配付資料

別紙3

「労働関係事件への対応強化」の問題に関する意見

司法制度改革審議会
会長 佐藤 幸治殿

平成13年3月19日
司法制度改革審議会
委員 山本 勝


 よんどころのない社用のため、「利用しやすい司法制度・国民の期待に応える民事司法の在り方」の審議が予定されております第52回の会議は、出席できません。
 全体的には、第54回で意見を申し上げる機会があると存じますが、特に当日、論議の項目として挙げられております「労働関係事件への対応強化」に関しましては、経済界としましても関心の深い問題でありますので、予め意見を提出させていただきたいと存じます。会議の席上配布いただくとともに、論議の必要に応じてご紹介いだくなどご配慮くださるようよろしくお願い申し上げます。
 なお、この問題に関して日本経営者団体連盟の意見がありますので、ご参考に添付させていただきます。

1.訴訟に代わる裁判外紛争解決手続きの要否、在り方
 増加する個別労働紛争については、裁判所の体制の強化のほかに、ADRの充実が非常に重要と考えます。とりわけ、労使の全面的な対立となり、柔軟な紛争解決が難しいことの多い集団的紛争に比べ、個別紛争は基本的にADRになじむ性格のものではないかと考えます。
 方向性としましては、裁判所の民事調停の活用が最も現実的と考えておりますが、紛争解決チャンネルの多様化の観点も含め、幅広い検討が必要と存じます。

2.「事実上の5審制」の解消
 基本的に、地裁段階からの裁判を受ける権利は、安易に例外が認められるべきではなく、少なくとも労働委員会が、地裁での判断に代わりうるほどの実質を持っているかどうかの検証が前提問題であろうと存じます。
 その意味で、労働委員会の現状は、専門体制の充実などの面で決して満足のいく状態ではないとの現状認識は、ほぼ共有されているのではないでしょうか。こうしたなかで現在、労働委員会の体制強化の検討も行われていると聞いており、今後さらに、そうした改革の方向性を見極めてから、本格的な検討を行うべき問題かと存じます。

3.労働参審制
 裁判に一般国民の参加をすすめようとの方向は、本委員会で既に出されているわけですが、労働事件について労使代表が参審員として加わるというのは、双方の利益代表との側面を免れにくく、国民参加とは理念が異なるものと考えます。
 むしろ労働事件の解決には専門性・特殊性が必要との認識を前提とした、一種の専門参審制の議論ではないでしょうか。
 ただ労働事件の専門性・特殊性は、知的所有権や医療過誤事件などのような典型的ケースとはニュアンスを異にしているのも確かであります。労働委員会との役割分担ということもあります。いずれにせよ、こうした観点を踏まえて、今後さらに議論を継続する必要があろうかと思います。
 私の現段階でのイメージとしては、労使関係や雇用慣行等々の実状に通じているといった意味での専門性は、紛争解決の最後のよりどころとして、法の公平・厳格な適用、証拠に基づく事実の認定を本質とする裁判での寄与よりも、労使双方の立場を理解し、柔軟かつ弾力的な解決方法を提示するADRのような場において、その本領がより発揮される性質のものではないかと考えております。

以上


労働参審制および裁判外の紛争処理手段(ADR)の整備についての意見

平成13年3月16日
日本経営者団体連盟
常務理事 矢野弘典

1.労働参審制について

 労働参審制は、職業裁判官以外の労使の専門家が裁判所の判決や決定に関与する仕組みと理解するが、訴訟において事実認定や法の適用を職業裁判官以外の者が行うべき状況や必要性があるとはいえない。労使の専門家の関与は、下記「裁判外の紛争処理手段(ADR)」のように、話し合いを基本とした解決方法である民事調停において実現すべきものと考える。  ちなみに、これまで労働委員会では、集団的な労働紛争解決のために公労使三者構成によって取組みがなされてきたが、労働委員会の命令が労働側に傾きがちで、しかも命令が裁判所で取消されるケースが多発しており、労働委員会の判断について不信感が存在している事実は否定できない。
 また、知的財産権に関する事件について参審制を導入する議論があるやに聞いているが、その専門性は高度に技術的な性質のものであり、労働事件のもつ専門性や特殊性とは異なるものと考える。

2.裁判外の紛争処理手段(ADR)の整備

 増加する個別労働紛争の簡易・迅速な解決を図るため、裁判外の紛争解決手段(ADR)を整備することは必要である。裁判外の紛争解決システムの構築にあたっては、当事者の自主的解決を基本としつつ、情報提供・相談・あっせんまでは、間口を広げて、労働局、労働委員会(但し、これを活用するかどうかは各都道府県に委ねられている)、労使団体など様々な機関がその特徴を活かして行い、他方、調停については簡裁および地裁の民事調停を活用すべきである。
 また、民事調停を活用するにあたっては、日経連が平成12年9月25日付で司法制度改革審議会に提出した「司法制度改革に対する意見(最終報告)」にあるとおり、雇用関係調停部を創設し、調停委員として労働問題に精通した労使の専門家がこれに関与できるような制度への改革を行うとともに、制度をより利用しやすいものとするため、国民へのPRを行うことが必要である。

以上