配布資料一覧

各種団体関係

○経済同友会「現代社会の病理と処方-個人を活かす社会の実現に向けて」(94.6)・要旨

  1. 今後の方向
    (1)「社会の主役」として個人を積極的に活かせる社会、社会的な調和が保たれている社会、であるところの「個人の多様性を活かす社会」こそが、21世紀の日本社会に求められる姿であるとする。
    (2)司法はまず、行政追随と批判されても仕方ないような消極的態度から、時代に合った法判断を適切に行い、立法・行政をチェックする三権分立の一権としての本来の機能を回復しなければならない。
     さらに今後は、個人が自由に選択・行動する中で社会的調和を維持するために、また経済・社会のグローバル化が進む中で国際間の交渉や問題解決を透明・公正な手続きで図るためにも、今まで以上に司法の役割は重要となる。その際、国民にとってもっと身近な存在となるように、わかりやすい手続きや利用しやすさ、利用する場合にかかる時間とコストの面などを改善してゆくことが求められる。
     個人も、司法と接触する機会を積極的に持ち、基本的人権等の普遍的正義や法律への意識を高め、社会的ムードや大勢に流されない、確固とした態度を身につけてゆくべきである。

  2. 提案
    (1)「個人にとって、身近な司法」の確立
     今までの日本の司法は、個人にとっては、極めて縁遠いものであった。もっと身近で、存在感あるものになる必要がある。司法の中核たる裁判については、時間・コスト・アクセスの面で、個人が利用しやすいよう改善すべきである。裁判と裁判外の方法は国民が必要性に応じて選べるように選択肢を増やすべきである。
     ①法曹人口の大幅増員
     日本の司法が「2割司法」と揶揄される最大の原因は法曹人口が極端に少ない点にある。裁判官・検察官・弁護士等をバランスよく増員してゆくべきである。国民と法曹の割合を少なくても欧州並みまで増やすべきである。
     そのためには、法曹養成制度の改革が必要であり、司法試験合格者枠を大幅に拡大すべきである。また、行政や民間における法律実務経験者の登用も考えるべきである。
     ②法律扶助制度の充実
     諸外国に比べて立ち遅れている法律扶助制度の充実が必要である。法律扶助協会への公的支援の拡充や新たな制度を設けるといった検討を進めるべきである。
    (2)抜本的司法改革への着手ー「司法改革推進審議会」(仮称)の設置
     抜本的に司法改革の検討は、「臨時司法制度調査会」以来行われておらず、政治改革・行政改革に比べ、司法改革には国民の目があまり向けられてこなかった。早急に「司法改革推進審議会」(仮称)といった組織を設置して、ユーザーの声を中心に据えて、司法をめぐる基本的問題について議論を開始すべきである。

○日本青年会議所「新人間社会の創造をめざして-使命のゆくえ-」(96.8)・抜粋

Chapter2「新人間社会創造に向けた新しいしくみづくり」
Paragraph4「市民に信頼される小さな政府」・自責衆取
提言テーマ 「公的負担の使い方が納得できる社会を創造する」
4 裁判所独立負担率を設定し、市民が身近に感じる公正な司法を育む
 規制緩和などの制度の変革をすすめ、官民で判断の分かれる行政運用部分について、その不服審査の機構を行政にもたせず、法にもとづいた総合的な判断をくだせる裁判所を利用します。その司法の独立を維持する十分な独立した税財源をあたえ、市民が利用しやすい短期間で結果のでる司法にします。判検交流(注)のように、裁判所と行政府の関係が密になるような制度を廃止します。情報公開法を裁判所にも適用して裁判所の行動を市民がチェックし、公正な第三者としての司法を育みます。
 注)判検交流とは、裁判官が行政機関に一定期間出向し、人的交流をはかる制度。一年に20人ほどの裁判官が行政に出向しているが、国が被告となる裁判での国側代表にさせられるなど、公正な法の精神に反する業務に就かされる運営になっている。

■市民に身近で公正な司法
司法の独立 三権のひとつである司法に、公正な行司役として市民が利用しやすくする。地域は税収の一定割合を拠出し、裁判の短期化と市民の負担の軽減をはかる。
担当範囲の拡大 行政機関が自己利益を確保するために抱えている行政の不服審査などの機構を廃止し、それらを司法判断の対象とすることで、公正さを保ちながら節税する。
判検交流制度の廃止 裁判所は公正な機関としての独立性を維持するために、裁判所に所属するスタッフが行政組織などに出向してその業務につくことを禁止する。
裁判所の情報公開 市民オンブズマンをはじめとするNPOなどに対し、個人のプライバシーを守るなどの情報公開法の適用範囲に準拠して、裁判所情報を公開する。

提言テーマ 「信頼感のある小さな政府と、実行力のある個性的な地域へ」
税金のなかから一定の比率で裁判所の財源が独立し確保されていることで、行政に予算を押さえられた関係が清算されています。官民で判断の分かれる行政不服審査について、最初から裁判所の判断をあおぐので、行政のあいまいさが法にもとづいた明快なものになり公正さを確保できます。独立財源を充分に大きくすることで裁判所の処理能力は改善され、たくさんの問題を短期間に結論をだすことができ、市民の負担が大幅に改善されます。また、裁判所がひとりひとりの裁判官の判決を市民に対して情報開示するので、市民が行動の法的規範を理解するとともに、裁判所の公正さが一段と高まります。

○経済同友会・グローバル化に対応する企業法制の整備を目指して-民間主導の市場経済に向けた法制度と立法・司法の改革-(97.1)(要旨)

はじめに
 日本が世界的にも魅力ある市場として認知されることは、わが国企業の活性化と国際競争力の強化はもちろん、日本経済の発展にとって不可欠である。そのためには、企業活動の自由度が高いレベルで保障され、企業の創造性がいかんなく発揮される経済環境(民間主導型市場経済)が必要であり、それを確立するには、規制緩和を一層進めるだけでなく、企業の自律性を保障するため、企業活動に関する法制度そのものも行政裁量の入る余地が少ない明確なものにしなければならない。
 第二部民間主導型経済を確立するための立法・司法制度の改革
 企業の国際競争力を確保するためには、企業が自由に活動することのできる環境をバックアップする法制度が早急に必要である。民間主導型市場経済では、法制は市場原理を維持するために必要かつ最少限度なものとして企業活動について広範囲の裁量が認められなければならない。
 ただし、企業には高度の自己規律と法制の遵守が不可欠となるとともに、行政側がより一層公正かつ透明な法の運用を行うことが求められる。
 加えて、紛争などの問題が生じて民間の自律的な調整がうまく機能しない場合、事後的チェック機関である司法の役割がより一層重要となる。われわれは、いわゆる訴訟社会となることを望むものではないが、司法に一層公正かつ迅速な役割を果たしてもらえるよう司法制度の改革が必要であると考える。

3 増大する司法の役割と司法改革の必要性
(1)増大する司法の役割と法曹人口の充実の必要性
 民間主導型の市場経済では、競争のルールを定めた後は原則自由な活動が認められる一方、ルール違反とそれに起因する紛争に関する事後的なチェック・調整機能の重要性が一層高まる。このため、公正取引委員会、証券取引等監視委員会などの準司法機関を含む広義の司法機関による適正・公平・迅速な司法的処理システムの充実が不可欠である。また、軽度の日常的な紛争を仲裁人の判断によって解決する仲裁制度についても、一層の活用を促すべきである。
 迅速な司法処理システムという観点からは、現在の民事訴訟は時間がかかりすぎており、紛争解決手段としては現実的に役立っているとはいえない。この原因は、なによりも、裁判官・検察官・弁護士の法曹三者が少ないことにあり、今後は法曹三者それぞれの増員が不可欠であると考える。司法試験合格者の増員については、まさに議論されているところであるが、われわれは、当面の間、毎年の合格者を現在の倍程度まで増加させるべきであると考える。
(2)多様な人材に法曹資格を与えることの必要性
 司法試験合格者を現在法曹三者で合意のある1000人に増加させても、法曹人口が現在の倍の4万人弱に達するには30年以上かかることとなり、司法試験合格者の増員のみでは、民間主導型市場経済において必要とされる迅速な司法的処理システムは期待できない。とともに、民間主導の市場経済下においては、今後一層、経済社会の専門化・複雑化を反映した紛争が増加することが予想され、適正で公平な司法的処理を迅速に行うため、法曹界に多様な社会経験を有する者を迎え入れる方策を検討することが必要となる。
 その方策としては、まず第一に、社会人枠を設定しているフランスの法曹資格制度を参考に、特定の専門分野における職務経験を有する等、一定の要件を満たす社会人に対して別途枠を設定し、別の基準をもって選考することを考えるべきである。
 つぎに、第二の方策として、早急にこれらの問題を解決するため、経済界の相応な立場で長年の実務経験を通して専門的な知識を有する民間企業の経営者・役職者や大学教授などの学識者を、各々の専門分野に限定して適正な司法判断を下せるよう、一定の必要な研修を行ったうえで「専門裁判官」として広く司法機関に登用する制度を設けるべきである。現在、裁判所においては、裁判官の社会の実状への理解をより深めるために、民間企業への出向制度が存在している。これは、裁判所として裁判官に経済の実状を知ってもらい、より専門化・複雑化した経済社会の実状に即した判決を行おうとする姿勢の現れであり積極的に評価できるが、これだけでは適正・公平・迅速な司法的処理のために不十分である。
(3)司法への一層の信頼性の向上
 民間主導型市場経済の秩序は、厳格な司法的処理システムによってのみ確保されるため、司法に対する国民の信頼が不可欠である。
 しかし、例えば、議員定数不均衡の問題で事情判決的処理を繰り返すわが国の司法の態度は、立法裁量や行政裁量が絡む事件については、米国最高裁やドイツ憲法裁判所などに比して過度に自己抑制的といわざるをえない。こうした裁判所の態度は、司法自らが三権分立という権力均衡構造を崩す要因となり、ひいては国民の司法に対する信頼を揺るがすこととなる。そこで、今後は裁判の迅速化とともに司法自らの権威をもって法的な紛争の解決をするという司法の役割を積極的に果たすことを強く期待する。

○経済同友会「こうして日本を変える-日本経済の仕組みを変える具体策-」(97.3)・要旨

第3 章構造改革の進め方
 改革の基本理念は、民主主義、市場原理の尊重、法治主義である。これら3つの基本理念の前提としてパブリックマインドの存在が不可欠である。

第4 章構造改革の具体策と期待される効果/「こうして日本を変える」
Ⅲ 市場改革のツボ
(9)司法機能を強化する
 裁判を迅速化する(注)/司法部門の事務処理効率を向上させるとともに、必要な人員は増強する。
 (注)米国では集中審理制が採られているのに対し、わが国では、並行審理制が取られている。実態としては、1ヶ月から1ヵ月半に1度の間隔で口頭弁論が開かれ、ゴールデンウィーク、8月の夏休み、年末年始はこれが開かれないことから、多くても年9回程度しか審理することができない。
≪狙い:裁判の迅速化により、司法による透明性のある紛争解決を可能とし、行政のパラダイムを事前の予防的措置から、事後の司法的紛争処理のためのルールの企画・立案に転換する。≫

[期待される効果]
 行政指導等に対する疑問がある場合には、直ちに行政手続法に則り、その根拠の提示を求めることが可能となる(現状は訴えても判決まで時間がかかりすぎ、訴えの利益が得られなくなるケースが多い)→行政による恣意的かつ不透明な干渉を排除できる→市場メカニズムが一段と円滑に機能する。

別添資料1:「構造改革実現後の経済社会のグランドデザイン」

[司法]
(1)司法機能の充実と積極的活用
①司法機能が政治・行政に対する厳格なチェック機能(三権分立が目指す本来の機能)を十全に果たしている。
②司法関連の人員拡充により、裁判の迅速化が図られている。
③経済活動ルールに関する法適用の透明性確保、その的確な運用および情報開示の徹底のため、公正取引委員会、証券取引等監視委員会などの司法的機能も積極的に活用されている。
(2)法適用の透明性確保のため、行政機関に対しても、司法等からのチェックが強化されている。
①立法府が法律を企画・立案し、行政機関はそれに基づいて厳正かつ公平に法律違反者を監視・監督するという棲み分け(利益相反の排除)が徹底され、裁量的な法律解釈に基づく恣意的なルールの運用はなくなっている(透明性の確保)。また、政令、省令等立法府のチェックを経ないものはなくなり、法制化されている。
②法律自体の不備や監督機関による不公正または不透明な法適用が見られる場合には、民間サイドから即座に是正措置を求める仕組みが定着している。行政機関等はそれを受けて迅速かつ的確に対応する体制が整備されている。もし的確な対応が取られない場合には、民間サイドが訴訟を起こし、行政のあり方が司法によって裁かれるようになっている。

○連合・政治政策フォーラム「21世紀への日本の選択」(97.6)・抜粋

第Ⅰ章 はじめに(要約)
幕末以来のキャッチアップ時代が終わり、日本は今大きな歴史的転換点にある。これまでのシステムを根本的に見直し、新しい環境条件の変化に対応して、自ら勇気をもって自己改革をしていくことが求められている。具体的には、市場機能を強化するとともに、社会的弱者を保護するということである。このような課題について日本全体で活発な議論が展開されることを目指して、ここに問題提起する。

第Ⅲ章 改革の課題
 キャッチアップの時代には行政が突出し、政治、司法の役割が矮小化されていたという認識に基づき、改革の課題として、「公正で透明な、民主的な意思決定システムの確立」を挙げている。そのために、第1には、政党が明確な政策を提起し、国会を通じて国民の意思が反映された上で政策形成が行われるという形を実現することが必要であるとする。
 第2として司法の強化を挙げる。以下はその部分の抜粋である。
 もう一つは司法の強化です。国民はどのように政策が決定され、また行政によって執行されていくプロセスを常に監視することができなくてはなりません。そのためには情報公開が必要です。現在、国でも情報公開法が準備されつつありますが、国よりも自治体が先行しています。情報公開は極めて重要ですが、とくに政策決定プロセスにおける情報の開示について官僚は非常に抵抗を示していますが、これを明らかにしていくことが必要です。さらに行政手続法を改正して、計画策定、政策立案段階における国民の参加を明確に権利として保証することも必要です。
 国民が、政策の決定並びに行政についてに疑義があるときには、手続や内容の正当性について取り上げて批判することができなくてはなりません。その法的根拠として、今、行政不服審査法や行政事件訴訟法がありますが、これは有効に機能しているとはいえません。国民が政治行政のあり方について疑義があったときに、これを取り上げていくことは、民主主義の最も重要な基盤の一つです。そのためには、もっと有効に動ける行政監視機構が必要でしょう。公正取引委員会があって、民間経済取引に不当、あるいは不正があった場合には厳しく取り締まることになっています。しかし、行政に不当なことがあった場合に、これを取り締まる仕組みが日本にはありません。その意味で監視機構、例えば”公正行政委員会”といったようなものをつくることによってチェックする必要があります。つまり立法と行政が正しく機能しているかどうかということを国民の目からチェックする司法の基盤というのが必要なのです。
 さらに重大なことは、日本の裁判機能が弱過ぎることです。社会的な弱者に対する法的な保護が弱過ぎます。憲法32条は、何人も裁判をする権利を奪われないという基本的人権を保障していますが、人権の保障のため弁護士をつける必要があります。弁護士には費用がかかるので費用の払えない人のためには、国選弁護士をつけることになりますが、国選弁護などを賄うための法律扶助に日本政府は2.5億円しか補助していません。しかも日本では法律扶助制度は法定されてません。イギリスは1,700億円、アメリカは350億円などにくらべ、日本は少な過ぎます。
 いいかえれば、日本では弱者が法の下に平等に裁判を事実上受けられるようになっていません。こうしたしくみを強化することによってはじめて、三権分立が公正に機能します。今の日本は行政が情報を独占していて、政治は矮小化されたメッセンジャーボーイとしての利害調整しかしておらず、非常に歪んだ形となっています。一方司法は、司法基盤が弱過ぎて事実上の司法の機能を充分に果たしていない現状にあります。法的な枠組みは不備、裁判所の機能も弱く、弁護士の数も少なく、物的にも制度的にも脆弱なありさまです。

○全国青年司法書士協議会「司法制度改革についての意見書」(98.4.24)・要旨

 これは、「裁判と専門家苦情110番」の調査結果および「民事訴訟手続に関する改正要綱試案に対する意見書」の内容を踏まえて、表明するものである。

1 裁判制度の拡充について
 司法予算を拡大し、裁判官及び書記官の増員、簡易裁判所の増設もしくは少額訴訟裁判所等を新設し、市民が司法にアクセスできる方法を拡充すべきである。
(理由)

2 法律家制度等の見直しについて
(1)弁護士法72条の見直しについて
 弁護士法72条による弁護士の法律事務独占の見直しを求める。司法へのアクセスが閉ざされている市民への適切なリーガルサービスの提供が可能となる。
(理由)
(2)訴訟代理権の弁護士による独占の見直しについて
 民事訴訟法等で弁護士が独占している訴訟代理権を、市民の期待に応えうる専門職能にも開放することを求める。
(理由)

○経済団体連合会・司法制度改革についての意見(98.5.19)(要旨)

1 基本的考え方
 行政依存型経済・社会から自由で公正な市場経済社会への転換が図られる中、社会・経済の基本的なインフラである司法の人的・制度的整備の充実が必要である。

2 司法の人的インフラについて
(1)法曹人口の増大
ア 民事・行政事件数が増加しており、改正民訴法の施行を考慮に入れてもなお、裁判の適正化・迅速化のために裁判官の増員が必要である。
イ 企業担当者に、自社が当事者となる訴訟の代理権や、関連企業への法務サービスを認めるなど、弁護士に独占されている法律業務の一部を解放することが裁判の迅速化のためにも有益である。
(2)法曹養成のあり方
ア 裁判官の任用は、弁護士となる資格を有する者で、裁判官以外の職務を経てきた者から任用することを原則とすべきである。
イ 法曹育成を目的とする大学院レベルの法学課程(ロースクール)を新たに開設し、その修了をもって、司法試験の一部を免除することを検討すべきである。また、学部レベルにおいて、弁護士や企業の法務担当者の講師登用を積極的に行うべきである。
ウ 司法試験合格後、司法修習生を経ていない者でも、衆参両院議員、議員の政策秘書及び企業の法律実務を相当な期間担当した者に、一定の法律実務を経ていることから弁護士資格を付与することも検討すべきである。
(3)弁護士のあり方
ア 法律全般にわたる習熟を要しない定型的な業務や、特定分野における専門性を有していれば対応可能な事項については、弁護士以外の者(とりわけ司法書士や弁理士等)の参入などを認めるべきである。
イ 弁護士が公認会計士及び税理士等と一体として法律サービスを提供する総合的法律・経済事務所の開設を早期に認めるべきである。

3 司法の制度的インフラについて
(1)裁判の迅速化
 民事訴訟法等の改正が行われた今、裁判の迅速化は、人的インフラ面の問題であり、有資格者からの裁判官任用を増すために、裁判所予算の抜本的拡充が不可欠である。
(2)民事執行制度の充実
 担保不動産に係る短期賃借権を迅速に排除するために新たな立法を行うとともに、裁判官等の増員に加え、執行官も大幅に増員すべきである。
(3)準司法機関、準司法手続の充実
 準司法機関・手続についての諸問題は、主として定員増を含む当該組織の強化にある。なお、準司法手続が認められている事項について、民事的救済を拡充することは、裁判所の負担増加となり、慎重な検討が必要。
(4)国際仲裁センターの充実
(5)アジア諸国への法整備支援
(6)知的所有権をめぐる紛争の迅速な解決
 大都市圏の裁判所に知的所有権争訟に対応できる裁判官を重点配置するとともに、この分野に精通した裁判官を養成する。特許裁判所の設立についても検討を進めるべきである。
(7)法制審議会の体制整備

○21世紀政策構想フォーラム・司法改革への提言(98.6.19)(要旨)

  1. 司法改革の基本的なスタンス
     基本は、法曹人口の増加、司法関連予算の充実、制度インフラの整備である。
  2. 法曹人口の増加
     司法試験合格者の大幅増加により、弁護士過疎地域の解消、少額事件・難事件の弁護士受任の促進、弁護士による法的サービスの充実、裁判官・検事の任官希望者の増加の効果が期待できる。こうした効果が現れて初めて、法曹一元の基本的条件が満たされる。また、法曹人口の増加による市場競争により、優秀な法曹が育つと期待される。
     法曹養成について、法学部の一部を法律専門学校(LawSchool)に変換し、そこで一定以上の成績を修めた者に司法試験における優遇措置を講ずる制度の導入も考慮すべきである。
     裁判官は、法曹一元へと移行すべきである。さらに10年間任期の者(判事)を大幅に増大させる。内閣は、広く各界の意見を聴取した上で裁判官の任命権を行使すべきである。
     弁護士等からのパートタイム裁判官の任用や、法曹業務に携わるのではない者(ジャーナリストなど)からも、裁判官に任用すべきである。検事も同様に官民交流を図る。
  3. 司法予算の充実
     裁判官とその補助者を抜本的に増員し、また法律扶助制度を大幅拡充すべきである。
  4. 制度インフラの整備
     最高裁について、最高裁判事ごとに調査官をつけるべきである。最高裁判事は、内閣が広く公開の場で各界の意見を聴取して任命すべきである。また、小法廷を専門化することも考慮されるべきである。
     行政・知的財産権・労働事件などについて、専門裁判所の設立が望まれるが、さしあたりは専門部を置き、その担当裁判官は専門家で構成すべきである。
     弁護士の業務独占について、訴訟代理は、専門家でなければ訴訟進行に迷惑であり認めるべきであるが、法廷外の法的知識提供は、単に私的な問題であり廃止すべきである。
     弁護士が会社の取締役等になる際の弁護士会の許可を廃止すべきである。弁護士事務所の法人化を認めることにより、事務所経営を容易にし、専門化を促進する。また、弁護士を公務員に任命する道を開くべきである。
  5. 改革の当事者
     司法制度の改革に関して、法曹三者の合意を求める慣行(国会附帯決議)をやめるべきである。
  6. 司法改革は立法改革
     法律の文言・表現を明確にして解釈上の争いを極小化し、不明確性が露呈した場合には、法改正で対応するとともに、法の整備に精力を傾けるべきである。また、政府提出法案は省庁の利害というバイアスが避けられないため、議員立法に重点を移行すべきである。

○司法制度改革懇話会・要望書「司法制度改革に関する提言」(99.5)(要旨)

一「司法制度審議会(仮称)」の設置について
 ここで言う司法制度改革は、裁判所が関与する以前の段階における国民生活・経済活動・公的活動の分野(裁判外の分野)における活動の基準として「法の支配」「法のルール」を活用できるようにすることに力点がある。司法制度改革を推進するには、国会に「司法制度審議会(仮称)」を設置することが必須である。

二「司法制度審議会(仮称)」における審議課題及びその方向性について
1 司法試験改革について
 国内的には、規制に従う行動規範が制度疲労を起こし、国際的には、大競争時代に突入した我が国では、リーガルマインドが行動規範として必要とされるようになる。そこで、企業法務、行政、国会などの法廷外法務活動を中心とする新しい実務家(=リーガルマインド修得者)が大量に必要とされる。したがって、司法試験を法廷外法務分野で活躍できるライセンスを付与する制度として拡大・強化することが要請される。また、司法修習期間は1年6月間に短縮した上で社会研修(受入先は一般企業、行政庁、地方自治体)を実施する。
2 弁護士法の改正について《21世紀に対応できる弁護士法を》
(1)司法改革総論
 国民が望む司法を実現するためには、誰でも・どんな時案でも・どこからでもアクセスできるシステムが整っていなければならない。そのために、法曹人口の大幅増員が大前提であり、また、規制緩和・廃止の方向で弁護士法を改正すべきである。
(2)司法改革各論
①法律事務所の法人化を実現する。これにより、弁護士の死亡によるリスクの回避、法律事務所の経営安定化、法務処理能力の向上、公的業務の事務所全体でのバックアップが可能となる。
 ②公務員との兼職禁止規定を廃止する。これにより、弁護士が立法府・行政府のスタッフとして活躍でき、「法の支配」が浸透する。
 ③営業等の制限を廃止する。これにより、弁護士の能力を企業法務等に発揮できる。
 ④法律事務を開放する。弁護士人口が少なく、しかも偏在しており、他方、準法曹・各企業法務部等は各々の専門分野においては弁護士以上の法律事務処理能力を有している。万一、非弁護士による法律事務処理サービスが二流の正義であったとしても、少なくとも、供給困難な一流とより身近な二流のいずれを選ぶかの選択権は国民にある。
 ⑤弁護士広告規制を廃止する。国民は弁護士に関する情報をあまり目にしない。各弁護士毎の業務別料金体系、得意分野、実績を国民に開示すべきである。
 ⑥法律扶助制度について、告知宣伝を充実させ、根拠法令を与え、国庫負担金を増額し、利用要件を緩和する。
 ⑦新規専門分野の事件や少額事件については、裁判所による紛争処理だけでは不十分であるから、ADRを設立する。
 ⑧法律情報をデータベース化して国民によるシステム的利用を可能にする。
3準法曹について
 弁護士と準法曹、準法曹間の垣根を低くし、国民の法的サービスを充実する必要がある。①司法書士に、簡裁における民事通常訴訟・調停・和解事件、非訟・家事審判・家事調停事件、民事執行事件における代理権を認める。②税理士に、国税に関する不服事案等について出廷陳述権を認める。③弁理士に、知的財産権訴訟の訴訟代理権限を認める。④行政書士に、法律事務取扱、代理権、行政不服審査申立権などを認める。
 また、⑤公認会計士、⑥中小企業診断士、⑦社会保険労務士、⑧宅地建物取引主任者、⑨公証人の重要性が高まるから、それぞれその業務内容等を充実強化する。
 さらに、⑩企業・団体の法務担当職を、日本企業に対する社会的要請(企業統治の適正化、法の順守、法の執行)の担い手とすべきである。そのアイデンティティを確立するため、所属する企業の訴訟代理権等を認める。また、職の安全がなければ法律的に正しいことの直言ができないため、職位を保証するため転職保証策を考えることが必要である。⑪外国法弁護士についても、種々の規制を緩和、撤廃して自由化をすべきである。
4 司法教育改革について
(1)初等・中等教育における法律教育についての提言
 日本人が先進国の国民として法的に成熟するためには、日本国民全体の法についてのレベルを向上させる必要がある。このためには、初等・中等教育から、論理性の養成、主張の明確制の訓練、社会科教育における法律教育を行わなければならない。
(2)ロースクール大学院についての提言
 大学院は、研究職の養成の場として学問研究の深奥を極める道から大きくはずれることはないであろうし、職業法律人の実務収集を行うノウハウ等もない。また、日本で「法を扱う技術」を訓練する場は、司法研修所だけであるが、これを拡充し、あるいは大量に建設することは予算と教員(職業法律人)の数から見て可能性は乏しい。
 そこで、職業法律人の養成を全く自由にしてはどうか。学校の良否は消費者が選別する。また、その学校が資格、称号を与えることも自由にする。消費者は、合理的な選別をするであろう。
 以上を実現するためには弁護士法72条を改正する必要がある。

○自由法曹団・21世紀の司法の民主化のための提言案(98.10.26)(要旨)

1 わが国の司法の深刻な現状とその改革の方向
(1)日本国憲法のもとでのあるべき司法と弁護士自治の重要性
 政治の世界での多数決原理と異なり、社会的弱者の権利や少数者の権利を国家権力や社会的強者等から守ることが司法の役割である。弁護士はその援助を行う専門的職業とされており、時には国家権力などとも対決することを使命としていることから、弁護士自治が保障されている。
(2)わが国の司法の深刻な現状とその原因
・民事裁判の現状は、時間と費用の負担が大きい、国や大企業を相手とする裁判の勝訴率が低い、実体法や手続法の規定が不十分である。また、刑事裁判の現状は、裁判所の令状審査が形ばかりとなっている、20日間勾留が原則化している、代用監獄が残されている、被疑者国選弁護制度等が存在しないなどとなっている。
・最高裁事務総局の権限が肥大化し、裁判官は人事政策によって統制されるようになっており、裁判官は、市民的・政治的自由を制限され、市民社会と隔絶された生活を余儀なくされている。さらに、裁判官と検察官の頻繁な人事交流により裁判所の公正が疑われるなどしている。
・日本の司法予算が国家予算総額に占める割合は0・4%に過ぎない。
・判事補5年を経験した判事資格のない特例判事補が単独で裁判を行い、法曹資格のない副検事・検察事務官が検察の仕事の多くを担っている。また、裁判所の支部が設置されている市に弁護士がいない、あるいは1人しかいない弁護士過疎地区が多数ある。
(3)人権をまもり発展させる国民と自由法曹団のとりくみ
 自由法曹団は、50年余りにわたり、刑事弾圧事件、冤罪事件、労働事件、行政訴訟など、自民党政治のもとで社会的強者の人権侵害の犠牲になった人々の権利をまもるための大衆的裁判闘争にとりくんできた。
(4)日本社会の深刻な危機と、財界・自民党の司法改造の提言
 財界や自民党は、弱肉強食の社会を野放しにしておいて、あとからその犠牲者を裁判で救済するために司法の役割を大きくするという、逆立ちした考え方であり、日本を規制緩和型の国家社会に改造する計画を立て、司法制度をさらに企業に奉仕するしくみに作り変えようとするものである。また、弁護士自治を変質させることも狙っている。弁護士の法律事務独占の緩和は、司法の分野における参入制限の撤廃の動きである。
(5)日本の司法の改革の方向ー今こそ国民のための司法をめざすとき
 今こそ、国民の人権を擁護する憲法の保障する司法制度についての抜本的な改革要求を掲げて国民が行動に立ち上がるべきである。

2 司法の民主化のための抜本的な改革の内容
(1)判事補制度の廃止と法曹一元制度の実現
 裁判官は司法官僚的に統制されているため、裁判官の独立が侵害されており、裁判官の市民的・政治的自由も制約されている。そこで、キャリアシステムの象徴ともいうべき判事補制度を廃止して、法曹一元を実現すべきである。法曹一元実現のために、弁護士の教育訓練と自己改革を強化するとともに、弁護士の大都市偏在と過疎地対策などに取り組む必要がある。
(2)国民の司法参加の実現ー陪審制度を基本に
 官僚司法の打破と真の司法の民主化は、法曹一元のみならず、司法の国民参加とあいまって実現されるべきである。刑事陪審制度の復活・改善と国家賠償請求事件、労働・行政事件など国や大企業等の責任追及するなど一定の種類の民事事件における陪審制度を創設し、民事事件や少年事件においては参審制度も検討すべきである。
(3)裁判を受ける権利の経済的保障と司法予算の大幅な増大
 法律援助制度の抜本的強化と被疑者国選制度を実現し、これを支える司法予算を大幅に増大する。
(4)抜本的な制度改革を支える法曹人口の大幅な増大
 抜本的な制度改革を支え、その基盤となる法曹人口を大幅に増大する。判事補制度、副検事・検察事務官の検事事務取扱いが恒常的な制度とされるといった法制度上の例外の原則化、法律扶助制度の抜本的強化に伴う弁護士人口の大幅増大の必要性、司法書士参入論・弁護士の法律事務独占の解禁論などの問題が提起されており、現状では法曹人口不足は歴然としている。法曹人口増大に関し、規模やテンポ、養成方法である大学制度、試験制度、修習制度の問題、弁護士の大都市偏在と過疎地対策、法律事務独占と弁護士自治との関係、司法基盤整備などとの関係も議論すべきである。

3 司法の民主化のための討議と国民運動を
 財界や自民党の立場からの司法改造計画を許さず、国政を民主化し、国民主権を実現するたたかいの一翼を担うものとして、すべての民主勢力や良心的な個人、団体がとりくむべき課題の一つであり、国民的な運動にしたい。

○日本弁護士連合会・司法改革ビジョンー市民に身近で信頼される司法をめざしてー(98.11.20)(要旨)

1 総論
(1)司法の果たすべき役割
 規制緩和のもとで市場原理と自己責任を基調とする政策が進められつつあるが、自己責任の名のもとに社会的弱者が一層苦しい状況に立たされる危険性がある。このような社会状況のもとでこそ、法律実務家が社会の様々な場面に関与し、個人の尊厳と基本的人権を擁護する必要が高まっている。自己責任の原則に貫かれた事後監視・救済型への社会の転換のための対応だけでなく、社会的・経済的弱者の権利を保護して自由競争の行き過ぎから生じる弊害を是正するためにも、司法機能の充実がぜひとも必要である。
(2)司法改革の方向
①市民に身近な司法の実現と司法の容量の拡大
②市民の権利の保障・実現のための諸制度の整備
③立法・行政に対する司法のチェックと社会のあらゆる分野に法と正義をゆきわたらせる
(3)弁護士・弁護士会の役割と責務
 弁護士自治や弁護士の職責が、市民から負託されたものであり、その基盤が市民の信頼にあることを自覚して自己改革の努力を続けるとともに、社会のあらゆる分野において積極的に活動することを目指す。そのための制度面・運用面での検討や基盤整備を進める。

2 各論
(1)市民に身近な司法の実現と司法の容量拡大のために、裁判官任用制度の抜本的改革(法曹一元、非常勤裁判官制度の導入、弁護士任官の推進、研修弁護士制度の実現、裁判官の市民的自由の確保、裁判官の報酬及び人事の在り方の見直し)、最高裁判所裁判官の国民審査の改善、最高裁判所裁判官任命諮問委員会の設置、司法への市民参加(陪審制・参審制などの検討、調停制度や検察審査会制度の充実)、裁判官・検察官の増員と施設の整備、裁判所・法務省予算の見直し(大幅な増額)、司法改革を推進するのに必要な弁護士体制の拡充を進める。
(2)市民の権利を保障・実現するために必要な諸制度の整備のために、法律扶助制度の抜本的な拡充、国費による被疑者弁護制度の早期実現、市民の安全な生活と権利を保障するための立法措置(消費者契約法などの制定、破産法の改正など)、犯罪被害者等救済システムの実現、民事裁判の適正・迅速化と民事執行制度の充実、家事事件の解決のための家庭裁判所の充実・強化、少年事件及び子供の人権をめぐる改革(捜査の可視化、国選弁護士付添人制度など)、刑事裁判の改革(接見交通権、取調べ立会権、起訴前保釈制度等の確立など)、国際的な水準に合致した被拘禁者処遇と拘禁施設の実現(代用監獄の廃止)を進める。
(3)立法・行政に対する司法権のチェックと社会のあらゆる分野に法と正義をゆきわたらせるため、違憲立法審査権の充実・強化、行政に対する司法審査の充実・強化(行政不服審査法、行政事件訴訟法の改正など)、社会の多くの分野において、法と正義によるコントロールがゆきわたること、司法教育の充実といった諸施策を進める。
(4)国際化への対応のため、国際的人権保障のための課題(国内法を国際人権法の水準に引き上げること)に取り組み、国際仲裁センターの充実、アジア諸国との法的問題での協働・アジア事件保証機構の創設といった諸施策を行う。
(5)弁護士・弁護士会の改革のため、綱紀・懲戒の適正な運用と弁護士倫理の徹底、市民窓口の設置・拡充、弁護士の公益的活動の促進、法律相談センターの展開と弁護士偏在問題への取り組み(公設事務所の設置など)、当番弁護士への取り組みの充実、法律事務所の組織力の強化(共同化の推進、法人化の検討など)、隣接業種との協働、研修体制の充実、開かれた弁護士・弁護士会への方策(広告規制の再検討など)といった諸施策を行う。

○日本司法書士会連合会・金融再生関連八法の成立を受けて(98.11.25)(要旨)

1 はじめに
 平成10年10月12日に成立した金融再生関連八法は、金融システムの安定化を図るために、金融破綻の処理策を完備し、民事執行制度の充実に向け、多くの改善がなされたものとして高く評価する。

2 さらなる充実へ向けて
(1)手続の迅速化のために
①執行裁判所において手続を扱う裁判官・書記官・事務官・執行官を増員すべきである。
②執行官を明確に国家公務員とする等、執行官制度を充実すべきである。
(2)競売不動産の売却率を向上させるために
 競売不動産について、買受希望者が、該当物件を現認できる制度を創設すべきであると考える。
 たとえば、売却手続の実施後一定の期間は、法律専門職が裁判所の許可と執行官の協力を得て、買受希望者とともに当該物件に立ち入ることができる制度を新設すべきである。

3 司法と登記制度について
 民事執行制度と登記制度は、担保不動産に対する執行、いわゆる「担保権の実行」の場面において交錯する。登記制度を所管する法務局の有する機能及び担保権の設定登記のほとんどを申請している司法書士の機能は、司法制度及び不動産に関する国民の経済取引において、非常に重要な位置を占めている。

4 終わりに
 民事執行制度における申立てから配当手続に至る諸手続の中で、特に買受希望者の入札及び入札に至る意思決定の過程に多くの法律専門職を活用できるよう改善されること。

○日本司法書士会連合会・法律扶助制度の改革に向けての意見書(98.11.26)(要旨)

本意見書は、法律扶助研究会報告書(平10・3・23、以下「報告書」という。)をふまえての意見である。
1 規制緩和後の国民の権利実現のための、国民の司法へのアクセスを保障する重要なものとして、法律扶助制度の充実は司法機能の強化の重要な基礎であり、司法制度の円滑な運営に資するものとの指摘の上に、国民にとって身近な利用し易い制度づくりを目標とする報告書の方向については全面的に賛成である。
 
2 法律扶助制度の強化・充実のためには、弁護士のみならず司法書士の積極的な活用が不可欠である。
(1)法律相談について
 報告書は、法律扶助の需要における裁判前援助及び法律相談の重要性を指摘しているが、この制度の恩恵については、広く国民全体に均質でなければならないにもかかわらず、弁護士の地域的偏在が存在するために、十分に目的を達することはできないと危惧される。司法書士は、全国に隈なく存在し、法律相談を含めて国民の日常生活に密着した法律事務を現に行っており、弁護士・弁護士会に加えて、司法書士・司法書士会を広く活用するよう要望する。
(2)アクセス障害の除去としての申込窓口の拡充について
 報告書は、法律扶助の申込窓口の拡充として、法律相談における登録弁護士を活用して弁護士事務所を通じて申込を行うことができるようにすべきと指摘している。しかし、登録弁護士を現状より拡充したとしても、弁護士の地域偏在の問題が解決するとは限らない。現状では弁護士が存在する全市町村は全国全ての市町村の14・8%であり、司法書士のそれは64・8%である。司法書士を法律扶助の申請の申込窓口として司法書士・司法書士会の活用を強く望む。
(3)裁判援助としての書類作成支援及び少額事件支援について
 報告書は、当事者本人の訴訟追行を法的助言・書類作成等の代理以外の方法によって援助を行う法律扶助サービスを実施すべきなどと指摘している。司法書士は、裁判所・検察庁等へ提出する書類全般の作成を業としており、現に、当事者本人が訴訟を追行するケースでは、書類作成及び法的助言を通して、本人の訴訟支援を行っている。簡易裁判所では、90%以上が弁護士を選任しないで当事者本人が訴訟を追行しており、その相当部分を司法書士が書類作成・法的助言を通して本人を支援している実情がある。この指導援助による法律扶助サービスについても、司法書士に依頼した場合は法律扶助制度の恩恵を受けられないとすれば、均質なサービスの提供という法律扶助の目的が達成されないし、憲法32条、14条の理念に反する。
 次に、報告書は、原則として裁判援助の対象外としている訴額50万円以下の金銭の支払請求事件については、指導援助、スタッフ制や事業主体との契約により集約的に受任・処理する制度等の効率的な法律扶助サービスを実施べきであるとしている。すでに、多くの司法書士会では、司法書士をスタッフとする「少額訴訟相談センター」の全国的な開設に着手している。
以上のように、法律扶助における裁判援助のうち、法的助言・書類作成等による支援、特に、少額な訴訟における援助を十分に遂行することが可能であると考えており、司法書士の活用は法律扶助の充実・拡充に寄与することが明らかである。

○21世紀政策構想フォーラム・「司法改革委員会」の設置について(98.12.11)(要旨)

  1. 改革原案の作成主体とその構成
     改革原案の作成を、法曹三者から独立した組織により、利用者の立場から行うため、内閣に司法改革委員会を設置する。その際、次の諸点に留意すべきである。
    (1)よりよい司法サービスを国民に提供できる体制を構築することを目指して、現行司法制度を全面的に改革する基本方針を策定することを目的とする。
    (2)政府は、司法改革委員会で策定された基本方針を尊重する義務がある。
    (3)2年以内を目途に最終答申を政府に提出する。
    (4)委員は13名以内とし、委員任命の際には、各界代表という構成をとらず、司法改革を行う熱意と見識(見識を公表する)のある者の中から任命する。
    (5)事務局は、内閣内政審議室に置き、法務省、最高裁出身者は入れない。
    (6)専門資格者等からヒヤリング等を行う。
    (7)会議及び資料を公開し、インターネット等も活用して、議事の概要を公開する。
    (8)国会においても司法の在り方を検討する組織を設置し、審議する。

  2. 審議の基本方針
     次の諸点を基本目標として、改革の方針を打ち出すものとする。
    (1)民事・行政・刑事の領域で透明なルールに基づき、公平、公正、正義に適い、憲法の原理に沿った紛争解決を迅速に行うこと
    (2)裁判の官僚化を防止し、国民に身近な裁判を実現すること
    (3)国民の司法へのアクセスを改善し、法律弱者が十分な法的保護を得られるような社会システムを作ること
    (4)法曹の専門知識を、国際社会の標準に耐えられるように高めること
     なお、司法改革委員会には、基本方針だけを打ち出すだけに止め、それを具体化するために別に委員会を設置するという選択肢も認められるべきである。

  3. 審議事項の実践
     内閣の政治的責任において断固実施する。

  4. 備考
     次のようなものが大きな論点になると思われる。
    (1)立法を明白かつ客観的で事前予測可能性の高いものに再編成する。
    (2)裁判遅延対策のため、法曹人口の増加、裁判官の大幅増員、法曹一元などキャリア裁判官制の見直し等を行う。
    (3)法曹サービス供給者の多様化のため、弁護士の業務独占を見直し、他の関連有資格者の役割の広域化・多様化を図る。
    (4)裁判の専門性の確保するため、裁判所の専門部の増加を図る。

○21世紀政策研究所・民事司法の活性化に向けて(98.12.22)(要旨)

  1. 基本スタンス
     民事司法の中核としての裁判所の位置づけを明確にし、再活性化させるための改革を行う一方で、裁判外の紛争処理機関「市民コート」を徹底強化(創設)するとともに、法律相談などの基礎的リーガルサービスのインフラを身近なものとして整備・充実させ、「民事司法におけるベスト・ミックス」を形成する。
  2. 裁判制度の再活性化
     (1)処理期間の短縮化のために、裁判官を増員すべきである。早期の増員のためには、弁護士任官を活用し、また、裁判官OB等の活用による非常勤裁判官制度の創設し、少額事件等を中心に活用を図るべきである。また、争点の把握及び立証方針について早期にスケジューリングを行うことが重要である。その他にも、テレビ会議システムの充実による証拠調べの効率化も図るべきである。
     (2)また、裁判手続に求められる専門性に適応するために、専門家の活用、裁判官の企業など法曹外部での研修の義務づけが考えられる。
     (3)そのほか、裁判制度にも顧客満足が求められるという観点から、当事者自身が自己責任で主体的役割を担える制度の創設、補佐人制度の見直しを行うことや、裁判外紛争解決システムとの連携が必要である。
  3. 市民コートの整備・創設
     「紛争の両当事者がその解決に向けた交渉を自律的に進めるなかで、その交渉過程に応じ、弁護士、その他の専門家の見識や経験に基づく中立、公平なサポートを受けられる場」としての性格を持つ、「市民コート」を創設、整備すべきである。
  4. 法律相談等リーガルサービス業務の開放
     弁護士による法律事務独占を見直す必要があり、また、法律事務所開設に関わる制約の見直し、法人化・複数事務所の設置など様々な形態の法律事務所の出現する可能性を広げることにより、その時々の社会ニーズに見合ったリーガルサービスを提供できるようにすべきである。
  5. 司法制度の「改革」の手法
     法曹三者の意見調整を図るべき旨決議した国会附帯決議の破棄及び「司法改革会議」(仮称)の設置等により、法曹三者の利害調整の結果である現在の「法曹保護司法」から、国民の利益に適った「国民保護司法」への変革を遂げることが可能である。

自由法曹団・司法制度審議会設置についての見解と要請(99.1)(要旨)

  1. 司法の抜本的改革をめぐる諸提言と司法制度審議会設置の動き
     (1)現在の日本の司法は国民の期待に反してその機能を十分に果たしておらず、その病弊は小さくない。諸外国に比べて著しい日本の人権後進国ぶりなど問題の根本的原因はは、日本の遅れた司法制度そのものにある。司法制度を抜本的に改革し、21世紀に向けて日本の人権水準を飛躍的に向上させることが求められている。
     ①判事補制度の廃止と法曹一元制度の実現、②国民の司法参加の実現、③裁判を受ける権利の経済的保障と司法予算の大幅な増大、④抜本的な制度改革を支える法曹人口の大幅な増大の実現を求める。
     (2)財界や自民党のめざす方向は、多国籍企業が国境を越えて世界の経済を支配しようとするいわゆる「大競争時代」を目前にして、日本を規制緩和型の国会社会へ改造する計画を立て、日本の司法をさらに多国籍企業、大企業に奉仕するしくみに作り替えようとするものである。
  2. 司法制度審議会設置に対する私たちの見解
     自民党の指針では、国や大企業を相手とする裁判などの行政追随、大企業擁護、司法消極主義といった問題点や社会的弱者の権利が十分に守られていない司法の深刻な現状への問題意識が不十分であり、財界と治安に奉仕する司法改造をめざしている。司法制度審議会も、そのための司法改造計画を短期間で審議し、結論を導き出す機関とされるおそれが強いので、このような方向での審議会の設置、運営には反対する。
     (1)設置目的と審議項目について
     安い費用で迅速な裁判を受ける権利が真に保障され、公正な裁判所が正しく権利を守る裁判を行う、違憲立法審査権の行使や国際人権法の適用にも消極的にならないなど、現在の司法のあり方を大きく転換する必要がある。財界の利益と治安強化に偏した司法制度の改造をめざすものであってはならない。また、弁護士法1条や弁護士自治の見直しを目的とすることには反対する。
     審議項目としては、緊急性があり、かつ、意見の一致する論点については早急に審議を始めることはあり得ても、現在の日本の司法の深刻な現状とその原因について議論することを避けるべきではない。
     (2)審議会委員の人選と構成について
     審議会委員の人選と構成において、民主的な構成に努めるべきであり、財界などに偏った人選は避けるべきである。社会的弱者の立場を代弁したり、支援している団体、これに対する理解のある団体からの人選にも意を用いるべきである。法曹三者からも参加を求めるべきである。
     (3)審議会の民主的運営と情報公開などについて
     審議の経過については、マスコミをはじめ国民に対する情報公開が必要である。
     各界各層に意見照会をし、広く意見を受け入れるべきである。

○青年法律家協会・問われている21世紀の司法:検証自民党司法制度特別調査会報告(99.3.1)(要旨)

(以下、自民党「21世紀の司法の確かな指針」(98年6月)を「指針」、同「司法制度改革の基本的な方針」(97年11月)を「方針」と略す。)
第1 欠落した「人権の砦」の視点
  1. 「指針」では、近代立憲主義における立法・行政と独立した「人権の砦」としての司法とは何かについて、基本的認識が欠落している。
  2. 「指針」の「規制緩和」万能論への導きは一面的な見方であり、公正さを確保するためのルールを緩和しながらの「自己責任」の強調は、弱肉強食社会となりかねない。司法が権力や大企業により多発する人権侵害に対し積極的役割を果たす一方、貧弱で利用しにくいものとなっている、大企業や政治・行政に追随したものとなっているなどの問題点があるにもかかわらず、「指針」は、こうした人権状況とその中での司法の機能や問題点を分析しておらず、現状認識を誤っている。
  3. 求められる司法改革の要点は、行き過ぎた経済活動や政治権力による人権侵害の防止及び救済を迅速・適正に実現できる司法。企業や政治権力から独立して憲法の原則に忠実に事件を処理する資質と能力を持つ法曹の養成。国民が利用しやすく、常識にかなった民主的な司法である。

第2 身近で利用しやすい司法は緊急の課題
  1. 「指針」は、法曹の質の検討をしておらず、増員のみを強調している。法曹三者の統一試験・統一修習について、司法権力チェック機能への自覚を深めるための充実こそ必要であり、企業内の法務担当者のように特定の分野の実務経験者に法曹資格を付与することは反対。弁護士を中核とする中から信任を得て裁判官に任官していく方式での民主的な法曹一元制度を検討すべき。
  2. 「指針」は、「民事法律扶助」の充実・強化をうたうが、刑事事件についても必要である。「弁護士の大都市偏在解消」は、弁護士の公共的役割を正面から位置づけ財政的裏づけを含めたとりくみが必要である。「司法関係施設の整備拡充」については、簡裁の統廃合や速記官制度の廃止などの問題がある。「事務所等の複数・法人化、総合法律経済関係事務所」や「隣接資格者の法律事務への参入」については、弁護士資格についての厳格な規制が果たしている役割などを再確認しておくことが必要である。また、法制審議会の見直しは危険。初等教育をはじめ司法に関する教育を充実させる必要がある。官僚司法の反省にたち、司法の民主化の方策として陪審・参審を具体的に検討すべきである。

第3 真に国際化に対応するために
 わが国の人権状況には、世界的な基準に照らし、遅れた分野が残されている。わが国の公権力や企業活動による過去のアジア諸国への加害行為についての救済制度が未確立である。

第4 三権相互の関係
  1. 憲法が予定する三権分立の下で、司法は、立法と行政に対するチェック機能を強化することが求められており、具体的には行政事件訴訟法の改正は緊急の課題である。
  2. 法律家はその本来の役割に基づく自覚と責任を持つべきであるが、その中に弁護士自治の見通しまで含めるのであれば問題である。
  3. 法曹三者協議のあり方には問題があるが、他方国会の多数決原理で司法制度を自由に変革できることも問題である。

第5 開かれたていねいな議論を
  1. 司法制度審議会の設置には、自民党調査会の議論を追認するための機関となる危険もある。審議会を設置するとしても、改革の必要性を国民の前で十分に明らかにし、司法が少数者の人権擁護の役割を担うことをふまえ、大方の納得を得る方向で成案を得ることや、委員の人たちは各分野の合意を得たものとすること、審議の公開や審議時間の十分な確保などを前提とすべきである。
  2. 司法分野の予算措置は緊急課題。司法の人的物的基盤の整備拡充、法律扶助の抜本的拡充、被疑者国選弁護制度の実現などに結びつくものでなければならない。

○日本司法書士会連合会・身近な司法の実現に向けて(99.6)(要旨)

  1. 司法制度改革に対する認識
     司法制度改革においては、市民に身近な司法の実現が最重要課題である。しかし、法曹人口の増員が図られたとしても、弁護士の地域的偏在、弁護士による法律事務独占の弊害があり、これを解消しないかぎり、身近に容易に利用できる司法制度の改革は達成できない。

  2. 司法書士の果たしている役割
     司法書士は、全市町村3,374のうち2,187市町村に事務所を開いている。一方弁護士は、501市町村にしか存在せず、特に都市部への集中が顕著。島根県では、59市町村のうち、3市にしか存在しない。司法書士を司法制度改革の人的インフラの一員として活用することが必要である。

  3. 司法分野における司法書士の役割
    (1)弁護士による法律事務独占の弊害解消における役割
     弁護士の独占している法律事務への隣接専門職種による部分参入の必要があり、司法書士には、市民の法的生活が安定するために必要な法的サービスを提供する用意がある。
    (2)本人訴訟支援と簡易裁判所事件代理
     司法書士は、本人訴訟を支えている実績があり、市民の司法へのアクセスを容易にするため、簡易裁判所における訴訟代理権の付与が必要である。
    (3)民事執行制度を充実するための役割
     申立から配当手続に至る諸手続、買受希望者への相談・代理等について、専門法律職として司法書士が関与することで、手続が適正・迅速になる。
    (4)法律相談における役割
     司法書士が全国各地に存在し、日常生活に密着した法律事務を行っている役割を踏まえ、司法書士に法律相談等の業務を開放する必要がある。
    (5)民事法律扶助における役割
     法律扶助サービスにおける指導援助サービスの担い手、申込事務担当者、法律相談担当者として、司法書士も加えるべきである。
    (6)裁判外紛争処理における役割
     裁判外紛争解決手段として、各地に「司法書士紛争処理センター(仮称)」を設置し、需要に対応していきたい。

  4. 登記分野における司法書士の役割
    (1)不動産登記・商業法人登記における役割
    (2)不動産登記制度改革に関する日司連の提言
     申請する登記の有効性や申請意思の確認等を司法書士の職務の中核とする等
    (3)商業登記制度改革に関する日司連の提言
     純資産額等を登記事項とするほか、計算書類等関連情報を開示すべきである。

  5. 社会問題に対する司法書士の役割
    (1)成年後見における役割
     「成年後見センターリーガルサポート(仮称)」を設立する。
    (2)消費者救援活動における役割
     多重債務の法律相談や破産・調停申立書の作成等を通しての救援活動の充実
    (3)学校・社会教育における役割
    (4)アジア諸国等の法制度整備に対する支援

  6. 司法書士・司法書士会の今後の課題
    (1)品位保持への対応
     「日司連綱紀事件防止規則」、「司法書士執務規範基準」の制定
    (2)義務付けた研修の実施
     2か月の新入会員研修と単位制による会員研修制度の実施
    (3)司法書士事務所の法人化・複数化への対応
    (4)総合的法律・経済関係事務所への対応

○経済同友会・志ある人々の集う国(99・6)(抜粋)

司法インフラを拡充し、手続きの迅速化を図る