司法制度改革審議会

司法制度改革審議会 第34回議事概要



1. 日時 平成12年10月16日(月) 9:30~12:05

2. 場所 司法制度改革審議会審議室

3. 出席者

(委員・50音順,敬称略)
石井宏治,井上正仁,北村敬子,佐藤幸治,曽野綾子,竹下守夫,髙木 剛,鳥居泰彦,中坊公平,藤田耕三,水原敏博,山本 勝,吉岡初子

(事務局)
樋渡利秋事務局長

4. 議題
① 曽野委員からのレポート
② 法曹養成制度に関する意見交換
③ 中間報告の項目整理及び発表について
④ 次回審議会の予定

5. 会議経過

① 曽野委員から,「裁判は言葉によってなされるということ」というテーマで,作家という立場から,言語表現や事実の捉え方の難しさにつき具体例をあげて言及しながら,陪審制度の問題や法曹養成において留意すべき点等に関するレポートが行われた(別紙1のレジュメを参照)。

② 前回会議に引き続き,委員間で,法科大学院構想を中心とした法曹養成制度に関する意見交換が行われたところ,その概要は以下のとおり。

【修業年限】

○ 法科大学院の修業年限について,3年制をベースとして2年制も並存させるという場合,前者が法学部以外の出身者,後者が法学部出身者となり,しかもそれが自大学法学部出身者で殆ど占められる結果となるとの懸念がある。3年制で統一するのがよいのではないか。法学部出身者は法律分野以外の学習は十分ではないわけで,法科大学院に非法律分野の者を幅広く受け入れバックグラウンドの多様化を図るということであれば,一律に3年制として,カリキュラムの違いで対応するのが妥当ではないか。

○ むしろ,法学部以外の出身者を1年で法学部出身で基礎的な法学教育を受けてきた者と同じスタートラインに立たせることができるかという点に関する不安の方が強い。修業年限のいかんにかかわらず,自大学出身者を優遇することは入試の公平性・客観性に反することになり,第三者評価機関のチェックの対象とされることになろう。法科大学院の基本は,あくまで法律家,プロフェッショナルを養成することにあり,基礎的な法学教育を受けている者(法学部出身者に限らない。)も含めて一律に3年制とするのはいかがなものか。個々の大学の判断によって3年制で統一するということはあり得るであろうが。バックグランドの多様化を図るということは,非法学部出身者を法科大学院に受け入れて学習する過程で互いに視野を広げることが可能となるということではなかろうか。

○ 法学部出身者とそれ以外の者とを差別しないこと,自大学出身者に飛び級も含め特別ルートを設けないことが重要である。

○ 法科大学院を現行の専門大学院の応用として考えるなら,3年制を原則としながら各大学の判断に応じて2年制を設けることを許容するということが相当ではないか。

○ 法学部を存置することが前提とすれば,法律家になろうとする者は法学部進学を選ぶことになるだろう。これに加えて,法学部以外の者が法律家になりたいという場合にそれらの者も広く受け入れるという意味で,3年制,2年制を並存させるということは合理的ではないか。また,開放性・公平性の見地から,他大学出身者等を一定割合以上入学させるという歯止めの措置を設け,それが守られているかどうかを第三者評価の対象としていくことが適当ではないか。

○ 法律家になろうとする者が,例えば,法学部に進学して2年制の法科大学院へ進むことと,非法学部に進学して3年制の法科大学院へ進むことの,どちらが容易であるかというような判断で進路選択をするようなことがあってはならない。重要なのは自ら何を学びたいかを考えてみることである。

【新司法試験との関係】

○ 法科大学院の修了を新たな司法試験の受験資格とすること自体は理解できるが,恵まれない家庭の子弟が法律家になる道を閉ざさないようにしなければらならない。その点で,夜間制,通信制,奨学金制度の整備等も必要であるが,それだけでは十分ではない。むろん,法科大学院修了を原則とすることを逆転するようなものであってはならないことは承知しているが。

○ 法科大学院を法曹養成制度の中核的制度としてつくる以上,法科大学院を経ない者が法律家になれるというバイパスを重視することは相当ではない。

○ 法科大学院が自由に設立され,法科大学院修了者のうち相当程度が新司法試験に合格するということとなれば,法曹人口が野放図に増えることとならないか。なんらの歯止めもなくなるのか。

○ 教員の質と量の確保の問題があり極端に多くの法科大学院が設置されることにはならないのではないか。

【司法(実務)修習との関係】

○ 司法(実務)修習を残すことを前提とする以上,法科大学院における教育内容との役割分担を考える必要がある。

○ 司法(実務)修習の中核は実務修習であり,そこは司法研修所が役割を果たすべき部分である。

○ 双方の役割分担の在り方については,今後,法科大学院における教育内容が充実・発展することに伴い変化してくるものと考えられるが,スタート時点の問題としては別途に考えておく必要がある。

○ 実務修習について,法科大学院との関係で,何が乗り越えなければならない問題なのか,乗り越えられる問題なのかなどについて吟味しておく必要がある。

○ 法曹人口を増加させていくことは必要であるが,実務修習の現状をよく見て,対応できるものかどうかを見極めておく必要もある。

○ 学部教育4年,法科大学院3年又は2年ということを前提として,司法(実務)修習との間で分担できるものは分担することが重要で,法科大学院における教育内容との関係で,修習の在り方を見直していく必要がある。

○ 次回の審議では,特に実務修習の実情について関係機関に説明を求めることとしてはどうか。

【その他】

○ 法科大学院を実際にスタートさせるには,設置基準の原案を大学設置審議会の特別部会のような組織において作り大学審議会にかけるなどの所要の手順を踏む必要がある。例えば,平成15年4月の開校を目指すとすれば,それを可能とするようなスケジュールが必要となる。当審議会で法科大学院構想の実現ということを早期に確定させるべきではないか。

○ 全体の方向性としては法科大学院の実現ということでコンセンサスはできているように思われるが,それを当審議会で確定するためには,新司法試験や司法(実務)修習との関係など残された論点について議論をすることが先決ではないか。

③ 中間報告項目整理案について意見交換がなされ,所要の修正の上,別紙2のとおり,確定され,また,その発表とともに別紙3のとおりの会長談話を行うことが了承された。
 なお,項目の中で,「弁護士倫理の強化と弁護士自治」(3.-(2)-イ-(ウ))に関して,現行の弁護士自治をそのまま前提とするのではなく,その内容の見直しも当然議論の対象とされるべきという意見や,検察官制度について,中間報告において項を立ててはいないが,中間報告後の議論も踏まえて最終的には項目立てをする可能性も視野に入れていくべきといった意見があり,それらについて特段の異論はなかった。

④ 次回の第35回審議会(平成12年10月24日)では,引き続き法曹養成制度に関する意見交換及び取りまとめに向けた議論を行うとともに,国民の司法参加に関する審議結果の取りまとめ案を諮ることとされた。

以上
(文責 司法制度改革審議会事務局)

-速報のため,事後修正の可能性あり-