司法制度改革審議会

第29回司法制度改革審議会議事録



第29回司法制度改革審議会議事次第

日 時:平成12年9月1日(金) 13:30 ~16:35

場 所:司法制度改革審議会審議室

出席者(委 員)

佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、井上正仁、北村敬子、髙木 剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本 勝、吉岡初子

(事務局)
樋渡利秋事務局長

  1. 開 会
  2. 「弁護士の在り方」について
  3. 閉 会

【佐藤会長】私の方が少し遅れまして恐縮でございました。ただいまから第29回会議を開会したいと存じます。

 本日の議題は、まず前回の審議に引き続きまして、「弁護士の在り方」についての意見交換をしたいということでございます。本日、休憩は大体3時半くらいと思っておりますけれども、その辺までにこの「弁護士の在り方」について御審議を願い、一応のとりまとめができればと考えております。

 それから、御案内では、「国民の期待に応える刑事司法の在り方」に関するペーパーについて意見交換を行いたいと考えておりましたけれども、後で申しますように、これは次回に回させていただきたいと考えております。

 それから、もう一つ、前回の審議会の際に、中間報告のとりまとめ方について言及しましたが、今日、少し委員の皆様の御意見を頂戴できればと考えております。

 先ほどちょっと申し上げたことですけれども、刑事裁判について、我々審議会としての意見のとりまとめを行いたいと思っておりましたけれども、最近と言いますか、昨日から今日に掛けて、刑事裁判の在り方について審議をするということについては、その審議の適正性を保持する上でいささか適切でないと思われる事態が生じまして、その辺を考慮して、本日はこの議題についての審議は取りやめ、次回の12日に行いたいと考えております。

 もし、御了解を得られれば、その議題についてはそういう取り扱いをさせていただきまして、「弁護士の在り方」について審議に入りたいと思います。今日、詳しいことは申し上げられませんけれども、いずれその辺について御事情をお話しすることもあろうかと思いますので、今日のところは私の気持ちをおくみ取りいただいて、御了解いただければと思いますけれども、いかがでございますでしょう。

(「異議なし」と声あり)

【佐藤会長】ありがとうございます。

 それでは「弁護士の在り方」について、意見交換を行うことにいたします。その前に、前回の審議会の際に、髙木委員から御要望のありました弁護士の国際化に関する資料、それから水原委員から御要望のありました簡易裁判所判事、特任検事、副検事に関する資料につき法曹三者に相当無理なお願いを事務局からしていただきまして、御準備いただきました。本日お手元にお配りしておりますので、意見交換の際に参考にしていただきたいと思いますけれども、せっかくこれをつくっていただき、また法曹三者から御説明いただける人に来ていただいておりますので、最初簡単に御説明いただければと考えております。

 本日の意見交換につきましても、前回の審議会の際にお配りしました弁護士の在り方に関する提言内容の整理、これはとりまとめのペーパーという趣旨だということは前回申し上げておりますけれども、そのペーパーにしたがって、審議してまいりたいと考えております。

 前回はこのペーパーの、たしか10ページの(5)の前まで来たと思いますけれども、今日はそれですと、10ページの「(5)弁護士自治と弁護士倫理」のところから意見交換を行うということになります。

 前回ヒアリングの際に立ち入った質疑応答があったことも関係してだろうと思いますけれども、この(5)の前のいろいろな箇所についても、今日もう少し議論したり、あるいは確かめておきたいというようなことがおありかもしれません。先ほど刑事裁判についての審議を取り止めましたので、その辺、立ち戻って少し御審議いただく時間的な余裕もあろうかと思います。それを含めて、本日はこの弁護士の在り方について、私どもとしての一応の取りまとめを行いたいと考えております。そんなことでよろしゅうございましょうか。

 それでは、まず最初に法曹三者から資料につき御説明していただきましょうか。

 では、法務省、弁護士会、最高裁という順序で、それぞれ5分程度の目途で御説明いただけますか。よろしくお願いいたします。

【法務省黒川司法法制調査部参事官】法務省司法法制調査部参事官の黒川でございます。

 法務省からは、2種類の資料を用意させていただいております。「弁護士と国際化関係資料」と題する冊子と、「特任検事・副検事関係資料」と題する冊子でございます。

 まず初めに「弁護士と国際化関係資料」について御説明申し上げます。

 この中で大きく言って三つの資料を用意させていただいていますが、第1の資料に「弁護士を巡る主な外交交渉」の概況をとりまとめさせていただいております。

 弁護士を巡っての国際的枠組みでは、WTOと日米規制緩和対話、日本EU規制改革対話、この三つの枠組みについて、4ページ物の中で触れさせていただいております。この資料を御覧いただきますと、WTOにつきましては、1995年に設立された国際機関であって、137 の加盟国、地域で構成されていることがおわかりいただけると思います。

 このWTOの枠組みの中で、弁護士問題はサービス貿易の一つとして、この分野についての交渉が行われる予定と聞いておりますが、皆様御承知のとおり、昨年シアトルでの会合で新ラウンドの立ち上げの合意には至っておりませんので、まだ本格的な交渉は始まっていない、ただ、今後の交渉の取り進め方などについての検討がなされているところであると聞いております。

 2国間の交渉としては、この資料の3ページ以下に記載しておりますが、日米間、日本EU間のものがございますけれども、アメリカ、あるいはEUからこの法律サービス分野についての規制緩和要望がなされ、また、我が国からも、アメリカ、EUに対して規制緩和要望を行っているところであります。

 米国、EUからの御要望内容は多岐にわたっていますけれども、主要なものは、外弁と日本弁護士のパートナーシップを認めよということや、外弁の日本弁護士の雇用を解禁せよと言った趣旨の要望がなされております。

 次に資料2、資料3を御覧いただきたいのですが、資料2は「外国弁護士受入制度についての諸外国の状況」でございます。

 また、資料3は「主要国における外国弁護士受入制度の概要」でございます。

 まず資料2を御覧いただきますと、そもそも外国弁護士の受入制度自体について、これを認めている国とそうではない国があることがおわかりいただけると思います。

 1枚めくっていただきまして、アメリカにおいても、50州等のうちで、外国弁護士の受入制度を設けているのは、ここに記載した23州と、コロンビア特別区というものがございますが、23州が受入制度を設けているということがおわかりいただけると思います。

 資料3については、イギリス、アメリカ、ドイツ、フランスの外弁制度の概要を示しておりますが、受入制度があるかないか、あるとして、その受入要件がどうなっているか、業務の範囲、あるいはパートナーシップ、雇用が認められているかなどについて、各国の国情に応じて、さまざまな規制のありようになっていることがおわかりいただけると思います。

 次に、特任検事、副検事関係について御説明いたします。

 この資料は資料1に全体の概況説明を書かせていただいておりまして、資料2以下がそれを支えるさまざまなバックデータ、資料集となっております。

 まず、資料1に沿って御説明いたします。

 特任検事・副検事というものがどういうものかと申しますと、まず、検察庁法3条において、広く検察官というものの中に検事総長、次長検事、検事長、検事、副検事の5種類があるとされております。

 特任検事と言いますのは、検察庁法第18条第3項に基づきまして、3年以上副検事の職にあって、政令で定める考試、検察官特別考試と申しますが、この考試を経て任命された検事の一般的な呼称でありまして、司法修習生の修習を終えた法曹資格を有する検事に比べて法令上の権限はもとより、実際に担当する職務内容についても、何ら変わるところはございません。

 この特任検事の任官者数や現在員、退職者については、この冊子の中の資料3及び資料4に記載してございます。

 特任検事の任官者数はおおむね年間1けた台ということがおわかりいただけると思います。

 次に、副検事でございますが、検察庁法第18条第2項に基づいて3年以上の政令で定める公務員の職にあった者で、政令で定める審査会の選考を経た者の中から任命され、区検察庁の検察官の職のみにこれを補することとされています。

 具体的には窃盗、横領など、区検察庁に対応する簡易裁判所管轄に係る事件の捜査・公判に従事するほか、地方検察庁の検察官事務取扱として、詐欺、業務上横領、覚せい剤取締法違反等の地方裁判所管轄に係る事件の捜査・公判にも従事しております。

 副検事の任官者数等につきましては、お手元の資料5、資料6を御覧いただければ、その概況がおわかりいただけると思います。

 また、特任検事、副検事の職務内容については、資料7にとりまとめております。

 次に、このような特任検事、副検事の能力や資質をどのように確保しているかについて御説明申し上げます。

 恐縮ですが、これもまた資料1に戻っていただきまして、資料1の二つ目の四角囲みに主に書いてございますが、検察官特別考試には筆記試験と口述試験があり、科目については、ここに記載させていただいたとおりでありまして、憲法、民法、刑法、商法、刑事訴訟法、選択科目としての民事訴訟法という、従来の司法試験と同一科目のほか、検察の実務という科目もございまして、これは検察官としての高度の実務能力を問うものでございます。

 試験問題の例については、資料2の別添の2に記してございますので、後ほど御覧いただければ幸いでございます。

 この特別考試の合格率は資料2の別添3の一覧表に記載してございますが、おおむね平均10%という数字でございます。

 そして、合格して検事に任官すれば、法曹資格を有する検事と同じ職務を行い、また、任官後も資料8にありますように、経験年数に応じて実施される各種研修によりレベルアップが図られているほか、人事訴訟等において、民事事件の訴訟遂行の経験も有しておりまして、また、実際の検察庁内部での処遇上も検事正、次席検事、または支部長検事などの管理職にも登用されております。

 次に副検事についてですが、やはり司法試験を指向した内容の副検事選考試験に合格したものが任命されておりまして、この選考試験の科目は、憲法、民法、刑法、刑事訴訟法、検察庁法、一般教養でございます。

 資料2の別添6には、参考として、平成11年8月実施の筆記試験問題を記載しております。合格率は平均約24%となっています。

 任官後も、日ごろの仕事を通じての研鑽のほか、先ほどの資料8にもありますように、経験年数に応じて実施される各種研修によりレベル・アップが図られておりまして、現実にも簡易裁判所のみならず、簡易裁判所での事務は当然として、地方裁判所での訴訟遂行の業務にも従事しておりまして、実務上の特段の支障は生じておりません。

 以上でございます。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。 ZZ それでは、弁護士会の方から御説明をお願いします。

【日弁連川村外国弁護士及び国際法律業務委員会前委員長】日弁連から、外国弁護士及び国際法律業務委員会というものがございまして、それの前委員長をしておりました川村、それから現在の副委員長であります下條の2人で伺いまして、御説明させていただきます。

 まず、提出しております資料でございますが、4種類あると思います。

 一つは、「法律サービスの市場開放を巡る主要国の弁護士会における議論の状況」と称する短い書面でございまして、これが主として前回の審議会で出ました質問に応えるものかと考えております。

 これを補充するものとして、やや厚めの「外国弁護士制度と法律業務の国際的規制緩和への動き」という冊子が付いてございますが、これは近日開かれる予定の日本と韓国の弁護士会の会長会議というところに提出する予定のものでございまして、現在の日弁連の調査の範囲を、カレントにまとめているものかと思いますので、提出いたしました。

 三つ目が日弁連の機関誌でございます『自由と正義』に載ったものでございますが、「弁護士職の国際的業務に関するフォーラム」、パリ・フォーラムと呼んでおりますが、これは日弁連が提唱いたしまして、パリに全世界の弁護士会の代表を集めまして、弁護士職の国際化について討議する会議を2日間にわたって持ったものでございますが、そのときのまとめ、主要3弁護士会、アメリカの弁護士会と、ECの弁護士会と、日弁連が代表して出しましたペーパーを載せたものでございます。

 四つ目がQ&Aになっておりますが、日弁連で海外の理解を深めるために、WTO/GATS問題というものについて比較的わかりやすく解説したものでございまして、これは我々自分でつくったものでございますので、行き届かないところもあろうかと思いますが、専ら会内理解に供するためにつくったものでございます。

 御質問に対する回答と申しますか、我々の立場でございますが、弁護士業の国際化ということにつきまして、単にこの審議会で取り上げられているにとどまらず、全世界の弁護士会で現在非常に重要な問題となっている点でございます。

 これは1990年代になりまして、加速度的に重要な問題になってきたのでございますが、これが1995年にできましたWTOにおいて法律サービスの市場開放を巡る問題という形で取り上げられましたために、より問題の緊急性が増したものでございまして、日弁連のみならず、また、この審議会のみならず、全世界の弁護士会、あるいは弁護士会の連合会といったようなところで、この問題について非常にホットな議論を続けているところでございます。

 この報告書はその点にも若干触れてみたいと思いながらつくられております。

 この国際化の問題は、おおむね二つの問題に集約することができます。

 一つは、日本では外国法事務弁護士と呼んでおりますが、外国弁護士の扱い方の問題。もう一つ、MDPと盛んに言っておりますが、これは日本の規制緩和の3か年計画などでは、総合的法律経済関係事務所と呼ばれているものに当たるものかと思われます。

 要するに、異業種間、あるいは他業種、プロフェッショナルの間での共同事業という問題でございまして、弁護士会では専らMDPと呼んで、この問題を協議しているものでございます。

 この外国弁護士の問題でございますが、御存じのように、日本は外国法事務弁護士という制度をつくりまして、3度にわたりまして、その自由化措置も行いまして、非常に完成された制度を持っております。一部には、まだまだ後進的であるとかいう批判もございますが、それは必ずしも的を得ておりません。後ほどもう少し踏み込みますが、全世界の弁護士会の国際的協業システムというのは、大体この日弁連のシステムに統一化されつつあります。唯一の例外はフランスでございまして、フランスはそのために非常な混乱を経験しております。それも後ほど述べたいと思います。

 そういうわけで、この外国弁護士問題というのは、国際的な場でもやや下火になっております。ホットな話題ではございません。今、最もホットな話題になっているのはMDPでございます。これは順次御説明申しますが、IBAというのがございまして、これは任意団体ではございますが、全世界、163 の弁護士の団体、1万6,000 人以上の直接の個人会員を擁する世界最大の法曹団体でございまして、日弁連も正式に加盟しておりまして、まず世界の弁護士の団体としては最も権威ある団体でございます。

 そのIBAでも国際業務問題ワーキンググループというのと、それからMDP問題についてのワーキンググループというのがありまして、それぞれ審議を続けております。この国際業務問題ワーキンググループが、いわゆる外国弁護士問題を扱っておりますが、既に一定の提言をなしまして、大体WTOの体制に沿う形の提言をしております。

 MDPにつきましては、現在、議論が上下しているところでございまして、これを更に進展させようという強い力もありますが、やはり世界の弁護士会からは、MDPというものは、弁護士の独立性、弁護士の業務ということでは異質なものではないかということで、このMDPの承認については、慎重な立場が続いております。

 他方、世界で最も先進的と思われますアメリカの法曹協会、ABAと呼んでおるんでございますが、これは世界最大の弁護士会、世界最強の弁護士会でございますが、ここでも、この問題はこの2、3年、MDP問題では議論しておりますが、ここもごく最近、先週入った報道によりますと、MDPについては、時期尚早と申しますか、慎重な決議になりまして、当分、まずMDPがアメリカでそのまま導入される見込みはないと思われます。

 他方、アメリカでございますが、これは法務省の御報告にもございましたが、外国弁護士問題につきましては、我々に対して要求するところは非常に急でございますが、自分たちの州について申しますと、いまだに半分以下の州でしか、この制度は導入されておりませんで、ABAの影響力もこの点では非常に小さいという状況でございます。

 英国は比較的自由だったのでございますが、しかし、制度としては自由でございますが、入国管理のシステム、あるいは弁護士倫理といったような形で、実際には外国弁護士の活動を自由にはしておりません。

 英国は法務省の資料によりますと、共同経営は自由だとなっておりますが、実際には共同経営に参加する弁護士は、全部ロー・ソサエティーのメンバーでなければならない。イギリスの弁護士会のメンバーでなければならないという規定を設けることによって、有名無実にしておりまして、事実上、共同経営は不可能になっております。

 フランスは、独自の道を歩みまして、外国事務弁護士の制度をつくらず、外国人でもフランス人でも、フランスの司法試験を通れば全部資格を認める。そして、自由にロー・ファームをつくることができるという制度を導入したのでございますが、その結果、実際には新しく外国から弁護士が参入することを非常に困難にしたばかりでなく、フランスの弁護士の実務において、事実上フランスの伝統的なアボカの立場が非常に小さくなる。現実にどういうことかと申しますと、フランスの大きなロー・ファーム10個を取りますと、そのうちの8個までは外国のロー・ファームか会計事務所に直結するロー・ファームになっておりまして、純粋にフランスのアボカのロー・ファームは二つしか残っていないという状態になっておりまして、これは自由競争の結果そうなんだと言うべきなのか、それともフランスの法律制度の在り方にとって妥当なのかどうかという問題を提起しているところでございます。

 我々は率直なところ、フランスはこの弁護士の制度の国際化に失敗したと見ているところなのであります。

 ドイツは比較的昔から職業資格の区別が割合に自由でございまして、専門共同経営も非常に広く認められておりまして、そしてまた、アメリカ、イギリスのロー・ファームの活動も比較的早くから認めていたのでございますが、ドイツの弁護士自身が比較的早くから大ロー・ファームをつくったということで、比較的うまく共存しているところでございます。しかし、これもつぶさに見てみますと、ドイツ、イギリス、フランスはそれぞれEUの1国なのでございますが、御存じのように、EU内部ではこれは資格の相互承認制度というものを進めておりまして、相互に自由に行き来して、自由に法律の業務をすることができるようにしております。しかし、ひとたびEU域外、例えば日本の弁護士、アメリカの弁護士ということになりますと、これは各国の制度に委ねられておりますが、ドイツの場合もこれをなかなか厳しく制限しておりまして、例えば日本の弁護士がドイツに参入するということはやりにくくしております。

 二つ目の外国弁護士制度のところを見ていただきたいんでございますが、我々、日弁連の対応でございますが、1995年のWTOに至りますGATSの交渉の締結の際には、日本の弁護士制度の問題がなかなか一つの問題でございました。GATTで最後に残った問題はコメと弁護士だけだといって非難されたときがあったのでございますが、この際日弁連は自発的に、我々が各国を回って研究をいたしまして、そのとき外弁法の相互主義というものが、このWTOの成立に一つの障害になっているということを発見しまして、これをWTO加盟国に関する限りは撤廃するという方針を出しまして、まとまった経緯がございました。これがこの問題の1994年のGATSの最終決着に大変な役割を果たしたということを指摘しておきたいと思います。

 それから、このMDPの問題に少し戻りますが、このMDPは、日本では先ほど申しましたように、総合的法律経済関係事務所と呼ばれている制度でございますが、これの主たる問題は、いわゆるビッグ・ファイブと呼ばれています5大会計事務所の傘下に入った法律事務所の問題なのでございます。5大会計事務所につきましては、この資料二つ目のページ17に人数や売上げが書いてございますが、要するに巨大な存在でございます。

 このような会計事務所と結びましたロー・ファームの影響でございますが、これは提出している資料ではございませんが、1999年11月現在の世界の弁護士数別トップ10のロー・ファームの資料がございます。それによりますと、実はクリフォード・チャンスという英国系の事務所が2,518 人を擁しまして、世界最大。

 2番目は、ベーカー・マッケンジーというアメリカ系の法律事務所が2,432 人を擁しまして、世界第2位なのでございますが、3番がプライス・ウォーターハウス系、4番がアーサー・アンダーセン系と、世界4大事務所の3番、4番を、今や会計事務所の経営いたします法律事務所が占めております。5番、6番は実はアメリカの法律事務所でございますが、7番には、KPMGという会計事務所、1,264 人の弁護士。8番がエバー・シェッドという、これもヨーロッパ系の会計事務所で1,010 人。9番、10番とイギリス系のロー・ファームということになりまして、これはその1年前の統計にはこのような数字はありませんでした。その1年間にこれだけ拡大いたしました。大きな勢力となっております。

 このこと自体が危険なことではないと思いますが、これが世界の弁護士業の在り方に大きな影響を持っている問題であるということは、数を御覧になっただけでも、そして、その成長の速度を御覧になっただけでもおわかりになると思います。

 それは同時に、英米系のロー・ファームの大きさと拡大についても、同様の慎重な配慮が必要だということを意味しております。私は決してそのことが個人といたしましても、悪いことだとは申しません。恐らくいいことを一杯持ち込んでおります。率直に言いまして、日本の現在の弁護士業界に外弁、立派な数多くの英米のロー・ファームが日本に拠点を開きまして事業をやりましたことが、日本の弁護士業界にすばらしい影響を及ぼした、活性化したということは率直に認めなければならないけれども、だからと言って、最初からフランスのように、我々が手放しでやっていたら、今の姿があったろうかと思わざるを得ません。

 ですから、これは極めてよく利くワクチンだなと。そのワクチンの使い方には注意しなければならないということを意味しているということをよく御理解願いたいと思うのでございます。

 資料全部については行き渡りませんでしたが、そういう程度で、時間もございませんので、説明にさせていただきたいと思います。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。
 それでは、最後に最高裁の方から御説明いただきたいと思います。

【最高裁判所田中人事局認容課長】最高裁人事局任用課長の田中でございます。

 それでは、配付いたしました資料「簡易裁判所判事について」と題するものにしたがいまして、御説明申し上げます。

 表紙をおめくりいただきますと、横長の紙が出てまいりますが、まず簡易裁判所判事がどのような職務をしているかということを簡単に触れさせていただきます。

 簡易裁判所判事は、要するに簡易裁判所の管轄事件を独立して、単独で処理しているわけでございます。簡裁の管轄する事件と言いますのは、一言で申しますと、民事につきましては、比較的少額の第一審通常訴訟、刑事におきましては、軽微な犯罪に関する第一審通常訴訟というものが中心となっております。

 民事、刑事それぞれ資料に記載してあるとおりでございますが、例えば民事事件の通常訴訟と言いますのは、訴訟の目的の価額が90万円を超えない請求の事件であります。少額訴訟と言いますのは、新しく法にされたものでございますが、訴訟の目的の価額が30万円以下の金銭請求事件で、原則として1回の期日で審理・判決を行うというものでございます。

 刑事事件の中で公判について申しますと、罰金以下の刑に当たる罪、選択刑として罰金が定められている罪及び常習賭博、窃盗、横領、盗品譲受け等の各罪について、公判廷で審理、判決を行うものでございます。

 次の頁の資料でございますが、簡易裁判所判事につきましては、いわゆる法曹の有資格者が一定の条件の下に任命資格を有することは言うまでもないことでございますが、そのようなものでなくても、特別の選考を経て任命される簡易裁判所判事がございます。以下、御審議の趣旨に従いまして、いわゆる法曹資格を有しない選考による簡裁判事に絞って御説明申し上げます。なお、先ほど説明いたしました職務内容は、法曹有資格の簡裁判事と選考による簡裁判事とで変わるものではございませんで、全く同一でございます。

 そこで、選考による簡裁判事の根拠についてでございますが、資料にありますとおり、裁判所法45条でございます。すなわち、多年司法事務に携わり、その他、簡易裁判所判事の職務に必要な学識経験のある者は、簡易裁判所判事選考委員会の選考を経て、簡易裁判所判事に任命されることができるということになっております。裁判所法45条に基づく簡易裁判所判事の選考の具体的な手続につきましては、最高裁規則でございます簡易裁判所判事選考規則がございまして、これに規定されております。

 これによりますと、簡易裁判所判事推薦委員会というものが各地方裁判所に設けられております。その委員は、地方裁判所の所長とその他の判事、家庭裁判所の所長、地方検察庁の検事正、弁護士会の会長並びに学識経験者という8名で構成されるのが原則となっております。

 この推薦委員会におきまして、簡裁判事として適当と認める者が、高等裁判所の長官を経まして、簡易裁判所判事選考委員会の方に推薦されるということになっております。

 これを受けました簡易裁判所判事選考委員会は、これは最高裁の監督に属しているわけですけれども、法律試験、人物試験の結果に基づき候補者を選考することになっております。選考委員会の委員の構成でございますが、最高裁判事3名、東京高裁長官、次長検事、弁護士2名及び学識経験者2名という9名の構成となっております。

 資料をおめくりいただきますと、簡易裁判所判事選考委員会によります試験の内容を具体的に記載しております。試験は法律試験と人物試験に分かれます。まず、3月ごろ第1次選考として、筆記・論文式による法律試験が課せられます。科目は憲法、民法、刑法、民事訴訟法、刑事訴訟法で全科目について受験者全員が受けることになっております。

 第一次選考に合格した者につきまして、6月ごろ第2次選考といたしまして、口述の方法により法律問題に関する試問が行われます。さらに身上、経歴等、一般的事項に関する試問も行われます。

 以上を経まして、簡易裁判所判事選考委員会が候補者を選考することになっております。これが最高裁に報告されまして、その中から最高裁が簡裁判事として指名し、内閣で任命していただくということになっております。

 更におめくりいただきますと、「選考による簡易裁判所判事に対する研修の概要」が記載してございます。

 簡裁判事に任命された後は、研修体制が整っております地方裁判所本庁所在地にあります簡易裁判所に配属されることになっております。そして8か月間研修が行われます。資料に初任者研修1、2、3とございますが、これが8か月にわたる最初の研修でございます。

 まず、第1段階の初任者研修1と申しますのは、個々の配属庁におきまして、実際に見学・傍聴等を行いながら慣れていくものでございます。

 初任者研修2と申しますのが、司法研修所に全国から集まりまして、2か月程度研修を行うものです。内容としては、民事・刑事事件の手続についての講義のほか、司法修習生用の教材等も使用いたしまして、民事・刑事の判決起案、模擬裁判、それに対する講評などといったことを行っております。

 初任者研修3の段階になりますと、再度配属庁に戻りまして、以上の研修を踏まえまして、実際に事件を処理しながら研修を重ねていくという体制になっております。

 その後、任官3年目、5年目、6年目以降と順次より高度な内容へと研修を高めていくということで行っております。

 最後のページでございますが、「選考による簡易裁判所判事の任命・退官・現在員数」でございます。平成元年から本年度までについて記載してございます。いずれも12月31日現在の数字でございますが、12年度につきましては、8月1日現在で記載しております。御覧いただきたいと存じます。

 以上でございます。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。

 質疑は我々の意見交換の中で適宜やっていただいて結構かと思うのですけれども、髙木委員、水原委員、今の段階で特に何かありますか。よろしゅうございますか。

 それでは、先ほど申し上げましたように、10ページの(5)の「弁護士自治と弁護士倫理」のところからまず御審議いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

 冒頭に中坊委員の御意見ということで出ておりますけれども、弁護士倫理の確立が弁護士の職務の質の向上の一環であるとともに、弁護士自治の課題であるということ。あるいは、法曹養成及び継続教育において、倫理教育は大事だというような点、弁護士自治を一層実効あらしめるという見地から、弁護士はその運営の透明性を高め、国民に対する説明責任を果たす必要があり、その具体的な方策を考えるべきではないかという点など、これらは御異論のないところかと思います。

 この間の質疑応答でも出ておりましたけれども、弁護士会の運営に第三者の意見を一層反映させるような、何か具体的な方策を掲げられないか、あるいは苦情処理の適正化を図る具体的な方策を講ずる必要があるのではないかということ。苦情の適正処理の問題は裁判所についてもあるのかもしれませんけれども、弁護士会は弁護士に対する指導監督を、国民に開かれかつ実効ある形で行う必要があり、そういう見地から綱紀、あるいは懲戒手続の一層の透明化、迅速化、実効化を図るべく従来の制度の見直しをする余地があるのではないかという点も、大方御意見が一致しておるのではないかと思いますけれども、いかがでしょうか。

【鳥居委員】日本の場合には弁護士会はいろいろな歴史的な理由があって弁護士の自治を守ってきましたし、検察官、裁判官は、それぞれに自らの倫理の確立と綱紀の維持を行ってこられたと思うんですが、アメリカのABAのように法曹関係者全体を一体とした組織でそれを行うという考え方に立った方が、全体としての法曹倫理の確立、サービス向上、綱紀の維持、問題が起こった場合の処理、更には法曹という仕事を一体となって担っていくというさまざまな制度改正もやりやすいと考えられるのではないかと思います。

 それは言うはやすくて、実際には難しいと思います。積極的な提案としてではなくて、どういうメリット・デメリットがあるのかという観点に立って、ABA的な、法曹三者全体を一体とする日本型のABAを考えることの可否について、審議会では一度話し合っておいた方がよろしいのではないかと思います。

【佐藤会長】集中審議のとき、法曹一元の根底にあるものを目指すという際、法曹の相互信頼と一体性を向上させる必要があるという趣旨の議論をしたところでして、今、鳥居委員が提起された問題は、そういう課題と関連しているように思います。今の鳥居委員の御発言に関連して何か御意見はいかがでしょうか。

【吉岡委員】私も鳥居委員のお考えに賛成でして、法曹全体と言いますか、大きな組織の中で関わっていく。人口から言うと弁護士が一番多いということにはなると思いますけれども、そういう中で倫理の問題だけではなくて、法曹養成にしろ、裁判官の任命の問題にしろ、関わり合っていけるということが非常に望ましいのではないかと考えます。

 ただ、現実の問題として法曹三者、あるいはもう少し幅を広げた、たしかABAは学者も入っていますね。そういうところまで広げて組織づくりをするのは結構時間が掛かるとも思いますので、その辺のところは今の改革の中では一つの課題として議論をして、方向性だけは付けておいた方がいいと思います。

【鳥居委員】私の頭の中では、日本全体のABA的な組織だけでなく、アメリカのようにディストリクト単位の地域別の会がその下部機構として考えるとうまくいくのかもしれないと思います。ニューヨークのABAの会合などを前にのぞいたことがありますが、かなりいろんなことを決めているように聞きました。

【佐藤会長】前に鳥居委員から御紹介がありましたね。さる会合に出会い、どういう会合だと尋ねたら、ABAというもので大事なことを決めているところだという答えが返ってきたと。

【井上委員】つまらないことですけれども、ABA自体は任意加入団体でして、懲戒権まであるわけではありません。州によっては強制加入団体のバー・アソシエーション、日本の弁護士会よりもっと広くて、それこそ法曹すべてが属するアソシエーションがあるところがあり、そういうところでは、懲戒権とかコントロール権を持っているのですけれども。その意味では、我が国でも、任意団体として作っていくということは考えられなくもないと思うのですが、果たして強制加入のものとして作るということが現実問題としてできるのか、疑問があります。

 むろん、懲戒とかいうことではなくて、三者ないし学者を含め四者が入って、いろんな問題を研究したり、提案していくということはあり得るかと思いますが。

【佐藤会長】鳥居委員のお話もいきなり組織をつくりましょうということではなくて、自然にこういうものができてくるような、何か方向づけみたいなものを考えたらどうかということなんでございましょうね。

【藤田委員】財団法人日本法律家協会というのがございまして、これの英訳名がジャパン・バー・アソシエーションです。会員数が二千数百人だったと思うんですけれども、私は常任理事をしているので、一生懸命会員の増加運動をやっているのですが、なかなか思うようにいかない。全体を統括する団体があるのが望ましいのですけれども、早急に実現するというのは難しいかなという気もいたします。

 ところで、弁護士倫理に関しての懲戒手続の点なんですが、私はかつて東京のある弁護士会の綱紀委員会の参与員を5年務めまして、その間随分たくさんの案件の審議に関与いたしました。全体的には、非常に厳正にやっていらっしゃるという印象を受けました。倫理的な問題として、そこまで厳しく言わなくてもいいのではないかという感じを受ける案件もあったくらいでございまして、参与員には学者、検事、判事、それぞれ2人ずつくらい入っていたと思いますが、そういう形で審議いたしまして、内容については厳正に自らを厳しく律するというふうにやっていらっしゃるという印象を受けたのです。そうだとすれば、前回、久保井会長に水原委員がおっしゃったように、評決権を与えてもいいのではないか、そうしても障害が生ずることは実態としてないのではないかと思います。それから、市民代表的な方もその中に入れるということが一層透明化や信頼感の醸成に役立つのではないかなと感じました。

【井上委員】私自身、第二東京弁護士会の参与員をさせていただいた経験がありまして、そのときの印象も、一般的には今、藤田委員がおっしゃったとおりなのですけれども、その参与員というのは、いろんな経緯があって、部外者が議決権がないけれども審議に加わるという形でその制度ができたと承知しております。

 そのときの印象でも、全体としては、自らを律する方向で厳格にやっておられると思いましたが、そこでは事案は非常に整理された形で全体の委員会と言いますか、綱紀委員会に出てくるんですね。そういう報告を伺って我々が意見を言うという形でして、その前の段階の事案の調査は弁護士さんたちがやられる。結果として厳格にやっておられるとは思うのですけれども、そういう全体の仕組みの中にもう少し外の人を実質的に入れて、結果も外に出した方がいいように思います。綱紀委員会のところでふるい落とされる事案がほとんどなんですが、そこで落ちてしまいますと、懲戒委員会の方には掛かりませんので、一種の検察のようなところなのですけれども、その辺ももう少し、藤田委員がおっしゃったような方向で一般の人の参加を強めていった方が、弁護士会としてもいいのではないかという感じがします。

【佐藤会長】綱紀・懲戒手続の一層の透明化・迅速化・実効化ということですが、具体的にどういう制度設計なんでしょうか。

【鳥居委員】再度申し上げたいんですけれども、資料の10ページの下半分のところに二つ●(黒マル)がありますが、2番目の●は私の前の発言ですが、医道審議会という第三者機関で医師の免許証の剥奪もあり得る制度になっています。こういう最終的な懲罰行為をどの組織で行うのが一番よいか。それから、法曹の自律というのを、法曹三者を含めた自律行為として考える方がいいんじゃないかなというのが私の考えでして、それでこれを前から申し上げたんです。しかし、残念ながら今のところは●なんです。

【吉岡委員】鳥居委員から医道審議会の話がありまして、私もどんなものかと思って、調べてみたのですけれど、これは厚生省が任命をして、かなり幅の広い人たちが数もかなり多いのですが、そこで決定をするということになっていまして、メンバー構成は非常に配慮がされていると思いました。ただ、弁護士の場合に注意しなければいけないのは、どこかの役所が組織したところで決めていくということになりますと、弁護士自治ということで非常に問題があるんじゃないかと思います。その辺をどうクリアーしていくかということろが一番気になるところです。

【佐藤会長】医師会の場合は、法律上の根拠に基づく弁護士会のような形にはなっていませんね。

【鳥居委員】そうですね。

【髙木委員】日本医師会自体は強制加入団体じゃありませんし、そういう意味では懲戒だとか何とか言うことを直接会として規制されるような機構が想定されておりません。ただ、医師国家試験というか、国家資格を与えられて、その資格の下に業を成すという意味で、日本医師会が任意団体的ですから、政府の中でそういうものをチェックせざるを得ない。それが日弁連のような強制加入としている団体の義務の中身の違いですから、どちらがいいか悪いかは、団体のそもそもが違うんで、決めつけられないと思います。それに今、吉岡さんがおっしゃったような側面と両方あるんじゃないでしょうかね。

【佐藤会長】その在り方については先ほど来、いろいろ御意見が出ておりますけれども、更に今後検討を要するということかと思います。この段階では、何回も言っておりますけれども、綱紀・懲戒手続の透明化、迅速化、実効化を図ろうじゃないかという辺りで、よろしゅうございましょうか。

【山本委員】極めて素朴な疑問なんですけれども、私どもが接触する弁護士先生の中には、余り弁護士会の活動に興味がない方もたくさんおられるんです。非常に大事な役割を弁護士会というのはされているわけでして、かつ、法の支配の一番有力な担い手であるわけですから、弁護士会の活動なり意思決定というのは、大多数のたくさんの弁護士先生が参加して、実質的なよき決定が行われるということが一番大事だと思うんです。そこらのところが果たしてどうなっているのか、日常接している弁護士先生の印象からすると、参加という面で疑問符がつくのではないかと、かなりきちんとしたベテランの先生方も、この審議会の内容について余り御存じない方がたくさんいるんです。ちょっとそんな疑問がございますので、是非その辺も御配慮いただきたいと思います。

【佐藤会長】プロボノ活動には、弁護士会の活動は入っていないのですか。

【中坊委員】入っています。今の山本委員のお尋ねに関係している者として若干お話ししますと、非常にこれは大弁護士会と小さな弁護士会とでは本当に違うんですよ。今、恐らく山本委員の接せられているのは東京3会に所属する弁護士と思います。その何千人という数を擁しておる単位会と、何十人、あるいは100 人程度という単位会では全然と言っていいくらい違うんです。確かにそういう意味においては、既にそういう問題について弁護士でありながら、弁護士会を通じてのいろんな活動に関与していないという弁護士が大きな弁護士会においてかなりの人がおるというのは事実です。

 そういうことから、小さな単位会でプロボノ活動、あるいはそういう公益的な仕事をしないといけないということで国選弁護、当番弁護士とかをやらざるを得ないのですが、大きな単位会ではそれをやらないことでいろんな問題が出てきまして、最近では東京弁護士会の3会のうちの一つの単位会は、それを義務づけるところまできました。責務として決めるという段階まで決めてくるのはどうかという雰囲気にありまして、確かに弁護士は、非常に抽象的なことではありますけれども、基本的な、私個人としての反省で言えば、どちらかと言えば、弁護士というのは非常に在野性というのを誇り、それが一つの大きなメルクマールになって、官に対して対抗するということが明治以来、今日までなってきておったんです。そういうことから、その点が強調されて、もっとパブリックなものに、フランクにあらゆるものに関与するという意味では、弁護士会は一つの問題点があったと思います。

 そういう意味では、私も弁護士自身の意識というものが、勿論、在野性を持ちつつも、しかも、パブリックというものについて、あらゆる角度でもっと関与していかないといけないと思っております。だから、私の弁護士のリポート、公益的な責務というものを弁護士法の中に、どういう形にするかは別にして、「責務」として明記するところまで行く必要があるんじゃないかと、そういうふうに考えておるわけです。

 そうでなければ、法曹三者が相互に信頼して一体ということには所詮ならない。常に在朝在野の対立ということになってくる。しかし、それは非常に弁護士というのは先ほどからも出ていますように、第三者の方は入れるけれども、裁判に独立の原則があり、検察もまた独立の原則を守ってきて、いわゆる政治勢力とか、その他世論とかいうもので、世論が常に正しいという方向を示しませんからね。そういう場合に個々の弁護活動というのが、いろいろ道理という意味から言えば、正しくても、そのときの大きな世の中の嵐のような流れの中ではやはり問題が起こるということがしばしばあるわけです。

 そういうことから、我々もそういう意味における自治ということを言っているわけです。けれども、自治は同時にひとりよがりでよいというわけでは決してないし、特にあらゆる場面で求められている透明性であるとか、石井さんのおっしゃる説明義務とかについては、国民という立場からすると、弁護士会も今までのやり方ではいけない。だから、そういう意味では、この審議会で、そういう方向についての意見を出していただくことは、私は委員の一人としては、誠に結構なことではないか。このように思っています。

【佐藤会長】ありがとうございました。

 それでは、ここのところは、そういうようにまとめるというか、そういう議論の方向であったということにさせていただきたいと思います。最後の方に、いわゆる弁護士の社会的責務と言いますか、公益的な責務というお話が出ましたけれども、さかのぼってもよろしゅうございますので、少し時間もありますので、御議論をいただければと思います。ヒアリングをやりますと、質疑が中心になってしまい、前回ちょっと意見交換の余裕がなかったような気がしますので。

【北村委員】今のところに関連して、継続教育の問題なのですが、ここで書いてあるのは倫理研修との関連での継続教育というのがあって、どうも比重がそちらの方に置かれているかなと思うのですけれども、今、公認会計士の方では、3年ごとか5年ごとか、ちょっと今は忘れましたが、免許の更新をさせればどうかみたいな話が出ております。決してそういうことを弁護士にもというわけではないのですけれども、やはり継続教育というのは非常に重要なのではないかなと思います。その辺が現在どの程度行われているのか、あるいは、どの程度義務づけられているのか、その辺のところをきちっとやっていただけるといいなと。

【中坊委員】夏季研修というのが大体1週間ほど続きまして、その間に新しい法律であるとか、あるいは新しい制度が入ってきたということを中心に、あるいは外部のいろんな意見というものを、大体毎年午前、午後ずっと、それは各単位会ごとに東京は東京弁護士会、大阪は大阪、神戸は神戸というふうに全部やり、時には連合会でやったり、そういう意味での研修というのはかなり徹底して行われておるわけです。

 研修委員会というのも各単位会でそれぞれできておりまして、研修ということに関しては、かなり熱心に行われておるというのが現状です。

【井上委員】私が御報告した法曹養成についての資料の中の継続教育のところに、日弁連の方から資料を出していただいておりますし、ほかのところでも資料が出ていましたね。

【事務局長】井上委員の言われた資料は、「弁護士の在り方についての論点整理、参考資料その2」の85ページ、資料38に載っております。

【井上委員】中坊先生、その単位会の研修というのは、どの程度義務化しているのですか。

【中坊委員】切符と言うと怒られるけれども、研修のカードみたいなものがあるんです。

 今日は多少時間があるからあれしますけれども、弁護士会というのは派閥というのがありまして、無所属というのもあるんだけれども、大阪で言うと7つある。その派閥を通じまして、その切符が割り当てになるわけです。あんたのところは何人いる、そうすると何枚と。そうすると、その幹事が全部自分の方でそれをさばかなければいけないわけです。それは全部お金を払わなければいけない。講師が来たら講師代も払わなきゃいけない。テキスト代とか、いろんなものが要るでしょう。それは有料なんです。

 それを各弁護士が買うということで事実上義務化されておりまして、逆に売りに行った者は、自分が行っていないと体裁悪いでしょう。そういうときにはちゃんと行って、自分も身の証しを立てるべく行くと。そういう意味における強制力みたいなものが現実に行われていまして、夏季研修中にゴルフに行っていたりすると、お前何や、研修の最中にゴルフへ行っているじゃないかとか、こういうふうにして批判されるという程度の義務化です。

【北村委員】夏季研修なんですけれども、それ以外のところではやっていらっしゃらないんですか、夏以外には。

【中坊委員】大体年1回、夏季研修というのが、そういうものになっていまして、夏季研修というのが毎年恒例であります。また、各派閥ごとの研修会というのが非常に多いんです。

 先ほども出ていましたけれども、これは弁護士倫理というのが、これは皆さんお考えになる以上に実は非常に弁護士にとっては難しいんです。綱紀委員会の決定とか、あるいは懲戒委員会の決定そのものが、決して会報に出ているからみんなに周知徹底するものではないんです。そうすると、個々の具体的案件等について、自分はこういうことをしている。こんなことくらいはいいだろうと思っても、確かに先ほどおっしゃるように、弁護士というのはへまをすると、本当に紙一重というのが結構いっぱいあるわけです。これくらいはよいだろうと思っておっても、これが綱紀委員会ではこういうふうに言われていますよとかいうことがありまして、私が所属している派閥でも、そういう意味における綱紀の研修会というのがしばしばありまして、それについてはみんなが熱心に。というのは、へまをすると自分の仕事がなるという危険性があるでしょう。そういうことから、任意ではありますけれども、法律知識よりもそういう綱紀ということに関しては、自分の日ごろの問題に関係があるのでやってくる。

 率直に言って、不祥事を起こす人を私が見ておると、みんな一つの共通性があるんです。それはどういうことかというと、そういう会合に出てこないんです。要するに1人になるんです。弁護士のガードレールは広いんです。いろんな活動は許されるんだけれども、限界というのは必ずあるわけです。ところが、踏み外している人を見ていると、その前にそういう人が陥る全部共通の病的現象は孤独になっていって、そういうところへ出てこないんです。そういうことで、こいつちょっと孤独になったなと思っていたら、確かにだんだんおかしくなってくる。やはり孤独にならずに群れをなさないといけないということでして、そういう意味では先ほど言うように、東京弁護士会とか大きな単位会というのは、どうしても群れのなし方が少ないわけです。

 だから、どうしても大きいところになるほどそうなってきて、大きい単位会はそれではどうして何千人、大阪でも二千人とか千幾らとおるわけだから、それはみんな事実上派閥になって、何十人単位みたいになって、そこで懲戒委員や綱紀委員の人が講師になって教えることになります。そういう形で研修をやらないと、建前で幾ら言ったって、会員の一人ひとりのものにはならない。そのときも、確かにおっしゃるように、かつては義務づけているわけじゃありませんから、そこから外れてくる、外れてるとよけいに出てこない。そういうことが事故を起こしていく原因であって、私も随分弁護士会の役員等を重ねてきましたから、ほとんどそういう意味での不祥事を起こされる方は、常に前期症状として孤独になっていて、友達との付き合いもない。そういう人が必ず不祥事を起こす。そういう人は何となく心やましいところがあるから、やはり合わない。それが大体共通の病的現象ですね。

【山本委員】東京に三つの弁護士会があるというのは、大分前からですか。一つにしたんでは、とにかく大き過ぎてどうにもならないということだったのですか。

【中坊委員】それは昭和の初めというか、大正の末にそうなったんですけれども、やはり東京3会はそれぞれ特色があるんです。第一東京はこういう特色、第二東京はこういう特色と。その特色でそれぞれ編成されておって、少なくとも東京は三つでも既に一つの単位会が千人以上が全部ですから、何千人という単位ですから、何千人になると、事実上そういう意味の研修とかは不可能なことになりますね。

【山本委員】5、6万人になったときには、今の弁護士会の在り方はどんな影響を受けることになると考えられますか。

【中坊委員】弁護士の数が増えれば、質の維持というのは非常に大きな問題だし、弁護士会がどうするかというのは非常に問題だし、例えば東京弁護士会でも一つの大きな派閥があるでしょう。例えば法友という派閥がある。1,000 人以上いますね。そうなってくると、その大きな派閥はどうしているかというと、10くらいの単位派閥があるんです。

 だから、現実の姿というのは、そういう単位で私が見ましても、私は大阪弁護士会の一派閥に入っているんですけれども、もう400 人を超しました。次第に結束力が弱くなってきています。会員同士が顔もわからないし、対話も進まないでしょう。そういう意味においては、建前は建前として、本音の部分でどのようにして質を共通のものにしていくかということは、制度と、その制度はいわゆる制度上の問題点と、それを実際上運用していく上においてどうするか。その辺が重なり合ってこないと、なかなか本格的なものにはならない。それでも必ずしも全部うまくいくわけじゃないというのが現実です。

 それから、先ほどからも御説明もあったように、井上さんもおっしゃったように、綱紀と言っても、あれは一旦は理事者のところに上がってきて、それから綱紀委員会に行くわけです。そういう段階でいくと、どうしても仲間をかばうという気持というのは必然的に、よく知っている人というのが懲戒に遭うということは、私ども今まで知っている人をお互いに刺すというのは、刺しにくいものです。その意味では綱紀綱紀と言っても、自治というのも、言うほど簡単ではないし、だから、私は基本的には先ほどから吉岡さんもおっしゃり、私も言うているように、透明性とか説明性とかが相当強化されないといけない。私はそういう意味では、弁護士会、今までやっていないというわけじゃないんだけれども、そういう意味ではそれを強化していくということは必要な流れだし、言うほど容易なことではない。外へ向けては、幾らでもこういうことをやっていますということは言えます。しかし、本音の部分ではやはりそういうふうに組織が自分で自分を律するということは、非常に難しいことである。いわんや今、山本さんがおっしゃるように、これから数が増えてきたら、この問題はもっと深刻な問題として出てくると思います。

【佐藤会長】その問題は、井上委員がちょっと言われたように、ロースクールが将来どういうように機能していくかに-ロースクールでの教育には弁護士も協力されるわけですが-関係しているように思われます。あるいは、鳥居委員がおっしゃったように、アメリカのABA的な組織も工夫しなければならないかもしれませんね。いろいろな工夫が必要なんでしょうね。一つではないように思えます。

【鳥居委員】それに関連して、今回の司法制度改革ではどう考えるのかが、よくわからない点なんですが、アメリカでは、判例の積み重ねで結論が出ていきますね。日本の場合には、判例の集積がどこで行われるのかということを考えてみると、これは裁判所側で判例を集積しておられるわけですね。それはあくまでも判決の情報の集積でありまして、法的なトラブルの事柄それ自体の情報の集積は、日本では行われていませんね。

 医学部が一番いい類似例なんですが、一人ひとりの患者さんのカルテ情報は、それを見た医者、司法で言えば弁護士の側に集積されているわけです。それを一カ所に集めて、そこから医学的な研究を行い結論を出していくということができないのが日本の欠点で、決定的に外国に遅れているわけです。

【佐藤会長】判例集はいろいろ出ているんですけれども、それらは判決の全部をカバーしているわけではない。セレクションがあります。今のお話と関連づけて言えば、医学部を含めてですけれども、日本の場合、今まで個人情報の管理がきちっとやられていなかったものですから、国民の間で不信感があるんですね。利用、それはいいんですけれども、個人情報のきちっとした管理があってのことでなければならないと思います。そこをきちっとしないままに、広く利用したらいいじゃないかという話になりますと、医療情報だけに非常に微妙な問題があります。その辺を鳥居委員もお考えで、なかなかすっきりしないところがあるとおっしゃっているのではないでしょうか。

【中坊委員】お医者さんもそうですし、弁護士も守秘義務というのが非常にありますから、何でもかんでもべらべらしゃべるというわけにはいかないことになりますからね。しかし、それを何とか超えないと、非常に抽象的な形にせよ、これをこうしてやるということは必要だろうと思うんですけれども、それを逆によいことに隠れ蓑にして、守秘義務を非常に囲い込むということになっているという気づかいはありますね。

 おっしゃるように、確かに民事紛争なりそれが今、鳥居委員のおっしゃるようなことがもっといかないと、本当の意味においては役に立たない。

 だから、私はこれからの弁護士というのは、もっと活動領域が広くならなければいかぬという議論の中には、そういう面もあるんですね。

 非常に個人的なことを言うと、ある新聞社の顧問をしていまして、そういうところでも、裁判にならない事件がいっぱいあるわけです。それをもってきて、この事件はこうだと一応まとめて、私が新聞社に行って、デスクとか支局長の人たちにやるんです。そうすると、彼らはそれを持って回って、勿論、それは外部には出ていませんけれども、新聞社内部では、まるでテキストのようにして使われおるんです。だから、今後の弁護士というのは、そういう意味において、この前も民事紛争の問題、相談とかいうことの方が非常に難しいんだということを久保井会長が言うていましたね。だから、本当の事件は、むしろ裁判になるところに問題があるんじゃなしに、もう一つ前の、法律相談のところに、その会社の持っている基本問題とか、私が新聞社にしても、新聞社の持っている基本的な問題点というのはそこにあるわけです。だから、そういう問題をどのようにして処理していくかというところが、これから必要です。裁判になるというのは、いわゆるごく一部というか、そういう形のものだろうと思うんです。氷山みたいに水面下にものすごく大きな部分があるんで、それをどう裁いていくかというところにこれからの弁護士というのは関わっていく必要があるんでしょうね。

【竹下会長代理】今、お話になられたことは非常に大事な問題だと思うのですが、先ほど北村委員が初めに出された問題ですね。継続教育の問題ですが、これは弁護士の質を向上させる、あるいは質を維持するという観点から、北村委員が言われたような本当にプロフェッショナルとしての弁護士の継続教育、あるいは再教育も非常に重要な問題だと思うのです。

 私も形だけ弁護士登録をしていますので、所属弁護士会からいろいろ情報は来るのですが、これは驚くほどたくさんあります。新しい法律ができると、それについての研修会、講演会、その講師も弁護士だけではなく、法務省の立法担当官であったり、裁判官であったり、実に多彩なものがあります。これは、私が所属している弁護士会だけではなくて、どこの弁護士会でもやっておられると思うのです。ですから、プロフェッショナルとして継続的に研鑽を積もうという意志のある弁護士にとっては、チャンスは非常にたくさん与えられているのですが、それが義務化されているわけではないので、実際にどのくらいの方が参加をして、自己研鑽を積んでおられるかはわかりません。

 しかし、恐らく弁護士会で研修を担当しておられる委員会なり、その個々のメンバーなりは、一生懸命いろいろ工夫しておられると思うのです。なるべく大勢の方に研修に参加してもらおうと思っておられるのではないかと思うのです。しかし、ただ規則の上で義務化をしたらみんな出てくるかというと、なかなかそうはいかないとは思うので、何らか組織化する、あるいは制度化する工夫が必要だと思うのです。ただ弁護士会としてそういうチャンスは随分与えておられるということは申し上げられると思います。

【北村委員】それをいかに受けさせるかというところですね。

【井上委員】義務化という方向ではなかなか難しいかもしれませんね。専門化と絡めて、特別の研修を定期的に受けている場合には、専門家であるという称号を使えるとか、そういった形で、むしろプラスの方向に誘導しないと、ちょっと難しいかなと思います。

【中坊委員】キーワードは人数です。何百人と集めて幾ら研修をやっても、ほとんど効果はない。かなり少ない数にして、その人も発言できる、あるいは質問できるという雰囲気の中で始めませんと、なかなか一つのことがならない。それには確かにおっしゃるようにその人が必要性を感じないとしないでしょう。

 例えば私が今言うたように、綱紀委員会などは、結構やればものすごく集まりがいいですよ。それは弁護士の中に、あれ、あんなことが引っ掛かった。私も引っ掛からないかという心配がありますから、出席するわけです。

 そういうふうにして、常に必要性とそれをまた受け入れるところが人数を絞って、そしてきめ細かくやっていくということの積み重ねがないといけない。ただ、私としては、それでは制度上、これを義務化しないといけないと言っているのは、抽象的にはやるのはあんたらの義務だよということまで言うておく必要はあるんじゃないか。そうしないと、そもそもすべて自発的だということだけで処理できるだろうかという問題があって、私は自分のレポートのときに、そこまで踏み込むべきじゃないかということを言うているんです。これは賛否両論、いろいろあると思います。

【井上委員】例えば登録後5年ごととかいう形にすると、人数は絞られるということになりませんか。

【中坊委員】そんなことでは絞れない。大体私は幾ら多くても50~60人が限度ですね。徹底させようと思えば50~60人です。

【吉岡委員】必要性を感じるということは非常に大切なことだと思います。私はアメリカのどこで伺ったか、ちょっと忘れてしまったんですけれども、今回の調査の中でどこかの弁護士事務所か弁護士会で伺ったと思うんですけれども、一定期間を過ぎたら単位を取らなければならないという制度があると。それで忙しい弁護士さんはなかなか講習に行くことができないけれども、期限があるので、その期限が近づくと、やむを得ずあわててどこかの講習会に行くという話を伺いました。ただ、試験はない。要するに、講習を受けたということでOKだという、そういうことでしたが、あれは参考になるなと思って、帰ってきました。

【佐藤会長】あれはシアトルでしたか、聞きましたね。

【吉岡委員】もう一つは、前から私は言っておりますが、国民に専門性がわかりやすいように、専門の表示をしてほしいということですが、その専門の表示をする場合に、医者でも内科、小児科、皮膚科とか書いてある町医者は結構多いんです。もともとの医者の免許というのは専門でなくても取れるから、そういうふうにしているということだそうですが、自称専門ではなくて、客観的な専門性を弁護士会で認めるということで表示をするのならば、少なくとも専門だと言いたい部門の勉強をするでしょうし、論文を書くとか、いろいろできると思います。そういうことを一つの目安にしながら研鑽を重ねていただくという方法があるのではないかと思います。

【竹下会長代理】前回の弁護士会の資料にも出ておりましたね。専門弁護士認定制度のようなものですね。

【佐藤会長】専門分野などは、だれが、どういう評価をするのかの問題がありますね。俺はこれが専門だと言うだけで通るわけじゃないでしょう。ちょっと客観性を持ってほしいと。情報公開の仕組みのところで、今のような問題が考えられますね。

【鳥居委員】物によっては、自分が何の問題の専門であるか自由にPRさせるのも一つの方法です。相続専門などというのは資格じゃなくて、自分ならうまいですよと言えばいいわけだから、相続専門という看板を掲げればみんなそっちに行きますね。

【中坊委員】皆さんのおっしゃっていることに水差すようなことですが、私の言うのは個人的なことではあるんですけれども、そういう情報というのは非常にあいまいというか、非常に間違っていることが多いんです。私も自分の事務所に大きな名前で中坊法律事務所と看板を掛けたんです。そうすると、本当に言っちゃ悪いけれども、その表示を見てくる人というのは、本当に困ることの方が圧倒的に多い。だから、やはり弁護士というのは、何らかの意味における信頼関係が必要です。

 今聞いておっても、若い弁護士さんが、中坊さん、あんたはそんな苦労していないと怒られるんだけれども、要するに法律相談とか法律扶助委員会とかに行くでしょう。今まで一面識のない人にぱっと会って、ばっと相談を受けるというけれども、これはものすごく難しい。今、会長がこういう顔をしているときはこうだなと大体わかるじゃないですか。ところがぱっと会ってするとなると、これはなかなか難しい。

 だから、法律扶助とか法律相談、それは私から言うていると、「中坊さん、あなたに私らの苦労がわかっていない」と言われるんですよ。私もそう言われたら、そういうところがあるんですよ。だから、専門性とかいうことは、事実上はみんな口コミというのがあるでしょう。しかし、何にも増して、実は弁護士さんについて一番必要なのは専門性ではなく時間なんです。弁護士にとって一番必要なのは時間なんです。何件もやっていて、そこへ来られて、専門だからと言って5人も来られたら絶対粗雑になります。だから、そういうもんじゃないんです。確かに、余りにも今の状態はひど過ぎるから直さないといかぬと思います。

 しかし、同時に、うちの事務所で見てみても、最大の問題は時間です。私などの事務所も、土曜日だってみんな働いているんです。本当に一生懸命になって働いても依頼者の要望にどれだけ応えられているかというと難しい。だから、本当は一番の問題は時間なんです。そんなもの専門性とかいう以前に、時間が非常に問題です。だから、私は数がもっと増えてきて、確かに社会全体としての需要能力が増えてこないと、どんなサラ金の事件でも、被害者から聞いて、最低3時間掛かると言います。ちょっと聞くだけで30分、更に念を入れたら3時間掛かるんです。1日で何人もできません。お医者さんよりももっと事情を聞かないと、その人の事情などは聞けないんです。

 だから、弁護士の法律事務というのは非常に簡単に専門性とかおっしゃるけれども、本当はそこが問題ですね。

 私らも事件が忙しいと、エイ、ヤッとやりますでしょう。だから、いろいろ難しいことですよ。

【佐藤会長】我々が学生の相談に応じるときでも、なかなか難しい問題がありますね。

【藤田委員】私は弁護士会ではノンポリ、無派閥でございますので、派閥からの研修のお誘いは全くないのですが、弁護士会として、あるいは日弁連法務研究財団の方でオン・ザ・ジョブ・トレーニングに非常に力を入れていらっしゃいます。私の判事補のときの経験から言いますと、判事補になって5年間毎年研修がありました。5日とか1週間とかかんづめにされて、朝から晩まで、相当密度の濃い研修です。判事になる直前の研修というのもありますし、判事になってからも裁判長実務研究会とか、支部長研究会とか、このごろは法律ばかりにこりかたまっちゃいけないというので、専門研究会というのがあって、高齢化社会、世界の宗教とか、都市問題ということをテーマにした研究会をやっているんです。

 これは否応なしに参加せざるを得ない研修ですが、振り返ってみると、随分それが役に立っているなと思います。弁護士会の場合は、日弁連もかなり力を入れていらっしゃるんですけれども、今、中坊さんが言われたように、横から見ていると、弁護士がそういう研修に行く時間がないんです。気持ちはあっても。気持ちのない人は勿論仕方ないんですけれども。どうしてもこれは行かざるを得ないように仕向けないと、実効は挙がらない。アメリカでどういうようなことをやっているのか知りませんけれども、5年目とか10年目とかに何らかの形でのオン・ザ・ジョブ・トレーニングを受けなければいけないというふうに仕向けないとちょっと無理ではないか。どうしても乏しい時間を割かざるを得ないような形にしないと、弁護士の場合のオン・ザ・ジョブ・トレーニングというのは難しいのではないでしょうか。

【中坊委員】私も公益的なことだけは責務として義務化する必要があると言うているのも、多少似たようなことで、私自身でも非常に危険だと思うのは、依頼者というのは、大体固まってくるでしょう。山本委員のおっしゃるように、そればっかりになってしまうでしょう。同じようなことの依頼者とばかり話していますと、自分の頭が歪んでいること自身がわからなくなってくる。

 そういう意味では、確かに私自身も時たまですけれども、国選弁護もやるんです。なぜやるかというと、刑事弁護というのは余りにも遠ざかりますとわからなくなってくる。私も当番弁護士もやる。時たま国選弁護もやる。なぜかというと、そういうものを知らないと、わからない。そういう意味における公益的というか、私たち、ともすれば、これはぶっちゃけた話ですけれども、顧問会社があると、生活が安定するでしょう。ところが、弱者という方は、本当にその人が一生に一回あるかないかということで来るでしょう。そうすると、その人の話を聞かないと、どうしても自分の頭が偏頗になりがちなんです。

 だから、少なくとも私は全弁護士が非常にバランスを帯びてもらうためには、良識を持ってもらうためには、公益的な仕事を義務化しないと、責務としてやらないといけない。そうでないと、何もその人は悪気がなくても事実上歪んでくる。これは避けられない現象なんです。そこら辺りも私は考えていかないと、相互の立場というのがわかりませんからね。

【佐藤会長】議論が大分佳境に入ってきたところかと思いますけれども、15分ほど休憩させていただきます。再開後、小1時間ほどでしょうか、公益的活動の問題から入り、ほかの問題についても御意見を頂戴して、ペーパーをとりまとめたいと思っております。32分に再開させていただきます。

【鳥居委員】とりまとめというのは、これをとりまとめるんですか。

【佐藤会長】そうです。

(休 憩)

【佐藤会長】それでは再開させていただきたいと思います。

 今日はこの「弁護士の在り方」について、遅くとも4時15分くらいまでやって、10分ないし15分、中間報告のとりまとめの仕方について少し御相談申し上げ、できれば4時半には終わりたい、そんな予定でおりますので、よろしくお願いします。

 先ほどもちょっと申しましたけれども、一応最後まで御議論いただき、それから、これまで検討を終えたところについてもちょっと言及しておきたい、あるいは確認しておきたいということがございましたら、どの箇所からでもよろしゅうございますので、御意見を頂戴したいと思います。

【中坊委員】現在、日弁連の規程というのによりますと、倫理研修は義務化されています。それは1年目と5年目と10年目と20年目と30年目がありまして、倫理研修に関してだけは義務化を規定しています。しかも、この研修は少人数のグループで事例を中心に研修を行うことになっております。

【水原委員】私は2年前に弁護士登録をさせていただきましたけれども、そのときに日弁連の研修を受けなければならないということで、研修を受けました。その際に、あらかじめ倫理に関する各項目の条文ごとの問題が届きまして、それについて回答案をつくって提出するわけです。

 それを各グループごとに分かれまして、これは大体20~30名くらいの単位だと思いますけれども、そこで先輩弁護士からいろいろ質問されまして、それについて答えなければいけない。相互のディスカッションをやるという非常に厳しい研修を受けさせられました。

 それから終わりました後、今、中坊委員がおっしゃるように、5年後にもまた行いますから、是非参加してくださいということでございますので、今から戦々恐々といたしておりますが、相当厳しい研修でございます。

 単位弁護士会でもそういうふうなことをやっております。これは倫理問題だけではなくて、例えば民暴の問題、それから税法の問題、消費者の問題、医療過誤問題、それぞれの分野に分かれまして、研修を受けなければならないとなっておりますので、相当力を入れた研修です。

【中坊委員】それが決まりましたのは、平成9年で、平成10年度から実施されております。

 研修の実施状況も報告されておりまして、一つひとつの年度で、大体義務該当者が2,998 名のうち、未履行者は185 名、全体の8.4 %だけで、あとの92%までが受けていると。義務化されているということに最近はなっております。

【水原委員】最高裁判所の判事を定年で退官された70歳を超えた方でも、研修を受けなければならないと一緒に受けました。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。

 最初の方から機械的にやる必要はないのですけれども、弁護士改革総論、これには◎が付いて二つ入っていますけれども、これはこういうところでよろしゅうございますね。

【山本委員】異論はないんですけれども、一つ目の○がありますね。これは石井委員の御意見なんですけれども、この中に「『社会生活上の医師』あるいは経済活動におけるパートナー」というのがありますね。これは大事なこれからの要素だと思うんです。ここも◎にしていただきたいと思います。

【佐藤会長】わかりました。

 次に、「弁護士改革の人的側面」、その中の「弁護士人口の増加」のところは、この間の集中審議で具体的にお決めいただきましたし、久保井会長のお話もあったところです。司法試験合格者数をどうするかということは、法曹三者だけの問題ではなく、むしろ国民の問題なんだという辺りのところも書き込めればというように考えております。

 それから、「公益性に基づく社会的責務の実践等」の辺りですけれども、これも当事者性、公益性、事業者性、その用語が適切かどうか、事業者性は適切かどうかはわかりませんが、したがって何か適切な言葉があればその方がいいんですけれども、趣旨は要するに、こういう三つの側面があるということも、そのとおりじゃないかという気はします。

【鳥居委員】これは中坊先生の御発言が7行ほど書いてあるんですが、私の記憶では、その3行目に書いてある「公益性の『公』とは公衆を意味し」というのは、議論の過程で公的セクターという意味に変わってきているんです。これは先生、公衆でいいんですか。

【中坊委員】これは最初のうちですから。この審議会に出て進歩していますから、進歩したところで書くようにします。

【鳥居委員】それは後で変えてくださるわけですね。

【中坊委員】はい。

【佐藤会長】集中審議のときに、中坊委員が図解で公共性の空間について解説されましたが、そういうことと関連してくるところかという気がします。

【中坊委員】私も先ほど言いましたように、論点整理のもう一つ前に私10月に自分のレポートを出したときにも、官の司法から民の司法へと書いていましたから、あのとき依然として、今言う官と民とに分けて言うていましたので、それからすると私も進歩して、この審議会の間に、昨年の10月よりは、約一年経ちまして、進歩いたしました。

【佐藤会長】当事者性ですけれども、対審構造における当事者性そのものが全体の仕組みの中で公益的性格を有するという点も、弁護士の機能としてあると思うんです。そういう点も留意すべきことかと思いますけれども、いわゆるプロボノだけではなくてですね。

【竹下会長代理】そうですね。

【山本委員】プロボノというのは難しいんで、普通の人が理解できるような言葉になりませんか。

【佐藤会長】アメリカの場合は、無報酬、あるいは低い報酬で。

【中坊委員】プロボノ・プブリコ(pro bono publico)と言うんです。パブリックが本当は「公」なんです。プロボノというのは、「何々のために」ということだけらしいんです。だから、一番肝心な言葉はプブリコ、即ちパブリックなんです。プロボノ運動と言うと、肝心のパブリックが抜けておるんですよ。キューダックという人が運動を始めたのですが、プロボノ・プブリコというのが本来の意味なんです。

【佐藤会長】そうすると、プロボノ活動とは、法曹養成への積極的な参画とか、裁判官候補者等の供給とか、利用者の法律サービスへのアクセスの保障とか、いろいろな面にわたるという、そういう理解になるんですかね。

【井上委員】プロボノということ自体の意味は、恐らく本来的には狭い方を言うのだろうと思うのですけれども、それを「公的」と言い換えればもっと広くなる。アメリカなどは、プロボノ活動それを義務化しているところもありまして、そういうところでは時間を割けなければお金を出せ、そのどちらかだというやり方をしているようですね。

【中坊委員】公益的な責務の中の一つとしては、法曹養成というのも一つの責務だと。

【佐藤会長】それは先ほど挙げましたけれども。そして、弁護士の意識改革が必要だということは、石井委員も強調されているところですが。

【石井委員】とにかく一番ユーザーに近いところにいて、一番頼りがいのある存在だということがよくわかるような言葉で表現させていただけたらと思います。

【佐藤会長】ここのところはその辺で。次に、「弁護士の活動領域の拡大」ですけれども、これも久保井会長のお話にもありましたけれども、公的機関、国際機関、民間企業、NPOなど、法曹の進出が求められている領域は非常に広いんだ、弁護士の機能も多様だ、そういうこととか、あるいは、弁護士が積極的にいろいろな領域に進出していくということは、単に利用者のニーズを充足するというだけではなくて、法の血肉化と言いますか、法の支配を徹底させるという積極的な意味合いがあるんだということも、御異論のないところかと思います。

 そういう見地から、弁護士の兼職及び営業等を制限している弁護士法30条について、具体的な中身をどのように詰めるかは残っていますけれども、自由化する方向で考えたらどうかという辺りも、大体御意見が一致しているという気がしますが、いかがでしょうかね。

【竹下会長代理】再検討の必要があるということですね。恐らくこれは弁護士会の方も全く削除してしまうということについては、御異論がおありになると思います。

【中坊委員】しかし、方向は今お聞かせいただく程度でいいと思います。

【佐藤会長】公職就任の場合と、兼業、営業という場合と、同じように考えていいのか、区別して議論する必要があるのか、詰めていきますといろいろ議論があると思います。

【竹下会長代理】再検討の必要があるということは、異論がないと思います。

【佐藤会長】「弁護士と隣接法律専門職種等との関係」ですが、特に弁護士人口の大幅増員等の改革を今後進めていくわけですけれども、国民の権利擁護に不十分な現状は直ちには解消しないということなどにかんがみ、利用者の視点から、いわゆる隣接法律専門職種等に対して、それぞれの業務内容とか業務の実情、あるいは業務の専門性、あるいは人口や地域の配置状況などを踏まえて、適切な試験、研修による能力の担保を前提に、一定の場合の法律事務の取り扱いを認めるということを前向きに検討すべきで、審議会において更に議論を深めていく必要があるという辺りではないかという感じがしますけれども。

【中坊委員】隣接業種の問題は、確かに今会長がおっしゃったように、非常に根本的にロースクールから変わってきた問題の長期的な視点と、それから短期的にと言うとおかしいかもしれないけれども、現状の問題と、私の言うようにいろんな立場から行政庁がいろんな資格を付けているという問題とは区別して論じる必要があると思います。

 後の問題を中期的と言うか短期的というか、現在のところをどうするかという問題と、それから長期的にどうあるべきかという問題とは分けて考えていただく必要があるのかなと思います。

【佐藤会長】今申し上げたのもそういう趣旨です。

【髙木委員】質問なんですが、北村さんが集中審議のときに出されましたペーパーで、隣接職種にどういう権能を認めるかという部分について、慎重に検討されなければならないというのは、要はだめだということをここでは言っておられるわけですね。

【佐藤会長】そこまでは。文字どおり慎重ということではないですか。

【北村委員】割と否定的慎重なんです。

【佐藤会長】そうですか。この問題は、裁判所だけでなくて、ADRとかを含めて広げて考えたときに、更に議論を深める余地があるのかもしれません。この段階では、否定的というんではなくて、更に詰めていろいろ考えるということでいかがでしょうか。

【北村委員】これは私の意図だけですから、ここで決まっているわけではありません。

【佐藤会長】そうですか。

【中坊委員】慎重という言葉が一番いいんじゃないですかね。

【髙木委員】先ほど中坊さんが言われたように、とりあえずと行く末どうしていくんだという、両面でこの辺は条件整備をされる必要があるのかなと思います。

【佐藤会長】ここはもうちょっと多角的に検討したらいかがかという気持ちでおります。

【水原委員】関連ですけれども、日弁連の会長からのこの間のヒアリングの際のペーパーを見ますと、17ページに「以下のような過渡期の措置について」云々という言葉がございました。そうしますと、今、中坊委員もおっしゃいましたけれども、現在の法曹人口の不足、これを補うためにどうするか。

 それから、ロースクールが立ち上がって、法曹人口が増えたときにまたどうするかという問題となりますと、過渡的措置としてこういうふうな制度を認めたが、後にロースクール出身者でもって充足できるようになったときに、今まで与えておった権限をどうするのかという問題も、併せて検討しておかなければいけないでしょうね、こういうふうに思うんです。

【佐藤会長】それぞれの職種の存在理由は、それはそれとして考えるべきことだと思います。

【山本委員】現実問題として、取り上げるというわけにはいかないでしょう。

【水原委員】御検討いただく。

【山本委員】それはやはり競争が働いてくるのではないですか。弁護士さんと、司法書士さんとか隣接職種の人の、どっちをユーザーが選択するかという問題ですね。

【中坊委員】それと同時に、その次のところにも書いてあるように、共同化というものがあります。ワン・ストップ・サービス。別の側面だけれども、そういうものがあるから、作業をするときに多角的に考えないと、暫定的にというだけでもないんです。その辺のワン・ストップ・サービスとしての問題点もあるだろうと思いますし、これは今のところまだ◎になっていませんけれども、ワン・ストップ・サービスについては、みんながおっしゃっているわけですから、これはこれとして隣接業種との関係は、そちらの方向は余り異議がないと思うんです。

【佐藤会長】隣接業種も、こういうように現に存在する関連資格者をどのように位置づけるかという問題がありますが、それに加えて今後法曹人口の大幅増員とか、弁護士制度改革によって法曹、弁護士の活動領域が拡大し、多様化していくということが期待されることに伴って、将来的な方向性として法律事務に関して弁護士以外、いかなる関連資格制度が必要かという点についても、それぞれの職種の独自の専門性を踏まえながら、これも多角的に検討する必要があるということで、この問題は一応とりまとめておくということでいかがでしょうか。

 それから、ワン・ストップ・サービスということですかね。

【北村委員】この間の集中審議の後の新聞では、何か隣接法律専門職種の権限が決まったかのような新聞報道が見られたんです。したがって、ちょっと申し上げておきたいんですが、これは私が報告しただけで、全然ここではどういうような方向に行くということが決まっていないと。今、会長がおっしゃったようなことで現在では考えられているということをはっきりしておいた方がいいと。

【佐藤会長】わかりました。では、今のようなことで。

 これに関連して企業法務、あるいは先ほどの特任検事、副検事、簡裁判事の経験者をどう位置づけるかという問題も、これに関連して存在するわけでして、この辺は今後の検討課題ということで残しておきたいと思います。

【北村委員】そこのところで、企業法務を、等の中に入れてあるんです。ところが、これは弁護士と隣接の関係によりますと、弁護士と企業法務との関係ということになってしまいますね。等の中に入っているということは。この企業法務につきましては、必ずしも弁護士としての権限を認めるということが主張されているわけではないのではないかなと思うんです。

 したがって、私はこの等の中に企業法務そのものを入れるということについてちょっと違和感があるわけなんです。

 というのは、企業法務に務めている人については、自社のものについては認めてもらいたいというわけですよね。

【山本委員】厳密に言うと自社だけではなくて、自社並びに関連会社です。

【北村委員】でしょう。だから、弁護士というのは広く公のためにということで、全然違うと思うんです。いわゆるその企業の従業員が会社だとか、その関連のものについてやるということと、ちょっと違うのではないかなと思いますので、ここの中に入れるのに違和感があると。それを取り上げるということについては別途やればいいと思うんです。そういう意味です。

【山本委員】わかりました。

【鳥居委員】機能の整理の仕方から言うと、弁護士の資格を持って、それを専門の業として公務員をやっている人というのはいますけれども、あれはそれと似たような話ですかね。

【佐藤会長】弁護士の資格を持ってやっている人は別なんでしょう。

【北村委員】別なんです。

【鳥居委員】いいんですか。

【佐藤会長】はい。

【北村委員】企業法務というのは、資格を持っていない人のことですね。

【鳥居委員】持っていないという前提ですか。

【佐藤会長】念頭にあるのはそうなんでしょうね。

【山本委員】それだけでなく、いうなれば資格を持っている人もいるんですけれどもね。司法修習を受けてないが、司法試験は合格している、そういう人もいるわけです。

【髙木委員】別途また、労働事件の問題のときに議論をさせてもらおうかなということでこの場では余り申し上げなかったんですが、例えば労働組合で司法サービスなどを担当してきている者等も、若干レベルの問題はあるのかもしれませんが、同じような意見があります。このことは労働の方の審議のときに言わしていただこうかなと思ったりしております。

【佐藤会長】企業法務と並ぶような。

【髙木委員】特に労働事件についてです。

【竹下会長代理】企業法務などを含むとしないで、中黒か何かで並置してはどうですか。

【佐藤会長】なるほど、中黒ですか。

【竹下会長代理】ええ。法律専門職と企業法務との関係です。

【佐藤会長】ちょっと性質が違うということですね。

【中坊委員】今おっしゃった企業法務、また髙木さんのおっしゃっている組合の場合も含めて、これは藤田さんがこの間ヒアリングの最後におっしゃったように、臨司意見書の際から代理人、いわゆる行政庁だけは指定代理人の、代理権まで認めておるという制度がある。それはやはりちぐはぐじゃないかということで見直さないといけないということを言われておるところがあるわけですね。だから、非常に基本的な物の考え方というのはどうあるべきかということの問題点があります。企業法務を、たまたま法律を担当したから、おっしゃるように、資格があったり、ほかのものが全部できたりというのとはちょっと違うと思うんです。

 確かに先ほどから北村さんもおっしゃるように、二つは区別して考えないと、ちょっと違うように思います。

 だから、隣接業種として一つの司法書士なり税理士さんなり決まっているという職業と、これとはちょっとまた違うんで、その角度は今、北村さんの言うようにはっきりさせておかないと、先ほど言う指定代理人という制度もむしろ問題じゃないか。確かにそうだろうと思うんです。何で行政だけはいいんだということになりますからね。この人はもう代理権まであるということになっているんだからね。企業法務は手伝っているだけで、裁判もできない。こっちは裁判まで全部代理権があるということになっている。そのちぐはぐ性というのはそのときから指摘されて、いまだに解決していないんだから、そういう問題はそこで解決すべき問題じゃないかという気がする。

【藤田委員】この間、指定代理について申し上げたのは、特に地方公共団体について問題があるという趣旨で申し上げたんですけれども、これから社会の需要が大きくなるからということで法曹人口を大幅に増やすということになります。そうすると、法曹資格を持った人たちが立法機関、行政庁、あるいは会社の法務部門に入っていって、そこで法の支配の中心的な役割を果たすというような状況が望ましいということですから、そういう形が将来のあるべき形ではないかという趣旨で申し上げました。

【佐藤会長】その趣旨には全く賛成です。

 では、ここは代理が言われるように、専門職種、中ポツにして、企業法務など、そういうふうにさせていただきましょうか。

 そこはそういう形でさせていただいて、次に「6.弁護士と国際化/外国法律事務弁護士等との関係」です。ここも先ほどかなり詳細な御説明をいただきましたけれども、弁護士の国際化を積極的に推進すべきであるということは、勿論御異論のないところかと思います。

 具体的には、弁護士人口の大幅増員、弁護士事務所の執務体制の強化、あるいは弁護士の国際交流の推進、あるいは他の専門資格者や外国法事務弁護士等との提携、協働を進めるということによって、国際化に積極的に対応し、国際競争に耐え得る質の高い法律サービスの提供を目指すべきである。これもこれからまさにやらなければいかぬことだと理解してよろしいのではないかと思います。

【石井委員】「6.弁護士と国際化/外国法事務弁護士等との関係」に対しては、私は大変危機感を持ってここでお話し申し上げましたが、勿論、今おっしゃってくださったことは当然のことだと思います。かつて我が国のコンピュータ産業に外国メーカーがどっと入ってきた際、国内メーカーをある程度保護するというシステムがありました。それと同じようなことを今回考えておかないと、先ほどのお話の中にあったフランスのようになってしまうのではないかと思っております。ただ、何でもいいから外国と対等にやっていくと言っても、最初は無理じゃないでしょうか。そこいら辺のことを何らかの格好でとりまとめに少し入れておかなければと思っています。

【佐藤会長】おっしゃる趣旨はわかります。

【竹下会長代理】先ほど日弁連の方が説明してくださったような線でいくのが当分よろしいと、そういう御趣旨ですね。

【石井委員】日弁連の方が説明してくださった線で行くのがよいというのではないのですが、もう少しシステムを考えるとしても、とにかく何らかの歯止め策というものを、バリアと言う表現は適当でないかもしれないけれども、何かを考えておかないとまずいのではないでしょうか。

【中坊委員】先ほど川村弁護士が申し上げましたように、これは非常にいろいろな外国との関係で、しかも諸外国との間の関係がありまして、非常に抽象的なのはいいけれども、やはり協働化というところまではいいけれども、例えば雇用ということはいまだに非常に大きな政治問題でして、これは法務省の方も拒否されておるんでして、何も外国の方に日本の弁護をされるということについては、やはりいまだに抵抗があるわけです。

 だから、国際化だから、何もかもが向こうの言うままになってよいということではないと思うんです。しかも、日本の今までの外国法事務弁護士という制度を設けて、その下にやってきて、今、世界的にも日本がえらい問題になっているということではないわけですから、それをやはり前提にしていただかないと、今おっしゃるように、私ら外国の方は正直言ってわからないのだし、そこは今のように幅を持った表現にしていただくのが適当じゃないかという気がします。

【竹下会長代理】石井委員の言われるのも、そういう趣旨です。

【佐藤会長】バリアを設けるというような趣旨ではなくて、積極的に努力する、日本の弁護士も体力を付けて、究極的には国民にいいサービスを提供する、ということですね。

【竹下会長代理】今の問題とちょっとずれてしまうのですが、それから、必ずしも弁護士だけの問題ではなく、日本の司法全体の問題だと思いますが、国際的活動に関する問題としましては、日本の司法の国際的貢献、具体的には発展途上国の法整備支援の問題があるように思うのです。幾つかの団体からの提言にもございましたし、日本弁護士連合会も積極的に取り組んでおられるところだと思いますので、ここでそれにも触れておいていただければと思います。

【佐藤会長】はい、そうですね。では、ここのところはよろしいでしょうか。

【竹下会長代理】たしか経団連の御意見にもございましたね。

【中坊委員】アジ研というのが大阪に建物が建っているわけです。そこまでもう進んでいますから、それはもう一つの事実なんですね。

【佐藤会長】では、その辺も少し書き込んでということですね。

 人的側面の方はそれくらいにしまして、弁護士改革の制度的側面の方ですけれども、まず「1.弁護士へのアクセスへの拡充」です。◎が付いているところは当然のこととして、利用者は、高度の専門性を有する弁護士の中から、依頼事項にふさわしい弁護士を適切に選択し、ニーズに即した質の高いサービスの提供を容易に受けることができる、いつでも、どこでも気楽に司法のサービスが利用できることなどを求めているということを踏まえて、弁護士人口の大幅増員とともに、弁護士過疎、経済的理由によるアクセス障害、あるいは弁護士に関する情報の不足、あるいは依頼の内容の高度化、専門化等に適切に対応するために必要な措置を講ずべきであること、この辺も皆さんのコンセンサスがあるところではないかと思いますけれども、よろしゅうございますか。

 その具体的な内容ですけれども、「(1)法律相談活動の充実」。中坊委員が強調されているように、この相談活動にも非常に微妙ないろいろな問題があるということでありますが、法律相談センターや公設事務所の設置を進め、法律相談の充実を図るべきこと、このことに関連して、弁護士、弁護士会の一層の自主的な努力が期待されるとともに、地域への司法サービスの見地から、国あるいは自治体において一定の財政的負担を行うことも含めて、負担の在り方について検討すべきではないか、という点も御異論のないところかと思います。

 とりわけ公設事務所の設置については、その目的、運営主体、運営方法、弁護士の関与の在り方、法律扶助制度や現在検討中の被疑者、被告人の公的弁護制度等との関係などを検討すべきである、といった点もよろしゅうございますね。

【北村委員】それに関連して、この公設法律事務所というのができるようになりますと、国の予算が非常に使われることになると思うんです。何かそれに対して、今のは弁護士の側から積極的にそういうことに関与してもらいたいというお話だったんですけれども、それに対して、余りそこにおける費用が膨大なものになってくると具合悪いですから、そこに何か弁護士会の方でルールというか、ガイドラインみたいなものをつくっていただく、先ほどお伺いしたら、検討が始まっているようなんですけれども、それに対する押さえの必要性みたいなものは要らないんでしょうか。

【佐藤会長】押さえと言われますが、どういう御趣旨でしょうか。

【北村委員】意味不明で申し訳ありません。公設事務所でやっていって、そうすると、国の費用が掛かってくる。費用が掛かってくればくるほどいいというものでもないですね。

【佐藤会長】需要が本当にあるということであれば。

【北村委員】本当にあるんだったらいいんですよ。ところが、この需要の割には費用が大き過ぎるとかいうようなものが生じるときには、それはどういうふうな形になるんですか。会計をやっていますと、効果と犠牲というのを考えてしまうんです。そこのところを、普通個人が弁護士さんにお願いするときには、個人の払える金額というものには限度がありますから、そこのところでうまく行くと思うんですけれども、そうでなくて、国の費用でやるといったときに、そこのところの歯止めはどういう形になるのかなと思ったんです。

【吉岡委員】会計学だとそうなるだろうなと思って伺っていたんですけれども、公設弁護事務所の場合というのは、本来であれば救済されなければいけない人が経済的条件とかいうことで救済されない。それをカバーするために国が費用を出すという考え方だと思うんです。

 ですから、そこに余り費用対効果とか、そういう考え方を入れると、非常に枠を狭くするという感じがするんです。

【北村委員】私が言いたいのは、全体的な人数のところでの枠ではなくて、例えば一人の人が公設事務所に来て、そこで弁護士が付く場合と、それから個人で弁護士をお願いする場合と、そこの金額というのは本来ですと同じようになるはずのものでしょう。同じ事件であるならば。

【中坊委員】むしろ現実には、公設事務所とか法律扶助というのは、やや低いんです。恐らく低いまま行くんじゃないですか。そちらの方が高くもらえるということは、普通の弁護士も期待もしていないし、それはさっきから公的責務として行くという部分を、プロボノ的な部分もあるわけですから、被疑者に対するものが、逆にやればぎょうさん儲かるということは、弁護士としては考えられない。

【井上委員】今、弁護士過疎地に作ろうとしている公設事務所というのは、払える人から依頼を受けた場合は当然報酬を取れるわけですね。ですから、国の資金というのは、専ら払えない人に関して出すわけで、それが過剰にというか、必要のないのに出すということは、組織原理からしてもあり得ないことだと思うのです。

 むしろ、中坊先生がおっしゃられるように、私的に依頼するよりはペイはずっと低いというのが普通ではないかなと思います。

【北村委員】では、こういう事件のときには幾らというのは決まっているわけなんですか。

【井上委員】大体そうでしょうね。

【北村委員】それは普通の弁護士報酬とは異なるわけですか。それの何%とか、何十%とかいうような形で決まっているわけですか。

【藤田委員】公設弁護人事務所とか常勤弁護士とかは、そんなに御心配になることはないと思うんですが、法律扶助はかなり問題があるんで、イギリスが今、法律扶助がふくらみ過ぎたということで、ぎゅっと引き締めに掛かっている。ソリシタの半分くらいが適用から除外されるというので、大分影響が大きいという話をイギリスで聞きました。法律扶助については、余りやり過ぎるとモラルハザードにつながるということをおっしゃる方もいるそうですし、そこはある意味では野放図になってはいけないとは思うんですけれども、それは国の政策として、年度年度の予算でやるわけでしょうから、そこのところでチェックする必要があるならチェックするということしかないんで、弁護士会でやるというのはちょっと無理かなという気がします。

【佐藤会長】イギリスは1,000 億を超えているんでしょう。

【藤田委員】邦貨換算で約2,000億円です。

【中坊委員】今、藤田さんのおっしゃるイギリスというのは、日本の何百倍くらいのところなんで、これからなるというときに、その先の先までは、余り考えないで。

【藤田委員】システムとしてやるとすれば弁護士会では無理だろうということです。今は22億円だからその必要はないんでしょうが。

【中坊委員】それよりも私の心配するのは、そういうことを言ってしまうと、今の必要な分までを制限するということにつながる恐れがあるから、今は余りそんな先の先まで言わなくてもいいんじゃないですか。

【藤田委員】弁護士の在り方よりも、弁護士に対する社会の在り方に入ると思うんですが、弁護士報酬の問題に絡むんで、前から感じていることを申し上げます。法の支配が社会に浸透する、法曹が社会の中で活躍して、法を血肉化するということを期待するならば、それ相応の社会的なコストは生じるし、それは社会で負担しなければならない。今の公設弁護人事務所とか、常勤弁護士とか法律扶助はみんなそうです。ロースクールもスタートするとすれば、ある程度の公費補助ということをしなければ維持できないと思うんですが、そういうコストは、社会全体として負担するということでないと、なかなか実現が難しい。

 私は弁護士にはなっていますけれども、余り弁護士活動はやっていないんで言いやすいんですけれども、弁護士の方たちは横から見ていて、コマネズミのごとく働いているんですけれども、胃がんから水虫に至るまで診療、治療をやって、それほど報われていないと思うんです。日本と韓国の大企業が半導体訴訟をアメリカへ持っていきましたけれども、そのときにアメリカでは、弁護士費用が5倍かかるんだけれども、やはり審理期間の2年が1年になる方が大事だということで持っていったと新聞に出ました。ということは、知財事件を担当している日本の弁護士はアメリカの5分の1の報酬でやっているということになるわけです。アメリカは弁護士によって滅ぼされるという題の本があるそうですから、アメリカの弁護士の真似をすることはないとは思うんですけれども、弁護士の実態を見ていると、一流と言われている方たちでも、そういう意味では余り恵まれていないのではないか。だから、社会全体として、あるいは企業社会としても、法の支配の適正なコストは負担していただくということが、社会の在り方として必要ではないか。弁護士費用の透明化、合理化も必要ですし、プロボノ活動も勿論大事なんですけれども、そういう意味で社会全体、あるいは企業社会全体として見たコストの負担という点についても留意する必要があるのではないかと感じております。

【佐藤会長】私も、法の支配の適正なコスト云々の点について個人的には全く同感です。

【中坊委員】確かに弁護士倫理ということも、衣食足りて礼節を知るというわけだから、今おっしゃっている社会的コストもある程度掛かるというのも、この審議会である程度前提として議論を進めていただかないと、何もかも責務でボランティアでやれやれというのでは長続きしないし、それがなかったら倫理がないとは言いませんけれども、そこに関係しているんだから、そこは是非お願いしたいと思います。

【藤田委員】専門化、国際化を目指すのなら、それ相応のコストを負担していただく必要があるのではないか。

【佐藤会長】髙木委員、水原委員が手を挙げておられます。まず髙木委員どうぞ。

【髙木委員】私は今、藤田さんの議論を聞いていまして、去年の秋、法律扶助の話をしましたね。何十年も法律扶助などという発想をほったらかしにしてきて日本の法曹界で仕事をされてきた人々が、やっと制度が動き始めて、それも今年度二十数億ですか。そのお金が小さいとは言いませんが、それでモラルハザードがどうだと言って、そういう発想で発言されるということは、言葉じりをとらえるような話で申し訳ないですけれども、どういうことなんですかと申し上げたい。そういう制度がない中で、だれもそういうことをやらないから、弁護士会のきもいりで、弁護士さんの会費を集めて、法律扶助が始められ、動いてきました。勿論、それには一部補助金も付いていましたけれども。

 ですから、物の言い方とか何とかと、みんなそれぞれのお考えだから、いちいち言葉じりをとらえてというのは申し訳ないと思うけれども、そういう発想でお考えになること自体が、日本の司法を今まで当事者としてどうしてきたんだという批判もあるんだろうと思います。ちょっと熱くなったのでこういう言い方になりましたが。

【藤田委員】法律扶助を制限しろなどということは言ってないんで、北村先生がどこでチェックするかという点が、弁護士会でやってはどうかとおっしゃるから、それは無理でしょうと申し上げただけです。イギリスの例はこうですと言っただけでありまして、法律扶助も更に拡充強化すべきだということは勿論そう思っています。

【髙木委員】モラルハザードというのはどういう意味ですか。

【藤田委員】それをやり過ぎると、イギリスみたいなことになると、モラルハザードを招く危険があると、おっしゃる方もいるから、そういう考え方もあるということを言っただけで、今の予算が二十何億円という状況でモラルハザードなどということは毛頭考えておりません。

【髙木委員】それはちゃんと議事録に。

【佐藤会長】そうしましたら、「(2)弁護士費用」のところもよろしいでしょうか。これまでいろいろ御議論いただきましたように、「(3)弁護士情報の公開」のところについても既に基本的な合意があるのではないかと思います。それから「(4)職務の質の向上・弁護士執務態勢の強化」の点ですが、法人化と総合事務所化とは一緒なのか違うのか、法人化即総合事務所化につながるのか、その辺の問題について更にこれから議論しないといけないと思いますけれども、共同化、法人化、専門性強化、協働化、総合事務所化等を図らなければいけないということ、それに関連して、複数事務所の設置禁止、弁護士法20条3項の見直しの問題も出てくるかと思います。その辺のところも大体御意見の一致があるのではないかと思いますけれども、よろしゅうございましょうか。

 そうしましたら、そういう前提で、ここのところは中坊委員、石井委員、吉岡委員、北村委員で御相談いただいて、とりまとめのペーパーをつくっていただきたいと思います。しかるべき時期に、ここに正式にかけまして、とりまとめのペーパーとして御了承いただきたい。

【中坊委員】中間答申までにですね。

【佐藤会長】そうです。できるだけ早目にしたいと思いますけれども、そちらの方もよろしくお願いいたします。

 最後に中間報告をどのようにとりまとめるかについてですが、今日結論を出そうとは思っておりませんけれども、少し感想めいたことでもよろしゅうございますから、御意見を頂戴できればと思います。前回、中間報告は大綱ともいうべきものではないかと申しましたけれども、少し比喩的に申しますと、大分前に申し上げたこともあるかと思うのですが、要するに、どういう考え方、発想で、どういう大きさの、どういう建物を建てようとしているのかを示すということではないか、と考えています。そして、大きな仕切りぐらいまでは考えて、それを示す。その大きな仕切りの中で更に細かくどう仕切るかとか、内装をどうするかとか、そういう話は最終報告までに必要に応じてやるということにして、中間報告は、要するに、どういう考え方、アイデア、理念で、どういう大きさの建物を建てるか、大きな仕切りとしてどう考えるかという辺りを示せばよい。こんな比喩でどこまで御理解いただけるかよくわからぬのですけれども、そんな辺りでどうかなという感じなんですけれども。

【中坊委員】その比喩、ものすごくよくわかるんじゃないですか。内装とか、柱がどこだとか、窓枠がどうだと言われたら、それはなかなか今のところまでということですが、おっしゃるように、どういう建物、どういう形で、どうだというところまでは中間答申でやって、後またそれをやると。だから、中間答申をどちらかと言えば、急ぐと言うとおかしいけれども、中間答申はまさに中間でして骨格を示したという程度にしてもらうのが一番いいんじゃないかと思います。

 ここで考えなければいけないと思うのは、部分的にここだけはえらい詳しいと。ここは実は本当に討議してあったとしても。

【佐藤会長】もう内装は終わっている。

【中坊委員】それでは、やはりバランスがないんで、全体としてのバランスということも考えなければいけないので。だから、最終答申の中で今のところは触れないけれども、ただ、おっしゃるように、国民の司法参加というのは大変大きな柱というか格好でしょう。そこはまだやっていないからね。

【佐藤会長】これからですね。

【中坊委員】そういう部分はまだあるということでいいんじゃないでしょうかね。

【藤田委員】全部間取りだけですと、全体がぼうっとしてよく見えないということにもなりかねない。例えば被疑者段階での公的弁護制度など方向性が一致していることもありますね。そういうものは多少アンバランスになっても取り上げてはどうでしょうか。

【佐藤会長】私の頭の中では、それは刑事裁判に関する大きな仕切りだと思っているんです。

【藤田委員】壁紙も張って、絵も飾るくらいのことをやってもいいのかもしれないかなと思います。

【井上委員】一般的にはよくわかるのですけれども、まだ十分議論していない部分もありますから、多少アンバランスになってもしかたがないのではないでしょうか。全体としての間取りは決まり、あるところは絵が掛かっている。しかし、あるところは間取りだけで、中の配置とか、洋間にするとか和室にするとかはまだ決まっていないということもあってよいということならよろしいかと思うのです。

【中坊委員】余り和室や洋室だと言っておったら議論にならないから。

【井上委員】ですから、それは案が出てから。

【中坊委員】そうですね。案が出て、そこで討議すればいい。

【北村委員】中間報告の時期の問題が、この間、新聞では11月というような会長のお話があったということが載っていたんです。私は11月というと、遅いかなというふうに思うんです。

 何故かと言いますと、これはもう来年7月で終わらないとだめなんですね。

【佐藤会長】我々の任期は7月26日です。

【北村委員】そうすると、私はどうも間に合わないのではないかなという気がするんです。ですから、中間報告はもうちょっとあっさりと出すというような形でもいいのかなと思うんです。

【佐藤会長】そういう考え方は勿論あると思います。中間報告は10月末と言ってきましたけれども、それはやや難しいとしても、1年数か月議論するということになるんですね。そうすると、それなりの期待を持たれるところがあって、先ほど比喩的に申しましたけれども、大きな間仕切りまでは描かないといかぬのではないかと。

【北村委員】その間仕切りを無理して全部描く必要はない。初めから申し上げているんですけれども、中間報告で全部間仕切りを描く必要はないだろうと思うんです。描ければそれでいいんですけれども、それよりもこの辺はまだはっきりしていないみたいな形のものが残っていてもいいのではないかなと思うんです。

【佐藤会長】例えば行政事件訴訟制度のところは、非常に大事な部分だと思いますけれども、改革は不可避だが、ちょっと間に合わないという雰囲気でした。これは中間報告後に取り組んで、何回か御議論いただかないといけない問題だと思います。そういうものが残ると思います。それから、労働裁判の在り方もあります。

【髙木委員】今まで1年余にわたっていろいろ議論してきたわけで、議論の中で、細かい議論に及んだもの、まだ漠としているもの、議論自体に濃淡があるわけですから、報告書に若干の濃淡が出ても、仕方がないんだろうと思います。

 今、北村さん、あっさりとということだったけれども、国民に議論の経過を、今までこういう中身でやってきましたというのを知らせる意味もあると思うんです。中間報告というのは。そういう意味では、生煮えの中途半端なもので国民に誤解を与えるようなのはいかぬとしましても、それなりに中間報告を通じてメッセージを発信していくという意味もあるわけです。確かにあっさりとしか書けないところもあるでしょうし、ある程度細部に及ぶものもある。できるだけ今までの議論の過程を反映した報告というんでしょうか。

 ただ、その受け止め方として、この13人の委員の中で、自分はこう受け取ったんだけれども、私、今度刑事司法のまとめの話に参加していますが、人によって受け止め方が微妙に違うことをつくづく思い知らされました。受け止め方によって、みんなそれぞれ勝手思いをしているところもあるかもしれませんからね。その辺はもめないように整理をしなきゃいかぬと思いますけれども、やはり国民に報告するという意味もあるでしょう。

【北村委員】私が申し上げたいのは、今まで議論してきたものは、ある程度まとまったものがあるでしょうから出せばいいと思うんです。ところが、これから無理して積み残しているものをやっていくよりも、中間報告に向けてやった方がいいのではないかなという意味なんです。

 ですから、残しているものもある程度できるとは思いますけれども、先ほど申し上げましたように、すべてはできないわけですね。そういうところで私は全部が中途半端な形で中間報告が出るよりは、この辺のところはこういう方向ではっきりしていますという。その詰めというのはすごくこれからも時間が掛かると思うんです。今、髙木委員がおっしゃったように、人によって非常に違う部分というのもありますでしょうし。

【井上委員】考え方は矛盾していないと思うのです。ただ、具体的に日程を考えると、それでなくても厳しいので、会長がおっしゃったようなところを更に前倒しするというのは恐らく無理だと思うのです。案文自体も何回か議論しないと、責任を持って外へ出せませんから。

【佐藤会長】案文については御相談したいと思っています。

【中坊委員】ロースクールの方が9月の末頃に返ってくるでしょう。それを受けなければいけないし、今おっしゃったように、もっと早くというのは、なかなかそれは無理なんじゃないかなと。

【佐藤会長】記者会見で私が先走ったのかもしれませんけれども、10月末と言ってきたけれども、どう考えても無理のようだ、ひょっとしたら11月になるかもしれませんねという答え方をしたら、ああいう記事を書かれたのです。ですけれども、10月末と言ってきたのを、また、1か月も2か月も遅らせることは、避けなければいけない。遅れてもリーズナブルな限度というのがあると思っています。その日程は、次の12日に、具体的にこういうように考えているということをお示しして御相談したいと思っております。

【鳥居委員】今伺っている限りでは、10月31日までのスケジュールを伺っているんですね。次回からで7回分ですね。

【佐藤会長】その辺は次回に御相談申し上げます。中間報告は11月中旬というように考えているんですけれども。

【鳥居委員】私は10月24日は出られないから、それより後にしてもらいたい。

【佐藤会長】スケジュール案は、12日までに事前に配付を。

【事務局長】会長と代理が御相談の上、そういうふうにやるとおっしゃっていただければ、すぐに委員の方にお送りいたします。

【竹下会長代理】そうしていただいた方がいいですね。

【佐藤会長】11月中旬を目指して、是非とも中間報告をとりまとめたいと思っておりますので、その前提で日程表をつくらせていただいて、次回御相談申し上げるということでよろしゅうございましょうか。

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】ありがとうございます。

【髙木委員】是非御了解いただきたいんですが、今日、刑事司法のまとめの議論をやらないということになりましたんで、今日配付されておりますとりまとめの案のペーパーが出ましたが、私もレポートをした一人として議論というか、ペーパーの作成過程に入れていただきましたが、私が申し上げた意見も入れていただけない点がある。これはいろいろ御主張があるから、そのことがいい悪いは申し上げませんが、入らなかったものは、審議会の平場で言えと言われている意見も幾つかあるものですから、そんなつもりで今日参りましたけれども、今日はやらないということで、次回、私出られませんものですから、その分、ペーパーで出させていただきます。そのことを御了解いただけたらと思います。

【井上委員】そのことを考慮して、日程を決めていただければと思います。高木委員にもできる限り出ていただけるように。

【佐藤会長】そうすると、12日にしなくて、次は18日ですか。

【髙木委員】18日は午前中で。

【事務局長】レポートは大体20分ずつで3人で、あとの時間はございます。

【髙木委員】その辺はお任せしますけれども、とにかく次回おやりになるなら出られませんので。

【井上委員】出ていただけるときの方がいいと思いますね。

【佐藤会長】その方がいいですね。その辺を含めて考えさせていただきます。
 以上でございますが、記者会見は5時からやる予定でおります。いかがでしょうか。
 では、例によって会長代理とやります。

 本日はどうもありがとうございました。