以上が社会保険労務士の現状でございます。

 次に、2でございますけれども、大変、個別労使紛争が多発しておるのでございます。これは個々の労働者が解雇、賃金、退職金など、労働条件の問題で、公共の機関へ相談しておる件数が年間30万件と言われておるわけでございます。また、行政処分に対して不服を申し立て、労災保険や年金に関する行政処分の変更を求めるというようなケースも、多くなってきておるわけでございまして、ここにありますように、平成10年度の労働関係民事・行政通常事件の新受件数が2,519件となっております。これは10年前の平成元年度が1,027件でございましたので2.5倍と、かなり急速にこういう労働関係事件が増加しているということが言えるわけでございます。

 そこで、これに対してどういうようなことが必要なのかということでございますが、まず簡易かつ迅速な解決ということを図っていかなければならない。私ども社会保険労務士が関係するのは、大部分が中小企業の関係者でございます。生活に余裕がございませんので、紛争が長引くことがどうも耐えられないと、これは訴訟の費用、これにも耐えられないと。なるべく早く解決してかなきゃならぬというのが真情でございます。訴訟になりました場合に、弁護士さんの場合は普段お近付きのない場合が多いわけでありますけれども、その弁護士さんに事件処理の依頼をすると、その場合の訴訟費用がどうなるか、その場合の調査、打ち合わせなどの手間といったようなことになってきますと、なかなか現状では簡易、迅速というわけにはいかないのでございます。 そして、この場合に、社会保険労務士が訴訟に関与できるということになりますと、事業所の顧問として社会保険労務士は、いろいろな事件につきましては、よく知っていて、訴訟の準備に時間も費用も掛からないということで、社会保険労務士の活用ができないかと、これができれば、先ほど申しました簡易、迅速ということが、果たせるんではないだろうかと考えるわけでございますが、残念ながら、現在では、弁護士法の制約というものがあって、それができないということでございます。これが私ども何とか、そういうことができるようにお願いをしたいと。

 次の問題といたしましては、各種の紛争の簡易、迅速な解決には、ADRが有効だということにつきましては、本審議会あるいは自民党の司法制度調査会の大方の御理解を得ているものと存じますが、個別的労使紛争の解決のための機関が現在、労働省の出先機関その他の公共機関に設けられているわけでございますが、残念ながら、なかなかこれが必ずしも十分に機能していないという感じでございます。これは人の問題等があると思いますが、これに対応するために、これは労働省あるいは連合等におきまして、特別の機関の設置について御検討をされておるということを聞いておりますが、これらの機関が、さてその目的を達成するための人材の手当て、これがどうなされるものであるかということでありますが、社会保険労務士としては、これらの機関の人材不足を補いまして、労使の代理人として、このような個別労使紛争の解決に尽力して、労使の、ひいては国民の方々の役に立ちたいと希望しております。

 社会保険労務士は、そういう役割を果たしたいと思っておるわけでございますが、どうもこの場合にも弁護士法72条による壁があるということで、なかなか難しい問題があるということでございますが、何とかこれは私どもにやらせてもらいたいと。

 さらに、現在社会保険労務士は、労働争議への介入を禁止されております。しかしながら、これは労働省の御了解も得ておりますので、関係方面の御理解を得て、法改正を行って、社会保険労務士の参加による労使の集団的労使関係における話合いのお手伝いをさせていただきたいと、私どもは希望しておるところでございます。

 さて、次に労使関係紛争の問題処理に当たって大変に必要なことは、2ページの(2)にございますが、「事件に関する専門的判断」、これがやはりどうしても必要なことでございます。労働社会保険の分野の問題につきましては、かなり専門的で実務的な知識を私どもは持っておりますが、これがやはり事件の解決にはどうしても必要であるというふうに考えるわけでございます。

 例えば、労働社会保険に関係する訴訟で、よくあります実例として時間外労働の割増賃金の請求という問題がありますが、この時間外労働の割増賃金の請求につきましては、時間外労働の命令が出ているかどうか、時間外に業務を処理する必要があったかどうか、時間外労働の時間数が正確に算定されているか等々、多様な判定基準がございまして、これをすべて鑑定した上で、請求が正しいかどうかということを決められるわけでございます。このような判断ができるかどうか、その検証ができるかどうかということは、なかなか普通の場合できないんでありますが、これは私どもは、普段の研さんと経験でこれをやってきております。したがいまして、こういう問題につきましては、私どもにお任せ願えることが、やはり国民の方々の利便にかなうんではないかというふうに考えておるんであります。

 次に、(3)の「労使の信頼感」が意外に大事だということをコメントさせていただきたいと思うんであります。労働関係、労働契約、これは通常の民事、商事の契約関係とは違いまして、生きた人間を対象とした契約でございます。つまり、そういうことでございますので、契約当事者の言うなれば態度とか気分とか感情といったようなことによって、契約の履行が、どうも左右されるというようなことが出てくるということでございます。

 したがいまして、労使紛争が解決したといたしましても、その解決の内容とか方法等に何か不満が残りますれば、どうもいつまでも労使間のしこりが残るということになるわけでございます。労使間の紛争が原因になりまして、経営が破綻したという企業は、御案内のように少なくないのでございます。

 したがいまして、労使紛争というのは、なるべく早く労使の納得する解決を図らなければならないというのが、労働関係者の常識になっておるところでございます。なるべく早く労使の納得する解決と、このために労使から信頼された人物が、適法で、また常識的な解決をすることが必要であるということであります。

 その場合、社会保険労務士は、適当だということを申し上げたいわけでございますが、この社会保険労務士は、中小企業の事業所と、継続的な顧問契約関係があるわけでございますが、その契約関係にある事業所につきまして、業務の性質上、定期的に訪問をしておりまして、その際は、事業主と面談するだけじゃありません。労働者ともいろいろ言葉を交わしたりいたしまして、そういう機会も多くございまして、事業主は勿論のこと、労働者の気心も知っておると、したがいまして、事業主を説得して労働法規を守らせるということも努力をしております。

 そういうようなことで、労使双方から信頼されているというところが多いわけでございます。したがいまして、労使が社会保険労務士を中心として話し合えば、紛争が表面化しないうちに労使双方が納得する解決をする可能性が大きいのではないかと、これもまた国民の方々の利便に資することになるのではないかと思っておるわけでございます。

 ただいま御説明申しましたように、紛争が表面化しないうちに労使双方が納得する解決ということであればいいんでありますけれども、そのために、先ほどから申しましているように、労使紛争の発生を未然に防ぐ役割を、社会保険労務士が果たしておるわけでございますが、労働者の要望に対する事業主の拒否反応、あるいは労働者の反対といったようなことが、これはややもすれば労使紛争の形で表に出てくると、この可能性があるわけでありまして、その表へ出てくるということになりますと、社会保険労務士は現在ではもう労使の調整役を下りなきゃいかんということになってしまうんであります。もし、社会保険労務士が労使紛争を、労使どちらかの依頼にせよ、解決の仲介、調停をしようとすれば、それは弁護士法第72条の規定によって、弁護士以外の者には禁止されている代理、仲裁、和解等の法律事務に該当するとみられるからでございます。

 また、先に申し上げましたADRによる問題解決(1)の後半にありますが、ADRによる問題解決の最適任者であると思っておりますが、社会保険労務士がこの弁護士法の72条の制約によって、やはりその務めを果たすことができないということは残念でありまして、企業経営の発展、労働者の福祉、ひいては国民の利便に反するものというふうに考えておるのであります。

 また、この労使紛争が訴訟にまで発展したといたしましても、労働法規の専門家であります社会保険労務士が、簡易裁判所の段階における訴訟代理人、あるいは地方裁判所以上の段階の補佐人、出廷陳述権の補佐人としてその解決に関与することも、また現段階では弁護士法72条によって制約されてしまうものでありますが、この制約が解かれまして、訴訟代理又は補佐人の役割が与えられましたならば、迅速かつ当事者の意向を反映するということができるというふうに考えておるわけでございます。円満解決に役立つだろうと考えておるのでございます。

 さて、次の(2)の「行政事件の解決」というところでございますが、やはりこれにも訴訟の関与に関する制約があるわけでありますが、私ども社会保険労務士の業務の多くは、行政機関を相手にして行うものでございます。社会保険労務士の事務は、事業主の依頼を受けて、申請書、届出書、報告書等を行政機関に出す。あるいはまた、労働者の依頼を受けて、労働保険又は社会保険の年金であるとか、給付の支給請求書を作成いたしまして、これを行政機関に提出するものでございます。それで、この請求が受け入れられなかったという場合には、これは行政不服審査を経て訴訟にまで争いが持ち込まれることになるわけであります。最近における法律改正で、社会保険労務士は、ようやくこの行政不服審査の代理権は認められることになったのでございます。しかし、この行政不服審査がまた棄却されたという場合、これが訴訟に上がってくるという場合には、訴訟への関与は認められていないというわけでありまして、事業主や労働者がこの訴訟によって自らの権利を実現しようとしますと、弁護士さんに事件の処理をお願いせざるを得ないわけでございます。

 このことは、私どもから見ますと、やはり訴訟経済上どうも大きなむだじゃないかなという感じがいたすわけでございます。訴訟の原因となる行政決定が行われますまでの手続を社会保険労務士がしており、それから行政不服審査の代理人となって、その仕事も進めてきておる。それが訴訟に関与しますと、すでに、そういういきさつも証拠も集めておりますし、内容も分かっておりますので、手続的にも時間的にもむだが省け、関係者の負担が軽減できるというふうに考えておるわけでございます。

 したがいまして、今後、社会保険労務士が、原告の依頼により出廷して、補佐人として地方裁判所において事件に関する専門的な意見を述べることができますれば、依頼者に有利な早期解決に役立つと、経済性の面でも、当事者はもとより、国民の利便に役立つというふうに考えておるわけでございます。

 さて、そういう私どものお願いを込めまして、いろいろ述べてまいったわけであり、それがこの社会保険労務士の司法制度参入ということになるわけでありますが、そのための対応を一体どうお前たちは考えておるかということでございます。

 これにつきましては、私ども自由民主党の司法制度調査会の報告でも示されましたように、これは訴訟その他の法律行為を遂行することができる能力を担保する措置を講じなければならぬと感じております。

 まず、ここの(1)にございます、訴訟その他の法律事務の遂行能力を取得するためには、民事訴訟及び民事法に関する高度の研修が必要であると考えております。このために、大学法学部、司法研修所のカリキュラム等を参考にいたしまして、研修基準をつくりまして、今年中にもそのような研修を開始するという予定でおります。また、訴訟等の遂行能力を担保するために、研修受講者に対して終了試験を受けさせまして、その能力を判断することも考えておるのでございます。

 さらに、私どもは、「社会的存在としての倫理の確立」、(2)でございますが、現在はどうなっているか、不正行為の指示等の禁止、あるいは信用失墜行為の禁止、依頼に応ずる義務及び秘密遵守義務が社会保険労務士法で法定されておりまして、そのほかは、倫理規定が制定されております。今後は、労使紛争の解決、訴訟に関わることになりました場合には、社会保険労務士に対しましては、依頼者に対するのみの一面的な立場ではなくて、社会的存在として公正中立の立場に立つことが要請されると思います。その点から、社会保険労務士の倫理の在り方を見直しまして、立場を明確にした事務処理をする義務ないし心構えを、法律又は倫理規定に盛り込んでいくことを検討しているところでございます。

 いろいろ申し上げましたが、最後に5でありますが、私ども社会保険労務士は、我々自らを社会保険の専門家と自負しておりまして、この分野の問題につきましては、労使の依頼に応えて、完全な解決を図るのがその務めであるというふうに考えておりますし、労使の期待でもあります。

 したがいまして、社会保険労務士は、労働社会保険の分野であれば、現在認められている業務の延長線上にあるものとして、訴訟にありましては、訴訟代理権ないし出廷陳述権の行使を通じて、裁判外にありましては、代理、仲裁、和解等の法律事務等の実施によりまして、最終的解決にまで依頼者の要請に応えたいと念願しておるのでございます。

 また、社会保険労務士はこれまで培ってきた専門的知識経験を発揮いたしまして、これらの業務を簡易かつ迅速に行いまして、これまでより国民経済の発展、国民の生活の向上に寄与してまいりたいと願っております。

 どうぞひとつ、このような私どもの願いをおくみ取りいただきまして、私どもの主張を御支援賜りますようお願いを申し上げまして、御説明を終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。それでは、ただいまの御説明につきまして、御質問があれば。

【井上委員】申請等を通じて事件に一番よく通じているのでという御説明だったのですけれども、それだとむしろ当事者に近いと思うのですね。それと訴訟代理をする、あるいは補佐をするということとは、ちょっと立場が違うのではないでしょうか。訴訟のプロである、あるいは専門的知識に通じているということから代理人になる、あるいは補佐人になるのであって、ちょっと違うのではないかなという感じがするのです。

 そこで、ご質問ですが、先ほどもほかの業種の方にお聞きしたのですけれども、これまでのお仕事の分野に関係する訴訟で、補佐人として裁判に関わって、訴訟を補助されたという実績はどの程度おありになるのかということが一つ。

 もう一つは、最後に大学とか司法研修所のカリキュラムをモデルに研修を考えているのだとおっしゃいましたけれども、大学では御存じのように2年ないしそれ以上の期間法律を勉強させますし、司法修習は1年6月のカリキュラムなのですが、その程度に時間をかけて、かなり密度の濃い研修をするということなのでしょうか。

【増田専務理事】専務理事の増田でございます。お答えさせていただきます。最初の、今まで訴訟に関係した仕事につきましては、公式には禁じられているといいますか、できないことになっておりますので。

【井上委員】補佐人としてはできるわけですね。

【増田専務理事】補佐人としてはできるんでしょうけれども、業としてはやはりできないと思って。

【井上委員】私の質問は、補佐人として、裁判所に当事者の要請で出ていって、その専門的知識経験を生かされた実績というのは、どの程度おありなのかということです。

【増田専務理事】これは、私どもでそういう仕事の内容と考えておりませんでしたので、正確には統計といいますか、実績はカウントしておりませんが、社会保険労務士の中にはそういうことをやった者もおるようでございます。

 二つ目の研修でございますが、私どもは、一応、専門的な労働社会保険の関係では、十分研修が積まれていると思いますので、主として訴訟の関係を行うための民事訴訟、それから民事法のうちの一部というようなことの研修を、特に濃密にやりたいと思っておりますので、したがって大学法学部2年ないし3年というような感じのものは考えておりません。やはり年間で1月ぐらいというふうに思っております。

【鳥居委員】人によって千差万別だと思いますが、大体年齢の分布はどういうふうになっているのか、それから実際に一人ひとり独立してらっしゃる方々、なかなか統計を取りにくいと思いますが、大ざっぱな感じで、1年間に何件ぐらい扱われるんでしょうか。

【増田専務理事】ちょっとあとの件数の方は、やはり十分な統計がなかったと思います。

 年齢の方は、平均が60前後というふうに統計で取れております。

 顧問事業所の統計では、平成7年で大体30ないし50というような、事業所の数でございます。それで、個別のいろいろな仕事がございます。例えば、労働保険料の報告、それから社会保険の算定基礎調査とか、そういう仕事、また労災保険の給付の請求、そういう件数ごとにはちょっと統計が取れておりません。

【佐藤会長】ほかにいかがでしょうか。よろしゅうございますか。それでは、これで終わりとさせていただきます。長時間お待たせしまして恐縮でございました。ありがとうございました。

【増田専務理事】ありがとうございました。

(全国社会保険労務士会連合会関係者退室)

【佐藤会長】以上で隣接法律専門職種の方々からのヒアリングを終了させていただきます。本日のヒアリング、それから質疑応答の結果を踏まえまして、今後弁護士の在り方について審議を行う際に、この隣接法律専門職種の職務範囲等の問題についても、審議を行いたいというように考えております。

 夏の集中審議におきましては、既にお願いしておりますように、北村委員からこの専門職種に関するレポートをいただくということにしておりますので、北村委員お忙しいところ恐縮ですがよろしくお願いいたします。

 では、この件は以上で終わらせていただきます。

 2番目の議題ですけれども、予定時間も大分過ぎてしまいましたが、文部省検討会議の審議状況について、井上委員の方から御報告をお願いします。

【井上委員】今日お手元に、第2回の会議の議事要旨と、その第2回会議でまとめました審議事項といいますか、検討事項のペーパーをお配りしてありますが、その各審議項目について、第2回から第5回まで、検討のスケジュールが書きこまれています。そのスケジュールに従って、第5回、7月5日だったのですけれども、4回にわたって検討を進めてきました。これはいわば第一ラウンドでありまして、その各項目について、各委員から比較的自由に意見を言って、それで大きな方向を見つけていこうという作業を続けてきたところです。第3回以降の議事要旨につきましても、文部省の方ではできるだけ早く整理をしまして、お届けしたいということでございました。

 今後の予定ですけれども、最終の司法試験との関係及び司法修習ないし実務修習との関係につきましては、まだ議論が積み残しになっておりますので、次回その検討を続けた上で、夏の当審議会の集中審議に向けて、大きな方向でのまとめといいますか、一つに完全にまとまるかどうかは分からず、複数になるかもしれませんけれども、そういうものをつくりまして、それで夏の集中審議に間に合わせるように、こちらに提出したいというのが、検討会議の方の御意向でございます。

 鳥居委員、山本委員も、出ておられましたので、何か補充していただければ。

【佐藤会長】いかがでしょうか。

【鳥居委員】結構です。

【山本委員】結構です。

【佐藤会長】よろしいでしょうか。インテンシブな議論で、なかなか皆さん大変だろうと思います。御苦様でございますが、引き続きよろしくお願いいたします。

 次に、3番目の東京公聴会関係について、御報告申し上げたいと思います。既に御了解いただいておりますとおり、会長代理と御相談の上で、公述人を選定いたしました。お手元の一覧表のようなことで選定させていただきました。8名の方でございます。そして、既に事務局からそれぞれの方に、御連絡をしていただきまして、御内諾を得ております。選定に当たりましては、予定しております公聴会としましては、今回が最後であるということから、これまでの公聴会とはやや異なりまして、新たに公述人として応募をいただいた70名の方につきましては、地域性には限定を掛けずに行いました。この70名全員を選定の対象といたしまして、さらに大阪の公聴会の際に、地域性を理由として選定の対象外にしました、関東、東北にお住まいの方で応募いただいた23名の方も対象といたしまして、合計93名でございますが、その中から意見書の内容、年齢、職業、男女のバランスなどを検討いたしまして、お手元のような8名を選ばせていただいたということでありますが、よろしゅうございましょうか。

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】ありがとうございます。今回もいろいろな立場の方から、様々な意見が寄せられておりますので、事務局において保管している御意見について御興味のある方は、是非お読みいただければというように思います。

 この件は以上で終わらせていただきまして、次に配布資料について。

【事務局長】一覧表3番目の各界要望書等の中に、知的財産権についての21世紀戦略、民主党IP戦略という文書が入っています。これは昨日7月6日、民主党の大畠章宏衆議院議員から、民主党として検討した結果を取りまとめたものとして受け取ったものでありまして、特に15ページから17ページにかけての、司法的インフラ整備の部分は、当審議会における議論の参考にしてほしいという趣旨のお話がありました。その他の資料につきましては特に説明することはございません。
 以上でございます。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。なお、6月13日の審議会でしたが、御承知のように最高裁事務総局から御回答いただいたものがあるんですけれども、髙木委員の方から更にお尋ねしたいことがあるという御発言がございまして、6月23日付けの文書を私あてにお出しになりました。その文書は事務局を通じて最高裁にお送りしております。そういう状況になっておりますので、御報告しておきます。

 最後に次回の日程の確認等でありますが、次回は7月11日火曜日、14時から17時まで、この審議室において行います。「国民の期待に応える刑事司法のあり方」について、髙木、山本委員からのレポート及び意見交換を予定しております。

 予定時間を50分オーバーしてしまいました。大変不手際で申し訳ないことでございましたけれども、以上で今日は終わらせていただきます。記者会見はいかがいたしましょうか。では、例によって会長代理と行いたいと思います。本日はどうもありがとうございました。