司法制度改革審議会

司法制度改革審議会 第29回会議 議事概要



1 日時 平成12年9月1日(金)13:35~16:30

2 場所 司法制度改革審議会審議室

3 出席者

委員(敬称略)
佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、井上正仁、北村敬子、髙木 剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本 勝、吉岡初子

事務局
樋渡利秋事務局長

4 議題
○ 「弁護士の在り方」について
○ その他

5 会議経過

① 前回に引き続き、「弁護士の在り方」について審議が行われた。「『弁護士の在り方』に関する提言内容の整理」(別紙1)に基づき、意見交換が行われ、主な内容は以下のとおり。なお、担当委員が相談の上、今回までの意見交換を踏まえ、取りまとめペーパーを作成し、後日審議会に諮ることとされた。

(Ⅱ弁護士改革の制度的側面 1(5) 弁護士自治と弁護士倫理)

○ 弁護士倫理の確立は、弁護士の職務の質の向上の一環であるとともに、弁護士自治の課題であること、法曹養成及び継続教育において倫理教育を重視し、弁護士自治を一層実効あらしめる見地から、弁護士会は、その運営の透明性を高め、国民に対する説明責任を果たすための具体的方策を検討すべきこと、弁護士会は、その運営に第三者の意見を一層反映させる方策を検討すべきこと、 弁護士会は、苦情処理を適正化するよう具体的方策を講じるべきこと、弁護士会は、弁護士の指導・監督を国民に開かれ、かつ実効ある形で行う必要があり、このような見地から、綱紀・懲戒手続の一層の透明化・迅速化・実効化等のための見直しを行うべきことについては、異論はないのではないか。

○ 弁護士会は、弁護士自治の下、独自に倫理の確立、綱紀の維持を行い、裁判官及び検事はそれぞれ別個の立場で、倫理の確立等を行ってきた。米国のように、法曹三者が一体となって倫理の確立等を行うべきではないか。米国のABAのような法曹団体が我が国にもできれば、制度改正なども円滑に進むのではないか。日本型のABAを作ることの可否について具体的に検討すべき。

○ そのような団体の設立は、法曹三者の相互信頼と一体性の確保という見地からも検討に値する。

○ 学者も含めたそのような団体が設立されることに賛成。倫理に限らず、法曹養成、裁判官任命等についても、法曹三者が一体となって関与すべき。

○ 実現可能性という見地からは、全国レベルに限らず、地方レベルの法曹団体の設立も検討すべきではないか。

○ ABAのような任意加入団体とする限り懲戒を担当することは無理ではないか。しかし、そのような団体を作り、司法制度の問題点等を研究・検討する体制を整備することは有意義。

○ 我が国にも、(財)日本法律家協会という法曹三者等が加入できる団体があるが、十分な加入者数を確保できないという現状にある。

○ 参与員として綱紀委員会に参加していた経験に照らすと、綱紀・懲戒手続は厳正に行われているという印象である。参与員に評決権を認めても実際上の問題は生じないのではないか。市民代表の参加も認めることは透明性確保の見地からも意義がある。

○ 懲戒手続は厳正に行われているが、調査の段階は弁護士のみが関与している。この段階にも外部の声を反映させるべき。

○ そもそも、弁護士の最終的な懲戒処分をどの組織が担当すべきなのかを検討する必要。

○ 医師会は強制加入団体ではなく、懲戒を担当できないので、政府機関である医道審議会が医師の懲戒を担当することになっている。自治が認められている弁護士について同様の手法を用いるのは問題。

○ 弁護士会の運営に興味のない弁護士がたくさんいるが、自治を保障されているのであるから、弁護士会の意思決定にできるだけ多くの弁護士が関与すべき。

○ 弁護士の会運営への関与の程度は会の規模により異なり、小規模弁護士会では多くの弁護士が関与している。一部の弁護士会では、当番弁護士、国選弁護等を義務付けしようという動きもある。これまで、弁護士は、公、パブリックに関与するという意識が薄かった。公益的責務を明文化すべきである。

○ 平成10年から、日弁連による倫理研修は義務化されている。弁護士1、5、10、20、30年目に受講義務がある。研修の形式は、少人数のグループによる事例中心の研究などである。実際、対象者の90%以上が受講している。

○ 弁護士の継続教育の代表的なものとしては、日弁連が行っている1週間の夏期研修などがある。参加は任意的であるが、事実上義務化されているようなものもある。また、弁護士会内のグループ単位でも研修は行われている。

○ 弁護士の継続教育は、弁護士の質の向上という観点から重要である。教育の機会は弁護士会等から数多く提供されている。弁護士が忙しくて受講できない状況もあり、参加の義務化や忙しくても受講せざるを得ないような仕組みも考える必要。

○ 義務化は難しいかもしれないが、講習を受ければ専門家と認定するというような方策は考えられる。

○ 講習は少人数で行うことが重要。実際上は50~60人の規模が限度ではないか。抽象的には講習を義務付けてもよいのでないか。

○ 弁護士資格取得後、資格保持の要件として一定の講習を定期的に受けることを義務付ける米国の制度が参考になるのではないか。

○ 弁護士は幅広い公益的活動を経験することにより、考え方や事件の見方の偏りを是正することができる。

(弁護士改革総論)

○ 弁護士は、今後、「社会生活上の医師」としての役割はむろん、「経済活動におけるパートナー」として重要である点については異論はないのではないか。

(Ⅰ 弁護士改革の人的側面 1 弁護士人口の増加)

○ 集中審議で合意した法曹人口の大幅増員の具体的な目標に加え、法曹三者は、司法試験合格者数を法曹三者のみによる協議で決定するというような発想から脱却すべきであり、国民的視点から考えるべきという点では合意できよう。

(2 公益性に基づく社会的責務の実践等)

○ 弁護士業務は、「当事者性」、「公益性」及び「事業者性」の3つの側面を有すること、このうち「公益性」とは、例えば、「法の血肉化」、「統治主体意識の醸成」、「社会生活上の医師としての役割」などの見地から、「公」に奉仕することと理解しうるという点では合意できよう。

○ そこに言う「公」は公衆という言葉より公共性という意味で理解した方が良いのではないか。

○ 弁護士業務の「公益性」は、対審構造における「当事者性」そのものが全体の仕組みの中で公益的性格を有するなど、他の側面と不即不離の関係にあること、弁護士改革を論じるに当たって、弁護士業務の公益的側面は重要であること、公益的側面の具体的内容としては、いわゆるプロボノ活動、法曹養成への積極的関与、裁判官任官候補者等の供給などが挙げられることなどについても、合意できよう。

○ 最も国民に近い弁護士が、頼りがいのある存在であるべきであるという点を明確にすべき。

(4 弁護士の活動領域の拡大)

○ 公的機関、国際機関、民間企業、非営利団体など、弁護士の進出が求められている領域は広く、そこで弁護士に求められる機能も多様であること、弁護士がこれら領域へ積極的に進出していくことは、単に利用者のニーズを充足するにとどまらず、これら領域で「法の血肉化」、「法の支配」を徹底させるという積極的側面が期待されること、更に、このような見地から、弁護士の公職就任や兼職・営業等を制限している弁護士法30条については、基本的に自由化する方向で見直すべきことについては合意できよう。

○ 見直しに当たって、公職の就任と営業とを全く同じに考えてよいかは議論のあるところである。

(5 弁護士と隣接法律専門職種等(企業法務などを含む。)との関係)

○ 法曹人口の大幅増員等の改革を今後進めていくが、それだけでは国民の権利擁護が不十分な現状は直ちに解消しないこと等にかんがみ、利用者の視点から、いわゆる隣接法律専門職種等に対して、それぞれの業務内容や業務の実情、業務の専門性、人口や地域の配置状況等を踏まえ、適切な試験・研修等による能力の担保を前提に、一定の場合に法律事務の取り扱いを認めることを前向きに検討すべきであり、審議会において更に検討を深めるという方向性については異論がなかろう。

○ その際、当面の問題として、現に存在する関連資格者をどのように位置づけるかという点と、今後、法曹人口の大幅増員等の改革がなされた後、将来的な方向性として、法律事務に関して、弁護士以外にいかなる関連資格制度が必要かという点を区別しつつ、多面的に検討すべきである。この点も含め、集中審議の際の北村委員によるレポートを踏まえ、審議会として更に検討する必要がある。

○ 弁護士と他の専門資格者による協働については、ワンストップ・サービスの実現を積極的に推進すべきことについては異論はなかろう。

○ 企業法務(司法試験合格の有無を問わない)や特任検事、副検事、簡裁判事の経験者の位置づけについても検討の必要がある。

○ 企業法務での問題は、その企業との関係に限った法律事務の取扱が問題となるのであって、隣接法律専門職種と問題状況が異なるので、ここの表題は、「弁護士と隣接法律専門職種・企業法務等との関係」と並列にすべき。

○ 企業法務関係者と同様の問題は、労組で司法サービスを提供する場合にもある。

○ 今後は法曹有資格者が行政機関や企業内に入って活躍することが期待される。企業法務関係の問題は、行政訴訟の指定代理人制度の見直しの問題とも関連させて検討すべき。

(6 弁護士と国際化/外国法事務弁護士等との関係)

○ 法曹の国際化を積極的に推進すべきであり、具体的には、法曹(弁護士)人口の大幅増員、弁護士事務所の執務体制の強化、弁護士の国際交流の推進、他の専門資格者や外国法事務弁護士等との提携・協働を進める等により、国際化に積極的に対応し、国際競争に耐えうる質の高い法律サービスの提供を目指すべきであることについては異論はないのではないか。

○ 過去の国内コンピュータ産業の保護育成の例もあるように、外国の弁護士と我が国の弁護士を直ちに全て対等に扱うというのでは弊害が生じるので、我が国の弁護士に対し一定の配慮をする必要がある。

○ 協働化は良いとしても、外国の弁護士による日本の弁護士の雇用を認めるというのは問題である。外国法事務弁護士については、これまで必要な制度改正を行ってきており、我が国の現状が必ずしも国際的に問題視されている訳ではない。

○ 国際化という観点からは、日本の司法の国際的貢献、例えば発展途上国への法整備支援等も重要である。

(Ⅱ弁護士改革の制度的側面 1 弁護士へのアクセスの拡充)

○ 利用者は、高度の専門性を有する弁護士の中から、依頼事項に相応しい弁護士を適切に選択し、ニーズに即した質の高いサービスの提供を容易に受けられること、何時でも、だれでも、どこでも、気軽に司法サービスが利用できること等を求めていることを踏まえ、弁護士人口の大幅増員とともに、弁護士過疎、経済的理由によるアクセス障害、弁護士に関する情報の不足、依頼内容の高度化・専門化等に適切に対応するために必要な措置を講じるべきことについても異論はなかろう。

((1) 法律相談活動の充実)

○ 法律相談センターや公設事務所の設置を進め、法律相談の充実を図るべきこと、このことに関し、弁護士・弁護士会の一層の自主的努力が期待されるとともに、地域への司法サービスの見地から、国又は自治体において一定の財政的負担を行うことも含め、負担の在り方について検討すべきこと、とりわけ公設事務所の設置については、その目的、運営主体、運営方法、弁護士の関与の在り方、法律扶助制度や現在検討中の被疑者・被告人の公的弁護制度等との関係などを検討すべきことについても異論はなかろう。

((2) 弁護士費用)

○ 法の血肉化、弁護士の専門化・国際化を期待するのであれば、企業を含め社会全体として、コスト負担の増加を覚悟する必要がある。我が国の一流の弁護士でも報酬面では米国等に比べ必ずしも恵まれているとは言えない。

((4)職務の質の向上・弁護士の執務態勢の強化)

○ 法律事務所の共同化・法人化・専門性強化・協働化・総合事務所化等が求められていること、法人制度の導入に伴い、複数事務所の設置禁止(弁護士法20条3項)を見直すべきことについても異論はなかろう。

○ 法人化が総合事務所化にうまくつながっていくか、という問題はある。

② 中間報告をいつどのような形で取りまとめるかについて意見交換がなされ、その主な内容は以下のとおり。10月以後中間報告までの審議日程案を次回審議会において示し、さらに意見交換することとされた。

○ 中間報告は、どのような理念で改革を行うか、いわば、どのような建物を建て、その中の大きな間仕切をどうするかということは、国民に向けて示すべき。ただし、建物の内装に当たる部分までは示す必要はないであろう。

○ 今後中間報告までに審議すべき事項を考慮すると、中間報告の時期は当初10月一杯を目途としていたが、11月中旬になるのもやむを得ない。

○ 中間報告の時期が11月というのは遅くはないか。中間報告から最終意見までの審議期間も考えると、簡略なものでもよいから早く出すべき。

○ 今後、文部省検討会議の報告を受けて、ロースクールの問題をさらに検討する必要があるので、10月中に中間報告を行うのは無理。

○ 中間報告は改革の骨格を示す程度で足り、あまり詳しくすべきではない。各ブロックのバランスを取る必要もある。

○ ブロック間でアンバランスになっても、かなり合意ができている部分については詳細に記載してもよいのではないか。

○ 中間報告は、国民に審議状況を知らせるという意味もあるので、ある程度細部に及んでもよいのではないか。各ブロック間で記載の濃淡があってもよい。できるだけ、議論の経過を反映したものとすることが必要。

③ 次回の審議予定
  次回審議会は、9月12日(火)午後1時30分から、「国民の司法参加」について、法曹三者ヒアリングを行う。

以上
(文責 司法制度改革審議会事務局)

~速報のため、事後修正の可能性あり~