司法制度改革審議会

第37回司法制度改革審議会議事録



日 時:平成12年11月14日(火) 13:30~17:45

場 所:司法制度改革審議会審議室

出席者(委 員)

佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、井上正仁、北村敬子、曽野綾子、髙木 剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本 勝、吉岡初子

(事務局)
樋渡利秋事務局長

議事次第
1.開 会
2.中間報告の検討について
3.閉 会

【佐藤会長】時刻がまいりしたので、ただいまから第37回会議を開会いたします。
 本日は、既に委員の皆様にお送りして御意見をいただきました中間報告の原案につきまして、皆様にお諮りして改めて御意見を頂き、できましたら、本日、中間報告の内容を確定できるようにさせていただきたいと思っております。もちろん、次回の20日もこの中間報告について審議を予定しておりますので、その際にも当然皆様の御意見を頂くことになりますけれども、大きなところにつきましては、本日の皆様の御意見を踏まえて、具体的な文書の形としてまとめることができればと考えている次第です。よろしくお願いいたします。
 最後に少しお時間を取っていただきまして、中間報告後の審議スケジュールにつきましても、皆様にお諮りしたいと存じております。
 中間報告の審議に入ります前に、先週の8日でございましたけれども、衆議院法務委員会に設けられました司法制度改革審議会に関する小委員会が開催されまして、私と会長代理が参考人として出席し、小委員会の委員の皆様方からの御質問にお答えいたしましたので、その概要などにつきまして、御報告させていただきたいと思います。
 この小委員会への出席につきまして、前回、10月31日でございますけれども、その審議会後に私と会長代理に国会から連絡がありまして、委員の皆様に事前にお諮りするということができませんでしたけれども、国会からの御要望ということですので、会長代理と相談の上、出席させていただくことにいたしました。
 小委員会は、午前10時から午後零時30分まで開催されまして、冒頭30分程度、私から審議会の審議状況などについて説明させていただきました。その後、小委員会の委員の皆様からの御質問に、私と会長代理で、これまでの審議状況や各審議項目ごとに取りまとめを行ったペーパーの内容等に基づきまして、お答えさせていただいた次第です。
 小委員会の各委員からの御質問や御指摘等につきまして、その概要を取りまとめたペーパーを手元にお配りしてありますので、詳しくはそれを御覧いただければと思いますが、法科大学院を中心とする法曹養成制度に関すること、法曹一元等の裁判官制度の改革に関すること、陪審・参審制を中心とする国民の司法参加に関すること、弁護士・裁判官・検察官の法曹人口の増加に関すること、隣接法律専門職種の訴訟手続への関与に関することなどについて、貴重な御指摘を頂くことができました。
 この小委員会につきましては、議事録を作成することになっている旨聞いておりますので、その議事録は、後日事務局から委員の皆様にお配りしていただくことにいたします。是非議事録をお目を通していただきまして、今後の審議の参考にしていただければと思う次第です。
 小委員会については、以上でございます。
 これから本題の中間報告の原案につきまして、意見交換に入ることにしたいと思います。
 既に委員の皆様に御了解をいただきました中間報告の項目整理案に基づきまして、私と会長代理とで中間報告の原案を作成し、委員の皆様にお送りして、修正等に関する御意見をちょうだいしましたので、本日はその頂きました御意見を踏まえて、更に私と会長代理で相談させていただいて、原案を修正したものをお手元にお配りしております。
 委員の皆様に原案をお送りして、御意見を頂くまで、十分な時間を取ることができませんでしたことを大変申し訳なく思っておりますが、お忙しいところ各委員には原案を熱心に御検討いただきまして、様々な貴重な御意見を頂くことができ、本当にありがとうございました。
 本日、お手元にお配りしました原案を修正いたしましたものも、既に委員の皆様にお送りしておりまして、これも余り時間がなく、御検討が十二分にできなかったといたしましたら、誠に申し訳ありませんけれども、既に御覧いただいてお分かりのように、最初に委員の皆様にお送りした原案に修正等を加えた部分には見え消しやアンダーラインを引くなどしております。その修正部分も含めまして、中間報告の原案につきまして、順次御意見をちょうだいできればと考えております。
 なお、中間報告の原案につきまして、前回の審議会において、公開はしないということで委員の皆様の御了解を頂いておりましたけれども、その後、一部の報道機関で、中間報告の内容が判明したというような報道がなされております。どのような経緯でそのような報道がなされたのか、私としても、不可解で極めて遺憾なことだと思っておりますが、中間報告につきまして、次回の審議会においても御意見を頂くことにしておりますから、引き続き決定するまでは、原案段階のものは公表しないという扱いにしたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、中間報告の原案につきまして御意見を頂きたいと思います。
 まず、各論に該当する「3.人的基盤の拡充」、「4.制度的基盤の整備」、「5.国民の司法参加」まで、順次御意見を頂きまして、その後総論に該当する「1.はじめに」、「2.今般の司法制度改革の基本理念と方向」、さらには「6.おわりに」、そういう順序で御意見をいただければと考えております。総論の部分につきましては、各論に関する部分の記載内容等に応じて変更するということも考えられますことから、このような順番で御意見をいただければと考えた次第です。
 また、本日は時間も限られておりますことから、できましたら、意見交換も皆様から修正等に関する御意見を数多く頂いた部分を中心に行えればと考えておりますので、何分御協力のほどをお願い申し上げます。
 この審議の過程で、取りまとめにつきまして御苦労いただきました委員も適宜御発言いただければと考えております。
 それでよろしゅうございましょうか。

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】それでは、12ページの「3.人的基盤の拡充」、特に「(1)法曹の質と量の拡充」というところから入りたいと思いますが、どなたからでも結構でございますので、よろしくお願いいたします。

【吉岡委員】12ページから順番じゃなくて、少し飛んでもよろしいでしょうか。

【佐藤会長】結構です。

【吉岡委員】16ページの入学者選抜、マル3のところですけれども、ここで3分の1くらいのところで、一定割合以上の入学をさせるということが書かれています。この一定割合以上というのがどのくらいかというのは、前回もかなり議論になったところですけれども、そんなに少ない割合ではないというのは共通認識だったと思います。
 そういうことから言いますと、ちょうど太い字で書いてある下から3行目から4行目に掛けて、「法科大学院には学部大学での専門分野を問わず受け入れ」というふうになっています。ここのところに「広く受け入れ」ということで、「広く」という文言を入れていただきますと、一定割合以上というもののイメージがかなりはっきりしてくるのではないかと思いますので、「広く」という文言を入れていただきたいというのが一つでございます。

【佐藤会長】社会人等にも「広く」と出てきますけれども、いとわずにこちらも広くということですね。

【吉岡委員】はい。何か適当な文言がないかなと考えたんですけれども、どうもボキャブラリーが少なくて申し訳ありません。

【井上委員】こだわりませんけれども、その段落の上から2行目で同趣旨のことを言っているのですね。ですから、何度も言う必要があるかどうか・・・。

【吉岡委員】社会人等を一定割合と言うと、はっきりしないと思うので、もっと適切な文言があればあれなんですけれども、ちょっと見つからなくて。

【井上委員】入れても余り大差はないと思いますが。

【佐藤会長】よろしゅうございましょうか。

【竹下会長代理】では、入れましょう。

【佐藤会長】ここは、「広く受け入れ」とします。

【髙木委員】私も今、吉岡さんの指摘されたその後のところなんですが、例の3年、2年の問題で、私が前回も原則3年ではないかということを主張しました。これを見ていますと、原則2年になっていきかねない議論の実態みたいなものがあること、一部の大学で具体的にそういうことを御検討の向きもあるということを聞いたりすることも含めて、やはり原則は3年ですよという感じが、もう少し感じられるような表現にならないものかなと思います。

【佐藤会長】15ページですね。標準修業年限とあるわけですけれども。

【井上委員】今、髙木委員が問題になされたところは、入学試験の方法なのですが、16ページで、ベースはすべての志願者に適性試験を行うということで、その思想というか、考え方がはっきり出ていると思うのです。それに、会長のおっしゃったとおり、前の標準修業年限は3年とするということを明示しており、2年制だけというのはあり得ないというのは、これではっきりしているのではないですか。
 この辺はかなり議論のあったところで、この報告案は我々がこの前合意した文書に沿って書かれているのだと思いますから、それをこの段階で大きく変えるのは難しいのではないかという感じがします。

【髙木委員】どこの大学だか忘れましたけれども、全部2年にするという議論があると聞きますが・・・。

【井上委員】それはあり得ないということは、メッセージとして発しています。

【髙木委員】そういう内容で、ある大学でシンポジウムでやりとりされたとかというのをお聞きしたことがあって、主として検討されている人が、既存の大学の法学部の先生方を中心に検討されている。そういう検討のバックグラウンドにある先入観は、2年論中心で、原則は3年で、2年型というのは、法学部既修者だって、本当に実務を含めてということで言えば、3年だって十分あり得るんじゃないかなということで、2年はごくごく限定されたものだと。

【竹下会長代理】その趣旨は、15ページのところに出ているのではないでしょうか。「標準修業年限は3年とし、併せて」ということですから、3年の方がなくて2年だけということはないというのは、これで分かると思うのですが、いかがでしょうか。

【井上委員】私も、髙木委員が今おっしゃったようなお考えをなさっている向きもあるということは聞いておるのですけれども、そこは恐らく誤った情報か誤解に基づいていますので、こちらの方でも、発信していることをさらに徹底させていかないといけない。そういう問題だと思うのです。
 今のところをまた議論し出しますと、結局、実質的な議論の蒸し返しになりますし、この案で十分趣旨は出ているのではないかなと思います。数の上で多い、少ないというのを、ここで決めるというのは非常に難しいですから、法学部出身者以外の人を一定割合以上採るという点と、基本的には適性テストを共通して行うという点を厳守してもらえれば、その趣旨は徹底するのではないかなと思うのです。

【鳥居委員】今、髙木さんがおっしゃっている問題点に加えてもう一つの問題があると思うんですが、法学部の既修者云々という考え方がときどき出てきて、これは入れようということで来たわけですが、法学部既修者というのは何なのかという問題があって、例えば、ABCDの評点で評価している大学の、Dはしようがないとして、Cがずっと並んでいてもそれでも卒業はしますね。それでも既修者ですか。

【井上委員】そういうことではなくて、法科大学院として独自に、基礎的な学識があるかどうかをテストするということです。法学部を出ているというだけでは駄目なのです。また、出ていなくても、基礎的な学力があると認められる人は法学既修者と考える。大学によって成績評価がばらばらであるということは、ここでは問題にはならないような仕組みにはなっているのです。

【佐藤会長】よろしゅうございますか。髙木委員、原則・例外というと、何が原則で何が例外かという話にもなりかねず、一応ここの制度設計としては、標準修業年限が3年、それをベースにして考えようという発想ですので、よろしゅうございましょうか。

【髙木委員】結構です。

【佐藤会長】それから、アンダーラインが引いてある、例えば、17ページのところですが、これも髙木委員の御意見だったと思いますけれども、「要件事実論や事実認定論の基礎部分」という形で入れさせていただきました。
 それから、このページで言いますと、中坊委員の「相当程度が新司法試験」というところを太文字にさせていただきました。
 また、井上委員の御意見もあって、その下のところを大部分消しましたけれども、それは、簡潔化を図るという趣旨から、ここまで書かなくてもいいだろうということで削らせていただいたものです。

【髙木委員】19ページから20ページに掛けて、新司法試験のことが書かれており幾つか直していただいているようですが、これは私の読み方が悪くて、どこかに書いてあったら御指摘いただきたいんですが、いわゆる資格試験的運用と言うんでしょうか、新司法試験の考え方は一種の資格試験だということでないとおかしいんじゃないかということを申し上げましたが、その辺のことはどこかに触れてあるのでしょうか。

【井上委員】そこのところは、「資格試験」というのはどういうことを意味するのかということを巡って理解にずれがあったものですから、「資格試験」という言葉を使うのは非常に難しいわけです。
 おっしゃった趣旨のようなことは、「b.試験方式及び内容」のところで、厳格な成績評価や修了認定を行うことを前提とすれば、それを踏まえて、そこをきちっと通ってきた人が通るようなものにする、そういうものにすべきであるという趣旨のことが書かれていまして、これは文部省の検討会議の報告を踏まえたものなのですけれども、全体として、そういう考え方がここに流れている、そういうふうに読み取れると思うのです。

【吉岡委員】井上委員のおっしゃることも分からない訳じゃないですが、20ページの試験方式及び内容というところに、文言を挿入したらどうかと思います。下から3行目辺りのところで、「大学院の修了者又は修了予定者に新司法試験実施後の」というふうになっているところですけれども、その予定者という後に、「予定者のうち相当程度が合格する試験とすべきである」という文言を入れて。

【佐藤会長】それは17ページの先ほどのところでまさに、しかも太文字でありますので、趣旨は出ているんじゃないかと思います。

【井上委員】御趣旨は分かっているのですけれども、試験のところに入れてしまいますと、法科大学院がどういうレベルのものであっても、相当程度が受かる試験にしろというように読め、そういうのは試験としてはおかしいと思うのです。それこそ、髙木委員がおっしゃる資格試験の思想とも逆になって、数合わせみたいになってしまうわけですから。

【吉岡委員】17ページで読めるということですか。

【井上委員】全体の仕組みとしては、そういうふうに考えるべきだと思います。

【吉岡委員】それでは結構です。

【佐藤会長】19ページの第三者評価のところについても、いろいろ御意見を伺いましたが、現段階ではこの程度にとどめさせていただければと思うんですけれども、よろしゅうございましょうか。

【吉岡委員】いろいろと申し訳ないんですけれども、第三者評価の2パラグラフのところから3行目の太字のところですけれども、「適切な機構を設けて、第三者評価を継続的に実施する」というふうに書いてございます。これで内容的にはよろしいと思うんですけれども、適切な機構というものの性格をもう少しはっきりさせるという意味で、「公平・公正な構成による適切な機構」という、その10文字程度を入れていただけないかなというのが1点です。かなり機構の性格が分かるかなと思います。

【佐藤会長】第三者機関というのは、評価をする機関ですから、当然そうならなければ権威を持ちようがないわけで。

【吉岡委員】私もABAだとか、そういう組織が加わったような機構ということを前に申し上げたことがあるんですけれども、そういう第三者機関の構成というのはすごく重要だと思いますので、そういう意味で申し上げました。
 それから、第三者評価を継続的に実施する。これも当然必要なことですし、継続的に実施する内容としては、不適切なものは取り消しもあるという意味も含んでいると考えてよろしいですね。

【佐藤会長】適格認定の評価のところですね。当然入っております。先ほどの御趣旨は分かりますけれども、ちょっとくどくならないかなと思うので。

【井上委員】「適切な」というところに、当然含まれているというふうに理解していたのですけれども。

【吉岡委員】少しくどい人間なのかもしれません。

【井上委員】いえいえ、丁寧なのですよ。
 ちょっと戻ってよろしいですか。17ページの上の実務教育の導入部分の括弧の中、「例えば」ということで書き入れられたところなのですが、これは意味を明確にするために例を挙げるという趣旨だと思うのですが、一つは、そこまで突っ込んで議論していないということと、もう一つ、「例えば」ですから例示なのですけれども、外に出ますと、「例えば」が飛んでしまって、非常にきつく受け取られる恐れがありますので、いかがなものかなと思います。
 現に、文部省の検討会議の報告の中で、カリキュラム案というのがあり、「例えば」と何度も繰り返して断っているのですけれども、「例えば」が飛んでしまって、ああいうものを必ず設けないといけないとか、そこに載っていない科目は不要なんだというような受け止め方も一部でされているものですから、こういう書き方もきつくないかなということを懸念しているのです。
 この点、文部省の検討会議の報告ではかなり慎重な言葉使いで配慮をしていまして、基幹教育というのは、理論だけではなくて、要件事実の問題とか事実認定のことも含んで、そういう授業内容にしてくださいよという形にしているわけですが、この案ですと、何かここの部分だけ独立した科目とか授業を設けないといけないというふうにもとられかねないものですから、御趣旨はよく分かるのですけれども、ちょっとその点が心配だなという感じがします。

【髙木委員】今、井上さん御指摘になった部分は、20ページの司法修習のところの内容のところと絡むんですが、ここでは21ページの上から3行目以下に、なお書きで、役割分担の在り方云々という表現もあるんですけれども、今の議論から言いますと、できるだけ前期・座学的にやっていた分は、法科大学院に取り込んでいったらという議論のトーンだったんだろうと思うんです。

【井上委員】そこまで合意していたかどうかなのです。そういう御意見も有力であったことは事実ですけれども、そこのところは、法科大学院が立ち上がって、それがどういうふうに整備されていくかということに応じて、役割分担を随時見直していくというのが、21ページの今、髙木委員が御指摘になった部分の趣旨でして、それに先行して17ページでこういうふうに書いてしまいますと、それがマストであるかのように受け取られかねない。そこは重要な点なのです。実質としてこういうことを当然考慮しないといけないのですけれども、こういうふうに書いてしまうと、かなりきつく受け取られるのではないか、そこがちょっと心配なのです。

【吉岡委員】井上委員がおっしゃるように、問題の検討会議のカリキュラムの中身については、確かに何法が抜けているとか、そういうようなことを大分言っていらっしゃる方がいらっしゃるので、懸念なさることは分かります。ただ、法科大学院はもともと法曹養成のためにつくるという大きな目的は、そこにあると思うんです。法曹養成というのは、法学部の教育とは当然違うということですね。4年の法学部の教育とは違うわけですね。やはり法曹になるために何が必要かというところに、特化しなければいけない。
 そういうことから考えると、髙木委員のおっしゃっている要件事実論とか、事実認定論というのは、法科大学院の中ではかなり重要な項目になってくると思います。

【井上委員】御趣旨は分かるのですけれども、「要件事実論」とか「事実認定論」というふうに書かれますと、特定の意味であるものですから、そういった科目を設けろというふうに、我々が言っているとも受け取られかねませんし、そこまで議論したのか、ちょっと疑問に思うということなのです。

【吉岡委員】言葉として、要件事実論とか、そういうふうには十分な議論というのはされていないかもしれませんけれども、要件事実については法科大学院。

【佐藤会長】「要件事実や事実認定に関する基礎的部分」というようにしたら、いかがでしょうか。「論」とやると。

【井上委員】「論」というと講座名みたいになってしまいますからね。

【鳥居委員】ついでに括弧書きではない書き方にはできないんでしょうか。括弧を付けただけでも随分目立ちますね。「要件事実や事実認定にかかわる実務教育の基礎的部分を併せて実施する」という書き方はいかがでしょうか。

【井上委員】もうちょっと幅広いものですから、「含む」と言った方が・・・。

【水原委員】法曹養成に特化した教育をするところなんで、要件事実や事実認定の基礎的なことについては、当然のことなんですね。言わずもがなのことなんです。それをあえてここで書くこと自体に問題があるなという気がいたします。当然のことなんです。それを除いてほかに大きなものは何があるか、そこまでは言いませんけれども、いろいろ議論があるならば、むしろ削ってしまったらいかがかなという意見です。

【吉岡委員】それは水原委員みたいな専門家には当然でも、私たちみたいに素人には。

【竹下会長代理】会長が言われた案でいかがですか。括弧の中で、「例えば、要件事実や事実認定に関する基礎的部分」という文章を入れるということです。

【佐藤会長】それでは、そこはそういうふうにさせていただきます。
 一応22ページの「法曹人口の拡大」の前までで区切りたいと思いますので、その中でどうぞ。

【吉岡委員】19ページのところで、受験資格のことで社会人、あるいは今まで法学教育を受けていない人とか、そういう人の問題を随分取り上げて発言してきておりますが、その辺をはっきりさせるというか、そういう意味で、受験資格の頭のところですけれども、「司法試験も、その修了を要件とする新たなものに切り替える」と書いてございますが、「その修了」の頭のところに「原則として」という文言を入れていただけないかと思います。「司法試験も、原則としてその修了を要件とする」と。

【井上委員】何度も発言して申し訳ないのですが、ここはあえてそうしていないのは、その後ろの文章の、やむを得ない事由があって例外措置を講じないといけないというところで、「法曹資格を可能とする適切な例外措置」というふうに意識的に書いてあることとの関係によります。つまり、同じ司法試験を例外的に受けてもらうというのも一つの方法なのですけれども、果たしてそれが適切かどうか。そういう点でいろんな議論があったわけで、同じ司法試験ではない別の試験とか、別のルートというのも、選択肢としてあり得る。ところが、新司法試験の受験資格は、「原則として」これですと書いてしまいますと、それの例外というふうに限定されてしまうものですから、もっと幅広い検討の余地を残した方が適切じゃないかというのが、まとめのときの趣旨だったと思うのです。

【吉岡委員】ここで言っているのは、いわゆる経過措置としてですか。

【井上委員】いや、経過措置ではなくて・・・。

【吉岡委員】従来の司法試験のコースを一部残しておいて、新司法試験に移行させるという、そういう意味ではないと取ってよろしいですか。

【井上委員】新司法試験に完全に切り替わった段階から例外措置というのが意味を持ってくるのです。そして、その例外措置としては、新司法試験を受けさせるということも一つの可能性ですけれども、それとは全く別の試験を設けるとか、あるいは全く別の選抜方法を考えるということもあり得る。実質的には、むしろそっちの方が適切かもしれないのです。
 ですから、そういう可能性を封じないために、20ページの3行目の「別途、法曹資格取得を可能とする適切な例外措置」という文言をわざわざ使ったわけです。

【吉岡委員】そのときに私がちょっと心配しますのが、司法試験が2通りあるということになって、今までですと、司法試験は1本で、よく何期何期と皆さんがおっしゃっていますけれども、そういうことで平等だという考え方で、今まできているわけです。それが、新司法試験ともう一つ別のコースの司法試験があって、どちらを出たということで差別というか、そういうことになると非常に問題が残りますので、その辺がないような作業をしていただきたい。

【井上委員】その点は、少し議論をしましたね。それは、むしろ受かった後の教育体制の問題だろうと思うのです。

【佐藤会長】そういう趣旨でということでいかがでしょうか。ここはそういう趣旨で御理解いただけますか。

【吉岡委員】ちょっと懸念したものですから。

【石井委員】14ページに「法科大学院」の項目がありますが、「法科大学院」ということで名称が決定したと考えてよろしいのでしょうか。と言いますのは、今までは「仮称」ということで来ていましたのが、この中間報告(案)では、「仮称」が取ってありますので、知らないうちに「法科大学院」になってしまったのかと思って伺いました。

【井上委員】「仮称。以下同じ」というのが、9ページにあります。

【石井委員】見落としてしまい失礼しました。
 もう一つ、この中間報告(案)もそうなのですが、非常に厚くて、どこに何が書いてあるのかよく分からないものですから、私などは目次が欲しいと思っております。こういう審議会の報告書というのは、目次を付けないのが一般的になっているのかどうかお教えいただきたいと思います。

【佐藤会長】そんなことはありません。目次を付けてもいいと思います。

【石井委員】付けた方が見やすくなりいいと思います。

【佐藤会長】ページをふってですね。ただ、ページは後でずれてくるものですから。

【石井委員】でも、目次だけ付けておいて、後でページだけ入れ直せばよろしいのではないでしょうか。

【佐藤会長】実は、別途目次をつくってあるんですけれども。御意向に従いたいと思います。

【石井委員】それなら安心致しました。

【吉岡委員】21ページの継続教育のところですけれども、大分見え消しで消してございますので、読みにくいんですけれども、後ろの方から言いますと、「最適な法的サービスを提供する上で必要な法知識を更新するとともに、視野や活動の範囲を広げるために意義のあることだと考えられる」というところで切っております。私は、継続教育というのは是非自発的に受けるようにしていくというのがむしろ必要だと思いますので、その後の「各人の自覚と積極的対応が望まれる」ということが消してあるんですけれども、これを生かしていただいた方がいいと思うんです。

【佐藤会長】もっと端的に言うと、これは残した方がいいということなんでしょうね。

【吉岡委員】はい。

【井上委員】政府に物申すとすると、この表現のままでは何だか変だなという感じがしますね。御趣旨はよく分かりますけれども、書きようがもうちょっと工夫の余地がないかなという感じなのです。

【吉岡委員】書きようは井上委員が。

【佐藤会長】では、これは残すことにして、もっといい表現があれば、次回にお示しすることにしましょう。
 ここのところに関連しまして、鳥居委員から、中間報告と検討会議の報告書が一体的だという趣旨のことをここのところで書いた方がいいという御意見をちょうだいしております。そういう御趣旨と理解してよろしゅうございますね。

【鳥居委員】はい、そうです。

【佐藤会長】その点なんですが、それも分かるんですけれども、この間、法務委員会によばれましたとき、検討会議に丸投げしたんじゃないかという批判も受けました。改めてそれを書くと、その批判を誘発するような感じもありますので、ここは入れないで。

【竹下会長代理】「も」を消して、多少意味を強くしました。

【井上委員】確かに、この審議会でも、検討会議の報告を細かなところまで議論して、それを採用したというわけではないですから、このくらいが穏当かと思います。

【鳥居委員】むしろ先ほど来の議論全体について言えることなんですけれども、実際に、一つひとつの大学が国立にせよ公立にせよ私立にせよ、設置者が、こういう法科大学院を設置したいと言う提案を、設置認可申請書という厚い書類の形で出すわけです。それは今、どんな学部についても、医学部についても看護学部についても、物すごい自由度を広げているわけです。
 一方、国家試験が伴っている免許制度のある、例えば、看護婦とか医師とかの場合には、厚生省の側で、こういう科目を履修していなければ困るという規定があるわけです。それに対して、設置審議会の方では、かなりの読替えを可能にしているわけなんです。ですから、先ほどの要件事実とか何とかというのも、恐らく新しい大学院を提案する方々は、何々分野の要件事実とか、何々分野の事実認定とかという新しい科目をどんどん提案してくるでしょうし、それが望ましいわけです。
 ですから、設置申請書はなるべく自由度を持たせるという発想が、私は大事だと思うんです。だから、余りそこで縛りを掛けない方がいいんです。

【井上委員】その趣旨は、19ページのdの設立のところで、かなり明確に出ていると思います。最低限のことだけ決めておいて、あとは自由に競争してください、ということだと思うのです。

【藤田委員】意見というよりは質問なんですけれども、16ページの入学者選抜の第2段落の最後のところ、先ほど吉岡委員が指摘されたところですが、「他学部出身者や社会人等を一定割合以上入学させるなどの措置を講じる」とあります。これは各法科大学院が自主的に決めることという理解でよろしいんですか。

【井上委員】私の理解では、基準をつくるときに、当面何割というのを統一して定めておくべきで、そういう趣旨だったと思うのです。

【藤田委員】設置認可基準ですか。

【井上委員】おそらく評価基準になるんだろうと思います。入学試験を縛るわけですので、設置認可の基準としては書きづらいのです。それで、評価の基準として、このくらいの割合を入れているかどうかということを評価、審査しますよという形で、縛っていくということになるのではないと思うのです。そちらは鳥居先生の御専門ですが。

【鳥居委員】非常に技術的なことになりますけれども、設置認可申請書には、例えば、我が校は法学部以外の学部を出た人を3割入れますと言って出してくれば、結構ですねと認めます。実際に入学試験で、だれも受けてこなければ、入らないわけです。入らないで学校は進んでいくしかありませんから、それで何年かして評価を受けますね。入ってないじゃないですかという評価を受けるわけです。もっと努力しますということになるわけです。現実は、それしかないんです。

【藤田委員】言わば努力目標みたいなことですか。

【井上委員】基準としてはっきり決めておかないといけないでしょう。

【藤田委員】例えば、3割、4割と決めるとすると、結局のところ、どれだけの者が受験してくれるかということなんですが、現在、司法研修所で20%くらいの修習生が法学部以外の出身者と言われているんですけれども、本来は法学部へ進学したかったけれども、政経とか経済の学部へ進学したという人がほとんどで、医学部とか理数系の人は本当に少ないのです。
 そういう意味で、先ほどの鳥居先生のお話じゃないですけれども、果たしてそれだけの割合に対応する受験者を確保できるのかということが問題です。
 それから、法学部出身者との間でレベルの差が出てきた場合に困るんじゃないかなという気がするものですから、そこで今、努力目標と申し上げたんです。

【井上委員】その点は、受験者の応募状況に見合わせて基準も変えていかないといけないと思いますし、ある程度柔軟な運用も必要だと思うのですけれども、これは努力目標ですよと言っていたのでは駄目だと思いますね。

【藤田委員】そこまでの割合に達していなかったから認可取消しということではないんですね。

【井上委員】ベースとして十分な応募者がいなければ、どうしようもない話だと思うのですけれども、たくさんいながら基準まで取っていないということになれば、やはりそういうサンクションもあり得るのでは。

【佐藤会長】新しいシステムはこうだということは、宣伝しないといけないですね。

【鳥居委員】今申し上げることは控えたんですけれども、実際にはもうちょっとやっていまして、設置認可のときに、例えば、留学生は何%入れますとか、社会人は何%入れますと書いてくるんです。それは確保する見込みはありますかというところまで突っ込んで聞いて、実はこういう人が予定されていますというところまで確認してやっているんです。実際、そうなると思います。

【井上委員】レベルの問題は、適性テストを共通してやりますので、その結果がある程度積み重なってくれば、実情が分かってくるだろうと思います。それをも踏まえて、基準もまた変えていくということではないでしょうか。

【藤田委員】分かりました。

【佐藤会長】では、このアの部分、12ページから22ページの一番上の行までですけれども、ほかにもいろいろ御意見を承っておるんですが、今のようなところでよろしゅうございましょうか。

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】ありがとうございます。
 次に22~23ページですけれども、法曹人口の拡大のところはいかがでしょうか。それが終わりましたら(2)の方に移ります。

【髙木委員】23ページの「加えて」と直してあります段落の「行政事件訴訟を直接支える訟務関係の法務省職員」という表現がありまして、これは今見ましたら、4月の取りまとめのときにこの表現が入っていましたが、具体的にはどういうお仕事で、どのくらいおられるのか。今日は法務省の方がお見えにならないので、事務局で御存じないか。

【竹下会長代理】それは資料にあったと思います。人的体制の整備に関する資料です。

【髙木委員】どういうお仕事なんですか。

【竹下会長代理】訟務関係だから、行政訴訟で国の指定代理人になったり、その補助をしたりということではないでしょうか。

【藤田委員】民事訴訟もです。

【竹下会長代理】国家賠償とかですね。

【藤田委員】そうです。それ以外の国の国有財産などの所有権確認とか境界確定とか、みんな入りますから。

【佐藤会長】この点は、藤田委員が4月の段階でおっしゃったことですね。

【藤田委員】そうです。ルール・オブ・ローを行政の方にも徹底するという意味で申し上げたんです。

【佐藤会長】今調べているようです。
 ここのところですが、法務委員会で、出口の大幅増員と言うけれども、裁判官、検察官についてどのくらいの数を考えているのか、検討するのかという御質問を受けたんですけれども、大幅増員だとしかお答えしていないんです。髙木委員の御意見の中にもそういう趣旨の御指摘があったように思いますけれども、この段階では、この程度の書き方かなと思っているんですけれども、いかがでしょうか。

【北村委員】ここのところの追加部分がございますね。これが量の増大を言っていると思うんですが、次に質の向上を言っていまして、その次にまた量の方に入っているんですね。量があって質があって量があってという形で、もうちょっと整理された方がいいかなという印象を受けるんです。初めの線がずっと引いてあるところが量の方ですね。増員の必要性、次のところが質・能力の向上ということが書いてありまして、「前記の人的体制の現状も踏まえれば」ということで、大幅な増員が必要であるということが書いてあります。

【佐藤会長】中ほどのところで、専門的分野に精通した人材云々というのは、そういう人も増やさないといかぬのですよという、結局、量の話ではないかという気がします。

【北村委員】これは全部量であると。

【佐藤会長】はい。

【竹下会長代理】一番上が裁判官、検察官の話で、その次が裁判所書記官とか、その他の裁判所職員、それから検察庁職員。その次が執行とか今の訟務の話です。人的体制の種類によるものです。

【佐藤会長】特に支援体制について強調しているわけです。

【北村委員】ここに、「こうした質・能力の向上とともに」とあったものですから。

【佐藤会長】ちょっと書き方がすっきりしないかもしれませんが、基本的に量と言いますか、そちらの話だと御理解をいただければと思います。

【吉岡委員】23ページの頭から線が引いてある、書き込まれた部分ですけれども、その最後のところが、「異論のないところであろう」となっています。これは、数を増やすということは異論のないところなので、「である」で構わないんじゃないかと思います。

【佐藤会長】そうですかね。

【竹下会長代理】これは、審議会の中では異論がないのですが、社会一般で「異論のないところであろう」という意味なのではないでしょうかね。

【井上委員】文章の流れとしては、「あろう」の方がいいかなと思いますが。

【竹下会長代理】この審議会の内部なら異論はないのですけれども。

【吉岡委員】これは審議会の中間報告ですね。

【佐藤会長】「異論のないところである」でもいいと思います。では、「ある」に直しましょう。

【髙木委員】ウのところで、人的体制の充実ということで、例えば、裁判官、検察官等は、具体的に人数に触れて増やせと書いてあります。その後、裁判所書記官等の裁判所職員、検察事務官等の、これは質・能力の向上と書いてあるんですが、量のことはこの表現で触れてあるという理解なんですか。人的体制の充実というのは、量も増やせということですか。

【佐藤会長】量だけ増やせばいいというものではないことはもちろんです。質と相まって、そして絶対数が非常に不足しているという認識じゃなかったでしょうか。

【髙木委員】裁判官なり検事さんが少ない、あるいは検察事務官の人がとかいう形でよく聞きますし、裁判所で言えば、書記官の方、あるいは速記官の方をえらい減らしておられることにより速記官の皆さんが大変だという話も聞いたりします。だから、これは見出しも、文章の中で充実・強化と入っておって、裁判官、検察官のところはそう書いてあるんですが、その以外の書記官、調査官の皆さんについても人的ボリュームの拡大が求められるとしたら、その辺も書く必要があるのかなと思います。

【水原委員】「関係職員についても適正な増加を図っていかなければならない」と書いてあります。

【髙木委員】書いてありますね。失礼しました。

【佐藤会長】大学の場合も、事務官の数を抑えながら教授の数を増やしてきて、全体から見たらうまくいっていないということもあるんですけれども、似たようなことがあるんじゃないですかね。

【藤田委員】裁判所の場合は、裁判官と書記官とがチームになって事件を処理していますので、裁判官だけ増やされても、書記官がいないと法廷が開けないという問題があります。やはり全体的に強化していただかないと、適切な事件処理体制が組めないということがございますから、もちろん、裁判官の増員に応じて、書記官、事務官等も増員していただかなければならない。恐らく検事と検察事務官も同じことだと思います。

【水原委員】そのとおりでございます。総定員法の枠組みの中でやられると、とてもじゃないけれども、できないということでございますので、その辺りは相当強い発信をしなければいけないと思います。

【髙木委員】「裁判所書記官等」という表現がございますが、これは速記官とかその辺の人たちも、十分そういう議論の対象になり得るという理解でいいわけですね。

【藤田委員】速記官につきましては、現在、養成を停止しておりますから、将来的には、OA機器を利用した形でやっていくということになると思いますが、それ以外に、書記官とか調査官とかという職種がございます。これはやはり是非とも必要な職種でありまして、調査官ですと、家庭裁判所で非常に大きな機能を営んでおりますので、そちらの方の強化も是非必要ではなかろうかと思います。

【中坊委員】今おっしゃるように、速記官は一つの焦点にはなっているんです。藤田さんの今おっしゃるように、減らすという方向にあるんだ、機械に換えるんだということなんですけれども、そこで非常にいろいろ問題もある。これは今後の問題じゃないかと思いますから、まさに表現されているように書記官は代表する形であって、ほかは「等」の中に、髙木さんのおっしゃるように、すべてが一応含まれて、まだ検討課題ではあるという意味に理解してもらえばいいんじゃないでしょうかね。そうではないと、これをまた細かく書き始めると、きりがないから、「等」の中に何もかも入っているというふうに理解してもらえばいいんじゃないですか。

【佐藤会長】よろしゅうございますか。そうすると、訂正についての確認ですけれども、この「(1)法曹の質と量の拡充」のところですが、16ページの2段落目のところで「広く」を入れる。それから、17ページで、「要件事実や事実認定に関わる基礎的部分」とする。21ページの継続教育のところですが、積極的な対応が望まれるという趣旨の文章を残す。23ページの、「異論のないところであろう」を「ある」と直す。この箇所はこういうことでよろしゅうございますか。

【井上委員】細かなことですが、「関わる」ではなくて、「関する」だったと思います。その方が分かりやすいと思います。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。

【事務局長】先ほどの髙木委員の御質問なのですが、資料的には、お配りしております2月22日付の「『裁判所・法務省の人的体制』について<参考資料>」の中に、人員としまして、平成11年では訟務局関係は56名となっております。
 それから、4月17日付の法務省のヒアリングの際の法務省が出された「人的基盤の強化について<参考資料>」というヒアリング資料の13ページに、「訟務の現状はどうか」という題で、訟務の仕事の内容が書かれております。御紹介してもいいのですが、長いですから、後で読んでいただければと思います。
 以上でございます。

【佐藤会長】それでは、23ページの「(2)弁護士制度の改革」に移らせていただきます。
 27ページの(3)の前まで、一体的にいかがでしょうか。
 修文したところを申しますと、24ページ、これは山本委員の御意見だったと思いますけれども、1行目から2行目に掛けて、「『国民の社会生活上の医師』たる法曹の一員」という形で入れさせてもらいました。
 それから、これは中坊委員の御意見だったと思いますけれども、傍線を引いているところですが、「殊に、今後、国家・社会」というように入れさせていただきました。
 それから、25ページの傍線を引いてあるところですが、これも山本委員の御意見だったと思いますけれども。

【竹下会長代理】吉岡委員です。

【吉岡委員】山本委員の、例えばということで入れた方がいいという御意見だったと思います。

【佐藤会長】吉岡委員の御意見もありましたね。社会的、経済的弱者云々。

【吉岡委員】プロボノと言ってもちょっと分かりにくい。

【佐藤会長】こういう形にさせていただきましたが、吉岡委員の御意見もその中に含まれていると受け取っていただければと思います。

【髙木委員】25ページの「弁護士の活動領域の拡大」というところの上の方に、「代理人・弁護人としての活動にととまらず、公的機関、国際機関、非営利団体(NPO)、そして民間企業など」、この「など」の中に入っているんでしょうが、例えば、労働組合とか消費者団体とか環境保護団体とか、どこまで書くかの問題はありますが。

【佐藤会長】消費者団体、環境保護団体は、非営利団体(NPO)の中に入らないかなと思ったのです。それから、労働組合ですが、もし何でしたら民間企業の後に-先か後か知りませんけれども-入れますか。

【竹下会長代理】入れておきましょうか。

【佐藤会長】「民間企業、労働組合」などと。では、そういうふうにします。

【吉岡委員】NPOと言ったときに、NPO法人と取られると、法人格を持っていないところもすごく多いものですから、ここは法人と書いていないので結構です。

【鳥居委員】労働組合を入れて、経営者団体を入れないというのも。

【竹下会長代理】民間企業の中に入りませんか。

【佐藤会長】26ページですが、石井委員や山本委員の御見解の反映です。それから27ページの「国民参加の拡充など」という点は、藤田委員の御意見に関連しています。この点は、山本委員、水原委員も同じような御意見だったと思います。

【竹下会長代理】石井委員も。

【佐藤会長】こういう形で入れさせてもらいましたけれども、ここの弁護士のところは、こんなところでよろしゅうございますか。

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】そうしましたら、先ほどの25ページの下から4行目に、「労働組合」を入れさせていただくということにします。
 「(3)裁判官制度の改革」のところが、ここは非常に多くの御意見をちょうだいいたしました。いろいろ考えて検討してみたんですけれども、なかなか難しゅうございまして、やや乱暴じゃないかといわれるかもしませんが、修文してお送りしたような形で、ここは御勘弁いただけないかなというように思います。いろいろ苦心したんですけれども。

【竹下会長代理】両方の方向からの御意見が輻輳して、調整が非常に難しゅうございましたので、むしろこういう議論を蒸し返すような形にしない方がよいのではないかということで、会長と御相談して、削除させていただけないかと考えた次第です。

【水原委員】今の段階では、当審議会の基本的認識としては、最後の段落の部分だけだろうと。それを前の部分を入れますと、それぞれの立場からの言い分がございますので、今の段階で入れるのはいかがかなというのが、私の意見でございます。したがって、この修文で結構でございます。

【髙木委員】あえて申し上げておしかりを受けるかもしれませんが、確かにここはいろいろ議論はしてきたんです。確かに、認識の違いが一部にあることは否定はしないんですが、ただ、この中間報告なるものが何なんだという点も考慮すれば、やはり議論してきた中身をきちんとメッセージしていくというニーズも、中間報告にあるんだろうと思います。それは会長、会長代理は十分お分かりの上で、なおかつ難しいんで、うじゃうじゃ言うなというお話かなと思うんですが、いきなり法曹一元の採用の是非云々で、法曹一元という言葉は多義的でありと、始まっています。裁判官を巡って、いろいろな議論を行ってきた訳ですからその内容は少しは書き込むべきではないでしょうか。その我々の行ってきた議論について評価を加えると、また、いろいろあるなら、客観的な、ある種意見の羅列みたいな、それもややこしければ、こういった論点があるがとか、何か少しここのところは、こういうことを議論してきましたという前書きは要るんじゃないでしょうか。

【吉岡委員】私も、議論の共通項だけでも簡潔に入れた方がいいんじゃないかと思ったんですけれども、対案を出す知恵がなかったものですから、共通項だけでも入れたらどうですかという意見は、今日はペーパーでお出ししたんですけれども、むしろ最初の段階でいろいろとごちゃごちゃ意見を言いましたので、それ以上は遠慮します。

【鳥居委員】私も同じようなことを考えていまして、27ページの消した最初の5行をもっとソフトに簡潔にしたらどうかという案を持っているんです。
 試みに申し上げてみますと、「現行の裁判官制度に関しては、判事の給源が司法修習を終えた直後に任命され、裁判所組織内部で養成される判事補に事実上一本化されていることを主たる原因として」、この主たる原因としては取ってもいいです。「いる現状にかんがみ」でもいいです。「裁判官として必要な素養である社会的経験、人間的成熟」、閉鎖性は表から言って、「開放性、社会常識等が必要であるという問題点が指摘されている」と。少なくとも、そのくらいのことは、言っておいた方がいいんじゃないかと思うんです。

【藤田委員】重ねて発言するのもどうかと思うんですけれども、夏以来、口角泡を飛ばして、この最初の3段落について、そうではないということを御理解を得るべく努力をしてきたところでございます。そういう意見があるということは、そうかもしれませんけれども、これだけサンドバッグをたたくようにやられれば、ちょっとそれは実態と違うんじゃないかということを言いたくなりますし、判事補云々と言っても、それだけ批判を浴びている判事補が10年経ったら途端に立派な判事になるということはあり得ないわけですから、今の裁判官制度全体の問題になるわけです。
 そういう意味では、そういう意見があること自体は否定しませんけれども、この中間報告は、審議会の大勢の意見を中心にしていただくということですし、こういう批判的な意見が当審議会の審議の経過で大勢であったとは、私は思えない。
 もう一つは、前の弁護士制度の改革との対比でいっても、そういう意味での弁護士に対する現在の改善すべき点とか批判というものをまず挙げてという形になっておりません。それとの関係からいっても、これは原案のようにその部分を取っていただいて、裁判官制度についてはこれから議論するわけでございますので、これからの課題ということにしていただきたいと考えます。

【鳥居委員】24ページの弁護士について、書き始めの5行がありますね。これが弁護士についての書き始めの文章なんです。それと同じようなトーンで始まったらどうかということを言っているだけなんです。27ページが同じようなトーンで始まったらどうか。

【井上委員】それではちょっとトーンが違いますね。裁判官としてあるべき姿はこうですよという形で書き始めるのなら、同じトーンになるのですけれども。

【山本委員】私も藤田先生に賛成なんですけれども、今、鳥居先生が言われたような書き出しをするんであれば、27ページの下から4行からのキャリア・システムに対する評価というのはあるわけですから、これは入れてくれないと公平を失するんじゃないか。ですから、私は会長腐心の作がよろしいんではないかと思います。

【佐藤会長】傍線を引いてある28ページの文章は、実は総論のところにある文章ほぼそのままなんです。10ページの中ほどですけれども、司法の中核を担う裁判官の在り方、いわゆる法曹一元云々、それをここに持ってきました。万感の思いと言ったら誤解を受けるかもしれませんけれども、いろんな思いを込めての文章でして。

【水原委員】私は先ほどもちょっと申しましたけれども、この修正文に賛成でございます。確かに、この審議会の基本的認識の1行から始まって21行まで、こういう意見のあったことはそのとおりでございます。しかしながら、一方で、山本委員がおっしゃったように、現行のキャリア・システムについての評価もあるわけです。
 ところが、行数を見ますと、最初から21行までが現行裁判官に対する批判、認められているのは8行でございます。ところが、8行だけではなくて、ほかにもたくさんいろんな意見が出たわけです。現行の制度を肯定する。問題はあると、それを是正しながら現行の制度がいいんだという意見も、たくさんあったわけでございますので、少なくともこの点においてのバランスが大変欠けているなという感じがいたします。
 基本的な認識というのは、過去の法曹一元だとかキャリア・システムだとかという議論から脱却して、これは会長がおまとめいただいたんですけれども、21世紀の日本社会における司法を担う高い質の裁判官を獲得して、これに独立性を持って司法権を行使させるため、これを実現するにふさわしい各種様々な方策を構築することにある以上、この項目の記載にあるように、いたずらに過去の認識をやっておりますと、これは前に進まないんじゃないか。当審議会の共通認識にはならないんじゃないか。確かに議論のあったことはそうですけれども、前向きに議論しましょうよという形でするとするならば、過去のしがらみにとらわれることのないような修文が結構だと思います。

【井上委員】私も、この原案に賛成です。鳥居先生がおっしゃったことは、この原案の4行目くらいから下の「法の支配の理念を共有する」云々というところが、弁護士についての一番最初の、制度設計はこうあるべきだというのに相当するのではないでしょうか。むしろ、こっちの方が見合っているのではないかという感じがします。

【佐藤会長】議論してもますます難しくなりそうですので、ここのところはこういう形でとどめるということでよろしゅうございましょうか。

【髙木委員】皆さんそうなら、私一人頑張ってもしようがないのかもしれませんが、いろんな意味で問題を抱えているから、裁判官改革ということが議論になっているわけで、問題点のとらえ方のスコープの違いなどはいろいろありますが、これだけ人数が集まって議論しているわけですから、いろいろあるのは当然かもしれません。しかし、少なくともいろいろ指摘されることはあるわけですから、そういった指摘があることを少しは書き込んでも良いのではないでしょうか。藤田さんはサンドバッグだとおっしゃったけれども、私どもサンドバッグをたたいたら手が痛くなる。そんな面も含めまして、やりとりがいろいろあって、そのことは国民にメッセージで伝えられるべきではないかということを、議事録のどこかに書いておいていただければと思います。

【佐藤会長】御指摘はもちろん議事録に残ります。それからおっしゃる御趣旨は、イ、ウのところで表されているのではないでしょうか。これからのあるべき姿としては、こういうことを考えなければいけないということが示されている。もちろん、具体的な中身については、いろんな見方がありますけれども、インプリシットには新しい枠組みをつくるという点において皆さん一致していらっしゃるんじゃないかと思います。そういうこととして御理解いただければと思います。ありがとうございます。
 そうしたら、このイ、ウのところはいかがでしょうか。

【吉岡委員】29ページのイの「国民が求める裁判官像」、いろいろ意見が出ていたことをかぎ括弧付きでたくさん書いてくださっているので、裁判官像が割合分かりやすく見えてくるかなと思うんですけれども、最後の2行のところなんですが、「法律家としてふさわしい多様で豊かな知識と経験を備えていることが望ましいとの共通認識を得るに至った」となっています。ただ、裁判官像と言った場合に、知識と経験だけではない。例えば、上にかぎ括弧で書いてある当事者の話に熱心を耳を傾け、理解し、洞察力を持って分析能力を持って公正な判断をするということが書いてあるように、これが裁判官像として挙げられてきたところだとしますと、知識と経験プラスアルファと言いますか、それが必要だと思うんです。
 ただ、この言葉を全部入れると、繰り返しになるものですから、どうしたものかと思ったんですけれども、「知識、経験と人間性」というような表現で書けないでしょうか。

【佐藤会長】「人間性」という点ですが、14ページでは、教育理念、法曹の在り方について触れ、医師の役割が期待されている法曹としての人の喜びや悲しみに対する深い共感を持たなければならないと述べています。これと一体的に読んでいただければ、その中に御趣旨も入ってくるんじゃないかと思って、このままにさせてもらったんですけれども。

【吉岡委員】「少なくとも」と書いてあるんですけれども、裁判官はこうあるべきだというのが、知識と経験ということでは、語られた裁判官像とはちょっと違うかなという感じを受けるんです。もう少し裁判官の奥行きとか幅とかそういうものが文言として出てきてほしいなという思いなんです。

【石井委員】私も同じようなことを考えていたのですが、「人間性」というより、「ふさわしい人格」とした方が言葉として適切かなと思っております。

【中坊委員】まさにこの文書の中にも出ていたと思いますけれども、裁判官というのは、司法全体の中核なんです。だから、法律家の中で平等ではなしに、一番中核であって、もしこの言葉の中で何となく、吉岡さんも、何となくとおっしゃるのは、最もふさわしい方なんです。だから、まさに選ばれてきた人がなられる職業でして、率直に言って、我々弁護士の中でも一番いい人が、だから、この言葉の中であえて言えるとすれば、法律家の中でも「最もふさわしい多様で豊かな知識と経験を備えている」つまり、「最もふさわしい」ということが今裁判官に求められることではないか。私らが見ておっても、率直に言って、私ら弁護士の仲間、私自身を含めまして、最もふさわしいとはなかなか言えないんで、ふさわしい人というのは、割と限定された人なんです。
 そういう意味では、最もふさわしい人がなるんだということを入れる意味で、「法律家の中でも最もふさわしい多様で豊かな知識」と、こう入れたらまだいいのかなという感じはします。

【山本委員】検事さんもみんなふさわしい方でなくちゃいけないんじゃないですか。

【中坊委員】それは違います。検察官や弁護士、先ほどから言っているように、つくったりする人と、裁判官というのは、まさに裁く立場ですから、一段と格が上と言ったらおかしいけれども、まさに道理を説く人ですからね。
 検察官も弁護士も闘うだけですよ。自分の主張を通して闘うだけでしょう。まさに裁判官というのは、当事者が闘っている中において道理を説くわけでしょう。

【髙木委員】弁護士を裁判官にすべきとおっしゃっておられるわけだから。

【中坊委員】その中で最もふさわしい人がなると言っている。

【曽野委員】私、最初からずっと伺っていたんですけれども、この審議は、例えば、言語に対する信頼がおありになり過ぎると思います。例えば、公平とか適切などというものは、我々は信じてないんです。何を公正で適切かと。でも私それを悪いと言っているんじゃないんです。ここに書いてある方がいらしたら、私、多分この人と付き合わない。気持ち悪いから、こういう円満具足な人とはですね。やはりどこかはみ出ているところは、こういうところがあると思うと思うんです。でも、報告はこれでよろしいんです。ですから、公正で適切。私、マルを付けましたけれども、公平で、さっきから度々出てまいりましたけれども、そういう言葉とか、相当程度などという言葉というのも、何を指していらっしゃるのか、私たちのところだったら、こういう表現が出たら全部ボツになる。もっとはっきり書けと。しかし、はっきりお書きになってはいけないんだと思います。
 ですから、余りそうなさると、公平性、開放性、多様性と、こんなものはあり得ない。何を持って公平性、多様性、開放性とおっしゃるのか分かりませんので、まあ、何となく詩のように読んで、ああ、いい感じだなでよろしいんじゃないでしょうか。

【佐藤会長】二つの案が出ています。「最もふさわしい」と「人間性」。どちらがよろしゅうございますか。

【曽野委員】どちらでもいいんですけれども、「人間性」の方がまだ。「最もふさわしい」というのは、だれの目から見てかということなんでしょう。

【鳥居委員】先生、アメリカで、もしこの議論をしたら、神様という話が必ず出るでしょう。日本人はそこをよけなきゃならないというところがあるんです。だから、それを神様の代わりに書くとすれば、人間性かもしれない。

【佐藤会長】アメリカの場合、裁判官が言うと、結局、これで終わりというようになる。だから、その意味では裁判官は神様なんです。

【山本委員】裁判官ではなくて、陪審が神様じゃないですか。

【曽野委員】だから、裁判というのは、神様しか分からない人間の欠点がある人たちがやるんです。ですから、神様から見て完ぺきな人というのはいないから、その完ぺきな人を採ろうとしてもちょっと無理なところがあって、信じ難いわけです。しかし、それぞれに人間を理解しようという知識とか、眼力というんですか、それから温かい心とかある方を望ましいというのであるんだから、余り一つひとつ言っていると、今度神様から見たらどうなるかという話になると思うんです。
 ですから、今言ったように、詩を読むように、大体そういう感じならよろしいと。詩というのはすごく人間的なものですから。

【中坊委員】人間性という表現をお使いになろうが、最もという言葉を使おうが、確かにおっしゃるように、何と言うか、今の鳥居さんの話で言えば、神に近いような人がという意味なんです、私の言いたいのも。その意味が吉岡さんの言うように、ただ並べられると、それは確かに同じように取れるからということだけで、その表現がどこか出てくればよいなということです。

【佐藤会長】そうしたら、ここは吉岡さんの御意見でどうでしょう。「知識、経験と人間性」。

【藤田委員】30ページまで入ってよろしいんですか。
 「(イ)裁判官の任命手続の見直し」の点なんですが、下の黒ポツの2番目に、「判事に任命されるべき者の指名過程に国民の意思を反映させるなど資格審査の充実を図るための方策(例えば、国民の代表者等を含む機関が指名過程に関与する制度の整備など)」とあります。任命過程について国民の意思を反映させる必要があるという議論がございましたけれども、具体的にどういう機関で、その構成をどうするかというところまでは、議論は及ばなかったように思います。ここは取りまとめの段階まで至っていないことですので、余り具体的な縛りを掛けてしまうのはどうかということで、この括弧書き取った方がよろしいのではないかと思います。

【佐藤会長】ここは、いろいろ議論が出てくるかもしれませんね。これでと決め打ちをしたわけではなくて、今後議論すべき例としてここに書いているのです。

【水原委員】今の御指摘のところですけれども、私も、ここに括弧書きで挙げるのはいかがかなという気がいたします。確かに私は、議事録をもう一遍見直してみました。昭和22年に設けられた最高裁判所判事についての諮問委員会的なもの、内容をどうするか、慎重に検討しなければなりませんが、そういうことをもう一度検討してみる必要があるように思いますということは申し上げましたけれども、それについての十分な意見交換がなされていなかったという気がいたしますので、ここで「例えば」というところを出すのはどうだろうかなという気がいたします。
 それから、それに関連して、今、藤田委員はおっしゃらなかったですけれども、選考のための基準の明確化や手続の整備、それから一番下のところで、人事制度の見直しのところ、「例えば、評価のための基準の明確化や手続の整備」、これもほとんど議論はなされていなかった。意見交換がなされていなかった。したがって、この段階でここまで決め打ち的なことをお書きになるのは、私としては賛成し難いので、意見を申し上げました。
 それから、議事録を見ますと、会長も、人事の独立性に対する国民の信頼を高める観点から、裁判官の人事制度に透明性や客観性を付与する何らかの工夫についてどういうものが具体的にあるか。今日の段階ではちょっと詰められませんので、この点についても今後少し考えないといけない、いろんな問題があるんだというぐらいで今日のところはどうでしょうかと御発言なさってまとめておられますので、例えばというところを出すのは今の段階では大変問題があるなという気がいたします。

【佐藤会長】分かりました。私が申し上げた趣旨は、31日の段階で、こういうことが考えられる、ああいうことが考えられるというように意見、提言が出たときに、これだというように決めることは難しいでしょう、けれども、そうした意見、提言を例としてあげることは可能ではないかということでした。舌足らずで十分に伝わっていなかったのかもしれません。ほかの委員の方で御意見があれば伺いたいと思います。

【中坊委員】少なくとも私は、当日の審議のときは、今の会長のおっしゃっているように理解しておりました。今、水原さんや藤田さんのおっしゃるように、この文書はこの前の審議と大きく外れてはいないと、私はそのように理解しています。

【井上委員】最初にお伺いすればよかったのですけれども、当日の記者会見に基づく新聞記事では、推薦機関をつくることで一致したというふうに書いてある新聞が2、3あったと思うのですが、もちろん、そういうふうな記者会見をなさったのではないのでしょうね。私の理解では、そういう御意見は確かに出ましたけれども、そういった可能性をも含めて、今後議論しましょうということだったと思いますので、ちょっと確認させていただきます。

【佐藤会長】そのとおりです。代理も記者会見に同席されましたけれども、そういう趣旨で申したつもりです。可能な中身の例としていろいろ意見、提言が出ました、それについてはこれから議論するんです、と。

【井上委員】私もそう信じていたのですけれども、その意味で、水原委員がおっしゃったことも、御心配としてはよく分かるところがあるのです。「例えば」という形で書くと、そこがかなり積極的な意味を持ってきますから。私、別にその中身について反対というわけでは必ずしもないのですけれども。

【吉岡委員】基本的には「例えば」だから、書いておいていいんじゃないかと思うんです。私は推薦委員会を設置すべきではないかということで意見を申し上げたと思います。そういうあれで私が言ったことが通っていないということは、ほかの委員の言ったことも通っていないわけなんですけれども、いろんな意見が出て、かなりディスカッションしたと思います。
 そういう意味では、ここで書かれている抽象的な書き方ですけれども、この表現の仕方であれば、両者から問題はないということになるのかなと思います。

【水原委員】もう一度申し上げて恐縮ですけれども、この「指名過程に関与する制度の整備」、これについては私も発言いたしましたし、何人かの委員の方々が意見を述べられましたことはそのとおりでございます。ただ、会長がおまとめになられたところの文言は、先ほど申し上げたとおりでございます。
 しかしながら、それとは別に、「判事に任命されるべき者の指名について、透明性、客観性、説明責任を確保するための方策」、これについての「例えば」のところの意見は全く出ておらなかったことを、私は議事録で確認いたしました。
 それから、下の「人事評価や報酬、補職・配置等について、透明性、客観性を確保するための方策」、これの基準の明確化や手続の整備をどうするかということについても、審議会の議事録の中にはなかったように思いますので、少なくともその二つの点については、真ん中の部分はどうするかは別としましても、御検討いただきたいと思います。

【髙木委員】ちょっと3、4点に及ぶかもしれないけれども、お許しいただきたいと思います。
 今、藤田さん、水原さんから御提起のあった、国民の代表等を含む機関が指名過程に関与する制度云々については、私もこういう諮問委員会的なものをつくっていただけたらどうかということを申し上げました。それについてはこれから議論する話でございますねという、細かい表現までは私記憶にございませんが、その種のおまとめを会長にいただいたと思います。その辺については、水原さんもそういう御認識ではないかと思います。
 あと、上の任命される者の指名云々の括弧書き、これは一番下にも通じることだと思うんですが、透明性、客観性とかいう言葉が使われています。その言葉の意味と言いますか、バックグラウンドは、例えば、評価の透明性ということであれば、評価基準の明確化やら、その手続の透明性、いわゆるアカウンタビリティーということになるのは常識であり、例えば、この裁判官の人事制度のことについて、私が3度最高裁に質問をお出しして、それは皆さん方のところにも必ずお届けいただいていて、お読みいただいているはずだと思うんですけれども、そういう中で、例えば、最高裁の方のペーパーの中にも、まだまだはっきりしないところがあります。また別の議論の場で、一度最高裁の方にお尋ねする場をつくってくださいというのは、前回か、前々回にお願いしたとおりですけれども、そういう議論を、最高裁から頂いた返事について、それをかみ砕いて、これはどういう意味ですか、これはどういうふうに理解したらいいんですかなどについてお尋ねする場を持っていただく時間がなかったことは事実です。そのペーパーの中には、最高裁もいろんなお考えをお持ちだということが現に示されていますので、いろいろお尋ねしなければなりません。
 ですから、私は(ウ)のところは、これに加えて、例えば、事務総局としての人事管理、運営の体制等にも議論が及ぶことが今後の課題として残っているということを、ここにも書いてほしいと思うくらいなんです。ただ、これは後ろの方に、法曹三者それぞれの運営への参画の問題がごく抽象的に書かれておりますから、場合によっては、そこで議論していただければいいんじゃないかなと思ったりもしております。
 あと、言葉使いですが、(イ)のところの冒頭に、判事と書いてある。「判事に任命されるべき者」という、ここは「裁判官」という言葉じゃないといかぬのじゃないかなと思います。表題は「裁判官の任命手続」と書いてありまして、裁判官と判事の言葉の使い分けということになりますと、判事補の問題が絡んでくるのでややこしいということで、こういう御表現になっているのかどうか。
 もう一点、一番上の(ア)のところの後の方のくだりなんですが、これは何度も何度も読んでみましたが、判事補の問題については、かなりいろんな議論が集中審議でも前回もございましたが、これを読んでみますと、「判事の給源としての判事補制度の改革を含め」、この改革という意味は、場合によっては将来、大分先の話かもしれませんが、判事補制度の位置づけ方を変えるなり、判事補制度を廃止するなり、そういう議論もいろいろあったと思います。
 そういう意味で、判事補制度の改革の中には、場合によっては廃止もあり得るんだという辺が含意されているのかどうか、もし含意されていると読むのが難しければ、「改革、あるいは廃止を含め」とか、そんな言葉を入れていただく必要があるのかなと思います。これをそのまま読みますと、経験の多様化をやれば、今の判事補制度はそれでちゃんとしたということになるんだと読まれかねません。経験の多様化だけではいかがなものかという、私自身はそういう感覚を持っておりますので、経験の多様化も今後の検討すべき改革の方向である、経験の多様化も一つの手段であるのかもしれませんが、その辺の書きぶりについて、少し御修正をいただけないかなと思います。以上、4、5点になりましたけれども、意見です。

【佐藤会長】どうしましょうか。大体10分に休憩をと思っておりましたけれども。

【竹下会長代理】(ア)の方は後回しにしていただいた方がよくないですか。

【佐藤会長】そうですね。全体をやろうとすると。休憩を挟んで議論を続けるということにしましょうか。打ち切りませんので、続けます。
 そうしたら、22分に再開させていただきます。

(休 憩)

【佐藤会長】それでは、再開させていただきたいと思います。
 水原委員どうぞ。

【水原委員】先ほど私は、いろいろと括弧書きのことについて、意見を申し上げましたけれども、よくよく読んでみますと、29ページに「今後、以下のような方向で検討を進めていくこととした」とあって、いろいろなことが書いてあるわけで、そうだとするならば、私は決して括弧書き云々を強く言うわけではございませんので、その点はもう一度だけ発言させていただきました。

【竹下会長代理】今の水原委員の御発言もございましたので、この(イ)の先ほどから問題になっております「(例えば、国民の代表者等を含む機関が指名過程に関与する制度の整備など)」というところですが、ここは何人かの方がこういう趣旨の御発言をされたことは間違いないので、そういう意味から言うと、「例えば」ということで、一つの例として挙げるということならよろしいのではないかと思います。これも会長と、「含む機関」というのが少し限定され過ぎているのではないかとか、いろいろ検討はしたのですけれども、結論的にこういう表現でやむを得ないかなということになったので、御了解をいただければ大変有り難いと思います。

【藤田委員】せっかく素直に水原さんが言われたのに、また言うのも何なんですけれども、私が先ほどから括弧書きにこだわっておりますのは、そのことが審議から外れているという趣旨で申し上げているわけではなくて、確かに今、代理がおっしゃったように、そういう御意見もあったんですけれども、これが審議会の代表的な意見とするほど、収れんしてはいなかったんではないかということが一つ。
 それから、国民の代表者が入った機関で、任命・任用を決めるということが決まったという報道をした新聞がございましたね。そういうような先走りした受取方をした向きもあるということが、この括弧書きを見るとやはり本決まりだというふうに、更に誤解をする恐れがあるんではなかろうか。そういう趣旨で申し上げたわけであります。

【佐藤会長】その点は、記者会見で、念を押しておきたいと思います。海外の制度について、局長の方から御説明いただいたりしたこともありまして、海外にこういう例がある、ああいう例がある、そういうことも参考にして、そういう例について今後検討しましょうという趣旨で、申し上げたつもりなんです。そういうものとして理解していただけますでしょうか。記者会見でその点は念押ししておきます。それは、決め打ちにしたわけではなくて、例として今後検討するものとして、こういうものがありますよという趣旨であることを念押ししておきます。

【山本委員】そうしたら会長、「方向で」じゃなくて、「以下のような点」とか、「事項について」とか、そういうのはどうでしょうか。

【佐藤会長】29ページですか。

【山本委員】はい、方向だと、何かベクトルが見えるような感じがするんですけれども。

【佐藤会長】だけど、それはもう法律家的な深読みじゃないですかね。さっきのような趣旨のものとしてこのままでよろしゅうございますか。

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】ありがとうございます。では、そこはそういうことで。
 それと、先ほどの(ア)の方なんですけれども、これも非常に御意見に幅があったところです。廃止論、それから廃止を視野に入れるべきだけれども、現実の問題として、すぐいつからというわけにはいかないんじゃないかという論、今でいいじゃないかという論と、いろいろ幅があったように思います。その幅を勘案しながらまとめたところがこういう文章になって、多少分かりにくいところがあるかもしれません。傍線を引っ張ってあるところは、御意見をちょうだいしたものをそういう形で取り込ませていただいた結果です。いかがでしょうか。

【中坊委員】先ほど裁判官の資質と能力というところで、先ほどからもいろいろ意見があって、裁判官というのは多様で豊かな知識と経験だけではなしに、人間性を持たなければいけない。こういうことが、今ここで決められたわけですね。そうしておいて、今度は経験の多様化だけが制度的に担保するということでは、そこにやはり、ちぐはぐがあるように思うんです。だから、先ほどまさに資質という点について議論して、こういうところに単に経験だけじゃなしに人間性も要るんだということです。私の言うように最も要るかどうかは別問題にして、いずれにしても普通の人と違うんだということになって、今おっしゃったように、みんなの両方の意見があるから、いろいろ直した。それが、今度は途端に、経験の多様化だけが制度的に保障されたらよいというふうになってくるのが、ちょっと不一致だと思うんです。
 だから、やはりちょっと上のものと整合性を持ったように、ここをちょっと直していただく必要は、やはりあるんじゃないかという感じはします。

【吉岡委員】私も関連質問で言いたかったのは、ここでは判事の人間としての、「判事補制度の改革を含め、『経験の多様化』を制度的に担保する仕組みを構築することが今後検討すべき改革の方向である」というふうにしていますので、どうも経験の多様化というのは、判事補制度の中で、経験の多様化をすればいいんだというように読まれる可能性があると思うんです。そういう意味で、このままではちょっと意図しているところが間違われる恐れがあるので、それで「改革を含め」というのを、髙木委員が改革と廃止とおっしゃいましたけれども、私は「改廃」でもいいと思うんですけれども。

【佐藤会長】「改廃」ですか。

【藤田委員】判事補制度については、評価がいろいろあって、そういう御意見もありましたけれども、制度として評価すると、キャリア・システムが先進諸国の半ばで行われているということも含めて、いろいろな意見がありまして、結局取りまとめのようなところでまとめられたというところです。廃止とか、あるいは、「改廃」と言っても「改廃」の「廃」は廃止ですから、同じような趣旨になると思いますけれども、少なくとも、そういうような方向で審議会の大勢の議論がいったということはないわけです。そういうようなことを書きますと、やはり今までの審議及びその取りまとめとの整合性ということが、欠けてくるということになりはしないかということを恐れます。

【井上委員】ちょっと、文章についてなのですけれども。その上の方に「給源の多様化・多元化」というのがありますが、そこの「実質化を図ることはもとより」というのは、どこにつながるのですか。

【竹下会長代理】「仕組みを構築すること」。そこへつながります。

【井上委員】そうすると、要するに経験の多様化だけじゃなくて、給源も多様化する仕組みを構築すると、そういう2本立てになっているわけですね。

【竹下会長代理】そうです。

【井上委員】そうだとすると、今皆さんがおっしゃっていることが、ここに入っているのではないでしょうか。ただ、文章がちょっと、末尾の部分が経験の多様化だけを受けているというふうに見えるものですから。最初の方で、給源を幅広い範囲から取るということを押さえてあるわけですね。

【竹下会長代理】これも、今の裁判所法の趣旨は、もちろん生かしてもらわないといけないので、それを実質化するということが一つ重要だと。それに加えて、経験の多様化を図るという、そういう趣旨です。

【井上委員】それなら、全体としてはよろしいのでは。

【中坊委員】先ほどから言っているように、経験の多様化だけだと、今の言う人間性とかいうものをどう制度的に担保するのかという問題が出てきますから。我々が前半で書いたことと、後半で書いたことが不一致しているという点は、今ちょっと吉岡さんがおっしゃった判事補制度の廃止の問題と、私が言ったことと、これが今、混線した話になっていますけれども、私が言っている点は、やはりもう少し文章として誤解を招かないような文章に直しておいてもらう必要があると思います。どう直すかは別問題にして。

【竹下会長代理】それで伺いたいと思ったのですが、中坊先生のおっしゃる御趣旨はよく分かったのですが、ただ人間性について制度的に担保するというのはいかがなものでしょう。

【中坊委員】だから、先ほどのものでいいんです。資質と能力というものを前半に書いてあるんだから、そういうものを担保するにふさわしいと言えばいいだけであって、経験の多様化だけを書くからおかしいので、制度的に担保するものが、上述の資質と能力を持った裁判官を制度的に選ぶと書きさえすれば、それでいいわけです。

【竹下会長代理】そうですか、「豊かな知識、経験と人間性を」と。

【中坊委員】そうです。前の書いたことをそのまま出せばいいだけのことです。だから、そんな難しいことないんです。

【竹下会長代理】そういう御趣旨ですか。

【中坊委員】私が言うと何となく難しくなりますか。

【髙木委員】中坊さんが言うことは難しくて、分からぬ面もあるんですが、要は、ここで私が申し上げたかったのは、8月の集中審議のときに、いろいろ判事補についても論議致しました。それを基に10月31日にまた議論をして、あのときにこの判事補を巡る議論で、私もいろんな意見を申し上げたわけです。「判事補制度を廃止する旨の意見もあったが」という夏の整理のとらえ方について、その辺も廃止、あるいは存続させながら改善していくなどいろいろな意見がありました。私の場合は、廃止と言ったって、まだかなりの期間、判事補を給源とする任用がかなりの比率で続いていくだろう、その間に、今いろいろ判事補を巡って議論になっているところについてどうするのかという、いろんな工夫、その一つとして経験の多様化もあるんでしょうが、もう少しいろんな観点から判事補制度をどう位置づけるかという問題も含めて、問題提起というか意見を言わせていただいた。それについて会長は、その辺もこれから議論を、年明けてやるやらぬという話だという御整理をいただいたように記憶しております。
 ついては、そういったこともこれから検討するんだということでしょうが、経験の多様化だけをやるんじゃないということを、ここではやはり明らかにしておいていただきたいと思います。

【佐藤会長】31日の段階で、我々として判事補制度を廃止するかどうかは決めていないということについては御異論がなかったわけで、今の段階ではそうだと思うんです。ですから、ここは中坊委員のような形で表現するのか、あるいは今のような趣旨を取り込んだ形で表現するのか、ちょっと両者微妙に違うような感じがしますね。

【井上委員】問題が、中坊先生がおっしゃったように違うのですね。中坊先生がおっしゃったところは、この段落の下から4行目の「多様で豊かな知識と経験」ということを、さっきのに合わせて直した上で、「以上のような裁判官」とするのでしょうか。

【佐藤会長】担保する裁判官と。

【井上委員】はい、「裁判官の確保を制度的に担保する」というふうに書けばいいということでしょうね。

【佐藤会長】そうですね。

【井上委員】髙木委員がおっしゃった点は、改廃とか廃止という表現を用いてしまいますと、意見がまだ多様に分かれていて、まだこれからだというところなのに、ちょっと一方の方向が出過ぎるので、今の段階では、「改革を含め」というぐらいがいいのではないかという感じがしますけれども。

【髙木委員】そうしたら、経験の多様性を制度的に担保する仕組みを構築することが、今後検討すべき改革の方向であるという書きぶりになっていますが、この書き方では、これしか検討することがないように読めてしまうんです。

【井上委員】ここの経験の多様化は、今、中坊先生がおっしゃったように、以上のような資質の裁判官の確保と改める。

【髙木委員】確かに、さっき井上さんが言われたように、「(裁判所法の趣旨)の実質化を図ることはもりより」という、これはどこへどうつながっていてどうだというのは、読み取りにくいことは確かなんで。

【井上委員】ここをもうちょっと、「図ることも今後検討すべき改革の方向である」と。

【髙木委員】経験の多様化以外の議論の切り口もありますよということが分かるようにしてほしいと思います。

【曽野委員】「経験」という言葉は、何を指されるんですか。経験というのを学習的、それとも経験的、知的な。何なんでございますか。私どもの経験というのは、大変な血みどろなものなんです。借金とか、女の問題を起こすとか。こういうものになりますと、これは裁判所にたくさんいらっしゃって、いろんなケースを御覧になるということでございますか。

【佐藤会長】それは、やはり人間の生活についての裏表というのか、血みどろなものを対象にするということではないでしょうか。法曹として、そうした現実の人間の姿と血みどろの格闘をする。血みどろと言うとちょっと何ですけれども。

【曽野委員】でもそれは、自分はしていないわけですね。そういう格闘を見るということですね。つまり体験するか。

【佐藤会長】直面して判断しなければいけないわけです。

【曽野委員】よく分かります。しかし経験というのは、第1に、普通は当事者になること。

【井上委員】「体験」ですね。

【曽野委員】そうです。ですから、「体験を見る」なら分かるんです。「体験を知る」とか、「体験を学習する」とかというのは分かるけれども、体験をなさっていていいんだろうかと。

【竹下会長代理】ここの含意は、判事補が判事になる、ずっと裁判所で判事補という立場だけの経験ではなくて、もっとほかの、例えば、行政官としての経験とか、民間企業の法務部での経験とか、そういう意味での経験をいろいろ踏んでもらって、判事に任命されることが望ましいということです。

【曽野委員】多種多業種というか、業種という言葉はいけませんけれども、そういうことですね。

【井上委員】そうですね。弁護士さんも含めてということですね。

【曽野委員】少しそうお書きいただく方が、経験というと、私たちはもっとやはり、女房と第三の女との間であれすることとか、高利貸しに引っ掛かることとかという、やはりそういうことをも含めると思います。

【井上委員】「法律家としてふさわしい多様で豊かな」と書いてありますから、そこで限定が付いているのです。

【曽野委員】そうですか。そうすると、それは多分経験じゃないですね。

【井上委員】経験もあるわけですね。

【鳥居委員】先生のおっしゃるとおりに、よく分かるように書くと、これは研修の経路の多様化みたいなことを言っているんです。

【曽野委員】そうだろうと思います。

【鳥居委員】今、行われている議論は、それだけ書かれたら困ると言っているわけです。

【竹下会長代理】そうです。研修という方法だけではないのですね。

【鳥居委員】だから、この言葉をやめて、さっきの中坊さんのように置き換えるのがいいんじゃないですか。

【佐藤会長】知識、経験、人間性という話をしてきていますね。

【中坊委員】そういう既に書いている、「裁判官としてふさわしい資質、能力を持った」と書けば、それでいいわけで、それを経験だけに限定するからかえっておかしい。経験の多様性と書くからちょっと実態が変わってくるわけです。だから、そこだけ直せばいいと思うんです。

【井上委員】それと、さっき髙木委員がおっしゃった、最初の「もとより」のところが、「今後検討すべき」というのにつながるんだということを、もうちょっと文章の上から明確にしていただくと、誤解が少なくなると思います。

【佐藤会長】実質化を図る方向で検討すべきなんですね。それはもとよりのこと。

【井上委員】そうです。もとよりの後に、別の「こと」という語が間に入っているものですから、後ろのつながるべき部分とちょっと離れてしまっているので、誤解を生むのかなと思います。

【中坊委員】あれじゃないですか。またこの次の日もあるんだし、今日そこまで考えてこっちに合わせたら、また後でやることになりますから。これはお任せしておきますから、次までにちゃんとここを直しておいてください。

【佐藤会長】はい、また20日に。ここは宿題ということですね。

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】分かりました。

【中坊委員】さっき言ったような趣旨でということではおおむね一致しているんだけれども、それを文章上どう表現するかということは、一遍よく考えてみてほしいです。

【佐藤会長】なかなか難しい宿題ですけれども。では、ここはそういうように。ほかは、よろしゅうございますか。

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】以上で、「3.人的基盤の拡充」については、終わらせていただきます。先ほどの29ページ。それから27、28ページはこれでよろしいということですね。

【竹下会長代理】そうですね。

【佐藤会長】そうしたら、31ページの「4.制度的基盤の整備」の方に入らせていただきます。ここのところも、細かなことを言いますと、いろいろあるかと思います。区切りとして、まずどこまでを議論の対象としましょうか。(1)の全体を対象にしましょうか。時間の関係もありますし。

【竹下会長代理】そうしましょう。

【佐藤会長】では、47ページの(2)の上までを対象にします。大分分量がありますが、どうぞ。

【吉岡委員】37ページの10行目辺りから、二つ目のフレーズになりますが、「他方」というところから、弁護士報酬の敗訴者負担制度について記載がされているわけです。これは大分議論があったところでもありますし、ここでは「労働訴訟・少額訴訟など」ということで入っているわけですけれども、あのときも私は消費者訴訟を入れるべきではないかという発言をいたしまして、それが法的に類型化ができないという、そういうことで認められなかったわけです。ですけれども、実際に私たちが関わるような裁判の場合は、少額多数の被害であったり、医療事故なんかの場合もそうですけれども、非常に弱い立場だけれども訴えなければいられない、あるいは真相究明を求める、特に医療事故の場合なんかはそうなんですけれども、そういうことで訴訟を起こします。ですけれども、今の訴訟制度の中では、立証責任が被害者の方に負わされていますから、訴えを起こしても負ける確率というのは非常に高いんです。そういう中でも、最近は医療事故等についても、かなり被害者側に寄ったような判断も出されるようになってきていることは確かです。それでも、訴訟を起こそうというときに、弁護士費用の敗訴者負担ということになりますと、相手方の病院なり、あるいは悪質商法の相手方の弁護士費用なりまでみなければいけないという、そういうことになると非常に訴えがしにくくなる問題があります。この問題については、私、何回も申し上げて、入れられなかったわけですけれども、そういう意味では、やはりそういう問題があるんだということだけは、この文章の中に入れていただきたいと考えています。
 今日お出ししたペーパーのマル10のところに書いておきましたんですけれども、「一定種類の訴訟は、その例外とすべきであり」、そこからちょっと入れてほしいんですけれども、「行政訴訟、医療過誤訴訟」、過誤と言った方がいいのか、今は事故と言った方がいいのか分かりませんけれども、それから「消費者訴訟やいわゆる政策形成訴訟についても同様に例外とすべきとの指摘があった」。すべきであるとかというと異論もあるということがありますので、そういう意見があったということを入れていただきたいと思います。

【竹下会長代理】ここはもう申し上げるまでもなく、何回か議論があったところで、結局この原案は、ここの取りまとめの文章ですね、そのとおりにしたのです。御指摘になっておられる御趣旨は十分分かっておりますし、ここの文章の中でもすぐ上の段落で、いわゆる政策形成訴訟というものに触れているわけですから、そういうものが問題になるのだということは、読んでもらえば大体分かると思うのです。ここでは、何を例外とするかということを、具体的に制度設計まで決めてしまうということではないので、おっしゃるような趣旨は、実際に立法化するときにまた検討されるということになると思うのです。決して労働訴訟と少額訴訟だけが例外だというわけではなくて、ここに「など」という言葉も入っているし、なぜそういう例外を認めなければいけないかという理由も書いてありますから、そこはどうでしょうか。御納得いただけないですか。

【吉岡委員】「など」と書いてあっても、労働訴訟と少額訴訟が例示されていると、どうしてもそこに特化されがちだと考えます。特に消費者訴訟はそういう類型的に云々という、そういうようなことがありますと、一般の庶民が問題だと思うようなことが、非常に訴訟としてはやりにくくなるというのが実態としてあります。

【竹下会長代理】それはそうなのですが、ここでは、そういうところまで詰めた議論をしていないものですから、一応皆さんが異論なくお認めくださったものを、例として労働訴訟と少額訴訟を挙げるということになったわけです。

【吉岡委員】私は、やはり消費者訴訟を入れるべきだということは、かなり申し上げておりますし、敗訴者負担が訴訟提起を阻害するような要因になってしまうという恐れがあるということを非常に気にしております。もしそれが、そのままになった場合には、司法制度の改正ではなくって、改悪と言われる要素も含んでいるんじゃないかと考えております。

【竹下会長代理】しかし、そこに「不当に訴えの提起を委縮させるおそれのある一定種類の訴訟は、その例外とすべきである」と書いてございますからね。そうでないと、またここで、この取りまとめをするときの議論が蒸し返されるということになってしまうものですから、今の御発言は当然議事録に残っておりますし、今まで吉岡委員がそのことについて強く指摘をされておられることも記録に残っておりますので、それは実際に制度をつくるときに十分考慮されると思うのですが、いかがでしょうか。

【吉岡委員】ただ、審議会の場を離れてしまったときに、そういう文言が入っていないということは、やはり非常に分かりにくくなるのではないか。それで、ここに入れろという、少額訴訟の後に、今、言ったようなことを入れろということは、なかなかお認めいただけないと思いますので、そういう意見があった、あるいは、指摘があったということを入れておいていただきたいと。かなり。

【竹下会長代理】遠慮しておられると。

【吉岡委員】はい。

【佐藤会長】その下に、「このような見地から、敗訴者に負担させるべき弁護士費用額の定め方、敗訴者負担の例外とすべき訴訟の範囲及び例外的取扱いの在り方等について検討すべきである」というパラグラフもありますね。中間報告後、最終報告までに、更に議論することになるんじゃないでしょうか。そういうこととしていかがでしょうか。

【吉岡委員】では、中間報告後この問題はテーマとして議論するという、そういうお約束を頂いたということで、おっしゃるとおりに。

【竹下会長代理】民事司法の問題も当然議論しますから、そのときにまた問題としてお出しになられたときに、それはもう決着済みだからというようなことは申し上げません。

【髙木委員】確かに、審議会の具体論の一番早い時期の議論であって、私ども議論の仕方に慣れていなかったという点もあって、何となく意見をお聞きしたり、言いっぱなしたりで、それを会長と会長代理にまとめていただいた。この敗訴者負担制度についても、例えば、クラスアクション、団体訴権との関係はどうなるのか、あるいは懲罰的賠償をどうしていくのかなど、いろんな相互に関わり合う部分があると思うんです。ですから、今、吉岡さんが提起されたような問題も、どういうふうに、それぞれ制度的に位置づけていくのかといった問題等の関連もこれありだと思います。当然具体的に議論するときになれば、そういう議論と絡めての議論にもなると考えます。
 それから、フランス辺りでは、何か労働組合訴権というものがあるような話も聞いています。私もちょっとそっちの面からも、今いろいろ話を聞いたりしておるんですけれども、どこかでその種の議論も行ってほしいと思います。

【佐藤会長】吉岡委員、この段階では、そういう趣旨のものとして御理解いただけないでしょうか。まだ議論の機会はありますので。

【吉岡委員】これで決定ではなくって、中間報告の取りまとめは、そういうことも含んでいるということと、中間報告以降、この問題を取り上げて議論するということを確認させていただいて、今回はそこで一応。納得しているわけではありませんけれども。

【佐藤会長】分かりました。懲罰的損害賠償とか、今、髙木委員が触れられたようなクラスアクションの問題もありますので、中間報告後、更に議論をすることにしたいと思います。
 ここのところはいろいろ御意見をちょうだいしたんですけれども、32ページで、石井委員の方から、ストックオプションのお話、あるいは報酬規定の存置を前提とするのはいかがという御意見をちょうだいしたんですけれども、十分議論は煮詰まっていない感じもあり、利用者にとって報酬規定を取ってしまうと利用者にとってどうなのかというようなこともありまして、原案のとおりにさせていただければというように思ったのですが。

【石井委員】もちろん結構です。

【佐藤会長】それから、弁護士の懲戒情報の開示の必要性を明示せよとの御指摘ですが、26、27ページの弁護士のところで、かなりその趣旨は表現されており、ここでまた重ねて書かなくてもいいのではないかと思いまして、こういうようにさせていただきましたが、よろしゅうございますか。

【石井委員】はい、結構です。

【佐藤会長】ありがとうございます。非常に微妙な問題は、33ページから34ページに掛けての隣接法律専門職種との関係でございます。いろいろなお立場から、様々な御意見をちょうだいしたんでありますけれども、諸般の事情を考えて、今の段階ではこの辺のまとめ方がぎりぎりのところじゃないかと考えました。御不満の方もいらっしゃるかと思いますけれども、今の段階では、この辺で御承知いただけないかという思いなんでございます。議論し出しますと、非常に難しいいろいろな問題がありますので、お含み置きいただけませんでしょうか。御無理申し上げて、大変すみませんけれども。

(「はい」と声あり)

【竹下会長代理】どうもありがとうございます。

【佐藤会長】それから、35ページのアジア等云々の箇所ですが、山本委員の御指摘を受けて、全体のことを総論の8ページのところに書かせていただきました。

【山本委員】はい。

【佐藤会長】ここの文章は、弁護士あるいは弁護士会にもやっていただきたいという趣旨ですので、そういうように御理解いただければと思います。
 懲罰的賠償、クラスアクションの辺りについて、特に吉岡委員の方からいろいろ御意見をちょうだいしました。この書き方についてはちょっと御不満があるかもしれませんけれども。

【曽野委員】これで結構なんですけれども、35ページのアジアなどのところで、私、インドから帰ってきたところなんですけれども、インドでは法的に全部、アンベドカル以来、つまり階級制度というのはなくなっておりますが、年々、強硬になっております。強烈になっております。それで、インド=ヒンドゥー=階級制度。私の知り合いの神父などが、不可触賤民というのをダーリと言うんですが、私ども今度それだけを専門に見てきたんですけれども、ダーリに何とかして、人間としての権利を与えようと、ヒューマンライツを与えようとすると、それはヒンドゥーイズムに対する反抗であり、それはイコール国家反逆罪に結び付くわけです。私のその神父は殺されるんじゃないかと思って、実は内心心配しているんでございます。
 そういうこともございまして、アジアに対する支援というのは、どういうことをお考えになっているか分かりませんけれども、それをお覚悟の上でひとつお考えになっていただければと思います。これで結構なんです。

【佐藤会長】代理はカンボジアについていろいろ御努力なさっておられるようですが。

【竹下会長代理】私が今、関係しているのはカンボジアでございますけれども、幸いカンボジアではそういうことはないようでございます。

【佐藤会長】ほかにいかがでしょうか。

【竹下会長代理】47ページまでいきますか。

【佐藤会長】そうですね。46ページの基本法制の整備のところも、髙木委員、吉岡委員から御指摘いただきました。分かりやすい司法という観点からの問題は、基本法制に限られないと思うんです。例えば、税法ですね。この点は行政改革会議のときも非常に議論になったところです。税法は何が何だかさっぱり分からない、できるだけクリアーにすべきだ。通達がいかんとまでは言わないにしても、もっとクリアーに分かりやすくしなければならない、というような議論がなされました。これは一例であって、ほかにもいろいろあると思います。ですから、問題は基本法制に限られないと思うんですけれども、少なくともこの基本法制については、分かりやすい司法という観点から、この機会にその是正に本格的に取り組んでもらうべきではないかというように思いますので、ここはこういうことでいかがかなという気がするんですが。よろしゅうございましょうか。
 あと何か、この47ページまでで。何かだんだん脱兎のごとくになってきますけれども。吉岡委員、どうぞ。

【吉岡委員】47ページの(イ)のところなんですけれども、司法教育の充実のところで、「一般国民に対する司法に関する教育の充実を図るべきである」というふうに書いてございます。これは非常に重要なことだと思いますけれども、今、学校教育の中での司法教育というのがほとんどされていないという、そういう現状がありますので、学校教育でも必要だというところを追加して入れていただけないかなと思います。
 具体的に言いますと、「一般国民に対する司法に関する教育」、その後に「及び学校教育における司法教育」。

【髙木委員】今の吉岡委員の御意見に私も同感なんですけれども、小学校、中学校、高等学校、それぞれでの教育課程、あるいは学習指導要領、例えば、広い意味でいう社会科というんですか、公民だとか、ああいう教科なんですが、現実には、教科書に部分的にしか扱われていないという指摘があります。加えて、司法教育をやれと言ったって、どこでやるのかという時間取りがなかなか難しいのが現実でして、鳥居先生よく御存じだと思いますが、総合的な学習の時間なんていうところへ、みんな、何もかもそこでやれみたいなことになっていて、いわゆるドラえもんのおなかをつくっちゃっているわけです。もうドラえもんのおなかの中もいっぱいで、げっぷが出るぐらいで、そこへ更に押し込めと言ったって、現実的になかなか入っていかないんですね。ですから、その辺のことを認識して工夫していく必要があると思います。確かに学校教育でスウェーデンなんかの教科書も見てみましたけれども、結構な教科書ができています。その司法教育を強く意識した教科書を愛知県のNPOの人が訳しているのを頂いたりして見ましたけれども、ああいう教材を含めて、どういうところまで、どういう教え方で、どうしていくかということを具体的に検討しなければなりません。だから、触れるんなら、かなり学校教育の現状と併せて、どういう入れ方をするのかというのを考えていく必要があります。曽野先生の御主人が教育課程審議会の会長を、まだやっておられるんですか。

【曽野委員】分かりません。

【髙木委員】私が委員のときは、御主人が会長さんだったんで、いろいろ教わりましたが。

【井上委員】吉岡委員の御提案はごもっともなのですけれども、こういうふうに並べてしまうとちょっとあれなんで、むしろ「一般国民」の前に、「学校教育を始めとする様々な局面における」とかというふうに入れれば、よろしいのではないでしょうか。
 様々な局面というのがいいかどうか分からないのですけれども、様々な場面におけるとか、局面におけると。そうすると、「一般」というのは要らないような。何か一般と特殊がみたいでいやですから。

【佐藤会長】そうですね。

【髙木委員】それからもう一つ、この司法教育のところで、法曹の皆さんが何をなさるかというのが要るんじゃないですか。裁判官の方も検事さんも、あるいは弁護士さんは司法教育についてもいろんな役割と責任があると思います。

【佐藤会長】アメリカに視察に行きましたときに、鳥居先生も御一緒でしたが、裁判官やその職員が陪審の法廷を使ったりして、子供たちに対していろいろ実地教育をしているんですね。見学させたり。

【髙木委員】そういう意味で、例えば、今日のいろんな活動とか、そういうところに、そういう方々もいろいろ出て行かれて、国民に対する司法教育に関与されることは当然の責務だと思います。

【曽野委員】「国民に対する司法に関する教育」と、何を教育なさるのか分からない。もう少し私のようなのが見て、例えば、人権を教えるのか、裁判所を見に行くのかとか、泣き寝入りしないように弁護士さんのところに行くのか、何だか分からないですけれども、もう少し具体的におっしゃっていただけないでしょうか。逆に私たち国民は分からないんだと思うんです。司法に関する教育といっても何なのか、憲法を読めということかなとか、いろいろ考えるわけです。それで、少し突破口だけお教えいただければと思います。

【井上委員】例えば、「司法の仕組みや実際の働きに関する」とかでしょうか。

【曽野委員】そういうのを見せるチャンスをつくるみたいな感じです。そういうふうにお書きいただく方が、みんな推測できると思うんです。

【佐藤会長】今のお話ですが、中学の教科書なんかでも、やっと弁護士を取り上げて、身近に相談すべき存在として触れるようになりましたですね。かつての教科書では弁護士なんか出てこなかったように思うんです。やっと最近、幾つかの教科書でそれに触れるようになってきましたね。
 そうしたら、ここでの書き方を、今のお話と、それから井上委員が先ほどおっしゃったことを基本にして、文章を改めさせていただきたいと思います。

【竹下会長代理】これは、髙木委員が御指摘になられた、要するに法律家がそれにどう関わっていくかという視点ですね。

【佐藤会長】はい、どうもありがとうございます。では、(1)のところは、この辺りでよろしゅうございましょうか。

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】ありがとうございます。そうしたら、「(2)国民の期待に応える民事司法の在り方」、47ページから54ページまでですか、そこまでまとめて御審議いただきたいと思います。代理の方で、何か特にございますか。

【竹下会長代理】54ページのところで、かなり長い部分がアンダーラインを引いて挿入されております。これは、家事事件における履行確保、家事債務の履行確保の問題でございまして、これは確かに民事司法の取りまとめのところには掲げられていたものでございます。
 これを原案で落としましたのは、では実際にどういう方策が考えられるのかということについての御議論が必ずしもここでなされなかったし、今後の審議でも、どこまで具体策を打ち出せるかという見通しが立たないので、落としておいた方がいいかなと考えたのでございますけれども、中坊委員、吉岡委員の方から、やはりちゃんと議論をしたらというか、取り上げたことですから入れるべきだという御指摘を頂きまして、誠にそのとおりだと思い直しましたので取り入れました。一番大きな点はそこかと思います。
 あとは、比較的細目的な点で、49ページの下から2行目、ディスカバリーについて、「強力であると考えられるが、一方で、その弊害への懸念も指摘されている」という文章を挿入しました。これは山本委員から修文の御意見が出ましたので、確かにそのとおりですから入れさせていただいたということでございます。
 大体そんなところでしょうか。51ページの上の方、これは吉岡委員の御提案どおりに修文をしたということでございます。
 53ページのところで、「鑑定制度の改善を図るとともに、手続の早期の段階から専門家の関与を得られるよう」というところを、「関与を得ることについては、裁判官の中立公平等に疑義がないかを検討しつつ」と、これを入れるべきだという御意見でしたので入れさせていただということでございます。
 大体以上です。

【佐藤会長】ほかにも御指摘があるんですけれども、大体その趣旨は読み込めるんじゃないかと考えて、修文は今のようなところにとどめ、取りまとめを基本にさせていただきました。

【山本委員】私の思い違いかもしれませんが、54ページの行政訴訟制度改革のところですけれども、これは実体法の見直し含めると。これは、「行政訴訟制度の改革が不可避であるが」という、そういう取りまとめでしたっけ。

【佐藤会長】そうです。ずっとそういう言い方をしてきているんです。

【山本委員】そうですかね。

【佐藤会長】「不可避」という言葉を使ってきました。

【竹下会長代理】ちょっと待ってください、確認をします。

【佐藤会長】その言葉は、私自身がずっと言ってきたもんですから覚えています。今の山本委員の御発言もありますが、藤田委員から実体法の問題があるんじゃないかという御指摘がありました。他方、髙木委員からは、もう少し積極的であってしかるべきである、それから、違憲審査権の在り方についても問題があるんじゃないかという、そういう御指摘がありました。後でお諮りしますけれども、行政訴訟制度については、塩野教授に来ていただきましたが、12月に更に有識者の御意見を聞いたりして、一応問題の所在を代理からおまとめいただこうというように考えておりますので、現段階ではこの程度の書き方かなというように思うんですけれども。

【竹下会長代理】ちなみに、取りまとめのペーパーでは、「司法の行政に対するチェック機能の強化という視点からの改革が不可避であることについて意見が一致し、具体的な改革の在り方については、別途検討することとなった」という、2行でございます。

【山本委員】失礼しました。

【髙木委員】今の司法のチェック機能の強化のところについては、山本さんのような御意見もあるということで、これを変えてくれということはあえて申し上げませんが、前の総論部分に違憲立法審査のことが、この関係でちょっと触れてあるんですが、こちらの後半の方は違憲立法審査はどこにもないんですね。

【佐藤会長】そうなんです。各論のところでは出てきていないんです。

【髙木委員】どこで議論していただくのか。

【佐藤会長】今までは直接議論していないもんですから、各論のところで書けなかったんですけれども、総論の11ページのところで少し触れさせていただきました。最終報告までに、しかるべきところで、違憲審査権について少し御議論いただく必要があるんじゃないかと思っております。具体的にどこでどうするかについて今の段階では難しいんですけれども、やはり議論は避けてはいけない問題だろうというように思っておりますので、今回は総論で触れる程度でとどめさせていただければと思いました。

【曽野委員】私はずっと誤解をするつもり、誤解でもいいと思って読んでいるんですけれども、53ページの「(エ)その他」というところの4行目にアンダーラインを引いていただきました、「当審議会は、鑑定制度の改善を図るとともに、手続の早期」云々と。「裁判官の中立公平等に疑義を生じることがないかを検討しつつ」と。どういうことだか全然私は分からないんです。
 それで、何か誤解でもさせていただけるような文章にお願いしたいと思います。

【竹下会長代理】ここは、つまり専門的な知識を必要とするような事件については、専門家の関与をお願いしないと、迅速でかつ充実した審議ができないということで、専門委員というようなもの、それから専門参審というような形で、専門家に言わば裁判官側に入っていただくような制度を考えようではないかという話が前の方に出ているわけでございます。そういう専門家の関与というものは、しかし他方、裁判官室で裁判官と専門家だけが話をして意見を交換するということでは、当事者の方からその様子が見えない。そうすると、どんな話をされて、当事者としては専門家の意見といえども反論を加える必要がある、加えたいと思うことがあっても、それが分からなくなってしまうという御指摘があったので、裁判官の中立や公平という点に疑義が生じないかを検討しながら、そういう疑義が生じないような形で、あるいは疑義が生じないようなタイプの訴訟については、そのような専門家の関与を認めようではないかという文脈でございます。
 吉岡委員、よろしゅうございますね。そういう御趣旨でございますね。

【吉岡委員】はい。

【竹下会長代理】お分かりいただけましたでしょうか。

【曽野委員】分かりません。

【竹下会長代理】一層分からなくなったと。

【曽野委員】私は、短い文章にして、あるいは前にありますね。何ページかを見れば、51ページをよく読めばいいわけなんですね。よろしいんでございますけれども。私が不勉強なだけです。

【髙木委員】全体的にはいわゆる民事裁判の迅速化というのはいろいろ書いてあるんだけれども、充実という切り口での書きぶりが余り充実していないんじゃないかなと思っています。
 例えば、「証拠収集手続の拡充」というところで、例えば、「公文書の提出義務については、改正が留保され、実質的に旧法のままとなっている」という事実をお書きいただいているわけですが、例えば、こういうところは、この留保のところを、証拠開示制度の充実というか、そういう立場で、公文書を含む世界も対象としてもう少し充実すべきであると書いていただくとかの意見です。
 それから、ディスカバリーのところで、これは多分山本さんの御意見だろうと思いますが、最後に、「一方で、その弊害への懸念も指摘されている」。49ページの下の方に付け加わっておりますが、これは当時の議論を私が思い起こしますに、山本さんのお立場では、山本さんがお付き合いになる経営者の世界の受け止め方がいろいろおありになるだろう、本当にアメリカのディスカバリーなるものは、どういうふうに制度立てられ、どういうふうに運営され、実態はどうなっているかということを、テーブルの上に実態をきちっと載せて、やはり山本さんのおっしゃるような懸念があるとしたら、客観的に見て、そういうことも大切にして議論していきましょうということだったと思うんです。
 これが「強力であると考えられる」、その辺りが「一方で、その弊害の懸念も指摘されている」と書かれている。確かに山本さんは懸念を指摘されたんで、議論の現状ではそうかもしれないけれども、では、山本さんが本当にこの懸念とは何ぞやと、どういうふうにアメリカの全米の経営者の皆さんがどういう評価をし、どういうことになっているんだ、あるいは一般的にアメリカの法曹界ではこれはどういう評価になっているんだという点などについて、これは山本さんに失礼だけれども、かなり吟味された上で御発言されたのかどうか、まだ突っ込んで論議をしておりませんので分かりません。

【山本委員】ディスカバリーそのものにプラスの面だけを見るという議論は、やはり公平じゃないんです。ですから、ディスカバリーに触れなきゃいいですよ。プラス面として触れるなら、マイナスだという意見もある。

【髙木委員】どういうマイナスがあるのかというところを吟味していないわけです。

【山本委員】強力な手段が、どういういい面を生んでいるかという指摘もない。

【佐藤会長】そこはまだ具体的な議論をしていないんだと思います。

【竹下会長代理】私がここで山本委員からの修正意見を入れましたのは、客観的にそういう指摘をされているからです、アメリカでも日本でも。アメリカでも現に1993年の改正で、例えば、デポジションの数を制限するとかいうことをやっていますので、そういう意味で、客観的にもこういう弊害の懸念が指摘されていると言えるだろうと考えたわけです。確かにこの審議会の場ではどういう弊害があるかということを具体的に検討はしませんでしたけれども、一般的に指摘されていることは間違いございません。

【佐藤会長】50ページの2段落目を御覧いただくといいと思うんですけれども、当審議会は、少なくとも、当事者が早期に収集をするための手段を拡充すべきであると考えると述べています。米国のディスカバリーに相当する制度の導入の可否、その他の証拠収集手段の拡充改善の具体策について更に検討すべきであるとも言っています。ですから、その問題について議論を打ち止めにしたということではないと思うんです。最終報告に向けて。

【髙木委員】要は、これで相討ちでおしまいということではないんですね。

【佐藤会長】議論するんです。

【髙木委員】その前の提出義務のところは、文章をちょっと直すという意見はいかがですか。

【竹下会長代理】どこですか。

【髙木委員】「公文書の提出義務については、改正が留保され」、ディスカバリーのすぐ上です。

【竹下会長代理】「なお、公文書の提出義務については、改正が留保され、実質的に旧法のままとなっている」、これをどういうふうに修文されるのですか。

【髙木委員】「公文書の提出義務の拡充を図るべきである」と。

【竹下会長代理】そう書いてもよろしいのですけれども、これは、平成8年に国会で新しい民事訴訟法が制定されましたときに、その附則27条でその公布の時から2年以内に、公文書の提出命令についての改正法案を提出せよということを決めておりまして、もう政府はその改正案を国会に提出しております。ですから、今更改正せよと言わなくても、既に改正案は出ているのです。前回の衆議院の解散によって、一応廃案になりましたが、そしてまた今は臨時国会ですので、現在は出ておりませんけれども、法務省としては、当然次の通常国会には改めて出すという方針でございますから、その点は別にそう書かなくても、国会の方でこの改正案を審議し、可決すれば改正されることになるはずでございます。

【髙木委員】私の記憶では、そうなりますとか、そうしますとかいう記憶だったのが、ここで旧法のままとなっていると書いてあるからね。

【竹下会長代理】これはどうしたらよろしいでしょうかね。

【髙木委員】いいです。ここでやりとりしていただいたということで。

【竹下会長代理】政府としては、改正案を国会に出しているのですけれども、いろいろな事情で国会の方で取り上げて審議をなさらないという状況のものですから、それ以上はやむを得ないわけです。

【佐藤会長】次の通常国会には出るでしょうね。

【竹下会長代理】はい。法務省はそういう方針です。私どもは法制審議会民事訴訟法部会で一生懸命2年以内に改正案をつくって出したのですけれども、国会の方がそれ以上審議を進めてくださらない、いろんな事情があったからですが。

【佐藤会長】ここのところですが、最終報告までに通常国会があり、そのときの状況を見て最終報告には書きようがあるかもしれません。
 時間の関係もありますので、一応民事司法のところは、以上のようなところでよろしゅうございますか。

【吉岡委員】51ページのcの上のところの3行ほどなんですけれども、専門参審について触れてございまして、そこでは下2行のところで、「権利を不当に侵害することにならないかなどにつき、さらに検討すべきである」となっているんですけれども、「侵害することにならないかなどの観点から、導入の可否について検討する」。専門参審制度は裁判官の心証過程が不透明になる恐れがないか云々という、これはかなり専門参審制の議題のところで論議したところなんですけれども、不当に侵害することにならないかなどについて検討するというと、不当に侵害するかしないかという検討になるんです。ここで言うのは、侵害するかしないかの検討ではなくて、そういうことを含めて、導入することがいいか悪いかということを検討するという、そういうことがここの議論の考え方だと私は思っているんです。それがそのような意味に取れないので。

【竹下会長代理】二つの上のパラグラフ、太字で書いた最初のパラグラフのところで、一般論としてそういうことが書かれているのではないでしょうか。

【吉岡委員】すみません。どこのところですか。

【竹下会長代理】「専門家の手続関与を認める制度としては、既存の制度のほか、専門参審制、専門委員制度などが、一応考えられるが、そのうちいかなる専門訴訟にどの制度を導入することが適切か、既存の制度に加えて新たな制度を導入すべきかについては、それぞれ専門性の種類に応じて、個別に検討すべきである」というふうに言っていますので、今の御趣旨はここに入っているのではないでしょうか。
 何だか分からないけれども、とにかく専門参審というものはどこかには入れるんだということを決めているわけではなくて、それぞれの専門性の種類に応じて、専門委員が適切だと思えばそうするし、専門参審がいいと思えばそういうものを入れると。

【吉岡委員】「導入することが適切か」というのは、しないことが適切な場合もあるという含みがあるわけですね。

【佐藤会長】なお書きで入念に書いているんだろうと思います。
 では、よろしゅうございますか。そうしたら、民事司法については、先を急ぐようで恐縮ですけれども、以上で終わらせていただいて、54ページの「(3)国民の期待に応える刑事司法の在り方」、54ページから62ページまででございますけれども、ひとまとめで御議論いただければと思います。ここもいろいろと御意見を寄せられたところでありますが。

【藤田委員】61ページの「被疑者・被告人の身柄拘束に関連する問題」のaのところなんですが、下から5行目から、「被疑者・被告人の不適正な身柄拘束は防止・是正されなければならないことは当然である」とあります。防止はいいんですけれども、是正というと、当然不適正な身柄拘束があるという前提なんですが、これを見て、不適正な身柄拘束が横行しているというふうな印象を受けてはどうかと思ったんですけれども、今、水原委員に伺ったら、刑事司法の取りまとめがこうなっているということですので、時機に遅れたる攻撃防御方法で、これはもう駄目かなと思うんですけれども、不適正な身柄拘束が横行しているというふうに受け取られますと、刑事裁判官は何をしておるんだということになりますので、そういう実態にはないということを申し上げてあきらめます。

【水原委員】私、まとめの責務があるわけですけれども、そういうふうに誤解されるとするならば、そういう趣旨で書いているものではございませんので、「身柄拘束があってならないことは当然である」と、こういうふうにしていただければ一番よろしいかなと、修文していただければ有り難いと思います。

【髙木委員】いろいろ議論のあったところで取りまとめられたので、今更変えると言ったら、あのときどうだったんだという話にまた戻りかねません。
 何点かお願いしたいと思います。
 刑事裁判も迅速化は、長く掛かっている実情からやむを得ないのかもしれませんが、迅速化の一方で、充実と言いますか、防御権の問題だとかいろんな問題が関わっています。そういう意味で、56ページの総論のところの書き出しの部分辺りに、具体的真実発見、適正手続の保障ということについて、例えば、証拠開示の拡充だとか、直接主義、口頭主義の実質化だとか、そういう重要な方策が後の方に書かれているんですね。書き出しのところにも、総論的に充実に資するような言葉を少し入れていただいたらどうかなと。
 それから、57ページのところの証拠開示のところ、証拠開示をより早く、より広くやっていただく意義は、当事者主義をできるだけ実質化するということが最大の目的だろうと思います。ただ、被告人の防御権を実効あらしめるという意味もありますので、被告人の防御権を実効あらしめる云々のニュアンス、表現も、具体的には「被告人の防御権の実質化の観点」といったような言葉等もちょっと入れていただくわけにいかぬのかなと思います。

【竹下会長代理】57ページのどこでしょう。

【髙木委員】(エ)のところの、書いていただく場所はどの辺がいいのか。

【竹下会長代理】要するに証拠開示のところですね。

【髙木委員】被告人の防御権の問題も。
 その次の58ページの直接主義・口頭主義の実質化のところ、これは一つは、こういう言い方は失礼かもしれないが、こういう報告書はだれを相手に書くのかということなんですが、ともかくいきなり「伝聞法則等の運用の現状については異なったとらえ方がある」と書かれており、これでは多くの方はよくお分かりにならぬのじゃないかなと思います。もう少しかみくだいて、ここのところは書いていただいたらどうかなと考えます。
 それから、実質的な中身についても、直接主義・口頭主義の実質化に資するために、何がどうだということを更に検討、あるいはどういう課題があるんだということを、もう少し具体的に書けないものだろうかと思います。これは抽象的な意見で申し訳ありません。
 次に、58ページから59ページの、公的弁護制度、特に被疑者の関係で、我々の認識だったら、導入すべきであるということで大方というか、この審議会でコンセンサスされたと思っているんですが、「その条件につき幅広く検討すべきである」と書いてあります。逆に言えば「導入すべきである」と書いて、具体的には何々を検討すべきであるとかの書き方にならないのか。全体的にはそれぞれの項目で、それなりに議論して方向性を出すなり、合議をしてきたものが、この中間報告全体に、エクスプリシットだったものがインプリシットに、少しなり過ぎてはいないか。そういう意味で、この辺はもう少し我々がやってきた論議の方に忠実に書いても、余りもめないところではないかなと思います。これは少年審判のところも同様な印象です。
 それから、被疑者の取調べ云々のところで、61ページになるんでしょうか、「さらに」というところで、それだけでは不十分であるとして、録音・論画や云々に至るべきとの意見もありました。「結論を得るに至らなかった」という結論はまだ出ていないんです。

【井上委員】まとめではそうなっています。

【髙木委員】そうですか。

【井上委員】まとめの8ページで、「結論を得るに至らなかった」というまとめになっています。8ページの上から3段落目の一番最後です。これはそのままの文章です。

【髙木委員】「さらに、このような書面による記録の義務付けでは不十分であるとして、取調状況の録音・録画や弁護人の取調べへの立会いを認めるべきとの意見があったが、被疑者の取調べの機能の捉え方・重点の置き方の違いからそれらに消極的な意見もあり、結論を得るに至らなかった」と書いてある。結論を得るに至らなかったということは。

【井上委員】そのとおりじゃないですかね。

【髙木委員】ということは、結論を出すためにまだ議論の余地があるということでしょう。

【井上委員】だから、そういうふうに書いているのではないですか。

【髙木委員】だから、「結論を得るに至っておらず、更に検討をすべきである」とかね、そういう。

【佐藤会長】更に検討するくらいに。消極的意見もあり。

【髙木委員】至らなかったというのは。

【井上委員】至っていないということですよ。

【佐藤会長】それはそれでいいんですけれども、この先どうするか。

【竹下会長代理】その上のパラグラフで、「さらなる検討すべきである」と。書面化はやるけれども、それ以上のことについては、そういう「消極的な意見もあり、結論を得るに至らなかった」ですから、全体が更なる検討すべきであるということになってくるんでしょう。

【鳥居委員】録画・録音だけ、また別立てにしているんでしょう。

【佐藤会長】そうなんです。こっちの方はよかったんですけれどもね。だから、結論に至らなかったから、この先どうするのかと。

【井上委員】「至っていない」という表現にして、そのニュアンスを出すというのはどうでしょうか。それが、取りまとめとしてはぎりぎりかなという感じがします。

【佐藤会長】「至っていない」。

【髙木委員】ありがとうございました。

【竹下会長代理】よろしいですか。

【髙木委員】何点か申し上げましたけれども、どうぞよろしくお願いします。

【佐藤会長】そうしましたら、ここは「至っていない」というように直すことにします。
 何点かおっしゃったんですけれども、59ページの公的弁護制度の導入ということをもっとはっきりせよということですか。

【井上委員】そこは、まとめでは、「制度導入の意義・必要性が改めて確認された」という文章になっていますね。その意味では、確かに髙木委員がおっしゃるように、この文書より積極の結論を出しているので、もうちょっとそこは修文すべきかなと思います。例えば、その方向で内容とか条件を検討すべきであるというくらいにすれば、よろしいのではないでしょうか。

【佐藤会長】髙木委員、それでよろしいですか。

【髙木委員】結構です。

【佐藤会長】では、ここを修文して20日にお届けします。
 あとのところはちょっと、防御権。

【井上委員】その点はかなりいろんな議論があったものですから、ここはまとめの文章をかなりというか、極めて忠実に写してあると思うのです。そのバランスを崩しますと、また実質的な議論の蒸し返しになりかねませんので、私は原案のままがよろしいのではないかと思います。

【竹下会長代理】先ほど髙木委員が言われた58ページの「(カ)直接主義・口頭主義」のことですね。この書き出しの文章は、確かにおっしゃるように分かりにくいですね。

【井上委員】ただ、伝聞法則とは何だというのも難しい話なのですよ。

【竹下会長代理】この取りまとめだと、その前に3行くらいありますね。「すなわち」というところから始まって、この文章になっている。

【水原委員】取りまとめのところでありますから。

【曽野委員】直接主義と口頭主義というのは、別なんですか。

【井上委員】一応別です。

【曽野委員】全然分かりません。対立するものなのか何なのか。

【井上委員】ここで講義するのはどうかと思います。

【曽野委員】これは素人が読まないものなら結構なんです。ですから、素人が分かるんなら駄目だ、専門家なら何の異議もございません。

【井上委員】最初の4行をもう少しかみくだいて書くということでしょうか。

【曽野委員】あるいはグローサリーを付ける。

【井上委員】全体についてですか。法律学辞典というのをそのまま写すような話になりますね。

【曽野委員】最低だけ付けて納得させればいいんです。

【佐藤会長】では、58ページの今のところをかみくだいて書く、あるいは書き方を少し工夫する、それから、59ページのところ、それと61ページの下から4行目を、「結論に至っていない」というように改める、ということでいかがでしょうか。

【吉岡委員】55ページのところ、ここに入れるのが適切か、大分考えたんですけれども、私、前に知的障害者の問題で意見を申し上げた記憶がございます。それがどこかに入れられないかなと思って、いろいろ考えてみまして、「犯罪者の改善更生、被害者等の保護」という、ここに何とか入れられないかなと思って、私の出しましたペーパーの3枚目のマル14に書いてありますけれども、犯罪被害者の問題について非常に今、注目を集めておりますし、かなり被害者の保護を考えなければいけないという状況になっています。それに加えて、障害者の問題というのを考えなければいけないということで、以下のような文言を挿入できないかなということてございます。「この点については、女性や子供の犯罪被害について設けられている特別の捜査体制(専門捜査官、専門相談官など)の充実を図るとともに、障害者(とりわけ知的障害者)についても、その特性に対応した専門捜査官やコミュニケーション支援者の養成と配置を制度化すべきである」と書きました。
 特に知的障害者の場合には、現在、精神障害者については、いろいろ法的な策が講じられているのですが、知的障害者については、一般人と同じ取扱いとなっていまして、知的障害があるために、これは被害者になった場合も、加害者になった場合も、自分の人権について主張することができないという問題があります。
 この問題を解決する手段としては、ここに書いてある専門捜査官やコミュニケーション支援者という方々がいらっしゃって、そういう方が付くことによって、本当のところを聞くことがやりやすくなるということがあります。
 そういうことで、知的障害があったとしても、やはり人権は守られなければいけないという、そういう視点で入れていただきたいと。知的障害の問題は、前にも申し上げましたけれども、なかなか入る場所がないんです。それで、56ページの2行目の「今後の一層の充実を図っていくことが必要である。そして」という、この間辺りに、そこに書きましたような文言を入れられないかということを申し上げたいと思います。

【井上委員】その事柄の重要性を否定するわけではないのですけれども、残念ながら、まだここでは十分議論していませんね。わずかに、被疑者弁護のところで障害者や少年に特に配慮するという形で出てきているだけなのです。その意味では、中間報告の段階で、いきなり入れるのはちょっと難しいかなと思います。
 刑事司法についても、まだヒアリングを含め、更に審議するということになっていますので、そこで出していただいて、何らかの形でまとまれば、最終報告に入れるということでいかがでしょうか。

【吉岡委員】問題提起はしたんですけれども、それ以上の議論にはなっていない。ただ、どこにも入っていないと、後の議論もできないんじゃないという、その辺がちょっと気になっていまして。

【井上委員】吉岡委員が発言されれば、重みを持ちますよ。

【佐藤会長】そういうことでいかがでしょうか。
 ほかにもいろいろあるかもしれませんけれども、苦心しておまとめいただいたところなので、この刑事司法のところは以上でいかがでしょうか。40分でこれを終わる予定だったんですけれども、オーバーしてしまいましたが、刑事司法のところはよろしゅうございますか。

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】ありがとうございます。
 62ページから66ページまで、「5. 国民の司法参加」のところですけれども、ここについて御議論いただきたいと思います。
 鳥居委員御指摘の戦前の陪審制度、中坊委員も触れておられたかと思いますけれども、この63ページの括弧の中に入れてまとめてみました。こんな触れ方でいいのかどうかということもあるんですが、そういう形で入れさせていただきました。

【鳥居委員】先ほど来、だれが読むのかという問題、曽野先生からお話がありますけれども、国民の多くが、戦前に陪審制度があったことを知らないまま、55年経ってしまったこと。それから、その影響なんでしょうし、また、一般に国民は法律を読みませんから知らないんでしょうけれども、裁判所法の第3条3項に、裁判所法の規定は刑事については別に陪審の制度を設けることを妨げないという文章が厳然と存在しているわけです。それを国民が知らないわけですから、知らない状態でこの63ページから64ページを読むのと、知っていて読むのとは、全然違うと思うんです。それで私は、そこのところを1行入れていただいてはどうかという意見書をお出ししたわけなんです。

【佐藤会長】もうちょっと丁寧に書きますかね。

【井上委員】これで伝わるのではないでしょうか。詳しく書き出すと、なかなか位置づけとか、評価が分かれるところがありますので。

【髙木委員】余り事情を知らないままに書かれてしまうというのは、現に昭和18年まであったわけですし、今の裁判所法の中にもあるわけですし、もう少し歴史的な経過やらを書かれたらどうかなという鳥居先生の御意見に同感です。

【鳥居委員】多分10文字くらいで済むんじゃないかと思うんですけれども、「戦前に陪審制度が存在し、また、現行裁判所法の中に陪審制度に言及している部分があることにかんがみ」という文章をちょっと入れるだけじゃないかという感じがします。その方が国民に対してフェアだと思うんです。

【佐藤会長】昭和3年から18年まであって、現在の裁判所法がどう定めているかについて、括弧書きの中でもいいから書きましょうか。

【山本委員】戦前の陪審制度というのは、ここで議論されたのと違うんじゃないですか。参考意見みたいな陪審制度でしょう。そこのところは、同じ言葉を使っても、似て非なるものじゃないかという感じがするんですが。

【佐藤会長】ただ、戦前も陪審と呼ばれておったわけで。

【山本委員】呼ばれたというなら分かるけれども、「陪審制度が」というのはどうですかね。

【藤田委員】歴史的経過としてはそのとおりなんですけれども、戦前の陪審制度に対する評価というのもいろいろですし、それから裁判所法3条3項の規定がどうして入ったのかという経過もあるわけです。客観的な歴史的経過だと言えばそうなんですが、そういうことを加えることによって、陪審について審議会全体が積極的な考え方を取っているのかと受け取られると、実態からちょっと離れている。陪審・参審については、いろいろ意見交換をして、ぎりぎりのところで整理をしたわけですから、大体それに準拠していただいてやった方が、そういう意味での誤解を避けられるんじゃないかというふうに考えます。

【佐藤会長】御趣旨はよく分かりました。ここでは単に「戦前の陪審制度を含む」としか書いていないので、一体何だったのという問題があるかもしれない。例えば、昭和3年から18年までの陪審制度、そして現行の裁判所法何々参照くらいにしておきますか。

【井上委員】現行の司法参加制度についての記述の前に、「我が国においても戦前にはこういうものがあったが」として、それに続けて、現行の制度を見ると、こういう制度があるものの限定的であるという形にしたらどうですか。62ページです。現行制度の説明から始まっているわけですけれども、その前に、そういうものがあったがとする。「が」というのは、「しかし」という意味ではなくて、ただつなげている趣旨です。括弧の中でいろいろ説明すると、非常に煩わしくなりますから。

【佐藤会長】今どちらがいいのか自信を持って言えないので、両方を検討させていただきますか。

【中坊委員】私は山本さんのおっしゃるように、陪審と違うじゃないか、言葉を使うこと自体が問題だということにはならないと思うんです。なぜならば、裁判所法の中にはっきり、別に陪審を定めることを妨げないと書いてあるんだから、「陪審」というのが一つの法律用語の中で出ておるわけです。それを、これは陪審とは言えないんだとか言い出したら、それこそ切りがないので、そこはまさに会長もおっしゃるように、そういうようなものとしてあったことだけは事実なんだから、それは今、井上さんもおっしゃるように、この経過の中では、賛成だとか、今の藤田さんのような勘繰った物の考え方をしないで、もうちょっと素直に、事実は事実として書くという方が、私は素直だと思います。

【竹下会長代理】おっしゃるとおりだと思うのですけれども、やはり陪審という言葉を使うのは結構だと思いますが、戦前の陪審制というのは、今我々が議論している陪審制とは違うのだということは、示しておく必要があると思うのです。

【佐藤会長】ただ、そこは解説しだすと大変ですね。

【中坊委員】言葉としては存在しておって、しかも条文の中に出ているんだから、その言葉をえらい厳格に言えば、今度は逆にそれを消極的にしようとしているんじゃないかとなるから、もう少し素直にお書きになったらいかがでしょうか。しかも、鳥居さんのおっしゃるように、経過の中で書けばいいんじゃないかということを言っているんです。

【竹下会長代理】ただ、事実として。

【中坊委員】だから、事実として陪審という言葉を使うことにそれほど神経質になるということ自体がおかしい。もう少し素直に見てやる必要があるんじゃないか。

【竹下会長代理】私は、陪審という言葉を使うことは結構だと思いますけれども、ただ、戦前の陪審は裁判官を拘束するものではなかったということをはっきりしておかないと、誤解を招くと思うのです。

【髙木委員】それなら、事実をちゃんと書いたらいい。長くなってもしようがないですよ。

【井上委員】こういう制度があった。ただし、機能は限定されていた、と書くということでしょうか。

【佐藤会長】書きやすいと言ったら語弊がありますけれども、井上委員のおっしゃった趣旨を括弧書きの中に2行くらいで入れますか。長い括弧書きは余りよくないんで。

【髙木委員】63ページの「(ア)訴訟手続への新たな参加制度」のところの、いわゆる書きぶりなんですが、これを取りまとめするときにも、いろいろ議論がありまして、例えば、米印のところに何か書く書かないで、いろいろ議論がありましたり、いろいろ経過がありました。その中で、「そもそも」で始まります段落の、「したがって、憲法が採用する国民主権の原理から直ちに国民の司法権行使(訴訟手続)への参加が導かれるわけではない」と、これは確かに、司法参加のときの議論のときにも、こういう御意見があったことは事実ですし、全体のこういう文章の構成の仕方の中に、こういう文言を、論点整理や何やかやとずっと議論してきた、あるいは公共性の空間とか、いろんな議論をしてきた中で、この書きぶりだと、まさにそうとばかりは言い切れないというふうに言い切っているわけです。
 この辺の書きぶりについてはどうなのかなと思います。全体的なトーンに非常に大きな影響を与える一文じゃないかなと思います。これも先ほどいみじくも藤田さんがおっしゃったように、取り方によってはいろいろだという面もあるところでしょうから、この辺の表現ぶりについて、いちいち言うといろいろあるのかもしれませんが、「そもそも」からその次のページの真ん中辺りまで、もうちょっと上の方、一番最初の63ページの2番目のパラグラフの前辺りまでかよく分かりませんけれども、その辺の書きぶりを若干修文いただいた方がいいんじゃないか。

【竹下会長代理】ここのところは、かなり何人かの方から削除すべきではないかという御意見が寄せられまして、そういうことも考えたのですけれども、他方では、これを支持するという御意見の方がむしろ多いものですから、会長といろいろ御相談して、とにかくこのままで、原案のままで、今日皆さんの御意見を伺って決めようと、そういう趣旨でお出ししたものです。ですから、これでもう決まりにするとか、そういう趣旨ではございません。
 これは、会長が憲法の御専門家ですが、国民主権という言葉も非常に多義的なのです。
 主権という言葉自身も3通りくらいの使い方があると言われていて、その国の統治の基本を決めるという権能、それが国民に帰属しているのだというのが最も通常の意味だと思います。むしろ国民が権力の根源的な源だという意味で、国民主権という場合もある。
 それから、主権というのは、統治権そのものを指すこともある。ですから、立法権・行政権・司法権を指すわけです。
 そうすると、統治権としての主権というのは、これは今の憲法でも国民が直接に行使するということになっているわけではなくて、立法権は国会に、行政権は内閣に、司法権は裁判所に帰属するということに決められているわけです。その裁判所の中身については、我々、日本国憲法施行以来五十何年間、それは職業裁判官によって構成される裁判所であると理解し、その裁判所に司法権が帰属しているのだと考えてきたわけですから、国民主権というと、すぐに国民が司法権の行使に参加すべきだということになるわけではないのだろうと思うのです。
 ただ、そのことと、それを原案のように表現するのがよいのかどうかは、これは別の問題だと思います。

【中坊委員】それと私らは論点整理の中の大きな骨格として、国民主権という言葉は使ってないけれども、みんなの共通の認識として、日本国の国民が統治客体意識から統治主体意識になっていないということは、我々として言ってきて、今言う訴訟手続に参加するかどうか、もっと広く司法そのものが国民的基盤の上に立つかどうかということは、そこから出発しているわけです。ところが、この文章になると、「身近で開かれたもの」という論点整理のその部分だけが妙に援用されてあって、しかもそれから、国民主権に直結するものではないという論拠になっているのが、我々の真の基本ラインと、私はやや外れていると思うんです。
 だから、この書き方は基本的にこんなところが、一つの文書になって、しかもかなり長文にわたって書き込まれていくということは、一つのまとめ方として非常に問題があるという気がします。しかも、先ほどから言うように、戦前に陪審があったことまでも削除したりね。
 だから、全体として、我々が議論してまとめたものを素直にここの文書もまとめていただかないと、今、髙木さんがおっしゃったように、私が読んだって論点整理の一番核心のところが引っ張られてなくて、身近で開かれたものだというだけのことで、訴訟参加のところが出てくるというものじゃないと思うんです。
 これは我々が今まで十分審議してきたところですから、その辺は踏まえて、この部分の文章というのは、私も髙木さんと同じように、多いとか少ないというのと別に、ここはもう少し我々の議論したことに基づいてお書きになるべきじゃないかという気がします。だから、このまとめ方はおかしい。

【藤田委員】陪審と参審については勘繰るなとおっしゃられても、いろいろ微妙な意見の対立があったところなんで、それをようやく整理したわけですから、基本的にそれに準拠していただかないと、また議論の蒸し返しになってしまうということがあると思います。
 ここで合憲だ違憲だという議論をしてもしようがないと思うんですけれども、国民主権から論理必然的に陪審が導かれるということになると。

【竹下会長代理】司法参加です。

【藤田委員】司法参加を具体的にどこまで認めなければ違憲になるという議論にまで発展するのかもしれませんけれども、そういうようなところは、この段階で議論することではない。陪審・参審についても合憲だ違憲だということがありますし、会長は憲法学のリーダーシップを取っておられますが、会長お一人で決めることのできる問題ではないということもありますから、そういう意味では、こういうことを書かれたからと言って、陪審と憲法との関係でどうだということではありません。私は政策の問題だと思うんですが、そういう意味で、これでもいいのではないかと思います。

【中坊委員】私の言うのは、そこが何も触れられていないならいいんです。そうでなしに、憲法が採用する国民の原理から直ちに導かれるものではないという逆の限定がされておるからおかしいと言っているんです。

【佐藤会長】国民主権と言っても、司法に対する働き方と政治部分に対する働き方とは違うわけで、そのことは総論のところで、るる説明していることです。やや趣を異にしていることを書いています。
 そこで、提案ですが、「したがって」から「参加が導かれるものではない」、この文書がなくてもいいような気がします。これを取って、あとの文章を残すということでいかがですか。

【井上委員】中坊先生御指摘の点は、62ページの一番最初の総論のところで、統治主体云々というふうに全体をカバーするものとして書いてあって、それを受けて各論としてここの部分がありますので、今の会長の「したがって」のところを取ればよろしいのではないでしょうか。

【佐藤会長】藤田委員のおっしゃるように、システムの問題なんで、どう設計するかの話ですからね。

【山本委員】総論でそういうことがにじみ出る。

【佐藤会長】まさに違うと。でも、広い意味では、国民主権と無関係ではない。システム設計の話だと思うんです。

【吉岡委員】この改革審議会は、そもそもは国民の視点で、国民がどう参加していくかという視点でやらなければいけないと考えているんです。そういうことから言うと、私は「そもそも」から64ページの5行目くらいまでは削除した方がいいという意見を出しました。その意見の内容については、今、髙木委員等からの発言でも、大体似たようなことかなと思っているんで、改めて申しませんけれども、特に「したがって」以降のところは、非常に後ろ向きの感じを受けるんです。この辺のところはカットしていただきたいと思うんですけれども、今の「したがって」以降の削除というのが、どこまでなのかがちょっと。

【佐藤会長】その2行だけです。「したがって」から「参加が導かれるわけではない」、この2行だけです。

【吉岡委員】そうしますと、その3行目、「しかし」からですが、そこのところで「裁判の過程が、より国民に開かれたものとなり、裁判内容に国民の健全な社会常識がより反映されることになれば」という前提条件を付けるということになりますね。

【佐藤会長】前提というか、そこは余り勘繰らなくても。

【吉岡委員】でも、それはなぜかというと、それまで待つということになると。

【佐藤会長】むしろ、ここで言っているのは、民主的正統性がかえって強くなって、全体的に見れば、国民主権の趣旨に沿うというように読んでいただければと思うんですけれども。

【竹下会長代理】そういう意味なのですよ。むしろ、民主的正統性を強めるのだという議論ですよ、ここは。

【井上委員】御懸念の種を除くため、「より反映されるようになることにより」というふうに書けば、待っているのではなくて、そうすることによって国民的基盤を得るという意味になるのではないですか。ついでですが、「そもそも」というのはやめませんか、何か講釈的で、ちょっとそこが引っかかりますから。

【藤田委員】もし「憲法が採用する国民主権の原理から直ちに国民の司法権行使(訴訟手続)への参加が導かれるわけではない」というのが、非常に否定的な印象を与えるとするならば、「参加が導かれるというよりも、裁判の過程が」というふうに続けたらどうでしょうか。

【佐藤会長】それだとちょっと文章が長くなりますからね。

【中坊委員】私は、別にさほどこだわりはしませんけれども、同時に、論点整理においてここの部分だけを引用されるということについては、基本的な姿勢の問題があると思います。やはり、基本的に言えば、統治客体意識から主体意識に変わるというのは、もっとここよりも根本的な我々の論点整理の議論の立て方だったと思うんです。それは確かに司法は国民にとって身近なものであるということになっています。けれども、論理の立て方がもっと根本的に、まさにそこに一番問題があったんだ、だから、日本の近代はないということから大きく大上段に振りかぶってきているものを、途端にここになったら論点整理という言葉が出てきて、論点整理の中に引用されている部分が国民により身近で開かれただけで、これ以外のことが論点整理にもっと肝心かなめの、まさにこの問題に直接関係する部分が我々として、しかも根幹のものとして書き込んできたのにかかわらず、この文章では、それらの部分が含まれていないところに、一つの問題点が私はあると思いますね。
 だから、単に、今おっしゃるように、ここの部分を「そもそも」を抜くとか、あるいは「したがって」のところを抜けば、それで我々の今までの審議の仕方、それは、私が言っているのは、意見というよりも我々の審議がどういう審議の上に立ってきたかということを私は踏まえて言っているだけで、私は、どの意見だこの意見だというのではなしに、やはり我々の論議の立つ基盤というものを、はっきりした議論の文章にしないと、私はおかしいと思う。

【竹下会長代理】司法参加の問題の冒頭にそれが挙げられていますね。今、中坊委員がおっしゃられた「21世紀の我が国社会において、国民はこれまでの統治客体意識に伴う」ということです。

【中坊委員】いやいや、訴訟手続の参加のところに書いてある。

【佐藤会長】62ページのアに出てくるわけです。それが我々の一番基本的な立場である。

【中坊委員】私は今直ちにどう文書を変えてくれとか、あるいはどの点をとか、そういう考え方があってもいいということ、それはそのとおりだと思います。しかし、今、おっしゃるように、そういう立場からこれが起点だという見方も仮にあったとしても、論点整理というものを我々が非常に大切にして12月からやってきた大きな基礎になるものを引用されるときは、もう少し我々の拠って立つ基盤というものをはっきりさせた上でこの議論を進めないといけない。我々審議会の議論そのものがどういうことになっているかという鼎の軽重を私は問われると思います。

【佐藤会長】もう5時10分になりました。
 歴史的・文化的な背景事情や制度的な諸条件に留意すること、これは我々としていろいろな問題を考えるときに、しなければいけない話なので、論点整理での文章をここのところへこういうように引用しているのは当然のことだと思うんです。

【井上委員】今、中坊先生のおっしゃったことは62ページの5の(1)のアに書かれていますので、それをここに反映させるとすれば、63ページの下から3行目の「しかし、裁判の過程」というところとの間に、「上記1の(ア)を踏まえた上で」、「しかも、より国民に開かれたものとなり」というふうにすれば、その前の文章がここにもかぶっているということが明らかになるのではないでしょうか。先生がおっしゃる主体意識というのは、62ページのアに書かれていますので。

【中坊委員】文章をどこに入れておくかは、この場でこう言うよりも、またお任せしますけれども、やはりそういうものとしてしておく必要はある。

【佐藤会長】また宿題が出ましたね。

【竹下会長代理】ここはちょっと修文していただいて。

【佐藤会長】では、さっきのところ、先ほど井上委員の御指摘のように、「そもそも」といったところを削り、ほかの文章は生かさせていただくということでよろしゅうございますか。

【髙木委員】65ページの裁判官選任過程の参加のところの、下線を引いていただいているところの下から2行目に、「判事に任命される」というのは、「判事」というのはやはり「裁判官」に直しておかなければいかぬではないかと思います。

【佐藤会長】統一的にどちらにするか、そもそも統一すべきなのか、ちょっと考えさせていただきます。
 ここのところはそれでよろしいでしょうか。

【井上委員】あと言葉だけの問題なのですけれども、66ページの検査審査会の一番最後の部分の「主体等を」というのを、「主体等について」と直してはいかがでしょう。

【佐藤会長】いろいろ直したいところがおありでしょうけれども、一応、各論のところはこれでよろしゅうございますか。ありがとうございました。
 それでは、最後に、「はじめに」と総論の部分についていかがでしょうか。

【山本委員】まだおやりになりますか。

【佐藤会長】やります。今日、決めておかないと、20日が。

【山本委員】総論はいろいろペーパーで出したんですけれども、ほとんど変えられていませんよね。さっき中坊先生が大上段とおっしゃったけれども、ちょっとこれは大上段過ぎませんか、全体的に。

【曽野委員】もし国民にお読ませになるなら読みませんよ、こういう文章では、はっきり申し上げまして本当に分かりません。例えば、「おわりに」の第2段落「基本法制の所要の整備など」、こういう言葉というのは全く、やはり相手を考えていないから出てくる言葉だと思います。「本報告中には、例えば司法を担う人的基盤の拡充や基本法制の所要の整備など」、こういう文章を見ただけでだれも読まなくなっちゃうんです。だから、何とかして読ませるなら、ものすごい文章の改革をなさるべきです。そうでなかったら、国民が読むことをおあきらめになる方がいいと思います。

【佐藤会長】お願いできませんか。

【曽野委員】絶対にできません。日本語の感覚が違いますから。

【北村委員】ここに太い字がありますね。ここだけ読ませようというんじゃないんですか。

【曽野委員】それもいいアイデアね。リーダーズダイジェストで。

【藤田委員】大変格調は高いんですけれども、ちょっと少し詳し過ぎるかなというのと、少し難し過ぎる。先ほどのだれが読むのかという問題もあるんですけれども。
 それとか、三淵長官の言葉などを引用されていますけれども、こういうところを取り上げると、それぞれに皆さんお考えが微妙な差があると思うので、内容に不服があるわけではありませんけれども、もうちょっとやさしくして、少し読みやすいようにしていただければいかがかと思いますが。

【山本委員】4ページの「様々な国家規制や因習が社会を覆い」とか、そういう表現が、非常に多過ぎるのではないかという感じがするんですね。
 それから6ページの、司法のことについて言っているんですが、「ただ一人の声だけであっても、真摯に語られる正義の言葉には、真剣に耳を傾けられ」、司法のところだけなぜこういう取上げ方をされるのか。

【佐藤会長】構造的にそうだということです。当事者主義を基本にかんがえればね。

【山本委員】それは多数決だって同じではないですか。

【佐藤会長】多数決の場合は、最終的にはまさに多数で決めるので。

【山本委員】そういう気持ちでなければいけないという点では同じではないですか。

【佐藤会長】司法は、法の原理に従って行われるところに存在理由がある。もっとも、政治の場合は数によって決めると言いますけれども、理屈はどうでもいいのかと言えば、必ずしもそうではない。国会で議論していただかなければいかぬ、そこではやはりそれにふさわしい理は大事だと思いますけれども。

【山本委員】全体に政治・行政の分野のような感じなんですね、これは。司法というのではなくて。常に官がいけないという感じになっているでしょう。私はそういうふうに思うんですよ。

【佐藤会長】いや、そういうように受け取られると困ります。官には官としての重要な役割がある。ただ、官の役割の在り方について、行政改革で本格的に考えようとしたのです。

【山本委員】我々は司法制度をやっているんです。

【佐藤会長】もちろんそうなんですけれども、なぜ司法制度改革審議会が設置されたのかを考えなければならない。大きな背景には、やはり地方分権だとか行政改革だとか一連の改革があって、そしてまさに最後のかなめとして司法というものがちゃんとやっていただかないと、日本の全体のシステムとしては困りますよということではなかったかと思うんです。
 そして、強調したいのは、行政の方はスリム化をやろうとしているのに対して、こちら司法の方は、むしろ大幅増員を図らなければならないということなのです。それにはそれなりの、ナラティブというか、ナレーションというか、そういうものがあるんです。それを書いたということなんです。

【水原委員】会長の御苦心のほどは本当に身にしみて分かりますけれども、この中間報告というのは、国民の各層の方々から広く意見を求めるために、それを前提として我々は練ってきたと思うんです。そういう意味においては、国民に報告するという極めて重要な文章ですが、それぞれの委員が御指摘のとおり、非常に難しい言葉が出ております。誠に申し訳ございません、不勉強で理解ができないのかも分かりませんけれども、やはり必ずしも国民にとって、報告書全体を読んでいただけるような感じのものにはなっていないような感じがいたします。殊に総論部分のところは、非常に難解な言葉が多いし、もう少し簡潔にできないんだろうかなということ。
 それから、これまでの議論もそうなんですけれども、それぞれの間で十分議論がなされておらなかったところもあるような感じがいたしますので、なるべくもう少し簡略にできないだろうかということを、私も申し上げたいんですが。

【髙木委員】簡略論も分からないでもないけれども、分かりやすいことと、きちんと伝える中身を落とすこととは、別なんだと思いますね。
 それから、文章というのは、皆さんそれぞれ文章をお書きになるわけで、それぞれ自分流のし好に合った文章、それは文章のプロの方がおられるからあれだけれども、こういう難しい話をやさしい言葉で書けと言っても、限界があると思います。

【山本委員】先生が書かれた戦後の歴史認識みたいなものは、みんな考え方が違うんだと思います。そういうところをあえて触れる必要があるのかどうかということですね。あるいは、司法制度という客観的なものをどうしようかということをやっているわけですから、という感じがするんです。
 ですから、官がやたら非難されていますけれども、司法を支えた官だけに問題があったのかということだって、我々は議論していないわけですから、と思いますけれども。

【竹下会長代理】それは、私も非常に格調は高いけれども難しいとおっしゃるのは分からないことはないのですけれども、山本委員が官だけが非難されているとおっしゃるのはよく理解できないのですが。ここでは決して官というような言葉は出てこないですね。むしろ公共性の空間とか公とかいう言葉を使っています。ただ、これは公共性の空間という言葉自体もまた難しいという御意見もあり得るとは思いますが。

【山本委員】8ページのところなどは、まさにそうじゃないですか。第一、第二、第三と。

【佐藤会長】ここのところは行政改革に関連しているんです。

【山本委員】これは司法とは違うことを言っているんですか。

【佐藤会長】違うんです。行政中心です。行政改革の問題です。来年早々からスタートする行政改革の出発点となった行政改革会議の最終報告の目標と理念のところで書いてあるんです。なぜ行政改革かなのか、内閣機能を強化し、中央省庁を再編して行政のスリム化を図らなければならないのか。あれだけのことをやるわけですから、それなりのナラティブが必要なんです。行政改革のときにそのことを書いて異論なく決まっているわけです。それを受けているだけの話なんです。

【竹下会長代理】どうなんでしょう。ちょっと修文するとか、ここのところをどうしたらというのは、なかなか難しいと思うのです。全体が一体をなしていますからね。

【曽野委員】このままなさった方がいいと思います。そして、国民が読もうと読むまいと、頭のいいやつが読めばいいわけです。そして駄目なのは読まなきゃいいんですから。余り雑音にごちゃごちゃされずに、お通しになるべきと思います。

【中坊委員】私たちはまた、審議会の今までの審議というものを踏まえた一応の調査審議を終えてと言っているんだし、その論点整理というものをまず我々はつくって、今度の経過の中にまず一番に書いてあるわけですから、その範囲から、今回のまとめの文章も大きくは出ていないですよ。確かに、三淵さんの文章やらが新しく挿入された部分もあるかもしれないけれども、基本的にお書きになっていることは変わっていないんだから。これはやはり会長が作られたんです。確かに文章は難しい、しかし、難しいのはやむを得ないのであって、やはり私はこれを直せと今言われましたら、直せないです。だから、直そうと思ったらここをこうつないだら直るという問題ではないでしょう。
 だから、私は曽野さんと同じように、私の言うのは、ただし読むか読まないか、頭がよいとかいうのではなしに、私は、論点整理で我々が審議で決めたことの範囲を出ていないと、それを前提にしてお書きになっておるんだから、我々の中間のまとめとしては、この文案によるのが一番正しいのではないかと思います。

【竹下会長代理】実際にも、これは各論の方ができていて、それに合わせて総論ができているものですから、確かに難しいとおっしゃられるところは、表現等、少しやさしくする必要はあるかと思いますが、統一はとれているのではないでしょうか。

【佐藤会長】本当に文才がなく不徳の致すところで大変申し訳ない。

【中坊委員】あるんですよ。あり過ぎるくらいあるだけのことですよ。

【藤田委員】我々がないから困るんです。

【佐藤会長】申し訳ありません。御辛抱いただけますかと言うのも、非常にはばかれるんですけれども。

【竹下会長代理】なかなか会長御自身ではおっしゃりにくいでしょうが、どうでしょうか。表現等をやさしくできるところはなるべくやさしくしていただくということで、基本的にはお認めいただけないでしょうか。よろしいですか。

【佐藤会長】ありがとうございます。
 そうしたら、あと、「はじめに」と「おわりに」ですが、「おわりに」の方については曽野委員がさっきちょっとおっしゃいましたけれども、一応、このぐらいで。

【竹下会長代理】北村委員、よろしいですか。

【北村委員】私は太字とあれとの違いが何なのかというのがよく分からなくて。

【竹下会長代理】各論の方ですか。

【北村委員】全体を通して。強調したいところは太字なんですか。

【井上委員】いや、これはそういう趣旨ではないのではないですか。

【佐藤会長】やはりちょっと注目してほしいということでしょうか。

【北村委員】文章でないところの単語というか、熟語みたいなところにも入っているんですね。

【竹下会長代理】表題ですか。それぞれ見出し。

【北村委員】見出しではなくて中身の文章のところで。その文章にも注目してくださいというふうに受け取るようにするんですか。その辺のところが。

【井上委員】私はフラットな形にした方がいいのではないかと思いますね。どこを強調するかは、各人それぞれ思いがありますので、そこまで決めるというのはちょっと問題があるかなという感じがします。

【佐藤会長】打合せのときもちょっとそういう意見があったのです。審議会で皆さんの御意見を聞いてということだったのです。こだわるわけではありません。どちらがいいですかね。

【吉岡委員】読みやすいのは、太字になっている方が読みやすいと思いますけれども、そういう誤解を招くようなことがあるのであれば、内容が変わるわけではないので、どちらでも。

【佐藤会長】フラットにしますか。

【中坊委員】これは太字で書くところでみんなが一致しているならいいけれども、例えば、北村さんの、ちょっと思わくが違うんだということになってくると、太字にしたところと普通のところに書いたところとの差が出てくるから、そういう点はあるのかもしれませんね。

【北村委員】あと、単語のところは太字にするというのはありますね。後ろに注が付いてあるみたいな、そういうのはいいのかなという気がしますけれども。

【井上委員】私は、Eメールで送ってもらったものですから、そこがはっきり出なかったのです。出ていれば、あるいはここも強調すべきだと思うところがあったかもしれないのですけれども。

【鳥居委員】普通は意見書というのはフラットのままです。

【藤田委員】フラットでいいんじゃないでしょうか。

【中坊委員】余りこだわりません。

【竹下会長代理】では、フラットにしましょうか。人によって強調したいところが違うでしょうから。

【髙木委員】グローサリーを入れられるかどうかですね。

【佐藤会長】中間報告ですから、ちょっと難しいですね、あと1週間しかないし。最終報告の段階で検討するということぐらいにして。

【井上委員】さっきの伝聞法則や口頭主義ということに少し説明を付けるとして、そのぐらいでとどめていただかないと、ちょっと作業的には難しいのではないでしょうか。

【佐藤会長】時間的な余裕の問題もあり、そうしていただけますか。
 どうもありがとうございます。審議はもう少しというところがあるかもしれませんけれども、基本的に御了承いただいたということにさせていただきたいと思います。宿題が出たところを検討させていただき、更に修文を試みまして、次回20日にお諮りしたいと思います。
 それで、今週中には皆様のお手元に届くようにしたいと考えております。既に委員の皆様御了解いただいておりますように、次回、20日の審議会では、この中間報告の内容を決定して公表するということにしておりますので、この点をお含み置きいただければ幸いでございます。
 それからなお、この中間報告につきましては、これまでの審議会の審議状況等を取りまとめたものですから、次回の審議会でもし最終的に確定、御決定いただければ、当日の夕方、私と会長代理で総理官邸において森総理にお渡ししようというように考えております。まだ決まっている前にそんなことをということもあるかもしれませんけれども、20日に御決定いただければ、総理にお渡ししようというように考えております。そのようなこともありまして、次回はよろしくお願いしたいと思います。
 そして、中間報告の公表は森総理にお渡しした時点からというように考えております。その点も御理解いただければと思います。
 この件は以上でございます。
 それで、時間も5時半を過ぎて恐縮でございますけれども、中間報告後の審議スケジュールについて少し御相談したいと思います。
 この審議スケジュール案につきましては、私と会長代理で相談させていただきまして、既に委員の皆さんにお送りしておりますけれども、本日同じものをお手元にお配りしております。御覧いただければと存じますが、このお配りしております審議スケジュール案につきまして、若干御説明させていただきたいと思います。
 本日は、少なくとも年内の審議スケジュールについては御了解いただいて、確定させていただければというように考えておりまして、お手元にお配りしておりますペーパーには、年内の審議スケジュールを中心に記載しております。
 まず、11月28日の39回でございますが、今後の審議予定に関する審議を行いたいと思っております。具体的には年明け後の審議をどのような形で、例えば、どのようなテーマから審議を進めていくかということなどについて、意見交換をさせていただければと考えております。中間報告を決定公表後、本審議会の設置期限である来年7月までの最終意見取りまとめに向けて、どのような審議を行えばいいのかということについて御意見を頂き、ある程度共通認識を持つことができればというように考えている次第です。
 もちろん、この39回会議だけで詳細な日程すべてを固めるということは考えておりません。大枠だけでも皆様の御了解をいただければという趣旨でございます。これにつきましては、また私と会長代理で御相談させていただいて、事前に案などをお送りさせていただきたいというように思っております。
 次に12月1日の第40回会議でございますけれども、この日は労働関係事件について御審議いただく。それから12月12日の第41回会議、それから12月26日の第42回会議の2回で、司法の行政に対するチェック機能に関して、それぞれこのペーパーに記載しているような形で審議を行いたいというように思っております。
 労働関係事件と司法の行政に対するチェック機能に関する事項につきましては、国民の期待に応える民事司法に関する審議の中で、既に審議は行っておりますが、詳細な審議は中間報告後に行うということになっておりましたので、年内の審議として、まずこの二つのテーマについて審議を行うのがいいのではないかというように考えた次第です。
 労働関係事件に関する審議につきましては、既に御内諾いただいておりますが、まず髙木委員からレポートをお聞きしたい。そして、更にヒアリングをして意見交換をと考えておりますが、ヒアリングにつきましては、東京大学の菅野教授に事実上御内諾を頂いているようでございまして、菅野教授にお願いしたいというように考えております。
 それから、司法の行政に対するチェック機能に関する審議でございますが、やはり第41回会議で、できれば2人ないし3人の方からヒアリングを行いまして、その上で意見交換をする。
 そして、第42回で、それまでの審議を踏まえて、お忙しいところ恐縮なんですけれども、竹下代理に問題状況を整理していただいて、意見交換を行いたいというように考えております。このヒアリングをどなたから行うかにつきましては、会長代理と御相談させていただいて、適切な方を選びたいというように思っております。
 いずれのテーマにつきましても、できましたら意見交換の上、当審議会としての考え方をまとめることができればというように思っております。
 年内の審議としては、以上のような形で進めさせていただければというように思っておりますけれども、審議会の開始時刻につきましては、11月28日の第39回会議は、午後3時とさせていただき、その後の第40回から42回までは、それぞれヒアリング、意見交換等を予定しておりますことから、また午後1時30分開始とさせていただければというように思っております。
 また、この会議の開催日につきまして、12月には18日の予備日を入れておりましたけれども、この予備日は使わずに、1日、12日、26日に開催させていただきたいと思います。特に、26日が年末で皆様何かと御多用のことで大変かと思いますけれども、司法の行政に対するチェック機能に関する審議という、重要な審議を予定しておりまして、12日の次にすぐ18日の予備日を使うということになりますと、18日の予備日が午前中で余り時間が取れないということもありますし、竹下代理の御準備も大変なこともあります。そして、後でお話しいたしますが、年明け後の日程との間隔等から、18日ではなくて26日に開催させていただければというように考えた次第であります。
 お配りしておりますペーパーには、年明け後の審議日につきましても、下の方の米印のところで記載しておりますけれども、御説明いたしますと、まず年明け後の最初の会議、通算で43回になりますが、1月9日に開催させていただきたいと思います。年明け早々でこれも大変かと思いますけれども、この9日に開催しませんと、次の審議日として皆様に取っていただいている1月23日ということになりまして、ちょっと開き過ぎるということで、そういうことにさせていただいた次第であります。
 また、来年の2月から5月までの予備日を既に決定しておりますけれども、来年の審議もかなり精力的に行わなければならないということもございまして、予備日を使わせていただければというように考えておる次第です。そんなことで、気が重くなられたかもしれませんけれども、よろしくお願いいたします。
 何か早口にしゃべりまくりましたが、よろしゅうございましょうか。

【北村委員】来年も午後1時半ですか。

【佐藤会長】やはり基本的には午後1時半としないと、なかなかしんどいんじゃないでしょうか。今日は何ですけれども、できるだけ午後5時には終わるように努力したいと思います。
 それでは、事務局長の方で配付資料とか何かについて。

【事務局長】各界要望書等の中に、民主党司法制度改革プロジェクトチームが取りまとめられました法曹養成に関する提言及び市民の司法参加についての提言が入っておりますので御参照ください。その他については、特に説明はございません。

【佐藤会長】ありがとうございました。そうしたら、次回の審議会でございますけれども、11月20日月曜日、午前9時半から午後零時まで、この審議室において取り行いたいと思います。本日意見交換していただきました、中間報告の原案につきまして、修正を加えたものを改めて委員の皆様にお諮りし、既にお決めいただいているように、中間報告を決定、公表したいというように考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 記者会見は、どうしましょうか。では代理と二人で。
 本日は、どうもありがとうございました。

【竹下会長代理】大変遅くまで御苦労様でした。