司法制度改革審議会

第50回司法制度改革審議会議事次第



日 時:平成13年3月2日(金) 13:30 ~16:35

場 所:司法制度改革審議会審議室

出席者(委 員)

佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、井上正仁、北村敬子、髙木 剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本 勝、吉岡初子

(事務局)
樋渡利秋事務局長

  1. 開 会
  2. 法曹養成制度及び法曹人口について
  3. 閉 会

【佐藤会長】それでは、定刻がまいりましたので、第50回会議を開会いたします。
 今日は法曹養成制度と法曹人口につきまして、意見交換を行いたいと思います。
 最初にこの法曹養成制度及び法曹人口につきましては、今日と4月24日の第57回会議の2回を使いまして、意見交換を行う予定にしております。
 この意見交換の進め方につきまして、最初に私の考えていることをお話しさせていただきたいと思います。
 最初に、当審議会の中間報告の内容は、皆様当然御承知ではありますけれども、確認させていただきますと、まず、法曹養成制度については、司法試験という点のみによる選抜ではなくて、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させたプロセスとしての法曹養成制度を新たに整備することが不可欠であるとし、その中核として、この法曹養成に特化した教育を行うプロフェッショナル・スクールである法科大学院を設けることが必要かつ有効であるというようにいたしました。そして、公平性・開放性・多様性を旨とする法科大学院の目的・理念・制度の要点、さらに、司法試験との関係及び司法修習の在り方についても言及した上で、関係機関において適切な連携を図りつつ、最終意見を待たずに速やかに検討を進めることを期待するというようにしたところであります。
 法曹人口につきましては、法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況を見定めながら、計画的にできるだけ早期に、年間3,000人程度の新規法曹の確保を目指す必要があるとするとともに、裁判官、検察官の大幅増員の実現が不可欠であるとしました。
 さらに、裁判所職員及び検察庁職員の適正な増加を図っていかなければならないと中間報告はうたっております。
 ところで、この法科大学院構想を中心とする新たな法曹養成制度及び法曹人口につきましては、この審議会の回ごとに皆様に事務局からお配りしております各界からの意見書などのとおり、様々な御意見が寄せられているところであります。
 そこで、本日はこれらの各界からの御意見を参考にしながら、法科大学院構想を中心とする新たな法曹養成制度につきまして、当審議会としての基本的な考え方を更に深めるとともに、今後、更に審議を深めるべき個別的な点がどこなのか、その個別的な事項について一体我々としてどのようにして考えるのかという点について、意見交換を行いたいと考えている次第です。
 また、法曹人口につきましては、今後の法曹人口の拡大の具体的なイメージにつきまして、例えば3,000人程度の新規法曹の確保をいつごろを目標として考えるのか、それから、裁判官及び検察官の大幅な増員としてどの程度が考えられるのかという点について、意見交換をしていただければと考えております。
 そして、4月24日の第57回会議では、本日の意見交換を踏まえまして、新たな法曹養成制度の概要、裁判官及び検察官の大幅増員を含めた法曹人口の増加につきまして、更に意見交換を行って、当審議会としての考え方の取りまとめを行うことができればと考えております。
 調査審議の進め方として、会長代理と相談させていただきまして、以上のようなことを考えておりますけれども、そういうことで進めさせていただくということでよろしゅうございましょうか。

(「はい」と声あり)

【佐藤会長】ありがとうございます。
 それでは、ただいま御了解をいただいた形で今後の意見交換を進めさせていただきますけれども、本日の意見交換につきましては、最初に法曹養成制度につきまして、午後3時30分ころまで意見交換をしていただき、その後休憩をはさんで、法曹人口に関する意見交換をしたいというように考えております。
 勿論、2つの問題は、それぞれ密接に関連しておりますので、適宜この両者にわたって御意見を述べていただいても結構でございますけれども、できましたら、今お話ししましたように、まず最初に法曹養成制度を中心に意見交換を行い、その後、法曹人口を中心に意見交換を行うというような段取りで進めたいと思います。
 これらの問題についての意見交換に入ります前に、事務局にお願いをしまして、お手元にお配りしておりますように、本日の意見交換用に資料を用意してもらいましたので、その資料につきまして、事務局から説明を受けることにしたいと思います。

【事務局長】資料といたしましては、A3の大きな表で「法科大学院構想に対する各界からの主な指摘」と題するものと、A4の横表で「新たな法曹養成制度のスケジュール(想定)」と題するものの2つを新たに用意いたしました。
 まず、A3の「法科大学院構想に対する各界からの主な指摘」という表をごらんください。
 中間報告で公表しました法科大学院構想に対しましては、ただいま会長からの御説明にもありましたように、各界、個人からの様々な指摘がなされておりまして、そのうち当審議会あてに提出のありましたものにつきましては、すべて委員の皆様のお手元に順次お配りしておりますけれども、この表はそれらをも含めて、様々な指摘のうち、一番左の欄に列挙しておりますような論点について、具体的な指摘がなされているものを比較しやすいように分類・整理した資料でございます。もとより数多くの意見が発表されていますことから、そのすべてを網羅することは困難でございましたので、不足している部分もあるとは存じますが、とりあえず目についた意見や指摘の例ということで御理解いただきたいと存じます。
 また、詳しい意見の内容は、冒頭に申し上げましたように、既にお配りした資料により委員の皆様には御理解いただいているものと存じます。
 縦に3つの欄に分けておりますが、左側の「経済界等」というものには、財界人や研究者などから成ります団体からの意見、新聞の論説等の内容から拾ったものを列挙しております。
 本日お配りしたものでございますので、読んだほうが早いと思いますので、読ましていただきます。「経済界等」という欄を見ていただきたいのであります。
 まず「構想の背景」という視点からは、「同構想は、法曹界や大学のギルド的利害から出てきたものであり、ユーザーの視点が欠落している」。
 「法学部教育との関係」との視点からは、「法学部教育の在り方を見直さずに法科大学院を設置、さらに司法修習を残すことは、屋上屋を重ねるだけである」。
 「受験予備校」という視点からは、「現在の司法試験予備校は、法科大学院予備校に形を変えるだけではないか」。
 「経済的弱者」という視点からは、「資格取得までに要する年限の長期化により、経済的弱者や社会人が法曹となる途が塞がれてしまうのではないか」。「医者と並ぶ専門職業である弁護士について、利用者が安心できる品質確保が必要で、法科大学院では柔軟な選抜方法を採用し、夜間制や通信制、奨学金を充実させる必要がある」。
 「教員の確保」という視点からは、「法科大学院の教員としてふさわしい者がどれだけいるのか、疑問」。
 「第三者評価」の視点からは、「大学関係者・法曹関係者による第三者評価では、実効性が全く期待できない。制度設計や認定は消費者側の立場の者に委ねるべき」。
 「財政的措置」という視点からは、「法科大学院に公金を投入すべきではない。また、法科大学院は、一切の特権なく、自由に設立させるべきである」。
 「司法試験との関係」との視点からは、「法科大学院修了者に新司法試験の受験資格を限定するのは、公平性を欠き、現行司法試験制度の長所を失わせることになる」。「法科大学院修了者の相当程度が新司法試験に合格することとなれば、他分野からの転身を図る若者が増えることが期待できる」。
 「司法修習との関係」との視点からは、「現行の司法修習は、修習期間の長さが適切か、修習内容が適切か、給費制は必要か等、様々な疑問があり、抜本的な見直しが必要である」。
 「法曹人口との関係」との視点からは、「法曹人口は市場が決定すべきものであり、競争原理を導入すれば質も自ずと確保できる」。「年間3,000 人の養成では極めて不十分である。12,000人の養成を目指すべきである」。「法科大学院の定員管理が、大学と法曹三者のギルド的利害に基づいた法曹人口の新たな需給調整措置となり、競争原理が働かなくなってしまうのではないか」というような意見が見られます。
 次に、中央の「法曹界」という欄には、主に各弁護士会や弁護士個人から出されている意見から拾ったものを列挙しています。これも読み上げさせていただきます。
 「構想の背景」という視点からは、「法科大学院構想は、大学の生き残り戦略として出てきたものであり、あるべき法曹の養成という視点が不十分である」。
 「法学部教育との関係」という視点からは、「大学法学部は、法職過程の設置等により、自らの改善を図るべき」。「法科大学院は、可能な限り3年制の自己完結型を目指し、法学部はリベラルアーツ教育に徹底し、付加価値を高めるべきである」。
 「大学の自治」の視点からは、「法曹養成に必要な教育の実現にとって、大学の自治は必要ではなく、むしろ有害でさえある」。
 「受験予備校」との視点からは、「法科大学院入試と新司法試験準備のための受験予備校が台頭することは避けられないのではないか」。
 「教員の確保」との視点からは、「実務家教員の確保が可能か疑問」。
 「司法修習との関係」との視点からは、「実務法曹にとって不可欠な要件事実・事実認定に関する深い理解は、司法研修所での修習においてのみ習得が可能である」。「法科大学院構想は法曹一元の実現とセットでなければならず、裁判官・検察官と弁護士の分離修習に途を開くものであってはならない」。
 「法曹人口との関係」の視点からは、「年間3,000 人の養成のためには、司法研修所を増設すれば十分に対応可能なのではないか」。「法曹人口が際限なく拡大してしまうおそれがある。年間3,000 人の養成も時期尚早。逐次増加で十分」。
 「法科大学院の定員管理を通じて、法曹人口が文部科学省によってコントロールされてしまうのではないか」。
 「その他」の視点といたしましては、「法曹の間に、出身法科大学院別による学閥が出来てしまうのではないか」というような様々な意見が寄せられております。
 次に、右側の「大学界」という欄には、主に法律関係雑誌等に大学研究者が発表している意見の中から拾ったものを列挙しております。これも読み上げさせていただきます。
 「構想の背景」との視点からは、「法科大学院構想は、法曹人口大幅増を目指す法曹界主導のものであり(「法曹の法曹による法曹のための改革」)、大学改革の視点が稀薄である」。
 「法学部教育との関係」の視点からは、「法科大学院の設置の有無により法学部に格差が生まれ、序列化されてしまう」。
 「大学の自治」との視点からは、「設置基準による文部科学省の関与、アクレディテーションによる法曹界の関与によって、法学教育における『教授内容の自由』が制限される」。「大学における高度な教育は研究なくしては実現できない。実務との距離や寄与度が研究評価基準として一元的に認知されることとなれば、大学における法学・政治学の教育・研究が外部的考慮から影響を受け、変質を余儀なくされてしまう」。
 「教育内容・方法」の視点からは、「米国のロースクール教育にも様々な批判がある。司法過程のみを教えるロースクール制度では、法律家の将来的な理想像が行政法律家や企業法律家も含めたゼネラリスト的性格のものだとされる傾向に対応できない」。「法学部長や民刑事法・訴訟法学者だけでなく、これら以外の研究者の意見も広範に聞くべきである。行政法の司法試験科目からの除外は問題だ」。
 「教員の確保」の視点からは、「法科大学院の専任教員を大量に確保することは事実上困難である。実務家であるというだけで法科大学院の教員が勤まるわけではない」。「法学の研究後継者養成がどうなるのか、検討がなされていない」。
 「財政的措置」の視点からは、「法科大学院への財政的措置は一過性のものであってはならず、大学改革にふさわしいものでなければならない。設置の見返りに特段の財政的・人員的措置が保証されない限り、法科大学院の設置は凍結されるべき」。
 「司法試験との関係」の視点からは、「司法試験に問題があると言いながら、正面切った改革案を提示しないままに法科大学院構想を推進するのは、筋違いである」。
 「司法修習との関係」の視点からは、「司法研修所を存続させたままの法科大学院の設置であれば、研修所のキャパシティをどうするかを検討しなければおかしい。司法研修所の充実に本腰を入れるならば、例えば合格者が倍増しても対応可能なはずではないか」。「司法研修所では、実務の現状に追随するだけで、創造的・批判的な教育が行われていない。この点の改革がまず必要である」。
 「法曹人口との関係」の視点からは、「法曹特に弁護士の量的拡大とともに、質的保障の水準を一挙に引き上げる可能性を持つ」。
 「その他」の視点といたしまして、「教育改革としては拙速に過ぎる。主要国の法学教育や法律家養成の制度を十分に比較研究する必要がある」というような意見がございました。
 以上のように、様々な指摘がなされているわけでありますが、この表を横に見ていただければ、例えば法学教育との関係につきまして、経済界等、外部からの指摘、法曹界の指摘、大学界からの指摘と、それぞれの立場からどのようなことが言われているのかを簡単に比較していくことが可能ではないかと考えまして、多少見づらくて恐縮でございますが、1枚の表に集約してみたというものでございます。
 なお、これらの指摘のほかにも、各政党におかれましても、既に法科大学院構想を含む主要改革についての構想が発表されてもおりますし、今後取りまとめて発表する予定もあると承知いたしております。
 これらにつきましても、当審議会あてに提出されたものにつきましては、今後とも随時御報告申し上げます。
 さらに、各種の団体や個人からも御意見、御提言を多数いただいております。これらにつきましても、提出のあった分から資料として配付をいたしておりますので、審議の御参考にしていただければと存じます。
 次に、A4の「新たな法曹養成制度のスケジュール(想定)」と題する1枚紙をごらんください。
 これはこの標題のとおり、本年6月に予定されております当審議会の最終意見提出の後に、具体的にどのような手続が必要となってまいるかを、時期はこれから御審議いただくことと存じますが、想定される順番に列挙したものでありまして、本日法曹養成、及び法曹人口の御審議をしていただく上での御参考としていただければということで作成したものでございます。
 左のほうから見ていただきますと、当審議会の最終意見提出の後、内閣でこれを尊重していただければという前提付きでございますが、関連諸法案を準備して、国会で審議されることとなります。関連諸法律が成立すれば、法科大学院に関しても、大学院としての設置認可基準や、第三者評価の評価基準が確定公表されることとなります。
 その後は、設置認可手続や、関連の予算措置がなされまして、法科大学院の第1回の入試が実施されるわけでございます。
 そして、入試が済んだ4月から法科大学院の学生受け入れが始まるものと思われます。この法科大学院は、原則3年修了、そして2年での短期修了もあるということですので、一番早い修了者は2年後に出てくるわけであります。
 そしてその翌年、つまり学生受け入れから3年後には第一期生で3年修了の者と、第2期生で2年修了の者とが同時に修了を迎えることになります。以後も同様であります。
 一方、新司法試験はと言いますと、法科大学院の最初の修了者に対して初めて実施されることとなり、この年から移行措置としての一定期間、現行司法試験も並存するという形になると思われます。移行措置期間が修了しますと、例外措置の適用が具体的に始まるという段取りになるのではないかと想定されます。
 ところで、中間報告で御提言いただきました新規法曹の年間3,000 人の確保でございますが、その時期がいつごろと見込まれるかによりまして、この表の中でも順序としてどの辺りに出てくるのかは変わってまいります。
 そういう意味で長い横の矢印の上に、ここだけ短い線を入れておりませんので、そういう趣旨のものとして御理解いただければと存じます。
 このほかの資料といたしましては、2つ用意しました。
 その1つは、既に恒例としましてお配りしておりますが、法科大学院関連の新聞記事をその内容は一部先ほどのA3の表にも抜粋しておりますが、ひと綴じにしたものでございます。
 それから、一番上が「裁判所職員の定員の推移」となっております資料は、これは裁判所、検察庁の人的体制の充実に関しまして、昨年4月17日に御審議いただきました際の最高裁提出資料と事務局作成の参考資料の中から、本日の御参考にしていただけそうなデータを抜粋したものでございます。中をごらんいただきますと、定員や現在員の推移、事件数や平均審理期間などの推移などの資料がございますので、審議の御参考としてごらんいただければと存じます。
 説明は以上でございます。

【佐藤会長】ただいま御説明いただいた資料をこれからの意見交換の中で参考にしていただきたいと思いますが、今直ちに、御質問もおありかと思いますけれども、今後の意見交換の中でしていただければと思います。
 それでは、早速法曹養成制度につきまして、意見交換を行いたいと思います。事務局に整理していただいた各界からの意見を見ますと、法科大学院構想を中心として様々な御意見が寄せられております。これらの意見を参考にしながら、新しい法曹養成制度につきまして、当審議会としての基本的な考え方を深めるということとともに、今後更に審議を深めるべき個別的な点がどこにあるのか、それについてどういうように考えるべきなのかといった事柄について、意見交換を行えればと考えている次第です。
 どこからでも御議論いただければと思うんですけれども、先ほどの大きな図を見ますと、最初のほうに法学部教育との関係とか、大学の自治、あるいは教育内容・方法といった項目が挙がっております。これらの項目ないし順番にこだわる必要は全然ありませんけれども、まずこれらの点について、今日少し立ち入って議論する必要があるのかなと思っております。どこからでもと申しましても、ちょっと手掛かりがないかもしれませんので、取っ掛かりとして、法学部教育と法科大学院との関係をどう考えるのか、あるいは法科大学院における教育内容・方法をどのようにとらえるのか、その辺りから議論に入っていただいたらどうかなと思うんですけれども、いかがでしょうか。
 法学部教育との関係なんですけれども、法学部は廃止、転換してしまって、すべて教養学部タイプに移行すべきだというような意見、逆に法学部は現在のまま存続させることが前提であるといったような意見など、前々から様々な議論があるようなんですけれども、現に1学年4万7,000 人が学んでいる法学部が、法科大学院の創設によってどのような影響を受けるのか、また、受けるべきなのかと言ったようなところが問題かと思います。いかがでしょうか。

【山本委員】今日のペーパーを拝見させていただいた限りでは、基本的な批判と言いますか、これが余りないような気がしているんですけれども、特に今、会長が言われた法学部教育との関係ですけれども、この審議会で議論してきたのは、現行の一発勝負的な司法試験の弊を改めて、プロセスを重視しながらそういう新しいじっくりした法曹養成をやるというのがねらいであって、法学部改革を審議したわけじゃないんじゃないかと思うんです。
 ですから、それぞれの大学で法学部のありようというのは考えていただくということになるんじゃないかと思うんですけれども、そういうことではいけないんでしょうかね。

【鳥居委員】山本さんの意見に私も賛成なんですが、基本的には私たちは中間報告とか夏の集中審議で合意したところまではこぎつけていて、そのことについてはほとんど問題ないと思うんです。法学部について、今、約百校の法学部があって、1学年4万7,000 人が学んでいる。そのすべての法学部がロースクールないしは職業人養成の過程を設けるということは現実的ではなくて、ある程度限られた数の学校に自然に収まっていくという想定でロースクールを想定するしかない。
 ただし、そのロースクールの設置申請の自由は学校による差別ではない、それから設置認可における規制は、できるだけゼロに近いほうがいい。自由に設置認可が申請でき、ある基準を満たせば認可していくということだと思うんです。
 問題は、そうした場合には多分3,000 人をはるかに超える卒業生が出てくるので、そのことも考慮に入れないと、制度設計としては完結しないんじゃないかと思うんです。

【佐藤会長】話を広げれば、法学部の問題に止まらず、今後、鳥居先生が会長をなさっておられる中教審の審議で、高等教育の体系の中で学部あるいは大学院がどういうように位置づけられていくかという全体のスキームとも関連しているところがありますんでしょうね。

【鳥居委員】ですから、いろいろな学部からロースクールに進む人がいるということになるんじゃないかと思うんです。
 むしろ法学部の先生方や法曹界の先生方にお聞きしたいのは、既存の法学部教育をどうするか。私の問題意識に引っ掛かるのは、要するに、法律学の研究と教育の後継者をどうするのかという問題ですね。それは既存の法学部と大学院の延長線上で大事な仕事としてもう一つあると思うんです。このごろ大学の議論とか大学院の議論で一番忘れがちなのは、大学の後継者養成なんです。

【井上委員】私の承知している範囲でも、その辺も含めて、各大学では本当に真剣な議論をしているところです。ただ、この表の意見の中にもあるんですけれども、ちょっと法科大学院についての誤解がある。アメリカのロースクールでも、実技とか技能とかだけを教えているわけではなくて、むしろ幅広い、あるいは深い学理、学術的研究というものをベースにして、実際指向の教育をしているのでありまして、こういう批判をアメリカのロースクールの先生に言うと、しかられるかもしれません。
 ですから、研究と実務指向の教育というのは必ずしも乖離するものではなくて、今までのような学部の上に純粋研究指向の大学院があって、そこで勉強した人が大学の後継者になっていくというのも分野によって、あるいは学問の性質によってはあると思うのですが、ロースクールを出て、実務界に出て経験を積んだ人が、その経験を基に学理を新しい視角から見直していくということもあってよい。
 私などは実定法、つまり一番社会生活に近い民事だとか刑事だとかいう分野ですが、そういう分野で、今申したようなことがむしろ不足していたんじゃないかという気がするのです。アメリカで若いころちょっと勉強した影響かもしれませんが。
 ですから、研究面でも多様化、多元化、あるいは複線化が図られて、むしろ活性化するのではないかと考えています。
 それと、法学部教育の在り方についても、我々がこういう提言をしたということもあって、本当に真剣に考えているところだと思うのです。真剣に考えている人達はですね。
 その方向としては2つあって、一つは、既存の法学部の教育が、法学教育として致命的に間違っていたとは思わないという立場から、法曹養成に特化した機関が別にできるということとの関係で、どう役割分担をしようかという発想で考える考え方です。もう一つは、法曹養成に特化した、あるいは高度の法律の勉強はロースクールでやるということを前提にして、学部ではもう少し幅広い学際的なものとか、リベラルアーツといういろいろな受け止め方がありますけれども、法学を基礎にしながらも、例えば法と政治とか法と経済とか法と医療とか、そういうすそ野を広げる教育にむしろ力を入れていって、そういう幅広い視野を持った人がより法律に特化した勉強をロースクールでやる。そういう方向を目指すという考え方だと思います。
 文部省に依頼した検討会議の報告の中でも、そういう2つの考え方が例示されており、そういうのを参考にしながらそれぞれで考えてくださいということになっていましたので、その方向での議論は積み重なってきているのではないかと思います。

【佐藤会長】その辺りはここで法学部教育かくあるべしというふうに簡単に言えるものではないような気もしますね。

【井上委員】1つは当審議会の守備範囲の問題があると思います。ただ、決めることはできないですが、望ましい法曹を育成するためには、法学部というのが今後もずっと残るとすると、そこで前段階としてこういうことをやってもらったほうが望ましいというか、そういう発信はこちらからもできると思うのです。それは守備範囲かなという感じがします。

【鳥居委員】守備範囲というか、共に進むようなものですね。

【井上委員】はい、そうです。

【鳥居委員】法制史とか、あるいは国際比較とか、いわゆるロースクールではなくて、昔からの法学部の専門分野というのはありますね。そういう分野とか、新しい法体系の提案とか、そういうものはやはり限られた幾つかの大学になるかもしれませんが、優れた専門家の方々が固めておられる法律学の大学院、そういうところでやっていく。
 ただし、その最終的な構図は先ほど山本委員がおっしゃったように、各大学が独自に競い合っていい案を出していくということじゃないかと思うんです。

【佐藤会長】法学部教育との関係については、今、3人の委員から御意見をちょうだいしましたが、今の段階ではこのようなところじゃないでしょうか。
 大学の自治の問題は後の項目と関連して議論になるかもしれませんので、それは後で御議論なさっていただいて結構かと思いますけれども、法科大学院は一体どういうことをどういうように教えるのか、どういう教育内容になるのかという辺りについての御疑問と言いますか、そういうものがかなりあるような気がするんです。この法科大学院教育を特色づける教育内容・方法とは何かについて、我々として説得力のある説明をこれから心掛けないといけないのではと思っているんですけれども、この辺りについて、関係機関のほうで調査と言いますか、どういう状況にありましょうか。

【事務局長】中間報告でも関係機関のほうにお願いしたいということを言っておるわけでございまして、文部科学省それから、法曹三者の間で、お互いに連絡を取っているのか、あるいは個々に検討されているのか、今のところはつまびらかではございませんが、仄聞するところによりますと、そういう関係者の中で、どういう姿があるべき姿かということは検討していただいているというふうに存じております。
 もし、審議会のほうからその内容を私どもに調べろということでありましたら、関係機関とも連絡を取りながら、聞いてまいりたいと思っております。

【竹下会長代理】それは是非お願いしたほうがいいですね。

【佐藤会長】そうですね。さっき申し上げたように、このテーマについて更に審議する4月24日辺りまでに、我々としてある種の方向づけができるような情報・材料を集めていただけるようにと思いますが、どうでしょうか。

【事務局長】情報として集めてまいりますが、関係機関のほうにいたしましても、実際に法科大学院構想が認められるのかどうかということがわからなければ、実質的に機関として動けない側面もあろうかと思います。しかし、そういう方向で事前にいろいろ研究してもらっているという状況でどのようなものがあり得るのかという程度と言いますか、そういう立場ということでお聞きしてまいりたいと思います。

【竹下会長代理】この問題は中間報告のときも、一番具体化しないとなかなか一般の理解が得られないということでしたけれども、しかし、この審議会の場でそう具体的なところまで詰めるというのも非常に難しい問題で、だからこそ検討会議のほうに協力依頼をしたという経緯もありますから、そういう関係機関の検討状況のようなものをお知らせいただければ議論しやすいと思うのです。

【事務局長】次回、この問題について御審議の際に、参考資料として出せますように、できる限り情報は集めてまいりたいと思います。

【鳥居委員】その問題なんですけれども、今、事務局長が整理してくださった方向で大筋私もよろしいと思うんですけれども、どこかに頼んでという、そのどこかが、制度的にどこからもオーソライズされていない団体だと、いつまでも平行線が続いてしまうんで、かと言って今、竹下先生おっしゃるとおり、当審議会がディテールにわたってカリキュラムとか設置基準を決めるわけにいかない。しかし、設置基準をどこかで決めてくれないことには、いつまでもたっても制度がスタートしないというんで、その道行きが見えないんです。
 例えば、次回の4月二十何日かまでの期間に、会長、事務局長、しょせんはこれ文部省と法務省の共同体制だと思うんですけれども、何かを立ち上げるように考えていただくことはできないんでしょうか。そして、この審議会の最終答申ができ上がるころまでの2か月くらいは、並行して走ってもらって、我々がウォッチできるという状況で、半ば公に設置基準策定委員会みたいなものが動き出しているという状況をつくれないものでしょうか。
 従来の制度の筋道から言えば、文部省の設置審議会に原案をつくらせて、それを従来で言えば、大学審議会に持ち上げて、OK取れたら設置審議会に下ろすという、ただそれだけのことなんですが、これは法務省とか法曹三者とか、あるいはユーザーの立場とか、そういうものを反映してつくらないといけませんから、何かそういう仕掛け。

【井上委員】そこも我々が決めるというところまで行けるかどうかわからないですけれども、そういうものが必要であり、その構成はどういうもので、守備範囲はどこまでだとか、ひとところで全部でやるのか、幾つかのところが連携を取りながらやるのか、いろいろあると思うんですけれども、そこもまだ突っ込んだ議論をしていないものですから、今回と次回とででも議論して、一定の方向が出るなら、それはそれで強い意味を持つだろうと思います。

【竹下会長代理】少なくとも司法試験の在り方と、法科大学院の教育の在り方とが連携することは、間違いないと思うのです。
 しかし、へたをすると両すくみで、向こうができなければこっちができないというような話になってしまう可能性がありますから、そこは連携をして決めるというか、まだそこまでいかないですけれども、検討していただくということが必要なのではないでしょうか。

【中坊委員】我々として、ロースクールに関しては、中間報告で書かれているように、ロースクールを司法試験、司法修習と連携した基幹的な高度専門教育機関とすると決めて、それは理論的教育と実務的教育とを架橋する場所だというのも決めている。ロースクールではマン・ツー・マン方式であるというところも決めてある。なお決まっていないのは、「ロースクールが司法試験、司法修習と連携して」と言っているけれども、どういうふうに連携しているんですかというところが、我々内部で今一つはっきりしていないから、それを受け取るところも、連携するというところまではわかったが、しかし、どういうふうに連携するんですかと疑問を持っている。それに関しても、我々としては、司法試験は資格試験ですよということも大体今までで決めているんですね、そうじゃなかったですか。
 司法修習は今のように1箇所だけに、しかも最高裁の下に置いておくのか、そうでないのかという辺りがはっきりしないといけない。ロースクールを基幹的な高度専門教育機関とし、理論的教育と実務的教育を架橋するんだ、マン・ツー・マンだ、そこまでは決まったということですね。

【井上委員】正確には、「小人数教育」です。

【中坊委員】10人とか20人の単位で、そういう数少ないところでやるんだというところまでは決めているけれども、あえて我々として、この審議会として残ってくるのは、司法試験と司法修習と、この大学院がどのように絡んでいるんですかは言うてあげないといけない。今おっしゃるように、例えば司法試験でも、私は頭から資格試験かなと思っているんだけれども、その点は必ずしも一致してなかったら、今おっしゃるように、どこでやるんだとおっしゃられても、そこをやるところがまだはっきりしていないと思うんです。

【井上委員】そこのところの大きな筋は、中間報告で出ているのです。それを「資格試験」と言うかどうかは別として、法科大学院できちっと教育をするということを踏まえて、そこできちっと教育理念どおりの教育を身に付けているかどうかを確認するような内容の司法試験にする。
 それを受けてまた、修習も法科大学院での教育内容とのすり合わせをしながら、随時、内容も変えていく。そういう意味で、連携ということをうたっているわけです。
 むしろ私の印象では、今、いろいろな意見がある中で、一番表に出てきている批判と言いますか、意見は、今の司法試験はだれでも受けられ、公平であると。ところが、法科大学院というのを核にしてプロセスで考え、それを確認するような司法試験にするということになると、そこを通ってくるのが原則的な形態だということになり、みんなが受けられなくなって不公平じゃないか。そういうことだと思うのです。
 そこのところの理解が得られていないというか、我々の説明不足なのかもしれませんが、そこは山本委員が最初におっしゃったように、我々としては共通の理解をしている。
 つまり、今まで試験だけで適性を測ってきたのだけれども、試験だけで測るのは限界がある。試験をどう変えてみても、それはイタチごっこのようなものなので、一つのシステムとして、教育の過程を重要視して、そこできちっと身に付けるべきことを身に付けてもらう。そして、試験も、それを確認するようなものにしていって、それを大きな流れにしていこうと。それが我々の基本的な考え方だろうと思うのです。そこのところをどうわかっていただけるかということだろうと思うわけです。
 ところが、その核となる法科大学院で、何をどういうふうに教えるのかというところが、教育理念としては書いてあるんですけれども、具体的にイメージしにくい。そこのところを何かモデル案とか、具体的にはこういうことを教えるんですよということを提示できれば、かなり理解も早まっていくんじゃないかというのが私の理解なんですけれども。

【水原委員】法科大学院における教育内容をどうするかという問題につきましては、基本的なことは中間報告できちっと方針を示しているわけなんです。法科大学院というのは、言うまでもございませんけれども、法曹養成に特化した実践的な教育を行う、学校教育法上認められた大学院だということの位置づけと、教育内容につきましては、16ページにありますが、実務上生起する問題の合理的解決を念頭に置いて、法理論教育を中心としつつ、実務教育の導入部分、例えば要件事実や認定事実に関する基礎的部分をも併せ実施することとして、体系的な理論を基礎とし、実務との架橋を強く意識した教育を行う。こういう教育を行うことなんだ。その内容については、研究者教員と、実務経験を有する教員との間で協議して決めるべきであるというふうに言っているわけです。
 これはそういう人達のグループにどういうことが望まれる法科大学院教育なのかということを、我々が中間報告として審議会で出した法学教育の在り方について意見を述べた趣旨にのっとってやるとするならば、どういう内容のものなのかということを、そういう人達に研究してもらって、その部分でやっていくべきじゃないかという気がいたします。
 そこで決められ、実施された教育内容がいいかどうかという問題は、そこにありますけれども、設立手続につきましては、18ページに書いておりますが、それと同時に第三者評価機関を設けるということになっているわけです。その教育内容がおかしかったならば、第三者評価を受けるわけでございます。とりあえずの出発点は、この審議会で基本方針を示しましたことに基づいて、具体的にはもう少し違ったところで検討していただき、それが設置認可に沿うものであるかどうかは、設置基準に当てはまるかどうかで判断してもらって、その内容がいいかどうかは、これから審議するでありましょう第三者評価機関による評価を待つべき、そういうふうにすべきではないかと思います。

【佐藤会長】今の水原委員、井上委員の御説明で大体尽きていると思うんです。さっき井上委員もおっしゃったように、その辺りについての具体的なイメージが今の段階では必ずしもはっきりしないものですから、いろいろ御批判もあるんだろうと思うんです。考え方としては、今おっしゃったことなんじゃないかという気がするんですけれども、いかがでしょうか。

【中坊委員】我々はロースクールの多様性ということも言っているわけでしょう。まさにどういうやり方をするか。法律からよりも、まず事実を先に見せて、それについてどう解決しますかという方向からアプローチしますという非常に基本的なところは我々で言っているんだから、それを具体的にどのような大学院ではどのように教えるのかというのは、まさに多様性の1つだとは思うんです。
 だから、ここで余りこれだと決めてしまうのは少しおかしいんで、私も水原さんと同じように、我々は大体言うてきているんじゃないかと思うんだけれどもね。

【井上委員】ただ、文字だけのものですし、しかも、こう言っては失礼ですけれども、大学で学んだのも記憶の彼方で、教えたこともない人や、教えたことがある場合も、ロースクールのようなところで教えていないものですから、何か手探りでイメージが非常にしにくい状態なのだろうと思うのです。
 しかし、私が伺っている範囲で、大学などの中にはモデル授業を試みたり、あるいはそういうことをこれから考えていこう、出していこうというところも幾つかあるようですので、そういう努力が積み重なっていって、例えば教材はこんなものを使って、こういうふうに教えるんですよということが目に見える形になれば、今までとこんなに違うんだ、我々の言っている教育理念をこういうふうな形で実現しようとしているんだというのがわかってくるんじゃないかと思うのです。今はまだ手探りなものですから、どうしても議論が抽象論になってしまう。

【水原委員】少なくとも私は教育者の立場に立ったこともございませんし、法学教育をしたこともございません。むしろ今まで法学教育に従事した先生方のほうが、自分たちの法学教育のやり方にどこが問題があったのかということを一番よく知っていらっしゃるんじゃないか。いろいろ批判を受けておることを考えるならば。
 それと、中間報告で出しております実務教育との関連性の問題だとか、そういう問題について、今まで欠けた点はどこにあるんだということを、むしろ教育の現場にいらっしゃった方々のほうが、よく知っていらっしゃらなければいけない。もしやらないとするならば、審議会が示すまでは我々わからぬとおっしゃるならば、これは大変な問題だなという気がいたします。

【井上委員】私が弁明することではないですが、大学人の間で、この表に載っているのが一般的な見方だとは思えません。むしろ、我々の投げかけを、自分たちの問題として受け止めて、考えていこうという人達は、今それを真剣に考えているのです。
 むろん、大学人だけで考えると、まさにおっしゃられたように、物が見えないところもあるわけで、実務のほうから見た問題点というのを指摘してもらって、お互いに意見交換する研究会のようなことをやっていかないと突破できないだろう。いいものができないだろうと思います。すでにそういうことを実際にやっている人達もいますので、そういうところができるだけ早目に出てくればいいんじゃないかなと期待しておりますが。

【佐藤会長】学部教育について、かなり前から、今のままでいいのかという思いを持つ教員がかなりおられると私も承知しています。

【井上委員】公平のために申し上げますと、そういう問題意識を必ずしも持たずに、枠だけの議論をしているように見える人達もいることはいます。
 同時に、我々から見れば望ましい方向で検討しておられる人達もいるわけで、そのせめぎ合いでよい方向で淘汰していってくれればいいんじゃないかと思うのです。

【髙木委員】各界からの主な指摘、主なというのは何を称して主なと言うのかわかりませんが、いろいろな人に会っていろいろ耳にするニュアンスとちょっと違うなという感じがします。
 例えば法曹人口との関係でも、経済界、あるいは法曹界の一番下のそれぞれの○ですか、大学と法曹三者のギルド的利害に基づいて法曹人口の新たな需給調整装置云々と書いてありますが、こんな運営が想定されているのでしょうか。
 それから、定員管理を通じて、法曹人口が文部科学省によってコントロールされてしまう云々、これも今、井上先生から御説明があったように、よく読むと、実質的には資格試験になっていくんだろうと思いますが、資格試験というのであればほかのところを更に詰めなきゃならない、しかし、そうは詰め切れていないからという議論の経過のゆえのあいまいさかどうか知りませんが、その辺りのことをきちんと詰めて、これは資格試験ですというニュアンスが、もう少しメッセージとしてきちんと伝えられたら、こういう意見も変わってくるんだろうと思うんです。
 昨日ある政党の勉強会に出ておりましたら、文部省の関与に対する批判が結構出ていました。勿論、こういう場でこういうことはペーパーには書けませんから、この辺はマイルドに書いておられるんだろうと思いますが、その辺りはなぜそういう批判というか、そういう感覚があるのか。もし、あるとしたら、そういう人達のそういう感覚がある種の誤解に基づいておるものならば、そういうものはやはりきちんと解かないといけない、こんなところまで申し上げてよかったのかどうかわかりませんけれども、そういうものはこのペーパーで書けないのはよくわかっておりますけれども、実際にこれから感じ方で議論され、そういう世論をみんな何となく感じているから、一方で具体的に検討する場もなかなか動かない。このような雰囲気の中で議論が進められると、もうちょっと違った意味での根拠、基盤をちゃんとしてくださいということになっていくんだろうと思うんてす。

【井上委員】第1点目は、司法試験の合格者の数というよりは、大学院の設置認可のところで文部省がコントロールするんじゃないか。そうすると、今まで司法試験の合格者、あるいは司法研修所の入所者の数ですか、そこがボトルネックと言われていたような働きを今度はそっちがするんじゃないかという疑念なのです。しかし、その点は、鳥居先生がおっしゃったように、最低基準というのは示すけれども、それを充たせば自由に設立できるということは言ってはあるわけです。そこが十分理解されていないということと、もう一つは、文部省に対する疑念とか批判の根本原因がどこにあるかというのは難しいところですけれども、少なくとも我々の案についての批判は、第三者評価機関というものに対する、私から見れば誤解なのです。それはここでの議論でも、ロースクールを自由につくれますということで放っておいていいのか、質を維持するためには、やはり一定の教育水準というものを守ってもらわないと困るということで、その意味での評価をするわけです。
 ところが、評価して不適格だとされることもあり得て、適格と認められなければ受験できませんというところだけが目立って、今までは法曹関係者で話し合って法曹養成をやっていたのに、第三者評価機関に文部省とか大学人が乗り込んでいって、そこがコントロールするんじゃないか。恐らくそういう誤解だと思うのです。

【髙木委員】誤解なら誤解できちんと書かなきゃだめですよ。そういう意味では、誤解を解くためのメッセージをどういうふうに発信していくか。我々がこの中間報告に、いろいろ御意見あったかもしれませんが、ともかく中間報告でここまで来て、過程で検討会議の皆さんのお手を煩わしたわけですから、誤解だ誤解だと言っておって、物事が流れていくのが一番馬鹿らしいというか、つまらない話ですから。

【井上委員】我々の問題として、説明不足、発信不足というふうに受け止めて進めていかないと動かないというのは、そのとおりだと思います。

【佐藤会長】あとでも出てくることだと思いますけれども、毎年の法曹人口の誕生が計画的にできるだけ早急に3,000 人とうたいましたが、この3,000 人がまたキャップになって、そこで止まってしまうんじゃないかという誤解もされているところがありますね。そうではないということも我々としては明確にする必要があると思うんです。3,000人は早急に目指すべき目標なんであって、そこで止まってしまう、そういう考え方は中間報告にはないんですがね。

【藤田委員】一昨日、国土交通省の中央建設工事紛争審査会の協議会がございまして、改革審の中間報告について説明を聴きたいということでしたので、数十人の方々にお話しをしました。その際、ある委員の方から質問が出まして、法科大学院という構想を打ち出されているけれども、その理念は大変結構であるが、法科大学院を卒業した者が、7割ないし8割くらいは司法試験に合格するようにするということが打ち出されている。法曹の飛躍的増加ということが必要だということはわかるけれども、法曹の質的、あるいは倫理的なレベルの低下があってはならないということがまず前提としてあると思う。7割ないし8割くらい司法試験に合格するレベルに卒業生が達しているという保障はどこにあるのかという質問がありました。私としてはお答えのしようがないので、全体的にそういう方向で制度設計をしてやっていくということを打ち出しただけであって、具体的な法科大学院制度、あるいはその前提としての法学部教育も非常に重大な問題だろうと思いました。法曹を志望している学生を予備校から法学部の授業に呼び戻さなければいけないわけですので、そのためにどうしたらいいかということは、そこにいらっしゃる委員の小島武司先生などにお願いするわけでありますというふうに話しました。どうも法科大学院制度の具体的なイメージがはっきりしていないので、各方面から袋だたきにされているような感じがあるんですが、我々としては中間報告から更に具体的な制度設計に踏み込むというのはなかなか難しいので、最終意見を待たずに早期に検討してくれということをお願いしているわけですので、もっとペースを早めてやっていただくようにお願いする以外にないんじゃなかろうかと思います。

【佐藤会長】御指摘のとおりだと思います。いろいろな事柄にわたりましたけれども、この第三者評価機関の問題も重要ですね。鳥居委員がおっしゃり、ほかの委員もおっしゃいましたけれども、第三者評価機関は法曹三者だけではなくて、一般の国民、有識者も参画するような構成にして、できるだけ独立で公正な判断ができるようにする、そういうものを早く何らかの形で立ち上げていただくというようなことを考えないといけないということなんでしょうね。

【竹下会長代理】第三者評価機関につきましては、さっき井上委員からおっしゃられたような誤解を解くという意味ばかりではなくて、どうも私は最初から、第三者評価機関は評価に徹して、適格認定という権限まで持たないということにしておいたほうが、何かここでまた、需給調整をやるのではないかという誤解を避けるという意味もあるし、それから、事柄それ自体からいっても、客観的な評価で、あとはそれを公表することによって、学ぶお客さんのほうが選択をする。評価の低いところは結局、淘汰されていくということでよろしいのではないかという気がするのです。無理にここは適格、ここは不適格ということを決めなくてもですね。

【佐藤会長】そうですね。かねて代理がおっしゃっていることですね。

【竹下会長代理】そのほうが、この機構をつくるのにもつくりやすいように思うのです。非常に強い権限を持つということにしてしまうと、そういう権限を持つ機構というのは、国の組織の中でどのような位置づけを持たなければならないかという難しい問題がいろいろ出てくるような気がします。

【井上委員】おっしゃっていることは前からよくわかっており、実質反対ということでもないんですが、問題点は、設置基準のほうは非常に外形的な事柄しか定められないものですから、本当に我々が求めており、最終的には利用者のための質というものを確保するために最低限こういうことは実現してもらいたいことがですね、設置認可のところの審査では、確認することは無理だと思うのです。また、その段階ではそれを充たす計画であっても、本当にそうなるかどうか、それを評価を公表するというだけで徹底するのかどうか。そこの考え方だと思うのです。公表して、こんなにひどいんですよということになれば、お客さんが行かない。そういうことでいいのか。あるいは、新司法試験の前提になりますので、そこはもっと責任が重いから、そこのところで何らかの適格認定をするという形にするのか。そこの考え方だと思うんです。

【竹下会長代理】おっしゃるとおりです。私は公表すれば、それを見て、利用者と言いますか、学生が選択すると思うのです。

【井上委員】そんなところには行かないと…。

【竹下会長代理】ええ。そういうところでいいのではないかという感じですね。

【髙木委員】第三者評価機構はどういう位置づけにするのか。先ほど言いましたように、文部省なり法務省なりからも離れて、一種の独立行政委員会みたいな形のほうがいいんじゃないかという気が私自身はしておるんですけれども、そうなったときに設置に関する要件を満たすかどうかの判断にとどまらず、例えば新しい司法試験だとか、司法修習など、相互にものすごい関連はあるわけですから、一括して扱えば良いかと思います。そういう意味では、実務的に、あるいは技術的に可能なのかどうかよく検証しているわけではございませんが、印象論だけで言えば、場合によってはそういう外に出る機構の中で対処していくという考え方もあり得るんじゃないかと。そんなように思ったりするんです。

【佐藤会長】独立行政委員会ということになると、相当大仕掛けの話にもなってくると思います。一つのアイデアとしてはおもしろいのですが。
 この第三者評価機関の構成や守備範囲をどうするかということは、今後更に議論する必要がありますね。これは権威を持っていただかないといけないわけですから、透明で公正な判断ができるような仕組みをどう考えるか、どういう守備範囲でどういうことをやっていただくのがいいのかということは、4月24日まで明確に出るかどうかわかりませんけれども、考えさせていただきたいと思います。

【髙木委員】プロセスの養成だということで、そのプロセス全体で養成をし、質も高いというのがこのロースクールの設置の1つの眼目です。プロセスでというつながりの中のあるプロセス、あるプロセス、それをこま切れに見るのではなくて、一連の流れとして見ていける機構の必要性というのは、プロセス論をやった以上はあるんだろうと思うんです。

【井上委員】それは1つの考え方で、1つの機構が全体をコントロールするという形だと思うのですが、それよりもうちょっと穏やかな形というか、検討会議などのアイデアでは、やはりそれぞれの局面で重点の置きどころが違う。教育の面では教育機関としての見方があり、司法試験のところでは司法試験としての見方がある。修習は修習としてあるだろう。しかし、それらが全くばらばらだとプロセスにならないので、有機的な連携を保ちながら、しかし、それぞれの第1次的な目的に沿った管理形態というのを考えていこうというのです。

【髙木委員】過激な話が出ていますね。

【井上委員】どっちが過激と言うわけではなくて、そういう管理形態もあるだろう。どっちが入りやすいだろうということも含めて検討すべきだろうと思います。

【佐藤会長】髙木委員の御提言は、1つのアイデアであると私は思うんですけれども、それも含めて、さっき申し上げたように、どういう仕組みで考えたら一番スムーズに、しかも権威を持ったものとなるかについて、4月24日までに検討させていただきたいと思います。

【髙木委員】いろいろな指摘からも、プロセスごとの重点の置きどころの違いを強調するならこうしたらいいじゃないのというニュアンスの意見もあります。

【吉岡委員】第三者評価機関と言ったときに、確かに評価だけなのか、認定までやるのかというのは、非常に難しいところだと思いますが、いわゆるロースクールの在り方というか、どういう法曹をつくっていくかということがロースクールをつくる目的になっていると思います。そこでは今までのような画一的な法曹ができてくるという教育の在り方ではいけない。多様性を持たせようということだったと思うのです。
 ですから、日本語で言えば仮称法科大学院、その法科大学院に特徴が出てくる。そういう特徴を生かしながらプロセスを生かしながら、本当に利用者が利用しようとしたときに使いやすい頼れる法曹をつくっていくという、そこに目的があるわけですから、そういう目的を踏まえながら、レベルの確保は必要です。幾ら特徴があっても、基本的レベルがだめというのでは困るということだと思いますので、評価までで済ませるかどうするかというのは後の議論に任せるとしても、その評価が一般にわかりやすいように、特にこれから勉強しようという人達にその評価の意味をわかりやすいようにしないと利用者としては利用しにくいのではないかと思います。
 それから、第三者機関の在り方の中で硬直的になってはいけないとかいろいろあると思うのですけれども、一番危惧しますのは、今までの司法試験の合格者の数の決め方と言いますか、これは正確かどうかわかりませんけれども、法曹三者が相談して、およそ今年は何人というのを決めてしまっているという、そういうことは巷間問題になっていたように思います。
 今度はそうではなくて、むしろあるレベルに達していれば当然資格が取れるということになるので、その辺のところも大きく違ってくると思います。
 それで、ある期待されるレベルには達している。それに、更に特徴がある。それをどう評価するかというところがはっきりすればいいのではないかと思います。人数を限定するようなものではないということだけははっきりさせておいていただきたいと思います。

【佐藤会長】中間報告でも、公平性、開放性、多様性という言葉も使いながら、今おっしゃったことを強調しているつもりなんですけれども、なかなかわかっていただけないようで、これからその辺りの表現も工夫する必要があるかもしれませんね。

【井上委員】評価の基準はいずれにしろ公表すべきだと言っているのですし、評価についても、竹下先生のような穏やかな考え方でも、結果は公表するということです。

【中坊委員】今日見せていただいた各界からの主な指摘、確かに髙木さんのおっしゃるようにこれが全部を要約しているとも思えませんけれども、しかし、同時に構想の背景からすべてを否定するような批判が存在しているということは、我々この審議会としてもそれなりにこれに対しての慎重な配慮というのは要ると思うんです。
 我々はこのロースクール構想を打ち出して、しかも関係機関も発車して、これと並行してやってくださいと言っているんだけれども、先ほどもお話を聞いていると、うまく出発していないというのも事実でしょう。そういうような状況になっているということを踏まえて、我々として今、何をしないといけないか。それでは、どこに誤解があるのか。本当に発信すべきことを発信していないと、そこでいろいろな疑心暗鬼を呼んで、それが構想そのものについてまでこういうようなことを言われてきているという現状は、我々としても、それなりに真摯に受け止めて、この次までに、会長、会長代理においては大変だろうと思うけれども、そういうものじゃないということを発信できるようにしてほしい。
 我々としては、例えば3,000 人の問題にしても、先ほど会長のおっしゃったとおり、何も言わないのではわからないから集中審議の際に出して合意しました。しかし、確かにそれが一人歩きをしているところがあります。また、3,000 人に限らないになってみたり、いろいろな意見が出ているんだから、そういう意味における、我々としては同時に世の中に対して誤解を招いたり、あるいは動かないなら動かないところがどこにあるのか、それをどうすれば直るのかということについての御努力を、大変失礼ですけれども、会長や会長代理におかれては事務局とよくしていただいて、これを進めないと、構想そのものについてまでこうだなんて言われておったのでは困る。例えば経済界等からの指摘にあるように、ロースクール構想がギルド的利害から出てきたもので、ユーザーの視点が欠落しているなどと言われているが、私らに言わせたら、とんでもないことです。経済界から、山本さんや石井さんが出てはって、お二人ともそんなことおっしゃっていない。法曹界や大学のギルド的利害なんぞは出ていない。むしろ、本当に小さな司法から大きな司法へ、そして、人的の基盤の拡充というところから出てきている思想ですからね。だから、そんなもの、ギルド的利害なんて全然ないわけです。しかし、そんなことまで言われているという現状は、我々の審議会は、今言うように間違いなく動いているんだけれども、それが対外的にどう映っているのかということについては、我々の議論だけして、ここで我々が納得したって、それが誤解だとか何とか言うてみたって始まらない。ロースクール構想は実現しないといけないんだから、その意味ではもう一つ考えていただいて、4月のまとめるときに、もう一層誤解のないようにきちっと、第三者に対して発信できて、確たるものとしていただきたい。
 まさにロースクールというのは、今度の司法改革の一番の根幹のところですから、ここが狂ってきたりしたら、何もかも狂ってくるんで、その点では、是非もう一度、我々内部の議論をどうまとめるというだけではなしに、対外的にどう発信するのかという点についても視野に入れてまとめをして、我々として確認しておくということが必要だと思います。

【石井委員】先ほどから、誤解の話が出てきましたが、またここで申し上げると、まだ諦めないで同じことを言っているのかと言われてしまいそうですが、やはり法科大学院というネーミングは、かなり誤解される面があると思います。今回の法曹養成制度は、何といってもプロフェッショナル・スクールのロースクールだという発想から出ているわけですから、それがもう少しはっきりわかるようなネーミングというのをしっかり考え直さなければいけないのではないかなと考えております。
 例えば、今日いただいた書類に関しても、この前、仮称と必ず入れるということに決めていただいたのですが、法科大学院で決まったように書いてありますので、世の中の人は法律科の大学院だと思い込んでしまって、根幹にあるプロフェッショナル・スクールという概念が消えてしまう危険性があるわけです。そこいら辺も少し気をつけていただいたほうがいいのではないかという気がします。
 名前についても、佐藤先生から適切なものを考えるようにとのお話もいただいておりましたのに、今までずっと考えて良い案が出ないので、こんなことを申し上げるのも失礼とは思いますが、どうしても良いものが見つからない場合、名前を公募でもして、ネーミングを考えるということを実施してみたらと思っております。こういう内容のものについて最もふさわしい日本語的名前を考えてほしいということで、公募的なことをすれば、一般の皆さんも内容についてよく考えて、それがまた日本におけるロースクールの理解を深めるのにも役立つのではないでしょうかとそういう気がします。

【鳥居委員】大学設置基準と大学院設置基準があるんですが、何々大学院という名称の定義の基準は一切ないんです。あるのは、専門分野が何系であるということと、類型が普通の大学院か専門大学院かの区別しかないんです。
 ということは、別の言い方をしますと、すごいファンシーな名前を設置申請したとします。東京大学はロースクールと呼ぶと。中央大学は法科大学院と呼ぶと。そうなったとしますね。それでいいんです。私の理解は、少なくともこの制度の解釈はそうなんです。

【石井委員】そういうものなのですか。

【鳥居委員】ついでですけれども、大学院設置基準というのは、30条から成っていまして、要するに、大学設置審査の基準とか、課程の構成とか、教員構成というのは書いてあります。この範囲内でやればいいだけのことなんです。ですから、そんな難しいことではないと思います。一番難しいのは内容です。これは実は設置基準要覧と言いまして、この中に書いてあるすべての枠内でやればいいわけです。この中に実はカリキュラム案は書いていないんです。ですから、カリキュラムはこれとは別に、こういうモデルがあり得るというのをできるだけ幅広に書いてくれる委員会があればいいわけです。
 また、だれかがモデル案を出すと、みんなそのとおりでなければいけないと思い込んでしまいます。それでは困りますから、かなり幅広にいろいろなモデルを出して、その中には例えば北村委員も言っておられる隣接職種についても、併せて教育するという提案があったっていい。ロースクールのコンセプトの、ちょっと外側だけれども、同時に経営してもいいですよというような、そういう形でいろいろなモデル案が出てくるのは、実はこの設置基準の枠外の話なんです。

【石井委員】なるほど、そういうこととは存じませんでした。新しい名称については、そういうことで、是非御一考いただきたいということだけは申し上げさせていただきたいと思います。

【佐藤会長】法科大学院は仮称で、最終報告までにいいネーミングが出てきたら、それを使いたいと思うんですけれども、最終報告が出た後になるのか、その辺りは自信ありませんけれども、皆さんにもお考えいただきたいと思います。

【石井委員】少なくとも、配られた書類やこれから配られる書類については、なるべく仮称という文字を入れておいていただきたいということだけお願いいたします。

【佐藤会長】行革のときも、絵入りのパンフレットをつくったり、いろいろなことをやりましたけれども、確かに中坊委員のおっしゃるように、司法制度改革に関しても国民の皆さんから御理解いただけるよう、いろいろな工夫をする必要があると思います。心掛けていきたいと思います。
 実務家教員をいかに確保・養成するかという問題も、個別的な問題としては非常に重要な問題なんですが、関係する機関と意思の疎通を図りながら、御協力いただけるような体制を考えていきたいと思っております。
 以上、第三者評価の辺りまでお話しできたと思いますが、既に言及されておりますけれども、司法試験との関係や移行措置の問題、あるいは中間報告で例外措置について触れていますけれども、その辺りの問題については休憩をはさんで御議論賜りたいと思います。
 そうしたら、休憩を取りまして、3時15分には再開させていただきます。

(休  憩)

【佐藤会長】それでは、再開いたします。
 先ほど申しましたように、この法曹養成に関連して、新しい司法試験との関係や移行措置の問題がありますし、また、中間報告では、やむを得ない事由があるときの例外措置について言及しておりますが、その辺りどういうように考えるか御議論を少しちょうだいしたいと思います。いかがでしょうか。
 最終報告では、移行期間についてはある程度明示しなければいけないんじゃないかという気がするんです。

【竹下会長代理】そうですね。やはり、これは現在の受験生もそうですし、これからロースクールに入ろうと考える人達にとっても非常に影響の大きい問題だと思うのです。ロースクール、それ自体の本質的な問題ではないのだけれども、実際上は大きな意味があると思います。

【佐藤会長】そうですね。受験生などにとってはかなり重大な関心事でしょうからね。

【井上委員】既に、今の1年、2年の人達にも、かなり動揺があるというふうに聞いています。というのは、情報が新聞ぐらいからしか伝わらないものですから、自分たちはどうなるんだと不安になるというのです。やはり、できればこの辺ぐらいからこういうふうになりますよぐらいの、確定的には言えないとは思うのですけれども、何か見通しのようなものが言えればいいのではないかと思います。

【水原委員】それは、仮称法科大学院の設置時期が決まったときに、それからどれぐらいというふうになるわけですね。あくまで、始期をきちっとしておかないと、それとの関連を付けておかないといけないと思います。

【藤田委員】移行期間の問題は、例外措置とも関係があると思います。この点については、前々から恵まれない家庭の子弟のために、そういう境遇の人にも法曹になってもらわなければいけないわけですから、検定試験を経て、同じ司法試験を受けるという門戸を開いておくことが、現在の制度のメリットである公平性・開放性を維持するという意味でも必要ではないかというふうに申し上げておりました。これに対して、それは法科大学院の存在理由を減殺する方向に働くという批判がありました。これももっともなことなので、当初は例外的な措置でというふうな形ででも残していただきたいというふうに申し上げておりました。しかし、この点について、各方面から公平性・開放性に反するという批判がされているようです。そうすると、ごく例外的にということじゃなくて、ある程度広く門戸を開いて受験を可能とすることも考えてよいのではないか。私は、同一の試験を受験させるほうが格差が生じないと思いますので、そういう検定試験を経由して、同じ司法試験を受けることを認めるというほうがよかろうと思います。
 そうすると、ショートカットでいってしまおうとするという弊害が生ずるということも言われておりますけれども、受験回数の制限を導入するとすれば、法科大学院に行かずに受験するということは、自己のリスクにおいてやるということになるわけですから、それほど大きな弊害は出てこないんじゃないかというふうに考えております。

【竹下会長代理】私の思い付き程度のことなのですが、どうも例外措置と言って、何か本来の法科大学院構想から外れているのだけれども、やむを得ずに認めるというよりも、もうちょっと積極的に社会人枠というものをある程度、100 人でも、あるいは合格者の1割ぐらいでもいいかと思うのですが、そういうものを設けて社会的経験のある人は、これはロースクールに行かなくても、社会的経験を積んでいるというところにメリットがあるわけですから、そういう人達は同じ試験でもいいし別の試験でもいいと思うのですが、そういう枠を設けて、社会人を修習過程に取り込むという考え方を取ると、別に経済的に恵まれない人ばかりではなくて、一旦は企業とか行政庁へ勤めたのだけれども、法曹に転換したいというような人も流入してきて、多様な経験をもつ法曹を得るという点でも、積極的な意味があると考えているのですが、いかがでしょうか。

【藤田委員】フランスで同じような制度がありますから、私もなるほどいい制度だなと思ったんですが、それは社会人枠の別途試験ということで考えて、早く法曹になりたいという、言わばショートカットのような制度と別に設けるのか、それとも同じ形で設けるのか、どちらでしょうか。

【竹下会長代理】同じ形ですね。例えば、社会人経験3年なら3年として、普通経済的に恵まれないという以上は、社会へ出て働いているのでしょうから、そういう人もちょうど法科大学院の3年に相当するぐらい社会経験を積んだ人であれば、受験資格を認めてもいいではないか。それで、場合によってはこちらは5回ぐらいの受験回数制限のようなことを考えてもいいのかもしれませんけれども、細かい制度設計は別として、物の考え方として何かそういう積極的な考え方のほうがよいのではないかという感じがするのです。

【井上委員】中間報告で「やむを得ない云々」としていたところは改めたほうがいいという御趣旨ですか。

【竹下会長代理】ああいうふうな理由も一つ入れておいても悪くはないのですけれども。

【井上委員】それに付け加えてということでしょうか。

【竹下会長代理】はい。

【井上委員】私個人の意見を申し上げれば、筋としては、やはり、プロセスとして養成していくのが利用者のためにいいんだという考え方で全体が成り立っているわけですから、そちらのほうに社会人というか、バックグランドの違う方もできるだけ入ってもらう。また、入るのが容易な制度の仕組みにして、そちらで法曹となってもらうという考え方は、基本にないといけないと思うのです。
 そこの点さえ確保できれば、ちょっと違うルート。これは例外というか、言葉は難しいのですけれども、例えば藤田委員が言われたフランスのように、フランスの場合幾つも入ってくるルートがあるのですが、そういうルートを設けるのも一つの考え方と思うのです。
 その場合に、新司法試験というのは、ロースクールできちっと教育をする、その成果を確認する内容の試験だということになっていますので、それとは別ルートの人につき、一定の検定をするにしても、同じ試験をするというのは、考え方としてはちょっと筋が通らないような感じがするのです。しかも、新司法試験、それだけで資格を測るというのではないというのが基本思想なものですから、別ルートについては、むしろ、考え方としては、社会経験なりいろいろなプラスの方向にカウントできるものを生かせるような、あるいはそれを測れるような試験ないし選別方法のほうがいいのではないか。
 ただ、それは抽象論ですので、具体的な新司法試験の在り方というものとの見合いで、あるいは最終的には、同じような試験でいいのかもしれません。ただ、考え方としては、やはりプロセスを重視するという以上、それとは違うルートで入ってこられる方の入り口の問題とその教育の問題は、また別に考えたほうがいいのではないかと思われるわけです。
 分けてしまうと、法律家が2種類できることになるじゃないかというご心配は分かるのですけれども。

【竹下会長代理】そうではなくて、原則はプロセスによる教育なのですけれども、それにそれ程こだわって、全員がみんな同じような経歴で法曹にならなければいけないかというと、そういうことはないのではないか。1割程度いろいろな経歴の人が入ってよいのではないか。全員が全員、国際的なレベルで活躍するというわけでもないし、いろいろもっと身近な、一般の人の細かい法律相談を扱うというような法律家も必要になるわけなので、そうだとすれば確かに理想的なプロセスによる教育ではないかもしれないけれども、一定の社会経験があるということを積極的に評価するということでもよいのではないかという考え方です。

【佐藤会長】北村委員どうぞ。

【北村委員】私は竹下先生の考え方に賛成なんですけれども、そのときにやはり同じ筆記試験だったら同じ試験にするのがいいのかなと。ただ、別ルートで来た方には口述試験というのか面接試験というのか、それをきちっと。要するに、仮称法科大学院の場合には、その大学がその人達それぞれを見て、だから口述試験なり面接試験なりをやっているのと同じだと思うんです。だめだったら落としていくでしょうし。それが、こちらの場合にはないわけですから。

【井上委員】いや、ないとは決まっていないですよ。

【北村委員】ないとは決まっていないですけれども、それに匹敵するものとし、プラスそういう口述試験とかを課すという形でいいんじゃないかなというふうに思っているんです。

【藤田委員】社会人も学部卒業の学生も、やはりプロセスはあると思うんです。ですから、そういうプロセスを評価の対象にするということも可能なんで、仮称法科大学院を出なくてもプロセスの判断はできるんじゃないか。
 それと、法科大学院構想に対する批判を見てみると、学歴社会の復活だというような意見がかなり根強いんです。これは誤解に基づく面もあるとは思うんですけれども、ロースクールの先達のアメリカでウォール・ストリート・ローヤーズは、当初ハーバードとイエール出身者だけで、そのうちコロンビア出身が加わってきたというような経緯もあったと聞いていますから、学閥の復活というような恐れが全くないわけではない。
 そういう意味から言うと、先ほど会長代理がおっしゃったような、例外的なというんじゃなくて、もうちょっと積極的な意義を持たせた制度として展開したほうが、理解が得やすいんじゃないかなというふうな感じがいたします。

【水原委員】私は結論だけですが、竹下代理の説に大賛成でございます。

【佐藤会長】その要件というか、その辺りはどういうように考えたらいいんですかね。フランスの場合はどうなんですか。

【井上委員】フランスの場合、ルートは幾つかあって、それぞれに選別の要件も、試験を課す場合もあれば、そうじゃない場合もあってさまざまです。詳しくは資料に出ていると思いますけれども、全体として系統的な、一貫した考え方で一挙にできたものじゃなくて、積み重ねでいろいろな試みをしてきた結果ですから、整合性は必ずしもとれていないと思います。
 私も別に、皆さんがおっしゃっていることに結論として反対しているわけではなくて、大本のところが揺るぐようでは困るということなのです。あえて、初めて藤田委員に反論しますと、先ほどおっしゃったプロセスの評価というのは、ちょっと考え方としては違うのではないか。それとは別の基準があって、そういったことをプラスに評価していくということはあり得ると思いますので、結論として反対しているわけではありません。

【佐藤会長】法科大学院の場合は、例えば法学部に限らず、どの学部でもいいんですけれども、そこでリベラルアーツといってもいいんですが何かを学び、いろいろ勉強して、そして人生の選択として自分は法曹になりたい、法曹という職業人としての専門教育を受けたいと決める、それに応えて専門職業人として教育するということになるわけです。そこが従来と基本的に違っているところで、プロセスが重要だという意味なんですね。だから、プロセスの意味が変質すると具合が悪いわけで、藤田委員もそのことに言及されている。ただ、それとは別の途の可能性について、やや我々は例外として考えてきたということなんですけれども、理屈がきちっと立つならば、もう少し別の途の可能性を積極的に考えてしかるべきではないかということなんでしょうか。
 今日まとめるつもりはありませんが。

【吉岡委員】以前から例外の道筋をということは主張しておりまして、私は社会経験があれば、もう即法曹になれるというのは、それはちょっと無理があると思っておりまして、少なくとも利用者が期待できるだけの法律の知識なり実力なりは持っていていただかないといけないので、ただ4年、3年ですか、そのコースを絶対条件として、そのコースを出ていかなければ受験することもできないという、そういう層が出てしまうということは問題だという認識でずっと意見を申し上げておりまして、それがいろいろな単位を取るとか夜間とか通信とか、そういうようなことでできるだけ参加の機会を広げていこうという、そういう方向で中間報告をまとめていただいたと思っております。
 ただ、それだけまとめていただいても、どうしてもそこから外れてしまう人というのは、必ず出てきますので、そういう方のための道筋というのは細くてもつくっておく、逆に言うと閉じてしまってはいけないという、そういう考え方で申し上げておりましたので、社会人枠でかなりのところを取っていいかという、そこまでは考えてはいなかったんです。  ただ、じゃあその枠をどこらぐらいまで見るのかという、これが非常に悩ましいところですし、それから利用者にとって多様な経験を積んだ人が法曹になるという、それは非常にプラスになると思いますので、その辺のところも配慮する必要があると思います。

【佐藤会長】井上委員も吉岡委員もおっしゃったように、ロースクールにはいろいろな層、社会のいろいろな経験をした人にどんどん来てほしいということですが、そしてそれが基本ですが、しかしその途に全面的に乗り切れない人達も相当おられるかもしれない。その人達に対する配慮を、もう少し積極的に考えてみようじゃないかということですね。その要件などについては、最終報告までに外国の例も見ながら少し詰めさせていただくということで、よろしゅうございましょうか。

【鳥居委員】今の点に、もう一つの視点を付け加えておいたほうがいいかと思いますのは、吉岡さんがおっしゃった問題を解決するもう一つの方法として編入学定員というのがあるんです。
 つまり、ある一定の要件を満たした社会経験をした人達は、編入学して学んで、司法試験を受けられますというのも、一つのやり方です。一つのオプションとしては考えられると思うんです。
 編入学については、この設置基準でかなり詳しく決めることができますので、社会人入学と編入学と、そして今の吉岡案である、それも飛び越していきなり司法試験を受けるというオプションと、どうウェートを考えるかということじゃないかと思うんです。

【山本委員】さっきの藤田先生の御意見に反論するわけじゃないんですけれども、学閥云々の心配です。その学閥云々の心配ではなくて、やはり仮称法科大学院が優劣を競って徹底的に競争すると、これは大事なことだと思うんです。
 札幌に行ったときに、公聴会に出られた方が、弁護士さんの世界というのは、本当に学閥がない世界だというふうにおっしゃったんですね。お医者さんと違ってですね。それは何かというと、やはり司法修習だと思うんです。そういう意味では、修習というのはそういう意味もあるのかなという感じがしているんですけれども、これは言葉が悪いんですけれども、できるであろう法科大学院には、とにかくいいローヤーを出すような、そういうことは大いにやってもらったほうがいいというふうに思います。学閥は要りませんけれども。

【佐藤会長】鳥居委員の御指摘の点もちょっと考えさせていただきたいと思います。関連して、いわゆる法科大学院ができて、新しい司法試験をという場合、既にいろいろ議論したように思いますけれども、どういう具体的なイメージを持ったらよいのでしょうかね。まだ、なかなか熟していないところがあるようですが。

【井上委員】私への質問ですか。

【佐藤会長】何となく。

【井上委員】制度の趣旨としてはさっきから申し上げているとおりだと思うのです。その試験だけで適性を測るというよりは、法科大学院できちっと教育を受けて、我々がうたっているような教育理念を実現してくれているという前提ですけれども、それが身に付いているかどうかを確認するということであって、その具体的な方法についてはいろいろな考え方があり得ると思うのですが、一つの考え方としては、今までのように幾つかの問題に比較的短い言葉で答えさせるということではなくて、かなりの時間を使い、素材も結構重厚なものを与えて、それを1日なら1日掛けて解かせる。その素材としては、中坊先生がおっしゃっているような生に近いものということもあり得ると思うのです。そういうのも一つのアイデアとしてはあるのですけれども、今ここでこうだというふうにも言えない。論理力だとか、問題解決能力とか、問題発見能力とか、そういういろいろうたってあるものを試せるような方法としてどういうものがあるのか、その辺は知恵を出し合って具体的なものをつくっていく必要がありましょう。
 他方の極としては、すごく科目を多くして、短い答えでたくさん答えさせるというのも一つの考え方で、その両方の極があり得ると思うのです。思い付きですけれども。

【佐藤会長】藤田委員どうぞ。

【藤田委員】私も、かつて司法試験の考査委員をやったことがあるんですけれども、どうも新司法試験といっても具体的なイメージが湧かないんです。理念的には中間報告で書いたようなことなんですけれども、じゃ具体的に今の司法試験がどんな形で変わるのか。今まで考査委員は、いかにして予備校の論点整理だけを勉強しただけではできない問題をつくるかということで、一生懸命やってきたわけです。ですから、具体的にどう変わるのかも、相当研究をして考えてもらわないとなかなかうまくいかないんじゃないか。
 例えば、北村先生がおっしゃったように、面接試験で一番受験生の資質・能力がわかるんです。1時間かけて面接すれば、大体もうみんなわかってしまう。それができないから10分か15分でやって、変な受験生をつかんでしまうということになるんです。これから具体的に新司法試験の内容を検討してもらうということが必要なんで、我々が具体的な変更の内容まで考えるのは、ちょっと無理ではないかというような気がいたしますがどうでしょうか。

【井上委員】理念としては、ほぼ共通の理解があると思うのですけれども、具体的な方法については、試行錯誤も含めて、やはり今後検討してもらう必要があるだろうと思います。
 理想的に言えば、長い時間掛けて、いろいろな角度から話を聞く。私は、今の口述試験の15分でも、かなりの程度わかると思います。しかし、何せものすごい人数ですから、実行可能かどうかとか、そういうことも含めて考えないといけないと思います。

【佐藤会長】その点は、どういう教育方法を取るのか、そしてそれにふさわしい試験になると思うんです。教育内容・方法を具体的に考えるときに、それに合わせて考えていただかないと。

【井上委員】やはりセットだと思うのです。どっちが先という問題じゃなくて。

【佐藤会長】そうですね。水原委員どうぞ。

【水原委員】一つだけ井上委員に教えていただきたいんですが、先ほどの一定の、例えば1日掛けて素材を提供して答案を書かせると。これは、今、現に司法修習生の2回試験で実施しておる。そういうことをイメージしていらっしゃるんですか。

【井上委員】はい、そういうものをふくらませるのが一つの考え方かなというふうに思うのです。ロースクールで生の素材、あるいはそれを加工した素材を使って議論をする。双方向の授業とか、対話、討論によっていろいろな能力を身に付けていくということをうたっていますので、それを測るには、長い時間を掛けて問題を解析させるとか、理想を言えば、それに基づいて更にディスカッションをさせるということもあり得ると思うのです。ただ、これにはコストとか手間の問題等もありますので、理想論かもしれませんけれども。

【佐藤会長】この問題は、今日の段階ではこの程度とさせていただきましょうか。
 あと司法修習との関係もあるんですけれども、今日の段階ではちょっとどうでしょうか。司法修習との関係は、中間報告でもやや抽象的に言っているにとどまるんですけれども、これも次の4月24日までに考えさせていただいてということにしましょうか。

【竹下会長代理】そのほうがよろしいのではないでしょうか。

【佐藤会長】一応3時半までこれをやって、3時半からは法曹人口のほうにと思っていましたので、10分遅れですが法曹人口のほうに移らせていただきたいと思います。
 法曹人口の増員の具体的なスケジュールをどう考えるか。もっと具体的に言いますと、いわゆる法科大学院をいつごろからスタートさせるべきか、計画的にできるだけ早急に3,000 人養成と言っているわけですけれども、大体どの程度の期間を見込むのか。将来の一定時期にどの程度の法曹人口の規模を想定すべきなのか。この辺りはいかがでしょうか。中間報告では具体的に言っていないんですけれども、いわゆる法科大学院はいつごろスタートして、大体3,000 人の法曹資格者を生み出す時期としてどの辺りを目標におくかというのは、最終報告の段階ではやはりある程度具体的に示さざるを得ないんではないかという気もするんです。この辺りについてのお考えをちょうだいできればと思います。

【鳥居委員】今日、事務局が配ってくださった資料抜粋がありますね。あれには載っていないんですが、あれは夏の8月7日の集中審議の資料の22番というのは今日配っていただいてないんですが、そこにヒントがあると思うんです。表題は資料22で「法曹人口の推移(シミュレーション)」。

【事務局長】六法全書の上に資料が幾つか置いてあります。

【鳥居委員】73ページですけれども、これの一番下に注がありまして、注の2番に平成14年度の司法試験から合格者は増加するものと仮定したとありますね。これが1つの考え方の分かれ目でして、何年からロースクールをスタートさせるかは別として、司法試験の合格者数の増加を始めるのを何年と考えるのかというのが、まず一つ考えとしてはあって、それと切り離せるかリンクするかは別として、ロースクールをいつスタートさせるかという判断だと思うんです。1つの私案として、私の案を申し上げますと、平成14年に司法試験の合格者を若干合格させるという移行措置を取りながら、平成15年の4月からロースクールの入学を開始する。そうすると平成18年まで徐々に司法試験合格者数が増えていく期間、ただしまだロースクールの卒業生は出ていないという時期が続いて、平成18年、ということは西暦で言うと2006年ですが、そこからロースクールの卒業生が出始めるという。

【井上委員】17年から出ます。2年併用ですから。

【鳥居委員】17年からですか。2005年から卒業生も出始め、その人達が今度は本格的に新司法試験を受けるという、こういうタイムスケジュールではないかと思うんです。たたき台として申し上げます。一番早いケースを、この資料22でそれを見ますと、シミュレーションの一番右側の3,000 人のケースに相当しまして、それの右端の数字を左端の年数と見合わせながら見ていただきますと、今はもう平成13年に入っていまして、現在の状態は1人の法曹三者が人口5,549 人の面倒を見ているわけです。これ医者の数と比べますと、医者は現在約24万人でして、お医者さん1人当たり530 人の人口の面倒を見ているんです。それに対して、法曹三者がその10倍の5,500 人ほどの面倒を見ていると、面倒を見ているという言葉はおかしいんですが。司法試験の合格者数が増え始めるのを、いつと見るかによりますけれども、このシミュレーションですと平成16年から少しずつ人口当たりの比率が変わっていく。そして平成17年か18年ぐらいに、新法曹が生まれ始めるころに、法曹1人当たり3,872 名の国民を受け持つと。平成18年の一番右端です。ここから世の中変わり始めるということじゃないかと思うんですけれども。

【竹下会長代理】それは、すぐに3,000 名にするという前提ですね。

【鳥居委員】そうです。ロースクールをつくったら、もう最初から3,000 名というケースです。

【竹下会長代理】それは、ロースクールがどのぐらい立ち上がるかを見てみないと決められない問題ですね。

【鳥居委員】だから、そんなには実際できっこないという。

【山本委員】できるだけ早くということになるんじゃないかという気がするんですけれども、この審議会の答申というのは総理大臣に提出するわけでしょう。内閣は立法措置がまず第一に必要ですね。立法措置をやって、例えばロースクールだけ考えても、ロースクール設立の呼び掛けをやっても設立するのは任意ですから、場合によってはだれも応じないかもしれませんし、そうであっても強制するわけにいきませんね。立法措置が行われたら、その立法措置を具体化する行政セクションが、できればエンカレッジして手を挙げるような努力をしなければいけないのであって、審議会は望ましいという時期は提示できるでしょうけれども、ここできちっと時期を決めてしまうというのは、どういう意味があるのかちょっとよくわからないところがあるんです。

【鳥居委員】話し方が悪かったんですが、いつまでにではなくて、いつからは設置認可の申請書を受け付けますという一番早いのは、例えば平成14年の4月から受け付けて、15年開校の申請を受け付けますと。

【山本委員】そういう意味ですか。

【鳥居委員】そういう意味です。ごめんなさい。

【竹下会長代理】それは先生御自身で最も早いケースと言われたように、相当順調に事が運んだ場合ですね。

【鳥居委員】それで、設置認可の審査手続も今どんどん規制緩和しておりまして、1年掛けないで審査する方向に向かっていまして、一番短いのは3か月審査があるんです。何か月審査にこれをするかは別問題ですが、例えば6か月審査というような方法にしますと、平成14年の7月申請、あるいは9月申請で、平成15年4月開校は学校によっては可能になるということです。

【佐藤会長】藤田委員が、さっきから手を挙げておられます。

【藤田委員】私も基本的に山本委員のお考えと同じなんですけれども、仮称法科大学院の制度設計をこれから詰めていただくということがありますし、やはり質的や倫理的なレベルの維持ということも考慮しなければいけない。また、それから法曹が社会の中にどのように浸透していくかというようなことも見ながら、努力していくということでありますから、できるだけ早くと言うしか言いようがないのではなかろうか。
 仮に、このぐらいの時期にということを考えられるとしても、それは努力目標というか、一つの政策目標というか、ガイドラインというか、そういうような性格にとどまらざるを得ないんじゃないかというふうに思います。

【水原委員】藤田委員の意見に同感でございます。先ほど来いろいろここでも意見交換がありましたとおり、法科大学院でどういう教育内容にするのか、すなわち設置認可の基準はどうするのかということも、まだ全く決まっていない段階ですし、それは申請受付をいつ、それは申請受付はそれでよろしいかもわかりませんけれども、だけれどもどういう基準でならば通すぞということの全く見通しの立っていないときに、いつから受け付けますよということを言うのは、ちょっと早急にすぎるだろうなと。そういうことも考えてみますと、いろいろな要件が整ったところで出発にすべきだろうと。それが1つと。
 もう一つは、仮に設置基準ができまして、そして大学院が設置できましたと。ところが、その教育内容を実際に行ってみて、どの程度の人材が育成されているのかということを見極めないと、いきなり大きい数字で最初からぼんと合格者を出すというのは、余りにも勇まし過ぎるなという気がいたしますので、申し訳ございませんが意見として申し上げます。

【佐藤会長】吉岡委員どうぞ。

【吉岡委員】水原委員おっしゃるように、実際問題としてどのぐらいの大学が手を挙げるのか、あるいは大学以外のところでも仮称法科大学院をつくるということで手を挙げるかというのは、非常にわかりにくいところだと思うのですけれども、現実には40校とか50校の大学が法科大学院をつくろうという取り組みをしているというような話も聞きます。それがどこまで、何年掛かったら本当にできるのかというところはあるのですが、できるだけ早くとか、そういう表現で決めた場合に、そのできるだけ早くというのか余りにもあいまい過ぎて目標が定まらない。それは学生にとっても非常に悩ましいことですし、それから本気でやろうとしている大学にとっても、やはり悩ましいことになると思いますので、大まかな目標は立てたほうがやりやすいのではないかと思います。そうしないとなかなか実行にもっていけないのではないかという気がいたします。

【鳥居委員】私は、徐々にということはもう大賛成で、それから水原委員がおっしゃるように、内容が決まらないうちに先に時期だけを決めるというのはまずいというのも大賛成なんです。ただ、今、大体時期はどのぐらいと見計らえば何が起こるかということだけを今シミュレーションしているわけですから、さっきの73ページをもう一回見ていただくとわかるんですが、いきなり3,000 人でいった場合、今度は左半分を見ていただきますと、合格者数を3,000 名とした場合の、法曹人口そのものがどう変わっていくかが出ているわけです。3,000 名でずっと見ていくと5万に達するのは、5万1,966 というところがあるでしょ、それは今から12年後なんです。ですから、いきなり3,000 人でいったとしても12年掛かると。2013年ですね。だから、大体こんな感じでとらえると、政策目標としては大体いつというのがこんなところかなという感じを申し上げているわけです。

【井上委員】問題は、恐らく2種類あって、1つは3,000 人と掲げていることにつき、どの時点で3,000 人にするのかということ。
 もう一つは、この法科大学院というものの設立ですが、これは幾ら来年からと言っても無理でして、鳥居先生がおっしゃったのも、幾ら早くてもここから先ですよということだと思います。これは水原委員がおっしゃったように、いろいろな条件が整う中でできるだけ早くということしか言えない。しかし、それが発足したとして、移行措置につきある程度の目標は立てないといけない。その移行期間をどのぐらいと見積もるのか。これは、3,000 人というものをどの時点に置くのかとは必ずしも連動しない問題なのです。制度設計するとすれば、その移行措置の大まかな見通しみたいなものを立てておかないと、受験生とかも予測が立たないのです。

【山本委員】今、数の問題は鳥居先生がおっしゃるとおりだと思うんですけれども、3,000 人にするというのが、ロースクールができないと今の1,000 人のままだということなんでしょうか。やや部分的な話なんですけれども。

【鳥居委員】シミュレーションでは注の2で、ロースクールはまだ卒業生を出さない途中でも司法試験は若干合格者を増やすというふうになっているんです。

【山本委員】こっちのほうがすぐできますね。ロースクールというようないろいろな手続がなくてもできるわけですから。

【髙木委員】だから、いつできるやら、まだ漠としているから、しかし、ともかく法曹人口をできるだけ早く増やしましょうというところは、もうみんな共有できているだろうと思うんです。表現の仕方はいろいろあり、藤田さんや水原さんのおっしゃったような面も当然あるわけですから、中身何も詰まらないまま時期だけというわけにも勿論いかぬのでしょうが。そういう意味では、例えばちなみにというような表現で、こういう要件がこの辺まで整えばとりあえずスタートが可能ではないか、一番早いケースとしては平成○○年頃が想定し得るというような表現の仕方はやはり要るんじゃないかなと思います。現に、さっき井上さんから大学の1年生の人達もいろいろ心配しているという話もありましたし、現に今の仕組みで司法試験に挑戦している人達も、大体いつごろどうなるのというのがわからないから、そういう意味でそういう人達にメッセージを時期についても送ってあげる必要があると思います。

【竹下会長代理】やはり、ある程度時期を言わないと、大学側も準備をするのに、いつを目標にして準備をするかということがありますので、努力目標になるかもしれませんけれども、ある程度時期を明らかにしたほうがよいのではないかと、私は思うのです。ただ、その時期を余り急ぎ過ぎると、今度は特定のところだけが先に飛び出すというようなことになるので、若干余裕は見て、しかし時期はある程度はっきりさせる。あくまでも努力目標に終わるかもしれないという前提ですけれども。
 例えば、さっき鳥居委員が言われたように、最も早いケースで平成15年からロースクール入学開始ということになる。しかし、それは実際上無理なので、平成16年か17年かその辺りということになるのかなという感じなのですけれども、それではまだ内容が決まっていないのに、難しいということであると、そういう線も出せないということになりますね。

【佐藤会長】今日は具体的に言うのは難しいですけれども、さっきのお話のように第三者評価機関をできるだけ早く立ち上げて、早急に仕事に掛かっていただく、そしてそれを前提にして最終報告の段階までに具体的目標を描く。中間報告では、できるだけ早急に3,000 人ということをうたっているわけですから、それに到達するためにできるだけ早くスタートしないといけない。しかし、勿論できないものはできません。そのことも考えて、この辺りからスタートして、3,000 人という目標はこの辺りで到達する、この程度のことはやはり最終報告の段階でうたうということをしないと、何か全体がいつまでもふわふわとしているような感じに受け取られるんじゃないかとちょっと心配するんですけれども。

【水原委員】前提はあくまで、この中間報告にもうたっておりますが、法科大学院を含む新たな法曹養成制度の整備の状況等を見極めつつ、できるだけ早くということでございます。大前提はそれなんで、その大前提がはっきりしていないときに、余り勇ましく進軍ラッパを出すのはいかがなもんだろうかという気がいたします。

【藤田委員】ちょっと今の論題から離れるかもしれないんですが、この法曹人口の推移のシミュレーションの前提はなるべく早く3,000 人にしてということなんですが、法曹人口の推移というのを見ますと、2050年に13万8,036 人になるんですね。それで、どこかのところであるレベルに達して横ばいになるはずなんですが、どうもこれを見ると2050年までは増え続けるということになる。しかも右端の法曹1人当たりの人口の推移というのを見ますと、728 人に1人ということで、現在は5,752 人ですから、アメリカに近づくんですね。それで、長期的にどのくらいのレベルが、我が国の法曹人口として適当かという視点からいって、これで大丈夫かどうかという疑問があります。

【佐藤会長】増え続けるんですか。どこかで安定するはずですね。

【藤田委員】前に何かそういうようなシミュレーションを見たよう記憶があるんですけれども、これは日弁連ですか、久保井さんのプレゼンテーションのときに出された資料に付いていたものですか。

【事務局長】違います。

【井上委員】法律家になって何年稼働できるか、歳をとっても益々元気が持続できるようになっていますから、単純には言えないと思うのですけれども、例えばそれを40年とすると、3,000 人をベースにすれば12万人ですね。そのうち、どれだけ減るか…。

【藤田委員】リタイアしていく人はこれにカウントされているんですか。

【井上委員】カウントされているのでは…。

【事務局長】これは、夏の集中審議に出した資料でございまして、このときには減っていく人数の計算の仕方はいろいろあったんでございますが、あのときにも御説明しましたように、この「注1」で書いてありますように、要するに死亡者数を差し引いたと、一生涯お仕事をやられるという前提で書いたものでありまして、当時夏の集中審議でも中坊委員のほうから、そんなことはないだろうと、日弁連のほうでもリタイアの年数というのは大体わかっているんで、それを書けばこんな数字にはならないという御指摘も受けたとおりでございます。したがいまして、これはあくまでも一生涯、どうあっても私は法曹でずっと仕事をするんだということを前提にして書いておりますもんですから、このような数字には現実にはならないということだろうと思います。ただ、1つの目安。

【藤田委員】70歳でリタイアするという前提でやったシミュレーションがあったんじゃなかったんですか。

【事務局長】ですから、そのときも申し上げたんですけれども、皆さんのほうで70歳でシミュレーションをつくれと、65でつくれといったらつくりますと言ったんですけれども、その後別に御要望もありませんから、現在のところつくってはおりません。

【藤田委員】ただ、こういうシミュレーションだとちょっと問題なんで、やはりこのレベルでは幾ら何でも訴訟社会になってしまう。弁護士が生活保護を受けたりタクシードライバーになったりするような国の話になってしまうんで、ちょっとこれを基礎にして考えていいのかなという気がするんですけれども、リタイアを考慮に入れたシュミレーションをつくってくれと言えばつくれるわけですか。

【事務局長】何とか、努力はできると思います。

【井上委員】3,000 人40年で12万人ですから、そこから1万ないし2万減るとすれば、10万人から11万人というところで安定するはずなんですね。単純計算だと。

【藤田委員】久保井さんのプレゼンテーションのときに見たので、たしか2050年に11万か12万かという表を見たような気がするんですけれども。それでもちょっと多いんじゃないかと思うんですが。

【井上委員】アメリカは法曹資格者が100 万人と言われています。実際弁護士を開業している人は70万人とかそんなものだと思うんですけれども、100 万人として人口が日本の約2倍ですから、日本に引き当てれば50万人ということですね。日本が今2万人ぐらいですから、25倍ですので、それよりはずっと少ない。国際比較がありましたけれども、どの辺になるのか、多分フランスよりは多くなるでしょう。

【佐藤会長】ドイツが10万ぐらいですか。

【井上委員】ドイツは約10万人だったと思います。

【事務局長】会長、中間報告の21ページの下のほうに書いてございます。要は、10万ぐらいだというと、ドイツとフランスの間ぐらいだというふうな感じでございます。

【藤田委員】飛躍的に増加しなければいけないということはわかるんですが、石を投げたら弁護士に当たる社会というのも、余り暮らしいい社会ではないのかなという気がするもんですから。2050年になると私は118 歳で、生きてはおりませんけれども。

【佐藤会長】後で、正確なシミュレーションを。ただ、大体の様子は今のような話ですかね。
 そうすると、今日取りまとめるつもりはないんですけれども、先ほどの話のように、できるだけ早く評価機関を立ち上げていただき、そして法科大学院もできるだけ早くスタートするようにする。3,000 人は計画的にできるだけ早急にということですから、政策目標であれ到達目標であれ、この辺りまでこうしようじゃないかということは最終報告に掲げる。できるかどうかわかりませんけれども。

【竹下会長代理】合意が得られれば。

【佐藤会長】とても無理だとおっしゃれば何ですけれども、ちょっと考えてみると。

【藤田委員】法科大学院の設置の時期は、これはかなり客観的に決められるんでしょうか。

【佐藤会長】できると思います。

【藤田委員】ただ、その中身がはっきりしていませんから、今年の6月までの間に法科大学院の内容がどの程度詰まるかによって、その時点で判断するということでよろしいかと思います。

【井上委員】我々としても、周知期間を置いて公平にスタートできる、手を挙げられるようにしようということをうたっていますから、そのこともやはり念頭に置かないといけないと思うんです。そこのところは拙速じゃだめだと思うんです。

【佐藤会長】今の問題も移行措置との関係で、考えるべきところがあるのですが、その辺りもまた4月24日の段階までに少し整理させていただきたいと思います。石井委員、どうぞ。

【石井委員】法曹人口をこういうことで増やしていくというのはわかるのですが、法曹人口の内訳がどうなるのか、例えば弁護士はどのくらいの人数にしようと考えられておられるのか伺いたいと思います。今の話ですと、増えた分全部が弁護士になるような気がするものですから。

【佐藤会長】そうじゃありません。次に御相談します。

【石井委員】弁護士だけでなく、検察官とか裁判官を、それぞれ大体どのくらいにしたら良いかということをある程度考えないといけないと思っておりますが、その点はよろしいのでしょうか。

【佐藤会長】おっしゃるとおりです。最後に御相談しようと思っていたところなのですが、検察官、裁判官の増員の問題があります。裁判所、検察庁の人的体制の充実の必要を私ども考えてきておりまして、裁判官、検察官の大幅増員ということをずっと言ってきたわけですけれども、最終報告の段階では、具体的に大体こういう数字を、どういうスケジュールで達成するのかという辺りのことを、やはり描かないといかぬのじゃないかと思います。実は、法務委員会の小委員会でしたか、代理と一緒に呼ばれたときも、大幅増員と言ったってよくわからないという趣旨の御質問を受けました。具体的にどういう数字でいつごろどうするんだということを言ってもらわないと具合が悪いという御質問を受けたんですけれども、最終報告の段階ではこの点についてもある程度示さないとどうかなという思いがしているんです。勿論、私どもだけでこうだとやれるわけじゃなくて、やはり裁判所、あるいは法務省、検察庁のお考えも確かめながら考えなければいかぬと思いますが、その辺りはいかがでしょうか、数字とスケジュール。

【水原委員】やはりある程度の根拠のある数字は示さなければいけないと思います。ただ、それを示す前提として、今いろいろ議論が行われております、例えば国民の司法参加をどう考えるのか、そうしたときに公判手続がどうなるのか、それから捜査はどうなるのか、そういう現状と相当変わった体制を組まなければいけないという問題もございます。そういうことを踏まえながら、適正人員はどれぐらいなのかということになろうと思いますので、逐次そういうものが決まる過程において、だんだん、だんだん積み上げていかなければいけない問題ではなかろうかという気がいたします。

【佐藤会長】今、刑事のことをおっしゃっていただいたのですが、民事の場合もありますね。

【竹下会長代理】そのとおりだと思います。民事でも計画審理で迅速化を図るということにすれば、当然裁判官の定員は増やさなければいかぬということになりますし、また前回出てまいりました判事補制度の改革等でも、当然判事の増員が必要になるだろうと思いますので、やはりほかの改革と並行して考えていかなければいけないだろうと思います。

【佐藤会長】4月24日までの審議として民事と刑事、それぞれ2回ずつ予定として組んでおりますので、そこで御議論いただいて、その結果を踏まえて、更に関係機関の御意向、御計画なども確かめさせていただきながらということになりますね。

【藤田委員】裁判官も相当大幅に増やしていただく必要はあるとは思うんですけれども、弁護士事務所やその他行政庁など、裁判所外での経験を積ませるということになりますと、その分の要員が必要になるということがありますし、特例判事補制度を後ろ倒しにするということになると、その分を判事で埋めなければいけないというようなことにもなりますので、そこら辺の考え方がある程度固まらないと、どの程度増やす必要があるかということがなかなか算定しがたいという面が1つあります。
 もう一つは、前にも申し上げましたけれども、裁判所は組織で仕事をしておりますので、私がおりましたころは、裁判官3人の部で、他の職員が大体主任を含めて書記官や事務官、廷吏さんも入れて10人ぐらいだったと思います。そのほか司法行政の要員も必要ということになりますんで、裁判官だけでは困る。恐らく検事も検察事務官とコンビで仕事をしていますから、同じことだろうと思います。
 それともう一つは、裁判官も書記官もいるんだけれども、法廷が足りなくて開廷数が増やせなかったという苦い経験がありますので、やはり入れ物のほうも考えていただかなければならないということがあります。そこら辺を一つ加味して計画を立てませんと、なかなかどのくらいという人数が出てこないと思いますので、そういう作業を考えていただくということが必要ではなかろうかと思います。

【中坊委員】私たちはまずこの司法改革のときに、人的基盤という人の問題から検討していくということを言ってきた。確かに、これから本当に改革を現実化させるためには制度とか、設備とか、予算とかいろいろなことが当然のように付いてくるわけです。だから、まず人というものをどう考えるのかと、どの程度の人数を考えるのかということは、我々が出しておかないといけない。つくるのに器ができるのに従って人ができる。それは現実はそのとおりですよ。しかし、やはり我々の審議会としては、まず人というものに重心を置いて考えてきたんだから、裁判官と検察官の大幅増員の幅というものを我々が一通りの目安というか、それもやはり明らかにしていかないといけない。弁護士は例えば5、6万と、私たち既に弁護士改革の中で書いているわけですから、それじゃ弁護士だけ増えて裁判官が増えなかったらどうなるんだということになってくるんだから、そういう意味では一つの目安というものを出す必要がある。確かに今すぐいろいろな制度と、水原さんがおっしゃるようにいろいろなほかの在り方とか、判事補の在り方とか、いろいろなことが全部関わってきますから、だからそれはそういうものであろうけれども、いずれにしても我々が最終報告を出すときには、やはりある程度の数で我々が報告できるというものでないといけないと思います。

【藤田委員】書記官も含めて早く算定作業をしないといけないのじゃないかと言っているんです。

【佐藤会長】その辺りは、事務局を通じて、できるだけ情報を収集してもらいます。

【髙木委員】今日これ配っていただいた裁判所の設置状況という3枚目ですか。いろいろな事情があってこういう、各高裁管内ごとの県別の裁判官数ですが、これ人口按分でもないんですね。支部の数とかいろいろなものもあるんでしょうか。人口は少ないのにものすごい裁判官の数が多い県というのは、やはり訴訟の多い県ということですか。そういうような意味があるんですか。

【藤田委員】訴訟の件数も関係はあるんですけれども、例えば北海道の僻地で、事件数が少なくてもやはり冬季積雪なんかで遠くへ行けないようなところに、裁判官を置いておかないわけにいかないという形で配置しているところもありますので、そういうことも影響しているんです。

【髙木委員】例えば、宮崎県と岐阜県を比較してみて、宮崎県は31人おって、岐阜県は23人、人口は多分岐阜県のほうが多い、参議院の選挙の定数はここは1回の選挙で2名ですが、宮崎県は1名で、こっちが8人多いというのは。

【藤田委員】宮崎県は福岡高裁の支部があるんです。ですから、高裁、地裁、家裁と、それぞれ別に裁判官を置かなければなりません。控訴事件をやりますから同じ裁判官はできませんから、その分はプラスαというか。

【髙木委員】そういう事情があるわけですか。

【藤田委員】はい。

【髙木委員】それぞれそういう事情あってのバランスなんですね。

【藤田委員】そうです。事件数も勿論関係ありますけれども。

【髙木委員】宮崎はものすごい事件が多い県かなと思って。

【藤田委員】それは高裁支部の関係だと思います。

【髙木委員】高裁の支部6庁というのは。

【鳥居委員】熊本も多いですね。鎮台があったからですか。

【藤田委員】事件数の関係だと思います。

【山本委員】担当事件数というのを、ざっくり半分にするとか、3割減にするとか、何かそんなような感じの、どのぐらいが理想と言ってはおかしいけれども、お金のこともあるから、その辺のところを何か教えていただきたいですね。

【佐藤会長】例えば裁判の期間を半分にするとすれば、人員のほうでどうなるか、それをわかりやすく説くということは今の話と通ずるように思うのですが。

【藤田委員】民事訴訟の運営改善運動のときに、現実の根拠はない仮説なんですけれども、審理期間が2分の1になれば二乗に反比例して新件は4倍に増えるという仮説を立てたことがあるんです。ですから、審理が迅速化すれば、新受件数がうんと増えることは間違いない。それで元の木阿弥になってはいけないわけですから、やはり人員の増も必要ですし、それと同時に運営のソフトのほうも工夫しなければいけないということで、運営改善ということに取り組んだということがございます。

【水原委員】裁判官、検察官、それから補助機関と申しましょうか、裁判所書記官、検察事務官の大幅増員、それはもう本当に必要なことは当然のことで、みんなの合意をいただいたところなんですけれども、問題は国家公務員の定員の計画削減の問題で、10年で10%削減する。それは検察官も検察事務官も全部入っていると、最近検察官の増員については、財政御当局、それから人事当局から相当現状を認識されて、ある程度増員があるんですけれども、非常に重要な検察事務官につきましては、毎年どんどん減員されているんです。削られているんです。必要な人員が削られているんです。
 それはどういうところかと言いますと、法務省全体として考えろということだろうと思うんです。だから、検事を増員するならばどこかを削れと、全体として幾らというふうな考え方を担当事務部局でお考えになられると、これは大変なことになるなという意味で、この審議会で答申を出したときには、それは計画削減からこれは完全に外すんだというお墨付きでもいただくぐらいな気迫がないといけないなという気がいたしますので、その点はひとつよろしくお願いしたいと思います。
 言うだけで、ああわかったと、事情はわかったけれども、そうは国家財政の関係でいけないよと言われたら、幾らやったってだめなんで、中坊委員はやはり必要な量だけはちゃんと要求するんだということをおっしゃっていただいているんで、これだけは是非実現できるようにしていただきたいと思います。

【中坊委員】今、水原さんがおっしゃったことは、我々のこの審議会を始めたときに何か会長のほうからも、別枠に考えてくださいということをおっしゃったと思うんです。私自身は、既に裁判官の問題についても、判事補の問題があり、特に特例判事補が常態化してきた。恐らく検察官についても、現実の今の刑事事件は、法曹資格を持っている検事さんがなさっているのは、まあ大体事件全体の約三割ぐらいで、約七割ぐらいは副検事さんとか検察事務官が実際上なさっていると思います。
 いずれにしても今、裁判官についても検察官についても一種の、あえて言うならば病的な現象が既にもう出ているんだから、やはりそういうことをまさに抜本的に直さないといけないということだけは事実です。いろいろなものとは関係するけれども、具体的なある程度の目安というものを出して言わないと、確かにおっしゃるように、今どき公務員を増やすということについては逆風が吹いているんだから、それが大幅とか何か抽象的な言葉では、これはまさに我々が言っていることが迫力がないんで、やはりもう少しシミュレーションとかして調べた上で、少なくとも最終報告にはもう少し具体的な、そして大幅というような言葉じゃない具体的な数字を出す必要がある。それは何百人とは言わないでも、私はもう大ざっぱに言ったらいいと思いますが、大体少なくとも最低倍は要ると思っているんです。だから、それぐらいの感覚で私は話をしないと、この問題では改革そのものが非常にいびつな格好になってきていると思います。

【佐藤会長】その辺は私もよくわかります。さらに、法科大学院の設立・運営に当たって、実務家教員の協力を得ないといかぬという辺りのことも含めて、この定員問題を考えていただく必要があろうかと思います。
 あえてもう私のほうからまとめ的なことは申しませんけれども、この3,000 人という数字は、先ほどもちょっと申したことですけれども、これがキャップになって、ここで止まるとか、そういう趣旨の数字ではないということを改めて確認しておきたいと思います。それ以上どうなっていくか、これは国民の需要だとかいろいろなものに応じて決まっていくわけであって、計画的にできるだけ早期に到達すべき資格者の目標として3,000 人という数字を掲げたのだということを重ねてここで申し上げておきたいと思います。受け止め方がどうもいろいろあるようですので。

【藤田委員】それは、おっしゃるとおりなんですけれども、そういう努力目標を設定してやってみて、そのときの状況に応じてもし、国民がそれ以上に必要があると求めるのであるならば、さらに考えるという趣旨でおっしゃったんだろうと思うんですけれども、3,000 人で本当に大丈夫かという危惧も、かなりありましたので、3,000 人は差し当たっての目標で、それから更に増やしていくんだというような受け取り方をされると、またその不安をあおることになりかねませんので、そこら辺をひとつ御留意願えればと思います。

【佐藤会長】あと何か触れておくべきところがあるでしょうか。どうでしょうか。

【竹下会長代理】できれば、4月のときには、いろいろな点について会長と相談して、具体的な提案をしたいと思うのです。例えば移行時期の問題なども、おおよそ移行時期としては、このぐらいの年数だろうというような御意見でもおありになれば、お聞かせいただければと思いますが、どうでしょう。

【井上委員】これは個人的な感じに過ぎませんが、余り短い期間ですと不利になる人が出ますし、逆に余り長くても、これはまた別の弊害が起きたり、あるいは制度の定着に拍車が掛からないと思うのです。ですから、常識的に言えば5年とか、その周辺じゃないかなという感じがするのですけれども。

【竹下会長代理】その辺が、常識的な線でしょうかね。

【佐藤会長】そうですね。短か過ぎても何だし、長過ぎても問題ですからね。
 今日はいろいろな論点にわたりまして有意義な意見交換をしていただきまして本当にありがとうございました。この法曹養成、法曹人口についての次回の審議は、4月24日です。先ほどから申しておりますけれども、これに向けて事務局において関係機関と連絡を密にしながら、更に材料の収集に努めたいというように思います。その状況を見定めながら、私と代理において、また井上委員の協力を得ながら、それぞれのポイントについての考え方のたたき台のようなものをつくらせていただきたいと思っております。できるだけ事前に委員の皆様にご覧いただきたいと思っております。
 そして4月24日には、そのたたき台を基にして意見を交換していただき、養成あるいは人口についての取りまとめを、この日に行えればというように考えておりますので、よろしくお願いいたします。
 あと、配布資料ですけれども。

【事務局長】配布資料に関しましては、従来お配りしているものと同一でございます。特に御説明するようなことはございません。

【佐藤会長】それでは次回の審議会でございますけれども、3月13日金曜日1時半から5時まで、この審議室で行いたいと思います。この日には、国民の司法参加につきまして意見交換を行うことを予定しております。
 まず、訴訟手続への参加につきましては、既に御了解をいただきましたように、私と代理で御相談させていただき、井上委員の御協力も得まして、1月30日の第45回審議会における意見交換を踏まえて、具体的な制度設計の基本となる点についてのたたき台となる案をお示ししたい。そして、意見交換を行いまして、この審議会としての意見の取りまとめを行いたいというように考えております。
 さらに、検察審査会の在り方など、その他の国民の司法参加に関する論点につきましても、意見交換を行いたいと思っておりますのでよろしくお願いいたします。
 今日は、以上でございます。記者会見には、井上委員お願いできますか。

【井上委員】けっこうです。今日は法曹養成関係ということですので。

【佐藤会長】どうも御苦労様でございました。