司法制度改革審議会
別添1

平成12年12月26日

「司法の行政に対するチェック機能の強化」に関する問題状況の整理

竹下守夫



1 中間報告

4.制度的基盤の整備
(2)国民の期待に応える民事司法の在り方
 オ 司法の行政に対するチェック機能の強化
そもそも、裁判所は、統治構造の中で三権の一翼を担い、司法権の行使を通じて、抑制・均衡の統治体系を維持し、国民の権利、自由の保障を実現するという重要な役割を持つものであるが、21世紀の我が国社会で司法の比重が増大していくことや、行政訴訟制度の在り方について、従来、様々な批判や提言がなされてきたこと等を踏まえると、行政に対する司法のチェック機能を充実させることは重要である。そうした視点から、行政訴訟制度の改革が不可避であるが、その具体的方策については、更に検討すべきである。

2 問題の所在

1 現行行政訴訟制度の発足時に既に内在していた問題点

(1) 「『近代行政救済法システム』の例外」としての行政庁の優越的地位

(2) 行政主導の国家運営------優越的地位の基礎

1)「行政庁に対する信頼」
「行政庁の専門技術的判断の尊重」「行政庁の政策的判断への司法の不介入」「行政庁による行政法解釈の尊重」

2) 司法権の限界の重視
行政庁の第一次判断権の尊重、取消訴訟中心主義

(3) 抗告訴訟の機能不全----優越的地位の帰結

2 現行行政訴訟制度では対応が困難な新たな問題点

(1) 現代型行政訴訟の出現----行政作用の理念的転換

(2) 実体法的解決の可能性と限界

(3) 民事訴訟モデルによる対応の限界

3 行政訴訟の裁判機関に関わる問題点

3 検討すべき課題

1 行政訴訟の基盤整備上の課題

(1) 行政訴訟の専門的裁判機関の設置
行政裁判所、行政事件専門部、巡回裁判所等

(2) 参審制導入の当否

(3) 行政事件を取り扱う法律家の専門性の強化

(4) 行政法に関する教育の充実

2 行政訴訟手続に関する課題

(1) 現行行政事件訴訟法の個別改正問題
原告適格、処分性、訴えの利益、出訴期間、管轄、執行不停止原則等

(2) 特に多様な訴訟類型の導入
義務付け訴訟、予防的不作為訴訟、行政立法取消訴訟等

(3) 固有の行政訴訟法制定の要否

(4) 個別法上の課題

(5) 団体訴権制度の創設

3 司法と行政の基本的な関係

(1) 三権相互の関係

(2) 行政が果たすべき役割・機能とその限界

(3) 司法が果たすべき役割・機能とその限界

4 関連諸制度との関係

(1) 行政実体法による行政活動の規律の在り方

(2) 行政手続法・情報公開法・行政不服審査法関係法制(改正)との関係

(3) 国家賠償との役割分担

(4) 司法救済に至るまでの前審的争訟の拡充強化(行政委員会の準司法的機能の強化等)による救済の裾野の拡大

5 今後の検討の進め方

6 その他

以 上