司法制度改革審議会

第44回司法制度改革審議会議事録



日 時:平成13年1月23日(火) 13:30~17:10

場 所:司法制度改革審議会審議室

出席者(委 員)

佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、井上正仁、北村敬子、髙木 剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本 勝

(説明者等)

高村正彦法務大臣
久保井一匡日本弁護士連合会会長

(事務局)

樋渡利秋事務局長
  1. 開 会

  2. 法務大臣あいさつ

  3. 弁護士の在り方について
  4. 閉 会

【佐藤会長】定刻がまいりましたので、ただいまより第44回会議を開会いたします。
 本日は、先の内閣改造によりまして、当審議会の担当大臣になられました高村正彦法務大臣に御出席いただいております。大変お忙しい中、どうも恐縮でございます。
 本日の議事としましては、「弁護士の在り方」につきまして、日本弁護士連合会などからのヒアリング及び質疑応答を行い、その上で意見交換を行いたいと考えております。
 それでは、まず高村法務大臣からごあいさつをちょうだいしたいと思います。

【高村法務大臣】司法制度改革審議会の第44回会議の開催に当たり、総理から担当大臣として指名された者といたしまして、一言ごあいさつを申し上げます。
 新世紀を迎え、我が国が更に発展していくための社会・経済を支える基盤として、司法機能を充実強化し、国民が身近に利用することができ、社会の法的ニーズに的確に応えることのできる司法制度を構築していくことは、極めて重要な課題であり、多くの国民が高い関心と強い期待を持って、本審議会の行方を見守っているところであります。
 そうした中で、委員の皆様におかれましては、本審議会の発足以来、約1年半にわたって精力的な審議を重ねられ、昨年11月には「人的基盤の拡充」、「制度的基盤の整備」、「国民的基盤の確立」という三つの柱からなる内容の中間報告を取りまとめられ、現在、最終意見に向けた審議をこれまで以上に精力的なペースで行っておられるところであると伺っており、委員の皆様の御熱意、御尽力に敬意を表するとともに、感謝を申し上げる次第であります。
 政府といたしましても、引き続き充実した審議をいただき、実りの多い御意見を賜ることができますよう、これまで以上の協力、支援に努めてまいる所存でございます。
 最終意見の取りまとめまでの間、委員の皆様には、これまでにも増して、御苦労をおかけするものと存じますが、まさに新世紀を迎えた本年を「司法制度改革元年」と位置付け、司法制度改革の実現に向けて最大限の努力をしてまいる所存でございますので、引き続き御尽力を賜りますようお願い申し上げまして、私のあいさつといたします。
 ありがとうございました。

【佐藤会長】ここで大臣は公務のため御退室になられます。

(高村法務大臣退室)

【佐藤会長】それでは、これから「弁護士の在り方」につきまして、早速、日本弁護士連合会などからのヒアリングに入りたいと存じます。
 日本弁護士連合会からは久保井会長にお見えいただいております。最初に、久保井会長から、私ども審議会で用意をいたしましたヒアリング項目に基づきまして、30分程度お話しいただきまして、引き続き法務省から、ヒアリング項目のうち、弁護士事務所の法人化等、幾つかの項目について、少し御説明をお聞きするということを考えております。その後、一括して質疑応答を行いたいと思います。
 法曹三者におかれましては、私どものヒアリング項目に基づき御準備をいただき、また、本日はお忙しいところお見えいただき、本当にありがとうございます。
 予定としましては、ヒアリング及び質疑応答を午後3時ごろまで行って、その後、休憩を10分程度はさみまして、意見交換を行いたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 委員の皆様のお手元には、本日もヒアリング項目をお配りしておりますので、それを御参照いただきながら、それぞれのお話をお聞きいただきまして、御質問等をなさっていただければと思います。
 それでは、久保井会長、恐縮ですけれども、よろしくお願いいたします。

【日弁連(久保井会長)】日本弁護士連合会会長の久保井でございます。お言葉に甘えまして、あとは座ってやらせていただきます。
 お手元にこれから申し上げる内容につきまして、簡単な項目をレジュメにしてお届けしていると思いますので、これを御覧いただきながらお聞きいただければ幸いでございます。
 日本弁護士連合会といたしましては、一昨年の12月に前会長の小堀樹が意見表明をさせていただき、それに続いて私が昨年の8月29日に意見を述べさせていただきました。本日は、更にこのような機会を与えていただきましたことにつきまして、感謝申し上げたいと思います。
 まず最初に中間報告について一言申し上げたいと思います。
 審議会におかれましては、1年4か月にわたって、精力的で充実した調査と審議を重ねられ、昨年11月20日に中間報告を取りまとめられましたことに心から敬意を表したいと思います。
 この中間報告は、今回の司法制度改革の基本的理念と方向において、国民のための抜本的な司法改革の道筋を示されたものと高く評価いたしております。
 特に私ども弁護士・弁護士会に対して、国民が求める弁護士像として、「社会生活上の医師」たる法曹の一員として、基本的人権を擁護し、社会正義を実現するという使命に基づき、国民にとって「頼もしい権利の護り手」であると同時に、「信頼し得る正義の担い手」として高い質の法的サービスを提供することを求められております。このような役割を果たすために、弁護士の活動領域を大幅に拡大する中で、個人や企業にとってよきパートナーとなり、また、国家や社会などの公的部門においても、その立派な担い手となるべきことを期待されている点を厳粛に受けとめ、我々は全力を尽くして、そのような弁護士像を目指して改革を進めていく決意であります。
 続きまして、昨年8月のプレゼンテーション以降の取り組みにつきまして、ごく簡単に御報告させていただきたいと思います。
 まず第1に、日弁連は、昨年11月、審議会に対し、法曹一元制と陪審制の実現を強くお願いするとともに、法曹人口と法科大学院について、これまでの方針を根本的に改める決議を行いました。この決議は日弁連の21世紀に向けた司法改革の基盤となる重要な意義を持っていると考えています。
 まず、法曹人口については、これまでの一定数で上限を画する方針を改め、国民が必要とする数と質の人口を確保する旨の方針を決議しました。したがいまして、審議会が昨年8月の集中審議を経て、中間報告において打ち出されました年間3,000 人程度の新規法曹という目標値も、日弁連としましては、決して容易な数字ではありませんが、国民の声として真摯に受けとめ、前向きに努力をしていくつもりでございます。
 次に、法曹養成制度につきましては、21世紀にふさわしい法曹の質を確保するため、いわゆる法科大学院構想を受け入れ、日弁連としても、主体的、積極的に参画していくことを決議いたしました。審議会が中間報告で提言されました法科大学院構想は、基本的には日弁連の提唱する制度と理念を共通にするものでございます。日弁連は、公平性・開放性・多様性の確保、全国的な適正配置及び実務教育・実務修習の重視などの諸原則を軸として、この新しい制度の設立、運営に積極的に取り組んでいくつもりでございます。
 続きまして、第2は、弁護士へのアクセス改善に関する方策の施行であります。これまで閉鎖的で市民にとって敷居が高いとの御批判をいただいておりました弁護士を、より市民に開かれ、身近な弁護士に改革していくための施策であります。
 まず、昨年の10月1日に、同時に三つの制度をスタートさせました。一つは、弁護士広告の原則自由化であります。二つは、民事法律扶助法の施行でございます。三つは、権利保護保険のスタートでございます。これらの内容につきましては、時間の関係上、本日付けの「弁護士のあり方」と題するペーパーを御覧いただきたいと思います。
 第3は、弁護士・弁護士会の新しい活動形態であります。昨年の9月以降、「住宅の品質確保の促進等に関する法律」に基づく指定住宅紛争処理機関として、各地の弁護士会がその指定を受けました。既にこれに必要な諸規定を設け、弁護士や事務職員に対する全国的規模での研修も終えています。日弁連は、これまで裁判外紛争処理機関、ADRの拡充に力を注いでまいりましたが、今後も弁護士・弁護士会の新たな役割の開拓を多方面にわたって進めていくつもりでございます。
 第4は、執務体制の強化であります。21世紀に向けた法律事務所の基盤整備として、法律事務所の法人化への道を切り開くことにいたしました。そこで来月の9日に臨時総会を開催して、その基本方針を採択する予定でございます。そして、今月末から始まる予定の通常国会に、法務省から法案を出していただくことをお願いしているところでございます。
 ちなみに、日弁連としては、法律事務所の人的スタッフの整備に向けて、いわゆるパラリーガル、法律補助職の制度化などについても検討を進めてまいるつもりでございます。
 続きまして、弁護士法72条に関する基本方針の決定でございます。
 昨年9月の理事会におきまして、弁護士法72条に関する基本方針を決定いたしました。その方針は、国民の権利や義務の確定、紛争の解決を扱う法律事務は、必要な弁護士人口を増員し、弁護士が自ら担うことを基本とするものでございます。
 弁護士以外の隣接法律専門職種の方々が、それぞれの持ち場において重要な役割を果たしておられることは十分に承知していますが、これらの職業の本来の趣旨は、それぞれの監督官庁の、いわゆる申請業務を円滑に進めるためのエージェントとしての役割にあります。したがいまして、国民の人権、財産に関する法的問題を直接に扱うことを予定した制度とはなっていません。
 他方、弁護士人口の大幅な増員には、法科大学院の立ち上げなど、相当な時間を要することは否定できませんので、それまでの措置として、隣接法律専門職種の方々に一定の範囲内で法律事務をお願いすることを御提案申し上げた次第でございます。その具体的な内容につきまして、本日付けのペーパーを御覧いただきたいと存じますが、その主なものは、司法書士の方々は、簡易裁判所における補佐人の権限、弁理士の方々は、弁護士が訴訟代理人に付いている事件について、代理人になっていただくこと、税理士についても、弁護士が訴訟代理人に付いている事件について、補佐人として出廷・陳述をしていただくことの権限の付与でございます。
 なお、日弁連としては、今後いずれにしても、これらの隣接法律専門職種の方々と協力して働く協働関係の構築に努め、ユーザーの要請に応えていきたいと考えています。
 さて、いよいよ今後の課題でございますが、日弁連は、21世紀を迎え、弁護士制度の改革につき、様々な取り組みを行っていくつもりでございます。その具体的な内容は、本日付けペーパーを御覧いただきたいと思いますが、その基本的なスタンスは、21世紀にふさわしい専門的能力と高い倫理性、公益性を備えた市民に身近で信頼される弁護士像の確立であります。以下、時間の関係上、6点に絞って申し上げたいと思います。
 まず、公益性に基づく社会的責務の実践であります。
 21世紀において、私ども弁護士は、中間報告でも指摘されていますとおり、「頼もしい権利の護り手」として、国民の権利や利益を誠実に擁護、実現すると同時に、他方では、「信頼し得る正義の担い手」として活動することが求められます。換言すれば、弁護士は、21世紀社会において、いわゆる法の支配の担い手として、その公益的責務を果たさなければなりません。具体的には、いわゆるプロボノ活動、国民の法的アクセスの保障、公務への就任、後継者養成への関与などに積極的に取り組んでいくことが求められています。
 現在、弁護士は、国選弁護、当番弁護士、各種法律相談、法律扶助等を通じ、相当程度の公益活動に従事しています。特に小規模の弁護士会におきましては、ほとんど例外なくすべての弁護士がこれらの活動を行っています。しかしながら、大都市の弁護士会においては、必ずしもそうとは言えない状況があります。
 そこで、既に資料として提出していますが、幾つかの弁護士会では、公益活動を義務付ける会則等を制定しています。ただ、これとて、原則としては、任意の履行に期待するものにとどまっています。私といたしましては、すべての弁護士がこの社会的使命をより深く認識し、これを実践するため、プロボノ活動を会員の義務として明確に位置付け、この履行を担保するための方策を検討してまいりたいと考えています。今のところ、プロボノ活動の範囲や履行を担保する方法につきましては、日弁連内において、いまだ議論のあるところですが、韓国で昨年から実施されているプロボノ活動の義務化、年間30時間のプロボノ活動を義務付け、やむを得ない事情でできない場合は、1時間につき一定の金額を納付する制度や、米国法曹協会(ABA)のプロボノ規定等も参考として、速やかに結論を得たいと思っております。
 次に、新たな弁護士任官に向けた取り組みでございます。
 日弁連は、かねてから法曹一元制度の実現を求めています。それは判事補制度を廃止し、司法試験合格者は、一旦弁護士又は検察官となり、原則として10年以上実務を経験した上で、裁判官に任用するというものです。今回の中間報告は、この法曹一元制度の採用を明言しておられない点は残念ですが、裁判所法が本来判事の給源の多元化を予定しているにもかかわらず、実際は判事補が主要な給源になってしまっている点は問題であること、特例判事法制度の見直しを検討することが打ち出されています。
 そこで日弁連としては、今後判事補に代わる裁判官の供給源として、弁護士任官に積極的に取り組んでいくつもりです。ちなみに、判事補制度を存続させた状況の中での、しかも現行キャリアシステムの改革をしない状況の中での弁護士任官には、おのずから限界がありますが、しかし、その困難な状況の中でも、優れた弁護士に任官していただく新たな努力を試みていきたいと考えています。弁護士会が行ってきたこれまでの弁護士任官への取り組みは、率直に言って、弁護士・弁護士会が自ら裁判制度の担い手であらねばならないという自覚が十分ではなかったと思います。そのために、弁護士任官推進のための諸活動が十分になされているとは言えませんでした。しかし、その姿勢は根本的に改める必要があります。つまり、弁護士会は、改めて裁判制度を担う義務と責任を自覚し、弁護士の中から裁判官としてふさわしいものを積極的に選出し、任官していただくこと、また、裁判官適格者を積極的に養成していくこと、さらには、弁護士任官推進のための基盤と環境づくりに取り組むつもりでございます。
 昨年11月の臨時総会の各決議も、これらの新しい決意を意味するものでございます。
 当面、次のことに取り組んでまいります。
 まず、弁護士任官推進基本計画を策定し、年間ごとに目標値を定め、単位弁護士会とともに努力してまいります。
 次に、弁護士の中から適格者を、市民に開かれた信頼性の高い方法で選考する適格者選考委員会を各地に設置していきたいと考えます。また、推薦についても同様で、例えば、近畿弁護士会連合会では、既に「下級裁判所裁判官候補者調査評価に関する協議会」を、市民委員とともに設けていますが、このような試みを全国各ブロックで進めてまいりたいと思います。
 そして、任官者の確保は、弁護士会の義務であり、弁護士個人にとっては、推薦されれば主体的、かつ積極的にこれを受けとめるという「名誉ある責務」であることを明確化していきたいと思います。
 さらに、支援体制の整備をいたします。弁護士から裁判官に任官する人を支援するため、弁護士会として、事務所を閉鎖する場合に、事件や事務職員の引継ぎのあっせんなどを行うようにしていきたいと思います。また、これらを経済的に支えるため、東京弁護士会が策定している「弁護士任官支援基金」制度を全国的に拡大していきたいと考えています。
 以上のほか、日弁連は、弁護士人口の増大、弁護士の偏在の解消、公設事務所の設置や、法律事務所の共同化、法人化、総合化などの基盤整備に取り組んでまいります。また、将来の優れた任官者を計画的に養成するための「任官展望事務所」や、裁判官に任官するに当たり、事件の引継ぎ、その他の支援を行う「任官支援事務所」なども検討し、具体化していこうと考えています。
 続きまして、法科大学院創設に向けた取り組みでございます。
 日弁連といたしましては、21世紀にふさわしい法曹の質を確保するためには、この新しい構想である法科大学院を正しく制度設計し、一日も早く軌道に乗せることが当面最も重要な課題であると考えています。
 そこで日弁連は、早速、昨年12月に、法科大学院設立・運営協力センターを設置し、活動を始めました。今後、日弁連といたしましては、大学の主体性を尊重しながら、最高裁、法務省、文部省、大学関係者などと一層の連携を深めつつ、設立認可の基準の策定、カリキュラムの策定、教材の開発、弁護士教員、すなわち実務家教員の養成、派遣、又は要望に応じて、研究者教員の実務研修等、法科大学院の速やかな成立とその運営に協力・参画していく所存でございます。
 次は弁護士の活動領域の拡大であります。
 先のプレゼンテーションでも申し上げましたが、21世紀の高度化、複雑化、国際化、情報化する日本社会において、あらゆるところに法と正義を行き渡らせることを目指し、これまでの弁護士の活動領域が裁判中心の狭い範囲にとどまっていた、言わば裁判所城下町的な弁護士であったことを反省し、いつでも、どこでも、どんな問題でも、国民や企業の法的ニーズに応えられる、言わば全天候型・全方位型の弁護士像を目指していきたいと思います。
 ちなみに、本年11月には、これらを踏まえて、広島市において「21世紀に求められる弁護士業務」のテーマで一大シンポジウムを企画しています。
 このような様々な分野への弁護士の活動領域の拡大を実現するために、弁護士法30条による弁護士の兼職等の制限は、自由化の方向で見直していく必要があります。
 弁護士法30条1項は、先の国会におきまして、「一般職の任期付職員採用給与特例法」の成立と同時に改正されました。この弁護士法改正により、これまでは国会議員等にしか認められていませんでしたが、弁護士がその身分を維持したままで、5年を越えない範囲内で期限付職員に採用されることが可能となっています。弁護士法30条1項につきましては、任期付職員に限らず、一般の国家公務員や地方公務員も含め、届出制にした上で自由化すべきであると考えています。
 他方、弁護士法30条3項、営利事業につきましては、事前の届出による自由化をすることについては慎重な意見もございますが、更に検討を進めてまいりたいと思います。
 次に、私たち弁護士にとって最も重要な課題は、言うまでもなく弁護士倫理の強化と弁護士自治であります。
 弁護士は、人権の擁護と社会正義の実現を使命とするものであり、その職務の自由と独立が保障されなければなりません。そのためには、いわゆる弁護士自治は絶対に確保されなければなりません。この弁護士自治の制度は、戦前の弁護士が国家権力の監督の下に置かれ、十分な活動ができなかったことに対する厳しい反省の上に達成されたものであります。
 しかし、当然この弁護士自治には、それに伴う責任があることは言うまでもありません。日弁連は、この弁護士自治を実効的に果たすために、様々な努力を傾けてきましたが、今後も一層、弁護士倫理の向上、弁護士の質の向上、弁護士会の運営への国民参加と説明責任の履行、綱紀・懲戒手続の透明化・迅速化、弁護士情報の開示等に力を注いでまいります。
 まず、弁護士会運営に対する国民参加、国民的基盤の強化であります。
 中間報告は、司法の中核を担う裁判所はもとより、弁護士会にもその運営の在り方に広く国民の声を反映させ、国民的基盤を確保することを求めておられます。日弁連は、これを積極的に受けとめていきたいと考えます。
 日弁連及び各弁護士会は、これまでも「日弁連懇話会」や「市民モニター」などの制度を通じ、会務の運営に第三者の意見を反映させる方策を取ってまいりました。今後も更に弁護士会の運営を国民に開かれたものにするため、様々な方策に取り組んでまいります。具体的な課題としては、以下のようなものが考えられます。
 第1は、国民の利害に直接結び付く弁護士の職務の質の確保・向上に関する分野、例えば、弁護士倫理、弁護士報酬を見直す作業に市民代表の参加をお願いすることです。
 第2に、個別的、具体的な事件性を持った市民と弁護士の間の、広い意味での紛争を取り扱う分野への市民の参加です。例えば、弁護士会の苦情相談、紛議調停委員会、綱紀委員会、懲戒委員会などに市民の参加を得ていく方向で検討したいと思います。
 次に、倫理研修の充実・強化であります。
 弁護士倫理研修につきましては、新規登録時及びその後一定年数ごとの倫理研修の受講を義務付けており、ほとんどの受講対象者がこれを受けており、当初の研修受講の義務化の目的はほぼ達成されている状況ですが、更に一層充実を図ってまいります。この間の事情は、本日付ペーパーで詳しく述べていますので、御覧いただきたく存じます。
 次に、弁護士の職務の質に関する方針でありますが、この点につきましても、本日付ペーパーを御覧いただきたいと思いますが、中でも弁護士と依頼者との間の契約関係の明確化、依頼者に対する弁護士の報告、説明義務の明確化などの2点は特に重要だと考えております。
 そして、最も重要な綱紀・懲戒制度及び関連する諸制度の改革について申し上げます。
 日弁連は、改革の基本的な方向性として、次の三つのことを考えています。
 第1は、依頼者から弁護士に対する苦情案件への対応と、懲戒案件への対応を有機的に連携させながら、それぞれの手続について、その性格を踏まえた適正化・実効化を図ることであります。
 第2は、これまでにも増して、依頼者指向性・依頼者保護を強化していくことであります。
 第3は、更に厳格で適正かつ説明責任にかなった懲戒制度にしていくことであります。
 このような基本的な考え方の下に、まず、弁護士会の苦情処理の適正化のための方策を講じていきます。弁護士に対する苦情に弁護士会として適切に対応できるようにするため、すべての弁護士会において、苦情相談窓口の制度を整備し、紛議調停制度や、綱紀・懲戒制度との連携を図っていきたいと考えます。そのため、苦情相談担当者や事務局の体制を整備していくことが必要です。また、苦情相談窓口制度や紛議調停制度、懲戒制度、苦情内容や懲戒処分の集計内容などを広く知らせていくようにしたいと考えています。
 続いて、綱紀・懲戒手続の改革であります。
 ここでは透明化、適正化、迅速化が求められます。我が国の弁護士は、戦前は一貫して国家権力により監督され、懲戒されてまいりました。現在の弁護士法は、その構造を断ち切り、弁護士が国民の基本的人権を守る活動をするために、独立してその職務を行うことを制度的に保障した点で画期的内容を有するものであります。日弁連としましては、弁護士に対する懲戒権限が、国民から付託されたものであり、その厳正・的確・迅速な行使は、何よりも国民に対する責務であると考えております。その見地から、綱紀・懲戒制度の一層の透明化、適正化、迅速化を図ってまいる決意でございます。
 具体的には、第1に、綱紀委員会の参与員制度を改めて検討し、懲戒委員会と同様に、議決権を有する外部委員とすることを検討したいと考えます。また、綱紀委員会、懲戒委員会に、従来は裁判官・検察官・学識経験者に参加していただきましたが、これに加え、消費者団体の代表など、市民の代表の方に入っていただき、弁護士会の外の声が一層適切に反映されるようにしてまいりたいと考えます。
 第2に、懲戒請求は何人もできる制度でありますが、綱紀委員会の調査手続や、懲戒委員会の審査手続において、実質的に被害者であったり、懲戒請求事案の当事者である人が、意見陳述など手続に参加することを制度的に保障することを検討したいと考えます。
 第3に、懲戒請求の不服申立への配慮であります。最近は1年間に700 件から800 件の懲戒請求がなされていますが、懲戒の処分をされる案件はそのうち年間50件程度となっております。他方、綱紀委員会の調査によって、懲戒処分をしないとされる中で、異議の申立が年間300 件ほどなされております。これらを外部委員にも加わっていただいて、日弁連の懲戒委員会で審査し、年間ゼロないし3件程度は懲戒相当とされておりますが、大多数は各弁護士会の綱紀委員会の調査結果と結論を同じくしております。日弁連といたしましては、綱紀・懲戒制度は現在でも適正に運用されておると考えており、綱紀委員会や懲戒委員会の外部委員制度を充実することにより、一層透明性を持ったものにしていくことができると考えておりますが、これに加えて、検察審査会に匹敵する「懲戒審査会」といった制度を設け、弁護士会以外の方にお骨折りをいただき、日弁連の結論に納得できないという場合、そこで審査していただく、そして「懲戒審査会」が是正勧告をした場合には、日弁連等で再度調査するような制度を検討したいと考えます。
 第4に、綱紀・懲戒手続における審査に当たって、会員である弁護士が、弁護士会による調査・審査に協力すべきことを会則に明記する、綱紀委員会が自らの判断に基づいて、調査を開始することができるようにするなどの制度改正により、調査・審査の適正化と迅速化を図ることを検討いたします。
 第5に、綱紀委員会・懲戒委員会の機能を実質的に強化するため、現在、日弁連懲戒委員会に設けられている有給の調査員の制度を、日弁連及び各弁護士会の綱紀委員会、懲戒委員会に導入するなどし、調査機能の強化を図ることを検討します。
 第6に、懲戒処分について、現在、懲戒処分を受けた弁護士の名前、懲戒処分の内容、懲戒処分の事由の概要が公表されています。そのほか、いわゆるクレ・サラ事件で、弁護士が整理屋と提携した非弁提携事案において、懲戒処分の結論が出るのを待っていては被害の増大を招く恐れがある場合について、一部の弁護士会では、懲戒処分が行われる前の段階で、その事実を公表する制度を導入しています。例えば、東京弁護士会、大阪弁護士会、第二東京弁護士会などでございます。懲戒案件に関する公表制度を更に充実し、官報や弁護士会のホームページに掲載することなどを検討いたします。
 以上のほか、度重なる懲戒処分に受けた者に対する責任の過重の制度、懲戒請求された弁護士の弁護士業務の懲戒判断の前に仮停止する制度、綱紀委員・懲戒委員の有給化などについても検討していきたいと思います。
 最後に、弁護士へのアクセスの拡充、特に公設事務所について申し上げます。
 日弁連は、弁護士へのアクセス拡充のため、様々な努力を重ねています。全国の地方裁判所支部の管轄地域に、漏れなく弁護士会の法律相談センターを設置し、更にそれを一歩進め、弁護士が常駐する公設事務所を設置し、本日の段階で未設置の地域は全国253 地域のうち21か所にまで減少しており、本年5月を目標にこれらの地域のすべてに法律相談センターや公設事務所を設置していきたいと考えています。
 詳細は本日付ペーパーで御覧いただきたいと思いますが、ここでは、その中でも最も力を注いで実現したいと考えている公設事務所について申し上げたいと思います。
 まず、日弁連の公設事務所、過疎地型公設事務所について申し上げます。
 日弁連は、市民の弁護士へのアクセス拡充を図るため、会員が毎月特別会費を負担するなどの方法で集めた、いわゆる「日弁連ひまわり基金」と、地元弁護士会の援助によって、公設法律事務所の開設と運営に力を注いでまいりました。一昨年の臨時総会において、当面10か所、次いで20か所の公設事務所の設置を推進することを決めましたが、昨年4月に第1号として、ひまわり基金・九弁連対馬弁護士センターを、昨年の6月に島根県浜田市に石見ひまわり基金法律事務所を設立いたしました。第3号は岩手県の遠野市に設置され、更に本年4月には北海道紋別市、沖縄県の石垣市に設置される予定となっており、2001年度中に10か所の公設事務所を設置するという課題を果たしたいと考えております。
 続いて、各地の弁護士会が計画している多彩な公設事務所、専門の法律相談センターについて申し上げます。
 以上のとおり、日弁連は、弁護士過疎地に当面10か所の公設事務所を設置することを決めていますが、更に多彩な新しい形態の公設事務所の設置が進められています。例えば、第二東京弁護士会では、専門特化型、公益型、人材供給型の公設事務所としての都市型公設事務所に財政支援をする制度を構築し、2000年度内に開設する予定です。また、大阪弁護士会では、昨日の読売新聞の夕刊がかなり大きく取り上げていただいておりましたが、都市型公設事務所として、2000年度内に設置することを決定し、既に所長の弁護士も選任されております。
 また、専門の法律相談センターとして、既に東京には四ッ谷、神田にクレサラ相談センターが設置され、東京三会が運営していますが、年間1万2,000 名の相談者が訪れ、1,000 名の弁護士が当番制で担当し、その7割の事件を受任しています。
 さらには、法律扶助協会の常設の法律援助センターとして、法律扶助協会東京都支部は、霞ヶ関のほかに、立川、八王子、新宿に援助センターを設置し、法律扶助相談、事件受任を行っています。2001年4月には上野にも開設を予定しており、東京に常時公益活動をするセンターが五つできることになります。扶助専門センターとして、当番制で弁護士が対応しており、将来的には弁護士会の公設事務所と共催とすることも検討課題の一つでございます。
 以上のとおりでございますが、最後に「むすび」として一言申し上げます。
 いよいよ21世紀を迎え、日弁連が創立されて51年が経過いたしました。この間、日弁連、単位弁護士会や多くの弁護士は、国民の基本的人権の擁護と、社会正義の実現のため、人権、公害、環境、消費者など、社会が抱える広範な課題に果敢に取り組み、日本の社会に輝かしい貢献をしてきたものと自負しております。
 他方、市民のための大きな司法を創造し、法曹として、司法全体を自ら担っていくという姿勢や自覚において、必ずしも十分でなかったことも否定できません。今後はこれまでの人権擁護を中心とする活動をますます発展させるとともに、他方では、司法制度を担う責任を自覚し、それに足る弁護士へ脱皮を図ってまいります。
 このような努力をする中で、私たち弁護士、弁護士会は、21世紀の日本の社会における法の支配の担い手として、社会の隅々まで法的正義を行き渡らせるべく、総力を挙げて粘り強く諸課題に取り組む決意でございます。
 以上をもちまして、私の意見表明とさせていただきます。どうもありがとうございました。

【佐藤会長】審議会の中間報告を踏まえた、日本弁護士連合会としての検討状況や今後の方針などについて御報告いただきました。大変ありがとうございました。
 それでは、次に法務省からの御説明をお聞きすることにしたいと思います。

【法務省(太田司法法制課長)】法務省の司法法制課長の太田でございます。この席から失礼いたします。
 お手元に弁護士の在り方についての説明資料10ページのものと、参考資料として4点の資料をつづりましたもの、2セットを用意させていただきました。これらに基づきまして、ヒアリング項目の幾つかにつきまして、簡単に御説明を申し上げます。
 まず、説明資料の方の2ページを御覧ください。
 第1としまして、「弁護士事務所の法人化について」記載してございます。当審議会の中間報告、規制緩和推進三か年計画等を踏まえ、また日弁連とも協議を重ねた上で、法務省は弁護士事務所の法人化を可能とする弁護士法の一部改正法案を、今期通常国会に提出することを予定しております。法案の具体的内容につきましては、現在、政府部内で検討作業中でありますが、その趣旨は「弁護士が法人組織によって法律事務を取り扱う道を開き、その業務の共同化を促進するとともに、その業務提供の基盤を拡大・強化し、高度に専門化した質の高い多様な法律サービスを安定的に供給することを可能にすることによって、複雑・多様化する国民の法的需要に的確に応え、その利便性を向上させることなどを目的とする」というものでございます。
 その概要は説明資料の2ページ、(1)から(6)に記載してございますが、その中で注目すべき点としては、まず(1)の設立についてですが、準則主義によるものとしております。これは設立に当たって、事前の審査や認可を必要とせず、法律の要件に該当するものであれば、登記することによって設立されるというものです。これは弁護士が自発的円滑に共同化を促進する上で意義のあることと考えております。
 また、下から3行目の(5)のとおり、「弁護士法人は従たる事務所を設けることができる」とされています。当審議会の中間報告では、弁護士業務の質の向上及び執務体制の強化に資するべく、弁護士法人制度の導入に伴い、弁護士法第20条第3項の複数事務所の禁止規定を見直すべきであるとされておりますが、今般の法案では、少なくとも法人化された弁護士事務所について複数事務所の設置が認められることとなるわけでございまして、これによって多様な法的サービスを過疎地等をも含めて広く提供できる弁護士へのアクセスの拡充が期待されると考えます。
 次に、説明資料の3ページ以下に、第2として「外国法事務弁護士制度について」記載してございます。
 我が国の外弁制度につきましては、当審議会においても、既に資料を提出して御説明いたしましたように、米国やEU諸国から、外弁と日本弁護士のパートナーシップや、外弁による日本弁護士雇用の解禁、職務経験要件の廃止ないし緩和などの要望が出されておりました。
 さらに、その後におきましても、欧州ビジネス協会(EBC)や英国、また我が国の外弁の方々で組織している外国法事務弁護士協会等からも、法務省にあてて、これは参考資料の2、3、あるいは説明資料の4ページの中ほどに記載しておりますが、資料や要望が提出されております。
 これらの要望におきましては、外弁による日本弁護士の雇用やパートナーシップを認めるなどして両者の提携の在り方を更に自由化することによって、日本弁護士の国際性や専門性が強化され、クライアントに対して一層良質なサービスを提供することが可能になるであろうと強く指摘されております。
 また、これらの要望等の中では、特定共同事業制度についても様々な問題点が指摘されております。特定共同事業とは、外弁法が定めている制度のことですが、簡単に申し上げますと、法律事務について、何らかの渉外的要素、例えば、適用する法令が外国法であるとか、当事者が外国人、あるいは外国企業であるなどの要素があるものであれば、5年以上の実務経験を有する我が国の弁護士と外国法事務弁護士とが、組合契約などの方式によりまして、それぞれの事務所としての独立性は維持しつつ、共同して事業を行うことができるというものでございます。
 ところが、この制度の利用状況ははかばかしくなく、現時点での外弁は全国で149 名おられますが、特定共同事業の届出数は10件であり、これを行っている外弁は20人にとどまっております。特定共同事業制度の問題点としましては、例えば、特定共同事業として扱える業務の範囲などが分かりにくく、その制度の内容が特に海外のクライアントになかなか理解してもらえないこと、また、物理的には同一場所に事務所が置かれたとしても、法律事務所としては異なる二つの事務所、つまり外弁事務所と日本の法律事務所とに所属する者の共同による法的意見書は、一つの国際法律事務所に所属する者による意見書に比べまして、クライアントから信用を得にくいことなど、外弁事務所と日本の法律事務所の分離が義務付けられている現行の規制による弊害等が挙げられております。
 当審議会の中間報告では、「外国法事務弁護士等に関する制度及びその運用の見直しについては、国際的議論をもにらみつつ、利用者の視点から臨機かつ十分に検討すべきである。」とされているところでございます。
 法務省としましては、外弁が日本の弁護士を雇用するということについては、日本の弁護士としての資格を有しない者が日本の弁護士を指揮・支配することになるため、問題が多いと考えております。
 しかしながら、せっかく制度が設けられた特定共同事業の使い勝手が悪いという外国からの指摘の中には、傾聴すべき点も少なくなく、何よりもその実績が思うように伸びていない状況を考えますと、外圧があるからという受け身の論理ではなく、むしろ日本の弁護士が国際社会における競争的環境においても、一層の力を付けて活躍することを促すという意味におきましても、対等の関係において成立する特定共同事業については、現行の諸規制を緩和する方向で検討が求められるものと考えております。
 説明資料の5ページでございますが、第3として「規制改革についての見解」、いわゆる政府の規制改革委員会の第3次見解について記載してございます。
 このページの中ほどの「※1」というところに記載しているとおり、この見解は規制改革委員会が昨年12月に提言したもので、政府が平成13年度を初年度とする新たな規制緩和推進のための3か年計画を年度内に策定すべきであるとしております。つまり今年の3月まででございます。
 ここで規制改革委員会の「見解」というものと、規制緩和推進3か年計画との関係について簡単に御説明いたしますと、規制改革委員会では、あらゆる行政分野について、行政の不透明な事前チェックを廃止するという観点から、規制の見直しを関係省庁等に促し、ヒアリングを行った上で規制改革委員会として必要と考える規制緩和について見解を取りまとめます。その中で、現実に何らかの具体的な規制緩和の検討と必要な措置を取るべきと判断される事項につきましては、規制緩和3か年計画に盛り込まれ、閣議決定を経まして、関係省庁は政府の一員として、その必要な措置などを実施する義務を負うこととなりますが、この3か年計画は逐次改定されて、新たな計画が定められるようになっております。
 弁護士問題については、日弁連は自治組織であり、行政庁ではありませんが、弁護士法は法務省所管の法律であり、その改正等は法務省が立案事務を担当することとなるため、弁護士問題に関する規制緩和については、法務省も日弁連も、それぞれ規制改革委員会からヒアリングを受け、説明や意見を申し上げてきたわけであります。
 説明資料6ページの枠内に記載してありますが、この第3次見解は、まず公認会計士、弁護士、司法書士、土地家屋調査士、税理士及び社会保険労務士の6資格についても、報酬規定を会則記載事項から削除するべきであると提言しております。
 現在の弁護士法は、その33条で弁護士会会則に定めるべき事項を列挙し、その中に弁護士の報酬に関する標準を示す規定というものが含まれており、これに基づいて日弁連が詳細な報酬等基準規程というものを定めております。
 なお、行政書士及び弁理士につきましては、既に法律が改正され、報酬規定を会則記載事項とはしないこととされています。
 法務省といたしましては、報酬等に関するこの規定が、具体的事件について弁護士への報酬がおよそどのくらい掛かるかということをあらかじめ示す目安となったり、不当に高い報酬を抑制する機能を果たす場合もあるものとは考えておりますが、報酬に関する基準は飽くまで目安を示すものであるというのであれば、これを法律に基づく会則事項として維持することの合理性は、今日においては薄くなっているように思われ、見直しが必要ではないかと考えておるところでございます。
 また、同じ説明資料の7ページに記載いたしましたように、第3次見解は強制入会制は本来廃止するべきであると考えるとした上で、「強制入会制の在り方については、当面資格者団体における競争制限的行為の排除の状況、チェック機能の強化方策の進捗状況、本来の品位保持と資質の向上に関する業務の実施状況等を注視することとし、その状況を踏まえて改めて検討することが適当であると考える」とするとともに、強制入会制に関連する諸問題として、資格者団体におけるチェック機能の強化の必要性を指摘し、その具体的方策として、「資格者団体の業務及び財務等に関する情報の公開」、「外部役員任用の必要性」等を指摘したほか、「弁護士の懲戒制度の抜本的手な見直し」を特に取り上げております。
 この第3次見解の関連部分につきましては、参考資料の方の4に抜粋してございます。
 この参考資料4の末尾の方になりますが、弁護士の懲戒制度の見直しにつきましては、295 ページ以下、後ろの方でございますが、ここに記載されております。
 特に、296 ページには、弁護士の懲戒制度の運用に関する規制改革委員会の調査等の結果が記載されており、弁護士会によって処分の内容に軽重があること、処分の内容が軽過ぎるのではないかと思われる事案が多数あること、多重懲戒弁護士、つまり重ねて懲戒を受ける弁護士が56人認められ、中には4回も懲戒処分を受けている者もいること、懲戒請求から懲戒処分までに長期間を有し、平均で約2.2 年、最長で約5.8 年を要した例もあることなどから、必ずしも有効には機能していないと指摘されております。
 さらに、297 ページでございますが、ここでは当面の措置として早急に透明化、迅速化、実効化のための所用の措置を講ずるべきであるとしまして、綱紀・懲戒、各委員会の委員構成の見直し、外部委員に対する評決権の付与、懲戒制度への市民参加の実施のほか、懲戒処分の標準処理期間の設定や、懲戒処分内容を不服とする懲戒請求権者に対する司法審査請求権の付与などの措置が挙げられております。
 そして、298 ページの中ほどには、弁護士懲戒制度に関する結論部分が記載されており、「弁護士懲戒制度については、当面、上記の運用改善のための措置を早急に講ずるべきであるが、それらの措置を講じた後も懲戒制度が有効に機能していないと認められる場合には、弁護士の担う公益性・公共性の大きさにかんがみ、国民の意思が反映されるよう弾劾構造化を含め、弁護士の懲戒制度の在り方そのものを抜本的に見直す必要があると考える」とされております。
 法務省といたしましては、弁護士の懲戒制度の在り方については、短期的視点、また長期的視点から改善・改革が検討されるべきであろうと考えておりますが、当審議会におかれましては、これら規制改革委員会の指摘をも踏まえつつ、十分な御審議をいただきたいと考えております。
 法務省からの説明は以上でございます。

【佐藤会長】どうもありがとうございます。
 それでは、これから一括して質疑応答等に移りたいと思います。事務局で用意していただいた追加資料の内容等についての説明を。

【髙木委員】最高裁のペーパーも出ておるんですが、これは説明はないんですか。

【佐藤会長】特に説明は希望されておりません。

【髙木委員】説明してもらった方がいいんじゃないですか。

【佐藤会長】そうですか。では、せっかく出していただいたので、ごく簡単で結構ですが。

【最高裁(小池審議官)】これは、昨年既に弁護士制度の改革についてペーパーをお出ししましたが、その中から訴訟活動に関する懲戒手続について、改めてその点を確認的にまとめたものでございます。簡単なものでございますので、お読みいただければと存じます。
 特に最初の点でございますが、弁護士活動につきまして、いわゆる英米流のやり方、法廷侮辱という考え方で、適正活動を進めるべきだという考えもございますが、裁判所の方は、弁護士の自治機能に期待した方がいいのではないかという趣旨でございます。
 2番目の点につきましては、いろんなところで指摘されているとおりのことを掲げてございます。
 以上でございます。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。
 質疑応答に入ります前に、事務局で説明していただきたいことがあります。事務局の方で、法曹三者の御協力をいただいて、本日の弁護士の在り方に関する審議に関連する追加の参考資料を作成していただきました。お手元にお配りしておりますので、これについて事務局長の方から説明をお願いします。

【事務局長】それでは、どういう内容の資料を追加として用意したかということを御説明させていただきます。
 1ページは、「資料1 公益活動義務化の国際比較」です。主要国につきまして、「義務化の有無」、「義務違反への制裁の有無」を比較しています。さらに、別紙1に、アメリカABAのモデル規定、別紙2に、昨年公益活動を義務化した韓国の例、別紙3に、我が国の一部の弁護士会会則におきまして、公益活動が努力義務とされている例を挙げてございます。
 次が11ページ、「資料2 弁護士の登録・入会制度の国際比較」です。主要国につきまして、弁護士の資格付与権限をどこが有しているか、また、弁護士会は強制加入となっているか等について比較しています。さらに、別紙1に、強制加入か否かにつきまして、その他の諸国も含めた状況を、別紙2に、同じくアメリカの各州ごとの状況を示してございます。
 15ページは、「資料3 懲戒制度の国際比較」です。主要国につきまして、懲戒権の所在、懲戒機関やその構成、懲戒請求権者、さらに不服申立制度について、懲戒処分を受けた弁護士と懲戒請求権者等の両側から比較しています。また、別紙1に、アメリカの主な州の懲戒制度、別紙2に、アメリカの懲戒手続の流れを示しています。別紙3は、既に配付しました資料の中から、我が国の弁護士の懲戒手続の流れを参考までに添付してございます。
 次に21ページには、「資料4 報酬規定の国際比較」を載せております。主要国につきまして、報酬規定の有無、関連しまして、弁護士強制主義の有無、タイム・チャージ制や成功報酬制の可否等を比較しています。
 23ページは、「資料5 弁護士報酬」です。これは昨年2月22日に配付しました資料を一部改訂したものです。改訂箇所は、25ページの右肩に傍線をしました「(5)弁護士会の会則により弁護士報酬の標準を定めることと独占禁止法との関係(日弁連見解)」の記述です。
 27ページは、「資料6 弁護士でない者の法律事務取扱規制の国際比較」です。主要国につきまして、訴訟業務、訴訟外業務を弁護士でない者が取り扱うことが禁止されているか否かを示しています。同じページの下に、別表「訴訟外の法的業務の取扱規制の国際比較」としまして、「法律相談」、「契約書作成」、「契約代理、債権回収」「仲裁手続の代理人」、「仲裁人」につきまして、同様の見地から国際比較をしています。
 29ページは、「資料7 隣接法律専門職種とADR(行政不服申立てを含む)との関わりについて」です。隣接5業種につきまして、各団体の資料に基づき、現行の業務内容と要望している業務内容を示しています。このうちADRに直接関連する事項に下線を付してあります。
 31ページは、「資料8 法務省において実施している法整備支援について」です。アジアを中心とする発展途上国等への支援に関する法務省の取り組みの概要です。
 最後35ページは、「資料9 公益法人の情報公開について」です。公的団体の情報公開への取り組みの一つの例として、御参考にしていただければ幸いでございます。
 以上でございます。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。
 それでは、これから一括して質疑応答に入りたいと思います。事務局で用意していただいた追加資料につきましても、その内容等について、御質問がありましたら、本日法曹三者からお見えいただいている方にお答えいただくことも可能ですので、それも含めて質疑応答を行いたいと思います。
 どなたからでも結構でございますので、どうぞ。

【水原委員】日弁連の会長先生にお教えいただきたいのが3点ございます。
 1点は、活動領域の拡大について、30条の問題でございます。先ほども会長先生から、これからの時代、弁護士が社会の様々な公的分野に積極的に出ていって活動することは大変意義のあることだと。これはまさに中間報告でも私どもはっきりと申し上げたとおりでございます。大変重要なことだと思います。
 このペーパーは十分読ましていただきました。15ページ以下にその部分が記載されております。ここでは日弁連のお立場としては、弁護士法の30条1項、先ほどもお触れになられました。公務員との兼職制限について届出制に切り替え、自由化すべきであるということを提言されて、これはそのとおりだと思います。これは非常によくふん切られたと敬意を表したいと思っております。
 3項についても触れておられますが、2項については触れておられません。この在り方のペーパーによりますと。2項は、1項の常勤勤務を要する公職にある間は弁護士の職務を行ってはならないという規定がございます。
 1項で、自由化すべきであるという方針を打ち出しておられながら、2項についての手当を何らしていらっしゃらないのには、何か理由があるのかという気がいたします。これを外しておかないと、せっかく届出制ということで、いろんなところに自由にお就きになることができるという御提言をいただいておりますけれども、非常に使い勝手の悪いことになるんじゃないか。例えば、公職にある間、一律に弁護士の職務を禁止するのではなくて、兼職する公務の内容なども考慮して、支障がない限りは両立も可能ではないかという気が、これは私見でございますけれども、そういう意味で柔軟な工夫をすべきではないかというのが一つでございます。
 それから、3項の問題ですけれども、これは先ほど会長先生からも、ここにも書いてありますが、届出制採用に慎重な意見もあることにかんがみ、届出制に改めることも含め、更に検討を進めることとしたいと、はっきりとはおっしゃっていらっしゃらないわけです。明確な結論を示しておられませんけれども、これは私個人の考えとしまして、個々の弁護士さんの良識を信頼して、問題があれば事後的なチェックをすることとして、許可制を届出制にしたらどうだろうかなという気がいたします。これは後でお尋ねいたしますけれども、綱紀・懲戒についての倫理の確立ということを非常に強くおっしゃっていただいておりますし、まさにそのとおりだと思うわけでございます。そうだとするならば、やはり弁護士自治に任せて、倫理の強化は勿論やっていただくことを前提にして、許可制ではなくて届出制にしたらいかがだろうかというのが一つでございます。
 それから、もう一つは、これはプレゼンテーションではお触れになられませんでしたけれども、57ページ、これは私も今まで何度もお願いし、お尋ねしたところでございます。57ページの上から数行目に、エで「特任検事、副検事、簡裁判事の経験者の位置づけ」というのがございます。ここでお述べになっていらっしゃるところを見ますと、その法曹資格の付与については、その3類型について必要性と相当性がどのような意味であるのか、法曹資格付与については慎重な吟味が必要であると述べていらっしゃるわけですけれども、私は率直に感じるところを申しますと、慎重になる理由があるのかなと。
 と申しますのは、簡裁の判事さんは、訴訟を主宰しておる立場でございます。勿論、簡裁の事物管轄に属するものではございますけれども、当事者双方の意見を聞き、そして、法廷を整理し、判断を下していらっしゃる。
 それから、副検事、特任検事も、事物管轄は異にしますけれども、いずれも法廷で弁護人と争うわけでございますので、弁護士と同等の能力を有していなければならないと。これは飽くまで前提はそうだと思うんです。そのために厳しい試験を行い、そして、研修を行って、厳しい選別の上で選ばれた人たちでございます。
 そうなりますと、現実にそういう訴訟活動を対等の立場で行ってきている者に、法律資格を付与するのに慎重な吟味が必要だとおっしゃる理由は、私にはちょっと理解ができないわけでございます。
 これまでも何度かお聞きしましたけれども、弁護士過疎や、刑事を専門になさる弁護士さんの数が比較的少ないということを考えますと、これから被疑者弁護制度のことも考えられなければならないとなりますと、こういう人たちにも法曹資格を与えるべきではなかろうかという気がいたします。御意見の中に、簡裁の裁判官は定年が70歳だとお書きになっていらっしゃるけれども、都合によって70歳前にお辞めになられる方もいらっしゃるし、検察官は63歳が定年でございますので、70歳になってもまだまだ元気に働いている人もたくさんおりますし、63歳というのはまだまだ大丈夫ではと思うわけです。そういうことで、これは日弁連の前向きな御意見がいただけることを強く希望させていただきたいということでございます。
 もう一点は、いろいろな御意見のある弁護士会において、綱紀・懲戒制度について、先ほど会長先生から御報告をいただきました。また、このプレゼンテーションの資料を拝見いたしますと、大変な御苦心をなさって、いろいろな改善に向けての努力をなさっていることは非常によく分かります。
 勿論、これから努力して、透明性、公正性、そういうものをやらなければいけない。それから、短期間で処理もしていかなければいけない。そうすべきであるということはおっしゃっていただいておるんですが、具体的にどういうふうな機関で、どういう形になるのかというのが、実は私はこの資料を拝見いたしましてもはっきりいたしません。掛け声が非常によく聞こえてまいるんですが、具体的なところがはっきりいたさないわけです。
 先ほど太田課長からもありましたけれども、私も前回の審議会で配付していただきました「規制改革についての見解(抜粋)」、これの296 ページを見まして愕然といたしました。先ほど太田課長が述べたので、これは困ったことになったなと。同じことを言って恐縮になるなと思うんですけれども、これの中ごろによりますと、規制改革委員会が平成元年から12年までに繰り返し懲戒を受けた弁護士さんが56人いる。中には1人で4回懲戒を受けた人もいる。また、平成11年中に懲戒処分が行われた53件について、調べてみた結果、懲戒請求から処分までに、先ほどの報告にもありましたけれども、最短で266 日の審理日数が掛かっておる。最長で2,100 日掛かっている。平均で788 日掛かっている。中には、1,000 日以上を要しているものが10件ある。こういうふうな報告がなされておるわけです。これが本当だとすると、えらいことだなという気がいたしました。政府の委員会の資料ですから、よもやいいかげんなことは書いていないと思うんですけれども、実は愕然といたしました。
 当審議会でも、裁判の迅速化だとかいろいろ言われております。いろいろな方法を考えなければいけないと言っておりますけれども、こういうことで本当に申立権者のニーズに応えることができるだろうか。
 それから、効率よく懲戒委員会が機能しているだろうかという疑念を払拭することができないんです。この弁護士の在り方についてのペーパーを拝見いたしますと、今まではボランティアだった、今後は有給も考えなければいけないという御提言もなさっていらっしゃいますけれども、やはり審理期間の短縮化、早期の結論の提示ということが、国民にとっては非常に求められるんではないかという気がいたしますので、先ほど姿がはっきりしませんと申しましたけれども、具体的に大体の目安は、案件はいろいろ違いましょうから、複雑なもの、簡単なもの違いましょうが、1件についてどれくらいの審理期間を想定されるのか。今すぐということではございませんけれども、そういうこともしかるべき時期にお教えいただければと思っております。
 それから、構成の問題ですけれども、弁護士の数が多いほど望ましいと、諸外国の例でと書いていらっしゃいますけれども、陪・参審の問題、それから検察審査会の問題等々、いろいろ取り上げられておりますその構成を見ますと、国民の声を聞く制度においては、多くの国民から、多数のものを入れようじゃないかという御意見でございますので、この点についても、やはり弁護士会の自立性を尊重しながらも、構成は弁護士さんの数よりも、外部の者が多い方が望ましいんじゃないかという気がいたしますので、それについても御検討いただければと思います。
 以上、意見やらお答えをいただく事柄やら混ぜてお尋ねいたしました。長くなりました。

【日弁連(久保井会長)】第1点の30条の2項については、もう少し見直してもいいじゃないかと。つまり、弁護士と公務を両立することは1項で認められているけれども、2項では、常勤を要する公務員に就いた場合は弁護士業務をしてはならないということになっている。しかし、常勤をしている公務員であっても、弁護士業務が可能な場合は、それを認めてもいいんじゃないかという御質問でしたね。それは一つの御意見として、また研究はさせていただきますけれども、先ほども法務大臣と別室でお目に掛かりまして、国会議員の段階では弁護士はできるけれども、法務大臣になったらできなくなるという話を、この2項の問題としてお話になっておられました。
 しかし、常勤を要する公務員の場合はいろんな配慮から職務専念義務というのがあるでしょうから、そこで弁護士業務を少しぐらいやってもいいということが可能かどうか、あるいは適当かどうか。これは深く検討してみないと、一概に見直しをすべきだと言い切れるかどうか分かりませんが、先生の貴重な御意見ですので、一度検討させていただきたいと思います。
 それから、1項の公務の場合は届出制でいいけれども、3項の営利事業の従業員とか役員になる場合は、届出制に踏み切るかどうかについて、弁護士会の中で今、検討しているんですが、踏み切れない要素、まだ結論は出ておりませんけれども、躊躇している要素は、営利事業は、国家公務員とか地方公務員と違いまして、千差万別ですので、中には好ましくない風俗営業もありますし、また、事業の内容が、最近民事介入暴力とかいろんなことが問題になっていますが、企業の状態を全然考えないで、自由に弁護士がそういうところに就任していいかどうか。やはり弁護士の品位を保持するとか、あるいは弁護士としてきちっと法令を遵守させるだけの基盤のある企業であればいいですけれども、反社会的な要素の強い企業などに入っていくということもありえますし、いろんなことを考えますと、運用を弾力的に、許可制にしておいて、原則として届出制に近い運用に変えるということは、それは必要だと思いますけれども、最初から届出だけでどこの営利事業に行ってもいいというのは、少し行き過ぎではなかろうかという点がありますので、少し躊躇しているということでございます。
 2番目の御質問ですが、57ページの特任検事、副検事、簡易裁判所の裁判官に、弁護士資格を与えるという問題ですが、基本的には冒頭にも申し上げましたけれども、弁護士人口がこれまで少なかったし、また、増加することに対して必ずしも積極的な態度を取ってこなかった。そういう時代にはそういう道も開くということが必要だろうと思いますが、基本的には、必要な人口は、それに応じた数を増やすことによってカバーする。したがって、資格の例外をあれこれ設けるということは、資格制度の本来の在り方からいって好ましくないという考え方が基本にあるんですけれども、しかし、先生がおっしゃる個別的なものについて、例えば、簡易裁判所の判事は裁判の主宰すらできるんだから、当事者の代理人をやってもいいではないかという、そのことはおっしゃるとおりだと思います。
 ただ、簡易裁判所の裁判官は、書記官を長年やられて、その中から採用されている方が多いわけですが、そうだとすると、司法試験を受けなくても、結局は弁護士になる道が、簡易裁判所ルート、副検事ルート、特任検事ルートを通って開けていくということについて、弁護士会としてすぐ、それは結構ですと言いにくい事情がありますが、しかし、そういう御意見は、我々としても、考えてみたいとは思います。
 しかし、大きく言いますと、弁護士人口を増やすことによって必要なことはやると。だから、資格の特例をあれこれ設けるということについては、やはり慎重でなければいけないのではないかという考えが根本でございます。そういうことでございます。
 それから、3番目の、綱紀・懲戒につきましては、これは弁護士会といたしましては、大変恥ずかしいことでございまして、昨年12月の「規制改革についての見解」の296 ページに書いてある指摘は、恐らく間違っているわけではないと思いますので、こういう状態であってはならぬ、一日も早く改革をしなければならぬと思っております。
 今日申し上げました改革の方向とか内容につきましては、早速本年度の執行部において、その作業に着手するための組織をつくりまして、どんなスケジュールでどうするかということについて現在検討しております。いつまでにするという確定期限を切ってここで御説明できないことは申し訳ないですけれども、この中には会則の改正を要するものとか、あるいは要しないものとか、いろいろありますので、中には弁護士法の改正を要するようなものもありますから、これについては法務省にまたお願いしなきゃいかぬということになりますし、次年度において、なるべく早い時期に実行に移していきたいと思っておりますけれども、いつまでということについては、今ここで申し上げることはお許しいただきたいと思います。
 確かに、懲戒処分が実際になされるまでの期間が長過ぎる。それについては、もう少し短縮するためには、標準審査期間というようなものを考えて、それを目標にやっていくということは、よほど例外的ケースは別として、十分に理解できますので、そういうことについては、また考えさせていただきたいと思いますが、今のところ具体的な期間について考えを用意しているわけではございません。いずれにしても、この綱紀・懲戒については、一日も早く制度化し、かつ運用も改正していきたいと思っております。

【北村委員】法務省の書類4ページ目に、外国法事務弁護士協会等からの要望ということで、そのアの「日本の弁護士は、一般的に専門性や国際性に乏しく、サービスの提供者としての自覚に乏しいこと」、これは外国法事務弁護士協会が言っているようなんですけれども、私はこれは余りそういうところで言われたくない言葉であるというふうに思っているんです。
 こういうことなのかどうなのかというのはよく分かりませんが、それとの関連で、日弁連の今日説明してくださったところの55ページの上から3行目のところに「また、弁護士と公認会計士との共同事務所は認めるべきではない」、これ文章が「また」でつながっていて、「べきではない」とあると、何かミスプリなのかというふうにも思ったんです。
 要するに、会計に関する専門性を持っている公認会計士との共同事務所は認めるべきではないというふうに、これが合っているかどうか、まず確認したいと思いますけれども、この意味は何でしょうか。

【日弁連(久保井会長)】その部分だけ先にお答えしますと、例えば、ある企業と契約を結んでいる公認会計士と弁護士が同じ事務所をやっておりますと、その企業を批判することが困難になると言いますか、コンプライアンス、つまり企業が遵法精神を持って活動するということについて、弁護士として、これを指導していく必要があるわけです。弁護士には双方代理の禁止とか、いろんな規定がありまして、そのこととちょっとなじまないということだと思うんです。

【日弁連(水野弁護士)】日弁連の参考資料がございます。今日、添付いたしました2001年1月23日付「弁護士のあり方について<参考資料>」の43ページを御覧いただきたいと思います。
 これは弁護士の国際化と外国法事務弁護士との関係についてということで、日弁連の外国弁護士及び国際法律業務委員会の委員長である小原望弁護士がまとめた文章なんです。この中の「(10)総合的法律経済関係事務所」という中で、公認会計士を除く法律専門職種との間の共同事業の推進を検討中であるということで書いてあります。もしこの有資格者の中に公認会計士を含めると、ビッグ・ファイブという、世界的にもかなり大きな規模を有する国際的な公認会計士の事務所があるわけですけれども、そちらの方との共同事業を認めざるを得なくなるという問題が出てくるということが書いてございます。
 そういった歴史的、国際的な問題も踏まえての意見でございまして、国際的にも弁護士と公認会計士との間の共同事業については、アメリカの弁護士、それからEUの弁護士も含めて、その共同化には慎重を期するというような意見が多いということが、バックグラウンドにあるということを是非御理解いただきたいということでございます。
 それから、今、会長から指摘されたような公認会計士と弁護士との職務の違いというものがございまして、公認会計士の場合には、監査業務をやるということになるかと思います。弁護士の場合には、むしろ取締役会の立場に立って、会社の業務遂行についての援助、あるいは法的助言をするという立場に立ちますので、やや立場を異にするということがございます。そういった業務の両立と利益相反等弁護士倫理上の問題もあるということでございまして、そこら辺のところで今のところは慎重になっているということでございます。

【北村委員】イギリスに行ったときには、弁護士事務所が会計士と一緒にやっているということもあったんです。
 今の弁護士と会計士との関連につきましては、ある一つの企業においてはそうかもしれませんけれども、それに関与していなければそういうことはないのであって、それは何とか解決できるのではないか。
 私、弁護士の専門性、国際性というものをどういう形でこれから高めていくかということが、非常に弁護士会にとって重要なことなんじゃないかなと思っているんです。
 ロースクールができまして、そちらの方でそれをやっていきましょうというと、今度から新しく参加してくる人たちはそういうようなものが身に付いていくにいたしましても、今いる人たちの専門性、国際性、確かにすごいものを持っていらっしゃる。だから、私はこの外国法事務弁護士協会からの言葉というのが、どうかなと思ったんです。
 どういうふうな形でそれを高めていくのか。いろいろと研修等をおやりになるということなんですけれども、大変だろうなとは思われるんです。ですから、頑張っていただきたいと思います。余計なことですけれども。

【石井委員】今日、幾つか御説明いただいた件について、久保井先生に伺いたいのですが、宜しいでしょうか。まず最初に18ページに記載されている倫理研修についてでありますが、倫理研修を大体9割の研修対象者が受けているということですが、それで十分というように考えていらっしゃるのでしょうか。それから、倫理研修を受けなかった方々について、あとどのようにフォローしておられるのか、その辺について教えていただきたいと思います。そのままにしておかれるのか、それとも再講習という手段を取っておられるのでしょうか。

【日弁連(久保井会長)】その年度に事情があって受けられない場合には、次年度の講習とか、別の講習を受けることで達成してもらうように指導しているというのが実情です。

【石井委員】その辺は完全にフォローして、受講者には修了証書ではないですけれども、そういった類のものを出すという形にまではしていらっしゃらないわけですか。

【日弁連(久保井会長)】倫理研修を受講した者には「証書」を発行しております。

【石井委員】分かりました。それから、ユーザーの立場ということでちょっと伺わせていただきたいのですが、弁理士さんとの関係で、今日、お話はなかったのですが、知的財産権関係訴訟に関して、ユーザーが弁護士さんに何を期待しているかについて、弁護士会として実態調査やアンケート調査をしておられるのでしょうか。これは経済界として今一番頭を痛めている点の一つでして、そこいら辺がどうなっているか、教えていただきたいと思います。

【日弁連(久保井会長)】日弁連の中には、知的財産権を専門とする委員会を恒常的に設けておりまして、全国のその方面の裁判を担当している弁護士に委員になってもらっていまして、相当な調査研究はしております。今の時代の要請に十分に応えていると言えるかどうかは分かりませんけれども、かなりのことはやらせていただいております。

【石井委員】これからの日本にとっても、これは非常に重要な問題でございまして、もしできましたら、弁護士会として実態調査とか、ユーザーが何に一番困っているかとか、そういう点について検討していただくと、大変助かるのではないかという感じがいたしますので、是非お願いしたいと思います。

【日弁連(久保井会長)】日弁連法務研究財団という財団がありまして、それは日弁連の外郭団体ですけれど、そこが特別に知財に関する研修とか、相当時間を割いて教育をして、その中で弁理士の方と一緒に勉強したりはしております。

【石井委員】内部での勉強はもちろんなさっているとは思いますが、ユーザーがどういう点で困っているかということについて、少し御調査いただいて、それに沿った方針をお出しいただけると、ユーザーとしては大変有り難いことであると思います。
 それから、もう一つ、特許等の侵害事件における訴訟・紛争において、弁理士に弁護士とともに共同代理を行う権限を認めるとおっしゃっておられますが、弁理士が共同訴訟代理人になった場合、訴訟の間中、いつでも一緒に弁護士さんと行動しなければいけないのか、それとも別々に行動してもいいのか。その辺についてはどういうお考えでしょうか。

【日弁連(久保井会長)】一つの代理権を2人が共有しているというのではなくて、弁理士の方も代理権がある、弁護士も代理権がある。狭い意味での共同代理ではありませんので、一緒でなければ出廷できないというところまで厳しいことは考えておりません。

【石井委員】例えば、日程の関係で、弁護士さんが都合が付かないというときには、弁理士さんだけで行動してもいいという、そういう格好になるのでしょうか。

【日弁連(久保井会長)】そういうふうに考えております。

【石井委員】まだ決まってはいないわけですね。

【日弁連(久保井会長)】大体そういう考えでおります。

【石井委員】ユーザーの立場としては一緒でなくてはならないという形は、とても不便なものですから。

【日弁連(久保井会長)】共同ではなくて各自が代理権を持って一緒にやるということです。

【石井委員】分かりました。ありがとうございました。
 もう一つ、国際問題を取り扱う弁護士さんが非常に不足しているというのは御存じのとおりですが、先ほどのレポートを拝見しても、それに対してどうやって短期間に積極的に増やすかということについて、今一つ説明不足という感じがいたします。勿論、ロースクールができたら、そこで養成すればよいという考えは分かるのですが、もう少し短い時間で積極的に増やせないと、日本自体が海外からの圧力に抗し切れない状態になってしまうと思うのですが、その辺についてはどのようにして、短時間である程度の数を増やされるおつもりなのか伺いたいと思います。少なくともこういうことをやるとか、外国関係の問題を扱う弁護士さんは、何年までに、何人くらいにまでもっていこうとするとかいう目標をお立ていただいてやった方がいいのではないかという気がするのですが、いかがでございましょうか。

【日弁連(久保井会長)】貴重な御意見で、持ち帰りまして検討させていただきますが、今のところは、外国関係の渉外事務所の求人は大変なものでして、修習修了者が一つの事務所だけで1年間に10人とか、多いところは20人を一括採用するという形で、相当な規模で事務所に就職する若手の弁護士が増えておりますので、かなり急速にそういう能力を持った弁護士が増えつつあるとは思いますが、日弁連として、基本的な計画なり目標を立てて努力するということは今のところできておりません。しかし、例えば、大企業で管理職に登用する場合には、国際的な外国語の試験で600 点以上でなければ課長になれないとか、そういうことをやっているくらいですから、弁護士の外国語教育なり、外国法教育なり、ロースクールが3年も先になるんであれば、それまでに間に合うような形で考えなければいけないとは思っております。

【石井委員】どうもありがとうございました。

【佐藤会長】それでは、10分休憩しまして、20分に再開させていただきます。

(休 憩)

【佐藤会長】それでは、時間も来ましたので、再開させていただきます。久保井会長の御都合もおありだろうと思いますので、40分には質疑応答を打ち切らさせていただきたいと思います。久保井会長、申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。
 では、髙木委員、そして井上委員。

【髙木委員】3点お尋ねします。
 まず、公益性に基づく社会的責務の実践というところで、現在、努力義務的な感覚を行為義務に直していく、行為義務であることをお一人お一人が自分の責務と御認識なさるように変えていかれると書いておられます。少し失礼な表現になるかもしれませんが、法曹三者のあとの二者の方々の弁護士観、あるいは規制改革委員会等でのああいう弁護士の皆さんに対する評価、あるいは国民一般も含めまして、弁護士及び日弁連に対します社会の目は大変厳しいだろうと思います。そういう中で、裁判官の給源の多様化、多元化、あるいはロースクールでの実務研修の問題等々、日弁連としていろんな御主張をなさるんですが、そして今日もいろいろなお考えの表明がありましたけれども、多くの方々は本当にこれ日弁連の中で合意できるのかと疑問に思っておられるのではないかと思われます。
 もっと言いますと、裁判官になるというけれども、そんなたくさん出てこないよと、たかをくくられているのが今の実情じゃないかと思うんです。非常に抽象的な質問で申し訳ありませんが、そういう感じられ方、あるいは物の見られ方について、御感想のようなもので結構なんですが、コメントしていただけないかと思います。
 二つ目は、懲戒について、審査会のようなものをお考えになるというお話がございましたが、是正勧告について、検察審査会の議決についても拘束力をという議論が一方であるわけですから、例えば、懲戒審査会みたいなものをおつくりになったときに、その審査会の合議で得られました勧告については、当然拘束されて、再審査、再審理ということで受け止めていいんでしょうかということでございます。
 3点目は、最初に、最高裁に先ほどペーパーの説明を非常に簡単にやっていただきましたが、このペーパーを拝見しまして、このペーパーの2ページの上の方に、「中には当事者の準備の懈怠、戦術的な引き延ばし、あるいは意図的な逸脱行動によるものがあることも否定できない」、そして注1が書かれていまして「刑事弁護人が、公判審理の進行を阻止し」云々以下「不可能となったという例などがある」という、かなりのことが書いてあるわけですが、具体的にどういう例があってこういう記述になっておるのかについてお答えいただきたいと思います。それから、注2のところの証拠開示云々の問題、これは今日もし無理なら次回で結構ですから、この注1、注2に当たる具体例を資料で出していただけないか、お願いしておきます。今日口頭で何かありましたら説明いただければと思います。
 久保井さんに、今の最高裁のペーパーに絡んで、例えば、注1でこういうことを指摘されている、注2でこんなことが言われているわけですが、こういうふうなとらえ方をされる中で、刑事事件の弁護活動で懲戒処分をされたことがあるのかないのか。あればあった、あるいはこういうふうにコメントされることについて、どんなふうに受け止めておられるのか、お答えいただければと思います。
 以上です。

【日弁連(久保井会長)】第1点の御質問は、多岐にわたっていますが、例えば、弁護士任官を推進するとか、ロースクールについて、実務家教員を養成、派遣するとかということについて、本当に可能なんですかという御質問が中心かと思いますが、確かにこれまでは取り組みが十分でなかったし、また、裁判制度を、弁護士会が自ら支えていかなければならない、担っていかなければいかぬという自覚が足りなかったために、弁護士任官についても、最も優れた優秀な弁護士を説得して裁判所に行ってもらうという努力が十分できていなかった。ただ、希望者を募るというところから出発して、その中から適格者を選ぶということだったんですけれども、これからは優れた弁護士の中から、裁判官に最もふさわしい人を選んで、任官してもらうような体制をつくっていく。そもそもこれまでは年間司法試験の合格者が、つい数年前までは500 人ということで非常に少なかったですけれども、これをかなり大幅に増員することに踏み出しておりますので、基盤が大きくなりますし、それから事務所のボリュームが、昔は10人規模の事務所というのは少なかったんですが、今は非常に大型化して、共同化が進行しています。それから公設事務所も、最初は心配したんですけれども、急速に都市型の公設事務所も盛り上がってきておりますので、そういう公設事務所、あるいは共同事務所がたくさん出てくる中で、任官がしやすくなってくる。出ていってもまた帰ってこられますし、そこで訓練された優秀な弁護士が裁判所に行って、力を発揮していただくということもしやすくなります。そういう意味での基盤整備が非常に進んでいくと思います。
 そういうことを考えますと、弁護士会が組織的に取り組み、毎年、年次計画というものを立てて、そして適格者を養成し選考していく委員会をつくり、様々な支援体制を取るならば、十分に責任を持って送っていくことはできる。ロースクールの教官についても同じことが言えると思います。勿論、弁護士を事実上やめてしまって就任しなければいけないような場合については、裁判官になるのと同じように大変だと思いますけれども、例えば、ハワイとか外国のロースクールの専任の教授などを見ましても、ある程度弁護士業務をしながら専任教員ということになっているようですので、そうであるとすれば、最近の若手は非常にそういうことについては意欲を持っています。大学で後輩を教えるということについて。だから、ロースクールの教官の派遣も十分に成果を上げていくことは可能ではないかと思っています。
 そのほかの公益活動の義務化などについては、確かに努力義務を行為義務にするということについては、私としては、そういう方向を取らないと徹底しないと思っています。会則で決めるということになりますから、理事会等で異論も出ると思いますけれども、この辺のことは前向きに進めていかないと責任が果たせないんじゃないかと思っています。大きな時代の要請、社会の要請というのは会員には理解していただけるだろうと思っております。
 2番目の懲戒審査会について、これは検察審査会を手本にして考えておるわけです。その場合の拘束力について、検察審査会の場合でも、拘束力を付与する方向にいくとすれば、弁護士の懲戒審査会も同じように、勧告に対しては拘束力を持たせるべきではないかという、それはごもっともな意見だと思います。
 最初の段階はそこまで踏み切るのは困難だと思いますけれども、今の検察審査会のような形で制度化した上で効果が全く上がらないと言いますか、審査会が勧告しても聞かないようなケースが出てくるようであれば、その次の段階としては、おっしゃるようなことも検討していかなければいけないと思います。今のところはそこまで私の考えはいっていないんですけれども、そういうところでございます。
 それから、最後の最高裁判所のお出しになられましたペーパーの2ページにある注1、注2の事例については、多分注2はどんな事例があったのか、これは想像がつきませんで、抽象的な御心配ではないかと思いますが、注1につきましては、最高裁判所の平成7年の判例が基礎になった事例だろうと推察しております。滋賀県の大津で発生した案件と聞いておりますけれども、暴力団が実力で弁護士の出廷を阻止した。当初国選弁護人だったのが、私選弁護に変わったんですけれども、その私選弁護人も被告人が暴力をふるったり、威嚇をしたりするので、弁護人としての法廷活動が阻害されている。だから、弁護人が怠慢でやったという事案ではないのではないかと思います。
 したがって、このケースは詳しいことは分かりませんけれども、弁護士が怠慢でこういうことをしたとか、あるいは裁判所の審理を妨害する意図でこういうことをしたんであれば、確かに懲戒が検討されてしかるべきだと思いますけれども、この事案の場合は多分、弁護士としてはそういう意識はなかったけれども、被告人に阻害されたというケースではなかろうかと思っています。

【髙木委員】それは最高裁が何か答えてくださるということですね。

【日弁連(久保井会長)】刑事弁護の弁護活動の怠慢と言いますか、弁護活動の不適切な行為が理由で懲戒されたケースは、今、手元に用意しておりませんけれども、ございます。過去の例でもございます。
 ただ申し上げたいのは、一つだけ、大津の事件だとすれば、18年前のレアケースですからね。たった1件のレアケースで全体を論ずるということだけは勘弁していただきたいと思います。

【最高裁(小池審議官)】ここに例を挙げましたのは、具体的事例があったということよりも、むしろ議論する上で、抽象的にこういった例ならば、逸脱的な活動ということで議論の対象にすべきではないかと。確かに逸脱的な活動が何かというのは、裁判手続の中の活動の評価というのは難しゅうございますので、なかなか一概には決められない。ただ、注1の事例につきましては、御指摘がありますように、最高裁の平成7年3月27日の決定をベースにしたものでございます。
 今、会長御指摘のような事情があることは承知しておりますが、それはそれとして、仮にその中に出ている要素を抽出したとするならば、それは問題ではないかという例を挙げたということでございます。
 以上でございます。

【佐藤会長】よろしゅうございますか。井上委員も手を挙げておられるので、今のに関連して何か。

【髙木委員】例えば、最高裁の平成7年3月27日の決定、それを言うなら、では、そもそも暴力団による弁護士の出廷阻止みたいなケース、そういうことについてどう評価するのか。少なくともオフィシャルなペーパーでこういうものをつくられるときに、推論で決めつけた書き方をするのは問題じゃないですか。

【最高裁(小池審議官)】具体的事例そのものというよりも、もっと抽象性を持って、例として挙げたということなんです。

【髙木委員】上の方は「あることも否定できない」で、下の方は「ある」と書いてある。そういう意味では、こういうもののお出しになり方、おかしいと思います。
 こういうふうに言われていることについて、日弁連としてどういうふうにお感じなのかということを答えてください。

【日弁連(久保井会長)】このケースは、私は弁護人の自由意思でこうなったんではないから、これをもって御指摘になることについてはどうかと思います。ただ、ずっと古い、十何年も前の1件だけで、レアケースで、通常こういうことがときどきあるようなことでおっしゃるんであれば、それは事実と違うと思います。

【髙木委員】これは普通に読んだらそういうふうに読めますね。

【日弁連(久保井会長)】ええ。こういうことはありませんからね。18年前に1回こういうことがあっただけです。

【髙木委員】それとさっきの検察審査会の案件で、その前の懲戒について、これは水原さんも、司法参加でも市民をたくさん入れろと言っているのに、懲戒の方で、先ほど消費者代表を1人か何か入れられるという話があったけれども、少なくとも裁判に対する国民の参加でも、広く一般の国民がという議論を今しておる最中で、そのこととの兼ね合いも含めて、懲戒委員会、綱紀委員会、どういう仕組み方があるのか私もよく分かりませんけれども、少なくともかなりの比率でそういう人たちが、審査会だけではなくて、懲戒委員会の方にも入らなければならないと思います。それは裁判でさえそうしようというときに、水原さんもその辺ちょっと指摘されましたが、是非そうしていただきたいと思います。これは意見です。

【佐藤会長】では、よろしいでしょうか。時間の関係もあり簡単にお願いします。

【井上委員】たくさんあったのですけれども、1点だけに絞ってお尋ねします。
 隣接職種との関係なのですけれども、52ページ以下で説明なさっていて、読ませていただいたのですが、御趣旨としては、国民に対する法的サービスの拡充という意味では、長期的には弁護士さんの人口増で対応すべきである。しかし、短期的にはそれでは追い付かないので、三つの職種については一定範囲で、一定の権限を与えるべきだということだと思うのですが、そこに「過渡的な措置」と書かれている、その「過渡期」なるものが過ぎた場合にはどうなるのでしょうか。この権限付与というのは一時的なものかどうなのということですが。
 もう一つは、仮にそう考えるとして、そんなことが可能なのか、また、可能だとしてその目安ですね。どのくらいになれば十分で、どれくらいの期間経てばこういう措置が解消されるとお考えなのかです。
 最初のお答えが恒久的なものだということでしたら、後ろの質問は意味がないのですけれども。

【日弁連(久保井会長)】一旦こういう権限を与えて、10年とか20年先にその権限を失わせるという意味ではないんです。そうではなくて、一旦権限を与えられたら、それは当然恒久的なものです。ただ、弁護士の数が十分に増員されて足りてきた場合は、弁護士が自らそれを背負って立つことになるということで、そうなると、それぞれ関連業種の方は本来の代理業務を職業として専念していただく時期が来ると。それが10年先になりますか、20年先になりますか分かりませんけれども、そこはまた検討していただく。

【井上委員】権限をなくすというわけではなくて、弁護士さんが増えていけば、おのずとそうなっていくだろうということですか。

【日弁連(久保井会長)】そういうこともありますし、場合によったら、ある時期からそれ以降の合格者には、本来の業務に限って与えるような時期がくるということも考えなければいけないと思いますけれども、そこはまだ詰めておりません。

【佐藤会長】40分になっていますので、簡単にお願いします。

【藤田委員】申し訳ありません。弁護士任官について、いろいろお話になりまして、今まで努力が足りなかったとおっしゃったんですが、私は地方にいて見ておりまして、日弁連も努力されたでしょうし、単位弁護士会でも相当の努力をしておられたと思うんです。適任と思われる方を勧誘したり説得したりということもありますが、それにしてもこういう状況だということは、構造的な原因があるんだろうと思います。この点については、「弁護士のあり方について」の9ページ以下に、裁判官への転身を躊躇させる事由が余りにも多いと指摘されておりますが、この中で第1の任用過程、人事制度が不透明とありますが、私も人事に関わっていたときには、弁護士から任官された方が、同期で最初から任官した人と較べて不公平な扱いを受けてはいけないということに神経を使っていましたし、それは私だけの個人的な考えではなくて、制度としての運用でもそういうことを考えていたと思います。ところで、任官する場合の一番重い負担は、転勤なんですけれども、弁護士任官した方については、優遇と言いますか、生活の本拠からそう離れないで済むような手当もしている。それでもやはり任官数が少ないということは、努力していろんなことをお考えになっていることは分かりますけれども、なかなかそう簡単にはいかない問題ではなかろうかと思います。
 第2の指摘の依頼者などのいろんな事業基盤ができ上がっているのをなげうって任官しなければならないということです。これは非常に大きいことだと思うんですが、そのほかに待遇の問題もあるのではないか。第3で指摘しておられますが、裁判官となった場合の待遇を現状よりもより改善する必要があるとか、あるいは年金のことを指摘しておられますが、イギリスのバリスタ協会の会長も、任官の要因は社会的なステータスと待遇と恩給だと言っておりましたので、そこら辺についてどういうふうにお考えなのかということを伺いたいのです。
 特に地方での任官ということが非常に難しい。これは判事補制度を廃止することができるかどうかということとも絡むんですが、私の感ずるところでは、地方では非常に難しいのではないか。そうすると、極端な言い方かもしれませんけれども、東京圏、大阪圏と6高裁所在地を中心にしたサーキット・コートの制度でも入れない限り、地方では弁護士任官は無理ではなかろうかという感じを持っているんですが、そこら辺を視野に入れていらっしゃるかどうかということがもう一つです。
 最後は、隣接法律専門職種の司法書士について、補佐人の限度にとどめるべきであるとおっしゃっていますが、これも私は、地方の独立簡裁などの状況を見ますと、やはり補佐人では十分でない。代理人として認めないと、病人とか高齢者などは、司法的なサービスを受けることが難しいんじゃないか。地方だけではなくて、大都会でも弁護士の関与率が非常に低いということを考えますと、補佐人の限度にとどめるということではなくて、一歩踏み込んで、訴訟代理権も認めるという考え方はどうであろうかということでございます。

【日弁連(久保井会長)】最初の御質問の弁護士任官に関するものですけれども、基本的には、例えば、大阪などではある時期かなり努力をしたと思いますけれども、やはり十分な努力ができていなかったんではないかと思います。十分な努力をすれば、もっと成果はあがってくると思いますし、しかし、御指摘のように、現在の待遇とか、いろんな意味での不公平な扱いという、あらゆる面での障害を除去していただくということは、非常に重要なことだと思いますが、私はやはり現在の判事補制度という基本的な供給源があるままでの弁護士任官というところに、おのずから限界はあると思うんです。ちょうど学校で言うと、ほかの学校から転校して入ってくる転校生みたいな形になりますから、もともと判事補からずっと上がってこられた裁判官が多数占めているところに入りにくいという。そういう意味では弁護士任官は構造的な限界というのはあると思います。
 しかし、そういうことを言っておったんでは、司法制度はよくならない。やはり当事者としての経験と痛みと実務経験をした者が裁判官になって、少しでもいい判決をする。そういうことがどうしても必要ですから、私どもとしては、中間報告が裁判官の給源の多元化、多様化をすべきだという御指摘をいただいているんで、その方向性に即した努力を、困難な状況の中でも、一方では今、先生がおっしゃったようないろんな条件を改善していただくということはお願いいたしますけれども、それが達成されない間は、弁護士任官には一生懸命取り組まないんだという姿勢では改善されないので、そういう改善をお願いする傍ら、弁護士任官を徹底して取り組んでいきたいと思います。
 東京、大阪、あるいは大都市以外は無理ではないかということについては、確かに今、司法試験の合格者が東京の有名大学、若しくは有名予備校の出身者に集中しているということがあって、合格したらその辺りで結婚相手が見つかったりして、地方に行きたがらないとか、いろんなことがあると思いますけれども、しかし、ロースクールが全国的にできる。北海道から九州までロースクールが全国的に適正配置をされる時代になれば、そういう偏在問題についても大きな解決の原動力になっていくんじゃないか。
 したがって、大きな観点からすれば、将来はそういうことを克服することは十分可能ではないかと思います。それからまた、地方の弁護士は地域における「権利の護り手」として非常に地域社会から尊敬されています。ところが、大阪、東京におりますと、何百人、何千人の一人ですから、そういう実感がもてないということもあって、一旦は大都市に集中しても、大きく見れば、トインビーではありませんけれども、回帰現象も生ずると思いますので、長期的に努力をしていけば、そういう都市集中を突破することはできるんじゃないかという感じがいたします。
 第2の司法書士の補佐人のことですけれども、現在、司法書士の方が依頼者の要請で書類を作成される。そしてまた、裁判の当日は、場合によっては裁判所に付いていって、傍聴席で事実上指導する。裁判官から釈明を求められた場合は、傍聴席におる司法書士に少し相談してから答えるとか、あるいは次の期日までに指示された書類を用意するというようなことを、司法書士が事実上法廷に付いていってやっておられるような実情はある程度あります。そういうものを堂々と当事者席に本人と一緒に座って、訴訟行為ができるようにすると。今やっている事実上の訴訟の支援行為を正式な訴訟行為にするということが、実態としては、その限度で十分だし、それをすることで足りるのではないか。
 と言いますのは、今、簡裁の訴訟物は90万ということになっております。しかし、東京、大阪では90万と言うと、金銭債権だと大したことないということになるかも分かりませんけれども、地方の都市に行けば、90万というと、不動産訴訟でも家1軒の事件などが簡易裁判所で争われるということが多いし、また、難しい事件があります。だから、国民の本当の意味での権利を擁護する、あるいは紛争を適正に解決する職業としては、弁護士も、自ら数が足りないなら数を増やし、偏在しているなら偏在問題を解消する。そういう形の中で解決していくということをするのが本筋で、安易な方法に行くということは、究極的には紛争の適正な解決にならないのではないかと私は思っております。そこはやはり代理権の付与については、私としては、決して弁護士のギルド的な見地ではなくて、弁護士は、数を増やして、そして偏在問題を解消して、自ら解決すると申し上げているわけですから、そこはひとつ信用していただきたい。
 病人とか高齢者については、補佐人では本人と一緒に行かなければいけないから不便ではないかという点につきましては、弁護士会でもそのことに対応するために、各弁護士会に少額事件処理センターなどを最近つくりまして、御連絡いただいたら、それなりの十分ニーズに応えられるような体制を今組みつつありますので、御不便をお掛けすることのないような体制ができると思いますので、これは実績を見ていただきたいと思います。

【佐藤会長】久保井会長には一応3時ごろまでということでお願いして、ここまで引っ張っているものですから、御不満でしょうけれども、御理解いただけませんか。

【水原委員】相方向性の問題として、結論だけ伺おうと思いましたけれども。

【佐藤会長】では、簡潔に。

【水原委員】懲戒処分内容を不服とする懲戒請求者に対する司法審査請求ですが、これは今では何人も懲戒請求することができると規定されておりますので、濫訴の問題も起きる。ただ、こういうことは考えられないかということだけ伺いたいんです。
 現に当該弁護士の活動によって被害を被ったなどの利害関係者が懲戒申立をしたときに、裁判所に対する不服の申立をするような法律措置を講ずるようなことをお考えはできないだろうか。それだけです。

【日弁連(久保井会長)】それは先ほど申しましたように、検察審査会を手本にした懲戒審査会を設けまして、そこで一定の経過を見ていただきまして、どうしてもそれが機能しないということであれば、そういうことも考える余地はあるかも分かりませんけれども、しかし、これは弁護士の生命線に関わることですので、そこはちょっと。

【水原委員】だけれども、日弁連さんは、陪審制を主張して、それで検察審査会の議決に拘束力を与えろということを主張しているわけですね。国民に最終的な判断を委ねることに躊躇するというのは、日弁連さんが最終的に国民の判断に拘束力を認めないというのを躊躇されるのは、どうもおっしゃっていることがよく分からないんですが、その点については、やはり国民の意見を最大限に尊重するという、勇気ある決断をなさるべきじゃないんでしょうか。

【日弁連(久保井会長)】ただ、裁判官会議の中に一般市民を入れろという意見はないでしょう。事件の審理を素人と専門家が共同でやるという提案が参審であり陪審でしょう。弁護士の場合でも、個々の事件の処理は依頼者と弁護士とが共同で処理しているわけです。
 だから、陪審制なり参審制の主張と、綱紀・懲戒委員会の中に市民を入れるというのとはちょっと次元が違う問題ですね。それであれば、弾劾裁判とかが裁判官の場合ありますから、そういうものを弁護士会の場合でも考えるというならば分かりますけれども、ちょっと飛躍があるんじゃないでしょうか。

【佐藤会長】久保井会長、長時間にわたってどうもありがとうございました。

(久保井日弁連会長退室)

【佐藤会長】それでは、ただいまの質疑応答も踏まえまして、それから事務局で用意していただきました追加資料も参考にしながら、我々の意見交換に入りたいと思います。
 前回の審議会の際にもお話ししましたように、意見交換は、お手元にお配りしてありますヒアリング項目の中から、具体的な方向性を出さなければならないと思われます弁護士の公益性・活動領域の拡大、それから弁護士倫理の強化と弁護士自治、隣接法律専門職種・弁護士法72条などに関連する諸問題、これを中心に行いたいと考えております。
 この弁護士の在り方につきましては、本日だけではなくて、次々回、2月2日ですけれども、そこでも意見交換を行うことにしております。本日は、今お話ししました項目の中から、まず弁護士の公益性・活動領域の拡大、それから弁護士倫理の強化と弁護士自治の二つの項目について御議論いただきたい。中間報告では人的基盤の拡充の中の(2)、弁護士制度の改革、23ページ以下ですけれども、そこに記載している部分を中心に意見交換を行いたいと思っておりましたが、質疑応答で大分時間が食い込んできましたので、まず最初の弁護士の公益性・活動領域の拡大について意見交換を行い、時間的に少し余裕があれば、弁護士倫理の強化の方に入りたいと思っております。
 弁護士の公益性・活動領域の拡大についてですけれども、中間報告においては、弁護士の公益性に基づく社会的責務の具体的内容について、その一層の明確化を図る、それとともに、実践を促進、担保するための具体的な方策を検討すべきであり、活動領域の拡大を進める見地から、弁護士法30条の兼職等の制限を自由化する方向で見直すべきである、としているところであります。
 このように既に方向性は出ているところですけれども、更にそれを一層具体化するための方策等について、意見交換を進めていただければと思っております。
 勿論、これらの問題について意見交換をしていただく際に、適宜関連する他の問題についても御発言いただいて結構ですけれども、まず弁護士の公益性・活動領域の拡大の問題を中心に御意見をちょうだいできればと思っております。
 そういうことでございますので、まずこの点について御発言いただきたいと思います。
 既にさっきの質疑の中で、弁護士法30条の改正の問題についていろいろ御発言がございました。1項、3項の問題の辺り、いかがでしょうか。
 なお、裁判官への任官の問題については、場合によっては、裁判官制度の改革の中で集中的に議論してもいいかと思っております。

【竹下会長代理】弁護士の公益性というか、あるいは社会的責任と申してもよろしいのかもしれませんが、そのことと、従来、弁護士の本来の職務と考えられてきた専門家としての職業倫理を保ちながら、社会の求める高い質の法律サービスの提供に努める、あるいは、基本的人権の擁護と社会的正義の維持と言ってもよろしいのかもしれませんが、それとの関係はどういうふうに考えたらよろしいのでしょうか。私は、やはり弁護士の公益性という場合に、いわゆるプロボノ活動に代表されるようなものばかりではなくて、本来の弁護士の社会的な責務というものが、現在も弁護士法1条に示されているような基本的人権の擁護、あるいは社会正義の実現という、プロフェッショナルとしての活動の中にあるのではないかと考えているのですが、そういう点についてはいかがでしょうか。

【中坊委員】今、竹下さんのおっしゃるとおりでして、私たちは、頼もしい権利の守り手と同時に、信頼できる社会の担い手と、この二つが重層的に重なりあっているという部分で、一方においては本当に依頼者の権利を守るということと、そのことは即、今おっしゃるように、社会正義の担い手である。だから、権利を守るからうそを教えてよろしいのか、いいかげんなことを教えてよいという意味では決してないんで、それが一方において信頼できる社会の担い手という側面を持っていないといけないということですね。
 おっしゃるように、最近は、片一方の頼もしい権利の守り手という中に、必然的に費用と労力とがうまく合わないという事件が、非常に数多く見られきているわけです。いわゆる社会的弱者の事件などは比較的そういうのが多い。そうすると、そこで頼もしい権利の守り手であるべきなんですけれども、どうしてもそのときになってくると、やや頼もしい、対価がないからやらないんじゃないかということが言われるから、今言うように頼もしい信頼できる正義の担い手として、そういうことはそちらの側面から、あんたやらなきゃいかぬやないかと言うてくるだけのことであって、本来は竹下さんのおっしゃっているとおり、二つは表裏一体となった弁護士の仕事の本質であろうということについては、これは昔も今も変わらないというふうに思います。

【佐藤会長】今の点は、私もいつでしたか、人権と言わなくても、私的な権利の適正な実現、守るということも、いい公共性の空間をつくる上で非常に大事なんだということを申し上げたことがありますけれども、それは決してその個人の私的な権利に尽きないんですね。ですから、公益性の根幹というものは、やはりそういうところにあるのであって、更に加えて今おっしゃったような、プロボノ活動と公務への就任とか、後継者の養成とか、司法教育とか、そういうものがいろいろ出てくるのではないか。そういうように公益性というものを理解するということでどうでしょうか。

【中坊委員】そういうことでいいと思います。だから、竹下会長代理がおっしゃっているとおりだと思います。

【佐藤会長】公益性というものの意味、あるいはそれに基づく社会的責務の実践ということは、今のようなことであるとして、弁護士活動の領域拡大のところで、さっきの質疑で出ていましたけれども、弁護士法30条の1項、3項の問題辺りはいかがでしょうか。

【山本委員】自由化すべきだということについては、日弁連さんも異論はないわけですね。方法論として、届出制なるものは一体何を考えておられるのか。弁護士会もチェックして、これは受理しないとか、そういった話になってくると、ちょっと議論すべき余地があるんじゃないかという気がするんです。

【佐藤会長】届出制でも許可制に近いような運用の仕方をされると、いかがなものかということですね。

【水原委員】今の問題は、1項については、届出制にすべきだというふうに日弁連さんはおっしゃっているんですが、3項につきましては、これからまだ検討しなければならないということなんです。もし、どうしても許可制を維持する必要があるんだとするならば、例えば、風俗の会社の役員に就くとか、そういうことは好ましくないと言うんならば、せめて許可・不許可の基準を明確にする。それは不可欠ではないか。こういうことはいけませんよという程度のことまでは、どうしてもきちっと踏み込むべきではないかと思っております。

【中坊委員】私も今の水原さんがおっしゃっているとおりであって、弁護士会というのは既に、私は大阪弁護士会ですけれども、各大きな弁護士会というのは許可基準というものをつくっていまして、こういう場合は許可する、こういう場合は許可しないということをやっておりますし、また、許可をしても、一定の権限で見直さないといけないところもあるわけです。だから、一定の期間が経てば見直すとか、そういう規定を弁護士会がすべて設けているんで、今のところは弁護士会の任意であるでしょうけれども、我々の意見としては、今、水原さんのおっしゃるような意見を入れて、全国の弁護士会が全部そうしなさいということは、場合によれば必要なことではないか。
 同時に、先ほど久保井会長も申し上げましたように、届出制でよいと、どんな仕事でも弁護士が関与できるということには、やはり私自身も自分の過去の経験、私自身は自分で商売しているでしょう。私は弁護士会の営業許可をもらって企業として旅館をやっていますからね。私自身が大阪弁護士会の営業許可をもらって、自分が取締役として旅館を経営しているわけです。そして、実際そういうものとして、会社の経営というものと、代理人という仕事が、本質的になじむものかどうかということについて、確かに大変問題がある。
 どこが一番危ないかと言いますと、これは企業は全部賭という要素があるんです。どんなことをしても企業はすべてに賭がある。将来、これをやったら、ここを投資すれば必ず儲かるという、そんな商売はありませんからね。別の言い方をすれば、借金をこわがっていては、商売というのは本質的にできないんです。ところが、それは非常に弁護士の仕事を危うくします。
 正直言って、親父が死んで旅館の経営のために1回借金しました。しかし、その後は借金は怖くて、2度と企業については1円の借金もしたことはない。
 というのは、お金の借り方が違うんです。弁護士として事務所をつくるためにお金を借りるというのと、企業は将来の投資でしょう、規模が全然違うんです。何十倍も投資をしないといけませんからね。その借金を弁護士がするということには、私自身は1回やりましたよ。自分でやってみて、これは危ないことだと思いました。
 だから、私は自分が実際営業をやってみて、これは非常に難しいことだと。
 だから、本当に頼もしい権利の守り手という仕事と、賭とは本質に合わないんです。そこは先ほど久保井会長がいみじくも業種によって違うと言わはった以外に、そもそも営業というものと頼もしい権利の守り手、あるいは信頼できる社会の担い手というのは、本質的に合うんだろうかという問題がありますよ。だから、私は単純な届出制にしてしまうと、そこがコントロールがきかなくなる。

【水原委員】中坊委員のおっしゃるように、私は営業をやっていないものですから、分かりません。そのとおりかと思います。教えていただきたいんですが、多くの借入れをしておると、その返済のために弁護活動がおろそかになる、あるいは、弁護士報酬を不当に高く取るという危険があるから駄目なんだということなんですか。

【中坊委員】違います。今おっしゃるように、私は弁護士という仕事も、恒産なければ恒心なしという、依頼者の言うどんなむちゃなことに対しては先ほど言うように、信頼できる正義の担い手であれば、依頼者がこうしてほしいと言っても、それは君、駄目だよと言えなきゃ、実は弁護士というのはつとまらないんです。ところが、お金をもらうということだけに関与しますと、そこがいいかげんになりかねない。
 そういう意味では、一方で、そういう商売から追われてきておったりしたら、そのときの誘惑に勝てない。だから、弁護士というのは、基本的に頼もしい権利の守り手であると同時に、信頼できる正義の担い手でなければいけない。だから、正しいことを依頼者に教えないといけない。教えるというのはそれほど簡単じゃないんです。依頼者はうそをついても、ちょっとおかしいことをしても、自分の利益を守ってくれというのは言うものです。そのときに、そういう依頼者は断らなければいけない。ところが、ノーとはなかなか、自分の生活が関係してくると断り切れない。
 だから、本当の意味の社会的弱者ならよろしいよ。そうじゃなしに、ちょっとおかしいというか、そういう不正義な目的というものを達成することを依頼者が弁護士に頼んでくるという要請は多々あって、それを排除しなければ弁護士の倫理は守れないわけです。
 そうすると、片一方において、今言うように、ただでさえも弁護士自身がそういう誘惑を受けておるところへ持ってきて、いわんやそういう商売をしていたために、そういう危険にさらされてくるということは、もう一つ危ないわけです。
 だから、弁護士というのは、恒産なければ恒心なし。そういうような不正義な依頼の目的には応じてはならない。これが原則なんです。それを守るのは言うほど易いものではない。

【山本委員】後輩が道を誤らないようにお考えになる気持ちはよく分かるんです。ただ、今回の司法制度改革を我々は何のためにやるかというのは、何遍も聞いているんですけれども、事前規制型から事後チェック社会に変えて、自己責任を持った個人が生き生きとした経済社会活動をやる、そのための司法制度改革審議会だということでスタートしたわけですね。
 今議論している弁護士さんというのは、今度ロースクールをつくり、いろんなお金を掛けながら法の支配の中でエリート中のエリートをつくろうというわけです。その先生方ですら、実社会の中で危ないと、無菌状態でないと危ないということになると、一般国民はとうなるんだと、そういう逆説的な話になりませんか。

【中坊委員】弁護士のところに来るのはトラブルが来るものです。トラブルというもの自体が、社会の一種の病気ですから、そういう菌を基本的に持ちやすいものなんです。健康じゃないことが非常に多いんです。社会の中にいろいろ病気があって、それも大した病気でないものもあれば、いろんな病気があるのと同じように、トラブルというのは社会の病気みたいなものですから、それと接する弁護士というのは、相当程度そこにおけるけじめがきちっとつかないと、信頼できる正義の担い手にはなかなか難しいと私は思っています。

【佐藤会長】そうした問題があるとして、許可基準はどの程度明確にできますか。

【中坊委員】例えば、高利貸しとか、それに非常に近い職業であるとか、あるいは今、久保井会長がいみじくも言いましたように、非常にいかがわしい風俗営業とか、そういうものは原則として駄目だということを、今、大阪弁護士会も決めていますし、よその弁護士会でも恐らくそういうものは業種的には困るんだということを決めています。
 だから、そういう意味では、業種的というか、内容的にその危険度の高いというものは、そういうことを職業に言っては悪いかもしれないけれども、やはりあるわけです。だから、そういう原則とか、あるいは会社が非常に過去のおかしな人の集団とか、例えば、暴力団がやっている会社であるとか、そういうものはやはり弁護士にとっては非常に危険なことでありますから、そういう職業の種類によって違うし、人によって違うし、そういう意味での制限は、場合によっては私は必要ではないかと思う。
 だから、先ほど水原委員がおっしゃったように、まさに許可基準というものをはっきりさせて、しかし、今までみたいに原則禁止だということまで言う必要はない。今おっしゃるように、社会活動の範囲を我々が広めていかなければいかぬわけだから、今おっしゃるように、中坊さん言うみたいに余り道徳的にばかり言って、どこを補足したらいいという意味ではないと思う。ただ、おっしゃるように、届け出て、自由にできるというにしては少し問題があるから、あとは運用をどういうふうにさせるかということをもう少し決めておく必要がある。
 しかし、今の弁護士会は、原則として、したらいかぬということが前提になっていますから、そのことから思えば、大幅に活動領域を拡大するという意味からは、範囲を拡大しなければいけないけれども、おのずからそこには一つの限界もあるという意味ではないかと私は思うんです。

【竹下会長代理】そうすると、基本的にはどういうことになるのでしょうか。やはり弁護士会が一種の事前規制をするということになるわけですね。

【中坊委員】そうですね。だから、今言ったように、届出制度というのは行き過ぎではないかと思います。

【佐藤会長】届出制にしてガイドラインをつくるという考え方では。

【中坊委員】届出制にしてガイドラインをつくるのか、あるいは許可制にしてガイドラインをつくるのか、それはもう少しお考えいただいた方がいいけれども、とにかく、自由にだれでもできるという無制限にするということには、私は問題点があると思う。かなりあります。

【鳥居委員】久保井さんがおられたらよかったんですけれども、要するに、30条第3項で考えるのと別の角度から、顧問弁護士ということで考えると、顧問弁護士はどんな風俗営業にも顧問弁護を引き受ける人はいるし、カルト集団にも顧問弁護士は付きますね。これは制限できないですね。そっちが制限できないのと、これとの整合性をどういうふうに考えているのか。

【中坊委員】それは違うんです。企業を主体として経営するというのと、代理人というのとが違うんです。顧問といえども飽くまで代理人です。弁護士なんです。それによる効果が直接本人の、自分に帰属しないわけです。だから、そこに差があるんです。顧問弁護士というのは代理人ですから、その何らかの行為の利害が直接そこに帰属しない。それが自分が企業の主体となっては、自分に結果が帰属するから、さっきから言っているように、賭になってくるわけです。
 今、例えば、弁護士が何ぼ顧問であっても、そこの会社の顧問弁護士だから個人保証してくださいということには、まずほとんどならないです。ところが、自分は会社の経営者ですと言えば、当然のように、法人を保証してくださいと銀行は要求してきます。だから、私も保証しました。だから、そこがこわい。

【佐藤会長】30条の1項は届出制。基本的な考え方として、30条は自由化すべきであるということで、1項については届出制にしようということですね。3項についてはどうしましょう。

【水原委員】規制緩和の時代に、しかも自由であるべき、自立している弁護士さんが、一々こういうことについて制約を受けなければいけないんだろうか、今の時代から考えると。だから、これも自由にして、しかしながらガイドラインをつくるということにして、あとは倫理に反するようなものがあったならば、それは別途措置を講ずるということがよろしいのではないでしょうか。

【中坊委員】水原さんそうおっしゃるけれども、私はガイドラインというものがあるということは、届出制であったら別にガイドラインというのは意味がないわけです。みんな届だけしたらいいんだから。許可があるからガイドラインというのが論理的に生まれてくるので、今言われるように、何でも届出制といったら、まさに届出制だから、届出制にガイドラインというのはないと思うんです。

【佐藤会長】理論的にはあり得ると思いますけれども。

【中坊委員】そうですか、どこにありますか。

【佐藤会長】それは許可するかしないかの基準ではないんです。自由でいいけれども、こういう点は注意してやってくれと。もしそれに触れれば、綱紀や懲戒の方に掛かっていくかもしれません。

【藤田委員】弁護士倫理のガイドラインでしょう。

【佐藤会長】そうです。そういうことです。

【中坊委員】余り弁護士が言い過ぎてもいかぬかもしれませんから、そこは余り議論しません。しかし、今言っている危険性、問題点があるということを心得て、自由に届出制にしたらよいものとは違うということは、ひとつ審議会としても言って、あと、弁護士会がどうされるのか、あるいは弁護士法でそこをどう直すのかということは考えてほしいと思いますね。

【佐藤会長】今の点については、今日の段階では、このようなまとめ方でよろしいですか。

【山本委員】弁護士さんが増えてくるといろいろな職業に就かなければならないから、これからあちこちにあるでしょうから。

【佐藤会長】では、弁護士の公益性・活動領域の拡大の問題は、今のようなまとめ方で。今日はきちっとまとめるつもりはありません。2月2日の全体のまとめでまたお諮りしたいと思っていますので、今日はラフなまとめ方だというように御理解ください。
 そこで、次に弁護士倫理の強化と弁護士自治の方について少しでも入れればと思います。
 この点については、中間報告では、弁護士倫理に関する教育、弁護士に関する苦情の処理、綱紀・懲戒に関する諸手続など、弁護士の職務の質に関する指導監督その他の事務にかかる弁護士会の自律的権能が実効的かつ厳正に行使されなければならず、弁護士会の諸権能を自律的に行使する上で、手続の透明化、国民に対する説明責任の実行、それらの運営・運用への国民参加など国民の意思を反映させ、国民の信頼に応える必要があるということで、弁護士会による弁護士に対する指導監督を強化するために必要な具体的な措置、弁護士会運営への国民の参加など説明責任を果たすべき具体的方策、弁護士会による法曹養成における主要な貢献を行う責務--これは法曹養成の方で御議論いただければと思っております--それから、倫理教育の実効性を確保する方策、弁護士の苦情処理を適正化するための具体的方策、更に、綱紀・懲戒手続の一層の透明化、迅速化、実効化のために、国民参加の拡充など、これら制度及び運用の見直しをそれぞれ検討するというようにうたっているところであります。こういう方向性を踏まえて、更に一層具体化するための方策等について御意見を交換していただければというように思っているわけであります。
 勿論、先ほどと同様に、他の関連する問題についても、御発言いただくことは当然ですけれども、できるだけ弁護士倫理の強化と弁護士自治の問題を中心に御発言いただければというように思います。
 時間も余りなく、途中になるかもしれませんが。

【竹下会長代理】先ほど大分、綱紀委員会、それから懲戒委員会の在り方、構成について発言がありましたが、あれは質疑という形でしたけれども、御自分の御意見ということですか。

【水原委員】先ほど髙木委員も発言されましたけれども、やはり、今の弁護士、あるいは弁護士会に対して、国民がどれぐらいの信頼を置いておるんだろうか。その辺り、法曹三者の中の二者は違った見方をしているということを髙木委員はおっしゃったが、決してそうではございませんで、すばらしい弁護士さんはたくさんいらっしゃいます。だけれども、先ほど規制改革委員会の統計によりましても、問題の弁護士さんもいらっしゃるわけで、ここで国民に一番近い司法の担い手である弁護士につきましては、この際、目いっぱい思い切った倫理の確立といいましょうか、そういうものをやってもらわなければいけないというのが基本的な考え方でございます。自治の問題、自主性の問題もございますけれども、何よりも国民に一番近い司法の一翼を担っている弁護士につきましては、本当に大改革といいましょうか、目いっぱいの改革をやっていただくのが基本的な姿勢でなければいけないと思っています。

【佐藤会長】具体的にどんなことでしょうか。

【水原委員】先ほど来申しましたように、もし問題が起きたときのことだとかということにつきましては、やはり綱紀委員会、懲戒委員会の構成の問題もございますし、それに構成の問題は、先ほども私が発言しましたが、過半数は国民の声が反映されるような、そこまで思い切った積極的な構成を考えるべきであろうし、それは弁護士以外のものということで、裁判官、検察官、学識経験者、その他、それを含めてそれが過半数になるような構成を考えるべきでありましょう。
 それから、審議期間と言いましょうか、それにつきましても、2,100 日とかというようなことについては大変問題がある。これは月に1、2回しか開かれないのが現状だと規制改革推進委員会は記述しております。これが現実だとするならば、もう少しできるようにするにはどうしたらいいだろうかと、期日をせばめて集中的に審議するようにするにはどうしたらいいだろうか。これは日弁連の御意見の中にも今までは全くのボランティアだったので、期日はなかなか入らなかった。これを有償にすることも一つの方策であろうという御意見を述べていらっしゃいますけれども、それも検討しなければいけないと思う。
 それから、先ほども申しましたような評決について不服の申立の制度、これは先ほど会長もおっしゃいましたけれども、検察審査会的なことを考えることも一つの方策でございましょう。しかし、それにつきましても、やはり構成メンバーを透明にして、公正で、そして迅速に処理できるようなものをつくって、その議決につきましては、拘束力を与えるような制度に構築することが大事ではなかろうか。思いつくまま数点申し上げました。

【中坊委員】先ほど久保井会長が申し上げていましたように、調査嘱託員という制度があって、調査する権限がないと資料が集まってこないわけですから、そういうものも要ると思いますし、今、弁護士会が、先ほど久保井会長がいろいろ提案、今の水原さんとおおむね一致しているわけだろうと思うので、やはりそういう方向は私も必要だと思いますね。
 だから、基本的にそういう方向で考えるということは非常に必要なことだと思う。特に審理期間が長いということはおっしゃるとおりですし、また、それがあいまいになっているということも、弁護士会としては相当反省しないといけないと思いますし、そういう意味では、裁判の迅速と同じように、こちらの懲戒手続も迅速でないといかぬわけですから、その意味では、今の弁護士会の在り方は確かに問題があると私自身思うんです。

【竹下会長代理】懲戒委員会、綱紀委員会の構成の点ですけれども、綱紀委員会の方も評決権のある第三者の参加が必要だ、それから、裁判官、検察官、学識経験者のほかにも一般国民の代表もメンバーを加えるべきだというところまでは大体御意見が一致していると思いますが、先ほど久保井会長のプレゼンテーションでは、弁護士である委員が過半数を占めることが適当と言っておられるので、この点が水原委員と御意見が対立しているところだと思うのですけれども、この点はどうでしょうか。

【佐藤会長】その辺はいかがですか。

【中坊委員】非常に難しいところですね。確かに、久保井会長の言っておりますのもそのとおりです。やはり一般の市民の方には弁護士という職業がそれなりに内部でしっかりやっているということが御理解いただけていないというところがあったりして、そういう意見が出てきているのではないかという気はいたします。けれども、それが絶対的要件なのか、本当に国民から信頼されるのには、それで自分の方は過半数でいいのかということは、私個人としてはやはり問題だなと思います。
 だから、自分の方が過半数でないといけないというのは、私はちょっと問題ではないかと、私個人としてはそれはちょっと問題だなと思います。確かに弁護士会はそうおっしゃっていましたけれども。私は、それはそう言われる気持ちはよく分かります。分かりますけれども、それが本当に国民的基盤と、司法を国民的基盤の上に立てようと言っているときに、そのところまで来たら私のところはというのが、その大きな原則からすると、少し通らない理屈ではないかという気がしますけれども。

【山本委員】そういった弁護士会の内部の細かい制度についてまで、この審議会で何かその構想を出すわけではないんじゃないですか。

【佐藤会長】過半数とかそういう問題ですけれども、審議会としてのまとめ方としてどうでしょうか。

【山本委員】それもそれぞれ弁護士会のまさしく自立的な判断でおやりになられて、それがオープンになっていればいいんじゃないですか。

【佐藤会長】しかし、この弁護士倫理の問題は弁護士改革として相当重要な問題だと思いますが。

【藤田委員】前にも申し上げたんですが、私は弁護士会の綱紀委員会の参与員と懲戒委員会の委員を何年間かやりましたけれども、私が関与した限りにおいては非常に厳正にやっていらっしゃる。
 それで、年末の懇親会のときに随分厳正にやられますなと言ったら、いや、あなた方がいますからねと言われました。それなりの存在意義があるのかなと思うんですが、弁護士さん自身から聞いた話では、地方で規模の小さい会になると、かばい合いみたいなものがないわけではないというようなこともありました。そういう意味で、委員会の中に一般国民の代表を入れる。現在は、学識経験者というと大抵大学教授の方ですけれども、それ以外の一般国民の方も入れた方がいいと思います。どういう構成、人数にするかという点については、山本委員のおっしゃったような問題もありますし、仮に懲戒手続に付さない、あるいは懲戒しないということになったときに、被害を受けたと主張している人に、司法審査というか不服の申立の機会を認めるかどうかということとも関係があると思います。ですから、もしそういうようなルートも認めるのであれば、委員会の構成自体は、それほど神経を使わずに、弁護士会の自治の方に任せてもいいのかなと思います。

【髙木委員】かなりレベルの高い自治を弁護士法で保障されているわけですね。自治が、国民からもそう問題なくあるレベルにきちっと担保されているという認識に立つのかそうでないのかによって、大分議論が違うんだろうと思います。
 それで、確かに日弁連のペーパー、あるいは先ほどの久保井さんの話は、外国を見てもそれはよその人間が入ってきて、ギルドの中のことは余り引っかき回さないよという御趣旨の話をされたんですが、自治の中の議論だけでこの問題を議論することではいかぬという意味で、私は今日審査会や何かの発想も、外の空気も吸った上でという発想かなと思って、あの話は聞かせていただいたんですが。

【佐藤会長】途中ですけれども、ペーパーで言われている懲戒審査会は市民代表により構成する組織ということでしょうか。

【髙木委員】その辺まではどうか分かりませんが、ともかく中だけではいかぬと、外の空気もたまには吸ってくださいということがなければ、自治は、完全に内部だけで自治機能を負うんだということにはならないだろうと、そんなふうに今日の議論は私聞かせていただいたんですが。

【中坊委員】ただ、もし弁護士会が自治、特にある程度弁護士会の過半数とおっしゃるのも、非常に権力との問題が非常に出てきたようなときに、まさにおっしゃったように、すべてが多数でよいのかという問題点は、やはり弁護士の本質の部分においてはあるわけなんです。だから、確かに、今、藤田さんのおっしゃったように、私も綱紀委員会に出ても懲戒委員会に出ても、弁護士会の方がむしろ厳しくて、一般の人の方がまだ緩いのではないかという感覚のときがあるぐらいで、そう今弁護士内部でやったから、確かになれ合いに近いということはない。しかし、同時に国民から信頼されるという意味では、そうなんだけれども、自治というものは何のために自治があるかということになってくると、今言うように、懲戒問題が出たときに権力との問題で、そこで非常に大きな問題があるわけです。
 だから、久保井さんが言うように、弁護士でないと分からないと言っている部分は、つとめてそこの権力に弁護士が対抗してやったときに懲戒問題が出て、それに対してそちら側が過半数でよいのかという問題が提示されているということだという気はするんです。
 懲戒審査会というのは市民でできて、その意見は一応尊重するというところまでは、私は弁護士会もそこら辺までは考えないと、国民的基盤のときに、いや、私らだけで決めますというわけには、もういかないと思いますね。

【髙木委員】中坊さんの言われたことに加えて、懲戒委員会の中にもできるだけ一般の人も入れてやってくださいというのが国民的基盤を強化するという視点から大切だと思います。

【中坊委員】だから、それが過半数にまで達しないといけないのかという問題については、私個人としては非常に、今の国民的基盤の確立ということだから、私もそれが結論としては、私個人としては賛成だけれども、久保井会長が何故そこでためらっておるのかという点については、今言ったことが権力との対峙という問題があるので、そこをどう我々は考えますかということも、ここで議論しておいていただくという必要はあると思うんです。

【竹下会長代理】この懲戒審査会と仮に呼ばれているものですが、これは先ほどの久保井会長のお話では、懲戒を請求した者が、結局、懲戒しないという判断になったときに、裁判所に懲戒の請求のための訴えを起こすのではなくて、この審査会で審査をさせるという構想ですね。

【佐藤会長】そういう審査だと思いますね。

【竹下会長代理】それで、私は、どうもその方がよろしいのではないかという感じがするのです。単位弁護士会で懲戒事由がないと判断され、日弁連に不服申立をして、それでも結局懲戒事由なしと言われた場合ですね。その場合に懲戒を請求をした者が訴えを起こすということを認めるのは、一種の行政訴訟になるわけですね。懲戒請求人に、そこまでの利害関係、訴えの利益があるのか。もし、その弁護士に対して損害賠償を請求したいのなら、これは損害賠償の請求でやればよいのであって、懲戒しろということまで、裁判所に訴えるよりは、こういう審査会でやった方がよいのではないかという気がします。

【佐藤会長】今日の会長のお話も、いきなり司法審査でというのではなく、自治的にやってみてそれがうまくいかなければ、究極的にはそういう可能性も考えられるけれども、まずはこれでやりたいという趣旨なんでしょうね。

【中坊委員】だから、そういう意味においても、やはり弁護士以外の者が過半数を占める審査会でやるのがよいわけですね。

【佐藤会長】懲戒審査会の個所を読むと、全員が市民代表で構成されるというように読めるんですけれども。

【中坊委員】私もそういうふうに聞いていますよ。むしろ今の綱紀委員会とか、その委員会のそれが過半数かどうかというのが問題点ですということを言っているので。

【鳥居委員】今の件なんですけれども、私は今日の司法制度改革審議会事務局の追加資料の19ページに出ているこの絵ですが、これを見ながら先生方の話を伺っていたんですが、これとどういう関係にあるんでしょうか。この右上に懲戒委員会がありますね。それから綱紀委員会もありますね。

【竹下会長代理】19ページの左のフローチャートで見ていただくと、綱紀委員会で懲戒不相当の議決をする。綱紀委員会から懲戒不相当の議決があると、右下の異議の申請というところへ行きます。

【鳥居委員】これは現状ですか。

【竹下会長代理】これは現状です。それから、あるいは懲戒委員会で懲戒せずという議決をした場合にやはり異議を述べる。そうすると、日本弁護士連合会で審査をするということになるのですが、結局、日本弁護士連合会として処分をしない、懲戒しないということになった場合にあとどうするかという問題です。

【中坊委員】だから、これは現状でしょうね。

【佐藤会長】そうですね。

【中坊委員】今、会長の言った懲戒審査会というようなものは、この中にはまだ入っていないんですね。

【鳥居委員】このほかにもう一つ。

【竹下会長代理】却下、棄却のところは東京高等裁判所に行けないことになっていますが、そこを東京高等裁判所に、その場合も行けるようにしろという意見と、そうではなくて、別に懲戒審査会のようなものをつくって、そちらで審査させるという構想の対立ですか。

【髙木委員】最高裁のペーパーは、そういうことではいかぬと書いている。双方向性をちゃんと書いてあるわけですね。

【北村委員】裁判所の方に行くというのをさっきおっしゃっていたんですが、そういうふうにしないでという、何で行ってはまずいんですか。

【竹下会長代理】何でしょうかね。懲戒請求人には、懲戒しろという権利があるわけではないと思うのですね。損害を受けたのならば、その弁護士に損害賠償を請求すればよい。

【北村委員】それでも収まりませんね。損害を受けたんだから、何とかしてくれという要求だってあり得ると思うんです。

【水原委員】今おっしゃるとおりでして、民事賠償の問題とは違って、この人は弁護士としては不適格ですよというときに、そういう申立ができる方法を残しておかなければいけないだろうということではございませんでしょうか。

【竹下会長代理】それはそうなのですが。

【水原委員】それからもう一つは、不利益処分を受けた弁護士さんは救済を受ける。ところが、実際に被害を受けたと主張する被害者又は深く関わっている関係者につきましては、裁判所に対するそういう申立ができないのは、お互いの関係からしたならば、つり合いが悪いのではないかということでございます。

【中坊委員】それは、今おっしゃるように被害を受けたという苦情を申し立てる中には裁判所が入っているわけです。ここで一番具体的な例は、裁判所が懲戒請求されるということです。それは多いわけです。そうすると、その裁判所にまた戻るんだということになれば、申立人が裁判したということになるでしょう。だから、今言うように国民に任すべきだということになってくるので、今おっしゃるのに、被害者という個人だけを想定されていると、懲戒しないという処分に対して不服だというのは、裁判所自体がそういうことをなさることは非常にあるわけですから、そこで同じ裁判所がまた判断するというのはおかしいではないかということから、今のような考え方が出ているんだと思いますよ。

【竹下会長代理】裁判所に不服の訴えを起こすことを認めるというと、弁護士会の内部の手続としては懲戒しないということになったのに不服を述べて、裁判所に懲戒することを求めるのを認めることになるのですね。もし、それを認めると、今の弁護士自治の懲戒制度の在り方と、不整合なところがあるのではないでしょうか。

【藤田委員】懲戒しないという決定を取り消すだけであって、裁判所自体が懲戒するというわけにちょっといきませんね。裁判所が請求するケースも今まで例がなかったわけではないけれども、私が数年間関与した経験では、ごく例外的で、一般の私人、特に依頼者からの請求というのがほとんどだと思います。
 それと、単位弁護士会で懲戒しないというときに、日弁連に審査請求するというケースは、パーセンテージとして高いんでしょうか、どうなんでしょうか。日弁連の方に教えていただきたいんですが。

【日弁連(水野弁護士)】具体的なパーセンテージは、特に資料はありませんが、かなりの件数が日弁連に上がってくるということは事実です。

【藤田委員】憎らしいんでやってやろうというケースも割合多いんですよ。綱紀委員会ですと、非常にいちゃもんのケースが多いんです。敗訴した場合に相手方の弁護士をやるとか、場合によっては自分の方の代理人の弁護士をやるという、お気の毒なというようなケースが3分の2以上あったと思いますが、そういうケースは懲戒手続にはかかりませんから、懲戒委員会までかかったというケースは、ほとんどがクライアントのケースだろうと思うんですけれども。
 そういうケースは、現在どのぐらいのパーセンテージに上るのかと伺いましたのは、東京高裁にたくさん訴訟が出てくることになるのかどうかということをちょっと考えたもんですから。

【日弁連(岡本弁護士)】正確な数字ではないんですが、件数としては、年間300 から400 の間ぐらいが出ているんです。

【髙木委員】弁護士さんが懲戒を受けて、裁判所に訴える。裁判所はどういう資格があってどういう判決をなさるんですか。

【藤田委員】ですから、懲戒を請求した人が原告で、日弁連が被告になるんですかね。それぞれが主張、立証して。

【髙木委員】要するに、懲戒された弁護士さんが原告で日弁連が被告でしょう。

【藤田委員】日弁連の決定の取消しということになれば、日弁連が被告になりますね。そうして、日弁連が懲戒に値しないということを主張、立証し、原告の請求人は懲戒に値するかということを主張、立証して、それを裁判所が判断する。

【髙木委員】そうすると、懲戒相当・不当という判決になる。

【藤田委員】もし、懲戒すべきなのにしなかったということになれば、懲戒しないという日弁連の決定を取り消すというだけだと思うんですね。そうして、差戻しということになって日弁連がもう一遍判断する。

【髙木委員】それがまた自分のところに戻ってくる。

【中坊委員】だから、今、言うように、先ほどから私が言っているように、そのときに非常に重要になるのは、懲戒しないという決定に対して不服だということを言ってくる中には、クライアントという場合だけではなしに、非常に裁判所という場合があり得る、裁判所が懲戒処分に付さないということにして、不服だという場合が考えられるわけです。そこが今度は、弁護士会のした分をその裁判所が判断するということになると、請求人が裁判するわけですから、やはり理論的に言って自治というものは全然ないということになってくるので、これはもう大変なことになると思いますよ。
 だから、それはたまたましかないとかあるとかの問題ではなしに、制度自体としてそんなものを導入しようものなら、それこそ今、竹下さんのおっしゃったように大変な不釣合いになっちゃって、話にならなくなると思うんです。だから、やはり弁護士会が自治でやらなければいけない。

【井上委員】今の制度でも、裁判所関係者が請求をして、それで処分をしたという場合、当の弁護士が不服を申し立てる。そうすると裁判所に行くわけで、当事者的な地位の者が裁判をしてはいけないという理屈だと、それもちょっと問題だということになり得るのですね、理屈の上では。
 ただ、中坊先生がおっしゃるように、裁判所の方から不服を申し立てて、それで自分のところで裁判するということになると、その面が余計強調されるという、そういうことだろうと思うのですね。
 そのことと先ほど竹下先生がおっしゃったこととはちょっと違って、竹下先生がおっしゃったのは、裁判所に処分権限があるのかということで、処分権限がないのだから、裁判所としてできるのは、処分しないという一種の行政処分みたいなものを取り消すだけである。積極的に処分するということはできないのに、そういう訴えを認めることに意味があるのか、またできるのか、そういうことだと思うのですね。そこは、違う性質の問題だと思います。

【佐藤会長】今のことに関連して、先ほど局長の方から説明がありましたね、懲戒制度の国際比較。これを見ると、アメリカでは懲戒請求者が裁判所に不服申立てができる州もあるというような書き方になっているんですけれども。外国では、日本の場合と異なって、例えば、監督権が裁判所にあるとか、何かその辺の仕組みの違い、だれか説明していただけませんか。

【事務局(早野主任専門調査員)】アメリカの場合は歴史的な沿革がございまして、もともとは裁判所、その後、最近では州の最高裁ですけれども、州の最高裁判所は法曹資格を付与する権限がある、ゆえにそれを剥奪する権限もあるという理解のもとに最高裁判所が懲戒権限を持っている。
 それから、今、問題になっている件ですが、アメリカの場合においては、正式の懲戒手続をだれが請求するかという意味では、その州弁護士会であったりあるいは懲戒委員会が請求することになります。これはいわば刑事手続の検察官役であり、個人の代理人ではなく、公益の代表者として異議申立などができるのはある意味では当然のことなんですが、今問題になっているものは、例えば、懲戒委員会や苦情委員会に持ち込んだ人たち、依頼者、その方はアメリカでも正式の懲戒手続の当事者ではないわけで、その方が今のシチュエーションの中で、最高裁判所に持っていくことができるかということについては、今確認したところでは2州がその可能性を認めている、その他の州に関しては、現在のところ該当するものはない。いろいろ調べたところ、懲戒とはそのようなもの、つまり、しょせんは弁護士会の内部規律のことであり、裁判所でどうこうするような問題ではないというのが基本的な考え方なんです。
 それがあるところは、ここに書いておりますように、イギリスのバリスタの場合においては、バリスタの自治という問題がありますので、今のところ資料を出しましたのは、これを認める。
 それらに関して、それぞれ懲戒機関と懲戒権の所在というところで、フランス、日本、ドイツで示しております。
 したがって、今の問題に関して、依頼者などができるかということに関しては、先ほどのように、だれが請求してきているのかということと、公式の懲戒手続をだれの名前でやるかというのを分けて、御理解いただいた方が混乱がなくてよいと思います。

【佐藤会長】フランスの場合は検事長ですね。

【水原委員】フランスの場合は懲戒権者は弁護士会であって、そして、不服の申立は検事長ですね。

【佐藤会長】そうですね。だから、懲戒請求者は、今議論しているそれではないんですね。だから、それぞれのところは何かやはりいろいろ歴史的な背景がありますんでしょうね。

【中坊委員】弁護士会の自治というのを一応前提とする限りは、それが今言うように、しかも、私はえらいこだわるみたいだけれども、事例としては、不服が裁判所ということになり得るという可能性があるわけですから、それに基づいてそういうものが裁判所でやられるということになれば、それ自体が仮に少ない稀有の場合であったとしても、最終的に弁護士の資格を剥奪するのが、結局裁判所だよということになってくれば、何のための自治であったかというのが、本当に大変なことになってくると思うんです。
 だから、そういう最終的に裁判所が弁護士の資格を剥奪するか懲戒処分にするかどうかの最終権限者だということになるというのは、それこそ基本が変わってくるので大変なことになると思うんです。

【髙木委員】そういう意味で、この最高裁のペーパーのバランスを欠くと思われるというコメントについて申し上げれば、今言われたように、もしこれなら不服前置主義と同じような構造で、日弁連の懲戒というのはそもそも何なんだということになります。最終的には裁判所が判断する懲戒についてもというふうにこの最高裁のペーパーは読めるわけです。バランスを欠くというふうに書いてるわけですから、そういう意味では、中坊さんがおっしゃった弁護士自治だとか、いろいろな経緯で、こういう議論が生まれてきておるはずだと思うんです。

【佐藤会長】分かりました。代理も言われたように、事柄はそう単純なことではないんですね。ここは、今日の段階では、こういうまとめ方でよろしいでしょうか。司法審査という問題は、理論的に、将来の課題としてあり得るのかもしれませんけれども、今日、ここでの議論としては、綱紀・懲戒手続の透明化、迅速化、実効化、国民参加の拡充ということが必要で、少なくとも当面講じるべき方策として、例えば、綱紀委員会ないし懲戒委員会の構成について、弁護士以外の委員の割合を増加するということです。それから、懲戒請求者が綱紀委員会の議決に対する異議申出を日弁連に棄却、却下された場合に、市民代表によって構成される機関に、さらなる不服申立ができる制度を導入するなど、国民が懲戒決定等に主体的、実質的に関与する仕組みを考える。
 また、綱紀委員会の弁護士以外の委員に評決権を付与する。これはよろしいですね。
 そして、弁護士の調査、審査への協力義務を明確化するなど、職権調査の実効化と、それから懲戒委員会の決定に少数意見を明示するというようなことも考えて、透明性の向上を図るということ。
 それから、懲戒請求者の手続参加の拡充。日弁連のペーパーにも触れてありますけれども、こうした手続参加の拡充やこれに対する情報提供の強化などの一層の配慮をする。
 それから、懲戒処分の過程、結果等に関する公表の拡充などを行う。今日のところは、大体こういうところでしょうか。

【藤田委員】今、お読みになったのですと、綱紀委員会で懲戒手続に付さないという決定があった場合に、懲戒審査会に行くというふうにおっしゃいましたが、懲戒委員会にかかって懲戒しないという場合も懲戒審査会にかかるという理解でよろしいんですね。

【佐藤会長】今日の段階では、苦情処理とかまだちょっと議論が残りましたけれども、もう5時を回りましたので、この辺で終わりたいと思います。ここでの大事な問題については、今日、おおよその御了解を得たということにさせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。この問題は、先ほどから申し上げておるように、2月2日の審議会で更に御議論いただいて、「弁護士の在り方」について全体的な取りまとめを行えればというように考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 今日は、隣接法律専門職種の関係とかには入れませんでしたけれども、それは次回に行わさせていただきます。
 局長、配付資料について御説明いただけますか。

【事務局長】第42回審議会におきまして、吉岡委員から御要望のありました行政訴訟の種類別原告勝訴率についての資料が最高裁から提出されておりますので、本日お配りいたしました。
 また、日本弁理士会から「知的財産権関係訴訟における代理形態に関する聞き取り調査について」という資料が届いております。次次回、2月2日におきまして、引き続き弁護士の在り方について御審議する中で隣接法律専門職種につきまして、御審議をしていいだくことになっておりますので、その参考にしていただければと思います。その他の資料につきましては、いつものとおりでございます。

【佐藤会長】どうもありがとうございました。

【髙木委員】法曹三者ヒアリング事項、裁判官改革で考えられる具体的方策等といって、これが今、法曹三者の方にボールが投げられているんですか。これ以外のことで聞きたいのはどうするんでしょうか。

【佐藤会長】法曹三者に回答をお願いしています。もし何でしたら、ヒアリングのときに、お尋ねくださったらどうでしょう。
 一応前に御了解いただきましたので、代理と相談してヒアリング項目を決め、2日までに御回答いたただきたいということで出しているわけです。時間的にかなり無理なお願いなのですが。

【髙木委員】今まで議論していた論点などでも、落ちているものが大分あると思うんですよ。

【佐藤会長】それぞれのお立場によって御不満もおありかもしれませんけれども、基本的に聞くべき事柄は何かということで決めました。余り大部にたくさんの質問項目というのも難しいものですから、集約して、この辺が一番大事ではないかということで、代理と相談して決めさせていただいたということです。
 ですから、これ以外聞いていけないとか、そんなことは一切ありませんので、ヒアリングのときに。

【髙木委員】今、手元にありませんとか何とかでお答えもないまま、積み残されてきた課題も幾つかあると思います。私、ここで見ただけですから、中身全部を吟味してありませんけれども。

【佐藤会長】では、もし髙木委員の方でヒアリングのときに聞きたいことについて準備してもらった方がいいと思われるのがありましたら、事務局に出してください。髙木委員の質問項目ということでお送りしておきます。

【髙木委員】吟味させていただいて、お願いすることがありましたらお願いしますので、よろしくお願いします。

【佐藤会長】そうしてください。
 それで、次回ですけれども、1月30日午後1時30分から午後5時まで、この審議室で行います。「国民の司法参加」なんですけれども、前回のヒアリング及び質疑応答を踏まえまして、意見交換を行うことにしております。その意見交換の際にお使いいただくレジュメにつきましては、前回御了解いただきましたので、井上委員にも御協力をいただき、会長代理とも相談して準備をしております。今週中にできるだけ早く委員の皆様にお送りすることにしたいというように考えております。
 次回は、そのレジュメに従って意見交換を進めていきたいと思っておりますので、委員の皆様の方でも、それぞれ御準備いただければというように考えております。
 それから、次回は意見交換の上、具体的な制度設計の基本につきまして、おおよその方向性でもまとめることができればというように考えておりますけれども、更に審議、検討を行うかどうかも含めて少し考えさせていただきたいと思っております。
 それから、もう一点、裁判官制度の改革に関する審議につきましては、審議用の追加資料、レジュメ及びヒアリング用質問項目などの準備を進めさせていただくということで、皆様の御了解をいただきましたので、先ほど申しましたように、法曹三者に対するヒアリング項目を準備し、本日、皆様のお手元にお配りしております。
 このヒアリング項目は、先日既に法曹三者に事務局から渡していただいております。審議の進め方などにつきまして、更に代理ともいろいろ相談しながら、近々皆様の御了解をいただければと思っている次第であります。
 以上で、本日予定している議事を終わらせていだたきます。最後に記者会見ですけれども。本日はどうも御苦労様でした。