2 場所 司法制度改革審議会審議室
3 出席者
(事務局)
樋渡利秋事務局長
5 会議経過
(1) 議事に先立って、第44回会議において配付された日本弁護士連合会の意見書「弁護士のあり方について」(2001年1月23日付け)の「綱紀・懲戒手続をより透明化するための課題と方策」について、その趣旨をより明確化するため同連合会から提出を受けた「『弁護士のあり方について』(補充書)」(2001年2月1日付け)と題する文書が配付された。(別紙参照)
(2) 弁護士倫理の強化と弁護士自治について、次のような意見交換が行われた。
○ 前々回の会議におけるヒアリングを通じて、日弁連が綱紀・懲戒制度の改革に前向きの姿勢であることは分かったが、さらに、改革のタイムスケジュールを策定する考えはあるのか、懲戒案件等の標準処理期間を定めるのか否か、綱紀・懲戒委員会の委員の人数をどの程度増やし、開催頻度をどの程度増やすこととするのかなどの点について、日弁連の考え方をお聴きしたい。
○ 綱紀・懲戒手続の迅速化のための抜本的な対策として、綱紀委員会及び懲戒委員会を弁護士会ごとにそれぞれ複数設けることとすべきである。
○ これまでの意見交換を踏まえ、次のような点については、大方の認識が一致したのではないか。
ア.綱紀・懲戒手続の強化と同時に、依頼者等の利益保護の見地から、弁護士会の苦情処理を適正化。たとえば、苦情相談窓口の整備と一般への周知、苦情相談担当者の育成、苦情処理手続の適正・透明化、綱紀・懲戒手続等との連携強化。このほか、弁護過誤訴訟の容易化、弁護士賠償責任保険の普及。
イ.弁護士会運営の透明化。たとえば、会務運営へ弁護士以外の者の関与の拡大。業務、財務等の情報公開の仕組みを整備。
ウ.法曹養成段階での倫理教育、継続教育段階での倫理研修の強化。
(3) 弁護士費用(報酬)の透明化・合理化について、次のような意見交換が行われた。
○ 現在の報酬規定は、一般人が見て、弁護士を依頼するとどの程度の費用がかかるのか、容易に見当が付くものとなっていない点に問題がある。例えば、交通事故の損害賠償請求なら幾ら、離婚の調停なら幾らというように、弁護士を依頼したことがない人でも一目見てすぐ分かるものにする必要がある。
○ 弁護士法が、単位弁護士会の会則において報酬規定を定めることとしているが、そもそも法律上そのように定める必要があるのか否かについて見直すことを含め、報酬規定を、より分かりやすい、実質的なガイドラインと言えるようなものとし、国民がそれを目安として安心して弁護士を依頼できるようにする必要がある。
○ 弁護士自治の考え方から出発して、単位弁護士会がその会則で自ら報酬の標準を定めることとし、その趣旨を法律上も明らかにしたという点で、この弁護士法の規定にも意味がある。
○ これまでの意見交換を踏まえ、次のような点については、大方の認識が一致したのではないか。
ア.弁護士報酬について、利用者にとって目安がつきやすい制度とする見地から、透明化・合理化を図る。たとえば、個々の弁護士の報酬情報の開示・提供の強化、報酬契約書の義務化、依頼者に対する報酬説明義務等の徹底。
イ.報酬に関し弁護士会が規定を策定する場合には、その策定過程を透明化。
ウ.なお、弁護士会が報酬規定で目安となる標準額を定めること、弁護士法において「弁護士の報酬に関する標準を示す規定」が必要的会則事項とされていることについては、競争政策上の問題が指摘されていることを認識。
(3) 隣接法律専門職種の活用、弁護士法第72条の見直しなどについて、次のような意見交換が行われた。
○ 弁護士過疎地域におけるその業務の実態などにかんがみ、国民に利用しやすい司法を実現する観点から、司法書士について、試験・研修などの担保措置を講じた上で、簡易裁判所における民事訴訟、調停及び和解の代理権を始め、家事審判、民事執行などの代理権を付与することとすべきではないか。
○ 事案が少額かつ単純であり、民事訴訟法上も裁判所の許可により弁護士でない者が代理人となり得ることとされている簡易裁判所における民事訴訟に限って、試験・研修等の能力担保を前提として、司法書士に代理権を認めることとすべきではないか。
○ 明治期以来の行政が司法を抑制する一環として、行政庁の監督下に置かれるものとして隣接法律専門職種が設けられてきたという経緯を無視して、ただ便利になるというだけの理由でそれらの職種に訴訟代理権を付与することを議論することは、当審議会が、そのような歴史的な経緯をも踏まえ、質・量ともに豊かな法曹を目指して法曹養成制度の在り方の見直しから議論を始め、その後の審議を積み重ねてきたことを考え併せると、当審議会の存在意義そのものを失わせかなねい問題であると考える。
このことは、何も弁護士の利益の保護ということではなく、国民の視点に立って、トラブルに巻き込まれ「藁をもすがる」思いとなっている訴訟等の当事者は、ともすれば非弁行為などの悪質な行為に釣り込まれやすく、悲惨な結果を招くこととなる場合が多いので、そのような行為の端緒を広げることにつながりかねない訴訟代理権の付与を安易に議論してよいのかという観点から言っている。
○ 隣接法律専門職種が生まれてきた歴史的な経緯は確かにあるが、当審議会に求められている国民に利用しやすい司法の実現という考え方に立てば、弁護士のアクセスの拡充が問題となっている。弁護士がいない地域の人々は困っており、実際に司法書士がこうした人々のニーズに応えているのであり、そのような実態はこれまでにも当審議会の調査審議において明らかにされてきた。何も突然に、隣接法律専門職種への代理権の付与が議論され出したのではない。また、弁護士は、その業務を奪われる訳ではなく、一定の事件に限って訴訟代理権を認められた司法書士と競争すればよいのであり、それこそが国民に利用しやすい司法の実現につながることだと思う。
○ 確かに、隣接法律専門職種の将来像をあまり掘り下げて議論していないかもしれないが、とはいえ弁護士過疎地のニーズに応える問題もあり、現実指向でそれらの職種への代理権付与の議論となっている。国民にとって「利用しやすい」とはどういうことかを今一度考えてみると、それには、安価、容易なアクセスなどの「使い易さ」の面と、機能が十分であるという「信頼性」の面があり、この両面からの検証が必要ではないか。
○ 弁護士過疎地域に司法書士がいて、国民にとって便利だからという理由だけで訴訟代理権を付与するという議論はおかしい。また、法曹人口が増大するまでの過渡的な措置として付与するというのも誤った議論であり、将来質・量ともに豊かな法曹が実現した後に、お互いに競争し合い淘汰されることによって、落ち着くべきところに落ち着くこととなればよいのではないか。
○ 隣接法律専門職種については、
ア.隣接法律専門職種については、その有する専門性を活用する見地から、
(b)弁理士への特許等の侵害訴訟代理権(弁護士が訴訟代理人となっている事件に限る)の付与を前向きに検討し、その前提として、試験・研修など信頼性の高い能力担保措置を検討。
(c)弁護士が訴訟代理人となっている事件について、税理士が税務訴訟で裁判所の許可なく補佐人となりうる、出廷陳述権を付与することを前向きに検討。
(d)行政書士及び社会保険労務士など、その他の隣接法律専門職種についても、その専門性を訴訟の場で活用する必要性や相応の実績等が明らかになった将来において、出廷陳述など一定の範囲・態様の訴訟手続への関与の在り方を個別的に検討することも、今後の課題としては考えられる。
(e)隣接法律専門職種のADRを含む訴訟手続外の法律事務への関与については、弁護士法第72条の見直しの一環として、職種毎に実態を踏まえて判断。その際、当該法律事務の性質と実情、各職種の業務内容・専門性やその実情、その固有の職務と法律事務との関連性、法律事務に専門性を活用する必要性等を踏まえ、その在り方を個別的に検討すべき。
イ.企業法務等が行う法律事務の位置付けについては、更に検討が必要だが、少なくとも、司法試験合格後に民間等における一定の実務経験を経た者に対して法曹資格の付与を行うための具体的条件を含めた制度整備を前向きに検討。
ウ.特任検事、副検事、簡裁判事の経験者の有する専門性の活用を前向きに検討。たとえば、少なくとも、特任検事へ法曹資格の付与を行うための制度整備を前向きに検討。
エ.ワンストップ・サービス(総合法律経済事務所)実現のため、弁護士と隣接法律専門職種その他の専門資格者による協働を積極的に推進。このような見地から、収支共同型や相互雇用型等の形態などいわゆる異業種間共同事業については、国際的会計事務所との関係の在り方にも留意しつつ、更に検討が必要。
オ.日本弁護士と外国法事務弁護士等との提携・協働を積極的に推進。このような見地から、たとえば特定共同事業の要件緩和等を前向きに検討。なお、外国法事務弁護士による日本弁護士の雇用禁止等の規制緩和は、国際的議論もにらみつつ、広い視点から、なお慎重な検討が必要。また、法曹養成段階における国際化の要請への配慮、発展途上国に対する法整備支援を推進。
(5) 次回は、2月13日(火)午後1時30分から開催し、「裁判官制度の改革」について審議することとされた。
以 上
(文責 司法制度改革審議会事務局)
- 速報のため、事後修正の可能性あり -