司法制度改革審議会

司法制度改革審議会 第33回会議 議事概要



1 日 時 平成12年10月6日(金)13:30~17:35

2 場 所 司法制度改革審議会審議室

3 出席者

○ 委 員(敬称略)

佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、井上正仁、北村敬子、髙木剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本勝、吉岡初子

○ 文部省「法科大学院(仮称)構想に関する検討会議」委員

小島武司座長、伊藤 眞、田中成明(敬称略)

○ 事務局

樋渡利秋事務局長

4 議 題

○ 「法曹養成制度の在り方」について

○ 「弁護士の在り方」について

○ その他

5 会議経過

① 「法曹養成制度の在り方」について、文部省「法科大学院(仮称)構想に関する検討会議」の小島武司座長から、「法科大学院(仮称)構想に関する検討のまとめ」(別紙1)及び「法科大学院の構想とその意義」(座長見解)(別紙2)に基づき報告がなされた。

② 同検討会議の検討結果に関し、質疑応答及び意見交換が行われた。主な内容は以下のとおり。

○ 法科大学院という名称は引き続き仮称のままか。
(回答:より適切な名称があれば審議会で御議論いただければと思うが、社会的にも受け入れられるものであることが必要。検討会議としては依頼時の「法科大学院(仮称)」のままで報告した。)

○ 修了者の学位は日本でも米国のようにJ.D.とするのか。博士の学位との関係はどう考えるべきか。
(回答:国際的通用性が重要。北米と欧州でも受け取り方が違う。3年制を念頭に置けば、例えばJ.D.が考えられるが、LL.M.も含めて考え方はいろいろあり得る。修了者に幅広い活躍の場を与えるための配慮が必要だ。)

○ 医学部のM.D.とパラレルに考えれば、J.D.相当の専門職学位とPh.D.(博士の学位)との区別は明確にできるのではないか。

○ 6頁(カ)の司法(実務)修習との関係について、比較的多数の意見は、法科大学院は法理論教育が中心で、現行の前期修習を取り込むことは将来的にはともかく当面は難しいとのことだったと理解してよいのか。
(回答:17頁の司法(実務)修習との関係については多数意見と少数意見に色分けしているが、6頁の教育内容のところは必ずしも少数意見を記載しているのではなく、意見の激しい対立があったわけではない。創設時から前期修習全てを取り込むのは難しいが、導入的な講義の部分を法科大学院で実施することは考えられるのではないか。)

○ 実務家教員の参加が重要とする一方で司法(実務)修習との関係を慎重に考えるのは、現行の司法修習がほぼそのままの形で続くという前提か。
(回答:実務家教員の役割は、法科大学院での法理論教育を主軸とする教育においても重要だ。司法修習も固定的なものと考えているわけではない。)
(回答:事実や紛争そのものに着目して理論を学ぶのが法科大学院で、基幹科目等でそこが十分身に付けば、具体的な起案等は別途訓練を受ければよい。法科大学院では、実務について批判的建設的な提言のできる法律家を育てたい。)

○ 法理論教育の中身が問題だ。従来の大学での抽象的理論とは違うものにならなければならない。その意味でも実務家教員の役割は重要ではないか。

○ 法科大学院が単に法学部と司法研修所の間をつなぐだけのものになってはいけない。第三者評価の項目として14頁に「実務家教員の数ないし比率」とあるが、その割合が低く設定されるようでは、法科大学院の在るべき性格として不十分だ。

○ 専門大学院では実務家は最低でも何割、という決め方をしている。法科大学院でも最低限の率の定めは不可欠だという趣旨であって、上限を抑えるとの趣旨ではないのではないか。さらに、将来的に法科大学院が定着してくれば、法科大学院の修了者が教員となり、実務家と非実務家の区別自体も意味を失ってくるのではないか。

○ 実務家の養成に不可欠な要件事実論と事実認定論について、一般法則的なことは法科大学院で教育し、一般法則の個別的な適用は修習でやるべきだとの意見もあるが、検討会議の報告の趣旨もこれに近いのか。
(回答:実践的なことも含めて何から何まで法科大学院で教育するというのは少なくとも発足時には無理があるが、将来的には実力次第である程度担い得るのではないか。)
(回答:現在の司法研修所のカリキュラムで必ずしも十分に網羅されていない事項で法科大学院で担うべきもの、例えば消費者法や特許法をしっかり教育することも大切だ。法科大学院は、単なる資格取得にとどまらない、より視野の広い教育を目指すものであり、必ずしも司法(実務)修習との振り分けだけが問題ではないのではないか。)

○ 前期修習をどこまで法科大学院で置き換えることができるかは、法科大学院が新しい充実した教育をどこまで実践できるか、時間をかけて見ざるを得ないが、変わることは可能だと思う。司法修習が全く変わらないとの前提での議論になってはいけないと思う。

○ 17頁の「おわりに」で四つの項目について今後の検討に委ねられているが、具体的な検討の場のイメージはどのようなものか。
(回答:4項目はいずれも基準策定に関係するものなので、審議会で法科大学院に関する大枠を早期に示してもらい、しかるべき場で検討すべき。具体的な場の設定は審議会で決めていただくべきこと。特に、第三者評価の基準をどのような場で策定するかは重要だ。)

○ 審議会からの検討依頼に対する回答としては本日が最終報告で、法科大学院について審議会が方向性を打ち出したとしても、実施に向けての詳細の検討は更に必要だとの趣旨に理解すべき。

○ 審議会としては年間3,000人の新規法曹の確保をできるだけ早期に目指す、と打ち出しているので、この4項目についても早急に結論を得ることが必要だ。

○ 大学側の準備も必要なので、詳細が詰まれば早期に公表する必要もある。

○ 是正勧告や認定の取消まで行うとなると、かなり強力な第三者評価になると考えられるが、第三者評価を実施する場、機関について、どのような検討がなされたのか。
(回答:13頁で、米国のABA等が参考になるが、我が国のそのような組織をどう作るかが課題だ。法曹三者や大学だけではいけない。適切な組織を作って充実した第三者評価を行う必要がある。どのような「機構」を作るべきかは、司法改革全体の根幹にも関わるので、審議会で決めていただく必要があるのではないか。)

○ 設置認可と第三者評価との関係をどのように考えているのか。
(回答:大学としての最低水準を確保するための設置認可と、法科大学院としての水準の維持向上を図るための第三者評価とは、それぞれの果たすべき機能があるので、役割分担を前提としつつ、どう連動を図るかが重要。第三者評価を実施する機構が主導的役割を果たせるような運用が望ましい。)

○ 11頁の「教員の流動性」とは、具体的には任期制という意味か。
(回答:任期制もその一つだが、それに限らず、学部からの担当教授のローテーション制や、法科大学院の間での教員の流動性も考えられるのではないか。)

○ 研究と教育のバランスについて、法科大学院は法曹養成のためのものなので、教えることが主眼であるべきだ。従来の大学が研究にばかり力を入れてきたことへの反省もあるべきで、その意味で教育重視という検討会議報告の姿勢は評価できる。
(回答:法科大学院が軌道に乗れば、教育と研究は自ずと一体になるのではないか。そのこと自体が法律学の発展に大きく貢献するものと期待される。)

○ 8頁の「厳格な成績評価及び修了認定」について、全国統一でこのような仕組みを設けるとの趣旨か、各法科大学院の判断に任せるとの趣旨か。
(回答:第三者評価の基準の中にそのような規定を設けて、各法科大学院での実施状況をチェックするのが適切ではないか。)

○ 16頁の法曹資格取得の例外措置について、「社会的に納得できる理由」とは具体的にどのような事情を想定しているか。
(回答:個人的事情でない、例えば年齢といったような社会的グループの属性を持つ人々には、法科大学院で3年間勉強しなさいと要求することが合理的でない場合もあり得る。そのような人々について例外を設けることも「検討に値」する。ただし、一部の人に特急券を発行するようなことになってはいけない。)

○ 例外措置とは、特別の検定試験的なものにより司法試験の受験資格を認めることを想定しているのか、法曹資格を直接付与することまで想定しているのか。
(回答:必ずしも一つの方法に限定はしていない。①そのまま新司法試験の受験資格を認める②検定試験的なものを経て新司法試験の受験資格を認める③新司法試験とは別個に法曹資格を付与する等の中でどれを選択するかは詰め切れなかった。何らかの措置を考えることもあり得るとの趣旨だ。)
(回答:高齢者であっても法科大学院で受け入れることに特に支障はないので、法科大学院でしっかり学んだ上で法曹資格を得るというのが理想的な姿だ。)

○ 例えば両親を扶養しながら家計を支えている人については、奨学制度を充実させても限界がある。やはり何らかの例外措置は必要ではないか。
(回答:どのような制度の下でも困難な事例は生じ得る。法科大学院制度がそのような人の受入れに運用で対応できるのか、それともやはり無理があるのかは十分に見極めることが必要。)

○ 入学者選抜の具体的イメージはどのようなものか。
(回答:入学者選抜に当たっては、入学試験だけでなく社会活動実績等も十分に考慮すべき。適性試験も1点きざみで結果が判定できる性格のものではない。各種の判定資料をどういう配点で考慮するかは、各法科大学院の工夫が必要だ。)

○ 法曹資格の取得に従来型の途を残すことは、取得に要する年限が一部の者にとって短くなる可能性もあり、疑問がある。法科大学院創設の意味を減殺するようであってはいけない。

○ 日本の教育の問題は、幼稚園の段階から既に塾通いが始まっていることに象徴される。法科大学院での教育は、日本の大学教育だけでなく教育全体を変えることができるかの試金石の役割を担っているのと言えるのではないか。

○ 新司法試験の内容が非常に重要で、資格試験としての性格に徹すべきだ。そうすれば、法科大学院での教育も自ずと望ましい形になるのではないか。ただし、4年制の学部を卒業して更に3年間法科大学院で学ぶというのは大きな負担を伴うことであり、合理的な範囲での例外措置は必要だ。また、法科大学院で学び易い環境を整えるため、保育施設を設ける等のきめ細やかな配慮も必要なのではないか。

○ 経済界の立場で言えば、外国の弁護士と伍していける弁護士の養成が急務だと思う。
(回答:国際関係科目を重視するなど、法科大学院での教育で留意する必要がある。)

○ 15頁で「認定された法科大学院を修了することを新司法試験の受験資格とすることが望ましい。」とあるが、認定を後から取り消されると、学生の努力とは関わりのない事由で新司法試験の受験資格が得られない事態が生じ得ることとなり、行き過ぎではないか。
(回答:設置認可時には水準をクリアしていても、後で空洞化してしまっては法曹養成の機能を果たせない。法科大学院の水準の維持向上の観点からこのような制度は必要と考える。その場合も、学生のための善後策は別途講じられる必要がある。)

○ 受験のための予備校との関係をどう考えるか。
(回答:予備校自体が必ずしも悪いわけではないし、大学と予備校は対立的なものと考える必要はないのではないか。米国でも受験のための短期の予備校はあると聞く。)

③ 「弁護士の在り方」について、審議の取りまとめ(案)(審議を踏まえ、確定したものを別紙3として添付)に関し意見交換が行われた。主な内容は以下のとおり。

○ 8頁の2⑥について、綱紀・懲戒処分について司法審査を行うためには弁護士法改正が必要で、関係する主体は弁護士会だけではない。綱紀・懲戒手続への国民参加も重要だ。
 また、2の表題の「弁護士自治と倫理の強化」は、弁護士や弁護士会以外の者は関与すべきでないかのように受け取られかねないのではないか。

○ 弁護士会以外の者の関与の具体的在り方をどう考えるかは、中間報告後に更に審議すべきことで、中間報告では大方の合意が得られた事項について記述するのだから、原案のとおりでよいのではないか。

○ 懲戒処分の請求者にも不服申立てを認める等、綱紀・懲戒手続の双方向性の確保については相当議論がなされたので、書き込むべきではないか。

○ 懲戒は行政処分であり、不服申立ては処分を受けた者が行うのが大原則だ。この問題は行政訴訟全体の在り方とも関連するので、今後議論すべきことだ。

○ 4頁で隣接法律専門職種との関係を短期的な問題と中・長期的な問題とに分けて記述しているが、短期的な問題は時限立法で対応するとの消極的意味に受け取られるおそれはないか。

○ そのような意味で記述が分かれているのではない。

○ 「弁護士の在り方」については、ユーザーの利便性を第一に考える必要がある。3,000人体制ができた後の隣接法律専門職種との権限関係については、競争で自然に解決されるべきと考えるが、他方で弁護士の公益性が強調され過ぎると、こうした競争が却って損なわれることにならないか。

○ 「信頼しうる正義の担い手」と「頼もしい権利の護り手」という二つは一致するものでなければならず、弁護士には闘う姿勢が強く求められる。

○ 8頁の2の表題は、「弁護士倫理の強化と弁護士自治」と修正してはどうか。
 意見交換の結果、8頁の2の表題「弁護士自治と倫理の強化」を「弁護士倫理の強化と弁護士自治」と修正するほかは、原案のとおり了承とされた。

④ 中間報告の項目案について意見交換が行われた。主な内容は以下のとおり。

○ 国民生活に関係の深い基本的法典(民商法等)については現代かなづかいに改めるよう、必要な体制整備をすべきであるというようなことを盛り込んではどうか。

○ 「分かりやすい司法」という視点を項目の中に入れるべきではないか。

○ 検察官の在り方についても項目を立てるべきではないか。

○ 取りまとめに入らなかった少数意見も中間報告に記述すべきではないか。

○ 中間報告全体の分量が増え過ぎないよう、できるだけ集約して記述する必要がある。

○ 民事法律扶助についても記述する必要がある。

○ 司法に関する予算措置の充実も記述すべきではないか。

○ 労働事件についても項目を立てるべきではないか。
 意見交換の結果、次回の審議会で項目を確定することとされた。

⑤ 次回の審議会は、10月16日(月)午前9時30分から開催し、「法曹養成制度の在り方」についての意見交換、中間報告の項目の確定等を行うこととされた。

以上
(文責 司法制度改革審議会事務局)

~速報のため、事後修正の可能性あり~