場 所:司法制度改革審議会審議室
出席者(委 員)
(事務局)
【佐藤会長】定刻がまいりましたので、第46回会議を開会いたします。
本日は、前々回の審議に引き続きまして、「弁護士の在り方」について意見交換を行いたいと思います。
それでは、早速、意見交換に入りたいと思いますけれども、まず最初に、前々回の審議会の最後の方で、弁護士倫理の強化と弁護士自治に関する意見交換に入って、綱紀・懲戒手続の一層の透明化、迅速化、実効化のための国民参加の拡充など、制度及び運用の見直しを中心に御意見をちょうだいしまして、当審議会の意見のおおよその取りまとめを行いました。しかし、この弁護士倫理の強化と弁護士自治に関しましては、そのほかに弁護士運営への国民参加など、説明責任を果たすべき具体的方策、倫理教育の実効性を確保する方策、それから弁護士の苦情処理を適正化するための具体的な方策などにつきまして、まだ意見交換を行わなくてはならないものが残っております。最初に、これらについて意見交換を行いたいと思います。
なお、意見交換に入る前にメンションしておきたいんですけれども、お手元に「『弁護士の在り方について』(補充書)」というものがあると思いますが、日弁連から提出されております。これは、前回の久保井会長からの御説明について、よりその趣旨を明確にしたいということで御提出なさったものであります。後で御覧いただきたいと思いますけれども、審議会としてこの趣旨をも踏まえまして、後日、前々回の私どもの取りまとめを、より立ち入って整理したいと思っております。
本日も、お手元に前々回の審議会の際のヒアリングなどの資料をお配りしておりますので、それも適宜御覧いただきながら、御発言いただきたいと思います。
さっき申しましたように、弁護士会の運営などについての説明責任の問題、あるいは倫理教育の実効性を確保する方策、あるいは苦情処理などにつきまして、御意見をちょうだいしたいと思います。どの点からでもよろしゅうございますので、御発言いただければと思いますが、いかがでしょうか。
前々回、久保井会長の方から苦情処理の扱い方とか、その他いろいろ具体的な御提案があったところでありますけれども。
【藤田委員】この補充書によりますと、綱紀委員会が懲戒手続に付さないという決定をした場合については、懲戒審査会の審査の対象とするけれども、懲戒委員会が懲戒請求を棄却・却下した場合については対象としない趣旨と補充されておりますけれども、前回の最後のまとめのときに、これは入る趣旨ですねと私が質問しましたら、会長は入るというように答えられたと思いますが。
【佐藤会長】前回の弁護士会の久保井会長の御説明に必ずしも明確でないところもあったんですが、これでかなり明確になったと思います。これを踏まえて、後日、前々回の取りまとめを更に立ち入って整理したい、そういう趣旨です。
【中坊委員】そうすると、日弁連が補充書で出されたように、いわゆる懲戒請求人が懲戒請求をして、綱紀委員会でも取り上げなかった。それについては、異議の申立てを日弁連の懲戒委員会に対してやった。ところが、日弁連の懲戒委員会もまた取り上げなかったという場合は、この懲戒審査会のところへまた出せると、そういうことですね。
【佐藤会長】今日提出のものによれば、そういう趣旨であると思います。
【中坊委員】それ以外の、実際懲戒請求をして、懲戒内容について、例えば、業務停止3か月というのが出て、それは軽過ぎるじゃないかと言ったって、異議の申立ては日弁連の懲戒委員会にはできるけれども、それについて、それで相当であるという結論が出たら、懲戒審査会にはもう掛からないということですね。
【佐藤会長】さっき申し上げたように、今日提出のものはそういう趣旨であると受け止めております。
【中坊委員】両方ともが審査会に掛かるようにおっしゃっていたから、そこが違うと。
【佐藤会長】先ほど申しましたように、そういう趣旨のものとして受け止めましたけれども、それも踏まえて、後日、前々回の取りまとめをより整理し、最終的な取りまとめをしたいということであります。後日また御相談します。
【吉岡委員】前回欠席しましたので、前回の議論が分からないままに御質問と意見を申し上げたいと思います。
今日出された補充書もそうなんですけれども、私のような一般の市民から見ますと、綱紀委員会があって、それも各単位弁護士会と、日弁連の綱紀委員会があり、更に、懲戒委員会、懲戒審査会ということで、その間にどのくらい期間が掛かるのか、どうなっているというようなことの理解が、こういう文書ですとなかなかできにくいんです。できれば、図示したようなものを日弁連の方で御用意いただくと、理解が深まるのではないかと思いますので、2回目で結論を出すようなときに申し上げて申し訳ないんですけれども、そのようなことをお考えいただくと有り難いなと思います。
【佐藤会長】さっきも申しましたように、もう少し立ち入って整理するときに、必要があればそのような材料などをつくって、その上で御議論していただきたいと思っております。
【吉岡委員】それから、苦情ですけれども、これは一般の利用者、依頼者と言いますか、依頼をした人から担当された、あるいは依頼した弁護士に対して御不満があるというケースが結構少なくありません。その場合に、ここで言う綱紀委員会に掛けるとか、それほどおおげさなものではなくても、文句を聞いてほしいということが少なくありません。単位弁護士会に御相談ということになると思いますが、なかなか納得できないという面があります。
そういう意味で、一般利用者からの苦情を気軽に納得のいくような説明を、今も説明責任ということを会長はおっしゃられたのですけど、そういうところにも配慮をしていただきたいと思います。
【佐藤会長】そうですね。前々回日弁連から出され、久保井会長が説明されたペーパーの26ページですか、「弁護士会の苦情処理の適正化のための方策」。そこでは、苦情相談窓口に関する整備を行うとか、いろんな御提案がありますけれども、今のような御趣旨をちゃんと受け止められるようなものをつくっていただく必要はあろうと思います。
【中坊委員】日弁連の綱紀委員会というのはあるけれども、法律上の制度ではないような説明だったと思うんです。日弁連の綱紀委員会に今後どういう役割を持たすのかを検討すべきである。
それから、日弁連に限らず、全国の単位会の懲戒請求に対する結論が出るまでの審理期間が長過ぎるというような問題についても、単位会には一つしか懲戒委員会はないんだけれども、これを複数にするといった改善の意見もいろいろ出ておったんで、そういう点もすべて懲戒手続が改善されるところをまとめて出してもらいたい。きちっと出してもらえば、我々としては、こういう自治の強化と、これはここでやりますということで言えると思うんです。
また、これは日弁連内部の問題でしょう。だから、どういうふうに綱紀委員会を実現するだとか、今後はこうしますということが、はっきりしてきた方が、我々としては意見としては出しやすいと思うから、できればそういうふうに会長の方からでも日弁連にお願いしてもらえればいいんじゃないかという気がします。
【佐藤会長】これも前に出されたペーパーの23ページ以下のところで、改革の基本方向として、苦情案件と懲戒案件の統合と個性化を図ること、依頼者指向性・依頼者保護を強化すること、厳格で適正かつ説明責任にかなう懲戒制度にすること、という三つの柱を立てておられるわけです。これが具体的にどういう姿になるのか、本当にチャートでもつくっていただいて、こういうように変わりますということを示していただくといいですね。
【竹下会長代理】前に出していただいた資料で見たような気もするのですけれども、今までなかったでしょうか。
【佐藤会長】あれは懲戒手続のフローチャートで、苦情処理との関係なども含むものだったでしょうか。
【中坊委員】それは現状を示すフローチャートで、今後どうしようとしているのかということを含めたフローチャートを出していただいた方が、我々としては分かりやすいんじゃないか。しかも、統一的にちゃんと理解できるような、図面も付けていただいた方がいいのかもしれません。
【事務局長】前々回お配りしました「『弁護士の在り方に』関する参考資料(追加)」の19ページに、別紙3として、現在の「弁護士の懲戒手続の流れ」というフローチャートを付けています。
【竹下会長代理】現在のものは出ていますね。どこかで拝見したと思ったのです。委員の構成等も出ていますね。
【水原委員】今のことと同じことか、あるいは関連することだと思うんですけれども、日弁連が大変前向きにいろいろ改革しようとしている御趣旨は、ヒアリングの意見書によく出ております。ただ、例えば、改革をどのようなタイムスケジュールでやるのか。それから、具体的になれば、標準処理期間のようなものを策定する考えがあるのかどうか。これは、私は前にも申し上げたかもしれませんが、どのくらいの期間で処理することを目指すのか。それから、先ほど中坊委員も御指摘になったんですが、綱紀・懲戒委員の数を増やして、委員会の開催回数を増やすということだけれども、どれくらいの人数を増やして、そのうち外部委員はどうするかという問題もさることながら、月に何回くらいやるのか。すなわち、単位会で一つの懲戒、あるいは綱紀委員会だけではなくて、幾つかのものをやっていかないと、苦情も含めて、綱紀・懲戒に対応できないんじゃないかという感じがいたしますので、その辺りもできればお考えをお聞きしたいなと思っております。
【佐藤会長】そうですね。前々回、久保井会長のお恥ずかしい限りだというお話もあったように記憶しております。
【中坊委員】結局、根本は、懲戒委員会にしても綱紀委員会にしても、弁護士会毎に一つしかないんです。だから、幾ら請求が来てもその一つでしょう。委員会を複数同じ単位会に置くとか、日弁連も第1綱紀委員会とか第2綱紀委員会とかすれば、裁判所の部が幾つかあるのと同じように消化できる。幾ら標準期間を目指しますと言ったって、目指す手立てが分からないですからね。そこまでそうおっしゃるなら、そういうふうなことを具体的におっしゃっていただければ、それにさらにまた水原さんのおっしゃるように、標準の処理期間を設けるとか、努力目標にせよ、つくるとか、そういうことが出てくると、はっきりしてくるんじゃないかと思うんです。
【藤田委員】綱紀委員会の参与員をやった経験から言いますと、大変厳正にやっていらっしゃるんで、評決権を与えてもいいんじゃないかという意見を前に申し上げたんですが、今、中坊委員が言われたことに関連して申し上げますと、大体案件ごとに主査の弁護士の方を決めて、その主査が調査をされた結果を全体の綱紀委員会に報告をされて、更に必要な調査がある場合には、これを調査したらどうかというようなことでやっておりますので、事実上は分担ということで運営しております。5年掛かったという事案は、私が経験した4、5年の間では、そんな事件はまずありませんでしたので、何か特別な事情があったのではないでしょうか。
【中坊委員】私個人の意見としては、一つの委員会の中で主査制度があるのは確かにそのとおりなんですけれども、もっと抜本的に、300 件あるとかこの前出ていましたね、しかも、これからも数が増えてきて、懲戒請求も当然多数になってくるときには、委員会そのものが二つあるとか、そういうふうにしないと。とにかく私も聞いているのでは、日弁連の懲戒委員会の人などは大変なんです。一つでしょう。かなりの人がやっているわけで、日弁連の懲戒委員になるというと、ある程度の経験のある人でないといけない。ある程度の弁護士経験を持っている人が、弁護士の懲戒をしないといけない。若い人がというわけにいかないでしょう。かなり年齢のいった大阪の弁護士さんで、私が新幹線の中で一番よく会うのは、日弁連の懲戒委員の先生なんです。またかというと、またですねと言うていますから、懲戒委員会が一つだというところにちょっと問題があるのかもしれないと思うんです。
そういう点も含めて、自治の範囲内ですから、日弁連が自主的に自治権をどのようにして行使して、国民の付託に応えますかというところを、しかも、具体的に答えていただいて、それを我々としてどう思いますかという方が、私はいいんじゃないかという気がします。
【佐藤会長】ペーパーの31ページの下から3行目ですけれども、「懲戒委員会が全体として一つの審査体を構成し審査・議決しなければならない現行の制度を改め、懲戒委員会の審査を、別の案件について複数の審査体が同時に審査できるように改めることを検討する」とありますが、こういうことなんでしょうね。これを是非やっていただきたいということですね。
【水原委員】先ほどの審理期間の問題ですけれども、前回も私、申し上げましたが、平成11年度に懲戒処分が行われた53件について、規制改革委員会が調べたものでは、平均しますと、1件当たり2.2 年掛かっておるということで、相当期間が掛かっていることは間違いない。5.8 年掛かったものは別いたしましても、相当早く回転できるように。しかし、日弁連の御意見の中にも、これは無償で、まさにボランティアで先生方はやっていらっしゃるわけで、それを有償にすることも検討しなければならない等々含めて、非常に前向きの御意見がありましたので、是非そういう複数体の審査会をつくるなど、それらを含めて、より国民の要望に応えることのできる体制整備をお願いしたい。
【佐藤会長】弁護士会も随分いろいろな宿題を抱えておられるということですが、是非やっていただかないと。
【中坊委員】この審議会との関係では、自治の範囲内だから、自治にふさわしいだけの、ある程度まとまったものをちゃんと出してもらえれば、我々としても、これでOKですねと言いやすいと思うので、最初に吉岡さんがおっしゃったと同じようなことが、日弁連さんも大変でしょうけれども、御努力いただいた方がいいんじゃないですか。
【佐藤会長】今日は、平山副会長がおいでです。今日の御議論を踏まえて、後日立ち入った取りまとめをしたいと思っておりますが、それに関連して日弁連にはどうぞよろしくお願いします。
苦情処理の辺りはそんなところでしょうか。
倫理教育の強化ですが、法曹養成段階での倫理教育、継続教育段階での倫理研修の強化が必要だということは言うまでもないことかと思いますけれども、そのほか、弁護士会の運営の在り方について何か御注文、御意見はいかがでしょうか。情報公開の問題もあるかと思いますが。
【中坊委員】自分が日弁連の会長の役職におったときに、一つ手掛けておって、できなかったことの一つに、弁護士さんの報酬があります。これについては、国民の意見というのは、見えにくいというか、分からないということなんです。その報酬規定が、訴額何万円のものは何万円だというのは書いてあるけれども、一般の国民にぴんとすぐこないわけです。私は今のは、高い安いより前に、国民に見当がつかない、その見当のつかないところが一番大きな問題点じゃないかと思っています。
かつて週刊誌が日弁連の報酬規定を、例えば、交通事故だったらこれだけの請求をしたりこれくらいですよということを書いて、週刊誌に載せたことがあるんです。それも標準というかね。
確かにそれをつくるときに非常に問題になりましたのは、物価指数が東京と地方都市とで違うということです。それだったら、それをどう克服するかによって、国民にある程度の事件の概要を示して、それに対する報酬は大体こんなものですと、着手金とか報酬はこんなものですということが分かるようにして、各単位会なりがそれを出されるか、そういうことにすれば、もう少し国民にも全体に分かりやすいことになるんじゃないかと思って提案したのです。
確かに表は書いていますよ。何万円以上は幾らと。あれ計算すると分からないですよ。まず、訴額は幾らなのか。慰謝料請求を離婚の事件で幾らすれば、離婚と併せて大体これくらいだとか、要するに、国民が見当がつきやすいという状態にしてもらうというのも、今言う情報公開であり、報酬の合理化の中に入ってくるんじゃないかという気はします。
【竹下会長代理】先ほどそれは言い忘れましたが、前回お配りいただいた「『弁護士の在り方』に関する参考資料(追加)」の23ページに資料5というのがございまして、これなどはかなり分かりやすいと思うのです。こういうふうな形になっていれば。
【中坊委員】ここに書いてあるでしょう。経済的利益が幾らのとき8%になった、3%とか書いてあるでしょう。この計算がね。だから、幾らぐらいだったらこれだという。報酬規定というのは、そもそも経済的利益が幾らで何万以下だから、ここは8%で、ここは3%、私は特に算術が弱いのかもしれないけれども、分かりにくいです。だから、このくらいの事件だったらどのくらいだと。そうして分かれば、それが弁護士を利用する頻度が物すごく増えてくる。
例えば、鑑定費用は幾らくらいと言ったら、幾らだとか、こういうふうに割と分かりいいんです。ところが、弁護士さんの費用は、何となく、こんなことを言ったら悪いけれども、偉い弁護士とか、腕のある弁護士さんは高いのと違うのかとか、非常に疑心暗鬼になるでしょう。確かに弁護士会として何となくつくり難い、難しいというのは事実だろうと思います。地域にも差があるだろうし、能力にも差があるものを、そんな画一に書くというのは難しい。だから、私も自分が在職中も提案したんだけれども、なかなかできなかった。しかし、私は基本的に、今、本当に国民に開かれた弁護士会というのであれば、報酬なども見当がつくような状態に、いろんな困難な点があるのは分かりますよ。しかし、それを乗り越えて、やはり国民に分かりやすい。それが弁護士の活動領域を拡大する一つの前提だろうと思うんです。
【竹下会長代理】弁護士報酬を更に分かりやすく、できればそれを国民の大きな負担にならないようにしていただくというのは大賛成ですけれども、従来のものに比べると、この資料5は随分分かりやすいと思います。
【水原委員】中坊委員の御趣旨に私は全く賛成でございます。この報酬規定、これは会則に定められておるわけでございますね。会則は、弁護士法の33条の弁護士会は日弁連の承認を受けて会則を定めなければならない。会則で決めることかどうかということがあろうと思うんです。
会則で決めるとなりますと、資料5のように、やはりこういう形にならざるを得ないでしょう。
ただ、国民が安心して弁護士に依頼できるためには、何か分かりやすいガイドライン的なことを考えて、飽くまでこの報酬規定もガイドラインだとは思うんですけれども、もう少し分かりやすい実質的なガイドラインみたいなものを決めていただけないだろうか。そうすると、依頼者である国民が安心して、それを目安として依頼ができるようになるんじゃないかという気がいたします。
【北村委員】いろいろな報酬基準が書いてありまして、結局、事件によって何と何と何が取られるのかというのが分からないんじゃないかと思うんです。この日当というのは、全部について1日当たり幾らで取られるのかということもよく分かりませんし、私、弁護士に依頼したことがないから余計分からないんですが、ここにいろいろ書いてあるうちの、離婚調停のときには、どこまでが取られるのかというのも、日当も要るんですか。例えば、そういうところが分からないんです。
【藤田委員】各弁護士会で一応の目安として基準をつくっていまして、さっき言われたような1,000 万円なら幾らとか、一覧表があるんで、そういうものを活用すれば割に分かりやすくなると思うんです。離婚の場合は、たしか80万円くらいの着手金だったような気がしますが、どうですか。
【中坊委員】だから私は、先ほどから言うているように、国民に分かりやすく、離婚事件だったら幾らだとか、交通事故だったら幾らとか、そうしないと、経済的利益と書いてあっても、何が経済的利益か。定義すれば経済的利益みたいにはならないと思うんです。だけれども、典型的な事件で離婚請求で慰謝料がこのくらいだったらこのくらいだとか、地域によって違うなら違うとかそういうふうにして、事件の概要さえつかめれば、要するに目見当というか、見通しというか、見当がつくということがまず第一じゃないか。弁護士会は非常に正確性を図るんです。そうすると、だんだん抽象的になってくるから、北村さんみたいに一遍も頼んだことのない人でも、ぱっと来たらすぐ分かるという程度の具体性のあるものにしないと、これではいけないと思うんです。頼もうと思ったらすぐ分かるものでないといけない。そういうものに日弁連が努力する方法を具体的に考えてもらいたい。
私は自分が会長のときにそれを提案しました。しかし、今言うようになかなかできなかった。だから、今こういう司法制度改革審議会ができて、日弁連を見る目も非常に厳しいんだから、それを踏まえて、私としてはそういうものをつくってほしいという気がします。
【藤田委員】離婚は30万円から60万円だそうです。
【山本委員】着手金と成功報酬がそれぞれ30万円から60万円。ですから、合わせると、60万円から120 万円。
【北村委員】ということになるわけですね。だから、どんどん積み重なっていくわけですね。
【藤田委員】日当は出張の場合ですか。寿司屋に入っても時価というのはなかなか注文しにくいところがありますから、行く前に分かるようにしけなければいけませんね。
【山本委員】日当は往復4時間を超える場合に5万円です。
【中坊委員】読めば分かるんだけれども、これがみんな読んで、山本さんは頭がいいからすぐ分かるが、分からないですよ。だから、もっと事件の概要を書いて、その正確性もさることながら、国民用にもっと分かりやすく目見当がつくというようなものを書いて、算術のできないものでもぱっと分かるとしてもらいたい。一応目安になる標準でいい。
【佐藤会長】さっきも水原委員が触れられたと思いますけれども、弁護士法で、弁護士会の会則として報酬規定を置くとなっていますね。このことがかなり問題になってきている。最近では弁理士報酬額表廃止という話、そういうことなんですね。そういう傾向にあるんだということでしょうか。弁護士の場合は、法律に規定があるわけですが。
【水原委員】大きな流れの中において、そういう感じが大前提としてあるわけです。
【中坊委員】確かにそういう意見があるのも分かりますけれども、弁護士自治という関係からしても、あるいはそういうふうに弁護士会が自分の内部で会員を統合していくということは必要じゃないかと思います。おっしゃるように、公共料金とまた違う性格のものだと思いますし、自治から出発して、弁護士法の規定が生まれてきているんだろうと思います。
そういう意味では、自治権の行使によって解決していくのというが一番望ましい形であることは間違いないと私は思います。
【佐藤会長】ほかの方は競争政策という考え方が出ているわけです。弁護士の場合は別だという御判断ですか。自治というところから来る違いだということでしょうか。
【中坊委員】そこまで行くと非常に本質が難しいんですよ。私もかつて役員したときに、公正取引委員会に呼ばれまして、弁護士が会則で決めること自体が独禁法違反じゃないかという問題が出ました。私もその折衝の要に当たりました。しかし、そのときも、公正取引委員会も結果的に納得してくれたのは、我々の仕事というのが人のトラブルに関することでしょう。非常に計算しにくいという性格のものを、基本的に持っているわけです。テレビを買うというのと性格が違うわけです。非常に見えにくいようなものを対象としておる。また、難易度とか何とかというのが物すごく違います。そういう意味においては、テレビを売ったり、一つのサービスを与えるという定形的なものとは、かなり基本が違う。個性が非常にあるわけです。
そういう意味においては、競争にばかり任せておけば、それで自然淘汰できるという問題ではない。そういう意味における弁護士会というものが、自分で、自治の権能と、対象とする仕事が人のトラブルだということから、あるいは企業のトラブルだということからすると、そういうものを弁護士会で自治の範囲内でお決めになるということ自体は、私はそれは非常に大切にしていただきたいなという、私は長年弁護士をしておってそう思いますね。
だから、公正取引委員会に行ったときも、それで納得してもらって、ほかのところとは違って、弁護士さんはそれでよろしいとなったいきさつがあります。昭和59年ですけれども、私が日弁連の副会長をしておりまして、業務対策の担当でして、そのときにこの問題が公正取引委員会に出て、公正取引委員会に交渉に行ったことがあるんです。そのときにもいろいろ議論したけれども、結果はそういうことになって、理解してもらったといういきさつもあります。
だから、さっきから言っている目安論ということと、今、私が言っていることは必ずしも一致しないんですけれども、今度はまたややこしいことを言って、ややこしくしてしまい過ぎるのも問題なんだ。だから、ある程度日弁連が自治権の範囲で目安などが分かるものをつくって、何がどの程度だとか、あるいはこっちは安いとか、そういうことで個人の自由判断というのも任しておかないと、それでは競争にも何にもならないからね。
しかし、少なくとも一つのメルクマールになるものが全く分からない。この間も出ましたね。弁護士さんに頼むと、幾ら取られるかみんなが分からない不安があるんで、頼まないんだと言っている。このときに活動領域を増やすという意味から言えば、ある程度の目安というものをつくられて、しかも自治権の範囲内において、だれが見ても一目瞭然というような事件、現に週刊誌に出たものを見たら、交通事故でこのくらいだとか、あるいは離婚請求でこのくらいだとか、これだったら分かります。大体定型例を20から30つくっている。その20から30の中に、大体市民が普通遭遇しそうな事件を書いてあったんです。それを週刊誌がまとめたものがあるんです。私はこれを日弁連として、同じようなものがつくれないかと言ったら、先ほど言うように、地域差があるとか、いろいろ出て、結局できなかった経過があるんです。
今は少なくとも報酬を決める業務対策委員会の中にも、これは私の時代、平成3年にやりましたけれども、報酬規定を決めるときにも、市民に入ってもらって、報酬規定そのものを見るように、ちょうど私の時代にやりました。
【佐藤会長】報酬規定をつくるときに、どういう形で。
【中坊委員】市民の代表に入っていただいているんです。だから、マスコミとか調停委員の方とか学校の先生とか企業の代表者とか、大体5、6人入っていただいて、平成3年の報酬規定のときに、そういう委員に入っていただいて、一緒にこの報酬規定を見ることにしました。
【水原委員】決してこだわるわけじゃございませんけれども、先ほど来申しますとおり、報酬規定というのは、中坊先生もおっしゃるように、飽くまで目安であると思うんです。目安を法律に基づく規定で決める必要があるのかと。非常に荒っぽい意見を申し上げます。飽くまでも目安だとしますれば、実質的なガイドラインだけを示しておいたならば、どうだろうか。結論においては中坊先生と同じなんです。
【佐藤会長】法律規定をなくし、ガイドラインなどをつくったらという。
【水原委員】それは目安でございますから、法律によって縛られるものではないガイドラインなんです。
【佐藤会長】法律の規定がないときに、根拠を問われると、逆に難しくならないでしょうか。
【髙木委員】国民一人ひとりにとって、一生に1度か2度裁判に関わる、そういう国民が圧倒的に多い。あるいは一生に一遍もない人も多いでしょう。企業と弁護士さんの関係というのは、バーゲニングの世界が当然ある。しかし、一般の国民にはバーゲニングする力はない。法的な知識、あるいは手続についてもですね。それから一方では、アクセスは悪いし、競争原理と言われるけれども、どこで競争原理が働くのやら、また弁護士に関する情報も少ない。そういう中で普通の国民からしたら、弁護士さんにお願いしたらこの程度のことはこのくらいでというのが、目安というかガイドラインというか、何か知りせんが、それがはっきり示されていないと二の足を踏んでしまいます。弁護士さんに中身を聞いてもらって初めて幾らでは、一般の国民は対応し難いと思います。
【山本委員】報酬規定という言葉は、ちょっと誤解を招くんじゃないかという気がします。それと、それぞれの弁護士さんが、私のところは幾らですよということはいいわけでしょう。
【竹下会長代理】それは勿論です。
【山本委員】標準はこうなっているけれども、私のところは離婚は15万円でやりますと。そういうのを一般に知らせてもかまわないわけでしょう。そこのところはどうなんですか。
【中坊委員】いいと思います。
【山本委員】そうすると、むしろ標準はあった方がいいですね。
【中坊委員】非常に法律が標準化して、定型化しやすいものもあるし、難しいものもあるというのは事実だと思います。しかし、それをあえて30くらいに決めて目安をつくるなど、努力をされて、やるのがよいと思います。
私が多少水原さんと違うのも、会長のお尋ねですけれども、先ほどから言うように、全く皆野放しで自由だと、ガイドラインをつくるのも望ましいということだけであって十分に国民の期待に応えられない。というよりかは、せっかく弁護士に自治というものを与えている根拠からすれば、弁護士は、さっきから言うように倫理を規定するとか、それを統括してちゃんと教育をしなければいけないわけですから、その中には当然報酬というものも入ってくるわけです。
そういう意味では、私は現行法どおり、弁護士会が会則で報酬を定めるという規定そのものは、私は正しいんじゃないかという気がするわけです。
ただ、もっと国民に分かりやすくする。これはこれでつくってもいいけれども、国民用に、まさに髙木さんの言うような期待に応えられるようなものをつくる必要性があると思います。それを言うても、地域差とか言ってなかなかつくらないから、この際我々審議会としては、そういうものをつくりなさいということを言うことは、言わなければいけないことではないか。自治だからあんたたちの自由にしたらよいというものではないという気がします。
【髙木委員】弁護士さんは領収書はくれるんですか。
【中坊委員】それは出します。
【髙木委員】それは、ちゃんと明細は付いているわけですか。
【中坊委員】明細が付くところもあるだろうし、というのは、今、髙木さんの言うたとおりなんです。企業と個人とでは、全くと言っていいほど違うんです。私自身が弁護士でしょう。顧問先があるでしょう。顧問先などは、ほとんど私らの報酬というのは自動的に決めてあるんです。先生このくらい請求書を出してくださいとなるわけです。それはしょっちゅうあるところです。だけれども、髙木さんのおっしゃるように、一生に1回という人の方がむしろ多いんで、そういう方にはどうするかという問題は非常に別個だと思いますけれども、大きく分けて、いわゆる報酬に相当する部分と、費用に相当する部分と二つに分かれて、費用も裁判所に払ったり、よそに払う費用と、自分のところで使う交通費とか、そういう費用に分かれる。いわゆる報酬という部分と、それが着手金と報酬金に分かれています。大体おおまかに分ければそういうことではないですか。
【髙木委員】そのくれる請求書だとか領収書は、明細が付いているんですか。
【中坊委員】大体付いています。だから、費用と報酬との区別は大体どこでも別です。というのは、費用は不確定になります。例えば、5回行く予定のものが10回になる場合があるでしょう。そういうのはしばしばあります。あるいは遠いところへ行かなければいけない。だから、費用とあれとは分けてちゃんともらっています。だから、報酬額の明細というのはないんです。それが報酬というものが大きく分けたら、着手金と、報酬金という終わっていただけるものと二つあるわけです。
弁護士が非常に批判を受けたのは、着手金と報酬金を同額にしてあったんです。そうすると、私も初めて市民の代表に入っていただいたから、委員会に行ったら、市民の声から一番に出たのは、弁護士さんはどんなことがあっても損しないようにできていますなという御意見が出ました。要するに、着手金というのは、絶対損しないように、負けようが勝とうが、努力しようがすまいが、まずもらえるという金を先取りするんじゃないか。その上に報酬金を取っているのと違うか。着手金というものに対する批判が非常に強かったです。
その後、弁護士はその着手金の額と同額ではなしに、着手金の方を半分以下に下げるように、今報酬規定を直してきています。そのときまで私たちも市民の意見を聞かないで自分たちだけで決めていましたから、おっしゃるように着手金と報酬金とは同額だったんです。私が平成3年にやっているときまではそういうことです。
それから以後、純然たる報酬金と着手金との比率が、着手金の方が報酬金の2分の1以下。その後は市民の方の声が、あんたら何しても損しない、そんな商売、だれもいい商売だと思いますと言われて、そういうことになってきたんです。
【竹下会長代理】先生、地域差があると言われましたが、日弁連としてお決めになろうとするから、地域差を考慮できないのですけれども、それぞれ単位弁護士会でお決めになることにすれば、地域差の問題は大部分解消できますし、しかも、それも拘束力があるわけではないから、先ほど山本委員が言われたように、自分が所属している弁護士会ではこういう基準だけれども、自分はそれに必ずしも従いませんよということでもよろしいわけですね。
【中坊委員】日弁連がまず報酬規定をつくって、それに準じて各単位会がつくれとなっているんです。
【竹下会長代理】だから地域差が反映されない。
【中坊委員】それがちょっと問題ですね。そういう点も克服しなければいけない。自分たちの内部でどう決めるか。今、竹下さんのおっしゃるように、先ほど言うように地域差があるから、そんなもの言われても、日弁連としてつくれないというのも一理はあるんです。そうしたら、日弁連が単位会でつくれとするのか、しないのか。そういう点も決めていかないと克服できないことです。
【水原委員】33条で、弁護士会は、日本弁護士連合会の承認を受けて、会則を定めなければならないと言っている。その会則の中の標準となっている。それを変えていくことができるのか。
もう一つは、標準とありますけれども、弁護士法の33条2項8号、弁護士の報酬に関する標準を示す規定を設けなければならない。これは仮にこういう規定をつくっておって、今のように標準だから、本当は取らなければいけないんだけれども、私は無料で相談に応じますよとなったらば、これは弁護士法違反になるんじゃないでしょうか。ならないんですか。それは大変悩ましい問題だと思いますが、それはならないんですか。飽くまで標準だからですか。
【竹下会長代理】標準規定と書いてあるわけです。
【中坊委員】それは全然ならない。
【水原委員】そうすると、別に規定に基づいてやるんじゃなくて、ガイドライン的なものでやって。
【中坊委員】それを標準と言っている。あんたは英語で言っている。
【佐藤会長】この報酬の問題は最後に御議論をいただこうと思っていたんですが。更に議論したらいろいろあるのかもしれませんけれども、まとめとして、こんなところでどうでしょうか。
【山本委員】それぞれの弁護士事務所が理髪屋さんみたいに、私のところはこれでやりますと、これはいいわけでしょう。
【中坊委員】標準規定との関係は出てきますよ。
【佐藤会長】広告との関係で、それは自由では。
【中坊委員】そうじゃないんでしょうね。だから、さっきから自治の範囲だと言っているように、標準を決めるというのが自治をやっていく上ですから、それをただで時たまやるのはいいけれども、私のところは全部ただでやりますというのは困るんじゃないですかね。
【日弁連(平山副会長)】日弁連の会則がございますけれども、これを超えて取ると会則違反ということになります。ですから、その中では自由です。下は会則違反で処罰するということはありませんけれども、上は会則違反という扱いをしています。
【中坊委員】それは望ましいということじゃないですか。1円でも高くなったら、それは違反ということには、なかなかならない。
【山本委員】大変優秀で、能率よく利用者の要望を実現してくれたということに対する礼というのは、多くてもよろしいんじゃないでしょうか。優秀な人たちはそれ相応の報酬を受け取っても構わないんじゃないですか。
【中坊委員】それと、今の平山さんの理論によったら、この事件の本当の意味における標準とは一体何かというのは、非常に決めにくいんです。難易度とか、成功度合いとか、そういうのは非常に決めにくいものです。そんなものを第三者が見て、全部が理解できるというのは不可能です。だから、標準は標準ですから、それを著しく逸脱して、そう思いますよ。
だから、私は平山さんの言っているように、日弁連で決めた報酬規定よりも1円でも高ければそれは違反だという見解にはならないと私は思います。
【佐藤会長】この問題は一応この辺で。報酬規定は削除する傾向があり、そういう傾向を認識した上ですけれども、現行の弁護士法の報酬規定を前提として考えたとき、報酬に関する弁護士会規定の策定過程を透明化する必要があるということは、御異論のないところでしょうね。
その上で、個々の弁護士の報酬情報の開示、提供。前々回久保井会長が説明されたペーパー44ページのところで、「弁護士の依頼者に対する報酬説明を充実、徹底する方策」として、説明義務、書面交付義務、そして全体見積り交付努力義務を掲げてあります。
こういうように報酬情報の開示、提供の強化、報酬契約書の義務化、依頼者に対する報酬説明義務などを徹底してもらうということは、我々としても決めてしかるべきところじゃないかという感じがします。
【中坊委員】それと、先ほどからるる言っているように、見当がつきやすいというのが、だれも御異論なかったところじゃないですか。目安がつきやすい制度にするということは。それが一番大事だと思います。見当がつきやすい。
【佐藤会長】では、ここは弁護士報酬の透明化、合理化を図るということで、今言ったようなところで一応のまとめということにさせていただきたいと思います。
それで、先ほどの弁護士倫理の強化と弁護士自治の方ですけれども、苦情処理については、こういうように一応取りまとめるということでいかがでしょうか。前々回、綱紀・懲戒手続の強化について御審議いただいたわけですが、それと同時に、依頼者等の利益保護の見地から、弁護士会の苦情処理を適正化する、例えば、苦情相談窓口の整備と一般への周知、苦情相談担当者の育成、ちゃんと対応できるような人を育ててもらう、それから、苦情処理手続の適正・透明化、綱紀・懲戒手続等との連携強化、そのほか、今日まだ御議論が出ておりませんけれども、弁護過誤訴訟の容易化、あるいは弁護士賠償責任保険を普及するということも、関連して考えていただくべきではないかというように思います。こういう取りまとめでよろしゅうございましょうか。
【髙木委員】弁護過誤訴訟というのは、実際上ケースがあるんですか。
【中坊委員】結構あります。
【佐藤会長】医療過誤訴訟と同じように増えてきているのでしょうか。
【中坊委員】それほど多くはありませんけれども、あることはあります。私もあってしかるべきだと思いますね。
【佐藤会長】弁護過誤訴訟の中身はどういうものでしょうか。
【中坊委員】一番極端な例は、控訴期間を徒過させてしまったとか、これは一番典型的な例です。だから、やはりいろいろありますね。非常にシンプルなものはそれで、損害賠償を受けている裁判もあります、そういう例が具体的に。
【髙木委員】余り一生懸命やってくれなかったではないかというのは、そういう。
【中坊委員】相手方と通謀したのではないかと疑われて弁護過誤訴訟が起こされるケースもありますし、非常にシンプルなのは今言った控訴期間を徒過したとか、これは多いですね。弁護過誤の中の典型例ですね。
【髙木委員】よく市民が、相手の弁護士さんとばかり話をしておって、こちらの依頼人の利益などはどこかへやっちゃったんじゃないのみたいな、そういう話はよく聞きますね。
【中坊委員】でも、それは、実態はそんなことは余りないですよ。それは相手方とよく話をしなければいかぬから、廊下で会っても、弁護士同士ですから顔も知っているでしょう。だから、それは余りないんですけれども、しかし、そういうふうに疑われて弁護過誤訴訟が起こされているという例もあります。
【藤田委員】私が経験した事例では、課税処分の取消訴訟を起こそうとして、税務署長を相手に更正処分の取消しを求めるべきなのに、国税局長を相手にやってしまったという事件がありました。被告を変更することができる誤った訴えの救済という規定が行政事件訴訟法15条にあるんですが、故意又は重大な過失による場合は許されないので、弁護士にあるまじき過失があったという事例がありました。
【竹下会長代理】先ほど髙木委員が言われたことは、説明責任の問題なのではないですかね。要するに、和解をするときに、どうしてもまず弁護士さん同士で、専門家同士で話をする。そうすると、専門家同士で話をした結果を自分の依頼者に承諾させようと思って、弁護士は自分の依頼者を説得するようなことになる。そうすると、どうしても相手の言うことを、自分の弁護士が自分に対して言っているように受け取られやすい。だから、その間の事情をよく説明すれば、分かってもらえる話なのではないでしょうか。
【中坊委員】でも、医療過誤訴訟の中で新しい動きとしてインフォームドコンセント、一種の説明責任というのがあるわけですから、やはり弁護士も、弁護過誤訴訟についても、これからはインフォームドコンセントに関する、いわゆる知らせた上での同意だということにならないといけない。今までは、正直言って弁護士さんは、自分は専門家だから俺の言うとおりにやっておけばいいという観念できていますから、その意味では、まさに今、医療過誤訴訟で問題になっているインフォームドコンセントというのは、理論が弁護士会の内部についても、依頼者の間であってしかるべきだろうとは思いますね。
【竹下会長代理】私もそういうことを申し上げたのですが。
【佐藤会長】では、そういうように考えていただく必要があるということで、取りまとめとします。
それから、弁護士会の運営の透明化も図る必要があるのではないか。例えば、会の運営に弁護士以外の者の関与を拡大する、あるいは業務、財務等の情報公開の仕組みを整備していただくというようなこともあるかと思います。
また、さっき申し上げたことですけれども、法曹養成段階での倫理教育、継続教育段階での倫理研修の強化というようなことを、弁護士倫理の強化と弁護士自治のところで、確認的に取りまとめておきたいと思いますけれども、そういうことでよろしゅうございましょうか。
前回、非常に密度の濃い議論をしていただいたものですから、今日は、できれば余り遅くならないようにと思っているんですけれども、次に御議論いただきたいと思いますのは、隣接法律専門職種、弁護士法72条などと関連する諸問題についてです。
前々回の審議における意見交換と、本日のこれまでの意見交換は、中間報告の人的基盤の拡充の中の「(2)弁護士制度の改革」の部分について行ってまいりました。これからは、中間報告の制度的基盤の整備の中の「(1)利用しやすい司法制度」、29ページ以下ですけれども、この中の「ア 弁護士へのアクセス拡充」、「イ 法的サービスの内容の充実」、ここに記載している部分を中心に意見交換を行いたいというように思います。
その中でも、隣接法律専門職種、弁護士法72条などの関連する諸問題について、まず最初に意見交換を行いたいと考えております。
意見交換に入ります前に、この問題に関する中間報告における取りまとめの部分を、簡単に念のため御紹介したいと思います。
まず、隣接法律専門職種との関係については、今後、弁護士人口の大幅な増加と、弁護士改革が現実化する将来においては、総合的に司法の担い手の在り方を検討していく必要はあるものの、国民の権利擁護に不十分な現状を直ちに解消する必要性等にかんがみ、当面の法的需要をいかに充足するかという利用者の観点からの検討が急がれるというようにした上で、各隣接法律専門職種を個別的にとらえて、それぞれの業務内容や業務の実情、業務の専門性、人口や地域的な配置状況、その固有の職務と法律事務との関連性に関する実情やその実績等を実証的に踏まえ、信頼性の高い能力担保制度を講じることを前提に、それによって担保される能力との関係で、訴訟手続への関与を含む一定の範囲・態様の法律事務の取扱いを認めることを前向きに検討すべきである、というように取りまとめております。
さらに、中間報告では、弁護士と隣接法律専門職種その他の専門資格者による協働について、ワンストップ・サービス(総合的法律経済関係事務所)を積極的に推進し、その実効を上げるための措置を講ずるべきである、それからまた、弁護士法第72条の規制(いわゆる法律事務の独占)について、隣接法律専門職種の活用を検討する見地も含め、今後の在り方を検討すべきである、さらに、企業法務等が行う法律事務の位置付け、特任検事、副検事、簡裁判事の経験者の位置付け、行政訴訟の指定代理人制度のこれからの在り方についても検討すべきである、としているわけであります。
こうした中間報告の示している方向性を踏まえまして、更に一層具体化するための方策等について、御意見を交換していただきたいということであります。
ここでの中心的課題は、隣接法律専門職種の方々の活用ということになろうかと思います。そこから意見交換に入りまして、その後で、その他の弁護士法第72条関係、ワンストップ・サービス、企業法務、特任検事、副検事、簡裁判事関係の問題について意見交換をするという形で進めさせていただければというように考えております。
これらはそれぞれ関連しているところもありますので、必ずしも今申したように厳密に切り分けて言っていただかなくても、適宜御発言、御意見を開陳していただいて結構でございますけれども、そんな形でこれから御審議いただきたいと思います。
それでは、まず隣接法律専門職種の方々の活用と言いますか、そういう問題から入りたいと思いますが、よろしくお願いいたします。
北村委員、ここら辺について集中審議のときに御報告いただいたので、冒頭にお話しいただければ幸いですけれども。
【北村委員】集中審議のときに申し上げたことは、個別に見ていきましょうというのが中間報告にも書いてありますので、司法書士の方には簡裁における代理権の付与ということを考えていいのではないかということを申し上げました。それから、弁理士につきましては、共同代理権の付与という、事件はこの弁理士が専門としておりますところの特許等の侵害訴訟についての代理権の付与というようなこともいいのではないか。それから、税理士の方は、どうも今、税理士法の改正という形で動いているようでして、そこでは出廷陳述権という形で法律改正が行われているということで、それはそれでいいのかなというような形で思っております。あと、行政書士と社会保険労務士については、まだ、現在のところ訴訟に関与させるかどうかということについて、慎重に検討すればいかがかというのが報告の要旨だったわけです。
【佐藤会長】現在もそういうお考えだということですね。
【北村委員】別に何も事情が変わっておりませんので。
【佐藤会長】分かりました。
そういう御報告をいただいて、私どももそれを踏まえて議論をし、さっき御紹介したような中間報告の取りまとめをしたわけでありますけれども、いかがでしょうか。
【竹下会長代理】基本的に私は今の北村委員の御意見に賛成でございますが、ただ、司法書士の場合は、簡易裁判所における代理権と言われましたけれども、簡易裁判所の訴訟のほかに調停とか和解がございますので、これは似たようなものだと言えば似たようなものなのですけれども、訴訟の方は御承知のように民事事件でありますと90万以下という訴額の制限がございますのに対しまして、調停や和解ですと、特にそういう制限がないという問題があります。他方で、司法書士に訴訟上の代理権を認めるということには、弁護士の地域的過疎というのが重要な原因の一つになっていることは間違いないわけで、そういう観点から見ると、調停や和解についてもその弁護士過疎の状態は変わるわけではないということになるので、それを含めて簡易裁判所の事件ならば代理権を認めてもよいという考え方も出てくるように思うのですね。
その問題についても、ここで御議論をしていただいておいた方がよいのではないかと思いますが。
【佐藤会長】簡裁における代理権と言っても、中身はそう単純ではないということですね。
【藤田委員】何遍も繰り返すのは気がさすんですけれども、私は、新堂先生、仙台の佐々木泉弁護士と一緒に日本司法書士会連合会の顧問を4年前からやっておりますので、身びいきと思われるかもしれませんけれども、裁判所におりまして、東北、中国地方のいわゆる弁護士過疎の地域を回ったときの実感から、申し上げているんです。実際、ゼロワン地区だけではなくて、大都会でも簡裁事件での弁護士の関与率というのは資料にあるとおり低いわけで、現実にゼロワン地区だけでなく、庶民のローヤーの機能を果たしているのは司法書士なんですね。裁判官が本人に釈明をして、本人は素人ですから立ち往生したようなときに、書記官から、司法書士のところへ行って相談して、準備書面を書いてもらっていらっしゃいというようなことを言う。あるいは、まだ当事者席には座れませんけれども、傍聴席で実際上、釈明に応じたりするというような実態があるわけです。
そういう実態からすると、簡裁での訴訟代理権というのを認めるのが、国民の使いやすい司法という視点、特に交通不便な土地での高齢者や病弱者などを考えると、肯定すべきと思うのです。日弁連の御意見としては補佐人で十分でないかということですけれども、補佐人では本人とともに出頭しなければいけないという制約が、かなり重い負担になるということもございますので、訴訟代理権を認めるのが適当ではなかろうかと思います。
今、会長代理からお話のありました和解とか調停とかについても同じことでございますし、更に言えば、辺ぴな地区で司法書士のところに持ち込まれる事件の中には、登記関係がもともと主体の業務でありますから、登記の案件が持ち込まれる、しかし、それに相続が絡んでいる、あるいは遺産分割が絡んでいるような場合には、家事手続の問題が出てきますし、あるいは判決の執行の問題なども出てきます。そういう意味では、民事執行とか家事関係について、研修のような担保措置を講ずる必要はあるでしょうけれども、実際に国民の使いやすい形にするためには、そういう隣接領域も含めた権限を認めることが使いやすい司法の理念に合致するのではないかというふうに考えております。
【佐藤会長】広く認めるべきであるということですか。
【藤田委員】そうです。
【竹下会長代理】家庭裁判所でもということになるわけですね。
【藤田委員】遺産分割などは非常に難しい事件の代表のように言われますけれども、必ずしもそうではないような事例もある。
【竹下会長代理】勿論あります。
【藤田委員】ですから、家事審判法でも甲類審判事項という実質的な対立がないような事項もありますから、そういう領域の問題についても、能力等についての担保措置を講ずることは当然でありますけれども、権限を認めるべきではないか。
弁護士を飛躍的に増員すれば、そういう弁護士過疎地は解消される日がいつかは来るかもしれませんけれども、私が過疎地を回った実感では、なかなか難しい問題があるのではなかろうかと思います。かねてからそういうことを考えまして、新堂先生などと一緒にいろいろアドバイスしていたものですから、申し上げた次第であります。
【水原委員】全部の事件に権限を与えるというのも一つの考え方かと思いますけれども、ここでは簡裁に係属する純粋な民事事件、それに限って考えるべきではなかろうかなという気がします。
それはなぜかと言いますと、日弁連では補佐人の権限を与えるべきだという御意見で、私はそうではなくて、やはり一定の試験、研修という能力担保を考えた上で、代理権の付与を認めるべきだという考え方が基本でございます。
簡裁に係属する民事訴訟事件というのは、少額かつ単純な事件が多くて、民事訴訟法上でも弁護士以外の者が裁判所の許可を受けて代理人になることが認められておるわけでございます。これは事件の訴訟代理人になるためには、事物管轄の上で言いますと、弁護士さんと必ずしも同等程度の能力まで必要ではないことが法律上認められているのではなかろうか。民事は余り知らない私のつたない知識で申し上げて恐縮ですが、そういう感じを持っております。
補佐人でということになりますと、これは本人と一緒に出廷しなければならないわけでございます。ゼロワン地域におきますと、よほど高齢といいますか、おじいちゃま、おばあちゃまが当事者として出るときに、わざわざ本人まで呼び出してやらなければならないとなりますと大変不便だ。法律上も、弁護士でない者でも代理権を裁判所のところで与えられるとするならば、実績のある司法書士が、簡裁係属の民事訴訟事件に限っての訴訟代理権を認めてあげることが、国民のニーズにも合致するのではなかろうかという気がいたします。
ただ、先ほども申しましたように、能力担保のための制度的な保障といいましょうか、試験を課す、それから研修をしっかりやる、こういうことが条件で、先ほど申しましたような資格を与えるべきだろうと思います。
【佐藤会長】先ほど藤田委員が言及された範囲の問題ですが、その辺は水原委員の場合はどういうことになりましょうか。
【水原委員】90万円の訴額の範囲です。
【佐藤会長】限度はある、そういうお考え方ですね。
【吉岡委員】弁護士過疎地は結構あります。実態から言いますと、そこのところを司法書士が埋めているということもよく言われていますので、利用者の立場から申しますと、司法書士が埋めて実質的に使いやすくするということが、非常にプラスになるのだろうと思います。
ただ、では、弁護士ゼロのところに、簡裁にしろ代理ができるだけの能力を持った司法書士さんが必ずいるのかというと、どうもそうでもないらしいという話も聞いておりますので、ゼロワン地域がかなりあるから、だから、司法書士に認めるという、そういう単純な考え方をしていいのかという疑問も持っております。
これは先ほどの弁護士報酬とも関係があるんですけど、お支払する額とか、お願いしたい中身の軽さとか、そういうことから言うと、やはり選択肢として欲しいという、そういう要求はあると思います。やはりその辺のところを埋めていくという意味で、一定の権限を司法書士に与えていくということは必要ではないかと思います。
藤田委員がおっしゃっている調停・和解ということも含めて、それで権限として与えるということになっていったときに、本当に利用者の立場としてどうなんだろうかという疑問も感じます。
それから、司法書士さんといっても、大まかに言うと、二分化されているような気がするんですけれども、かなり法律の勉強をして、それで試験に受かっている方と、そうではなくて、経験を積んでなっている方とあるので、おのずからその内容が違うのではないかと思うんです。
ただ、試験を受けて合格した若い司法書士さんを見ていると、どっちかというと都会型になっているように思います。その辺のところで、過疎と能力のある司法書士というのが、イコールになるのかどうかというのが、ちょっと私は分からないところです。
それから、もう一つ私が体験した事例でもって言いますと、これはかなり重大な問題だったんですけれども、弁護士さんに依頼する場合に、どれだけお金が掛かるか分からないという不安があって、それで本人訴訟で司法書士さんに御相談になっておやりになって、結局地裁で負けて高裁で負けて、最高裁で負けてしまった。それで、負けてしまってから相談にいらして、そこまで行ってしまっていて、幾ら消費者団体でバックアップしてくれと言われても、ちょっとできない。そのときに、相手方と両方から出ている書面を見せていただいたんですけれども、素人の私が見ても、理屈上の書面の書き方というのは明らかに弁護士さんの方がきちっとしたものが書いてあって、司法書士さんの指導でもって本人が書いた書面というのは見劣りがしてしまって、これだと裁判所の判断というのがそうなるのかしらと、そんなふうにも思いました。
ですから、ある一定の権限を与える必要はあるんですけれども、やはり、利用者が期待できるような教育とか試験とか、そういうことを並行してやる必要があると思います。
【山本委員】吉岡さんの意見に全く賛成です。この中間報告の書き方を見ますと、当面の過渡的措置というような感じが読み取れるんですが、現実問題はそうではなくて、いろいろな紛争解決の手段のアクセスを多様化することに重点がある、むしろそういうふうに考えて、将来、法曹人口が増えてくると、そこでまた切磋琢磨が行われ、ユーザーである国民の選択によってしかるべく決まっていくということで考えるべきではないかという感じがしております。そういった意味でも、吉岡さんがおっしゃるように、質の確保というのはやはり大事なポイントではないかと考えております。
【佐藤会長】どうしましょうか。長そうであれば、休憩を挟んでお話しいただきたいんですが。
【中坊委員】長いから。
【佐藤会長】おっしゃっていただいて、休憩後に御議論いただいて結構ですが。
【中坊委員】私は、先ほど吉岡さんや山本さんから出始めていった考え方がやはり一番正しいと思うし、それから、この司法制度改革審議会で今、司法書士さんに簡裁にせよ訴訟代理権を与えるということが一体何を意味するのか。我々の司法改革そのものとの位置付けの中で、何を意味するのかということをもう一度見据えていただきたい。我々は既に弁護士改革のときも今までの歴史的経過、実績、そこのところを総合的に判断して決めるんだということで、しかも法曹という概念の中には弁護士は入っているわけです。そして、これは新憲法によって初めて定められた職業であるということを明記した上で、今回の司法改革の登山口としての弁護士制度を我々は論じ、司法制度全体を論じてきたと思うので、そういう意味からすれば、いわゆる訴訟代理権そのものを、一定の範囲にそれを与えることが何を意味するのかということを、私はもう少し根本にさかのぼって考えなければ、単におっしゃるようにそれが弁護士の少ないところで、訴訟代理権を一定の範囲で、簡裁の範囲内でやればいいんだというような安易なことで決めるということは、大変な過ちをこの審議会は犯したことになる。だから、それは絶対に駄目だというのが、私の結論です。
【佐藤会長】では、ここで休憩を挟みます。今日は少し休憩を長く取りまして、3時15分から再開します。
【佐藤会長】それでは、審議会を再開いたします。引き続き先ほどからの議論を。
【事務局長】会長、先ほどの吉岡委員からの、弁護士のゼロワン地域における司法書士の数の問題なんですが、夏の集中審議でお配りいたしました「『隣接法律専門職種』に関する参考資料」の中の12ページに、「いわゆる弁護士のゼロワン地域における司法書士の資格取得事由別割合」という資料で、これは試験組と非試験組の数字を上げておりますので、御参考にしていただければというふうに思います。
【中坊委員】私はまず、今回のこの司法制度改革の論点整理を始めるときも、まさに三条実美から始まったように、我々のこの司法制度改革審議会というのは、まさに我が国のかたちをどう決めていくのかという、要するに明治維新以来の我が国の近代化の時代から今日までの大きな流れをつかまえて、我々の司法制度改革を論じてきたと思うんです。
それが、今、司法書士の方の訴訟代理権の問題になりますと、一転して皆さんのおっしゃるように、そんなの認めてあげたらどうだと、ゼロワンで弁護士の過疎地があるじゃないかと、それを現に司法書士がやっているじゃないかと。それだけの理由で、そのような根本的な近代の歴史というものを踏まえないで、ただ現状におけることだけで、あるいは未来に対することを抜きにして、それだけで安易に決めるべきではない。これは、先ほど吉岡さんも山本さんもおっしゃったとおりじゃないかという気がするんです。
私、そもそも元へさかのぼれば、これはおっしゃるように明治5年にさかのぼるわけです。言うまでもなく、私たちも弁護士の歴史の中でやってきました一番最初は、江藤新平のときの司法職務定制とか、あそこから、いわゆる代言人と代書人という二つの制度によってこの歴史は始まってきたわけなんです。その歴史の中においての弁護士と司法書士というものが、大きく最初から分かれて誕生してきた歴史がまずあるわけです。
それで、その代言人と代書人とどこが違うのか、別の言い方をすれば、訴訟代理という、訴訟における代理権というものが一体何であるのかという本質が一番の問題ではないかと思うんです。
代理というのは、御承知のように、やはり委任の範囲内において、その人に処分権限を含めて、代理人として本人に成り代わってやるということが代理の本質なんです。
代書というのは、書けない人の代わりにやるという、事実行為をそのとおり実行するということで、我々は分けるときに代理と使者、そのとおり伝えてくると、それがそもそもの代書というものと代言の大変大きな、明治の初めから、まさに我が国のかたちをつくったときからの大きな流れがまずあるわけです。
そういう歴史の中でなってきて、そしてお分かりいただけますように、例えば、今の試験制度にしても、代言人はどうですか。代言人に初めて国家試験、統一試験をやったのは明治13年、1880年なんです。この歴史的な事実を無視されて、それでは今後は司法書士さんの国家試験、統一試験はいつにできたかといったら、これは司法書士さんのこれを見ると、国家試験が導入されたのは昭和53年、1978年なんです。こんな基本的なことも、何も分けないまま、試験がどうだああだと。国家試験ができたのは昭和53年、1978年なんです。片一方は1880年なんです。100 年近い差があるんです。
その間、代言人というのは統一的な国家試験をやっており、その中において代理と使者とは違うんだと扱ってきた。だから使者である代書人は言うとおりを書かなければならない。代理人は、訴訟の場合において本人に成り代わってやるのです。そこにおいてそのような差があるということが、これほど大きな差が出てきて、歴史が育ってきて、しかもその後はお分かりになるように、代言人というのは一貫して我々の弁護士の先輩は、自治の獲得であるとか、あるいは判検事との水平運動と言われてきたようなことで、判検事と同じ試験になったのが1918年、今いわゆる判検事と同じ統一試験にするというのが1918年から弁護士はやって、その後もまだ司法官試補というのがあったから、それが戦後やって司法修習によってなってきた。こういう過去に大変に歴史があって、その中で醸成されてきた職業というものを、今ここでそういうふうに安易にお考えいただいて、おやりになるというのはいかがなものでしょうか。
これはまさに、それこそ我々が今あるべき姿というのを求めていったことと異なる。こんなことを言ったら、大変失礼ですけれども、私は司法書士さんに対して何の恨みも何もないけれども、なるほど私も、それは司法書士の皆さんがお書きになった文章もたくさん見ていますよ。まさにその代書に出発して使者と同じように、本人の言うとおりを書くということが司法書士さんの歴史なんです。
しかも、それが明治の19年になって登記法が公布されて、そして今度は登記事務に変わっていって登記の仕事をするもんだとなった。登記ということですから、法務省が、いわゆる当時の司法省が監督するということの形の中で、いわゆる法務省の監督の下に今日現在存在しているんでしょう。これは、何も弁護士という職業を守るために言っているんじゃないんです。まさに国民にとって、本人になり代わってやるということになれば、どれだけのものがいるかということが、長い歴史の中ではぐくまれてきてやっとできて二元主義、しかし二元主義そのものが各国の例を見ても必ずしもよくはないんです。
おっしゃるように、まさに我々は今ここで、隣接業種とかそんなこと言わないで、本来一つのものであるべきだということで、私たちも3,000 人という大幅な法曹人口増をして、そのためにロースクールをつくって、そこで育ててきて、これからやっていかなければいけないとしてきた。
しかし、私が言ったように明治以来一貫して政府が取ってきたのは、弁護士の要らない社会、少しでも権力、官力に対抗する人は抑圧するという形の中で、この弁護士の歴史も現在まで進んできているわけです。それが、一貫してです。今の言う、日本くらい税理士や弁理士や司法書士や社会保険労務士と、それが全部行政の監督の下に置かれた国はない。我々は公共空間の中で、動脈と静脈というのを分けたじゃないですか。その動脈の中に所属するものとして、司法をむしろ抑制するという力が働いて、こういう各制度が生まれてきた。その過去の我が国の形から、我々は論じながら、突如今度司法書士になったら、それはどうあるのか知らないけれども、何かの関係があって、あるいはいやもう自民党もそう言っているんですとか、まあかわいそうじゃないかとか何とかいうことの中で、こんなものが司法制度改革審議会の意見がですよとなってしまおうとしている。
そういうことで、本当にこの制度のよって来るゆえん、しかも代理の根源とは一体何であるのかということをわきまえて議論していると言えるのでしょうか。
例えば、未だに国家試験の科目の一つにしても、司法書士さんに憲法がありますか。憲法はないんです。今の司法書士さんの試験科目の中に憲法はないわけです。しかも、今おっしゃるように、数多くの方々が、半分半分という説もあるけれども、とにかく私も正確には分からないまでにしても、その人たちは登記所とか、あるいは裁判所の書記官をしていることによって、憲法などが分からなくても実務に精通していればそれでいいんだということでやってきた。そして、今一番恐ろしいことは、トラブルとかいうものが発生してきたときに、どれほど国民は実は弱い、病気の状態に入っているかを理解されていないことです。そうすると、これには非常に食い物にされやすいんです。非常に悲惨たる結果に終わる、いわゆる非弁護士行為と言われている行為が非常に起こりやすい。普通の人間が健康状態のときにはなくても、トラブルのときにはおぼれる者はわらをもつかむという心境で、確かにつかみやすいんです。その非弁行為というものについても、日本の国というのは余り取り締まってこなかった。そういう抑圧の中において、弁護士制度が生まれてきて育ってきた。だからこそロースクールができて、今、専門家を根本的にこれから養成しようじゃないか、3,000 人というものを決めようじゃないか、弁護士といっても5万と6万といって、まさに社会生活上の医師にならなければならないと言ってきたわけなんです。だから、そのことの大きなあるべき姿を追い求めて、今日までやってきた我々の審議というものと、今日突如になって、それは訴訟代理権なんて与えてもいいんじゃないと、私は簡単に論じるということは、この審議会そのものの命を失ってしまうと思うのです。だから、これは基本的によくないことです。その場その場の思いで結論を安易に導いてはならない。
しかも、我々はその実態とか過去の歴史とか、この隣接業種との関係で実績とか業務内容を調べると言ったじゃないですか、どういう実績を調べたんですか。どういう内容を調べたんですか。にもかかわらず、今日早計に訴訟代理権を与えるんだというようなことになるということは、私は単に、技術上の問題はさておいて、この審議会の審理の在り方、我々が今までずっと1年半、四十何回もやってきた歴史そのものを破壊してしまうことになると思います。だから、私はこういう考え方には絶対に反対です。
以上です。
【佐藤会長】藤田委員どうぞ。
【藤田委員】確かに中坊委員のおっしゃる歴史的な経過ということはございますけれども、今回の司法改革は法律家の目線ではなくて、国民の目線から見て使いやすい司法はどうあるべきかという視点で考えた場合に、もう一つ別の考え方があるんじゃないかということです。したがって、私も単純あるいは安易に権限を認めるという批判を受けておりますけれども、実際に地方の単独簡裁の実情を見て回っておりますので、そういう経験から申し上げているわけです。
本来から言えば、法曹人口の問題を議論したときに、隣接法律専門職種をどう考えるのかということが重大な問題としてあったわけであります。現在、問題となっている五職種を総計すると10万を超えるわけですから、そういう意味では隣接法律専門職種の将来像というものを、余り深い議論をせずに法曹人口や今の隣接法律専門職種の取扱いというところに入っていっていいのかということがございます。ですから、もう少し将来的な、隣接法律専門職種がどういうような在りようになるかということを考える必要があるのではなかろうか。
もう一つは、弁護士の在り方についての参考資料46ページ以下に、欧米の大ローファーム、ビッグファイブの実態ということが書いてございます。要するに、日本の弁護士は、勿論数も増やさなければなりませんけれども、専門化、国際化、レベルアップということをしなければ生き残れないということが言われているわけでありまして、イギリスに行きましたときに、全世界で3,700 人の弁護士を抱えているというクリフォード・チャンスで話を聞きました。そのときに、十幾つかのセクションに分かれて専門化されていて、そこにいる日本人のソリシターの話によると、クリフォード・チャンスも日本をマーケットと想定してねらっているんだということです。もしクリフォード・チャンスが日本に入ってくれば、日本の弁護士は蹂躙されるだろうと、小島武司教授のお弟子さんでありましたが、中田弁護士が言われておりました。
現在、更に問題になっておりますのは、会計事務所による法律分野の支配であります。世界のビッグファイブと言われている会計事務所が、弁護士を抱えて弁護士の業界を侵食しているということです。フランスは、もうほとんど蹂躙されてしまっているというふうに言われております。
そういう点から言いますと、先ほどの資料にもビッグファイブのことは書いてございますけれども、これに対抗するためにアメリカの巨大ローファームが数千人、あるいは1万というような数の弁護士をそろえた巨大ローファームを作って対抗しようというような動きがあるという新聞報道がございました。そういう世界の動きということを考えれば、やはり弁護士というのは相当程度のレベルアップ、専門化、国際化ということを図らなければ、外国の弁護士と太刀打ちできなくなる、フランスと同様な状況になると考えられます。会計事務所に抱え込まれてしまうのではないか。むしろ弁護士界としての問題は、そういう会計事務所との闘いにあるのではなかろうかというふうに考えているわけであります。
以上でございますけれども、もう一つ誤解を避けるために申し上げますと、先ほどの「『隣接法律専門職種』に関する参考資料」、昨年の8月8日付資料の11ページの資料5でありますが、司法書士の資格取得事由別割合という記載があります。この国家試験合格、大臣認定、法務局長認可で、国家試験合格以外の者は試験を受けていないというふうに誤解をされるといけませんので、注記にあるんですけれども、大臣認定でも法務局長認可でも、全国統一試験が実施されていたわけであります。国家試験導入以前にですね。ただ、全国統一試験が行われる前に、特例的な資格取得者が法務局長認可の中に含まれておりますが、たしかこれは昭和31年までしか行われていなかったはずでありますので、現在司法書士として仕事をしている人の中には、無試験で法務局長認可により仕事をしている人はほとんどいないというふうに聞いております。
先ほど、簡易裁判所での訴訟についての代理権を認めてはどうかという提案をいたしましたけれども、本来の訴額の範囲内の90万円の限度で認めるべきだという考え方もございますけれども、やはり簡易裁判所での訴訟代理権を認める以上は、訴額に関係なしに簡易裁判所に係属している訴訟についての代理権を認めるのが相当であるというふうに考えております。訴額が大きいからといって、必ずしも複雑困難ということに限らないのは、これ地方裁判所の事件でも同様でございますし、例えば、附帯請求じゃなくて賃料相当損害金の請求をしている場合に、期間が経過すれば90万円を超えるわけでありますから、そこの段階で訴訟代理権を失うというのも、余り合理的ではないというふうに考えます。そういう理論的、あるいは実務的な理由から訴額による制限というのは、考えない方が合理的ではないかと考えております。
【佐藤会長】北村委員どうぞ。
【北村委員】今、中坊委員の方から代理権を与えるべきではないという話があったんですが、確かにそういうふうに過去においては、それぞれの専門職が生まれてきた経緯というものが違うかもしれない。それを抜きにして論じられるかというような御意見もおっしゃったかと思いますけれども、中間報告の中にも、私は余り中間報告、中間報告というふうに持ってくるのは好きではないんですが、国民の利用しやすい司法という視点をこの審議会は盛り込まなければならないというようなことも、きちっとうたっているわけです。弁護士へのアクセスの拡充というようなことも、そういう視点からもやらなければならないというようなこともうたっております。
ところが、今、問題になっておりますのは、弁護士へのアクセスを拡充しようにも、弁護士がいない地域があるではないか。そこのところでは実際にそこに住んでいる人たちが困っている事情がある。これは私なんかも酒田の方に行ってまいりまして、伺ってきたところで、それは1か所ではないかと言われればそうですけれども、中坊委員は浜田までいらしたとかというふうに伺っておりますし、浜田にはまた今度公設事務所ができたというようなことも伺っておりますけれども、そういう経緯があって、実際にそこでは司法書士の中で、ある一定の能力というか、訴訟代理のできるような方が実際に活動していらっしゃるというようなことも聞いてるわけなんです。
中坊委員は、今ここで突然代理権云々、それからこの司法制度改革審議会の存在というものが疑わしくなるというようなこともおっしゃったわけですけれども、私は、この意見というのは昨年の8月の集中審議のときに申し上げております。そのときに、審議はされませんでしたが、どういう理由で審議されなかったのかというのは、私にはよく分かりませんけれども、報告はしまして、もう既に6か月前なんです。そこでずっとそういうようなことは、ここの委員は各人考えてきているんじゃないかというふうに思うんです。ですから、私は決して突然ではないというふうに理解しております。
先ほど私にどういう意見かということを求められましたときにも、私はその集中審議において意見を一度述べておりますので、本日はごく簡単に、理由等を抜きにしまして説明したわけなんです。そういう経緯があって、そしてそのときにはきちっとこの司法書士という人たちは能力が、研修等あるいはどういう形になるか分かりませんけれども、それを担保していきましょうと。憲法がないとおっしゃいましたけれども、そういうものについても、どういう形か分かりませんけれども、きちっとやっていきましょうと。しかも、この簡易裁判所というのは、民事訴訟法か何かで代理人を指定することができるみたいな規定もあるというふうに、私は法律家ではありませんから、これは竹下先生におっしゃっていただきたい思いますけれども、そういうようなことも認められているというようなことは伺っております。
なおかつ、90万円以下の簡易裁判所の事件も、弁護士だってやることができるわけです。それで、この司法書士だって、ではそこに訴訟代理権を付与することということも、弁護士がいないときには司法書士に頼むというようなことも認めましょうと。お互いに競争すればいいのではないか。それが無限に認めるのではなくて、簡易裁判所の事件に限るというふうにやれば。お互いに競争して、弁護士が能力が高いんだったら、みんなは弁護士に仕事を依頼するでしょうし、司法書士の方が安くって能力がある程度担保できるというんだったら、司法書士に依頼すると思うんです。これこそが本当に国民の利用しやすい司法なのではないかなと思います。
【中坊委員】最初から断っているように、これは決して弁護士という職業を保護する、あるいは維持するという意味から言っているのとは違いますということは、先ほどから私の言っているとおりです。私は、これは国民の立場にとって、利用する国民の立場に立って申し上げておるのであって、決して弁護士制度がどうだ、弁護士制度を守らないといけない、そういうことを言っているんじゃないんです。基本は、その意味では藤田さんも恐らく北村さんも、それじゃ利用しやすいとは一体どういうことであるのか、あるいは、その利用するという立場とは何であるかということを、先ほどから根本にさかのぼって考えなければいけない。
これは、事件に巻き込まれた人は一人ひとりが病気になっている、そのときは健康体と違って、非常におぼれる者はわらをもつかむという心理になっておる状況の人たちなんです。その人たちに、どういう薬を与えるかというのに非常に問題があるわけでして、それは悪薬であったとしても、余りよい効果が効かなくなっても、やはりそれでもおぼれる者はわらをもつかむで、つかむんです。それが、本当に国民のためになるのかという、非常に大きな問題があるわけです。それで、その基本が非常に問題があって、それでは私は先ほどからもるる言っているように、この弁護士をより少なくするというのは、私が弁護士の改革を、それこそもっと前から論じたときから言っているように、弁護士の要らない社会というのをつくって、法曹人口を、司法試験を法務省、司法省の管轄で非常に数を少なく持っていったということで、その制度を、そういうほかのいろんな職業で補わさせて多元主義でやってきた。その多元主義が本当にいいのかどうかということが、我々は、それは基本的には余りよいもんじゃないだろうという審議会のことがあって、これを法曹養成のところから司法改革の市民と一番接する登山口のところから直しましょう、その前には法曹養成、出てくる人たちから考えなければいけないということで、ロースクール論が生まれてきて、年間3,000 人という数も生まれてきて、我々は今その方向へ向かってやってきておるのであって、その大きな流れの中において、例えば、今でももうおたくらもお分かりになるように、預金したらもう金利なんて言ったら零コンマ何%ですよ、それでも御承知のようにいわゆるサラ金ローンみたいなところは、特定の会社を言っては何だけれども、20%とか30%というところがいっぱいいるんですよ。それが社会で本当にいいことですか。社会というのは、今おっしゃるようにそんなになっていながら、なおかつ20%で、常識で考えられないような金利を払っている。その人がお金持ちかと言ったらむしろ違うんです。一番弱い人がそこを利用しているんです。
だから、そのように市民という方々は、よく考えてあげないと大変なことになる。それで、トラブルというものに巻き込まれたときには、そういうふうになる。だからこそ、先ほどからいうようにもっと弁護士の質を上げて、まさに権利を守るのに能力を持った弁護士が、そして正義感を持った信頼される担い手というものをつくっていこうということで、我々は今、大きな流れをやっているんであって、今、言うように私が突然というのは、そういう根本的な流れというものの中において、これは考えるべきでありますということについては、従来から一致しているんです。
そこへ、私の言う突然というのは、今おっしゃるのはすべてのことが、司法書士という職業はある。それで、ゼロワン地域がある。そこはそうだと。そうしたらゼロワン地域があることについては、弁護士もそれをよしとしてなくて、今おっしゃるように、私たちが行った浜田にしたって公設事務所が初めてできたじゃないですか。それを今、弁護士はゼロワン地域をなくそうとして、それも10年先、20年先になくすると言っていないじゃないですか。今それをつくっていって、やろうとしている。あるいは、今度から弁護士が法人化にして、支店も設けてできるようにしましょうということも、今やっているわけです。そういうふうに登山口のところを直す手当も、我々として今、配慮してやっているわけです。そういうものと相まって利用する立場から、どうであるかということを我々は論じておるのであって、そこを私は、そういう大きな流れを無視したらいけないと申し上げているのです。
それを根本にさかのぼって考えましょうということは、これは先ほどから山本委員も吉岡委員もおっしゃっているように、これはもう我々が一貫して、今までこの隣接業種を論じるときも言ってきたことなんであって、そうだと思うんです。
それから、今度は藤田さんはまた一転して、司法書士さんの話から公認会計士のことをおっしゃいました。確かにワンストップ・サービスをしても、公認会計士が主導権を握るんではないか。これから議論されるかもしれないけれども、外国法事務弁護士との関連の中でも、それが確かに問題になってくるんです。それはまた全然、外国法というか国際法の問題だと思うんです。
最後に、この頂いた資料の司法書士さんの資格試験の事由のところで、ゼロワン地域においても、先ほどから言っているように国家試験も、そういうような基本的な国家試験ですよ。一応の試験はしてあるのと違って、これによってもゼロワン地域の資格取得事由別司法書士数と書いてあって、法務局長認可というのが48.1%でしょう。さらに、大臣認定はちょっと違うんだとおっしゃったとしても、それをまぜれば約80%がそうなんで、今の新しい国家試験を受けた方は、司法書士だって同じように、司法書士さんは全部過疎地域にみんな、国家試験でなった人はみんなそこへどんどん行っているんだという流れとは違うわけです。逆の流れなんですよ、これは。
まさにそこのところは、今言うように、特定の登記所とか、書記官をやっておって、長い間やったからということで、資格を与えてあるという人であって、決して市民の利益を守るのにふさわしいということにはなっていないわけですよ。
そういうことになっているという実態も出てきておるところに、今おっしゃるように、今度は藤田さんの理論でいったら、更にあって、90万円どころか、更に拡大しようとしている。しかし、与え出したら、今おっしゃるように、簡易裁判所の合意管轄したらどうなりますねんとか、合意管轄をしたら全部簡裁のところへ合意するじゃないですかとか。あるいは、今言うように、破産の申立てはどうするんだとか、そんなこともみんなできるようなってしまえば、事実上無制限を意味してしまうことになって、明治の初めから我々が論じたこととも全く相反して、そういうような制度になるんで、これは私は大変なことを意味するんじゃありませんかということを言っているんです。
【水原委員】司法書士全員に民事訴訟事件の訴訟代理権を与えるということを議論しているんではないんです。飽くまで能力のある者を、どういう方法で選ぶかということを、これは能力担保の方法として試験をやり、そして、研修も実施する。その簡裁の民事訴訟事件を担当して、職責を十分果たすことのできる能力のある者に付与するということが、大前提であることを我々は外して議論はできないと思います。
先ほども申しましたけれども、もともと簡裁事件というのは、弁護士の資格がない者でも、裁判所が認めれば代理人として訴訟行為をすることができるように訴訟法がなっているわけです。
いわんや、司法書士は、夏の集中審議のときでもいろいろ議論がありましたけれども、登記事務、裁判事務、相談業務、これについて専門的に知識、経験を持っているわけです。その中で、裁判事務につきましても、本人訴訟の際に、裁判所や相手方弁護士の要請で、司法書士が法廷で説明する場合もしばしばあるということを聞いております。
中間報告で、先ほど会長が紹介されましたけれども、国民の権利擁護に不十分な現状を直ちに解消する必要性等にかんがみ、当面の法的需要をいかに充足するかという利用者の視点から検討が急がれるんだと。その観点から、隣接法律専門職種を個別的にとらえて、そして、信頼性の高い能力担保制度を講じることを前提に、それによって担保される能力との関係で、訴訟手続の関与を含む一定の範囲・態様の法律事務の取扱いを認めることを前向きに検討するということを、我々が話し合って決めたところでございます。
そう考えてみますと、先ほど来何度も申しますけれども、能力担保がきちっとできておる者、この者について専門職種として司法書士に訴訟代理権を認めることには、何にも今まで歴史的な観点から言いましても、現状を踏まえたならば、何らおかしいことではないと私は思います。
【中坊委員】水原さんおっしゃるけれども、能力とは一体何なんですか。我々は弁護士資格を言ったときも、資質と能力というのをかなり言ってきました。まさに弁護士にとって、だからこそ、私個人も非常に長い間の弁護士生活の中でやっている、弁護士自治、自治の中で育てられてくることがどれほどか大事なんです。そうでなくても、戦前権力構造の下においていろいろなことがあり、我が国のかたちがそれで歪められてきたということを言ってきたわけです。
弁護士という職業は、最初から、だから権力者側からは、好まれる職業としてはしてこなかった。しかし、一番必要なのは、国家権力との対抗というところが問題になってくるんです。弁護士自治という中で育てられてきた中のことに意味があるのです。我々はそんなに能力というのは強調しているわけではありませんが、それじゃ今おっしゃるように、能力にしても、そもそも憲法のところから出発せずに、そこから各法律のところ、自分が取り扱う法律のところからやってきている者が、今おっしゃるように、能力と言ったって、それは基本が違うわけです。
しかし、今司法書士さんが弁護士さんと同じくらいの数、1万7,000 人いらっしゃるわけです。同じだけいる職業の方が、今どうするかというのは確かに私も大変なことだし、それではその方はこのままでよいのかという問題もいろいろある。だから日弁連も補佐人として出廷してもらう。今までなら裁判所の許可が要ったものを、そういうことにでも拡張してやろうという一つの案だろうと思いますけれども、そういう案も出しておるわけです。
それが私の言うように、一足飛びに代理というものと、代書というのは、基本が違うものを、ここになってきて突如一緒にするということには、大変な問題がある。
【佐藤会長】今日かなり本質論にまで及んでおりますので、できれば全員の御意見を承りたいと思います。
【石井委員】先ほど中坊先生から、明治時代にさかのぼって、そもそもというお話がありましたので、私がかねてから非常に不思議に思っております件を伺いたいと思います。明治時代に弁理士制度ができたときかどうかよく分かりませんが、弁護士さんが弁理士の業務を兼ねていいという制度ができたわけですね。それはどうしてそういうことになったのでございますか。
【中坊委員】弁理士業務も法律事務の中に入っておる。法律事務は、弁護士というのは全部できるんだと。税理業務もできるし、そういう意味です。だから、弁理士の仕事もできるということを前提にして、そういうのにして、片一方は部分的な部分だけができると。だけれども、弁護士はぐるぐると全部できるという意味です。一般と特殊というか、そういう関係になったんじゃないですか。
【石井委員】私などから言わせていただくと、弁理士というのは、かなり特殊な才能というか、知識とかそういうものがないとできないような気がするのですが、そういうものに関してまで、全部弁護士さんがやっていいという発想が、どうして出て来たのかという気がいたします。
【中坊委員】それは申請行為というのは一種の法律事務ですかね。法律に特許権という権利を取得するためにやる行為ですから、基本的には法律事務になる。また、それが勿論、相手方がおったりして争われたりしたら、そこでまた訴訟になりますね。だから、そういう意味においては、訴訟の前提というか、なり得るという余地もあるということから、弁護士には両方兼ねたものになるし、弁理士さんは申請するというところだけをやりなさい。それがもめたら、弁護士さんに任せないというのが今の規定です。
【石井委員】歴史的なものですね。
【中坊委員】そうです。
【石井委員】そうすると、今の時代にはいささかそぐわないようなところがあるわけですね。
【中坊委員】そぐわないとは言えないけれども、多少この間、うちの方の久保井会長が、弁理士とは訴訟のときに共同代理ならいいと言いましたね。そのときに石井委員が久保井会長に、それでは、弁護士が欠席したときには、弁理士一人が出ていっても、共同代理であったとしても、それはよろしいんでしょうかとお尋ねいただいたときに、久保井さんは、それはいけるんだと。それでよろしいということを言ったけれども、それだったら単独代理と似たようなことになってくるんで、この間の久保井会長の言われたことは、私は問題があるんじゃないかなと思います。それでは、単独代理も、病気のときにはどうするのだと言われたら、そのときには単独でも出られるとおっしゃいましたけれども、それは私も聞いておって、どうかなという見解を持っています。
だから、弁護士会が今言っているのは、共同で一緒に出てやるのはよいということを、特許権の取得その他が争われて、あるいは侵害が争われているときには、専門家とジェネラリストというか、あるいは訴訟の専門家というものとが一緒で、共同代理するのはよいということを言っているというわけです。
しかも、私、その各業種で行くと、例えば、税理士法にしても、税理士さんの方は、今法律をつくろうとしている。それは出廷陳述権でしょう。出廷陳述権というのは、言うたら補佐人の中のまた一部なんです。出廷して自分が陳述するというだけですから、税理士さんは、法律の中で出廷陳述権を与えている。我々もそれでいいんじゃないかと思うんですけれども、こちらの方は、補佐人を通り越して訴訟代理権でしょう。
今おっしゃるように、税理士さんと司法書士さんの扱いも非常にアンバランスで、司法書士さんに訴訟代理権を与えたら、そういうことにもなりかねない。先ほどからも皆さんの多少おっしゃったように、藤田さんもおっしゃったし、中間報告にも書いてあるし、みんなの言わはるように、根本にさかのぼって、過去のそういうことを全部踏まえて、根本的に隣接法律専門職種の一つひとつが個別にいかにあるかを考えた上で結論を出しましょうと言うているんやから、それなのに、司法書士の訴訟代理権だけ、ここだけ固まったというのは行き過ぎではありませんかということです。
【佐藤会長】中坊委員のおっしゃりたい趣旨はかなり分かってきました。
【石井委員】今のようなお話もありましたが、今度せっかくロースクールができるわけですから、弁理士さんも、出来るだけその中のコースを取っていただき、また、司法書士さんにも取っていただき、そういう中で法曹資格を取得する必要があるのではないかと思っております。先ほどから能力の担保というお話がありましたが、そういう中でそれぞれの仕事を遂行されるという形にすべきではないかという気がしております。
【髙木委員】先ほど藤田さんもちょっと指摘されたんですが、隣接法律職種のそもそもの本質論と言うんでしょうか、あるべき論、それは現状と将来を見据えた議論をしなければならなかったのに今までは余りその議論をしてこなかった。そういう中でどちらかというと、非常に現実指向で、こういう方向にしたらどうなんだろうかという取りあえずの各論的な議論に終始してきたのではないでしょうか。
中坊さんのお話にもありましたが、それから水原さんも言われましたけれども、国民にとって利用しやすい、そして信頼感の持てる仕組みであること、そんな形になっているのか、検証されなければなりません。それは安価で安直と言うと言葉が悪いかもしれませんが、イージーにアクセスできてという片面の要請と、もう一つは、十分に機能は果たしてもらえるという信頼性、その両面があると思うんです。そういう意味では、使いやすさと信頼性と言うか、そういう両面からきちんと検証されているのか。今のような議論のそれぞれのとらえ方がですね。
もう一つは、この5士業の皆さんは、それぞれの試験なり経験に基づいて資格を得られる訳ですが、いずれも行政庁からの資格取得です。先ほど来、弁護士に対しては、懲罰・懲戒についていろんな議論をされてきて、この方々にこういう仕事を、例えば、訴訟代理という仕事をお与えになるんなら、本当に弁護士と同等かどうかは別にして、ある種のそういう懲罰、懲罰も主務大臣等による懲罰という議論もあると思います。そういう意味では、国民主権なり国民の権利と行政権力により付与された資格、その辺の兼ね合いの問題などを、どういうバランスを取っていくのかという問題もあるんじゃないかと思います。
そういう意味では、過渡的にこういう必要があるから、それから10万を超える人たちが現に関わっているから、そういう専門性をもっと有効に使ったらいいんじゃないかという議論だけで良いのでしょうか。
過渡的にそういう議論があるとしたときに、将来の方向性やターゲットをどのように捉えた上での過渡期なのか、将来のターゲットのない過渡期論というのは、一旦それぞれの資格の方がいろんな権能を手に入れられると、今度それを離してくださいということは、そう簡単に言えないのですから、問題の本質をよく見極めて考えていく必要があると思います。そういう意味では、将来のターゲットなるものが何なのか、少しは議論をしておかないといけないのではないかと思います。総論的な感想というか、意見は以上のようなことです。
【山本委員】私も髙木さんの言われることはよく分かるんですが、さっき吉岡さんの意見に賛成したというのは、吉岡さんは、単にゼロワン地域に弁護士のサービスがなくて、司法書士がいるから、だから代理権を与えたらどうだということでは、いけなくて、代理を担うことのできる能力が備わっていることが大事なんだとの御主張でしたので、これは非常に大事なことじゃないかというように私は受け止めたわけです。
今、髙木さんの言われたことに関して、私が先ほど発言させていただいたのは、この問題は、ロースクールで法曹人口が増えてくるまでの過渡期として与えるということではおかしいということです。将来的な姿は、法曹人口がうんと増えて、満ち満ちて、今議論されている司法書士の訴訟代理と、豊富になった法曹との間で切磋琢磨が行われて、おのずといい方に選択されていくべきであり、そういうことで、恒久的なことを考えるべきだという御意見を申し上げたわけでございまして、そういった意味では、北村さんの御意見に賛成ですし、髙木さんの問題提起については、今申し上げたように考えているということでございます。
【髙木委員】先ほど非弁行為という言葉を使われましたね。ときどき新聞で拝見するだけですが、日弁連の懲罰委員会で、非弁行為に関わった方々を懲罰されているという記事を読んだりしますが、例えば、5士業の方々に、訴訟代理等の法律事務を託されると、これは非弁行為、それも道徳的にモラルという意味で問題な行為等が包含される、そんなことの兼ね合いで非弁行為とこういう問題というのはどういうふうにお考えですか。
【中坊委員】まず非弁行為というのは、弁護士にあらざる行為ということなんですけれども、確かに弁護士の中にも、いわゆる非弁提携ということで、弁護士法72条違反でやられておる弁護士がおるということなんです。それはどういうことかと言いますと、いわゆる弁護士の看板だけを使う。その表札だけ使って、実際は弁護士以外の人がそれをやるということです。それで今お分かりになるように、示談交渉とか、取立てとかいうのは非常に暴力団や、いわゆる闇の世界のそういう関係の人が多く携わる素地があり、トラブルというものは非常にこれらの餌食になりやすい。人はなるべくならそういうものは黙って、何とか世間には分からないようにして処理しようという気持ちが多いということから、闇の勢力が介入することが非常に多くて、そういう意味における闇の世界の中で、彼らが結果的に非常にそれで暴利を得たりしている。取り立ててやるよと言ってみたり、あるいは取立ての、さっきから報酬の問題が出ましたね。報酬の問題にしても、むちゃくちゃに10取れば9くらい報酬に事実上取ってしまうとか、そういうようなことで社会に泣かれている人というのは、予想外に多いものなんです。そういう非弁行為というのがあって、それを防ぐ唯一の今の支えが、この弁護士法72条なのです。それに恥ずかしいことではありますけれども、弁護士が、一見して合法性を見せるために、その弁護士の人の肩書だけを利用しているのです。しかもこう言っては何だけれども、年齢の非常に高いような人とか、あるいはよその職業をしていて、弁護士資格はあるけれども、実は肩書だけの人を利用してやるのです。その人に一定のお金を払って、実際は資格のない者が実際の取立行為とか、示談行為などをやっているのです。
今言うように、裁判所の訴訟代理権を与えるということは、事実上、それ以外の、そこへ訴訟代理権を自分は持っているんだからということで、訴訟外の事実をやるということを事実上意味しているわけです。そこは限りない、ある意味において暗黒の世界があって、そこでいろんな不法行為や、違法行為が行われておるというのが現実なんですよ。そこが今言う、弁護士法違反で、しかも弁護士が肩書を貸しているということで、何回かいろいろ新聞紙上に出て、犯罪を招いておるということになるわけです。
だから、今おっしゃっていただくように、国民が利用しやすいと同時に、利用したら逆に何と言うか、食われてしまうというか、怖いものにも引っ掛からないようにさせることが非常に大事だという側面もあるわけです。
だからこそ、弁護士の懲戒とか、そこらがもっと厳格に行われてきて、監督が行われないと、それが公の主務官庁だけの監督で、そういうものが効くんですかという問題が出てくるということは事実です。
【水原委員】国家権力との対決のお話がありましたけれども、今、議論をしているのは、刑事事件のような国家権力との対決の場面は全くない、純粋の民事訴訟事件についてでございますので、それに関する危惧は全くないだろうと思っております。
それから、自治のないものに訴訟代理権を与えることはどうだろうかという御指摘もあったように思いますけれども、現行法上、弁理士さんというのは、経済産業大臣の監督を受けているわけでございます。審決取消訴訟の代理権がなおかつ与えられております。自分の監督官庁を相手取って争うことは、堂々と今までやってきておるわけでございまして、その勝訴率も約30%と、私は最高裁の資料で見ております。だから、監督官庁を相手取っての訴訟も堂々とやっているわけでございますので、それについての危惧も余りする必要はなかろうかなと、このように考えております。
【中坊委員】まず民事事件は権力は全く関係ないと、刑事事件だけが関係ある。そんなことは全然ないですよ。今はもう法の規制というのは網の目みたいに、ありとあらゆる、建築基準法にしたっていろいろあるわけです。そういう法律というものが、いろんな意味において規制というのはあり、それに全部いろんな官庁があるわけです。それが民事裁判に絡んでくるというのは多々あり得るわけであって、私が言うているのは、何も刑事裁判だけの、刑事罰の権力行使を言うだけじゃなしに、そういう場合がしばしばある。
もう一つは、堂々とやっていると言うけれども、主務官庁がそういうことを快く思うだろうかということです。だからこそ弁護人という制度もあるわけであって、監督するものをやって、それが堂々とだれでもやれるというほど、今、日本の国民が、自分の足で立つ自律のところがありますか。我々は我が国のかたちの中で、諸外国と比べても遅れていると我々は認定しているところなんですからね。そこのところが、やっと弁護士だって、長い間の何十年という明治以来の歴史を経て、やっとアメリカに占領される中において自治権を獲得したんであって、それまでは今おっしゃるようにずっと長い間検事さんの監督だったんです。
そういう意味における、あるべき姿というのを求めるならば、今言うようなことは決してならないと私は思います。
【竹下会長代理】理念として国民の権利を守るべき職業はどうあるべきかということは、中坊委員のおっしゃったとおりだろうと私も思いますが、この審議会としては、国民の視点から見た現実というものも無視するわけにはいかないのではないか。弁護士の側について言えば、確かに日本弁護士連合会がいろいろ努力をして、弁護士過疎地域を可及的速やかになくするように努めておられるということもよく承知しております。しかし、これは実際問題としては、そう一朝一夕に実現できないという現実がある。
他方、司法書士の方について言えば、確かに、当初は文書を作成する、それから登記手続について代理するということが主要な業務であったのだと思います。
しかし、裁判所に提出する書類をつくるという場合に、内容は全部本人が決めていて、ただそれを書き写すだけだというものではないはずであって、当然文書を作成する過程では、当事者と司法書士との間でいろいろな法的観点も交えたコミュニケーションが行われて、その上で本人の利益を最もよく守るためにはどういう文書を作成すべきかという判断をして作成がなされていると考えられるわけです。勿論、それが理想どおりいかない場合もあると思いますけれども、一般的にはそういうものでしょう。現に、とりわけ弁護士過疎地域においては、司法書士の方々がそういう形で当事者の法律事務を処理しておられるという現実があるわけでございますから、やはり私としては、理想は理想だけれども、やはり現実的な対応としては、司法書士の方々には、簡易裁判所の訴訟代理権を認めてよいのではないかと思います。
その場合に、先ほど自分自身で出した問題ですけれども、やはり訴訟はよいけれども調停は駄目とか、和解は駄目というのは、なかなか現実的には難しいのではないか、簡易裁判所に関する限りは、調停、和解も含めて、代理権を認めてよろしいのではないかと思います。
ただ、家庭裁判所の問題は、少し事情が違って、弁護士過疎という点でも違いますし、それから事件の性質というものも違いますので、我々がここで決めるのは、簡易裁判所の訴訟代理権ということでよろしいのではないかと考えています。将来的な点は、先ほど山本委員や北村委員が言われたように、後から一旦与えた代理権を否定するというようなことはできないので、弁護士さんの方が津々浦々に充実してくれば、結局それと競争関係になって、国民がどちらが費用その他も含めた上ですぐれているかという判断をして、選択をする。それに任せてよいのではないかと、そういう意見です。
【藤田委員】ちょっと付け加えさせていただきますが、民事訴訟でも、権力行為に関係する事件がありますし、簡裁でも、国が被告になる訴訟がありますけれども、これは土地の所有権とか、私法上の金銭請求でありまして、いわゆる行政事件訴訟法による行政訴訟は、地裁の支部でも扱えない。地裁の本庁だけで扱っているということが一つ。
それから、いずれにしても能力担保と倫理的なレベルの維持というのは是非とも必要なことでありまして、これは別に司法書士に限らず弁護士も同じことであります。大幅増員ということで年間3,000 人とか、全体数を4万、5万人を目標にしてということでありますけれども、それについても能力の担保、特に倫理的なレベルの維持が、前提として必要なことだろうと思います。
先ほど、ビッグファイブに言及した意味なんですが、私が考えておりましたのは、将来像として、司法書士はホームドクター、それも簡易裁判所という機能する場を限定されたホームドクター、弁護士はそういう限定のない場でのホームドクターと専門医というような、比喩的なイメージでありますけれども、将来の職業的な住み分けとして考えられるのではないかということで、ビッグファイブのことを申し上げたわけであります。
【吉岡委員】ずっと黙って皆さんの御意見を伺っていて、すごく悩ましいと思っていることがあるんですけれども、一つは、弁護士の場合には、弁護士自治ということで、どこからも影響を受けないという立場に立っている訳ですけれども、司法書士の場合には、一応法務省が監督するという立場なので、おのずから違ってくる部分があると思います。
その辺のところと、利用者である国民の不利益につながることがあると、これはちょっと問題だと思います。その辺のところが今、藤田委員のおっしゃった能力担保の問題、あるいは倫理の問題ともつながってくるのではないかと思います。
先ほど弁護士会の懲戒の仕組みについてもお話しいただきましたが、弁護士会の自主的な綱紀といいますか、それが十分に機能しているといえるところまでいっているのかという問題があるのですね。一方では、法務大臣が監督するということで本当に担保できるのだろうかという、その辺のところも心配なところでして、やはり一つの役所の監督下にある場合に、おのずから制限されるというようなことが起こりはしないか。そういうことがあるとすると、国民の不利益につながる恐れがある。その辺が払拭されていないというのが現状でして、結論を言えなくて申し訳ないんですけれども、やはりその辺の解消が非常に重要ではないかと思っています。
【髙木委員】藤田さんの言われる住み分けの論理だろうと思うんですね。では、そういう論理に立った場合、例えば、信頼性だとか、そういう条件がどうしたらつくれるのか、現状はどういうふうに評価されているのか、藤田さんは自分で裁判官の立場でいろいろ見てこられたので、そのイメージをお持ちだと思いますが、私はその辺の実態がよく分かりませんし、ヒアリング等でお聞かせいただいた印象だけの話ですが、過渡期と言うけれども、どんな方向に向かう時の過渡的な対応なのか、そういう意味での十分な検証が必要だと思います。余り時間もないんですが、今、ADR研究会を会長代理に主宰してやっていただいていますような、そんな場なり何なり、もう少しいろいろな意味での検証というか、それぞれの制度に関わる制度論で、どういうところを見直して直すんだというようなことについて討論した上で、こういうことなら大方の国民は、世に言う信頼性の高いものとして受け止め得るのではないかといった点を検証してみる必要があると思います。
【佐藤会長】一通り皆さんの御意見を伺いました。伺った上での私のまとめというのか、多分に私の考えが入るかもしれませんけれども、申し上げてよろしいでしょうか。
申し上げたいことは、3点あります。第1点は、この問題を考えるときの基本的な我々の哲学といいますか、理念的なとらえ方にかかわることです。確かに、歴史的に見ると、中坊委員がおっしゃったような事柄が根本的な背景にあって、非常に難しい課題をはらんでいるように思われるのでありまして、そのことを我々として認識する必要があると思います。そこをあいまいにしてといいますか、そこを括弧に入れて、便利ということだけで、この問題を考えてはいけないということを最初に申し上げておきたいと思います。このことは、実は、皆さんそれぞれお考えだったのではないかと思うんです。今日は中坊委員がこの点について非常に熱を込めて力説されましたけれども、この種のことは、それぞれの委員がそれぞれの頭で、そこには多少の濃淡はあるでしょうけれども、お考えになってこられたことではないかと私は推測しています。
申し上げたい第2点は、北村委員がおっしゃったこととも関係するんですけれども、先ほど御紹介したように、中間報告の32ページですが、弁護士人口の大幅増加とその活動領域の拡大を図ることを前提としつつ、当面の国民の法的需要をいかに充足するかという課題、将来、前記の弁護士制度の改革が現実化する段階での弁護士と隣接法律専門職種との関係をどのようにするかという課題等共に検討すべきであるというように述べております。これはかなり悩みのこもった文章だと私は思います。決して簡単に決めたわけではなくて、悩みのこもった文章でありまして、我々は中間報告のこれを踏まえて考える必要があるだろうということです。
そして、第3点として、司法書士に仮に認めるとしても、先ほどから皆さんおっしゃっているように、試験、研修、その他信頼性を確保するためにどういうことが考えられるのかという難しい課題があるということであります。今日はここですぐ結論を出すわけにいきませんけれども、これは実際に現実化するときには相当考えなければいけない課題だろうと思います。さらに、関連して、代理が最初おっしゃったこととも関係するんですけれども、藤田委員の御意見のようにおよそ簡裁での事件というくくり方をするということでいいのか、そこについても更に検討すべき課題があるということなのか、これはいいけれども、これは無理ではないか、といったことについても真剣に考えた方がいいのではないかということもあり得るかもしれません。
今日は、これらの問題についてどうだという結論を私は申し上げるつもりはありません。その辺の問題も含めてクリアーできるならば、当面の法的需要を満たすという中間報告も無視できませんので、少し前向きにこの司法書士の問題を考えてみようではないかということ、今日のところこのような取りまとめでいかがでしょうか。
中坊委員は御不満であろうと思いますけれども、根本的な問題があるということは、私どもそれぞれ共有している認識ではないかと考え、御理解いただきたいと会長として思います。中坊委員としては簡単にうんとは申しにくいでしょうけれども、皆さんの御意見を伺っていると、中坊委員がおっしゃっていることと、皆さんが考えていらっしゃることとは必ずしも矛盾することではないような気もするわけです。さっき三つのことを申し上げましたけれども、今日のところはその辺で御理解賜りますでしょうか。
【藤田委員】基本的な方向付けであって、具体的な論点について結論をこの段階で出すわけではないという趣旨でおっしゃっているわけですね。
【佐藤会長】前向きに考える必要がある、中間報告を踏まえれば。けれども、実際にそれを現実化するについては、なお、もう少しいろいろ考えるべきことがあるだろうということを申し上げました。
【藤田委員】異存ありません。
【髙木委員】今日は司法書士さんの話に特化したような話になりましたけれども、そのほかの件も。
【佐藤会長】これからちょっとお諮りしたいと思います。
司法書士の問題については、ただいまのようなことで取りまとめさせていただければということですが、次に、先ほどから出ておりますけれども、弁理士の問題があります。これについては、この間の久保井会長のお話にもありましたが、弁護士が受任している事件でという前提ですけれども、いかがかということであります。弁理士への特許等の侵害訴訟代理権の付与についても、先ほどのような条件、つまり、弁護士が訴訟代理人となっている事件に限るという前提で前向きの方向で考えてみてはどうかという辺りなんですけれども。
【中坊委員】実は、石井委員でしたか、お尋ねいただいた久保井さんの見解は、ちょっと私は疑問だと思います。そういう点はもう一度よくお伺いしたい。共同訴訟代理ということで、日本弁護士連合会で認めているという趣旨が、どういうことなのかはもう一度よく返事を頂きたい。
【竹下会長代理】要するに共同代理ということですね、弁護士と共同代理。その内容の意味するところについては、今、ここできっちり決めなくてもよいのではないでしょうか。
【中坊委員】私はそう思うけれども、尋ねていただいて。
【藤田委員】前に一度申し上げたんですが、裁判所の現場は必ずしも賛成ではないと思いますね。現在、弁理士法で審決取消訴訟については高裁での代理権が認められていて、現実に代理しておられるわけですが、現場からはある程度負担になっているという声があります。侵害訴訟というと完全な民事の損害賠償請求訴訟になりますので、そこのところはどうかという危惧の声があるわけですが、最高裁はどちらかというともうちょっと柔軟な意見のようでありますが、そういう点を踏まえまして、よほど能力担保制度、試験や研修について配慮していただいて、現場の負担になるようなことのないようにしていただきたい。現在は一般民事法や手続法についての能力をチェックする機会がないようでありますから、そこら辺を十分に検討していただくということであればということでございます。
【佐藤会長】その具体的な条件といいますか、制度の在り方については、なお相当いろいろと考えないといけないところがあるという前提の上で、この問題を検討するということにさせていただきたいと思います。
次に、税理士の方なんですけれども、この点についてはどのように考えるべきでしょうか。
【水原委員】これは既にいろいろと意見が出てきているところでございまして、弁護士が受任しておる事件について、弁護士が裁判期日に出廷している場合に出廷陳述権を認めるべきであろうと。それ以外にはちょっと難しいだろうという気がいたします。
【佐藤会長】既に現実の動きもあり、そのこと自体どう考えるかという問題もあるんですけれども、できれば、今、水原委員がおっしゃったように、弁護士が訴訟代理人となっている事件について、税理士が税務訴訟で出廷陳述権を持つという方向で考えるということでよろしゅうございますか。
問題はというと何ですけれども、北村委員がおっしゃったように、行政書士と社労士についてどのように考えるかなんですけれども、この辺についてはいかがでしょうか。
北村委員、更に付け加えるべきものは。
【北村委員】いいえ、もう8月に申し上げてありますから。
【佐藤会長】いかがでしょうか。
【藤田委員】まだ、司法書士や弁理士などに比べると、制度としても歴史が浅いということもありますから、そういう点で活躍したいという意欲は十分に買うことは買いますけれども、まだそういう具体的な訴訟上の権限ということを考慮する段階まで来ているのかどうかということがあります。
むしろ、ADRや何かの面で、紛争解決に関与して、そして貢献していくというような実績を積み重ねていただいて、その段階で考慮するという方が制度の安定性から言ってもよろしいのではなかろうかというふうに考えます。
【水原委員】全く同感でございます。この間、夏の集中審議の際に、行政書士会、それから社労士会からのいろいろな御意見を賜りましたし、質問もいたしまして、いろいろお答えを頂きましたけれども、必ずしも十分体制が整備されているとは、私は感じ取られませんでした。
そういう意味で、ほかの3業種のような権限を与えるのは、今の段階ではいかがなものだろうかと、それよりも、今、藤田委員が発言されましたが、ADR手続への関与など、一定の範囲や対応を絞って法律事務取扱を認めるようなことを考えたらどうだろうかと、極めて漠然としたことですけれども、そんな感じを持っています。
【髙木委員】社会保険労務士について、一言発言しておきたいと思います。確かに、社会保険労務士には歴史的には司法書士などよりずっと短い歴史しかないということなんですが、一方で、今、個別労働事件等がかなりのテンポで増えていたりする中で、これはまた後日御論議いただきます労働事件訴訟、あるいは行政訴訟にも少し関わるかもしれませんが、社会保険等の不服に基づく訴訟等のことを考え、現状は弁護士さんが代理人として受けておられますが、社会保険労務士の方々に、ある種の専門性みたいなものに担保されたいわゆる法廷陳述権を付与して良いのではないかと思います。これはバランスで、勿論、本当にそういう権能が与えられていいような制度的なバックグラウンドをどう用意できるのかといったことと当然絡むんだろうと思いますが、検討していただきたいと思います。
それからもう一つ質問なんですが、今、水原さんからADRのことが出ましたが、ADRとこういう隣接法律専門職種の関係というのは、どういう扱いをこの審議会でしていくことになるのでしょうか。
【佐藤会長】確かに、ADRとの関係で何か考えないといけないところがあるかもしれません。この辺どうでしょうか。
【竹下会長代理】私、実質的には、おっしゃるように、社労士なら社労士の専門領域についてのADRなどについては、代理権を認めてもよいのではないかと思いますけれども、ただ、それをこの審議会でどのように決めることになるのかという点については、ちょっと今のところ確たる意見がないのです。ちょっと検討させていただきたいと思います。
【佐藤会長】では、ADRとの関係では、今代理が言われたようなことにさせていただくことにして、訴訟手続との関係については、行政書士と社労士の専門性を訴訟の場で活用する必要性や実績等が明らかになった将来において、出廷陳述などの一定の訴訟手続への関与の在り方を今後個別的に考える、ということでしょうか。
行政書士、社労士については、今日の段階では、実績や状況などをいろいろ考える、将来の課題とする、ということにさせていただきたいと思います。
【髙木委員】将来の課題として、今度の審議会では、社労士と行政書士は扱わないということですか。
【佐藤会長】扱わないというよりも、より正確に言えば、これについてどうするかについて、今日ここで結論を出すのは難しいという趣旨です。
【髙木委員】分かりました。
【山本委員】位置付けを検討することになっている企業法務の点について、関連企業といえども有償でやるのは弁護士法違反であるということですけれども、昨今の企業活動を見ていますと、頻繁に組織変更が行われ、企業活動環境の変化に機敏に対応している。持ち株会社化とか、あるいは分社化とか、そういったことが非常に盛んになっているわけですが、そういう場合に、法務部門の機能を本部に集中して、分社化したグループ企業に対して同じようなサービスを一元的に提供することが合理的なわけです。しかし、組織は独立しており会計は別なんで、サービスの対価はいただかざるを得ない、そういう実態があるわけで、実質的には一つの企業の中でやっている場合と余り変わらないんですけれども、そういった場合でもまかりならぬということになるのかどうかですね。その辺の企業側の要求、要望としては認めてもらえるのではないだろうかという期待があるわけでございますが、いかがなものでしょうか。
【中坊委員】私は個人的にはやはり賛成しかねると思いますね。企業法務だけであって、企業であればだれでも自由に会社は設立できるし、今まで我々が論じてきたのは一定の資格というものに基づいて議論しているわけですから、ちょっと今、山本さんのおっしゃっていたのは、確かに、今の企業社会の中にあってそういう必要性があるというのはそれなりに分かりますけれども、何ら制限がないものをそこへぽんと資格のある、今まで隣接業種という中で論じてきたのとはちょっと違うのではないでしょうか。やはりその違いというのは今、我々としてそこまで届いていっていいのかどうか、現在直ちにそういう資格と関係のないところまで全部が我々の審議の対象になるというのは、ちょっと苦しいのではないかという気がするんです。
【山本委員】将来的には、ロースクールを出た人たちがたくさん出てくるから。そういう企業内ローヤーというのはそういう形で育ってくるんでしょうけれども。
【髙木委員】分社化された会社から。
【山本委員】要するに、分社化する場合に、それぞれに独立した部署を持つのは効率はよくないですから、一般管理部門は原則として本部機能に集中させて、新しく設立したグループ企業は、それぞれの専門分野に特化していくわけです。
【髙木委員】そうすると、持株会社なら持株会社として置いておいて、費用は全部配付するわけですね。
【山本委員】そうそう、一般管理費用を分担しろよということになるわけです。
【中坊委員】企業の中にも資格のある方がいらっしゃるわけでしょう。その方の使者としてとか、そういう手助けというのは、現実にどこでもされておるわけですから、そういう形であって、その方がそういう資格と関係なく、その人と関係なく、独立でできるということになってくる範囲が、我々が今議論しているところとは少し違うので、しかも企業へもこれから弁護士さんはどんどん使用人になるようにしていくことを、今度の弁護士法30条の、この前届出制のところで問題になったように、営業許可も緩めていくという制度になっているんだから、そういう対応の仕方はまだ可能だと思うんですよ。そういう今、山本さんがおっしゃっていることを即認めなければ非常に困ったということには必ずしもならないんじゃないでしょうか。だから、そういう現在の資格のあれを活用することによって可能なことにもなっているので、今、過疎地の庶民の問題とはちょっとまた違うような感じがするんですけれども。
【山本委員】訴訟代理権ということでいえば、日本では、本人訴訟はできるわけですね。代表取締役若しくは支配人であればできる。ですから、法務部門の者を支配人にしちゃえとかいった乱暴な話も聞くわけです。どういうふうに解釈していいかよく分からないんですけれども、一種の本人訴訟の延長ということで、中坊先生がおっしゃるのと違う側面もありそうなんですけれども。
【竹下会長代理】ちょっと伺ってよろしいですか。私は山本委員のおっしゃるように、そういう必要があると思うのです。それは決して弁護士法の趣旨に反するわけでもないだろうというのは分かるのですが、ただ、どの範囲のというのが、何か基準があって画せるのでしょうか。持株会社だと比較的はっきりしているかもしれませんね。それが分社化とか、何とかと言い出すと。
【山本委員】100 %子会社というのは、実質親会社と同じだと。ただし、そこから持株比率がだんだん小さくなっていったとき、これはどう解釈するのか、何だか分からなくなっちゃうんですけれども。
【竹下会長代理】例えば、商法上の親子会社などというとかなりはっきりしますが。
【山本委員】50%超の子会社。20%以上の関連会社とかいろいろあるんですけれども。
【竹下会長代理】ちょっと何かその辺がはっきりしないとやはり。
【山本委員】そうですね。いろいろなバリエーションがありますけれども。ちょっと研究を、余り細か過ぎますね。
【藤田委員】山本委員の顔を見ると胸が痛むのですが。例えば、自社訴訟の代理権というような、裁判所が関与する手続についての代理権ということになりますと、日ごろいろいろ御意見を承っているようなリーガルセクションの方などは、これは弁護士はだしの人もおられて、この人ならこれは十二分に務まるだろうなと思う人もたくさんいらっしゃるんですが、問題は、限界の引き方が非常に難しい。一部上場の会社だけというわけにはいかない。そうすると、今でも名もなき小会社について、三百代言が支配人として称して出てくるのに手を焼いているんですね。ですから、私も法務部員であると言われると、これは本当に困っちゃうということになるわけであります。私は都の労働委員会に行っているんですが、ある特定の業種で、いろいろな会社を渡り歩いて、会社側の方から代理人、補佐人として出てくる人がおるんですが、そういうような人たちが、これは得たりかしこしと登場されると裁判所としては非常に困るんです。こういうように、線の引き方が非常に難しいという実務上の問題がありますので、御考慮願えればと思います。
【山本委員】こういう引き方がありますか。司法試験はパスしているが、修習は受けていないという法務部員だったら構わないとか。
【佐藤会長】それはまた別途考えようがあるんじゃないですかね。その制度的な条件整備を考えるということで。司法試験を通っているわけですから。
時間は結局5時になりそうですけれども、あと、特任検事、副検事、簡裁判事の経験を有する人たちの専門性の活用をどうするかという問題があります。特に水原委員がかねていろいろ御主張なさってきた問題なんですけれども、その活用の在り方を前向きに考えてみよう、少なくとも特任検事に法曹資格を付与するということについて、どのように制度的に詰めたらいいのかについて今後検討してみる、という辺りでいかがでしょうか。個別的にそれぞれ事情があるみたいなんですけれども、少なくとも特任検事については、ということで。
行政書士、社労士の件については、先ほど申しましたように、将来的課題として個別的に検討することが考えられるという辺りで今日はとどめさせていただきたい。
それから、ADRとの関係ですけれども、弁護士法第72条の見直しといいますか、それを検討する一環として職種ごとに実態を踏まえて判断する。その際に当該法律事務の性質と実情、各職種の業務内容、専門性やその実情、その固有の職務と法律事務との関連性、法律事務に専門性を活用する必要性等を踏まえて、その在り方を個別的に検討する。代理が今後ADRに触れられますので、そこで考えるということにしたいと思います。
最後に、ワンストップ・サービスなどの問題ですけれども、弁護士と隣接法律専門職種その他の専門資格者による協働を積極的に考えてみようではないか、例えば、収支共同型や相互雇用型等の形態など、いわゆる異業種間共同事業を、今申しましたような見地から、更に検討してみてはどうか、という辺りでよろしいでしょうか。
【中坊委員】その点は、先ほど藤田さんがおっしゃったように、五大会計事務所が、そういうものを独占するのではないかというおそれがある。確かに今、国際的なのは、公認会計士が全部を統括するんだというのが今問題になっているときに、その点はやはりひとつ注意はしつつ考えるということにしていただかないと、ただ、無制限に考えるというのでは、先ほど藤田さんがおっしゃったような、そこが席巻しちゃって、またとんでもないことになりかねない。
【佐藤会長】それは、日本の弁護士と外国法事務弁護士等との提携、協働の関係の問題ですね。
【中坊委員】国際的会計事務所でしょう。
【藤田委員】比較にならないぐらいの規模です。
【中坊委員】それは考えに入れておかないと。
【竹下会長代理】ワンストップ・サービスの方のお話ですね。
【中坊委員】ワンストップはワンストップだから。
【佐藤会長】今言いました日本の弁護士と外国法事務弁護士との提携・協働の在り方なんですけれども、外国法事務弁護士による日本弁護士の雇用の問題などについては、もっと広い視野といいますか、国際的な問題とからめて考えなければいかぬので、そう軽々に結論を出せることではないんだろうと思いますが、さしあたり特定共同事業などについては要件を少し。
【竹下会長代理】ちょっとよろしいですか。前回配付されました資料に私の名前も出ていますので、ちょっと申し上げたいと思うのですが、私は第1次外弁研究会と言われた研究会に関与していたわけでございますけれども、私どもはそのとき提案いたしましたのは、現在の外弁法の49条2項を改正して、外国法事務弁護士が組合契約、その契約によって特定の弁護士と外国法事務弁護士とが多様な形で共同事業を行えるようにするべきではないかということであったのですね。それが、実際には、49条2項には手を付けずに、49条の2という新しい規定を設けて、そこで例外的に共同事業を認めるという方式になった。それはそれでいろいろ事情があったので、そのこと自体は構わないと思います。
それから、その後、何回か共同事業の範囲を広げてきたというのはそのとおりなのですが、前回配られた資料にもございますように、やはり外国の人たちから見ますと、非常に複雑でいろいろ枠がはまっている。日本の弁護士事務所と外国法事務弁護士の事務所は別々でなければいけない。一つの事務所を共同で経営するというようなのは駄目とか、そういう点で障害が多いというところが問題になってきているように思いますので、一挙に、全く自由にしてよいかどうかは別ですけれども、やはりせっかくこういう制度をつくり、これは日本の企業のため、あるいはこのごろは個人でも簡単に外国といろいろな商取引をする時代になってきましたから、日本の国民ももっと渉外的な法律サービスを容易に受けられるようにするという必要があるのではないか。そういう意味では、もう少し利用しやすい形に改めていくという方向に検討することにしたらどうだろうかと思います。
【吉岡委員】おっしゃることよく分かりますし、一般の利用者からも、そういうニーズが出てくるだろうということは分かるんですけれども、アメリカで巨大事務所を見て、質問をいたしまして、個人の問題はどういうふうにしているかということを質問しましたら、企業業務がほとんどなので、個人の相談には応じないという御回答だったんです。巨大ローファームが日本に入ってきて、それで日本人の弁護士を雇用するという状況になってきてしまったときに、個人の利用ができるような弁護士事務所というのは、非常に少なくなってしまうとか。アメリカでも半分くらいあるそうですけれども、そういうことで、企業対象の法律事務所は非常に使いやすくなっても、企業対象ではない一般の国民が利用するとか、零細な企業が利用するという視点で利用のしやすさと言いますか、そこのところがなくなってくるというのは非常に困る問題だと思っております。
【竹下会長代理】念のために申しますと、私が申しましたのは、外国法事務弁護士が日本の弁護士を雇用することを認めるという趣旨ではございません。共同でやるということです。おっしゃるようなことが、もしアメリカの巨大ローファームにはあるようであれば、日本の制度としてつくるときには、そういうことのないように、企業だけは利益を受けられるけれども、個人は駄目だというようなことがないような制度設計をしていただくことは必要だろうと思います。
【吉岡委員】基本的に流れとして、規制緩和の終着点というか、最後の要として司法制度の改革を考えているという例なんですけれども、ともすると規制緩和というのは強者の論理になりがちだという、そこのところの配慮が必要だと思います。
【山本委員】巨大ローファームがいっぱいできて、企業が何か恩恵を受けるとしたら、マイナスもいっぱい出るわけで、これは必ずしも利益だけではない。
【佐藤会長】今の御議論はよく分かりますが、特定共同事業の要件の緩和等については、ちょっと前向きに考えてみる余地があるのではないか、ということでよろしゅうございますか。
それから、法曹養成段階における国際化への配慮の必要とか、発展途上国に対する法整備支援の推進とか、これについてこれまでも前向きに論じられてきたことですので、よろしゅうございますね。
4時半くらいにと思っておりましたが、5時になってしまいました。配付資料について特に何かありますか。
【事務局長】ございません。
【佐藤会長】最後ですが、次回の審議会ですけれども、2月13日、午後1時半から5時まで、この審議室で行います。
裁判官制度の改革に関しまして、次回から3回の審議会を使って審議を行うということになります。
審議の進め方なんですけれども、代理と相談いたしまして、次回はまず、事務局で作成をお願いしております諸外国の裁判官の任命手続などの追加の参考資料について説明をしていただきまして、それを踏まえて、裁判官制度改革に関する具体的な方策について、私ども委員の間で意見の交換をしたいと思います。
そして、その次の2月19日には、前々回の審議会の際にお配りしましたヒアリング項目に基づきまして、法曹三者からのヒアリング及び質疑応答を行いたい。
その上で2月27日の3回目に、更に我々の意見交換を行いまして、できれば意見を取りまとめたいと考えている次第であります。これもなかなかしんどい作業でありますが。
ところで、千葉大学の菅原教授にお願いしておりました民事裁判の利用者に関するアンケート調査につきまして、その最終報告が31日に提出されたということでございまして、次回の冒頭に、菅原先生からその内容についての御説明をしていただき、質疑応答を行いたいと考えております。
また、次回には、最後に少しお時間を頂いて、3月以降の日程につきまして、御相談申し上げたいと思っております。そういう予定でおります。気が重くなるような過密な作業でございますけれども。
【髙木委員】裁判官、あるいは裁判所に関するヒアリングのペーパーというのは、いつごろ我々のところに届くんですか。
【佐藤会長】御回答をいただく時期について、今のところちょっと見込みがたっておりませんで、ここではっきりしたことは申し上げかねます。
【竹下会長代理】なるべく早くします。
【髙木委員】いろいろお聞きしたい点がありますけれども、ダブってもどうかなと思いまして。
【佐藤会長】質問項目にない事柄について、これは是非聞きたいということがありましたら、早速お出しいただければと思います。準備で時間も掛かることでしょうから。ヒアリングのときに併せて御回答いただくということでよろしいんじゃないでしょうか。
【事務局長】事務局の方にお出しいただければよろしいかと思います。
【佐藤会長】そうですね。記者会見は今日は二人ですか。
どうも御苦労様でございました。