場 所:司法制度改革審議会審議室
出席者
(事務局)
樋渡利秋事務局長
【佐藤会長】 それでは、ただいまより、第57回会議を開会いたします。本日は、法曹養成制度及び法曹人口につきまして、本年の3月に行いました意見交換を踏まえて、更に意見交換をしたいと思います。できましたら、当審議会としての考え方をとりまとめたいというように考えております。
最後に、少し時間を取りまして、前回ちょっとお話し申し上げましたけれども、最終意見の項目案につきましてお諮りしたいというように考えております。よろしくお願いいたします。
それでは早速、意見交換に入りたいと思います。本日の意見交換としては、最初に裁判所、検察庁の人的体制の充実につきまして意見交換をしていただきたいと思います。その後、法科大学院構想を中心とする法曹養成制度、更に法曹人口の拡大のスケジュール、これらについて、順次、意見交換をしていただければと考えております。
事前に委員の皆さんにお配りしております、本日の意見交換用の「たたき台」をごらんいただければおわかりのように、裁判所、検察庁の人的体制の充実につきましては、今後の最終意見案の中で調整するということになっておりまして、本日この点について、委員の皆様から十分な御意見をいただいておきませんと、最終意見案の作成にも影響してまいります。また、裁判官、検察官等の増員を具体的にどのようにするかということが、法曹養成制度や法曹人口の拡大のスケジュールとも関連してまいりますので、今、お話ししたような形でそれぞれ1時間程度ずつの時間で順番に意見交換をしていただければというように考えております。
勿論、これらの問題は、相互に密接に関連しておりまして、適宜関連するものとして御発言いただいて結構でございますけれども、それぞれの事項を中心に順次意見交換ができればというように考えておりますが、そんなところでよろしゅうございましょうか。
【佐藤会長】 それでは、そのような形で意見交換を進めさせていただきたいと思います。
最初に、裁判所、検察庁の人的体制について意見交換を行いたいと思います。本日は、できるだけ具体的に増員について意見交換をしていただければと思います。この点につきましては、最高裁判所及び法務省から御意見をいただいておりまして、本日席上にお配りしておりますので、それを参考にしながら意見交換を進めていただければというように思います。
御質問等があろうかと思いまして、内容を説明していただくべく、本日最高裁判所からは中山総務局長と小池審議官、法務省からは但木官房長と小津人事課長にお見えいただいております。御出席の皆様には、大変お忙しいところ誠に恐縮でございます。ありがとうございます。今後の意見交換の中で、委員の皆様から適宜御質問があろうかと思いますので、よろしくお願いいたしたいと存じます。
また、自由民主党司法制度調査会も、この点につきまして、先週の17日に新たに中間提言を出しております。本日、これも席上にお配りしております。意見交換の参考にしていただければと思います。
それでは、どなたからでも結構でございますので、どうぞ御自由に御発言いただければと思います。いかがでしょうか。髙木委員どうぞ。
【髙木委員】 最高裁からお出しいただいた「裁判所の人的体制の充実について」というペーパーを拝見いたしました。裁判官制度改革については、我々審議会としてもいろんな議論をし、その都度議論の内容について、合意できた、あるいはできないを含めまして、取りまとめつつ現在まで議論をしてきたのではないかと思っております。
そういう現在までの議論の流れは、最高裁の皆さんも、毎回どなたかが傍聴に来ておられましたり、議事録等をお読みになられたりして、御承知になっておられるはずだと思っておりましたんですが、どうもこのペーパーを読んだ印象では、いろいろ誤解をされているんではないかなというふうに感じざるを得ない記述が随所にございます。私には、そのように読めるわけでございます。
例えば、最高裁のペーパーの3ページの一番下辺りの、「これまでの」というところから始まる部分でございますが、「これまでの審議を通じて判事補の外部研修及び特例判事補制度の見直しの方向が提示されている」というふうに記載をされ、その次のパラグラフで「判事補の外部派遣の方法としては、民間企業・弁護士事務所等への派遣、検察庁・行政庁への出向、留学等が考えられる」、そう述べた上で「裁判官の身分を離れる者については増員の措置は必要ないが、判事補の身分を有する者については、その期間、人数に対応した代替裁判官の確保が必要となる」といったような記述も見られます。どうも、大変巧妙な言葉の言い換えみたいに思えるんですが、これはたしか2月27日の審議会だったと記憶しておりますが、あのときの会長の取りまとめでは、真に実のある経験を積ませるため、裁判官の身分を離れて、他の法律専門職の職務に就くこととするべき、といったような整理だったのではと記憶をいたしております。
その趣旨は、給料を引き続き裁判所からもらっておったんでは、当事者経験、裁かれる立場の経験を得たということにはならないのではないか、真にその業務に従事する立場になり切らないで、それで研修と言われるのでは、まさにお客さんでございまして、お客さんとして他職に就いたという形をつくっても余り意味がないのではないか。ましてや留学して学生さんに近い状況で海外で勉強されても、それはそれで勿論有益な経験かもしれませんが、我々が議論をしてまいりました、「判事となるべき者が積むべき経験」とはとても言えない、そういう議論だったように私は記憶をいたしております。
何で、わざわざ裁判官の身分を離れない場合まで正面に据えて検討をされるのか、身分を離れる場合をきちんととらえて、あるべき人員体制というのをお考えになるべきではないかと思われてなりません。
もう一つの点は、「特例判事補制度の見直しの方向が提示されている」という書かれ方をされておりますが、取りまとめでは、段階的に解消か廃止か、そのどちらかはともかくとして、この特例判事補制度というのは、当分の間とされたものが常態化したというとらえ方で、この審議会は共通していたんだろうと思いますが、法律専門家として10年の経験を要求している裁判所法の趣旨に反して、半人前の判事補が十全の判事と同等の権限を行使している、そのことが問題である、だから段階的に廃止すべきだという方向をこの審議会としてはっきり確認したのではないかと思います。廃止あるいは解消という言葉を使ってきたんですが、なぜここで、わざわざ「見直しの方向」などという言い方をされるんでしょうか。特例判事補制度を段階的に廃止していく場合の、判事の増員を考えるというアプローチならよくわかるんですが、こういうアプローチだと我々の議論を本当にどのように認識してこられたのかなと感じられてなりません。
失礼ついでに申し上げますと、最高裁の皆さんも傍聴をずっとされてきて、論議の筋道をよく御存じのはずだと思います。そういう議論を御存じの最高裁が、どうしてこのようなペーパーを、審議会に、こういう論調で出されるのか、私は本当に疑問に感じられてなりません。
失礼だったらお許しいただきたいですが、会長に取りまとめていただいたことも含めまして、勿論あのときの取りまとめは口頭だったということではございますが、その後議事概要等も出ておりますが、その論旨とも、この最高裁の御提案は大分違うと私には読めます。
また、一点だけ、議事概要の中身も、会長の取りまとめと違う内容になっている部分が、一か所だけですが、あることに気づきました。それは、文言はどうだったか定かではないんですが、弁護士等の法律何とか職等の職務経験ということだったと思うんですが、その職務経験の後にまたここにも等が付いている。「等、等、等」と3つも「等」が入っていまして、この辺はちょっと論議の経過及び会長の述べられましたところと、表現が違っておりますということを申し上げたいと思います。
最後にもう一点、前回も私申し上げましたが、会長は日弁連と最高裁に対して、弁護士任官の問題について双方でいろいろな議論を早急に行い、日弁連には弁護士任官に弁護士会としてももう少しアクティブに対応すべきだと、それから本来裁判官の確保というのは、裁判所の責任だろうと思いますが、そういう裁判所の責任を踏まえて、日弁連との協議の中で最高裁がもっとスムーズに、そういったものが軌道に乗るように協議をして、ある方向を見い出していただきたいということをおっしゃったと思いますが、どうもその辺の御努力がはっきり見えてこない。何か一回やられて、近々第二回目だということのようですが、最終報告にある種の方向性でも記述していただくためにも、もう少しアクティブにやっていたただくべきじゃないかということでございます。
以上、数点申し上げましたけれども、裁判所の方でいろいろ私の意見に対しまして、感想等ございましたらおっしゃっていただけたらと思います。
【佐藤会長】 最後の点は、5月8日に日弁連と最高裁からお出ましいただいて、そのときまでの御事情、それから取り組みの状況、方向、方針などについてお話しいただこうというように考えております。前半の、特に身分を離れてという点、また特例判事補制度に言及されている点について、最高裁判所にお答えいただけますか。
【最高裁(中山総務局長)】私どもの今回のペーパーでは、特徴的なところをお話し申し上げますと、10年という目標期限を設定いたしまして、その上でそこに当面の目標を掲げ、それに対して努力を傾注していこうというような仕組みになっております。
判事補の外部派遣あるいは特例判事補の見直し問題につきましても、その10年というところで果たして現実にどこまでが本当に可能なのかというところも、やはり考えていかなければならない。その当面の目標をクリアーして、更に先に進むべき性質の問題であろうというふうに考えているのが基本的なスタンスであります。
判事補の外部派遣については、今、身分を離れてというようなことをお話しいただきましたが、勿論私どもとしてもここの審議会での議論がどう進んでいるかということは承知しております。ただ、私どもとしては、その際に議論の素材として提供させていただいたところにもありますように、留学というのも、見知らぬ外国の地で生活をするというようなことになれば、やはり相当いろんな経験を積むことになるんではないかと思いますし、先ほど学生としてということを言われましたけれども、学生のほかにも外国の裁判所の方に留学するというようなものもあるわけでございまして、そういう意味では専門家、外国のローヤーというようなものを間近に見られるという意味で、大きな効果をもたらすものではないかなというふうに思っております。
また、会長の取りまとめの方も、私どもの承知している限りでは、「原則として身分を離れて」ということで、「原則として」というのがお付きになっていたように思っておりますし、またそういった方向のものを考えていくべきというところで、ある程度中長期的なスパン、それをもって考えていく、検討していくという問題だ、というふうに位置づけられたという認識であります。したがって、ここにおいてこういったような表現を使ったということであります。
特例判事補の見直し問題について、段階的に解消、あるいは廃止ということを言われておりますけれども、特例判事補で現在単独事件を担当しているものが300人おります。これらの人たちが、仮に単独事件を担当しないということになりますと、その分の戦力が当然必要であるということになります。そうなりますと、そこでは弁護士任官以外には考えられないということになるわけでございますけれども、御承知のように昭和63年以降、13年間で弁護士からの任官者は49人でありました。また、なられた方の中にも、なかなか裁判官としての仕事に慣れられないというようなことで、随分苦労されている方もいらっしゃいます。そういうような状況の中で、果たして真に裁判所にとって戦力になるといった弁護士任官者が、どの程度きちんと確保できることになるのか。
更にはまた、特例判事補というのは、全国に遠隔地あるいは離島にあります支部に行っているわけでありますけれども、そこに半分ぐらいが行っているわけでありますけれども、そこの部分についてもきちんとそういった支部あるいは僻地に裁判官が赴くという体制をつくらざるを得ないわけであります。
そういうことになりますと、弁護士任官者の中でそういったところに行くことについていとわない人をというのが、果たしてどれだけできるか、そういうことも考えなければなりません。そういったことを諸々考えましたときに、当面の現実的な措置として、そのペーパーにありますように、本庁の特例判事補については、8年目まで単独事件をさせないといったようなやり方をし、それをまず第一の目標にして、その後それが達成できたときに更に目標を高く掲げて進んでいくべき問題ではないかというふうに思っているわけであります。
以上です。
【髙木委員】 過去にも何度もこういう議論してきたんで、また蒸し返しの議論をしたくはないんですが、最高裁としても、例えば、特例判事補は解消の方向だ、ということはわかっておられるんですね。
【最高裁(中山総務局長)】そういうような御議論がここで出ていることは承知しております。私どもの方は「見直し」というペーパーをお出しいたしました。運用面での見直しということをお話し申し上げました。
【髙木委員】 この審議会の議論は、そこのところは違うと思うんです。
いつまで掛かるかという問題は、いろいろこれからも、まさに弁護士任官の状況等の影響をもろに受けるわけですが。
【佐藤会長】 今の点、よろしいでしょうか。この問題については、「段階的な解消」というように議事概要では表現され、私もそのように取りまとめたように思いますし、その他についても、髙木委員が指摘されたところ、「等、等、等」と付いているというのは、私は言った記憶はないんですけれども。ひょっとして口で言っているのかもしれませんが。
【髙木委員】 会長は、「等、等」で、最後は「等」が付いていないんです。
【佐藤会長】 そうですね。最後については、言ってないと思うんですけれども、その辺のことはいずれ最終報告、あるいは5月8日の審議会でまた少し御議論いただこうかと思っておりますので、今日の段階では今のところでとどめさせていただきたいと思います。時間も限られておりますので。
【髙木委員】 だから、くどいようですが、外部研修とか、これはもっと言えば「経験の多様化」という議論をしたんで、留学も意義があるんでしょう、国費を使って行かれるわけですし。ただ、実務をどうやって経験するかという議論だったはずで、じゃその外国の裁判所が実務をやらせてくださるんですかと言ったら、多分そういうことはないんだろうと思うんです。確かに勉強になるとは思いますが。
【佐藤会長】 髙木委員、お話の途中ですけれども、それは我々の議論であり、我々として議論すればいいことだと思います。
【髙木委員】 わかりました。それなら一つだけ。
【中坊委員】 会長はそういうふうにおっしゃいますけれども、本日は裁判官の人口増の話をしておって、例えば今まさに髙木委員が指摘されましたように、身分を置いたままで、今日の最高裁のペーパーによれば外部研修、いわゆる裁判官の身分を置いたままそこに行くんだということになってくるし、我々の意見書では身分を離れて行くということになっていて、そうするとまさに定員のところで、身分を離れないのならそれだけ定員を増やさないといけないし、身分を離れるのだったらその分の定員を増やさなくてもよいということになる。
だから、「裁判官の人的体制の充実」というところを議論しておるときに、我々が取りまとめてきたことと違うことが、今、最高裁から提案されておるのに、その議論は今日はちょっと時間がないから、というのは少しおかしいと思います。
【佐藤会長】 だから、我々として「身分を離れて」ということで議論し、この議事概要でも「身分を離れて」というように表現しているわけで、私も確かにそういうように取りまとめたと思っております。だから、その前提で御議論いただければいいんじゃないでしょうか。
【中坊委員】 だから、最高裁が我々の審議をこうして聴いておられたのに、我々がそうしてまとめたものと違うことを前提にして、人的体制、数の問題について言ってきているんであれば、やはりそれは問題である。弁護士会なら弁護士会で、こういうように人口増の問題があって、総会をやったりいろいろやってきていますよ。だからそういうふうに、法曹三者それぞれがこの審議会の在り方というものを尊重して、その上に基づいてそれぞれの対応をしなければ進まないというのに、片一方において、ここで今、審議会が取りまとめてみても、違う意見を平気で言ってきて、それで人的な体制の充実の問題についても、60名とか40名とか、510名ですか、何かという数まで具体的に出てくるというような状況になってきたら、やはりそれをそのまま放っておいて議論を前へ進めるということは問題じゃないですか。
【佐藤会長】 放っておくんじゃなくて、私どもは「身分を離れて」という前提で考えているので、その前提で今日、最高裁に御質問なされていいし、私どもとしてどうするのかということは、私どもとして考えればいいことだと思います。
【藤田委員】 私は、第49回議事概要の会長の取りまとめの記載については、意見がありますけれども、それは改めて確定する際に意見を述べる機会がございますね、ということをお断わりし、そういうことだ、と会長から確認をいただいておりますので、細かい表現まで議論をするのは、その詰めのところでやるのが適当ではなかろうかというふうに思います。
それと、「判事補の経験の多様化」でありますけれども、主として弁護士事務所へ行くことになるかもしれませんが、それは弁護士事務所の方の受け入れの体制がどういうふうにしっかりしたものにしていただくかということとも絡むわけでありますけれども、その場合には私個人としても、弁護士として経験を積むのがよかろうと思うというふうに意見を申し上げました。それと同時に、私自身の行政庁へ出た経験も申し上げて、法曹三者の中よりも行政庁へ出て法曹三者を外から見るという経験が、さらに法曹としての経験の多様化に役立つのではないかということも申し上げました。
そういうことから考えると、検事との交流とか、あるいは留学というような、要するに裁判所の枠内での経験の積み重ねではなく、外で仕事をして、外から裁判所を見てみるという経験が求められているんだろうというふうに思うわけであります。
そうしますと、例えば民間の研修などは現在も行われているわけでありますが、留学も含めましてそれは裁判官の身分を持ったまま行くわけでありますし、検察庁や行政庁へ行く場合には、外務省の場合には完全な行政官になっているようでありますが、そのほか検事に転官していくということもあります。弁護士事務所に行く場合には弁護士の資格で行くということになるんでありましょうが、両様があり得るというふうに思います。
もう一つは、特例判事補の見直しの問題でございますけれども、裁判所法の10年の経験を基礎に置くということは、勿論そのとおりでありますけれども、法律の枠を動かせない前提として考えるわけではありませんので、私が申し上げた意見はそもそもキャリアシステムを取る制度の下で、判事補という他に例のない制度に合理性があるかどうかという点について疑問があるというふうに申し上げたわけであります。そういう意味で、5年で特例を認めるのがおかしいというのならば、5年経ったところで判事にしたらどうかと申し上げました。7、8年で判事への任官を考えたらどうかという考え方もあります。特例判事補になる時期を後ろ倒しにして、7年ないし8年でどうかというような考え方もあるわけでありますから、今この時点で特例判事補制度を全廃して、10年経たなければ完全な権限を持たないようにするということが確定しているとは私は考えておりません。
以上の点でありますけれども、最高裁に対する質問は、この裁判官制度改革への対応で、特例判事補制度の見直しと外部派遣に対する措置で、60人で足りるとありますけれども、そこら辺の関係がよくわからないんですが、現在本庁・支部で約300人が単独事件を担当しているということでありますけれども、本庁に限定して60人となるというのは、どういう理由づけでしょうか。
【佐藤会長】 それにお答えいただく前に、ちょっと前半の方について私から申し上げておきますけれども、ここでこういう議論をしてもなんですけれども、当会議の議事概要は、私の認識としては、やはり大方の御賛同があった内容であるというように理解しております。あのとき私はざくっとしたまとめ方で、と申しましたので、表現振りについてはなお御議論の余地はあるかもしれませんけれども、私の認識としてはこういう枠組みについては大方の賛同があったというように理解しておりますので、そこは念のため申し上げておきたいと思います。
特例判事補の問題についても、段階的解消ということで大方の合意が得られたと思っています。その理由として当分の間ということと、現行法は10年ということを求めているということを前提にして、段階的解消ということを申し上げたわけです。7年か8年かという話になりますと、これはある種の立法政策の問題になってきますので、もう一つ踏み込んだ議論が必要になってくるかと思います。今ここで立ち入ってこの点について議論をやるつもりはありません。そうした点、それから中坊委員、髙木委員がおっしゃることも含めて、そこは御理解いただきたいと思います。
それで、問題はむしろ最後の方で藤田委員も触れられた点です。300人、60人といった、数字、それから二者から出されている人員増の数字について、その根拠は何かとか、そういう事柄について少し御議論いただきたいと思っているわけです。
【中坊委員】 だから、私がさっきから言っているのも、外部研修が身分を置いたまま行くのと行かないのとでは、定員数が変わってくるでしょう。だから、そういうことについて、我々が議事概要に書かれた通りに決まっておるのにもかかわらず、それと違うような意見をペーパーとして出してこられるということについて、やはり我々審議会としては、最高裁の方に対しても一言言うべきじゃないかということを言っているわけです。
そうしないと、この510名という数が、前提が違うんですと、こっちは外部研修ですと、身分を置いたまま行くのも入れていますと、それじゃもう数がしかも510名という半端な、半端と言ったら悪いけれども、ざくっとした数字じゃなしに、そんな細かいところまで算出されておるということになってくると、この審議会の在り方そのものと一番利害関係を有しておる法曹三者との間がうまくいかないから、その点についてやはり我々審議会として最高裁の方に対しても、一言言っておく必要があるんじゃありませんかということを言っているわけです。
【北村委員】 今、身分を離れる場合と身分を残している場合とで、数字が違ってくるんじゃないかというお話なんですが、数字が違うような計算をしているから違うのであって、私はこれ全部2、3年いくんだったら、除いてしまえばいいと思うんです。そうすると、今の議論が全部捨象されて、全体の判事補、裁判官を含めたものから全部除いて一応計算していけばいけるんじゃないですか。
【吉岡委員】 その数字のことで、今、北村委員がおっしゃった、身分を離れる離れないという点について、最高裁のペーパーですと、身分を離れる人と離れない人とができるという考え方だと思うんですけれども、離れる人と離れない人という、そこにおのずから成績とかそういうので差別が出てくるというようなことになると困ると思います。
10年を目標にと御説明なさいましたけど、10年を目標に510人増やすということなんでしょうか。もしそうだとすると、増やし方が少し少な過ぎるのではないだろうかというのが一つです。
それから、裁判官を増やすということは、それに付随して書記官とか周りの補助する事務官が増えていかないと、実質的に裁判の迅速化にはつながらないのではないかと思いますけれども、そこのところはどのようにお考えなのかということを伺います。
それと同じことを、検察官の方にも伺いたいのですが、検察官を増やすということはとても大切ですし、この数字は最高裁よりは大分大きな数字になっておりますけれども、大幅に増やしていく、それは国民が望む司法の充実した迅速化というところにつながると思いますが、これもやはり同じことで、ただ検察官が増えるだけでは、本当の意味での充実にはならないと思うのです。その辺のところをどのようにお考えなのかというところを、是非お聞かせいただきたいと思います。
ほかにも質問ありますけれども、今、差し当たっては、関連質問ということで。
【井上委員】 一番最初の藤田委員の御質問は、さっきの原則論にも関連していると思うのです。つまり、身分を離れてという場合はポストの手当ては要らないわけが、そこのところで例外的なものがあるかどうかというところは議論の分かれるところで、違う形態というのを全く排除したかどうか、そこが問題だと思うわけです。そのことを恐らく考えておられて、この60という数字の中には内数としてそういうものが入っている、しかしまた、特例判事補の見直しのための数も入っているということになると、その辺がどういう配分なのか。それが外部派遣の部分がほとんどだということになれば、確かに、ちょっと原則が分かっておられるのか、というような話にもなると思うのですけれども、それがどの程度なのかにもと思うのです。そこをまずお答えいただくのがよいと思います。
【佐藤会長】 では、よろしいですか。
【最高裁(中山総務局長)】まず、藤田委員の方のお話でありますけれども、本庁で6年目、7年目の特例判事補で単独事件をやっているものは60名ということでございます。先ほど言いましたように、8年目以降は原則としてまだ10年までは単独事件をさせるということでありますから、そういうような数字として出しました。
外部派遣で身分を離れてということになりますと、これは増員措置は不要だということになります。今の定員で十分できるということになるわけでありまして、むしろここの数字というものは増員する数を大きくする方向のものとして書いてございます。
510人プラスαということになっておりますけれども、500人というのは言わばコアな部分、今後、例えば民事事件を1年以内に審理するというようなことになったときに、どれだけの数が本当に必要かということを、相当詳しいシミュレーションをいたしまして、それを刑事、家事、少年ということをすべてやりまして、そこで出してきたものが450人ということであります。
こういった裁判官制度の改革の方でほぼ60人、併せて500人。そのほかに足りないと、少し小さ過ぎるんではないかということを言われましたけれども、当然のことながら法曹人口等が増えますと、事件増ということになります。事件増がどのくらいあるかというのは、これは確定的なことは申し上げることはできないわけですけれども、私は個人的には少なくとも1.3倍、あるいは1.5倍というところにはいくだろうと思っております。仮に、1.3倍ということになりますと、これは裁判官を300人ないし400人上乗せするということになります。
したがって、全体としては800ないし900ということになりますし、これが1.5倍ということになりますと、これが500あるいは650というものを更にそれに上乗せをするということになりますので、結局1,000から1,150というぐらいなところまで広がるわけであります。
過去50年間の裁判所の増員数というのは、50年間で650人であります。これを10年間で、それをはるかに超えるものをやっていこうということでありますから、裁判所としてはかなり大きな増員計画ではないかなというふうに考えております。
最後に、井上先生の方からお話がありましたけれども、これは一覧表の中に研修として60と書いてあるところが、いささかミスリーディングだったと思います。むしろトータルとしてお考えいただいた方がいいんではないかなと思っておりますが、例えば外部派遣の関係で、仮に裁判官としての身分を有したまま行くということになると、増員措置が必要だということになります。それは、どこにどういうような割合で行ってもらうかということがありますので、あるいはそれが何年単位でというところもありますので、数十人というような形でお書きしました。
また、特例判事補につきましては、先ほど最初の藤田委員に対する御質問で答えたように60人であります。ただ、もう少し考えてみますと、この特例判事補の見直しの60人は、例えば高裁の陪席、地裁の陪席、あるいは執行、破産といった事件の方の裁判官としては使えるということになりますので、そうなりますとさかのぼって本来の迅速処理のための増員のところを、ある程度そこで埋めていくということになるわけであります。そこで、全体として約500人というようなものを出したわけでございます。
【法務省(但木官房長)】検察官について御指摘がございました。誠におっしゃること、ごもっともであります。私どもといたしましては、当審議会で検察官についていろいろな御注文、あるいは期待感というものを寄せていただきました。それを前提にいたしながら、それを果たしていくものとして計算すれば、このような人員増が必要であろうというふうに考えております。まず、警察あるいは国税、証券取引等監視委員会等々、さまざまな機関から、すべての刑事事件が検察官の下にまいります。そういう役割を果たしているわけで、そういういろいろな機関に対する相談から始まりまして、送致を受けるまでの問題がございまして、現在検察官不足のためにそれに十分対応できていないという現状が、既にあるということを申し上げましたが、これを改善する必要があると考えております。
経済事件というのは、現在の段階では特殊な会社のケースということになるわけですが、これからは、国民各層が、投資という形、金融商品を買うという形、あるいは保険に入るという形で、様々な経済活動に参加することが予測されており、しかも今まではすべてこれを保護してもらえたんですが、今後はそれが自己責任ということで、国民一人ひとりの負担になる。そうしますと、そういう負担を負わせた責任者については、厳しくこれを罰していかないと、国民の経済生活を保護することができないという問題が生じてまいります。これに対応するのにどうしたらいいか。
皆様方の御議論の中で、国民の司法参加の問題がございました。これはある意味で我々が経験していない領域のことでございます。我々としては、現在の物差しで将来そういうのが行われた場合に、どういうことが想定されるかなという計算をしておりますが、それは十分だとは思いません。ただ、大分やり方は変わるであろうと思います。今まで、警察に任せておりました参考人の調書というのを、ほとんど恐らく検事が取らざるを得ないだろうと思います。そして、それを公判廷で明らかにせざるを得ないだろうと思います。そういう、いろいろなやり方というのが変わってくるなというふうに思っております。やはり、国民の司法参加に応えていくためには、それなりの増員が必要であるというふうに考えております。
また、こういう巨大なシステムの変革に伴いまして、例えば法科大学院に、検事が実務家、教官として行く必要はないのかというような問題が、皆さんの問題提起の中から生じてまいります。ですから、そういう問題をすべて考えますと、検事は1,000人の増員が必要であろうと考えております。これを補助します検察事務官の機構といたしましては、1.1を掛けた1,100人という増員が必要であろうと考えております。
これは、私どもが皆様方の御議論をベースにして想定したものでありますが、結局のところは当審議会で司法、あるいは検察に次の時代にどういう役割を担わせようとされるか、それに従ってこの増員の要否、あるいは大小というのが大分変わってくるというふうに思っております。
以上でございます。
【藤田委員】 頭が悪いのか、よくわからないんですけれども、裁判所から出された「裁判所の人的体制の充実について」の4ページのところで、今、御説明があったところがあるんですが、現在本庁、支部で約300人が特例判事補として単独事件を担当しているということですね。
【最高裁(中山総務局長)】はい。
【藤田委員】 本庁で6、7年目の特例判事補で単独事件を担当している人が60名だということはわかりましたけれども、支部で勤務している6、7年の特例判事補もいるわけですね。
【最高裁(中山総務局長)】はい。
【藤田委員】 それはどうするんですか。
【最高裁(中山総務局長)】それについては、単独事件をそのままさせるということになります。
【藤田委員】 支部では6、7年目のものにも担当させるということですか。
【最高裁(中山総務局長)】はい。支部に対して裁判官を送り込むことができるかどうか、そういうところを見なければということでございます。
【藤田委員】 わかりました。それから、判事補の身分から離れるものは定員に影響を及ぼさないということですね。しかし、実際の実員から言うとその人たちいなくなるんだから、穴埋めは必要ですね。
【最高裁(中山総務局長)】はい、充員は必要です。
【藤田委員】 その充員の関係は、これには出ていないということになるわけですか。
【最高裁(中山総務局長)】はい。出ておりません。充員の関係は、勿論そういったことになりますと弁護士任官にということになろうと思います。
【藤田委員】 弁護士任官はどのぐらい見込んでいるんですか。
【最高裁(中山総務局長)】仮にまずコア部分の500というところでありますけれども、これは基本的に判事の増員であります。判事の増員であって、10年後の判事の数というのは、今の判事補の数で、ある程度規定されます。それを考えましたときに、350人までは充員が可能です。したがって、500人のところでも150 人の弁護士任官が必要だということになります。
【藤田委員】 弁護士あるいは大学教授からの任官が、それだけ必要だということですね。
【最高裁(中山総務局長)】はい。更に事件増で300、400ということになると、それが上乗せされるということになるわけであります。
【藤田委員】 わかりました。それから、これの別表のところを見ますと、別紙1でありますが「事件の適正迅速な処理に必要な増員」の中で、家庭裁判所30人とありますが、人事訴訟が家庭裁判所に移管される、それに家事調停等について、裁判官がもっと手続に関与すべきであるというような議論も出ていますが、そういうことを考えると、この数が少な過ぎるんじゃないかということが一つです。
もう一つは、前にもお話ししましたけれども、民事訴訟運営改革の研究会に出てきた弁護士、あるいは司法書士の方達と議論したときに、審理期間が2分の1になれば、2乗に反比例して新受事件は4倍になるという私の仮説を申し上げたところ、いや4倍はどうかわからぬけれども、2倍になることは間違いないというふうな議論があったということを、前にもここの席で申し上げましたけれども、新受事件が2倍になると仮定した場合は、どれだけの増員が必要ですか。
【最高裁(中山総務局長)】まず、人訴の関係につきましては、これは現行の制度、事物管轄を前提にしております。したがって、人訴が家庭裁判所の方に移管されたというときには別途考慮が必要だということになりますが、基本的にはその分地裁の戦力を家裁の方にシフトするというのが中心になろうかと思います。ただ、その周辺でいろんな、どうしても負担が生じてくるということになれば、それに応じてやはり増員措置は講じなければならないだろうと思います。
家事事件の関係で、トータルとして少ないんではないかということでありますが、家事調停の関係等を考えますと、これは裁判官だけでなく調査官あるいは調停委員、このトータルで戦力というものを考えていくべきだろうと思っております。その結果、シミュレーションして30人というところで、ある程度の余裕を持って処理ができることになるというふうに考えた次第であります。
仮に、民事訴訟事件が2倍になるということになりますと、先ほど1.5倍のところで500人から650人というふうに申し上げましたけれども、これは勿論弁護士が増えてまいりますと、弁護体制の充実等が図られるということになりますから、直ちに比例的ということにならないかもしれませんが、単純に倍にすれば1,000人から1,300人の増員が必要だということになります。
【水原委員】 最高裁判所に教えていただきたいんですけれども、先ほどこの表は裁判官の身分を離れるものについては、数字の中には入れていないというお話でしたね。そういう場合の充員数はどれぐらい考えておられるのか、それをお教えいただきたいんです。
それと法務省の場合、これは充員数もこの中に加えて計算しておるのか、例えば弁護士にいく場合には、この数の中には入れていないのか、この両方の考え方がどうも違うように思うんで、確かめさせていただきたいと思います。
【最高裁(中山総務局長)】裁判官の身分を離れた場合に、充員は必要でありますけれども、この場合にどの程度、例えば裁判官の身分を持ったまま研修に送るか、あるいは裁判官の身分を離れて送るかということによって変わってくるということになります。仮に、100名全員を身分を離れてということになりますれば、それは充員として100人必要だということになるわけであります。
【水原委員】 その点について、今、最高裁判所ではどういうふうにお考えなのか。先ほど髙木委員、中坊委員もその点についていろいろ御疑念を持って質問しておられるんですが、御回答いただけないんで、原則として弁護士事務所に身分を離れて行くことを考えていらっしゃるのか、それとも、どの程度のものを身分を離れて行くことを考えていらっしゃるのか、その点についての御見解があればお教えいただければと思います。
【最高裁(中山総務局長)】外部派遣制度については、まだまだ検討しなければいけない問題点が多々ございますので、そういう意味で私どものところで、率直なところまだ絵が描けていないという状況であります。
【法務省(但木官房長)】法務省の場合は、弁護士事務所に派遣するものについては、身分を離れることを想定しておりますので、定員の中には入れておりません。
ただし、ちょっと我々も図りかねているところが一つだけありまして、法科大学院にかなりの程度実務家が応援に行かなきゃならないだろうと思います。これは経済的な側面もあって、どうするのか非常に難しい問題があるんですが、私立、国公立を平等に応援していかなければいけないということから考えますと、無給の体制でかなりの応援をせざるを得ないだろうと思います。無給の体制ということになりますと、これは定員の中に入ってまいります。そうではなくて、実務家を一旦辞めて、その大学に行って、そこで教えるというスタイルを取る場合には、これは定員の中に入ってまいりません。それがいずれの方式になるのかは、少し私たちも読みかねておりまして、一応ここではすべて想定されるものを定員の中に入れております。つまり、身分は切らないという方式で計算しております。
【水原委員】 同じ関連で、「検察官の研修体制の充実・強化」という項目の中に、このペーパーで言うなら3ページのところに「近時、検察官が独善に陥る傾向がある等の批判もなされているところである」と、そういうことを踏まえてと言いましょうか「検察官を一定期間庁外の市民感覚を学ぶことができる場所で執務させることが極めて重要である」ということで、弁護士事務所等へ身分を離れてそういうところで法律実務に就かせるというお考えでございましたね。ところで、その「身分を離れて弁護士事務所に行かせる人員」は、大体どれぐらいを考えていらっしゃるのか。
【法務省(但木官房長)】これは、実は当方だけで確定できません。というのは、身分を離れますので、給料を外部の方に払ってもらわなきゃいけません。弁護士事務所でどれだけ雇える能力があるのか、これは裁判官についても身分を離れるということになりますと、同じ問題が起きてまいります。その財政負担能力の問題もございますし、それを受け入れる弁護士事務所がどれだけ急速に発展してくるかという問題もありまして、我々としてはできるだけ早く、できるだけ人数を、多い割合で出したいというふうに思っていますが、そこは今、我々だけで計算がなかなかできないという状態でございます。
【水原委員】 ありがとうございました。
【日弁連(久保利副会長)】日弁連でございますけれども、今、弁護士側の受け入れがどうかという議論になっておりますので、日弁連の基本姿勢を簡単に申し上げます。
まず、裁判官に対する弁護士任官でございますが、私どもは2月19日付で提出した「裁判官制度の改革について」というペーパーで述べたとおり、今までは「行きたい人」を探しておりました。これからは、むしろ「行かせたい人」を探し出して、働き掛けて、送り出していく、これを日弁連の基本方針として徹底的に行います。したがって、裁判官の弁護士任官の問題については、日弁連として責任を持ってやりたいと思います。その気概を持って行く人、裁判所が変わったら行くという人ではなくて、裁判所を変えにでも行くという人を送り出したいと考えています。
今、但木官房長がおっしゃった検事の受け入れ、あるいは裁判所からのいわゆる、裁判所は外部派遣とおっしゃっていますが、私どもはそう考えておりませんで、身分を離れて弁護士になっていただく方というふうに理解をしておりますが、その方々については全面的に弁護士がこれを受け入れる。給料も、検事であろうと裁判官であろうと、お願いして雇うあるいは一緒に働く、その弁護士事務所が負担をいたします。そういう意味で、検察官であろうと裁判官であろうと、その受入体制については日弁連でもって責任を持ってそのような事務所をお出しできるというふうに考えております。経済的負担も御心配ないと思います。
【竹下会長代理】 裁判所に二点ばかりと、それから法務省というか検察の方に一点質問させていただきたいと思います。
まず、はじめに裁判所に対してですが、ちょっと細かい話なのでございますけれども、裁判所のペーパーによりますと、定員増加の最も基本的な部分は、「訴訟の迅速化、専門化への対応」という部分でございますね。その「迅速化」の点でございますけれども、この450名という試算の基礎を拝見しますと、現在人証取り調べのある事件について、平均審理期間が20ヶ月以上掛かっているということで、これをおおむね1年以内に終了できるようにするということになっているわけでございます。この審議会での民事司法に関する審議のときに、中坊委員の慎重論がございますけれども、多くの委員の間では、現在のおおむね半減を目指す、と言っておりますから、数字で言うと10ヶ月ぐらいで終えることを目指そうということですので、細かい話になりますが、若干そこにずれがあります。もし10ヶ月となると、ここでまだ決まったわけではございませんけれども、多くの委員の御意見に従って10か月ということになると、もっと増えるということになるのか、それともそのぐらいのところまではこれでカバーできると考えておられるのかというのがまず一点でございます。
第二点は、さっき吉岡委員から御質問があって、お答えがない点なのですが、裁判官の定員だけではなくて、裁判所書記官それから家庭裁判所調査官の定員も増加する必要があるということで、最高裁のペーパーですと、増加する必要があるということは書いてあるのですが、こちらの方については具体的な数字が挙がっておりません。裁判所書記官については、あるいは裁判官の定員が増えると当然それに伴って一定数が増えるのかと思いますけれども、とりわけ家庭裁判所調査官などは、今後人事訴訟を家庭裁判所に移管するという理由の重要なものの一つは、家庭裁判所では家庭裁判所調査官が配置されていて、それが人事訴訟に生かせるということが挙げられておりますので、そうすると当然に調査官の定員も増やさなければならないということになるはずですので、その点についてはどういうお考えか、あるいは何か実際に具体的な数字をお持ちなのであれば教えていただきたいと思います。
それから、検察の方でございますが、検察庁の方では全体で1,000人ということで、司法を大きくしていきたいという意気込みは十分感じられるのでございますけれども、それぞれのところについて、率直に申し上げてつながりがよくわからない。この数字の根拠といいますか、裁判所の方は一応どういう根拠に基づいてこのぐらいの定員が必要かというのが示されているのですが、法務省の方のペーパーでは、そこが必ずしもはっきりしておりませんので、トータルで1,000名増員ということを言われるについて、何か具体的な、内部的にはこういう試算があるのだということがあれば教えていただきたいということです。
【最高裁(中山総務局長)】私の方からまずお答えいたしますけれども、先ほど人証の取り調べの実質的な争いのあるもの、この20.3ヶ月を12ヶ月以内、正確に言うと11.6ヶ月ということでございますが、「半減」ということも勿論承知しております。
私どもとしては、一応の目標ということで考えておりますけれども、これは裁判官がこれだけ増えれば、裁判所側の体制は整ったということになりますけれども、他方でやはり弁護士さんの方がきちんとした準備を、これまで以上にしていただかなければならない、あるいはここで御提言いただいているような訴訟手続の改正、改編というものも併せてなって、初めてそれが実現できるものだというふうに思っております。そういうことから考えますと、これは更に10ヶ月にせよということになりますと、当然更に増員が必要だということになります。
ただ現実問題として、そうなりますと期日間隔を30日以内に、更に短くしなければいけない。あるいは、これまで回数を11.6回、そうやって争いのある事件ではやっているのですけれども、それを10回程度にしなければいけないというようなことにもなり、そうなりますと審理のやり方としてどうかとか、あるいは弁護士さんの方が果たしてその間で、30日以内まで短くしたときに、十分な準備ができるか、そういった問題もあろうかというふうには思っております。
一般職の関係でございますけれども、これは書記官、調査官とも、裁判官に見合った数をちゃんと充実させていかなければならないこと、これは当然でございます。調査官につきましては、人訴移管の際に、どれだけの業務量が果たして調査官に必要かというところを十分検討した上で、その際にまた出していきたいと思っているところであります。
【竹下会長代理】 そうすると、今のところは具体的な数字としては、持っていないということですか。
【最高裁(中山総務局長)】書記官で申し上げますと、例えば、今、500人のコア部分ということだけで考えましても、1,000人の書記官は必要であろうというふうに思っております。
【竹下会長代理】 わかりました。
【佐藤会長】 よろしいですか。それでは但木官房長お願いします。
【法務省(但木官房長)】私どもの方で、根拠はそれぞれ何かというお話なんですが、私どももそれなりに計算はしております。ただ申し上げたいのは、やはり将来の司法というので、大分内容が変わってくるものがございます。こうしたものについては、やはり現在の物差しで将来をはかるという、正確性にやや問題があろうかと思います。ただ、それをお含み置きの上でいろいろ計算した根拠を申します。
例えば警察の送致・送付事件、主に警察関係で考えておりますのは、270人の増員。
告訴・告発事件等の捜査体制で、130人。
医療過誤・ハイテク犯罪等、専門家検事の配置ということで、60人。
経済事件担当ということで、これは拠点庁ですが、90人。
検察官に対する研修体制の充実・強化ということで、10人。
裁判員制度を導入することに伴う捜査体制の充実ということで、80人。
裁判員制度導入に伴う公判体制の充実ということで、200 人。
検察審査会に対する説明あるいは国民に対する広報ということで、20人。
司法修習生の指導体制の充実・強化ということで、90人。
法科大学院への講師派遣ということで、50人。
アジア等への法支援整備ということで、10人。
これを足しますと、1,010人という数になります。それぞれ、更に計算の根拠というのがございまして、例えば拠点庁というのをどこにして、ハイテク犯罪の場合にそれぞれの拠点庁に何人ずつ張り付けるかというような計算をしております。
【竹下会長代理】 その計算の考え方だけで結構でございます。どうもありがとうございました。
【佐藤会長】 吉岡委員が先ほどから手を挙げていらっしゃいます。吉岡委員どうぞ。
【吉岡委員】 一つは、その人員増で、事務官も含めてどうなのかということをお伺いしたのは、行政改革の基本的な考え方が10年で1割減ですか、そういうことを言われておりますので、司法の場合には、司法制度改革という大きな改革をしようという、そういう時期での問題ですので、行政改革が一律1割削減だということに乗せてはいけないということを思いながら質問させていただきました。
予算の問題は、この司法制度改革審議会の中で別途まだ議論するのかもしれませんが、今までの議論の中でも司法制度の場合には別途考えるべきだという意見があったように記憶しておりますけれども、その点を十分に配慮していかないと、せっかくいい答申が書けたとしても、実質的に実効性を挙げていこうというところで、非常に難しい、困難にぶつかるのではないかと思いますので、あえて質問させていただきました。
もう一つだけ質問したいのですが、弁護士会の方が少しお触れになって、弁護士会として取り組むということをおっしゃったのですけれども、先ほどの中山局長の御説明の中に、弁護士任官が非常に少ないというお話がありました。40何人ということで、それもかなり長い年月の間でということなのですけれど、弁護士任官が少ないという理由が、適性がないとか、なりたがらないということによるものなのか、それとも任官したいという希望があっても、裁判官として向かないからということで拒否なさるようなことがあるのかどうか、これは両方に伺った方がいいんでしょうけど、やはり法曹を増やしていく、国民が利用しやすくするということから言うと、積極的に弁護士が裁判官になるということを広げていかなければいけないと思っているのですけれど、その辺がどうなのか。弁護士サイドの改革というか、そういう中では弁護士人口を増やそうとか、弁護士事務所の法人化をして、出しやすくしようとか、バックアップ体制を整備しようなどというのは、今までに議論があったと思うんですけれども、これからの体制として実効性が上がるだけの弁護士任官が期待できるようなことをお約束いただきたいと思いますので、あえて御質問申し上げました。
【佐藤会長】 それぞれお答えいただけますか。
【最高裁(中山総務局長)】5月8日の審議でも、人事局長の方からもう少し詳しいいろいろな御説明をした方がいいかとは思いますけれども、裁判所としては昭和63年以降、弁護士任官という制度をつくりました。優秀な弁護士に是非とも裁判官になっていただく、それによって裁判所の構成員全員が裨益することにもなるだろうというふうに思っています。それまでも実際には門戸は開放されていたというふうに、私どもは認識しておりますけれども、残念ながら先ほど言いましたように13年間で49名というところにとどまり、また入られた方も随分苦労されているというのが実態であるというふうに認識しています。
弁護士任官が進まない理由等につきましては、これまでもペーパー等でお出ししているところでありますけれども、詳しいことは5月8日に人事局長がこちらに来るということになっておりますので、よろしゅうございますでしょうか。
【吉岡委員】 はい。
【日弁連(久保利副会長)】既に2月19日付のペーパーの中で一部触れてありますけれども、基本的に日弁連としては、弁護士任官というのはその人の人生を変えてしまう重大事だという認識から、むしろ希望者を手を挙げてくるのを待つという対応でございました。しかし残念ながら、そういう体制では結局裁判所の体質にも問題があるとか、さまざまな理由はあるわけですけれども、結果としてはそれほど大勢の人数が任官するという事態にはなりませんでした。
私どもとしては、むしろこれからは弁護士の社会的な責務ということで、裁判所を変える、あるいは弁護士自身が社会的な責務として任官をしていくんだという、任務としての弁護士任官ということを積極的に打ち出していくことが必要だろうと思います。そのためには、行きたいという希望者というよりは、むしろ弁護士会として行ってもらいたいという人を発掘をして、その人に働き掛けて送り出していく、そのためには当然経済的なベースをどうするかとか、従来のクライアントをどうするか、あるいは任官を一定程度して戻ってくるときのベースキャンプは一体どこになるんだ、というようなものをつくっていかなければならない、こういう制度的な問題点はたくさんございますけれども、それはやはり我々が解決をして、我々の責任で送り出していくしかないんだろうと思います。そういう意味では、弁護士任官というものを積極的に取り組んでいく、それがなければ司法改革というのはこれより進まないかもしれないという、非常に切羽詰まったと言いますか、真剣な気概でこれに取り組みたいと考えている次第でございます。
【佐藤会長】 よろしいでしょうか。それでは井上委員、それから髙木委員という順でお願いします。
【井上委員】 簡単にお伺いします。一つは、次の議論と関係してくるのですけれども、法務省の方では法科大学院というものがつくられた場合に、教員を50名ぐらいは出してもいいということなんですが、裁判所の方も出していいとは書かれているんですけれど、数が明示されていない。その辺何かお考えがあるかどうか、お伺いしたいと思います。
もう一つは、裁判所の方は10年を一応の目途に数字を出したということなんですが、法務省のペーパーはどのぐらいの期間でこの人数に増やそうと考えるのか触れられていないものですから、その辺のお考えをお聞きしたいと思います。
【佐藤会長】 ではそれぞれにお願いしますが、まず中山局長の方から。
【最高裁(中山総務局長)】私どもの方としても、法科大学院の構想については、できる限りの御協力をしたいというふうに思っています。勿論、外部派遣ということで、裁判官が実務教官になるということも当然考えております。
ただ、これが裁判官としての身分を持ったまま行くことになるのか、あるいは一旦検察官に転官して行くことになるのかとか、その辺のところがなかなか見えませんので、そういうようなものが大体見えてまいりましたときに、きちんとした対応をしたいと思います。裁判所としても全力をもって応援したいという気持ちであります。
【法務省(但木官房長)】私どもの大体のスケジュールというか、日程的にどのくらいを考えているかということですが、私どもも裁判所と基本的には同じようなスパンを考えています。ただし、これは主として法曹人口がどのくらいになってくるかということが基本だろうと思っています。そこの動きによって、大体これが実現できるかなと思っておりまして、そういう意味では不確定要素がたくさんありますから、断言はできないと思っていますが、それを目標にしながらというふうに思っております。
【髙木委員】 先ほど来、いろいろ議論をお聞きしておるんですが、もう一つ明快になりませんので、再度裁判所にお尋ねしたいんですが、この裁判官制度改革への対応のところ、先ほど来の御説明では特例判事補制度の見直しに対応する部門で60人だということで、必要数が60だということは、あとの要素は在席のまま行く人はいないんだというふうに普通は読むんですが、その辺のところについて、もう一つはまだよく詰められていないから、数字の出しようがないんだというような御説明もあったようにも聞こえますし、その辺の意味をもう少し解析をしていただきたいというのが一点。
8年目以降、これ10年ぐらいの期間を想定して、と言うんですが、10年目ぐらいを想定して、それ以降も8年目を残す、残さない。あるいは、6、7年目の人たちが、支部では単独で裁判してもしょうがないんだという扱い方で、本当にいいのかなという気がいたします。
先ほど来、離島だ、僻地だというお話もありますが、離島はそういう方々、判事補の人でいいんだという論理が本当にいいのかどうか。御家庭を持っておられたら、みんないろんな子どもさんのことがあったりという事情があるのはわかりますが、本質的にはやはり離島だってどこの地だって、同じレベルの裁判を当然受けてしかるべきだろうと思います。
もう一点は、関係職員の中に速記官のことを一切書いておられません。最近お聞きしましたら、昨今の技術革新等の中で、速記官の人が自分の費用で機材を買われたりして、すぐ打ったものをディスプレイしていくような試みの勉強もやっておられるとか、審議の迅速化ということと速記の関係、これは大きな要素じゃないかなと思いますし、更に裁判員制度等が導入されましたら、裁判員の人たちに速記が大分経ってから来ますというようなことじゃなく、もう目の前でディスプレイできるぐらいの仕組みが当然あった方が、有効な裁判になるんではないかと思います。そういう中で、速記官の問題に全く触れられておりませんし、逆に今、減らされる一方だというお話も聞いておりますが、将来この速記官の問題をどうされていくつもりなのか、私自身はもっとこの辺は体制的にも充実すべき、そういうニーズもあるという認識ですが、いかがでございましょうか。
【最高裁(中山総務局長)】最初の方のところでございますが、特例判事補で60人のときに40人とおっしゃいましたですか。
【髙木委員】 60人です。
【最高裁(中山総務局長)】済みませんが、もう一度質問を。
【髙木委員】 いただきましたペーパーの本文4ページに、「4 事件数の増加への対応」の直前の最後の2行に「60人程度の判事の増員・充員が必要となる」と書いてあるんです。60人はこの60人のことを言うんですね。
【最高裁(中山総務局長)】そうです。
【髙木委員】 それ以外は何もないということですか。
【最高裁(中山総務局長)】結局、6年目と7年目ということで、仮に特例判事補全員を集めますと120人おります。支部の方には60人おります。本庁にいるのが60人という趣旨でございます。
【髙木委員】 だから逆に言えば、外部派遣等はもう一切。
【最高裁(中山総務局長)】ここは外部派遣とは直接的に関連しない部分でございます。
【髙木委員】 それなら外部派遣ゼロと書いたらいいじゃないですか。
【最高裁(中山総務局長)】外部派遣の方は、結局、数十名というところが、これはどういうような形で送るかによって出てくるということでございます。
【髙木委員】 それから、今、言ったように8年目もそれでいいのか、6、7年目の問題について。
【最高裁(中山総務局長)】支部の方の問題で、本来、髙木委員が言われるのが正論だろうと思います。ただ、本当にそういった支部に判事以上のものが配置できるかどうかというところも、また一つ考えなければいけないところだろうと思います。将来的な課題としては、支部についてもそういうところが必要だと、支部についても同じように8年目というところを目標にしていく、これは当然のことでありますけれども、そのためには先ほど来言いましたように、弁護士任官者の中で果たしてそういったところにいとわずに行っていただく方がいるかどうか、そういうところに大きくかかわってくるということになるわけであります。
速記官の方につきましては、実は速記官の人材確保の困難とか、あるいは速記タイプの供給確保に大きな問題点がございましたし、速記官は職業病に罹患するということが、また随分多かったわけです。それから、速記タイプというものを打ちますけれども、月8時間しか打てないということでございます。そういうようなことを考えましたときに、今後確実に増加していく逐語録の需要に、速記官では対応できないというふうに考えまして、4年掛けまして検討し、いわゆる録音テープによる反訳方式というものを、実験として2,000時間行いました。その上で、その録音反訳のテープ、原データについても弁護士会の方に提供し、あるいは弁護士さんにも見ていただいて、支障がないということでありましたので、平成9年の2月に速記官については養成を停止することとし、代わりに録音反訳方式を導入するということにしたわけであります。
これまで、特段の支障もなく進んできておりますし、かえって従来速記官の立ち会い時間、月8時間というところによって制限されていた大型事件の期日指定というものが、非常に柔軟に行い得るようになったというのが実態でございます。
この段階で、復活すべきではないかというような意見も勿論あることは承知しておりますけれども、これだけ、例えば10年前にOAというものが進展するということは考えてもいませんでした。ここで速記官制度を復活して、また養成を開始するということになると、今後40年後にもまだ速記官がいるということになりますが、40年後の社会を、あるいは裁判所というものを考えたときに、そういったような形での記録保持、記録を作成するというようなことはまずないんではないか、そういうことも考えるべきではないかなというふうに思っております。
先ほど、個人として速記タイプを買っているというようなお話がありましたけれども、裁判所としては勿論、官物として国の費用で、これまでの速記タイプを速記官の方に提供しております。
【佐藤会長】 中坊委員も手を挙げておられますが、最初に中坊委員ということで、山本委員よろしいでしょうか。それで、時間は一応1時間の予定にしており、あと法曹養成制度についての審議があるもんですから、お二人の御質問で大体終わりにしたいと思います。
【中坊委員】 私は質問じゃなしに、意見として本日、裁判所の方の人的体制の充実として、510名という数が出ているわけですが、先ほどから出ているように、私はやはり裁判の充実・迅速という意味、あるいはそのための裁判官の負担の軽減というのは、もう極めて重要だし、しかもこれから法曹人口が増えていく中における事件数の増加、また今おっしゃるように、ロースクールへ教授として行くとか、いろんな意味において非常に増員の必要性が大きいと思うんです。そういう状況からして、検察官の方が約千名という増加をおっしゃっておられるときに、裁判官の方は半分、しかも510名なんていうと、それはおっしゃるように、一つひとつが非常に未確定要素があって他との関連性でそうなっているというのはわかるんだけれども、何か510名というと本当にそれでいいのかなというような気になりかねないんで、私はやはりもう少し裁判官の増加という問題については、我々審議会としてはもう少し、ざっくりの数字でよいのであって、しかも500名とかいう数では、いわんや先ほど私も言ったように、外部研修の問題がどうだというような、更に今後は定員の問題以外に充員という問題がありますね。そうするともっと裁判官は増加させていかないといけないのであって、そういう意味で私の意見としては、このお出しいただいた510名はそれなりの見解としてはわかりますけれども、我々審議会としては余りこの510名でよいということにはならないのではないか、もっと数が大きいのではないか。それはどうしたらいいか、今、何名というのか、あるいはもっと増加というのかわかりませんけれども、少なくとも510名というのは半端と言ったらおかしいけれども、そうなってくると非常に問題が起こるんじゃないかと思うんで、その点はやはり裁判官の増加という問題は、勿論それに伴って書記官とかその他のいろんな人の増加も要ると思うんですけれども、そういう意見を持っています。
【佐藤会長】 それでは山本委員どうぞ。
【山本委員】 全く同じ意見になってしまったんですけれども、要するにもっとざっくりした議論でいいんじゃないかと思います。法曹人口を3,000人にすると言ったときにも、余り各論の議論ではなくて、定性的に、現在紛争解決のサービスが十分になってない、その効率をうんと高める必要があるし、これから事件数が増えてくるんだという前提で、司法の容量を拡大しようというような考え方だったですね。そうしてみると、今日の議論というのは、確かに裁判官も検察官もお役人ですから、定数の問題があるんでしょうし、実態がよく分かって勉強になる面もあるんですが、本来もう少しざっくりした議論でいいんじゃないかという感じがするんです。
例えば、民事訴訟は期間を半減する。「半減する」という意味は、これは単純に考えると倍要るということですね。もちろんいろんな工夫をすることで倍は必要ないということですけれども、更に言うならば、質もよくしたい。調べもじっくりやってもらいたい、家に仕事を持ち帰らなくても、裁判所でちゃんと十分調べものとかができるようになってしかるべきだろう。あるいは勉強もうんとしてもらいたい。そういういろんな要請が出ているわけですから、最高裁の方々は余り控め目にしないで、こういうときは思い切って何かやられたらいいんじゃないかという感じがしています。
検察の方々は、ちょっとこれ逆じゃないかと思います。検察は5割増しで、最高裁は何か10年先に4分の1増やしましょうという感じですね。でも今回の審議からすると、私の感じは、むしろ1,000と500が逆になるんじゃないかという気がしております。余り根拠がない話ですが、素人から見るとそのような印象があります。
【髙木委員】 会長は、行革にも関わっておられて、今の山本さんがおっしゃるように逆さまかどうかはともかくとして、今の仕組みだったら増えないわけですね。自民党の出した提言を読んでみたら、そういう全く違うアプローチをしなきゃだめだということが書いてあり、あと検事さん以外のところについてもいろいろ列挙されていますけれども、人数はいろいろなことがあって触れられてないんだろうと思いますが、ニーズが高い部分があの中に幾つかあるんだろうと思うんです。そういう意味では、5年のうちに5%だとか、10年のうちに10%と言いますか、その辺のところをこの審議会でどこまで触れられるのかという問題があるのかもしれませんが、ある部分その論理が片一方であるままだとしたら、幾ら議論してみたって、絵に描いた餅の議論をしている面があるわけですから、そのことについても何か少しは言及する必要があるんじゃないかと思います。
【佐藤会長】 それは、最終的には我々の理解の仕方、表現の仕方になってくることだと思います。もう時間も来まして、予定よりは大分オーバーしてしましました。最高裁、法務省の方でこの機会に是非申しておきたいということがあれば、それぞれおっしゃっていただければと思いますけれども。
【最高裁(中山総務局長)】結構でございます。
【佐藤会長】 そうですか、法務省の方は。
【法務省(但木官房長)】次の時代において司法が果たすべき役割というのを、是非明確に打ち出していただきたい。その中で、検察は何をなすべきかということも、是非明確にしていただきたいと思います。その中で、人員の問題がどれだけ要るのかということをお考えいただければ、非常にありがたいというふうに思っております。よろしくお願いいたします。
【佐藤会長】 ありがとうございました。それで、私どもがこの問題についてとるべき態度です。さっき髙木委員がおっしゃったことに関係するんですが、行政改革会議の最終報告では、ややキャッチフレーズ的ですけれども、「事前規制型社会から事後監視型社会への転換」ということが、大きな規制改革、規制緩和に関連してうたわれているわけです。ロー・エンフォースメントと言いますか、そういうことをきちっとやらないといけないし、法の支配の徹底ということが必要である、そのためにも司法の人的、制度的な拡充が必要だということを、最終報告はうたっているわけでありまして、その趣旨のことは私も折に触れて申し上げてきました。皆様の御議論の中でも、それは何か当然のこととして理解されていたのではないかと思います。我々は新しい社会に突入していっているんだということ、これは警察庁のヒアリングのときもそうでありましたし、いろんな機会に、皆さんそれぞれお感じになってられると思います。
我々は大幅な増員が必要だということを言ってきたんですけれども、今日最高裁判所と法務省両方から具体的な数字として出されたわけです。それに対して、山本委員、法務省の数字について多過ぎるんではないかという御趣旨では。
【山本委員】 バランスを失っちゃだめですという趣旨です。
【佐藤会長】 わかりました。そうすると、多過ぎるんじゃないかという御意見はないように思うんです。そうだとしますと、両方から今日お出しいただいた数字をベースにしながら、更に考えるべきところは考えて、最終報告の段階で我々として具体的な目標値を掲げたいと思います。
私個人としては、本当にこの程度の数字でいいのかなという感じもないわけじゃありませんけれども、今日のお話をベースにして最終報告でもう少し詰めて表現できればいいというように感じております。
それから、最高裁判所の説明につきましては、先ほどの最初の御議論に関連してですけれども、外部派遣の問題があります。この点についての私どものここでの議論ですが、さっき井上委員がおっしゃったことと私も同じような認識なんです。基本的に身分を離れてということ。では例外的にどういうことがあるのかという点については、詰めた議論をしておりませんけれども、身分を離れて主として弁護士事務所、検察、その他の法律職の職務経験をというように考えていたのではなかったかと思います。ただ、例外はどうだとか詰めた議論はしておりません。ですから、ぎりぎり詰めてはいませんので、ここで断定的なことは申しませんけれども、審議会の議論はそういう方向であるということは、御承知置きいただきたいと思います。
この点につきましては、以上のような取りまとめ、すなわち、この数字をベースにして、更に我々として詰めて考えよう、ということでいかがでしょうか。よろしゅうございましょうか。
【佐藤会長】 どうもありがとうございました。では、休憩をはさみまして、法曹養成制度は3時10分から再開したいと思います。
【佐藤会長】 それでは、時間もまいりましたので、再開させていただきたいと思います。 法曹養成制度について意見交換を行いたいと思います。
この点につきましては、会長代理、井上委員とも御相談させていただきました。また、関係機関における検討状況などの情報を事務局に収集していただきまして、それらの検討状況なども踏まえて、本日の意見交換用の「たたき台」を用意いたしたわけでございます。席上にお配りしてございます。
そこで、このたたき台の内容等につきまして、最初に井上委員から簡単に御説明いただいて、その後、意見交換を行いたいと思います。恐縮ですが、井上委員、よろしくお願いいたします。
【井上委員】 この「たたき台」、中間報告の要点を基にしまして、前回の会議で配付されました自由民主党司法制度調査会の中間提言を含め、中間報告に対してさまざまな方面から寄せられた御意見を踏まえ、また、前回の審議の結果を取り入れて、幾つかの点で修正、あるいは加筆を施したものであります。
下線を引いてあるところがその部分でありまして、順を追って御説明申し上げたいと思います。
なお、席上に配付されてている「たたき台」ですが、これは事前にお配りしたものと比べまして、2箇所修正した部分がございます。内容的には、その部分に来たところで説明させていただきますが、いずれも、もとの文章をもう一度読み返しまして、誤解を生じる恐れがあると考えられましたので、本来の趣旨をより明確にするために語句を若干修正したものであります。
それでは、2ページ目の最初の(マル)からですが、これは、単に中間報告の文章を整理し直しただけのもので、実質的な変更ではございません。
次に、「③の入学者選抜」の2番目の(マル)の、「その割合は」というところなんですけれども、このパラグラフ全体の趣旨としては、法科大学院に法学部以外の出身者、あるいは社会人等を広く受け入れて、法科大学院の学生の多様性を確保するということをうたってありまして、そのためにそういった人たちを一定割合以上入学させるなどの措置を講じることとするというわけですが、この割合というのは、少なくとも当初は、これまでの司法試験の出願の実績などを考慮して、ある合理的な数値に設定せざるを得ないと思われるわけですけれども、多様性を確保するという趣旨と、こういう制度になれば法学部出身者以外の志願者が増えていくかもしれない。これはその動向を見定めなければ何とも言えないことですけれども、もし増えていくようであれば、随時その割合を高めて、多様性の拡大を図っていくべきではないかというふうに考えられるわけでして、そういう趣旨をここに加えたわけです。
次の(マル)、2ページの一番下です。席上配付した方をごらんいただきたいと思うんですが、すべての出願者について適正テストを実施する。これは、入学試験の客観性、公平性という観点のみならず、法科大学院で教育を受けて法曹となるべき基本的な適性を備えているか否かを図るというその性質からしましても、全国的に統一的なものとするのが適切ではないかということは、文部省の検討会議の報告書でも示唆されておりましたし、皆さんの間でもその旨の御発言があったところでありますので、この際それを明示することにしてはいかがかというのが修正の第一点。
それに加えまして、2年終了への短縮を認めるための法律科目の試験ですけれども、これは法科大学院におけるカリキュラムをどこまで統一的なものにするかにもよるわけですけれども、最低限必要とされるところだけ基準化し、あとは各法科大学院それぞれの教育理念に基づく創意と工夫で多様に展開してもらうという基本的な考え方に立っているわけですので、1年目をスキップできるだけの基礎ができているかどうかということの判定も、各法科大学院それぞれのカリキュラムとの見合いで、各法科大学院が行うこととすべきだというふうにも考えられる一方、こういう判定の客観性、公平性を担保するためには、統一的に実施すべきではないかという御意見もありますので、法律科目試験の全部または一部を統一化するということも考えられるということを示したのが、この文章であります。
なお、この部分は事前にお配りしたものにつきましては、適正テストについては、その性質上、言わば当然に統一的なものになるという頭で書いていましたので、いきなり法律科目の試験についての統一という文章になっていたと思いますが、読み返してみますと、反対解釈すると、適性テストは統一にしなくもよいというふうにも読めなくはないと思われましたので、念のために適性テストについての部分を追加した次第であります。
その次の3ページの一番上の2番目の段落、これは中間報告でも書いてあるところですので、あるいは下線は付さなくてもよかったのかもしれません。
3ページの「④教育内容・方法」の一番最後ですが、これまでも皆さんの間で、例えば山本委員などから、新しい法科大学院は各校多様なものが競い合って良いものにしていくべきだろうという御意見があり、もっともなことだと思われますので、その文章を追加したものであります。
3番目の(マル)「双方向的・多方向的」というところですけれども、中間報告では、「双方向」としか書いていなかったんですが、それでは教員と学生の間だけの対話に限られるようにも読める。しかし、それだけではなくて、学生の間の議論も非常に重要だという指摘もあり、そのとおりですので、用語として熟しているかどうかわかりませんが、「多方向的」という言葉を補ったものであります。
4番目の(マル)の「(教育内容・方法の具体的イメージ…最終意見案の中で調整)」と書いてあって、中身が書かれていない部分ですが、これに関しましては、前回配付された日弁連のカリキュラム案等に加えまして、本日、文部科学省から法科大学院の教育内容・方法についての研究者グループの検討の成果が参考資料として提出されておりまして、お手元の机の上に積まれていると思います。かなり分厚いものが3つ組になっていると思いますが、これは民事系、刑事系の2つを例にとりまして、3年制の場合の1年目の基礎科目と2年目の基幹科目を中心に、3年目の展開科目というものをも含めて、教育内容・方法の具体的なモデルを示そうとしたものであります。実は非常に急いでもらった関係もありまして、私自身、昨夜遅くになって初めてざっと目を通すことができただけでありますけれども、第一線でばりばり仕事をなさっている中堅の方たちによって検討されたものだけに、各教科の具体的な目標とか教材、学生に対する質問集が例示されておりまして、内容的にもよく考えられたものとなっているという印象を受けました。日弁連案の方も短い期間の中で学者の協力を得ておまとめになっている資料でして、こういうものを積み重ねて、更によいもの、適した内容にしていくということが期待できるではないか、というのが個人的な感想です。
ただ、ここでは、今、いきなり皆さんのところに配られたわけで、その内容について読む時間は勿論ないわけですし、私などが内容について御説明するというのもちょっと難しいところがありますので、ここで内容に立ち入って議論をすることはできないと思われますが、そのエッセンスで取り入れるべきものがあれば、今後、最終意見をまとめる中で議論することにしてはどうかというのが、括弧にしてある趣旨でございます。
次に5番目の(マル)ですが、これはプロセスとしての法曹養成システムの中核としての法科大学院は、そういう位置づけから、学生がそこでの学習に専念するような仕組みとするとともに、適切な入学選別や厳格な成績評価、修了認定が行われる必要があるわけですが、そういうことがきちっとなされることを前提にした上で、修了者のうちの相当程度が新司法試験に合格することを目標にして、充実した教育を行うべきだとするものでありまして、その趣旨は中間報告でも書かれているとおりであります。
今回はその「相当程度」というところに、「(例えば約7~8割)」という文言を入れてみました。これは、例えば「5~6割」といったことでは、どうも法曹養成に特化した教育機関を新たに設ける際の目標としてはちょっと難がある。最初から「半分くらいはだめでも仕方がありません。半分くらいしか受かりません。そのくらいが目標です」というのでは、どうも新しい制度を設ける際の目標としては問題がある。そこで、せめて7~8割くらいを目標にするということでどうかと、そういう趣旨であります。
ただ、誤解があるといけませんので申しますと、これはあくまでも「目標」でありまして、新司法試験にこれだけ必ず合格するようにするとか、あるいは新司法試験の成績判定をそういう数値に合わせるとか、そういった「保障」をするというわけでは決してありません。
各法科大学院が実際にどれだけのレベルの教育をするかは、見てみないとわからないわけですし、試験である以上、合格率は100%に近いところもあれば、ほとんどないというところが出てくるかもしれません。そういうふうに異なってくるのは、いわば事の性質上仕方のないことだろうと思われるわけです。
先にまいりまして、4ページの最初の(マル)「実務家教員」云々というところですが、法曹教育を行う法科大学院においては、いわゆる実務家教員の関与が不可欠であることは、何度も皆さんの間で確認されてきているところでありますけれども、実際に必要な数の人員を確保できるように、法曹三者との協力体制の整備が必要だという、当然のことを明示したものであります。先ほど法務省も裁判所も、また当然、弁護士会もそうですが、非常に心強い保障を与えていただいたところですので、書かなくてもよかったかもしれませんが、やはりその体制を整備するということを明記しておこうということです。
3番目の(マル)の「法科大学院」云々というところは、法科大学院においても、そこでの教育それ自体に学問研究の裏打ちがあるということが重要であるのは勿論でありますけれども、研究者養成型の大学院があるところでは、これと並存しつつ、しかし内容的には連携して、教育研究が行われるというのが一つの望ましい姿だろうという、これも当然のことを述べたものであります。
それに続く教員の法曹資格についての文章は、こういう要件を課すべきだということを言っているものではなく、法科大学院が発足して軌道に載ればおのずとこのようになる。これは、実務教員がどのくらいの割合必要かという議論の中で、発足当初はそういう議論も意味があるけれども、法科大学院が軌道に乗って、そこから生み出され、実務経験も一定程度持った人が法科大学院に戻ってきて教員になるということになれば、その区別自体意味がなくなるのではないか。そういう意見もあったことを踏まえて、そういうふうになっていくことが期待されるという趣旨を示したものであります。
4ページの一番下の留学生についての文章ですが、これは特に石井委員などから御指摘があった点でありまして、文部省の検討会議の報告書でも触れられていた点であり、特に御異論はないのではないかということで、ここに書き出したものであります。
5ページの4番目の(マル)、第三者評価機関のところですが、これまでのここでの審議でも、多くの方々の念頭に置かれていたことだとは思うのですけれども、大学関係者や法曹三者という、余りいい言葉ではないんですが、いわゆるギルド関係者と言うか、そういうふうにも言われていますので、そういう中だけで評価すると、何かお手盛りのようになってしまう。それではいけないのではないかという御批判もあることから、外部有識者の参加によって、客観性、公平性、透明性を確保すべきだということを明示したものであります。
その下の「4 法学部教育の将来像」、これは新しい項目なのですけれども、これまでの議論の中でもこの審議会の所掌がそこまで及ぶのかどうかという点で、ちょっと遠慮して、余り積極的にものを言ってこなかったところがあるわけですが、新たな法曹養成システムの整備との関係で、法学部教育がどう位置づけられるかについて全く触れていないのは無責任ではないかという批判もあり、当審議会としても、法曹養成との関係で一定の期待を述べるということは許される範囲ではないかと思われますので、これまでの審議で示された御意見や、文部省の検討会議の報告書に示されていた意見などをも踏まえて、このような記述にすることを考えてみたわけであります。
これは法曹養成制度の整備という観点から法学部関係者に対して送る一定のメッセージというふうに言ってもよろしいかと存じます。
次の(マル)「さらに」というところですが、ここは余り若くして法曹になるのが適当かどうかという点は、意見の分かれるところだと思われるわけですが、他方学部4年の上に法科大学院3年ないし2年要するというのは長過ぎるのではないかという意見もあることに配慮しまして、個々の学生の能力や学習達成度に応じてのことであるのは勿論でありますけれども、いわゆる飛び級制度、現行の大学制度でも既にあるこの制度を活用することによって、全体の養成期間の長さを弾力化することを考えようという趣旨であります。
次からちょっと重たい話題になってくるのですが、6ページの「司法試験」というところの最初の(マル)は、中間報告では「法科大学院制度の導入に伴い、司法試験も、その修了を要件とする新たなものに切り替える」と書いていたわけですけれども、どうもこの書き方ですと、法科大学院修了者のみに限った司法試験とすることに主眼があるとか、形式的に枠をはめようとするものというふうに読まれるきらいもありましたので、むしろ法科大学院における教育との内容的な連関という点に主眼があることを明確にしたものであります。
ただ、そうは言いましても、具体的に、今の司法試験と新司法試験なるものがどこが違うのかがわからないという意見も少なからずありましたので、3番目の(マル)で「新司法試験は」云々という文章を追加することによって一定のイメージを示す、あるいはメッセージを送るということにしてはいかがかと考えたわけであります。
もっとも、現時点でどこまで書けるのか疑問のところもありますので、例示という形にいたしました。趣旨としては、法科大学院においては単なる法律知識を与えるということではなくて、多方向的なディベートなどを通じて多角的な視点からの事実の解析や、問題の分析、解決策の発見・提示の能力を養成するということをうたっているわけですから、そうである以上、その成果を確認するには、ここに例示したような重厚な試験であるべきではないか。そういう意見はこの場でも出され、御異論もなかったように思われますので、例示という形で一定のメッセージを示すことにしてはいかがかというのがこの文章の趣旨であります。
そこに挙げております「公法系、民事系、刑事系」といったこともあくまで例示にすぎないものでありまして、その趣旨は、これまでの憲法、民法、民事訴訟法といった実定の法律ごとの科目割りに必ずしもとらわれずに、法曹養成の趣旨にふさわしい多角的、複合的な内容の教育を法科大学院で行ってもらい、新司法試験もそれに応じたものにしていこうというものであります。裏返して言えば、法科大学院側へのメッセージ、そういう教育内容にしてもらえないかという意味をも込めたものと言えるかと思います。
次の4番目の(マル)の新司法試験云々というところですが、これは文部省の検討会議の報告書でも言及されていたかと思いますが、法科大学院での教育内容と新司法試験との実質的な連関を確保するために、機構の上でもこういった仕組みが必要ではないかと考えられるために、その旨を明示したものであります。
一番下の「受験資格」のところが、最も議論のあるところだと思われるわけですが、これは、3月2日に行われました審議、そこでの皆さんの御意見の方向性というものを踏まえまして、法科大学院を核としたプロセスとしての新たな法曹養成システムの整備という我々の基本的な考え方、言ってみれば大きな筋道はあくまで堅持しながら、それを経由しないで法曹となる道を開いておくということを、例外という形ではなく、「また」という言葉でつないで記述したものであります。
また、中間報告では「やむを得ない事由」により入学が困難な者にこういう道を開くというふうに書いていたわけですが、これでは不明確ではないかという御批判があることに加えまして、例えば行政や企業法務等実社会で十分な経験を積んだ人にまで法科大学院に入って勉強し直してこいというのは不当ではないか、という御意見もあったことなどを考慮しまして、こういう表現に改めたものであります。
ここで具体的方法として言及しました、予備的な試験を経て新司法試験を受けるというのは、これもあくまで例示にすぎないものと御理解いただきたいと思います。そういった方法をも含めて、適切な方法を考案すべきだというのが全体の趣旨でございます。
その文章の中に「法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度の趣旨を損ねることのないよう配慮しつつ」という語句が入っておりますが、これは、今申しましたような「別ルート」と言うのはちょっと語弊があるかもしれませんけれど、便宜上仮に「別ルート」と呼ばせていただきますと、こういった別のルートによる正当な理由なく、本来、法科大学院の方できっちり勉強してきてもらうべき人が、この別ルートの存在をいわば奇貨として、ショートカットを図ろうとする、「特急券組」と呼んでもいいと思いますが、そういう人が出てきますと、せっかくこういうルートを設けても、かえってそれが仇となりかねない。そういった事態を防止するような工夫が必要だという趣旨であります。
具体的には、例えば括弧の中のような、面接によってバックグラウンド等について確認をするということも考えられるのではないかということでございます。なお、事前にお配りしていたものに比べて、ここも1点追加がございまして、それは、6ページの下から6行目の「このため」の次、「移行措置(4参照)の終了後において」という部分ですが、移行措置期間は、後で述べますけれど、新司法試験を開始した後、現行の司法試験を廃止するまでの間は両方が並存し、現行の司法試験が続くわけですので、法科大学院を経由しない人はそちらを受けてもらうということでよい。そういうことから、移行措置終了後に別のルートを設けるということは、これまでの審議の中でも話が出ましたし、皆さん当然の前提とされてきたのではないかと思われるわけですが、元の文章のままですと、読み方によっては、新司法試験の実施時に別ルートも同時に設けて、移行期間中は現行の司法試験と3本立てで走るというふうに誤解される恐れもあると思われましたので、この語句を追加することによって本来の趣旨を明確にしたものであります。
7ページの1番目の(マル)の受験回数制限、これは中間報告でも書いていたとおりであります。ただし書きを付けましたのは、これはある意味で当然なんですけれども、3回で受からなかった人も、もう一回法科大学院に入り直して勉強し直してくれば受けることができる。これは当然のことで、そこまで妨げるものではないということを確認的に書いたものであります。
その次の「4 移行措置」なのですが、ここはどの程度の期間、経過措置として両方並存させるのか、これまで年数を明示していなかったのですが、常識的に考えて5年程度ではないかと思われますので、その旨を明示してはいかがかということであります。
その次の(マル)は懸案の丙案の取扱いなのですけれども、これは移行措置と絡めて検討するというのが中間報告での確認だったと思いますが、新司法試験に切り替えて、後で述べますように移行期間の間に現行試験の合格者をだんだん減らしていくということにするのならば、少なくともこの切り替え時には丙案を廃止することにするのが適切なのではないか。
あるいは、現行試験を受験している人の不利益をできるだけ小さくするとともに、これから法曹を目指そうとする人には、新たに発足する法科大学院の方に入ってもらうことを促すという意味からは、より先駆けて、後で述べますような司法試験の合格者が1,500人に達する年に丙案は廃止してはいかがか。それが、この2つの案を示した趣旨でありまして、御議論いただきたいと思います。
ここまでが大体、法科大学院と司法試験に関することです。法曹人口については区切って、また後で御議論いただくということですけれど、これまでの事項との関係と、この区切りを入れた後の議論の前提として、8ページの法曹人口の拡大の最初の(マル)だけは、今のブロックの中で御議論いただいた方がよいのではないかと思われますので、便宜上その点も御説明申し上げます。
これは、法科大学院の発足、学生の受け入れ時期をいつにするかということでありまして、ここでは2つの案を示してあります。そのうち2003年という案は、鳥居先生がかねておっしゃっている御意見なんですけれども、お手元に、こういう半ペラの紙を配ってもらっていると思います。これは事務局の方でつくっていただいたものですが、それぞれの案につき、これから法科大学院を設立して、学生を実際に受け入れるまで、どういうことをしなければいけないのかという概要を示したものであります。御覧いただければ分かりますように、開設を2003年4月とする場合には、仮にそのための関連法案が来年の通常国会に出されてそこで成立するということを前提にしたとしましても、法科大学院を立ち上げようとするところで準備する期間が、正式には平成14年7月か8月ごろからくらいになってしまい、つまり1か月とか2か月くらいしかない。カリキュラムの検討などは、事前に準備しておけば済むかもしれないのですが、一番難しいのは人事でありまして、これは設置認可の申請をするときには具体的な人を採る計画を示さないといけないわけです。そして具体的に人を採るということになれば、新しく採ることもあればよそから来てもらう人もあるわけで、よそとも交渉をして、そういう内諾を得て申請しないといけない。とられた方は、ドミノじゃないんですけれども、人が減るわけですので、そちらも手当をしないといけないということで、とても2か月とか3か月とかでは難しいのではないか。
そういうことを考えますと、余裕をもって準備する、余裕と言いましてものんびりというわけじゃないのですけれども、そのためには2004年4月という方が現実的な案かもしれないということで、以上の2案を示したわけです。
御注意いただきたいのは、いずれについても、来年の通常国会で関連法案が成立した場合という前提での話でして、それが先にずれますと、この後の案すら難しくなる。そういう懸念もないわけではないということであります。
以上が今までの部分の御説明です。
【佐藤会長】 どうもありがとうございました。
それでは、この「たたき台」に基づいて意見交換を行いたいと思いますが、井上委員のただいまの御説明につきまして、御質問等がありましたら、意見交換の中で適宜いただければと思います。
なお、法曹養成制度の関係では、前回の審議会の際にお配りしました自由民主党司法制度調査会の中間提言、それから日本弁護士連合会のシンポジウムの資料に加えまして、本日は文部科学省において検討を進めてきておりました法科大学院におけるカリキュラムに関する検討結果、それから法曹三者から提出いただいた法科大学院への実務家教員の派遣に関する考え方を席上お配りしておりますので、これらも参考にして意見交換をしていただければと思います。
意見交換に入りたいと思いますが、貴重な時間を頂戴することになって恐縮ですが、なぜ法科大学院ということに至ったのかという基本的な考え方について、中間報告、それから3月2日の審議を踏まえて、少し述べさせていただきたいと思います。
これからの日本の目指すべき方向として、自律的な個人を基礎とするより自由で公正な社会を築く、そのためには、法の支配を徹底し、法の支配、法の精神を血肉化する必要がある、そのためには、司法が大きな役割を果たさなければならない、ということであったと思います。
これに応えるには、司法制度改革を断行しなければならないが、制度を生かすものは結局人であるという認識の下で、質量ともに豊かな人材、法曹を得なければならず、そのためには、法科大学院、仮称でありますけれども、法科大学院を含む法曹養成制度を整備する必要がある、という結論に立ち至ったということかと思います。要するに、プロフェッションとしての法曹の養成に腰を据えて取り組む必要があるということであったかと思います
周知のように、西洋では法曹は医師と並んでプロフェッションの典型とみなされてきております。その特徴は、よく言われるところですが、3点になるかと思われます。
1に、公共奉仕の精神。
2に、高度の学識に裏付けられた専門的技能の追求。
3に、自律的な団体ないし組織の存在。
我が国の場合、お医者さんについては、大学医学部、医科大学で6年間の基礎、臨床医学を系統的に学ぶことが医師試験の受験資格とされておりまして、試験合格後も一定期間の研修を経て始めて医療に携わることができるということになっております。
法曹については、法律学を系統的に学んだかどうかということを問わずに、わずかな基礎的な教科科目の試験に合格し、司法修習をすれば法曹資格を取得できるという構造になっております。
司法試験がいかに難関で、また、司法修習の実務訓練がいかに効果的に行われてきていると言いましても、プロフェッションとしての教育として十分であったのかどうかという問題が、これまでずっとあったんではないかと思われるわけであります。
プロフェッションとしての法曹という伝統が欧米に比べてやや稀薄であるということとも関係していると思いますけれども、中間報告でも述べていることですが、これまでの大学における法学教育が、基礎的教養教育の面でも、法学専門教育の面でも必ずしも十分でなかったということでございます。
しかも、司法試験の厳しい競争により、これも中間報告で指摘しているところでありますが、ダブルスクール化とか大学離れが生じたということでございます。
私どもの審議会は、法曹を国民の社会生活上の医師というように位置づけて、プロフェッションとしての法曹という伝統をつくり上げていくことが必要であるという認識を共有するに至ったんではないかと思われるわけであります。
そして審議会は、司法試験という点のみによる選抜ではなくて、法学教育、司法試験、司法修習を有機的に連携させたプロセスとしての法曹養成制度を新たに整備することが不可欠であるとしまして、その中核を成すものとして、プロフェッショナル・スクールとしての法科大学院を設けることが必要かつ有効であると中間報告でうたいました。
このことは3月2日の審議会でも確認されたところでありまして、更に自由民主党司法制度調査会の中間報告でも、この点についての御理解をいただいたところと思っております。
試験万能主義が我が国の教育に歪みをもたらしてきたということはつとに指摘されてきたところでありますが、プロセスとしての法学教育論は、その反省の上に立っていると思うわけであります。
医学の領域では、既に述べましたように、点としての医師試験に合格すればよいとは決して考えられておりません。基礎臨床医学を系統的に学ぶことが受験資格とされておりまして、まさにプロセスとしての医学教育が必須の前提とされております。
更に付け加えれば、この医学の領域においても、なぜ自分が医者になるのかの自覚を欠く者がいるということが指摘されておりまして、学部で幅広い教養を身に付け、なぜ自分がお医者さんになろうとするのかを十分に自覚し、プロフェッショナル・スクールに進むというふうにすべきではないかと、お医者さん、医学関係者の中でもそういう声が聞かれる昨今であります。この点は日弁連から提出いただいたペーパーの中でも触れられてございます。
21世紀はよくプロフェッションの時代であると言われます。すぐれたプロフェッションを養成できるかがその国の力を左右するというわけであります。金融制度の問題や知財関係等に関連して、このことがようやく我が国でも理解されつつあるように思われます。教育改革国民会議が教育を変える17の提案というものを行いまして、その中の1つとして、リーダー養成のため、大学、大学院の教育研究機能を強化するということを掲げております。その具体的内容として、経営管理、法律実務、金融、教育、公共政策などの分野の専門家の養成を行うプロフェッショナル・スクールの整備が必要だというようにうたっております。更に鳥居委員が会長を務めておられます中央教育審議会に4月11日に町村文部科学大臣からの諮問がなされまして、その中に職業資格の関連も視野に入れた新しい形態の大学院等の整備の在り方というものが含まれておりまして、このことは内閣の意向を示しているものと思われるわけであります。
このように我々審議会として、プロフェッションとしての法曹の確立の必要という認識を共有しておりますけれども、同時にプロフェッションというものの限界にも十分の考慮を払い、国民の批判的な目に開かれたものとし、国民とプロフェッションとのコミュニケーションの場を確保すべく、弁護士改革、裁判官改革、検察官改革等の改革の必要をうたったところであります。
法科大学院も外に向かって高い垣根をつくり、自分のうちにこもるものではあってはならないことは当然であります。法科大学院における教育は理論教育と実務教育との架橋を図るものでありまして、実務家教員の参加が不可欠であります。この趣旨は中間報告でうたいました。純粋理論も学問には必要ですけれども、現実と真剣に立ち向かう中で、学問は発展するものであると思っております。
法科大学院は法曹実務家のみならず、行政や企業の関係者とも交流を深める中で、中間報告の言葉を使うならば基幹的な高度専門教育機関として、その役割を果たすことを期待したいと思う次第です。
さまざまな政府の報告書、それからこの審議会でのヒアリング、更には今日配付されている法曹人口に関する最高裁や法務省のレポートもそうでありますけれども、それらを通じて我々は好むと好まざるとにかかわらず、新しい時代環境、時代状況に突入しつつあるということを感得するわけであります。この点についての認識の深さ如何によって、改革の切迫感に違いが出てくるであろうと思います。
いずれにしましても、この改革は一朝一夕にできるものではないと思いますけれども、何をしなければならないか、何を目指すべきかということを明確にした上で、着実に歩むということを決断することが肝要かと思う次第です。
日本の大学人が何をやってきたのかと批判されれば、私もその一人としてその批判を甘んじて受けなければなりませんが、若い世代が来るべき法学教育の在り方に向けて努力しているということも事実でございます。先ほど井上委員が触れられたモデル案なども、この若い人たちの検討の結果でありますし、私の同僚である山本敬三教授も、最近、ロースクールを視野に入れた民法の本を出しておられます。若い世代がそういうように努力してきているという気持ちをエンカレッジしていただきたい。日本の社会は本来もっとダイナミックで創造性に富んでいると思われるわけでございまして、こうした観点に立って、この法科大学院をプッシュしていただきたいと思うのです。私のやや個人的な感想も含め、これまでの審議を踏まえ、お話申し上げました。よけいなことを申しているとお叱りを受けるかもしれませんが、考えていることの一端をお話しさせていただきました。
早速意見交換に入っていただきたいと思います。
【水原委員】 高尚な御高説を拝聴した後で、大変拙い意見を述べさせていただきますが、「たたき台」で示されましたこの案は、各般にわたって、中間報告後の当審議会での意見交換、それから、各界の意見を踏まえて検討吟味された結果を、大変よくまとめていただいたと思っております。
そういう意味で私は基本的にこの「たたき台」案には賛成でございますが、三点ほど申し上げます。
それは司法試験受験資格の問題。司法試験の内容の問題。受験回数制限の問題。この三点について若干の私見を述べさせていただきたいと思います。
まず、司法試験の受験資格との関係でございますけれども、私も将来的には法科大学院が法曹養成制度の中核となっていくものと期待いたしております。ただ、法科大学院に行けない人も相当いると思いますし、そのような人のためには、この「たたき台」のように、予備的な試験を経た上で法科大学院修了者と同じ試験、多分論文式の試験だろうと思いますけれども、これを受けさせるということでよいと思っております。法科大学院を経た者とそうではない者との評価は、それらの者が法律家となって社会に出てから真価を問われるものでございまして、ここはまさに競争であって、法科大学院を出た者はそうではない者よりやはり優秀だという評価を受けられるよう、大学院側は頑張るべきでありましょうし、そうなればおのずと将来的には法科大学院からの法曹資格取得が原則だという方向に進んでいくのではないかと思います。
そういう意味では、予備的試験の点につきまして、「たたき台」の6ページの後の方に、先ほど井上委員からも御紹介がありましたが、「法科大学院を中核とする新たな法曹養成制度の趣旨を損ねることのないよう配慮しつつ、例えば幅広い法分野について基礎的な知識・理解を問うような予備的な試験」を行う。この制度に対して私は大賛成でございます。
司法試験の内容についてでございますが、これは6ページの中ごろにありますけれども、今のような憲法、民法、刑法の3科目の短答式や、2時間2問の論文式試験だと、法科大学院に行かないものは、試験に出る範囲しか勉強せずに、論点丸暗記の受験勉強しかしないことは容易に想像されます。これまでの実績からしてもそのようになるのではないかと思います。
法科大学院の意義は、先ほど会長が御所見を縷々述べられましたけれども、試験科目のみではなくて、法律家に必要な、深く広い教養を身に付けさせることにもあると思いますので、そのように幅広く勉強する法科大学院生が司法試験の科目のみしか勉強しない者との間で試験という場面のみで競争するのはむしろハンディができるのではないかと思います。
また、予備的試験のルートが経済的事情等で法科大学院に行けない人のみではなくて、いわゆる超特急組のバイパスに使われる恐れもあると思われます。
そこで、できるだけ弊害をなくしながら、法科大学院以外の者にも道を開くための知恵の一つとして、予備的試験は憲法、民法、刑法の3科目に限らずに、幅広く法律の基本的な知識や理解を問うものとしたらよいと思います。
また、現在、大学を出ていない人のために、法曹への道を広くするために、教養を問う、いわゆる一次試験がございますけれども、私は一つのアイデアとして、予備的試験と今の一次試験を合体させて、教養や語学力も併せて問うということも考えていいのではないかと思います。大学を出ていない人にとって、今の一次試験に加えて、更に予備的試験を課すということになりますと、ハードルが高くなり過ぎるようになると思いますし、法科大学院以外からの司法試験を受けようとする者が、幅広い教養等を身につけることを促すということにもつながると思いますので、是非そういう案を提案したいと思います。
それから、論文式の試験でございますけれども、先ほど井上委員から、例えば、ということだということで説明がございましたが、法科大学院での教育内容に沿って抜本的に見直し、論点丸暗記では対応できないような重厚なものにすればよいと思います。ただ、「たたき台」では、例えば、ということで、公法系、民事系、刑事系という3つの系列を例示しておりますけれども、法科大学院の教育内容等がまだ定まらない段階では、このような例示をしますと、一人歩きしてしまうのではないかという危惧の念を持っております。
それでは、ほかに例示の仕方があるのか、あるいはどういうふうに記述したらいいのかについての対案は持っておりませんけれども、これに拘束されるような、これが一人歩きするようなことがあってはいけないので、例示はしない方がいいのではないかというのが私の意見でございます。
最後の一点ですが、受験回数制限の問題でございます。これは7ページの最上段に書いてありますけれども、基本的に3回程度でよいと私も思います。しかしながら、たたき台では法科大学院修了者が3回制限で、そうでないものについては制限がないように読めます。それはそういう意味でよろしいのかということでございます。それでよいのかどうか疑問を感じております。
また、このパラグラフには、法科大学院の再履修者にも触れてられておりますけれども、3回受けて受からなかった者は、もう一回再履修すればいいじゃないかと言っておりますけれども、法科大学院に入り直して受験するというのは余り現実的ではないような気がいたします。私はむしろ法科大学院履修者であろうが、そうでなかろうが、同等程度の回数制限をしておいて、その上で一定の年限が経過したら、これは何年にするか、3回受験いたしまして、それから5年にするのか、10年にするのか、それは私は意見は決まっておりませんけれども、経過したならば司法試験に再挑戦できるという趣旨を盛り込むことができないだろうかという感じでございます。若いころ一旦受験して3回失敗したけれども、社会人になって経験を積んだ後に、是非挑戦したいという人については、むしろ歓迎すべきではないか。その間のいろいろな社会的経験が法曹として役に立つのではないかという気がいたしますので、そういうことも考える必要がなかろうか。
大変長時間、意見を述べさせていただきましたが、そういうことでございます。
【佐藤会長】 どうもありどうございました。井上委員、今の点についてどうぞ。
【井上委員】 一番目は御意見ということで、二番目の新司法試験については二つおっしゃったと思うんですが、予備試験の中身と、公法系云々の例示の問題ですね。予備試験につきましては、この予備試験を経てというのも、あくまで一つの考え方ということで、これだと決めているわけではないものですから、この段階で中身をどこまで書けるか、むしろ控えたというのが正確なところです。
私個人の意見を申し上げれば、今のような一次試験の教養試験とかが果たして適切かどうかということも含めて、考え直さないといけないと思うのです。下手をしますと、教養試験用の予備校というのもあり得ますので、果たしてそれでいいのか。あるいは、それと排他的な関係には立たないんですけれども、法科大学院の入試には、適性テストというのを実施するということを考えているわけで、そういうものを受けてもらうというのも一案かなと思うんです。これは法曹となるというか、勉強すれば法曹となる基礎的な能力というか、論理的な思考能力とかいったものですが、それを試すというのも一案としてはある。そういうことも含めて、予備試験を経てということにするとなれば、その中身を十分詰めないといけない問題だろうと思います。
もう一つの公法系云々という点は、確かにそういうふうに書けば、例示と注記してあっても、例えば文部省の検討会議の報告でもカリキュラム案をあくまで一つのモデルとして示してあったのですけれど、一人歩きして、自分の専門である科目は載っていないぞというようなお叱りを、偉い先生から私も直接受けたことがありますので、そういう御懸念はよくわかります。ここの趣旨としては、放っておきますと、従来の六法科目などについて論文試験の中身を変えるだけで対応するということにもなりかねない。それでは元のもくあみになるかもしれませんので、従来の科目割りに必ずしもとらわれずに、複合的、複眼的な授業内容にし、新司法試験もそれに対応した試験内容にするということを考えていくべきではないかという趣旨なのです。もし公法系云々というのがちょっと強過ぎるとすれば、「必ずしもこれまでの科目割りにとらわれずに」というような表現でもいいのではないかと思います。
受験回数制限の点についても、予備試験を経てというのは例示にすぎない。ですから、それに決めたわけではありませんので、そちらのところを経てくる人についてどうするのかというのは踏み込んで書けなかったのです。ですから、そこはオープンの事柄でありまして、反対解釈をして、そちらの方については受験回数などは全く考えないという趣旨でもない。そこは今後の問題だということなんです。
また、3回落ちた人の再履修の点ですが、これは、再履修をしろと言っているわけではなくて、もう一回入り直して、勉強し直し、その上で受けるということは自由ですよという趣旨でして、それに加えて、水原委員がおっしゃるように、一定年限経てば、例えば予備試験を経て、司法試験を受けるという道を開くというのも一案だとは思います。ただ、その場合には、予備試験を受けて司法試験というルートの対象をどういうふうにするのか。本来、経済的な事由で行けない人とか、十分な社会経験を積んで、行かなくてもいいじゃないかという人を主に対象にした制度だとしますと、その要件に当たらないと、一定年限が経てば自動的に受けられるということにはならないだろうと思うのです。その辺の仕組みとの関係で、そこのところは考えていかざるを得ないのではないかと思います。
【石井委員】 大変うまくまとめていただいていると思いますが、私としては少し付け加えていただきたいと考えている点があります。法曹養成制度の中でやはり国際的な視野に立って物事を考えられる法曹の育成ということをこの際もう少し強調していただきたいと考えております。国内の仕事だけやって、いわゆるドメスティックで一生を終わるのだからそういう必要はないという考えがあるのもわかりますが、これからは国際化の波が本当にすごい勢いで押し寄せてくるわけですから、今、申し上げたような意味の新しい法曹育成ということを何らかの形で法曹養成制度の中に盛り込んでいただきたいと思っております。
特に問題になっていることで、法曹養成制度の中に入れるのが適当かどうか迷うところですが、今以上に倫理観のある人材の育成ということも、何らかの形で入れておくということが必要ではないかと考えております。
それから、飛び級のお話がありましたが、私も大賛成であります。しかし、水原委員が言われたように、悪用については、十分考えなければいけないと思っておりますが、原則として、飛び級ということをできるだけうまく利用していくということをお考えいただいてもよいのではないかと考えております。
最後に法科大学院のことですが、先ほど学位という話が出ておりましたので、どういう名前の学位かわかりませんが、もし教えていただけるようでしたら、お願いしたいと思っております。
それから、法科大学院の名称の件は、前から度々申し上げておりますので、また言っているのかと言われると思いますが、正式に決まるまでは「(仮称)法科大学院」という表現にすることで決めているわけですから、先ほども佐藤先生がわざわざ「(仮称)」とおっしゃってくださっているのにも関わらず、このようにペーパーになって出てくると、「法科大学院」と必ず一人立ちして、「(仮称)」というのは全部抜けて事務局から出てきますので、事務局の方にとっては、面倒くさいのはわかりますが、「(仮称)」は必ず入れるようお願いしたいと思っております。
これはワープロで法科大学院と押すと、そこに必ず「(仮称)」が入るようなシステムを作っていただければ、法科大学院と書くと必ず「(仮称)」が出てくることになります。システムとして極めて易しいことですので、是非お願いしたいと思います。
以上でございます。
【佐藤会長】 国際的視野とか、倫理観とか、具体的にこの辺はこういうようにというのがありますか。
【井上委員】 中間報告でも、倫理観については、教育目標というところでうたっていますし、国際的視野というのは、あるべき法曹像について書いたところで、かなり出ているものですから、当然の前提として考えていました。今回お出ししたのは要点だけ書き出したものですから、最終報告の中では、教育理念というものなども当然盛り込むことになると思います。学位については、どういうものにするかは、今後の検討課題だと思います。別の学位をつくるかどうかも含めて、これは恐らく鳥居先生のところで。
「法科大学院(仮称)」につきましては、申しわけありません。事務局の責任というよりは、我々のチェックミスでして、常に「(仮称)」とつけているのもやや面倒なものですから、うっかりしました。
【北村委員】 伺いたいことが五点ばかりあるんですけれども、まず法科大学院の入学時期なんですが、これは4月というふうに出てきているんですけれども、9月入学ということもあり得るのかということをお聞きしたい。特に留学生を入れるとなりますと、そういうこともあるのか。ただ、新司法試験がいつなのかによって、ちょっと難しいという部分はあるかと思っています。
それから、6ページに出てきている法科大学院を経由しない者ということで、移行措置の終了後について、これを配慮しつつ行うようなみたいなことも書いてあるんですけれども、移行措置が終了しない間の者については、法科大学院に行くか、今までの司法試験を受けるかということです。ところが、今までの司法試験を受けていますと、試験自体が違っているときに、新たに勉強する人は非常に危険であるという部分があると思うんです。ですから、私は移行措置の間もそういうようなものがあるんだったら、やったらどうなのかと思います。また、こういう受験生に対しては、口述重視というような考え方はないのかということも伺いたいんです。法科大学院以外の人についてです。
もう一つは、実務家教員のことなんですが、先ほど法務省と最高裁の方から身分を離れて行くかどうかということも出てましたけれども、これは大学にいる者の要望といたしまして、是非ただで来ていただきたいというのが要望なんです。ですから、法務省は法務省で公務員の給料をいただいて、最高裁の方は最高裁の方で判事の給料をいただいてというのは、結局、国庫補助で出すか、そこのところで出すかというような違い。今、大学で公務員の方が教えに来てくださっているというのがあるんですけれども、ただです。というのを一応申し上げておきたいと思います。
もう一つは、新司法試験、3回の回数制限ということで、これで一応合格者の方はずっといくんですけれども、不合格になった人について、どういうふうな形で考えていくのか。最後までずっと不合格で残る人がいますね。そこのところについて審議会としてはこういうこともあると言うことは必要ないのかということを伺いたいということです。
五点目ですが、司法修習についてなんですけれども、これはどこで申し上げようかなと思っていた部分があるんですが、司法修習のときに、今、国家公務員のお給料をもらっているようなんですけれども、これは廃止の方向でいったらどうかなというのが希望なんです。
それに代わるものとして、奨学金を充実しまして、その返済というのを、例えばそこを修了して法曹人になって、なかなか人が行かないようなところに積極的に行くとか、そういう仕事をするとかといったときに、奨学金免除規定を置くとか、あるいは優秀な人に対しては、給付奨学金を与えるとか、いろいろなことをやっていけば、それで対応できる部分というのはあるのかと思います。
ただ、司法修習のときに地方へ行きますので、住宅費の補填だけは必要かなということは思っているんですけれども、これで3,000人、4,000人というふうになるんですから、思い切ってそこのところの検討をお願いしたいなと思います。
【佐藤会長】 井上委員どうぞ。
【井上委員】 むしろ御意見をいただいた方がいいと思うのですけれども、9月入学というのは、一般的には、これからの制度設計の問題ですから、可能性はないわけではないと思います。しかし、他の大学制度との見合いというか、整合性の問題があるので、確かに留学生の受け入れということもあるわけですが、現実にメインは日本の学生が対象ですので、そうなりますと、3月末に卒業して9月入学ということでいいのかどうか。そういうことを含めて、大きな視点から検討しなければいけない問題だろうと思いますので、今ここでそういうふうにするというわけにもいかないと思います。
二番目の別ルートの開設時期については、確かに三本立てということも理屈の上では考えられなくはないのですけれども、やはり現行の試験というオープンなものが移行措置期間は残るわけですので、そちらでやっていただく。むろん、おっしゃるような問題はあると思うのですが、前倒しにしても、現行の司法試験か別ルートかの選択ということになれば、同じ問題は生じるのです。結局切り替えのときに、どういう手当をするかということで。
早目にどういうものになるのかということを告知をしておいて、滑り出しをスムーズにするということや、できるだけ不都合が起きないように工夫をするということしかないと思うのです。
三本立てにすればしたで、また、別の問題が起こってくる。両方受けていいのかと、いろいろあるわけで、三本立てでいくというふうにもいえないのじゃないかと思います。
これまで皆さんの多くも、そう考えてこられたのではないかと思うんですけれども、移行措置が終わったところで、現行試験のルートがなくなるわけですので、そこで別のルートを開くというのが筋かなという感じがするのです。
また、口述重視という点は、これは試験の方法として何が適切なのかという問題でして、予備試験の内容としてそういうものをやるというのも一つのアイデアですし、予備試験を経て新司法試験ということではなくて、全く別の方法ということもあるかもしれない。そういう問題だと思うのです。
三番目の点は私がコメントすることではありませんが、ただで働いてもらうというのは、ちょっと虫がよすぎるんじゃないかと思いますね。大学の方でも、教えてもらうわけですから、応分の負担をしなければいけない。全く自前だけでいくというのは難しいかもしれませんが。
【北村委員】 非常に難しい、公務員が云々とかというところがありまして、ほかの省庁の人はそうやって無料で来ている部分もあって、整合性を見ていかなければならない。
【井上委員】 そこは、専任にするのか、併任にするのか、客員にするのか、非常勤にするのか。そういったこととの見合いで考えていくべき問題でしょう。
四番目の、3回の不合格については、さっき触れたことではないかと思います。
五番目の司法修習の給費制ですが、これは議論があり得るところで、むしろここで御議論いただいた方がいいのかなと思います。私も、その議論は当然しないといけないことになると思うのですが、その場合も、いきなり廃止して奨学金にするという考え方もあれば、もう少し穏やかに一定の補助を与える。給与とか賞与とか与えるという今の制度ではなくて、そういう中間的なアプローチもある。そういうことを含めて考える必要があるだろうと思います。
【北村委員】 3回の場合はちょっと言っていることが違うんですけれども、受けてだめだった人は、どういう方向に進んでいくのかということなんです。
【井上委員】 非常に割り切って言えば、例えば医師試験などでも受からない人というのはあるわけですね。どういう試験制度、資格制度でもあるわけです。それを制度として組み込んで、そこまでケアするのかどうかという問題だと思うんです。私は新しい制度を立ち上げるときに、そこまで最初から組み込んでおくのはちょっと無理じゃないかと思うのです。
【北村委員】 これは割とたくさんの人数が出てきてしまうという部分がありますね。
【井上委員】 そうならないように、各法科大学院としては一生懸命頑張ってもらう。
【北村委員】 3割くらいは出てきてしまうという部分がありますので。
【佐藤会長】 今の段階で、おっしゃったようなことを組み込んで考えるというのは。
【北村委員】 でも、こういう道がありますよとかいうふうに言ってあげるというのはいいのかなと思いますが。
【井上委員】 具体的にお考えを示していただければ。
【北村委員】 言いにくいから。
【井上委員】 それはずるいですよ。
【佐藤会長】 北村委員もおっしゃったように、全体のシステムをどうするかという中でこの問題を考えた方がいいと思います。これだけぽんと取り出して議論しますと、非常に何かセンセーショナルに受け取られることになります。
【北村委員】 ですから、どこで議論するかという問題はあるんです。
(マル)鳥居委員 今回の「たたき台」は私は全体として我々が今まで議論をしてきたことを受けてまとめてくださっていると思いますが、幾つか大きな問題点だけを申し上げたいと思うんです。
一番大きな問題点は、受験資格の問題で、本道は点の教育、点の試験からプロセスへの改革と、そういう法曹養成制度の改革という趣旨から考えてつくられた法科大学院構想だと思いますので、その本道を余り外すべきではないと思うんです。私は別ルートというのは、原則としては余り賛成できません。その別ルート案というのが、どういう理由で出てきているのかということを振り返ってみますと、一番大きな理由の一つとして、経済的な事情で法科大学院に進学できない者というカテゴリーがあるわけです。これからの時代の高等教育制度の下で、経済的事情で、例えば大学あるいは大学院に進学できないという状況に追い込まれる人というのは、そんなにたくさんいるんだろうかと考えると、まず社会的な発展段階から考えてそんなにいるはずがない。
第二には、仮にそういう経済的事情に直面している方がおられたとすれば、それは社会的に、奨学金でありますとかあるいは補助でありますとか、そういう形で救ってあげて、理想の「点からプロセスへ」の転換を遂げつつある法科大学院での教育の機会を与えてあげるというのが本道ではないかと思います。
そういうことを申し上げた上で、私は別の意味でルートとして考えるべきは二つありまして、一つは生涯教育の時代が来たということだと思うんです。長いこと、例えば20代、30代である職業で全力投球して働いた方が、社会的使命感に目覚めて、ローヤーになろうという決意をすることもあるわけです。あるいは、国家公務員としてどこかの省庁で働いておられた方が、自分は法律的な知識をもっと持たなきゃいけない、その上でできれば法曹資格も取った国家公務員になろうという決意をすることもあると思うんです。それから、自衛官として働いている方が、法律上の知識を必要とする場面はこれからどんどん出てくるわけです。医師もそうです。
そういう方々が法科大学院にすべて入らなければいけないかというと、例えば国家公務員のかなり法的な分野で仕事をしていた人とか、あるいは企業の法務部門で働いた経験のある人がいたとすれば、それは相当程度、いわゆる試験を免除して、法科大学院の一部の科目履修生として受け入れてあげることができる。そういう制度が考えられるんじゃないかと思うんです。
今回忘れているのは、何か、別ルートに固執する余り、科目履修生という方法があることを忘れているんじゃないかと思います。
もう一つ大事なことは、法科大学院が一回できてしまいますと、そのカリキュラムが毎年同じだと。今までの大学と同じことがまた繰り返されるという前提に立てば、確かにそういうことが言えるかもしれませんが、これからの時代はダイナミックに毎年カリキュラムは変わるべきなんです。
そうすると、10年前に受けた教育とは違う教育を是非受けたいと。10年前のプロセス教育では理解できなかった新しいプロセス教育を受けたいというんで、10年後にもう一回、既に弁護士をやっている人が、あるいは裁判官をやっている人が、特定の科目履修生として入ってくることだって考えなきゃいけない。そういうふうな角度から考えて、この受験資格のところは、基本は「点からプロセスへ」ということを考えると、法科大学院修了者が司法試験を受けるのを大原則とする。あと今私が申し上げたような意味の科目履修生なら認めるというのだったら、私には理解できるんです。
それ以外のところについては、話が散ってしまうといけないので、ここで一回やめます。
【髙木委員】 率直に言ってこの議論は論理矛盾に入っているんだろうと思うんです。一発試験主義の弊害がいろいろあって、それではプロセスでやろうとなった。とりわけ政党なり政治家の皆さんに対して、こういうふうに発想する論理なり、その延長にあるロースクールの議論を有効に説明し得ず、説得できなかった。そういう意味では、バイパス論というのは、この制度を突き詰めていくと、本質的にはないんだろうと思うんです。それは先ほど会長が言われたプロフッションの話や、鳥居先生の今の御議論に、私も感覚的には近いんですが、そうは言っても、長い間、一発主義でやってきて、機会均等だから、平等だからという論理で説明されることで、あたかも、バイパスは不可欠だ、みたいな議論を皆さんもされた。それがある意味で克服できないものがあるのであれば、経過的にどういう仕組みがあり得るのかという議論をすべきであり、論理的には、過渡的なものではないかなと思います。
ハードルが高いとか低いとかいろいろあるんですが、プロフェッションの世界というのは、ハードルの高さがそうそうぶれてしまってはいけない世界でして、例えば先ほどの予備試験のところの「実社会で十分な経験を積んでいる」というのは何を意味するんですか。企業法務なり行政庁で仕事をやっておられる人を指すのか。それでは、最小限、こういう制度を入れるにしても、「実社会の十分な経験」というのが、法科大学院で受けた教育に、ここでは「対置」という言葉が使ってありますが、本当に対置されるべきレベルに達しているのかどうか。そういう意味での検証がどういう方法で行い得るのか。ここには適切に審査するよう、具体的にこれから詰めなきゃいけないんでしょうが、そういうことがないまま、例えば企業法務の人たちがこの対象だということになりますと、まさにある部分のレベルについての検証のないバイパスということになりかねないだろうと懸念されます。
そういう意味では、企業法務の中でも、勿論経験年数だとかいろいろございますし、それぞれの企業の法務の対応の仕方によるでしょうが、一般論で申し上げれば、さっき鳥居先生が言われたように、法科大学院で教えるであろうある部分については、そういうレベルをクリアーできているけれども、あとの部分については、法学既修者という言葉が一部に使ってありますが、法学既修者のレベルをクリアーされていて、法科大学院にその分については法学既修者として受け入れられるレベルにすぎないという面もあるんだろうと思いますし、法科大学院が適性を見る意味で、入学時に課すものも、これは予備試験の中にそういうものを組み入れるということもあるのかもしれませんが、その中身はどうされるのか、などいろいろ考えなければなりません。
さっき言いました新司法試験に対応するという意味で、「社会的に十分な経験」を積んだ人たちが、そういうレベルに到達しているかということを検証するという意味では、一種の検定試験、そんなものも制度的に組み入れていかないと、プロフェッションのある部分が歪んでしまう。その歪むことのデメリットは国民が被るわけですから、かつて水原さんが言われた、レベルが低下しては大変だという御指摘もあったわけですから、そういう意味では、実社会で十分な経験を積んでいる人が、十分そういうレベルに達し得ることについては何も異論はございませんが、検証がきちっとできないままそういうふうに流れていくということであれば、ちょっと筋が違うかなと思います。
経済的事情と二つ理由を挙げられて、「最後に」などと書いてありますが、これがかなりの太さのチャンネルだということで認識されてしまったら、法科大学院に本当に学生さん行くかなと思います。十分な、というか、「お前社会に出ていないからだめだぜ」という理由で、いわゆる特急券指向組を排除できるのかどうか。言葉としてはいいんですよ、「趣旨を損ねることのないように配慮」する。趣旨を損ねることのないような配慮が、対抗する論理なしに行い得るのかどうか。そういう意味では政党の方のいろいろな御意見等もあって、苦心の末のお知恵だろうと思いますけれども、本質的にこれでいいのかなと思います。そういう意味では、過渡的にはこういうことだということくらいを言っておいて、将来は本当の意味でのプロフェッション養成に徹する仕組みだということは正論として言っておくべきではないか、感想みたいな、意見みたいなことですが、そのように思います。
【佐藤会長】 今の点、いろいろな考え方がある、大きな問題だと思います。
【中坊委員】 私自身も法曹の一人ですし、今、数多くの弁護士、裁判官、検察官を見ていまして、みんなが共通に大きな欠陥を有している。その欠陥は何かと言いますと、結局、視野が狭いんです。
この欠陥は何によって生じてきたかというと、まさに一発試験によって、修習という過程の中で、実務訓練だけ施してきて、本当の意味における実務教育がない。本当においしいタケノコを食べようと思ったら、地面の中で肥えた太いタケノコをつくらなきゃいけない。その地面の中に匹敵するような、非常に大きなタケノコが出てくるような地面の中の教育をしてこなかった。これが「社会生活上の医師」とか何とかおっしゃるけれども、本当にいい医者になれない最大の大きな原因だと思うんです。
そういう意味における法科大学院というのは、まさに実務と理論とを架橋するためにつくられてきたわけです。だから、基本的に試験に馴染まないものなんです。法曹となっていただくのに必要な資質の一つではあるけれども、試験に馴染まないもの、これを今養わなければ大変な過ちを犯す。
正直言って何人もの弁護士も見ていますが、私もそれなりに、例えば住管機構の社長になったりして、世の中を多少見てきました。共通に感じることは、その視野の狭さと硬直性、これが今法曹の持っている根本的な欠点なんです。それをまさに先ほど会長もおっしゃったように、そこを根本的に直すためにこのロースクールというものが生まれてきたと思うんです。それを今何とかして立ち上げなきゃいかんと言っているときですし、我々がこの議論に至る過程でも、ロースクール以外のルートはまさに例外的措置だという位置付けだった。それが少し積極的な位置付けまで変わってきました。そのときにも、理屈に合う範囲ということを言っていて、我々の基本理念は損なわないということになっていたと思うんです。
今回の発想は少なくとも予備試験という試験を想定する。しかも、その中では実社会の経験というものと置き換えておられる。私に言わしたら、ただの実社会の経験じゃないんです。もっと夢であるとか、幅広い理論とかいうものの中で、人格を形成していく、人間の大きな太いタケノコをつくる地面の下の教育をどうしていくかということが法曹の一番の根本問題だと思うんです。
今おっしゃるように、いろいろ御苦労いただいている経過はわかります。この案文を見ても、「例えば」とお書きになって、決して断定的にも決めないでいろいろ配慮されている。しかし、そんな例外を決めてしまって、それにいろんな疑心暗鬼を持ち寄って、ロースクールというのが本当に生まれてくるのか。これから新しい制度をつくるときには、例外とかいうものは別に考えるべきだ。そもそも我々が考えたのは、経済的に恵まれない人は、奨学金であるとか、夜学をつくろうという話だったし、先ほど鳥居さんがおっしゃったように、途中で変更する人はロースクールの方で考えればよいということになっていると思うんです。
今、日本の司法が二割司法に陥っている最大の原因というものが、司法試験の在り方にあった。今までの法曹養成の在り方にあった。まさに司法改革の一番の裾野、法曹養成の問題、人口と同様に、法曹養成の問題は、我々は司法改革の一番の基礎の問題なんです。ここでそんな妙な議論が入ってきて、不純物が入ってくるようなものにしてしまえば、今まで論じている司法改革に関する制度であろうが、いろんなものが全部が根底から狂ってくると思うんです。
今回の問題提起は、単に受験資格で出ているような問題だけれども、決してそうじゃない。まさに今回の司法改革のすべてを占う、根底にある大変な間違いを犯すものだと思うんで、私は今回の予備的試験、それから実社会で十分な経験を積んでいる者、この概念でこれが対置できるもの、理論的に言えば、この文書で対置し得るということはあり得ない。そこは根本的な発想が間違っておる。私はこの原案には非常に御苦労いただいたというのはよくわかります。特に政党の中でそのような意見が出てきたりして、大変な御苦労をいただいた成果の中において、このような御配慮をいただいているということはわかるけれども、これは絶対に入れてはいけない。今回のこのような物の考え方には基本的に反対です。
【鳥居委員】 一言だけ。
今、髙木さんと中坊先生とお話があったので、大体3人が同じようなことを言いましたが、もう一回重ねて強調したいのは二つあります。
一つは、このままいくとこの別ルートには必ず、予備校を経由して試験を受けようという若い人が必ず発生する。2人の言葉の中にもありましたけれども、そういう結果を生むこと明らかなんで、警戒しなければいけない。
もう一つは、医師の国家試験との関係で、このことを唱えておられる自民党の国会の一部の方々は何を考えているんでしょうか。もし、これを認めるんであれば、医学部を出ないでも、医師の国家試験を受けられるルートをつくるべきです。そうでないんであれば、これは認められないと私は思います。
【藤田委員】 私は基本的にこの原案に賛成で、付加する意見はほとんど水原委員がおっしゃった通りですので繰り返すことはないんですけれども、法科大学院構想で特に論点になっている受験資格の点についてはいろんな意見があるわけでありまして、私も大学で教えておりますし、労働委員会で大学教授の方たちとも一緒に仕事をしているんですが、かなりシビアな意見を言われます。
先週、弁護士十数人の会合で、法科大学院構想に警鐘を鳴らせ、とみんなに言われましたけれども、私はここまでくれば法科大学院で進む以外にないと思います。しかし、この問題についてはいろんな意見がある。その中で何とか現実性のあるやり方を模索した上でこの原案ができていると思うんで、双方から見て百点満点でないことは勿論でありましょうけれども、政策・制度というのは大体そういうものでありますから、このぐらいのところがやむを得ないのではないかと思います。
ただ、ちょっと気になりますのは、前の審議のときにも申し上げたんですけれども、2ページの「法学部以外の学部出身者や社会人等を一定割合以上入学させるなどの措置を講ずることとする」というところです。それは大学によっても、法科大学院によっても違うし、流動的なものだという御説明はわかりましたけれども、一つのガイドラインにしても、何かの一定割合の数値を表示する、別枠という形にするのはいかがかと思います。やはり法学部以外の学生が受験しようという気持ちになるように、誘導するのにとどめる方がいいのではないかと思います。
それから、石井委員の言われた国際性の点ですが、今までに議論してきたと思うんですけれども、これも先週日弁連の役員就任披露パーティーで、一流の渉外事務所の総帥から、法曹特に弁護士について国際性の議論が抜けているということを言われましたので、そんなことはないんだ、議論したんだということを言いましたが、表現などの点で、そこら辺をちょっと御留意いただければと思います。
それから、修習生の手当についてはここで議論するのかどうかわかりませんけれども、勉強しながら月給をもらうのはけしからんというのは非常に素朴に理解できるわけでありますが、法の支配の思想の社会への浸透とか、公益性とかを考えてのことだろうと思いますが、現実論として心配しますのは、法科大学院で2年ないし3年、更に修習で1年か1年半余分にかかるわけで、現状と比べてかなり条件がシビアになってきている。行政官優位のフランスでは、優秀な人材は行政官に集まると言われておりますけれども、そういうようなことになって、ぼんくらばかり法曹界に来ることになると、一番被害を受けるのは国民であり、弁護士であろうと思うんであります。そういう意味で人材の各分野への適正な配分ということを考えると、手厚い配慮をするということも考慮に入れた上で制度を考えていただいた方がいいんじゃないかということでございます。
【井上委員】 先ほど、御説明をした立場と離れて、私個人としてはさっきお三人がおっしゃったような原則論的な考え方であるということは、これまでの審議でも申し上げたとおりです。
ただ、今、藤田委員がおっしゃったように、違った見方、意見もあるということを考えますと、こういう選択肢もあるのかなということで、やや腰が引けながら御説明をしたわけです。本来の筋は、お三人がおっしゃったような方向で、大きく制度を構築していくというのが我々の目指すところであって、いろんなハンディキャップを負われている人達についても、法科大学院の枠組みの中で十分な配慮をしていく。このことは何度も強調しているわけです。
今回のまとめには出ていませんが、最終報告には当然それは入るわけでして、その方法としては一部の科目履修ということもあるかもしれないですし、再教育ということもあるかもしれない。そこをできるだけ豊かなものにしていこうというのが大きな筋だと思うわけですけれども、それと違うルートもあっていいんじゃないかとおっしゃる方は、それが本当にそのとおりいくのかどうか、確実ではないわけですので、そのルートに乗れない人も出てくるかもしれない。そういう人のために別ルートを設けておくべきだという御意見だったのじゃないかと思うのです。ですから、ここでの議論では大きな筋を外すということではなかった。政党方面の真意はどういうものかはわかりませんが、ここでの議論は、そういうことであったので、こういう修正というか案文にするということはあり得るのかなということで、私なども案文づくりに御協力した次第です。
もう一つ、藤田委員のおっしゃった法学部出身者以外の人の枠の問題ですが、これは何度も御説明しているんですが、こういう枠でも設けないと、努力しなさいよと言っているだけでは、結局、法学部出身の人だけで占められてしまうかもしれない。ですから、その枠は最低これ以上は取ってくださいということで誘導していくために必要なのです。制度としてそういう担保をしないと、多様性とか言っても結局実現しないのではないか。それを、志願者の動向を見ながら、できればそれを引き上げていくという形にしないと、理想は理想として実現していかないんじゃないか。そういうことで、こういう枠を設けたらどうかと前から申し上げているわけです。
【佐藤会長】 今の点ですけれども、医学の場合でも、多様なところから学生を取らなければいけないという考え方は非常に強いんです。さっきもちょっと触れましたけれども、アメリカの場合だとカレッジからメディカル・スクールに入ってくるわけですけれども、とにかくいろんなバックグラウンドを持った人が入ってほしいという思いがあるようです。我々の考えているロースクールの場合も、そういうことだろうと思うんです。従来の法学部からすっと上がってくるという姿、大学がそれだけを考えてもらっては困りますというサインとして、これは私は必要なことだろうと思っています。
【吉岡委員】 医者の場合も、昔は仁術と言われていましたので、今は患者を人間と思っていないような医者が少なくないという状況もありますから、そういう中で人間は人間として扱うという、ハートのある医療というのは必要だと思います。
それと同じことが法曹にも言えると私は思っているのです。いろいろな立場の、いろいろな分野から、多様な法曹が入ってくるということが法曹全体をよくするという考えの下に法科大学院(仮称)構想を持ってきたということで、「点からプロセスへ」という考え方もこれからの法曹にとっては非常に重要な要素だとは思っております。
私が前から言っているという「バイパス」という言葉は、私使ったことがないと思うんですけれども、チャンスはだれにでも与えられるということは必要ではないか。そういう意味で中間報告の中では、「やむを得ない」という書き方をしていただいておりますが、経済的、ほかの理由もあってやむを得ない理由で、4年制の大学も含めて、なかなか教育を受けられないという人の場合であっても、資質と必要なレベル、そういうものを獲得していれば、少なくとも試験を受けるチャンスはあっていいのではないかというのが私の考え方です。
ですから、当然恵まれていない事情の中で勉強していくわけですから、合格する人の数は非常に少ないと思われますけれども、やはり法の下の平等とか、職業選択の自由とか、そういうことを考えたときに、チャレンジするチャンスはあってもいいのではないか。結果的にどうなるかということとは別だと思うのです。それが中間報告の中に書いていただいたことだと思っています。
今回、井上委員に御努力いただいて、かなり苦労してお書きになったんだろうということはわかりますけれども、また、経済的事情や既に社会的な経験を積んでいるということで、幅が広がってしまっている。その幅が広がったところに持ってくると別ルートと言うか特急券、そういうルートが考えられるという恐れがあるわけです。そこは配慮しなければいけないだろうと思います。
ただ、どういう形にしても、恐らく予備校的なものはできると思うんです。そこで学ぼうという学生も必ず出てくると思います。その場合に考えなければいけないのは、試験の内容ではないかと思います。試験の内容が今までの予備校みたいに特定の試験科目だけを教えて、それだけやってきたらば合格してしまうという試験内容であったとすれば、今までの同じ繰り返しになってしまうと思いますので、試験自体を相当変えて、それこそ点からプロセスに行っているという内容で、いい資質の多様な法曹が選ばれてくるということの方が私は大切だと思います。
仮に予備校が法科大学院と同等の教育ができるんだとすれば、それは予備校ではなくて法科大学院をおつくりになればいいのであって、どこがつくってはいけないということではないですし、大学でなければいけないとも言っていないわけですから、違う形の法科大学院(仮称)をつくるという道筋は当然あるのではないでしょうか。
【佐藤会長】 まだ御議論は尽きないと思いますけれども、あと法曹人口の増員という大きな話が残っております。他の部分を含めて締めくくらないといけないんですけれども、一番御関心のある向きは受験資格のところだったと思います。
藤田委員、水原委員もおっしゃいましたけれども、二本立てでいいとは決して思っていらっしゃらないわけで、本流は本流として立ち行かなければいけないという点では私どもの認識は一致していると思いますが、そこはよろしゅうございますね。
別枠という言葉が適当かどうかわかりませんが、それについては我々としても積極的に考えようじゃないかということを3月2日の審議会で合意しましたけれども、しかし本流が立ち行くように考えなければいけないという点は共通の認識があると思います。
そういうふうに考えて、先ほどのような表現で適切なのかどうかという点については、最終報告に向けてもう少し考えさせていただきたいと思います。今日の段階ではこうしてというのは時間の関係で難しいことでありますけれども、そして、その趣旨を踏まえてうまく表現できるか自信はありませんけれども、考えさせていただきたいということで、今日のところはこれでよろしゅうございましょうか。
(「はい」と声あり)
【佐藤会長】 ありがとうございます。
他の部分はほぼ良いだろうということでしょうか。科目の辺りは水原委員から御指摘がありましたけれども。
【水原委員】 結構です。
【佐藤会長】 よろしいでしょうか。それから、今日お決めいただきたいのは、7ページの丙案の取り扱いと、それから法科大学院をいつ立ち上げるかというところなんですけれども、まず、いつ立ち上げるかにつきましては、鳥居委員の御意見がございますが、このペーパーを見ますと、さっき井上委員が触れられたように、平成14年に立ち上げるのは至難の技かなと思いますが。
【井上委員】 それに、万一、一部の大学だけが独走するということになると、非常によくないと思うのです。
【山本委員】 一番のネックは先生の確保だと思うんです。全くスキルがないと言うと失礼だけれども、講義はできますけれども、法科大学院に求められる教育能力ということからすると、一から勉強してもらう必要があるのではないでしょうか。
【井上委員】 そこまで行く前に、頭数をそろえるところで時間が掛かるのです。そういうプリミティブなところですごく時間が掛かるんです。ですから、2003年というのはちょっとそれはきついんじゃないかなと思います。
【山本委員】 早いに越したことはないけれども、余りに拙速にいって、かえって失望感を与えたのではね。
【佐藤会長】 それでは、この点はよろしゅうございますね。
それから、丙案の扱い方ですけれども、丙案の趣旨からしても、2案の辺りで。1,500 人になれば、ここで廃止は当然ということではないかと思うんですが、いかがでしょうか。
【中坊委員】 なるべく早くなくなるようにお願いしたいと思います。
【井上委員】 ちょっと先取って、1,500になるのは新司法試験実施より先だというようなニュアンスのことを言ったのですが、そこはこれから御議論いただくわけですけれども、もしそうなるとすれば前倒しになります。ほんの1年か2年の差だとは思うのですけれども。
【佐藤会長】 では、よろしゅうございますか。
それでは、先を急いで恐縮ですけれども「法曹人口の拡大」の方に入らせていただきたいと思います。井上委員、恐縮ですけれども。
【井上委員】 これも少しややこしいものですから、こんなに時間が押しつまってから非常に恐縮なんですけれども、なるだけ要領よく御説明申し上げるつもりですので、お許しください。
まず、8ページの上から2つ目の(マル)からですが、1,500人への増加、これは今まさに出てきたところなんですけれども、これをいつ達成するかということです。我々の中間報告では、年間3,000人を計画的にできるだけ早く達成するということにしておりますので、1,500人というのは、そういう流れから言いますと、途中の段階にすぎないわけですけれども、内閣の側にとっては、規制改革委員会からの指摘だとか、何度も閣議決定をしているということがありまして、現行の養成制度の下でも1,500人に増やすということが懸案になっており、この審議会としても、何らかの言及が必要なのではないかと思われましたので、これを入れたわけです。
そういう意味からしますと、元々、現行制度の下でも1,500人にしようという話なのですから、現行制度であるうちに達成するのが筋ではないかと思われます。また、法科大学院がまだ仮にですけれども、中座されている鳥居先生がよろしいと言われれば2004年4月からということになりますので、そうしますと、最も早い修了者は、2年に短縮ということをやりますと、2005年度一杯で出てくるわけです。
新司法試験をいつ実施するかはまだ未定ですけれども、仮に法科大学院を卒業する前に試験を行うというふうにしますと、最初の卒業予定者向けの新司法試験の第1回というのは2005年度中に行われ、それから移行措置が開始されることになるわけです。それよりは早くということになりますと、現行司法試験のみで実施される最後の年である2004年くらいに1,500人くらいの合格者を出すということを目標にするのが一つの考え方ではないかというのがこの案であります。
次の(マル)ですけれども、中間報告で我々が言っております年間3,000人達成という目標を、どのくらいの時期に達成することを目指すのか。これは、必ずこの時期に達成できるということでは恐らくない。中間報告でも、法科大学院を中核とする新しい法曹養成制度の整備の状況を見定めつつ、計画的にできるだけ早くとしていますので、保障するというわけではなくて、それを目標としていろんな制度を整備していきましょうということなのですが、その目標としていつごろと考えるのかということです。このペーパーでは、一応3つの案を掲げております。
A案が2010年(平成22年)。
B案が2012年(平成24年)。
C案が2015年(平成27年)。
少しずつ刻んでいて変だと思われるかもしれませんが、それなりに根拠のある案であります。ここは最も議論があるところだと思いますので、お手元に「実働法曹人口の推移シミュレーション」という3枚つづりの横長のものを配ってもらってありますので、そのシミュレーションを見ながら、お考えいただければと思います。
これはA、B、C案それぞれに合わせて、事務局の方でシミュレーションをしてもらったものです。
【佐藤会長】 鳥居委員、先ほどの法科大学院の立ち上げにつきまして、2003年という御意見でございましたが、どうも2003年は至難の技じゃないか、それで2004年でやむを得ないんじゃないかという意見にしたのですが。
【鳥居委員】 可能性として伺いたいんですが、平成15年9月以降開校というのはだめなんですか。9月開校の学校があってもいいんじゃないですか。
【文部科学省(合田大学課長)】理論的にあっていけないということではないと思いますけれども、統一試験も含めて、いろんなことを含めて、その段取りが間に合うかどうかということだろうと思います。
【井上委員】 そこは余り焦らない方がいいと思います。そうでなくても、主要5大学が先行するのではないかというようなあらぬ疑いを掛けられていますので、やはりフェアに十分な準備期間を置いておいた方が。
【佐藤会長】 よろしゅうございますか。
それでは、続けていただけますか。
【井上委員】 今、8ページのまとめ案の3番目の(マル)のところを御説明しているんですが、3,000人達成というのをいつを目標にすべきかというところで、A、B、Cという3つの案を示しているのですけれども、それを御理解いただくために、横長のシミュレーションというものをごらんいただきながら御説明しようと思います。
シミュレーションAというものから見ていただければいいのですが、一番左が「法科大学院」という欄で、中央が「司法試験」、右側が「法曹人口」、この3つを分けています。法科大学院の欄では、毎年の修了者の総定数を掲げておりまして、その隣の小さく書いてある備考欄と併せてごらんいただければお分かりになると思うのですが、法科大学院の第1期生、これは今、鳥居先生の承認を得ましたので、2004年受け入れということで入学してきますと、2年制の者が出るのが2005年、次の2006年度には、その第1期生のうちの3年制の者と第2期生のうちの2年制の者が同時に修了する。それがずっと積み重なっていくということになります。
この表では、ごくおおざっぱで、全くの想定なんですが、初年度の法科大学院は学生の総数が2,000人くらいだというふうに仮定してみました。実際にはこれを上回るかもしれませんし、あるいは下回るかもしれません。一定の基準に達していれば自由に設立できるという前提ですので、どうなるかは分からない。ただ、全国的な適正配置ということをうたっているということと、多くの大学が法科大学院構想を既に発表しているということなどを考え合せて、少なくともこのくらいにはなるのではないかというふうに一応考えてみたものです。
その2,000人のうち2年制と3年制の振り分け、これも仮定がここに入ってくるわけですが、現行司法試験の受験者で見ますと、法学部出身者とそれ以外の者が8対2くらいの比率だというような話でしたので、法学部出身者全員が法学既修者として2年短縮ということにはならないでしょうから、仮にその割合を7対3くらいだと考え、更に、法科大学院で厳格な成績評価及び修了認定を行うということになっていますので、1割くらいは卒業できないだろうというふうに考えまして、それらを合せて丸い数字で出しますと、初年度の修了者は1,300人くらいかなという想定にしております。こういうふうに不確定要素が幾つも重なっておりますので、あくまで1つの予測というだけの数字だというふうに御理解いただければと思います。
シミュレーションAは、そのうち法科大学院の立ち上げから大体出そろうまでが比較的短期間で行われる。大体立ち上がってから5年程度で修了者数が4,000人くらいを安定的に生み出すようになると仮定した場合のものです。「安定的」と申しましても、勿論新規参入もあれば、新司法試験の合格率が非常に悪くてつぶれちゃうというところもあるかもしれません。しかし、一つの仮定として、そこら辺で安定すると想定したものです。
中央の司法試験の欄ですが、3つに区分されていまして、一番左が現行試験の合格者数。これは、現行司法試験が移行期間中は残る、その合格者数がどうなるかということを仮定でシミュレートしたものです。そして、真ん中が新司法試験の合格者数、右側がその2つを合せた合計ということになります。
現行司法試験合格者ですが、最初は移行期間前ですが、現状から1,500人まで段階的に、1,200人、1,500人というふうに増やしていくというのが現実的な考え方かなということで、段階を踏んで増えていく。
その後が移行期間ということになり、これを仮に5年間としますと、これも現行試験の合格者数は段階的に少なくしていくということになるのではないか。もっとも、急にがたっと1,000人も減らすというわけにはいきませんので、その刻み方にもいろいろあるとは思うのですが、仮にまず1,000人にし、600にし400、300、200と減らしていくという形を考えてみたものです。
これに対しまして、新司法試験合格者数も、先ほどお話ししましたように、法科大学院の修了予定者が卒業の前に新司法試験を行うと仮定しての年度配置に一応してありますけれども、先ほどの法科大学院の修了者数との見合いで予測をするということになるわけです。
実際の合格率というものは分かりませんが、このシミュレーションでは、一応7~8割ぐらいは全体として達成できると仮定し、大体75%ぐらいというふうに見積って算出してあります。
移行措置が修了しますと、仮に予備的な試験を経て新司法試験を受けるというルートを設けるとしますと、それに合格する者がどのぐらいかわかりませんが、内数で含まれてきますので、あくまでもおおよその数ですけれど、大筋はやはり法科大学院を経て新司法試験に合格して修習を受けるという流れだとしますと、おおまかな意味での対応関係があるだろうという意味で算出してあるものです。
合計欄はそういうふうに算出された数字の合計でありまして、それが翌年度の司法修習の受入数にほぼ該当するわけです。一部受かっても、司法修習に行かないという人もいるかもしれませんが、ほぼそれに相当すると言えましょう。
この欄の数字がある年に急激に増えたりしますと、実施上の困難が生じるということが考えられるわけですが、他方、修習の受入数がボトルネックになってはいけないという御議論があったところですので、この辺はどの程度に予測するのか難しいところですが、かなり大幅に増えるということが予測される年があれば、その数字の読み方としては、そのときまでにその対策を講じておくというふうに考えるべきなのかもしれません。
そのような目で考えて、シミュレーションAでは、2004年に1,500人、翌2005年には1,975人ということで、2,000人近くになるというような刻みにしており、ここのところが500人も増えますので、恐らく実質上一番問題となるところではないかと思われます。ただ、こういうふうに刻んでいけば、2010年には3,000人になる形で段階的に増えていくのではないか。そういうモデルになっております。
右側の法曹人口の欄ですけれども、左隣の司法修習修了者数は合計の数が2年分下にずれた形になっております。これは、司法修習期間を仮に現行の1年半のままとした場合に、大体そうなっていくというものでありまして、ここも修習の期間を仮に1年に短縮するとすれば、修了者数の欄の数字は、当然1年分ずつ上に繰り上がることになるわけです。
真ん中の引退数というのは、最近、皆さんお元気ですので、どのぐらいの期間働かれるのかわからないんですが、法律家になってから稼働可能な期間を大体40年として、40年前の司法修習修了数をそこに挙げております。途中でお亡くなりになる人もおられますので、この数になるかどうかわかりませんが、そのぐらい毎年減っていくだろうということで、一番右の実働数というのが出てくるというわけです。こういう形でシミュレートしてみますと、このA案ですと実働法曹人口が5万人規模になるのは2017年ごろということになるわけです。
説明の便宜上、次にシミュレーションC、3枚目の方をごらんいただきたいと思います。これは法科大学院の、一番左のところがA案とはちょっと違いまして、法科大学院が立ち上がって、4,000人規模になるまでに5年程度では行かない。10年ぐらい掛かるというふうに考えたものです。あとは基本的にA案と同じでして、司法試験の合計の欄を見ていただくと、3,000人が達成されるのが2015年ということで、5年ずれる。ですから、新司法試験実施から10年ぐらい先に3,000人というのが、このモデルです。
ただ、これで行きましても、ただ、実働法曹人口が5万人規模となるのは2018年(平成30年)で、A案と1年しか違わない。このシミュレーションでは、そういうふうになっています。
真ん中のシミュレーションBですが、これはほかの2つと幾つかの点で考え方が違うところがあります。結果としては、3,000人が養成されるのが2012年(平成24年)、5万人規模になるのが2018年(平成30年)で、その点はそれほど違わない。3,000人達成が大体A案とC案の中間ということなのですが、考え方は大分違っているところがあります。つまり、法科大学院の修了者は、立ち上がりのところは同じなんですけれども、4,000人規模になるまで7~8年掛かる。そこはまだ中間的なのですが、このモデルの最大の特徴は、司法試験の合格率が当初75%といったところまでは行かない。法科大学院の質というものが、試行錯誤を経ながら徐々に向上し、完成していくというふうにも考えられますので、そうなりますと、当初の少なくとも5年ぐらいは、7~8割まで行かなくて、55%とか60%といったかなり低い数字しか達成できないのではないか。そういう想定の下に算出したものであります。これも想定で、あくまで予測にすぎません。
この案では、司法試験合格者数の合計、これは司法修習の受入数ですが、現在の1,000人体制から3,000人体制まで、徐々に増やしていくということが可能でして、実施上の困難が少ないという点ではメリットがある案だと言えますが、他方、問題点としては、新制度が立ち上がるときに、新しい法科大学院の修了者が、合格率50%とか60%にしか行かないんだという低目に予測して制度設計を行うことが、考え方として適当かどうか。そのところが、恐らく最大の問題点だろうと思うわけです。
取りまとめ案の8ページに戻っていただきまして、当審議会として年間3,000人の合格者を出す目標をいつと考えるのか。これは予測が入ることは不可避ですが、無責任にこうだと言うわけにもいきませんので、やはり合理性のある説明が対外的に可能であるような道筋を示した上で、おおよその目標年次を設定するというのが適当なやり方ではないかというふうに思うわけです。そういった意味で、3つのシミュレーションを御参考のためにお出ししていますが、確認させていただきますと、不確定要素がいっぱいありまして、そのうちでも最も大きいのが法科大学院の立ち上がり具合です。立ち上がって数年で一定数を急速に達成するというふうに考えられるのか、もう少しゆっくりなのかということです。
もう一つは合格率です。これはやってみないとわからないところがありまして、どのぐらいに想定するのが適正なのかということだろうと思うのです。それによってどういうモデルを基本に考えていくのかということになってくるのではないかということであります。 最後に、もう一つ、8ページの5つ目の(マル)ですが、これは中間報告で明示的には触れられていなかったのですが、この3,000人という数字についてはいろいろな誤解も生じておりますので、これはいわゆるキャップではない。本来法曹の全体の数というのは市場の需要によって決まってくるので何とも言えないところなのですが、この3,000人というのも、あくまで当面達成すべき目標であって、キャップではないということを念のために書いたのが、この(マル)であります。
大分長くなって恐縮ですが、これが後半部分の骨子です。
【佐藤会長】 どうもありがとうございました。今の最後の点は、これまでも何度も議論してきたことですから、これはもうよろしゅうございますね。
そして、現行の司法試験制度の合格者を2004年に1,500人まで増やす。この辺りとその後の、いろいろな考え方があるかもしれませんけれども、現実的なのはこの辺なのかなという感じなんですけれども。
これに限らず、ほかの点も併せてよろしゅうございますが、時間も余りなくて恐縮ですけれども、どうぞ。
【鳥居委員】 私は、目標ですから、なるべく早く達成する目標を掲げておいた方がよろしいのではないかと思います。
【佐藤会長】 水原委員どうぞ。
【水原委員】 私は、具体的な達成目標の年次、これをはっきり出すのはどうかなと思うんです。もう少し柔軟さが読み取れるような書き方が必要ではなかろうかというのが率直な感想です。
その理由は、私自身も、法曹人口の大幅増加の開始時期について、本来ならば法科大学院の修了者が出る年から増加させるのが筋だとは思います。しかしながら、他方で法曹人口の大幅増加という至上命題につきましては、とにかく実現に着手することが必要だと、これもそのとおりに思います。
この点、この「たたき台」によりますと、平成16年に1,500人達成を目指すということでありますし、それから、これはいろいろな御意見もございましょうが、先日の自民党が示された中間提言を拝見しますと、合格者1,500人までについては、平成14年、来年から1,200人に、それから2年後に、すなわち平成16年に1,500人とすべきということでございますので、1,500人にする点においては「たたき台」と一致しておるわけで、私もこの辺りがぎりぎりの線だというふうに考えております。
これまで私は、質の確保につきまして、夏の集中審議以来何度か発言いたしました。いろいろと御叱正もいただきましたけれども、質の低下の恐れにつきましては、とにかく養成・指導に当たる関係者、これが最大限の努力をするというほかなかろうという気がいたします。
ただ、2,000人だとか3,000人への増加につきましては、先ほど井上委員からも御説明がございましたけれども、法科大学院がどれぐらいできて、どれだけきちんとした教育をやってくれているのかという問題。なるほどシミュレーションでいろいろ出されましたけれども
、あくまで仮定の問題でございます。
それから、先ほど井上委員もちょっと触れましたけれども、弁護士の活動領域がどれぐらい拡大して、マーケットがどれぐらい増加するのかというような問題も考慮すべきだというのは、私は夏の審議以来申し上げてきたところでございまして、いろいろな不確定要素がございますので、ここをはっきりと出してしまうということには問題があると思います。
2,000人までにつきましては、3~4年程度という目標ぐらいが適当かなと思っておりますけれども、3,000人の達成時点をはっきりさせるのを我々の共通認識として明示するのには、もう少し柔軟な、例えば、平成22年だとか24年とか27年ということではなくて、もう少し柔軟さが読み取れるようなものにしておくべきではなかろうかという気がいたします。
【藤田委員】 水原委員と同じ意見でございます。年間3,000人というのは、手段であって、目的はこのシミュレーションの表でいけば一番右の「法曹人口」の増加というところにあるわけですが、恐らくこの実働数は、このシミュレーションよりはもっと早いベースで増えていくのではなかろうかというふうに思います。と申しますのは、引退数でありますが、注の3によりますと、実務開始後満40年で引退するものと仮定されております。そうすると、私は4年前に引退していなければいけなかったということになりますし、中坊さんは6年前にということになります。若くして死ぬ人もいますから、平均すればということでありますけれども、昭和30年前後に、法曹人口のシミュレーションをやった先輩の話を聞きますと、その後シミュレーションよりも実際の法曹人口がうんと増えたのでどうしてかと思って調べてみたら、法曹の平均寿命が一般人よりかなり長いということがあったようです。法曹は相当しぶといものでありますから。そうすると、実働数はこの表よりももっと早く増えていくであろうと思われますので、井上委員もおっしゃいましたけれども、仮定の上ということでありますから、推測が一人歩きしてもどうかという気がいたしますので、水原委員に賛成いたします。
【井上委員】 今の点ですけれども、どれだけ減っていくのかというところを、多少少なめに見積もっても、全体の数はそうは増えないのです。差は年間100人とかそんなもので、10年でも1,000人ですから、この右側の欄の数にはそれほど差は出ないと思います。
一番問題となるのは、私個人としてはどの案がいいかというのはなかなか決められないのですけれども、B案でいった場合、確かに、司法試験の合格者は、なだらかに増えていくので実施はしやすいというふうに思われます。ところが、並存する現行試験の合格者は大幅には落とせない。落としたとしても1,000人にする。1,000人というのは、前年から500人減りますから、それがせいぜい限度だろう。そうなると、差し引きしますと、新司法試験の合格者は700人ぐらいになってしますのです。ところが、法科大学院の方は、どのくらいの勢いでできるのかわからないのですが、恐らく徐々に増えていくというよりは最初の2~3年でぽんと立ち上がれるところは立ち上がって、そこからなだらかに増えていく。そういうのが恐らく現実的な見方ではないかと思うのです。そうなってきますと、そちらの方が増えて、しかも、そこで質の悪い教育をするという想定で制度設計をするわけにはいきませんので、質のいい教育をするという前提で、その修了者のうちの相当数は本来受かるべきなのに、700人というところがボトルネックになって受からないということになると問題であるわけです。そういう制度というのを組むのは難しいのではないか。これはやってみてからということでは、だめで、大体目標を決めて制度を設計しておかないと、それより下回るということは勿論あると思うのですけれども、大幅に上回ったときには立ち行かなくなります。むろん、法科大学院がそんなに立ち上がらなくて、学生の総数は1,000人くらいかもしれない。そういうことになれば、合格率は7割になるわけです。その辺の見合いが非常に難しくなるのかなというふうに、数字だけでの話ですけれども、思うわけです。
【水原委員】 中間報告でも「計画的にできるだけ早期に年間3,000 人程度の新規法曹の確保を目指す必要がある」とある。この点については全く私もそのとおりだと思っています。それを達成するのに、できるだけ早くという場合の、その時期を明示することがいいかどうかという問題だけでございます。
【髙木委員】 いろいろな想定が入っていますから、こういうものの数字の意味はどうかなという議論もあるかもしれません。ともかくこういう方向に向かっていこうということで議論してきて、それでよかれと思ってやる話であれば、例えば、水原さん御心配の法科大学院(仮称)における、そういう仕事に関わっていただく人たちには、そのレベルをできるだけ高くしていただくとか、みんなそれぞれ努力指標があるわけですね。そういう意味では努力指標の集大成として、これぐらいをみんなで、関係者の総意として目指そうではないかというのは、可能性として、こういうケースと、おおむねこういうことなら、例えば2010年ぐらいを、頃と書くのかいろいろ書き方はあると思いますけれども、そして、できるだけいいものだということで目指すなら早く実現した方がいいですね、ということではないでしょうか。
【山本委員】 一つのメッセージとして、何かあってもいいような気がしますね。
【水原委員】 これはメッセージであると、これが結局は努力目標であることは間違いないんですが、それが一人歩きすると困るということでございますので、危惧しているのはそれだけでございます。
【吉岡委員】 最初から法曹の考え方としては、できるだけ早い時期に3,000人規模に増やすという合意があったと思うんです。ですから、このシミュレーションを見ても合格率をどのぐらいに見るかというのが妥当であるかどうかというのはやってみないとわからないところはあると思いますけれども、B案のところでもって、55%から65%までが何年掛かっていますか、5年掛かっていますか、ちょっと長過ぎるなという感じがします。全く根拠のない感覚だけなんですけれども、やはり少なくとも法科大学院がプロセスを大切にして、7~8割は合格させようという理想でつくるわけですし、そういう理想形から言えば、もうちょっと合格率が上がるような内容の教育をするべきではないかと、そう思います。
そういうことから考えると、少なくともC案のような年限が掛かるというのは、少し掛かり過ぎだというふうに思いますし、B案の合格率についてはもう少し数値を高めて、試算していただいた方がいいのではないか。せっかくつくる法科大学院(仮称)ですから、やはりそれだけの効果がなければ、学生の方からすると、行きたくなくなるのではないかと思います。
【井上委員】 合格率についてはおっしゃるとおりなんですが、AとCの違いは、法科大学院というものが、ある一定数はバッと立ち上がるかもしれないのですけれども、そこから4,000人までにそんなに順調にいくのか、そこの読みの問題なんですね。そこのところはそうとも言えるし、そうでもないとも言える。直観的に申しますと、そう順調に行くのかなという懸念もあるのですね。それでC案みたいなものもつくったわけです。
【北村委員】 二つあるんですけれども、一つは現行試験の合格者数なんですが、これは現在受けている人が不利にならないような形になっていることを希望する、要望しますということなんです。
というのは、どんどん減っていっていますね。これは法科大学院の方に移るということを前提として減っていっているんだと思うんですが、今、勉強し初めてから合格するまでの平均の年数がどのぐらいになるのか、例えば、A案の人は早いんですけれども、それ以外の超過している部分の人というのは平均で何年かというのは出てくると思うんですけれども、そういうようなものを配慮していただいている数字だとは思うんですが、そこのところを考えていただきたい。新しい制度ができて、いままでの制度の方が、いろいろと欠点はあるかもしれませんけれども、希望を捨てないで勉強をしていけるようなことになってもらいたいなということです。
それからもう一つは、75%といって、落ちた人が次の年に受けて、また3回まで受けられるということになると、最後の年は50を切るんですね。今すぐには計算が出てこないんですが、これは非常に厳しい試験だなというふうな感じもするんですね。だから、75というのはごまかしの数字で、これは初年度が非常に有利なのであって、だんだん厳しくなっていくという計算になっているなというふうな感じがするんです。だから、そこのところを、3年、4年以降は同じだと思うんですが、3回までであったら、ということで。
【井上委員】 積み重なってくると同じですよ。
【北村委員】 だから、4年以降は同じでしょう。でも、3年までの最後の年のそれがずっと永久に行ってしまうという部分ですね。だから、その辺のところで、75とは言いながら50になる、そういう合格の試験になるということ。
【井上委員】 言葉は悪いんですけれども、積み残した部分というのを入れてパーセントを取るというのは、制度としてはちょっとおかしい発想だと思うのです。
【北村委員】 でも受けますよね。みんなそれを目標にして来ているんですから。
【井上委員】 受けるわけですが、それを含めると、結果として50%ということになるかもしれない。しかし、生み出す方としては、修了者の75%は少なくとも、受かってほしいと、それを目指そうということだろうと思うのですね。また、毎年の母数はある程度増えるでしょうが、どの程度受けるかは分からない。そこは不確定要素でしょう。
【北村委員】 やはりそれだけのお金を払ってきているという部分もあるし
、司法に携わりたいという気持ちがあって来ているんでしょうから。
【井上委員】 でも、これはあくまでもシミュレーションですから。その数をボトルネックにするというわけではないので。
【北村委員】 そうなんです。だから、75というのが一人歩きして、何か全部、毎年75%の人が合格していくなというような試験ではないんだということを、ちょっと認識しておいていただいた方がいいかなということです。
【佐藤会長】 しかし、さっきから指摘していますように、このプロフェッション教育については、試験一発主義ではないということのサインを明確に送っておく必要があるわけです。そのこととの関係もありますし、それから、前にお尋ねの点は、平成16年まで200 、200 、500 と増えていきますね、そして、減るとしても漸減させるという中で考えられないかなと。
【北村委員】 40年とかという数字が出ていたものですから、これが10年だとちょっと厳しいかなと。
【髙木委員】 シミュレーションですから、例えば、キャップではないと書いて、ばっと3,000が並ぶとか、こういう表をつくればこういうことになるんだろうと思います。それから、いわゆる3,000という枠で管理するものではない。本質的に、絶対的なレベルを問うものだということなので、年によって人数に若干の変動はあると思います。
【井上委員】 この3,000という数字を並べたのは、もし仮に3,000人レベルで行くとすれば、いつ頃どこまで到達するのかということを出すためなのです。そのままずっと行くとは、我々も決めていないわけです。
【髙木委員】 この3,000というのは、例えば2,800の年もあれば3,200の年もあればという、でこぼこもあるんでしょうし、3,000はキャップではないという話でしょう。
【井上委員】 資格試験論というのはそのとおりなのですが、他方で、実施上の問題、そういうことを言うとまた首を締めるのではないかという話になるんですけれども、ある程度計画的に受け入れるというのを考えていかないと、司法修習などもちゃんとできないわけで、その辺は計画的にやらざるを得ないだろうと思います。
【竹下会長代理】 原案に責任を持っている者として今まで余り発言しませんでしたけれども、ここは3案あるものですから、発言をしてもよいだろうと思い、申し上げたいと思います。
水原委員、藤田委員が御心配になっておられるのは、やはり法曹の質を維持しなければいけないということであり、もともとこの問題は出発の時から、量を増やすとともに質を維持する必要があるという点では共通の認識があったと思います。そういう点から言いますと、A案では平成15年以降、15年から16年で300人、それから、16年から17年でほぼ500人、その後、また300人というふうに、非常に急激に増えていくのですね。これがやはり法曹の質を維持するという点からいくといろいろ問題を引き起こすのではないかと思います。
一方で、法科大学院の立ち上がり状況、それから、その教育内容は、何度も皆さんが言っておられるように非常に不確定な要素を持っている。それなのにこういう勢いで増加させるというところが一つ問題ですし、それからもう一つは、やはり実務修習体制の整備という点で、果たして間に合うだろうかという問題があります。これは決していわゆる実務修習体制をボトルネックにするという意味ではなくて、時間的な対応の問題です。ボトルネック論というのは、結局実務修習で受け入れられないから、ここまでしか増やさないという議論だったと思うのですが、そうではなくて、やはり無理のない形で対応ができて、実務修習というものが持っている意味を十分に生かせるような形で整備をしていかなければならないという趣旨です。
そうなると、どうもA案はかなり無理があるのではないかと思われます。吉岡委員が言われたように、我々は「できるだけ早期に」と合意したのですが、その前の「計画的に」という文言が入っており、これはまさにそのことを指していたわけです。質を維持しながら量を増やしていく、そのために計画に従ってやりましょうということだったのだと思います。そういう点からいくと、確かにせっかくこういう制度をつくってスタートさせるのだから、なるべく早く3,000人という目標に到達できるような形の方がよいではないかというのが一つの考え方だと思いますけれども、そもそも、質も維持しながら量を増やすという出発点から言うと、A案はちょっと無理があるのではないか。
それから、B案は、井上委員が言われましたし、他の方も言われたように、せっかく法科大学院をつくるのに合格率を非常に低く見積るという点が問題で、これだと法科大学院をつくろうと考えている大学に対するインセンティブが非常に弱いものになってしまう恐れがある。
そうなると、C案ぐらいだったら比較的無難といいましょうか、若干3,000人に達する時期が遅いようですけれども、最終的な法曹人口5万人という点では、それほどA案やB案と違うわけではない。そういう点から言えば、総合的に見てC案が妥当なのではないかと思います。
【井上委員】 ちょっと戻りますが、さっき北村先生が問題にされたの75%ですけれど、実は私も数字が非常に弱くて、それで事務局の方でシミュレートしてもらったものですから、ここのところちょっと私が誤解していたようですので、その辺を事務局の方に説明をしていただいてよろしいですか。
【佐藤会長】 では、説明していただけますか。
【事務局(小山参事官補佐)】表の作成の上では、単純に修了者数に0.75を掛けて司法試験合格者数を出しておりますので、そういう意味では、0.75という数字は3回の受験生の累積ではなくて、単年度といいますか初年度、修了した諸君がその年に受けた試験の合格率というつもりの作成の数字でございます。
したがって、初年度に落ちた方も2回目、3回目を受験できるというふうにプログラムしていただいておりますけれども、その方の数字はこの表には不正確ではあるかもしれませんが入っておりませんので、そういう意味では、シミュレーションの数字そのものが最低ラインというつもりの作成になっております。
【北村委員】 今のでよけいわからなくなってしまいました。
ちょっと伺いたいのは、75というのは受験生全体の75を常に考えていきましょうということなんですか。
【井上委員】 修了する者の受験、初年度が75%の合格率で、積み残した人の合格者数は、それにプラスαになるというのがこの表なわけでしょう。つまり、卒業したての人が75%合格するだろう。残っている人たちがある一定数合格すれば、それに上積みされていく。だから、実際の合格者数はこれより増えるだろう。そういう含みのある数字だということです。
【北村委員】 積み残していた人も75%になると、3年目は50%になるんです。試験ではだれが積み残しなのか、だれが新しい人なのかわかりませんから。
【山本委員】 一浪の方が合格率が上がるんです。
【北村委員】 でも、80とか85になるということなんですね。そういうふうに考えていいんですか。
【井上委員】 そうなるかもしれないです。
【鳥居委員】 今の御議論もあると思うんですが、これはまさにやってみないとわからないんで、それよりももっと大事なことは、3つのシミュレーション共通して、移行期間は平成21年で終わるとしていますが、この点は今日はっきり決めるべきだと思います。
それから、この移行期間の減らし方ですね。この数字はあくまでもシミュレーションですから、これは今後検討するということですが、その方がいいと思います。何かヘビの生殺しみたいで、最後200人などという競争は無理ですから、もっとどすんといきなりやめるとか、あるいは2段階くらいで減らすとかいろいろあるんです。それはこれから議論しなければいけないけれども、今日は時間がないですね。
もう一つは、今の議論を要約すれば、今日のところはなるべく早いうちに目的を達成するということだと、この3つでよろしいんじゃないかと思います。
【竹下会長代理】 「早いうちに」という含意が、中間報告で言っていたのと同じような意味であればよいのですけれども、A案、B案、C案の中でなるべく早いうちにというのだと意味が違ってしまいます。
【佐藤会長】 6時を過ぎますと「人権問題」だと思いますので、6時にはこの会議を終わりたいと。あと10分しかありません。もう一つ御相談したいことがあり、時間を取らないといけません。この件は、結局は見込みなんですけれどもね。
【井上委員】 これはあくまで想定ですから、目標のところをどうするかというのは、今のようなできるだけ早くというまとめ方にするのか、ある程度の数字を出すのかですね。
【佐藤会長】 私は示すべきだと思うんです。ただ、今日の段階ではちょっと無理です。けれども、最終報告の書き方のところで、そこは示すべきだと思います。
【井上委員】 このくらいで書けますか。
【佐藤会長】 そのとき御相談するということにしたいと思います。今日はいろいろ御議論いただきましたから、それでどうでしょうか。今3点おっしゃいましたけれども、そういうことを含めて考えさせていただいて。
私の不手際で時間をオーバーして、最後のところは残りましたけれども、この件は以上で、今日のところは締めくくらせていただきたいと思います。
最後に、最終意見の項目案について皆様にお諮りしたいと思います。前々回の第55回会議で皆様から御意見をいただきましたので、それを踏まえて、代理と相談の上でお手元にお配りしたようなものを考えたわけであります。基本的には中間報告の人的基盤の拡充、制度的基盤の整備、国民の司法参加ということを3本柱にしまして、その標題や記載の順番は若干変更して、更に中項目として新たに国際化への対応、検察官制度、それから司法関連予算の確保などを入れたわけであります。
こういう項目ですべて確定しているわけではありませんので、今後最終意見の作成を進めていく中で、前回の意見交換の際に多くの委員から御指摘のありました国民にわかりやすい最終意見とするために、項目の標題とか場所など、変更はあり得ると思いますけれども、大体こんな感じでいかがかと思うんですが、どうでしょうか。
【中坊委員】 私は大変問題があると思うんで、中間報告の目次通りで基本的にいいんだろうと思うんです。それをこういうふうにいろいろお変えになって、その意図が、今日は時間がありませんけれども、どういうわけでこういうふうにいろいろばらばらにして、しかも人的基盤の拡充、人のことこそ問題であると言っておったことがどこへ行ってしまったのか。
今まで私たちは中間報告でちゃんと書いているんですよ。その項目の内容をより精査すべく今まで書いてきて進んでいるものを、今になってその中間報告で書いてきた骨格、論点整理から中間報告に来た大きな流れというものを、この時期になって最終報告でまたいろいろ組み替えるということ自体が基本的には私は問題だと思うんで、できれば中間報告どおりにお書きいただければいいんじゃないか。位置付けもその他の事柄も。そのことで今まで議論してきたんだから、一つひとつ言いませんけれども、非常に問題があると思います。私は今日お示しの最終報告案ではおかしいと思います。
【吉岡委員】 私はこの枠組みを変えるということ、読みやすいとか、そういうことも考えるということはあるだろうと思うのですけれども、ただ、骨格の部分でちょっと問題だと思いますのは、国民的基盤の拡充のためにということになっていまして、そこのところを見ますと、「わかりやすい司法の実現」、「司法教育の充実」と「情報公開」という、そういうふうになっていますけれども、国民の司法参加のところで、私が重要だと思っているのは、裁判への直接的な関与、それから裁判員制度、裁判官制度を含めて国民が関与するという、そういうことで、今までの司法とは違う司法に改革していくという方向性があったと思うのです。
ここで見ていきますと、そういう骨格の部分がちょっと見えなくなってしまっている。裁判員制度については、刑事司法制度の改革のところに括弧書きで入っている。確かに現実には刑事司法からということになっているのですけれど、その辺のところが私が考えていたものとちょっと異質な感じを受けるんです。やはりこの司法制度改革審議会のメインになるのは何だったのかという辺りがもう少し見えてくるような組み方にするべきじゃないかと思います。
【中坊委員】 私たちも基本的に中間報告の項目の順序で今まで一連の審議をやってきたと思うんです。それをよほどのことがあればともかく、そうでないのにそういうふうにいろいろ項目を入れて書き替えると、よけいに議論がおかしくなってくる。今になってから表現があちこち、最終報告で変わるというのはおかしいですよ。今まさに吉岡さんもおっしゃったように、裁判員制度の扱いも、位置付けとすれば極めておかしい。ただ、とりあえず刑事裁判から入ろうということ決めたけれども、その思想たるや我々の骨格になっているんだから、それがあっちこっち行ったり、とにかく今日は時間もありませんけれども、このまとめはよくないと思います。私は幾らでも意見がありますから言わしていただきたいが、今日は時間がありませんから言いませんけれども、とにかくこの原案のままではよくない、今日お示しになったまとめ案ではよくないということだけははっきり申し上げておきたいと思います。
【佐藤会長】 制度とそれを支える法曹の在り方が逆転しているという点ですけれども、実質論として、まず人の問題だということでそこから入っていろいろ議論して、そのめどが立つならこういう制度ができるだろうということで進んできたと思うんです。これから最終報告でわかりやすく国民に訴えるには、まず制度がこういうふうに変わりますよ。例えば迅速な裁判になってこう変わりますよ、という順番がいいのではないか、そのほうが国民にアピールしやすいのじゃないかなと。
【中坊委員】 私は少なくともそう思わずに、まさに会長がおっしゃったように人的基盤のところから話を始めようとおっしゃったのは、我々の審議もそのようにやってきたんだし、国民にとっても一番わかりやすい方法です。どんな制度をつくったって、では人はどうだ、ということはすぐ言われるんだから。せっかく今まで議論してきたものをそれなりに大切にして、最終報告をまとめるというのが筋なんですよ。
世の中ですから、いざとなったらちょっと調子が悪いところがあるからそこだけ少し直すのはいいですよ。しかし、今回みたいに何もかも、基本的なところまで変えてしまうのは、特に、会長がおっしゃったみたいに、制度が先に行ってみたり、これでは大きな問題がありますよ。
私は少なくともこの項目案のままに最終報告をまとめるということは考え直していただいた方がいい。今日は時間もないときに突如これを出されて、これでよいかと言われたって、いろいろまだ言いたいことはありますけれども、とにかく、このままでは今日のところは、今日これを決めなければならないことはないから。
【佐藤会長】 日程を考えますと、切迫しているんです。
【中坊委員】 切迫しているなら、間際になって出さなければいいんです。もう6時になっているのに。
【佐藤会長】 それはおわびをいたします。
【中坊委員】 それはおかしいですよ。お考えいただかないと。書く順序があるからと言って、5時の予定でやっているものを、今になってから出して、全部書き直すんだという、これは意見を言わなきゃいかんと思って待っておったんですけれども、それは問題です。少なくともこの原案のままで最終意見を書くということについては、私は反対します。
【竹下会長代理】 内容が今までの議論から離れたものなら問題だということは分かります。
【中坊委員】 基本の目次、位置付けが違えば全部が変わってきますよ。こんなに骨格を変えるということはよくない。いわんや6時になって、5時に終わるというものが、そんな間際に審議するということ自体がおかしい。
【佐藤会長】 次回は5月8日になってしまうんです。私の今日の不手際は重々おわび申し上げますけれども、次回の5月8日で、項目の書き方を決めてというのはなかなかしんどいんです。
【中坊委員】 私の意見を聞いて直していただければいいわけです。私は中間報告のままでよいと言っているんだから、もうサンプルがあるわけです。そのサンプルどおりに書いていけばいいわけです。
【竹下会長代理】 中坊先生の御意見はよくわかりましたけれども、ほかの委員の御意見もおありになりますので、それを伺わないと決められません。
【佐藤会長】 吉岡委員の御意見ごもっともという感じがします。確かに、国民参加のところの書き方について、括弧書きのところがありますけれども、そう言われればそういう面もあるかもしれないという気がします。
【水原委員】 吉岡委員のおっしゃることは、この項目で言うならば21世紀の司法制度の姿という中に、恐らく盛り込むんではないでしょうか。
【佐藤会長】 総論では書きます。
【水原委員】 国民の視点という、今まで議論してきた基本的なことは、ここに入るんじゃないですか。
【中坊委員】 こんな時間間際になってから、基本的なところを直すというのはおかしいですよ。
【井上委員】 中身は準備しておいてもらって、骨格については次回、もう一回議論するということではいかがですか。実質は後で組み替えもあるべしということにして。
【髙木委員】 実質だということなんだけれども、吉岡さんが指摘された刑事司法の中で裁判員制度を書く書き方と、国民参加論の立場から書く書き方とはニュアンスがちょっと違うんだろうと思います。
【井上委員】 それはわかるんですけれども、現実問題としては、準備しておかないと、最終報告の期限には間に合わないでしょう。文案をまた審議しないといけないからですね。ですから、実質は準備しておいてもらって、骨格に合わせてそれを組み替えていくのが現実的なやり方じゃないですか。
【佐藤会長】 わかりました。今日の処理としては、今、井上委員の御提案で。
【山本委員】 いろんな切り方があると思うんです。要するに、書いた中身の問題で議論したらよろしいんじゃないですか。とりあえずこれを書いていただいてですね。そう思います。
【佐藤会長】 一応準備は事務局にお願いして、早目にやっていただかないと間に合わないんです。それでやっていただくことにして、順番とか構成の仕方については8日に御相談します。そういうことにさせていただきたいと思います。
配付資料として何かありますか。
【事務局長】 配付資料の説明は特にございませんが、先ほど髙木委員の方から裁判員制度についてのペーパーをお配りしてくれということで預かりましたので、ただいまお配りしております。何か髙木委員、御説明することあるんですか。
【髙木委員】 以前に同趣旨のものを出させていただいたんですが、それを補強したり、勉強会等で使ったこともありましたので、そういったところを直して出させていただきましたので、是非お読み取りいただきたいと思います。
【佐藤会長】 どうもありがとうございます。
【水原委員】 法曹資格の関連で、特任検事、副検事、簡裁の裁判官、法曹資格を有する企業法務、これはどの辺りで議論するのですか。
【佐藤会長】 それは8日で。裁判官制度のところも御議論いただきます。
次回の確認でございますけれども、5月8日、1時半から5時まで、この審議室で行います。既に御了解いただいておりますように、私どもの審議会の最終意見を受けての司法制度改革の推進体制の在り方、それから、順番は更に工夫させていただきますけれども、今般の司法制度改革案実現後の司法制度の改善。改革の在り方などについて御議論いただきたい。
それから行政に対する司法のチェック機能の在り方、これも御議論いただきたいと思っております。
それから、弁護士任官の推進につきまして、今日も話題に出ましたけれども、再度最高裁判所及び日本弁護士連合会から今後の具体的な措置や方向性などについてお聞きしたい。それに関連して、今ちょっと申しましたけれども、裁判官制度などの問題についても、併せて御議論いただければと思っております。そんな予定でございます。
【髙木委員】 今日の法科大学院の話で、関係者でずっといろいろ議論していただくというのがちっとも進んでいないと聞いています。1ページ目に「懸案」と書いてありましたね。そこのところ御議論あったのかどうかわかりませんが。
【井上委員】 今日は説明を省いてしまったんですが、その点にも配慮しまして、一番最後のところに、引き続きそれを強く求めるということを一応書いてあります。ですから、そういうものを早急に立ち上げて相談してくださいよというメッセージにはなっていると思うんですけれども。
【髙木委員】 引き続きそれを強く求めるというのは、今までほとんど動いていないということですか。
【井上委員】 いろんな事情があって遅れていることは事実なんですが、文部科学省の今日のスタディー・グループの報告と言い、日弁連のカリキュラム案もそうですが、それぞれのところでは自分の守備範囲でやっておられます。また、事実上、相互の間で連絡を取り合っているということも聞いておりますけれども、ただ、みんなが相乗りした形で正式に立ち上げて議論するというところまでは至っていない。法務省は法務省、裁判所は裁判所で、そういう準備の検討はされていると思います。
【髙木委員】 「たたき台」の1ページ目に「懸案」とか書いてあるから、懸案なら懸案なりにどうやっていくかということだと思います。
【佐藤会長】 最終報告までにその辺の問題を詰めて、どこでどうするかということはやらないといけないと思います。いろんな事情でこうなってきているわけですけれども、そこはいろいろ御賢察いただきたいと思うんですが、これから最善の努力をしたいと思います。 どうもありがとうございました。もう6時10分になってしまいましたが、記者会見はもう御無理申しません。しかし、井上委員はお願いします。
それでは、御苦労様でした。