場 所:司法制度改革審議会審議室
(事務局)
樋渡利秋事務局長
議事次第
【佐藤会長】定刻がまいりましたので、ただいまから第35回会議を開会いたします。本日も前回に引き続きまして、「法曹養成制度の在り方」について意見交換を行いたいと考えております。そして、最後に、できましたら、取りまとめを行いたいと考えております。 次に「国民の司法参加」に関する取りまとめペーパーにつきまして、皆様の御了解をいただければと思い、この点についても御審議いただきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
それでは、早速「法曹養成制度の在り方」について、前回に引き続いて意見交換を行いたいと思います。前回の御議論では、文部省の検討会議による「法科大学院(仮称)構想に関する検討のまとめ」についての意見交換が中心でしたけれども、法曹養成制度の在り方全体を考えるため、また、法科大学院構想の採否を当審議会として決定する上でも、本日は司法試験、それから司法修習についても十分御議論いただきたいと考えております。
時間の配分と言いますか、腹づもりなんですけれども、次のように考えております。2時半くらいまでは法科大学院の制度構想について、それから、2時半から司法試験について、30分くらい御議論いただきたい。3時に休憩いたしまして、3時10分から司法修習その他について御議論いただきたい。一応の腹づもりとして、そんなことを考えております。
では、まず法科大学院について、何点か確認しておくべき点があると思いますので、順に意見を開陳していただければと思いますが、入学者選抜の辺りからということになりますでしょうか。一応大学院の中身について御議論いただきましたら、全体でこういうことだったのではないかというふうにまとめさせていただきたいと思っておりますが、このまとめの8ページの入学者選抜の辺りから議論を始めたいと思いますが、いかがでしょうか。
【髙木委員】お手元にお配りいただいていると思うんですが、今までの論議等をお聴きした上での印象も含めまして意見書を出させていただいておりますので、御参照いただきたいと思います。
ペーパーを出させていただきましたのでそう多くを申し上げませんが、入学者選抜に関して、大学ごとにそれぞれのお考えでという面と、この法科大学院そのものをもう少し普遍的なものだととらえるとらえ方と両論あるんだろうと思いますが、出口のところに絡んで新しい司法試験等は統一して行われるということを考えましたら、入口のところもLSATがいいのかどうか分かりませんが、統一して行うべきという面もあるのではないかなと考えます。
年限が2年、3年で法学既修者2年論という御意見もあるわけですが、一方で、他大学とか他学部出身者等も幅広く受け入れていくんだということを考えれば、2年ではなく3年論、やはり3年が大原則だと思うのです。だから、2年が最初からありきというのはいかがかなと思います。結果的に2年、3年の併存ということでやりましたら、これはやってみなければ分からない面もあるかもしれませんが、他大学とか他学部出身者、社会人等というのは、比率としては非常に小さなものになる。具体的に言えば法科大学院に行く者は初めから法学部へ行けということに結果的になってしまうのではないかなというふうに私には思われてなりませんので、私のペーパーの2ページの上の方のCに「相当程度の割合以上で入学する措置を講じなければならない」という意見を書かせていただきましたけれども、これも率直に言って、2年コースが圧倒的に多くなるという意味では、Cというのは、言うだけということになるんじゃないかなと、そんなふうに思えてなりません。3年大原則は、多分有名無実化するのではないかと思います。
とりあえず以上です。
【佐藤会長】有り難うございました。ただいまの点なども含めまして、御意見がありましたら、どなたからでもどうぞ。
【水原委員】選抜試験も大学ごとか、あるいは入口を統一すべきかという問題ですけれども、これは今、髙木委員がおっしゃったお考えも1つの考え方ではありましょうけれども、このまとめの8ページにありますように、入学者選抜に当たっては多様性を確保することも考えなければいけない。各大学の独自性というものもあるとするならば、これは必ずしも統一にするのはいかがなものだろうかなという感じを持っております。
それから、2年、3年の問題ですけれども、これは出願者すべてに適性試験というものを行うことになろうと思います。その適性試験は、まず3年で修了するという大学院生になる適性があるかどうかのテストでございますが、そのほかに考え方としては、法学部のみならず、ほかの学部履修者であったって、法学の基礎知識がどのくらいあるのかという別途の試験をやるのも1つの方法ではなかろうか。それをやった上で、それに合格した者は法学部出身の者でなくても2年で履修できるという仕組みを考えてはどうだろうかなという感じを私は持っております。
【吉岡委員】確かに法曹を養成するんですから、法律の基礎知識がなければいけないというのは分かりますけれども、今回の法曹人口を増やすという考え方には、同時に、できるだけ幅広いいろいろな分野の人材を入れていこうという考え方がもともとあったはずです。
そういうことから考えますと、検討委員会の9ページの上の方に判断力、思考力、分析力、表現力などを試すことを目的とするというようにまとめてございますけれども、基本的にはそちらのほうが大切で、法律の基礎知識とかは、基本的な資質のある人であれば十分に理解し、消化していくことができるんじゃないかと思います。
そういう意味での入学時の選抜というのは、むしろ資質にウェートを置いた試験を考えたほうがいいのではないかと思います。
【水原委員】私が申し上げたのは、法律知識に重点を置くのではなく、資質に重点を置くことは最前提であることは言うまでもございません。なおかつ法律を勉強してきた者についての法律基礎知識の判定試験というものをやって年限を決めたらどうだろうかなということを考えているのです。
【井上委員】髙木さんの御意見、よく分かるのですが、議論の前提として、検討会議の報告では、入学者選抜というのは、ペーパーテストだけで判定するのではない。色んな要素を総合して判断するんだということがまず前提になっております。その中で、客観性、公平性を保つためにペーパーテストもやらないといけない。そのペーパーテストとして、どういう方法がいいんだろうかという話だろうと思うのです。
したがって、ペーパーテストをやれば全国的に客観性、統一性が完全に保たれるということには必ずしもならないのですけれども、最低限の担保としてそういうものをやるということです。
そして、その方法については、水原委員がおっしゃったように、2通りの考え方があって、一つは、適性テストは共通してやるが、その上で、法律の素養があるかどうかを確かめて、その人たちには短縮を認める。これは、報告書の9ページ、下のほうにある②の考え方なんですが、問題は、その適性テストなるものが本当にそこに言うような内容のものとして、最初からできるのかということで、検討会議でも、その点にためらいがあったといいますか、実際にやってみて、試行錯誤を経ながら作り上げていかなければならないだろうという思いがあった。他方、法律を勉強してきた人は、法学の学力ということで法律家としての適性も計れるはずだと考えれば、別々でもよいという考え方になるわけです。そこまでは解説なんですけれども、私自身は、開放性、公平性、多様性ということを強調する以上は、ベースは同じテストにすべきだろうと考えています。
私は、この前の議論からもお分かりのように、法学を学んでこなかった人も法曹として立派に育てるというのが法科大学院の理念ですから、システムとしては、それに相応しい形で教育体系を組むべきだと思いますが、他方、基礎的な法律学の学識のある人にも、その基礎のところをもう一度やれというのは現実的ではありませんので、そこのところは短縮を認めるべきだろう。ただ、基礎ができているかどうかは、法学部を修了したかどうかということではなくて、個々の志願者にそのような力があるかどうかということで判断すべきでしょう。そこのところは、入学試験の部分には書いていないんですけれども、標準就業年限のところの3ページの下から6行目に、「法学部を卒業しているか否かにかかわらず、上記の学識を有すると法科大学院が認める者」と書かれています。そういうことからすると、入学試験の方法としては、先ほど申し上げたような②のやり方がいいのではないかと考えるのです。その問題と全国統一でないといけないかどうかという問題は、ちょっと違うと思うのです。全国統一ということを余り強調し、しかもそこに過度の比重が置かれますと、現在、大学入試で非常に弊害が指摘されている偏差値による輪切りとか、大学のランク付けとか、そういうことになりがちなものですから、そういうことは避けなければならない。その点は、総合判定ということである程度避けられるような仕組みが提案されているのです。それに何か国が全部一括してやるという発想は、この際やめたほうがいいのではないでしょうか。
そうは申しましても、個別の大学がそれぞれ独自に試験問題を作成し、大学入試に加えてこういうかなり高度のテストを開発して実施していくというのは、実際上は非常に難しい。そういうことからしますと、私は、やや楽観的かもしれませんけれども、この報告書に書かれていますように、立ち上がった法科大学院、あるいは準備している法科大学院の関係者が寄り集って、一緒に問題を作っていこうと、そういうことにおのずとなるんじゃないかと思っています。
そうなりますと、国として統一と言わなくても、そういう意味の統一というのはできてくるんじゃないかと考えるのです。
もう一点、髙木さんは、非法学部出身者の枠の設定など有名無実だと言われるのですが、そこのところははっきり基準を示して、それを守っているかどうかは、第三者評価でチェックをしていくということをすれば、有名無実化はしないんじゃないかと思います。
【吉岡委員】相当程度の割合でというのは非常に漠としていますから、それが2割であるか3割であるか5割であるかで、かなり見方が違ってくると思います。ですから、これは自ずと決まるのかとも思いますが、もう少し合意を得たほうがいいのではないかと思います。今日は、ここで議論するということではありませんけれど。
【井上委員】数字を示すのは難しいのですけれども、個人的な感想というか意見を言えば、現在、司法試験の受験者の中で非法学部出身者が約2割、合格者の中で大体1割と言われているのですけれども、それよりは引き上げて入りやすくするということは必要だと思います。他方、余りその割合を大きくしますと、今度は、法律を勉強している人に対して逆差別になるわけですから、具体的な数字は、そういった両方の要素を考えながら、決めないといけないと思うんです。
しかも、それを固定的なものとして考えるのじゃなくて、受験者の応募状況とか、適性テストの成績の結果とか、その後の成績とか、そういう全体的な状況を見ながら随時改めていくような仕組みにしておくということが、一番現実的でかつ適切かなと、私は思うのです。
【吉岡委員】多様な層から法曹に入ってくるという考え方から言うと、これは個人的な感触ですけれども、半分、50%くらいと考えたいところです。
ただ、修業年限との関係を考えますと、法曹になるためにわざわざ理学部へ行ってハンディキャップを持って入るという選択を学生がするかどうかということを考えてしまいます。そうすると、結果として法学に偏ってしまうことになってこないだろうか。そうなることが、今回の多様なところから、幅広い法曹をという目的と齟齬が生じてこないか。その辺のところを考えておかないといけないのではないかと考えます。
【佐藤会長】いろいろ御意見が出ましたけれども、ある意味で共通しているような感じを持ちました。髙木委員が最初に普遍性ということも考えるべきだとおっしゃった点も、先ほど適性テストのところでその辺をカバーし得る余地があるのではないかというようにも思われるんです。ただ、現実論として、いつ統一的なものにするかが難しい。がちっとしたものを今考えてしまいますと、スタートさせるのになかなか難しいこともあるのではないか。スタートするときに、そういう方向を目指すことを明確にし、いろいろと工夫を重ねる、そういうように考えていくのが現実的なのかなという思いもしますけれども、髙木委員は今のような趣旨でいかがでしょうか。
【髙木委員】実態的に違うか違わないかは、中身にもよるんだろうと思いますけれども、実態問題として考えたときに、恐らく他大学の法学部出身者、それから他学部出身者というのはどのくらい来ると皆さんお考えなのか。定員が何人になるか知りませんが、1学年仮に100 人としたときに、3年を費す人の比率はかなり低いんじゃないかと思います。それが低くていいのか悪いのか、色んなことを学んできた人をウェルカムだという、ウェルカムなのはいいけれども、ウェルカムだといった実態にならないのではないでしょうか。そんならはっきりと、法曹になりたい人は初めから法学部へ行かなければだめですよというべきではないか、ということに結果的にはなるんだろうと思うんです。
【井上委員】私は少し違う見方をしていまして、現在、司法試験を受けている人の数よりは増えるのではないかという感じがするのです。今は法律を自分で勉強し、あの難関を突破しないといけないわけですが、それに比べれば、きちっとした教育機関に入って、3年間なら3年間勉強すれば、どの程度の確率になるか分かりませんけれど、今のような3%とか、そういうことじゃなくなるわけですから。高校生のころから法律家になりたいという人は、おそらく法学部に来るかもしれませんけれども、一旦別の方向にスタートし、違う学部に入ったり、あるいは社会人になって、その後で、法律家になってみようかと考え出す人は結構いるんじゃないか。そういう人が目指してくるんじゃないかと、私は思っているのです。
その意味で、ある程度、今よりは少し高い数字で枠というのを設けておかないといけないのではないかと考えるわけです。
もっとも、非常に割り切って考えれば、全員に等しく適性テストをやるとすれば、その結果によってある程度大枠を決めればいいじゃないかという考え方もできるのですけれども、最初は、目標として枠を設けて、それ以上は採ってくださいという形で、一種のアファーマティブ・アクションになるかもしれないんですけれども、そういう形で多様性というものをつくり出していかないと、できないんじゃないかと思うのです。
【佐藤会長】私なども経済学部の学生とか文学部の学生などに、まま相談を受けることがあります。今の司法試験の下では、なかなかそれは大変ですよと言うんですけれども、新しいロースクールという仕組みができて、他学部の学生を受け入れる前提で、教科課程などを組むとなれば、私も井上委員が今おっしゃったことと似たような感じを持ちます。経済学部とか文学部とかには結構いますし、理学部などにもいないわけではありません。
【竹下会長代理】御意見を伺っておりまして、確かに髙木委員のペーパーの2ページ目のAに書いてあるように、法学既修者に対する年限短縮を原則として認めないとおっしゃられてしまうと、少し違うかと思うのですけれども、そうでなければ、ねらいとしているところは、それほど意見の対立がないように思うのです。井上委員が言っておられるのも、適性試験は統一試験として、最小限の判断力、思考力、分析力というもののテストはやる。ただ、法学を学部で勉強して基礎知識を身に付けているという者には、同じことをやらせるというのは、いかにも現実的でないから、そういう者には短縮を認める。恐らく吉岡委員も、そのこと自体には御異論がない。今の短縮型で修了できる者がどのくらいの比率になるかということは、制度をスタートさせてみないとなかなか決められないことだと思うのです。
【吉岡委員】現実的ではあると思います。
【竹下会長代理】確かに今までのとおりであれば、他学部の出身者が法律家になろうというのは非常に難しいことですから、余り数が出てこないということになりますけれども、今度法科大学院のようなシステムを採るということになれば、希望者はかなり増えてくるだろうと思います。それでも、やはり法律家になりたいという人は、学部の段階から法学部へ来るのが自然であって、他の学部を出た人が法律家になろうというのは、もともと少数の割合しかいないのだというのであれば、これはやむを得ないと思うのです。
問題は、短縮型を認めるときの試験の中身をどうするか。どの程度の基礎知識を試すのか、また、どの程度のレベルにまで達していれば短縮型と認めるのかという点ですが、これはスタートしてから試行錯誤を繰り返して、第三者評価機関の評価などの対象にして、だんだん理想的なものにつくり上げていくというほか仕方がないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
【吉岡委員】おっしゃることはそうだろうなという気もするんですが、先ほども言いましたけれども、多様な人材を法曹に入れてくるという考え方、そこに焦点を置いた場合には、法学偏重ではいけないんじゃないか。その場合に、確かに4年間、法学部を出てきた人は法律の知識があるのは当たり前なんです。ですけれども、他学部の卒業生はほかの知識を持っているわけです。
私は4年、3年、1年半、それだけ年限を重ねること自体がいかがなものかという気もするんですが、やはり知識を広げるという意味では、法学部出身者の方は違う学部の勉強をしていただいたほうがいいんじゃないかなと思います。
ただ、それが現実的であるかどうかというのはもう一つ考えなければいけないと思います。
【井上委員】まず第一に、法学部の出身者は法律だけでがちがちになってしまっているという見方を前提にした議論はちょっといかがなものでしょうか。確かに、現在、司法試験を受けてくる学生の多くは、受験勉強にすべての生活をかけているため、他の色んな勉強をするとか、色んな経験をするということができなくなっています。そのような人達に、そういった勉強なり経験をする余裕を与えられるわけですし、もう一つは、入学者選抜の総合判定の際に、学業成績に加えて、学業以外の活動とか、あるいは副専攻で何を取ったかとか、そういうことを考慮することにすれば、学部の教育自体も変わらざるを得なくなるだろう。是非そういう方向に持っていくべきだと思うのです。
他方で、これは法学部に限った話ではないのですけれども、大学の学部は、これからどんどんカレッジ化していくだろうと思うのです。そういう意味で、おのずと今までと違うような法学教育になっていかざるを得ないし、なっていくだろう。そういうことを考えますと、前提が違ってくるのじゃないかなと、希望的観測かもしれませんけれども、そういうふうに思います。
【北村委員】結局は法曹人になって、それが魅力のある仕事になるのかどうなのかによって違ってくると思うんです。私などは隣接の商学部ですので、商学部の学生が、公認会計士になろうか、法曹人になろうか。法曹人が魅力があればみんなそちらのほうに動いていくと思います。そこで人の取り合いがこれから始まるのかなと。
そういう意味においては、この3年、2年という考え方で十分いけるのではないかと思っているんです。
現に私も今、公認会計士ちょっと無理だったら法曹人のほうへ進んだらどうとか、そういうような形で法科大学院ができたら行けばとかすすめていますけれども。
【井上委員】それは、ちょっとひどい話ですね。
【佐藤会長】吉岡委員の場合も、それから髙木委員もそうではないかと思うのですが、割合と言っても、例えば5割というのはやや現実的ではないんじゃないかと、そういうお気持ちはお持ちじゃないでしょうか。
【吉岡委員】勿論、理想を言えばそういうことで、現実に5割の人を集めるのは大変だろうと思います。
【佐藤会長】いずれ立ち上がって内容ができてくれば、北村委員がおっしゃったように、ロースクールに行こうかという人がたくさん出てくるかもしれませんし、その辺はスタートの時点では相当の割合というくらいのところでとどめておかざるを得ないですね。それはミニマムでして、各大学がそれぞれ特色を発揮しようとして、色んな工夫の仕方はあるだろうと思います。アメリカのことは参考になるかどうか分かりませんけれども、ワシントン・ロースクールに行きましたとき、入学生の半分くらいが社会人とかいろいろな経歴の持ち主であるという話がありましたですね。そうしたことも、希望的観測かもしれませんけれども、将来的には可能性として十分あるんじゃないでしょうかね。
【吉岡委員】そうなってほしいと思います。
【佐藤会長】適性テストは基本的に行うべきではないか。法学部出身者については、更にそれに加えた試験というのもあり得るのかもしれませんけれども、最小限、そういう適性テストをやる。そして各大学は、それぞれの考え方に応じて、何を学部時代に履修したかとか、色んなことを考慮して総合的に選抜する、という辺りのところでいかがでしょうか。よろしゅうございますか。髙木委員、いかがでしょうか。
【髙木委員】やってみないと分からぬと言われるとどうしようもない。現に大学で教鞭を取っておられる先生方は、学生さんとも接しておられるそれなりの感覚がおありになるんだろうと思いますが、多分、私の直観的な予測のほうが正しいんじゃないかなと思えてなりません。法学部を出られた方を中心に、実質2年型になる懸念のほうが強いでしょうと、重ねて申し上げておきたく思います。
それから、今、井上先生がカレッジ型と言われたけれども、他学部に在学しながら法学の授業は聴講できるんですか。
【井上委員】現在でもできます。
【髙木委員】適性試験の後の1年短縮試験のための別途の勉強、それをサポートする仕組みみたいなものも必ず出てくると思います。それは1年間の年限にかかわることですからね。
私の感じですから、やってみなければ分からぬとおっしゃられると、これ以上申し上げられませんが。
【井上委員】髙木さん、一定の入学枠を設けるということには、積極の御意見なのでしょう。どうせそんなもの有名無実化するとおっしゃいましたけれども。
【髙木委員】枠を設けてできなかったときに、その枠にどういう意味があるんですか。
【井上委員】しかし、それは遵守させるということなのですから。
【佐藤会長】ミニマムはみんなに守ってもらうということです。
【井上委員】学生定員や教員配置もそれで決まってきますし、入試も結果として数字に現れますのでね。
【髙木委員】入るときにはかき集めなければいけないわけですね。
【井上委員】そういった事態になったときは制度の問題として考え直さざるを得ないでしょうね。ちゃんとした志願者がいないときには、どうしようもないですから。
【佐藤会長】先ほどの吉岡委員の御意見にあったように、直ちに5割と言われるとちょっとしんどいですけれども、さっき申し上げたように、ロースクールの仕組みをつくれば、文学部とか経済学部とかから相当入ってくる可能性があるんじゃないかという感じを私は持っているんです。理系からもあり得ます。現在でも、医学部の学生が司法試験を受けて通って、非常に立派な裁判官になっている人を知っています。
【中坊委員】みんなが恐らく一致しているのは、法律専門の者ばかりで、狭い小さなものにはならないようにという意味ではみんな一致していると思います。そういう意味では他学部などを出られた方ができるだけ入学試験を受けてもらって、ロースクールに入られることを、我々審議会としては希望している訳です。それを具体的に、髙木さんのおっしゃるように、また吉岡さんのおっしゃるように、枠までつくらないといけないのかどうか。我々としては正直言って、それはどなたでもやってみないと分からない、つまり答えは出てこないわけです。審議会として、まさに多様性のある人を非常に幅広く求めていますということをこの審議会としては決めておいて、確かにおっしゃるように、これはどう言ったって、先ほどから意見の出ているようにやってみないと分からないんだから、しかし、我々としてはそういう法律専門ということは、非常に狭いところへ来て、皆さんが髙木さんが危惧されるように2年制を望んで、そういうことにならないということを少なくとも我々としては、基本的には希望しているということを、我々の審議会の意見としていただければ、それで具体的なことは、3年制と2年制と、それをやめると言ってしまうと、非常にまた硬直的になるかもしれないから、一応2つあることにして、しかし、我々としては基本的には3年制を原則として、他学部から来たり、他の大学から来られることを希望しているということを審議会としては一応決めておいて前に進めたらどうですか。
【佐藤会長】どうも有り難うございます。それでは、大学院の制度設計ですが、標準修業年限は3年ということにして、短縮型として2年での修了も現実問題として認めると言いますか、そういう形にして、入学者選抜は公平性、開放性、多様性の確保を旨とする。そして、入学試験、学部成績、学業以外の活動実績、社会人としての活動実績等を総合的に考慮して合否を判定する。文部省の検討会議の伊藤委員が、入学者選抜と入学試験を区別してくださいと強調なさっておられましたけれども、入学者選抜のうちの入学試験については、すべての出願者に適性試験を行う。そして、法学既修者として2年での修了を希望する者には、併せて法律科目の試験を行う。そんな方向で試験・選抜の在り方を考えるということでしょうか。
それから、法学部以外の学部の出身者や社会人等を広く受け入れるために、これらを一定割合以上入学させる措置を講ずる。そういう形で制度設計を考えてみるというところでいかがでしょうか。もうちょっとはっきりという御意見もあるかもしれませんけれども、おおむねこんな辺りで。中坊委員のご希望も入っているように思いますけれども。
【佐藤会長】では、この辺はそういうことで取りまとめさせていただきたいと思います。 それでは、他の点に移っていただきましょうか。次の10ページの教員組織、11ページの多様な設置形態と適正配置。第三者評価はその後にしましょうか。12ページ辺りまでのところでいかがでしょうか。
【竹下会長代理】大体御意見は一致していると思いますが。
【吉岡委員】そう思いますけれど、適正配置について、外部から誤解があるような文書が届いております。
要するに、適正配置が、国によって配分をするということになると、規制的な考え方が強くなってしまう。それは問題だという意見です。私も、法科大学院は、各地域にある必要があると。できれば通学可能なところにほしいという意味のことを文部省の検討会議のときにオブザーバーとして申し上げた記憶があるんですが、そういう意味で大都会に集中的になってしまった場合に、学生にとって、特に社会人として仕事をしながら授業を受けるような場合には不便が生じないかという意味で広く適正に学校がある必要があるということを言ったんですけれども、適正配置が国による配分を意味するものではないということだけ確認したいと思います。
【井上委員】私も同意見ですけれども、基本的にミニマムなスタンダードというものは決めざるを得ない。しかし、それに合致していれば、あとはそれぞれの創意と工夫で多様な法科大学院を設立してもらう。そういう自主性が基本になるわけですが、ただ、そうは言っても、地域的に偏ってしまうといけないので、いろいろ財政面の措置だとか政策的な配慮により適正配置というものを図ってください、ということだと思うのです。国のほうから国策的に標準的なものをつくっていくということではないのです。
【吉岡委員】国立大学の設置と同じようなことになるとか、そういう言われ方をしているので、そうではないということですね。
【佐藤会長】検討会議でもその辺は十分議論されたんでしょう。
【井上委員】はい。むしろ自由な設立というのが基本になるということをベースにして議論をしました。ただ、放っておくと地域的に偏ってしまうおそれもあるので、そこは国として、できるだけ適正配置になるような政策的な配慮をしてくださいという希望を述べたわけです。
【吉岡委員】基本的には法科大学院をつくる意思のある学校ないし別の組織もあるわけですけれども、そういうところが主体になってつくっていくという。そこのところの確認の意味で申し上げました。
【佐藤会長】吉岡委員がおっしゃったことにも関連しますけれども、夜間大学院とか通信制大学院など多様な形態というものも併せて考える必要がありますね。この点は御異論はないところでしょうね。
【吉岡委員】そこのところは異論のないところで、これはもしかすると司法試験のところで申し上げたほうがいいんでしょうね。
【佐藤会長】分かりました。
【井上委員】通信制の大学院というのは、従来のものを前提にしますと、少人数で討論してという法科大学院の理念とそぐわないんじゃないか。この報告書でも、ちょっとそういうためらいがあり、書き分けているのはそういうことだと思うのですけれども、最近の情勢からしますと、通信制というのは大きく様変わりしていくだろうと思います。この適正配置の問題も、適正配置とは言っても、その地方の比較的大きな都市になってしまうでしょうから、そうすると、ほかのところに住んでいる人にはやはり不便だと思うのです。そういう人達を含め、インターネットなどの技術的な手段を活用して、同時双方向的な授業とかが可能になっていくんじゃないか。これは希望というよりは、かなり確実性の強い予測なんですけれども、そうなりますと事情は大分違ってくるんじゃないかと思います。
【佐藤会長】それから、資力のない学生についての問題。これはあとで出てきますかね。
【髙木委員】専門大学院の設置基準というか、今専門大学院というのは一橋のビジネススクール1つですね。そのビジネススクールの場合には、人数は1学年どのくらいいるんですか。
【竹下会長代理】一橋大学のビジネススクールの学生定員は私も存じませんが、基準は大学院生10名に対して専任教員1人ということです。
【髙木委員】1学年の人数は余り多くないから、10人に1人でも耐えられるということではないでしょうか。これをもう少し規模の大きいことを考えると、もともと1学年の学生数がそう多くない大学等は、法学部の先生というのもそうたくさんおられるわけではないと思います。10人に1人を完全にということで仕切られるとなったときに、そっちのほうの制約で万歳してしまう、無理だということになってしまう。そういう意味では、あまり弾力的なというのもいかがかなと思うけれども、設置基準のフレキシビリティーの議論も是非やっていただく必要があるんじゃないかなと思います。
【佐藤会長】それはそうですね。
【井上委員】そこのところも検討会議の中でもかなり議論しました。ただ、専門大学院も少人数教育ということをうたっているものですから、従来20対1のところを10対1という厳しい基準にしている。それは、そのくらい手を掛けた教育が必要だろうということから出てきているのです。
法科大学院の場合も、理想形というか、到達形と、そこに移行する期間の在り方というのはちょっと違うのじゃないか。移行する期間というのは、現在の現実を踏まえて、徐々にかある程度スピードアップしてかは別として、引き上げていくということを考えないといけないので、理想形の基準というのは厳しくあるべきだとしても、移行期というか、実施の段階では弾力的に運用していく。基準自体を緩めるというのはやはりおかしいので、運用を弾力化することで対応していこうと、報告書はそういう書き方になっています。
【佐藤会長】立ち上がりのときはある種の考慮をせざるを得ないということですね。立ち上がってくれば、ロースクールの先生もそこで育てられるわけですね。
【井上委員】10年も経てば、そこで自己生産できる。それが理想形だと思うのです。
【佐藤会長】現実問題として、そういう形で考えるしかないということですね。これは後でまた御議論になるかと思いますけれども、できるだけ早くこれを立ち上げる必要があるということになりますと、最初から余りがちっとしたものを考えてると、なかなか難しくなる。しかも、相当数の法科大学院が生まれてくることを期待するとなると、そういう形で考えるしかないんじゃないかという感じはいたしますけれども、今の辺りはいかがですかね。
【井上委員】余り緩くしても困りますが。
あと一点、ちょっと戻るんですけれども、科目の内容とか教員配置といったことについては、ミニマムなものは、質を維持するためには統一せざるを得ないので、基準を定める。しかし、それ以上は、各法科大学院の創意と工夫で自由にカリキュラムを組んだり、多様な人材を教員に迎えたりするというほうがよろしいんじゃないか。これは今日御欠席の山本委員や鳥居委員などもしきりに言われていたことで、その点は余り御異論ないんじゃないかと思うんですが。
【佐藤会長】必置科目、教員配置なども含めて基準を定める必要がある、法曹養成のための教育内容の最低限の統一性、教育水準は確保するということでないといけませんけれども、具体的な教科の内容といった点は、各法科大学院の創意工夫に委ねる。そこにむしろ多様性が生まれてくるというように考えるということでしょうか。
【井上委員】競争してもらうのがいいんじゃないでしょうか。
【佐藤会長】この辺もよろしゅうございますか。教員組織の在り方なども、立ち上がりのとき、余りがちがちにされてしまうと難しい問題が出てきますね。
【井上委員】理想形と移行期とでは、ちょっと違ってくるかもしれませんね。
【北村委員】ちょっと違うことになってしまうんですが、初めに戻ってしまうんですけれども、法科大学院の性格なんですが、これは文部省の専門大学院という位置づけでよろしいんでしょうか。
【佐藤会長】大きな図ではそうなると思うんです。鳥居委員が前回おっしゃったことと関連しますが、大きな図ではそうなんでしょうけれども、ロースクールはこういう内容でスタートするわけですから、かなり特殊なものとしてお考えいただく必要があるだろうと思います。
【北村委員】髙木委員の意見の中か何かに、独立法科大学院という言葉があったんですけれども、これは専門大学院ということを意図していらっしゃるのかどうなのか。
【髙木委員】どこですか。
【北村委員】さっき読んでいて、どこかにありましたね。
【井上委員】独立大学院と専門大学院というのは、別に矛盾しませんよ。
【髙木委員】これは、今の大学と関係のない、外につくったほうがいいんじゃないかなということをかねてから思っておりましたので、そういう意味でここは使っております。
【北村委員】ちょっとはっきりしておいていただきたかったのが、既存の大学院とは違うんだよということですね、この法科大学院というのは。
【井上委員】専門大学院というのも既存のものなんですけれども。従来の研究中心型の大学院とは違う、高度の専門職業人教育をするという意味で「専門大学院」と呼んでいるのです。法科大学院も、広い意味ではその型に属しますが、ただ、法科大学院について、現行の狭い意味の専門大学院の基準をそのまま用いるかどうかは別問題です。そこがかなり誤解されているものですから。
【竹下会長代理】専門大学院と言うと、今の大学院設置基準上の専門大学院と受け取られてしまう可能性があるものですから、そこは言葉遣いに気を付ける必要があります。勿論、十分御承知だと思いますけれども。
【佐藤会長】本格的なプロフェッショナルの養成として、日本では嚆矢ということになるんだろうと思います。
【水原委員】教員組織のところで、実務家教員が不可欠であるとございます。これは当然のことですけれども、その実務家教員と今までの大学の先生との比率などはどこで決めることになるわけですか。
【井上委員】現行の狭い意味の専門大学院の基準では、決まっているのです。実務経験者が3割ということなんですけれども、法科大学院についてもそれで本当にいいのかどうかは、なお検討しないといけないと思います。それは、設置基準を定めるときに、専任教員が何人必要で、そのうちこういう資格のある人がどのくらいかということで、最終的には決まってくると思うのです。
その点は、カリキュラムの内容とか、司法修習との役割分担、実務的な教育の比率を踏まえて、数とか比率を決めざるを得ない。しかも、これも、理想形と移行期のこととがあって、移行期について余り大きな数を出しますと、非常に大変なことになるのですね。そこのところは、現実をにらみながら、実施までに基準として決めていくということだと思うのです。
【佐藤会長】実務家の方にいろいろ御協力を仰がなければいかぬのですけれども、なかなか大変だろうと思うんです。
【吉岡委員】今の教員の組織の実務家教員とも関係しているんですけれども、法科大学院というのは実務教育をかなり入れていく必要があると思います。そういう意味では、実務家教員をかなり大量に確保しなければいけないと思います。
この報告書の中にも、弁護士法とか公務員法の改正、これをしなければいけないと書いてあるんですけれど、審議会のほうでも確認していただいているんですか。
【佐藤会長】実現しようとすれば、その辺について手当をしなければいけないのは当然の結果だろうと思います。
【藤田委員】教員組織の点ですが、実務家の教員をどうやって調達するかということは、大変問題だろうと思います。水原委員もおっしゃいましたけれども、東京、大阪のような大都市では比較的いいとして、地方の中都市で法科大学院にふさわしい実務家の教員を見つけることについては、相当な困難が伴うということをおっしゃっている方もいます。また、実務家が教員をやるというのは、相当大変な負担でございまして、今朝、私も9時から12時過ぎまでゼミと講義をやってきまして、先ほどからここに座っていますけれども、少々虚脱状態でございます。弁護士業務をほとんどやっておりませんから、教授が勤まるのかなと思うのですが、全精力のほぼ3分の1くらいを取られているということでございますので、果たして地方の弁護士たちでこれに応えられるような人材がどれだけいるかということを非常に心配しているわけです。昔は裁判所にも、現職の裁判官に講師派遣依頼というのが来て、私も昭和40年ころに北九州で1年間、非常勤講師で大学へ講義に行ったことがあるんですが、別に法曹だけじゃなくて、官公庁関係者、企業法務、その他、税理士、公認会計士、外国人弁護士なども実務家教員に迎えるということで、大変結構なことだろうと思うんですが、そこら辺を十分な見通しを立てて大学院側でやっていただかないと、現実にそろえられるかどうかという点がございますから、その点の配慮が必要ではないかということが1つであります。
もう一つは、資力が十分でない入学者に対する援助の必要性、これは前々から申し上げているとおりで、是非とも配慮していただきたいのですけれども、その関係で夜間大学院とか通信制大学院、これもひとつそういうことへの配慮から考えられたわけでしょう。しかし、私は、去年の秋からある国立大学の夜間大学院の外部評価委員会に入って実態を見せていただいたんですが、現在の夜間大学院の在り方を見ますと、有職社会人が研究をしていまして、非常に高いレベルの修士論文などを書いておられるので感心しましたけれども、現実に自分の職場でやっていらっしゃることを専門的に掘り下げていくという研究が主体のようであって、司法試験の原則的受験資格と考えられている法科大学院の内容とかなり性格が違っているようにも思います。そういう意味で先ほどの認可基準という問題もありましたけれども、夜間大学院、あるいは通信制大学院の基準を考えるときには、いろいろなことを考えた上で、昼間の法科大学院とは別の考慮も必要ではなかろうかと思いますので、それだけ申し上げます。
【佐藤会長】ごもっともな点かと思います。
【中坊委員】その点に関して、かねて弁護士改革のところでも言っておりましたように、後継者を養成するということも弁護士の公益的責務の中の1つであるというふうに我々承知しておったと思うので、そういうことと相またなければ、単に望ましいというだけでは、おっしゃるように非常な負担ですから、そういう責務としての規範がなければなかなか出てこないんじゃないかという気がしていまして、弁護士改革の中でその点を私も触れました。また、それが義務化までするかどうかというのは、確かにまだ議論としては残っておりますけれども、少なくとも弁護士の大きな公益的な責務の1つとして、単に法律扶助というだけではなしに、後継者の養成ということも、我々の1つの大きな責務だということを前回入れておったと思うので、弁護士改革がこれと有機的に結合しているというふうにお考えいただければと思います。
【佐藤会長】少し発想を変えていただく必要があるということですね。ただ、実際に法曹人口が増えてこないと、負担の過重ということもありますね。だから、最初のスタートから、余りがちっとしたものを考えると非常に厳しいんですけれども、法曹人口も増え、ロースクールの教師も育ち、そういう中で理想的なものを追求していくということしか、現実問題として考えようがないんじゃないかと思うんです。
【井上委員】さっき3割といった数字が出ましたけれども、それも専任としての数なんです。しかし、実務経験を有する人を専任で迎えるということになりますと、公務員法とか弁護士法を緩めたとしても、法科大学院のほうが仕事の本体になって、余暇というか、本務でない時間に弁護士業をやったりするということにならざるを得ない。これは相当な負担だと思うのです。
それを最初から余り厳格にやりますと、スムーズにいきませんから、そこはやはり柔軟な運用をしていただいて、最終的には、自己生産で法科大学院を出た人が一旦実務に出て、一定の経験をした後、その中から教員を採っていく。そうなれば、大学人と実務家の区別がほとんどなくなっていくんじゃないか。そうなるのが理想じゃないかなと私は思うんです。そうすると、割合だとかいう問題もおのずと解消していくでしょう。
【佐藤会長】専修コースで裁判官に客員教授に来ていただいているんですけれども、1週間のうち約半分は大学、半分は裁判実務で、なかなか大変だというお話を聞いています。
【藤田委員】この間さる大学の教授に実務家の経験者が欲しいということで、大変いい方が見つかったんですが、大学側に聞きましたら、月曜から金曜で7コマ担当するんです。それでは、とても弁護士業務ができないということで話がつぶれてしまいましたけれども、井上先生に伺うと、今、専任教授というと、7コマ8コマは当たり前なのだそうで、私の同期で教授をやっている人に聞いたら10コマもやっているそうですのでびっくりしました。
【井上委員】国立大学と私立大学とでは、事情が違うものですから、すべてそうだとは言いにくいんです。
【藤田委員】そこまではやはり無理で、私の感じでは、3コマか4コマ辺りが実務家としては限度ではなかろうかと思うんです。実務を続けるという前提でやりますと。
【井上委員】その辺も、柔軟に運営していかないとできない。
【水原委員】柔軟に対応するとなりますと、法科大学院構想の本旨に触れるようなことになっては困りますなという感じがいたします。現実を十分見据えた上で具体的な方策を考えていかなければいけないなということをもう一遍申し上げたいと思います。
【中坊委員】確かに実務家が大学院の先生になるというのは、大変は大変だと思うんです。私も2、3の大学でやってきました。確かに学部の試験のときになったらびっくりしちゃいますが、試験の採点のときに大変になるだけで、今おっしゃるように、10人に1人とかいうような割合であれば、さほど実務を教える側にとっても、それほど大きな負担にはならないと思います。学部の試験の答案を何百人見たときに初めて、大変だということになったんです。私も、消費者保護とかいろいろ教えてきました。しかし、それはさほど大きな負担には必ずしもならない。いわんや10人に1人のような体制でいけば、それほど大きな問題にはならない。
【佐藤会長】ペーパーを読まないといかぬとか、いろいろあると思いますけれども、学部みたいに、こんなに答案が来てどうという負担はないと思います。
この辺もさっき申し上げたように、ミニマムな水準を設定しなければいけない、あるべき方向を目指さないといかぬということですけれども、それぞれの大学院の創意工夫ということも大事で、両方を考えながらつくっていくということだろうと思いますが。そのほか、先ほどの議論で、資力が十分でない学生に対する奨学金とか教育ローンあるいは授業料免除など、各種の支援制度の整備が必要だということですが、これも御異論のないところかと思います。
【井上委員】今の点は、声を大にして言ったほうがいいと思うのです。そういう援助制度というのは、他のどの方面でも必要だと言っていますので、ここは特に必要なんだということを声を大にして言ったほうがいいと思います。
【佐藤会長】それは当然のことかと思います。
もう一点、司法試験に入る前に、評価の問題に少しお入りいただきたいと思うんですけれども。13ページの評価のところですが、髙木委員のほうからも、さっきのペーパーで第三者評価機関というのがありますが。
【髙木委員】3点にわたって、要は法科大学院の設置を認められる基準と、第三者機関が評価するときの物差しと、司法試験の受験資格認定基準というか、これがお互いにテレコだったら妙なことになるのは当たり前のことですが、相互に整合的な状態になる必要があるということでして、そういう意味では、法科大学院の設置認可の物差しは、第三者評価機関が策定した認可基準とパラレルというか、あとはBC、同様なことですが、第三者評価機関の組み立て方というか、大学院の方、法曹関係の方、ユーザーサイドというのはどういう方がなるのかというのはあるんでしょうが、第三者評価機関の構成についても留意しなければなりません。
いずれにしても、独立性の高い機関にする必要があると思います。勿論独立性の高い機関というのは何ぞやという点について、また議論があるところかもしれませんが。
【佐藤会長】そこでの評価が権威を持つようにならないといかぬという御趣旨なんでしょうね。ただいまの点も、法科大学院の制度設計に非常に重要なポイントかと思いますので、ほかにも御意見を賜りたいと思います。
【井上委員】ちょっと言葉が「設置認可」と第三者評価機関による「認定」となっていて、紛わしいのですけれども、こういう使い分けをしているのは、設置認可の基準というのは設立前の、手を挙げたときの基準ですから、そこで決められる事というのは外形的なことでしかないんです。教員数とか教員の資格とか、施設が十分あるとか、財政的基盤はどうなっているかと、そういったことですけれども、そういうことを基準に審査せざるを得ない。ところが、実際に発足してみると、例えば、それだけの教員が本当はそろわないとか、途中でかなり脱落するということもあり得ますので、事後的にチェックしなければならない。そこは、同じ基準でいっても時差があるというだけのことなんですけれども、それ以上に、例えば入学者選抜が公平で開放的に行われているかどうかとか、成績評価がきちっとやられているかとか、カリキュラムが要求されているような形で組まれているかとか、そういったことは設置認可の申請の段階では評価できないんです。それは、動き出して実態を見て評価せざるを得ない。そのように、基準自体もずれてくるということになるわけです。
したがって、仮に同じ機関がやるにしても、設置は認められたけれども、後で実体を伴っていなのでだめだと評価されるということは、理論的には常にあり得ることなのです。ただ、そうは言っても、全く不意打ちでやられたらたまらないということも事実ですので、第三者評価の基準のところは、ある程度試行錯誤で積み重ねていって、それが定まってくれば情報公開し、それに応じて動いていってもらうというのが在るべき姿だと思うのです。
そういう意味で、報告書は、実質的には連動しているのですけれども、機能が違いますよという書き方になっているわけです。
その問題と認定された法科大学院の修了を司法試験の受験資格にするかどうかというのは、ちょっと違うフェーズの問題です。
【佐藤会長】さっきの髙木委員のお話ですが、整合的でなければいけないというのはおっしゃるとおりだと思うんです。それぞれの機関というか、役割というか、何か微妙に違うのですけれども、しかし、認定とつながっていないといかぬということなんだろうと思うんです。多少分かりにくいところがあるんですけれども。
【竹下会長代理】私も検討会議のほうの報告書の理解が十分でないところもあるのですが、第三者評価機関の性格というのが分かりにくいところがありまして、制度上国の機関なのか、それともそうではなくて、民間の機関なのかということが1つありますし、それから、この報告書を見ますと、14ページのところで、(3)の法科大学院と第三者評価と設置認可及び司法試験受験資格との関連というところの第2パラグラフのところを見ると、法科大学院の第三者評価(認定)の仕組みは、新たな法曹養成機関としての水準の維持向上を図るためのものであって、文部省が行う大学院としての設置認可や、司法試験管理委員会が行う司法試験の受験資格認定とは独立した機能と意義とを有するものであると書いてあります。ですから、ここを見ますと、確かに司法試験の受験資格の認定というものと、この第三者機関の評価というのは別のものだと読めるのですけれども、15ページの(3)の最後の段落のほうへ来ると、法科大学院の評価に関する機構によって認定された法科大学院を修了することを新司法試験の受験資格とすることが望ましいとなっていて、どうもこの機関が司法試験の受験資格を決めるように見えるのです。
しかし、実際はそうではなくて、これはあくまでも評価の問題なのだということであるようなので、それだとすると、あるいは言葉も(認定)というのを取っていただいて、この機関がやるのはあくまでも評価だと。それを基準にして司法試験管理委員会が受験資格があるかないかを決めるのだと言っていただいたほうが分かりがよいと思うのです。
確かにアメリカの制度でアクレディテーションというものが認定と訳されているので、それを指すのだという御趣旨だとは思うのです。日本語として、我々の審議会で議論するときには、どうも認定という言葉を使われて、しかもこれがこの第三者評価機関が新司法試験の受験資格の有無に何らかの意味で関連を持つと言われると、そこが非常に分かりにくいように思うのです。
【井上委員】言葉の問題としてはそのとおりなのですけれども、実質的に関連を持たせるのが望ましいというのが、この検討会議の報告書の趣旨です。ただ、認定といいますか、アクレディットするというのは、それ自体としては、あくまで法科大学院の教育水準ですとか、その他の条件が要求水準に達していますよという、いわば「マル適」マークを与えるようなもので、そっちのほうに本来的機能があるのです。
しかし、新司法試験の受験資格を考える場合に、そういう水準が保たれていないようなところに受験資格を与えるというのは、やはりおかしいのではないか。その意味で、認定を受けているということを前提にして受験資格を考えてくださいよと、そういう趣旨であろうかと思うのです。言葉の使い方はちょっと不明確かもしれませんが、「認定」という言葉を使わないで、「評価」だけですと、「評価された法科大学院の修了」というのも変なものですから、あえてそういう言葉をここでは使っているということだと思います。
【竹下会長代理】実質論で言いますと、やはり私は制度として、国の機関である司法試験管理委員会が新しい司法試験を受ける受験資格者の範囲を決めるということであるべきだと思うのです。第三者機関の評価は、その際に参照されるべきものだと。
【井上委員】検討会議でも、基本的な趣旨としては、そういう前提で考えたのです。さっき言及された14ページのところは、受験資格を決めるのは司法試験管理委員会で、司法試験のほうの問題である。しかし、その際、実質的には、水準に達しているというところで教育を受けてきたということがあって初めて、新しい制度の趣旨が貫徹できますので、そういう意味で、実質的に連動させるようなことを考えてくださいと言っているわけです。ただ、その第三者評価機構の評価ということも、今はまだ抽象的に言っているだけで、それがどういうものになり、どこまで実効的な評価ができるのかは分からない。それが定着していって、非常に信頼度の高いものであるということになれば、それを国の制度として取り込んでいくということも、将来的な可能性としては考えられると思うのです。
【竹下会長代理】評価がそういう機能を営むということは考えていないのですね。
【井上委員】そういうことではなくて、第三者評価の本来的な意義は、教育水準の確保ということにありますので、それと受験資格の問題とは一応別ですよということです。しかし、実質的には連動させないとおかしいでしょう。そこで、ちょっと分かりにくいんですけれども、そういう書き方になっているのです。
【竹下会長代理】その考え方を示すには、司法試験管理委員会が受験資格を判定するときに、この第三者機関の評価をなるべく取り込むことが望ましいという言い方でないと、分かりにくいですね。
【井上委員】受験資格を判定するときには、そのことを前提として考えるのが望ましい、ということですかね。
【佐藤会長】さっき髙木委員がおっしゃった整合性の問題とも関連があるので、そこは実質的に連動しないとおかしな仕組みになるんですけれども、しかし、制度的には今、会長代理が言われたように、司法試験の受験資格の判定は管理委員会が最終的に法的には決めるということになるんですかね。そういう表現がもう少し明確になるようにということですね。
【髙木委員】何か評価という言葉を使うとABCにするのはどうかという議論になります。認定というのは、水原さんがいろいろ言われる質のレベルを認定するという話ですが、認定のためのモノサシはうまく作れるのでしょうか。司法試験管理委員会というのは、お聞きしたら3人だそうですね。
【竹下会長代理】本当の委員というのはそうです。
【髙木委員】法曹三者それぞれからお1人ずつ入られるということですね。どういう中身の議論をされて、どうなのか知りませんが、かつての丙案導入のときの議論などは、それぞれ法曹三者お1人ずつの3人委員会が管理委員会として決めていかれた。失礼な意味で申し上げるのではなくて、もう少し違った意味での構成の仕方があるんじゃないかなということ。
【佐藤会長】検討会議の案にも、法科大学院関係者の意見を反映させる適切な仕組みなどを考案すべきであると書いてありますけれども、そこは工夫が必要になってきますんでしょうね。
【竹下会長代理】そこは全く私も同意見です。
【井上委員】新しい制度になった場合、一貫性というのは非常に大事になると思うんです。その意味で、管理委員会自体をそうするのが適切かどうかは別としても、とにかくそういう意見が反映できるような仕組みを考えてもらうということは大事だと思います。
【中坊委員】竹下会長代理がおっしゃるのはよく分かるんですけれども、しかし、今までの法曹養成、あるいは我々のところで一番大きな問題になっていたのは、最初に司法試験ありきで、そこで非常に人数を制限し、結果的に絞って、その弊害が出てきたと。そういうことの大きな反省の中で、いわゆるロースクール論というのも生まれてき、司法試験が資格試験に変わるんだと。大方受かるものにしよう、大学に任そうじゃないか。司法試験で何もかも絞り込んでしまうことをやめようじゃないかという発想が今回のロースクールのそもそもの発想なわけですから、司法試験管理委員会がまた独立してあって、まさに髙木さんのおっしゃるように、どこから決まってくるのかと言えば、ロースクールができて、第三者評価機関ができて、「マル適」マークが付いたところの人は大体受かるんだという形にならないといけないわけです。司法試験管理委員会が何もかも決めて、その参考意見として、形としては別のところが決めるからそうなるのかもしれないけれども、やはりどこに最初の基準というか、基礎があるのかというと、第三者評価委員会で決めた「マル適」マークのあるところは自動的にこうなりますよというものになっていかないといけないということじゃないかと思うんです。そこははっきりさせておかないといけない。また、私も日弁連の会長をしていましたので、司法試験管理委員会の実態というのは知っています。これはおっしゃるように、全く3人だけが来て、30分程度話をするだけで、全く何の形もない委員会ですよ、実際上はね。この下に考査委員会というのがあって、考査委員会で決めたことを本当の30分程度三者が来て話をする。しかも、そこは常に2対1で決まるんであって、弁護士会が何言おうがほとんど関係ないというようなことに決まってきておったんで、その司法試験管理委員会の権限がまた移って、そこがすべての権限を持っているんだということになってくると話がおかしくなってくるだろうと思います。
【竹下会長代理】私が申し上げたいのは、つまり、法科大学院の側からすると、あなたのところは卒業しても司法試験の受験資格がありませんよということを言われたときに、それに不服を述べて争えないとおかしいと思うので、そのときにだれが相手になるのですかということに関連しているのです。第三者評価機関が相手になるとすると、この第三者評価機関が、そういう行政庁的性格のものだというのならそれでよいのですけれども、そうではない。そのときには司法試験管理委員会を相手にするのですよということになるのではないか。もしそうなら、司法試験管理委員会はもっと責任を持てるような体制にしなければおかしいではないかということになる。その点を申し上げているのです。
【中坊委員】だから、この審議会で今決めなきゃいけないのは、司法試験管理委員会がすべて権限を持っておって、自分で唯一独自に判定ができるということにするのか、あるいは第三者評価機関というのが生まれてきて、それが独立の権限を持っていて、大学と司法試験をつなぐところの判定をしてもらう機関なんで、それと連動してやらないといけない。そこで「マル適」マークを与えているものが司法試験管理委員会がああだこうだとは言えないということか、むしろ連動したものとしなければならないというのが検討委員会の意見だと、こういうふうに私は聞いているんです。
【佐藤会長】仕組みとして、どこが最終的に法的な権限というか、そういうものとしてやるかという話と、評価が実質的に連動しなければ、この制度はうまくいかない、整合的でなければいけないというのは髙木委員のおっしゃっていることです。実質的なところについては、代理も何も否定されるわけではない。
この第三者評価は継続的にやるものです。何年間に一遍くらいになるんですかね。毎年というのは難しいと思いますけれども、継続的にやって絶えずどうだということを把握していくわけですから、それは性質が違うものだろうと思います。
【竹下会長代理】法科大学院にとっては言わば死命を制されることなのです。それなのに不服申立ができないというのはおかしいわけですから、何かやはり不服申立ができる仕組みにしないといけないのではないか。
【髙木委員】入学して勉強してきたけれども、いざとなったらあんただめだ、受験資格がないよ、と言われたらたまるものかと。学生は当然そう思うわけです。
【竹下会長代理】ですから、そういう仕組みになっていないとおかしいのだけれども、どうもこの報告書を読むとそこらが見えないのです。どういう仕組みになっているのか。
【井上委員】この報告書は、さっき申し上げたように、微妙な書き方をしているんですけれども、実質的には…。
【中坊委員】申し上げているように、形式的にはそうなんだけれども、実質的にそうなんだというのは、確かに竹下さんのおっしゃるように分かりにくい。審議会としてはそこをどうするんだということをはっきり決めておかないといけない。形式的にはそうなんだと。では、形式的とは一体何ぞや、実質的とは何ぞやと、あとはそこでやる議論なんで、その辺はもう少し審議会としてもはっきりさせる必要がある。
【水原委員】やはり司法試験の受験資格というのは、司法試験管理委員会できちっと決めるべき事柄だと思うんです。その資格があるかどうかという問題は、第三者評価機関が適と評価した法科大学院を修了した者、これは受験資格がありますよ。だけれども、これについての受験資格や、その具体的な在り方の検討について、ここに書かれたとおり、法科大学院関係者が参加する必要がありますと。例えば管理委員会に法科大学院関係者の意見を反映させる適切な仕組みなどを考案すべきである。だから、やはり試験を管理するところは独立してきちっと置いておくべきだと。それだけは前提としてはっきりさせておかなければいけないなと思います。
【佐藤会長】この辺の書きぶりについては、最終的に中間報告で少し工夫させていただくことにします。実質、形式ということがありますけれども、制度的に整合性を持つように考えなければいけないということでここはまとめさせていただきたいと思います。
その前提として、法科大学院における入学者選抜の公平性、開放性、多様性や、法曹養成機関としての教育水準、それから成績評価、修了認定の厳格性等を確保する必要があり、そのために適切な第三者評価機関をつくって、それが継続的に評価を実施する、そういう仕組みを考えなければいけないということかと思いますけれども、よろしゅうございますか。
【北村委員】基本をつくるのも第三者評価機関ですか。
【佐藤会長】そうです。だから、立ち上げるときに、どこでどうするかという問題があります。
司法試験にも入ろうと思いましたけれども、やがて3時になります。一応法科大学院の中身について重要というか、押さえるべき事柄は御賛同いただいたと思いますので、一応これは終わらせていただいて、休憩を10分はさみまして、司法試験について御審議をいただきたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。
【佐藤会長】それでは、10分に再開いたします。
【佐藤会長】それでは、時間になりましたので、再開させていただきます。
さっき申しましたように、次に、司法試験について御議論いただきたいと思います。まず司法試験の内容及び実施時期の問題と、それから例外措置の在り方の問題の2つに分けられるかと思いますけれども、最初に新司法試験の内容などにつきまして御議論いただきたいと思います。
この点についても、今日、髙木委員のほうからペーパーを出されていますので、髙木委員いかがですか。
【髙木委員】こんなふうにたたいてもらうつもりでペーパーを出したわけじゃないんですけれども、先ほどの評価、あるいは受験資格をどこでやるかということともかかわるんだろうと思います。法科大学院を法曹養成のメインストリームにするということであるのならば、少なくとも法科大学院を修了して、それがある想定されたレベルをクリアーしている勉強の内容に担保されていたら、受験資格があることとする。その資格のある人たちが受ければ、かなりの比率で合格をされていくということを想定するなら、資格試験とでも言うんでしょうか、合格のレベルを相対的に上げたり下げたりするような種類の試験ではないんじゃないかということを訴えたいわけです。
先ほどの司法試験管理委員会の在り方等は、また別途議論が要るのかなと思っております。佐藤会長は行革のほうお詳しいんですが、こういう委員会の関係だとか、それに伴う事務局の設置というのは、なかなか厳しい決まりを行革の関係で引いておられるという話も聞きますから、その辺どういうことが現実的にあり得るのか、そんなことも検討が要るんじゃないかなと思います。
要は新司法試験が、後の研修の問題があるにしましても、1つの法曹養成の出口に近いということであったら、法曹人口増をきちんと担保する仕組みにこれがならないと、何のためにやったんだということになりかねません。私のペーパーの最初にも書かしていただきましたけれども、導入する以上、うまくいきませんでしたというわけにはいかぬ話だと思います。そんな思いでございます。
【佐藤会長】有り難うございます。御趣旨は私もよく理解できるところですが、ただいまの御意見に関連していかがでしょうか。
【井上委員】2点あったかと思うんですが、1つは、資格というか、司法修習を受けるだけの十分な力が備わっていると認められる限り合格させるべきだという御意見が1つと、もう一つは、司法試験の管理事務の所在ということですね。そのうち第1点については、理念としては私も十分理解しているつもりですし、今でも、資格のない人を合格させるとか、資格は十分あるんだけれども、無理して削っているということでは必ずしもなくて、資格があるかどうかというところの認定がある程度幅があるので、今のような問題が生じてきているということだと思うのです。
理念的には、新しい法曹養成制度を整備していけば、おっしゃるような方向に動くだろうし、動かないといけないということはそのとおりですけれども、現実の問題としては、修習ということを考える場合、スタッフの面やお金の面など色んな面で、計画的な受け入れということを考えざるを得ない。そうすると、ある程度数というのは定まっていかざるを得ない。各年の受け入れ数はですね。問題は、その数を計画的にいかに増やしていくかということではないでしょうか。
そういうことで考えますと、どれだけの法科大学院が立ち上がっていって、どれだけの学生が毎年育つのか。質を確保しながらと言うとまた怒られるかもしれませんけれども、十分な教育ができるということを現実的に考えてみますと、法科大学院の修了者数と修習の受け入れ可能な数との間にそんなに大きな齟齬は生じないのではないかというふうに、私は見ています。
2番目の司法試験の管理事務を法務省がやっているということについては、その事務をそこがやっていることで何か大きな問題があるということではないのではないか。むしろ、管理委員会の物事の決め方について、外の意見も反映させるべきだということではないでしょうか。
また、司法試験の内容については、さっきどなたかがちょっとお触れになったように、管理委員会とは別に考査委員会というのがあって、考査委員は百何十人かいるんですけれとも、そのうちの半分が大学関係者で、半分が法律実務家なのです。試験の中身についてはそこでそういった関係者が集まってやっており、改善などもそこでやっているわけですので、そこのところは余り御心配になるようなことはないんじゃないかなと思うのです。
【吉岡委員】質問していいですか。今の井上委員の御説明でちょっと分からなかったんですが、新司法試験ですけれど、合格者の数をあらかじめ決めるという意味でおっしゃったんですか。
【井上委員】今年はこのくらいだろう。このくらいというのは、ある程度幅はありますけれども、今年はこのくらいで来年はこのくらいに増やしていくということを考えて対応せざるを得ないんじゃないですかね。
【吉岡委員】目標値ですか。
【井上委員】修習に行くのに、どこに何人配置し、それらの人に対して教える側もどういう体制を組むのかとか、お金をどうするのかとか、そういうことを考えていけば、おのずと計画的にならざるを得ないのではないかと思うのです。
【吉岡委員】ただ、法曹三者と大学かどこか分かりませんけれども、そういうところで集まって、数を最初に決めてしまうというと、今の司法試験も数を決めているんですね。その数だけ合格しているかどうか分かりませんけれども。
【井上委員】今決めているというのは、法曹三者の協議で、当面大体このくらいにしましょうと決めているのです。大学関係者は、そこには入っていません。それを一応の基準にして司法試験を運営しているというのが現状なのですけれども、私の言うのはそういう意味ではなくて、修習を責任ある形でやるためには、計画的にやっていかざるを得ない。その数を計画的、段階的に増やしていくということではないかなということです。現実的に考えるとですね。
【吉岡委員】現実的にはそうかもしれないんですけれども、数を決めて、その数に合わせて合格させていくということですと、法曹の数を増やすという意味では今とは違うかもしれませんけれども、現状に非常に近い決め方にならないかなと思うんです。そうではなく、増やしていくというところに重点を置かなければいけないし、そうでないと法科大学院ができたけれども、やはり数で縛られてということになると、法科大学院自体も経営が難しくならないかなと思います。経営については、私が考えるのは余計なことかもしれませんけれど。
【井上委員】極端なことを言いますと、本当に資格認定というのが厳密にできるとして、例えば、この年は1,000 人だが、次の年は3,000 人、また次の年は500 人だということも生じ得る。しかし、そういうふうに振れるというのでは、恐らく対応できないと思うんです。しかも、その資格認定というのも、そこまでの厳格な認定では実はなく、ある程度幅のある問題じゃないかなと思うわけです。
【吉岡委員】資格試験というのは私の認識では、あるレベルに到達した人は資格が取れるという、それが資格試験だと思うんです。そのレベルに到達していても、今年の枠はこれだから、これしか入れませんよということになると、それはちょっと違うんじゃないかなと思って質問したんです。
【井上委員】理論的には、そのとおりなんですが。
【北村委員】私は別の観点から今の井上先生とは結論的には一緒になるのかもと思うんですが、法科大学院同士で競争させるということが必要だと思うんです。いくら第三者評価機関があると言いましても、それしかなくて、全員が通るというのではなくて、ある程度絞った形でのものというのを考えたほうがいいのかなと思います。
確かに資格試験というのは、今、吉岡先生が言ったような形で私も考えていますけれども、そういうふうに考えた上であっても、なおかつ何十%か何かは通らないような試験というのを考えざるを得ないのではないか。それが非常に現実的な、法科大学院がこれからできていって、やっていったときの現実的な考え方なのかと思うんです。
【吉岡委員】私もそう思います。やはり法科大学院によって、この間アメリカへ行った時に視察したワシントン大学の場合には、合格率90%と言っていらっしゃいましたけれども、では、すべてのロースクールが90%かというと、そういうことではないわけです。やはりそういう差はできてくる。ただ、差ができるというのは、実力があるレベルに達していなかったということだと思うんです。そこで競争が当然出てくるという、それが自然だろうと思います。
【井上委員】アメリカの場合ちょっと違うのは、後ろに修習がくっ付いていないということです。ですから、州によってもレベルが違うと思います。
【吉岡委員】その修習が付いているのがボトルネックになっているわけですか。
【佐藤会長】修習のことは、この次に議論したいと思います。
【髙木委員】最初スタートして1年目とか2年目とかは安定するまでという意味でいろいろあるのかもしれませんが、大体このくらいのレベルをクリアーしたら、一応OKとされるんだというのが定着した後、そう毎年毎年OKのレベルをぶれさせられたら、勉強するほうはたまらぬと思うんですよ。
もう一つは、こういう仕組みをつくろうとするのに、修習のキャパシティーが足りないからというのを理由にしたらいけないと思うんです。逆に言えば、修習のキャパシティーのほうが問題があるとしたら、そっちを先に整備しながらやっていくというアプローチが求められます。
【井上委員】そうです。私も、そういう趣旨で申し上げているのです。計画的にやっていくというのは、そういう趣旨です。
【佐藤会長】私どもは、集中審議のときに、3,000 人という数字を出し、計画的に早目にその実現を目指そうじゃないかということに合意していますので、一番大きなところではそういう枠があるわけですから、次に御議論いただきますけれども、修習の現実的なキャパシティーも踏まえながら計画的に増やしていくということだろうと思うんです。
【中坊委員】井上さんのおっしゃっているように、修習のキャパシティーが絶対的な基準になるのか、そうじゃなしに、法科大学院を卒業して一定のレベルに達したというのが基準になるのかという、キャパシティーかレベルかは大きな問題であって、やはり我々としてはレベルが基準であるということだけははっきりここで決めておかないといけない。しかし、本当に修習のキャパシティーが非常に問題になる。それは経過措置の中で色んなことがあり得るというのは分かりますよ。しかし、あくまでも3,000 人ということになってきたら、今の現行制度の基本的な司法試験の問題点は、キャパシティーから人数を大体300 人とか500 人とか1年半とか、教官の数というところから、あるいは収容する研修所の面積とかいうことから非常にそこで絞り込んできて、それが大変なこういう問題を起こしているわけでしょう。やはりキャパシティーが基準にならないということだけはこの審議会ではっきりと決めておかないと、それこそまた3,000 人と言っても、あれは絵にかいた餅になって、結局、そうでないということになると思うんです。だから、どうしてもレベルが問題だと。一定のレベルに達したものは合格させるんだ。それに合うように修習のキャパシティーを考えなきゃいけないという問題だというふうに私は理解する必要があると思います。
【水原委員】今までの司法試験の合格者というのは、キャパシティーが最初にありきということで決めておるんではないというふうに理解いたしております。一定水準に達しているか達していないかということ、これが大前提で合格者の数が決まっているんだと思います。水準に達しているにもかかわらず、キャパシティーの問題でふるい落とされるような制度では一切ないというふうに私は承知いたしております。
だから、今後ともに法科大学院でその教育内容がきちっとできて、修了した者が法曹としての資質、能力を備えておった、司法試験に合格したならば、それは合格させるというふうに自然になっていくのだろうと思います。
だけれども、その前提としては、法科大学院における教育の内容、それがどの程度までレベルアップしてくれるかということなので、結果的には、それが完全に実施されるようになったならば、3,000 人という合格者が出るかも分かりませんが、それに達するまでには、まだ数を一気にその水準に達する教育ができるかどうかということが不確定なときには、はっきりとした線を出すべきものではなかろうなという気がいたします。
それは中坊さんがおっしゃるように、キャパシティーが最初にありきの議論はだめよということには私も賛成です。私も賛成ですけれども、能力が伴わないものについては、合格させるべきではない。
それから、段階的にキャパシティーの問題も同じようにというか、それを全く無視するのではなくて、やはり国家財政の観点から考えるならば、それも考慮の1つに入れなければならないことだろうと考えています。
【中坊委員】私は今水原さんのおっしゃったので全然違うと思うのは、現行の司法試験の在り方というのが、一種の資格試験というレベルで判定してきたとおっしゃいますけれども、これは全く実態と反していると思います。そうでなければ、法曹三者が今年の合格者を1,000 人までとか、三者が合意して、それはすべて研修所の在り方に縛られている。そうしたら、教官が足らぬから2年を1年半にするという話になってくるんで、常に法曹三者が過去決めてきたというのは、すべて司法研修所の収容の在り方、あるいは年限の在り方、それを考慮に入れて決めてきた。
私らが聞いている範囲でも、司法試験の考査試験というのは、おっしゃるように1点違えば何百人と違うわけですから、1点によってレベルがあるかないかということではなかったわけです。にもかからず、今おっしゃるように、こちらのほうでこう決まっているからということで、法曹三者が、弁護士会も今までよくなかったと思うんだけれども、数をどんどん少なくするとか言っているから、そこに大きな問題が起きてきたんで、やはりその実態は私は現実の姿としてあったんだから、それを今度は根本的に直さないといけないというのが今回のこの審議会の大きな眼目だろうと思います。
そこはやはりはっきりと、レベルが基準であって、あとそれに合うように研修所の在り方、これから議論になりますけれども、そこが問題になり、そこのキャパシティーもそこでまた問題になってくるというふうに考えないと、これが逆転してしまうととんでもないことになると思います。
【水原委員】私は逆転する議論をしているわけではございません。やはり能力のある者は合格させる。しかしながら、今までの司法試験というのは、能力に達していなかったから、げたを履かせてまで合格させたという実情があることを無視してはいけないと思います。合格点に達しておるのにもかかわらず、キャパシティーがないからはねたという実態はまずないと思います。
【藤田委員】議論を拝聴していますと、レベルで選んだ人数と、キャパシティーで選んだ人数を比較すると、レベルのほうが上回るという前提の議論のように伺うんですけれども、今、水原委員がおっしゃったこととも関係があるんですが、私が考査委員をやっていて、最終の合否判定会議などに出ていたときに、いつもは通常のレベルの点数に達している人を合格させるわけですけれども、今年はそれでは足りないから1点下げる、2点下げるというようなことがあったわけです。ですから、仮に今のダブルスクール化とか司法修習生の質的劣化ということをいろいろ研修所教官や現場の指導官からも聞くんですが、実態は知りませんから、何とも言えませんが、将来の法曹として望ましいレベルで判断したら、今の修習生の1,000 人がすべてパスするのか、あるいはそれを下回る人数しかないのかということがあります。それではいけないから、新しい法曹養成制度を考えようということですし、ロースクール制度を採用して、学部教育もレベルアップし、更にそれに上積みして大学院の教育が成果を上げるということが期待されるわけですけれども、果たしてそうなるかどうかはやってみなければ分からない。前から申し上げているように、質的に劣った法曹をたくさん生み出しても意味がない。国民の期待に応えられるようなレベルの法曹を養成していかなければいけないということですから、在るべきレベルに達した人数がキャパシティーに満たないということもあり得る。レベルかキャパシティーかという、一面的な議論ではなくて、質的な向上を目指すにはどうしたらいいかという視点も必要なんじゃないかと思います。
【井上委員】今の司法試験制度について誤解があってはいけないかと思いますので、申し上げますと、例えば50点が合否の基準だというふうに予めはっきり決まっていて、やっているわけでは全くありません。その年ごとに、問題によっても違ってきますし、科目間のばらつきもありますので、結果を全体としてながめなから、考査委員全員で、この辺が合格点だろうということで決めているわけです。
ですから、レベル以上の人がまだいるのに不合格としているのか、逆にレベルに達していないのに合格させているのかということになりますと、一概には言えない。人によっても評価の分かれるところだと思うのです。
もう一つ、中坊先生も同じような趣旨だろうと思うのですけれども、ある数まで持っていくためには、キャパシティーをそっちに向けて整備していくべきだということはその通りで、これは計画的、段階的にやらざるを得ない。そういう方向性が基本にあるべきだという点では、私も賛成なのです。ただ、資格の有無で選別すべきだということは、理念的に本当にそうあるべきだと思うのですけれども、キャパシティーの増え方に見合わせて、当面はやっていかざるを得ないだろうと、そういう趣旨で申し上げているのです。
しかも、その場合のキャパシティーというのも、研修所、ハコの問題というよりは、むしろ実務修習地の受け入れの問題だと思うのです。そこのところをいかに効果的に拡大していくか。そのために、どういう工夫があり得るのかということが一番大事なことじゃないかなと、私は思っているのです。
【中坊委員】井上さんのおっしゃっているのと、我々審議会というのは、先ほど会長も正におっしゃったように、法曹人口を大きく増やさないといけない。それには毎年3,000 人をできるだけ早期に生み出さないといけないというのが我々の審議の前提になって我々は審議をしているわけだから、おっしゃるように3,000 人ができるだけレベルに達した者となることが望ましい。しかし、レベルとは一体何ぞやという問題があるわけです。今おっしゃるように、レベルにない者は全部不合格にして、レベルに達していた者は全部合格させてきたと。そうだったら、ほんまにそうであったかというと、やはり人数がおおむね一定して、何人と決めたら、1,000 人か750 人とか決めたら、そのとおり大体過去やってきたんですよ。そんな実態があることをもって、建前だけ言って、これは数とは関係なかったんだ。それがおっしゃるように、研修所が、そうだったら、1,000 人に増やしたところで、2年の修習期間を1年半に短くする必要はなかったはずです。
やはり数があってその問題があるということは事実だったと思うんです。だから、それはそれとして、これからは、なるべく社会生活上の医師となるほど法曹人口の数を増やしてやっていかなければいけないということが今の我々の大きな目的としてやっているんだから、それが大きな基準になって、その上で司法試験はいかにあるべきか。それが今言うように、一定の資格になった者は受かるようにするために法科大学院というのをわざわざつくって、法学部だけでは足りないから、もう少し実務レベルもやって、そういうものを入れていこうじゃないかと。ここから基準が決まってきているわけです。その大きな流れ、方向というものは大事にして、審議会として議論しないと、今まで6.8 回も試験を受けなければ受からないような平均にしてしまったかというと、やはり司法試験の合格者数をぐっと絞り込んできたところに大変大きな問題があった。それは過去の研修所の人数、収容の数というものをあくまで基準に置いて、法曹三者が得て勝手なことをやってきた結果、大変な迷惑を掛けたということじゃないかと思うんです。
そういう意味における基本的な反省の上に立って今回の問題は考えないといけないので、あくまでそういう意味での大きな反省を法曹三者はそれぞれした上で、今回の審議会の審議を受けるということにならないといけない。私はそれを強調したい。
【佐藤会長】時間の限りもありますので、この問題はそろそろ終えなければならないんですけれども、最初私が申し上げたように、3,000 人という数字、これを計画的にできるだけ早目に実現していくというのが一番土台にある我々の考え方だと思います。
あとで御議論いただきますけれども、司法修習の在り方との関連で、やはり少しは現実にも目を向けながら、そっちを目指して歩んでいくということを全く無視するわけにもいかないところがあります。これはロースクールがどれだけ立ち上がってくるかということにも関係してくることでありまして、ここでどうかということを明確にしにくいところがありますけれども、考え方としては、キャパシティーがどうだから法曹人口が決まるというやり方は避けるべきだ、避けなければいけないということだと思います。
さっき申し上げたように、我々が決めた3,000 人という目標を計画的にできるだけ早目に実現していくという中で、司法試験の在り方も考えなければいけない、というところでいかがでしょうか。
【髙木委員】新司法試験がいつからというのはこれからの議論ですけれども、現在、丙案というのがありますね。これは少なくとも、これから法学部なりほかの学部を出た学生さんを法科大学院に、できるだけ積極的にアプローチしてもらうという意味から言えば、どちからというと阻害要因だろうと思うんです。
そういう意味では、この丙案については、今までも色んな論議が法曹三者の間でもおありになったようですけれども、法科大学院開設くらいの時期になったら、選抜方式というか、これをやめるべきでないかということを私のペーパーの4ページの移行措置というところに書かしていただきましたので、御留意いただきたいと思います。
【佐藤会長】今の髙木委員の御指摘は、現行の制度をどう評価するかという問題とも関連しているし、また、ここでお書きになっているように移行措置をどうするかという問題とも関連しているように思います。この新しい司法試験制度ができたときに、従来の司法試験制度との関係がどうなるのかということは、後で御議論いただきたいと思いますけれども、移行過程の問題として、今後考えなければいけない論点だろうと思いますので、今日ここでその丙案の問題について我々として議論をして結論を出すということはちょっと難しい。移行期の重要な問題としてあるという認識は持っておく必要はあるかと思いますけれども。
【髙木委員】検討会議の報告と強いて関係があるとすると、16ページに3回程度の受験回数制限を設けることが合理的だということが書いてありますが、そういうこととも絡むのだろうと思います。一切どこにもお触れになっておられないので、ペーパーに書かせてもらいました。
【井上委員】このペーパーでは、丙案的な要素は全く考えていません。むしろ、滞留を防止するために一律に3回の受験回数制限を提案しているわけです。丙案というのは、むしろ現行の司法試験の問題ですので、それはそっちで議論すべき問題だと思います。
【髙木委員】現行をどうするかということもお触れになっておられないので、また、一回も議論が出ていないのにどうだというお話も時によっては出るから、あえて言わせていただきました。
【佐藤会長】これは移行措置の問題として後でまた。
【中坊委員】私は正に問題のときの会長ですから、今言う能力とかそういうもので審査するんじゃなしに、回数だけで制限して、それによってやると。そうすると、今度は新しい移行期の問題で、今おっしゃるようにロースクールに行ったほうが得なのか、3回の試験を受けたほうが得なのかとか、妙なことになってきて、受験回数によってのみ若年者を入れるというためにやったというこの制度は、どう考えてみてもおかしい。
これはちょっと余計なことかもしれないけれども、司法試験を3回以内で合格した者が合格者の30%以上であるということになったら、この制度はやめるということになっていたわけです。それが今年の試験では37.5%に既になっているんです。そういう非常にいびつな、歪んだ上にまた歪んだような格好をしてきて、丙案というものをやってきた弊害が大変大きな問題を生んでいるわけです。これは先ほど会長もおっしゃいましたけれども、移行期のところでは是非もう一度御審議いただきたいと思います。
私はさっきの話に戻って、もう一点だけお考えいただきたいと思うのは、いわゆる研修所のところも、我々弁護士のところも先ほど公益的責務があると、ロースクールの先生にならなければいけないと言いました。同じように、裁判官、検察官の増員ということを非常に我々としてはうたっているわけです。それが今の研修所の実務修習のところで問題になってきたら、その裁判官、検察官の不足というのが早速問題になってくるわけだから、何も弁護士の増員だけではなしに、裁判官、検察官の大幅増員ということを、我々が1つの視点に持っているということを我々は考えておかないと、今言うように、幾ら移行期だと言っても、裁判官や検察官、現在のように2,000 人と1,000 人でいいんだよ。検察官は1,000 人、裁判官は2,000 人でいいんだよとなったら、そこのキャパシティーが研修の先生としての、裁判官、検察官の数が3,000 人も来たら到底足りないということは明らかなんだから、そういう点も我々として総合的に判断して、大きく人員増ということを考えているということを視点に入れておく必要がある。
【佐藤会長】当然そういう視点もあるし、さっきから言っていますように、ロースクールがどれだけ、どういう形でできてくるかという問題もある。いろいろ与件があると思うんです。そこは総合的に考えていかざるを得ない問題だと思います。御指摘の点は、我々としても、検察官も裁判官も大幅増員を図らなければならないということを決めていることですから、それも考慮に入れるべき事柄だと思います。
【吉岡委員】今の丙案というのは、経過措置どうするかというところで十分に議論していただければと思うんですけれども、16ページのところで、例外措置について触れております。
【佐藤会長】これは次にやります。区切って申し訳ありませんけれども、議事の進行上やむを得ませんので御了承ください。
司法試験の例外措置の問題は次にご議論いただくとして、ここでは一応こういうように理解するということでよろしゅうございましょうか。
法科大学院制度の導入に伴って、司法試験もその修了を要件とする新たなものに切り替える。新司法試験の受験資格の付与は、適切な第三者評価機関の評価-認定という言葉を使っていいかどうか、これは後で工夫させてもらいますけれども-そういう評価の制度が整備されることを踏まえて、それによる認定を受けた法科大学院を修了したことを前提とする。そういうことが望ましいのではないかという辺りで、一応この新司法試験の制度の在り方について確認させていただくということでよろしゅうございましょうか。
【吉岡委員】その関係でよろしいですか。
それで結構なんですけれども、利用する学生の立場から言いますとできるだけ早い時期に評価が分かっていないと不利益を被る。そういう意味では情報公開と言いますか、それを是非お考えいただきたいと思います。
【佐藤会長】分かりました。
【藤田委員】今おまとめになったのは、認定を受けた法科大学院を卒業しなければ司法試験の受験資格はないということになるんでしょうか。
【佐藤会長】その点については、これから御議論していただきます。
では、法科大学院にふさわしい新しい司法試験制度を考える、そういうことで御了解いただいたということにさせていただきます。
次に御関心の例外措置の在り方について御審議いただきたいと思います。法科大学院、それに相応しい新しい司法試験制度ができます、それはそれでいいけども、それだけでいいんですか、やはり何か他に考慮すべきものがあるんじゃないか、その点について御意見を賜りたいと思います。
【吉岡委員】この件については、前にも発言しておりますので、私の言いたいことは分かっていただいていると思うんですけれども、やはり社会的、経済的、あるいはいろいろな家庭の事情、そういうことでなかなか4年制大学を卒業して、それから法科大学院に行ってということが難しい人たちがいます。そういう人たちに対して、今の一発試験と言いますか、司法試験の場合には、公平に機会は与えられているんですけれども、今回のやり方でいきますと、法科大学院を卒業する。それも認可を受けられた法科大学院を卒業しなければ、受験することができないという、そこのところで不平等が生じてしまうという問題があると思うんです。
この不平等を生じないようにしなければいけないということを、私何回も言っておりまして、そういう中で夜間の法科大学院とか通信制とか、今はインターネットでもできる時代ですから、そういう方策とか。あるいは経済的には奨学金の問題とか、そういうことはお考えいただいて、かなり前進したと思っています。
ただ、そうは言っても、それだけでは救済し切れない問題があります。そういうことで、何らかの道筋を残しておいてほしいということをお話しいたしまして、これについては、経過措置かもしれませんけれども、社会的に納得できるような理由があれば例外を認めるということをここに書いていただいております。一応そこでの救済ということは考えられますが、もう一つ、そういう事情を考えたときの救済措置としまして、プロセスは大切にするという考え方も入れていくと、単位を少しずつ取ってためていって、それで必要な単位がたまった段階で受ける、そういうことを考えてもいいんじゃないかなと思います。
それを例えば単位制法科大学院というのか、それともそういうものは別にしなくて、単位制という制度にするのかという考え方もあると思うんですが、そういう道筋、そういうことをせめてお考えいただけないかなと思います。
【藤田委員】大体吉岡委員がおっしゃってくださったんですけれども、私も仮にこの法科大学院ができて、自分が学生で、どうしようかと進路を考える場合に、法科大学院へ進学して、2年なり3年なりの課程を踏まなければ受けられないとなれば、恐らく法曹界に進むのは断念したというか、せざるを得なかっただろうと思うんです。
ですから、今、吉岡委員がおっしゃったような特例措置で結構なんですけれども、現在の司法試験、いろいろ欠陥がありながら、その長所として挙げられるのは、公平、平等、開放というようなことがあるわけですから、法科大学院卒業が司法試験受験資格の原則ということは動かさないにしても、少数かもしれませんけれども、例外措置を是非残していただきたいと思います。認可してもらえなかった大学院で勉強した人達も含めましてですね。プロセスとして判断するというのであれば、学部教育の課程で、プロセスを見るという方法もありますし、司法試験、あるいは二回試験の口述試験をやった経験から言いますと、1時間話せばその受験者のことは全部分かりますから、そういうようなやり方もあると思います。
【水原委員】全く同感でございまして、法曹資格を取得する例外措置は認めるべきだと私も思いますが、ただ、その例外措置が基本理念を没却するようなことになったら困りますねという感じがいたしますので、その辺り、相当慎重に検討していただく必要があるということを申し上げておきます。
【井上委員】私も同感です。検討会議の方が来られたときに説明されましたように、基本は、法科大学院というものを経て、プロセスで教育をし、その後に修習が来る。これが本筋であり、そのプロセス自体をできるだけオープンなものにして、ハンディを負った人も無理なく勉強できるような制度を整えるというのが、やはり最も基本にあるべきことだと思うのです。それがどの程度実際に徹底するのかというところで評価、あるいは見込みの違いというものがあり、それとの対応で例外についても考え方が違ってくるということでしょう。
ただ、そうは言っても、確かにおっしゃるように、そういうプロセスにも乗れないという人もいるということも否定し難い。そのために例外措置ということは考えるべきだと思うのですが、今、水原委員がおっしゃったように、その要件などを安易なものにしますと、ねらっていたこととは違って、要領のいい人が専ら占拠し、本来そこで受け入れないといけない人達が通らなくなる恐れがあり、それでは困ると思うのです。
その意味で、要件を工夫しないといけない。それに、数の点も、例外であるということから、抑えざるを得ない。
もう一つは、同じ試験でいいんだろうかということがあります。新司法試験というのは、プロセスで教育を受けてきたということを踏まえて、その成果を試す。その試験だけが単独にあるわけではないと思うのです。そういう意味で、例外の場合、果たして同じ入口でいいんだろうかと、私は疑問に思っていまして、選抜の仕方も違ったものがあり得るんじゃないかと思うのです。
それと、もう一つ、そこを通った後の教育をどうするのかということがかなり重要だと思うのです。そういう例外措置で入って来た人の教育というのを充実したものにしないと、入ってはみたものの、多数を占める法科大学院出身者に対して出発点においてハンディを負うということでは、好ましくないわけで、その辺をも踏まえて、例外措置を設けるという方向でいくとしても、具体的な制度設計はかなり工夫しないといけないのではないか、そういうふうに私は思います。
【佐藤会長】例外的なものとして別途考える必要があるという点については、別の意見はございませんか。よろしゅうございますか。
そうしたら、時間の関係もありますので、この問題はこういうように一応確認させていただくということでよろしいでしょうか。
やむを得ない事由により、法科大学院への入学が困難な者に対しては、法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度整備の趣旨を損ねることのないように配慮しつつ、別途、法曹資格取得を可能とする適切な例外措置を講じるべきであると。今、井上委員がおっしゃったように、数、要件、それから試験の中身をどうするか、その後の教育をどうするか、考えてみるといろいろ難しい問題が確かにあるだろうと思うんです。その点について、今日ここで具体的にどうすべきかを論ずるのは、ちょっと難しいし、その時期でもない気がしますので、今日の段階では今申し上げたようなまとめ方でとどめておきたいと思いますが、よろしゅうございますか。
【佐藤会長】有り難うございます。
先ほど既に出ましたけれども、このまとめにもあるんですが、新司法試験についてはプロセスを大事にするということにも関係して、受験回数を3回程度に制限するということを考えるべきではないか。滞留するとまたいろいろ問題が出てくる。ちゃんと教育を受けて、3回とも通れないというのはいかがなものかということですね。その辺はよろしいでしょうか。
【曽野委員】それについては何年以内にというのは設けないんですか。せめて何年以内に3回と決めておく。
【佐藤会長】制度設計としては、試験時期が問題なんですけれども、そこで試験をまず受ける。そして、通らなければ次回。受験者はいろいろなことを考えるんでしょうね。
【井上委員】普通では続けて受験するということでしょう。時間を置くと法科大学院での教育の効き目も薄らいできますから、余り後になると多分受からないだろうと思うのですけれども、確かにおっしゃるように、飛び飛びに受けるという人が出てくることは考えられますね。その辺は、具体的な制度設計の段階で、考えてもらうということではいかがでしょうか。
【藤田委員】受験回数の制限は、学生たちの関心が非常に強くていろいろ質問に来るんですが、以前、敗者復活みたいな話がありましたね。何年か期間を置いて再度の挑戦を認めるとか、そういう議論は全くなかったんでしょうか。
【井上委員】余り期間を置きますと、プロセスによる養成というものの効果がなくなりますので、もう一回プロセスをやり直してくれと言わざるを得ないんじゃないかと思いますね。
【藤田委員】分かりました。
【佐藤会長】教育の中身も変わっていくかも分かりませんしね。
実際に具体的に考えるときに、曽野委員のご指摘も含めて考えさせていただきたいと思います。
次に、司法修習のほうに入りたいと思います。この司法修習の問題につきましては、前回も申しましたように、その実情をよく踏まえて審議をする必要があるだろうということで、今回も司法研修所の奥田事務局長に傍聴席にお越しいただいております。少しその点についてお伺いしたいと存じます。
更に、法務省から司法研修所刑事教官の三浦さん、日弁連から司法研修所弁護教官の本間さんにも傍聴席においでいただいておりますが、必要に応じて質疑などをしていただければと思います。
まず、奥田局長に私からお尋ねしたいんですけれども、前回、中坊委員からも御発言がありましたように、特に現場に出向いて行う実務修習について、私どもとして必ずしもよく存じてませんので、どのような考え方、仕組みで、具体的にどのようなことが行われているのか、ちょっとかいつまんでお話しいただけますでしょうか。
【奥田氏】司法研修所の事務局長の奥田でございます。よしろくお願いいたします。座って御説明させていただきます
お尋ねの実務修習でございますが、現在の実務修習は、全国50か所の裁判所、検察庁、弁護士会で実施されております。
実務修習では、修習生は先輩の法曹から言わばマン・ツー・マン方式による指導を受けまして、実際に進行中の生きた事件の処理というものを直接体験するということを通じまして、教室で学んだ法律知識、あるいは法律技術といったものを実際に用いる機会を持つということになります。
そういうものを通じまして、法曹に必要な実務能力というものを効果的に身に付けていただくということを目的として実施しております。
併せて実務修習では、法曹三者それぞれの仕事の実際を学びながら、将来自分が就く職種以外の仕事、裁判官、検察官、弁護士とそれぞれ分かれていくわけですが、自分が実際に就く職種以外のものの実情、あるいは組織といったようなものを理解してもらって、より広い視野からそのそれぞれの職務に取り組んでいただくということを目指しております。
各地での実務修習の具体的な内容でございますが、これは司法修習、実務修習の指導の目標、あるいは内容、方法といったもののガイドラインを定めた司法修習生指導要綱というものがございます。この指導要綱に基づきまして、各地の裁判所、検察庁、あるいは弁護士会がそれぞれ独自に決定していくというのが実情でございます。
参考までに今申し上げました指導要綱というのは、司法研修所の各教官室、5つの民事裁判、刑事裁判、検察、民事弁護、刑事弁護という5つの教官室がございますが、それぞれの教官室で原案を作成しまして、各実務庁会の意見も聴いた上で、最終的には司法研修所の全教官で構成しております教官会議で決定しているというものでございます。
実務修習の更に具体的な内容でございますけれども、例えば裁判修習を例に取って御説明申し上げますと、修習生はまず裁判官室に席を設けてもらいます。修習生席というのをつくりまして、裁判官と一日中、終始行動を共にするという形で勉強をしてもらいます。すなわち、もう裁判官になったのと言わば同様な形で勉強をしてもらう、修習に取り組んでもらうわけです。
具体的には修習生は法廷に裁判官と一緒に出掛けて、法廷活動を傍聴する、あるいは和解手続に立会うといったような傍聴のほか、それぞれ割り当てられた事件の記録を検討して、その検討の結果に基づいて裁判官と合議をする、ディスカッションをする、それを基に更に判決などの原案を書いてみて、それから裁判官に添削を受けて、また合議をするといったようなことで裁判実務を学ぶということになります。
もう少し具体的にその中身というものをお話ししてみますと、例えば被告人が殺意、殺す意思があったかどうかということを争っている殺人事件といったようなものを考えて御説明いたしますと、修習生はまずどういうことをやるかと言いますと、その事件の訴訟記録に丹念に目を通すことになります。そして、その事件の審理に立ち会って、法廷での裁判官、検察官、弁護人の訴訟活動などを傍聴いたします。そういうものを踏まえまして、事件の様々な証拠を一つひとつ検討する。その検討の対象としては、被告人が犯行に立ち至るまでのいろいろな過程、そして具体的な犯行状況、犯行後の様子、このようなものを一つひとつ事実認定をするという作業を行います。そういう事実認定の結果、仮にその事件が有罪だというような心証に達した場合には、次に被告人の刑を決めないといけませんので、量刑を決めるためのいろいろな事情を、更に証拠を基に認定していくということになります。例えば、犯行の重大性、動機はどうだったか、被害弁償がされたかどうか、被告人の犯行に至るまでの境遇がどうであったか、あるいはどれくらい反省しているかといったような様々な事情を検討して、通常はそれをメモなどにしまして、それを基に今度は裁判官と議論をいたします。裁判官との合議では自分の意見を述べ、裁判官から更にいろいろな質問を受ける。そんな過程を通しまして、その殺人事件の処理について学んでいくということになります。
今申し上げたような作業というのは、言わば陪席裁判官がやるような作業とほぼ同じようなものということになります。
修習生は、今申し上げたような裁判官の個別的な指導を受けながら、自ら裁判官の立場で事件に取り組むことになります。そうすると、どういう効果が期待できるかと言いますと、事実を表面的に追いかけるだけではだめである、すなわち、生身の人間の心理とか感情といったようなものも正確に把握しないと、正しい事実認定はできないということを痛感するというのが実務修習の成果として挙げられるのではないかと思います。
また、一件一件の事件の背景といったようなものを考えるときに、様々な人間関係、あるいは関係者の生活とか苦悩とか、そのようなものに考えが及び、そして、裁判というものがそういう関係者、あるいは家族の人生まで左右しかねない、そういう重みを持っているということを理解できるのも、この実務修習の成果ではないかと思います。
今は裁判修習を例にとって御説明したわけですけれども、検察修習、あるいは弁護修習でも同じような形態で修習がなされます。
簡単に御説明しておきますと、検察修習は、修習生が自分が検察官になったのと同じような形で検察官の仕事の実際を体験して学ぶということになります。これは具体的には一人ひとりの修習生が実際の事件を割り当てられまして、指導係の検察官というのがおりますけれども、その検察官の下で被疑者、あるいは被害者といったような人を実際に取り調べたり、捜査が不十分なときには、警察に指示をして補充の捜査をしてもらうという作業で証拠の収集を行います。
証拠を収集しますと、その事件についてのいろいろな事情を検討いたしまして、指導係の検察官と議論をしながらその事件を起訴するかどうかといったようなことを検討する、最終的な刑事処分を決めるという作業を行います。
被疑者の取調べ、これは私自身も修習生のころを思い出しますと、非常に思い出深く、あるいは印象深く残っているわけですけれども、正に生身の人間をすぐ近くで相手にして行うものですから、単に質問をするだけでは事実関係などというのは、本当に心を開いて語ってくれない、真実を語ってもらうためにいろいろな苦労をするというようなことも体験します。その際には、相手の境遇、あるいは人生といったものをこちらが本気で理解しようとする姿勢がないと、本当に心を開いて話してくれないなということを実感するのもこの検察修習でございました。
併せて犯罪の被害者からも話を聴きますと、被害者、その家族がどんなに大変な悩みを持っているか、あるいはどんな苦しい思いをしているかといったようなことを知るというのも検察修習でございます。
弁護修習も、修習生は一人ずつ、これは指導担当の弁護士の事務所に配属されまして、弁護士と終始行動を共にしまして、証人尋問とか和解といったような訴訟活動や、あるいは法律相談、示談の交渉、契約書の作成といったような訴訟外の活動を学び取る修習でございます。
この弁護修習では、修習生は本当に弁護士の仕事の幅の広さといったようなものを学び取りますし、依頼者などは、よほど親しい人でも打ち明けないような自分に不利なこと、弱いところ、これを弁護士にさらけ出して話すといったようなことを目の当たりにしまして、弁護士に寄せられる信頼の大きさ、そして、それに応える責任の大きさといったようなものを正に感得する、体得する、そういう修習でございます。
時間の関係で実務修習のごく中心的なものだけになりましたが、以上でございます。
【佐藤会長】どうも有り難うございました。
【井上委員】せっかくの機会ですので、2点お尋ねしたいと思います。
まず、全国の実務修習地、50か所ですか、これについてどこに何人の修習生を配置しているのかということは、前にこの審議会でも資料として配っていただいたのですけれども、具体的にどこに何人配置するのか、また、だれを配置するのかというのは、どういうふうにお決めになっているのかということが1点です。
もう一つは、近年、司法修習の期間が2年から1年半に短縮され、また司法修習生の数もどんどん増えて、今年から1,000 人になったわけですけれども、実務修習の面で、それに対応するためにどういう工夫をなさったのかということです。さらに、それに関連して、今後一層修習生の数が増えていった場合に、どういったところに更に工夫を要するのかという点についても、お教え願えればと思います。
【奥田氏】まず、御質問の第1点でございますが、実務修習地における修習生の配属数でございますが、これは全国各地の裁判所、検察庁、そして弁護士会の規模によって配属数は決まるということになります。裁判所、検察庁、弁護士会の規模というのは結局何になるかと言いますと、指導を担当していただく裁判官、検察官、弁護士の数、これがその規模ということの中心になります。
それから、併せまして、過去の配属数なども参考にしながら、最終的には各実務庁会の意見を毎年聴きまして、それで配属数を決めているということでございます。
次に、具体的な修習生、誰をどの修習地に配属するかという問題ですけれども、これは修習生を採用する際に、修習生への採用を希望する者から、希望する実務修習地を出していただきます。あわせて、その希望についての理由も書面で出してもらっています。研修所のほうでその希望地及び希望の理由、家族関係、例えば両親を養わないといけないとか、一緒に生活する必要があるとか、そういうことなどが中心になってきますが、そういう理由などを考慮しながら希望に従って決めているというのが実務修習の配置の関係でございます。
もう一点の御質問、修習の期間が2年から1年半に短縮されたことに伴っての工夫の関係でございますが、実務修習の期間も1年6か月間のうちの1年間ということで、短縮されましたけれども、修習の効果を維持するために、できるだけ効果的な指導を行うように工夫しているということになります。
例えば、司法研修所と各実務修習庁会の連絡をできるだけ密にするということが1つでございます。連絡を密にしまして、相互にどういうことをやるか、あるいはどういうことをやっているかということについての情報を交換し、司法研修所でのカリキュラムと実務庁会でのカリキュラムに連携を持たせまして、より効果的な修習をするようにしております。
それから、実務修習では、具体的な事件をできるだけ選別する、より研修に効果的な事件というのを選別するようにしまして、そういう事件を重点的に傍聴したり、書面の起案をしたりするということをしております。
併せまして、弁護修習ではできるだけ多くの多様な事件を経験させるという観点から、指導担当の弁護士以外の弁護士、あるいは事務所というものも修習生に割り当てまして、複数の事務所で弁護士実務が勉強できるような体制を設けてもらうというようなことも工夫しております。
それから、修習生の増加に対応する工夫という点では、できるだけ今まで申し上げましたような個別的な指導体制を維持するという観点から、実務修習の受け入れ人数を大都市の実務修習地を中心に大幅に増やすということで対応してきております。
実務修習はあくまでも法律実務家による実践的、あるいは個別的な指導というのを中心としてきておりますので、指導に当たることができる実務家の数、これが結局、修習生の実務修習の受け入れ容量を規定していくという面がございます。特に民事に比べますと、刑事裁判、あるいは検察といった刑事関係の容量が比較的小さいというのが実情でございます。また、弁護修習では、会員数が非常に少ない小規模の弁護士会がございますが、この辺りは受け入れ体制について、その規模による問題があろうかと思います。
質を維持しながら養成数を拡大していく工夫でございますが、これは実務修習だけではなくて、司法修習、それに加えまして、今後の大学の法学部の教育の在り方、あるいは現在検討されております法科大学院構想の整備の状況、それから先ほど議論がございました司法試験などの問題、こういうものの全体、すなわち法曹養成のプロセスを全体的に考えながら検討していく必要がございますし、実務修習、あるいは司法修習の容量という点でも、これらの要素と相関関係にあるということではないかと思います。
したがいまして、御質問の実務修習の容量を拡大する工夫でございますが、現段階で明確な形で申し上げるのはやや難しい点もございますけれども、いろいろな要素を考慮しながら増員に向けて柔軟に対応していくということであろうと思いますし、そういうことは十分に可能ではないかと思っております。
具体的にどうするのかということになりますが、現在、全国50か所の裁判所、検察庁、弁護士会で実務修習が行われているわけですけれども、その受け入れ庁会の範囲を更に拡大することについて検討するとか、あるいはそれぞれの実務修習、現在、民事裁判、刑事裁判、検察、弁護と4つに分けて実施しておりますが、この期間的なバランス、あるいは相互の関係といったようなものを検討する余地があるのではないかと思われます。また、集合研修と実務修習との関係といったような要因を考慮しながら、いろいろな方策を模索していくことになろうかと考えております。
併せて申し上げますと、今後、法曹人口が増加していけば、実務修習の容量というのも、それに応じて拡大していく面もあると思います。
【曽野委員】その1年間とおっしゃるのは、実習だけなさるわけですね。そうしますと、常に裁判所に通うとか、弁護士さんのところに通うとか、そういった時間は、トータルで何時間くらいになりますか。
【奥田氏】実務修習というのは1年間ございまして、その内訳は、民事裁判を3か月、刑事裁判を3か月、検察修習3か月、弁護修習3か月と、それぞれ全部3か月ずつ指定されたところに通って、そこにある事件を通じながらマン・ツー・マンで教えてもらうというシステムでございます。
【曽野委員】月曜日から金曜日までの9時から5時に起こることの可能性ということですが、それは、トータルで何時間ぐらいそれに接するのでしょうか。
【奥田氏】それは事件の発生状況などにも左右されますし、例えば記録を読むのは、必ずしもその時間にも限りませんので、夜の間も仕事をしますし、それから土日も持ち帰って勉強するということも当然予定しております。
【本間氏】弁護活動で今の点について付け加えたいんですが、弁護士というのは土曜も日曜も仕事をやっておりますので、弁護修習の場合には、修習生は土曜も日曜も出てくることを許されているというのが実情であります。
【曽野委員】私どもの仕事も1年中やっておりますので、よく分かります。
私はなぜ伺ったかと申しますと、私どもの行う調査にも、資料調査の部分と現場調査の部分とがあるんです。現場というのは、その場にいただけいいんです。どれだけ現場にいるかという問題は、時間が長ければ長いほどいい。そういう意味で、何時間をそれに費やされるかを伺いたかったんです。家で勉強するのは別です。
【奥田氏】弁護修習の話が出ましたので、バランス上検察修習のほうもお話ししておきますと、検察修習などは、それこそ捜査できる時間に限りがございます。勾留期間などが決まっているということになると、土曜日とか日曜日も当然返上して取調べを行うということも、恒常的かどうかは分かりませんが、決して少なくない状況ではないかと思います。
【吉岡委員】簡単な質問なんですけれとも、実務修習の前後に、前期と後期の修習がございますが、前期の修習というのは具体的にどういう内容なのかというのが一点と、後期とどう違うのか、これがもう一点です。
それから、今、司法研修所は和光市に1つしかありません。1か所だけしかない理由は何なのか。
それから、今年の二回試験の結果で20人近い方が不合格だったと聞いています。その不合格の数が20人近いというのは、大体普通の数なのか。私などからしますと、司法試験に合格するのがそもそも3%くらいしかないのだから、かなり優秀な人たちが集まって研修所へ行っているんだろうと思うんですけれども、それにもかかわらず、それだけ不合格者が出るというのは、どういうことなのかが理解しにくいんですけれども、なぜ不合格だったのかという点も、伺わさせていただきたいのです。
【奥田氏】まず第一点でございますが、司法研修所における集合研修と実務修習との関係ということになろうかと思います。司法修習は、できるだけ有機的な連携を図るよう構成されておりまして、そういうことで成果も上がっているのではないかと思います。
この集合研修と実務修習、今申し上げましたように、この有機的な関連性を持つことによって全体として体系的、あるいは実践的な教育の効果を生み出すということをまず目標としているわけでございます。
まず集合研修、後期修習も同じですが、特に前期修習では、それまでに習得してきた法律知識、あるいは理論というのが修習生にあるわけですけれども、実務においては、どのような場面でそうした法律知識、理論というのが意義を持つのかを裁判官、検察官、弁護士として、大変豊富な経験を持っております教官方が合議を重ねながら、実務的な観点から体系的にそれらを整理して指導に当たるというのが集合研修の目標ということになります。
実務修習で発生する事件というのは、当然のことながら、それぞれ様々な個性がございます。それから特性といったようなものもございます。実務修習は限られた期間の中でやっていただかざるを得ないわけですが、その中で基本的な事件の類型、あるいは問題点というのをすべからく体験するということは、これはなかなか難しいことでございます。そういたしますと、そうした事件に共通して存在し、そして、当然法律実務家として理解をしておいていただきたいと思われる基本的な問題について、具体的な事件を基に修習生用に教材をつくるなど工夫しながら、体系的な教育を行うということ、これが集合研修の目的ということになります。
こうした集合教育を行うことによって、初めて実務修習で個別、具体的な生きた事件を素材として、そういう意味で応用的なものになってこようかと思いますが、そのような実務修習をスムーズに行うことができる、そして、理解を深めることができるということになるのではないかと考えております。
前期修習というのは、言わば法律実務の基本を習得させ、併せて実務修習へのスムーズな導入を図る、こういう目的で実施しておりますので、司法修習の中でも重要な機能を有していると考えております。
一方、後期修習でございますけれども、このような前期修習と実務修習を前提に、実務修習で習得した体験などが、法律実務全体の中でどこに位置づけられるのか、大きな体系の中のどの部分に位置づけられるのか、このようなことを理解してもらうということが1つでございます。
実務修習では個別のいろいろな事件がございますが、実際の事件というのは、勿論体系立って発生するわけではございませんので、実務修習で学んだものを、そういう意味で体系的に整理する、後期修習には、そうした目的がございます。
実務修習でかなり幅広い経験をしてくるわけですけれども、そういうものを前提として、更にレベルアップした高度な実務教育を行うことによって、実務に就くに当たって必要とされる最低限の実力を身に付けてもらうということが後期修習の目的になろうかと思います。
後期修習では、併せまして、実務修習では各修習生が全国的にいろいろな経験をしてまいりますが、一方でその経験というのは、当然のことながら一人ひとりばらつきがございます。そのいろいろな経験を持ち寄りまして、それらを素材として互いに提供し合って、実務的な問題について教官が加わって討議・討論するというようなことで実務的な能力の向上を図るというようなカリキュラムも実施しているところでございます。
今申し上げたようなことで研修所の前期・後期修習と実務修習というのは、全体を通して実務家による相互に連携した密接不可分の教育課程というふうに位置づけております。
そういう意味では、実務修習だけ独立して実施しても、なかなか高い教育効果というのは得にくいのではないかというふうに考えております。併せまして、実務修習だけでは先ほども触れました体系的な法的な知識、あるいは均一、等質の知識、技能といったようなものを持った法律家を養成するということも難しくなると思います。
2番目の、司法研修所がなぜ1か所なのかということですが、今はとりあえず1,000 人を統一的に養成するには、今の研修所で十分だからということになろうかと思います
二回試験の関係は、正式に申し上げますと、最高裁に司法修習生考試委員会というのが設置されておりまして、そちらのほうで実施しておりますので、司法研修所で実施しておるわけではございません。今年は新聞でも報道されましたが、19名合格留保が出たということで、昨年、あるいはこの春に比べるとかなり多い数字が出ているんですけれども、これも翻って考えてみますと、過去には全修習生に対する割合では同じくらいの割合の人が合格留保になったというケースもございます。
そこで、あとは評価の問題ですが、その原因というのは、まだ、何とも申し上げられないということが今日のところの回答でございます。
【吉岡委員】大変御丁寧に有り難うございました。なぜ最初の質問をしたのかと言いますと、法科大学院との関係で、前期の集合修習、それがもしかしたら法科大学院でできるのではないかということを考えておりますので、それで質問させていただきました。
【水原委員】奥田局長から合格者が増えた場合の要工夫の点というところで、実務修習というのは実践的、個別的指導が必要だと。その意味で刑事関係、すなわち刑事裁判と検察は容量が少ないのが問題だと、こういう御説明がありましたが、具体的に言っていただくとどういうことになるのでしょうか。
【奥田氏】裁判所で言いますと、民事部の数と刑事部の数、それから、民事部の指導官、すなわち修習生を指導できる裁判官、それから刑事部の指導ができる裁判官、この数を比較しますと、やはり刑事部のほうがかなり少ないというのが実情でございます。
検察庁のほうも、そういう意味では刑事の関係というのは、地裁の民事部の指導官の数などに比べるとかなり少なくなるのではないかという趣旨で申し上げました。
【曽野委員】どうしてマン・ツー・マンでなければいけないんですか。私マン・ツー・マンでなくても、マン・ツー・スリーとかフォーでも大丈夫だと思います。
【奥田氏】御指摘のとおりでございまして、マン・ツー・マンというのは、非常に分かりやすい言葉を使ってしまいましたが、主眼とするところは、個別的な指導というところにございますので、場合によって、裁判官1人に対して修習生が2人付くというシステムは考えられるのではないかと思います。
【曽野委員】かえって面白いですね。3、4人だと修習生がいろいろなことを言いますから。私、裁判を傍聴しまして、裁判官が、かくもお違いになる面白い人種がいらっしゃるというのが分かったんですが、みんながわんわん言うととてもいい勉強になると思いまして、マン・ツー・マンはおやめになったほうが効果的なように思います。素人の考えで、申し訳ありません。
【藤田委員】期によって、この期はよくできるとか、よくできないとかいう話を聞くことがよくあるんですけれども、レベルのばらつきというのはあるものかどうかということが一つ。
それから、フランスは修習期間31か月、ドイツは2年ですか。我々のときは2年でしたが、今は1年半で、新幹線に乗っていたら、落第19人という電光ニュースが出て、修習期間短縮の影響かと出たんですが、そういうことがあるのかどうかを伺いたい。
【奥田氏】まず最初のばらつきの問題ですが、これは教官にお答えいただいたほうがいいかもしれませんが、民事裁判の教官をしておりました経験から申しますと、自分が担当したクラスだけを比較して、この期はできるなとか、あるいは去年の期の方がよかったかな、悪かったかなという感想は持ちますけれども、全体としての比較というのはなかなか難しいもので、レベルが上がったのか、下がったのかというのも、そういう意味ではなかなか一概に答えにくい問題かなというふうに考えております。
2点目の期間短縮の影響かどうかということですが、そこは私どもといたしましては、昨年入所し、この10月に卒業した53期が新しい体制、1年6か月に修習期間がなった最初の期でございましたが、全体の期間が短縮されたことに対応いたしまして、カリキュラムなどをいろいろと工夫をし、密度が濃くなった上に、いろいろな科目の共通化、あるいは参加型のカリキュラムといったような指導方法も様々に工夫してまいりましたので、そうしたことを考え合わせれば、修習期間短縮の影響があるとは今のところ考えておりません。ただし、このことについては、今後の推移を注意深く見ていく必要があろうかと考えております。
【佐藤会長】まだお尋ねになりたいことはいろいろとありましょうけれども、時間も有限なものですから、この修習の在り方について、あるいは司法試験とか法科大学院の関係等も含めて、修習の内容、期間、あるいは修習の規模の確保の方策などについて御意見がございましたら賜りたいと思います。
【吉岡委員】根拠があって言うわけではないんですけれども、今までですと、途中で何回も落ちてというのがあるのでしょうけれども、基本的には4年制の大学、法学部を出て、それで試験に受かれば、今は1年半ですが、それで法曹になれたわけですね。これからの新司法試験になった場合には、法科大学院が原則3年プラスになるわけですね。だとすれば、どこかで省略できるところは省略をして、逆にカバーできるところは、その過程でカバーをするという考え方を持っていく必要があるんじゃないかと思います。
1つは、法学部と大学院との関係があると思いますし、もう一つは、大学院と研修所との関係があると思います。今、御説明を伺っていますと、後期修習でいろいろな経験をしてきた人が、その経験を相互に交換し合うことによって交流するという、そういうことが入っているとすれば、後期修習のほうは、もしかしたら必要なのかとは思うんですけれども、前期修習のほう、それからもしかすると、実務修習のところも、法科大学院である程度カバーができないか。そういうことが有機的に連携が取れれば、もう少し効率的な教育ができるのではないかと思います。具体的にどこをどうするというほど私は知りませんけれども、そういう工夫ができる余地があるのではないかと思いました。
【佐藤会長】研修所からすれば、ロースクールについて、どういう内容のものができてくるのかについて実感できないものですから、今の段階で、こうだということはちょっと言いにくいんだろうと思いますけれども、今おっしゃるように、ロースクールが立ち上がって充実してくれば、お互いに有機的に連携しながら色んな工夫の余地はあり得るのだろうと思いますね。
【水原委員】今の点ですけれども、これから立ち上がってくるであろう法科大学院でどの程度の教育が行われるのか。その成果がどうなるのかということを検証してみないと、前期修習をこの中に入れていいのかどうかという問題もあると思うんです。当面は、少なくとも1年6か月程度の司法修習は必要ではなかろうかという感じがいたします。
だから、今会長がおっしゃいましたように、立ち上がった後で検証していって、期間をどうするか、内容をどうするかということ、役割分担をどうするかということを検討していくべきではないかと思います。
【中坊委員】私はむしろ今の水原さんのおっしゃるのと逆で、先ほど吉岡さんのおっしゃるように、ロースクールがどうあるかということによって、先ほどから言うように研修所がどうあるかというのが決まってくるわけですから、ロースクールというのは、言うまでもなく法学部の上に大学院として存在し、実務教育の視点から架橋するというところにあるわけですから、当然のこととして、司法修習という問題点は、極めてそういう意味における、特に吉岡さんのおっしゃったような前期修習というものは、本来ロースクールの中に入るべきものとしてこれからロースクールをつくっていかなければいけない。
したがって、研修というのは、今おっしゃる実務研修というものに限られるべきものとして想定されなければいけない。
これは先ほど言うように、ロースクールが全国に配置されるんですから、研修所も、今言うように1つだけでよいという問題でもないでしょうし、根本的に研修の在り方にメスが入れられなければいけない。
3つ目には、研修所も、最高裁判所司法研修所ということになっている。裁判所だけが管轄する。先ほどの司法試験も法務省だけが管轄するという問題についても、すべてがロースクールから全部が総合的に見直されなければいけないんだから、管理運営というものが、そういう単独の官庁だけでよいのかどうかというところが見直されるべき時期ではないか。そのすべてがロースクールがどうあるかということによって決まってくるという関係、我々審議会としては再確認していく必要がある。そのように思います。
【井上委員】中坊委員、吉岡委員、水原委員ともに、ある部分では共通していると思うのですが、ロースクールというものが立ち上がって、まず一番基本の部分をしっかり形作っていかなければならない。そのことに加えて、時間的な配分とか教員のことを考えますと、前期修習のところも全て担うというような制度設計は、現実的には非常に難しい。これは、検討会議の意見もそうなんです。
むろん、司法修習も、全く今のままでいいかといいますと、恐らくそうではなくて、さっきのお話にもありましたけれども、修習生が増加をしていく。我々もそういう方向を目指すと決定しているわけですので、それに効果的に対応するということが必要ですし、また、法科大学院でも実務への架橋的なことはやるわけですので、そういったことも踏まえて、修習の内容というのは当然工夫されるだろうし、工夫していかないといけない。
そうした上で、積み上げて、司法修習にどのくらいの期間が必要なのかということになると思うので、外から見て余り長過ぎるから縮めようといった発想でいくのは、余り健全な議論ではないのではないでしょうか。
それが当面の話ですけれども、その先の話としては、法科大学院というものが定着し、そこでかなりの部分が担えるようになる。特に教員の面で、自己生産をして一旦実務に出た人達が主力になってくるということになれば、教育の質とか内容も相当変わってくる。そうなってくると、司法修習との役割分担というものも、当然見直されるだろうし、そういう見直しを随時やっていくべきだと思うのです。
もう一つは、研修所自体の運営なんですけれども、私も現在の運営の実情を完全に承知しているわけじゃないんですが、全員の教官会議でお決めになっている。大学で言いますと教授会のようなものなんでしょうが、そういう形でやっていて、本当に具体的に何か問題が生じているのかどうか。そこがちょっとよく分からないのです。
ただ、その点も、これからはもっと人数も増えますし、いろいろ工夫していかなければいけないということで、三者が協力関係をより強くするということは必要でしょう。
それと同時に、我々から言うと、外の声ももっと反映してもらって、社会のニーズに応じたカリキュラム構成などを考えていってもらえればと思います。
最後にもう一点だけあえて申しますと、私は、集合教育の意味はもう一つあると思っているのです。それは統一修習ということでして、これはフランスなどで実際に感じたのですが、司法官と弁護士の養成を完全に分離してやっているために、両者の間に根深い相互不信があるのです。これに対し、我が国の法曹は、この審議会でもときどき例を見ますけれども、ときに激しい意見の対立がありますけれども、何か同期だとかそういうことで、共通の基盤はつながっていると思うんです。それが戦後採用された修習制度の大きな意義だったのではないでしょうか。確かに修習生の数が増えてきたら研修所も1か所では済まなくなるかもしれないですけれども、できるだけそういう共通の場を維持して、そこで法曹を一体として育てるということも、見逃せない点じゃないかと思います。
そういう意味で、いきなり分散して全国各地で実務修習をやらせるというのは好ましくないと、そういう感じを持っています。
【藤田委員】法科大学院と司法研修所の役割分担で、前回も大東文化大学の伊藤滋夫教授のお話を引用しましたけれども、事実認定教育、要件事実教育の一般的、理論的な部分は法科大学院で行い、各論的、実践的な部分は司法研修所の集中研修で行うというのが自分の修習の経験から言うと適当ではないかと思うことが1つ。
もう一つは、今、井上先生がおっしゃったことだと思うんですけれども、フランスの国立司法学院で社会人から採用した司法学院の学生が、法学部から来た一般の学生と交流することは非常に意味があるというふうに学長が言われましたが、実務修習だけだと自分の班に属する人としか接触しないわけですけれども、集合研修がありますと、未だにクラスメートと45年経っても付き合いがあるということがあります。そういう人間的な交流が法曹としての幅をもたらすといいますから、そういう点からいっても、集合研修ということの意義はあるんじゃないかなと思います。
【中坊委員】統一修習というのは非常にメリットがあることだろうと思います。それはそのとおりだと思うんです。同時に、法曹三者だけで、先ほども少し井上さんが言ったけれども、何もかもプロがやったほうがいいんだ、先ほど言った司法試験の合格者でも、水原さんが言うたけれども、我々で合格者の増員について、法曹三者だけで決めてきたわけです。そういうことに対する基本的な反省というのが、今度の審議会で出されないと、我々の抜本的な司法改革というのはならない。こういうふうに思っています。
【佐藤会長】確かに法曹三者だけで何もかも決めていくという従来のやり方について、この審議会が、正にそうしたことに対する反省を迫る性質のものでありまして、法曹三者は反省すべきところなのだろうと思います。
【竹下会長代理】今の点で、基本的にはそれで異論がないのですが、法曹養成制度改革協議会のときは、決して法曹三者だけで決めたわけではなくて、ほかに民間の方とか、大学人も入って議論をしたと思います。その結果、1,500 人対1,000 人という、多数意見と少数意見に分かれたという事実がございますので、ここはやはり押さえておいていただかなければいけないと思います。
【中坊委員】平成2年、私が会長のときに、10月16日に決めたわけです。そこで法曹三者が寄って、合格者の増員、合格者を平成3年から600 人程度に増加させ、平成5年から700 人程度にすると、法曹三者が決めているんです。だから、何も間違ったことは言っていない。
【佐藤会長】個別的に言えばいろいろあるでしょうけれども、大きく見て、外からは法曹三者だけで決めてきたというように見られてきたのは否定できないと思います。ですから、これからはその辺も踏まえて考えていく必要があるだろうと思います。
時間の関係でそろそろこの問題についてもまとめさせていただきたいと思いますが、先ほど奥田局長のほうから増員に対しては柔軟に対応するいう非常に心強いお言葉をいただきました。この司法修習の問題については、ロースクールが立ち上がるとともに増えてくるわけでして、それに実効的に対応するとともに、法科大学院の教育内容も踏まえて、修習内容を工夫していただく必要があるだろうと思います。
さらに、先ほどの井上委員のお話ですけれども、今後法科大学院制度が整備され、定着するに応じて、両者の協力関係についてもいろいろ工夫する余地が出てくるだろうと思います。また、法科大学院は是非そういうように成長してほしいと思っているんですが、柔軟な対応を考えていく必要があるだろうということを確認しておきたいと思います。
それから、司法研修所の運営についても、先ほどのお話ですけれども、法曹三者の共同関係を一層強化するとともに、法科大学院関係者とか外部の有識者の声も適切に反映したものにする必要があるんじゃないかということも確認しておきたいと思います。そんなところでよろしゅうございましょうか。
では、どうも有り難うございました。司法修習との関係はそういうように考えるということにさせていただきます。次に大体こういう形でロースクールは立ち上がっていくということでありますけれども、おおまかなスケジュールです。いろいろ技術的な問題があるところですが、その辺を詰めて可能な限り早期に立ち上げるということを考えるべきではないかと思います。その点はよろしゅうございますね。やるべきときは速やかに取り組まなければけないだろうと思います。
そうしますと、法科大学院ができて一番早ければ2年後にはその修了者が出てくるということになり、新司法試験の実施もそのときに合わせるということになりますけれども、そういうことでよろしゅうございますね。
そこで、問題は、先ほども既に出ております現行試験との関係です。受験生の進路選択等へも配慮しなければなりませんので、一気に切り替えてしまうということはなかなか難しくて、一定期間は経過的に新旧両試験を併存させざるを得ないと思いますけれども、その辺はやむを得ないということでよろしゅうございますか。
【竹下会長代理】やむを得ないのではないでしょうか。
【井上委員】併存と言っても、両方受けられるわけではありませんので。
【佐藤会長】勿論です。両方受けられるとなれば、それだけで制度的におかしくなります。両方が同時に走っているということは、一定期間はやむを得ないと思いますが、その期間をどのくらいに考えるかといういささか悩ましい問題があるんです。その辺について何か御意見があれば。
【中坊委員】なるべく短いほうがいいです。
【井上委員】不利にならない程度というと、中坊委員はどのくらいだとお考えですか。
【中坊委員】私は数年くらい。
【藤田委員】5年くらい。はっきり言わないで数年でもいいんですけれども。
【佐藤会長】では、数年ということで。
【井上委員】「一定期間」ということにしておいたほうがよろしいのではないでしょうか。
【佐藤会長】「一定期間」にしますか。では、「一定期間」ということにして、数年とか3年とか5年とかいう御意見が出ておったということでまとめさせていただいてよろしゅうございますか。
【中坊委員】先ほども言いましたように、移行の間に併存する現行の司法試験の在り方について、先ほども出ていた丙案なるものが非常に問題になっておって、私自身もそのときに関係したから抜本的改正を行うと言うか、見直す必要がある。
平成12年の試験終了後に見直すということまで明記されておるわけです。だから、現行の制度がそのままでよいということには当然前提にはならないと。やはり片方で抜本的に改正していくわけだから、それに伴って、移行するからといって、移行する間は従来のままでよいということには必ずしもならないということは、この審議会としても考えておいていただく必要があるということです。
【佐藤会長】1つの重要な視点として両者が併存するときの併存のさせ方ですね。移行期はいろいろ予測のつかないことがあるかもしれませんので、その辺を詰める必要があり、そのときに今の問題も含めて検討していただくいうことにさせていただきたいと思います。
【藤田委員】経過措置として従来の司法試験を残す場合の回数制限はどうするかという問題もあります。
【佐藤会長】それもあります。いろいろな問題が出てくるかもしれませんので。
【中坊委員】一番いいのは、三者で会ってディスカッションをすることです。
【北村委員】新司法試験の時期は、何年に導入するかは別にして、何月ですか。
【竹下会長代理】3年の修業年限の間のいつということですね。
【北村委員】ええ、でも、それはまた後の議論ですか。
【井上委員】検討会議の「検討のまとめ」でも触れているのですけれども、法科大学院の教育に与える影響ということが一方にあり、他方では、学生の進路決定の問題がある上に、もう一つ、試験というのは、今月やって直ぐ来月から研修所に入れるという話にはならないわけですから、その辺の実務的なところをも含めて詰めてみないと、ここで今時期を確定するというのは危険じゃないかなと思います。
【佐藤会長】どうも有り難うございました。
これまで御議論いただいたような内容を審議の取りまとめのペーパーとして次回の審議会で御確認いただくことにしたいと思います。そういうことでよろしゅうございますか。 当審議会の判断としましては、本日御指摘いただいたような問題点、検討すべき点などがなお残されているものの、方向性としては法科大学院、新しい司法試験、新しい司法修習による新たな法曹養成制度を採用しようじゃないかということで一応御意見はまとまったと思いますけれども、そういう理解でよろしゅうございますか。
【藤田委員】結構でございますが、この意見でも我々の審議でも出ておりますけれども、大学、あるいは学生に対する負担ということを考えて、相当程度の公費の補助ということを考えなければ、理想的な制度はできないと思うんですが、そういう前提でそれに進むという了解でよろしゅうございましょうか。
【佐藤会長】折りに触れて、それは声を高く主張していかなければならないことかと思います。ごもっともだと思います。
そういうことになりますと、特に法科大学院の設置認可とか、第三者評価の基準を始め、早急に内容を詳細に詰めて公表すべき事柄もありますので、関係機関においては、当審議会の議論の方向性を踏まえて、早急に準備に着手していただく必要があると考えますけれども、そういうことを期待するということでよろしゅうございましょうか。
【竹下会長代理】そのこと自体は全くそのとおりで、なるべく早く基準をつくって公表していただきたいと思うのですが、同時に公表した後の周知期間と言いますか、それもある程度考慮していただきたいのです。いろいろな噂が乱れ飛んでおりまして、一部の人たちだけが詳しい情報をつかんでいて、さっと出るのではないかというような、まあ疑心暗鬼だと思いますけれども、そういうことも言われているようですので、やはり公平性を担保するという点から言うと、なるべく早く発表していただいて、ある程度準備期間と言いますか、周知期間を置いていただいたほうが、制度そのものの公正さに対する信頼を確保するという点でもよいのではないかと思います。
しかし、つくる以上は、いつまでもぐすぐずしているという意味では毛頭ありません。
【佐藤会長】御趣旨はよく分かります。
【中坊委員】先ほどおっしゃったように、我々審議会としては、今言うようにおおまかな方向とか、そういうのはただいま合意したところでいいと思うんですけれども、更にその内容を煮詰めていくという今後のところが、今の会長のお言葉ですと、関係機関とおっしゃいましたけれども、関係機関とは一体何ぞやという問題が当然出てくると思うんです。それが文部省だけを意味するのか、そうじゃなしに、今言うようにこれは司法試験から司法研修まで全部含むんだから、当然のようにそれに利害関係を持つ法曹三者とか、そういうのも全部入ってきて、それを具体的にどこで、どのようにこの後の煮詰めを、早く生むんだということまでは決まったけれども、その生むための更なる検討が要るんじゃないかという気がするんです。
そういうことについてもう少し詳しく議論しておかないと、関係機関、関係機関と言ったら、私も関係やと言い出したらきりがないでしょう。そういう点についても、もう少し考えていただかないと、これを実際に生もうと思えば、生むためのものがないと、今のままでは、関係機関と言ったってつくれませんよ。
だから、その点はもう一度考えていただいて、次回までにでももう少し具体的な案でも提案していただければいいんじゃないかという気はしています。
【佐藤会長】今の御指摘はごもっともで、前回、鳥居委員がおっしゃったこととも関連することなんです。大学院として位置づけるわけですから、主として文部省を中心にということになるんだろうと思いますけれども、第三者評価機関をどういう性格のものとし、どこに、どういうように位置づけるのかといったような問題は、正に関係機関といろいろ話した上で考えないといかぬところでありまして、今の段階でこうだといいかねるところがあります。
【中坊委員】先ほど藤田さんもおっしゃって、公費の支出だというと、もう一つ問題ですから、予算措置が伴わなければいかぬのだから、今後具体的に生み出すためにどういうものが要るのか。私も大分前に一遍言いましたけれども、そこがないと、この審議会で、今のは確かに方向づけと大体のあれは分かりましたけれども、生み出すためには、もう一工夫要ると思うんで、その点を次回にでもまとめていただくまでにもう少し具体化していただいて、お話しいただいたほうがいいんじゃないかと思います。
【佐藤会長】次回までには無理です。
【北村委員】確認させていただきたいんですが、今、大学関係者が一番関心を持っているところだと思うんですが、基準さえ満たせば、自由に設置することができるということでよろしいんでしょうか。
【佐藤会長】手を挙げて、基準を満たしていればね。
【北村委員】それについての制約はないということですね。
【佐藤会長】はい。そういうことです。
【中坊委員】生み出すためには、次回が仮に無理だったとしても、我々としても、もう少し具体的に考えておかないといけないと思います。そうしないと、これは実際に生まれません。また、今度は考えもしなかったものができたと言って困ることになります。
【佐藤会長】そこが非常に悩ましいんです。我々だけで考えても、これまた動かないんです。
【中坊委員】いろいろ考えていただいて、また、御提案をいただきたいという気持ちです。
【佐藤会長】次の会議までと期限を限られますと、私はそうですとは言いかねます。じっくりととは言いませんけれども、できるだけ速やかに、しかるべき方向を出したいと考えています。
【中坊委員】もう待っているわけでしょう。ここのロースクールを全部含めてね。そういうときに本当に生み出すんだということが分かる程度には、少なくともする必要があるという意味です。
【佐藤会長】いろいろ努力させていただきます。
どうも有り難うございました。今年の春から井上委員、鳥居委員、吉岡委員、今日は山本委員は御欠席でございますけれども、特に御苦労様でございました。委員の皆様もいろいろお考えのところがおありだったと思いますけれども、今日、こういう形でお決めいただいて、会長としても非常にうれしゅうございます。本当に有り難うございました。
この件は以上で終わらせていただきまして、2番目の件でありますが、国民の司法参加に関する取りまとめペーパーでございます。
事前に配付させていただいておりますけれども、この取りまとめのペーパーにつきましては、担当の藤田委員、石井委員、髙木委員、吉岡委員及び井上委員で御苦労いただきまして、取りまとめていただいたものをあらかじめお配りさせていただいたわけであります。藤田委員始め担当の委員の方々、本当にお忙しい中有り難うございました。
今日、実はお手元にもお配りしておりますが、本日御欠席の山本委員から会長あてに、御意見のペーパーを頂いております。そういうことなのですが、この取りまとめペーパーについて御意見をちょうだいできればと思います。
【吉岡委員】この山本委員の意見はどうするんですか。
【佐藤会長】いささか悩ましいところですね。
【藤田委員】私も今ここで拝見したわけで、山本委員もいらっしゃいませんし、石井委員もお帰りになったんでしょう。そうしますと、吉岡委員と私だけなんで、ちょっと検討させていただく必要があるかと思うのですが。
【井上委員】もし次回時間があるようでしたら、次回にということでいかがでしょうか。みなさん、かなり疲れている。髙木さんもおられないし。
【藤田委員】いろいろ御注文が出たのは身の不徳の致すところでございますけれども、いろいろ御意見があるところなものですから、これも検討させていただいて、別途また相談させていただければと思います。
【佐藤会長】では、そういたしましょうか。よろしゅうございますか。
【水原委員】この点につきましては、相当異論のあるところでございますので、個別の問題としましては、ある程度の時間を取っていただきたいとお願いいたします。
【佐藤会長】分かりました。ただ、中間報告に向けて、ある程度議論を収斂させなくてはいけませんので、できれば次回に、今日の法曹養成についての取りまとめペーパーと、今日の山本委員の御意見も踏まえて、国民の司法参加についての取りまとめペーパー、両者について御了承いただければと思いますが。
【水原委員】山本委員のこの御意見も私先ほど拝見しましたが、相当ペーパーとは違った意見が出ております。これは国民等しく大変な関心を持っているところでございますので、時間の制約があることは分かっておりますが、是非その点の御考慮をいただいて、審議が十分尽くされるようにお願いいたします。
【佐藤会長】取りまとめのペーパーは、いろいろ御苦心いただいてまとめていただいているものですから、それはそれとして非常に意味のあるペーパーですので、それを前提にお考えいただきたいと思います。山本委員の御意見も含めて、会長代理とも少し検討させていただいて、31日に改めてペーパーを出して、できれば御了承いただきたいと思います。
では、この件はよろしいでしょうか。
【竹下会長代理】この問題については藤田委員に主査をお務めいただきましたから、会長と私も協議いたしますが、藤田委員にもご検討いただくこととするのがよろしいのではないでしょうか。
【佐藤会長】また、御相談申し上げますので、よろしくお願いいたます。
次に、配付資料についての説明を、事務局のほうからお願いします。
【事務局長】配付資料一覧表の3番目は、5月に実施しました海外実情調査の報告書でございます。ようやくでき上がりましたが、事務局で作成いたしましたものを、会長、会長代理、及びフランスにつきましては、藤田委員にごらんいただきまして、それぞれの御了解を得た上で本日お配りいたしたものでございます。その他については特に説明することはございません。
【佐藤会長】それでは、次回の審議会ですけれども、10月31日、1時半から5時まで、この審議室で行いたいと思います。
次回は既にお決めいただいたように、夏の集中審議に引き続きまして、裁判官制度に関する問題につきまして意見交換をしたいと思っております。事務局のほうで、諸外国の裁判官制度、戦後我が国で行われた最高裁判所判事任命に関する諮問委員会などの資料とか、夏の集中審議における議論を整理したものを用意していただき、それらに基づきまして、意見交換を行いたいと考えております。
それから、民事裁判の利用者に対するアンケート調査につきまして、ほぼ集計が終わり、ある程度分析も進んでいるということのようですので、お願いしておりました千葉大学の菅原教授に来ていただきまして、中間的な御報告をお聞きするということにしたいと考えております。
先ほど申し上げました法曹養成に関する取りまとめペーパーについての御了解を得たいということと、国民の司法参加に関する取りまとめペーパーについてもお諮りしたいと考えております。
【井上委員】一応ベースになるペーパーはあるわけですから、時間もないことですので、各委員の意見もできればペーパーにして出しておくということにしたほうがよろしいのではないかと思います。
【佐藤会長】そうですね。山本委員から今日ペーパーが出ていますけれども、他の委員も、あらかじめ御意見を寄せていただくと、取りまとめるのに好都合かと思いますので、お願いいたします。
【吉岡委員】裁判官の問題、次回取り上げていただくんですけれども、諸外国の裁判官の任用制度などの概要について、私の場合にはアメリカだけは聞いてきて少しは分かったかなと思うんですけれども、各国の状況がどうなっているのか、その辺の資料ができれば、お出しいただければ有り難いのですが。
【佐藤会長】諸外国の裁判官制度の概要に関する資料は用意させていただきます。
【吉岡委員】特に国民とのかかわりについて、まとめていただければと思います。
【佐藤会長】そうした事柄を中心に取りまとめた資料をつくってもらっております。最初にその資料に基づいて、事務局のほうから説明していただこうかと思っております。
本日はどうも有り難うございました。記者会見が残っておりますが、法曹養成ですので、井上委員にも御同席いただけますでしょうか。恐縮です。
では、どうも有り難うございました。
(以上)