配付資料

(別紙1)

「弁護士の在り方」に関する提言内容の整理



平成12年8月29日

【凡例】
◎:これまでに大方の意見の一致をみた点

○:担当委員(中坊、石井、吉岡、北村)レポートにおける意見
●:その他の主な意見(集中審議(第2日午前)議事概要より)

第1.弁護士改革総論

・弁護士改革を論じる視点 ◎ 「法の血肉化」、「統治主体意識」、「社会生活上の医師」の3つの視点を踏まえる。
○ 理想の弁護士像は、ユーザーに身近で、親しみやすく、頼りがいがあって信頼できる弁護士。換言すれば「社会生活上の医師」あるいは「経済活動におけるパートナー」としての存在。ユーザーは、高度の専門性を有する弁護士の中から、依頼事項に相応しい弁護士を適切に選択し、ニーズに即した質の高いサービスの提供を容易に受けられることを望んでいる(石井)
○ 国民と司法との接点を担っている弁護士へのアクセスの拡充と飛躍的な量の拡大を図る。何時でも、だれでも、どこでも、気軽に司法サービスが利用できる国民参加の仕組みの構築(吉岡)
◎ 近代日本において弁護士制度が全体社会の在り方との関係でどのように位置づけられ、どのように機能してきたのかといったマクロ的視点と、個別的なもろもろの制度、固有の問題をどのようにとらえて、どのように改善するかといったミクロ的視点を、適切に交差させながら考えていくことが重要。

第2.弁護士改革各論

Ⅰ 弁護士改革の人的側面
○ 弁護士制度の現状をもたらした歴史的・構造的な原因は、明治時代以来のいわば「弁護士を必要としない社会づくり」政策。この克服のために抜本的な改革に踏み出す必要(中坊)

1.弁護士人口の増加
・法曹(弁護士)人口の規模/
・法曹(弁護士)人口増加の具体的在り方

◎ 法曹(弁護士)人口の大幅増員が必要。
◎ 現在検討中の法科大学院構想を含む新たな法曹養成制度の整備の状況等を見定めながら、計画的にできるだけ早期に、年間3000人程度の新規法曹の確保を目指していく。

(法曹(弁護士)人口に関する個別の意見は省略)

2.公益性に基づく社会的責務の実践等

(1)弁護士の公益性

◎ 弁護士業務は、公益的側面を有し、かつこれを重視すべき。

・弁護士業務の公益的側面の具体的内容(弁護士の真実義務を含む。)

○ 弁護士業務は「当事者性」、「公益性」及び「事業者性」の「3つの顔」を持つ。当事者性・公益性をともに追求し、事業者性は一定の制約を受けざるを得ない。公益性の「公」とは公衆を意味し、個人(「私」)や地域社会・コミュニティ(「公」)の側にいて、これらの自由と民主主義のために公権力(「官」)と対峙するもの。弁護士は「民衆による自治の伴侶」として、公益性を具現する自由なプロフェッション。この自由は「官」からの自由で、公衆あるいは公益からの自由ではない(中坊)
○ 公益的側面つまり社会的責任とは、個々の弁護士の利害に沿ったものではなく、あくまでユーザーの視点に立って、全力を尽くすこと。ユーザーの視点に立つことによって、マクロ的に「法の支配」を実現していくことが大切(石井)
○ 弁護士会は、弁護士全体の意見を適切に反映し、理想の弁護士に国民がアクセスできるようにバックアップする責務を果たし、国民に開かれた形で弁護士の指導や監督等を行う責務を負った存在でなければならない。弁護士会には、①弁護士の情報開示の徹底、②弁護士間競争とユーザーのアクセス拡大の促進、③弁護士の社会的責任を果たせるような責務、が求められる(石井)
○ 弁護士会が既に、当番弁護士、法律扶助、法律相談などの公益的活動を行っていることを評価するが、今後、国民が利用しやすい司法を目指すため、弁護士及び弁護士会は、法曹養成をはじめ司法に対して積極的に協力参加することが求められる(吉岡)

・公益的側面の発露として、弁護士の社会的責務を法制度上どのように規定するか/・弁護士法1条2項(弁護士の使命)の見直しの要否/
・例えば、弁護士の裁判官への就任に関して、日弁連の推薦義務、推薦を受けた弁護士の就任義務等を弁護士法に新たに規定することの当否

○ 弁護士の社会的責務として、①公衆への奉仕、②公務への就任、③法曹(弁護士)養成への主体的関与がある。採算性・収益性などのいわばビジネスの観点でこれらの職務への就任やその遂行を考えてはならない。それは個々の弁護士の権限・特権ではなく、もとより放棄も許されないものであることによる(中坊)
○ 弁護士の公益性・社会的責務の明確化のために、弁護士法1条2項を改正し、「その職務の誠実な遂行をとおして社会的責務を履践」「公衆の利益の増進」を明示すべき(中坊)
○ 弁護士法24条の2を新設し、裁判官推薦にかかる日弁連の義務(候補者を推薦する義務)及び弁護士の義務(正当な理由なく裁判官任命を拒むことができない)等を規定すべき(中坊)
○ プロボノ活動の義務化:弁護士の社会還元の一つとしてのプロボノ活動については、一部の弁護士会で義務化を決めているようだが、実施状況については把握されていないのではないか。実質的に担保されることが必要(吉岡)

(参考)
弁護士法1条
第1条 弁護士は、基本的人権を擁護し、社会正義を実現することを使命とする。
2 弁護士は、前項の使命に基き、誠実にその職務を行い、社会秩序の維持及び法律制度の改善に努力しなければならない。

(以下の項目については後述)
・弁護士の公益的活動の意義とその適正確保のための方策の要否
・弁護士法72条(いわゆる弁護士の法律事務独占)の捉え方及び見直しの要否

(2)社会的責務の実践のための基盤整備
・公益性に基づく社会的責務の実践の支援方策の要否

○ 公衆への奉仕にかかる活動を弁護士の本来的な職務として位置づけ、その充実した実践のための基盤整備として、①法曹養成制度の改革、②公務兼職制限規定の撤廃、③公務の改革、④公益性に基づく社会的責務の実践の支援を行う(中坊)

(以下の項目については後述)
・弁護士法30条(兼職及び営業等の制限)の見直しの要否

(3)弁護士の意識改革

○ 公益性・社会的責務の自覚(中坊)
○ 公益性の自覚(弁護士の活動領域の拡大等)/エリート意識・縄張り意識からの脱却/サービス提供者であることの自覚/積極的に外へ目を向ける意識(国際性)/弁護過誤訴訟の容易化・一般化(仲間意識からの脱却)など(石井)

3.法曹養成制度の改革(略)

4.弁護士の活動領域の拡大

◎ 公的機関、国際機関、民間企業、非営利団体(NPO)など、弁護士の進出が求められている領域は広い。
○ 弁護士は、高度な専門性、国際性を要する先端分野での予防法務及び経営戦略の担い手として重要。積極的にその活動領域を広げていくべき(石井)

・弁護士法30条(兼職及び営業等の制限)の見直しの要否

○ 公衆への奉仕の充実、活動領域の拡大のため、報酬のある公職との兼職を禁止する現行弁護士法30条1項、2項を改正(中坊)
○ 弁護士法30条3項の許可制度の廃止:弁護士が営利企業の取締役等に就任するためには所属弁護士会の許可が要求されており、弁護士が民間企業で活躍することの足枷になっている。弁護士の兼職や営業等を制限している同項について、廃止を含めた制度全体の見直しを早急に行うべき(石井)
○ 弁護士の兼業禁止規定の改正(弁護士法30条):弁護士活動の場を広げ、国民へのサービスを充実するために改正(吉岡)

(参考)弁護士法30条
第30条 弁護士は、報酬ある公職を兼ねることができない。ただし、衆議院若しくは参議院の議長若しくは副議長、内閣総理大臣、国務大臣、内閣官房副長官、内閣危機管理監、内閣総理大臣補佐官、政務次官、内閣総理大臣秘書官、国務大臣秘書官の職若しくは国会若しくは地方公共団体の議会の議員、地方公共団体の長その他公選による公職につき、若しくは常時勤務を要しない公務員となり、又は官公署より特定の事項について委嘱された職務を行うことは、この限りでない。
2 弁護士は、前項但書の規定により常時勤務を要する公職を兼ねるときは、その職に在る間弁護士の職務を行ってはならない。
3 弁護士は、所属弁護士会の許可を受けなければ、営利を目的とする業務を営み、若しくはこれを営む者の使用人となり、又は営利を目的とする法人の業務執行社員、取締役若しくは使用人となることができない。

5.弁護士と隣接法律専門職種等(企業法務などを含む。)との関係

・「法曹」の定義と隣接法律専門職種等の位置づけ

○ 弁護士制度等の改革を前提に、将来的な方向性として弁護士以外にいかなる関連資格制度が必要か、現に存在する関連資格者をどのように位置づけるか(中坊)
● 従来型の法曹三者のみを念頭においてきた過去の制度とは抜本的に異なる発想が必要

・隣接法律専門職種等に訴訟代理権の付与など一定の法律事務の取扱いを認めることの当否及び認める場合の要件(必要な場合)

○ 弁護士は、法律によって業務を独占するのではなく、提供するサービスの質の高さをユーザーにアピールすることによって、責任ある地位を保つべき。隣接法律専門職種に対する訴訟代理権の付与、法律相談業務等の裁判外の業務独占の在り方、企業法務の活用等は、このような観点から検討されるべき(石井)
○ 弁護士過疎への対応として、司法書士等の隣接法律専門職種による補完的役割を可能に(石井)
○ 弁護士の法律事務独占の見直し(弁護士法72条):隣接法律専門業務との関係など(吉岡)
○ 簡易裁判所における民事訴訟、調停・和解の代理権を、一定の要件を満たす司法書士に認めてもよいのではないか。すべての司法書士に簡裁における代理人資格を一律に認めるのではなく、試験や研修を行うことにより十分な能力を保有した者に代理人資格を認めることが望ましい。なお、司法書士が求めている簡裁事件以外の家事審判や調停事件の代理権や民事執行事件の訴訟代理権については、慎重に検討されなければならない(北村)
○ 弁理士に侵害訴訟の代理権を付与することには合理性があると思われる。しかし、弁理士の単独代理を認めるか否かについては慎重に検討すべき。なお、弁護士との共同代理が望ましいとする場合には、弁理士だけで法的に代理人として出廷しうるのか否かの確認もしておく必要あり。弁理士の場合にも、きちんとした研修等を実施して一定の要件を満たす者について代理権を付与することが必要(北村)
○ 税理士に税務訴訟における出廷陳述権を認めることは合理性があると思われる。ただし、本人訴訟の場合の出廷陳述権は、慎重に検討すべき。税務訴訟における出廷陳述権を認めるにあたっても、研修等が必要であることは言うまでもない(北村)
○ 行政書士の活用(行政訴訟に関する出廷陳述権等)については、補佐人としての実績を踏まえた上で慎重に検討されなければならない(北村)
○ 社会保険労務士の活用(労働社会保険関係事件に関する出廷陳述権等)についても、補佐人として出廷した実績を踏まえながら慎重に検討されなければならない(北村)
○ 隣接法律専門職種による法律相談、示談・契約交渉等への関与に関連しては、前述した訴訟への関与に関連する事項について認めても良いのではないか(北村)
○ 隣接法律専門職種への代理権等の付与に当たり、具体的な能力担保制度の内容は、それぞれの職種によって様々であるが、民事法・民事手続法に関する試験を行ってその知識を確認するとともに、訴訟実務に関する相当の研修を実施する必要があると思われる。この場合の試験・研修の実施主体等については、今後さらに検討を深める必要があるが、まず各隣接法律専門職種の監督官庁や資格者団体において、試験・研修の適切な担い手の確保を含め、試験研修の仕組みを責任を持って検討すべき。また、職業倫理の在り方をも十分に見直す必要がある(北村)
● 日弁連においても現在意見を集約しつつあるが、司法書士に簡裁での代理権を認めず、補佐人権限のみ認める方向。司法制度は本来すっきりした形が理想だ。隣接職種には、行政庁の監督や行政庁OBの特例的な試験免除措置があることも踏まえ、慎重に判断すべき
● 行政庁の監督が及ぶかどうかは、本件については、直ちに問題とならないのではないか
● 特許弁護士、税務弁護士など弁護士資格に種類を設け、弁護士法の傘の下に包摂していくことも検討に値する

・隣接法律専門職種等との協働化の在り方

○ 弁護士と公認会計士・弁理士・税理士・司法書士等の異なる専門資格者によるワンストップ・サービス(総合的法律・経済関係事務所)に対するユーザーの期待は非常に強い。弁護士を含む専門資格者の意識改革(エリート意識が隣接法律専門職種等との協力関係を阻んでいる一つの要因)とともに、総合的法律・経済事務所の設置要件を緩和したり、異業種とのパートナーシップ及び相互の雇用の解禁も検討すべき(石井)
○ 市民のためのワンストップ・サービスの事務所展開(総合化・共同化)(吉岡)
○ 弁護士と司法書士、弁理士、公認会計士、税理士、行政書士、社会保険労務士等の隣接法律専門職種が一つの事務所に集まり共同して業務を行う総合事務所(ワンストップ・サービス)の設置を促進すべき(北村)
○ 弁護士会と他の隣接法律専門職種団体がより緊密な交流を行い、お互いの業務の流動性を高め、相互に他の資格者を紹介できるような仕組みを作るべき(北村)
● 異業種との相互の雇用の解禁については、外国ローファームやビッグ5の日本法曹市場への進出をどう考えるかという問題とも関わる

・弁護士法72条(いわゆる弁護士の法律事務独占)の捉え方及び見直しの要否

○ 業務独占の在り方を見直す時期に至っている。弁護士は、法律によって業務を独占するのではなく、提供するサービスの質の高さをユーザーにアピールすることによって、責任ある地位を保つべき。隣接法律専門職種に対する訴訟代理権の付与、法律相談業務等の裁判外の業務独占の在り方、企業法務の活用等は、このような観点から検討されるべき(石井)(再掲)
○ 企業法務担当者が企業の法廷代理人となれるような方策を検討すべき。その際、東京商工会議所が取り組んでいるビジネス実務法務検定を企業法務担当者の能力的担保措置に利用することは検討に値する(石井)
○ 弁護士の法律事務独占の見直し(弁護士法72条):隣接法律専門業務との関係、ADR、法律相談活動、消費者相談活動等、幅広い展開を担う法律家の必要性(吉岡)
● 弁護士法72条そのものの廃止も検討すべき
● 法律事務独占は、三百代言の弊害や民事暴力介入から利用者を守るためのものであり、歴史的・構造的にみても不可欠の制度
● 訴訟や執行の代理は、原則として弁護士に業務独占を認めるが、法律相談、ADR、行政手続代理等は、隣接職種等へ開放するとの考え方もありうる
● 企業法務、特任検事、副検事、簡裁判事を法曹資格との関係でどう取り扱うかについても検討すべき

(参考)弁護士法72条
第72条 弁護士でない者は、報酬を得る目的で訴訟事件、非訟事件及び審査請求、異議申立て、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件その他一般の法律事件に関して鑑定、代理、仲裁若しくは和解その他の法律事務を取り扱い、又はこれらの周旋をすることを業とすることができない。但し、この法律に別段の定めがある場合は、この限りでない。

6.弁護士と国際化/外国法事務弁護士等との関係

○ 我が国の渉外事務所は、国内における競争に備えるという守りの姿勢に徹し、海外に支所を設け、欧米の巨大ローファームと対等に競争していくという姿勢が乏しい。このような内向きの意識が、弁護士事務所の国際化や経営基盤の強化を妨げる一つの要因。弁護士としての誇りと自信に裏打ちされた外向きの意識に改革していく必要(石井)
○ ロースクール段階でも留学を義務付けるなどして、国際感覚を養う(石井)
○ 隣接法律専門職種等との協働化を進めたり、外国法律事務弁護士とのパートナーシップ及び雇用の見直しを行うなど、トータルとして質の高いサービスを提供(石井)
○ 競争激化に耐えうる国際競争力をつける必要があり、法律事務所の共同化、総合化、法人化等を進めるべき。外国弁護士との提携・協働、海外への進出等についても議論(吉岡)

Ⅱ 弁護士改革の制度的側面

1.弁護士へのアクセスの拡充(弁護士過疎や経済的理由等によるアクセス障害の解消)

◎ アクセス障害の解消は、市民に身近で、親しみやすく、頼りがいがあって信頼できる弁護士となるための喫緊の課題であり、弁護士・弁護士会の社会的責務。
○ ユーザーは、高度の専門性を有する弁護士の中から、依頼事項に相応しい弁護士を適切に選択し、ニーズに即した質の高いサービスの提供を容易に受けられることを望んでいる(石井)(再掲)
○ 国民と司法との接点を担っている弁護士へのアクセスの拡充と飛躍的な量の拡大を図る必要。何時でも、だれでも、どこでも、気軽に司法サービスが利用できる国民参加の仕組みの構築が重要(吉岡)(再掲)

(1)法律相談活動の充実
・法律相談センター、公設(公益)事務所の在り方(目的、運営主体、運営方法、弁護士の関与の在り方、費用負担の在り方等)

○ 法律相談の充実や公設(公益)事務所の設置を進める。弁護士・弁護士会の自主的努力には限界があり、また、地域住民への司法サービスの見地からも、国や自治体が一定の財政的負担を行う必要。そのための負担の在り方も要検討。この点も含め、公設(公益)事務所につき、その目的、運営主体、運営方法、弁護士の関与の在り方などに関して、法律事務処理の特性を踏まえた議論をすべき。これらを担う弁護士の育成も重要(中坊)
○ 弁護士過疎への対応:国が制度面や予算面から主体的に関与して公設事務所を開設し、法律扶助制度や公的刑事弁護制度における役割を担う。同時に、インターネットを利用した法律相談活動や、司法書士等の隣接法律専門職種による補完的役割を可能にすることも重要な検討課題(石井)
○ 法律相談の活性化:過疎地の相談センター、経済的なハンディキャップのある層に対する相談活動、専門相談など(吉岡)
○ 公設法律事務所、公設弁護人事務所の設置の検討(吉岡)

(2)弁護士費用(報酬)
・弁護士報酬の在り方(合理化・透明化を含む。)

○ 報酬制度のわかりにくさを解消するために諸般の工夫をする。司法制度全体や関連諸制度の在り方などと関連させて、総合的に検討すべき(中坊)
○ 報酬規定の透明化・合理化が必要。弁護士費用は、自由競争社会の中で市場によってその適正価格が決められていくもの(報酬規定の競争制限としての問題点)(石井)
○ ストックオプションを利用して、その報酬を支払えるようにすべき(弁護士費用の支払い方法の多様化)(石井)
○ 弁護士費用の合理化・透明化を図り、十分な説明をすべき。弁護士費用は、その事件での弁護士業務に見合った額であると依頼者が納得できることが求められるが、弁護士費用の事前予測が困難であるのをはじめ、額の決め方についても利用者にわかりやすいものになっているとは言えない。弁護士報酬といえどもサービス契約の一環であることを考えれば、「報酬等基準規程」を合理化し(適正価格)、透明性を高め、報酬に関する契約書の作成を義務化、徹底すべき(吉岡)

(3)弁護士情報の公開

○ 十分な情報が与えられていないために、弁護士を選択したり、必要に応じて交替させるなどのことができない(石井)
○ 紛争内容に即した特定の専門分野を得意とする弁護士の存在が求められるが、現状は弁護士の活動等に関する情報が不足しており、消費者がニーズに合致した弁護士を探すことは困難(吉岡)

・弁護士広告の解禁の当否及びその在り方

○ 諸外国における弁護士広告解禁の歴史と現状、弁護士広告の解禁が弁護士・弁護士業務の在り方にもたらした影響の積極面と消極面について、特に米国の経験を正確に踏まえながら検討すべき(中坊)
○ 専門分野、関与した事件歴、顧問先、所属事務所の規模と事務所における地位、平均的な顧問料や相談料、著書の有無等、ユーザーが弁護士を選択するために必要な情報を積極的に広告の対象とする(石井)
○ 弁護士会の広告規制緩和をさらに進める(吉岡)

・弁護士の情報公開・提供の在り方(弁護士評価制度とその公表方法を含む。)

○ 弁護士評価制度とその公表方法等についても、諸外国の例も参考にしつつ審議すべき(中坊)
○ 弁護士会は、ユーザーが必要とする情報をデータベース化し、インターネットホームページで公開したり、書物として出版するなど、弁護士に関する広報活動を充実(石井)
○ 弁護士会が研修等を実施して、「医学弁護士」、「建築弁護士」、「工学弁護士」など弁護士の専門性を認定し、特定の専門分野名の呼称を認める制度(石井)
○ 客観的な弁護士の評価(例えば論文、著書、専門分野の研修など)と情報開示のシステムの確立(例:ABAのような第三者評価)(吉岡)
○ 利用者が悪質な弁護士に対する懲戒申立を行いやすくするという観点からの懲戒手続の広報や、個々の弁護士の懲戒関係の情報の適切な公開なども検討すべき(吉岡)

(4)職務の質の向上・弁護士執務態勢の強化
・法律事務所の共同化・法人化・専門化・国際化・総合化等(複数事務所の設置を含む。)

○ 法律事務所の共同化・法人化・専門化・国際化・総合化に必要な施策の調査審議(中坊)
○ 事務所形態の多様化:弁護士事務所の共同化・法人化は、業務の組織化・分業化やノウハウの蓄積等を促し、高度に専門化した法律サービスの安定的供給を可能にする有効な方策(石井)
○ 複数事務所設置禁止(弁護士法20条3項)の見直し(石井)
○ 法律事務所の法人化・共同化を進めるべき(吉岡)
○ 法律事務所の支店禁止規定の改正(弁護士法20条):規模の大きい法人弁護士事務所の支店を認めることにより、弁護士の常駐を促進することができれば、弁護士過疎・偏在の解消に寄与(吉岡)

(参考)弁護士法20条3項
第20条3項 弁護士は、いかなる名義をもってしても、二箇以上の法律事務所を設けることができない。但し、他の弁護士の法律事務所において執務することを妨げない。

(なお、「ワンストップ・サービス」に関しては「隣接法律専門職種等との協働化の在り方」の項で既述)

・その他職務の質の向上に必要な施策の要否(継続教育の在り方を含む。) ○ 弁護士会が研修等を実施して、「医学弁護士」、「建築弁護士」、「工学弁護士」など弁護士の専門性を認定し、特定の専門分野名の呼称を認める制度(石井)
○ ロースクールを5年に1度、継続教育の場として利用(石井)
○ 弁護過誤訴訟の容易化、一般化:我が国では、弁護過誤訴訟について見聞きする機会がほとんどない。ユーザーは弁護過誤であることに気付くことすらない。弁護士はやみくもに仲間を守るような仲間意識から脱却して、弁護過誤事件についても積極的に調査研究し、これを専門分野とすることによって、弁護過誤訴訟の容易化・一般化を促すべき(石井)
○ 弁護士会等による研修制度の充実と研修の義務付けが必要(吉岡)

(5)弁護士自治と弁護士倫理
・弁護士自治の在り方と弁護士会の運営に第三者の意見を反映させる方策

○ 弁護士自治の強化と弁護士倫理の確立:弁護士倫理の確立は、法律事務の質の向上の一環であり、弁護士自治の課題である(中坊)
○ 弁護士会の運営に関して、市民の意見を反映させる方策を検討すべき(中坊)
○ 弁護士会は、弁護士全体の意見を適切に反映し、理想の弁護士に国民がアクセスできるようにバックアップする責務を果たし、国民に開かれた形で弁護士の指導や監督等を行う責務を負った存在でなければならない。弁護士会には、①弁護士の情報開示の徹底、②弁護士間競争とユーザーのアクセス拡大の促進、③弁護士の社会的責任を果たせるような責務、が求められる(石井)(再掲)
○ 弁護士会運営への国民の参加:弁護士会の意見形成の過程や会の運営は、アカウンタビリティー(説明義務)の概念が乏しく、ユーザーに開かれたものとなっていない。登録や懲戒等の行政作用を担っているにもかかわらず、国民が参加して、監督する手段は、ほとんどなきに等しい。行政機関と同様に国民に対するアカウンタビリティーの概念を導入し、(会則変更等に際し)パブリックコメントを求めていくことを義務付け、「社外役員」のように理事等には外部者も一部選任することなども検討すべき(石井)
○ 弁護士倫理の確立と弁護士会の責任:弁護士人口大幅増加に伴う倫理的な質の低下を防止するための対応、弁護士自治を維持・強化するという観点からの対応、個々の弁護士の自主的努力任せにしない弁護士会としての主体的取組みが必要(吉岡)
● 綱紀委員会には、弁護士以外のメンバーもいるが議決権がない。検察審査会的な一般国民の参加も一案
● 長期的には、医道審議会のような第三者機関が懲戒処分を決定するような制度も検討に値する

・倫理研修の在り方

○ 弁護士会は、法曹養成及び継続教育における倫理教育の比重を高めかつその教育技法を発展させる(中坊)
○ ロースクールを5年に1度継続教育の場として利用。特に倫理観を見失わないように継続的な教育の機会として機能させるべき(石井)
○ 法科大学院における倫理研修、弁護士登録後の倫理研修の充実(吉岡)

・苦情処理の適正化(弁護士会による指導・監督の在り方を含む。)/
・綱紀・懲戒制度の見直し(透明化・迅速化を含む。)

○ 弁護士会は、苦情処理を適正化する(中坊)
○ 弁護士会は、綱紀・懲戒手続を透明化及び迅速化する(中坊)
○ 懲戒制度の見直し(国民の参加、司法審査の双方向性):現在の懲戒制度は、懲戒処分を受けた弁護士は裁判所による司法審査を受けることができるのに対し、懲戒請求をしたユーザーは処分を不服として、司法審査を請求することができない。懲戒請求者も司法審査を請求できることに加え、懲戒委員会や綱紀委員会の構成メンバーの見直しといった制度改正が早急に必要(石井)
○ 弁護士会の指導・監督権限の強化:懲戒処分や弁護士による犯罪の増加に対応するため、弁護士会の会員に対する指導・監督権限の強化(強制調査権限の付与等)を検討すべき。弁護士に対する倫理観の徹底は弁護士会の課題としては緊急性を帯びたもの(石井)
○ ルールが守られるための制度的方策の実施/ルールの制定と周知徹底:弁護士業務・活動の各分野における具体的な倫理的行動準則の必要性、実効性あるルールづくりに向けた既存規定の見直しの必要性、ルール違反が行われないための制度的方策の必要性、ルールの遵守状況についての弁護士会の把握、市民参加の苦情処理窓口の充実など(吉岡)
○ ルールが守られなかった場合の適正な制裁のため、弁護士会の綱紀懲戒制度が実効性を持つような工夫が必要。倫理違反が疑われる事案についての弁護士会の調査権限の強化、調査を受ける者の調査協力義務の明確化などの措置がとられる必要(吉岡)
○ 利用者が悪質な弁護士に対する懲戒申立を行いやすくするという観点からの懲戒手続の広報や、個々の弁護士の懲戒関係の情報の適切な公開なども検討すべき(吉岡)

・弁護士の公益的活動の意義とその適正確保のための方策と要否

○ 弁護士会は、公衆への奉仕にかかる活動を推進する(中坊)
○ ルールが守られるための制度的方策の実施/ルールの制定と周知徹底:弁護士業務・活動の各分野における具体的な倫理的行動準則の必要性、実効性あるルールづくりに向けた既存規定の見直しの必要性、ルール違反が行われないための制度的方策の必要性、ルールの遵守状況についての弁護士会の把握、市民参加の苦情処理窓口の充実など(吉岡)(再掲)
○ プロボノ活動の義務化:弁護士の社会還元の一つとしてのプロボノ活動については、一部の弁護士会で義務化を決めているようだが、実施状況については把握されていないのではないか。実質的に担保されることが必要(吉岡)(再掲)

2.関連制度の改革(手続法等の見直し)(略)

以上