司法制度改革審議会

第25回司法制度改革審議会議事録

第25回司法制度改革審議会議事次第



日時:平成12年7月11日(火)14:00~17:17

場所:司法制度改革審議会審議室

出席者(委員)

佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、井上正仁、北村敬子、曽野綾子、髙木剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本勝、吉岡初子

(事務局)

樋渡利秋事務局長

 1. 開会

 2. 「国民の期待に応える刑事司法の在り方」について

 3. 閉会

【佐藤会長】それでは、定刻になりましたので、「司法制度改革審議会」第25回会合を開催します。

 本日の主な議題は、御案内のとおり「国民の期待に応える刑事司法の在り方について」ということでございます。髙木委員、山本委員からレポートをちょうだいして、それを受けて意見交換をしたいということでございます。

 もう一つは、今後の審議のスケジュールについて、少し御相談したいと思っております。

 それでは、早速、「国民の期待に応える刑事司法の在り方について」御審議いただきたいと思います。夏の集中審議前までのスケジュールについては、既に御了解いただいておりますけれども、念のために申しますと、刑事司法については本日を含めて3回御議論いただくということであります。

 本日は、今、申しましたように髙木、山本両委員からのレポート及び意見交換、それから次回の7月25日は、法曹三者からのヒアリング及び審議、3回目の8月4日ですけれども、この2回の審議を踏まえまして、取りまとめを行うことを目指す、という段取りを考えております。本日はその第1回目ということで、髙木、山本両委員にレポートをお願いしたわけであります。お二人には、大変お忙しい中、精力的に御準備いただきまして、誠にありがとうございます。それでは、お一人20分くらいずつお話しいただきまして、その後、質疑及び意見交換を一括して行いたいと考えております。まず、髙木委員にお願いいたします。

【髙木委員】 4月25日に水原委員から刑事司法に関する論点についていろんな御提起がございましたが、その水原委員の御提起を踏まえまして、何分にも素人の話ですから、いろんな方々の受売りみたいな話が多いんだろうと思いますけれども、感じるところを整理させていただきましたので、レポートをさせていただきます。

 お手元にペーパーを配付していただいておるということでございますので、そのペーパーを御覧いただきながらお聞きいただきたいと思います。

 第2次世界大戦後、基本法の中では刑事訴訟法が大改革と言いますか、改正されたわけでございますが、その改正の背景にありました立法意図と言いますか、憲法が新しくなりましたことを踏まえたその当時の立法意図みたいなものが、その後五十数年経まして、いろんな社会的な変化がございましたので、一面やむを得ない面もあったんだろうと思いますけれども、どうも新刑事訴訟法が意図したような形の刑事司法になってきていないのではないかと感じられます。そういう中で刑事司法につきましても、多くの改革なり改善を求められている課題が、現在、我々の前にあるのだろうと思います。

 昨年12月の「論点整理」の中にも、刑事司法の改革の必要性がいろいろ指摘されておりますし、とりわけ刑事司法であってはならない冤罪の問題が最近に至るもまだ根絶されていない。勿論、根絶というのは本質的に無理なのかもしれませんが、そういう実態も現在あるわけでございますので、そういう中でどういう改革をしていくのか。それぞれ長い間この仕事をしてこられた皆さんの中にはいろんな思いもあり、それなりの御努力もあったんだろうと思いますが、それぞれの立場や過去のいろんな経緯といったものに余りこだわられると、なかなか直っていかないだろうと思います。

 そういう脈絡で<はじめに>と「刑事司法の意義」の項をお読み取りいただければと思います。

 2ページの(2)ということで、「適正手続の保障と真実発見のバランス」ということでございますが、この両方のバランス論というのは、どういう立場に立つのか、どういう考え方に立脚するのかによって、どちら側に軸足がある、ない、いろいろあるんだろうと思います。私自身は、人権をいかに刑事司法の中できちっと守っていくのかという側に視点が寄るべきという表現をしておきましたけれども、今までの歴史はどうしても、被疑者、被告人が国家権力というものに対峙をしていくという意味では、力が弱いわけでございますから、その辺の力の弱さ等をしんしゃくした、人権への配慮というんでしょうか、それが重視されるべきであろうというふうに思います。

 これからの刑事司法改革に当たりまして、法曹三者の方々が刑事司法にも大きな役割を果たしておられるわけですが、司法改革という話の中で、それぞれこだわらないという意味では謙虚に、そして直されなければいけないところはいろいろありますという意味では熱意を込めて取り組んでいただくべきではないかと思います。そういう意味では、特に裁判所の立場でいろいろお考えいただくべきこと、非常に大切なものが多々あろうかと思います。各論につきましては後ほど申し上げますが、令状審査の問題なり、公判廷における訴訟指揮、あるいはその訴訟の組立て方等につきまして、いろいろ改善点があるやに伺うことが多いのですから、そういった点について適正な裁判を行っていただくという立場で裁判所にはいろいろ検討していただくことになるのかなと思います。

 検察庁、検察の果たすべき役割でございますが、刑事事件については、起訴する権利を独占しておられるわけですから、先ほど中坊委員がちょっと言っておられましたが、特に捜査の段階について、警察と検察の相互の関係等についても、検事さんの方がお強いのではないかとか、そうじゃない、警察の方が実質的には強いんだとか、いろんな話がありますが、強い弱いはともかくといたしまして、その辺の警察と検察庁の新しい在り方みたいなものが新刑訴ではいろいろ考えられたんでしょうが、旧刑訴的に新刑訴が運用されてきたということとの兼合いで、検察の在り方がある意味では不明確になっているのではないかというような御意見もございます。検察審査会等の関係につきましては、改革に向けてどんなアプローチをしたらいいんだろうかということで考えを記載いたしておりますので、後ほどにさせていただきますが、そこの3ページの4行目に、「刑事司法に関わる警察のあり方等、刑事司法と警察に関する論議が本審議会の枠外に置かれているかの感があり、可能な範囲でフォローする必要がある」のではないかということを書かせていただきました。

 あと、弁護士さんの関係で、当番弁護士活動等、いろいろ御努力をされておられますが、裁判の迅速化、充実という観点から、公判審理におきます集中審理がうまくいかないのは弁護士さんの協力がないからだというようなお話等もよく聞かれます。そういったものを踏まえまして、水原委員のペーパーでは、迅速裁判に協力しないなら、ある種の協力義務というものを法定化したらどうかという考えも述べられておりますし、あるいは公設弁護人制度、そんなことも議論として出ております。そういうことで弁護士さん、あるいは弁護士会としても、刑事司法の改善のためにいろいろ努力をしていただく必要があるんだろうと思います。

 次に、「刑事司法の現状とめざすべき改革の方向」ということで書いております第2項でございますが、ここでちょっとお断りしなきゃならぬことがございます。この資料が外に出るときに是非直していただきたいと思う点があります。最初に亀山継夫さんのことを少し書かせていただいておりますが、「最高裁判事を務められた」と書いてあり、「ている」というふうに御訂正いただきまして、どうぞお許しをいただきたいと思います。この論文を読ませていただきますと、「新刑訴はなぜ死んだか」という表現が出ておりました。要するに、亀山さんがおっしゃっておられるのは、新刑訴が予定した当事者主義に基づく刑事裁判といったものが、終戦直後、あるいは荒れる法廷と言われた時代等々、あるいは交通事件の多発等のこともあったということのようですが、運用がどうしても旧刑訴的な運用になってしまっておりまして、そういう意味では当事者主義の形骸化という意味で新刑訴は死んでしまっているのではないかという御趣旨だったように思います。

 陪審制を休眠させたままにしておるということ、これも新刑訴が唱導しております当事者主義という意味で、陪審制をなぜ早く起こさないのかという意味での御意見もあるんだろうと思います。

 それから、冤罪事件、これも四大冤罪事件だとかいろんなことを言われておりますが、いろんな冤罪事件が起こっておりまして、その都度、冤罪事件からはいろんな教訓が得られているはずだと思うんですが、そういった教訓がどういったところに生かされてきておるのか。つい最近の宇和島窃盗事件のことなどもよく話題になりますけれども、要するに、刑事司法のいろんなルール、仕組みの中に誤判なり冤罪を生み出す構造がそもそもあるのではないか、その構造はどういうものなんだということについて、いろいろなお立場で吟味、分析がされておるやに聞いておりますが、そこに法務省内部に「再審無罪事件検討委員会」というのが設置されたということが伝えられておりますが、その内容が公表されていないというお話ですので、もし、報告書があるなら、教えていただきたいということも書かせていただきました。

 他方、最高裁の方ではどんな御検討をなさっておられるのか、よく分かりません。そういう意味でこういったものがございましたら、広く社会に明らかにしていただき、いろんな論議に供すべきではないかと思います。

 この冤罪、再審事件の最高裁判決、これは免田事件の判決だろうと思いますが、その判決の内容が下級審、特に一審におきます書面中心審理、書証中心の審理という傾向を一層加速させたという御意見もありました。

 あとは国際人権規約委員会の勧告が出ておりまして、その中には刑事司法に関することがいろいろ書かれております。4ページから5ページまでですが、これらの指摘に対しまして、特に我が国では自白中心主義、それも身体拘束をして自白を取るという日本の捜査、あるいは裁判の中でいろいろある問題点を国際人権規約委員会も指摘をしているということだろうと思います。国際人権規約、あるいはそれに伴って設けられております人権規約委員会なるものをどういうふうに認識するのか。こういう国際機関が言っておることで、強制力のあるなしとか、いろいろルールがございますようですが、少なくとも国際的にいろんな議論を経て、国際人権規約というのは確認されておる一種の国際条約だろうと思いますし、その人権規約をいかに世界的に守っていくかという意味で、人権規約委員会の勧告という仕組みもあるんだろうと思いますので、もう少し勧告を真摯に受け止めて対応していく必要があるんじゃないでしょうか。一方では国際化の時代だということを非常に喧伝され、国際化に合った司法ルールということをおっしゃられるわけでございますが、その一方で日本の固有の文化、あるいは国民の感情、感覚などについて日本の独自性を御主張になる議論もあるわけで、どうも一貫性という意味で、都合のいいときに片一方の論理を使うというような印象はございませんか、ということでございます。

 水原委員のペーパーには、捜査・司法共助の問題が挙げられておりますが、その拡充は当然の方向ではないかと思います。

 それから、「刑事司法の課題と改革の方向」ということでございますが、5ページ以降、細かい内容は時間の関係で割愛させていただきますが、まず、捜査の在り方と被疑者の権利の問題で、裁判官の令状審査の実態、あるいはその実態を踏まえた改善ということについて、5ページに記載をいたしております。

 次に、被疑者段階の身柄拘束の問題、特に勾留請求率が大分上がっておりまして、請求率が高くなれば、勾留請求の認容率が低くなりそうなものではないかなと思いますが、かえって認容率も高くなっておる。期間も長くなっている。ともかく身柄を拘束して、その拘束した中で自白を取ろうという捜査の傾向がますます強まってきていると言わざるを得ません。

 代用監獄の問題がその次にございます。お読み取りいただきたいと思います。

 「起訴前の保釈制度」、これについても国際人権規約委員会の勧告で指摘されております。これに対して、政府と言いますか、法務省では、我が国では逮捕についても、勾留期間中についても、司法審査がなされているので、これに加えて起訴前の保釈制度を設ける必要はないという御主張のようでございますが、ここで言う司法審査の実態なるものを見てみましたときに、こういう論法で本当に済むんだろうかという疑問でございます。

 次に、「被疑者の身柄拘束と報道など」でございます。特に報道の関係につきましては、松本サリン事件のときの河野義行さんの話はよく話題になりますが、私、つい最近、北欧に行ってまいりましたけれども、北欧等の事件とマスコミの扱い方、マスコミの犯罪報道は非常に自制的であるということを聞いてまいりました。これは当審議会というよりは、報道機関の皆さんに自主的に努力していただく課題かなと思いますが、審議会としても必要であれば、報道機関の皆さんにお願いをするということがあってもいいのではないかと思います。

 7ページは取調べ状況の可視化の問題でございます。イギリス等では、テープ、ビデオで可視化等を図る制度が既に実施されていると聞いています。多くの否認事件で自白の任意性、信用性を見極めるために裁判の中でかなりの時間をとられることになっておる実態等を考慮すれば、勿論、可視化のための投資なりコストもあるんでしょうけれども、トータルで見たときに、そういうコスト、投資は大変安いものではないかと思っているわけでございます。勿論、裁判の長期化を防ぐという面もあることは言うまでもございません。可視化のレベルをどうやって上げていくのかということについて、いろんな御論議もあろうかと思いますが、可能な限り可視化のレベルを上げていくべきではないかと考えます。その際、可能な限りというのは、当事者である捜査機関によって判断されるものではなく、第三者によって客観的に判断されるべきものではないかと思います。

 「被疑者(被告人)の側の防御のための証拠収集」ということで、被疑者が逮捕や勾留を受ける場合には、被疑事実が口頭で告知されますが、捜査側がどのような証拠を持っているのか等については、弁護人が捜査官との面談などでその一部をお聞きするようでございますけれども、その程度でございまして、防御のための証拠収集という意味では、その力量の差は圧倒的なものではないかと思います。そういう意味で弱い立場の者が不当な不利益を受けるという結果になってはいないか、そういう目で見てみる必要があるのではないかと思います。

 8ページに「被疑者の防御のための制度の充実」で、2点にわたって述べさせていただいています。一つは、捜査段階での弁護人の立会権の問題でございます。これは宇和島事件のことを引用しておりますが、4行目「Aお前がやったという証拠があるぞ、B認めなかったら、会社の人たちや家族を取り調べなければならなくなり、皆に迷惑をかけるぞ。C認めるのが遅くなればなるほど罪が重くなるぞ」云々のことで虚偽の自白に至ったと。このABCについては、実際の判決の中では、方言で「証拠があるんやけん、早く白状したらどうなんや、実家の方に探しにいかぬといけぬようになるけん、迷惑が掛かるぞ。会社とか従業員のみんなにも迷惑が掛かるけん、はよう認めた方がええぞ、長くなるとだんだん罪が重くなるぞ」と述べて、というふうに書かれており、それを標準語にしたものでございます。

 次に、知的障害者に関する取調べという意味で、ここに精神科医と書いてありますが、本人の状態を十分に理解したという意味で、日常的にお世話をしている人たち、これはコミュニケーションをするときなどに、そういう人たちがおれば、コミュニケーションの弱さをサポートすることができるのではないかという意味です。現にこういった趣旨の実現を目指す運動をなさっておられるグループもあるようでございます。

 次に、「被疑者国選弁護制度の導入」で、是非導入をすべきではないかと思います。水原委員のレポートの中にも、導入をする場合にはいろんな形態がある云々等も触れられております。ただ、こういう国選という公的な制度であるからゆえに、こうこうこうだとか、国民感情がいろいろあるからどうだということを理由に、この国選弁護に携わる弁護人の活動に過度な規制やら介入をされたら余り意味がないのではないか。勿論、一定のルールは要るんだろうと思います。こういったことを日弁連もお求めになっておられるようですが、弁護士偏在やら、公益的な活動への積極的な対応などの課題の解決が同時に日弁連には求められていると思います。

 いろいろ申し上げましたが、無罪推定という大原則があると思うんです。この無罪推定という大原則は、いろんな現象、いろいろな御指摘を見たり聞いたり読ませていただいたりすると、最近どこかへ行ってしまっているんではないかというふうに思えるわけでございます。勿論、無罪推定は捜査段階だけではなく公判の中でも原則として担保されていかなければいけないものだと思います。日本の刑事裁判では、検察が、公訴権というのを有罪判決請求権と理解し、そういう意味でそれなりに精密、精緻な捜査をされ、立件されるということなんでしょうが、99.9%の有罪率というものが現実にある中で、実質上の無罪推定ではなくて、有罪推定が既にあるのではないか、よほど十分に無罪だということを立証しないと、無罪判決というのはまず得られないものなんだというふうに思われているのが現実ではないでしょうか。そういう意味では、もし有罪推定的な感覚が捜査の段階、あるいは公判の段階で携わる方々の間にあるとすれば、まさに日本の刑事裁判はいかがなものかとなりかねないのではないかと思います。

 あと、起訴の問題で、起訴便宜主義の関係で、公訴権の行使については、検察審査会で審査がされておりますが、実際にその審査の結果がどれだけ検察の皆さんを規制しているのか、影響を与えているのかということでございますが、少なくともルール上は一つの御意見として聴するということでいいということになっておるんだろうと思います。その辺をもう少し強化をしてみる必要があるのではないかと思います。あと、付審判制度の問題、ほとんど使われていないということでございます。

 その次に9ページの下の方に「なお」以下のところで、これも亀山先生の論文の中に指摘があったんですが、公訴権の行使に当たって、過度に無罪を回避するという発想にとらわれる余り、社会的な関心ごと、例えば脳死者からの心臓移植事案に対する殺人罪の告訴等について、起訴を回避し、裁判所の公的判断を求める機会を、ある期間失わせてきたことがありましたが、有罪・無罪にかかわらず、社会的関心の高い事象について裁判所の判断を求めて、社会的な判断のベースにするということもあっていいのではないかと指摘されており、そういった役割も民主主義社会における司法の果たす重要な機能の一つではないかということでございます。

 「検察審査会の機能強化のための方策」ということで、先ほど拘束される制度云々ということを申し上げました。加えまして、こんなことをやっても全然意味がないのかどうかよく分かりませんが、現在のように、99.9%という有罪率を意識した起訴ということであれば、不起訴不当、起訴相当ということをする意味があるのかないのかということですが、その辺について、検察審査会の審査範囲を広げるということも含めて、やる意味があるのかないのかも含めて、検討をしていただいたらどうかということでございます。

 水原委員のレポートにこれも出ておりますが、有罪答弁制度の導入に関し、検討することについては、是非検討されたらいいのではないかと思います。ただ、アレインメントという非常に簡素化したやり方の中でも、冤罪という問題が起こり得る可能性が全くなしとはしない。そういう心配もあります。そうであるとするならば、それを防止するための被疑者国選弁護制度の導入や、証拠の事前全面開示といったようなことが整備されることを前提に、有罪答弁制度を導入していくということではないかと思います。

 また、司法取引の最たるものとしての刑事免責の問題など、これも同時にアレインメントの議論をすれば、検討すべき課題だろうと思いますが、国民の受止め方の問題等も含めまして、何か司法取引と言うと、悪いことだみたいな受止め方もあるんですが、その辺は十分国民に真意を伝えることが必要だろうということでございます。

 あと、「刑事裁判の課題」としては、陪審の復活の問題、そのためにはどんな準備、条件整備が要るのか、早急に検討をすべきではないか。ただ、この問題につきましては、また、今後、司法参加のところでいろいろ議論があると思いますので、多くを述べておりません。

 それから、11ページの保釈制度の改革、証拠隠滅のおそれというのが大変大きな理由になっているわけですが、その要件を除外しろというのはあまりかと思います。だから、除外することも含めて、その要件をもっと厳格にする、そんな必要があるということを書いております。

 それから、「争点整理と裁判所の訴訟指揮権のあり方」、この点につきましても、水原委員のレポートの中にいろいろ出されておりまして、訴訟指揮権に従わない者について、裁判所侮辱罪というものを設けることについての検討を行うべきという記述がございましたが、安易に裁判所侮辱罪、あるいは一方的な侮辱罪を適用されるようなことが、被告人の防御権の侵害ということにならないような裁判所侮辱罪の運用というんでしょうか、慎重に対処すべきだと思います。併せまして、迅速性というものを過度に強調されますと、勿論、司法が迅速かつ充実してということであろうと思いますが、そのために迅速性を強要したというふうにも言われかねないような訴訟指揮権の行使が、一方で無罪立証には、現在の日本の刑事裁判では非常に時間をかけなければ、なかなか無罪が取れないという実態がございますということも配慮する必要があるのではないかということです。

 あと、「当事者主義を実質化するための方策」ということで、11ページから12ページに書いてありますが、これは具体的には検察官の手持ち証拠の全面開示の問題でございます。

 それから、調書中心の裁判ということがよく言われますが、その是正でございます。供述調書の山を検察官が裁判官に引き継ぐだけの儀式という言い方をしていいのかどうか大分迷いましたが、あえてこんなふうに書かせていただきました。それから、「調書裁判」と言われる御批判の中には、伝聞証拠を証拠としないという伝聞法則が形骸化している云々も議論がございました。刑訴法321条1項2号の書面が頻繁に出る、こういう伝聞法則が形骸化する中で、このことは、結局、直接主義、口頭主義を弱らせているのではないかということでございます。

 国選弁護の問題、今、国選弁護は1件8万円くらいになるんですか、事件によって1回で済むもの、何回もあるもの、2回、3回と公判が続きますと、8万円をベースにした報酬で良いのか、勿論、お金だけでやっておられると思いませんが、そういう問題等もございます。

 また、国費による公設弁護人事務所、それから被疑者段階の国選弁護につながる公設弁護人事務所のお話、こういったものを一体的に考えていけばいいんじゃないかと思います。それから、無罪判決に関します検察官の控訴の禁止、あるいは制限、これもいろいろ御反論があるところかと思いますが、是非検討すべきだと思います。

 それから、「被告人の手錠、腰縄の廃止」。これはドイツで被告の方が入ってこられるときに、こういう仰々しい入り方は、少なくとも法廷ではされていませんでした。日本の法廷で傍聴している時にこういう姿が見られることがあるということでございます。逃亡のおそれありということでしょうか。

 次に、「少年司法」ですが、昨今のいろんな少年事件の多発の中で、少年法の改正問題等もいろいろ議論されておりますが、少年事件の特性にかんがみ、日本の少年司法というのは、大人の刑事司法とは全然違う体系にしてあるわけでございまして、その本質的な意味を余り変えてはならないのではないか。感覚的にも制度的にもそういうことを感じております。具体的には弁護人の取調べへの立会いなどの問題でございます。13ページの下の方に記載いたしております。少年事件につきましても、弁護士付添人制度といったものを是非設けるべきではないか、証拠調べに当たりまして、請求権など、少年審判での少年の防御権の確立と言いますか、14ページ、被害者の保護の問題、被害者救済の問題と、刑事司法との関わりというのは別問題だろうという御意見もございますが、何らかの社会的な援助を得られる制度が必要かなと考えています。

 それから、犯罪の捜査との関わり、あるいは公判との関わりで、被害者をいろんなことでお呼びになられて調べられる。その必然性は勿論あるわけでございますが、そういう意味で調べられる過程等で、被害者にしてみれば、被害という第1次被害と、精神的、肉体的にも、いわゆる2次被害と言われるものを感じている方が多いのではないかと言われています。

 申し訳ございません。14ページの下から4行目の「例えば被害者が証人として出廷する場合の取扱い」、この後の括弧を落としております。入れていただきたいと思います。それから、犯罪被害者の問題は、法曹三者だけでなく、国民全体と言うとおおげさでございますけれども、これはマスコミの方等も含めまして、みんなで等閑視してきたのではないかと言われても致し方ないと思います。等閑視という言葉が言い過ぎだったらお許しをいただきたいと思います。

 あと、死刑確定者の関係で、死刑が確定された方の面会、通信の関係、死刑執行の完全秘密性というんですか、御本人も当日の朝にならないとお分かりにならない。事実かどうかよく分かりませんが、いろんな死刑確定者に関わります問題についても運動をしておられる方々がおられます。

 あとは、裁判所、検察庁、弁護士、矯正機関等の人的充実の問題ですが、刑事の観点から見ても、それぞれいろんな充実、強化のニーズがありますということを列挙しております。

 長くなりましたが、最後に三つだけ、特に刑事司法と人権の関係、これは何度もダブって申し上げておりますが、あえてまた持ち出させていただきました。

 二つ目に裁判官制度は、刑事司法にもいろいろ関わっておるわけでございまして、最高裁判事の任免の問題、あるいは15人の方々の選任のされ方、バック・グラウンド等々の問題でございます。

 あと、裁判官の評価と裁判官の独立の問題等々、刑事事件に関わってもいろんな評価が裁判所内部であるということも言われておりますので、あえてこんなことを最後に言わせていただきました。

 それから、国際的基準の関係。水原委員の御指摘も含めまして、いろんな論点があるわけでございますが、刑事司法の国際的な基準と言いますか、普遍化されつつあるルールについて、本審議会で合意ができたら、かなりの課題についておのずと問題が解決されていくのではないかということでございます。

 いただいた時間を15分くらいオーバーしまして、お許しいただきたいと思います。終わらせていただきます。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。それでは、次に、山本委員、お願いします。

【山本委員】私の基本的な考え方とか具体的な改善事項につきましては、お手元の資料にすべて記載されておりますので、これを読み上げさせていただきます。

(「国民の期待に応える刑事司法のあり方について」朗読)

【佐藤会長】どうもありがとうございました。ただいまのお二人の御報告について、お尋ねになりたいことなど、いろいろおありだと思いますけれども、時間の関係もありますので、水原委員の方で御用意いただいたレジュメの枠組みに従って、ただいまの報告についての質疑も含めて進めてまいりたいと思いますが、そういうことでよろしゅうございますか。

 それでは、最初に水原委員の方から、このレジュメの趣旨を御説明願います。

【水原委員】本日、お手元に配付されました「国民の期待に応える刑事司法(審議用レジュメ)」と題する2枚つづりのペーパーがございます。これについて若干の御説明をさせていただきたいと思います。

 昨年12月21日に司法制度改革に向けての論点整理がまとめられました。それに対する各委員から出された御意見を整理させていただきまして、4月25日に「国民の期待に応える刑事司法について」の論点整理ということで報告させていただきました。先ほどレポートの中で4月25日は水原のメモだとおっしゃられたところもございますが、これは、あくまで各委員から出された今後の刑事司法の問題、在り方について議論すべきところは何かということをまとめさせていただいたものでございまして、私の私見はほとんど抑えて報告させていただきましたことを御了解いただきたいと思います。

 ところで、その後、論点につきまして、各委員から出されました後に、いろいろな審議過程で御議論のあったところをも含めまして、本日から始まります「国民の期待に応える刑事司法」の御議論の参考にさせていただきたいということで、本日、御報告いただきました髙木、山本両委員、並びに井上委員と私の4人で相寄りまして、今までの御議論を踏まえてどういう柱を立てればいいだろうか。それを一応今後の御議論の参考資料として枠組みを立てさせていただいたのがお手元に配付したレジュメでございます。必ずしもすべてにわたって網羅しておるとは言えないかも分かりませんが、できる限り皆さん方の提出されました御意見、これをまとめさせていただいたところでございますので、今後の御審議の参考として御活用いただければと思っております。

 以上でございます。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。

 これを御覧いただきますと、まず最初に、「刑事司法に対する国民の期待」、これはやや理念的な内容の事柄ではないかと思いますが、2番目に「刑事裁判の充実・迅速化」、3番目に「被疑者・被告人の公的弁護制度の在り方」、4番目に「新たな時代における捜査・公判手続の在り方」、大きく分けてこの4本の柱から成り立っております。

 水原委員、この順番に従って御議論いただく、そういうやり方でよろしいでしょうか。

【水原委員】そのように考えております。論点はたくさんございますけれども、大きく分けてこの四つの柱ではないか。しかも、順番から言うならば、1、2、3、そして、4番はいろいろ多岐にわたり非常に難しい問題も含まれておりますが、1、2、3の辺りは、相当集中して議論ができるのではなかろうかということでございますので、その順番でお願いいたします。

【佐藤会長】そういうことでよろしゅうございましょうか。

 そうしたら、まず最初に「1. 刑事司法に対する国民の期待-その使命・役割-」について、御議論賜りたいと思いますが、「論点整理」として、その四角の中に基本的なことは書いてございます。そして、「(1) 21世紀のあるべき刑事司法の使命・役割」、「(2) 我が国の刑事司法システムが国民の期待に十分応えていくためにはどうあるべきか」、この2本立てになっております。まず、この(1)(2)につきまして、御議論いただければと思います。先ほどの両委員の御意見に対する質疑なども含めまして結構でございますから、ここで一つの固まりとして御議論いただければと思います。

【鳥居委員】古い話になりますけれども、福沢諭吉が日本に最初にヨーロッパの法制を導入すべきだと主張したときに、国民に対する説得の方便として言ったんだと思いますが、刑法というものがない国では、何が罪で何が罪でないかが分からない。だから、例えば官憲に引っ張られても、自分の罪が定義されていない状況なんだと。だから、法律が必要なんだということを言ったんです。

 私は、それは非常に重要なことだと思うんですが、今の刑事司法を考えていく際に、日本ではこの問題は100%解決しているんでしょうか。つまり、刑法に書かれていることで訴追されることは、今の髙木委員と山本委員のお話でよく分かるんですが、そもそも刑法に書いていないことで引っ張られてしまうということはないんでしょうか。

【佐藤会長】罪刑法定主義という憲法の大原則にかかわることですが、水原委員、何か。

【水原委員】罪刑法定主義と申しまして、罪と罰はあらかじめ法律によって定めなければならないし、また、定められていないものについて刑罰を課することもできませんし、また、それを罪というわけにもまいりません。これは当然守られていることだと私は確信いたしております。

【鳥居委員】うんと頭のいい悪い人がいたり、全く法律に書いてない悪いことをするということはあり得ないんでしょうかね。

【井上委員】それはありまして、その場合に刑罰法規が設けられていないために、処罰できないという事態はあるわけです。ただ、我が国の刑法の場合には、例えば窃盗という罪でも、かなり広い規定振りになっておりまして、他人の財物を盗めば窃盗なんです。諸外国の窃盗罪の規定はずっと細分化しているのですが、我が国の規定はある程度ふくらみがあるものですから、どういう方法によろうと、何を盗もうと、窃盗は窃盗だという捉え方をできる限りはカバーできるのです。そこは検察も裁判所も、そういう柔軟な対応を示そうとしているのですけれども、それでも限界がありまして、それでは追い付かない。例えば昨今問題になっているのは、コンピュータ関係のものですけれども、これもある時期までは解釈である程度賄ったんですけれども、それも限界がありまして、それで刑法改正をしたのですが、さらにまた、そこからも抜け落ちるものが出てくるという現象が生じているのです。

【曽野委員】刑法のない国とおっしゃいましたけれども、刑法のない国というのはどういうところなんでしょうか。

【鳥居委員】昔の話です。

【曽野委員】いえ、現代で。

【鳥居委員】ないでしょうね。

【井上委員】考え方としては、英米、特にアメリカの場合など、「コモン・ロー犯罪」というのがありまして、みんながこれは悪いことだと考えるものは犯罪として処罰していいということが考え方としては残っているのです。しかし、実際にそれを使って処罰するという例はほとんど稀有になっている。考え方としては残っているんですけれども、今はほとんど100%と言っていいと思いますが、成文法主義で運用されています。

【曽野委員】イスラム法だと認めているんですか。

【井上委員】イスラムは残念ながら。

【曽野委員】手首を切るなどというのは平気でやっていますから、そういうのを刑法とお認めになるのかどうかということは。

【井上委員】コーラン自体が法典とされているのではないですか。

【吉岡委員】特に情報化の中でコンピュータ関係というのが、むしろ現象が先に来てしまって、後から法律が追い掛けるようなところがありますね。例えば個人情報の漏洩が数多く起こりますけれども、あれも個人情報保護法がまだできていないですね。そういうように法律が後から追い掛けるということになるんですね。

【佐藤会長】条例で少し対応しようとしていますけれども、法律と条例との関係がいろいろ複雑で、今、整理の途上だと思います。

【井上委員】個人情報が物に化体されている場合には、それを持ち出したりすると窃盗とか横領ということで処罰しているのですが、その場合も実質は情報を盗んでいるんですね。そこは刑法は対応していなくて、刑法改正の議論の中でも、処罰規定が必要だという意見もあったのですけれども、なかなか難しくて、今のところまだ対応できていないのです。

【佐藤会長】今の点は、罪刑法定主義があり、法律の根拠がなければ処罰できないこと、これは全く明確なんですけれども、法律の表現が抽象的で十分きちっと明確になっていないとか、また、いろいろ現代的な問題を十分カバーし切れていないとか、そういうさまざまな問題があることは否定できないことかと思います。

 その刑事司法の使命・役割として、(1)のところで実体的真実の発見、適正手続の保障、国民の安全な生活の確保、犯罪者の改善更生、被害者等の保護とありますけれども、この辺について何か。

【水原委員】これは先ほど髙木委員と山本委員のレポートに大体盛り込まれておると思いますけれども、大筋においては、大体こういうことが使命である。ウェートの置き方をどうするかという問題は残りますが、真実発見にウェートを置くのか、それとも人権の保障の方にウェートを置くのか。いずれにしましても、そのバランスをとりながら、こういう使命が必要だということについては、本日のレポート中ではそういう感じを受けました。私もそうではなかろうかと思っております。

【中坊委員】ただいま水原委員がおっしゃったようには、必ずしも私は受け止められなかったんですが、この刑事裁判の理念というところで、山本委員の今回のレポートは、この文章に書かれていますように、現在の刑事司法の在り方というのは、基本的に支持を失っているわけではないと言われているわけです。したがって、そうした特徴を大きく損なうような制度改革は行うべきではないという結論になっておるわけです。

 それに反して、髙木委員の刑事司法の理念の現状に対する問題点というのは、亀山さんの論文を引用されて、新刑訴はなぜ死んだのかという表現の中において、現在の刑事司法の在り方は問題であると言われておるわけです。

 私は弁護士という立場ですけれども、私自身も、基本的には、やはり人質司法、代用監獄とか、自白しない限り保釈を許さないという保釈制度の問題とか、あるいはここでも言われているような調書裁判の問題であるとか、あるいは基本的に当事者構造ではなしに糾問的な立場になっている、自白偏重になっているという問題がある。そういうことから、私自身も、東大教授の平野さんがおっしゃったように、我が国の刑事司法は絶望的であるという表現に一言で言われているように、非常に問題があると思います。だから、これは抜本的にもう一度見直さないといけないんだという立場と、今の山本委員のおっしゃるように、そうでもなかろうというところとは非常に大きな問題がある。

 確かに、水原委員のおっしゃるように、二つが調和すればよいというのは、非常に基本的に問題を含んでいる表現であって、調和の名の下においてどうなっておるかというのが、まさに問題ではないかと思うんです。

 そういう意味では髙木委員の今回のレポートでは、問題はいわゆる手続をきちっと守るというところがまず前提にあって、その上での真実発見ではないかという、一つの割切り方です。勿論、水原委員のおっしゃる立場では、そもそもバランスをどうとるかというところが問題ではあるけれども、どちらに、どのような重点を置くのかも問題となる。ただ漫然と両者が調和すればよいという表現の中では、いわゆる刑事裁判というものはなかなかうまくいかない。

 その意味においては、今日たまたま山本委員と髙木委員のレポートが、私は全く相対立するという立場として報告されている。その点の是非はともかく、今回の論議の中心であって、現在の刑事裁判というものは原則的には一応是認して、あと部分的修正を図ろうとするのか、あるいは、そうではない抜本的な改革を行うという立場に立つのかということは、ここで十分討議していく必要があろうか、こういうふうに思うわけです。

【水原委員】山本委員のレポートも、今の司法制度に問題がないと言っているわけではございませんで、今の段階で議論をしているところは、21世紀のあるべき刑事司法の使命、役割で、国民が刑事司法に期待するものは何かというところを議論しているのであって、制度に問題があるかないかというのはあとでたくさん出てくるわけであります。問題があることは。だから、使命はどうあるべきか、役割はどうあるべきかとなりますと、刑事訴訟法の1条に公共の福祉の維持と基本的人権の保障を全うしつつ事案の真相を明らかにする。すなわち、社会の秩序と個人の人権の調和を図りながらやりなさいというのが刑事訴訟法に書いてあるわけですから、この理念においては、お二方ともウェートの違いはあるけれども、ここに挙げられておる使命があるのではないかと、こういうふうに述べておられる。その点においては、ウェートの違いはあるにしろ、認識が共通しているのではないかという気がいたしました。

【中坊委員】私は言葉に別にこだわるわけじゃありませんけれども、確かに刑事訴訟法に両者を全うしつつということと、両者を調和させるということとは違うと思います。調和という言葉の中で出てくるものと、両者を全うしろというのが刑事訴訟に書かれていることであって、私は今の言葉にこだわるわけじゃないけれども、調和と言えば相対立しているものがあって、両方ともなあなあに、こっちも半分泣きな、こっちも半分泣きなというやつが調和という概念としてはなってくるんです。刑事裁判などを見ておると、非常にそういう意味における利害というものの二つ、真実発見と、人権擁護、手続保護ということとは、本当にシビアに対立しているわけです。それを調和という言葉の中で表現してよいかどうかは、もう一度ここでよくお考えいただきたい、私はそう思うわけです。

【山本委員】私も素人でございますので、初めのところに断ってありますが、いろいろ書物を読んで勉強したりしますと、日本の刑事司法というのは日本独特であって、これ自体がだめなんだという考え方と、いや、そんなことはない。論より証拠だと。日本の犯罪の発生率は非常に低いし、冤罪ということも、これはちょっと分かりませんが、アメリカなどに比べるとはるかに低いとか、いろんなことを知るわけです。自分自身の感覚にもこれが合っていると思っておりますので、初めにあえてそのスタンスを素人ながら申し上げてみたわけですが、間違っているところがあったら是非指摘していただきたいんです。

【井上委員】調和という言葉の評価はさておいて、問題はおそらくこういうことかなと思うのです。髙木委員は新刑訴は死んだという表現を引用されて言われたのですけれども、結局、それは、現行の刑事訴訟法ができたときに、こうなるのではないか、いいかどうかは別として、こうなるのではないかというふうにかなり多くの人が描いていた像、アメリカ型の刑事手続なんですけれども、そういうものが根づかなかったということなのです。しかし、それをどっちの角度から見るかによって評価は分かれまして、そういう理念型のようなものが望ましいという角度から見れば死んだ、形骸化して元に戻ったという評価になるのですけれども、しかし、なぜ根づかなかったのかというところから見ますと、一般の人々が刑事司法に求めているのはそれとは違ったものだったのではないかということになるのです。

 それを「真実主義」とか「精密司法」とかいう言葉で表されるんですけれども、そういうものが現在も期待されているとすれば、今の運用の方は基本的にはいいんだという反論になってくると思うのです。ですから、今、何が求められているのか、どういう刑事司法がいいのかという点から議論をしていかざるを得ない。それが一番シビアに表れるのは、取調べの問題とか供述の問題なのですけれども、そこのところ、どの角度から物を見るのかが基本となると思うのです。

 平野先生は私も教えを受けたのですけれども、絶望的だと言われたのも、そのように当初描いておられた理念型というものが受け容れられなかったという痛切な叫びだったのだろうというふうに私などは見ていまして、あるべき姿は何なのかというところのとらえ方の違いではないかと思うのです。

【中坊委員】まさにおっしゃるようにどうあるべきということが、別な言い方をすれば、司法はいかにあるべきかということにも根づいてくる問題だし、非常に重大な問題をこの問題は含んでいるという意味に私は考えるべきだと思うんです。

【佐藤会長】ここはどういうように整理しますかね。司会者として、先を急いでということになるんですが。

【水原委員】ある犯罪事実が発生しましたときに、この事実、真相は何かねということを問わない、無関心でおられるかというと、日本の国民性からしたら、やはり真相は何かということを求めるのではないか。私はそういうふうにみんな思っていると思うんです。そうなりますと、真相の発見が非常に重要な要素である。それにも劣らずして、それを行う上においては、あくまで被疑者・被告人の人権を守らなければいけない。その手続の保障、これも当然である。それから、両者の調和による国民の安全な生活の保障、これもそういうことをやりながら社会秩序というものが保たれるということが国民が等しく望んでいるところではないか。そうなりますと、この1、2、3、ここまではこういうまとめ方でいいのだろうと。

 それから、犯罪者の改善更生だとか、被害者の保護、これはどなたにも異論のないところではないか。これは刑事司法に課せられた使命、役割ではないかと思うんです。

【中坊委員】多少、水原委員のおっしゃっているのには、かなり基本的に問題があると思うんです。両者を全うしつつということと、改めて真実の発見ということと、人権の擁護というのが対立しておって、それをどう調和するかという捉え方そのものが基本的に私は問題ではないかと思うんです。いわゆる手続というのが守られた上における真実、発見ではないんでしょうか。だから、今、言うように、代用監獄、あるいは自白するまで保釈しないだとか、そういうような基本的な手続によって、それが真実だということには決してならない。現に幾らかの冤罪までが発生しているということは現実にあるわけです。つい最近だって宇和島の事件があるわけだから、やはり自白偏重であるとか、そういうことは今の刑事司法が抱えておる基本的な大きな病原であって、確かに、井上委員のおっしゃったように、少なくとも予想された刑事訴訟法は、そういうものとして立件されておる。だから、刑事司法というのは、少なくともつくられたときは、有罪か無罪かを判断するということであって、今の裁判はむしろ有罪であることを確認するというふうに変わってきているというふうに書かれていますけれども、そこが基本的に違うのであって、しかし、今ここで延々と議論を重ねたらよいという意味ではないんで、ただ、みんな司法の在り方ということと全部に関係している問題だということをお互いに認識した上で前へ進まれたらいかがですかということを提案しているわけです。

【鳥居委員】今日の議論は刑事訴訟法を中心にして行われているのは分かるんですが、この審議会が全体の最後の取りまとめをするときに、その報告書なるものはだれに対して出されるものかということを考えると、内閣です。当然国会もそれを受け止めてくれるでしょうが、同時に私たち国民に対して語り掛けなければいけないんじゃないかなと思う。だから、さっきの最初の質問に戻るんですが、日本国民というのは、公的な義務と公的な権利を持っていると思うんです。その公的な義務というのは、例えば納税の義務などですが、つい国民が忘れがちなのは、刑法第3条に定義してある罪は犯さないという義務を負っているんです。その義務を履行しないということが実は罪を犯すということですが、そのときに今度は公正な裁きを受けるという手続が待っているんだという、そもそも日本人が忘れているかもしれないことを、一度語り掛けなければいけないんじゃないか。そのことがこの報告書の中のどこかに出てきてほしないという気がいたします。

【佐藤会長】表現の仕方はなかなか難しいと思いますけれども、おっしゃるように、最終的には国民に向かって語り掛ける、その点は心掛けないといけないだろうと思います。その辺は表現のところで工夫させていただくということにして、先ほどの問題ですが、あれかこれかと捉えますと非常に難しくなります。それぞれ皆追求しなければいけない課題で、その追求の仕方、全うのさせ方、力点の置き方に違いがあるということではないでしょうか。その点に留意しながら、今後、議論することにしたいと思います。ここでいきなり深く入ると、哲学論争になる可能性がある。根底には人生観が関係しているかもしれない。

【髙木委員】レポートさせていただいたものですから発言を控えておりましたが、適正手続は踏まれている、ちゃんとやられているということをおっしゃられる向きもおありなんだけれども、手続が適正に行使されていないケースが現にあるということは認識しておかなければいかぬだろうということを申し上げたかったのです。

【水原委員】髙木委員、あくまで21世紀のあるべき刑事司法の役割でございますので、現実にこういう問題があるというのは、あとでいろいろ出てくるところですから、使命としては、あるべき姿としてこれを挙げていただければと思います。

【髙木委員】今のような御議論が出るんじゃないかなと思って、私はワイツゼッカーの言葉をわざわざ書いておきました。

【藤田委員】どちらを優先するかというと、それは見解の相違になるんで、ともに実務において実現すべき理念であると言えばコンセンサスなんじゃないですか。

【中坊委員】だから、言葉は先ほど言うように、その二つを全うしと書いてあるので、調和をしとは書いてないということを私は言っているんです。両者を全うするということが重要なのです。

【井上委員】追求する。

【中坊委員】そうそう。追求するということが我々の目的じゃないかと思います。だから、簡単に二つをなあなあで調和させればよいということではないのです。

【佐藤会長】そういう議論は。

【中坊委員】水原委員は言うてはらへんと思うけれども、調和というと、そういうふうにとれるから、そこを私は言っているだけです。両者を全うしつつということです。

【佐藤会長】3回目の最後のところで、民事司法の場合と同じように、一応の取りまとめをさせていただきたいと思いますので、表現ぶりについては、またそこで少し御議論いただくことにしまして、一応、今の問題はこの辺で。

 今日も例によって押せ押せになって、時間が大分食い込んでいるので、3時50分に再開させていただきます。では休憩にしたいと思います。

(休憩)

【佐藤会長】それでは時間がまいりましたので、再開させていただきます。

 「2. 刑事裁判の充実・迅速化」に入ります。先ほどもお話があったように、全体的に見ると、日本の刑事裁判は長いというほどではないということですけれども、特殊な事件では非常に時間が掛かっている。それが、国民の裁判に対するある種の割り切れなさというか、そういうものを生み出しているということですが、この部分につきまして、御議論いただければと思います。

【水原委員】現状認識につきましては、既に配付していただきました参考資料の3から8のところにいろいろ記述されておりますし、私がレポートさせていただきました3ページから4ページに現状については書いてあるとおりでございます。資料はお読みいただいていると思いますので、大体この現状認識についてはさほど問題はないと思います。

 ただ、具体的な論点として、刑事裁判が遅れておる最大の理由は何かということについて、私のレポートの4ページ以下に記述しておりますが、集中審議が実現されていないと。そこで毎週数回開廷が望まれるのではないか。

 弁護士の業務形態から他事件をも同時に処理しなければいけない。同時並行という今の業務形態にも問題があるだろうと。それから、勿論、捜査不十分で起訴したために、公判でいろいろ争いになっていることもございましょうか。

 それから、争点が不明確なままに漫然と審理を続けておる。そこには訴訟指揮権に問題があるんだけれども、訴訟指揮権を行使する上において、何らかの担保がなされていないところに問題があろうと。等々のところが議論の対象になると思います。

【佐藤会長】抽象的に言えば、迅速化が必要だということは言うまでもないことなんだろうと思いますけれども、問題はどうやってそれを実現するかということですね。

【中坊委員】山本委員と髙木委員とで一致しているような、大体、制度として、被疑者段階から続いてきておって、是非はともかく、聴取の録音化とか、そういうような問題であるとか、いろんな提案がされていますね。そういう具体的なこと、例えばおっしゃっているアレインメントであるとか、免責であるとか、いろんな具体的な制度がありますね。これを両者を整理してもらいましたら、この点に関して、今までのところ余りされていないから、一遍整理してもらったら、2人のおおむね一致しているところと、全然違う。例えば水原委員のおっしゃったように、裁判長の訴訟指揮権を非常に強化して、それには罰則を加えるべきだというところまでくると両者はかなり違うようなところもある。だから、一致しているところと、余り一致しないところと、制度としては考えようか、考えまいかと言うているところ。そういうところを一遍両者で整理してもらえれば、この問題がまた前に進むように思うんです。

【山本委員】入り口がかなり違いますが、個別はかなり一致しているところがあるんです。

【中坊委員】内容は、どちら側から入るかであって。

【山本委員】ただ、すべて髙木委員の方が一歩足を踏み出している。

【鳥居委員】今、審議しようとしている「刑事裁判の充実・迅速化」というテーマですね。これについて論点整理が、5行引用されているんです。これをすっと読むと、結局、私たちは裁判の迅速化のことに主として意識が行ってしまうような気がしますが、よく読んでみると、「刑事裁判についてはおおむね迅速に運営されているものの、国民が注目する重大」云々で、「一審の審理だけでも相当長期間かかるものがある」と、ここまでは迅速化のことしかほとんど言ってないんですが、その後「こうしたことが国民の刑事司法全体に対する信頼を傷つける一因ともなっている」、つまり、裁判が長く掛かるということは、国民の刑事司法全体に対する信頼を損なう一因でありまして、それ以外にも刑事司法に対する信頼を勝ち取るためにいろんな大事なことがある。それが充実という言葉なんではないでしょうか。

 したがって、その最後に「適正・迅速な」という、この迅速だけでなくて適正という字が付いているのは充実したという意味だと思いますので、では、一体、適正とか充実したという言葉に該当するものは何かというと、中坊先生が、今、整理してくださったように、山本委員のレポートの中にも髙木委員のレポートの中にもたくさんあるわけです。それを、この項で入れ込まないと、後ろを見ても整理する場所がないんです。ですから、ここは迅速の話だけではなくて充実の方を非常にたくさんのコンテンツがあるんだということを理解していただく。

【水原委員】今の点ですけれども、私のレポートの中にも書いておきましたけれども、連続開廷をやること、それから弁護士業務の形態を改めること、それから争点不明確のまま漫然審理を行っていること。こういうことは真に充実した審議が行われていないんだと。だから、遅れていくだけではなくて充実した審議がそれと並行して行われていない。だから、そういうことを検討すれば充実でありかつ迅速であると、こういう趣旨でレポートさせていただきましたし、意味はそういうことでございます。鳥居先生のおっしゃるところを十分入れなければいけない。

【佐藤会長】井上委員、何か。

【井上委員】まさに同じことでして、迅速と言うことだけを強調しますと、ただ早ければいいということになってしまうんですけれども、これは論点整理のときに中坊先生からも御意見が出まして、私もそういう趣旨で申し上げたのですが、審理の中身が一番大事なのです。中身がぐっと詰まっていること、詰まった審理を集中してやることによって迅速化も図れる。中身がそうなっていないものをただ早めると言うだけではかえって拙速になってしまう。それで、期日を詰めて指定するということも大切ですけれども、そのためにはやはり適正な範囲で証拠開示もし、それを踏まえて争点整理をきちっとやって、真に争いのあるところに集中して審理をする。そういう3点セットで、みんなが有機的に連関している問題だろうというふうに思います。

【中坊委員】今、単に刑事裁判のところだけではなしに、いわゆる捜査手続というところもそこにかんでいますから、そういうことに関してもみんな具体的にいろいろ提案していただいているんで、それをちょっと整理していただければ、この問題は出てくると思うんですけれども。

【佐藤会長】そうしたら、次回、最初に紹介しましたように次の25日に、三者のヒアリングをやって御議論いただく時間もありますので、ここのところは大体御趣旨は皆さん共通していらっしゃるわけで、整理をしてもらおうと。

【中坊委員】両者でね。

【佐藤会長】意見の違うところは違うところとして整理されていいわけで。

【中坊委員】だから、水原委員が一応刑事司法のまとめ役みたいになっておられるから、山本委員と髙木委員が寄っていただいて、そこを整理していただければ、ヒアリングとは別に、そういうふうにしていただければ次回進むのではないか。

【佐藤会長】では、ここはそういうことで。

【井上委員】それでいいんですけれども、髙木委員と山本委員だけではなくて、ほかの方も是非ここは言いたい、違う見方があるというところはこの際言っておいていただかないと。

【中坊委員】一応整理してもらうということがね。

【髙木委員】今、中坊先生におっしゃっていただいたことで詰めたいんですが、ただ、私どもも山本委員もいろんな課題をすべて網羅できているという認識ではないんです。だから、これ以外にも刑事司法に関わっては別途の問題もこれありというのが多分たくさんあるんじゃないかなと思うんですが、だからその辺も例えば井上委員や皆さんから補完してもらって整理していただいたらと思います。

【佐藤会長】それはまた4のところで少し。いろいろなものが4のところにあるわけですけれども、どこかでそれを受け止めて表現するということが出てくると思いますので、それはまた考えさせていただくことにします。

 とりあえず2のところはこういうことで一応まとめていただくということで。

【井上委員】整理をするということですね。

【佐藤会長】まとめるというのは整理をするという趣旨で言っているわけです。

【井上委員】具体論についてはもっと議論しないといけませんね。

【藤田委員】迅速化の関係で仙台と広島におりましたときに公職選挙法の百日裁判を実際にやった裁判長の話を聞く機会があったんですが、そういう審理期間の法定というのは結局訓示規定だから余り意味がないという考え方もあるかもしれませんけれども、やはりああいう規定があるということが実際の訴訟の運営で非常に大きかったという体験を聞いておりますので、訓示規定であるにしても、そういうような法律の規定を設けるということは考えてはいかがだろうかなと思いますので、御参考までに。

【佐藤会長】民事の場合と少し。

【竹下会長代理】確かに、今、伺っていて思ったのですけれども、こういうことはないのでしょうか。つまり、公職選挙法違反の事件についてだけ百日裁判という規定があるので、これは何としてもその間にやらなければいけない。言わばほかの事件は少し後回しにしても百日裁判の法の規定を遵守している。だから、もし全体にそういう枠を掛けたときに、本当に効果が上がるのかどうかということについて若干疑問に思うのですが、何か聞いておられれば教えてください。

【藤田委員】多少薄められる効果というものはあるかもしれませんけれども、しかし、やはりそういう一つの目標かもしれませんけれども、そういうものを設定するということは意味があるのではないでしょうか。どれだけの実効性があるかというのは、それは特定の場合と一般的な場合と差は出てくるかもしれませんけれども。

【佐藤会長】それは一つのアイデアですね。

【竹下会長代理】別のことなのですが、水原委員に実情を伺いたいのです。前にいただいた参考資料を拝見しますと、これの資料5辺りに実際に非常に長期にわたった刑事裁判の例が挙げられてございますね。これの10ページのところに挙げられている数字などを拝見しますと、証人数が、検察官請求、被告人側請求合わせて187人、公判回数193回というようなことなのですね。これはそれだけ難しい事件であったのだろうとは思うのですけれども、私など民事の方の裁判から見ますと、こんなに多数の証人尋問が必要で、これだけの公判期日の回数がどうしても必要なのだろうか。もう少し何か工夫はないものなんだろうかという印象を持つのですが、この具体的な事件については別として、一般的にこういうようなことが起こってくる原因はどういうところにあるのでしょうか。

【水原委員】これは御案内のとおりの富山と長野における殺人事件の事例だと思うんです。その内容については私はつぶさでないので正確なお答えができないので、次のヒアリングのときに担当者にひとつお聞きいただければ、こういうことの原因が何かということがお分かりいただけるかと思いますので、そのときにお願いします。

【佐藤会長】では、よろしゅうございますか。では、この2のところはそういうことで先に進ませていただくということでよろしゅうございますか。

 藤田委員のおっしゃったことは一つの意見として、記載するときに少し留意するということにさせていただきましょう。

 それでは「3. 被疑者・被告人の公的弁護制度の在り方」についてであります。ここも抽象的に言えば、こういうことかと思いますけれども、いかがでしょうか。水原委員、全体で御議論なさっていて、ここのところは。

【水原委員】今は御案内のとおり被告人になって国選弁護人が付けられるわけです。当番弁護士制度ができて、弁護士会の御努力で被疑者段階から当番弁護士が弁護に付くことがございまして、それは非常に実効が上がっている。そこで、被疑者の段階から公的弁護制度を認めるべきではないかというのは一つの大きな流れとしてそういうふうな考え方である。ただ、どういう形での公的弁護制度を考えるのか、被疑者の段階から国選弁護を考えるのか、それとも法律扶助による援助を考えるのか、それとも運営主体による公設弁護人事務所を設けるのかといういろいろな形があろうかと思います。これについてはいろいろな御議論があろうかと思いますが、一番問題なのは制度の運営主体をどうするかということと、それから導入に伴う問題ないし条件というところが一番問題である気がいたします。

 それはある程度私どものレポートの中に指摘させていただきましたけれども、制度の運営主体は直接国が運営する場合、それと公的性格を持った法人が運営に当たる場合、この二つの考え方がありましょう。そのうち、それでも特殊法人なのか認可法人なのか、指定法人なのかという考え方もございます。

 それから、導入に伴う問題ないし条件というのはやはり国の予算が投入される限り、弁護士偏在の問題にも対応していって、弁護士のいないところでもちゃんと弁護を受けられる機会が与えられなければいけないだろう。それから、集中審理に対応し得る弁護体制が必要であるというような問題。それと、先ほど来議論になっております公費を投入するわけでございますから、弁護活動の評価、十分やっていないものについてこれでよろしいのかというチェック機関が必要なのではないか。要するにコントロールシステムの在り方等についてはやはり十分御議論をしていただかなければいけない。こういうふうに考えております。ただ、導入することについて反対をなさる方はまずいなかったというふうに解釈しております。

【中坊委員】だから、それは同時に弁護士制度の在り方にも関係してくるわけです。だから、今、ここで刑事裁判のところで全部決めるのかどうかは、一応こういうところが問題点であって、今、水原委員がおっしゃったように、一番大きいのは被疑者国選で、いわゆる国のものでやるのか、法律扶助でやるかというところは確かに大きな問題点だろうと思います。 いろんな問題点が確かにあるし、それは同時に弁護士制度とも関係しているところですから、この審議の仕方としては、ここでそこだけで決めるというのはなかなか難しい。しかし、どこが問題点でどうなっているというところまでは整理の中で水原委員がおっしゃっるように問題点を出していただいて、そしてある程度決まるところは決めていって、そして今度ほかのいわゆる弁護士制度全体と関係しなければいけないときは、そこでまた一緒にやっていただくというふうに審議していけばいいと思います。

【井上委員】私も賛成です。例えば範囲の問題も、弁護士の業務体制の問題や人数の問題とも絡んでくる。コントロールの問題も、弁護士会の懲戒制度の問題とも絡んできますので、そこも踏まえなければいけないだろうと思います。

 もう一点、何らかの形の公的弁護制度が必要だということではほぼ皆さん一致するだろうと思うのですけれども、その方式をどうするかというところで、お考えいただきたいのは、必ずしも一本に絞る必要はないのではないかということです。つまり、幾つかの形を併用するということがあってもいいのではないかというふうには思いますので、そういう可能性も含めて議論していただきたいのです。

【水原委員】今おっしゃったことは国選弁護制度で統一するのか、あるいは法律扶助一本で行くのか、それとも公設弁護人事務所一本で行くのかというふうに考えるのではなくて、それらを併用してもいいのではなかろうかと、こういうことでございますね。

【井上委員】2の審理の迅速化問題との絡みで言うと、何らかの公的な事務所をつくって、刑事事件に専従する弁護士組織というものが必要とは思うのですが、それだけで賄えるのか。法律扶助を拡充するということもあれば、さらには国選的なものも組み合わせていく。弁護士偏在の問題もありますし、例えば複数の被告人がいて、利害が相反するような場合どうするのかとか、いろいろあるわけです。それに対応するためには複数のメニューを用意して柔軟に使い分けられるという方がいいのではないかという感じが私にはするのです。

【佐藤会長】例えば、公設弁護人事務所といってもすぐに全国的にできるかというと、それはなかなか難しいかもしれないですね。

【井上委員】一挙にはできないかもしれません。

【佐藤会長】だから、それは画一にやる必要があるのか。

【吉岡委員】画一的にというのは無理があるように私も思いますし、やはり地域によっても複合的にやるにしてもやり方がいろいろあるという、そういう選択というのができるような状況をつくっておくということが大切ではないかと思いますけれども、特に国選弁護制度は今のままですと被疑者段階からというのは無理なんですか。

【井上委員】現行の制度ではそうです。

【吉岡委員】ですね。それで被疑者段階から国選弁護を考えるのか、被疑者段階ではむしろ法律扶助なり別の方法にするのかということも併せて考えていかなければいけないということですか。

【井上委員】そうですね。公判段階の国選ですと、請求すれば自分で付けられない限りは付けてもらえます。費用負担の点は別としてですね。しかし、対応可能な弁護士の数が限定されていることなどから、被疑者の場合、その範囲を少なくとも最初は絞らざるを得ないとすると、その辺の統一性をどう取るのか。一貫して弁護をした方が多くの事件では望ましいことは望ましいんですけれども、それ一本で行くのかということもありますね。

【吉岡委員】今、当番弁護士制度が弁護士会によってできていますから、被疑者段階から弁護士の活用はある程度は、場所によっても違うのでしょうが、できると思うんですが、やはり偏在地域によっては利用ができないという、そういう問題があるのと、髙木委員のレポートの中で触れられていたと思うんですけれども、社会的弱者といいますか、知的障害者とかそういう方の場合にはなかなかそこに行きつけない。警察の方で当番弁護士制度があるということを伝えても、その意味が分からないでそのまま過ぎてしまうとか、能力的に劣っているために自白に近いような状況になってしまうという、そういうこともあるので、ここで挙げられている以外の救済というか道筋がもう一つ必要ではないかと思います。

【井上委員】例えばドイツなどの場合は必要的弁護、弁護人がいないといけないという場合の、日本でも公判段階では、強制弁護、知的なあるいは精神的に問題がある人などには弁護人を裁判所の判断で付けることができるということになっているのですが、それを公判前の段階に延ばして行くというようなことをも含めて考えるかどうかということでしょうね。貧困な場合だけに限るのではなくて。

【佐藤会長】よろしいですか。水原委員、何か。先ほど手を挙げられたように思いますが。

【水原委員】今、吉岡委員の御質問ですけれども、被疑者段階から国選弁護制度を設けるかどうか。これを今回御議論をいただく一つの課題になっているわけです。その場合でも、被疑者段階から全部の事件について要求があれば付けられるかどうかという問題も一つここに私どもで指摘させていただいておりますが、導入する事件の範囲をどうするか。全部の事件にするのか、重大事件あるいは身柄事件に限定するのかなどという議論もございますので、それをやっていく必要があろうか、こういうことでございます。

【吉岡委員】そうですね。

【藤田委員】総論の方は皆さん御異議ないだろうと思うんですけれども、裁判する立場から言いましても、現在の刑事裁判は捜査段階に傾斜し過ぎているというようなことが言われているわけです。それだけに被疑者段階での被疑者の権利擁護ということを手厚くすればするだけ過ちなき裁判をするのにプラスになるわけですから、それが結構なことだろうと思いますし、特に少年事件の場合についても、少年審判手続における公的付添人制度、これは審判手続に入ってからの話ですけれども、それも含めまして、少年についてはかなり最近は難しい問題が起きている。私が仙台におりましたとき、山形の中学校の事件が起きて、現場が大変苦労したんですけれど、そのようなことを考えますと、そういうような形で、少年事件についても整備していただくのは全体的にプラスになるのではないかというふうに思います。

【水原委員】それからもう一点ですけれども、これは先ほど来ちょっと出ましたけれども、取調べの可視性の問題ですね。これなどとも関連して来ると思いますが、被疑者段階から弁護人が付けられますと、国選にしろ公設にしろ、どんどん接見をなさると、取調べの状況がどうであるかということが本人から聞かれることになりますので、捜査の適正にも十分資することになるのではなかろうかなというふうな感じを持っております。

【佐藤会長】そうしたら、ここのところは、被疑者弁護、少年審判手続のことも含めてですけれども、方向としてはそういう方向で考える。ただ、導入の方式、運営主体、ここに挙げてありますように問題ないし条件あるいは範囲などについて、少し考え方を整理していただく。そういうことで、ここのところはよろしゅうございますか。

【水原委員】なお、ここの問題についてヒアリングの際に関係者に御意見を聞くことも必要ではなかろうか。

【佐藤会長】 繰り返し申してきたように、ヒアリングは25日に予定しておりまして、ヒアリング項目を決めないといけないわけです。大体、今日のレジュメに見合ったような形で、今日の御議論を踏まえて、今日の4人の委員を中心に相談させていただきまして、後で確定して法曹三者にヒアリングの質問項目を送りたいと思っておりますので、そういうことも含んでいるということを御承知いただきたいと思います。

 そうしたら、この3のところはそういうことにさせていただくことにします。最後に、「4. 新たな時代における捜査・公判手続きの在り方」ですが、ここにはいろいろなことが挙げてあります。この点も、水原委員、最初、皮切りに何かお話がございますか。

【水原委員】論点整理のところでまとめさせていただいたとおりでございまして、もう各委員とも御承知のとおり現在の犯罪情勢は極めて問題が多いということは言うまでもございません。特徴としては凶悪化、組織化、国際化、複雑巧妙化、それから先ほど来出ましたコンピュータ犯罪でも象徴されますように新たな形態の犯罪、それと国民の司法に対する非協力といいましょうか、やはり権力に対してアンチ権力という感じで協力が得られないという、これがだんだん強くなってきている状況。そういうときに今までの捜査手法で責務を果たすことができるかというところが問題でございます。

 起きた犯罪について表面的な処理だけで実態をえぐる、すなわち真に処罰しなければいけない後ろ盾、黒幕の人物、ここまで摘発して根絶するような捜査が国民から望まれているのかどうか、表面だけの処理をすればよろしいというならば今までの状況でよろしいんですが、そうではなくて、国民が真に罰すべきものをきちっと罰してほしいというような御要望があるならば、ここでいろいろな手法を取り入れる必要があるのではないかということで、お三方と協議をいたしましたところをまとめさせていただました。

 これが刑事免責制度等の新たな捜査手法の導入が一つでございます。これは刑事免責制度を導入いたしますと、真実発見が刑事司法の使命だと、こういうふうに言っておりながら、刑事免責を与えることによって真相究明ができなくなるのではないかという国民感情との間の問題がございます。

 それから、次の「非協力な参考人等への対策」として、これも一つの方法として考えられることは捜査段階における参考人の勾引、あるいは出頭強制の制度、現行法上の起訴前証人尋問の拡充等々が上がります。

 現行法上の起訴前証人尋問というのは刑事訴訟法226 条、227 条に、捜査の段階で参考人の取調べをいたしましたときに参考人が供述を拒否したり、あるいは次の法廷においてその供述がひっくり返る可能性があるときにはあらかじめ裁判官に対して証人尋問を検察官が請求することができる。それは宣誓の上、証言を求めるわけですから、裁判所の前で、起訴前に。したがって、うそを言いますと偽証罪に問われるという一つの制約が掛けられて真実の供述が得られるのではないかという制度でございます。こういう制度の拡充の問題。あるいは出頭に応じない参考人を勾引あるいは出頭強制等の制度が考えられるということでございます。

 それから、そこにその他の手法として、先ほどレポートをしていただきましたとおり、おとり捜査の拡充等々、それから盗聴の問題もございましょうし、そういうことが考えられましょうということでございます。

 これが「新たな時代に対応する捜査・公判手続の在り方」でございますが、次に2番目の問題として「被疑者・被告人の身柄拘束に関連する問題」。これは髙木委員からいろいろ御指摘のあったところでございます。代用監獄の在り方、起訴前保釈制度をどうするか。起訴前保釈制度というものは導入すべきかどうか。それから、被疑者と弁護人の接見交通の在り方、今、接見交通に厳しい括りがなされているのではないかという一部の論調もございます。現状はどうなのかということ等を含めて御審議をいただきたいと思います。

 それから、令状審査の問題は、今は被疑者を逮捕、勾留するときには罪を犯したと疑うに足りる相当な理由の疎明資料がないと、裁判官は逮捕状、勾留状は発出しません。しかしながら、それが安易になされているのではないかという問題がございますので、それについての問題。それから、保釈請求に対する判断の在り方等。これはなかなか保釈をしない。身柄を人質にとっておいて調べるということがあるのではないかというような問題でございますが、これは現状はどうなのかということ等々を含めて御議論いただかなければいけない問題だと。これはもう当然ヒアリングの際に、こういうことについて関係方面から十分お聞き取りいただくことが必要ではなかろうか。

 それから「取調べの適正を確保するための措置」につきましては、取調べの可視性、これは両委員から御提言がございました。目的、範囲、程度、具体的な方法としてどんなものがあるのか。先ほど来、弁護人による取調べへの立会いの問題とか、それから録音、録画など。それから、あるいはそういうことではなくて、取調べ状況・過程の書面による記録の義務付け、どういうことを考えたらよろしいのかという問題だろうと思います。

 これに関しましては、先ほど少し触れましたけれども、被疑者の国選弁護人制度が被疑者段階から公費による弁護人選任ができるとなりますと、取調状況は弁護人が面会すれば逐一把握することができるということとの関連においても御検討いただかなければいけないことだろうと思っております。

 それから、3番目が「検察官の起訴独占・訴追裁量権の在り方」。これも先ほどのレポートの中にございましたけれども、検察官は起訴権を独占しておりますので、検察官以外のものは公訴を提起することができませんので、それが余りにも厳しく絞りを掛け過ぎているのではないか。もう少し緩めの判断で公訴を提起すべきではないか。これは被害者の立場からもそういう点についての御議論があろうかと思います。

 それから、これに対する改善の諸方策として、検察審査会の議決への法的拘束力。例えば起訴相当の議決が出たときに、検察審査会では11人の審査員によって審査がなされますが、そのうち、そこで起訴相当、起訴不相当、不起訴不相当、不起訴相当とこういう種類の議決がなされます。起訴相当の議決が出たときに、検察官に拘束力を与えるかどうかという問題。国民の司法参加との関係でありますが、それを検討する上においては検察官が起訴相当の議決に拘束されて起訴した場合に、無罪の判決が出たときの被告人に対する刑事補償はどうするか、国家賠償の問題はどうするかという問題をも含めて十分検討しなければいけない問題だろうと、このように考えます。

 4番目は少年事件への対応。

 5番目は無罪に対する検察官上訴の在り方。

 それから、被害者保護、量刑の問題等々は髙木委員、それから山本委員から出されたということです。大体まとめてみますとそういう状況です。

【中坊委員】それから、この次回のヒアリングのことに関してですけれども、ひとつ髙木委員もここで指摘されているように、刑事司法に関わる警察の在り方、これが我々の審議の枠外に外れておるのではないかと。そこが今大変な、一方において私も警察刷新会議でまさにそこが問題になっておるんで、ヒアリングするときに法曹三者だけでよいのかどうか。警察は呼ばなくても我々の審議が全うできるのかどうかという問題がやはり出てくるのではないかと思います。

 私としては、今、警察も本当に抜本的な体制の在り方が論じられておるところですし、私としては警察もヒアリングの対象に入れて、我々の審議の参考として意見を聞いておく必要はあるのではないか。捜査というのは、検察というよりか、ほとんどがやはり警察によって行われているわけですし、また、そもそも立件からすべてのことが警察で出発するし、御承知のように警察は26万人いるわけですから、数から言っても全然比較にならない。だから、それが捜査に関係されているわけですから、我々のこの司法制度改革審議会の刑事司法をやるときに警察を1回もヒアリングしていないというのでは少し問題が出てくる恐れがありはしないかと思うんで、私はできれば一応、それもまたどういうような項目で、どのように尋ねるかはみんなでもう少し審議してもらわなければならないけれども、とにかく我々の審議のヒアリングの対象として法曹三者だけでよいのかという問題はもう一度お考えいただきたいと思うわけです。

【井上委員】その点は後で御相談するということで、中身を先に議論する方がよろしいのではないでしょうか。

【佐藤会長】今の点は考える必要はあるかと思いますけれども、今回の3回でやる。

【井上委員】それは後の方で相談すれば。

【佐藤会長】どちらでもいいので。

【井上委員】しかし、先に中身の議論をやっておかないとですね。

【佐藤会長】今、簡単に済むのなら。

【中坊委員】私はそういう指摘をしているだけで、具体的には。

【佐藤会長】中坊委員の御指摘は趣旨としてごもっともなところがあるので、考えさせていただきます。将来、いつ、どういう形でやるかということも含めて、ちょっと考えさせていただきます。

【井上委員】よろしいですか。今日の御報告について、ちょっと誤解のないように、意見というよりは、幾つか指摘させていただきたいと思うのですが、まず刑事免責制度について、取引的なものだというふうにおっしゃいましたけれども、その制度自体は取引ではなくて、あなたの言ったことは不利な証拠にはしないということを宣明し、黙秘権を消滅させることによって、証言強制をするというものですので、それ自体としては取引的な要素のないような形で構成することが可能なのです。ただ、その前提として取引という要素を事実上伴ってくることがある。そうなると真実性の問題に影響するという、そういう問題だと思います。

 もう一つは、起訴前保釈についての、これは政府の見解で、これは法務省に聞かないといけないのでしょうが、その言っていることは恐らくこういうことかなと思うんです。アメリカなどでは、とにかく被疑者はほとんど全員逮捕する。ごく軽微な事件だけは逮捕しませんけれども、恐らく90何%が全員逮捕されるというところから始まる。しかも、その逮捕も、司法審査を経ないで、重大な事件については相当な嫌疑があれば逮捕ができますので、そういう無令状の逮捕から出発していて、その後、裁判官のところに連れていって司法審査をして、そこで保釈するかどうかということになる。

 ところが、日本の場合は、今日配っていただいた追加資料の資料2、3ページですが、そこに示されているように、被疑者全体の30%ぐらいしか逮捕されない。つまり、そこのところで絞っているということなんですね。しかも、その中でも、次の4ページにありますように、通常逮捕令状による逮捕が最も多い。その上の緊急逮捕というのも、直後に令状を審査しますので、大半が司法的なチェックを経ている。そこが違うんだということだと思うんですね。

 それに加えて、アメリカの場合でも、ドイツやフランスもそうですけれども、一旦身柄拘束が認められると、期限はないということです。これに対し、日本の場合は、23日という期間それ自体を長いとみるか短いとみるかは別として、被疑者を身柄拘束したときは、最大限23日までに処分を決めなさいという制限がおかれている。その辺が違うんだという趣旨だと読んだんですね。

 もう一点は、「人質司法」と言われていることなんですけれども、勾留された被告人のうち保釈になった者の率だけ見ると確かに年々低くなっている傾向があるんですけれども、以前に配っていただいた資料の107~108頁ですが、保釈請求自体が少なくなっていますね。そして、それに対する許可率を見ると余り変わっていないわけですから、問題は、むしろなぜ請求が少なくなってきているのかということでして、これについては、いろいろ評価が分かれるのでしょうけれども、その辺はヒアリングで是非聞いてみたいと思っています。

 ですから、そういう事実も踏まえて議論していくべきだという趣旨で指摘させていただきたいと思います。

【中坊委員】おっしゃるように実際上はそうかもしれないけれども、極端に被告人、被疑者という弱い立場と、警察とか検察という強い捜査機関という強い立場の中におけることでしょう。だから、それが現状がどうのこうのというよりも、やはりそれがいかにあるべきかということは、十二分に審議をしていただかなければいけないので、率がどうであるとか、そういう現状の査定はさておいて、やはり基本的に我々の論理としてはいわゆる刑事司法がいかにあるべきかというところの視点からもう一度そういう制度については見直していく必要がある。現実としては、今言うように人質司法と、これは我々、弁護人の立場に立ったとしても、余りにもひど過ぎるのではないか、認めない限りは絶対保釈しない。だから、保釈請求はだれもしないということになっているような、そういうようないきさつもありますから、そこはよくヒアリングも重ねて審議していただく必要があろうかという気がしますね。

【井上委員】おっしゃるとおりなんですけれども、外国との単純な比較で語られると、ちょっと問題のとらえ方が違う。全体の構造が違うんだということを指摘させていただいたのです。

【吉岡委員】今、外国の場合23日という縛りがないというお話だったんですけれども、よくニュースなど見ていますと、23日で一度保釈になって、出ないうちに別件逮捕でまたという、そういうことも日本の場合にはありますね。

【井上委員】別件逮捕ではなく、別の被疑事実で改めて身柄が拘束されるということですね。

【吉岡委員】それでまたそのまま続いて保釈されないのと同じ状態になるという、その辺のところもどうなっているのか、なかなか分かりにくいという問題があります。

 それからすぐに逮捕してしまう。それも事実なんだと思いますけれども、これも私はドラマとかそういうところでしか分かりませんから当たってないかもしませんけれども、逮捕するとすぐに黙秘権があるとか、いろんなことを本人に告げると同時にもう弁護士がすぐ来るというようになっているように、ドラマで見る限りはですけれども、アメリカの場合にはなっていますね。日本の場合にはなかなかそうはなっていないという、その違いというのがあるのではないかという気がいたしますので、その辺のところも合わせて考えないと判断を間違えるおそれがあるという気がします。

 それから、4ページの水原委員の御説明のところで、上の方の二つ目の○と三つ目の○のところなんですけれども、非協力な参考人に対してどう対処するかということと、その他の手法としておとり捜査、盗聴などというお話がありましたけれども、これはおっしゃることは分かるんですけれども、非常に気を付けなければいけないのは人権侵害の問題がすれすれというか、あるという、その辺のところを気を付けないと非常に問題になるのではないかと思います。

【井上委員】アメリカの場合も、理想的にいっている所はそのとおりでして、告知がなされ、弁護人が24時間以内くらいに駆け付けて来る。連邦の制度などはそうなんですけれども、地方では弁護人を付ける体制の方が整っていない所もありまして、そのような所で弁護人が付くのがかなり後になるということがあるのです。日本の場合も、権利の告知に関する限り、黙秘権は取調べに入る前に告知されますし、弁護人選任権は逮捕して引致された段階で行われます。そこで弁護人にこういう人を付けたいので連絡してくれ、あるいは弁護士会を指定するなどして頼みますと、弁護人を選任できるということになっていますけれども、問題は貧困等の理由で自ら付けられない人が多い。そこで公的な弁護制度というものを手当てしないと、現実にはそこで付くということにはならない。そういうことなのです。

【吉岡委員】弁護人が必ず付くという制度になれば別だと思いますけれども、今はそうではないので、黙秘権がありますよということを告げられたとしても、その後の取調べの段階で、これも巷間聞くところですけれども、自白しなければ帰してやらないとか、そういうことがあって、実質的には自白を強要しているようなことがあるやに聞いておりますので、気を付けなければいけないと思います。

【井上委員】しかし、自白すれば帰してもらえるということには当然にはならないのですよ。

【吉岡委員】自白したら帰れないというのが実際でしょうけれども、やはり早く帰りたいためにやってもいないことをやったと言ってしまうことがあってはいけない。そういうためには、逮捕した早い時期に弁護人が付くということが実施されるようにならなければいけないと私は思っておりますが。

【水原委員】身柄の拘束の関係は、これは資料15、67ページ以下に諸外国との比較がずっと出ております。英米では、道交など軽微な事件以外は身柄拘束率が約100%。先ほど、95%とおっしゃいましたが、これは全部の事件のうちの96%です。資料には95%と書いてあります。日本の場合は身柄拘束が例外なんです。原則は任意捜査なんです。身柄率を調べた資料がございますが、刑法犯ですと26%が身柄事件なんです。だから、74%は在宅、逮捕せずに任意の調べをしているんです。それだけアメリカのように原則として逮捕、無令状で逮捕するものとは違うということがまず大前提でございます。

 令状審査は十分なされているかどうかは今度ヒアリングの際にお聞きしなければいけないことですけれども、原則身柄拘束と例外身柄拘束との違いがあるということが基本的な問題です。

 それと、先ほど非協力な参考人等への対応の問題がございましたが、これは制度としてはそういうものが考えられますということで、これが入れられるかどうかは十分ここで議論をする必要がありますという趣旨で申し上げたわけでございます。是非それを入れる入れないということは御議論の場でひとつよろしく。

【佐藤会長】これから。

【中坊委員】それから、これは質問なんですけれども、陪審の問題をここでやるのか、それはまた全然別個のところですか。

【佐藤会長】後で、国民の司法参加のところでやります。更に整理するのは、ここのところが一番難しいかもしれませんね。

【藤田委員】福岡の公聴会で17歳の女子高校生が大変よく勉強しているんでほめたことはほめたんですけれども、日本の刑事裁判の無罪率が0.1 %というのは検察官の言いなりになっているに違いないということでしたので、自白事件が全体の90数%を占めているんだという話をしたんです。しかし、その自白を信用するのがいけないという批判だったですね。最後まで自白を翻さない人のパーセンテージなんですけれども。それはそれとしまして、身柄拘束が過度にわたってはいけないというのは当然なんですけれども、その例として、逮捕状請求の却下率とか勾留請求の却下率ということが問題とされています。私が、以前、この種の事件を担当していた頃は、随分昔の話ですが、問題があって担当の警察官を呼んでいろいろ聞いてみても、逮捕状を発付できないということになると請求が取り下げられてしまうのが通常でした。やはり警察内部での責任問題か何かあるようで。そういうことがありますから、実質却下が統計で表に出てこないということがある。実態は、最近はどうなのかということをヒアリングのときに聞いてみたいと思うんですが、そういう統計の数字の基礎になっている事情というのもある程度認識した上で考えることが必要というような感じを持っております。

【水原委員】それから、自白したならば勾留されるのではないかと、こういうことでございます。事案によります。事案によっては自白をするとそのままで勾留請求をせずして、検察庁に送られたときに勾留請求せずに釈放する場合が多うございます。しかし、事犯によりましたならばやはり自白をしたからといって、住居不定、証拠湮滅、逃亡等のおそれがありますときには勾留しなければならない。やはり勾留の要件が備わって、なおかつ勾留の必要がある場合は勾留しますけれども、そうでないときには釈放される例がままあるということも御理解いただきたいと思っています。

【髙木委員】いろいろ御指導いただいて恐縮ですが、身柄拘束の問題で令状審査がそれぞれ裁判所でいろんな御努力をされているんでしょうが、例えば逮捕は31%ですよと、アメリカと当然違うんですよと、逮捕は例外というのもあって、それはものの考え方としてそうなっているのかしれませんが、例えば、件数11万5,000件ですね。これは元日も審査されるので、365日で計算して1日に3,000人を超える数、それを全国の裁判所数百個所で審査される、そういう中で本当に令状審査というのが本来の趣旨を体して行われているか、心配な点もあるということです。今、藤田委員からですか、却下されるといけないからその前に取り下げるものもあるというお話もありましたが、そういうものを含めてどのぐらいの感覚なのかよく分かりませんけれども、警察の方が来られて、こうこうこうです、だから逮捕しますという一方的な話を裁判官が聞かれて、それならいいよ、悪いよという判断を、私は詳しく実務を知りませんが、いろいろお聞きすると、当番のように担当が決まっておられて、ということでやっておられるとのこと、本当に審査という名に当たる審査になっているのかと思えてなりません。

 それから、一方では被疑者の方の、被疑者段階の弁護の問題などいろいろありますけれども、言い分なり何なり、あるいは被疑者の方の認識などがちゃんと聴されているのか、それは一方的なものだという懸念がないのでしょうか。ここの辺も運用の仕方として、まさに有罪推定なんですね。お前ら悪いことしたんだろう、悪いことをしたのがこういう目に遭うのはしようがないんだ、大方はそういう面があるんだろうと思いますが、そういう意味ではこういう数字を見るにつけ寺西さんのことまでは言うつもりはなかったのですが、彼の言によればみたいな話もある訳です。それに反論する宮崎地裁かどこかの判事さんがその反論を新聞に書かれたとも聞いています。

 こういう実態をどう理解して、どうしていくんだ、これは国によってやり方が違うんだし、ということだけではないと思います。アメリカで100%逮捕だといって、もしアメリカで国民の理解を得られない乱暴なことをしておったらあの社会が許す社会かと思います。その辺は制度と国民の感覚の違いという御説明になるのかもしれないけれども。要は、問われているのは、私はそういうことだろうと思うんです。

【井上委員】誤解のないように申し上げると、逮捕状の発付のときにも、ただ警察ないし検察官からこの被疑者はこれこれのことをやったと主張があるだけではだめでして、さっき「疎明資料」という言葉が出ましたけれども、それまでに集めている捜査上の資料、参考人の供述調書とか、そういうものを出して、裁判官としてはそういう資料に基づいて審査をする。必要ならば事実の取調べもできるということになっているんです。

 その場合、何で一方の方の資料だけかというと、緊急な判断が必要だということと、捜査の秘密を保持しなければならないということによるわけで、この段階では一方の資料だけで判断せざるを得ない。しかし、司法審査を経るという担保は設けておくという仕組みなんですね。その上で、それほど長い期間置かないで、48時間ないし72時間の間にもう一回勾留審査をする。この勾留審査では、勾留質問という形で被疑者の言い分も聞いて、被疑者の弁明と捜査側の資料とを照らし合わせた上で、より長期の身柄拘束ができるかどうかという判断をする。仕組みとしてはそういうふうになっている。

 ですから、制度としては、それなりに理由はあることなのです。諸外国の例を見渡しても、どこの国でも、その段階での令状発付、捜索差押えなども含めて、その手続が当事者主義化されているというところはありません。それは、同じような共通の理由があるからなのですね。さっきの調和じゃないんですけれども、厳しく対立する二つの要請の一方を少し抑えてある。そして、その復活を2段階目の審査でやるという、そういう制度の仕組みになっているわけです。

【藤田委員】どれだけ真剣に令状に取り組んでいるかという御質問ですけれども、これはやはり真剣に取り組んでいるとしか言いようがないんです。

 勾留請求の場合には、今、井上委員が言われたように、本人の弁解を聞く機会がありますけれども、逮捕状の場合には本人の弁解を聞くわけにいきませんから、それは警察側の資料だけということになりますけれども、捜査報告書のような資料だけでやっているわけではなくて、例えば傷害の事件であれば、被害者の供述調書とか、そういう客観的な証拠がそろわなきゃ発付しないわけです。

 これは裏付けになるかどうか分かりませんけれども、私、昭和32年に裁判官になって、初めて逮捕状を発付した被疑者の名前を今でも覚えています。ここで名前を言うわけにはいきませんけれども、公職選挙法違反の事件でした。ですから、それはいいかげんにやっているということは、全くありません。

【水原委員】今の令状審査の問題ですけれども、逮捕のときには逮捕状を請求しましたということを被疑者、弁護人に通知するわけにはまいりません。捜査は密行でございますので、当然のことでございます。そのときには、罪を犯したことを疑うに足る、相当な理由を証拠によって明らかにしなければ、裁判官は令状を発出しません。それだけじゃなくって、警察で逮捕した場合は、逮捕して弁明を聞きまして、48時間以内に、釈放するか、あるいは検察官に送致しなければならない。そこで検察官が弁解を聞き、証拠を吟味した上で、勾留請求に相当するか、あるいはそこで釈放してよろしいかということを決めます。

 勾留請求をするときには、24時間以内に裁判官に勾留請求する。そうしますと裁判官はそこで勾留の必要があるかどうかというものを十分審査します。もう必要がなければ勾留請求を却下します。

 それだけで司法審査を終わるかというと、そうじゃなくて、勾留状が発出されますと、今度は準抗告という、弁護人、被告人の方から、勾留を付けたのはけしからぬということで準抗告を申し立てられます。それについて裁判所が請求を棄却しますと、今度は特別抗告をします。さらに、勾留理由開示という、どういう理由で勾留しているんだということを弁護人、被告人は裁判所に請求することができます。いろいろな審査方法があるわけで、それを十二分に活用している方もたくさんおります。活用していない方も多くいらっしゃいますけれども、それだけ司法審査は、やろうと思えば十分担保されているという実情を御説明申し上げました。

【佐藤会長】今のお話をうかがい、仕組みと実際がどうなのかというところで、それぞれ少し理解の仕方が違うんじゃないかという思いをしておりますけれども、司会者として時間が気になります。やがて5時にならんとしておりますので、整理しにくいかもしれませんけれども、次回ヒアリングをやりますので、それを踏まえて、私どもとして議論しやすいように整理していただけないでしょうか。例えば刑事免責について、さっき少し説明がありましたけれども、恐縮ですが、少し全体で議論しやすいように整理をすることを心掛けていただくと。

【井上委員】要するに、論点になるようなところを書き出すということですね。

【佐藤会長】そうしていただければ、もう少し具体的に中身に入って議論できるかと思います。最終的に3回ですべて決まってしまうということではありません。民事司法の場合と同じように、3回充てておりますけれども、あと2回です。そこで、一応、民事司法の場合と同じようなまとめ方をしていただいて、中間報告を作成するときに更にその表現ぶりなどについていろいろ御議論いただくことになります。今日の議論とヒアリングを踏まえて、議論しやすいように整理していただければと思います。

【井上委員】それは結構なんですが、民事と同じ形でまとめるというところは、性質に応じて異ならざるを得ないかもしれません。

【佐藤会長】それは勿論です。

【井上委員】民事より議論する回数が少ないものですから、拙速はいけないと思うんです。整理した上、ヒアリングも聞いて、更に議論を煮詰めて、大きな筋でまとまるところはまとめる。しかし、まとまらないときには更に審議を尽くすというふうに言っていただいた方がよろしいのでは。

【佐藤会長】私はそういう趣旨です。強引にまとめるというのではなくて、我々がここをこういうふうに議論した、今後この点について更に議論すると、そういうことができるようにということです。

【中坊委員】いずれにしても、前から繰り返し言っているように、おっしゃる裁判官がどうなのか、検察官がどうなのか、法曹養成からみんな絡んでくるんだから、いずれにしても、最終的な結論はここだということは出てこないわけです。ありとあらゆることが有機的に結合しているんだから、その方は一応良心的になさるつもりでも、結果的にどうなっているんだという全体の問題ですから、いずれにしても、この議論を前に進めていくという意味では、会長のおっしゃるように、そういうふうな書き方でまとめていって、そして前へ向いてやらないと、我々の意見がまとまらないですね。

【佐藤会長】先程も御指摘のあったように、例えば、弁護士の在り方によって可視的になり得るところが出てくるわけです。

【中坊委員】全部が変わってくる。

【佐藤会長】では、ここはそういうようにさせていただきます。4人の委員の方々、大変御苦労をお願いしますけれども、よろしくお願いいたします。

 そして、質問項目も既に申し上げたように、これに対応するような形で考えておりまして、更に今日の議論を踏まえて、項目を協議させていただいて、会長代理とも相談しながら決めさせていただきたいと思いますが、ここはお任せいただけますか。

 どうもありがとうございました。

 もう5時を回りまして、あとは余り時間を取らないつもりです。

 次の議題でありますが、今後の審議スケジュールでございます。

 一つは、夏の集中審議についてであります。お手元の「夏の集中審議日程」をごらんいただきたいと思います。6月27日の第23回会議において、皆様の御了解をいただいておりましたけれども、委員の御都合等をお聞きしましたところ、若干変更せざるを得なくなりましたので、改めてお諮りする次第です。

 新たな日程は、そこに記載されているとおりですけれども、8月7日は午後1時30分から、法曹養成制度について審議を行い、引き続き法曹人口について審議を行いたいと考えております。

 それから、8日ですけれども、午前10時から、弁護士の在り方等について、お願いしております石井、吉岡、北村委員からのレポートをお聞きして、意見交換を行って、午後には法曹一元その他関連する問題について意見交換を行いたいと考えております。

 最終日の9日も、午前10時から法曹一元その他関連する問題について、引き続き意見交換を行いたいと思っております。

 この法曹一元その他関連する問題につきましては、既にお話ししておりますように、レジュメを用意したいと考えておりますが、事前にできましたら、次回の審議会までにそのレジュメをお配りしたいと考えております。

 私としては、委員全員の方に活発に意見交換をしていただきたいと考えておりますので、あらかじめレジュメに目を通していただいて、更に可能であれば、4月25日の第18回会議の際に配付しました法曹一元についての参考説明や、これは時間の関係で説明できなかったんですけれども、その説明の参考資料も御参照いただいた上で、当日の審議に臨んでいただければと考えております。

 記者会見なんですけれども、集中審議最終日の9日の審議終了後にまとめて行いたいと考えております。私と会長代理は当然出席いたしますけれども、また御都合のよろしい委員もできましたら御参加いただければと考えております。

 集中審議の会場は、既にお話ししておりますとおり、三田共用会議所を予定しております。よろしくお願いいたします。この件はそういうところでよろしゅうございましょうか。

 それでは、次に「夏の集中審議以降の審議スケジュール」でございます。これもお手元のペーパーをごらんいただきたいわけでございます。以降のスケジュールにつきましては、6月2日の第21回会議において、ある程度の見通しを立てておくということから予定をお配りしてありますけれども、その後の審議状況などを踏まえまして、会長代理と相談の上で、夏の集中審議以降の審議スケジュールとして、おおよそこういうものということでペーパーのような日程を考えているということであります。

 まず、弁護士の在り方につきましては、夏の集中審議において、石井、吉岡、北村委員からそれぞれレポートをいただいて意見交換を行うことにしておりますので、引き続いて第28回、第29回、8月29日と9月1日ですけれども、そこで取り上げるのがいいのではないかと考えた次第です。

 その次は国民の司法参加であります。まだ、委員の間で集中的な意見交換や議論を行っておりませんので、第30回、31回、32回の3回を使いまして、既にお願いしております石井、髙木、吉岡委員からのレポートをお聞きして審議を行いたいと考えております。

 更に、その後のことにつきましては、文部省にお願いしております法科大学院に関する検討結果が9月末には提出される予定になっておりますので、その結果を受けて、法曹養成制度に関する審議を行う必要があります。

 また、9月末までに御審議いただく大括りのテーマについても、それぞれ一応の取りまとめを行ったとしても、更に審議を行う必要があるものも出てくるのではないかと思っております。

 他方、中間報告につきましては、従来から本年10月を目途に決定、公表したい旨お話ししてきましたので、私としては、勿論柔軟に考えなければいけないと思っておりますけれども、やはりできれば10月末ころを目途に中間報告を決定したいと考えている次第です。しかし、今、お話ししましたように、今後の大括りのテーマごとの審議の状況も踏まえませんといけません。10月以降の審議日程や中間報告の審議決定時期につきましては、確定することがなかなか難しい状況ですので、10月以降の審議日程につきましては、今後の審議状況を見ましても、適切な時期に会長代理とも相談しながら改めてお諮りしたいと思っております。

 ただし、今後の審議項目や審議日程を考えますと、当初予備日としておりました9月18日、それから10月16日なんですけれども、この9月18日については、第31回として既に予定に入れておりますけれども、10月16日も開催せざるを得ないというように考えております。

 第28回の8月29日以降の審議会につきましては、これまで午後開催のものは2時からということにしておりましたけれども、時間もいよいよ足りなくなってきているということで、お許しいただければ、午後1時30分からにしたいと考えております。

 更に大変申し訳ないんですけれども、予備日としておりました第31回の9月18日と10月16日につきましては、いずれも月曜日で午前10時開始としておりますけれども、これもお許しいただければ、午前9時30分に開始させていただきたい。

 気が重くなるばかりかもしれませんが、夏の集中審議以降のスケジュールとして、こんなことを考えているということですが、いかがでございましょうか。

【髙木委員】9月12日に国民の司法参加の方のレポートをするようにということですが、調整を一生懸命しておりますけれども、12日にやらせていただくことが難しいことになりましたら、次の18日の冒頭にでもやらしていただくというお願いはできますでしょうか。

【佐藤会長】それは考えさせていただきます。本当に恐縮なんですけれども、否応なしにお願いしますという感じかもしれませんけれども、どうぞよろしくお願いいたします。

 それから、配付資料の確認の方に移らせていただきますけれども、お手元の「『国民が利用しやすい司法の実現』及び『国民の期待に応える民事司法の在り方』に関する審議結果の取りまとめ」は、前々回の会議での審議内容に従って、原案を修正したものでございます。修正部分は下線を記しております。現段階での一応のとりまとめということで御了解いただければと思いますが、よろしゅうございましょうか。

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】ありがとうございました。それでは、配付資料についてお願いします。

【事務局長】本日配付の資料につきましては、特別に御説明することはございません。なお、この際、ついでに一つ御報告をさせていただきたいんでありますが、お手元に「民事訴訟利用者調査について(報道関係者用ブリーフィング資料)」というものをお配りしております。このアンケート調査につきましては、前にこの審議会において決定された方針に基づきまして、既に調査嘱託をしておりまして、来週にでもアンケートをしていただく方々に協力依頼の文書を発送しようというふうに思っておりまして、そのために本日の記者会見で報道関係者の方にそういった趣旨の記事を載せていただけるように御協力を依頼するつもりでおりますので、その予定ということでお配りしておきました。なお、実質のアンケートの調査項目につきましては、嘱託を依頼している教授の皆様方の方で確定し次第、皆様に御説明をしていただくという予定にしておりますので、その際にどういう調査項目になっているかをお聞きになっていいただければと思っております。

 以上でございますが、もう一つ、14日に札幌の公聴会にお出掛けいただける委員には、誠に御苦労様でございますが、本日、帰りがけに当日の航空券をお渡しいたしますので、お忘れなく羽田空港までお持ちいただければと思っております。後ほど皆様にお配りいたしますので、よろしく御持参いただきますようにお願いいたします。

【佐藤会長】ありがとうございました。今のように14日、15日で御苦労様でございますが、よろしくお願いします。

 それから、18日、19日が酒田の実情視察ということになり、7月24日は東京での第4回公聴会ということになります。参加される委員には、後ほどそれぞれ事務局から御案内があることと思います。

 次回の審議会は7月25日火曜日、1時半から5時まで、この審議室で行います。30分繰り上げておりますので、御留意いただければと思います。

 以上でございます。今日は15分オーバーということになりましたが、記者会見、いかがいたしましょうか、髙木委員。

【髙木委員】伺います。

【佐藤会長】ありがとうございます。どうも御苦労様でございます。