司法制度改革審議会

第39回司法制度改革審議会議事録



日 時:平成12年11月28日(火) 15:00~16:40

場 所:司法制度改革審議会審議室

出席者(委 員、敬称略)

佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、井上正仁、北村敬子、髙木 剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本 勝 吉岡初子

(事務局)
樋渡利秋事務局長

議事次第
1.開 会
2.平成13年1月以降の審議の進め方について
3.閉 会

【佐藤会長】それでは時刻もまいりましたので、ただいまから第39回会議を開会いたします。
 本日は平成13年1月以降の審議の進め方について意見交換を行いまして、大枠について大体こういう形になるのかという点を御了解いただければと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 意見交換に入ります前に、中間報告を総理にお渡しした件等について少し御報告させていただきたいと思います。
 前回、皆様の御協力によりまして、中間報告の内容を確定することができまして、誠にありがとうございました。審議会終了後、皆様の御了解をいただいておりましたので、私と会長代理で、最終的に再度中間報告を確認して文章を確定いたしまして、当日の午後、事務局から総理官邸に中間報告を届けていただきました。
 委員の皆様にはその後になってしまい、その点誠に申し訳ありませんでしたが、既にこの中間報告をお送りさせていただいておりますので、お読みいただいていることと存じます。
 記者会見につきましては、皆様にお話ししましたとおり、11月20日の午後3時半から私と会長代理で行いました。翌日の朝刊各紙にかなり大きく中間報告を取り上げていただきましたので、記者会見の際に私どもがお話しした内容は、既に委員の皆様御存じのことかと存じます。
 なお、本日お配りしております新聞記事のコピーの中にも、この中間報告に関する記事を入れておりますので、お目を通していただければと存じます。
 今、お話ししましたように、11月20日当日に総理官邸に中間報告を届けておりますけれども、本日午前10時30分から私と会長代理で総理官邸において森総理大臣にお会いしまして、中間報告をお渡しするとともに、その内容について御説明をしてまいりました。森総理大臣からは、私どもの審議会委員のこれまでの熱心な審議及び中間報告のとりまとめにつきまして、感謝のお言葉がありました。
 また、今後更に充実した審議を行って、実りの多い最終報告を取りまとめていただきたい、そのために十全な協力をさせていただくという励ましのお話もありました。
 これまでの当審議会に関する報道振りなどから、国民の方々がこの審議会に対してかなり強い期待を持たれていらっしゃるということは、皆様も御承知のことかと思いますけれども、森総理のお話をお聞きして、私自身今後も身を引き締めて当審議会の審議を行わなければならないと思った次第でございます。
 以上、御報告を兼ねてお話しさせていただきましたが、次に平成13年1月以降の審議の進め方について御相談申し上げたいと思います。
 前回、皆様から御意見をいただきたい中心的な点を記載したレジュメをお配りいたしましたけれども、本日お手元に同じものをお配りしております。意見交換の中心点としては、お手元のレジュメに記載しておりますように、審議の順番、審議の回数、審議の方法ということになろうかと思いますので、これらの項目について、それぞれ意見交換をさせていただきたいと思います。そして、大枠について、皆様の御了解を得ることができればと考えている次第です。
 勿論、これらの項目については、それぞれ独立して判断できるというようなものではありませんので、意見交換の中では適宜関連する他の項目についても御意見をいただければと思っております。
 とはいえ、審議の順番からということになりましょうか、意見交換を行いたいと思いますので、適宜御発言いただければと思います。よろしくお願いいたします。  レジュメは非常に大きなまとめ方でありますけれども、御覧いただきたいと思います。
 審議開催予定日として、5月までの予備日を使うということは前回の審議会で決定済みでございますけれども、既にお話が出ていることですが、これだけの日数をやるのかという思いもおありかもしれません。前回も少し申しましたけれども、最終報告をどのくらいの時点でとりまとめるのかという問題とも関連しています。目一杯やれば、7月の任期までに最終報告をとりまとめるということになりますが、行政改革会議のときの経験を念頭に、前回ちょっと申し上げたように、ぎりぎりに報告をまとめるということよりも、できれば少し余裕を持ってまとめることを考えてはどうかということです。私どもの報告が具体的にどういう手順で進んでいくのかということを少し見極めて、余裕を持って我々の任期を全うするという方がよいのではないかと。私どもも中間報告の最後のところで、我々の報告がどう生かされるのかということを非常に重大な関心を持っているということを書いておりますけれども、その辺を少し見届ける期間を持っておいた方がいいのではないかという思いもありまして、前回、6月辺りはどうかなという感じのことを申し上げたのでありますが、その辺も含めまして御議論いただきたいと思います。

【中坊委員】今の会長のお考えでは、この日程でいきますと、最終報告の予定は6月12日くらいになるんですか。

【佐藤会長】日にちまではちょっと何ですけれども、ぎりぎり6月いっぱい、できれば6月中旬辺りでしょうか。

【中坊委員】1日と12日ですね。この辺ですか。

【佐藤会長】何かぼやっと。

【中坊委員】できるかどうかは別にして、一応のゴールの日だけは決めておかないと。

【佐藤会長】御議論いただいて、目安としてこの辺りでということになりましたら。

【中坊委員】今度の中間報告の私たちの一番終わりのところにも、今後の推進体制までを討議するということを既に書いていますね。だから、推進体制を含めて討議して、それでは推進体制がどのように決まりますかというところをしばらく見せていただきますということでしょう。そうでないと、最後のところで出してしまっては推進体制がどうなるのかと言っても私らの任期がないから、異議を言うこともできないということの意味でしょう。だから、まず最終報告というのは、国会とかとは関係なく、我々としては推進体制を含めて、いつ出して、その推進体制ができるかどうかをどの期間見守っているか、ということですね。
 この前から会長のおっしゃったようになるから、そうすると、それでいけば、この日付で言えば、6月の1日か12日くらいのことになるんですかということを聞いているんです。そうじゃないですか。
 というのは、努力目標にせよ、一応決めておかないと。これがまず一番ではないですか。

【佐藤会長】そうだと思います。逆算と言ったら何ですけれども、大体その予定でどういう審議をするかということになりますので、その辺をお決めいただければありがたいんです。

【中坊委員】そこから逆算して、その間に何を入れるかを決めて、仮に真ん中取ったら12日でしょう。そうすると、遅れるかもしれないしね。その辺をまず決めて、こういうのは会長と会長代理で決めていただかないと。指導性を発揮して。

【竹下会長代理】皆さんの御意見を伺った上で。

【中坊委員】私らは白紙委任します。

【竹下会長代理】そうおっしゃらずに。

【藤田委員】6月1日ということになると、5月中にまとめなければならないということになるので、ちょっと厳しいですね。中坊さんがおっしゃるように12日に努力目標を設定しておいて、そうすれば1回か2回かアローアンスがありますから、その辺でどうなんでしょう。

【佐藤会長】よろしゅうございますか。

【鳥居委員】これは予備日として、5月21日は、月曜だけれどもやると予め決めたんですが、この前髙木さんがおっしゃったように、22日と2日連日になるんですけれども、いいんでしょうかね。

【佐藤会長】考えようなんですけれども。最終報告のまとめの日がもし6月12日ということになりますと、一応予定に入れていただければと思います。私どもとしては余裕があった方がありがたいものですから。

【竹下会長代理】今のお話ですと、6月の前半ということになりますので、この辺りが大詰めになるかと思います。

【中坊委員】最初からやると決めておいて、仮に終わったら、いや、助かったと思うでしょう。やらないと言ってやったら、途端に重荷に感じますからね。覚悟は髙木さんしておいた方がいいんじゃない。

【竹下会長代理】皆さんお忙しくて、日程が入りませんから。

【佐藤会長】もしお許しいただければ、6月12日に最終報告を確定するという目標で来年は審議を進めるということでよろしゅうございますか。

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】そして、5月21日、22日は、今のようなことで、一応予定に入れさせていただく。連日で恐縮ですが。
 では、どうもありがとうございます。
 そういう前提で、これで何回ありますか。21回ありますか。今日は39回で、集中審議を5回とカウントすると、44回やったことになるんですね。

【竹下会長代理】そうすると三分の二が経過したことになります。

【佐藤会長】そうなりますね。
 では、一応出口のところはそういうようにさせていただきまして、それで審議の順番と言いますか、方法と言いますか、三つまとめてでも結構なんですけれども、一応中間報告後の審議は、順番はともかくとしまして、大くくりのまとめ方でやるということになりますでしょうか。

【竹下会長代理】従来どおりのプロックごとということでよろしゅうございますか。

【髙木委員】何点かあるんですが、次回、労働事件をやっていただき、その後12月に行政事件。労働事件は1回分いただいているんですが、多分、どこまで細かく論議するかによりますけれども、論点も幾つかあるんだろうと思います。1回だけで方向づけまではとてもできないと思いますので、年が明けて、順序はそういうことかもしれませんが、どこかでもう2分の1回くらい論議をしていただく時間を取っていただけないかなと思います。
 あわせまして、行政事件は2回ということなんですが、これについても2回だけで済むのか済まないのか。先ほど年が明けてから21回ということでございますので、各論点、いろいろ残っておるわけですけれども、細分化されて残っている論点みたいなものもかなりあると思いますので、どういう論点が残っているのか、それぞれ思いつくものを挙げていって、21回の会議でこなせるボリュームに収まっているのかどうか、こなせないということで連休をつぶすということであれば早く決めてほしいし、どうしても残るようだったら、目標は6月12日にしても、7月にずれ込むこともあり得るということではないかと思います。
 例年7月は、参議院議員選挙もあり、こんな場で申し上げていいのかあれですけれども、できたらその辺は6月中旬までに詰めるという、先ほどのようなお話がありがたいなと思って聞いておりましたけれども、そういう意味で中身をもう少し詳細に吟味した上で日程を決めていただければと思います。

【佐藤会長】大くくりで議論しますけれども、我々の検討課題として残されているものを中心にピックアップしてみる必要があるかもしれませんね。おっしゃるように、労働事件について、1日でまとめができるとは勿論思いませんし、行政事件訴訟も、26日に代理の方から整理していただくということになっておりますけれども、そこで行政事件訴訟について我々としてこうするという結論を得ることは難しいと思います。これも、やはり民事司法のところか、どういう形になるにせよ、更に議論する機会を持つ必要がありますでしょう。

【竹下会長代理】私もそのように考えております。労働関係事件は1回だけということではとても時間が足りないと思いますので、従来のブロックでということになると、やはり民事司法の中に入ると思います。今、確認的におっしゃったようなことを十分考えたいと思っております。

【吉岡委員】中間報告の11ページか何かにちょっと気になる点があるんですけれども、行政と立法という言葉で、たしか11ページ。

【佐藤会長】総論のところの11ページですね。

【吉岡委員】違憲審査制度については1度お話を聞いていて、これからも計画が立っておりますが、やはり立法の問題も非常に重要な問題だと思います。今日、私がお出ししたペーパーの12番目にも触れましたが、この問題は大きな柱として取り上げなければいけないのではないかと思います。

【佐藤会長】記者会見でも違憲審査の話もあるんじゃないかという指摘がありまして、独立の項目としては何だけれども、何らかの形でどこかで少し議論する必要があると答えました。私の専門領域でもあるものですから、少し議論したいなと強く思うところがあるんですけれども、ただ、いつも申し上げておりますように、今回個別的な問題についてどこまで入っていくかということも重要なんですけれども、大きな基盤の整備といいますか、人的、制度的基盤の整備ということが私どもの一番のターゲットとすべきことだという思いで今までやってきましたので、違憲審査の在り方について1回当ててというのは、ちょっとしんどいところではないかと感じております。
 さりながら、どこかの機会にこの問題について議論したい。あるいは、最高裁裁判官の任命とか在り方のところで議論できることかと思います。いずれにせよ、何らかのところでその議論をする機会を得たいと思っております。

【吉岡委員】総論のところで触れてはいるけれども、議論はしなかったというのはちょっとバランスが悪いなという思いが強いものですから。

【佐藤会長】よくわかります。独立に1日当てろと言われるとちょっとしんどいのですが、その辺は念頭に置いて構想します。

【水原委員】アジア等の発展途上国に対する法整備支援について、32ページから33ページの弁護士の国際化のところ、及び総論部分では7ページから8ページで、触れていただきました。これは非常に重要な問題だろうと思いますけれども、この問題について今までほとんど審議が尽くされていないように思います。
 御意見として出まして、それを総論部分に入れていただきましたことは大変うれしい限りでございます。アジアの法整備に対する支援というのは、単なる発展途上国に対する援助という発想だけではなくて、国際社会における法の支配を推し進めて、法的ルールに基づく経済的、社会的交流を発展させていくという意味では、比較的重要な課題であろうと思います。
 そして、このような課題は、法曹三者や関係省庁、経済界、学会等、官民が連携協力して積極的に推進すべきであろうと思っておりますが、これに関しましては、古くから法務省の法務総合研究所のアジ研が、国連やJICAとの連携によって犯罪防止関係の国際セミナーとして行ってきておりますけれども、最近、経済界からの協力も得て、民・商事関係の法整備支援への取り組みも行っているようですが、できればこれは関係組織からのヒアリングを行って、そして、これらの支援の在り方や充実の仕方、方法、これについて十分検討していく必要があるのではないかという気がいたします。殊に最近、東南アジア、中近東における法整備の不十分さ、それから、それぞれのノウハウを持っておりませんし、それから人材の育成も十分できていないという点を考えるならば、相当我が国における支援体制を検討していくことを提言していく必要があろうと。その点からも、十分ヒアリング等を行う必要があるのではないかという気がいたしますので、どこかで入れていただければありがたいと思います。

【佐藤会長】代理もこれに関わっていらっしゃいますね。

【竹下会長代理】私もその一端にあずからせていただいておりますので、今、水原委員のおっしゃったことは大変よくわかるつもりでおります。
 どういう形でこの問題についてこの審議会として議論を深めていくかということにつきましては、また会長とも、勿論水原委員とも御相談させていただいて、詰めさせていただければと思います。

【水原委員】どこかでヒアリングを行うか、そのほかの方法でも結構でございますが、どういう在り方をしなければならないとか、すべきであろうという方向づけだけははっきりさせておくべきではなかろうかという気がいたしましたので、提言させていただきました。

【竹下会長代理】中間報告では必要性だけしか言及しておりませんね。

【鳥居委員】私の大学も実は近隣諸国との関係が非常に深くて、私のところで研修を受けた方が何人も検事総長になられたりしております。うっかりこれを逆に問題として出すと、過剰反応する国等が、目に浮かぶような気がするんです。私どもの大学の場合には、シンポジウム1つ開く場合でも、非常に慎重にやっていまして、言葉として最近は「コーディネーション」、要するに、司法・法務の協調と調整と言いますか、そういうニュアンスで「コーディネーション」という英語をなるべく使うようにして、協力体制をしておりますが、そういう心遣いをした上で、例えば非公式にどなたかが隣の国を訪問されるとか、調査をされるとかね。調査と言うとまた角が立ちますので、そういうふうにしていただけると。

【竹下会長代理】水原委員のおっしゃったとおり、法務総合研究所がかなりやっておりますし、それから国際民商事法センターもいろいろ資料などを持っておられますし、日弁連も登録弁護士制度をつくってやっておられますので、少なくともそういうところから資料を提供していただくということは考えられます。

【鳥居委員】非常に熱いまなざしで日本を見ています。隣の国などでOB会を開きますと、真っ先に殺到してきて名刺をくれるのは、ほとんど司法関係者です。

【佐藤会長】その辺、実情をもう少し我々として深く理解した上で、最終報告にどの程度明確な方向性を打ち出せるかを考える必要がありますね。どこかでやらせていただきたいと思います。

【水原委員】もう一点申し上げたいんです。
 裁判官制度について、今後更に議論を深めていくことに相なるわけでございますが、今まで法曹三者からのヒアリングは受けておりますけれども、できれば現場の裁判官から意見を聞く機会を設けてはどうだろうかという提案をさせていただきたいと思います。
 今の裁判官制度につきましては、この審議会におきましても、高く評価する声と、反対に問題ありと批判する声と、積極・消極の両面からいろんな意見・批判が出ております。しかし、改革を考えるに当たりましては、実際に日々の裁判実務に携わっておられる裁判官の皆さんが、どのような姿勢で、そしてどういう気持ちで仕事をしているのか、どのような苦労をしておるのか、努力をしておられるのか、などについて、生の声を聞く必要があるのではなかろうかという気がいたします。
 藤田委員がこれまで数度にわたって、これは現場の裁判官の意見を遠慮ながらに御紹介されました。私は聞いておりまして、本当はもう少し藤田委員は言いたかったんだろうと思うんですけれども、遠慮しながらおっしゃった。この際は実際に現場で苦労していらっしゃる方々からの声を、この審議会としてお聞きいただく機会を設けていただければありがたいなという気がいたします。
 このヒアリングの対象をどういうふうにするのかということでございますが、これはただ黙々と仕事をしている、今まで余り、外にものを言わなかったような人たちの声が聞けるようなことになればいいのかなという気がいたします。
 それから、今まで問題になっております特例判事補制度の問題、ですから、特例判事補の方も含めて、十分御検討いただければという気がいたしますので、三者のヒアリングをこれから行うことがあるとするならば、その前に現場の方々の意見を聞いていただくように御配慮いただければという気がいたします。

【吉岡委員】私も水原委員のおっしゃることはよくわかります。できるだけ現場の声をという、それはとても貴重なことだと思うのですが、裁判官の場合には、法廷の独立ということを言っていらっしゃいますね。そういう意味では、一人ひとりの裁判官が自分の考え方、信念に基づいて法廷を運営していらっしゃる。そういう中でどの裁判官を、どう選ぶのかというのは非常に難しいのではないかということ。
 それから、裁判官の中でも今の裁判官制度に対して批判的な御意見の方々もいらっしゃいますから、大多数の裁判官はそうではないとおっしゃるかもしれないんですけれども、やはり少数派であっても、現在の制度に対して批判的な人、そういう方も対象としないと非常にバランスが悪くなるのではないか。そういうことを考えると、選び方がとても難しそうだなと思います。
 それから、現場の裁判官の声を聞くということになれば、検察官の声も聞かなければいけないでしょうし、裁判に一番関わっている弁護士、これはいろいろな立場の弁護士がいるわけですけれども、それも聞かないわけにはいかないだろうと思いますが、その辺の時間とバランスの関係をどう考えたらいいのかと思います。

【水原委員】私が提案申し上げたのは、今の裁判官について、相当批判的な意見がこの審議会でも出ております。藤田委員の御発言ではございませんけれども、我々一生懸命これだけ仕事をやっているにもかかわらず、何でそんなに曲げて、違った目で見られるんだろうかという憤りを感じている人がたくさんいるという意見もございました。
 そうしますと、今までいろいろ外に向かって発信していらっしゃる方々はそれでよくわかるんですけれども、発信していらっしゃらない方々の声を何らかの形で我々聞いておく必要があるのではなかろうか。
 今、おっしゃるとおりに、どういうふうな選び方をするのか、これは極めて難しい問題であることは承知ですけれども、今まで発信できていない、しかし、思いを言いたいという人の声を汲み上げる必要はなかろうかなという気で提案いたしました。

【吉岡委員】私は裁判官の組織がどうなっているのかわかりませんが、一般の消費者というか市民としての感覚で見ると、意見を言おうと思えば言うチャンスはあると思います。
 例えば今回の中間報告はオープンになっているわけですから、中間報告に対してはどんな立場の人であっても、意見を言うことができるわけです。そういう中からいろいろな立場の、いろんな意見の方々をピックアップをするということであれば、これは裁判官に限らず、利用者も当然いると思いますけど、そういう形ならばと思います。それにしても声のない裁判官の選び方は、声を出している人から選ぶのとは違って、質的にはできないんじゃないですか。

【水原委員】その選び方については、先ほど申し上げますように、大変難しい問題でございますから、御検討いただければということでございますが、やはり言いたくても言えないような人たちが相当多くいるんではなかろうかという気がいたしますものですから、御検討いただきたいということでございます。

【藤田委員】水原委員はそうおっしゃってくださいましたが、そう遠慮してしゃべっているわけでもなさそうだと思っていらっしゃる方もおられると思います。前から何遍も申し上げているように、現場の裁判官たちはこの審議会の審議に非常に強い関心を持っておりまして、何遍か彼らと話をする機会はありましたし、審議会としても、公聴会や視察のときに、裁判所、検察庁、弁護士との懇談の機会もありましたが、裁判官制度やほかの制度についても、もう少し現場の人たちの思いに耳を傾けるのがいいのではないかというふうに思います。
 人選という問題はありますが、それは基本的には会長と会長代理にお任せするとして、身近に裁判官がいる方は別ですが、そうでないと、例えば判事補とか特例判事補と言っても、抽象的な存在で、こういう人かというような存在感がつかめないと思います。ですから、判事補とか、あるいは弁護士から任官されて裁判官の経験を持たれた方とか、そういう方々の意見に耳を傾けるというのもいいのではないか。検察官とか弁護士の方たちも、勿論そういう機会があった方がいいと思います。
 それから、前に中坊委員が言っておられた警察の関係者からのヒアリングもしてみてもいいんじゃないかと思います。ただいま御意見が出ましたので、できるだけ現場の声に耳を傾けるという趣旨で、私もそういうふうにお願いできればと思っております。

【髙木委員】裁判官の方に来ていただくならば、固有名詞を挙げるのが適当かどうかわかりませんが、、例えば裁判官ネットワークの運動に参加しておられる人等は、私も書物で読んだことがあるわけですけれども、彼らにも御意見があるように拝見しますので、例えばそういう方々も来ていただき、あれもこれもと言うといっぱいになってしまいますが、これは今、藤田さんが言われましたけれども、弁護士で任官された方などにも来ていただく。
 もう一つ、私、裁判所の運営だとか、裁判官の評価とか人事に国民が参加するしないについてはいろいろ議論がありますから、そのことはともかくとして、3度ほどいろいろ御質問をしたんですが、どうしてもペーパーのやり取りだけでは要領を得ない。そういう意味ではもっといろいろお聞きしたいこともありますので、事務総長にまでお出ましいただくのか、人事局長さんにお出ましいただくのか、その辺は御判断をいただく必要があるかと思いますが、そのような場を裁判官改革、あるいは裁判所改革という視点も含めて、どこかで機会を設けていただければと思います。

【中坊委員】私は先ほどから水原委員をはじめとしていろいろおっしゃっていますが、私は問題だと思っております。すべきではないと思います。
 なぜそれがすべきではないかというと、我々は少なくともそういうのを全部一応調べて、そして骨格と報告づけを明らかにしてから中間報告というのを出して、今これから詰める段階なんです。今、我々としては、既に骨格と方向性を含めて一応調査審議を終えた結果だと言っておるこの時期に、もう一度また現場の裁判官の意見を聞くんだということが、この審議会の在り方として適当かどうかということを大局的に考えないと、現場だからと言って、中間報告を終えて、また現場の意見を聞くんだということになってくると、今まで一体どうであったのかという問題になってくる。現場の意見が全く出ていないというわけではなしに、既にほかのマスコミ等でも、藤田委員と私との論争と言って、かなり詳しく言われているんであって、何も出ていないわけでは毛頭ない。しかも、法曹三者のそれぞれの責任者が来てものも言っておる。そういう段階を終えて今日に至っているこの状況において、再び裁判官だけの意見を聞かないといけないといういわれは一体何なのか。それは何らかのそういうことを言わしめておる勢力が、この審議会そのものを曲げているのではないかという疑いを抱かれるくらいのことであって、私はそういうことをこの段階においてやるのは極めて問題であろうと思います。
 今おっしゃるように、その声は全く聞こえないというけれども、つい数日前も、私はこの中間報告を受けて、ニュースステーションに出ました。そこでは、その担当者が現実に千葉の裁判官に行って、そこであれだけの貴重な時間を、我々はこうしているんだということを世の中に報道しているわけです。判事室において、現職の裁判官が、複数の裁判官がテレビの前に出て、そういうことを現職の裁判官としてはこうしているということをおっしゃっているわけであって、それは全然内緒のことでもなければ何でもないというふうに考えないといけない。
 しかも、私がこの審議会というものは、そもそもどういう趣旨の下にできておるのかということをもう一度原点に立ち戻らなければいけない。すなわちこれは21世紀のあるべき司法を考えた上で、国民の利用する立場からの司法制度改革と位置づけられて、我々はこの審議会を始めておるんです。私たちはその意味においては、過去、司法を運営してきた法曹三者というものが、私はある意味において愛想を尽かされて、利用する立場からの司法制度改革だということで、臨時司法制度調査会と違って、法曹三者という私たち3名も、それぞれの代表じゃない、学識経験者だということになっています。そこまで法律が我々のこの審議会の位置づけを決めておるということをもう一度我々は考えなければならないそんなもんで今おっしゃるように、常識的な話で、現場の意見を聞くんだというような軽々な取り扱いをすれば、それこそ悔いを千載に残すんであって、そういう議論を今すべきものではないのではないか。
 私はそれ以上に、今問題なのは、この審議会の審議の状況の中において、我々は論点整理において、法曹三者の一体感と相互の信頼があると言うておきながら、今いみじくも水原さんが自ら言われたように、我々の法曹三者の間の主張が裁判官の認識においてこうも違っているという意味で、法曹三者の信頼関係というものが、なぜここまで破壊されておるのか。そして、現にいがみ合うような形になぜなっておるかということ、そして、審議会として我々が論点整理の中において明らかにしたことの問題点がどうなっていくのかということは、我々としては更に煮詰めて、この審議会でよく考慮して、結論を出していかなければ、このままでは不毛の論理になるんじゃないかという点があると思うんです。  それを今おっしゃるように、たまたま一方の裁判所の裁判官の意見を、しかも現場の意見を今になってから聞き出すんだというようなことをすれば、我々のこの審議というものは一体、論点整理から中間報告まで続けてやってきて、あと半年近くしか残っていないという状況の下において、そのような審議を始めるということは、この審議会そのものの自殺行為を意味する。私はそういうものの考え方には反対です。私みたいな過激なことを言わないで、言わはるのやから尋ねた方がよろしいでという方が穏当のように聞こえます。しかし、これはやはり我々の審議会というのは、まさに国民の立場に立って審議しなきゃいかんところだから、私は現時点において、このようなことをされて、それも聞くのもいい、ただし人選の在り方だ、ということよりも、もっと根本問題を含んでおる。だから、その意味において私は水原委員の意見には賛同し難いということです。

【水原委員】私は何も裁判官の在り方についての考え方において、法曹三者の認識が違うとは言っておりません。こういう考え方もある、積極もある、消極もあるという議論がここで出たということを御紹介しただけですよ。法曹三者がいがみ合っているということを私は一言も言っていませんよ。判事補の在り方について問題があるということは、私自身が提起したわけですよ。中坊さん、そのような変な意見を述べないでください。
 それからもう一つ、今まで中間報告でまとめたこと、これを私は引っくり返すつもりで言っているわけじゃないんです。更に議論を深めなければならない。だからこそこれからの審議日程をどうするかということを今日議論しているわけでございまして、まだ聞いておらないそういう方々の意見も聞くことが必要ではないかということを申し上げただけであって、それがしかも何らかの圧力でもって話をさせられているんじゃなかろうかと、大変誤解を招くような、人様をして誤解を招くような発言だけは撤回していただきたいと思います。

【中坊委員】だから私は。

【水原委員】もう少し静かに、しかも、冷静にやってくださいよ。

【中坊委員】だから、冷静にやるためにも言っているんですよ。今最後に言うた問題は、この審議会の審議の在り方について、法曹三者の間で非常に意見が違って、先ほどから言われるように法曹一元の問題についても意見が全く違って、その意味での相互が一体性を持ってやらないといけないと我々は出したけれども、現状はそうは行っていないんじゃないだろうか。今おっしゃるように、私が言えば、また水原さんがこう言う。しかも、そこまで水原さんが言わはるなら、ますますこの問題は複雑化してきますよ。今までの法務省の在り方が、あるいは水原委員の発言の在り方が、全く私に言わしたら間違ったことを平気でおっしゃっておるということも数々あるわけです。
 だから、そういういろいろなことがあって、今日に至ってやってきているということも私は十二分に踏まえた上で、しかし、我々審議会としては、今まで何とかまとめようとやってきた。しかし、法曹三者の意見が違っている。しかも、それで私と藤田委員の大きな声が外に聞こえたとか言われて、今、国民はそういう目で我々を見ていますよということを私は恐れるんです。確かに今、水原さんが言うのと私が言うのと違うところもあるわけです。そういうふうな状態になっているということが、我々はこの審議を公開していますから、国民にはどのように映って、本来一体とならなければならないものが、一体化していないじゃないかという議論があるときですから、それは我々として更に最終報告に向けて、このままではいけないのではなかろうかという問題点がある状況ですよということ。そこを我々はよく考えないといけないということを言っているんですよ。

【藤田委員】来世紀の司法制度をどうするかということは、言うまでもなく国民が決めることでありまして、我々の任務は国民がその判断をするについて、一つの提言をするということだろうと思います。
 そういう意味で、現状がどうであるか、国民がどういうふうに考えているかということについて、今までもいろいろ努力して、調査等はしておりますが、それで事足れりとするわけにはいかないし、これからもそういう点についてのさらなる意見の聴取なども必要と思われるというふうに、今まで会長も発言されていらっしゃる。そういう趣旨で、現状認識について違いがあるならば、それについて更に認識を深めるということが、提言をするについて必要なことではなかろうかという趣旨で申し上げているわけであって、現場の裁判官だけの言うことを聞くのはおかしいとおっしゃるけれども、裁判官制度についてこれから議論をしようという段階であるからそういうふうに申し上げただけでありまして、裁判官の声だけを聞こうと言っているわけではない。
 その裁判官も、弁護士から裁判官になって、弁護士の目で裁判官の現状を見て、また、弁護士に戻った方もいらっしゃいますが、そういう方の目から現状の裁判官制度がどう映っているかということを語っていただくというのは、非常に有益なことではなかろうかと思うわけです。裁判官だけではなくて、いろいろな人の現場の声を聞いてみようと、警察関係についても申し上げましたけれども、そういう趣旨で申し上げているわけでありまして、その点は誤解のないようにお願いしたい。

【中坊委員】くどいようですけれども、確かに現場の意見も聞かなきゃいけない。裁判官の意見も聞かなきゃいけない。なるべく我々は現場に立たなきゃいけない、あるいは一般的な知識も持たなきゃいけない、そういう審議を今までしてきたんですよ。そして、我々は一応の調査審議を終えたとして、これから更に煮詰めていかなければいかん。しかも、非常に限りのある日程の中でこれをしていかないといけないという現実に今置かれているんです。
 これが2年も3年も続くような審議会であれば、今おっしゃるように、これからいろんな人の意見を聞くことができましょう。5人というのではなしに、10人の裁判官の意見を聞きましょうとか、やればそれはいいですよ。
 私が先ほどから言うているのは、そこだけを今取り挙げて、今から裁判官の現場の意見を聞きますということが、一体どういう影響を与えるかということを考えないといけない。
 だから、当初から私が言うているように、現場の意見を聞く、そうであれば、当然今度は裁かれた、利用した国民の立場を何人か聞かなければわからない。だったら、今、裁判官が言うてはることが、今の水原さんの言うてはることが、だれも聞いたこともないというのではなしに、この間でも、私もたまたま久米さんの番組に出たから聞いたのかもしれないけれども、裁判官が何をしゃべるかということぐらい、現職の裁判官が何をしゃべるかということぐらい、みんなわかっているわけです。
 そういうような状況の下において、しかも、裁判官だけを今このような日程の中において、しかも、中間報告を終えた段階において、また、そこだけは聞けということが、おかしなことになりはしないかということを私は言っている。
 しかも、それを聞けば、また、後にどんどん話が通じてきて、審議そのものの骨格がおかしくなってきますから、私は申し上げているんです。

【髙木委員】感想みたいなことで恐縮なんですが、法曹三者の皆さんの意見が違うのはそれぞれお仕事の中身も立場も若干違うからでしょう。だけれども、去年の7月から御一緒してきて、広く言えば同じ領域で仕事をしている皆さん同士の議論なのですが、私のように余り知らない者がこういう話を聞かされて、もう大概にしてくれ、それはどこか違うところでやってきてくれという思いは、率直に言ってしないわけではないんです。そういうことを私が大きな声を出して言ってもしようがありませんので、これは感想です。
 それと、裁判官を呼ぶ呼ばないについて、私は論理としては中坊さんのお考えの方が良いのかなと今お聞きしておりました。ただ、お呼びになるなら、この言い方も語弊があるかもしれませんが、要は振り付けされた、優等生の返事を聞くようなヒアリングにどうしてもならざるを得ない面があると思います。逆に選ばれて来られる人はえらいプレッシャーを感じられると思います。あるギルドの中の小ギルドの中の評価を一身に背負って来られるわけですから。
 そういう意味で、どうしてもお呼びになるというのなら、違った感覚の人も御一緒にお呼びになって、いろんな御意見を聞くということになるかなと思います。
 自分は見えないんです。鏡はあります。しかし、鏡に写るときには逆さまに写るわけです。そういうことも含めまして、一生懸命頑張っておられることと、それが世間にどう写っているかということは、別の話だという点もあるんだろうと思うんです。

【佐藤会長】よろしゅうございますか。いろいろ議論すればまだまだあるんだろうと思いますけれども、私としては、中間報告が出て、その方向で詰めていくことが最大の課題だと考えております。そこはもう揺るぎのないことでありまして、その前提で我々が現状認識としてどこまで深めて最終的な結論に到達するということは一種の方法論だろうと思います。
 その方法論として限られた日程の中でどれだけうまくやれるかということについては、少し考えさせていただきたい。現状認識、それは深くすればするほどいいことだろうと思いますけれども、しかし、限られた日程の中でどの程度適切なものをやれるのかということもありますので、そこは少し考えさせていただきたいというのが今日の私の結論でございます。そこはよろしゅうございましょうか。それぞれのお立場の御主張は、それなりに私としてはわかるところがありますので、それも含めてちょっと考えさせていただきたいということであります。

【中坊委員】今度は全然立場が違って、審議の順序なんですけれども、「弁護士の在り方」、それは当然のように「弁護士の在り方」だけではなしに、法曹一元も法曹養成にも技術的に絡んでいることではありますけれども、弁護士の在り方で、私ちょっと審議の順序として少しお願いがあるんですが、この弁護士会というのは、勿論この審議会の在り方に、裁判所以上に、我々弁護士の数がどう増えるか、御承知のように、大変な臨時総会を開催したりして、非常に今難儀をしておる。審議会の状況が即弁護士会の運営にも極めて大きな影響を与える状況にあります。
 弁護士会というのは、会長の任期は2年、事務総長も2年なんです。12名の副会長は全員1年の任期なんです。この3月に任期が終わる本年度の執行部は、自分たちが就任したときからこの司法制度改革審議会が始まっていましたから、いろんな問題について正面から取り組んできたのは御承知のところと思います。12名の副会長を含めた会長以下の方が、今この問題について、また審議会の動向に、一番関心もあるし、また調査もし研究もしているわけです。
 私はできることなら、この「弁護士の在り方」は、彼らにその取り組みを全とうしてもらって、弁護士会がどのように対応していくのかということを決め、仕事をやり遂げてもらいたいと思っています。
 しかも、これは非常に弁護士にとっては影響の大きいところですから、そういう点も是非御配慮いただいて、審議の順序については、弁護士の在り方というのは、できれば早いこと、来年早々に決めていただいたらありがたいんじゃないかと思います。

【佐藤会長】御希望はわかりました。

【竹下会長代理】今の御趣旨を理解しないで申し上げているわけではなくて、事実の確認だけですが、要するに、日弁連の会長と事務総長だけは任期が2年だけれども、あとの方々、副会長の方々がこの3月で替わるということですか。

【中坊委員】理事会の理事も替わります。70何名でしたかな。

【佐藤会長】副会長と理事ですか。

【中坊委員】理事も全員替わるんです。中には多少残られる方がいらっしゃるけれども、原則として全員替わります。

【竹下会長代理】わかりました。

【藤田委員】極めて優秀なスタッフが司法改革推進センターにたくさんおられるじゃないですか。

【中坊委員】会員内の意思をどうまとめていくかということが大事なんです。

【佐藤会長】順序についてですが、詰めるべきものとして、国民の司法参加の問題が制度設計の大きな課題として残っておりますし、裁判官制度も制度設計として具体的に今後詰めていかなければならない大きな課題ですので、その辺からという考え方も勿論あるわけで、大きくは、そういう方向かなと思いますけれども、必ずしも機械的に順番を決めなければならないというものではなかろうかと思います。今の中坊委員のおっしゃったことや、ほかの要素も実はいろいろあるかもしれないんです。
 さはさりながら、1月に何をどうやるかということまでは今日できればお決めいただきたい。ヒアリングをやらないといけないこともありますので、その辺はこれからちょっと御相談申し上げたいと思いますけれども、今おっしゃったことは、一つの要素としてわかります。

【髙木委員】質問なんですが、吉岡さんのお出しになったペーパーに、要するに中間報告で法曹養成のことがかなり詳しく書き込まれており、これから詰めていただく部分は中間報告後、最終報告を待つまでもなくいろいろ検討してくださいということかなと思っておりましたが、これには既にそういう文部省なり法曹三者の皆さんに、検討を煩わすべく、そういう議論の場づくりのお話は進んでいるという理解でいいんですか。

【佐藤会長】中間報告では、例えば第三者評価機関というように言っておりますけれども、適格認定基準、これは設置基準とかいろんなものにつながってくるものなんですけれども、その辺についての実質的な議論をしかるべき関係機関にお願いしなければいけないと考えております。中坊委員の御質問にもあったかと思いますけれども、具体的にどこに、どういうようにお願いするか、関係者に今いろいろ御相談しているところです。我々が、中間報告で、法科大学院を設立する必要がある、そして、第三者評価というものが大事ですよということを決めているわけで、それを受けて関係機関で検討していただかなければならないという構造だと御理解いただければいいんじゃないかと思います。
 そして、これからどのように進めていったらよいか、関係者にいろいろ御相談しないといけないところがありまして、それも含めて、私なりに少し考えさせていただいて、御相談させていただきたいところです。

【吉岡委員】私がこのペーパーを出しましたのは、完全にそれぞれに委ねてしまうということではなく、こちらの審議会の方で制度設計と言いますか、そういうところの押さえは見る必要があるのではないかということで、これでもう法曹養成、法科大学院の問題は、それぞれのところにお任せにならないようにという意味であえて書かせていただいたわけです。

【佐藤会長】わかりました。ただ、先ほど言及しました裁判官制度と国民の司法参加は、我々としては制度設計を具体的に考えないといけないわけですけれども、法科大学院の構想については、基本的な制度について、一応我々としては結論を出しているんだろうと思うんです。それを実施する上で必要な課題について急いで検討してくださいと言っているんであって、構造的に違うんだということは、是非御認識いただきたいと思います。
 その辺の議論がスタートすれば、必要に応じて私どもとしてお聞きし意見を述べる機会は出てくると思います。ただ、繰り返しくどいようですけれども、構造的に違うものだということは御認識いただきたいと思います。

【吉岡委員】法曹養成制度は、司法制度改革の中では非常に重要な位置づけになっておりますので、これで終わりだからということではちょっと納得しないと思います。

【佐藤会長】特に適格認定基準として、どういうカリキュラムを、どういう形で教えるべきなのか、その成果をどう評価するのか等々について、従来の検討会議でも既にある程度おやりになっていただいたわけですけれども、今後更に詰めた検討をしていただく必要があります。

【吉岡委員】専門的に詰めた部分についてまでどうとかということではないんですけれども、やはり司法制度改革審議会との関係というのがきちっと位置づけられる必要があるという、そういう意味で申し上げました。

【佐藤会長】御指摘は心しておきます。

【吉岡委員】ペーパーを出しましたので、申し上げたいんですけれども、まずは全体的な問題として、一番最初に書きましたのは、中間報告の中で国民各層の率直な意見を聞きたいということを書いております。もう意見を出された方もいらっしゃると思いますけれども、この率直な意見を聞きたいという意味合いが、いわゆる審議会等がやるパブリック・コメントを求めるという形にはなっておりませんですね。ですから、いつまでに意見を言わなければいけないとはなっていないですね。そうかと言って、審議会が終わるまで意見を言ってきたものをどうやって最終意見に取り入れるのか、これもとても難しいと思います。
 ですから、適切な時期に出された意見を事務局の方で整理していただいて、どういう意見が出たか、その辺のところを審議の在り方に反映させるという手立てを取らないと、率直な意見を言ってくださいと、中間報告で言った意味がなくなりますので、そういうことを御配慮いただきたいというのが一番最初に書いたことでございます。
 それから、2番目は今言いましたので、3番目以降は、どちらかというと、積み残しになっている部分について、理由のところは、それからこういう方法でというのはお読みいただければいいことですし、時間もないと思いますから省略しますけれども、弁護士費用敗訴者負担の問題。これは消費者の立場からの訴訟とか、あるいは医療事故の訴訟など、そういうことになりますと、実質的には負けることが非常に多いのです。公害裁判が非常に例外的にと言いますか、ここのところ幾つか、昨日あたりは名古屋で勝訴しておりますが、ほとんどの裁判は負けているというのが実態なんです。そういう負ける裁判でもやらなければいけないという例はとても社会的には多いわけです。
 ただ、敗訴者負担ということになりますと、訴訟提起がしにくくなるという問題があります。特に今、言いましたような問題、あるいは人権に関わるような問題というのは、負けることを承知でもやらなければいけない。その辺のところを例外規定としてどこまでくみ取れるようにできるのか、できないのか。そういうことも含めてもう一度検討する必要があるのではないかというのが、弁護士費用の敗訴者負担の問題です。
 それから、懲罰的損害賠償、クラスアクション、団体訴権、差止請求権、6番目の証拠収集手続の拡充、この辺のところは十分な議論がまだできていないと思いますので、参考資料等を含めて、もう少し深めていく必要があるのではないかと思います。
 専門参審・専門委員制度については、知的財産権の問題はほぼ合意になっていると思いますけれども、医療過誤というのか医療事故と言うのか、どちらかと言うと医療事故と言った方がいいのではないかと思いますが、その場合に、現状では負けることが非常に多い。そういうところから言うと、やはり患者側の立場に立った人と、病院側、あるいは医師側に立った両方の立場がありますので、そういう両方の立場の意見を聞いてみて、冷静に考える必要があると思いまして、そういう機会をつくっていただきたいということです。
 それから、家事事件の問題は、特に義務の履行確保のための具体的方策、その辺のところがどうしても重要になってくると思います。
 9番目のは、前回、声を出せば検討するとどなたかが言ってくださった記憶があるんですけれども、知的障害者の司法へのアクセスの問題、これは刑事の場合と民事の場合と両方あります。そういうことも含めて、利用しやすくなるのかと思って書きました。利用しやすい司法制度の論点の一つとしてお考えいただきたいと思います。
 国民の司法参加については、これは当然取り上げていただく課題でございますが、外国の事情を十分には把握していないと、私などはそう思っているのですが、そういう意味では陪審・参審を含めてヒアリング等で共通認識を持てるような機会をつくっていただいて、その上で考えていくということが必要だと思いますし、答申の中でも2本出しと言いますか、我が国にふさわしいあるべき参加形態ということを言っておりますので、我が国にふさわしいあるべき姿はどうなのか。それが陪審であるか参審であるか、別のものであるか、そういうことを考えるという意味においてもヒアリングをする必要があると思います。
 それから、裁判官選任過程への国民の参加の問題、これは前にも意見を言っておりますので、同じことのようですけれども、やはりもう少し考えるためには資料が必要ではないかという意味で書きました。
 12番は先ほど言いましたので省略させていただきます。

【佐藤会長】幾つかの点は、民事司法の在り方のところで、これから検討すべき課題です。

【竹下会長代理】おっしゃる御趣旨は十分わきまえているつもりでございます。これまでにも民事司法のブロックは、かなり時間を掛けてここで議論をしていただきましたので、かなり細かい論点についてまでいろいろ御意見が出ております。決してあれでおしまいだというつもりは私もございませんけれども、ほかの大きな問題、特に国民の司法参加とか、裁判官制度の改革というようなものがございますので、それとのバランスでどのくらい時間が割けるかということを現実問題としては考えていかなければいけないと思います。

【吉岡委員】それは回数の問題と時間の問題がありますので、どこまでという限界はあるのですが、特に消費者の立場から見ますと、専門家の方から見たら、取るに足らないこととお思いになるかもしれませんけれども、私たちからすると大変重要な課題だと思います。

【竹下会長代理】決して取るに足らないなどと思っているわけではございません。

【吉岡委員】そういう意味で十分に納得ができるような議論が必要だと思います。それに説明ができるような資料の提供を考えていただきたいと思います。

【山本委員】吉岡さんいろいろまとめていただいたのはそのとおりだと思いますけれども、何と言っても一番大きな議論の根底にあるのは、法曹の量と質の問題と、それから国民の司法参加だと思うんです。この国民の司法参加について、ある程度の方向性が見えないと、いろんな民事司法、刑事司法、それぞれのスキームにみんな影響してきていますので、やはり一番最初に取り上げるべきは、司法参加と裁判官、弁護士の在り方、ここが順序じゃないかという感じがいたしておるんですけれども。

【佐藤会長】今の山本委員の御意見ですが、私が先ほど申し上げた制度設計として残っている大きな宿題を基本的にまずというようにも考えられます。もし御異論がなければ、まずその辺から、特に今、山本委員がおっしゃった国民の司法参加のところから入る。そのあと、中坊委員が先ほどおっしゃった弁護士制度、それから裁判官制度、この両者をどういう順番でやるかという問題があり、その辺は更に考えさせていただくことにして、まずは国民の司法参加について、来年の1月から入ったらいかがかと思いますが、実はそういうことを代理と話しておったんですけれども、今、山本委員のお話で、もし御異論がなければ、まずその辺から入らせていただくということはいかがでしょうか。

(「結構でございます」と声あり)

【中坊委員】私も、裁判官問題いわゆる担い手問題ですね、確かに人的基盤が基礎だし、それが司法参加を含めて、先に急ぐというか、基本のような気もするんですけれども、ただ私の立場からいたしますと、裁判官の給源問題が出たときに、本当に弁護士が裁判官になるんですかという問題。あるいはロースクールのことを言えば、本当に先生になるんですかと言う問題。これらの問題について、弁護士の在り方、公的性格というものとの関係において、先に我々が一定のものをきちっと決めないと、制度としては書けるんですけれども、制度として決めたものが本当に実現するのかということになってくると、私はそこで問題が出てくる。そういう意味においては、弁護士改革の在り方というものが、かねて言うているように、登山口みたいなものでまず、登山口問題が解決しないといけない。裁判官というのは中核であるけれども、その上に立っているというか、まず弁護士の在り方というのが、全部の細かいところまで決めろというわけじゃないけれども、その意味における、今会長や山本さんもおっしゃっている、大きな流れを判断する意味において必要な範囲における法曹養成、それから司法参加、裁判官問題につながる意味における弁護士の在り方というところだけは、少なくとも中心問題としてやっていただく必要があるんじゃないか。そしてできれば、本年度の執行部の間にやっていただいた方が私はいいんじゃないかと、こういうことを言っているわけです。

【佐藤会長】御趣旨はわかりました。まず国民参加に入る。そして弁護士制度改革、裁判制度改革の問題をどういう順番でやるか。中坊委員は今2つの理由、執行部の任期という点、また理論的な点をおっしゃったと思うんですけれども、ほかについても考慮しなくちゃいけないことがあるんです。ちょっと今の段階で申し上げられませんけれども、何せ社会のいろんな動きの中で考えていかないといけない問題ですから、その辺も含めて、今の点は考えさせていただきたいと思います。
 とりあえず来年の1月は、もし御異論がなければ、国民の司法参加から入る。これは最低2回くらいは必要だろうと思うんですけれども、そういう形で決めさせていただきたいと思います。

【山本委員】ヒアリングということになると2回では足りないかもしれないですね。

【竹下会長代理】ヒアリングはやはり必要なのではないかと思うのです。そうすると、2回で結論を出すところまで行くかどうか、制度設計を考えるともう1回くらい余裕を見ておいた方がいいかもしれないですね。

【鳥居委員】今月はあと2回あるんですか。

【佐藤会長】12月は3回です。労働訴訟関係が1回と行政事件訴訟関係が2回入っています。これでいきますと、1月の9日、23日。この2日で難しければ、今のお話だと30日も少し使わないといけないかもしれない。

【竹下会長代理】あるいは、制度設計をするのに、ちょっと時間を置いて検討して、その間にと言ったら大変失礼ですけれども、弁護士制度の基本的な問題を検討するというのもありますね。

【吉岡委員】私が自分の都合を言うのは申し訳ないんですけれども、23日の日が団体の方の行事でどうしても抜けられないものですから、私は国民の司法参加は直接関わるので、本当は体が2つほしいんですけれども、そういう意味では23日を別の議題にしていただくと大変ありがたい。

【佐藤会長】なかなか厳しいところですけれども、今おっしゃったことは頭に入れ、ちょっと考えさせてください。御希望に添えないこともあり得るかもしれませんけれども、2回で具体的に決め打ちできるかどうかというのは、やや難しいかもしれないんで、その辺も含めて。ここで別の日にというのはちょっと申しにくいんです。その辺は少し考えさせていただきますが、御希望に添えないからといって、けしからんとおっしゃらないでいただきたい。

【吉岡委員】もしそうであれば文書提出をさせていただきます。ただ、文書を出しての意見というのは、議論に参加するわけではないので、つらいところなんです。

【竹下会長代理】それはよくわかります。

【佐藤会長】それは念頭に入れさせていただきますけれども、御意向に添えないときは、また、それなりのことを。
 一応1月の9日、23日に国民参加について議論をする、ヒアリングもこの期間にやらせていただくという辺り、御了承いただけますでしょうか。

【髙木委員】先ほど中坊さんが言われていた弁護士会についてのお話し振りからすると、私だけかもしれませんが、いろいろ法曹一元やら言われるけれども、本当に弁護士さんたちは、受けてくれるのか、手を挙げるのか、という部分を多分、日弁連の中でどうやってこなされようかとする御苦労な話だと思いますが、そういうことですか、中坊さん。

【中坊委員】よくわかりますね。

【髙木委員】11月1日の総会の模様等を漏れ聞くと、結構この話は日弁連の中で対応されるのに重たい話じゃないかと思います。こんなことを言うのは失礼なんですが。ということであれば、できるだけ早くその問題を議論の爼上に載せていただいて、理事会をいつおやりになるかとかいうのは日弁連の御事情ですから、日弁連が工夫されるお話でしょうが、できるだけ早くその辺の議論を、できたら1月中にはめ込んでいくべきじゃないかと思います。

【吉岡委員】1月に「弁護士の在り方」をやってくれると助かります。

【佐藤会長】しかし、理論的に言うと山本委員のおっしゃったこともありますので、まずそこをやらせていただいて、今の髙木委員の御発言も含めて、これは1月中か、どっちを先にやるか、その辺をまたお諮りしたいと思います。今日のところは、とりあえずは国民の司法参加について1月9日から入るということを御了承いただければと思います。それでよろしゅうございますか。
 そして、時間的余裕がありませんので、集中的に御議論いただく必要があり、審議にあたっては、制度設計としての可能性を少し整理する必要があるかと思いますので、その辺の整理の仕方は私と会長代理の方にお任せいただけますでしょうか。少し検討させていただいて、場合によっては人に御相談しないといけないことも出てくるかもしれませんけれども、私と代理との責任で、少しその問題の整理ということを検討させていただきたい。これだと言ってお出しするつもりはありませんで、少し制度設計上の問題点を整理するということです。3日間にわたりますと後の方にずっと響いてくるものてすから、その辺も考えながら、少し効率的な議事の運営も考えないといけませんので、できるだけ問題点を整理してお諮りしたいと思います。その辺、お任せいただけますでしょうか。
 ありがとうございます。
 そうしましたら、1月はそういうようなことにして、そして1月の末から2月にかけて、今の御意見も踏まえて、弁護士制度、裁判官制度、どちらから先に入るかについて検討させていただいて、遅くない時期に改めて御相談させていただきます。
 ヒアリングについても、先ほど来いろいろ御意見をいただきましたけれども、必要に応じて、必要なヒアリングはしなければいけないと思いますので、やや抽象的な言い方なんですけれども、その辺も御了承いただければと思います。その点は、また折りに触れて御相談申し上げます。
 そんなところで今日のところはよろしいでしょうか。
 一応6月12日に最終報告を確定するということ、そして、1月はこういう日程で進むということ、1月末、2月はさっきのようなことで考えさせていただくということで今日お決めいただいたということにさせていただきます。どうもありがとうございました。
 それでは、配付資料について。

【事務局長】配付資料一覧表に掲げてあるものにつきましては、いつもどおりで御説明することはございませんが、お手元に「労働関係資料(12月1日予定)」と題する封筒に入れた資料がございます。これは次回の12月1日の審議をしていただく際の資料でございますので、事前にお読みいただければと思います。なお、当日も同じものを卓上に配付いたします。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。
 それでは、次回の日程確認を行いたいと思います。先ほど来、出ておりますけれども、次回の審議会は12月1日金曜日、午後1時半から5時まで、この審議室で行います。次回は今週の金曜日ということで間が余りあいていませんで、大変恐縮でございます。
 労働関係事件に関しまして、菅野東京大学教授からお話をお聞きする予定です。
 更に髙木委員からもレポートをしていただいた上で、意見交換を行うということにしたいと思っております。髙木委員にはお忙しいところ申し訳ありませんけれども、御準備の方よろしくお願いいたします。
 なお、その後、既に御了解いただきましたように、年内に司法の行政に対するチェック機能に関する審議を行うことになっております。次の次の回、12月12日の審議会では、ヒアリングを行うことを予定しております。私と会長代理で御相談させていただきまして、3名の方、園部逸夫立命館大学客員教授、藤田宙靖東北大学教授、山村恒年弁護士の3人の先生から、それぞれ現在の行政訴訟における問題点等について、忌憚のない御意見をお聞きするということにしてはいかがかと考えまして、お願いしましたところ、御内諾をいただきましたので、12日はそのお三人のヒアリングということにしたいと考えております。
 以上でございます。今日はどうもありがとうございました。