2 場所 司法制度改革審議会審議室
3 出席者
(事務局)
樋渡利秋事務局長
<5 会議経過
(1) 「裁判所・検察庁の人的体制の充実」について
ア 議事に先だって、本議題に関連して最高裁から提出を受けた「裁判所の人的体制の充実について」と題する資料〔別紙1〕の内容などに関し、次のような意見交換がなされた。
○ この資料の中には、「裁判官制度の改革」に関する当審議会の審議や取りまとめの内容について、最高裁は誤解しているのではないかと考えられる箇所が随所に見られる。
例えば、資料の3ページで「これまでの審議を通じて判事補の外部研修及び特例判事補制度の見直しの方向が提示されている。」として、その次の段落では「判事補の外部派遣の方法としては、民間企業・弁護士事務所等への派遣、検察庁・行政庁への出向、留学等が考えられる。」などとしている。第49回会議での取りまとめでは、「真に実のある経験を積ませるため、裁判官の身分を離れて他の法律専門職の職務に就くこととするべき。」とされたのであって、その趣旨は、給料を引き続き裁判所から受けていたのでは「当事者経験」を積んだということにはならない、研修として「お客さん」のような立場で他職に就いても意味がないということであった。留学については、それはそれで有益であろうが、当審議会の審議の中で、判事となるべき者に求められる経験として議論していたものとは違う。なぜ、裁判官の身分を離れない場合まで正面に据えて検討されているのか。身分を離れる場合をこそ正面に置いて、裁判官のあるべき人員体制を考えるべきではないのか。
さらに、「特例判事補制度の見直しの方向が提示されている。」としている点についても、取りまとめでは、特例判事補制度を段階的に解消すべきことが確認されたのに、なぜ、「見直しの方向」などという言い方になっているのか。特例判事補制度を廃止していく場合の判事の増員を検討するというアプローチをすべきではないのか。
最高裁は、こういった議論の流れを承知していながら、なぜこのような資料を提出するのか疑問である。取りまとめは会長の口頭によるものであったが、それを文書化した議事概要の論旨とも、この最高裁判所の考え方は異なっている。また、議事概要でも、「弁護士等他の法律専門職等の職務経験等」と「等」が3回も続いているのは、実際の会長の発言とは違っている。
また、弁護士任官を推進するための具体的措置の提案に関しても、最高裁は、本来、質の高い裁判官の確保に責任を持つべきであることを認識し、日弁連と更に実質的な協議を進め、最終意見である程度の方向性を打ち出せるように、より積極的に協議に臨んでもらいたい。
○ 裁判官の身分を離れ、弁護士としての職務経験を積むことや、行政官としての職務経験を積むことも有益であると考える。しかし、民間企業での研修や留学を含めて、裁判所の仕事を外から見る経験が求められているのであり、身分を離れるか否かについては、両様あり得るのではないか。
また、裁判所法が判事の任命資格として要求する法律専門家の経験の10年は、動かせないものではない。そもそも、キャリアシステムの下で、判事補制度という制度が置かれていることについて、その合理性に疑問がある。特例判事補となる時期を7年ないし8年に後倒しすることも考えられる。
これらの意見交換を受けて、会長から、
細かな表現については議論の余地があったとしても、第49回会議の議事概要の記述は、大きな枠組みとしては大方の賛同のあったところと考える。その中で、判事補の外部派遣については、例外について詰めてはいないが、身分を離れて弁護士、検察官など裁判所の外の法律専門職の経験を積ませるというのが大筋の理解であった。
また、特例判事補制度については、「当分の間」の措置が状態化してしまっていることや、裁判所法が10年の法律専門家の経験を求めていることを理由に、段階的に解消していくべきとされたのであり、特例判事補となる時期を7年ないし8年に後倒しすることについては、別な立法政策の問題であり、更に踏み込んだ議論を要する。
との発言があった。さらに、会長から、次回会議において取りまとめの内容について確認するための意見交換を行う旨の発言があり、了承された。
イ 裁判所及び検察庁の人的体制の充実について、最高裁及び法務省のそれぞれから提出を受けた資料〔別紙1及び2〕を参考としつつ、次のような質疑応答及び意見交換がなされた。
○ 最高裁の資料では、今後10年程度の期間で510人の裁判官の増員が必要とされているが、少なすぎるのではないか。また、裁判官を増やすのみではなく、書記官などその補助者をも増やさねば、訴訟の迅速化にはならないのではないか。同様に、検察庁についても、検察官を増やすだけでは、捜査などの充実にはならないのではないか。
(回答;(最高裁)裁判官の必要増員数510人というのは、現在の事件数を前提に、人証調べのある民事・刑事・家裁事件などの審理期間を1年以内にする場合のシミュレーションで450人、特例判事補制度の見直しで60人の増員数を合計したもので、いわばコアの数字である。今後、事件数が増加して、例えば民事の事件数が1.3倍になれば更に裁判官300~400人の増員が必要となるなど、より大きな数字となる。
(法務省)今後、規制緩和が進み自己責任型の社会となり、これまでは特殊なものと考えられてきたいわゆる経済事件などに、多くの一般の国民が巻き込まれることとなれば、その責任をより厳しく追求することが必要となること、また、国民の司法参加の導入による捜査・公判の在り方の変革や法科大学院の実務家教員となることなどに対応して必要となる増員など、検察官に対する国民の注文、期待などを前提として検討すると、1,000人の増員が必要となる。さらに、これを1.1倍して、検察事務官1,100人の増員も必要となる。)
○ 身分を離れて他職に就く場合については、裁判官・検察官ともに定員の増員は不要であるとしても、実人員の充員は必要であると考えるが、その数は、最高裁・法務省の提案の中で、どのように考えられているのか。
(回答;(最高裁)裁判官の身分を離れた外部派遣については検討すべき問題点が多く、具体的な制度設計が描けていないことから、それに対応した充員については検討できていない。
(法務省)弁護士事務所に就職する場合については、検察官の身分を離れることを考えているので、給料を支払うこととなる弁護士事務所の財政負担能力やその受け入れ体制の問題などがあり、当省だけでは必要な充員数を推計できない。一方、法科大学院の実務家教員になる場合については、検察官の身分を離れず、大学院側からは給料を受けないことを前提に考えているので、定員の必要増員数に反映させている。
(日弁連)裁判官・検察官ともに、身分を離れて弁護士事務所に入ってもらうことを考えており、そのための受け入れ体制の整備その他の支援方策について、日弁連として責任をもって取り組んでいく。また、弁護士任官についても、これまでは任官したい者を探していたが、これからは日弁連として任官してほしい者、裁判所を変えようという気概を持って任官しようとする者を探し出して、任官するように働きかけていくようにする。)
○ 法曹人口の増加、利用しやすい司法制度の実現のためには、弁護士任官を広げていく必要がある。弁護士任官を推進するための実効性ある措置としてどのようなものが考えられるのか、最高裁と日弁連は明確に打ち出すべきである。
(回答;(最高裁)弁護士任官については、昭和63年以降門戸を開放してきているがあまり進んでおらず、任官しても苦労される場合もあると聞いている。その理由の詳細については、5月8日の審議会において御説明する。
(日弁連)弁護士が裁判官に任官することは、人生を変える重大事であることもあり、これまでは希望者が手を挙げるのを待っていたため、あまり進まなかった。今後は、弁護士の社会的責務の一つに位置づけ、弁護士任官を推進するための具体的措置を打ち出していく。例えば、経済的な問題、クライアントとの関係、弁護士に復職する際の受け皿となる事務所体制の整備など、日弁連として責任をもって制度的な問題を解決し、任官者を送り出していくこととしたい。)
○ 平均で約20ヶ月かかっている民事訴訟事件の審理期間をおおむね半減させることについては、大方の委員の意見の一致したところであるが、最高裁の資料では、審理期間を1年以内にするとされている。10ヶ月以内にすると、450人以上に裁判官の増員が必要となるのか。
(回答;人証調べのある民事訴訟事件の平均審理期間は20.3ヶ月であり、これを12ヶ月以内、正確には11.6ヶ月とすることを一応の目標と考えているので、資料にあるとおりの増員で裁判所としては問題はない。しかし、開廷間隔の短縮や人証調べの充実など、弁護体制の強化や手続の改変の如何にも関係してくる。また、これを10ヶ月以内にせよということになると、当然更に増員が必要となる。)
○ 裁判官以外の裁判所職員の増員について、最高裁の資料では具体的な数字が上げられていないが、書記官については裁判官とセットで増員することが必要であり、また、とりわけ家裁調査官については、人事訴訟の家裁への移管に伴い、その活動の場も広がることとなり、増員を要するのではないか。
(回答;書記官については、コアとなる510人の裁判官の増員だけから考えても、1,000人程度の増員が必要であろう。また、家裁調査官については、人事訴訟の移管の際には、その増員を検討せねばならないと考えている。)
○ 法務省の資料では、検察官について1,000人の増員が必要とされているが、その根拠はどのような計算によるものか。
(回答;将来の司法制度の姿、検察に期待される事柄にもよるので、正確性は必ずしも高くはないが、検察への送致事件数の増加で270人、捜査体制の充実で130人、医療・金融・ハイテクなど専門家検察官の増加で60人、東京・大阪など経済拠点庁への配置で90人、研修体制の整備で10人、国民の司法参加で80人、公判体制の充実で200人、検察審査会や広報体制で20人、司法修習生の指導で80人、法科大学院の実務家教員で50人、開発途上国の法整備支援で10人、これらを合計すると1,000人の必要増員数となる。)
○ 最高裁の提案では、今後10年程度の期間を想定して裁判官の増員が検討されているが、法務省の提案では、どの程度の期間を見込んでいるのか。
(回答;最高裁と基本的には同じタイム・スパンを想定しているが、法曹人口の増加がどの程度になるのか、その動向にもよると考えている。)
○ 法務省の資料では、検察官の必要増員数を1,000人とされ、一方、最高裁の資料では、裁判官のそれを510人とされているが、本当にそれで充分なのか。当審議会としては、510人などというのではなく、よりおおまかに、大きな数字を打ち出すこととすべきではないか。
○ 行革では、国家公務員の定員削減について、10年で10%、5年で5%などと決められているが、裁判官・検察官についても一律にそれを適用されると、当審議会の改革の提言が絵に書いた餅に終わってしまう。司法については別扱いであるということについて、当審議会として言及する必要があるのではないか。
【意見交換の整理】
以上のような意見交換の末、会長から、大方の意見の一致をみたと考えられる方向性について、以下のとおりの発言があり、了承された。
○ 行革会議の最終報告でも、事前規制型の社会から事後チェック型の社会への転換がうたわれており、その基盤として、「法の支配」の拡充発展が必要とされている。こうした新しい社会に、我が国社会が既に突入しているということについて、各委員とも共通して感じているところではないか。
本日の会議で最高裁・法務省から、今後必要となる裁判官及び検察官の増員数について具体的な数字をもって提案を受けたが、「多すぎる」とする意見はどの委員からも出なかった。今後、両者から提案のあった具体的な数字を一つの参考として、最終意見で大幅増員の方向性を掲げることとしたい。
(2) 「法曹養成に関する審議の取りまとめ」について
ア 議事に先立って、井上委員から「法曹養成及び法曹人口に関する審議の取りまとめについて(叩き台)」と題する資料〔別紙3〕の概要について説明がなされた。
イ 会長から、当審議会が法科大学院構想について検討するに至った経緯、基本的な考え方等について、以下のような説明がなされた。
今後、我が国社会が目指すべきは、自律的な個人からなる自己責任型の社会であり、そこでは「法の支配」の精神が血肉化していることが必要である。当然、司法の果たすべき役割は大きなものとなる。
このため、司法制度改革を断行すべきであるが、改革によって整備された制度を活かすのは人である。そこで、質・量ともに豊かな法曹が必要となる。ここでいう法曹は、公共奉仕の精神、高度の学識・専門的技能、自律的な団体の存在を前提とするプロフェッションとして養成されなければならない。
法曹と並ぶプロフェッションである医師は、大学医学部において6年間にわたる系統的な教育を履修したことを前提とした国家試験を経てその資格を与えられるのに対し、法曹は系統的な教育の有無を問わず、国家試験に合格した後、修習を受けることで資格を与えられていることは、プロフェッションの養成制度として不十分ではないかと考えられる。
他方、欧米に比べてプロフェッションに関する伝統も希薄である我が国では、法学部における教育でも、基礎的な面でも実務的な面でも不十分であり、法曹を目指す学生の大学離れ、ダブルスクール化が進んだ。
こうした現状を踏まえ、当審議会としては、法曹を「社会生活上の医師」と位置づけ、点のみによる選抜ではなく、プロセスとして養成することが必要であるとして、その中核をなす制度として、法科大学院構想について検討するに至ったものである。
法科大学院は、理論教育と実務教育を架橋する基幹的な高度教育機関とする必要がある。このため、当審議会は、文部省の検討会議からの報告を受け、法曹養成関係者からのヒアリングを行うなどしながら審議を進めてきたが、その過程で、我が国社会は既に、優れたプロフェッションを如何に養成できるかによって国の力が左右されるという新しい時代環境に突入しているということについて認識を深めてきた。この認識の度合いによって、改革に向けた切迫感も自ずと違ってこよう。プロフェッションとしての法曹を養成するために何が必要かを改めて認識した上で、改革に着手する必要がある。我が国社会は、本来ダイナミックで創造性に富むものであり、改革によってその特質を引き出し、後押ししてやる必要がある。
ウ 「法曹養成及び法曹人口に関する審議の取りまとめについて(叩き台)」の内容を踏まえて、次のような意見交換がなされた。
【新司法試験の内容】
○ 新司法試験の内容については、法科大学院の教育内容に沿って、現行試験のように丸暗記で対処できるようなものではないものに、抜本的に見直す必要があるが、叩き台で「公法系・民事系・刑事系」などとすると、法科大学院の教育内容がこれに縛られることとなるおそれもあるので、このような例示はしないほうがよいのではないか。
○ 新司法試験の内容については、現行の司法試験の論文試験とは異なり、従来の科目割りにはとらわれないものとする必要があることから、叩き台では「公法系…」などと例示している。その趣旨を明確化するため、「従来の科目割りにとらわれることなく」などの文言に修正することも考えられる。
【新司法試験の受験資格】
○ 法科大学院の意義は、司法試験の出題科目のみならず、深く、幅広い人間性を養わせるための教育をも施すことにある。したがって、法科大学院修了者とそうでない者とを司法試験の場面のみで競争させることは、前者にとって不利になりかねず、後者の中の「特急組」のバイパスとして使われることとなるおそれがある。法科大学院を経由しない者に道を開くことは必要ではあるが、予備試験の内容は、法分野の問題のみではなく現行の司法試験の教養試験のような内容をも加味し、教養や語学力をも含めた幅広い学力を問うものとすべきである。
○ 予備試験の内容については、現段階では決めつけることはできないので、叩き台で記述することは避けた。現行の司法試験の教養試験が適切なものであるか否かを含めて検討する必要がある。法科大学院の入試には適性テストもあるので、それと同様の試験を受験させることとするのも一案ではないか。
○ 法科大学院構想では、点の教育・試験からプロセスを重視した法曹養成へ転換するというのが基本的な筋道であり、予備試験による別ルートを設けることには必ずしも賛成できない。もともとは、経済的事情により法科大学院に入学できない者の救済措置として検討されてきたものであるが、そのような事情により大学や大学院に進学できない者が多数いるとは考えられないし、仮にいたとしても、それは社会的な負担として、奨学金などで救済するのが本来である。その上で別ルートを検討する必要があるとすれば、一つには、生涯教育の時代であるということであろう。国家公務員や医師などが法曹資格を得ようとする場合など、職業経験を積んだ人が法律家になろうとする場合が考えられる。二つには、法科大学院では、毎年同じカリキュラムというのではなく、ダイナミックに毎年変わり得るような仕組みを設けるべきであり、例えば、10年前に修了した者が、その当時の教育では教えられなかったことを学ぶために、「科目履修生」として再履修することなども考えられるべきであろう。
○ 一発試験・修習の弊害をなくすためにプロセスによる法曹養成を検討してきたのであり、予備試験による別ルートは、本筋に対するバイパスであるということは否定できない。経過措置として、過渡的に設けられる仕組みと考えるべきであろう。プロフェッションは、その資格のハードルがブレるようなことがあってはならない。叩き台では「実社会での経験等」とされているが、一体何を意味するのか。その経験が、本当に「法科大学院における教育に対置し得る」ものなのかどうか、検証のないバイパスとなってしまい、プロフェッションの基準が歪むこととなり、結局国民が害を被ることとなる。別ルートが大きなチャネルと見なされると、法科大学院に進学する者がいなくなるのではないか。「特急組」を排除する理屈のないままに、政党への配慮のみからこのようなものを設けてよいのか。
○ 一発試験・修習という過程を経てきたことによる法曹三者に共通した本質的な欠陥である、視野が狭く、柔軟性に欠けているという点を改めるため、全人格の根本にかかわる教育を施すべき機関として法科大学院が検討されてきたのに、予備試験による別ルートでは、「実社会での経験等」がこれに対置し得るものとしてしまっている。もともと例外的な措置として、理屈に合う範囲で検討することとされてきたはずの別ルートが、積極的なものに変わってきている。この法曹三者に共通する欠陥は、「2割司法」の最大の原因であり、それを改めることは司法制度改革の最も基礎的な問題である。そこに別ルートなどという不純物を入れてしまうと、改革の全体をゆるがしかねない。「実社会での経験等」が、法科大学院における教育に対置し得ると考えるのが根本的に間違っている。このような別ルートは、絶対に設けるべきではない。
○ 予備試験による別ルートは、必ず予備校ルートを生むこととなるだろう。別ルートが必要だと主張している政治家は、医師の国家試験との関係について、どのように考えているのか。医学部を修了していない者でも国家試験さえ合格すれば医師の資格が与えられるということにでもしない限り、制度間の整合性が全くとれない。法科大学院に別ルートを設けることは受け容れられない。
○ チャンスは誰にでも平等に与えられる必要があることから、中間報告で「やむを得ない事由により法科大学院への入学が困難な者」に対する例外措置を設けることとされた。そのような者でも、資質と能力さえあれば、少なくとも司法試験を受けるチャンスを与える必要がある。叩き台では「実社会での経験等」となっており、幅が広がっているので、「特急組」を生み出すおそれがある。予備校はどうしても生まれてくるし、それを利用する学生も出てくるであろうが、問題は試験の内容ではないか。予備校であっても、法科大学院と同等の教育を施せるのであれば、正式に法科大学院となればよい。
【法科大学院の開校目標時期】
○ 教員の確保が最大のネックになるであろう。
○ 確かに、教員の数を揃えるのは困難であり、一部の大学の先行を許すべきでないことからも、あまり早い開校目標時期を定めるべきではない。叩き台の「〔ロ案:2004(平成16)年〕4月からの学生受入れ」を目指すこととするのが適当ではないか。
【その他】
○ これまで以上に倫理観のある法曹を養成するとの観点を取りまとめのどこかに盛り込むべき。
○ 現在、司法修習生は国家公務員と同等の給与を受けているが、司法試験合格者を増加させることも踏まえて、廃止することとしてはどうか。奨学金を与えるなどして、法曹の不足している地方に赴任するなどすれば償還を免除するとか、成績優秀であれば給付奨学金とするなど、いろいろな方策が考えられる。
○ 現行司法試験におけるいわゆる合格枠制(丙案)については、その趣旨にかんがみ、叩き台の「〔2案:現行試験合格者数が1,500人に達する年に〕」廃止することとすべきである。
【意見交換の整理】
以上のような意見交換の末、会長から、大方の意見の一致をみたと考えられる方向性について、以下のとおりの発言があり、了承された。
新司法試験の受験資格に関しては、予備試験による別ルートについて、積極的にこれを可とするものではなく、本筋である法科大学院を修了することを基本に考えるということについて、当審議会として共通の認識が得られたものと考える。今後、本日の意見交換の趣旨を踏まえて、最終意見に向けて適切な表現を検討することとしたい。また、新司法試験の科目の例示の表現の仕方も、これと併せて検討する。
上記の点を除き、ほぼ叩き台のとおり大方の意見が一致したものと考える。なお、法科大学院の開校目標時期については、2004(平成16)年4月からの学生受入れを目指すこととし、また、現行司法試験に係る移行措置のうち、いわゆる合格枠制(丙案)については、現行試験合格者数が1,500人に達する年に廃止することとするのが適当である。
(3) 「法曹人口に関する審議の取りまとめ」について
「法曹養成及び法曹人口に関する審議の取りまとめについて(叩き台)」の内容を踏まえて、法曹人口拡大の目標時期等について、次のような意見交換がなされた。
○ 法曹人口拡大の目標時期については、なるべく早期に達成する時期を目標として掲げるべきである。
○ 法曹人口拡大の目標時期を具体的な年次を示して掲げるのか。柔軟性を持たせることが必要ではないか。法曹人口拡大の開始時期は、法科大学院の最初の修了者が出る年とするのが本来の筋である。他方で、新司法試験合格者3,000人の実現に早期に着手すべきという要請も理解できるが、法曹の質の低下を招かないために、養成に当たる関係機関は最大限の努力を傾けるべきである。法科大学院がどの程度設置され、そこでどのような教育がなされるのか、また、弁護士の活動領域の拡大や市場のニーズの動向など、不確定要素が多く、法曹人口増加のシミュレーションはあくまで仮定の話に過ぎない。新司法試験合格者2,000人の実現なら、3~4年程度先の将来の話として目標時期を掲げるのもよいが、3,000人の実現の目標時期まで当審議会の共通の認識として打ち出すのはいかがなものか。具体的な年次ではなく、柔軟性を持たせた表現とするなどの工夫が必要ではないか。
○ とにかく、「計画的にできるだけ早期に」法曹人口を拡大するという方向に向かって議論してきた。法科大学院の立ち上がりの問題など不確定要素が多いとしても、法科大学院での教育レベルを高めていくなど、努力する余地はあるのだから、おおむね2010(平成22)年頃までには新司法試験合格者3,000人を達成することを目指すとするのが適当ではないか。
○ 当審議会として、国民に対してメッセージを発するという観点も重視すべきではないか。
○ 議論となっているのは、法曹人口を拡大することはもちろん必要であるが、同時に質を維持せねばならないことも抜きがたい要請であるということであろう。法曹の量とともに質をも高めるということは、当審議会として共通の認識である。叩き台のA案では、司法試験合格者の増加の立ち上がりが急激で、質の低下の問題を引き起こすおそれがあるのではないか。法科大学院の立ち上がりや教育内容の問題などが不確定である一方、ここまでしか増やせないというボトルネックとして言うのではないが、きちんと修習の意義を活かして養成を進めていくための司法研修所の体制の問題もある。中間報告の「計画的に…」には、法曹の質を維持するとの含意である。このように、叩き台のA案は質の低下の問題を考えると無理であり、B案は、法科大学院の立ち上げ当初の合格率を低く見積もるもので、同大学院の設置のインセンティブを下げることにもなるので不適当である。結局C案が最も無難ではないか。C案によっても、実働法曹人口5万人を達成する時期については平成30年前後となり、他の2案と比べても遜色はない。
○ 新制度への完全な切り替えに至る移行措置については、その期間を明確に決めるべきであるが、その他の目標時期については、「なるべく早いうちに」とするしかないのではないか。
○ その「なるべく早いうちに」に、中間報告の「計画的に…」と同様、法曹の質を維持するとの含意があれば問題はない。
以上のような意見交換の末、会長から発言があり、目標時期などの表現ぶりについて更に検討した上、最終意見の案において改めて示すこととし、その段階で再度審議することとされた。
(4) 「最終意見項目案」について
「最終意見項目案」〔別紙4〕について、次のような意見交換がなされた。
○ 中間報告の項目のままにするべきである。「人的基盤の拡充」こそ重要であるとして議論がなされ、中間報告の項目でも掲げられ、それに基づいて精査して審議が進められてきたのに、この案ではそれが項目から落ちていることなど、いろいろな問題がある。中間報告から最終意見へと一連の大きな流れの中で議論してきたのであり、中間報告の項目を組み替えるのはおかしい。
○ 枠組みを変えて読みやすくしようとしていることは分かるが、「国民的基盤の拡充」の内容が、「分かりやい司法の実現」や「司法教育の充実」になってしまっているのは問題である。訴訟手続への国民の参加が一番大事であるのに、その骨格が見えなくなっている。最終的に刑事司法とはなったが、「刑事司法制度の改革」との項目のかっこ書きになっていることには違和感をおぼえる。メインが見える組み方にするべきである。
以上のような意見交換の末、次回会議において更に審議することとされた。
(5) 最終意見の項目について
次回は、5月8日(火)午後1時30分から開催することとされ、
「弁護士任官を推進するための具体的措置の提案」(最高裁及び日弁連からの報告及び説明の聴取並びに意見交換)
「裁判官制度改革についての審議に係る取りまとめの内容の確認」
「行政に対する司法のチェック機能の在り方」
「最終意見項目案」
「司法制度改革の推進体制の在り方」
「今般の改革実現後の司法制度の改革・改善の在り方」
について審議することとされた。
以 上
(文責 司法制度改革審議会事務局)
-速報のため、事後修正の可能性あり-