司法制度改革審議会
司法制度改革審議会 第41回議事概要
- 1. 日時 平成12年12月12日(火) 13:30~17:00
2. 場所 司法制度改革審議会審議室
3. 出席者
- (委員・50音順、敬称略)
石井宏治、井上正仁、北村敬子、佐藤幸治、竹下守夫、髙木 剛、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本 勝、吉岡初子
(説明者)
園部逸夫立命館大学大学院法学研究科客員教授
藤田宙靖東北大学教授
山村恒年弁護士
事務局
樋渡利秋事務局長
- 4. 議題
- 「司法の行政に対するチェック機能の在り方」等
5 会議経過
(1) 「司法の行政に対するチェック機能の在り方」に関し、園部教授、藤田教授、山村弁護士から、その問題点や改革の方向性等について、それぞれ説明がなされ(別紙1ないし3のとおり)、それを踏まえて、委員との間で質疑等が行われた。その主な内容は以下のとおり。
- 「原告適格」、「処分性」、「訴えの利益」といった抗告訴訟の訴訟要件の概念の狭さを問題点として指摘されているが、裁判実務においてもそれらを拡大する方向で努力がなされてきた。しかしながら、そうした解釈・運用には限界がある。行政事件訴訟法と並んで、行政実体法自体にも手を付ける必要があるのではないか。
(回答:確かに相互に連関する問題であろう。ただし、行政実体法の問題については所管省庁の足並みをそろえるのは難しいという面がある。行政事件訴訟法上の訴訟要件については判例の進展によりかなり拡大した解釈がなされていることは事実であるが、自ずと限界があり、立法的解決が望まれる。)
- 原告たる住民の利益の救済の重要性は御指摘のとおりであるが、他方、原告以外の住民の利益との調整の必要もあり、それが正に行政であろう。行政と住民との紛争のすべてに司法が介入していくことが望ましいとは思われず、議会のチェック等様々な方法を考えていくのが適当ではないか。
(回答:確かに、議会や行政委員会のチェックなど種々の方法があり得る。ただ、それで十分とは言えない。司法的解決以外に、純粋な行政、立法にも属さない、新たな迅速な紛争解決の仕組みが必要なのではないかと考えている。)
(回答:司法で万事解決すべきとは言えないが、少なくとも国民が司法的救済を求めた場合、それに応えられるようにする必要があり、現状のままでは、はなはだ不十分であると考える。)
- 我が国の行政訴訟の現状を見ると、件数は非常に少ない上に、勝訴率が極めて低い。門前払いの判決が多く、住民は訴えの提起自体を躊躇してしまう。「原告適格」の狭い捉え方に問題があるのではないか。
(回答:広範な行政裁量が認められ、行政の判断権が優先されることに問題がある。行政が説明責任を負い、それに合理性があるか否かを司法が判断する仕組みを作る必要がある。)
- 行政の法律適合性を重視すべきであると指摘される一方で、主観訴訟の訴え提起の要件を緩和する必要性も主張されているが、行政訴訟の基本型についてどのような認識を有しておられるのか。
(回答:客観訴訟を前提とすべきだと考えているわけではない。主観訴訟において行政に優越的な地位が与えられていること自体が問題であるということである。)
- 裁判官の専門性を強化すべきだとする一方で、参審・陪審など市民参加制度の導入を提唱されているが、両者の関係をどのように考えるのか。
(回答:行政事件に通じた裁判官をつくることは必要であるが、それに市民の常識的判断を反映させることも必要だということである。)
- 原告の主張していない行政の違法性も審理するという職権探知主義の採用を提唱されているが、単純な事案であればともかく複雑な事案では裁判所の負担は大変なものとなるであろう。仮にその点の審理が不十分である場合、上訴理由とすることになるのか。
(回答:職権探知主義と弁論主義を柔軟に併用するということを考えている。) - 判検交流により裁判官が法務省に出向して訟務検事を務めるという制度について、どのように考えるか。
(回答:法曹三者の中で法律家として相互に交流して立場を変えること自体、決して不思議なことではなく、むしろ自然なことではないか。個人的な経験の範囲でも訟務検事を務めたことのある裁判官についてその中立公平に疑問を感じることなどなかった。ただし、国民の間に公正さを疑う意見が非常に強いということであれば見直す必要もあるだろう。)
- 説明を伺っていると、行政訴訟の抱える問題点の認識はほぼ共通しているように思われるが、これまで改革がなされてこなかった原因はどこにあるのか。
(回答:戦後も、我が国が行政国家としてキャリアシステムの下で優秀な行政官を育て、その結果、行政官が強い力を持ち、この分野をリードしてきた反面、学説は実務への影響力を持つに至らなかったという事情もある。)
- 司法の行政に対するチェック機能は、それが行政自体の透明化、適正化にもつながるという意味においても重要なのではないか。
(回答:御指摘のとおりの効果があると考える。司法的チェックを受けることにより行政自らが襟を正す契機になる。)
- 行政事件の特殊性やそのことを理由に専門性の高い裁判官の養成の必要性を強調することは、他面において、市民参加という観点からすると、危険ではないか。
(回答:行政事件を専門に扱う裁判官が必要であるということは、行政よりの裁判官をつくろうという意味ではない。行政法の知識さえ欠いた裁判官では、適正妥当な判断を行うことは困難ではないだろうか。)
(2) 来年(平成13年)1月及び2月の審議予定につき、以下のとおり、決定された。
- 第43回会議(1/9午後) 国民の司法参加
- 第44回会議(1/23午後) 弁護士の在り方
- 第45回会議(1/30午後) 国民の司法参加
- 第46回会議(2/2午後) 弁護士の在り方
- 第47回会議(2/13午後) 裁判官制度の改革
- 第48回会議(2/19午前) 裁判官制度の改革
- 第49回会議(2/27午後) 裁判官制度の改革
(3) 次回第42回会議(12/26午後1時30分から)においても、引き続き「司法の行政に対するチェック機能の在り方」について審議が行われる予定である。
以上
(文責 司法制度改革審議会事務局)
-速報のため、事後修正の可能性あり-