司法制度改革審議会

第28回司法制度改革審議会議事録




第28回司法制度改革審議会議事次第
日 時:平成12年8月29日(火) 13:30 ~16:55
場 所:司法制度改革審議会審議室
出席者(委 員)
佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、井上正仁、北村敬子、髙木 剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本 勝、吉岡初子
(事務局)
樋渡利秋事務局長
(説明者)
久保井 一匡 日本弁護士連合会会長
房 村 精 一 法務省司法法制調査部長
中 山 隆 夫 最高裁判所事務総局総務局長
1.開 会
2.「弁護士の在り方」について
3.閉 会

【佐藤会長】それでは、定刻になりましたので、ただいまから第28回会議を開会いたします。
 本日の議題は、夏の集中審議に引き続きまして、「弁護士の在り方」について審議を行いたいと思います。
 内容としては、日本弁護士連合会などからのヒアリング、それから質疑応答、それに引き続きまして、意見交換を行いたいと考えております。よろしくお願いいたします。

【髙木委員】弁護士の話に入る前に1、2お尋ねしたいのですが、例の7、8、9日と集中審議をやり、とりわけ法曹一元問題は、法曹一元という言葉を使わないようにしようということでありましたけれども、多様化と多元化の問題等を含めてああいうまとめをして、記者会見をしていただいたと承知しておるんですが、その後出ました新聞を見ておりますと、例えば、読売新聞とか日経新聞等に、法曹一元制は採用しない方向となったとか、法曹一元導入の是非を巡る論争に事実上幕を引き、今後の議論を裁判官改革に軌道修正した形となったと、こういうような報道ぶりがあり、この部分だけを見ますと、議論に参加した私の認識とちょっと違うニュアンスの記事かなと思えてならないんですが、そういう記事になるような記者会見の内容であったのでしょうか。その辺について、受け止め方はそれぞれあるのかもしれませんけれども、いろんな記事の書かれぶり等を見ておりまして、現に議論に参加させていただいた者としては、ちょっとニュアンスの違いがあるんじゃないかと感じました。そういう意味で、世論等に形としてはミスリードみたいなことになるとしたら、遺憾なことではないかなと思います。その辺どういうことだったのか、記者会見された会長なり会長代理に事情を教えていただきたいということなんです。

【佐藤会長】法曹人口のとき、審議会で最後に読み上げて御了承いただいたものを記者会見で読み上げるということにしましたが、法曹一元のときも全く同じ手法を取らせていただきました。
 審議会集中審議の最後の段階で、記者会見では、審議の経過とか、細部については触れるつもりはありません、ここでまとめたこの文章を眼光紙背に徹して理解していただくようにと申し上げる、そのようなつもりです、ということを申し上げました。
 記者会見のとき、最初にあの文章をゆっくりと読み上げました。審議の内容、どの委員がどういうことをおっしゃり、どういう経過をたどってあそこに至ったかということについては、議事録が公表されるので、それを御覧いただきたい、今日ここでは、その辺の細部には一切入るつもりはありません、ということを最初に申し上げました。
 ただ、法曹一元については、集中審議用のレジュメを記者の皆さんにも配っており、その冒頭にある「『法曹一元』をめぐる議論の根底にあるものは何か」というところから審議に入り、法曹一元という言葉にとらわれず、法曹一元の議論の根底にあるものを目指していろいろ議論した結果、このようなまとめになった、という趣旨のことは申し上げました。それ以上の審議の内容、経過などにつきましては具体的に申しておりません。私が今言ったようなことを、記者の皆さんがどういうように受け取って、どう解釈されたのかということは、私としてはいかんともしがたいことであります。報道の内容につきましては、私個人としてはいろいろな思いはありますけれども、当日は今申し上げたような姿勢で臨み、余計なことは一切申しているつもりはありませんので、御理解いただければと思います。
 私どもの審議の内容につきましては、いずれ議事録が公表されることであります。それをじっくりとお読みいただければ、我々の意図するところは御理解いただけるのではないかと、会長として思っております。先ほど申し上げたように、法曹一元論の根底にあるものを目指して議論をし、取りまとめた結果がこれですという趣旨のことは申しているつもりです。

【竹下会長代理】私からも申し上げますけれども、今、会長の言われたとおりで、皆さんでお決めいただいたメモをゆっくり読み上げられたので、恐らく新聞記者の方は、ほとんど一字一句そのままメモを取ったのだろうと思います。
 それ以上のことについては、法曹一元論を取るのか取らないのか、そういう議論の仕方でない考え方で議論しようということになったので、あそこに書いたようなまとめになったのだという説明です。それ以上のことについては、会長も言われませんでしたし、私自身も何も言っておりませんので、あとは記者の解釈と申し上げるしかございません。

【髙木委員】そういうお答えを聞いたら、そうですかと申し上げるしかないんですが、その後、審議会の議論の内容等に、結構だれがどういう態度であったとか、例えば、私の場合は個人名も引用された記事もありましたりして、その辺は勿論議事録に出るわけですから、言ったことは言ったことなので結構ですけれども、マスコミの方々に、まさに予断を与えるようなお互いのコメントのし合いは、慎んだ方が良いのではないでしょうか。私の感想なのでお答えいただくということでなくていいんですが、日本の司法が何とかいいものになってほしいなという立場で議論に参加しておるわけですから、よろしくお願いをしたいと思います。

【佐藤会長】御承知のように、この会議の公開をめぐっていろいろ御議論いただき、現在のような形に昨年12月に決めて、記者の皆さんにはモニターで御覧いただくということにしました。そこに至る間、私は繰り返し申し上げたことですけれども、ともかく会議として委員相互の信頼関係が非常に大事であり、そういうものを見定めた上で公開問題について結論を出したい、と。そして12月にああいう形で決めさせていただいたわけですが、その気持ちは今も全く変わっておりません。今後もお互いに信頼関係を持って議論してまいりたい、私も会長としてそれに向けて努力したいと思っておりますので、そこは諒としていただきたいと思います。

【竹下会長代理】個人名が出ているというのが私にも何とも理解しがたいのですが、記者会見の場では一切そういう話は出ませんでした。

【佐藤会長】そういうことでよろしいでしょうか。
 最初に申し上げるべきことだったかもしれませんけれども、3日間にわたっての集中審議、本当に御苦労様でございました。いよいよ2か月ちょっとで中間報告です。10月末と言ってきており、今も10月末を目指してはおりますけれども、もうちょっと時間が掛かるかもしれません。その辺は後で、9月1日あるいは12日の辺りで、日程について改めて御相談させていただきたいと思っておりますけれども、いずれにしましても、もう2か月ちょっとと差し迫っております。いろいろと御無理を申し上げることが出てくるかと思いますけれども、何とぞよろしくお願いいたします。
 それでは、「弁護士の在り方」について、早速、日本弁護士連合会等からのヒアリングに入りたいと存じます。
 なお、次回の9月1日の審議会では、引き続き意見交換を行うとともに、取りまとめを目指したいというように考えている次第です。
 夏の集中審議では、石井、吉岡、北村委員からレポートをしていただき、意見交換を行いましたけれども、これらを踏まえまして、レポーターをしていただいた各委員及び中坊委員と御相談して、本日のヒアリング項目を決め、法曹三者に既にお願いしておるところであります。各委員には、いろいろと御苦労いただき、本当にありがとうございました。また、法曹三者におかれても、私どものヒアリング項目に基づきまして、詳細な資料などを御準備いただきまして、本当にありがとうございました。心から感謝申し上げます。
 それでは、まず本日説明のためにお見えいただきました方々を御紹介させていただきたいと存じます。
 日本弁護士連合会からは、久保井会長でございます。
 法務省からは、房村司法法制調査部長でございます。
 最高裁判所からは、中山総務局長でございます。
 お3人、お忙しいところ本当にありがとうございます。
 「弁護士の在り方」に関するヒアリングということですので、最初に最も関係の深い日本弁護士連合会から20分程度、多少前後してもよろしゅうございますので、御説明をいただきたいと思います。その後、三者一括して質疑応答を行いたいと考えております。
 それでは、よろしくお願いいたします。

【事務局長】その前に、この「弁護士の在り方」についての審議のための法曹三者から出されました資料につきまして、先週末にお送りしておりますが、その後、日弁連の方から修正の申し出がございました。その修正箇所につきましては、冒頭の右上に「確定版修正箇所」というメモ書きをした内容が修正されたものであります。その修正を含めました本来の姿の日弁連からの提出資料は本日お手元に配付しておりますので、前の資料ではなしに、この本日配付しております資料を御参照になっていただければと思います。 以上でございます。

【佐藤会長】そういうことでございますので、よろしくお願いします。

【日弁連(久保井会長)】日本弁護士連合会会長の久保井一匡でございます。
 お手元にレジュメをお配りしておりますが、よろしくお願います。
 当審議会におかれましては、昨年の12月8日に前会長の小堀樹が意見表明させていただきましたが、本日、改めて私に日本弁護士連合会の意見を表明する機会を与えられましたことを深くお礼申し上げたいと思います。また、当審議会におかれましては、昨年7月以来今日まで、既に30回近くにわたり21世紀におけるわが国の司法のあり方につき、熱心に、かつ積極的に審議をなされ、数々の分野で、その方向についての取りまとめをされてきたことに深く敬意を表します。とくに、昨年12月21日に当審議会が公表された「論点整理」におきまして、このたびの司法改革は三つの観点から、すなわち一つは日本社会において法を血肉化させること、二つは国民一人ひとりが統治客体意識から脱却し、統治主体意識をもって社会に参画していくこと、三つは法曹が社会生活上の医師としての役割を果たしていくことの3点を実現するために行うべきことを明確に指摘されたことに、私は深い感銘を覚えました。
 さて、日弁連は昨年、創立50周年を迎えました。日弁連は、この間、国民の基本的人権の擁護と社会正義の実現を使命とする弁護士の団体として多くの活動を行ってまいりました。しかしながら、弁護士が今なお一般市民にとって敷居が高い、近づきにくい、顔が見えないなどの御批判を受けております。
 そこで、日弁連は、司法制度を担う法律家の中で弁護士が市民に最も近い立場にあることを自覚して、市民により身近で信頼される弁護士像の確立をめざして、様々な努力を重ねています。また、当審議会では、去る8月7日から行われた3日間の集中審議におきまして、いわゆる法曹一元制度につき熱心な御審議をいただきましたが、日弁連は、21世紀においてこの制度を是非実現し、これを支える弁護士側の体制を築くためにも弁護士のあり方につき積極的に改革の努力を続けてきております。
 そこで、以下、日弁連が現在取り組んでいる弁護士改革の概要について、述べさせていただきます。
 なお、昨年12月、前会長が弁護士改革の意義と方向性につき基本的な考え方を申し述べていますので、私は、これとなるべく重複しない範囲で、次の六つの点について述べさせていただきます。六つの点というのは、レジュメに第1から第6と書かせていただいた点でございます。
 第1に、弁護士の人的基盤の強化、すなわち、弁護士人口の増大に取り組んでいきます。
 21世紀社会が高度化・複雑化・国際化・情報化することが明らかに予想される中で、個人・企業・行政を問わず、日本社会のあらゆるところに「法と正義」を行き渡らせることが求められます。これまで、弁護士の活動はややもすれば裁判所中心の業務、いわば裁判所城下町、裁判所門前町のような形で活動が狭い範囲にとどまっていましたが、これを一日も早く克服し、いつでも、どこでも、どんな問題でも国民の法的ニーズに応えられる、いわば全天候型・全方位型の弁護士像を目指していきます。そのために、今後、これに必要な弁護士の数を確保するため、弁護士人口を増大させていく必要があると考えます。
 これによって、あわせて日弁連がかねてから主張してきた法曹一元制度を一日も早く実現したいと考えています。
 そこで、私たち日弁連執行部は、日弁連が今後国民の必要とする数と質の法曹人口を確保する旨の方針を明確なものとするために、来る11月1日に臨時総会を開催し、会員の了解を得るべく準備を進めています。
 第2に、新しい法曹養成システムの構築に尽力していきたいと思います。
 法曹の人的基盤を強化していくに当たって、単に人口を増大させるだけでは十分でありません。その法曹が、国民の人権と財産を守り、紛争を適正・迅速に解決し、社会をしっかりと支えていくに足りる高い質をもっていることが求められます。そのためには、これにふさわしい新しい法曹養成システムを構築していかなければなりません。
 日弁連は、21世紀の司法システムを担う、次代の法曹養成のために、その制度の構築とその実施に向けて積極的に取り組むことにいたしました。現在、当審議会で御検討いただいている日本型法科大学院(ロースクール)の構想が正しく制度設計されることが、新しい法曹養成システムを構築していく上で鍵となるものと考えています。11月1日に予定しております日弁連臨時総会では、この点も執行部の方針を提案し、日弁連全体の方針とするべく、準備を進めています。
 日弁連は、あるべきロースクール構想を実現し、ロースクールにおいて力量と品格を備えた質の高い法曹を養成するために必要な実務教育が十分に行われますよう実務教員の養成などにも積極的に取り組んでいきます。
 第3に、弁護士へのアクセスを妨げている様々な障害を除去するための取り組みを進めていきます。
 まず、弁護士の地域的な偏在を解消するため、日弁連は、1996年以来、全国的に法律相談センターの設置を進めてまいりました。全国の弁護士会が設置した法律相談センターは、現在約 250か所に及んでいます。この法律相談センターは、法律相談が中心でありますが、市民の法的ニーズに応えるために事件処理のための弁護士紹介なども行っており、半ば公設事務所としての役割を果たしています。さらに、昨年の日弁連50周年を機にこのセンターの活動を一歩進め、本格的な公設事務所を全国的に開設する方針を採用しました。そのため、昨年9月に「日弁連ひまわり基金」を設置し、さらに12月には臨時総会を開催して、全会員から公設事務所の開設などの資金に充てるための特別会費を徴収することにいたしました。これによって、本年3月に長崎県対馬に第1号の公設事務所を、6月には島根県浜田市に第2号の本格的な公設事務所を開設しました。北海道稚内、岩手県内の4か所、沖縄県石垣島などにも近く開設する予定であり、これを今後全国に広げていくつもりでございます。
 さらに、新規登録弁護士の受け入れに当たって、東京、大阪などの大都市に過度に集中しないよう様々な努力をして弁護士の全国的な適正配置を図っていくつもりであります。
 次に、日弁連は市民に対する弁護士情報の提供を促進し、市民に開かれた弁護士像に近づけるため、本年3月24日に臨時総会を開催し、個々の弁護士あるいは法律事務所の広告を原則として自由化することを決め、本年10月1日から実施することにいたしました。これと同時に、弁護士会が弁護士に関する情報を広く国民に提供するため、弁護士会の広報活動を強化することを決定いたしました。現在、各弁護士会において、弁護士情報の提供に関する方策が検討され、弁護士会のホームページを通じて提供するなどの方策を実施に移しつつあります。
 さらに、経済的理由から弁護士を依頼できない人々のため、法律扶助制度の大幅拡大、国費による被疑者弁護制度の実現などの運動を続け、その実現が目前に迫っていますが、これに加え権利保護保険制度を新たに導入いたしました。
 法律的な紛争などを抱えた場合に、弁護士に相談したり裁判をするための費用を確保することは、容易なことではありません。このような場合に弁護士を紹介し保険によってその費用をまかなうことができる制度を日弁連は従来から提唱してまいりましたが、損害保険会社との間での検討が進み、本年7月には弁護士会と保険会社との契約も結ばれて、いよいよこの秋からこの保険商品が売り出されることになっております。日弁連としては、各弁護士会にリーガル・アクセス・センターを設置するなどして、この保険制度を支えていくとともに、今後、保険契約の対象や内容を更に充実化させていきたいと考えております。
 第4に、弁護士の執務体制の強化と法律事務所の基盤整備に取り組んでいきます。
 法律事務所の規模別に所属している弁護士の数を見ますと、平成11年の調査で全国約17,000 人の弁護士のうち、正確な数字は17,696人ですが、1人で事務所をかまえている弁護士は約8,000人で45%を占め、2人ないし3人で事務所をかまえている弁護士が約4,500人、4人から9人で事務所をかまえている弁護士が約3,000 人、10人以上の規模の法律事務所に所属している弁護士が約1,700 人となっています。
 身近な場所に法律事務所が存在していることとともに、様々なニーズに応えられる弁護士が存在すること、継続性をもって弁護士が法的サービスを提供できる体制にあることが必要であり、その点では法律事務所の共同化・法人化は積極的な意義をもつものであります。日弁連は、本年3月と6月の理事会で法律事務所法人化の基本方針を確定し、次期通常国会に法案を提出していただくよう、法務省と検討しております。
 また、法律事務所の共同化・法人化とともに、弁護士を支える人的スタッフを充実していくことも重要であり、法律事務補助職(パラリーガル)の整備等も検討していきたいと考えています。
 続いて、弁護士の業務形態を利用者サイドからのニーズに応えて総合化していくための方策も必要であると考えます。日弁連は司法書士、弁理士、税理士などの隣接職種との協働を進めるため、検討を重ねてきておりますが、これまでの業務上の連携をすすめるとともに、一歩進んで各隣接職種の特殊性とその独立性に配慮しながら、ワンストップサービスをめざして総合的法律経済関係事務所を開設することにも積極的な意義が認められると考えます。
 第5に、弁護士の専門性・力量の向上に取り組んでいきます。
 21世紀社会の高度化、多様化に伴い、各分野において高度の専門的な識見・能力をもった弁護士に対する要請が強まっています。国際的業務についても同様であります。日弁連は、これらの要請に応えていくつもりであります。また市民に対する弁護士会の法律相談センターが行う法律相談も、医療過誤、労働、相続・離婚、クレサラ、消費者・高齢者問題、民暴などの分野別相談体制をとるようになってきています。弁護士の専門性を高めていくために、各弁護士会において、様々な専門的業務研修が行われ、専門的な業務マニュアルなども編纂されてきておりますが、今後一層これを充実させていき21世紀にふさわしい弁護士の力量のアップを図っていくことが重要な課題と考えております。
 日弁連は、これら各単位弁護士会の努力をバックアップするとともに、専門認定制度などについても検討し実行に移せるものから移していきたいと考えます。
 第6に、弁護士の社会的役割にかんがみ、その公益性、倫理性の向上に更に努めていきます。
 弁護士は、依頼者のために法的なサービスを提供することを通じて、国民の基本的人権を擁護し、法の支配を社会の隅々にまで行き渡らせるという役割をもっております。このような弁護士の役割は、個別的な性格をもちながら優れて社会的なものであり、公益的な性格をもっていると考えます。弁護士が、多くは個別事件を通じて、その社会的な役割と公益性を更に発揮することが必要であり、そのために、弁護士全体が高い倫理性をもった集団であることが要求されていると考えます。
 弁護士の公益性、倫理性を一層高めていくために、弁護士の公益的責務の明確化やそれに伴う弁護士会の機構の整備、倫理研修の充実強化、綱紀・懲戒制度の整備と運用の強化などを図っていくことが必要であり、それに向けた取り組みを強めていく決意であります。
 その他の点につきましては、別途ペーパーにまとめておりますので、何卒お汲み取りいただきたいと考えます。
 終わりに、これまでわが国は、「小さな司法」政策の下で、法的紛争が顕在化することが少なく、少数の法曹が裁判を中心に紛争の解決に当たってきました。しかし、来るべき21世紀においては、産業構造も市民生活も多様化・複雑化し、規制緩和が進み、市民の権利意識も更に高まっていく中で、司法のあり方が大きく変化することを求められてきております。市民に最も身近な法曹としての弁護士が、その状況をリアルに認識し、自らの意識を変えていく中で、業務体制を整備し法的紛争を解決していく能力を高めていくことが求められます。弁護士がその職責を自覚し、市民への奉仕を喜んで行うことが、基本的人権の擁護と社会正義の実現という弁護士の使命を全うする上で必須の条件であると考えます。
 この激しい社会的変化とそれに伴い自身の変革を求められる状況のもとで、私は、すべての法曹がその崇高な使命を自覚し、真に市民に根付いた市民のための司法を実現していくというフロンティア精神に基づいてその使命を遂行していくことを呼びかけさせていただき、日弁連は、総力をあげてその一翼を担う決意であることを申し上げ、私の意見表明とさせていただきます。
 なお、私が今申し上げたことをペーパーにまとめておりますので、大変僭越ですが、お配りさせていただきたいと思います。大変ありがとうございました。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。6点にわたってお話しいただきました。
 では、ただいまから、今の日弁連等からの説明内容も含めまして、法曹三者からの回答に関する質疑応答に入りたいと思います。
 お手元にヒアリング項目を記載したペーパーを配付しておりますので、おおむねそのヒアリング項目の順番に従って質疑応答をしていただければと考えております。よろしくお願いいたします。
 それでは、どなたからでもよろしゅうございますので、どうぞ。

【吉岡委員】順番に従ってとはならないのですが、これを踏まえた形で率直に幾つか御質問させていただいてもよろしいですか。
 久保井会長の御説明で集中審議のときでもいろいろ申し上げた趣旨を踏まえて、前向きに取り組んでくださると。11月の日弁連の臨時総会で決めていきたいという御意向をお示しいただいたことは、大変期待できると評価したいのですが、弁護士会の中にもいろいろな意見があると思いますので、そこをおっしゃるような方向で、本当に私たちが期待できるような内容におまとめいただけることをお願いしたいというのが、第1にお願いしたい点でございます。
 それから、細かな点に入りますが、懲戒等の倫理規定につきましても、いろいろ対策を考えていらっしゃるということですが、懲戒だけではなくて、最初におっしゃったように敷居が高いとか、分かりにくいという問題の解消のためには、情報公開に積極的に取り組むという、これはどの面と言うより、すべての面において国民に分かりやすい情報公開に取り組んでいただきたいという、その点が一つ。
 それから、倫理等につきましては、教育の面でも御配慮いただけるように書いてございますが、加えて、お願いしたいのは、資格をお取りになった以降の、質の向上という意味でのバージョン・アップと言いますか、そういうことを是非弁護士会で進めていただきたい。その点を是非お願いしたいと考えます。
 質問項目には入っておりませんが、私がどうしても気になっていることですので、この点はお伺いしたいのですけれども、弁護士費用の敗訴者負担の問題、これが民事の在り方を検討したときに議論しております。これにつきましては、6月13日の議論で、副会長から大分詰めた御回答も得ているということを、私13日に休みましたので、議事録で拝見してはいるのですけれども、この点につきまして、もう一度会長からどう考えているかということを、お考えを聞かせていただきたいという点でございます。

【日弁連(久保井会長)】大変貴重な御発言をいただきましてありがとうございます。順番に私のコメントと言いますか、考えていることを申し上げさせていただきたいと思います。
 まずは、11月の臨時総会におきまして、私どもが会員に対して諮っていることは、おおまかに言いますと三つありまして、一つは、法曹人口について、これまでややもすれば法曹三者が話合いをして決めるということが前提になっていたわけですけれども、やはり法曹は社会のために存在する、国民のために存在するということを考えると、法曹人口がどの程度必要かという問題について、あるいはどの程度のレベルの弁護士が必要かということも含めて、数と質の両面において、社会の要求、国民の要求するものに、私たちは基本的には従っていくということが必要だろう。したがって、国民の必要とする法曹の数と質を確保するという原則を全会的なものにしたいということで打ち出したものです。
 もう一つは、法曹養成制度がかなり行き詰まってきている現状から考えて、今、当審議会で進めていただいている新しい法曹養成制度、ロースクール構想について、前向きで積極的に取り組んでいくということが必要であろうと。これを受け入れていくということを会員に問題提起をする。
 もう一つは、審議会に対して、是非とも新しい21世紀にふさわしい司法制度として、法曹一元制度と陪審制度を実現していただきたいというお願いの決議、この三つの決議をしております。
 3番目の決議につきましては、会内の異論はないわけですけれども、1番、2番については、御指摘のように、人口を増やしていくことについての不安が会員の一部にあることは事実でございます。それから、法曹養成制度にしても、今までやってきたことを改善するだけでいいじゃないか、新しいロースクールなどというのは要らないのではないかという意見も一部にはございます。しかし、全体としては、我々執行部を信頼してくれておりまして、この取りまとめが必ずできるというふうに考えています。
 2番目の御質問についてですが、弁護士についての倫理・懲戒だけではなくて、敷居が高い、分かりにくい、顔が見えないという今までの弁護士像を、21世紀においては市民に開かれた、裁判所に対して私たちは開かれた裁判所ということをお願いしているわけですが、自らも市民に開かれた弁護士になっていく、脱皮していくという責務がある。お医者さんと患者の関係のように、いつでも気軽に相談をし、かつ事件を頼めるような弁護士に脱皮していきたいと。そういう開かれた弁護士を目指して全力を尽くしてやっていきたいと思っています。
 また、資格取得後の質の向上のことをおっしゃいましたが、確かにこれから非常に複雑な社会になっていく。一方では個人生活に対しては、よきホーム・ローヤーとしての役割を果たし、また、企業関係の方々に対しては、リーガル・アドバイザーとして、この社会の要求するレベルの高い法律実務を提供していく責務があるというふうに考え、研修を大幅に強化したいと考えております。
 私は数年前に日弁連の研修委員会の委員長を務めておりまして、この仕事にかなり力を入れた経験がありますけれども、率直に言って、日本の弁護士は人権擁護とか、社会正義の実現という面での活動において非常に進んでおりますが、実務研修の面では、アメリカ、ヨーロッパに比べると少し遅れている面があると思います。これについてはやはり水準を高めていく努力をしていきたいと思っています。
 最後の御質問の弁護士費用の敗訴者負担制度について、私の考えを申し上げますと、確かに敗訴者負担制度を導入した方がいい事件も中にはあります。例えば、単純な貸金返還請求事件、債権・債務の争いがなくて、ただ、資力がなくて払わないというケースで、例えば、100 万円の訴訟を起こして、弁護士費用で20万円掛かりますと、目減りして、実際には80万円しか手取りが残らない。20万円目減りする分は、債務者が債務不履行したんだから、当然それは債務者が負担すべきだというケースでは、敗訴者負担というのが当てはまるということは言えると思います。
 しかしながら、一般には、そのように明確な、勝敗のはっきりしている事件というのは、そんなに多くない。むしろ、勝敗がはっきりしない事件が大変多いのが実情であります。もし、敗訴者負担制度を導入いたしますと、万一負けたときには、自分の弁護士に払った分だけではなくて、相手の弁護士の分も払わなければならないということになりますと、大変訴えを起こすことに躊躇する、萎縮するという効果があるのは否定できません。
 現在の我が国の裁判の実情を見てみますと、非常に事件の数が少ない。先進国の中でアメリカは例外としましても、ドイツ、フランスと比べても非常に事件の数が少ない。聖徳太子以来、和をもって尊しとするという考え方がまだ続いておるために、今の日本にとって、提訴を萎縮させるような制度を設けることは、基本的には時期尚早である。
 確かに敗訴者負担にしてもいい訴訟分野はあるかも分からないけれども、基本的には、私はもう少し日本社会が法化が進んで、かつ、日本の民事訴訟法の改革、例えば、証拠開示、原告の方が十分に武器を持っていない、消費者裁判とか医療裁判などは特にそうですけれども、証拠開示の制度などが不十分なために、勝訴する手立てがないということもありますから、そういう改革も進み、また、全体として、裁判を利用することがもう少し普及した段階では、敗訴者負担制度というものを取り入れるべき時期が来るだろうとは思いますけれども、現時点では、現行制度のように、弁護士費用は基本的には各自支払った当事者が勝敗にかかわらず負担するという制度の方が、日本の実態には合うのではなかろうかと私は考えています。
 ただ、私も長い間公害裁判とか消費者裁判をやってきましたけれども、そういう裁判で原告がものすごく苦労して勝った場合に、そういう事件では、片面的な敗訴者負担制度というものを認める必要はあると思います。
 現実には、敗訴者負担制度は取っていなくても、裁判所が通常の相当因果関係の中の損害として、原告側の弁護士費用を認めているケースが圧倒的に多いということを考えますと、片面的な敗訴者負担制度は採用してもいいかも分からないけれども、一般的な敗訴者負担制度については、少し時期尚早ではないかという考えを持っております。
 以上でございます。

【水原委員】久保井会長にお教えいただきたいのですけれども、ヒアリング項目の「2.公益性に基づく社会的責務の実践等」の中の「弁護士の公益性」のうちの一番最初、弁護士の真実義務のことについてお教えいただきたいのです。
 この「弁護士のあり方について」というペーパーの9ページから10ページに掛けて、特に10ページの「イ 弁護人と『実体的真実』との関係」のところでございます。ここに書かれていることによりますと、弁護士倫理7条では、「弁護士は、勝敗にとらわれて真実の発見を揺るがせにしてはならない」と規定しておりますけれども、ここの記述によりますと、弁護人は依頼者である被疑者や被告人に対して、誠実事務と秘密保持義務を負うているのであって、弁護士がこれらの義務に背いて真実発見に協力することは許されないと述べられております。
 その意味におきましては、真実義務を否定していらっしゃるのではないかという気がいたします。
 そこで、弁護人は検察官や裁判所による真相の解明に協力する義務はないとしておられるけれども、真実義務がないからと言って、弁護人が積極的に真相解明を妨害する行為、例えて言うならば、被疑者や参考人に働き掛けて、捜査機関に対して被疑者から聞いた真相とは異なる虚偽の供述を被疑者・参考人にさせるような行為まで許容される意味ではないと思うのですが、会長の御所見を伺いたいと思います。

【日弁連(久保井会長)】先生がおっしゃるとおりでございまして、偽証教唆とか、あるいは虚偽の供述を捜査機関にさせるようなことを弁護士がやることは許されないことです。

【水原委員】ありがとうございました。
 もう1点、会長にお教えいただきたいのですが、これは前に会長ではございませんが、お尋ねしたのですけれども、45ページから46ページのところでございます。綱紀と懲戒の問題でございます。先ほど吉岡委員からもちょっと御発言がございました。
 殊に46ページ辺りでございますけれども、綱紀委員会に裁判官、検察官、学識経験者若干名を参与員として参与させておられます。しかし、参与員は出席して意見は述べられますけれども、議決権の行使はできません。懲戒委員会は議決権の行使ができることになっておりますが、綱紀委員会というのは、刑事訴追で申すならば、起訴手続を取るか取らないかという大変重要な委員会として承知いたしております。そういうふうに起訴、不起訴を決める極めて重要な役割を果たしている綱紀委員会の参与員に議決権をお認めにならない理由はどういうところにあるのかなというところをお教えいただきたいことが一つ。
 それから、その一番最後の方に、「さらにその趣旨を生かすために外部委員(参与員)について学識経験者だけではなくユーザーサイドの意見を代弁する委員(参与員)を入れるべきとの意見は十分検討に値する」とおっしゃっておられながら、綱紀委員会の参与員に対する議決権については触れられておられないのは、何か根拠があるのかなということで教えていただきたいのです。

【日弁連(久保井会長)】先生の御指摘なり、御疑問はよく理解できます。ただ、現在の運用状況を見ますと、参与員の方々の意見を振り切ってと言いますか、反対を振り切って不起訴にしたということは、幸いにして出てきておりませんで、参与員の先生方の御意見を大概は大変尊重して行われています。だから、現状では議決権を与えるというところまで制度を進めなくても、十分に綱紀委員会の責任は健全に果たせているんじゃないかと思っています。
 それと、最終的な判断機関は懲戒委員会ですから、その懲戒委員会の中に外部の、裁判所、検察庁、学識経験者の外部委員が正式に議決権を持って入っておられますので、現時点では懲戒委員会でも、弁護士委員が多数決で押し切ったという運用は全くなされておりませんで、健全な運営がなされていますので、そこまでは必要ないのではないかと思います。
 ただ、学識経験者ということだけでなくて、21世紀は市民の世紀と言われていますから、参与員の方々に、あるいは外部委員の中に、市民の方々も入っていただかなければいけない時代が来つつあるのではないかという認識でおりまして、それは前向きにまた検討していく用意はございます。

【水原委員】よく分かりましたけれども、ならば、反対する者がいない、綱紀委員会では部外の参与員の反対を押し切ってまでやられるものではないとおっしゃる。そのとおりだと思いますが、だとするならば、議決権をお与えになられてもよろしいのではないかなと。その点については御検討はいただけないのだろうかなという感じがいたします。これは感想でございますので、御検討いただければと。

【日弁連(久保井会長)】先生の御意見として、また、検討はさせていただきたいと思います。

【北村委員】先ほど水原先生がおっしゃった実体的真実との関係のことでお伺いしたいのです。弁護士は勝敗にとらわれて真実の発見を揺るがせにしてはならないという倫理規定がある。ところが、そのときに何が実体的な真実であるかを解明すべき義務は検察官にあるのであって、被告人に対する誠実義務と、秘密保持義務というのを弁護士が持っているのだと。その誠実義務、秘密保持義務というのと、真実発見に協力するという義務との間で、衝突することがよくあるのではないかと思うのです。
 私は実際の裁判というものは、この審議会の関係で少し傍聴しただけですのでほとんど知りませんが、テレビなどですと、テレビのものを持ち出すのはどうなのかということになるかもしれませんが、しかしながら、こういうようなことになったときに、被疑者に対して、こう言いなさいとかいう指導を行っていたりというような場面がたびたび出てくるわけなんです。
 そうしますと、先ほど会長は、そういうように虚偽の供述をさせたりということはないのだということなのですけれども、実際問題としては、やはりそういうものがよく出てくるのではないかなと想像されるわけなのです。それは倫理規定に違反しているわけですね。
 そういうときに、ある弁護士がそれに反しているかどうかということは、外から見ていてもなかなか分からないわけです。そういう違反をしているときの罰則規定みたいなものはどうなっているのでしょうか。ないわけですか。

【日弁連(久保井会長)】罰則規定はあります。

【北村委員】結果的に真実でなかったといったときには出てくると思うのですが、うまくいくとそのまま通ってしまうということも、ままあるのではないかなと思うのです。そういうふうな形になるのだったら、その方が被疑者にとっては非常に有利であると。そこのところが、こういうところで言っていることと実際との間に随分乖離があるのかと思うのです。

【日弁連(久保井会長)】その点は、先ほども申し上げましたとおり、実際から言いましても、積極的に弁護士が虚偽のことを指導すると言いますか、偽証を教唆したり、あるいは証拠を捏造したり、そういうことは、絶無と言っていいです。積極的に弁護士が違法行為を被疑者・被告人に対して指導するということは、これはもう非常にまれなケースとしてそういうことがあるかも分かりませんけれども、絶無。
 しかし、被疑者・被告人が言っていることが、どうも客観的な事実と違うんではないかと思う。そういうことは弁護活動の中で、かなりあることです。被疑者が、例えば、自分は犯人ではないと言っているけれども、実際は犯人かもしれないと思ったり、あるいは被疑者の言うことがどうも疑わしいと思うことがあるかもしれない。そういう場合に、あなたの言うことは間違っているから、こういう点をよく考えて、本当のところはどうなんですかということを聞きただしたり、指導したりすることは弁護士はいたします。
 しかし、被疑者・被告人から依頼を受けているという依頼関係がありますから、被疑者・被告人に無断で捜査機関に対して、実は被疑者が言っているのは、これはうそだとか、あるいは裁判所に対して、この被疑者は無罪を主張しているけれども、本当は有罪だとか、そういうことを当該被告人なり被疑者に無断で言うということは、これは弁護士と被告人との依頼関係に反する。これを誠実義務と言うか忠実義務と言うか、言い方はいろいろあると思います。
 そんな場合は、弁護士がもし確信を持ってこれはどうも違うという場合には、説得はしますけれども、どうしてもそれを聞かない場合には、最終的には弁護を辞任する。自分はこれ以上できないと言って辞任するということはありますけれども、当該被疑者の同意なくして、捜査機関とか裁判所に対して、密告すると言うとおかしいけれども、自分の思う真実を無断で言うということまではできません。

【北村委員】それはないと思うんです。逆の場合なんです。被疑者の方はこういうふうなことで何かあったと。ところが、それについて言うと被疑者は不利になるといったときには、なるべくそちらは言わないようにという形のものになるわけですか。

【日弁連(久保井会長)】それは、憲法で被疑者に黙秘権という権利が与えられているんです。だから、被疑者が本当はその事実を行った疑いがあると弁護士としては思っても、被疑者がそれを否認する場合には、あるいはそれを言わない場合には、それは黙秘権の行使というのは制度として保障されている。長い冤罪の歴史の反省から来ているわけです。
 だから、弁護士としては、黙秘権の行使を妨害すると言ったらおかしいですけれども、黙秘権の行使をさせないようにするということはできません。

【北村委員】その代わり、黙秘権を行使しなさいということはどうですか。

【日弁連(久保井会長)】黙秘権という制度があるということは、それは弁護士として言わなきゃいけない。

【北村委員】黙秘権が行使できますよと。

【日弁連(久保井会長)】それは弁護士が受任したときに被疑者に第一に何を言わなきゃいかぬかと言ったら、憲法・刑事訴訟法で黙秘権という制度があると、それを行使するかしないかはあなたの自由ですということは言わなきゃいけないですから、黙秘権の行使は。

【北村委員】自由ですと言ったときには、別に被疑者の立場に立っているのではないと思うんです。要するに、弁護士というのは、被疑者から頼まれて、被疑者の立場に立って裁判に臨むというわけですね。そうすると、被疑者にとって不利なことというのは、弁護士は積極的に言おうとはしないと、こういうふうに解釈してよろしいわけですね。

【日弁連(久保井会長)】それは被疑者が同意しない場合です。同意すればいいんです。それは被疑者に無断で被疑者に不利なことは言えません。黙秘権の行使を弁護士が勧めるということは、これは憲法上の制度だから、黙秘権の行使を勧めることは、偽証教唆とか、そういうこととは、全然レベルの違う問題ですから、弁護士として当然許される行為です。そこがちょっと一般の世論と違う部分があるかも分かりませんけれども。

【北村委員】余りよく分からないと、弁護士も正義の担い手であるみたいな形で見ている部分というのがあるんですね。ところが、実際には被疑者のことを考えていますよというのは、必ずしもそうではないのかなと。そのときに、真実を発見するということと、多分衝突することがいっぱいあるだろうなと。だって、被疑者の方は余り罪になりたくないとか思うわけです。そのときに弁護士はどういうような形で。被疑者の方に重点を置きますと、真実発見を結果的には妨害していることになりますね。

【日弁連(久保井会長)】妨害というのは。

【北村委員】結果的にですけれども。そういうようなことについて、要するに、ここに書いてあることというのは、そこまでは許しているのだと。真実発見よりも被疑者の側に立ちなさいということ、そこは許しているのだということなのですか。

【日弁連(久保井会長)】憲法・刑事訴訟法が認めている範囲内で被疑者を守る義務がある。そのために弁護を引き受けているわけですから、検察官と立場が違いますから。犯罪の立証責任は検察官ですからね。だから、確かに仕事をしておって、被疑者の言っていることはおかしいと思う場合もあります。そんな場合に、どうしてもそれは客観的な証拠と違う場合は、あなたこの点はどうなんですかということを聞いて、真実を確かめて、それで真実を言うように指導することもあります。しかし、やはり本人が言いたくない、あるいは本人は絶対それは違うと言った場合には、弁護士はそれを無視して、裁判所や捜査機関に対して、実はこれは犯人だということは言えない。それは弁護士としての限界を超えると言うか、それは検察官の仕事です。

【井上委員】全く別の話ですが、法曹の質と量の確保が必要であって、それについては国民の声で決められたことに弁護士会としても対応していくと言われましたけれど、それは高く評価できることだと思います。我々としても、この前、その点で一応の取りまとめをしたのですけれども、目標値を設定して、そこに近づけていくという場合に、問題は、具体的に計画的に人数を決めていくとして、従来のやり方のように、法曹三者が話し合ってやると、またなかなか決まらないということになると思うのですが、これはほかの方もせっかく来られているので、日弁連だけではなくて伺ってもいいのですけれども、どういう形でその人数を決めていけばいいのか。今、審議会がありますから、数を一応出せるのですけれども、審議会が終わってしまうと、また、三者が相談して決められるということになるのか。そうすると、また同じことかなと思うのですが、その辺について何かアイデアがおありならば教えていただきたいということが1点です。
 ついでに全部申してしまいますが、弁護士・法曹の偏在の問題について、公設事務所をつくられるなどして努力されているということは、私も浜田で、発足したばかりの公設事務所を見学させていただき、非常に感銘を受けたのですけれども、それに加えて東京とか関西圏に集中しないようにさまざまな努力をしていく覚悟であるというふうに言われた。かなり難しい問題だと思うのですが、具体的にどういうことが考えられるのか。その「さまざま」ということの中身なのですけれども。
 3番目は、国民の声を弁護士会の運営にも反映させてきているというふうにペーパーに書かれておられて、懇話会というものを具体的に挙げられているのですが、その懇話会で話し合われたことが、日弁連なら日弁連の運営に、具体的にどういうふうに反映してきているのかということが一つ。それから、日弁連単位は分かるのですが、単位弁護士会ごとに動いているところも大きいので、その単位弁護士会については、そういう仕組みというのがあるのか。あるいはこれからどういうふうにお考えなのかということですね。
 4番目は、弁護士任官のことをお書きになっていて、これについては待遇の改善と任用の透明化等が必要だとされている。これは裁判所にもお聞きした方がいいと思うのですが、待遇の改善というのは、具体的には給与等だと思うのですが、今の制度だとかなり問題があるというふうにお考えなのかどうかということと、任用の透明化のところは、希望者がたくさんいるのだけれどもごく一部しか採用されないとか、そういうことなら我々にもよく分かるのですが、具体的にはどういう支障があるとお考えなのか。その4点についてお願いします。

【佐藤会長】1点目の方、これは法曹三者についてですか。4点目も若干関係していますね。では、必要があればまた後でお伺いいただくことにして、久保井会長の方から。

【日弁連(久保井会長)】1点目の御質問は、今までの法曹三者が決めるという方針を、国民の要求に合わせるということにしたというけれども、その目標値を達成するため具体的な計画をつくったり、作業をする段階では、結局、法曹三者が話し合うということになってしまわないかということですが、そういうことに陥る危険性はあると思いますから、それを我々としては自戒していかなければならない。数字を達成するだけでなくて、一定のレベルの法曹でなければいけないですから、そういうことを考えると、ロースクールの整備状況、立ち上げ状況などを無視して、数だけスタートからこういう数字でいくと一方的に決めることはできないことは事実ですから、そういうものを判断する中で決めていくということはどうしても避けられません。その場合に法曹三者も勿論発言はしなきゃいけないと思いますけれども、法曹三者だけではなくて、多くの人の、あるいは国民代表の声も聞かなければいけないでしょうし、あるいは経済界の声も聞かなきゃいけないでしょうが、そういうことで今までのような三者協議ということにはならないのではないか。もっと広い協議になっていくのではないかという感じがします。
 それから、審議会がある間は審議会が国民の声ということでいいけれども、審議会が終わったら、だれが決めるのかということにつきまして、それは社会の動向によっておのずから決まってくるとは思いますけれども、それはなかなか難しい。国民の代表だから国会なのか、あいるはほかにどんなことが考えられるのかということにつきまして、確たる答えはございませんが、しかし、全体としての社会なり国民が決めていくと。その場合に具体的な作業としては、法曹三者も発言はしていかなければいけないと思いますし、審議会がなくてもそれに代わるようなものを場合によってはつくっていかなければいけないのかも分かりません。ちょっと今のところ先生の御期待に添えるような回答が用意できておりません。

【吉岡委員】回答の途中で申し訳ありませんが、これは事務局長に質問した方がいいのかもしれないですけれども、この審議会で方針をまとめますね。それを内閣に提出して、国会で最終的に決めることになると思うのです。審議会の結論がそのまま法律ということにはならないとは思うのですが、ただ、国民参加の形で司法制度改革をどうするかのということを議論するのがこの審議会だと私は思っているのです。こういう方向でいこうということが決まったと。具体的に実現していくためには、どうするかということは、確かに法曹三者で相談するということも出てくると思いますが、基本的な方針そのものが法曹三者の意向で変わるという位置づけではないと考えていたのですが、井上委員の発言が、そういう意味だと問題ではないかと思います。私が誤解していたらごめんなさい。

【井上委員】不明瞭な発言だったので誤解を招いたのではないかと思うのですが、大きな方針が決まって、実現の過程のところで計画的にということを我々としても言っているわけですね。その計画を具体化していく過程ということになれば、法曹三者が当然絡んでくるので、これまでの方式ですと、また三者協議というところに戻っていきかねない。そこで、それに代わる国民の声をそこの段階にも反映する方式として、何か具体的なアイデアがおありでしょうかと、そういう趣旨なのです。

【吉岡委員】それだったらいいのですけれども、例えば、行政改革で省庁再編を決めましたが、それがまた変わり得るということだったら意味がなくなるので、そこの確認をしたかっただけです。

【佐藤会長】私どもの審議会は、言うまでもなく法律に基づいて内閣に設置され、答えを出してくださいと言われているわけですから、その私どもの答えが出たときは内閣として当然それをきちっと受け止めて下さるものと思います。
 かねてこの審議会でも、答申が出た後、ちゃんとフォローアップしていただけるようなことを考える必要があるのではないかという意見がいろいろな機会に開陳されております。
 私どものこうした希望は、答申を出すときに、きちんと申し上げてしかるべきです。そして内閣はそれを真剣に受け止めて具体化するべくしかるべき措置をお考え下さるものと考えております。
 具体的にどういう制度・枠組みとするかという話は、それはそれとして別にあるわけです。よろしいでしょうか。

【吉岡委員】はい。

【最高裁(中山総務局長)】裁判所ですけれども、今、会長が取りまとめられたとおりだと思います。まず、ここの審議会というものが大きな方向性、あるいは大きな方針というものを打ち出される。これは揺るがせにしてはならないものですし、それをベースにして、次の実現の過程に入っていかなければならないものだと思っています。
 そういう中で、法曹三者だけでということになりますと、先ほど久保井会長の方にも決して弁護士会も一枚岩ではないというお話もありましたから、そういうところで法曹三者だけで議論すると、またいろいろな揺り戻しもあるかもしれない。したがって、法曹三者だけでそういうことを決めるのは適当なことではないと、裁判所も考えています。
 ただ、大きな方向性、方針というものを出されましても、直ちにそれが実行できるかどうかということになりますと、これはまた別物でございまして、すぐ動けるものもあれば、しばらく考えなければいけない、準備期間を置かなければならないものもあろうかと思っています。そういう意味で、今会長がお話になりましたけれども、この方針を出された後に、これを実現するための仕掛けと言いますか、橋渡しというものとして、こういうものも考えられるのではないかということをお考えいただく。その中で法曹三者の方も中に入らせていただいて、例えば、法曹の質とか、あるいはニーズの分析といったものも検討しなければいけないと私どもは思っておりますので、そういうところで意見を述べさせていただくと、こういうふうには考えているところでございます。

【法務省(房村司法法制調査部長)】法務省としても、基本的に日弁連、裁判所からお述べになったとおりで、私どもとしても、まさに国民の声を代表するこの審議会で、例えば、法曹人口についてお決めいただいたことを、改めて法曹三者が一から協議をするということはあり得ない話で、基本的にそれを尊重して、法曹三者がやるべきことは、それをいかにして円滑に実施していくのか、実現していくのかということだろうと思っています。
 また、その仕組みをどうするかというのは、今、御提言にもありましたように、この審議会にもできればお考えいただきたいと思いますし、私どもも法曹三者で取り仕切っているという批判を浴びることがないような、そういうものを考えていきたいと考えています。

【佐藤会長】今お答えいただきましたように、私どもとして決めたのは、計画的にできるだけ早目に3,000 人を目指すということでありまして、その方針を中間報告で書き、最終報告でもそのように明記すれば、それにのっとって進められていくものと理解しております。
 では、今の点はよろしいでしょうか。そうしたら、2番目の公設事務所の方にいきましょうか。偏在の話ですね。

【日弁連(久保井会長)】今、井上先生から言われた東京、大阪に集中しないような方策として具体的にどんな方法を考えているのかという御質問ですが、強制的な方法というのは困難だと思いますけれども、東京、大阪以外のそれぞれの都市、中都市、小都市、いろんな都市がありますが、そこで活躍している弁護士の姿を修習生とか若手の弁護士に十分に情報を流すということによって、弁護士の生きがい、大都市で何千人の中の1人で埋もれてしまうということよりも、はるかに生きがいがあるということを、知る人ぞ知ると言いますか、地方の方が弁護士はやりがいがあるという実態があります。そういう情報を若手の弁護士なり司法修習生に十分に提供して、行政指導と言いますか、なるべくそちらの方に誘導していくと。例えば、3年間くらいは東京で腕を磨くとしても、その後は郷里に帰るとか、郷里でなくても、弁護士を求めている場所があちこちにありますので、そういうところに行政指導的な形で誘導していくというようなことを、これから強めていきたいと思っています。

【佐藤会長】では、3番目ですが、国民の声が弁護士会の運営に、単位弁護士会を含めてということですけれども、どう反映されているかという点について。

【日弁連(久保井会長)】先ほど御質問いただきました際におっしゃっておられました懇話会というようなものについて、どういう形で会務に反映させているのかという御質問だったと思いますが、これは例えば、人口問題についても、かなり開かれた大きな司法を目指していくべきだということで、弁護士としては大きく踏み出したわけです。そういう大きな方針を決める原動力になったものは、やはりそういう国民の声と言いますか、弁護士の数をもっと増やして、次の時代には法の支配がもう少し進むようにすべきだという声があちこちから上がってきた。特に新聞社の論説委員の方々とか、あるいは学者の先生とか、いろんな方面の方々から弁護士会に対してもっと積極的にやるべきではないかという御意見を長年にわたっていただいて、そういうものを今度の臨時総会で方針を決める際に取り入れたという経過がございます。
 日弁連にはいろんな委員会がありますけれども、そういう委員会で政策に関する意見書を政府に出したり、いろんなところへ発表していますが、その形成過程でも、このごろは常時、経済界とか消費者団体、労働団体の代表の方、学者の代表の方に最初の段階から参加していただいて、それをくみ上げるという作業、これは日弁連だけではなくて、東京とか大阪の大単位会、名古屋などもそうですけれども、地方会でも地元の大学との連携というのは非常に進んでおりまして、そういう意味では、弁護士だけが一人よがりな意見書をつくって発表することがないように努めているつもりです。
 弁護士任官につきましては、大変大きな問題でございまして、なぜ進まないのかということについての御質問だったと思いますが、これはいろんな原因が複合しているので、一つだけに原因を求めることは難しいと思います。根本的な原因は、弁護士任官という制度に無理があるんじゃないか、限界があるんじゃないかと思います。
 つまり、裁判官の採用のコースとして、キャリアという基本線があるわけです。判事補制度という大きな基本線があって、その下での弁護士任官ということですから、ちょうどクラスで言うと転校生とか転入生、クラスの中に例外的に入れていただくような、そういう制度なのです。みんなが同じスタートでいくのであれば、それは非常に気が進むわけですけれども、キャリアという制度の中で例外的に仲間に入れていただくという制度としての限界があるんじゃないか。
 したがって、魅力が一般の弁護士から見てもない。もし判事補制度がなくなる、あるいはまたキャリアがなくなるということであれば、すべての人が一旦は弁護士になって、その中から任官することになります。そうなれば、これは事情が変わってくるわけですが、そういうシステムの限界ということにメスを入れずに、待遇の改善をしても、必ずしもそれが大きな促進材料にならないのではないか。私は弁護士任官者だけが今の裁判所で待遇が悪くなっているとは思いませんが、仮に待遇を少しぐらいよくしていただいても、基本にメスを入れなければ前進しないという感じがいたします。
 それから、任用の不透明さ、これは確かに希望したのに採用していただけなかったというケースがあります。しかし、たくさんの希望者という先生の言い方からすれば、実数は十分に把握しておりませんけれども、そういう際立った不透明さがあるのかどうかは分かりませんけれども、基本的なところが問題ではないかと私としては考えています。

【最高裁(中山総務局長)】なかなか難しい質問で、いろいろな要素が複合的に影響しているのだろうと。それは久保井会長がおっしゃるとおりだろうと思います。
 ただ、私自身も弁護士任官の方の研修に参加したりとか、いろいろ酒を飲んで話したりという中で、裁判所に入って一番最初にどういうところに戸惑いを覚えたかというところをお聞きすると、最初はそういったキャリアの中に入っていくので非常に不安感があったけれども、現実には全くそういうものはなくて、意外と自由でざっくばらんなところだったと。裁判所というのはこんなものなのかと思って思い返しているところですということを言うのと同時に、これまで自分たちは依頼人からの依頼を受けて、事情を聞き、これを正しいものとして法律的にいろいろな主張を構成し、それを裁判所にぶつけるということをしてきた。ところが、裁判所に入ってみると、相手の弁護士、要するに当事者の方から、また同じようなものが出てくる。そういう中で事実が全くぶつかり合うときに、どちらの事実が正しくて、どちらの主張が正しいのか。そういうところを、どちらも本当に思えるような中で決断しなければならない。これはやはり率直に言って、弁護士のときにそれほど経験をしなかった事柄である。そういった形での弁護士と裁判官の職務の性質の違いというところを一番言われる方が多いわけです。
 そういうことが、どうしてもいろいろな弁護士さんで、裁判所の方に任官するということを考えるという方の耳にも達しましょうし、そういうものが一つ消極的な要因になっているのではないか。かなりそれが大きいのではないかなという思いをしております。
 裁判所としても、そういうところから考えれば、もう少しその辺りハードルを低くするとか、自然にそういうふうな形で、裁判所のそういった判断システムとかいったものにも慣れていただくような仕組みというものを、今後もっと考えなければならないと思っていますし、裁判所としては、弁護士の方に思い切ってもっともっと希望して入ってきていただければと思っているところであります。
 待遇の改善というところでありますけれども、これは私どもが承知している限りでは、それこそ同期で一番いい方であり、かつ、それほど転勤もされないでと。これはたしか中坊委員が会長のときにお決めいただいたような線だったと思いますけれども、そういったことでされているところで、決して弁護士任官者の方が待遇が悪いということはないと承知しております。

【佐藤会長】法務省はお答えになりますか。

【法務省(房村司法法制調査部長)】法務省は、そういう意味では特にないのですが、一般論として言えば、本当に多様な方がいろいろ裁判官になっていい裁判をしていただくというのは望ましいと、私自身も訟務検事とかいろいろな経験をやりましたけれども、やはり裁判所に戻って、そういう経験をして裁判をするというのは非常に役に立ったと、個人的な経験もあるものですから、それは何とかいい弁護士の方に任官していただきたいなという具合には思っています。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。

【山本委員】非常に素朴な質問なのですけれども、久保井会長にお聞きします。確かに今度の議論は司法の容量をうんと増やそうということで、これはだれも異論はないのですが、率直に申し上げて、急激な増加ということについて、多少の危惧を持っているのです。増加の幅というのはこの間議論されたようなことになるのですけれども、ずっと750 人で来た体制が一気に4倍になるわけですね。多少の条件整備等は置くわけですけれども、久保井会長から御覧になって、現実問題として、これまでの例えば過疎地域というのは、増える方向で推移してきていますね。これがいろんな手立てをやるわけですけれども、これからの日本の地域社会の在り方を見ると、例えば、規制緩和が進んでいきますと、かなり中規模の都市でも、郊外に大きなスーパーができると、商店街が全滅するというふうな現象が実はあるわけです。そういったこれからの社会経済の発展方向を考えたときに、弁護士さんの仕事という面で、過疎地区が多少解消される方向に経済社会は動いていくのだろうかという疑問があるんです。先ほど行政指導とおっしゃられましたけれども、行政指導を幾らされても無理なことはやはり無理じゃないかという気持ちがあるのですが、その辺はどういうふうにお考えでしょうか。
 それから、過疎地区以外でも、いろんな資料を拝見しますと、弁護士の受任率というのは、都市部でもそんなに上がっていないと。こういった問題が、例えば、今議論されている司法の透明化とか、できるだけ広告をするとかいう手段をこれからやるわけですが、これが飛躍的に上がっていくのかどうか。極めて劇的に、ドラスティックに上がっていくものかどうか。我々が今議論しているのは4倍という法曹人口を議論しているわけですから、そういったことについてどうお考えでしょうか。

【佐藤会長】今は既に1,000 人。

【山本委員】1,000 人というのは、ついこの間で、3倍でもいいですが、そういうところが気になるんです。
 もう一つは、これも鶏と卵なのですけれども、弁護士さんの数というのは、今これからも議論されなきゃいけないんですけれども、隣接職種の問題ですとか、言われている30条の問題ですとか、72条の問題、いろいろあるわけです。3,000 人という増員について、最初に申し上げたように、社会経済の流れを踏まえて、久保井会長御自身の実務の経験に照らしたときにどうなのか。加えて、今申し上げた仕組みとの関係ではどういうふうにお考えか。その2点についてお聞かせいただければと思います。

【日弁連(久保井会長)】先般の集中審議で、21世紀の法曹人口について、3,000 という数字をお出しいただいたということについては、これは弁護士会としても、国民の声をくみ上げた結果お出しになった数字として、これを真摯に受け止めなければならないと。そして、これを積極的に受け入れていかなければいかぬというふうに私としては思っています。
 それが大丈夫かという御質問ですけれども、私は十分に大丈夫だろうと思います。明日から3,000 人になるわけじゃありませんし、これから法律扶助もこの間国会で第一段階の改革がなされ、大幅に扶助費が拡大するということになりまして、さらに、今回の改革に加えて、次の改革が既に打ち出された。それからまた、当番弁護士制度というものが10年前から行われているんですけれども、これを刑事被疑者弁護士制度として、国費によるものとする制度化も急速に進んできている。今非常に破産事件が多い。数年前は5万件くらいしかなかった破産事件が、今は十数万件になっている。しかも、潜在的な破産者というのは非常にたくさんおる。管財人の引き受け手がなくて、裁判所も大変困っておられるというようなこともありまして、我々が至急に対応しなければならない。そういう公的なニーズが非常にたくさんある。
 新しい弁護士の就職問題、本年は800 人の修習生の就職が10月にあり、4月に前の期の就職があって、一遍に1,500 人余りの修習生の就職があるんで大丈夫かという声があちこちから上がって、弁護士会の2000年問題ということで面白おかしく書かれたこともございましたけれども、関係者の危惧をよそに、極めて短期間に、全然心配なく吸収されていったという経過がございます。
 そういうことを考えますと、私は今まで1,000 人だったものが、今度審議会がお出しいただいた数字の方向にいくとしても、十分に日本社会で吸収し得ると思います。
 もう一つは、弁護士の活動スタイルも、先ほどのプレゼンテーションでも申し上げたように、広がっていく。つまり、これまで裁判所の近くに固まって裁判所の城下町的な仕事しかしていなかったのが、社会のすみずみにまで広がって、例えば、今年の4月から高齢者の財産管理について、いわゆる成年後見制というのが整備される中で後見人を引き受けるということになれば、これはホーム・ローヤー的な弁護士が非常に必要になってくる。
 また、企業もアメリカのようなことにはならないにしても、これからいろんな国際的な活動もしていかなければならない。いろんな高度な活動をしていく中で、弁護士に対するニーズも非常に増えていく。
 行政もいろんな分野で弁護士を必要としている。例えば、外部監査制度を導入するということも動きとして出てきている。
 そういうことを考えますと、我々が対応しなければいけない弁護士ニーズというのは非常にたくさんある。勿論、それは計画的に進めるということは必要だと思いますけれども、決して審議会がお出しになった数字を無理な数字だとは、私どもとしては思っていないのが実情です。

【髙木委員】まず裁判所の方にお尋ねしたいのですが、裁判所の方のペーパーの4ページに「弁護士会の推薦を受けた弁護士に、裁判官への就任を法的に義務づけるといったことは、職業選択の自由及び居住移転の自由を保障した憲法22条に抵触」云々という表現がございまして、確かに義務づけるということを決め付ける程度の問題にも関わるんでしょうが、一方では集中審議のときにも給源の多様化、あるいは多元化という議論がある中で、こういうふうにお書きになっているわけですが、その辺、憲法違反云々という議論を抜けられるには、どういう程度の、どんなことだったら抜けられるのでしょうか。
 その同じことで、日弁連の方のペーパーの14ページに記載がございますが、例えばイのところの②「就任が透明性のある手続を経て行われることを担保する」、担保くらいまで言うと憲法違反だというふうに反応なさるのかどうか。その辺をお尋ねしたいのです。
 それから、日弁連の方にお尋ねしたいのですが、弁護士さんについて私どももいろんな付き合いがありましたりして、中にはこんな弁護士さん、世の中におっていいのかと、表現は余りよくないんですが、例えば、懲戒手続ということで綱紀委員会で取り上げ、あるいは懲戒委員会までやっていただくケースまでいく、そんな経験は余りないのですけれども、いずれにしても、懲戒委員会で結論が出され、そこでお構いなしということにされたらそれで終わってしまうんですね。いわゆるギルドとしての弁護士会の自治というものとの関わりがあるので大変難しい議論になる、一方、懲戒の判定をされた弁護士さん御本人は、裁判所に訴えることができる。その辺のバランスみたいなことについて、ちょっとおかしいんじゃないかというようなことを言われる方がおられるのですが、その辺についてどのようにお考えなのか。
 法務省で法人化の議論をいろいろなさっておられるということが書いてあって、規制緩和の第3次計画では、平成12年度中に法的措置にメドをつける、現在も12年度の半分が過ぎたところですが、このペーパーを拝見すると、現在検討中という表現になっています。お話を聞いていると、日弁連の方も法人化を許容されているということでございますので、何が隘路で手間取っているのか、その辺ちょっと教えていただきたいと思います。

【佐藤会長】最初の方は裁判所の方から。

【最高裁(中山総務局長)】基本的にはどういった規定の仕方をされるかというところによるかと思いますが、本人の自由意思に最終的に委ねられるということが、きちんとそこから読み取れるものであれば、憲法違反の問題というのは何ら生じないだろうと思います。ただ、そういった意味では、名誉ある責務として明確化するという、名誉ある責務というのが一体どこまでのものを言われているのか、これがちょっと判然といたしません。名誉ある責務だから絶対これを受けなければいけないという強いものですと、問題があるというふうに言わざるを得ませんし、名誉ある責務として一生懸命考えてくれということにとどまっているものであれば、何ら問題はないだろうと思います。
 ただ、そういったような規定というものを基本的に設けることの当否につきましては、むしろ国民の方から見ますれば、そういったことがなくても、自らの自覚と使命感を持って裁判官の方に来ていただく。裁判官としての仕事をやっていただく。こういうことが自然発生的に出てきて、その上で任官が進むというのが、やはり妥当、適当ではないかと考えております。
 それから、担保するための制度というところでございますが、これはむしろ弁護士会が一党一派に偏することなく、裁判官に本当に適格な人たちをきちんと選んでいく、そういった過程を確実な手続でやっていこうということを言われているものでございますから、むしろこれは裁判所の問題ではないかなと思っております。
 以上です。

【日弁連(久保井会長)】髙木委員の御質問の趣旨は、弁護士の懲戒制度について、懲戒委員会の結論に不服がある場合は、当該弁護士会の会員は、司法機関に訴えを起こすことができるのに、ユーザーの方は懲戒委員会がお構いなし、つまり懲戒せずというような結論を出した場合には、それを訴える方法がないのは、バランスを失するのではないかというような御質問だったと思いますが、よろしいんでしょうか。
 委員のおっしゃることは十分に理解できます。これは懲戒処分の当事者が会員だということからそうなっておるわけですけれども、このままでいいということについては問題があると思います。したがって、市民の代表によって再審査をして、その再審査の結果、弁護士会に対して懲戒を勧告してもらう。これは懲戒すべきだということで勧告をしてもらうような制度、そういうものについては検討していかなければならないのではないかと考えております。

【法務省(房村司法法制調査部長)】法人化の関係ですが、これは御指摘のとおり、平成12年度中の措置ということになっておりまして、平成13年3月までが平成12年度中ということになりますので、今、法務省では平成13年1月からの通常国会に法人化のための法案を提出するということで準備を進めています。
 基本的方向については、日弁連にも賛成していただいておりますので、特に具体的にこういう難点があって遅れているということではなくて、当初から12年度中の措置というのを、平成13年1月からの国会に出すつもりで準備をしておりますので、ある意味では予定どおりのことで作業をしているということでございます。何とか速やかに法案をつくって、提出したいと思っているところです。

【北村委員】どういう法人を考えていらっしゃるのですか。

【法務省(房村司法法制調査部長)】基本的には弁護士法人という特別の法人を法律で認める方向でいこうかと思っています。

【北村委員】例えば、株式会社ですと有限責任ですが、そういうところの関連ではどうなのですか。

【法務省(房村司法法制調査部長)】そこはいろいろ議論しているところで、まだちょっと法案が固まっていないものですから。有限責任にしますと、仕組みが非常に複雑になってきまして、いろいろな帳簿の開示であるとか、大変な仕組みが要ることになりますので、そこら辺もどちらがいいか。実際に使っていただかないと意味がありませんので、余り複雑な仕組みにして使いにくいということでも困りますし、そこら辺を考えながら中身を詰める作業をしているところでございます。

【髙木委員】今のお話の中で一党一派という言葉をお使いになられたけれども、党とか派とかいうことについては、いろんな議論があることを御存じの上で発言されたのですか。

【最高裁(中山総務局長)】失礼しました。要するに、一つの考え方、見方からだけでこの方を選んでいるわけではなくて、いろいろな角度から総合的に弁護士会としても、こういうふうに考えられているのですよと。そういうようなことを目に見えた形で出して推薦をする。そういった手続にしなければならないということで、私は日弁連のこれは理解しております。

【髙木委員】結構ですけれども、その辺を議論し始めるといろいろな話が出てくると思いますよ。

【佐藤会長】まだ御質問がいろいろありそうなのですけれども、一応コーヒーブレイクを15時10分に予定しておったところで、もしよろしければ、10分休憩をはさんで、更に質疑をもう少し続けたいと思います。お三人には恐縮でございますけれども、よろしいでしょうか。
 では、3時25分に再開ということにさせていただきます。

(休 憩)

【佐藤会長】それでは、時間がまいりましたので、再開させていただきます。
 質疑応答を続けたいと思いますが、意見交換も少ししておきたいと思いますので、遅くとも4時には質疑応答を終わりたいと思います。御協力をお願いいたします。
 先ほど何人かお手が挙がっていましたけれども、どなたが早かったですか。

【水原委員】法務省と最高裁判所にお考えをお教えいただきたいのです。
 法務省の御意見の9ページの中ごろに、「加えて、法曹資格を有しない者として、選考による簡易裁判所判事、いわゆる特任検事及び副検事が」というくだりがございます。ここに「現に我が国の訴訟事務の相当部分を処理しているが、これらの者が有する能力について、退職後もその活用を図ることは、国民の利便性向上の観点から、十分検討に値する」という御意見が述べられております。
 私はこれまで2回でしたか、3回でしたか、特任検事の問題、副検事、簡裁判事の問題について御検討いただきたいという提言を申し上げておきましたけれども、法務省がそういうふうな御意見を出されておりますので、この点について、それらの者についてどのような活用をお考えなのか、それぞれの選考方法はどういうふうになされておるのか。それぞれの現に行っておる職務内容というのはどういうものなのか。毎年の採用人数、退官人数。現在の数等の客観的なデータについて、お教えいただきたい。勿論資料がございませんので、後刻で結構でございますので、あるいは御意見を添えて、そのデータの提出をお願いできればと思っておりますが、それについて今、ここで御意見を賜ればと思います。

【法務省(房村司法法制調査部長)】私どもでこういうことを書きましたのは、簡易裁判所は勿論裁判所の方でございますが、法務省として特任検事、あるいは副検事について、部内的にではありますが、相当厳しい試験をいたしまして、相当優秀な方々にそれなりに多くの仕事を処理していただいて、本当によくやっていただいていると思っているわけです。
 そういう方々が退官された後、それぞれ各地にいらっしゃいますので、今回隣接法律専門職種の方々の能力を活用するということで御議論いただけるのであれば、そういう特任検事、あるいは副検事、裁判所については簡裁判事ということになろうかと思いますが、そういう方々の能力の活用ということも併せて検討していただければと、こういう趣旨で申し上げたわけで、その前提として勿論、実情等を十分御調査、御審議いただきたいと思いますので、今おっしゃられたようなことは相当詳しい資料になろうかと思いますので、それについて実情等を踏まえた資料を至急お出ししたいと思います。
 大体、特任検事ですと年に数人、副検事ですと約50名くらいの者を試験によって任用いたしまして、それぞれ区検、地検で仕事をしていただいておりますので、そこら辺のことも併せて御説明の資料をお出ししたいと思います。

【水原委員】ありがとうございます。

【最高裁(中山総務局長)】簡易裁判所判事について、裁判所の方は書いておりませんけれども、基本的には今、司法法制調査部長がお話になったのと同じでございまして、簡裁判事につきましても、筆記試験、口述試験、人物試験等を経た上で、その後、8か月間の裁判所での実地研修、それから研修所での研修を経て、それから一人前の簡裁判事として法廷に立たれるという状況であります。
 その後も3年目、5年目、7年を超えたといったところで、それぞれ研修を組んでおりますので、毎年毎年、年を追うごとにその実力は非常に増してくるということになります。
 基本的な仕事は、簡易裁判所の刑事事件、民事事件の訴訟主宰でございます。
 そういう意味では、一定年限簡裁判事を経験した者に対しては、少なくとも裁判官として主宰をしておりました簡裁の事件については、十分訴訟代理権というものをお考えいただいていいのではないか。これは隣接法律職種について御議論いただくときに爼上に上げていただきたいと思います。
 もう一つは、こういった簡裁判事さんは、退官されますと、皆地方に参ります。そうしますと、地方での弁護士偏在といったところについても、一つの解決策になり得ますし、それから仮に司法書士について、何らかの権限を付与するということになりますと、その地方における生きた教材と言いますか、生きた指導者として、簡裁判事さんがいろいろアドバイスもできると、こういう活用もあるのではないかなと考えております。
 詳しいことは後ほど提出させていただきます。

【水原委員】よろしくお願いします。ありがとうございました。

【吉岡委員】今、水原委員が御質問なさった法務省の同じページですが、下から6行目、「司法試験合格後に民間における一定の実務経験を経た者に対して法曹資格の付与」をする云々ということが閣議決定されており、そのことを含めて検討してほしいという趣旨のことが書いてございます。
 それから、参考資料3の23ページ、規制改革委員会の資料が添付されてございます。それの「イ 司法修習を経ていない者に対する法曹資格の付与の拡大」ということが書いてございまして、ここの趣旨とほとんど同じことが書いてあるわけですけれども、この辺について、法務省としてどのようなお考えで検討してほしいというふうに書いてあるのか、お聞かせいただければと思います。

【法務省(房村司法法制調査部長)】この指摘は、ただいま吉岡委員のおっしゃられたように、規制改革委員会で法務省に対して指摘をされて、閣議決定もされているものですから書いたのですが、経緯を申し上げますと、現在、法律家になる通常の道は、司法試験を受けて合格して、研修所に入って、一定年限の修習を経て、それで2回試験をしてその修習を終了すると、それから法律家になるわけでございますが、司法試験に受かった後、司法研修所に入らないで、ここに書いてありますように、例えば、裁判所の事務官であるとか、法務事務官、あるいは内閣法制局の参事官とか、そういう法律で定める一定の職業について、例えば、5年間やると修習をしなくても法律家になれるという、言わば別ルートが設けられているわけです。
 規制改革委員会の方では、言わば別ルートの一つとして、民間における一定の実務経験、これを何とか認められないのか。企業法務等でも相当の法律事務を取り扱っているから、そこで例えば5年間やれば、そういう者には、司法試験に受かった上で5年の経験があるなら、法律家としてもいいのではないか。そういうことを規制改革の一環として検討すべきではないかという御指摘を受けているわけです。
 法務省として、そういう意味では当然、省としても検討しなければいけないわけですけれども、同時にこれらの問題については、言わば法曹の在り方等とも密接に関連いたしますので、そういう全体的な検討をするこの審議会の中で、その一環として、そういう点についても御検討いただければ非常にありがたいという趣旨でございます。
 法務省として、その点についてどんな問題があるかと言いますと、確かに基本的に司法修習というのは、法律家になるために非常に基礎的な訓練を集中的に行っておりまして、実際に受けた私の経験からすれば、法律家になるためには、本当に有用な仕組みだと思っているわけですが、それをしないでもいいというわけですから、そういう修習に代わるだけの仕事の内容なのかどうか、そういうことを的確に評価しないといけないわけです。
 民間の企業法務というのは、確かに非常に充実したところもありますけれども、これはいわゆる官庁などと違って、相当自由にいろんな形態があり得るものですから、本当に修習を省いていいと評価できるだけのものを的確に認められるかどうかというのは、なかなか難しい面もあろうと思うのです。そういうこともあって、やや検討に時間が掛かっているのですけれども、そういう点についても、この審議会でほかの問題と併せて、もし御検討願えればという趣旨でございます。

【吉岡委員】法務省としては、民間企業の場合にはちょっと三角だけれども、裁判所の事務とか、そういう場合は丸だという考え方なのですか。要するに、御検討くださいという、そこまでなのですか。

【法務省(房村司法法制調査部長)】基本的に言いますと、そういう一定の法律的な事務でなければ困ることは間違いないわけです。例えば、内閣法制局の参事官であるとか、裁判所の書記官的なことを仕事とするというのは、それなりの経験があることは間違いないと思います。企業法務の中にもそれに匹敵するものも当然あり得るとは思います。一律に民間だからだめというつもりはないのです。企業法務といってもいろいろあるのではないかなという。例えば、法律でこういうものが企業法務という規定があるわけじゃないものですから、そういう意味で非常に対象の幅が広いものですから、なかなかどういう形でその中で本当に修習に代わるようなものというのを的確に見出せるのかどうか。そこら辺が一番の問題点ではないかと思っています。

【吉岡委員】そうしますと、一定の条件を満たせば、司法研修所を経なくても資格の付与をするという。

【法務省(房村司法法制調査部長)】それを検討しろと言われているわけです。

【吉岡委員】法務省としては、ただ検討してくださいということですか。

【法務省(房村司法法制調査部長)】なかなか難しいです。そこは今申し上げたように、基本的視点は、要するに、修習に代わり得るような能力的担保になるような職務内容であるのかどうか。そういう仕事を経た人たちに一般の人たちの法律事務を扱わせて、それで弊害が予想されないかどうかという、いろんな観点があるだろうと思います。そういうことを踏まえて検討していかなければいけないと。私どもがやる場合にも、当然そういうことだと思っています。

【吉岡委員】そうすると、一定の条件を満たせば、研修所がなくてもいいと。そこまでは言っていないということですか。

【山本委員】そこまでは言っていない。

【法務省(房村司法法制調査部長)】法曹養成制度としてどうかということであれば、大多数の法律家を育てるためには、司法研修所のような養成の仕組みというのは、必須だと思っています。あるいは、法廷なり、弁護士事務所なり、検察庁なりで、実務修習をしてもらうということが必須だと思っていますけれども、すべての法律家がそういう経験を経てこなければいけないかどうか。司法試験を受かった人の中で、現実にそういう修習は受けないけれども、それなりに法律的な仕事を大過なく何年間かやれば、そういう人にも法律資格を与えてもいいのではないかと言えば、それは現にそういうことを法律は認めているわけですから、その職業の種類を増やすかどうかというのは、十分検討はできると思います。

【吉岡委員】大変参考になりました。

【山本委員】それは私どもも、是非入れてもらいたいと思っているんです。要するに、弁護士さんの法律事務の独占という概念について、私ら議論する必要があるだろうとお願いしたいと思っているのですが、要するに、法廷代理、これは弁護士独占であるべきだし、よくよくのことがなければ、隣接職種の問題がありますが、限定的な解除しかないと思うんです。これに対していわゆる法律事務ですね、これについては、隣接職種も含めてフリーでいいのではないかという考えを持っているんです。
 今の議論に帰りますと、現在でも司法試験に合格して企業法務をやっている人はいるわけです。しかし、法廷代理はできない。しかし、事務はやっているわけです。そういう人たちが、これから企業の形態としてもいろんな形で出てきますので、例えば、持株会社みたいな本部があって、傘下の子会社の法律事務をやる。ゆくゆくは認定弁護士じゃありませんけれども、自分たちの企業とそのグループの法廷代理くらいできる。そういうふうな道を開いていただければという意見が強うございますので、隣接職種の問題も含めて審議していただければと思っております。

【北村委員】法務省に要望したいのは、こうやって資料が出てくるのですけれども、だから、吉岡委員がおっしゃったことはすごくよく分かるのですが、書いてあることを読みますと、法務省の意見なのかというふうに読んでみますと、いや、どうも違うらしくて、規制改革の方でこう言っているから検討をお願いします。ただし、それについては賛同しているのかどうなのかということが全然明らかにされないし、聞いても明らかにされないというような、要するに、何かを恐れていらっしゃるのだと思うのですけれども、非常にあいまいな形で出てくることが多いと思うんです。
 読んでみて、これは法務省の見解であるというようなことが分かる部分もありますが、それにしてはこれはどうでもいいことだなというところもありまして。ですから、なるべく、法務省の見解の部分と、法務省の見解ではなく規制改革の課題である部分と、別にしておっしゃっていただいた方が分かりやすいなと思うんです。

【法務省(房村司法法制調査部長)】それを踏まえて、また御意見を申し上げたいと思います。

【髙木委員】弁護士法の5条3号で「5年以上別に法律で定める大学の学部、専攻科又は大学院において法律学の教授又は助教授の職に在った者」は、修習を受けてなくてもよい、こういうケースはあるんですか。

【日弁連(久保井会長)】あります。かなりの数です。

【石井委員】久保井先生にお聞きしたいのですが、今日のペーパーの5ページ目のところに、「3 これからの課題」という箇所があって、それの(2)の一番最後に、「そのための具体的体制を検討していきたい」というくだりがあります。検討されたいのは分かりますが、具体的にはどういうことをお考えになっておられるのか、もし今お話しいただけたらと思います。

【日弁連(久保井会長)】現在、登録とか懲戒の事務の結果につきましては、『自由と正義』という機関誌がありまして、それに載せて、その機関誌は市販もされておりまして、購入ができる状況にはなっているんです。
 しかし、それだけでは行き渡らないということであれば、もっと広く公開していくというか、情報を提供していくということは必要だろうと思っています。どんな方法があるか、今、具体的な検討状況ということになりますと、誠に申し訳なくて、それほど具体案を今持っているわけではありませんけれども、しかし、それはやっていかなきゃいかぬと思います。

【石井委員】ありがとうございました。
 もう一つお聞きしたいのですが、9ページ目のところの「2 公共性に基づく社会的責務の実践」という箇所の、(2)の「真実義務」のところなのですが、どうもぴんと来ないので、もう少し具体的に分かるように、御説明いただけますでしょうか。被疑者と誠実義務とかありますが、こっちが知識がなくてよく分からないものですから、よろしくお願いいたします。

【日弁連(久保井会長)】最初のころに、この点は話題にしていただいたと思うんですけれども、被疑者・被告人と弁護人の関係というのは、分かりやすく言いますと、弁護を依頼されている委任契約があるわけです。ですから、まず弁護人としては、被疑者・被告人を守っていくと言いますか、弁護していく義務があるわけです。それを、誠実に弁護する必要があるという意味で、誠実義務という名前で呼んでいるんです。
 また、他方では、被疑者・被告人というのは、無罪の推定、判決が出るまでは無罪だという扱いをしなければいかぬということなんです。これは憲法に保障してあります。また、黙秘権という権利があるという、これも制度化されている。
 したがって、弁護人は、そういう被疑者・被告人が憲法や刑事訴訟法で与えられている権利を十分に使いながら自分を守る自己防御権と言いますか、そういうことを助けなきゃいけない。そういう義務があると。また、秘密保持の義務があるということを書いているわけです。それがさっき言いました真実義務との衝突が起きることを、北村先生がいろいろおっしゃって、衝突した場合にはどうするのかということについて、それはやはり幾ら弁護士が被疑者・被告人が言っていることが違うと思っても、無断で被告人や被疑者の同意なしに捜査機関に被疑者に不利なこと、被告人に不利なことを言うとか、弁論するということは許されないのだということを書いておるだけのことなんです。

【石井委員】先ほどおっしゃったことを文字で表現すると、こういう書き方になってしまうということですね。

【日弁連(久保井会長)】そうです。

【石井委員】分かりました。ありがとうございました。

【佐藤会長】よろしいですか。ほかにいかがでしょうか。

【井上委員】日弁連のペーパーの公益的責務のところなのですけれども、11ページですか。公的責務とは言っても無償の業務としてやるのでは、適切ではないから、適正な報酬が支給されるべきだとされている。私もそう思うのですが、そのことと、ボランティアとかプロボノ活動というものとの仕分けをどうお考えなのか。他方で、養成の段階で給与を払って養成しているわけですね。それは、やはり公的な存在としての弁護士ということが前提にあるからだろうと思うのですけれども、その辺の仕分けをどういうふうにお考えなのかということが一つです。
 もう一つは、まだ話題に出ていないのですが、外国法事務弁護士との関係のところなのですけれども、日弁連のペーパーではいろいろの問題点が指摘されていて、特に外国法事務弁護士を出先とする大きな外国の事務所に雇用されることになると、それによって支配されてしまって、独立性とか社会的責任が果たせないのではないか、そのような御趣旨だと思うのですが、本当にそうなのかどうかということが、ちょっとよく分からないのと、もう一つは、一番最後のところで、将来的な検討課題としてはそういうこともあり得ると書かれているのですが、これは結局、日本の弁護士さんがそれだけの体力と数とを備えて対抗できるようになれば考えてもいいよということなのかどうか。その辺の御趣旨を、もう少し説明していただければと思うのです。

【日弁連(久保井会長)】井上先生の御質問を十分に理解しているかどうか自信がありませんけれども、一番最初の国の費用で制度として養成されているということを考えれば、無償であってもやるべき活動があるのではないかという、そういう。

【井上委員】そういう面がありながら、他方、報酬を適正に支払ってやっていただかないといけない。それも分かるのですが、その辺のどこか仕分けがないとおかしいのではないかなと思うのです。両方のことを言っておられる感じがしたものですから。

【日弁連(久保井会長)】弁護の実態から言いますと、例えば、消費者問題とか公害問題などでは、事実上、いわゆる手数料、弁護費用をもらわないで事件をやっている実態は、非常にたくさんあるんです。それは支払い能力がないということがあるために、そういう活動を担っている。

【井上委員】刑事でもそうですね。手弁当でやっておられる。

【日弁連(久保井会長)】ただ、そういうことが当然だとは考えていなくて、やはりそういうものはなるべくなくしていかなければならない。そこで法律扶助の制度とかいろんなものが出てくると思うんです。
 ただ、その場合の報酬というのは、一般のビジネスとしての仕事を引き受けた場合よりは、低い金額でやるべきだと思いますけれども、社会的弱者の救済のための活動などは。しかし、全く無料でやるべき活動というのは、非常に限られた分野になるんじゃないか。具体的には、どういうものがそれに当てはまるか分かりませんが、事実上無料になっていくのはやむを得ないと。その辺が仕分けが十分できていなくて申し訳ないです。

【井上委員】一言だけコメントさせていただくと、現状では手弁当でやっておられる部分も結構大きいと思うのですが、それをやっておられる方は一部だと思うのです。

【日弁連(久保井会長)】かなりの弁護士がやっております。

【井上委員】しかし、全くやっておられない方もおられて、私は、むしろそっちの方はプロボノ的なことを義務化して、ある程度ならしてやっていただく。他方の一部、「かなり」かもしれませんけれども、そういった弁護士さんたちの犠牲でやられているところは、適正な補償をする。そういう形のバランスの取り方をしていかないと、非常に不公平ではないかと思うのです。

【日弁連(久保井会長)】それは先生御指摘のようなことはアメリカでは既に行われておりまして、自分ではプロボノ的なそういう活動はできない、その代わりに、お金を寄付することによってバランスを取るということが行われておりまして、日本でもそういうことを考えるべき時期が来ているかも分かりません。そういう意見はちょこちょこ出ています。具体化できておりませんけれども、検討していきたいと思います。
 それから、外国法事務弁護士の問題につきましては、先ほど井上委員の言われたような趣旨で、現在、実は日本の弁護士も国際業務についてすごくレベルアップしてきておりまして、東京などでは相当な数の弁護士が、しかも国際的に、アメリカとかヨーロッパの弁護士に負けないだけの力量を備えて活動している弁護士も非常に増えてきております。
 だから、基本的にはこれから日本の弁護士の人口を増やすことによって、日本の弁護士が国際業務に強くなっていくと。そして、日本の会社なり市民のニーズに十分応えられるようにしていくというのが日弁連の役割だと。外国のものを借りてきて間に合わせるというのは、これは私は邪道だと思っておりますので、国際的な弁護士を日弁連としてどんどん育成していきたい。そういう意味で、今の外国法事務弁護士を余り開放することについては、トータルとして慎重であるべきではないかと思っています。

【井上委員】その点も1点コメントいたします。恐らく実態としては、外国法事務弁護士自身が日本の法律事務をやりたいというふうには考えていなくて、むしろ日本の弁護士さんを雇って、日本のマーケットに参画したいというのが真意だと思うのです。コストの面から言ってもですね。そうであってもなぜいけないのかというのが、ちょっとまだよく分からないのです。

【日弁連(久保井会長)】外国の、ビジネス・オンリーとは言いませんけれども、非常に商業主義的な弁護士、渉外事務所が日本に入ってきて、日本の弁護士を使って、商業主義的な法律実務活動をどんどんやっていくことについては、日弁連の代表としては、好ましいことではないとは考えています。そこは一つの価値観の問題かも分かりません。

【竹下会長代理】久保井会長に2点ばかり伺いたいと思います。
 一つは、先ほどから余り問題になっていなかった弁護士法72条について、もう一つは、懲戒制度の問題です。72条の方は細かい具体的な司法書士にどの限度で訴訟代理権を認めるかというようなことではなくて、日弁連としての基本的スタンスを伺いたいのです。今の72条は非常に広い範囲に網を掛けて、弁護士の業務独占という言い方は適当でないのかも分かりませんが、ほかの人たちが法律事務に関与することを一切排除しておりますね。日弁連としては、ここのところ新しい時代を迎えて、歴代の会長のリーダーシップで随分大きく変わっておられる。その点は非常に敬意を表するのですけれども、この72条の問題についても、方向性で結構ですから、これから見直していこうというお考えなのか、それともやはり原則は72条は堅持するというおつもりなのか、お聞かせ願いたいというのが1点でございます。先ほど山本委員からもお話がありましたように、訴訟代理とか裁判所の行う執行手続上の代理とかという点については、これは原則として弁護士でないとできないというのも一つの考え方だと思いますけれども、ADRとか、行政手続とか、法律相談とか、そういう分野については少なくともその分野の専門業種に開放していってもよいのではないかと思われますので、どういう方向性で考えておられるかを伺いたいということです。
 もう一点は懲戒制度で、これは弁護士自治の問題でもあるし、勿論、裏返しとして弁護士倫理の問題でもある。しかし、国民の弁護士に対する信頼性の問題でもあるというところでお伺いしたいのですが、この点について三つくらいの要望ないし質問があります。
 一つは、先ほど水原委員がおっしゃった綱紀委員会への第三者の議決権を持った参加ということで、これは是非そういう方向で御検討願えないかという要望です。
 もう一つは、これは弁護士自治組織の中でやっておられることで、非常に難しいとは思うのですけれども、懲戒委員会の審査をもう少し弾劾構造化すると言いますか、現在は、綱紀委員会は訴追機関ではありませんから、懲戒委員会では委員全員が自ら調べて、果たして法令違反があったか、弁護士倫理違反があったかという判断をしておられるのだと思います。だれも被審人というか、懲戒手続の対象となった人に対して、容疑事実を証明して責任を追及するような立場の人がおられないわけですね。懲戒委員会は、殊に第三者も委員として入っておりますから、公正にやっておられるとは思うのですけれども、国民の目から見たときに、やはり仲間内で寛大にやっているのではないかと疑われることになると思いますので、その点についてはどのようにお考えかを伺わせていただきたいと思います。
 もう一つは、それと関連するのですが、現在、綱紀委員会なり懲戒委員会がいろいろ調査権を持っておられるのですけれども、具体的にはどの程度のことを調査しておられるのか。恐らく懲戒請求権者から資料は出てくると思うのですけれども、ほとんどそれだけを中心にして審査をやっておられるのか、あるいは綱紀委員会なり懲戒委員会なりが、もう少し積極的に補助機関のようなものを使っていろいろなところから資料を集めて判断材料にしておられるのか。その点は、私は全然実情を知らないものですから、お伺いしたいと思います。
 以上です。

【日弁連(久保井会長)】72条について、弁護士会の方針がどうかということなんですが、ペーパーの中にも書かしていただきましたけれども、この21世紀社会の法的なニーズに応える方法として、二つあると思うんです。
 一つは、弁護士の数を増やして、そして弁護士がきちっと対応していくという方法。もう一つは、弁護士の数をなるべく押えて、その代わりに隣接業種の方々に手伝っていただくという、どちらかの方法があると思うんですが、私どもとしましては、やはり基本的には、訴訟だけではなくて、示談交渉、法律事務を含めて、こういう法律判断を、あるいは法律に関する仕事を、我々自身がやはりつらくても数を増やして、自らこなしていくというのが、真の意味での国民に対する責務ではないかと考えておりまして、72条を部分的に開放する形で、ほかの業種の方に手伝っていただくことによってカバーするというのは邪道ではないかと。そういうことで今回臨時総会を開いて、きちっと社会の必要に応じた数と質を確保していくという方針を打ち出した。
 裁判は専門的だけれども、法律相談やADRとか行政手続くらいだったらいいじゃないかという見解も、確かに私も理解できないことはないんですけれども、実は、弁護士で最も難しいのは、最初の診断、医者で言いますと治療の前の診断が、非常に重要な意味を持っておって、法律相談というのは、やさしそうに見えて決してやさしくない。専門的な要素を要求されるので、それを誤りますと、次の段階で弁護士が付きましても、その是正に大変苦労するという実情もあります。
 それから、示談というのは裁判外でやるわけですけれども、そういう場合は、法廷の場合だったら、裁判官が横におりまして、ある程度両当事者のやりとりに対して、後見的な役割を果たしてくれるんですけれども、示談ということになりますと、裁判官が横におりませんから、おかしな示談、アン・フェアな示談になってきても、コントロールする人間がいないために、裁判より危険性が伴うという面もありまして、示談交渉くらいは弁護士でなくてもいいじゃないかという御意見は、取れないと思います。
 弁護士人口について、我々が消極的な態度を取るということであれば、当然そういう隣接業種の方にもお手伝いいただくということは必要ですが、そういう大きな政策を打ち出したので、そこは御理解いただきたい。
 ただ、先ほどから出ていますように、数を増やすと言っても計画的にやらなければいけないわけですから、ある程度の年数も掛かる。ロースクールの整備状況も見なきゃいけないものですから、その間、市民を待たせるわけにいかないので、やはりお手伝いいただくと。例えば、司法書士でしたら、現在、本人訴訟の場合の訴状の作成とか、場合によったら法廷の傍聴席の外から裁判官の求釈明に対する指導をなさったりしている事実が各地でかなりあるようですから、そういうものを正式に認めていく。本人訴訟の支援を正式に認めていくという意味で、補佐人としての業務を正式に認めていくということは、当然やっていかなきゃいかぬと思いますが、最終的には、安易な方法を取るべきではないんではないか。
 簡易裁判所の事物管轄は、今は90万円になっています。90万円以下と言いましても、東京、大阪はまだしも、ちょっと地方都市に行きますと、非常に重要な裁判もあります。また、訴額の見直しの動きもあるようです。もし、それを安易にしますと、非常に国民に迷惑を掛けるというふうに私どもは考えている。決して縄張り意識とか、あるいは独占を守るためということでかたくなな態度を取っているわけではないので、そこは十分に御理解いただきたいと思います。
 それから、懲戒制度について、綱紀委員会の参与員を委員に昇格させて議決権を与えるべきではないか。

【竹下会長代理】その点は先ほども水原委員の質問にお答えいただきましたので、私からも御要望申し上げるということでお答えは結構です。

【日弁連(久保井会長)】本日そういう御意見をいただいたということを持ち帰りまして、検討はさせていただきたいと思います。
 それから、懲戒手続が弾劾構造になっていないから、検察官がいないので甘くなるんじゃないかということですね。それは綱紀委員会の調査の結論に基づく起訴状と言いますか、懲戒処分の申立書がありまして、それに関係書類とか証拠が付けられていますから、一応はそういう構造になっているんです。より弾劾構造を、法廷における検察官のような役割を果たす人があった方がいいという御意見は十分理解できますが、恐らく制度をいじらなくても、運用としても工夫の余地があるんじゃないかと思いますので、検討させていただきたいと思います。
 それから、懲戒委員会なり綱紀委員会の調査権はどの程度の作業をしているのか。これは警察とか検察庁みたいに強制調査の権限がありませんから、応じなかった場合の資料の提出とか出頭とか、あるいは証言、そういうことについて非常に弱いというのは残念ながら御指摘のとおりで、では、これはどうできるかということになりますと、協力義務を会則で明記するとか、そういうことに違反した場合には、それ自身を懲戒事由にするとかいうことはできると思います。警察や検察庁と同じような権限を弁護士会に与えることはちょっと難しいと思いますけれども、しかし、先生のおっしゃることは十分に理解できますので、いろいろ検討させていただきたいと思います。

【竹下会長代理】どうもありがとうございました。

【佐藤会長】よろしゅうございますか。4時と申しましたけれども、もう大分オーバーしてしまいました。長時間にわたりまして、本当に御苦労様でございました。以上でヒアリングを終わりたいと思います。

(久保井日弁連会長、房村法務省司法法制調査部長、中山最高裁総務局長退室)

【佐藤会長】時間も大分押し迫ってまいりましたけれども、今のヒアリング、質疑応答を踏まえまして、意見交換の方に移りたいと思います。
 お手元に、ヒアリング項目、それから「『弁護士の在り方』に関する提言内容の整理(案)」があります。「整理(案)」は従来の審議結果の取りまとめのような性質のものとして御理解いただければ結構かと思いますけれども、それは大体ヒアリング項目と同じような順番になっていると思います。両方見ていただいて結構ですが、その順番にしたがって意見交換をしたいと思います。
 「提言内容の整理(案)」となっておりますので、そのように呼ばしていただきますけれども、その順番でいきますと「第1.弁護士改革総論」、「第2.弁護士改革各論」とありまして、各論については、更に細部が御覧のような状況になっているわけでありますが、この順番で今回、それから次の回、9月1日ですけれども、意見交換をして、大体の取りまとめをしたいと思っております。大体この順番で御意見を開陳していただければと思いますが、第1の弁護士改革総論のところはいかがでしょうか。理解の内容・性質として、◎○●とありますけれども、その仕分けの意味は冒頭に書いてあります。◎の方はこれまで大方の意見の一致をみたと言いますか、2月に中坊委員から弁護士の在り方についてプレゼンテーションしていただいたときに、取りまとめのペーパーとして、認識が一致したところを確認したわけですが、それに対応しているものだと考えていただいたら結構かと思います。
 第1の弁護士改革総論のところはこういうことでありますが、何かここで特に御意見ございましょうか。
 もし何でしたら、各論の方に移ってよろしゅうございますか。
 各論でまず「Ⅰ 弁護士改革の人的側面」。そして「1.弁護士人口の増加」とありますが、大幅増員が必要だということについては、従来から我々の認識は一致しているわけですけれども、この間の集中審議で具体的に年間3,000 人程度の新規法曹の確保を目指すという考え方を決めたところであります。ここも、こういうことだと思います。
 次に「2.公益性に基づく社会的責務の実践等」。先ほど来既にいろいろ議論が出ているところでありますけれども、この辺はいかがでしょうか。
 順番として、「(1)弁護士の公益性」、「(2)社会的責務の実践のための基盤整備」、「(3)弁護士の意識改革」とありますけれども、この辺はまとめて御意見をちょうだいできればと思います。
 いかがですか。それでしたら、「4.弁護士の活動領域の拡大」は。あるいは、何か一気におおざっぱな話になりますけれども、「5.弁護士と隣接法律専門職種等との関係」、それから「6.弁護士と国際化」、この辺まで含めて御意見はいかがでしょうか。先ほど来の質疑応答の中でも、既にいろいろと関連して出ているところですけれども。

【髙木委員】弁護士の関係で国際化の議論がWTOなり、いろんな国際機関であるというお話を聞くのですが、今、論議の実態がどういう状況になっているのか、何か資料でもあったらと思います。

【佐藤会長】樋渡さん、WTOなどにおける議論の状況とか、これを巡る動きとかについて何か資料を用意できますか。

【事務局長】論議の状況とおっしゃったんですか。

【髙木委員】要するに、今どういう議論になっておるんですかという質問です。

【佐藤会長】どういう議論状況になっているのか、国際的にどういう状況になっているのか。

【髙木委員】どういう場で、どういう議論が行われているか。

【鳥居委員】同じ趣旨で付け加えさせていただきますと、例えば日米交渉のようなものが、フォーマルにあると思うんです。例えば、アメリカ系の弁護士事務所の開設に関する要求とか、その情報をどの程度まで我々見られるか。役所用語で外交案件と言うたぐいのものですが。

【事務局長】WTOの自由化の問題につきましては、資料はまとめられます。いつごろまとめられるか。

【竹下会長代理】WTOがまだGATTの時代に、ウルグアイ・ラウンドのときにサービス貿易の自由化が問題になりましたね。リーガル・サービスの自由化の問題です。その後どういう議論の流れになっているかについて、もし資料があれば出していただければ有り難いと思います。

【佐藤会長】去年の秋口から本格的に議論が始まるという話も前に聞いたことがあるのですけれども。
 では、できるだけ早目に用意していただければと思います。髙木委員、それでよろしゅうございますか。

【竹下会長代理】もしできたらで結構なのですが、私は、第二次外弁問題と言われたころに関係していたのですけれども、少なくともそのころ、必ずしもほかの国もそれ程開放的ではないように受け取っていたのです。EU諸国内では非常に自由なのですけれども、EU諸国以外の国の弁護士がEU国内で業務をするということについてかなり制限的でした。アメリカでも、ニューヨークとか幾つかの州は非常に開放的なのですけれども、州によっては必ずしもそうではないという状況がありました。ほかの国が開放しないから日本も閉鎖的でよいという意味ではありませんけれども、やはり国際的な流れというのもつかんでおく必要があるだろうと思いますので、もしほかの先進諸国のことも分かりましたらで結構ですから資料をお出しいただけないでしょうか。

【事務局長】分かりました。できるだけ努力をします。鳥居委員からの御要望のあります各国からのものにつきましては、多分、通産とかそういう各個別の問題でも向こうにきているということがあろうかと思うんですけれども、それまで集めるのはなかなか難しかろうと、努力してみますけれども、そういった面で集められるとしても少し時間が掛かるかもしれません。

【佐藤会長】必ずしもペーパーできちっとした資料でなくて、口頭の説明でもいいと思うのです。

【竹下会長代理】アメリカの連邦政府から来たものにも入っていましたね。

【佐藤会長】入っていました。いろいろ書いてあるけれども、その本質は外弁問題です。
 それでは、そういうようにお願いします。できるだけ早くということですから、できる範囲で結構です。
 先ほど申し上げた2の公益性のところ、3の法曹養成制度の問題は略となっていますが、4の弁護士の活動領域、5の弁護士の隣接法律専門職種、6の弁護士の国際化、まさに今の問題ですが、ここで書いてあるようなことでしょうか。
 また御相談申し上げますけれども、中間報告でどのぐらいの書き方をするかにもよってくるところがあると思うのです。今日は、このペーパーに基づいていろいろ細かなところも御議論いただいて結構です。中間報告にどの程度書き込むかについては、別途またお考えいただくことにします。
 藤田委員どうぞ。

【藤田委員】弁護士の活動領域、訴訟代理に絡んでですけれども、臨時司法制度調査会意見書130 ページなのですが、国や地方公共団体の指定代理人を、法曹有資格者に限定するべきではないかという意見が出ております。「当調査会は、審議の結果、国及び地方公共団体等の代理人たる役割を法曹有資格者に限定することとする方向自体が望ましいものであるとする点においては意見の一致を見たが、現段階においてこのような施策をとることに踏み切るには、なお問題点があると思われたところから、今後さらに検討すべき旨を提案することとし、全員の一致した意見により、前記結論のとおり決定した。」とあります。神奈川大学の萩原金美先生が、もう三十何年も経っているのに、この問題はどうなっているんだ、この問題を放っているのはおかしいのではないかと論文に書かれております。弁護士の活動領域の拡大について、特に地方においては、これは現実に非常に大きな問題です。また、訴訟の実態から言いますと、指定代理人の中にはやはりそれにふさわしい能力を持っていない人も入っていて、裁判所の負担になっているという面があります。ですから、そういう意味で、やはりこの際もう一遍、最終の答申でも結構ですが、爼上に上げるべき問題ではなかろうかと思います。

【佐藤会長】負担になっているという点は、藤田委員の実感からしてもそういう感じのところがありますか。

【藤田委員】勿論、全部がだめということではないのですが、しかしそういうような人もいることは、特に地方では、そういう経験もありますし、本来は法の支配ということから言えば、法曹が行政庁や地方公共団体にも浸透していかなきゃいけないという方向にも合致すると思いますので。
 それと、司法書士の簡裁訴訟代理権とか、家事・執行手続についての代理権付与というような問題については、今まで申し上げましたとおりでございます。

【佐藤会長】ほかはいかがでございましょうか。先を急ぎ過ぎるとおしかりを受けるかもしれませんけれども、また戻ってもよろしゅうございますので、「Ⅱ 弁護士改革の制度的側面」についても、御意見があれば承っておきたいと思います。まず最初の「1 弁護士へのアクセスの拡充」です。(1)法律相談活動の充実、(2)弁護士費用、(3)弁護士情報の公開、(4)職務の質の向上・弁護士執務態勢の強化、の辺りはどうでしょうか。
 それでは、まず(1)から(3)までいかがでしょうか。(4)は法人化とかそういう話になりますので。

【北村委員】これは、○ですから全部担当委員のレポートにおける意見が羅列されているという形になっていますね。だけど、この中でやはり大方の意見の一致を見ることができる点もあるのではないかなと思うんです。言葉が違っていても、何人かの方が同じようなことをおっしゃっている部分というのが。そういうまとめはやらないのですか。こうやって全部個人個人の意見で、これですというのですか。

【佐藤会長】意見を出していただいて、そうだそうだということになれば。

【北村委員】今は、そうだそうだというのをやろうと。

【佐藤会長】そうです。ただ、先ほど申し上げたように、そうであっても、それはそれとして取りまとめますけれども、中間報告でどこまで盛り込むかは、またこれ別の話というように御理解ください。

【北村委員】それは分かります。

【中坊委員】北村さんね。私としては、先ほどお昼には、会長と会長代理に申し上げたのですけれども、弁護士改革の問題については、今年の3月14日の日に、「『弁護士の在り方』に関し今後重点的に検討すべき論点について」という整理が出ていまして、そこで大体一致したところと一致していないとは言わないまでも、まだ一部の意見に止まっているというのが書いてあるんです。ただし、なぜかというと、そのときには今日みたいなヒアリングはしてなかったんです。だから、みんなの意見は一応聞いたけれども、ヒアリングを聞いてないままの意見だったからこうなっておって、今、民事司法の在り方の結果見ていると、あるいは今度刑事司法の在り方が出てくるというふうに聞いているんだけれども、それを見ていると、結論としては、リポーターの方の審議結果の取りまとめという言葉で出ているんです。私も今の予定としては、中間答申までに一応今日のみんなの意見を聞いてまとめようと思いますが、今、北村さんのおっしゃったように大方一致しているような意見もたくさんあると思うんです。だから、そういうのは私の方として、素案として事務局の方と御一緒に、余り異論のないところは異論のないものとしてまとめさせていただいて、民事司法のときと同じように審議結果の取りまとめというような、簡単なペーパーで中間答申は一応やらせていただこうと思います。しかしそれもすべては、みんなを総合的にやらないと分からぬということですから、そういう条件付きではあるけれども、一応一致したところだけは、私としては今回リポーターの役割として、まとめさせていただいて、それをまた皆さんに見ていただいて、よければそれを中間答申までの一つの段階として、民事司法と同じような取り扱いにしていただいたらいかがなものかと思っているんです。

【佐藤会長】そういう趣旨です。

【北村委員】では、今は何をやるんですか。

【佐藤会長】だから、その取りまとめです。

【北村委員】そのまとめは中坊先生の方で、まとめていただくと。

【佐藤会長】今日と9月1日の議論を踏まえて、大体コンセンサスがあるところは確認して取りまとめをするということです。

【井上委員】その取りまとめのために議論をしようということですね。

【佐藤会長】そういうことなのです。

【竹下会長代理】この中でも○と●がお互いに抵触したり、対立したりしているようなところもあると思うのですけれども、そういう点について御意見を言っていただいて、まとまるものならまとめられれば非常によいのではないでしょうか。

【佐藤会長】それで、制度的側面の1の(1)、(2)、(3)の辺りでいかがでしょうか。大きな入口のところはもうコンセンサスはできていると思いますが。アクセスの障害を解消しなければいかぬということは。

【北村委員】次の法律相談センター、公設(公益)事務所、こういうのも、大体意見の一致を見ているのではないですか。

【佐藤会長】法律相談活動の充実、抽象的には、それはしなければいけない、すべきだということについては合意は取れていると思いますけれどもね。ただ、具体的にどういうようにやるかということについては、さまざまな見解があるということなのでしょうね。

【竹下会長代理】ここにある、7ページの一番下から8ページの上の辺りのところは、個別意見とは言っても、内容はかなり一致していますね。

【北村委員】そうですね。

【佐藤会長】それはそうなのです。過疎問題への対応も必要だということは、異論のありようがないですね。

【中坊委員】それでまた今日、久保井会長が説明しましたし、今日のヒアリングの結果とこれを合わせていただければ、そう大きくは違ってないんじゃないかと思うんです。だから、まとめるのはさほど難しいことでもないんじゃないかと。少なくとも中間答申に向けてはね。

【井上委員】ほかのところにも関わってくるのですけれども、この審議会でどこまで踏み込んで書くのか、その辺が一番難しいですね。具体的制度設計のところまで踏み込んでしまうと、非常に細かくなり過ぎて、今後の柔軟な展開の余地を封じてしまう。しかし、基本的なコンセプトはここで示しておかないと、先ほど吉岡さんが心配なさったようなことにもなりかねない。その辺のさじ加減だろうと思うのですね。

【佐藤会長】そうですね。先ほどから申し上げているように、中間報告がどういう性格のものなのかということについて、必ずしも我々の理解がまだ共通してないところがあるかもしれません。その辺は9月1日に、もし無理であれば12日辺りのところで、少し御相談したいと思っております。基本的には大綱であり、細部まで書き込む性格のものではないと思います。基本的な構造、今度の改革の大きなフレームワークを示すということがまず一番の出発点であって、あとどの程度までそれぞれに書き込んでいくかということに少し工夫が要るということだろうと思います。その辺はまた御相談申し上げたいと思っております。

【髙木委員】弁護士の情報公開だとか、評価制度とかいろいろ御意見も出ているわけですが、これは、すべての分野・領域で、今、問われていると思うんです。例えば、お医者さんで言えば、カルテの開示だとか、医療機関の評価、それも第三者による評価とか、吉岡さんの提起の中にABAのような第三者の評価のことも触れられていますが、特に72条にもあるような、かなり強固な公権力によるギルド性を持っている団体と、その構成員に関わる情報公開等、いろんな意味でのアカウンタビリティーというんでしょうか、そういったものがやはり弁護士会も、問われるだろうと思うんです。具体的に、お医者さんのカルテを出せに当たるようなものが、弁護士さんがそれぞれの仕事で出しようがあるのかないのかよく分かりませんが、例えば、どういう仕事をされて、どういう評価があるのか。その辺のことをこれから求められていくのではないかと思います。ましてや法曹人口増、先ほどの山本さんの話じゃないですけれども、少なくとも3倍くらいまでは近い将来いくわけで、そういう中である種の競争も激化するでしょうし、そういう評価というか、具体的にどういう評価の仕方があるのかよく分かりませんが、今後の大きなテーマだと思います。

【中坊委員】少なくともこの中間答申で私も髙木委員と同じような意見で、そういうものは公表できるというものでなければ、法律事務独占を片方でうたいながら、片一方においては、それは内緒でもいいということにはいかない。そういう方向づけは、私はこの審議会としても決めてもらったらいいと思います。
 それでは、どういう形で具体的におっしゃっていくのか、外国では確かに、私の生半可な知識ではありますけれども、調べた範囲では、やはり認定制度というものをいろいろ企画してやっているところはあるんです。しかし、それがなかなかうまくいっていないということも事実のようなんです。非常にその人が専門的だというのは、何をもって専門的だとするのかということが非常に難しくて、それがうまくはいっていないけれども、少なくともそういう試みが外国では行われておるわけです。弁護士会が市民に向けて情報公開というものを、今みたいに何もしなくてよろしいということにはいかないという方向は、この前も言うているし、我々としては現時点においては、大方の方の意見も出すべきではないかというふうに言えると思うんです。
 そういう意味では、我々としては、審議会の中間答申としても、少なくとも弁護士に関する情報を、弁護士会というものはもっと情報公開すべきであるという方向づけは、現時点においても必要だし、確かに弁護士にとっては苦しいですし、また、難しいことではあるけれども、少なくともその方向づけだけは、私は決めていただいても結構じゃないかと私はそう思っているんです。

【髙木委員】お医者さんも情報公開が非常に遅れている世界のようです。ただ、あそこは看板に内科とか外科とか小児科程度は書いてあります。弁護士さんの場合は法律事務所としか書いていなくて、それが弁護士会の内部の議論でも大分お直しになられるということで、アクセスしやすい、使い勝手がいいという立場から考えると、お医者さんの場合、内科でもいかぬと言われているわけですから、とりあえず内科、外科程度なのか、もう少しブレイクダウンできるのか、その辺、国民のアクセスのしやすさという面も含めて早急な改善が望まれると思います。

【佐藤会長】問題として、情報公開といってもいろいろな意味があるということなのです。どのような情報をつくり、積極的に開示すべきかという問題と、開示したがらないときにいかに開示を強制できる仕組みをつくるかという問題があります。国の行政機関の場合、開示請求権を国民に与えるわけですね。そして、開示できるものとできないものとの仕分けをやり、最終的には裁判所で争えるという仕組みをつくっているわけです。
 前にも言いましたけれども、来年から発足する情報公開制度は行政機関についてですけれども、理論上、国会についても、裁判所についても同様の制度が考えられるわけです。弁護士の情報公開についても、一体どういう仕組みが考えられるのか、少し立ち入って議論をする必要があると思います。抽象的に情報公開はいいですよ、必要ですよというのは簡単ですけれども、どのような情報をどのように開示せしめるか、開示すべき情報の開示をどのように担保するかという問題があるという気がするんです。中間報告の段階では、情報公開を充実すべきであるということを確認するということでいいかもしれませんけれども、その先に更にもう少し具体的な制度設計みたいなものがあり、最終報告までに示す必要があるのではないかと思っています。

【中坊委員】だから、少なくとも今おっしゃるように、情報公開の方向へ向かって進むべきだということだけの方針は、中間報告の場合には我々としては出すべきではないか。そうしないと、率直なところ弁護士会にとってもなるべくならしんどい仕事は、審議会にという論議もありますから、やはりそういう意味では審議会で、そういうような意見を方向づけだけでも出してもらう必要があると思います。ちょっと誤解があってもいけないかもしれないけれども、どうしても我々は、法曹三者とか、自分たちの立場からそれを見ておったわけですね。今回の審議会というのはまさにそうではなくて、利用する立場からどうあるべきかということを問うておるんだから、そういう立場から言えば、やはり髙木さんのおっしゃったように、情報公開ということはすべきだと思います。
 弁護士会は、今の会長のおっしゃるように開示請求権としてあるのか、あるいは積極的にやるのか、ここはもうちょっと詰めないといけないけれども、しかし、いずれにしても、その方向に向かって、利用する立場からすれば、やはりもっと情報は公開すべきだということは、この審議会でなければ出せないものです。私は、それは審議会として出してもらった方がいい、弁護士としてですが、そういうことだろうと思うんですよ。
 だから、今の髙木さんのおっしゃっていただいているのは、前向きに委員としての私としてはとらえまえる必要があると思っています。

【竹下会長代理】具体的には、今日日弁連がお出しくださった参考資料の資料11に、東京弁護士会の例が挙がっていますけれども、これはかなり詳しいものですね。このぐらいの情報開示を各弁護士会がやってくださると随分違うと思うのですね。ただ、マイナス情報を乗せるかどうかというのはなかなか難しい問題だと思いますね。

【佐藤会長】積極的に出すのと、出したくないけれども出さざるを得ない仕組みをつくる。後者が一番狭い意味での情報公開です。
 国会や裁判所に言及しましたけれども、弁護士会はどういう性格なのか。今、情報公開制を特殊法人にまで及ぼそうとしていますね。ですから、弁護士会は法的にどういう性格なのか、その辺の議論も一遍してみる必要が将来あるのではないかと思っていますけれども。

【中坊委員】そうですね。少なくとも弁護士会としては、そういう法律の実施機関になるかならないかは別にして、その精神は我々としても積極的に取り組む必要があるということを会長自身が今日もおっしゃっているわけだから、我々としても、それは会議の一致した意見として言っていく必要はあるのではないかという気がするんですよ。
 だから、その問題について消極であってよいという意見ではなく、この全体の中でも前から一致した意見として、我々は出していってもらえばいいと思うんですね。

【佐藤会長】では、何かあれば。

【水原委員】私は、この提言内容の整理、今、北村委員のおっしゃった趣旨と同様に受け取っておったのですけれども、◎は大方の意見、○は担当委員の意見、それから、●はその他の主な意見、その他の主な意見というのは全部、それでは、今までの審議の過程の主な意見が出ているのかというと、そうではなさそうに思うのです。
 3ページの弁護士の公益性の問題で、「弁護士法24条の2を新設し、裁判官推薦にかかる日弁連の義務及び弁護士の義務等を規定すべき」、これは中坊委員がおっしゃったことでそのとおりなのですけれども、それについて、何人かの委員から、いろいろな問題提起があったように思います。憲法22条との関連はどうだと、それ以外のものがここに出ていないのはどういうわけか。
 そうしませんと、これが全部合意に。

【佐藤会長】いやいや、そういう性質ではありません。

【水原委員】やはり、そういうところも出していただくように。

【佐藤会長】だから、これについて具体的に考えるとなったとき、今日出ていたように、22条との関係がどうなのかという議論は当然出てくることだと思います。

【水原委員】もう既に、今日ではなくて前にも出ております、

【佐藤会長】それは承知しております。

【中坊委員】だけど、水原さん、私が言っているのは取りまとめだから、取りまとめというのは、少なくともみんなの委員が一致したものです。だから、今度取りまとめる文章の中には、一致していないところは書かないわけですよ。だから、取りまとめとしては、やはり一致したものを取りまとめの内容で出しましょうということを中間答申までに出しましょうということを自分としては考えているということなんです。

【佐藤会長】具体的に裏づけをちゃんとやるとなれば、それなりにいろいろと議論しなければならない問題があると思います。

【中坊委員】ほかの問題とも関連しているんですよ。それでは、ここだけでそれをやっているのかどうか問題だから。

【井上委員】水原委員の御趣旨は、この資料自体はちょっと過不足があるということなのでしょう。

【佐藤会長】それを言えば、それぞれの根本が。

【水原委員】そのとおりなんです。

【佐藤会長】全部羅列していくかという話になりますね。

【水原委員】井上委員がおっしゃるように、まとめていただいて、今までの合意ができている範囲内におけるものをまとめていただくと。

【佐藤会長】合意できたのはまさに◎なんです。

【中坊委員】今度から、○であっても、先ほどおっしゃったように、大体一致しているものがあるから、私は、一応リポーターの役割をしていますので、一番早ければ、1日でも一応やって。

【佐藤会長】1日にまた議論します。刑事裁判については取りまとめのペーパーの合意をまだ取っていませんので、できれば次回かあるいはしかるべき時期にと思っていますけれども、同じように、これも取りまとめのペーパーとして考えております。
 もう1か所、今日全部終わるつもりはありませんが、(4)のところ、法人化とか共同化とか、この辺も大きなところは大体意見は一致しているのではないかと思いますけれども、いかがでしょう。まだ予定まで5分ありますので。
 ここは余り御異論のないところかと思いますけれども。

【藤田委員】異論はないのですが、前にも申し上げましたけれども、共同化して法人化しても、今、日本の共同事務所で多い経費分担だけでは意味がないという問題があります。アメリカのロー・ファームのように、収益も法人に帰属するという実質的な形にしないと、共同化、法人化で出てくるはずのメリットは出てこないので、そういう実質的な面についても注目すべきではなかろうかと思います。

【佐藤会長】今日、法務省からお話のあった法人化は、どういう内容のものなのでしょうか。

【藤田委員】実質的に事務所の内部で収益をどう処理するかというのは、法律の規定ではなくて実際の運用の問題だと思うのですね。ですから、実際にそういう運用をしないと、例えば、弁護士任官について法人化がプラス要素になるといっても、単独事業の合同体ではそういう効果は望めないという意味で、実質的な法人化でなければ目的を達しないのではないかという趣旨のようです。

【山本委員】何でも共同化、法人化といっているから、単なる共同化ではなくて、実質的な内容のあるものということではないですかね。

【藤田委員】経費分担だけの事務所についても、もし法人化ができるようになったらどうされますかという質問をしたら、法人化は一応しますという返事なのですけれども、そういう実態で法人化しても、それによって出てくるメリットがないように思います。

【北村委員】今度の法人化が出てきたときの法人は、弁護士以外の人にも適用できるのですか、例えば、税理士であったり、そういうところにも。

【佐藤会長】やはり弁護士を念頭に置いてやるものでなければ。

【北村委員】弁護士だけなんですか。

【竹下会長代理】総合事務所にした場合という趣旨ですか。

【北村委員】先ほどのお話だと、今までにない法人が出てきそうですよね。

【井上委員】要するに、今まで法人として活動できなかったのを法人として活動できるようにするというところに重点があるのであって、その法人がほかの職種の人をどう雇うかということはまた別問題でしょう。

【北村委員】いやいや、ほかの職種もそういう法人がつくれるのかと。

【髙木委員】それは、概念として総合化という言葉を使ってきたんじゃないですか。

【山本委員】それはかなり確信的ではないですか、まだないのではないですか。

【井上委員】ほかの職種を単独に、例えば、税理士を法人化するかとか、それはまた別の問題なんですよ。

【北村委員】今、税理士も法人化の方向に動いているものですからね。

【井上委員】それは、そちらの方で話をつける問題でしょう。

【佐藤会長】弁護士が、先ほどのお話のように、意味のある法人化をどうやってできるか、それを我々として考えればいいわけですね。

【井上委員】そこのところは義務付けというのはなかなか難しいでしょうね。法人化するのだけれども、収支共同のものにしろというのは。

【中坊委員】決まらなければ決まらないんじゃないですかね。それはさっきの運営の問題で、ただ、今言うように、今まで弁護士というのは個人営業だったでしょう。それが法人化することになってくると、例えば、弁護士の死亡によって事件が中断することなく、一つの独立体として永続していくということになります。

【井上委員】要するに、組織としてやってもらおうということですね。

【中坊委員】そうです。そこが一番大きなことであり、同時に、法人化が、私の聞いている範囲では、現実に非常に大きな問題点になっているのは、支店が設けられるということになっているんですね。この支店ということが非常に大きな意味があって、今の過疎地問題とかその他の問題について、日弁連内でも協議されているのは、東京に事務所があっても、支店で勤務するには地方単位会に入会しないといけないということになっていますから、しかし、少なくとも法人化という方針に向かって、しかもそれが具体化する方向に向かって、今おっしゃったように12年度中には法案として出すところまで行っているんだから、やはりそこまで進んでいるというのは事実なんですね。
 だから、それを我々審議会としても踏まえて、そういうものについてはこの前の扶助と同じように、我々としても積極的な意見を出していくという方向ではないかと思うんです。
 しかし、今、おっしゃるように、細部の点にまで関すると、これはなるほど今もまだ討議されている間だから、ちょっと我々としてもそこまで踏み入るのも難しいことと思っているんです。

【佐藤会長】我々の考え方として、今のような方向でまとめていくということですね。この段階ではということですが。

【中坊委員】そうしていただければいいかと思うんです。

【佐藤会長】今日は最初に大言壮語して定刻に終わりますと申しました。9月1日にまたやっていただいても結構ですけれども、一応今日の議論としては、10ページの(5)の前まで行ったということにさせていただきたいと思います。1日はこれに引き続いて意見の交換をして、そして、先ほどもう既に出ていますけれども、取りまとめのペーパーをどういうように取りまとめるかについて御議論いただき、当日文書化するのは難しいかもしれませんので、その後のしかるべきときに正式に取りまとめのペーパーとして御了解いただくということにしたいと思います。

【中坊委員】それで、私の方としては、リポーターは私が確かにやりましたけれども、あと、石井委員と吉岡委員がユーザーという立場から、隣接業種の関係で北村さんということで、我々のチームと言うとおかしいですけれども、そういうことで進んでいますので、チームで意見をして、少なくともまとめを出して、皆さんの御審議をいただいて、それを中間答申に御利用していただくというところへ持っていきたいと思っています。

【佐藤会長】それでは、4人の委員、そういう趣旨でございますので、9月1日はそのおつもりで臨んでいただきたいと思います。
 では、今日の段階での審議は以上で終わりたいと思います。

【事務局長】本日はいつものとおりの資料でございまして、特に説明等はありません。

【佐藤会長】それでは、最後に次回の日程の確認でありますけれども、先ほどから言っていますように、1日は13時半から17時までこの審議室で行います。本日に引き続きまして、「弁護士の在り方」に関する意見交換を予定しておりますが、既に御審議いただきました「国民に期待に応える刑事司法の在り方」についての取りまとめのペーパーについても、あるいは最後の方でお諮りすることも考えております。一両日の状況を見まして、考えさせていただきたいと思いますけれども、一応予定に入れさせていただきたいと思います。

【髙木委員】恐らくまとめについての意見の対立があるようですから、時間を少しとっていただきたい。無理やりまとめないでくださいね。

【佐藤会長】分かりました。また、それについては御相談申し上げます。
 何かと大変でございまして、また9月1日に審議会で誠に恐縮でございますけれども、よろしくお願い申し上げます。
 記者会見ですけれども、いかがしましょうか。では、会長代理と2人でやります。
 本日はどうもありがとうございました。