司法制度改革審議会

第58回司法制度改革審議会議事録


 
 
日 時:平成13年5月8日(火) 13:30 ~17:40

場 所:司法制度改革審議会審議室

出席者

(委 員(敬称略))
 佐藤幸治会長、竹下守夫会長代理、石井宏治、井上正仁、北村敬子、髙木剛、鳥居泰彦、中坊公平、藤田耕三、水原敏博、山本勝、吉岡初子

(説明者)
 金築誠志最高裁判所事務総局人事局長
 山内堅史日本弁護士連合会副会長

(事務局)
 樋渡利秋事務局長

  1. 開 会
  2. 弁護士任官の推進及び裁判官制度改革について
  3. 行政に対する司法のチェック機能の在り方について
  4. 最終意見項目案について
  5. 最終意見後の改革推進体制及び改革実現後の継続的改革・改善の推進体制の在り方に ついて
  6. 閉 会

【佐藤会長】 それでは、ただいまより第58回会議を開催いたします。
 本日は、まず弁護士任官の推進につきまして、最高裁判所及び日本弁護士連合会から、今後の具体的な措置などにつきましてお話を伺い、そして意見交換を行いたいと思います。そして、裁判官制度につきまして、最終意見の作成に向けて、更に私どもの意見交換を行いたいと思っております。その次に、行政に対する司法のチェック機能の在り方につきまして、意見交換を行います。そして、当審議会としての考え方の取りまとめができればと考えております。その後で、前回お示ししました最終意見の項目案につきまして、改めて皆様の御意見をいただきたいと思います。最後に、私ども審議会の最終意見を受けての、司法制度改革の推進体制の在り方、さらに、その後の継続的な司法制度の改革、改善の推進体制などにつきましても、意見交換ができればと思っております。
 というわけで、御審議いただかなければならない事項が多うございまして、前回は6時までになっておしかりを受けたことがありますけれども、今日はできるだけ予定時間内にと思っておりますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。
 では、早速第1の議題でありますが、弁護士任官の推進につきまして、最高裁判所及び日本弁護士連合会から、今後の具体的な措置などについて御意見をお伺いしたいと思います。
 本日は、最高裁判所から金築人事局長に、それから日本弁護士連合会からは山内副会長に、それぞれお見えいただいております。お二人には本当にお忙しいところ恐縮でございます。ありがとうございます。
 それでは、最高裁判所、日本弁護士連合会、そういう順番でよろしゅうございますか。大体5分ぐらい程度ずつお話を賜ればと思います。

【最高裁(金築事務総局人事局長)】 審議会からの「弁護士任官を推進するための具体的措置の提案について」ということで照会がございまして、これに対する回答は、日本弁護士連合会と最高裁判所の連名で提出いたしましたので、書面のとおりでございますので、その内容について改めて御説明するということは省かせていただきまして、裁判所としての若干の補足をさせていただきたいと存じます。
 裁判所は、2月19日の当審議会におきまして、弁護士任官を推進するための方策として三つのことを提言いたしました。一つ目は、特定の専門的分野への任官、二つ目は、弁護士任官者主体の部の設置、三つ目は、弁護士任官者の研修の充実ということでございます。
 この三つの方策につきまして、当審議会の最終意見を待つことなく、裁判所としてできるところから実施に向けて動いているところでございます。
 特定の専門的分野への任官につきましては、任官に当たって、任官者の経験や希望を聞きまして、これまでに家庭裁判所とか知的財産権部へ配置するということを始めておりますし、研修の充実につきましても、これまでの研修参加者からアンケートを行いまして、今後の研修の充実を図るための検討をしております。
 日弁連との間で開始した協議におきましては、これらの点を含めまして、この提出しました書面に記載してある協議ないし意見交換事項として予定した事項につきまして、建設的な話合いを行っていきたいと考えております。
 ところで、弁護士任官の拡充ができるかどうかは、裁判官としての適性を備えた優れた弁護士が、どれだけ裁判官になることを希望するかということに掛かっていると思います。裁判所といたしましては、裁判官任官の適格性、可能性を持つ弁護士が、どの地域、どういった事務所に、どれぐらいおられるのか、そうした弁護士が任官する上での障害は何かといった点について、ほとんど情報を持っていないわけでございます。
 ただ、弁護士任官者等からお聞きしますと、任官に当たっての障害として、受任事件の引継ぎの困難、顧問先、依頼者との関係の整理、事務員の解雇といった、事務所の閉鎖に伴う問題を聞くことが多いわけでございまして、その点から言いますと、弁護士事務所の共同化、大規模化が進めば、状況は改善されるのではないかというふうに予想しておりますけれども、現状におきましても、一定規模以上の事務所からの任官者確保の可能性を意識的に追求する余地はないのかなというふうなことも考えております。その場合には、一定年限でまた弁護士に戻っていただくというふうな形も考えていいのではないか、というふうに思うわけでございます。
 今回の協議、検討、意見交換事項にも入っておりますが、非常勤という形で弁護士の方が弁護士の仕事をする傍ら、裁判官の仕事をする制度ができますれば、弁護士の側でも任官に応じやすくなるであろうということは、十分予想ができるところでございます。裁判所側といたしましても、常勤の裁判官に任官する候補者に、まず非常勤で仕事をしてもらえば、その方の適性とか何かを見ることができるというメリットがございます。
 ただ、この制度は、どういった形の制度が考えられるかということで、憲法との関係もございますし、種々検討を要する点がございます。訴訟以外の、例えば、調停主任の弁護士が非常勤で務めるといったことでありましたら、余り問題なく認められるのではないかと思いますから、まずはそういったところから始めるということも考えられるのではないかと思います。
 採用基準とか、採用の際の決定手続が不明確、不透明であるということが、弁護士任官推進の障害になっているという意見が弁護士会側にあるようでございます。裁判官の採用基準、手続の問題につきましては、これも2月19日のプレゼンテーションにおいて述べたところでございますので、ここで繰り返すことはいたしませんが、裁判所が提案いたしました裁判官指名諮問委員会が設けられ、不採用の理由開示を行うということになれば、この問題は基本的に解決されることになるというふうに思います。
 手続で考えております点では、むしろ弁護士からの任官希望者について、その能力、適性を判定できる客観的な資料をどういう方法で収集するかといった点が、これからは重要な問題ではないかというふうにも考えております。
 いずれにいたしましても、弁護士任官を推進するための実効性のある具体的な措置は、弁護士側の実情や考えを十分伺った上で考えていく必要がありますので、また、そのための協議を始めたところでございますので、これを続けていく中で具体策を打ち出していきたいと考えております。
 なお、判事補の他職経験の一つとして、弁護士事務所への派遣につきましては、派遣形態の法的検討をまず行う必要がありますので、その問題点を詰めた上で、開始時期、派遣期間、人数、希望者の確定方法、事務所の確定方法等、具体的な点についての弁護士会との協議を進めたいと考えております。
 以上でございます。

【佐藤会長】 どうもありがとうございました。それでは、日本弁護士連合会からお願いします。

【日弁連(山内副会長)】 日本弁護士連合会副会長の山内堅史でございます。本日は、弁護士任官推進のための具体的措置につきまして、プレゼンテーションの機会をお与えいただきましてありがとうございます。
 まず、最高裁との協議について御報告を申し上げます。日弁連と最高裁は、審議会からの御指示に応じまして協議を行い、本日お手元に配付されております回答書のとおり、現段階での合意点をまとめました。日弁連は、審議会から発信されました改革の諸課題に関する提言につきまして、全力を挙げてこれを実現する所存でおりますが、最高裁との協議につきましても、この提言の具体化に向けまして、積極的に協議を進め、大きな成果を得たいというふうに考えております。
 次に、弁護士任官推進のための具体的な措置につきまして、日弁連が考えている点を御報告申し上げます。
 第1に、2年近くにわたる審議会の審議によりまして、弁護士任官を支える客観的な情勢が大きく前進したというふうに認識をしております。  まず、法曹人口に関しまして、中間報告ではできるだけ早期に、年間3,000 人程度の新規法曹の確保を目指すこととされまして、日弁連も昨年11月の臨時総会におきまして、国民が必要とする数を、質を維持しながら確保するよう努めることを決議いたしました。これによりまして、弁護士任官の量的な基盤が拡充され、多数の弁護士任官者が生まれていく前提が整ったということができます。
 また、裁判官制度改革の御審議におきまして、判事の給源の多様化、多元化を図り、判事補の他職経験制度の円滑な運用や、特例判事補制度の段階的解消のためにも、弁護士任官が極めて重要であるということが明らかにされました。その結果、弁護士任官の新たな意義付けが明確になって、裁判所の人事制度の透明性、客観性の確保や、多様な弁護士任官形態等の改革と相まちまして、弁護士任官へのインセンティブが高められることになりました。最高裁との協議におきましても、これらの点を含めまして、弁護士のより任官しやすい環境を整えていきたいというふうに考えております。
 第2に、日弁連は、弁護士任官に関する基本方針を転換いたしました。すなわち、これまで弁護士任官希望者を募ってこれを待つという、言わば受動的な発想をやめまして、能動的に個々の弁護士に直接働き掛け、丹念に適格者を発掘し、養成し、責任ある体制の下に適格者を送り出していく、そういう方向に転換をいたしました。
 このような基本方針の転換に伴いまして、日弁連は以下に申し上げるような具体的な取り組みを開始しております。
 取り組みの第1といたしまして、適格者選考委員会を設置いたします。これは、弁護士任官を抜本的に拡充するためには、信頼性の高い方法で候補者を発掘する制度の整備が決定的に重要であるといった基本認識から、市民が参加する委員会で適格者を選考するという制度でございます。この委員会からの働き掛けを受けた弁護士が、任官をリーガル・プロフェッションの使命として深く受け止め、このような働き掛けを受けることを名誉と受け取ることができるように、この制度を信頼性のある、重みのあるものといたしていきます。
 既に近畿弁護士会連合会では、市民委員を加えた協議会で、候補者を調査、評価した上で推薦する制度を設けて、実際に活動を開始しております。
 取り組みの第2でございますが、日弁連の体制整備の点でございます。日弁連は、質の高い候補者を永続的に送り出すために、弁護士任官推進基本計画の一環といたしまして、継続的、系統的に弁護士任官制度を運営、管理する組織体制を検討しております。これは、任官候補者の発掘、養成、そして任官時と退官時における支援、下級裁判所裁判官推薦委員会の活動への協力といったことを行うものでございます。そういった組織体制を整備いたします。
 次に、弁護士任官をしやすくするための、基盤整備につきまして申し上げます。
 第1は、過疎型あるいは都市型の公設事務所の全国展開でございます。このような公設事務所は、弁護士任官の安定的供給の基盤といたしまして、あるいはまた任官者の退官後の受皿の拠点といたしまして、極めて有用でございます。既に大阪では、今年の3月に都市型の公設事務所を開設いたしまして、活動を開始しております。第二東京弁護士会におきましても、この秋を目途に公設事務所を開設し、東京弁護士会でも、本年度内に開設を検討しております。今後こういった形の公設事務所の全国展開によりまして、弁護士任官は大きく進むことが確実でございます。
 第2に、事件の新規受任を控えることによる収入の減少であるとか、事務職員の退職金等の負担を少しでも軽くするために、任官推進基金も有用であります。東京弁護士会では、今年の3月にこのような基金を創設する決議を行いまして、今年度内にこの基金の発足を予定しております。
 第3に、弁護士事務所の法人化とか共同化、これも弁護士任官を促進する重要な基盤でございます。日弁連は、本日午前中の理事会におきまして、弁護士任官を全会挙げて推進する決議を行い、取り組みの決意を新たにいたしました。既に、全国的なキャラバンとかシンポジウムなどのスケジュールを多数予定しております。そして、弁護士任官推進基本計画の策定を含めまして、全国の弁護士会を挙げて総合的かつ継続的に取り組んでまいります。
 日弁連は、以上のような任官推進に有用なあるゆる措置を講じていくことをお約束いたします。その結果、恐らく数年を経ずして、弁護士任官状況は大幅に改善されるものと確信をしております。
 以上をもちまして、プレゼンテーションを終わらせていただきます。

【佐藤会長】 どうもありがとうございました。私どもの要望に応えられまして、早速積極的に取り組んでいただいて、大変心強く思います。
 余り時間は取れないんですけれども、せっかくの機会でありますので、御意見、御要望あるいは御質問がありましたら、委員の皆さんどうぞ。

【藤田委員】 現在、弁護士から任官された方については、希望しない限りは従来の生活の本拠を離れないという勤務地についての優遇措置がございますが、これから弁護士任官を推進して、相当多数の方に任官していただかなければいけないという状況でありますけれども、前回のプレゼンテーションのときに、現在以上の優遇措置は難しいというお話でございました。しかし、現在の勤務地についての優遇措置自体を維持することが、不可能になるのではないかと考えますし、大幅に弁護士任官を推進するということになれば、これを維持すべきではないというふうにも考えられるわけであります。その点についてどうかということを最高裁にお尋ねし、もしそういうような優遇措置の維持が不可能となった場合に、弁護士任官の阻害要因になる心配はないかということを、日弁連の方にお聞きしたいと思います。

【最高裁(金築人事局長)】 現在の任官の要領によりますと、弁護士経験15年以上の方は本人の希望により住居地又はその周辺の裁判所を任地とするということで、通勤できないところへは異動しなくていいという優遇措置を講じております。数が増えてまいりますと、それは維持するのは難しいと思います。どうしても、都会地の方に弁護士の数が多いわけですので、都会地である首都圏・近畿圏から地方へ任官していただく、あるいは転勤をしていただくということがどうしても必要になってくる。そのことは、弁護士会との協議でも話合いをしたいと思っております。

【日弁連(山内副会長)】 裁判官の給与も、弁護士と比べまして、それほど実質手取り収入においては、大きな差はないというふうに考えております。裁判官もそれなりの処遇を受けておりますし、仮に優遇措置がなくても弁護士の経費控除後の実質手取り収入と比較いたしまして、そんなに大きな差はない。したがいまして、その優遇措置の有無によって、任官が左右されるということはないというふうに考えております。

【藤田委員】 勤務地に関する優遇措置に関しても、心配はないということですか。

【日弁連(山内副会長)】 そこの辺りは、具体的なケースの問題でございますので、基本的には、今申し上げたようなことを考えております。

【藤田委員】 分かりました。

【竹下会長代理】 最高裁判所並びに日本弁護士連合会におかれましては、短時日の間に、今日お示しくださったようなこういうスキームをおつくりいただき、本当に心から感謝したいと思います。
 そのことに関連しまして、内容について伺いたいことがございます。今、山内副会長から、日弁連としても適格者を発掘することに努めると言われ、そのことが非常に重要であるので、推進委員会をもう一部では発足させておられるというお話を伺いました。今日いただいたこのペーパーにも、そういう推薦機構を設置するということが挙げられております。
 私も、弁護士任官を成功させる最も重要な、あるいは死命を制するほどの重要性を持つ問題が、いかにして適格者を選び出すかということであると考えております。以前に、アメリカの例をこの審議会の場で伺ったことがございますが、アメリカではABA、これは我が国で言えば日本弁護士連合会に相当するかと思いますけれども、そこが各弁護士について4段階評価をされて、例えば、類い稀に適任である、エクセプショナリー・ウェル・クオリファイドとか、大変適任である、ウェル・クオリファイド、などというような評価をされるということを伺ったわけです。日本弁護士連合会としても、これは将来の問題ですから、今どうかということを伺っているわけではございませんけれども、そういった個々の弁護士の評価制度のようなこともお考えになっておられるのかどうかということをお伺いしたいのですが、いかがでしょうか。

【日弁連(山内副会長)】 個々の弁護士の評価制度、これは質の高い裁判官を弁護士会が責任を持って推薦していくという立場から、当然必要でございます。例えば、近弁連におきましては、当該弁護士の相手方弁護士の意見、そういうことも聞きまして、その他あらゆる資料を含めまして、個々の候補者の適格性についてこれを評価し、検証して、その上で推薦していくという立場を取っております。

【竹下会長代理】 その場合に、選ばれた人だけの、言わば絶対評価と言いますか、そういう評価方法ですと余り低い評価は出てこないのではないかという感じがするのです。一定範囲の弁護士さんを評価の対象にして、この方だったらファーストランクとか、この方は第2ランクとかいうようなことでないと、お一人だけ取り出してこの方がいいか悪いかということだと、必ずしも十分ではないのではないかというのが1点。
 その評価される基準のようなものを、客観的にどういうポイントで評価をするのかというようなことをお決めになられるのだろうと思うのですけれども、その点についてはいかがでしょうか。

【日弁連(山内副会長)】 これはおっしゃるとおり、単独、一人の候補者についての評価ではなくて、いわゆるマス、複数の候補者をまさに発掘し、それからマスとしてセレクトしていく、殊に他薦、自薦も含めまして、その上で評価をやっていくということを考えております。ですから、一人だけ出てきたから、それを絶対評価してどうこうということは、システムとして考えておりません。

【竹下会長代理】 評価基準はいかがでしょう。

【日弁連(山内副会長)】 評価基準は、当然この中で調査、評価するわけですから、基準を設けなければいけないと思います。これは、最高裁との間の任官基準、そこ辺りも考慮に入れまして、その上でこれからその評価基準を定めていきたいと思っております。

【竹下会長代理】 どうもありがとうございました。

【佐藤会長】 ほかにいかがでしょうか。山本委員どうぞ。

【山本委員】 弁護士任官の拡大のためには、裁判所と弁護士会が忌憚のない意見を交換していただくのは、大変大事なことだと思っております。これから、是非率直な協力関係ができるように努力していただきたいと思います。
 今、日弁連さんのお話を伺っていて、ちょっと気になったことがありまして、この弁護士任官というのは、弁護士さん個人個人が自発的に裁判官になりたいとか、そういう自発的な意思の発動というのが、基本的に一番大事だと思うんです。しかしいろんな制約があって、なかなかスムーズには拡大が図れないというときに、おっしゃられたように弁護士会が中心になって、候補者を探したり、あるいは人数を集めたり、あっ旋みたいな仕事をやっていくということが必要なのかもしれませんけれども、これがずっと制度として張り付きますと、かえって何かそれにおんぶした形のものになってしまわないか。本質はやはり弁護士さん個人個人の自覚ではないかと私は思うんですけれども、それを阻害すると言ったらおかしいんですけれども、そういった意欲の発意をスポイルするような、要するに仏つくって魂入れずみたいなことになっては困るのではないかという感じがしているんです。今、竹下先生が言われたような、アメリカのABAはそうやっているじゃないかということなんですけれども、日弁連さんとして、毎年候補者を何人か選定して、といったことを恒久的な仕組みとしてつくられるというのは、ちょっと疑問に思ったんですけれども、その点いかがでしょうか。

【日弁連(山内副会長)】 おっしゃるとおり、任官は飽くまで個人の自発的な意思、これが非常に大事です。ただ、それを誘因する動機といたしまして、本人任せにするのではなくて、弁護士として評価され、任官候補者として推薦されることが名誉である、そういう雰囲気をまず弁護士会全体に醸成する。その上で、そういう雰囲気の下で、機関から勧められましたら、その本人もそれを非常に名誉と受け止めて、まさにそれが自発的な意思になっていく。そういう構成を取っていきたいということです。

【山本委員】 ある意味では、雰囲気づくりのイベントみたいなことをやりたいということですね。

【日弁連(山内副会長)】 イベントと言いますか。

【山本委員】 そういうことならよく分かるんですけれども、恒久的にそういう仕組みができてしまって、裁判所もそれに依存する、弁護士会さんが弁護士会さんの仕事として毎年それをやっていくというようなことになると、ちょっと本末転倒になってしまうんじゃないかなという感じがするんです。任官を志望する雰囲気が行き渡るための一つの、言ってみれば刺激策であるとか、そんなことならよく分かるんですけれども。

【日弁連(山内副会長)】 そういう意識を会員が共有しまして、それが定着して弁護士とはそういうものだと、いわゆる任官を勧められることは非常に名誉である。これは単年度だけではなくてずっとそういう意識、いわゆる公共の意識と言いますか、それを弁護士全体がそういう意識でもって弁護士になり、任官をしていく。それは一時的なことではなくてずっとそういう意識をみんなが持ち、その上に立っていろいろな具体的な推薦、組織やら手段やら、これを考えていくという構想でございます。それは可能であるというふうに思っております。

【吉岡委員】 今の議論とも関わってくると思うのですが、裁判官と弁護士とどっちが魅力があるのかということが基本的にあって、裁判官より弁護士の方が魅力があるから裁判官にならないという感じもするんですけれども、今までも弁護士任官制度はあっても、なり手が余りいないという実態がありましたね。そういうことから言うと、本当に裁判官に魅力がないのかというと、そうではなくて仕組みにむしろ問題があるんじゃないか、その仕組みに問題があるということからなかなか任官しないという、そこに問題があるとすると、やはり弁護士会がいろいろな制度をつくって、推薦するだけでは、なかなか喜んで裁判官になるというところまでいかないような気がします。せっかく最高裁と日弁連がお話しになって、いい制度をつくろうということでやってらっしゃるんで、やはり受入れ体制としての裁判所の在り方と言いますか、その辺のところも考えていく必要があるのではないかと思いました。
 それと、数の点でどうなのかという御心配がありましたが、一応年間3,000 人法曹を増やしていくという合意を得ていまして、前回でしたか前々回でしたか、最高裁から中山局長がいらして裁判官も増やしていかなければいけないということを言ってらっしゃるんですけれども、そこで出てきている数字は500 人だったと思います。それで検察の方が1,100 でしたか、そういう数字から言うと、3,000 人増えていって、必要としている増員枠というのそれほど多くはない、そういうところからいくと、供給としては十分過ぎるぐらいになるのじゃないかなと、素人はそう思うんですけど、その弁護士のところはどうなんでしょうか。

【佐藤会長】 それぞれよろしいですか。

【最高裁(金築人事局長)】 弁護士任官希望者が少なかったのはなぜかということについては、いろいろな見方があります。我々の方で考えている理由については、先ほど一つは申し上げました。それから、仕事の面で弁護士をやっておられても、裁判官としての仕事がすぐできるようになるわけではない。現になっておられる方でも、判決の面でも訴訟指揮や判断の面でも非常に苦労しておられるという面があります。それから、何よりもやはり転職ですから、年配になりまして仕事を変わるというのは相当大変なことだと思います。私も、この方にはなっていただけるといいなと思う方に、どうですかというお声を掛けたりすることもあるのですけれども、いや私は結構ですとおっしゃるんです。ですから、裁判所の方でも受入れ側としてできることはやるという決意でおりますし、現在なられている方も裁判所に来て大変よかった、温かく迎えてもらっているというふうにおっしゃっていただいていますので、その点も御認識いただければと思う次第でございます。
 数の点は、確かに基礎の数が増えてくれば変わってくるだろうと、状況は変わってくるということは当然あろうかと思っております。

【日弁連(山内副会長)】 これまで任官が進まなかった原因には、いろいろあると思いますけれども、私どもは裁判所の方にも原因があったし、私どもの方にも足りない点があったかと思います。ですから、これは両方が相協力して、これから改めていかなくてはならないというふうに思っておりますが、弁護士の方から見ますと、今回審議会におきまして、裁判官制度を大幅にいろいろ改革をなさいまして、私どもから見ますと裁判所がこれまでのキャリア・システムから大きく変わってくるという期待感が非常に大きいわけでございます。
 戦後の一時期におきましても、裁判所に対する期待が非常に大きくなった場合には、任官者も大幅に出てきたという実例もございます。今回の審議会におきまして、裁判官制度が変わってまいりますと、弁護士の方はまさに正しく受け止めて、任官者が大幅に増加していくだろうというふうに思っております。

【佐藤会長】 いかがでしょうか。時間の関係もありまして、よろしゅうございますか。最高裁、日弁連には、これまでこの審議会のために何度もお出ましいただきましたけれども、あるいはもうこれでお出ましいただくのは最後になるかもしれません。ひょっとしたらということがあり得ないわけじゃありませんけれども、これまで本当にいろいろ御協力いただきまして、心からお礼申し上げたいと思います。
 ちょっと口幅ったいことを申し上げるかもしれませんが、司法制度、50年以上続いてきたものを変えるということは大変な事業です。小さい司法とか言われますけれども、見方によれば巨艦だと思うんです。巨艦が方向を転換しようということは、並大抵のことではない。そして、また長い航海になるだろうというように思うわけでありまして、三権の一翼を担われる最高裁判所としても、非常に御苦労が多いことかと思います。それから、日弁連には、法曹人口が大幅に増え、その中で自治の実を上げながら、今日お話されたようなことも含めて、様々な課題をこなしていただかなければならないということで、非常に御苦労が多いことかと思いますけれども、私どもの意のあるところをくんでいただき、これからもよろしくお願いいたしたいと思います。
 本日は、本当にどうもありがとうございました。

【最高裁(金築人事局長)】 ありがとうございました。

【日弁連(山内副会長)】 ありがとうございました。
 (最高裁判所事務総局金築誠志人事局長、日本弁護士連合会山内堅史副会長退室)

【佐藤会長】 それでは次に、裁判官制度改革につきまして、意見交換を行いたいと思います。お手元には、本年2月27日の第49回会議の議事概要及び議事録を、本日の意見交換の参考にしていただくためにお配りしております。この議事概要及び議事録には、皆様からいただいた御意見を踏まえまして、大方の意見の一致を見たと考えられるところを私が口頭で取りまとめた内容の記載があります。本日は、この取りまとめの内容などを御参考にしていただきながら、更に最終意見の作成に向けて御意見をいただければというように思っている次第です。
 一応、この議事概要の記載の順番に従って、裁判官の指名過程に国民の意思を反映させるための機関、それから、判事の給源という大きな項目、この二つに分けて御意見をいただければと思います。勿論、相互に関連し合っておりますので、適宜御発言いただいて結構でございます。
 まず、裁判官の指名過程に国民の意思を反映させるための機関につきまして、御意見をちょうだいできればと思います。

【竹下会長代理】 皆様から御意見をいただく前に、ちょっとお断りをさせていただきたいと思います。お詫びと弁解ということになるかもしれません。
 今、会長からもお話がございましたように、2月27日の会議の席上では、会長が議論の内容を口頭でまとめられまして、第49回議事録によりますと、「私がここにまとめましたのは、一応のラフな口頭でのものでして、機会を見て、更に代理とも相談しながら、文書化したものをお示ししたいと思っています」と言われております(28ページ。なお63ページも同様)。これは私ども、会長も私も決して忘れていたわけではなく、十分承知をしておったのでございますけれども、大変審議スケジュールが立て込んでおります。そこへ持ってきてまた今度は最終意見に向けていろいろ準備もしなければならない。会長は、皆さんよくお分かりのとおり、非常に御多忙でいらっしゃいます。そこで、本来から言うと、文書化したものでもう一度取りまとめをさせていただくことになるはずだったのでございますけれども、もうこの段階でございますので、最終意見書の原案に今日の御審議の内容も取り込んで、この2月27日の取りまとめという意味も含めて、その原案を会長と私の方で相談してつくらせていただきたいと思います。その最終意見書の原案の裁判官の部分が、この2月27日の議論の取りまとめの文書化という意味も持つものだとお考えくださって、御了解いただければと思います。

【佐藤会長】 ありがとうございました。私から本来申し上げなければいかぬことを代理からおっしゃっていただいて誠に恐縮でございますけれども、そういうことで、御容赦賜りたいと思います。
 それで、先ほど申し上げましたように、まず、指名過程に国民の意思を反映させるための機関という項目から入りたいと思いますが、御意見をいただければと思います。
 49回の議事概要を御覧いただきますと、中央に一つの機関を置くということになっております。名称をどうするかは依然としてペンディングになっているわけですけれども、主体的に、選考、推薦等を行う機関とするということです。審査の在り方として、そういうまとめ方でございます。  設置単位ですが、中央に一つ置くわけですけれども、勿論、指名権は最高裁が持っておりますので、この機関の決定は最高裁を拘束するというような性質のものではないと思いますけれども、主体的に自ら適任者を選考、推薦等を行う機関とする。それを中央に一つ置く。ただ、最高裁も諮問委員会を提案なさったときに、やはり実質的に審議していただく必要があるというような趣旨のことをおっしゃったかと思いますが、実効性を持ってその機関が活動しなければいけないということで、私どもの審議会でもそういう観点からいろいろ議論になりまして、十分な判断資料、人事情報などに基づいて実質的な判断ができるように何らかの仕組み、例えば、概要によりますと、「地域ブロックごとに下部機関を設置するなど」とあるわけですが、そういうものを整備する必要があるだろうということになっております。そして、委員の構成は権威あるものにする必要があるという取りまとめになっているわけであります。
 よろしゅうございますか。

【藤田委員】 裁判官の任命に関する関係につきましては、議事概要の4ページに、「意見交換の整理」としてまとめられているわけでありますが、以前、その方向性についてはともかくとして、内容、表現については意見を言わせていただきたいということをお断りしたわけであります。この問題について慎重な配慮を要すると申しますのは、この4に書いてあります、「個々の裁判の内容を審査するなど裁判官の独立を侵すおそれがないように十分配慮されなければならない」という点であります。会長もおっしゃっておられますように、アメリカ等でも、裁判内容の審査にわたらないようにするということには非常に神経質に配慮しているということでございますが、その点を最も重視して制度の立て方を考える必要があるかと思います。そういう視点から申しますと、審査の在り方につきまして、「主体的に」という言葉が入っておりますが、自ら適任者の選考・推薦を行う機関とするというところまで主体性を認めるというのが如何であろうか。裁判への国民参加等の問題とは違いまして、裁判官の任命について民意を反映するというためには、任命についての諮問に対して意見を述べるという限度にとどめるのが適当ではないか。主体的に選考、推薦をすると言いますと、個々の裁判官について、その適格性を判断して、それについての意見を言うというふうに受け取られる恐れがあるのではなかろうかと思います。
 それから、設置単位でございますけれども、中央に機関を設けて、任命の適否についての判断をするということになろうと思いますけれども、ブロックごとに下部機関を設置するという点は如何なものか。前にも申し上げましたけれども、例えば、名古屋にいて、金沢、富山の裁判官の適格性について判断する資料というのは得られないわけでありまして、もし、そのような資料を収集するとすれば、各地家裁単位、各県単位ということでなければ、その資料を得ることが難しいということであります。
 また、その各地におきましては、裁判官がその地で執務した間の資料しかないわけでありまして、例えば、その10年の再任の時期に、ある地域の裁判所に赴任してきて、1年なり2年なりで再任の時期を迎えるということもあるわけでありますし、再任について判断するとすれば、過去10年間についての裁判官の執務についての評価、適格性ということになりましょうから、そういう意味では、ブロックごとに下部機関を設置するということではなくて、もう少しきめ細かく資料を収集する仕組みを考えるということの方が、妥当なのではないかと思います。

【竹下会長代理】 議論がいろいろな論点に及ぶ前に申し上げておきたいのですが、この議事概要の4ページの、今触れられました「意見交換の整理」というところは、これは事務局がいろいろ苦労してまとめてくださったものでございますけれども、どうもここは議事録の方で申しますと、その前の25ページから始まっている会長の発言の中の第1点イ.ロ.ハ.という項目分けをしているところをまとめたような感じがするのです。ところが、実際にはその前のページから発言が始まっているわけで、まず第一に、最高裁判所に諮問委員会というものをつくるということが前提でありまして、会長もここを踏まえて言っておられるわけです。
 ですから、まず一番の基本は、最高裁判所に、下級裁判所裁判官の指名過程に国民の意思を反映させるための委員会を一つつくるという、これが基本だと思うのです。そこがどうも意見交換の整理のところでは抜けている。それが、この議事概要の「意見交換の整理」では抜けているということを確認しておく必要があります。
 次に、その委員会が一体どういう役割を担うのか、あるいはどういう権限を持つのかということが問題ですが、これについては、前回、三つくらいの考え方があったと思うのです。山本委員や石井委員は、個々の裁判官について意見を言うのではなく、一般的な基準とか任命の在り方というようなことを議論するものであるべきだとの御意見だったと思います。それに対して最高裁の方からは、最高裁が諮問した事柄に対して答えるものとしている。さらに、これらと違って、比較的大勢の委員は、最高裁の諮問に答えるだけではなく、より主体的に自分の方からも適任者がいたら推薦できるという権限も認めてよいのではないかということだったと思うのです。
 ですから、ここの取りまとめは多数意見で書かれているのだと思いますが、そうだとした場合に、「主体的に、自ら適任者の選任、推薦等を行う機関」という表現が適切かどうかについては、私はちょっと疑問に思うので、「諮問に答え、あるいは自ら推薦をする機関」というぐらいのところで十分なのではないかと思います。会長を差し置いて恐縮ですが、まず、最高裁に置かれるこの機関の権限について意見を固めていただければ、後の議論がしやすいのではないかと思います。

【井上委員】 私自身も審議の中で、恐らく三つの種類があって、それぞれによって意見を言うやり方というのは違ってしかるべきではないかということを申し上げたつもりです。
 一つは、判事補になる場合で、これは、ほとんど司法研修所を修了した人が対象となるわけですので、そこから情報を得て、一括して選考するということになるだろうと思うのです。
 もう一つは、判事補を10年なら10年やった人が判事に任命される場合で、この場合には、希望者のリストというのがあって、これについてどうですかと意見を求める形に恐らくなるだろうと思うのです。これですと、言葉として何と呼ぶかは別として、実質は諮問的な形態になるだろうと思います。
 3番目の類型が弁護士さんを中心として、大学の先生もいるかもしれせんが、判事に任官する場合で、この場合には、それぞれそれまで仕事をしていたところに情報があるわけですから、それをどうやって実質的な情報を吸い上げていくというか、収集していくか。この情報には当然評価というものも入ってくると思いますので、それを推薦だとかいう言葉で表してもかまわないと思うのですけれども、そういう三つの種類があるので、今、代理がおっしゃったように、基本的には中央に機関があって、諮問もあるけれども、しかし主体的な推薦もあるというのがあるべき姿かと、私自身はそういうふうに思うのです。

【中坊委員】 今、井上さんがおっしゃった三つの場合はそれぞれ考えられるとして、とにかくいろんな経験を経て判事に選任されるという場合があるというのは分かるんですけれども、主としてここで問題になっているのは、おっしゃった三つのジャンルではなしに、4番目のジャンルとして、判事になっておって、再任の時期に今おっしゃっている問題が一番出てくる。最高裁事務総局が唯一やっておったことでいろいろ問題が起きているということから、この審議会もあったことになっていると思うんで、その場合に最高裁に、単に透明な手続、あるいは民意を反映したものとしての形が必要だということは分かった。しかし、裁判官の再任のときの実質的な情報というものを地方からどう吸い上げるかということが、今言うように問題になっているところではないかと思うんです。

【井上委員】 その場合は、私の申した2番目の類型と同じだと思います。再任も、初めての任命も、任用は任用ですので、その場合にこれまでどういう仕事をしてきたかという情報は当然吸い上げていかないといけない。そこのところは、ちょっとはしょってしまったのですけれども。

【中坊委員】 だから正確に言えば、判事補から判事になる場合と、判事から再任されて判事になると言うか、その場合はあるということです。そういう場合に、それなりに判事としての実績があるから、その実績というものを、どこでどのように評価して、それにまた民意がどのように反映していくかということを考えなければいけない。そのための中央に一つの諮問、それが推薦か諮問かは、ちょっと別に置いたとして、何らかの民意が反映するようなものの委員会が必要だというところは一致した。
 問題は、その委員会が必要な情報を中央だけにまとめてしまうと、また前と同じようなことに、最高裁事務総局が人事権を全部握ったと同じようにならないかということから、やはり地方のブロックにおいて、いろいろな実績というものをみないといけない。
 藤田さんは、そのブロックから意見を聞くのはいいけれども、その個々の裁判官の独立を侵すようなものになってはならない。だから、まさに佐藤会長がおまとめいただいたように、そこは十分配慮したどういう制度がよいかということでおまとめいただいておるんで、私は基本的に言えば、この間、まさに議事概要のところで、意見の交換の中で、その他としてわざわざ藤田さんの言われたことまで配慮されていただいているんだから、基本的には、私は、このおまとめいただいた文案でいいんではないかなと思います。それを更に議論していけば、今、藤田さんのおっしゃるようないろんな意見もありますけれども、要するに、我々の最大公約数として決まったのはどこですかと言われれば、まさに議事概要にお書きいただいた範囲のもので、私たちとしては、それよりももうちょっとそこが問題ではないかという点は、いろいろ意見を言うのはいいけれども、まとまったものはやはり、そこら辺りが最大公約数としてはまとまったものとしてとらまえていく必要があるんです。それを最終意見のところへ、本当はまだどういうふうに文章をつくっていただけるのかは、お任せというよりも、その段階で、もう一度見せてもらえるということになるんではないかというような気がするんです。

【井上委員】 そこは全く同意見なのですけれども、竹下代理が言われたのは、もう一つ足りないのではないかということなのでしょう。

【竹下会長代理】 一番最初に、最高裁判所にそういう諮問委員会的なものをつくるということは、これは当然なのですけれども、そこはやはり押さえておかないといけないのではないか。

【佐藤会長】 それは、議論の流れから言っても当然のことではないかと思われます。むしろ、名称をどうするか、諮問委員会でいいのか、あるいは何かもっと適当な名称があるのか、最後まで仮称になるのかどうか分かりませんけれども、今日御意見があれば、その辺も是非伺っておきたいということであります。

【井上委員】 大くくりに言えば、民意を反映させるような機関を設けるべきであるということで、それは、諮問に答えることもあれば、自ら選考ないし推薦することもある。そういうことならば、皆さんの合意が得られているところではないですか。

【佐藤会長】 27日にもその種のことを井上委員がおっしゃり、私も同じような意見を持ったのですが、それがストレートに概要で出ているわけではありません。そういうまとめ方をしたわけではありませんが、議事録を御覧いただくとお分かりになると思いますけれども、中央に置かれるその委員会は、実質的に事を決める、しかし、その中身としては、司法修習を終わってすぐ判事補に任用するときもあるし、判事補から判事に任命する場合もあるし、再任の場合もある。だから、審議の仕方はケースによってそれぞれあるでしょう。直接的にはそういう言い方をしているんです。どっちから説明するか、初めから幾つかのカテゴリーがあるよと言って、そこから説明していくか。この委員会はこういう任務ですよと、しかし、その中身はそれぞれカテゴリーに応じていろいろあり得ますよという説明をするか、私はそれは説明の仕方だと思っているんですけれども。

【井上委員】 実質は、恐らくそう違わないと思うのです。あとは、書きぶりの問題で、いきなりこういうところから書いているので、ちょっと誤解を生まないかというのが、恐らく代理の言われたことだと思うのです。

【竹下会長代理】 そうですね。

【佐藤会長】 誤解を招かないように、十分整理したいと思います。

【井上委員】 修文を慎重にお願いします。

【竹下会長代理】 そうですね。いきなり「主体的に自ら適任者の選考」と出てきますから、誤解と混乱を招きやすいのです。最高裁につくるのは当たり前だといっても、その委員会が何をするのか、いかなる権限を持つのかが重要なのでしょう。どういう権限を持つのかを抜きにして、まず中央に一つつくると言ってみても、何のためにつくるのか分かりません。この整理では何かここだけが自発的に、最高裁から諮問を受けるのではなくて、ここが主体的に適任者を選んでいくのだというように受け取られるので、それでは困るのではないかということです。

【鳥居委員】 私は、この第49回の議事録のどこかで申し上げてあるはずなんですが、私の考えている何らかの仮称諮問委員会的なものの本来の持つべき性格は、裁判のシステムそのものの第三者評価と、それから個別の裁判官の第三者評価と、この二つの使命を持っているべきだと思うんです。そして、第三者評価という言葉をあえて使うのは、もっと正確な言葉を使うと、国民による評価ということを言いたいわけですが、それを言ってしまうと、余りにもぎらぎらしたことになるので、要は第三者評価と言っているわけですが、そういう性格を持っているということを最高裁も理解してくだされば、非常にうまくいく国民評価が行えるような、ある種の評価システムを日本の司法制度の中に組み込むことができるんではないかと思うんです。

【髙木委員】 主体的にという言葉は、少なくとも、最終的な手続の権能は最高裁に憲法上もあるわけですけれども、それをより自主的に国民主権に沿ったものにするための方法論を模索しようということではないかと思います。そのキーワードはこの主体的と言うか、独立して民意を反映できる機構だと考えます。議論の経過からすると、そういうことではなかったかなというのが私の認識なんですが、その際、諮問とはどんな中身を、どういう形で行うことなのか。今、判事補のケース、あるいは、判事1回目のとき、2回目のとき、いろんなケースがあり得るんですが、こういう方が手を挙げられましたがいいですかというのが諮問の中身なのか、もうちょっと抽象的に今年度の任用はどうするんですかというレベルの諮問なのか、その辺いろいろ諮問の仕方、中身、勿論最終的には最高裁としての吟味があるんでしょうが、その辺によっていろんな取り方になるんだろうと思います。
 ここの審査の在り方のところを読みますと、受けようとする者にアクセスなどという表現があり、これは手を挙げる人の場合についてだろうと思いますが、それについて選考の基準やら、スケジュールなどを明らかにして、透明性に留意をしてやっていくという仕組みをつくったらどうでしょうかということですから、竹下会長代理がおっしゃる諮問ということも、この内容を見れば明らかなことではないかなというように文章から読めるんですけれども。

【竹下会長代理】 諮問という言葉は、このまとめには出てこないですね。その前のいろいろな主な意見の中には出ていますが。

【髙木委員】 これはネーミングや言葉遣いの問題などもあり、諮問何とか委員会と言ったら、それを諮問する行為が要るんでしょうし、だから要するに、裁判官の何て言うんでしょうか、選考委員会と言うのか、推薦委員会と言うのか、そうなれば、その行為をやればいいわけですし、ただ、最終的には最高裁に任命リストを提出する権限があるわけですから、そこでわざわざその言葉を括弧の中に書いてあります。これは当然のことですが、ただし書きが書いてあるわけですね。

【竹下会長代理】 それはもう、そのとおりなのですが。

【髙木委員】 だから、ちょっと御心配の向きがよく分からないと。

【竹下会長代理】 いやいや、このまとめ方だと中身がよく分からないからですよ。要するに、今、髙木委員が言われたように、また井上委員が言っておられるように、新任の判事補を採用するというときは、恐らく最高裁が一括して、今度はこういう人たちが判事補に任官を希望している、これが全部適任でしょうか、これらの者を判事補に指名してよろしいでしょうかという諮問をするのでしょうね。それをここで審査して、結構ですと、そのうち不適格者がいれば、この人は不適格者ですというようなことをする。再任のときも、私は基本的には同じではないかと思っているのです。
 しかし、そのほかに自ら手を挙げるという方もおられるから、そういう人については、言わば推薦委員会的な機能になるわけです。その実質が決まれば、名前はその実質に合うように決めればよいので、推薦委員会と言ったからこうだとか、諮問委員会と言ったからこうだというのは逆だと思うのですよ。

【髙木委員】 それはもう名前より、中身をどうするかの問題だと思います。だから、基本的には手を挙げた人を審査するわけでしょう。

【竹下会長代理】 そうすると、個別にみんなここへ申し込まないといかぬということになるのですか。最高裁の方から諮問するというようなことはないという前提ですか。

【髙木委員】 最高裁のつくっているリスト、その中に非適格な人がおられたら遠慮していただく。それはある人が10年間この仕事をやりたいという御意志をお持ちになるのなら、それで10年というのは一つのタームとして、法的にも限られているわけですから、次のタームが自動的にあることが前提ではない仕組みのはずですから、当然みんな応募するということになるのではないですか。

【佐藤会長】 多数の応募者が出てくるかもしれませんよね。

【髙木委員】 応募が私は大前提だと思いますよ。応募しない人のリストをつくって、それを審査しろなんて。

【竹下会長代理】 そういうことを申し上げているわけではありません。

【吉岡委員】 私も、再任以降については、再任されたいとか、それから弁護士から任官したい場合に、任官したいと言ったときには、判断材料はある程度あると思うんです。ですから、そこで、では諮問委員会なのか、推薦委員会なのかということになると、名前にこだわらないという考え方と、こだわるという考え方と両方ありますね。諮問委員会と言ったときには、最高裁がこの人はどうですかと言った場合に、それに対して答えるということで、それ以外は答えないという、それが諮問だという狭い考え方で考えた場合には、ちょっとそれではいけないのではないかなと思います。
 ですから、そういう意味で言えば、推薦委員会の方がいいと思うのですが、これは内容の方が問題だと言えます。
 それから、判事補の問題なのですが、判事補になる場合は、司法研修所を出たときに、判事補になりたいというか、裁判官になりたいと希望された方の中から決めていくという、そういうことになりますから、それは諮問委員会であっても、推薦委員会であっても、学生時代のと言うか、司法試験に合格する前からの実績しかないので、裁判官として、あるいは弁護士としての実績は全然ないわけです。そういう人をどうやって判断するのかということになるので、判事補になる段階で判断することは非常に難しいと思います。むしろ、少し社会的な経験をしていただいて、その段階で判断するというのであれば、まだ判断のしようがあるのではないかと思います。ですから、判事補になりたいという人の判断の仕方と、再任あるいは弁護士任官の場合とで、少し違うのではないかなと、素人の私の考え方なんです。

【佐藤会長】 それは、ケースによってですね。

【中坊委員】 私自身は、過去の、私たちがこの司法制度改革審議会で審議するときに、まさに我々の審議会の概要のところにも書いてあるように、いわゆる裁判官の指名を受けようとする者への指名過程へのアクセスの透明度。それから、確かに民意が反映していると、それが分かるということ、それをおざなりのものではないと、形だけのものではないということを言うために、ここに主体的にという表現が使われて、主体的にという言葉が、今、竹下会長代理がおっしゃるように、ちょっとそれは問題ではないかというのは、もう一遍お考えいただくにしても、やはりそういうのが、おざなりのものではないということだけは、きちんとしておくという意味では、みんなが一致しておったんだから、そこは我々としてもはっきりさせておく必要がある。
 そのことに関して、よく世の中で最初は判事補になりたいと言って、それを拒否された、任官拒否だと言って、いろいろ問題がありましたね。だから、そういうことのないようにというのが、やはり我々の今回の一つの改革の、そういうものをも踏まえてのことですから、だから、そこがちゃんと行われるということが必要だということだと思うんです。
 だから、確かにそれを表現して主体的にという言葉がいいのかどうかは、これは確かにおっしゃるように、ちょっと最終意見書でどういうふうにお考えいただくかですけれども、しかし、おざなりのものであったり、あるいは透明性がなかったり、あるいは民意が反映していないというようなものにはならないということだけは、ちゃんとくくっておく必要があると、こういうふうに思います。

【井上委員】 いつも同じようなことを言って申し訳ないのですけれども、そう大きく違っていないという気がしてきました。実質はほとんど同じで、ただ、最初に、そういうものを設けますよというところから出発せずに、いきなりその部分がきているのは座りが悪いのではないかというのが代理がおっしゃっていることで、実質的にはそうなのだということではないですか。

【佐藤会長】 だから最高裁にそういう委員会を一つ置くということ、これは皆さん、当然の前提でしょう。

【井上委員】 あとは、髙木さんがおっしゃったように・・・。

【髙木委員】 もっと直接的に言えば、諮問ということで、最初に最高裁のセレクションありきではないということを、はっきりしておけばいいんです。

【佐藤会長】 議事録の3ページのところですが、このときの審議に入るときに、中間報告のことをまず紹介して、「最高裁判所も、こういうように指摘されているところであります」として、「『名簿登載の決定過程が最高裁判所の内部手続として運用され、第三者の関与する場面がなかったために、国民の目から見て、採用が適切に行われているのかどうか分かりにくいものになっていたことは否めない』とした上で、『この点を改善し、国民の裁判官に対する信頼感を高めるため』に、『裁判官指名諮問委員会』を設置する」と言われたことを指摘しました。
 そして、「前回のヒアリングを踏まえて、我々は若干意見交換をしたわけでありますけれども、何らかの委員会を設置するということ、そして、その委員会の機能が、形式的、名目的ではなくて、実効性を持ったものでなければならないということについては、ほぼ共通の認識」ができたんではないかと述べて、ここから入っているわけです。
 そして、それを持たせるためにどうするかということについて27日にいろいろ御議論をいただいて、主体的という言葉が適切かどうかはともかくとして、そういうまとめ方になったという経緯があります。
 そこで、さっきからいろいろ御議論いただいているような趣旨はこのまとめの中に包み込まれているんではないか。そして審査するときには、事柄に応じていろいろあるかもしれないことであって、ここで、この場合はこうだ、あの場合はああだというように詰め切るのはなかなか難しいことなんで、それは、実際にこの委員会をつくるときに、具体的に考えていただくということなんではないかと思うんですけれども、いかがでしょうか。
 それで、藤田委員がおっしゃったように、裁判官の独立について慎重である必要がある。これは申し上げましたけれども、アメリカもすごく神経質に対処しているようです。外国もそうですから、それは当然のことではないかと。

【藤田委員】 今、皆さんがおっしゃったように、幾つかのジャンルがあって、その間でちょっとニュアンスが違うんですね。ですから、裁判官の独立が一番問題になるのは、判事補から判事への任命、判事の再任という、要するに、既に裁判官としての実績があって、それをどう評価するかという場面が一番裁判官の独立に関係があるんです。ですから、それについてはかなり神経質にやらなければいけない。
 そうすると、例えば、あの裁判官は医療関係事件で患者側を負かしたとか、著名事件で無罪判決をしたとかというようなことで適否を判断されるようなことがあってはならないということです。一方で、例えば、外部の弁護士、あるいは大学教授から裁判官に任命するという場合は、これはもう推薦でもいいのかもしれません。しかし、全体として、裁判官の独立ということについて、何か誤解を招くような表現があってはならない。名は体を表すと言いますから、主体的に選考すると言われると、ちょっと問題がある。その表現、内容について御勘考願えればと思います。

【中坊委員】 今、藤田さんのおっしゃられるところまで言われると、ちょっとやはり異論がある。確かに裁判官の独立は大切だし、またわざわざここにお書きいただいて、私も重要だというのは認めますよ。しかし同時に、独立が独善に終わっているという批判が利用する立場からはあるわけですから、それを独立の名の下に、私らが全部やったんだからそれには一切触れるなというのはおかしい。やはり裁判結果を国民が見ているわけですから、個々の事件がどうだああだというのは確かに独立を侵さないようには注意しないといけないけれども、同時に、他方でそれが裁く側だけの論理でやってはいけないよということもしっかりしていかないと、それが主体的にはいいかどうかはちょっと別問題にして、その点はお互いによくわきまえた上で書いてもらう必要はあると思います。

【佐藤会長】 時間も限りがあります。そうでないとまた6時以降になりますから。
 これは先ほど私が申し上げたような趣旨で御理解いただけないでしょうか。そして裁判官の独立に対する配慮がものすごく重要だということは、全体をセットとして最終意見で書き込ませていただきます。実際の文章、表現ぶりなどについては、最終意見を見る中でいろいろまた御指摘をいただきたいということで、この問題はいかがでしょうか。よろしゅうございますか。

【北村委員】 それはいいんですけれども、今のに関連してですけれども、議事概要のところで、一つはそのときの議論をだんだん思い出してきたんですが、ちょっと思い出すのが遅くて申し訳ないんですが。先ほど藤田委員がおっしゃいました地域ブロックの下部機関を設置するというところが非常にそのときに問題になりまして、私も申し上げたと思うんですけれども、ここの議事概要の書き方ですと、「下部機関を設置するなど」と書いてあるんですが、「何らかの仕組み」というふうに会長がそこをぼわっとした感じでまとめられたと思うんですね。
 ですから、地域ブロックごとに下部機関を設置するということについては、下部機関の性格についての考え方が分かれていて、まだそこはまとまってはいない、でも何らかの情報をくみ上げる仕組みは必要であると。

【佐藤会長】 そうなんです。これも議事録を御覧になるといろいろ意見が出ているんですけれども、情報を提供するというか、「評価」という言葉が適切なのかどうか分かりませんけれども、何らかの判断がそこに入らないで、まさに情報の収集・提供機関だけなのか。「評価」というといろいろ別の問題が出て、こうだああだという話になるのかもしらぬのですけれども、そこは非常に悩ましいところでして、単なる情報の収集・提供機関ということかどうなのかは、ここでは詰まっていないと思うんです。
 ただ、そこは少し括弧に入っているところがあるんですけれども、そういうものはやはり設けないとだめなのじゃないか、中央に置かれる委員会の実効性が薄くなるというか、実効性を欠くという心配があって、そういう裏付けが必要だろうというところは、皆さん共通の御認識があるというように思うんですけれども。そこを難しく議論すると、またなかなか。

【北村委員】 相当難しかったと思うんです。

【佐藤会長】 単なる情報収集をしてということになるのかどうかというのは、ここは制度設計するときにどうなりますかね。

【北村委員】 そうなんですね。

【藤田委員】 結局は全国から情報を集めざるを得ないと思うんですね、10年間なら10年間を評価するとなると。そうすると、地方機関といっても、その地方で在任中の資料は、各地家裁ごとだと思いますけれども、それだけでは足りないということになり、結局、全国的な資料収集をしなければならなくなります。

【佐藤会長】 最高裁の人事、あれは、高裁単位でその管内のことを大体考えるということではないんですか。長官とか事務局長とかで。

【藤田委員】 人事評価ですか、任命ですか。

【佐藤会長】 任命というか、ここにこういう裁判官がいるからと。

【藤田委員】 異動ですか。それは地家裁の所長と高裁長官が協議し、高裁長官がまた最高裁と協議します。全国的な規模での異動になりますから、まず高裁単位で考える。高裁の中では、地家裁所長を集めてそこで協議をするという形で運んでいるわけです。

【吉岡委員】 実態はいろいろあると思いますし、細かく考えていくとすごく大変なんですね。それで「何らかの」というのはとてもうまい表現だと思ってはいるんですけれども。

【佐藤会長】 それしか言いようがないと思うのです。

【吉岡委員】 やはり任命についても人事制度についても、透明性、客観性があるのかというのが利用者一般の意見ですから、そういう意見を反映して、それこそ何らかの工夫をする必要があるということが、ここで言われていると思うんです。
 それで、具体的な個々のことになるとかなり意見の違いがあることは、もう今までの意見でも十分分かっているところだと思いますので、その辺を踏まえて、取りまとめの最後の文章のところは多分後から文章が出るのだと思いますけど、とりあえずは。

【北村委員】 鳥居先生がおっしゃったことで、私は、第三者評価の機関をつくって、最高裁にしても日弁連にしてもそれを評価するということは必要だと思っているんです。何回かここで申し上げている。それが、指名諮問委員会とは別だと私は思うんです。その指名諮問委員会が外部評価をするというのはおかしいだろうと、その外部評価の機関がこの指名諮問委員会についての評価を行うとかということはあり得ると思うんです。
 ですから、そういう第三者評価機関をどこかにつくってやるというようなことについてのまとめは、今まではっきりとしたことはなされていないのかなと。そのことについてどこで申し上げればいいのか分かりませんので、今ちょっと申し上げました。

【佐藤会長】 さっき紹介しましたように、最高裁判所も諮問委員会に関して第三者的なという言葉を使っているんです。

【北村委員】 それとは別だと。

【佐藤会長】 だから、第三者という言葉、あるいは外部という言葉をどういう意味で使うかにもよりますので、それを今ここで持ち込んで議論すると。

【北村委員】 だから、別の問題として、お考えおきいただければということなんです。

【山本委員】 この議事概要というものの性格がよく分からないんですけれども、ここで書かれている「主な意見の概要」というのは、いきなり中央に一つ置くのか、地方と中央であるべきかという話がずっと並んでいて、「意見交換の整理」のところで「審査の在り方」、要するに役割がここで出てきますね。これは49回の議事の概要としては、4ページですが、いきなり中央に一つ置くべきか、いや、地方にも要るのではないかという意見交換が延々と続いていて、またいきなり整理のところで「審査の在り方」というのが出てきて、ここで任務があるんですけれども、この任務がよく分からない。
 ですから、さっきも少し出ていますが、判事の任用と再任のときに全員について判断するのか、あるいは地方にもし置くとすれば、地方の裁判所に欠員が出たときの判事をだれにするか、そういうことまで地方の諮問委員会なるものがやるのか。

【佐藤会長】 いや、だから、地方にはどういう機関を置くのか、何らかの仕組みを。

【山本委員】 だから、そもそもどういう役割なのかという議論が煮詰まっていないのに、いきなり中央に一つとか何とかという意見があるのはいかがかなと。

【佐藤会長】 中央に一つ置くということが大前提です。

【山本委員】 何をやるのかというのが示されていないんじゃないでしょうか。それは相当議論したはずです。

【竹下会長代理】 ですから、最初に申し上げたように、中央に一つ置いて、それが何をやるのかというところをまず押さえなければいけないということですよ。

【佐藤会長】 指名をするときの実質的な判断をそこでやっていただく、しかし、その実質的な判断の中身が、先ほどから言っているように、カテゴリーに応じていろいろあり得るだろうと。だから、それを、この場合はこうだああだと、ここですべて細かく制度設計するのは難しいでしょうということを、先ほどから申し上げているんです。

【山本委員】 指名というのは具体的には何ですか。

【佐藤会長】 指名というのは、最高裁が内閣に名簿を出すということです。

【竹下会長代理】 要するに、判事として任命をするべき者を指名する。

【山本委員】 任用と再任ということですね。

【竹下会長代理】 そうそう。

【井上委員】 さっき北村先生がおっしゃったのは全く別の問題で、それは中間報告では司法参加のところに書かれていますね。裁判所、弁護士会、検察庁を含めて運営への参加という形で国民の声を何らかの形で反映させるべきだと、そういうところの問題として位置付けられているのですよ。

【北村委員】 それは中間報告とは違うんですよ。別の問題として、それは中間報告にあるんですけれども、それ以後、余り詳しく議論されていませんよね。場所場所ではちょこちょこっと出てきているんですけれども、私はそれを最終意見にきちっと入れていただければいいなという希望を持っているものですから。

【佐藤会長】 それは、弁護士についての苦情処理のところでありました。裁判官についても、私ちょっと申し上げた記憶があるんですけれども、今の訴追委員会には、いろいろな苦情が持ち込まれ過ぎているのではないか。井上委員もちょっとそれに関連して発言されたことがあったと思いますけれども、本来、裁判官についても苦情の問題があるはずなんです。それをどういう仕組みで処理するかという問題があるんです。ただ、裁判官の独立との関係で相当微妙な問題があって、それ以上には立ち入ることなく、大体その辺の議論で終わっているんです。

【北村委員】 私が申し上げたいのは裁判官とか弁護士とか、そういう人だけではなくて、制度全体について、システムについてもの評価なんです。それも含めて。

【佐藤会長】 家庭裁判所の運営にかかわる委員会がありますし、そういうものをもっといろいろと考える必要があるのかもしれません。

【北村委員】 そういうことなんです。それで終わっちゃっていますでしょう。

【井上委員】 その点についてはその後議論していませんので、今この段階で・・・。

【北村委員】 入れるのは難しいということですか。

【井上委員】 難しいというか、実際に議論していないわけですから。

【中坊委員】 全く議論していないわけではなしに、弁護士会の運営についても、裁判所の運営についても、検察庁の運営についても、国民の意見が反映されるようにしなければならないというところまでは一致しているんですね。だから、中間報告で一致しているんだから、そこから先、それを更にどういうような制度設計するかというところまでは、確かにおっしゃるように行っていないというだけのことであって、我々のものがすべてを全部決めるというのは非常に難しいと思いますね。この審議会としては方向付けをしないと、今日まさに審議する推進機構とか、何かのところでそれをまさに具体的に制度設計していくわけだから、我々としては方向付けと大きな意味をちゃんと明らかにしておけば、また必要性等を明らかにしておけば、それで我々の審議会としては、一応その役目は終わって、次の段階に移らないといけないと思いますね。

【佐藤会長】 では、いろいろ御意見がありましょうけれども、3時になりますので、この問題は一応さっきのような取りまとめにさせていただきます。今日、27日の審議がどこまで深まったのかはいささか何ですけれども、これはこれで一応終わらせていただいて、休憩を10分挟んで、2番目の給源の問題に入らせていただきます。
 では、休憩いたします。3時10分に再開します。
  (休 憩)

【佐藤会長】 早速始めます。
 裁判官制度についてもう一つ、判事の給源の問題、判事補の他職経験関係について御議論いただきたいと思います。時間も大分押し迫っておりまして、余り時間は取れないと思いますけれども、少し意見交換していただいて、イメージをもう少しはっきりさせることができればと思います。

【水原委員】 その前に申し訳ございません。もう時期を失したのかもしれませんが、先ほどおまとめいただきましたことについて、ちょっと意見をよろしゅうございますか。

【佐藤会長】 はい。

【水原委員】 井上委員もおっしゃったけれども、先ほど来、諮問委員会にするかどうかは別として、この委員会の設置について、内容的には大きく異なるものではないと思います。ただ、おまとめいただいた柱立て、順番、この辺りでちょっと誤解を招くような感じがございます。と申しますのは、「設置単位」として取り上げているところに問題があるわけで、一番最初にそれを持ってきて、最高裁判所に対して裁判官の任命に関する意見を提出する機関を地方に置くとともに、十分な判断資料、人事情報等に基づき、実質的な判断ができるよう、何らかの仕組みを整備する必要がある。その整備する仕組みの内容については、いろいろな方法がございましょう。だから、何らかの仕組みということでまとめられたことは非常に結構だと思いますが、それを一番最初に持ってくる。その次に、3の「委員会の構成、委員の選任方法」を持ってきて、3番目に、その委員会における審査の在り方をどうやるべきかというふうに持ってくる。それで、4番目に「その他」のところを持ってきますと、皆さん方の御意見、そのままが出てくるのではないかという気がいたしますので、決してこの柱立てにこだわるつもりではございませんが、愚見を申し上げておきます。

【佐藤会長】 ありがとうございます。最終意見の作成のときに御参考にさせていただきます。
 給源の方はいかがでしょうか。判事補の他職経験のところでありますが。さらに、時間の関係もありますので、特例判事補制度のところも含めてやっていただいて結構です。

【竹下会長代理】 私が最初に発言するのは適当ではないかもしれませんが、9ページの上の3行目にマル2がございます。そのうちの最初の(マル)、「真に実のある経験を積ませるため、裁判官の身分を離れて他の法律専門職等の職務に就くこととするべき。」というところですが、これは前からいろいろ問題があるところで、いろいろ条件があったと思うのです。まず、本人の承諾が必要なのではないか。憲法上の身分保障があるから必要なのではないか。それから、これは必ずしも全員の意見が一致していたわけではないかもしれませんけれども、年金等いろいろな処遇上、不利益を受けることがないというような条件が付いていたと思うのです。ところが、こういう書き方ですと、無条件に裁判官の身分を離れて他の法律専門職に就くということが決まったように読めてしまうので、そこはここでの了解とは違っているのではないかと思います。それだけ念のために申し上げます。

【佐藤会長】 そのことは皆さん、念頭に置いていらっしゃったのではないかと思います。確かに代理もこの趣旨のことをおっしゃっておられまして、非常に重要な事柄なんですけれども、やや付随的な問題のような気もします。

【竹下会長代理】 本質的な問題ではないけれども、それぞれの個人にとっては重要な問題ですから。

【藤田委員】 今のところにも関連するんでありますけれども、判事補に弁護士等、他の法律専門職等の職務経験を積ませることを制度的に担保するとありますが、議事録によりますと、会長のまとめでは、弁護士、そのほかに検察官もあり、行政庁、民間企業の経験、あるいは最高裁等は留学等も含めて、そういう幅の広い経験を積むということがいいのではないかという趣旨をおっしゃっている。その「等」の中に入っているのかもしれませんけれども、弁護士だけを例示していると、そういうニュアンスが出てこないので、もう少し具体的にお書きいただいた方がいいのではないか。
 その次の、裁判官の身分を離れて他の法律専門職等の職に就く。これは弁護士事務所に行って弁護士経験をするのに、弁護士の資格がなければ、お客様で実のある体験ができないからということで、弁護士事務所に行くときには弁護士の資格で行くのがよいとは申し上げましたけれども、それ以外の今申し上げたような幅広い場合について、裁判官の身分を離れるというような議論はなかったのではないかと思います。
 それから、期間の点でありますが、これは弁護士任官を日弁連も最高裁もいろいろ努力していただいているわけでありますけれども、その弁護士任官の飛躍的な拡大ということが裏付けとしてないと、迅速で適正な裁判を受ける国民の利益が害されるということもあります。期間の点については、議事録では会長は4か月や半年や1年程度では足りないかもしれないという言い方をされておりますけれども、そこら辺のいろいろなほかの諸条件を勘案して期間が決まってくると思いますので、そういうニュアンスを出していただければという気がします。

【佐藤会長】 今3点にわたりまして御意見が開陳されましたけれども、関連してどうぞ。

【鳥居委員】 今のお話の2番目は、自分の記憶では、諸官庁に出るとか、一般企業に出るとかということを申し上げた記憶もありますし、何人かの方からそれは出たと思うんです。あとはそのやり方だと思うんです。やり方なんですけれども、こんなことを最終意見の中でどう表現したらいいか分かりませんが、私立の企業や学校から、公の職に移る時とても困るのです。
 一つの便法として、私どもの大学の場合には、転籍扱いというのをやっているんです。今度私のところから閣僚が一人出ていますが、今までの制度ですと、退職しないと閣僚になれないんです。そうじゃなくて、転籍扱いにしまして、向こうの仕事が終わったら帰ってきていいことになるわけです。会計検査院長もうちから出ているんですけれども、これも転籍なんです。
 同じように、逆にそれに準ずるような何らかの仕組みが裁判官職についてもあって、転籍という方法で外に出る。そして、外での経験を積む他職経験の時期が終えたならば戻ってくる。その転籍ということの含意は、例えば、公的な社会保障とか、様々なものは、継続性を持たしておくというようなことが含意なんですけれども、要するに、身分は完全に離れるんだけれども、帰ってきてからの身分は保障される。そして、転籍中の留守の期間について不利益を被らないということが制度的に考えられればいいんで、余りここで身分を離れることを単純化して考えて、議論を難しくしない方がいいんじゃないかと思うんです。

【佐藤会長】 転籍の場合は、公的な何かに限っているんですか。

【鳥居委員】 今のところは公的なのに限っているんですが、将来はまさに学校の先生がしばらくの間、企業の役員をやって帰ってくるというのも転籍でいいんじゃないかと思います。あるいは団体の役員をやるとかね。

【竹下会長代理】 そういう制度ができれば本当にいいですね。

【鳥居委員】 日本はそういう柔軟性を導入しませんと、日本の社会のダイナミズムが出てこないと思うんです。

【竹下会長代理】 全く同感です。

【山本委員】 ケース・バス・ケースじゃないでしょうか。民間企業などで受け入れる場合には、給料を国の方で持っていただいて来てもらうとか、そういうこともあるでしょうから、一概に身分を離れてしまうという決め方は硬直的だと思います。

【髙木委員】 一般企業の感覚で言えば、他のところで人件費を負担されている人は、お客さんということだと思います。我々が何でこういう議論をしてきたかというと、できるだけよい判事さんを得たい、そのためにはどうすれば良いか、判事補制度の現状をどう評価するかは別として、そういういい判事さんを得るために、他職経験というか、そういうことをしてもらうことが一つの方法として有効なんじゃないか、そういう議論をしてきたと思っています。そうすると、その他職経験の実効性を高めるためにどういうやり方がいいんでしょうか、論議の筋道としてはそういうことだろうと思うんです。
 そういう意味では、留学の話があったけれども、これは他職経験というよりは、お勉強だと私は思うんです。例えば、外国のローファームで実務をやられるとか、外国の裁判所で実際に裁判実務、国の制度が違うので、そう簡単に行くのかどうか私はよく分かりませんが、そういうことなら、海外に出ることが全部お勉強というか、いわゆる学生的なお勉強ではない面があるなら、それはそれで対象に考えたらいいんだろうと思うけれども、実質的に、いわゆる留学というのは勉強なんです。それも法律的・学問的な勉強中心の留学、そりゃその国の生活慣習やら何やら覚えてこられるかもしれないけれども。そういう意味では、留学というのは、ここで言う他職経験ではないと思います。  あるいは民間企業の場合も、この弁当持ちは、お客さんですよ。何かその人にちょっと仕事をしてもらってミスしても、責任を問うかと言ったら、お客さんはしようがないですかなということになる。そういう意味では、民間企業に行かれるなら、皆さん法曹資格を持っておられるわけだから、きちんと弁護士登録されて、弁護士として民間企業に出ていかれて仕事をするという形にすれば良い。現に例えば、判検交流でも、法曹資格内の移動をされて、仕事に就いておられる。そういう意味では、いろんな経験をしましょうということを、いかに実質的、効果的にそのレベルを高くするかということだと思います。そういうときには民間企業に来て仕事をしてもらう場合、給与は高い低いはいろいろある。裁判所でもらっているものと同じだけ払わないというところは、うちはそういうことではお受けできませんと言えばいいんで、来た以上はちゃんと仕事をしてもらって、その代わりに仕事をする上で起こったことについては自分で責任を持ってもらう、そのくらいの覚悟を持ってやっていかないと、余り意味がないじゃないかなと思います。

【山本委員】 他職経験とおっしゃるけれども、よりよい裁判官をつくるためのキャリア・パスだと思うんです。ですから、身分の如何を問わず、受け入れた民間企業の使い方にかかるわけです。給料を出したってお客様扱いすることだってあるわけですから、そこのところは余り形にとらわれない方がいい。
 それから、海外留学などはうんとやってもらった方がいいと思います。勉強だとおっしゃるけれども、勉強は大事だと思います。

【中坊委員】 先ほどから出ているように、私たちは、その点は大体合意してきたと思って、意見も一致していると思うんだけれども、要するに、裁く立場ばかりを継続していて、10年経てば判事になるということはおかしいということになって、その前にほかの職業に就いてもらって、それから判事というものになってもらいましょうということで一致してきた。その真意は、まさに髙木さんのおっしゃるように、裁かれる立場、そういうものを本当に実効あらしめるためには、まさに身分を離れてなるのが一番骨身にしみて分かるという意味において、身分を離れてということに達した。
 先ほども藤田さんのおっしゃるように、それを制度的にどう担保するんですかということには、確かにいろいろ裁判所の方も直すとか直さないとか、いろいろあったかもしれないけれども、それを制度的にどのようにしますかというところまでも、我々は一致してきたんで、確かにその意味では、より質の高い裁判官、より質の高いということは、まさに国民の側から、裁かれる、利用する国民の立場から見てのものなんだから、普通の国民の立場になっていくということが前提なんです。そうならば、身分も裁く方の立場から、裁かれる側の一般の利用する立場に一旦なってもらって、その上で今度は裁く方の立場になってもらいましょうという意味では、我々はおおまかに一致していたと思うです。

【竹下会長代理】 その裁く、裁かれるという点ですが、中坊先生は前々からそう言っておられるし、髙木委員も同じ御意見かもしれませんが、そうでない意見の方が私はむしろ多いのではないかと思うのです。要するに、法律家として、いかにキャリアを豊富にして、成熟させるか、それが大事だということだと思います。

【中坊委員】 だから法律家としてというのは、要するに、基本的に言うたら、なぜ判事補という裁く立場のまま継続していってなったらおかしいということかということになれば、そういうことの受ける立場ということに、民間企業であれ、行政庁であれ、一当事者として参加していくという意味では、裁かれるという言葉が余り気に入らないようであれば、利用する側に立って、立場の交換をしないと、意味がないんじゃないかということは、大体みんなも一致していたんじゃないですか。

【石井委員】 判事補の外部派遣制度ということについては、基本としては、知識とか経験の多様化を図るということでありますから、弁護士事務所に行くのも大変結構なことですし、海外留学とか、企業とか、そういうところへの出向も検討していただくのも良いのではないかと思います。
 このようなことは何か月も前に申し上げなければいけなかったことでありますが、例えば、商工会議所などでも、昭和60年くらいから、毎年十数人の判事補の方々を研修という形で受け入れております。既にかなりの数になっているわけであります。経団連でも恐らく同じ様に受け入れられていると思いますが、そういうことが行われていることもほとんど知られておりませんし、今まで審議会で話題に上ったことも全くありません。本当だったらヒアリングなどをしたら良いとは思いますが、今はそのような時期ではありませんので、事務局の方で少々お調べいただいて、ごく簡単に、これによりどういう成果が出て来ているかということを教えていただけたら、これから先の制度を考える上で大変役に立つことではないかと思っております。

【藤田委員】 中坊委員の御意見は分かるんですけれども、私が幅広い体験を判事補にしてもらった方がいいと申し上げていたのは、そういう趣旨ではなくて、裁く立場に立ち続けていても、裁かれる者の心情を理解できる人もいれば、裁かれる立場に立っても、裁かれる人の心情が理解できない人もいる。要するに、その人の人間性の問題ではないかということを何遍か申し上げているわけです。  幅広い経験をした方が視野が広がるし、人間としての深みも出るしという意味で、弁護士、検察官、行政庁、企業等の経験をするのがいいのではないかということで申し上げているわけです。
 それから、髙木委員のおっしゃった留学の問題なんですけれども、裁判所でやっている留学にはいろいろなものがございまして、終始大学で勉強するのもあるんでしょうけれども、裁判所と弁護士事務所を回って研修をする、あるいは1年大学に行って、残りの期間を実務をやるという留学もございますので、そういう意味では、幅広い体験を積めるという内容であろうかと思います。
 言い落としましたので、特例判事補制度の方も申し上げますと、本来、特例の制度というのが応急的な趣旨であることから言えば解消に向かうべきだという点は正論だと思いますけれども、何度か申し上げているように、キャリア・システムの国でこういうような判事補制度というのが設けられている国はありません。それから、現在10年が必要とされているということがありますが、現在特例判事補たちが支部等で健闘しているということを申し上げましたけれども、判事の任命資格について、どれだけの年限を要求するかというのは、今の裁判所法の10年という期間が適当かどうかということは法制度も含めての全般的な検討ということをやっているわけですから、やはりその検討の範囲内に入れていただければと思います。

【髙木委員】 今の人間性論は、人による、中には裁かれる人の心情が理解できない人もいる、しかし、そういう人に裁かれる者の身になってみてくださいという議論に抗し切れないんです。できるだけそういうことのない人にレベル高く裁いていただきたいというのが国民の普通の願望です。
 例えば、学校の先生でも教職資格を取られて、就職されたけれども、教えるのが苦手な人がおるんです。今度はルール改正で、教えるのが苦手な人は、教える現場ではなくて、ほかのところで働いてもらいましょうというふうに、多分、今の国会にそういう法案が出ていると思いますけれども、そういう意味では人間性論だと言ったら、今までの議論は成り立たないんで、教わらないでも人間性をよく分かっている人ばかりならいいけれども、そうではない人もおられるんだから、できるだけそういうものに近づいていただく道程として、いろいろみんなで知恵を絞って、こうしていったらいいんじゃないかという議論をしているはずだと思います。
 それから、留学にもいろいろあるんでしょう。では、行って、向こうで具体的な事件を持たれて、実務を自分でこなされてということで、もしおやりになっている部分があったら、それは別に留学という名前を使わなくても、向こうで弁護士の仕事をしておられますでいいんだろうと思うんです。
 一般的な語感として捉えられる留学というのは、勉強に行かれるということだろうと思います。もしどうしても留学が不可避だというんなら、10年の外でおやりになったらいいんで、10年の判事補経験、あるいはいろんな資格による経験を課しているわけですから、留学に行くなら、その留学期間は別途にカウントされて、10年という期間には入れない。今までの論議の筋からすると、それがオーソドックスな論理のとらえ方ではないか。  それから、竹下先生が言われたことは分からぬでもないですが、本人の承諾という要件、これは職業選択の問題とかいろいろあるのかもしませんが。

【佐藤会長】 身分保障ですね。

【髙木委員】 そういう他職経験をしてくださいということがルールの対象であるとしたら、それを拒否する選択が正当化されるというのは私はないんだろうと思うんです。

【佐藤会長】 そこは既に議論しておりまして、判事の任命のときに考慮するということですね。その趣旨を明確にすべく、裁判所法を改正するべきだ、いや、最高裁規則でもいいんじゃないか、あるいは、さっき議論した諮問委員会ですか、この種の委員会の判事選考のルールとして考えればいいんじゃないか、等々のレベルの議論だったと思います。

【髙木委員】 今会長からお話をいただいたので、もう言いませんが、もう一つ、処遇上のことも、確かに身分保障は必要、しかし所得保障まで、この他職経験というのが本来すべきなのかについては議論があるところだと思います。

【竹下会長代理】 それはそうですけれども、先ほど鳥居委員もおっしゃったように、その個人にとっては非常に大きな利害関係を持つのですから、それを全然考慮しないというのは、制度の組立てとしては乱暴なのではないですか。

【鳥居委員】 私が申し上げた転籍というのは、所得保障はほとんどの場合しません。

【竹下会長代理】 所得保障ではなくて、先ほどの社会保障とか何かです。

【佐藤会長】 年金とか何とかですね。

【竹下会長代理】 所得保障はできないと思います。

【吉岡委員】 転籍という考え方はとても面白い考え方だと思って伺っていたのですけれども、基本的には身分を離れるという考え方で行かないと、どこへ行ってもお客様になってしまうという問題があるような気がいたします。
 それから、留学についてですけれども、確かにアメリカに行ったときも、ロースクールにいらしている方がいらっしゃいまして、どこの裁判所ということも伺ったんですけれども、報酬を保障されて、それでいらしているという場合に、他職経験とは言えないのではないかと思います。  少なくとも職業という考え方で言えば、勉強するのは職業ではありませんし、どこかのローファームなり裁判所なりで働く、そこで収入を得るということでないと、他職という職業の経験にはならないのじゃないか。基本的にはそういう考え方でないといけないのではないかと思います。
 これは国内留学でも同じことでして、どこかの大学院に留学をしたというようなことも含めて、では、他職になるのかということになると、利用者の立場から言うと、とてもそれは納得できるものではない。特に裁判官の場合は、国のお金ですから、むしろ税金でということになりますから、それはなかなか容認されないことだと思います。その辺は配慮する必要があると思います。
 それから、もともとなぜ他職経験が必要となったかというところに戻って考えてみますと、今の裁判官はほとんどは給源としては判事補ということになっていて、しかもその判事補は決められた階段を上がっていくので、非常に視野が狭いのではないか。そういう意味から、人間的な幅を持つ意味で、いろいろな職業の経験をするということだったと思いますし、基本的には弁護士などを含めた法律専門職種等のという、そういうことだったと思います。
 ですから、余り他職経験が、どこでもいいんだということになってしまうと、ちょっと違うんじゃないかと思います。
 それから、期間についてですけれども、1か月や2か月では、相当の期間とは言えないというのは当然ですけれども、やはり経験をして、そこの場での経験として身に付くというか、分かるためには、2年でも無理だろうと思います。やはり十分に分かって、そこの場の機微が理解できる。そのためには、私は少なくとも3年は必要じゃないかと思います。ただ、他職で何か所かを3年、3年とやっていると、10年経ってしまうということになりますので、そこまでは申しませんけれども、少なくとも10年の中の3年以上くらいは他職経験をしていただかないといけないのではないかと考えております。
 幅広いという意味では一つでなくていいと思いますけれども、一応。

【北村委員】 今、何を決めようとしているのかというのがよく分からないところがありまして、今の議論というのは、前にやった議論の繰り返しになっている部分があると思うんです。前のところで今のような吉岡委員の意見も出てまいりましたし、他職経験だけじゃないんだから、他職経験等とか、法律専門職だけじゃないんだから、法律専門職等となっているんじゃないかと思うんです。
 これをもっと明確にした方がいいということなんでしょうか。それとも、そういう「等」という形で、一応議事録を見ても、こちらを見てもそうなっていると思うんですけれども、何を。

【佐藤会長】 より明確に御認識いただければということです。

【北村委員】 そうしますと、前に申し上げた意見を繰り返して申し上げないと仕方がないと思うんですけれども、私は今の弁護士事務所、日本の弁護士事務所というもので、すべての弁護士事務所がそういうような形になっているとは限らないなと思う部分がありまして、それが専門性の問題と、国際性の問題、確かに弁護士事務所の中では渉外事務所みたいにそういうことをやっているところもあればやっていないところもあると思うんです。
 今の裁判官に欠けているのも、この専門性、国際性じゃないかなと思います。
 そうしますと、これを補っていくということが必要であろうと。そうなると、外国での留学経験等を踏まえるということも一つの選択肢で、全部外国ばかりに行って、国内の方に誰も行かないということを申し上げているんじゃなくて、いろいろな裁判官が必要になってくるだろう。専門性も、日本の研究所であったり、企業であったり、また、弁護士事務所で積むということも可能でしょうし、そういう広い経験というものを要求したのがこのときの議事録のまとめなんじゃないかなと。それに反対する方と、私だとか、石井委員などはそういうことは必要であると言った部分なんじゃないかなということなんですけれども、何かはっきりできなくてすみません。

【石井委員】 外国に行ってもらうというのは、何と言っても今日本が、一番欠けていると言われている国際感覚とか国際性を身に付けてもらうというのが最大の目的であります。そういう意味で学生だとどうも駄目だというお考えをお持ちの方もいらっしゃるとは思いますが、私は逆に言いますと、学生でないと国際性は身に付きにくいのではないかと思っております。
 一般の会社、又はローファームでも良いとは思いますが、そういうところへ入ると、日本にいるのと同じ感覚で、お客様扱いになってしまい、実際の仕事もなかなかできないのではないでしょうか。それから向こうへ行って、いきなり弁護士の仕事をやってみろと言われても、語学力の点で普通では絶対についていけないと思います。語学が達者な方であれば、それはそれで結構なことですが。一方、学生として行けば、向こうの学生と同格に扱われますので、かえって本人にとって厳しい環境に置かれることになります。
 そういうことで、国際性を身に付けてもらうという意味では、単なる留学でも私は良いと思っております。皆さんの中には御心配もあるようですから、例えば、2年行かせるとすれば、1年間、一生懸命勉強してもらって、修士とかロースクールの学位とか、どういうものが取れるのか分かりませんが、それを取ってもらう。あとの1年間、向こうで実際の研修を積んで帰ってくる。そういうことを、もしやっていただけるのであれば、そういう考え方を取り入れた方が良いのではないかと考えています。

【井上委員】 私も前に言ったことを繰り返すだけなのですけれども、私が申し上げたのは、判事となるのにふさわしい幅広い視野とか、違った視角から物を見るということが必要だろう。しかし、一人の人にたくさんのことを要求することはできないですから、いろんな経験を積んだ人や、いろんなバックグラウンドの人が集まってくることにより、裁判所全体として多様性を持たすということではないかと思うのです。  実際的に見ると、弁護士事務所に行って経験を積むというのが主流というか、大きな流れになるということは、どなたも異論がないことなのですけれども、それ以外にどういうことがあるのか、そういう問題だろうと思います。
 その際に、これは北村先生などもおっしゃったのですけれども、法曹とか法律の世界だけで物を見るだけでいいのか、それ以外の経験も重要なのではないかということがあると思うのです。
 さらに、もう一つバリアーがあるのは、実際の職業に就いて、給与をいただいて、実社会の経験を積まないといけないのかどうかということだと思うのです。
 その点で今、石井委員がいみじくも言ってくださったのですけれども、大学とは限らないのですが、何か一つのことを深く勉強する、あるいは幅広く勉強するという人もいてもいいのではないか。そして、それは、外国もあれば国内ということもあると思うのです。大学人だから言うわけではないのですけれども、そういう人もいてもいいのではないか。それをあえて排除するまでのことはないのではないか。大きな流れとしては皆さん一致しているわけですから、そういうふうな感じを持っています。

【中坊委員】 また前説を繰り返すようですけれども、今本当に司法が国民から信頼されているかどうかというのが、今回の司法制度改革の大きな問題になっているのです。その中核である裁判官に、より質の高い人になってもらわなければならないということでこの問題が論じられて、より質が高いかどうかということは、まさにだれが判断するかと言えば、利用する国民主権の主権者が判断するのだということに、我々は大きな意味では合致してやってきたと思うんです。
 そういうことで言えば、私の言うているように、判事補というものを10年間継続するということは何を意味しているかというと、言葉は嫌いかもしれないけれども、少なくとも裁くという、裁判官と同じ仕事をしてきて、そのままそれが判事になるという、そこに基本的な問題点があって、利用する立場から見たらそれでいいかというのが問題になってきたのです。そのことから、いろんなほかの経験を、判事補という立場だけじゃなしに、ほかの経験を積んできてもらいたいということになった。
 確かに今おっしゃるように、何も弁護士事務所に必ずしも限らない。それが主流にはなるでしょうけれども、それにも限らない。まさに法曹の資格を持って行政の分野に、あるいは企業法務に行かれようが、そこに行かれてやっていただいて、そういうことの実績を持っていることが、藤田さんのおっしゃるように、まさに個人としては、身分を離れて経験したからといって身に付くとは限らないと思います。しかし、まさにそういう経験を持っているということが、国民をして信頼させるということにつながっていくんだから、そういう意味において、我々は他職経験ということを要求し、同時にそのためには、身分を離れて行ってもらうのが一番実質化するんじゃないか、こういうことで我々の議論をしてきたと思うんです。  一番最初に石井さんがお尋ねになったように、今、裁判所が現に企業とかあちこちに人を派遣している。その実績を事務局でも一遍調べてくださいということをおっしゃいました。私は率直に言って、これに関係しています。
 ということは、私は大手の新聞社の顧問をしています。そこでは毎年裁判所から人が来ていただいております。しかも、何人かの人がずっと今までも継続して行っています。それを新聞社側がどう見ておるのかということ。それから、裁判官自身がそれではどう思っているのか。あるいは企業に行かれた裁判官がどう思っているのか。その双方から私は聞いています。
 率直に言って、先ほど髙木委員のおっしゃったように、まさに新聞社にしても、来られた方は、皆さんはお客さんとして遇しておって、一定の期限が来られたらお帰りになるという人として遇しているのであって、それ以上に、まさに新聞記者としての仕事をしているとは受け入れる側は思っていない。まさにお客様として人をお預かりして、お返ししているという感覚なんです。
 本人の方にも私は聞きました。どういう場合に聞いたかというと、弁護士任官というのを進めていましたし、裁判所との間で平成2年に初めて弁護士任官ということを制度化するということで、対話集会というのをやったことがあるんです。その中で何人かの裁判官が裁判所の外へ行かれて、自分は物すごく参考になった。企業に行って、営業の仕事もした、こういう仕事もしたと言われた。
 ここで大事なのは、まさに藤田さんの意見と同じことになるんだけれども、行った人の感覚と、それを受ける側、まさに全国民というか、利用する立場の感覚というのは、全く違うんです。その人は何も悪気がないです。一生懸命やったり、自分も参考になったと思われています。しかし、それを本当に受ける側の国民がそうだと見ているかということです。それは明らかに差があるんです。受けた側は、自然にお客さんとしてしか遇していなくて、給料も裁判所からもらわれるんだから、新聞社も別に出さないし、お客さんだということになっていますし、私自身は裁判所から来られた方と懇談会もやっています。まさに実体はこの目で見てきているんです。新聞社に派遣された何人かの裁判官と会合して会ってきている。その人が言うことと、新聞社の立場というのも両方とも聞いて分かっているんです。
 そこで必要なことは、行く人の感覚というものと、それを受け入れる一般国民の立場とがどれぐらい違うかということをここではっきりさせていかないといけないのです。だからこそ我々として、身分を離れて、少なくともその立場になっていましたよということが、私は非常に必要な要件だと考えるのです。それなくしては、基本的に国民が裁判官を信頼するということにならない。これは非常に重要な視点だろうと思うんです。

【石井委員】 今、中坊先生がおっしゃった点、全くおっしゃるとおりだと思います。中坊先生は両方御覧になったわけですが、裁判所の中には、そういうことを経験してきた人と、経験していない判事補がいるわけです。それを比較してみて、外の経験をしてきた方が良いとか、全く意味がないとか、そういうことを既にデータとしてまとめているのでしょうか。さっき申し上げたのは、その辺を知りたかったからであります。

【中坊委員】 石井さんのおっしゃる点は、確かに人によりますということです。一概には言えないんです。

【髙木委員】 今、石井さんがおっしゃったのは、今日も机上においてある平成13年2月13日付け「『裁判官制度の改革』について参考資料」の4ページ辺りにあります。中身は私コメントする立場じゃありませんから。
 特例判事補の問題で、先ほど藤田さんからも御発言がありましたけれども、この間最高裁の方からは、地裁本庁の単独事件を、7、8年未満の判事補に担当させないようにすることで、それを10年くらい掛けて実現するというような御説明があったと思いますが、特例判事補制度のそもそも論は大方の合意ということで、段階的に解消すべきものじゃないかというのが合意されてきたと思うんですが、そういう合意を踏まえて考えれば、この間の最高裁の御提案は私は論外だと感じているわけです。
 段階的解消というのをごく普通の日本語として読めば、いつごろまでに、どういう過程を踏んで解消していくのかということを考えるのが段階的解消の日本語的な意味だろうと思います。皆さん方に日本語の解説をしておしかりを受けますけれども、そういうことを考えたときに、そういう議論をしますと、弁護士任官はどうなっているんだというお話がありますから、私は過渡的には、65歳の定年の延長等も少しやることも含めて、人の問題はいろいろ対策が立てられると思います。弁護士任官について今日は日弁連と最高裁のお話がありまして、どこまでのことなのか、もう一つ成果が分かるようなレベルにまで論議が深まっていませんが、ともかく特例判事補制度について、この制度は、法なり憲法、特に裁判所法の考えている精神からしても、飽くまでも過渡的なものであったものが残っているのはおかしいということで議論してきたはずなんで、その議論にそぐわない、あるいは最高裁の御説明だと、そこは論議は踏まえているという御主張かもしれませんけれども、10年くらい掛けて、7、8年云々という議論は、私は段階的解消の本旨を歪めた議論だという感じです。

【竹下会長代理】 髙木委員も既に言っておられるように、段階的解消と言っても、いろいろな条件が整わないとできないわけです。その一番有力なのが弁護士任官なので、今日もお話があったとおりなのです。ですから、今の段階で一定の時期を決めて、計画的にやれと言ってもこれはできない話なので、だからこそ前回の取りまとめで会長が段階的解消という程度にとどめておきましょうと言われたわけです。そこはもう意見の一致したところでしょう。

【髙木委員】 段階的解消というのは合意できているわけですね。そうなら、逆に言えば、その段階的解消ができるだけ早くできるための条件をどうやって整備をし、どういう領域でどんな努力をそれぞれの方々にお願いするのかと、そういうアプローチで議論するのが正鵠を射ているのではないかなと思います。

【佐藤会長】 時間ももう4時になんなんとしております。ただいまいろいろ御議論を伺って、2月27日の議論を思い出しているところであります。そのときいろいろ伺って、苦労してと言ったら、司会者として当たり前だと言われればそれまでですけれども、口頭で取りまとめました。いろいろお立場があり、お考えがあるということは今日改めて認識しましたけれども、この取りまとめをもとにして、こういうように考えようということで御理解いただけませんでしょうか。
 そして、他職の経験ということですけれども、この取りまとめでは、弁護士など他の法律専門職種等の職務経験とあって、等が付いていて何なんですけれども、これを基本にしながら、今日もいろいろ言及された留学の問題も考える。留学と言ってもいろんな形態があるかもしれない。石井委員がおっしゃったようなこともあるかもしれない。ですから、およそ言葉として留学が駄目だということではありませんけれども、法律専門職種としての他職経験ということを基本にして、それに匹敵するくらいのものじゃないかということであれば、それを排除するまでもないというように思うんで、その辺で今日のところは御理解いただけませんでしょうか。

【髙木委員】 追加させていただきたいんですが、以前判事補の在り方論のところに発言させていただいたこともあるんですが、そもそも判事補というのは、裁判所法上の裁判官ではありますが、そもそもどういう役割を担うものですか。臨司やらにいろいろ書かれてきたことからしましたら、勿論アメリカと仕組みが違いますから同列に論じられないと思いますが、ロークラークの議論も、これは鳥居先生も当時おっしゃられたと記憶していますが、そして裁判所の従来の調査官とはちょっと違うのかもしれませんが、私自身は判事補制度もゆくゆくはなくなっていくべきではないかという主張をかつてさせていただきました。一応判事補は残すんだということで大方の合意になりましたから、それ以後そのことは申し上げておりませんけれども、新しい形の裁判所調査官みたいな形態も、ただし法曹資格を取られた方が就く内容のものとしての設計の仕方、あるいは仕事のしていただき方もあるんじゃないかと思っています。
 具体的なイメージまできちっとできませんけれども、そんな意見も、更に御検討いただくようお願いしたいと思います。

【佐藤会長】 この取りまとめでは、新たな調査官制度の整備云々と述べて、今後の検討課題であろうとしております。すべきだとか、断定的に強く言っているわけではありませんけれども、これから一つの制度の在り方として、検討に値するんじゃないかと、このペーパーで記述しております。代理も前におっしゃり、鳥居委員もおっしゃっています。足腰の強い裁判所をつくる上で生かし方もいろいろあるんじゃないか、それを裁判所に考えていただくというサインとして。

【髙木委員】 そういう検討課題ということは入れておいていただきたいなと思います。

【佐藤会長】 分かりました。ほかの点、例えば相当期間といっても、どのくらいなのかという問題があります。私は1年ではちょっと足らないんじゃないかと申し上げておりますし、日弁連の方は5年くらいは必要だと言っているわけですが、これも議論し出したら難しいことで、今日の段階では相当期間ということでとどめておきたいと思います。相当期間ですから、1年はちょっとなという思いはあります。2年か3年かなという、それは私の個人的な思いでありますが、相当期間ということにさせていただいて、原則としてすべての判事補が法律専門職種の他職経験をしていただく。しかし、それに匹敵するようなものもいろいろ考えられるかもしれない。今日の段階で、これはよくてこれは駄目だということを決めることは難しいと思います。いろんな考え方がありましょうから、今日の段階ではこの程度でとどめさせていただけませんでしょうか。

【山本委員】 「裁判官の身分を離れて」というのは、このまま生きるわけですか。

【佐藤会長】 そうです。

【山本委員】 「原則として」というのは入らないのですか。

【竹下会長代理】 それはさっき私が申し上げたように、いろいろな条件が満たされたら、という前提です。

【山本委員】 この(マル)は身分を離れてというところだけの意味がある。そういうことですね。

【佐藤会長】 ええ。

【山本委員】 そこが今議論になったわけですから。

【佐藤会長】 だから、真に実のある経験を積んでいただくためには、裁判官の身分を離れると。これはそういうことです。

【山本委員】 これは譲らないということですね。

【佐藤会長】 譲らないというか。

【竹下会長代理】 いろいろな条件が付いているのです。

【佐藤会長】 こういう場合だったらいいんじゃないかということだって、あり得ないわけではないと思います。

【山本委員】 大いにあるんじゃないですか。

【佐藤会長】 大いにあるというと話がややこしくなる。

【藤田委員】 先ほど申し上げましたように、弁護士事務所に行く場合には、弁護士の資格を持って弁護士の仕事をすべきだということで、身分を離れることに賛成したんですけれども、行政庁とか民間企業に行く場合も他職経験の中に是非入れていただきたいと思うんですが、そういう場合には、裁判官の身分を離れるという前提ではなくなりますから、その辺はやはり弁護士、あるいは検察官の純粋法律専門職種になる場合には、裁判官の身分を離れるという形にしていただければと思います。

【佐藤会長】 弁護士として行く場合もあるが、藤田委員がおっしゃりたいのは、弁護士としてではなくて行く場合ですね。

【藤田委員】 例えば、外務省の現地の大使館に行く場合には書記官で行きますし、外務省の局にいる場合には検事の資格で行くということはありますけれども、民間企業や留学の場合は判事補のままです。民間の兼職の一覧表が出ておりますが、お客様という話がありましたけれども、報道機関は2週間か3週間の短期研修ですからね。
 そういう点で、例外なしに必ず裁判官の身分を離れてと言われると、ちょっと引っ掛かるんです。

【佐藤会長】 そこは、さっきの法律専門職種の場合と同様に、基本としてこれがないと、制度的担保を決めたことの意味がどこにあるのかということになりますので、そういう関連で受け止めていただき、これに匹敵するものがあるじゃないかということになれば、それを閉ざすわけではないということで、今日のところはおさめさせていただきたいと思います。
 どうもありがとうございました。最後は多少強引におさめてしまいましたけれども、今日のところはこれで御辛抱いただきたいと思います。
 急ぎまして、次に行政に対する司法のチェック機能の在り方について意見交換を行いたいと思います。
 お手元に、「『司法の行政に対するチェック機能の強化』に関する審議の取りまとめ(案)」というものが配付されているかと思います。この問題は、既にヒアリングをやり、昨年の12月に、代理の方から詳細に御説明を願い、おまとめいただきましたので、我々としてかなり議論していることでありまして、そうしたことを踏まえて、こういう形で1枚紙で取りまとめ案を書かしていただいたわけです。
 もう一枚、「違憲立法審査制について」と題するレジュメがあるかと思います。憲法訴訟について、何も議論していないじゃないかという声もいろいろ聞いたりしていることもあり、また行政に対するチェック機能を考えるときに、裁判所による立法に対するチェック機能ということも非常に重要ではないかということで、今日少し時間をちょうだいし、ぎりぎり10分くらいで済まそうと思いますけれども、ちょっとお話しさせていただいて、併せて行政、立法に対するチェック機能の在り方ということで意見交換をしていただければと思います。
 まず、「Ⅰ 我が国の違憲立法審査制の特徴」ということでありますが、申すまでもなく、違憲立法審査制を類型的に大別して、ここに書いておりますように、司法裁判所型と憲法裁判所型があります。
 司法裁判所型というのは、通常の司法裁判所が民事事件、刑事事件等の裁判に際して、必要に応じて憲法判断を行うという型でありまして、そういう意味で付随的違憲審査制と呼ばれているものであります。
 これに対して、憲法裁判所型というのは、特別の憲法裁判所をつくって、これに集中的に憲法判断を行わせるという型であります。
 司法裁判所型は、アメリカなど英米法系に見られる型でありまして、我が国もこれに属すると考えられ、運用されてきているものであります。
 憲法裁判所型は、ドイツやイタリアなどのヨーロッパ大陸法系で見られる型であります。ドイツの憲法裁判所を見ますと、かなり政治的性格の強いものであり、その裁判官はそれぞれ半数ずつ、連邦議会と連邦参議院で選出するということでありまして、その任命に際して相当政治的な考慮が払われているということであります。
 中身として、ドイツの場合、機関訴訟や抽象的違憲審査などがあり、抽象的違憲審査の場合、法律が制定されたばかりで具体的に適用されていない段階で、提訴権者に限定はありますけれども、憲法判断を求めて訴えられる。あるいは、具体的違憲審査と言いまして、通常の裁判所で係属した事件で、裁判所がこれはどうも憲法違反じゃないかということになりますと、その憲法問題を憲法裁判所に送るという種類があります。それから、憲法訴願というものがありまして、国民は公権力によって自己の基本権が侵害されていると主張して、憲法裁判所に直接訴えることができます。
 「Ⅱ 違憲立法審査制の機能に関する評価」でありますが、五十余年にわたる経験があり、実に様々な評価があります。ただ、司法消極主義に過ぎるという評価が強いといってよいと思います。そうした評価、意見は、憲法学界だけではなくて、経済界などでも聞かれます。例えば、経済同友会などもそうした指摘をしているところでありまして、憲法問題への取り組みがやや自己抑制的に過ぎるのではないかという評価がかなり強いのであります。実際、最高裁判所が法令違憲だと言った例は5例があるに過ぎません。
 日本の場合、内閣法制局があって、法制管理をきちっとやっているというようなこととも関係して、簡単に外国と比較して少な過ぎる、だからだめだと言いにくい面もありますけれども、一般的な評価はそういうことであります。
 そこで、我が国でも憲法裁判所を設置すべきだという非常に根強い意見があります。読売新聞社は憲法改正試案というのを平成5年に出しておりますけれども、それは憲法裁判所を設けるべきだという考え方を打ち出しておりますし、英米法の御専門で、御承知のように、10年間ほど最高裁判所の裁判官をおやりになった伊藤先生は、退官後、本を著されましたが、その中で今の日本の裁判所に憲法問題についての積極的態度を望むのはいささか無い物ねだりの観があると述べておられます。積極的な取り組みを期待するなら、憲法裁判所を設置すべきじゃないかということを提案されて、かなり話題を呼んだことがあります。
 それで、「Ⅲ 最高裁判所と違憲立法審査権行使の在り方」でありますが、様々な評価があるとしても、自己抑制的に過ぎるじゃないかという評価がもし当たっているとすれば、その原因はどこにあるのかということなんです。いろいろ考えられますけれども、やはり最高裁判所の負担の問題が相当大きく作用しているんだろうと思われます。
 御承知のように、日本の最高裁は、かつての大審院と同じように、上告審であります。一般の上告事件を扱っているわけです。戦後それに加えて行政事件を受け付ける、それから違憲審査権を持つということになりました。さらに、司法行政権として人事権も持ち、非常に最高裁の負担が大きいということが言えるかと思います。
 戦後、三権の一翼を担うと言われる大きな理由として、立法、行政に対するチェック機能を持つようになったということがあるかと思うのですけれども、今申し上げたように、一般の上告事件も扱っているものですから、なかなか負担が大変だということであります。
 今日お配りしておりますレジュメの下に、「最高裁判所の新受訴訟事件数」というものがありますが、これを御覧いただければ、相当な数を受理していることがお分かりかと思います。
 戦前の大審院には五十名近くの裁判官がおりました。最高裁は御承知のように15名なんですけれども、それにプラス30名ほどの調査官がおります。大審院と同じような機能と言いながら、裁判官の数が少ないというわけです。
 我々は第一審の民事事件などについて、審理期間を半減しようということを打ち出しているわけですけれども、最高裁の上告事件の迅速化を図るということになると、一体どういうことになっていくのかという問題もあります。
 それはそれとして、現在、事件処理は小法廷中心に行われております。戦後しばらくは大法廷が大忙しだったんですけれども、最近は非常に小法廷中心になっているということであります。最高裁裁判官をされた園部裁判官がさるところで、大法廷で処理するというのは何か特別なことだという感じになっているそうであります。大法廷でやるということになると、相当大仕掛けなことになって、非常に負担が掛かるんだそうであります。
それでできるだけ小法廷でということになる傾向があるということを指摘しておられます。
 そこで、この立法に対するチェック機能をもう少し高めようとすれば、どうしたらいいのかという問題なんです。
 一つの考え方は、憲法事件などの重大事件は大法廷を中心に行えるようにする。大法廷がそういう大きな事件に専念できるような体制が何とかできないものだろうか。この点、アメリカの連邦最高裁判所は、1年間で処理できる事件数はどのくらいかということで頭から決めてしまうわけです。あとは受け付けないんです。日本から見ると相当荒っぽいことをやっているわけですが、それはそれとして、日本の場合も、最高裁がもっと余裕を持って活動できるようにするために、上告事件受理数を減らす工夫をこらす必要がありはしまいか。新民事訴訟法で制限的にしているんですが、それがどのような成果を上げているかという問題があります。
 しかし、減らすといっても、一般の上告審である限り、受理件数を減らすには限度があるだろうと思われるんです。一つの考え方は、裁判官会議などで大法廷で扱う事件を選び取って、その他の事件は小法廷でやってもらうという体制にしてはどうであろうか。これは裁判官会議と言っていいのか、大法廷と言うべきなのかちょっと何ですけれども、それがイニシアチブを取って事件をセレクションして、大法廷で扱うものを選んで、その他を小法廷でやってもらうということが考えられないか。
 そういうことを考えるときに一つの参考になるのが、中二階案なんです。お手元に資料が配付されていると思いますが、これによりますと、昭和29年くらいに検討が始まって、32年か33年でしたか、衆議院は通ったんですが、参議院では審議未了で終わっているものです。  これによりますと、最高裁判所の権限を、憲法事件と判例違反だけを扱う大法廷の権限と小法廷の権限に分けるんです。それを分けるだけじゃなくて、大法廷と小法廷とを別組織にするという考え方であります。そして、それぞれに専属の裁判官を置くというものです。大法廷は長官を含めて9人の裁判官、小法廷は30人の裁判官とするというわけです。憲法上の最高裁の裁判官は、大法廷の裁判官に限定してしまうというものです。その裁判官の任命については諮問委員会のようなものをつくるというのです。それはお手元にある資料で記載されていることです。  それに対して小法廷の裁判官は、従来の下級裁判所の裁判官と同一とするという案であります。小法廷判事について、高裁判事が小法廷判事の職務代行を行うと定めていることから分かりますように、小法廷は最高裁に置かれるんですけれども、組織としては高裁に近いところにあるという、言ってみれば上告事件部のようなものであります。
 だから、高裁を一階にし、最高裁を二階にしますと、一階の上にあるんだけれども、2階ではないということで、中二階と呼ばれているわけでありますが、こういう案がかつて法制審議会などで検討され、衆議院まで通ったことがあるんです。これがいいとか悪いとか申すつもりはありませんけれども、かつてこういう努力がなされたことがあるということ、今後何かこういう工夫を考えざるを得ないところがあるんじゃないかということを申し上げたいのです。
 立法に対するチェック機能を強化しようというなら、最高裁の在り方についても、何らかの検討が今後必要になるんじゃないかということを申し上げさせていただいて、10分ちょっと超えましたけれども、報告とさせていただきます。
 今のことも含めて、行政に対するチェック機能についての1枚紙のどちら側からでもよろしゅうございますので、少し意見交換をしていただければと思います。

【中坊委員】 今会長がおっしゃいました違憲立法審査制についての案、それは少なくともこの審議会として検討すべき課題ではないか。その現状がいいかどうかは別問題で、我々としてその問題にも触れない限り、現在の司法制度改革の一つの大きな眼目を失うのではないかというふうに思います。
 そういう意味では、今おっしゃっていただいたことは、我々の審議会としても、受け止めるということにする必要があるんじゃないかと思います。
 もう一つは、もう1枚紙の司法の行政に対するチェック機能の強化ということのペーパーをいただきました。1と2に分かれておりまして、「行政訴訟制度の見直しの必要性」、この点は大体今まで審議してきたとおり、またヒアリングの中で私たちの聞いてきたことがまとめられているんで、これはこれでいいと思うんですが、2の方で「行政及び司法の垣根を超えた検討」という見出しがありまして、また、本文の中にも、「司法と行政の垣根を超えて、それぞれの役割を見据えた」、大体言われようとする趣旨は分からないでもないんですけれども、余り垣根を超えたという表現は、率直に言って余り今まで私たちの審議会では出てこなかった言葉じゃないかと思うんで、少しお尋ねしたいのは、この案をまとめていただいた見出しのところにある「行政及び司法の垣根を超えた」という意味は、一体どういうことを意味するのか、少しまとめていただいた方から教えていただけたらと思います。

【竹下会長代理】 確かに中坊委員がおっしゃるように、従来余り使われない用語だと思います。ただ、これの気持ちは、ここから先は行政の所管する分野であるということで、司法の方からは立ち入れないとか、また行政実体法というものを考えたときに、司法のことを考えずに、つまりそれについて争いがあったときには訴訟になるのだということを意識せずに、行政実体法がつくられたりしないように、そういうものを取り払って総合的に考えようではないかというのが、おおよその含意です。

【中坊委員】 私が案として言いたいのは、司法の行政に対するチェック機能の強化策、まさに本文の中に書かれているように、多角的な、また総合的な検討を加えろということになるんだから、それはその言葉が本文に出てきていますので、「司法の行政に対するチェック機能の総合的多角的な検討」と書いたいただいた方が、本文の中の文章と合うんではないかという気がするんです。垣根を超えてとあるんだけれども、どこの垣根を超えるのか、ちょっと分かりかねるんで、そういうふうにしてもらう。次に、独り司法制度だけではなしに、行政制度改革と司法制度改革と有機的に結び付けるということになればいいわけですから、今おっしゃっているとおりならば。だから、そこは、「行政改革と司法制度改革とを有機的に結び付けるために以下の諸点を留意する必要がある」と結び付けていただいたらいい。
 最後に、(マル)の二つ目の本文のところの「垣根を超えて」というところを削りまして、今までの我々が使っている言葉で言えば、「法の支配の理念の下に、司法と行政のそれぞれの役割を見据えた総合的多角的な検討が求められる」、こう書けば今、竹下会長代理がおっしゃっていただいた垣根を超えたという字を削りましても、垣根を超えたというと、いろいろ妙な垣根を超えたになりますから、個人的に思いましたので、何でしたら採用ください。

【竹下会長代理】 もう一度、表現を検討したいと思います。

【藤田委員】 違憲立法審査制につきましては、会長がおっしゃるとおり極めて重大な問題ですが、極めて重大であるだけに、大詰めにきた審議会で、こういう重大な問題を議論していいのかどうか。恐らく権威の発言として尊重されるのは会長だけでありましょうから。  司法消極主義ということで批判があるんですけれども、アメリカの連邦最高裁であっても、憲法判断をしないで事件の結論を出せる場合には憲法判断回避の原則というブランダイスルールなどもあるわけでありますから、そういう意味で、非常に重大な問題であり、いろいろな見方があるところであるので、それの取り上げようについては、かなり慎重である必要があるのではないかと思います。
 行政でありますが、この案の1の(マル)の二つ目にマル1とありますが、「行政庁に対する信頼」とか、「司法権の限界性の認識を基礎とした行政庁の優越的地位」、「政策的判断への司法の不介入」、「行政庁の第一次判断権の尊重」、これはかつて行政訴訟に携わった者としては、不本意なことでありまして、こういうような気持ちで行政訴訟をやっているわけでは毛頭ありません。行政法学者の方々のプレゼンテーションでもありましたけれども、行政事件訴訟法を始めとする手続法、それから行政実体法の問題があるわけでありまして、行政訴訟によって国民の権利救済の範囲を広げようとする限りにおいては、その両方の法制度の改正ということがどうしても不可避であるという点は、これはコンセンサスではないかというふうに思います。
 そういう意味で見ますと、この下の方に、行政手続法とか情報公開法ということも出てはおりますけれども、現在の行政訴訟制度の限界というのには、そういう法制度の問題が一番大きい。これは行政法学者の方々も皆さんがおっしゃって、審議会を頼りにしているから、行政事件訴訟法の改正に手を付けてくれというお話でありましたけれども、そういう問題意識をもうちょっと出していただくのと、そのマル1のところはもうちょっと表現をお考えいただければと思います。

【佐藤会長】 冒頭のところに、「次のような指摘があった」と。

【藤田委員】 指摘はありましたが、ここに書きますと、審議会の多数の意見というふうに取られますので、必ずしもそうではなかったんではないかと思いますので、御一考を願いたいということです。

【竹下会長代理】 今の2点目ですけれども、マル2の後ろの方に「これらに対する実体法及び手続法それぞれのレベルでの手当が必要である」というところがありますが、そこにその視点は入っています。

【藤田委員】 入っておりますが、現在の問題点の一番大きいのは、私はそこだと思うんですが。

【佐藤会長】 前に申し上げましたけれども、裁判所からすると実体法の問題だと言っているところがある。それを言い続けるといつまでもらちがあかないんじゃないか、国民の権利救済につながらないんじゃないか。だから、手続法からもうちょっと考えるべきところがあるんじゃないかという議論もあります。これは委員に申し上げたことがあるかと思いますけれども、実体法、手続法を総合的に考える必要があるんではないか、その気分を表しているつもりなんです。

【藤田委員】 裁判所の心構えが悪いから問題があるというふうに取られるのは、不本意であるということで申し上げたんです。

【竹下会長代理】 そういうことは書いていないつもりです。

【藤田委員】 行政庁の判断を優越的とか、第一次的判断を尊重するということで行政事件訴訟をやっているわけでは毛頭ない。

【竹下会長代理】 そうではなくて、ここに書いてありますのは、現在の仕組み、行政事件訴訟法の中のいろいろな規定に、そういう観念に基づいたものがあるのではないかという、そういう趣旨です。

【藤田委員】 もうちょっと明確に。

【佐藤会長】 ここは一つの認識ですね。学問的なことかもしれませんが。

【中坊委員】 この間のヒアリングで先生がおっしゃったし、利用する立場から見れば、藤田さんは勿論裁く立場としてはそのつもりだろうけれども、そこにちょっと問題があるわけです。

【佐藤会長】 余計なことを言うことかもしれませんけれども、行政改革で、内閣機能の機動性や戦略性を強調していると同時に、企画と実施の分離ということを言ったりしているのです。法律の執行に関し、不当な政治的な圧力を排して、厳正に法律の執行を確保するということが今後非常に重要になるであろうと考えられるのです。総合的にその辺も考える必要があるということでマル2の方で多角的と。

【髙木委員】 また失礼なことを申し上げるかもしれせんが、この行政に対するチェックの問題は、3先生のヒアリング、あるいは竹下先生の12月のレジュメみたいなものをつくっていただいて、いろいろ問題があるなというのはまさに共通した認識で、問題点と書いてありますが、次のような指摘があったとか、もうちょっとはずんだ表現にすべきだと思います。

【竹下会長代理】 例えば、どのような表現でしょうか。

【髙木委員】 「次のような問題点の指摘があり、この審議会としての総意であった」とかでいかがでしょうか。

【藤田委員】 そうすると私も入る。

【髙木委員】 問題があるということについては藤田さんも十分に指摘された。問題が奈辺にあるかというところで、裁判所は裁判所で頑張っているんだとおっしゃっておられるんだけれども、訴訟法があり実体法がありその両方を今のままにしておいて、裁判所をとやかく言われても困ると藤田さんが言われるから、そんな御認識を藤田さんが言われるのはおかしんじゃないかなと、失礼なことを申し上げたのを覚えているんですが、悪かったんなら、なぜ直す努力をされなかったんですかと申し上げたことがことがあったと思います。そんなことを今更申し上げるつもりはありませんが、「指摘があった」と、よその人の話を聞いて、えらい他人行儀な主体性のない表現かなと思います。

【佐藤会長】 最終意見でどういう書き方をするかもうちょっと考えさせてください。違憲審査のことは、藤田委員がおっしゃるように、ここで今まで何も議論してこなかったわけで、会長が言って、それでという話にはならないという御意見もありましたけれども、立法に対するチェック機能の強化も行政に対するチェック機能の強化の一環という面もあることは確かなんでしょうね。必要ないという御意見ではない。

【藤田委員】 検討することまで否定する趣旨ではありませんが、この段階で取り上げるにしては、余りにも重大な問題ではないかという感じがあるもんですから。

【佐藤会長】 それだったら、もっと時間を取って十分に議論せよと。

【中坊委員】 同時に、我々審議会としては取り上げなければいかぬ課題であったと、そこへ留意していたということは、やはり最終意見の中に出ていないと、今後言うわけにいかないとなってしまう。会長は憲法学者ですからおっしゃるとおりでごもっともと私らも聞いておったけれども、しかし、少なくとも検討課題として、我々審議会としてもしなければいかぬことだということは、一致しておかないと、我々審議会の権威と言ったらおかしいかもしれないけれども、我々が国民から見られたときに、憲法裁判はどうなるんですかと、違憲立法審査権はと言われることがあるから、やはり最終意見の中に、それは一つの結論としては出せないまでも、そういうものを検討しなければいけないということまでは、おおむね我々としては一致しているんだということにしておいた方がよいと思います。それをどうやるかは、確かに藤田さんがおっしゃるようにいろいろ意見はあると思うけれども、方向付けだけはしておいた方がいいと思いますね。

【佐藤会長】 これだけを議題として取り上げて正面から御議論いただくことをしませんでしたので、どこか各論の個所で、派手にと言ったら何ですけれども、派手に方向性を出すということは難しいと思います。

【髙木委員】 これは司法消極主義とか、いかに憲法判断を最高裁がされないのかという意見なり批判はいろいろあるわけですね。それぞれその批判のよってきたるべき背景のとらえ方などは違うのかもしれません。
 これは確かに押し迫っての話ではありますけれども、次回からは最終意見のまとめ、その中で、例えば、1時間、2時間取って、更に議論が必要ならば私はやるべきだと思うんです。最終的に議論した結果がこういう課題があるという課題の指摘に終わるのかもしれませんけれども、是非もう少し議論をすべきだと思います。今日、会長から10分と言われたけれども、15分ぐらいお話しいただいたけれども、それだけでどうかなと思います。

【竹下会長代理】 私も、全くこれに触れずに済ますというわけにはいかない問題だと思いますけれども、これから更に1時間なり2時間なり取って議論したら、では、どこまで深まるかというと、それほど変わりがないので、その問題にどの程度触れるかということはちょっと会長と二人で相談をして、原案をお示ししたいと思います。それについてまた御意見を賜ればと思います。

【佐藤会長】 私の気持ちをまさに代弁していただきました。

【髙木委員】 憲法の先生である会長が審議会におられて、憲法の関係は何もなしか、自分の学問だから触れなかったのかと言われますよ。独り言です。

【吉岡委員】 私が憲法問題で一番引っ掛かりますのは、定数是正の問題です。1票の格差がありますけれども、最高裁判所の判断は、この間の判断は判事の考え方がきれいに分かれていましたけれども、一般的には、違憲に非常に近い状態だけれども、というような書き方で、私たちから見ると違憲に間違いないと思うのですけれども、それ以上の判断はしていない。これは政治的な配慮もあるのかと思ってはいますけれども、その辺のところが、一般の国民の関心事からするとおかしいということでして、司法制度を検討していながら、おかしいと思っている憲法の判断については全然触れていないというのは、ちょっとまずいなと思います。

【佐藤会長】 定数配分規定が違憲だとしたことは2回あるんです。ただ、いわゆる事情判決の法理によって、選挙は無効にしていません。それから、もう一つは今おっしゃったように、違憲の疑いがあるけれども、合理的期間内であるといった理由で、結局は違憲とは言わないという場合があります。裁判所としてはいろいろ苦労していることはあるんですけれども、そこまで立ち入ると具体的な話になりますので、代理とも御相談しているんですが、総論のところで、さっき申し上げた最高裁判所の負担の過重と関係付けながら問題の所在を少し書ければと思っているところです。これから上告事件の迅速な処理ということも大きな課題になると思うんですが、その辺の問題とも絡めて、そう長い文章を書くつもりはありませんが、少し書かせていただければと思っております。今日のところはそういうことでよろしゅうございますか。

【竹下会長代理】 ついでに、せっかく資料を付けてくれたものですから、「最高裁判所の新受訴訟事件数」を見ていただきますと、真ん中の「うち民事上告」の欄ですが、「()内は上告受理」ということになっています。平成10年から民事で上告受理制度が始まったわけですけれども、民事上告はその後明らかに減っているわけです。平成5年、6年、7年、8年とずっと上告事件が増えてきましたけれども、10年で減って、11年では更に1,800 件に落ちてきています。上告受理というのは、これは裁量上告ですから、理由のないものは、簡単に排除できるものでして、この資料によりますと、新民事訴訟法による最高裁への上告制度の改革は、それなりの効果を挙げているように思います。それだけちょっと付言しておきます。

【佐藤会長】 ありがとうございました。では、この件はそういうことにさせていただきたいと思います。
 それでは、次に、最終意見の項目案につきまして御審議いただきたいと思います。
 前回の審議会で、代理と相談いたしまして、最終意見の項目案をお諮りしたわけでありますが、その際、時間もありませんでしたし、また、中坊委員から御意見もいただきましたので、本日改めて御意見をいただきたいと思っております。
 お手元には、前回お配りしました最終意見項目案、更に、その後、中坊委員及び吉岡委員からいただきました意見書をお配りしております。これらも参考にして御意見をいただければと思います。
 そこで、最初に、前回お配りしました最終項目案につきまして、いただいております御意見を踏まえて若干御説明をさせていただきたいと思います。
 まず、全体の構成なんですけれども、中間報告の構成のままでいいのではないかという御意見があったわけであります。それで、代理とも相談したんですけれども、そのようなことも考えてはみましたけれども、今回はまず制度から入って、次に人について記載してみてはどうかというように現段階では考えた次第です。
 理由なんですが、この最終意見は、国民にとって分かりやすいものにしなければならない、それを踏まえると、国民が最も関心を持っているのは、この審議会設置法2条でも言っているんですけれども、まず利用しやすい司法とするためにどうするかということではなかろうかと考えたわけです。司法制度がどのような姿になるか、本当に利用しやすいものになるかという辺りをまず最初に訴える必要があるのではないかと考えたわけです。それからまた、この意見書は、内閣に提出するものですけれども、その提出を受けた内閣において検討する際に、いきなり人の問題と言われても、なぜ人の問題なのかというような話も出てくるかもしれない。それで、まず、司法制度がこのように改革される、それに伴って人の問題を、質、量ともにこういうように手当てをしないといけない、そういうことが一つの筋として分かりやすいのかなと考えたわけであります。
 それから、次に、御指摘のありました裁判員制度に関する記載ですけれども、勿論、この裁判員制度は国民の司法参加における重要な改革の柱であります。私ども審議会として、刑事裁判を中心に裁判員制度を導入するということにしておりますが、それに伴って今後刑事司法制度がどのようなものになるかということを、一目で分かるようにする工夫もあってしかるべきではないか。それから、この裁判員制度を導入することによって、刑事司法全体に関するその他の改革あるいは充実、迅速化等にも影響してきますので、裁判員制度を刑事司法に関する記載の中に入れてみてはというように考えたわけであります。
 ただ、御指摘のとおり、裁判員制度は、国民の司法参加においても重要な柱ですので、いただいた御意見に従いまして、実際に最終意見案を作成する際には、「国民的基盤の拡充のために」という部分を、例えば、「国民的基盤の確立」というような標題、私自身は、この標題はまだいろいろ工夫の余地があると思っていますが、そういう標題に変えまして、その冒頭に、この国民の司法参加に関する中項目を立てまして、裁判員制度などもそこで記載する。そして、前回お配りした元の案の第1から第3に掲げておりました「分かりやすい司法の実現」などは、まとめて中項目として、例えば、「国民的基盤の確立のための条件整備」というように2本立てにしてみてはどうかというように考えたわけであります。
 それから、法曹の在り方の記載の順番なんですけれども、中間報告の記載の順番を変更しております。これも、まず制度の面から記載しますと、当然それに伴って人の数を増やすことが必要になる。さらに、司法の運営に携わっている法曹三者についても、今後の法的需要の多様化や司法制度の改革に伴って、当然、質を高めるなどの改革が必要になる。こういうわけで、数を増やすとともに質を高める。それで、現在の法曹養成制度で足りるのかということで、法曹養成制度を改革する必要がある。そういう流れで考えてみるということも一理あるのではないかと思って、こういう順番にしたわけであります。
 さらに、御指摘のありました「法律専門職種間の人材の相互交流の促進等」ということにつきましては、もともと法曹三者を中心として人事交流の記載をしようと考えておりましたので、最終意見案を作成する際には、そのことがはっきり分かるような項目にしようというように思っております。
 以上、少し長々と御説明しましたけれども、そんな考え方で今日御意見を伺いたいということであります。いかがでありましょうか。

【中坊委員】 私、今日ペーパーを出しておりますので、それを御覧いただいたら分かるし、前回も言ったことだろうと思います。
今、会長がおっしゃっていただいたことには、私としてはちょっと承服しかねると思っております。
 まず第1に、今おっしゃっていただいている制度から入るのか、人から入るのかということだろうと思うんですけれども、これは、今度の小泉さんの総理演説の中でも、米百俵の話という、まさに人、担い手という、教育問題にまず触れて入ったと同じように、私たちは司法制度改革を、非常に制度的とか論理的とか客観的に見るというのを、もっと動態的にとらまえて、まさにもっと具体的に論じたという我々の審議の順序があったわけです。それがそっくりそのまま最終意見の中に出てこないと、我々の議論が決してそういう制度論から論じたものではないということを、私たちの最終意見の中で是非残しておく必要があるし、我々の議論もそのようにしたと思うのでありまして、そういう意味では、中間報告のときになされたように、人の問題から、人的基盤の拡充という問題から入っていくべきです。「はじめに」と司法制度の基本的理念とか、そこはいいんですけれども、「国民の期待に応える司法制度」というよりも、それは確かに答案としては、おっしゃるようにこれの方が非常に整合性があってそれなりに分かるんです。しかし、私たちも審議というものが、本当に国民の目からどう見られるかというときには、我々の審議はこのようにしてやってきたという審議の経過が、やはり国民に明らかになることが、我々の意見の内容がまた国民の信頼を得る根拠につながっていくことだろうと思うし、我々は現に会長もそうおっしゃっていたように、まさに担い手問題から入ったわけですから、だから、そこはやはりそのような我々の審議してきたやり方と、我々の審議してきた経過そのものが最終項目の案の順序になってくるべきではないかと思います。
 「司法制度を支える法曹の在り方」というところにつきましても、少なくとも法曹養成制度は、隣接関連職全部を審議してから第6に出てくる問題ではなかった。我々はまさに3,000 人問題ということを言い、その次にロースクールの問題に触れて、それから初めて登山口としての弁護士制度の改革と、我々の審議が順番に行ったんだから、我々の審議経過というものが最終項目の中に反映していない。
 確かに、これを見たら一つの整合性があるようだけれども、これはかえって、せっかく我々がやってきた審議経過に現れた精神を御破算にしたような形になってくる。
 しかも、私たちは少なくともそこで一つの大きなキャッチフレーズをつくってきたと思うんです。人的基盤は拡充ですと、制度的基盤は整備ですと、国民的基盤は新しく確立するんですと、こういう三つの合い言葉の下に、我々は国民に訴えやすくこの問題をやってきた。
 確かに、今回の最終項目案というのは答案としてはいい、あるいは非常に整合性を持っている答案のように見えるかもしれない。けれども、その整合性のある答案にしたために、我々の審議してきた、それこそ五十何回、本当にある意味でみんな大変な中をやってきた、その我々のやってきた成果というもの、経過というものがあるから、ダイナミックなものならば、ちぐはぐであった方がむしろいいんです。形がこんなものだというところに我々のダイナミック性というものがあるので、それをダイナミック性というものを、五十何回、60回に近いほどやったことの成果が国民に問われるためには、項目という、ここは一番顔ですから、体がどんなことがあっても顔が見えるところにこの目次で出てくるわけだから、その顔のところを今になってから、換骨奪胎するみたいに、ごろっと骨組みが変わるというようなことは反対です。
 意見書としては、今、会長がおっしゃったように、非常に整合性もあるし、これから推進機構のところへ持っていくときに、これの方が分かりよいんだという視点があるのは分かります。それは分かるけれども、実際、私たちは世の中の物事すべてやっていくときには、それが持っている力、ダイナミック性というものが本当は、ちぐはぐに見えても、それが大きく世の中に残っていくことだろうと思います。だから、私は、この整合性というものよりも、我々の審議の情熱というものが国民に肌で伝わるような項目に私は持っていくべきものであると思います。
 確かに、政府に出すのはそれの方が整合性があるかもしれない。
 しかし、私らが今一番大切なことは、まさに歴史の批判なんですよ、我々でも臨司意見書を歴史が後に、何十年も先に批判するんだから、そのときに、ああそうかということが分かるようなものにならないと、自らの命を自分で断つような結果になるから、私はもう一度御再考をお願いしたいと、私は固執するようですけれども、申し上げたいと思います。

【佐藤会長】 大分厳しい御意見ですが。

【藤田委員】 中坊委員の御意見ももっともでございますけれども、結局は内容次第ということになろうかと思います。制度が先か人が先かという点、人から始めてきたわけですけれども、どちらが先かといえば、鶏と卵みたいなところもございますし、こういう編別でどうなるかということでつくってみた上で、修正した方がいいということなら、その段階で考えたらいいのではないかと思います。
 もう一つは、これはできるだけたくさんの国民に読んでもらわなければいけないという要請がございます。特別の関心を持っている方はどう書いても読んでくれると思うんですけれども、一般の国民にできるだけたくさん読んでもらう、そのためには読みやすい編別にするのが一番いいのではないか。そういう点からすると、一応、この編別でつくってみて、その上で、実質的内容とマッチするかどうかということと、読みやすいかどうかという二つの視点から再検討してみたらいかがかと思います。

【中坊委員】 私は決して異論を言うわけではないけれども、読む人はまず何を見るかと言えば、まさに法曹人口です。現にそうでしょう、今、私らは数の多くの人にどこへ行っても聞いても、法曹人口が毎年3,000 増えるという、それからみんな話が入ってくるので、決して整合性のできたきれいなものを見て人間がそれに関心を持つというのではない。むしろ、どんな彫刻にしても何にしても、整合性があってきれいに形ができているよりも、まさに運慶の仏像にしても何にしても、そこのダイナミック性というのがあるから何百年経っても残るんですよ。だから、整合性をつくったりすることがどれだけ命をなくしていくかということを、もう一度我々は考えないといけない。
 だから、私は、今の藤田さんのおっしゃることも、それは先ほどから言っているように分かりますよ、分かりますけれども、そこが大事だということを私は言いたいと思いますね。

【石井委員】 今の運慶のお話も大変共感を覚えるところであります。ところで、最終意見、これは恐らく出来上がったときはかなり分厚いものになると思われます。中間報告のときにもお願いして入れていただいたのですが、目次のところに全部番号を付けてくださいということを申し上げました。ページ数の方はどうせ後で文章がはっきりしてから入るでしょうけれども、項目のところで「はじめに」は1とか、今回の項目案には付けてありませんが、これは是非お忘れなくお入れいただくことをお願いしたいと思います。

【井上委員】 一般的な考え方としては、中坊先生のおっしゃることは非常によく分かります。共鳴もするのですが、全体としてのダイナミズムというか、あるいは訴えかけの力というか、それは受け取る側にとっての分かりやすさでもあると思うのですが、それを図るためにどうすればいいのかということだと思うのですね。一つの考え方は、我々の議論の順序でやっていくべきだ。そういう考え方もあれば、結果から見て、こうだからこうなんだという説明の仕方もあると思うのです。その意味で、この項目案は、要するに、大きく司法制度というのはどういうふうに変わっていくべきなのかということをまず描いて、そのためにそれを支える人をどうすべきかと、恐らくそういう構成になっていると思うのです。
 そういうことで、どっちが、中坊先生のおっしゃるようなダイナミズムがそこに活かされているのかというのは、中身の問題ではないかと思います。ですから、今ここで、項目案だけで抽象的に議論していても、恐らくぐるぐる空回りするだけで、そんなに違わないことを言っていても違うように見える。むしろ、中身を見てから、構成を変えるというのもそんなに難しいことではない。各論のところは特に、組替えというのはそんなに難しくないと思いますから、結論としては、藤田委員が言われたように、中身を見て具体的に全体を考えるという案に賛成です。

【佐藤会長】 皆さんの御意見を一人ひとり伺った方がいいのかもしれません。

【中坊委員】 結論としては私も賛成です。

【水原委員】 私も、中坊先生の案も誠にごもっともだし、一般国民への周知の仕方もいいと思います。ですから、甲乙つけがたいと思うんです。
 ただ、この前、いろいろな御意見があったにもかかわらず、会長、会長代理に案を作成していただくわけですが、再度、もう1回この案で本日提案されたというのは、恐らく書くときにこの方が力が入ると、多分。

【佐藤会長】 それを言われるとちょっと困ります。

【山本委員】 それで、中坊先生の話は、初めのところに、審議経過の簡略な説明等と書いてありますね。ここを少し拡充していただいて、思いをこの中で表現していただくということでいかがでしょうかと、ちょっと思っております。

【鳥居委員】 私はどちらかというと中坊先生の意見に近いんですが、それをどう表現するかは別の問題だと思います。その前に、ここに中坊先生の最終項目案と、会長の最終項目案と両方あるんですが、どちらを見ても落ちているのがあると思います。それは、なぜ今、司法制度改革なのかということについての我々の基本認識をもっと国民に訴えるキーワードが、後ろの方に入っています。
 例えば、会長案ですと、「国民の期待に応える司法制度」の第3のところに、「国際化への対応」となっているんです。実は、司法制度改革というのは、後ろ向きに見ればいろいろと遅れた側面があって、改革しなければならないというものがあったんだということを、まず我々は国民に訴えなければいけないと思うんです。そのことは今までどこにも載っていないんですね。ただ、議論の中ではさんざん議論してきたことなので、日本の司法制度の遅れた側面というのがまずあって、それから時代が変わって、科学と技術とそれから社会の構造と、それが急速に変わっていて、それに対応した司法制度が必要なんだということ。それから国際化が人的な交流あるいは物的な交流、金銭面の資金の交流のあらゆる面で起こっていて、それに対応する新しい司法制度の確立が必要なんだということを、冒頭に国民に訴える必要があると思うんです。
 今、その訴えることを三つ私申し上げましたが、遅れた側面の最たるものが法曹人口の余りにも少ないという事実の歴史だと思うんです。そこから手を付けたんだということは、だから意味があるので、中坊先生のおっしゃっているのは、私にはそういう意味で理解できるんです。  ただ、今後改革推進会議的なところに持っていくときに、どうしてもこっちの方がいいんだというのであれば、ちょっと今、私が熱を込めて申し上げたようなものをもっと熱を込めて、中坊案的な順序で冒頭に書いてはどうか。

【竹下会長代理】 一番最初に「司法制度改革の基本理念と方向」という項目がございますから、ここでそういうことを書くことができるのではないですか。

【鳥居委員】 基本理念と方向、あるいは審議の経過をそこに全部要約して大体4~5ページ読んだら全部が分かると、それはこの順番になっているんですね。この順番というのは中坊案の順番に。

【佐藤会長】 順番で示すということもありますけれども、一つは山本委員が言われたように「はじめに」のところで言及することが考えられます。率直に申し上げれば、これまでの審議で、昨年の1月でしたか、どんなきれいな制度設計をしても人を得なければこれは動かない、そういう熱い思いで人の問題から入った、そして人についてのこういう手当てができれば、制度設計も可能となるということで、制度の方を本格的に議論してやってきた、という経緯はあると思うんです。
 今、鳥居委員がおっしゃったとおり、中坊委員もおっしゃったとおりでして、なぜ人から入ったのかということを訴える文章は、やはりどこかで工夫させていただきたいというように思っております。
 そして、国際化の話ですけれども、なぜ司法制度改革が必要なのかということについて、いろいろな人に聞かれるんですけれども、国の中だけで考えて、今になってどこをいじる必要があるんだというように言う人が少なからずおられるんですが、国際関係で考えて、こういうこともあれば、ああいうこともあると言うと、ああ、なるほど、そういうことですかということで、初めてよく分かっていただけることも私は経験してきました。  そういうことで、国際化の視点が極めて重要だということはそのとおりだと思います。その辺の気持ちを、「国民の期待に応える司法制度」のところで、一つの項目として取り上げたんですけれども、「司法制度改革の基本理念と方向」のところでも言及させていただこうというふうに思っております。

【吉岡委員】 私も基本的には分かりやすいということが非常に大切だと思うんですね。だれにとって分かりやすいのかという、そこが問題ではないかと思います。確かに、国会を通さなければいけないとか、政治的な問題を考えると、この案が分かりやすいということだと思いますが、利用者の立場で考えたときに、初めのころに戻っての議論、それが一般の利用者の考え方だと思うんですけれども、とにかく裁判には時間が掛かる、お金が掛かる、そういうことは利用しにくいという、そういうところに大きな問題があったと思うのです。なぜ時間が掛かるのかという、そこの中で、法曹人口が諸外国と比べて少な過ぎるという問題がある。その問題については、一般の国民の非常に分かりやすい面だと思うんです。
 そういうことと中坊委員が当時、まず人口問題からやらなければいけないとおっしゃったのも共通する点があるのではないかと思いますので、そういう意味から言うと、最初の中間報告案の方が、利用者には分かりやすいのではないかという気がいたします。
 ただ、そこのところは先ほど、後で入れ替えるのは簡単だとどなたかがおっしゃいましたので、そこのところは入れ替えれば簡単だということで、譲歩させていただいてもいいかと思いますけれども。

【佐藤会長】 今の吉岡委員のおっしゃる趣旨をくんで、まず冒頭に例えば裁判の審議期間は半減しますとうたい、なぜ半減できるかといえば、こういう人の手当てはきちっとできています、そういう訴え方もあるかもしれないという気がします。

【吉岡委員】 3,000 人というのは本当に随分思い切った形で数値を出していますね。それはやはりこの審議会の目玉の一つだと思います、そこまで行けたということが。そういうところは、大いに宣伝しなければいけないと思いますし、前回の私の発言に対して御配慮していただいたので、ペーパーも出していることですから、それ以上余りくどくどと申しませんけれども、やはり国民の司法参加というものが非常に重要なことでして、そういう意味では、裁判員制度の問題は、相当なウェートを持って触れていただきたい。それは国民の関心事でもありますので、そこのところは箱二つに分けてそのうちの一つにということは、その辺御配慮いただいたことだとは思いますけれども、めり張りを付けるという意味では、人口も大いに大きくするんだという問題と同時に、裁判員制度の問題、まだちょっと積み残した問題もあって、議論しなければいけないので、それも意見を書いたんですが、そこに入ると混乱しますので申し上げません。

【佐藤会長】 お気持ちは、そう言うとまた笑われるかもしれませんが、全く一緒です。
 それで、先ほどのことも踏まえて、「はじめに」とか、基本理念と方向とかの個所で、司法制度の姿、改革は3本の柱から成っているということを明確に打ち出します。司法制度の在り方、法曹の在り方、司法参加、これが3本の柱であるということを明確に打ち出して書かせていただくつもりですので、全体のたたき台を御覧いただいて、その上で最終的に御判断いただくということで、今日のところはいかがでしょうか。

【北村委員】 ちょっと要望なんですけれども、私はこの最終項目案でいいと思っているんですが、一つひとつが言葉をもっとやさしく書いていただければ、例えば、中間報告の方が、利用しやすい司法制度とかという方が国民の期待に応えると、一体国民の期待が何か、何というのか、非常にもっとインパクトのあるやさしい表現でそれを書いていただきたいなという気がするんですね。中間報告もかなり難しかったんですけれども、もう手後れかもしれませんが、最終意見も割と読みやすい、内閣に出すんですけれども、やはり一般の人が読みますので、そういう形のものを期待したいなと思います。

【鳥居委員】 内閣の方ももっと分かりやすくしておかないと分からない。

【藤田委員】 ちょっと細かいことですけれども、「司法制度を支える法曹の在り方」の「第5 法律専門職種間の人材の相互交流の促進等」、これは先ほど御説明ありましたけれども、確かに議論はしているんですが、法曹人口とか法曹養成とか、裁判官制度等と比べると、ウェートの上で、独立の項目を立てるほどのことがあるのかなという気もするんですが、ここは特に強調したいという意図、目的があれば別なんですけれども。

【佐藤会長】 そういう目的もあるんですけれども、それも含めてお読みいただいてから御判断いただけますか。

【藤田委員】 分かりました。

【佐藤会長】 先を急ぐようですけれども、できるだけ間に合うように準備させていただきまして、お手元に届くようにして、その上で最終的に御判断いただきたいというように思っております。
 それで、最後に、推進体制について少しお諮りしたいと思います。
 まず私ども審議会の最終意見を受けて、どのように改革が進んでいくのか、どのような体制の在り方であるべきかということについて、御意見をちょうだいしたいと思います。行革のときもなかなか大変でございましたが、非常にきっちりした体制がつくられて、結果は御承知のとおりでありますけれども、せっかくこれだけエネルギーを集中し、知恵を傾けてやってきたこの最終意見が、全体的に実現されることを皆さんは心から強く望んでいらっしゃることと思います。そういう観点から、推進体制はいかにあるべきかということについて、少し御意見を伺っておきたいと思います。

【水原委員】 私は、最終意見で指摘する施策をいかに内閣に実現させるかということを考えることが、当審議会の大きな役割であろうと思っております。
 内閣が当審議会の最終意見を踏まえて、司法制度改革を推進するに当たっては、まず司法制度改革の基本理念を定めた法律の制定が不可欠であろうという気がいたします。
 この項目案の最後「終わりに」に「司法制度改革の推進体制(司法制度の企画立案に関する責任ある体制の在り方を含む。)」とありますが、ここが本当に重要だと思います。私どもが、これまで約60回近くにわたって議論を重ねてまいりまして、時には本当に激論を闘わせてようやくここに到達することになったわけでございますけれども、司法制度改革に関する意見について、是非ともそれを内閣を中心とする関係機関を挙げて実現していただくようにしていただきたい。これは切に私は願っております。
 司法は三権の一つでございまして、行政府である内閣において司法制度改革を推進するためには、更に国権の最高機関である国会が制定した法律によって司法制度改革の基本理念を国民に示して、それに基づいて改革が推進されることが不可欠ではなかろうかという気がいたします。
 司法制度改革は、佐藤会長がしばしば御指摘されましたように、行政改革と並ぶ重要な改革でございまして、行政改革等の諸改革の総仕上げとも言うべきものではなかろうかという思いをいたしております。行政改革の要であります中央省庁等の改革に際しては、その基本理念を定めた法律がまず制定され、内閣に中央省庁等改革推進本部が設置されて、改革が進められたと聞き及んでおります。
 司法制度改革につきましても、そういう意味において、まずその基本理念を定めた法律を制定して、内閣に司法制度改革推進本部というようなものを設置して、各省庁の所掌事務の、先ほどの話ではございませんが、垣根を越えて、一体的に司法制度改革を推し進めることが必要かつ適切ではないだろうかというのが私の意見でございます。
 よろしくお願いいたします。

【佐藤会長】 ありがとうございます。

【髙木委員】 今日、テーブルに法曹三者の方の協議会がどうのというペーパーが配られましたが、あれはどういう意味で配られたのかよく分かりません。今回の審議会もそうでしたけれども、国民にとっての司法、例えば、使い勝手がいかにも悪いだとか、いろいろ問題点があり、その解決のための処方箋を利用者としての国民の立場も踏まえ最終意見としてまとめようとしています。これから国民参加も含めて国民との関わり合いをどれだけ意識して最終意見の中身を実現していくのかという意味で、やはり利用者というか、国民の感覚みたいなものを推進体制の中にも生かしていっていただけるような、まあ感覚的な意見を申し上げれば、そういう利用者というか国民というか、お役所と法曹三者や学者の方々だけでなく、利用者である国民の感覚も踏まえた推進体制という点をきちんとしておいていただければいいのではないかと思います。ここには法曹三者の代表の方が委員の中にお三方おられますが、お互い非常に和気あいあいとやっておられるので、三者でうまくやっていかれるのかもしれませんが、利用者代表の意見も反映されるようにしていただきたいと思います。

【井上委員】 事柄は二つあると思います。一つは、この我々の意見書をどう実現していただけるか。その体制をきちっと組んでいただきたいということ、これは皆さんおっしゃったとおりだと思います。もう一つ、私は、最初のころ申し上げていたのですけれども、この司法制度改革というのは継続的なものでないといけないと思うのです。50年に一遍、大変な思いをしてこういうことをやるというのでは、何かたまりにたまったものが一挙に吹き出るという感じになってしまうものですから、「和気あいあい」でしたけれども、なかなか大変な局面もあったと思うのですね。
 我々が最終意見に出すものも、我々が責任を持てるのは10年とか20年の範囲で、その中でこういうことが考えられるのではないかという提案だと思うのですが、これはやってみた上で、どうもちょっと思惑と違ったとか、あるいは新たな事情が生じたということになれば、それを見直していくべきだと思うのです。そういう弾力的というか柔軟な発想でないといけないと思うのですね。そのためには、やはり恒常的に司法制度を見直して、改善とか改革を提案していくという仕組みを考えた方がいいのではないか。そこには、今、髙木さんがおっしゃったように、法曹三者だけですと、いかに「和気あいあい」といっても、なかなか物事は進まなくて、そういうことがこういう審議会が設けられたことの一つの背景ではなかったかというふうに理解しているものですから、そこにやはり外の声も入れていくというか、外の声を素直に聞いていくような仕組みをつくっていただくということを、強く要望しておきたいと思います。

【石井委員】 今、井上先生がおっしゃってくださったのですが、井上先生がおっしゃったことと全く同じことを申し上げたいと思います。それと、あと、ユーザーの立場から見てチェックできる体制を、入れていただくということをお願いしたいと思います。

【水原委員】 すみません、もう1点。井上委員の御発言に私も反対ではございません。それはそのとおりだと思います、恒常的な検討機関を設けなければいけないことは。しかし、まず最終意見に盛り込むことは、その後のことではなくて、今議論をしたこの結果を内閣が一体となって実現してもらわなければならないという仕組みをまずはっきりと書いておいて、その次に、これが実現されたときにいろいろ問題が出てきた際の検討機関をきちっと設けるべきというふうに、いわゆるそれは副次的なものとしてとらえておく必要があろうかなという気がいたします。

【吉岡委員】 水原委員のおっしゃることは確かにそうだろうと思いますが、とりあえずは、私どもの審議会が出した結論、それをいかに実行させるかという、そのことで、それは実現本部になるのか推進本部になるのかは分かりませんが、とにかく司法制度改革をきちっとやるそういう組織をつくる、その組織の中には、やはり利用者の参加といいますか、声がきちっと届くようなそういう仕組みにしていかなければいけないということも第一にあると思います。
 ただ、審議会が7月26日ですっかり終わってしまって、それで後は、ということになると、リタイアした人間が何か言ってもほとんど会社では聞いてもらえないというのと同じようなことになってしまいますから、やはり後についても見直しなりチェックするなりという機構というものを存続させていくというところまで触れないと、責任が全うできないのではないかというように考えます。

【鳥居委員】 私もできるだけ早い時期に、内閣の責任において司法制度改革を推進する母体をつくっていただくことが重要だと思います。そのためにもし必要、多分必要なのでしょう、水原委員がおっしゃったように、法律を制定する必要があればできるだけ早く制定していただく。そして、その上でとりわけ急ぐのは、実はロースクール問題なんですね。ロースクール問題は、司法制度改革を推進する、推進会議と仮に呼ぶとすれば、それとある種の連携プレーを持ちながら、若干独立させて動かさないと、これは動かないと思いますので、そのことも御配慮いただきたいと思います。
 今、吉岡委員がおっしゃったとおりで、私はやはりできるだけこの司法制度改革審議会の、これだけ苦労してきた方々の貴重な御意見が更に何らかの形で影響を持ち得るか、あるいは少なくともウォッチをする力を持ち得るような仕組みに、推進会議なるものはつくっていただきたいと思うんです。

【藤田委員】 皆さんのおっしゃるとおりであると思うんですが、具体的な制度設計をする実施本部を設置する場所が問題と思うんですが、これは非常に複雑な数多くの領域にまたがる多くの問題が不可分に絡み合っているというのが、この項目を見ても分かります。例えば、行政訴訟制度の改革は、法務省1省でできるような話ではございませんから、是非ともこれは内閣に設けていただいて、政府が総力を挙げて取り組んでいただくという方向が望ましいと思います。

【北村委員】 先ほどからチェック機能の問題が出ていますけれども、先ほども申し上げたんですが、やはり第三者評価を行えるような、そういう仕組みを何か考えてもらいたいということは是非入れておいていただければと思います。
 改革というのは、非常にお金も掛かるし、非常に手間も掛かるしという部分がありまして、それでやったときに、やはりそういう片一方のもう一つの機関がないと、改革としてそんなに意味がないのではないかと思います。だから、是非これはセットとして推進する仕組みも必要だし、その後チェックするということも必要なのではないかと、これは法科大学院だってそうだと思うんですね。だから、いろいろなところで出てきていますので、それを是非お考えおきいただきたいと思います。

【竹下会長代理】 井上委員が先ほど言われた、この最終意見に盛り込まれた改革を実現した後も継続的に必要な改革をやっていけるような体制というのと、北村委員の言われるのとは同じですか。

【北村委員】 違います。先ほど言ったことと関連しています。

【山本委員】 私どもの審議会は、内閣が発議して、それぞれの議院の議決を経て発足したものですね。我々は任務を一応果たしたわけですから、これは内閣とそれぞれの議院の責任ということでやっていただくのが本筋で、吉岡さんが言われたようなユーザーの意見を入れるということは、審議過程においてはそういうのをどしどし入れてほしいということであったと思います。我々の審議会の最終意見の中にこういう機構をつくれとかというのは、例示としては、望ましいとか、要望としてということで言うことはあるとしても、審議会の機能としてはいかがかなという感じがちょっといたして、むしろ責任は内閣と両議院にあると言った方がはっきりしてよろしいのではないかという気がしますけれども。

【佐藤会長】 大事なことは皆おっしゃっていただいたように思います。せっかく我々がこういうものをつくって、しかも中身から見ると極めて大きな内容を持っているわけでして、これはやはり内閣で本格的に取り組んでいただかないと、実現はなかなか難しいことだろうと思います。そういう観点から皆さんそれぞれおっしゃっていただいたんだろうと思います。
 今、最後に山本委員がおっしゃったことですけれども、これをどう受け止めていただけるかは、内閣の御決断であって、私どもの強い希望、思いは内閣にお伝えして、是非私どもの気持ちをくみ取っていただきたいということですね。さっきからお話しになっていますように、行政改革をはじめ一連の改革をやってきたわけですけれども、この司法改革がきちっとできることによって全体が有機的につながり、日本の国のかたちの再構築につながっていくということだろうと思うんですね。そういう観点から、恐らく内閣も我々の気持ちを受け取っていただけるものと、会長として信じているわけでありますが、そういう思い、皆さんの今日のお話を内閣にお伝えできるようなことを考えさせていただきたいと思います。
 そして、さらに、井上委員がおっしゃったことですけれども、この最終意見を全面的に引き受けてやっていただきたいということに加えて、その後も責任を持って、司法制度の在り方を絶えず考え検討していく場がやはりどこかにきちっとないといけないということだと思います。
 二つの問題があることは我々として認識しておく必要があるだろうというように思っております。

【髙木委員】 山本さんが言われたのは、筋はおっしゃられたとおりだと思うけれども、行革にしても規制緩和にしても、それぞれいわゆる実施、推進というか、促進する部隊みたいなものが、実質的には内閣なり衆議院、参議院にそういう責任を果たしてもらうようにプッシュ役を果たすといった体制をつくられたと思います。どういうことを推進体制として今御検討なのかよく分かりませんが、行革、臨調以来の流れの中で、私どもの先輩やマスコミの人たちが推進・促進体制に関与され、一定の役割を果たされたと聞いています。

【佐藤会長】 さっき申し上げたことですが、内閣で設けられたこの審議会でありますので、私どものこういう意見が出て、我々の熱い気持ちが伝わって、きちっと受け止めてやっていただけるものと私は信じておりますけれども、それが伝わるように、いろいろまた考えさせていただきたいというように思います。
 どうもありがとうございました。では、この件はそういうことで。配付資料や何かについて、特にありますか。

【事務局長】 お手元の配付資料の中に、民間司法臨調の方から委員の皆様個人あてに緊急提言というものが出ておりますので、お配りしておりますから、御参考にしていただければと思います。

【佐藤会長】 どうもありがとうございました。
 最後に次回の第59回審議会ですけれども、5月21日月曜日、9時半から正午まで。

【事務局長】 現在のところ、新総理と新法務大臣にごあいさつをしていただけるように御相談しております。多分21日には御出席いただけるだろうというふうに思っております。その際には、官邸で開かせていただきたいと思います。

【佐藤会長】 それで、この日は、最終意見案の第1読会ということになります。最終意見案につきましては、勿論事前に委員の皆様に御検討いただかなければなりませんので、できるだけ早くお送りするつもりでおります。最近、当審議会における審議に関する情報が審議会の席上で皆様にお伝えする前に、マスコミにより報道される事例が見受けられるのでありまして、最終意見案の取扱いにつきましては、くれぐれも十分に御注意いただきますようよろしくお願いいたします。
 なお、この最終意見案につきましては、代理と相談いたしまして、中間報告のときとは異なりまして、審議会ごとに公表しようというように考えておりますので、次回の審議会の際には最終意見案を公表するつもりでおります。
 また、6月12日に予定しております最終意見提出後の当審議会の予定につきましては、既に何人かの委員からお尋ねがあり、一応予定に入れておいてくださいと申してきましたけれども、お忙しい委員の皆様ですので、いろいろ考えさせていただきまして、7月6日の午後に催させていただければというように思っております。最終意見後の事情を御報告すべきことも出てくるかもしれませんので、7月6日を予定しております。
 その他、確保していただいている開催予定日につきましては、よろしいのではなかろうか、他の御予定を入れていただいてもよろしいのではないかと思っております。

【鳥居委員】 6月26日も要らないんですね。

【事務局長】 そうです。

【髙木委員】 具体的に言うと、6月18日予備日というのも要らないんですね。

【佐藤会長】 はい。6月12日で最終意見。後は7月6日だけでございます。

【髙木委員】 そうすると、7月6日が最終でいいわけですね。

【佐藤会長】 そうです。では、よろしゅうございましょうか。
 長時間にわたりまして、本日はどうもありがとうございました。