司法制度改革審議会
司法制度改革審議会 第52回議事概要
- 1 日時 平成13年3月19日(月) 9:30~12:30
2 場所 司法制度改革審議会審議室
3 出席者
- (委員、敬称略)
佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、井上正仁、北村敬子、曽野綾子、髙木 剛、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、吉岡初子
(説明者)
金築誠志最高裁判所事務総局人事局長
(事務局)
樋渡利秋事務局長
- 4 議題
- 「利用しやすい司法制度」及び「国民の期待に応える民事司法の在り方」について
5 会議経過
(1)福岡高等裁判所判事に関する捜査情報漏洩・証拠隠滅の問題について、金築誠志最高裁判所事務総局人事局長から説明がなされ、質疑応答が行われた。その主な内容は以下のとおり。
- この件についての最高裁への報告は、いつ、どのようにあったのか。
(回答:令状請求があったこと及び被疑事実の概要は報告された。その段階でコピーを取ったこと自体の報告は無かった。コピーを取っていることは、報道される前の晩に高裁から報告があり、それまでは、コピーを取っているとは思わなかった。)
- コピーまで渡したかどうかは知らないとしても、高裁からの報告により、簡裁→地裁→高裁と令状請求に関する報告があったことを最高裁が知った後に、何らかの措置を取ったのか。
(回答:捜査に影響があることの無いように、と注意した。それ以外に何か動く必要があるとは判断していなかった。令状の関係を知っていたのは、所長、事務局長、地裁刑事上席など数名で、報道されたように十数名ではない。)
- 4月には裁判官制度についての審議を予定していることでもあり、今回の問題についての正確な理解は不可欠だ。前回の法務省の説明では、構造的な問題があるということで対策が考えられていたが、今日の最高裁の説明では、単に今回の件が不適切であったということであり、捉え方が法務省と違っている。審議の上で重大な点であるので、本日は時間が取れないのであれば、改めて最高裁に話を聞く機会を設けてほしい。
- 審議の仕方は今後考えることとしたい。
(2)「司法制度とADRの在り方に関する勉強会」について、竹下会長代理から説明(別紙1)がなされ、意見交換が行われた。その主な内容は以下のとおり。
- 実績を上げているADRとして、保険会社が共同で関与している「交通事故紛争処理センター」があり、裁判所の処理件数が大きく減少する一方で、画一的処理の弊害も指摘されるようになっている。良い点とともに弊害も十分に調べた上で検討を進める必要がある。
- 画一的処理の傾向とともに、新しい判例が生まれにくいという面もある。
- ADRは、裁判所に持っていくほどではないが自分では解決できない紛争の解決のために利用しやすい制度として有用だ。ただし、質の確保が課題だと思う。
- 情報公開が重要である一方、IT化の流れの中では特に、個人に関する情報の保護についても留意する必要がある。
- 例えば、公害等調整委員会は、公害について被害者側の負担を軽減するための仕組みとして有用である。ADRと言っても様々なものがあるが、裁判制度との連携が大きな課題だ。時効完成間際だと、中断効が無いのでADRには持って行きにくいといった面もあるようだ。執行力の付与が簡易にできないか、とか、裁判所との間の回付といった課題もある。更に、ADR相互の横の連携や、人材の確保も重要だ。
(3)「労働関係事件への対応強化」について、高木委員から意見(別紙2)が述べられた。また、山本委員から提出された意見(別紙3)が竹下会長代理より紹介された。これらを踏まえ意見交換が行われた。その主な内容は以下のとおり。
- 労働調停について、事物管轄は簡裁でなく地裁が良い。土地管轄は申立人の住所とすることも必要だと思う。調停委員は経験・知識の豊富な人を得る必要がある。資料の提出要求ができることにすべきではないか。個別労使紛争にかなり有効なものとなるのではないか。一方、労働参審制は、裁判員制度や労働調停の実績を見てから検討することとしてはどうか。
- 現在の労働委員会が正に労働参審制と言っても良いのだろうが、労使それぞれの立場を離れて中立的な判断をしていくことが必要だ。労働調停で実績を積んだ上で労働参審制を考えるのが筋ではないか。
- 労働委員会には、将来の労使関係をどうするかという視点があり、裁判所とは機能が違う。労働委員会の経験があるので、労働参審制の導入は労働調停の実績を見てからでなくとも可能だ。
- 「大きな司法」を目指すとの観点から、労働参審制は採用という方向を打ち出すべきだ。ただ、どういう人を参審員に選ぶかは大きな問題だ。労使の利益代表になっては良くない。実態に即して真相を見抜ける人の参加が必要だ。
- 労働参審制については、裁判員制度の実施状況、労働委員会の充実強化、労働調停の実績を踏まえて、将来的に考えることとすべきではないか。
- 労働委員会へは労働組合が訴えるものであって、労使の性格が出るのはむしろ前提である。これに対し、労働参審制は、知識・経験や感覚を活用するための提案であり、自ずと性格が違う。労働参審制で不都合な点は無いのではないか。
- 名前は別として、労働参審制は一つのあり得る形ではある。ただ、裁判所の公平性との関係が問題で、もし利益代表的な性格が出るとなると抵抗感が生じてしまう。その辺の十分な詰めが必要で、可能性を否定するということではなく、裁判に知識・経験を反映できるような、例えば司法委員的な立場での参画を考えるべきではないか。
- 大多数の中小企業では、労働問題について、泣き寝入りしているのが現状だ。少なくとも主張ができる場を作ることは重要で、労働事件は解決を早くする必要もあることを踏まえた議論をすべきだ。
(4)「利用しやすい司法制度」及び「国民の期待に応える民事司法の在り方」に関する今後の審議について、意見交換が行われた。その主な内容は以下のとおり。 なお、弁護士報酬の敗訴者負担制度等について吉岡委員から意見(別紙4)の提出があった。
- 「利用しやすい司法制度」及び「国民の期待に応える民事司法の在り方」に関する次回審議は4月6日を予定することとし、会長及び会長代理で叩き台を作成した上で議論することとしてはどうか。
- 4月6日に全てを決めようとすると審議が窮屈になる。特に敗訴者負担については意見が多数寄せられており、十分時間をかけて審議する必要があるのではないか。
- 中間報告では、「専門委員、専門参審制など専門家の関与」と併記されているが、具体的な制度設計としては、「専門委員」的なものとして導入を図ることが現実的ではないか。(資料として「知的財産権関係訴訟における専門家活用の新たな方策案」(別紙5)が配付された。)
- 専門参審制は、認められるかどうかは別としても、審議はすべきだ。労働以外でも、医療過誤やデリバティヴなど、民事・刑事にまたがるような分野が考えられる。
- 専門委員制の制度設計を描きながらも、専門参審制の可能性も始めから排除する必要はないのではないか。
- 4月6日にはおおよその合意が得られるようにしたい。
- 民事司法に関しては、中間報告で掲げた項目が多いので、少し整理が必要だと考える。
(5)次回会議(第53回)は、3月27日(火)13:30から開催し、「国民の期待に応える刑事司法の在り方」について、警察庁からのヒアリング及び意見交換を行うこととされた。
以 上
(文責 司法制度改革審議会事務局)
- 速報のため、事後修正の可能性あり -